説明

紙幣取り出し機構および紙幣取り出し機構の制御方法、ならびに紙幣識別機

【課題】可動部が少ない低コストな構成で、装置内部に集積した紙幣を前方から簡単に回収できる紙幣取り出し機構およびその制御方法、紙幣識別機を提案すること。
【解決手段】紙幣識別ユニット10のユニット前面パネル11に紙幣取り出し口13を形成する。紙幣Pは、紙幣識別部14を経由した後、ユニット幅方向に押されて紙幣取り出し口13の後方に設けられた紙幣収納部15に入り、短辺を紙幣取り出し口13に向けた姿勢で重ねて集積される。紙幣収納部15の後方にはパンタグラフ形のリンク機構18を備える紙幣押し出し機構17が設けられる。リンク機構18が伸長すると、紙幣の束P1が押し出し部材19を介して前方に押し出され、その前端部分が紙幣取り出し口13から前方に飛び出した状態となる。紙幣取り出し口13に設けたセンサ23の出力に基づき、押し出された紙幣が回収されたか否かを判断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投入された紙幣を識別して内部に集積する紙幣識別機に関し、特に、集積した紙幣を取り出すための紙幣取り出し機構およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ球などの遊技媒体の貸し出し処理を行う遊技台用台間機において、紙幣により遊技媒体の貸し出しを行うための紙幣識別機を搭載したものがある。特許文献1、2には、識別済みの紙幣を収納するための紙幣収納部を備える紙幣識別機を、薄型の遊技台用台間機(遊技媒体貸機)に搭載したものが開示されている。
【0003】
特許文献1、2の紙幣識別機は、奥行き方向に長い直方体状の筐体を備えており、この筐体の前面パネルに縦長の溝状の紙幣挿入口が形成されている。紙幣挿入口から筐体の奥行き方向に向かって延びる紙幣の導入路には、紙幣の真偽や種類を識別するための光学センサや磁気センサなどの識別部が配置されている。この識別部を通過して正規の紙幣であることなどを判定された紙幣は、紙幣の挿入方向と直交する方向(筐体の厚み方向)に移動させられて順次積層されてゆく。積層状態の紙幣が集積されている紙幣収納部の前方にある筐体の前面パネル部分には、集積した紙幣を取り出すための紙幣取り出し口が、紙幣挿入口と隣接して形成されている。
【0004】
特許文献1の紙幣識別機は、紙幣取り出し口に取り付けた前面側扉を開けると、この前面側扉の内側において集積紙幣の上方および後方を囲むように配置されているスライド式の引き出し部材が前方へスライドする。これにより、集積された紙幣の束が、引き出し部材やこれに連動する紙押さえ部材などと共に紙幣取り出し口から前方に飛び出した状態になる。よって、集積された紙幣の束を側方から容易に取り出すことができる。
【0005】
また、特許文献2の紙幣識別機は、紙幣取り出し口の内側において、集積した紙幣を収納する紙幣収納トレーがトレー支持枠によって前後方向にスライド可能に支持されており、このトレー支持枠自体も前後方向にスライド可能となっている。従って、紙幣収納トレーを前方に移動させると、トレー支持枠の前端に設けられた蓋板に紙幣収納トレーが当たってトレー支持枠ごと前方に移動する。その結果、紙幣収納トレーおよびトレー支持枠が紙幣取り出し口から前方に飛び出した状態になる。よって、集積された紙幣の束を、紙幣収納トレーから外して側方から取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−130028号公報
【特許文献2】特開2008−113681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2のような紙幣取り出し機構では、集積された紙幣の束だけでなく、引き出し部材や紙幣収納トレーなどの部材までも、紙幣取り出し口を通って前方に飛び出す。よって、これらの部材をスライドさせるためのスライダやレールなどの部品が必要であり、部品点数が多い。このため、コストが高くなってしまう。また、動く部品が多く可動領域も大きいために故障の頻度も高く、メンテナンスの負担が大きい。更に、紙幣取り出し口から飛び出した紙幣が、引き出し部材や紙幣収納トレーなどのスライド部材に保持された状態であるため、紙幣の取り出し時には、このようなスライド部材の側方から紙幣の束を取り出さなければならない。
【0008】
本発明の課題は、これらの点に鑑みて、可動部が少ない低コストな構成により、装置内部に集積した紙幣を装置前面から簡単に取り出せるようにした紙幣取り出し機構およびその制御方法、ならびに紙幣識別機を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の紙幣取り出し機構は、
紙幣取り出し口が形成された前面パネルの後方に設けられた紙幣収納部に集積された紙幣を、前記紙幣取り出し口から取り出すための紙幣取り出し機構であって、
前記紙幣収納部において前記紙幣取り出し口に一方の端辺を向けた姿勢で重ねて集積された紙幣を、積層状態のまま前記紙幣取り出し口に向けて押し出すための押し出し手段を有し、
当該押し出し手段は、前記積層状態の紙幣のみが前記紙幣取り出し口を通って所定寸法だけ前方に飛び出した状態を形成可能に構成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明は、このように、積層状態の紙幣の束のみを紙幣取り出し口から飛び出させることができるため、集積した紙幣の回収時に、従来のようにトレーや引き出し部材から紙幣を側方に取り出す必要がない。よって、紙幣の取り出しが容易である。また、従来のように紙幣取り出し口から紙幣と共に飛び出す部材を設けていないため、動く部品の点数や可動領域が少なくて済む。よって、従来よりも部品点数を削減でき、コストを削減できる。また、メンテナンスの負担を軽減することができる。
【0011】
本発明において、前記押し出し手段を、前記積層状態の紙幣の後方において当該紙幣の押し出し方向に沿って伸縮するように設けられたパンタグラフ形またはクロスリンク形のリンク機構、もしくは、前記紙幣の押し出し方向に沿って無端ベルトを掛け渡したベルト機構と、前記積層状態の紙幣の後方に配置され、前記リンク機構の伸長動作、もしくは、前記無端ベルトの走行動作に基づき、前記積層状態の紙幣の後端を前記紙幣取り出し口側に向けて押圧する押し出し部材とを備えた構成にすることができる。このようなリンク機構やベルト機構は紙幣の取り出し方向に往復移動可能であるため、押し出し部材を介して積層紙幣のみを紙幣取り出し口に向けて押し出し、紙幣取り出し口から飛び出させることができる。また、押し出し時とは逆方向に動かすことにより、押し出し部材を紙幣収納部から退避させて次の紙幣の集積に備えることができる。
【0012】
また、前記押し出し手段が、前記リンク機構もしくは前記ベルト機構を駆動するためのアクチュエータを備えていれば、外部からの紙幣取り出し命令や復帰命令に基づいてアクチュエータを駆動し、紙幣取り出し動作や復帰動作を行うことができる。あるいは、前記押し出し手段が、前記リンク機構もしくは前記ベルト機構を手動で動かすための手動操作手段を備えていれば、ユーザが自らの手動操作手段を介して押し出し手段を操作して、所望のタイミングで紙幣を取り出すことができる。
【0013】
ここで、前記紙幣取り出し口を開閉するための開閉手段を有する場合には、前記紙幣取り出し口が開状態のときに、前記押し出し手段による紙幣の押し出し動作を行うように構成することが望ましい。このようにすると、紙幣取り出し口に向けて押し出した紙幣の束を確実に紙幣取り出し口から前方に飛び出させることができる。
【0014】
次に、本発明は、上記の紙幣取り出し機構の制御方法であって、
前記紙幣取り出し口における紙幣の有無を検出するセンサの検出出力に基づき、前記開閉手段および前記押し出し手段を制御することを特徴としている。
【0015】
このようにすると、紙幣取り出し口から紙幣を押し出した後の紙幣の回収状況を、センサ出力に基づいて判断できる。よって、紙幣の回収状況に基づいて自動で開閉手段や押し出し手段を適切に制御できる。例えば、押し出した紙幣が回収されたら紙幣取り出し口を自動で閉鎖できる。このようにすれば、紙幣回収後の新たな紙幣の投入において、間違って紙幣取り出し口13から紙幣が挿入されるなどの操作ミスの発生を抑制できる。
【0016】
また、このとき、紙幣の取り出し命令が入力されたことに基づき、前記開閉手段の開動作、および、前記押し出し手段による紙幣の押し出し動作を行い、前記センサの検出出力が紙幣有りを示す出力から紙幣無しを示す出力に切り換わったことに基づき、前記開閉手段の閉動作、および、前記押し出し手段の押し出し動作前の状態への復帰動作を行うように構成することができる。このようにすると、紙幣の取り出し命令に基づいて紙幣をスムーズ且つ速やかに取り出すことができる。また、紙幣が回収されるまでは紙幣取り出し口を閉じないでおくことができる。更に、紙幣が回収されたら自動で紙幣取り出し口を閉じて押し出し手段を復帰させることができ、次の紙幣の集積に備えることができる。
【0017】
次に、本発明の紙幣識別機は、
紙幣を識別するための識別手段と、
紙幣取り出し口が形成された前面パネルと、
当該前面パネルにおける前記紙幣取り出し口の後方に設けられ、前記識別手段による識別済みの紙幣を、前記紙幣取り出し口に一方の端辺を向けた姿勢で重ねて集積可能に構成されている紙幣収納部と、
上記の紙幣取り出し機構とを有することを特徴としている。
【0018】
また、この紙幣識別機を、上記の紙幣取り出し機構の制御方法により、前記紙幣収納部からの紙幣の取り出し処理を行う制御部を有する構成にすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、積層状態の紙幣の束のみを紙幣取り出し口から飛び出させることができるため、集積した紙幣の回収時に、従来のようにトレーや引き出し部材から紙幣を側方に取り出す必要がない。よって、紙幣の取り出しが容易である。また、従来のように紙幣取り出し口から紙幣と共に飛び出す部材を設けていないため、動く部品の点数や可動領域が少なくて済む。よって、従来よりも部品点数を削減でき、コストを削減できる。また、メンテナンスの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した紙幣識別ユニットが搭載されている遊技台用台間機の部分を示す部分斜視図である。
【図2】本発明を適用した紙幣識別ユニットの内部機構の平面構成を示す説明図である。
【図3】紙幣押し出し機構の側面構成を示す説明図である。
【図4】紙幣識別ユニットの制御系の概略構成を示す説明図である。
【図5】紙幣識別ユニットにおける紙幣取り出し処理のフローチャートである。
【図6】改変例の紙幣押し出し機構の側面構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した紙幣取り出し機構を備える紙幣識別機(紙幣識別ユニット)の実施の形態を説明する。
【0022】
図1は遊技台用台間機の紙幣識別ユニットが搭載されている部分を示す部分斜視図である。遊技台用台間機1は、紙幣やプリペイドカードなどによる入金額に応じた遊技媒体の貸し出しを行う装置である。パチンコ店などの遊技店においては、パチンコ台などの遊技装置を並べた遊技島が設置されている。遊技台用台間機1は、遊技島における各遊技装置間の隙間に配置可能な奥行き方向に長い薄型の本体ケース2を備えており、この本体ケース2の内部に各種の構成部品が組み込まれている。隣接する遊技装置間の隙間に取り付けられた台間機ホルダ3(図1において破線で示す部分)に前方から本体ケース2を装着することにより、各遊技装置の隣に遊技台用台間機1を設置することができる。
【0023】
遊技台用台間機1における本体ケース2の上端部分には、紙幣識別ユニット10(紙幣識別機)が組み込まれている。紙幣識別ユニット10は、本体ケース2の前面パネル4の上端部分を構成しているユニット前面パネル11(前面パネル)を備えており、このユニット前面パネル11には、上下方向に延びる細い溝状の紙幣挿入口12が形成されている。また、ユニット前面パネル11における紙幣挿入口12の隣には、上下方向に延びるやや広幅の溝状の紙幣取り出し口13が形成されている。紙幣挿入口12および紙幣取り出し口13は、紙幣の短辺寸法よりも上下方向の内法寸法が大きく、横向きにした紙幣Pを挿入および取り出し可能な形状である。
【0024】
図2は、紙幣識別ユニットの内部機構の平面構成を示す説明図であり、図2(a)は紙幣が紙幣収納部に収納されている状態、図2(b)は紙幣が紙幣収納部から押し出された状態を示している。図2(a)に示すように、紙幣挿入口12に挿入された紙幣Pは、図示しない搬送機構により、紙幣識別ユニット10の奥に向かって導入される。紙幣挿入口12の後方には紙幣識別部14(識別手段)が配置されている。紙幣識別部14は、紙幣の印刷模様や紙幣に埋め込まれた磁気情報などを検出するための光学センサや磁気センサなどの検出部を備えている。この検出部の検出出力に基づき、紙幣識別部14による識別位置を通過する紙幣Pの真偽および種類が判別される。
【0025】
紙幣識別部14において真正な紙幣であると判別された紙幣Pは、紙幣識別部14の後方に搬送された後、不図示の機構によって紙幣識別ユニット10の幅方向に押されて、紙幣識別ユニット10における紙幣取り出し口13の後方に設けられた紙幣収納部15に入る。このような集積方法により、紙幣収納部15には、紙幣識別ユニット10の幅方向に重なった状態で紙幣Pが集積される。すなわち、紙幣収納部15には、積層状態の紙幣の束P1が、その短辺を紙幣取り出し口13に向けた姿勢で収納されている。
【0026】
紙幣収納部15は、積層状態の紙幣の束P1を装置前後方向、すなわち、紙幣取り出し口13からの紙幣の取り出し方向にスライド可能な状態で支持する紙幣ガイド枠16(図3参照)を備えている。紙幣ガイド枠16の前端は、ユニット前面パネル11における紙幣取り出し口13を形成した部分の裏側付近まで延びている。紙幣ガイド枠16は、例えば、積層状態の紙幣の束P1の下端を載せて支持する下枠部分と、この紙幣の束P1の上端を保持する上枠部分などを備えた構成とすることができる。
【0027】
紙幣収納部15の後方には、紙幣取り出し口13に向けて紙幣Pを押し出すための紙幣押し出し機構17が配置されている。図3は紙幣押し出し機構の側面構成を示す説明図であり、図3(a)は紙幣が紙幣収納部に収納されている状態、図3(b)は紙幣が紙幣収納部から押し出された状態を示している。この図に示すように、紙幣押し出し機構17は、装置前後方向に伸縮可能なパンタグラフ形のリンク機構18(押し出し手段の一部)と、その前端に取り付けられた押し出し部材19(押し出し手段の一部)を備えている。押し出し部材19はリンク機構18の節点に回転可能な状態で取り付けられており、紙幣の束P1の後端に後方から対峙している。また、押し出し部材19は、その幅寸法(紙幣識別ユニット10の幅方向の寸法)が、積層状態の紙幣の束P1の最大厚さ以上に形成された部材である。なお、パンタグラフ形のリンク機構18に代えて、クロスリンク形のリンク機構などの、装置前後方向に伸縮可能な他のリンク機構を用いることも可能である。
【0028】
図3(b)に示すように、リンク機構18を伸長させると、押し出し部材19が前方に移動して積層状態の紙幣の束P1の後端に当接する。そして、紙幣の束P1全体が前方に押し出される。紙幣の束P1は、リンク機構18の伸長動作に伴い、紙幣ガイド枠16に沿って紙幣取り出し口13に向けて移動する。リンク機構18は、紙幣の束P1の前端部分が紙幣取り出し口13を通過して所定寸法だけユニット前面パネル11よりも前方に飛び出した状態となる位置まで、紙幣の束P1を押し出すことが可能である。
【0029】
図4は紙幣識別ユニットの制御系の概略構成を示す説明図である。本実施形態の紙幣押し出し機構17は、リンク機構18を伸縮させるためのモータやソレノイドなどのアクチュエータ20(押し出し手段の一部)を備えている。そして、紙幣識別ユニット10には、このアクチュエータ20および上記の紙幣識別部14を含む紙幣識別ユニット10の各部を制御する制御部21が設けられている。また、紙幣識別ユニット10には、紙幣取り出し口13に設けられたシャッター部材を動かして紙幣取り出し口13を開閉するためのシャッター開閉機構22(開閉手段)と、紙幣取り出し口13における紙幣の有無を検出するためのセンサ23が設けられている。制御部21は、リモコン等の外部からの命令やセンサ23の出力等に基づいて、シャッター開閉機構22および紙幣押し出し機構17の動作を制御する。
【0030】
(紙幣取り出し処理)
図5は紙幣識別ユニットにおける紙幣取り出し処理のフローチャートである。紙幣識別ユニット10の制御部21は、リモコン等からの紙幣取り出し命令を受信したことに基づき、図5の制御を開始する。まず、ステップS1において、紙幣取り出し口13を開状態にする。すなわち、制御部21は、シャッター開閉機構22のシャッター部材を閉じ位置にロックしているソレノイド式のロック機構を解錠した後、シャッター開閉機構22のシャッター部材を開方向に駆動する。
【0031】
次に、制御部21は、ステップS2に進み、紙幣押し出し機構17のアクチュエータ20を制御してリンク機構18を伸長させ、押し出し部材19を介して、紙幣収納部15内に集積されている紙幣の束P1を前方に押し出す。そして、紙幣の束P1が所定寸法だけユニット前面パネル11よりも前方に飛び出して、アクチュエータ20を停止させる。その後、ステップS3に進み、押し出した紙幣が紙幣取り出し口13から回収されたか否かをセンサ23の出力に基づいて監視する監視状態に入る。
【0032】
ステップS3において、センサ23の出力が「紙幣有り」を示す信号から「紙幣無し」を示す信号に切り換わった場合には(ステップS3:Yes)、制御部21は、ステップS4に進み、紙幣取り出し口13を閉状態にする。すなわち、制御部21は、シャッター部材を閉方向に駆動した後、シャッター部材のロック状態を形成するように、シャッター開閉機構22を制御する。続いて、ステップS5に進み、紙幣押し出し機構17を紙幣取り出し前の状態に復帰させる復帰動作を行う。すなわち、紙幣押し出し機構17のアクチュエータ20を押し出し時とは逆方向に駆動し、リンク機構18を縮めて、押し出し部材19を紙幣収納部15よりも後方に後退させる。
【0033】
以上のように、本実施形態では、紙幣の束P1のみを紙幣取り出し口13から押し出す紙幣押し出し機構17を備えているため、紙幣の回収時に、従来のようにトレーや引き出し部材から紙幣を側方に取り出す必要がない。よって、紙幣の取り出しが容易である。また、紙幣取り出し口13から紙幣と共に飛び出す部材を設けていないため、動く部品やガイド部材などが少なく、可動領域も小さい。従って、従来よりも部品点数を削減でき、コストを削減できる。また、可動部分が少ないため故障も少なく、メンテナンスの負担を軽減することができる。
【0034】
また、本実施形態では、紙幣取り出し口13を開状態にした後に紙幣押し出し機構17による押し出し動作を行っており、紙幣を押し出すタイミングに合わせてシャッター開閉機構22を作動させている。従って、紙幣取り出し口13が閉状態のときに押し出し動作が行われることがなく、紙幣の束を確実に紙幣を押し出すことができる。
【0035】
更に、本実施形態では、紙幣取り出し口13に設けられたセンサ23の出力に基づいてシャッター開閉機構22の閉動作および紙幣押し出し機構17の復帰動作を行っている。よって、紙幣が回収されるまでは紙幣取り出し口を閉じないでおくことができ、ユーザが確実に紙幣を回収できる。また、紙幣が回収されたときには自動で紙幣取り出し口を閉じることができるため、紙幣回収後の新たな紙幣の投入において、間違って紙幣取り出し口13に紙幣を挿入してしまうなどの操作ミスの発生を抑制できる。更に、紙幣取り出し口を閉じるのに連動させて紙幣押し出し機構17を押し出し前の状態に復帰させることができるため、次の紙幣の集積に備えることができる。
【0036】
(改変例)
(1)上記実施形態では、紙幣の押し出し方向に伸縮するリンク機構18を用いて紙幣を押し出していたが、他の押し出し機構を用いることも可能である。図6は、改変例の紙幣押し出し機構の側面構成を示す説明図である。この図に示すように、改変例の紙幣押し出し機構30は、装置前後方向、すなわち、紙幣取り出し口13からの紙幣の押し出し方向に沿って掛け渡した無端ベルトを備えるベルト機構31と、このベルト機構31における無端ベルトの所定位置に取り付けられた押し出し部材32を備えている。ベルト機構31は紙幣収納部15に沿って配置され、押し出し部材32は紙幣の束P1の後端に後方から対峙するように配置されている。
【0037】
ベルト機構31の無端ベルトを前方に向けて走行させると、押し出し部材32が前方に移動して積層状態の紙幣の束P1の後端に当接し、紙幣の束P1を紙幣取り出し口13に向けて押し出すことができる。また、無端ベルトを逆向きに走行させると、押し出し部材32が紙幣収納部15よりも後方の待機位置に復帰する。このような構成により、上記実施形態と同様に、紙幣の押し出し動作を行うことができる。
【0038】
また、ベルト機構以外にも、装置前後方向に進退動するプランジャを備えるソレノイド機構を紙幣収納部15の後方に配置して、プランジャの先端に取り付けた押し出し部材を介して紙幣を押し出すこともできる。あるいは、モータの回転を直線運動に変換する各種の機構を用いて装置前後方向に押し出し部材を動かし、紙幣を押し出す構成にすることも可能である。
【0039】
(2)上記実施形態では、紙幣押し出し機構17をモータやソレノイドなどのアクチュエータ20によって作動させているが、ユーザの手動操作に基づいて紙幣を押し出させる構成にすることもできる。例えば、リンク機構18を伸長方向に付勢する付勢部材と、この付勢力に逆らってリンク機構18あるいは押し出し部材19を紙幣収納部15の後方の待機位置に保持する保持部材を設けておき、ユニット前面パネル11などに設けられた手動操作部材の操作により、保持部材による保持状態を解除させる構成などが考えられる。改変例(1)においても同様に、ベルト機構31の無端ベルトを押し出し方向に付勢しておき、ユーザの手動操作に基づいて無端ベルトの保持状態を解除して、紙幣を押し出させるように構成することができる。また、付勢部材の付勢力を利用せず、単に手動操作部材の動きに基づいてリンク機構やベルト機構を動かし、紙幣を押し出す構成にすることも可能である。
【0040】
(3)上記各形態では、遊技台用台間機1の前面パネル4を兼ねる紙幣識別ユニット10のユニット前面パネル11に紙幣取り出し口13を設けていたが、ユニット前面パネル11と本体ケース2の前面パネル4とを別部材にして、ユニット前面パネル11を覆うように前面パネル4を配置した構成にすることもできる。この場合には、前面パネル4における紙幣取り出し口13と前後方向に重なる位置に紙幣取り出し用の開口を形成して、この開口から所定寸法飛び出す位置まで紙幣の束P1を移動させるように、紙幣押し出し機構を構成しておく。
【0041】
また、この場合には、シャッター開閉機構を、前面パネル4に形成した紙幣取り出し用の開口と紙幣取り出し口13の両方、あるいは、その一方に設けることができる。また、両方にシャッター開閉機構を設けた場合には、これらをいずれも、紙幣取り出し機構による紙幣の取り出し動作に連動させて開閉することが望ましい。なお、シャッター開閉機構を手動操作により開閉可能な構成にして、これらの開口が閉鎖しているときには、紙幣取り出し機構による取り出し動作が行われないように、紙幣取り出し機構を構成してもよい。
【0042】
(4)上記実施形態では、紙幣識別ユニット10の幅方向に紙幣を重ねて集積しているが、集積方向はこの方向に限定されず、積層状態の紙幣の端辺が紙幣取り出し口13の方向を向く方向であればよい。例えば、紙幣識別ユニット10の幅を紙幣の幅よりも大きくすることができる場合には、紙幣識別ユニット10の高さ方向に紙幣を集積して、ユニット前面パネル11には、この姿勢の紙幣の束が通過できるように、横向きに延びる溝状の紙幣取り出し口を形成した構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 遊技台用台間機
2 本体ケース
3 台間機ホルダ
4 前面パネル
10 紙幣識別ユニット(紙幣識別機)
11 ユニット前面パネル(前面パネル)
12 紙幣挿入口
13 紙幣取り出し口
14 紙幣識別部(識別手段)
15 紙幣収納部
16 紙幣ガイド枠
17 紙幣押し出し機構(紙幣取り出し機構)
18 リンク機構(押し出し手段の一部)
19 押し出し部材(押し出し手段の一部)
20 アクチュエータ(押し出し手段の一部)
21 制御部
22 シャッター開閉機構(開閉手段)
23 センサ
30 紙幣押し出し機構(紙幣取り出し機構)
31 ベルト機構
32 押し出し部材
P 紙幣
P1 紙幣の束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣取り出し口が形成された前面パネルの後方に設けられた紙幣収納部に集積された紙幣を、前記紙幣取り出し口から取り出すための紙幣取り出し機構であって、
前記紙幣収納部において前記紙幣取り出し口に一方の端辺を向けた姿勢で重ねて集積された紙幣を、積層状態のまま前記紙幣取り出し口に向けて押し出すための押し出し手段を有し、
当該押し出し手段は、前記積層状態の紙幣のみが前記紙幣取り出し口を通って所定寸法だけ前方に飛び出した状態を形成可能に構成されていることを特徴とする紙幣取り出し機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記押し出し手段は、
前記積層状態の紙幣の後方において当該紙幣の押し出し方向に沿って伸縮するように設けられたパンタグラフ形またはクロスリンク形のリンク機構、もしくは、前記紙幣の押し出し方向に沿って無端ベルトを掛け渡したベルト機構と、
前記積層状態の紙幣の後方に配置され、前記リンク機構の伸長動作、もしくは、前記無端ベルトの走行動作に基づき、前記積層状態の紙幣の後端を前記紙幣取り出し口側に向けて押圧する押し出し部材とを備えることを特徴とする紙幣取り出し機構。
【請求項3】
請求項2において、
前記押し出し手段は、前記リンク機構もしくは前記ベルト機構を駆動するためのアクチュエータを備えることを特徴とする紙幣取り出し機構。
【請求項4】
請求項2において、
前記押し出し手段は、前記リンク機構もしくは前記ベルト機構を手動で動かすための手動操作手段を備えることを特徴とする紙幣取り出し機構。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの項において、
前記紙幣取り出し口を開閉するための開閉手段を有し、
前記紙幣取り出し口が開状態のときに、前記押し出し手段による紙幣の押し出し動作を行うように構成されていることを特徴とする紙幣取り出し機構。
【請求項6】
請求項5に記載の紙幣取り出し機構の制御方法であって、
前記紙幣取り出し口における紙幣の有無を検出するセンサの検出出力に基づき、前記開閉手段および前記押し出し手段を制御することを特徴とする紙幣取り出し機構の制御方法。
【請求項7】
請求項6において、
紙幣の取り出し命令が入力されたことに基づき、前記開閉手段の開動作、および、前記押し出し手段による紙幣の押し出し動作を行い、
前記センサの検出出力が紙幣有りを示す出力から紙幣無しを示す出力に切り換わったことに基づき、前記開閉手段の閉動作、および、前記押し出し手段の押し出し動作前の状態への復帰動作を行うことを特徴とする紙幣取り出し機構の制御方法。
【請求項8】
紙幣を識別するための識別手段と、
紙幣取り出し口が形成された前面パネルと、
当該前面パネルにおける前記紙幣取り出し口の後方に設けられ、前記識別手段による識別済みの紙幣を、前記紙幣取り出し口に一方の端辺を向けた姿勢で重ねて集積可能に構成されている紙幣収納部と、
請求項1ないし5のいずれかの項に記載の紙幣取り出し機構とを有することを特徴とする紙幣識別機。
【請求項9】
請求項8において、
請求項6または7に記載の紙幣取り出し機構の制御方法により、前記紙幣収納部からの紙幣の取り出し処理を行う制御部を有することを特徴とする紙幣識別機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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