説明

紙幣処理装置

【課題】様々なサイズの紙幣が斜行状態または片寄せ状態で投入されても、その紙幣を適切に繰り出すことができる紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】本発明による実施形態に従った紙幣処理装置11は、紙幣を投入する入金部110と、紙幣を収納する収納部150と、入金部から収納部へ紙幣を搬送する搬送部130と、入金部に投入された紙幣の両辺を搬送部の搬送方向に揃えるように紙幣の位置を補正する位置補正部115とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣を入金しその紙幣を収納する紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗や金融機関において、投入された現金を計数して収納し、収納されている現金を投出する現金処理装置が従来から使用されている。現金処理装置は、一般に、紙幣処理装置と硬貨処理装置とから構成されている。このような現金処理装置が世界的に普及するに従って、現金処理装置が取り扱う紙幣は、日本円紙幣だけでなく、外国紙幣も含まれ、その種類は多種多様になってきている。紙幣の種類が多くなると、現金処理装置を構成する紙幣処理装置は、サイズの異なる紙幣を円滑に入金、出金および収納することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4292232号明細書
【特許文献2】特開昭58−22240号公報
【特許文献3】特開平4−41335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙幣処理装置において処理される紙幣は、その搬送方向に対して各辺が直角あるいは平行の状態であることが望ましい。
【0005】
しかし、入金部または出金部のトレイの幅は、最大サイズの紙幣に適合するように設定される必要がある。このようなトレイを用いると、サイズの小さい紙幣は、トレイから繰り出される方向に対して斜めに配置されたり、あるいは、トレイの端に偏って配置される場合がある。紙幣が斜めに配置されると、紙幣の繰り出し時に、搬送方向に対して紙幣が斜めの状態で繰り出される(斜行繰出し)。また、紙幣をトレイの端に配置すると、繰出部は、紙幣の中央部を引っ張らず、紙幣の片側に偏った位置を引っ張って紙幣を繰り出すことになるので、この場合も斜行繰出しの原因となる。このような斜行繰出しは、搬送路の途中での紙幣詰まり(紙幣ジャム)を引き起こし、あるいは、紙幣の識別を困難にする。
【0006】
一方、収納部の紙幣を出金部へ投出する際に紙幣が斜行状態で搬送されると、出金部において複数の紙幣が投出された場合、複数の紙幣の両辺が揃わない。従って、ユーザが出金部から紙幣を取り出しにくいという問題も生じる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、様々なサイズの紙幣が斜行状態または片寄せ状態で投入されても、搬送方向に対する紙幣の向きを適切な状態にして紙幣を繰り出すことができ、搬送中の紙幣詰まりを抑制しかつ紙幣の識別を容易にする紙幣処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明による実施形態に従った現金処理装置は、紙幣を投入する入金部と、紙幣を収納する収納部と、前記入金部から前記収納部へ紙幣を搬送する搬送部と、前記入金部に投入された紙幣の搬送方向に対して長さ方向の両辺の方向を前記搬送部の搬送方向に近づけるように紙幣の位置を補正する位置補正部とを備えている。
【0009】
当該現金処理装置は、前記入金部に投入された紙幣を搭載する紙幣搭載部をさらに備え、前記位置補正部は、前記入金部に投入された紙幣の両辺の中央が前記紙幣搭載部の中央に近づけるように紙幣の位置を補正してもよい。
【0010】
前記位置補正部は、前記入金部に投入された紙幣を該紙幣の表面の上方から見たときに前記入金部に投入された複数の紙幣の両辺がほぼ一致するように該複数の紙幣を揃えてもよい。
【0011】
前記位置補正部は、前記入金部に投入された紙幣の表面に対してほぼ水平面内において前記搬送部の搬送方向に対してほぼ垂直方向に可動な少なくとも1つのガイドと、前記ガイドが該紙幣の側辺を弾性的に押えるように前記ガイドを移動させる駆動源と、前記駆動源の駆動力を、弾性体を介して前記ガイドに伝達する伝達機構とを含んでもよい。
【0012】
前記入金部は、投入または投出された紙幣を検知するセンサを含み、前記位置補正部は、前記センサが紙幣を検知した際に該紙幣の位置を補正するように動作してもよい。
【0013】
当該現金処理装置は、紙幣を投出する出金部をさらに備え、前記搬送部は、前記収納部から前記出金部へ紙幣を搬送し、当該現金処理装置は、前記出金部に投出された紙幣の搬送方向に対して長さ方向の両辺の方向を前記搬送部の搬送方向に近づけるように紙幣の位置を補正する位置補正部を該出金部に備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による紙幣処理装置は、様々なサイズの紙幣が斜行状態または片寄せ状態で投入されても、搬送方向に対する紙幣の向きを適切な状態にして紙幣を繰り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る第1の実施形態に従った紙幣釣銭機11の外観図。
【図2】紙幣釣銭機11の構成例を示すブロック図。
【図3】紙幣釣銭機11の内部構成の一例を示す断面図。
【図4】本実施形態による位置補正部115の一例を示す構成図。
【図5】紙幣の位置補正動作の一例を示す概念図。
【図6】位置補正部115を横方向(D1のいずれかの方向)から見た側面図。
【図7】本実施形態による紙幣釣銭機11の入金動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る第1の実施形態に従った紙幣処理装置である紙幣釣銭機11の外観図である。紙幣釣銭機11は、例えば、店舗内のチェックアウトエリアに設けられており、店員によって操作されるPOSレジスタまたは顧客によって操作されるセルフチェックアウト用レジスタと通信可能に接続され、代金として顧客から受け取った紙幣、および、釣銭として顧客へ支払う紙幣を処理および収納する。具体的には、レジスタで計算された商品代金と現金処理装置に入金された金額との差額を釣銭として出金するにあたり、紙幣釣銭機は、入金された紙幣を計数して収納し、釣銭の紙幣を出金する。紙幣釣銭機11は、POSレジスタまたはセルフチェックアウト用レジスタと一体に構成されていてもよい。また、紙幣釣銭機11は、バックオフィスに設置された現金管理装置(図示せず)と通信可能に接続され、現金処理システムを構成してもよい。
【0018】
紙幣釣銭機11は、筐体100と、入金部110と、出金部120とを備えている。入金部110は、バラ紙幣を投入するために設けられている。出金部120は、バラ紙幣を投出するために設けられている。
【0019】
図2は、紙幣釣銭機11の構成例を示すブロック図である。紙幣釣銭機11は、入金部110および出金部120のほか、位置補正部115と、搬送部130と、識別部140と、収納部150と、紙幣検知センサ160と、メモリ170と、通信部180と、制御部190とをさらに備えている。
【0020】
位置補正部115は、入金部110に設けられており、入金部110に投入された紙幣の位置を補正するために設けられている。位置補正部115の構成および動作については、後述する。
【0021】
搬送部130は、入金部110に投入された現金を収納部150へ搬送し、あるいは、出金部120から投出する現金を収納部150から搬送する。
【0022】
識別部140は、搬送部130によって搬送されている現金の金種、真偽(および真偽不確定)、正損、新旧、数量等を検知するように構成されている。例えば、識別部140は、イメージセンサまたは磁気センサ等のセンサを備えている。具体的には、識別部140は、センサの情報とメモリ170内に記憶している情報とを照合し、金種、真偽(および真偽不確定)、正損、新旧、数量等を判断し、真券、偽券、真偽不確定券等に区分する。金種の判別ができないものは、リジェクト券と判断する。併せて、識別部140は、紙幣の折れ、破れ、汚れ等を検出し、程度の良いものを正券、悪いものを損券に分類する。また、識別部140は、現金の数量を金種別および正損別にカウントする。
【0023】
収納部150は、識別部140において識別された現金を金種ごとに収納することができるように構成されている。収納部150は、各紙幣を金種ごとに積み重ねて収納するスタック式収納部でもよく、あるいは、各紙幣を金種ごとに複数のテープ間に挟み込んだ状態で該テープを紙幣とともに巻き取る複数のテープリール式収納部であってもよい。
【0024】
紙幣検知センサ160は、入金部110、出金部120、搬送部130等に設けられており、紙幣の有無や搬送される紙幣の通過を検知する。
【0025】
メモリ170は、紙幣釣銭機11を制御する各種プログラムおよびデータを格納するROM(Read Only Memory)またはHDD(Hard Disk Drive)、および、プログラムのロード領域やプログラム実行時における作業領域となるRAM(Random Access Memory)等を含む。メモリ170は、収納部150に収納されている現金の情報(金種、数量等)も記憶している。さらに、メモリ170は、識別部140で識別された現金の数量を金種ごとに記憶してもよい。
【0026】
通信部180は、店舗内の現金処理システムを構成する他の装置(レジスタ、現金出納装置、現金管理装置、POS管理装置等)と紙幣釣銭機11とを通信可能に接続する。
【0027】
制御部190は、メモリ170内のプログラムを実行して紙幣釣銭機11の全体を制御するように構成された演算処理装置である。
【0028】
図3は、紙幣釣銭機11の内部構成の一例を示す断面図である。紙幣釣銭機11は入金部カバー111を備えている。入金カバー111の下部には隙間があり、カバー111を閉じていても、小数枚の紙幣の投入が可能になっている。大量の紙幣を投入する場合、店員は入金時に入金部カバー111を開けて紙幣を入金部110へ投入する。入金部110は投入された紙幣を一枚ずつ搬送部130へ繰り出すように構成されている。搬送部130は、繰り出された紙幣を識別部140に通過させた後、収納部150、出金部120または回収カセット180のいずれかへ搬送するように構成されている。識別部140は、搬送されている紙幣の金種、真偽(および真偽不確定)、正損、新旧、数量等を識別する。搬送部130は、識別部140による識別結果に基づいて紙幣を金種ごとに収納部150に収納する。収納部150が紙幣でフル状態の場合、回収カセット180に紙幣を収納する。
【0029】
尚、搬送部130は、識別部140においてリジェクト券、偽券、真偽不確定券が識別された場合、それを出金部120へ投出する。偽券、真偽不確定券が含まれる場合には、後述の出金部シャッタ121を閉じた状態を維持し、係員の到着を待つ。
【0030】
一方、紙幣を出金するために、収納部150は、紙幣を一枚ずつ搬送部130へ繰り出すように構成されている。搬送部130は、繰り出された紙幣を出金部120へ搬送する。紙幣釣銭機11は、出金部シャッタ121を備えており、出金紙幣の集積後、出金部シャッタ121を開け、紙幣の取出しを可能にする。
【0031】
このように、紙幣釣銭機11は、入金部110に投入された紙幣を収納部150へ収納し、逆に、収納部150に収納された紙幣を出金部120へ投出することができる。即ち、紙幣釣銭機11は、入金された紙幣を出金に再利用することができるように構成されている。
【0032】
図4(A)および図4(B)は、本実施形態による位置補正部115の一例を示す構成図である。位置補正部115は、第1および第2のガイド200a、200bと、伝達機構としての第1および第2のラック210a、210bと、第1および第2のバネ(弾性体)220a、220bと、第1および第2の引戻しバネ230a、230bと、ピニオン240と、ピニオン回転部250と、駆動源としてのソレノイド260とを備えている。
【0033】
これにより、位置補正部115は、入金部110に設けられた紙幣搭載部としてのトレイ112上に搭載された紙幣の両辺を搬送部130の搬送方向(以下、繰出し方向ともいう)D2に揃えるように紙幣の位置を補正する。
【0034】
第1および第2のガイド200a、200bは、トレイ112上に搭載された紙幣の幅方向D1に動作し、該紙幣の両辺を軽くたたく(押す)。このとき紙幣の両辺を繰出し方向D2に対して平行に近づけるように、紙幣を押すガイド200a、200bの側面は、紙幣の繰出し方向D2に対してほぼ平行になるように設けられている。
【0035】
以下、第1のガイド200a、第1のラック210a、第1のバネ200aおよび第1の引戻しバネ230aの構造について説明する。
【0036】
第1のガイド200aは、D1方向に延びる連結部205aを有する。連結部205aは、開口部206aを有し、第1のラック210aは開口部216aを有する。留め具215aが、開口部206aおよび216aを介して、第1の札揃えガイド200aの連結部205aと第1のラック210aとをD1方向に動作できるように連結している。これにより、第1のガイド200aは、第1のラック210aに対してD1方向に相対的に移動することができる。
【0037】
また、第1のガイド200aの連結部205aと第1のラック210aとの間には、第1のバネ(第1の弾性体)220aが繋がっており、第1のバネ220aが第1のガイド200aを第2のガイド200bの方向へ弾性的に引張している。この機構は、第1のガイド200aと第1のラック210aとが一体で動作し、かつ、互いを引き離す方向に第1のバネ220aの弾性力(例えば、引張力または圧縮力)以上の力が印加されたときには互いが離れるように構成された逃げ機構である。第2のガイド200bと第2のラック210bも同様に一体で動作し、かつ、互いを引き離す方向に第2のバネ(第2の弾性体)220bの引張力以上の力が印加されたときには互いが離れるように構成された逃げ機構を有するように構成されている。
【0038】
これにより、第1のガイド200aは、紙幣の側辺を弾性的に押す。第2のガイド200bも紙幣の側辺を弾性的に押す。このような構成により、第1のガイド200aと紙幣との間に第1のバネ(弾性体)220aの弾性力以上の力が印加された場合には、第1のガイドは、それ以上紙幣の方へ移動しない。また、第2のガイド200bと紙幣との間に第2のバネ(弾性体)220bの弾性力以上の力が印加された場合には、第2のガイド200bも、それ以上紙幣の方へ移動しない。その結果、第1のバネ220aおよび第2のバネ220bは、それぞれ第1および第2のラック210a、210bに連動して動作する第1のガイド200aおよび第2のガイド200bがそれらの間にある紙幣を押すときに紙幣を変形させないようにまたは弾き飛ばさないように第1および第2のラック210a、210bから伝わる駆動力を逃す。
【0039】
尚、第1のバネ220aの弾性係数は、紙幣の硬さまたは柔軟性に基づいて設定される。また、本実施形態では、第1および第2の弾性体220a、220bとしてバネを用いたが、バネに代えて或る弾性係数を有する弾性体(例えば、ゴムなど)を用いてもよい。
【0040】
さらに、第1のラック210aは、第1の引戻しバネ230aの一端に結合している。第1の引戻しバネ230aの他端は、ソレノイド260に対して静止ししている紙幣釣銭機11の任意の部分に固定されている。第1の引戻しバネ230aは、第1のガイド200aが紙幣を揃えた後に、第1のガイド200aを第1のラック210aとともに元の位置(初期位置)に引っ張り戻すために設けられている。
【0041】
第2のガイド200b、第2のラック210b、第2のバネ200b、第2の引戻しバネ230b、連結部205b、開口部206b、216bおよび留め具215bの構成は、第1のガイド200a、第1のラック210a、第1のバネ200a、第1の引戻しバネ230a、連結部205a、開口部206a、216aおよび留め具215aの構成に対して鏡像対称となっており、上記説明から容易に理解できるので、その説明を省略する。
【0042】
第1のラック210aと第2のラック210bは、ピニオン240によって互いに連結されており、ピニオン240の回転によってD1方向かつ互いに相反する方向に往復移動することができる。
【0043】
ピニオン240の軸は、図示する複数のリンクで構成されるピニオン回転部250に接続されており、さらに、ピニオン回転部250は、ソレノイド260に接続されている。ソレノイド260をオンにすると、レノイド260は、プランジャ261を引っ込め、ピニオン回転部250を介してピニオン240を右回転させる。これにより、第1および第2のガイド200a、200bが互いに接近する方向に移動する(図4(B)参照)。そして、ソレノイド260をオフにすると、引戻しバネ230a、230bの働きによって、第1および第2のガイド200a、200b、ピニオン240、ピニオン回転部250およびプランジャ261は元の状態に戻る(図4(A))。尚、本実施形態では、駆動源としてソレノイド260を用いているが、例えば、ステッピングモータなどのモータを用いてもよい。
【0044】
このような構成により、第1および第2のガイド200a、200bは、トレイ112上に搭載された紙幣の表面に対してほぼ水平面内において、D1方向(搬送部130の搬送方向D2に対してほぼ垂直方向)に往復動作し、紙幣の両辺を方向D1から軽くたたくことができる。その結果、紙幣の方向および位置は補正され、複数の紙幣の幅方向の位置が搬送方向D2に揃う。あるいは、複数の紙幣の幅方向の位置が搬送方向D2に近づく。
【0045】
図4(A)を参照すると、第1のガイド200aおよび第2のガイド200bは、ユーザがトレイ112に紙幣を投入し易いように離間している。このときの第1のガイド200aと第2のガイド200bとの間の間隔をW2とする。これは、ソレノイド260が駆動されていない状態(初期状態)である。尚、トレイ112の幅をW1とする。W1は、W2と同じかその近傍の値でよい。
【0046】
図4(B)を参照すると、第1のガイド200aおよび第2のガイド200bは、紙幣の両側辺に当たるように接近している。このときの第1のガイド200aと第2のガイド200bとの間の間隔をW3とする。これは、ソレノイド260が駆動され、第1のガイド200aおよび第2のガイド200bが紙幣の両辺に接する状態(動作状態)である。
【0047】
図4(A)に示す初期状態と図4(B)に示す動作状態とを1回または複数回繰り返す。これにより、第1のガイド200aおよび第2のガイド200bによって紙幣の両辺を軽くたたく動作が実現される。
【0048】
図5は、紙幣の位置補正動作の一例を示す概念図である。例えば、ユーロ紙幣の中で最もサイズの大きい500ユーロ紙幣のサイズは、幅82ミリメートル、長さ160ミリメートルである。一方、ユーロ紙幣の中で最もサイズの小さい5ユーロ紙幣のサイズは、幅62ミリメートル、長さ120ミリメートルである。
【0049】
従って、初期状態において、第1のガイド200aと第2のガイド200bとの間の間隔W2は、82ミリメートルよりも大きくなければならない。図5では、間隔W2は、82ミリメートルに4ミリメートルのマージンを加えた86ミリメートルに設定されている。この場合、5ユーロ紙幣を投入したときに、紙幣の最大斜行角度は約12.22度となる。斜行角度は、繰出し方向D2に対して紙幣の側辺が成す角度である。通常、斜行角度が6度を超えると、識別部140が紙幣を識別することが困難になる。
【0050】
そこで、位置補正部115は、第1のガイド200aおよび第2のガイド200bをその動作状態においてそれぞれ20ミリメートル(40ミリメートル)動作させる。これにより、動作状態における第1のガイド200aと第2のガイド200bとの間の間隔W3は、66ミリメートルになる。これは、5ユーロ紙幣の幅(62ミリメートル)に4ミリメートルのマージンを加えた値である。
【0051】
これにより、5ユーロ紙幣の斜行角度は、約4.34度まで補正される。その結果、識別部140は、この紙幣を識別することが可能になる。また、紙幣の搬送ジャムの発生を抑制することができる。
【0052】
尚、500ユーロ紙幣のように幅がW3よりも大きな紙幣が投入された場合であっても、第1のバネ220aおよび第2のバネ220bによって、第1のガイド200aおよび第2のガイド200bは紙幣の側辺を弾性的に押さえる。これにより、第1のバネ220aおよび第2のバネ220bは、紙幣を変形させないようにまたは弾き飛ばさないようにソレノイド260から伝達される駆動力を逃すことができる。従って、投入される紙幣の幅がW3よりも大きくても差し支えない。また、W3は、5ユーロ紙幣の幅よりも小さくても構わない。
【0053】
図6は、位置補正部115を横方向(D1のいずれかの方向)から見た側面図である。位置補正部115は、図4(A)および図4(B)を参照して説明した構成に加え、入金部110に投入された紙幣を検知する紙幣検知センサ160と、紙幣の繰出し時に紙幣を押さえ付ける札押え320と、紙幣を搬送部130へ繰り出す繰出しベルト340と、余分な紙幣を押し戻して紙幣を1枚ずつ分離する逆転ローラ330とをさらに備えている。図5に示したように、逆転ローラ330および繰出しベルト340は、搬送路のほぼ中央に位置している。
【0054】
図7は、本実施形態による紙幣釣銭機11の入金動作を示すフロー図である。まず、ユーザが紙幣を入金部110に投入する。入金部110の紙幣検知センサ160は、入金部110に投入された紙幣を検知する(S10)。
【0055】
位置補正部115は、紙幣検知センサ160が紙幣を検知したことをトリガとして該紙幣の位置を補正するように第1のガイド200aおよび第2のガイド200bの動作を実行する(S20)。
【0056】
そして、位置補正部115が紙幣の位置を補正した後、札押え320が下降し紙幣を繰出しベルト340に押さえ付ける(S30)。
【0057】
逆転ローラ330および繰出しベルト340を回転動作させることによって、紙幣が1枚ずつ搬送部130へ繰り出される(S40)。
【0058】
その後、紙幣は、搬送部130によって搬送され、識別部140の識別結果に基づいて、収納部150に金種ごとに収納される(S50)。
【0059】
本実施形態によれば、位置補正部115は、トレイ112上に搭載された紙幣の両辺を方向D1から軽くたたくことによって、紙幣の両辺の延伸方向を繰出し方向D2にほぼ一致させるように、あるいは、繰出し方向D2に近づけるように紙幣の方向を補正する。これにより、様々なサイズの紙幣が斜行状態または片寄せ状態で投入されても、ステップS20において紙幣の位置や斜行角度を補正し、その紙幣を適切に繰り出すことができる。
【0060】
また、位置補正部115は、紙幣の両辺間の中央がトレイ112の側辺間の中央にほぼ一致するように、あるいは、トレイ112の側辺間の中央に近づけるように紙幣の位置を補正することができる。これにより、紙幣の繰出し時に、逆転ローラ330および繰出しベルト340が紙幣のほぼ中央部分を引っ張って紙幣を繰り出すことができる。
【0061】
さらに、多数の紙幣がトレイ112に搭載されている場合、第1および第2のガイド200a、200bは、多数の紙幣をその紙幣の表面の上方から見たときに該多数の紙幣の両辺がほぼ一致するように紙幣を揃えることができる。
【0062】
その結果、搬送中の紙幣詰まりを抑制しかつ紙幣の識別を容易にすることができる。
【0063】
(変形例1)
上記位置補正部115は、入金部110だけでなく、出金部120にも設けられてよい。位置補正部115が出金部120に設けられた場合、投出された紙幣の両辺を搬送部130の搬送方向に揃えるように紙幣の位置を補正する。
【0064】
これにより、紙幣の出金時に、ユーザが容易に紙幣を出金部から取り出すことを可能にする。
【0065】
(変形例2)
上記実施形態では、第1および第2のガイド200a、200bの両方が逃げ機構を有していた。しかし、逃げ機構は、第1のガイド200aまたは第2のガイド200bのいずれか一方にのみ設けられていてもよい。この場合、第1の弾性体220aまたは第2の弾性体220bのいずれか一方を省略する。例えば、第2の弾性体220bが省略された場合、第2のガイド200bおよび第2のラック210bは一体として動作する。この場合であっても、第1のガイド200aには逃げ機構が設けられているので、第1のガイド200aは、第2のガイド200bとの間にある紙幣を押すときに紙幣を変形させないようにまたは弾き飛ばさないように第1のラック210aから伝わる駆動力を逃すことができる。
【0066】
(変形例3)
さらに、上記実施形態では、トレイ112に搭載された紙幣の両側の第1および第2のガイド200a、200bが動作する。しかし、いずれか一方のガイド200a(または200b)のみが可動であってもよい。この場合、他方のガイド200b(または200a)は固定される。例えば、第1のガイド200aが可動であり、第2のガイド200bが固定されている場合、第1のガイド200aが第2のガイド200bへ向かって紙幣の一方の側辺を弾性的に押す。これにより、第1のガイド200aは、第2のガイド200bとの間において紙幣の両辺を繰出し方向D2に対して平行に近づけることができる。
【符号の説明】
【0067】
11・・・紙幣釣銭機、100・・・筐体、110・・・入金部、112・・・トレイ、115・・・位置補正部、120・・・出金部、130・・・搬送部、140・・・識別部、150・・・収納部、160・・・紙幣検知センサ、170・・・メモリ、180・・・通信部、190・・・制御部、200a、200b・・・第1、第2のガイド、210a、210b・・・第1、第2のラック、220a、220b・・・第1、第2のバネ、230a、230b・・・第1、第2の引戻しバネ、240・・・ピニオン、250・・・ピニオン回転部、260・・・ソレノイド、320・・・札押え、330・・・逆転ローラ、340・・・繰出しベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を投入する入金部と、
紙幣を収納する収納部と、
前記入金部から前記収納部へ紙幣を搬送する搬送部と、
前記入金部に投入された紙幣の搬送方向に対して長さ方向の両辺の方向を前記搬送部の搬送方向に近づけるように紙幣の位置を補正する位置補正部とを備えた現金処理装置。
【請求項2】
前記入金部に投入された紙幣を搭載する紙幣搭載部をさらに備え、
前記位置補正部は、前記入金部に投入された紙幣の両辺の中央が前記紙幣搭載部の中央に近づけるように紙幣の位置を補正することを特徴とする請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項3】
前記位置補正部は、前記入金部に投入された紙幣を該紙幣の表面の上方から見たときに前記入金部に投入された複数の紙幣の両辺がほぼ一致するように該複数の紙幣を揃えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の現金処理装置。
【請求項4】
前記位置補正部は、
前記入金部に投入された紙幣の表面に対してほぼ水平面内において前記搬送部の搬送方向に対してほぼ垂直方向に可動な少なくとも1つのガイドと、
前記ガイドが該紙幣の側辺を弾性的に押えるように前記ガイドを移動させる駆動源と、
前記駆動源の駆動力を、弾性体を介して前記ガイドに伝達する伝達機構とを備えた請求項1から請求項3のいずれかに記載の現金処理装置。
【請求項5】
前記入金部は、投入または投出された紙幣を検知するセンサを含み、
前記位置補正部は、前記センサが紙幣を検知した際に該紙幣の位置を補正するように動作することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の現金処理装置。
【請求項6】
紙幣を投出する出金部をさらに備え、
前記搬送部は、前記収納部から前記出金部へ紙幣を搬送し、
前記出金部に投出された紙幣の搬送方向に対して長さ方向の両辺の方向を前記搬送部の搬送方向に近づけるように紙幣の位置を補正する位置補正部を該出金部に備えたことを特徴とする請求項1に記載の現金処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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