説明

紙幣取引装置および紙幣取引システム

【課題】一般利用者の利便性を維持しつつ、偽紙幣の故意の使用の抑止を図る。
【解決手段】本実施例の紙幣取引システム10では、入金者を特定した上で(ステップS110〜120)、入金紙幣を紙幣読取部160にてスキャンする(ステップS150)。そして、特定偽紙幣判定基準データの含有判定(ステップS170)、真紙幣判定(ステップS180)を行い、真紙幣と判定すれば、入金者の入金操作に応じた処理を行う(ステップS190)。その反面、入金紙幣が偽紙幣である疑いがあるとした場合には、更なる真偽判定(ステップS210)と、入金状況データ作成・蓄積(ステップS220)を行い、偽紙幣の過去の入金履歴があった上で今回の入金紙幣が所定の枚数であれば、今回の紙幣入金は悪意や故意を持った偽紙幣入金であるとして、偽紙幣の入金があった旨を入金者に報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動取引装置や両替機と言った紙幣取引装置に関し、詳しくは正規の紙幣ではない非正規紙幣の故意の入金に対処する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動取引装置や両替機と言った紙幣取引装置では、入金された紙幣の真偽を判定する。こうした真偽判定は、正規の紙幣(以下、真紙幣と称する)の取扱を前提としているため不可欠であり、種々の判定手法が提案されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−140262号公報
【特許文献2】再公表WO97/22090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら公報に記載の技術によれば、正規の紙幣ではない非正規紙幣(以下、偽紙幣と称する)を判定する精度を高めることができる。ところが、偽紙幣を悪意や故意で使用しようとする者は、判定精度が高められた紙幣取引装置においても偽紙幣を真紙幣と判定させようと、偽紙幣の精緻化を図っているのが実情である。このため、紙幣判定の精度を高める手法とは別に、偽紙幣の悪意や故意の使用を抑止することが望まれるに至った。その一方、真紙幣にあっては、その使用状況によっては紙幣表面の汚れやすり切れ等が起きるので、判定精度をただ高めただけでは、真紙幣でありながら真偽判定において真紙幣と判定されないことが有り得る。こうした使用済み真紙幣の利用者(以下、一般利用者)は、何の悪意や故意がないにも拘わらず、紙幣取引装置での紙幣取扱に制限を受ける場合があるので、一般利用者の利便性の観点から改善が求められるに至った。
【0005】
本発明は、上記した課題を踏まえ、一般利用者の利便性を維持しつつ、偽紙幣の故意の使用の抑止を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
【0007】
[適用1:紙幣取引装置]
紙幣入金に関する取引を行う入金者紙幣取引装置であって、
紙幣の入金を欲する入金者からの紙幣入金を受け入れる入金部と、
前記入金者が入金に伴って行う入金操作を受け付ける入金操作部と、
前記入金部に対しての紙幣入金と前記入金操作部での入金操作とを行った入金者を特定する入金者特定部と、
前記入金部に入金された入金紙幣をスキャンして入金紙幣データを作成するスキャン部と、
正規の紙幣ではない非正規紙幣であることを示す非正規基準データを含む紙幣判定データを記憶する紙幣データ記憶部と、
前記スキャン部にて作成済みの前記入金紙幣データを、前記紙幣データ記憶部の前記紙幣判定データと照合して、前記入金紙幣の真偽を判定する真偽判定部と、
入金者についての入金状況データを、前記入金特定部で特定した入金者の入金者特定データと前記真偽判定部による真偽判定の結果とを対応付けて作成して蓄積する入金者データ作成部と、
前記真偽判定部が前記入金紙幣は前記非正規紙幣であるとする非正規判定を下せば、前記入金者データ作成部の作成蓄積した前記入金状況データを参照して前記特定した入金者についての過去の前記非正規判定の有無を判定し、過去において前記非正規判定の履歴の有無に応じて前記特定した入金者に対して異なる報知処理を実行する非正規入金処理部とを備える
ことを要旨とする。
【0008】
上記構成の紙幣取引装置において紙幣の入金を欲する入金者は、入金部に紙幣を入金すると共に、入金操作部にて入金に伴う入金操作を行う。紙幣取引装置にあっては、入金部に対しての紙幣入金と入金操作部での入金操作とを行った入金者を入金特定部で特定する。この入金者の特定に際しては、予め入金操作に対応付けて定めた入金者特定データと、入金社自身が行った入金操作とを用いるようにできる。例えば、カードや通帳にはその使用者(入金者)に固有のデータが記録されているので、カードや通帳の挿入と言った操作により、入金者を特定できる。この場合、暗証番号の入力を併用して、入金者を特定することもできる。そして、この特定された入金者についての入金状況は、後述するようにして入金状況データとして作成して蓄積される。
【0009】
スキャン部は、入金部に入金された入金紙幣をスキャンして入金紙幣データを作成し、この入金紙幣データは、真偽判定部による入金紙幣の真偽判定に用いられる。真偽判定部は、入金紙幣データを、紙幣データ記憶部が記憶した紙幣判定データ(当該データは、正規の紙幣ではない非正規紙幣であることを示す非正規基準データを含む)と照合して、入金紙幣の真偽を判定する。入金者データ作成部は、この真偽判定の結果を入金特定部で特定した入金者の入金者特定データと対応付けて、入金者についての入金状況データを作成・蓄積する。これにより、入金者個々についての入金状況データが、入金部への紙幣入金と入金操作部での入金操作のたびに、真偽判定の結果と入金者特定データとの対応付けを経て作成・蓄積される。
【0010】
上記構成の紙幣取引装置は、真偽判定部での真偽判定の結果に応じて次のように作動する。入金紙幣が非正規紙幣(偽紙幣)であるとする非正規判定を下せば、非正規入金処理部は、入金者データ作成部の作成蓄積した入金状況データを参照して前記特定した入金者についての過去の前記非正規判定の有無を判定する。入金紙幣が正規の紙幣(真紙幣)である場合には、入金操作部でなされた入金操作に応じた入金処理を行えば足りる。この入金処理は、例えば、入金操作に応じた入金先の口座への入金や、入金紙幣に相当する額の小額紙幣への両替支払いなどであり、この両者或いはいずれか一方でもよい。よって、入金紙幣が真紙幣と判断されている限りにおいては、実際にその紙幣を入金した入金者の求めに適った処理を、入金者の過去の入金状況データに拘わらず行うので、利用者の利便性を損なうことはない。
【0011】
その一方、非正規判定を下した場合には、過去においてその特定した入金者についての入金状況データにおいて非正規判定の履歴がある場合と無い場合とで、その後の報知処理を異なるように実行する。例えば、特定した入金者についての入金状況データにおいて非正規判定の履歴がなければ、入金紙幣が非正規紙幣(偽紙幣)であると判定されたような報知を行わず、特定した入金者についての入金状況データにおいて非正規判定の履歴が有れば、特定した入金者に対して入金紙幣が非正規紙幣(偽紙幣)であったと判定(非正規判定)した旨を報知する。
【0012】
入金に際して悪意や故意の意図を有しない一般利用者は、新札或いは使い回された紙幣に拘わらず、自分の使う紙幣は真紙幣であると言う認識の元で、紙幣入金を行う。よって、こうした一般利用者についての入金状況データには、通常、非正規判定の履歴は残らない。一般利用者についての入金状況データに非正規判定の履歴が残ったとしても、十分に使用された真紙幣が真偽判定において真紙幣ではないと非正規判定された場合に限られるが、こうした非正規判定の履歴が残る頻度は極めて低い。このような場合は、偽紙幣であるとする非正規判定の基準である非正規基準データを使用された紙幣についての真偽判定の基準となるデータと異なるようにすることで、一般利用者が十分に使用された真紙幣を使用しても非正規判定の履歴が残らないようにできる。ところが、利用する紙幣が偽紙幣であることを承知の上で悪意や故意に使用する意図を有する利用者(入金者)は、紙幣入金に際しての真偽判定において非正規判定が下される回数はもとよりその判定頻度は各段に高い。
【0013】
こうした背景に立って非正規判定を下した場合の上記の報知処理を鑑みると、悪意や故意に偽紙幣を使うことを全く意図しない一般利用者に対しては、当該利用者の求めに応じた紙幣取引、具体的には前記入金操作部でなされた入金操作に応じた口座への入金および/または両替支払いを実行でき、これら一般利用者の利便性を損なわないようにできる。しかしながら、悪意や故意を持って偽紙幣を使用する利用者は偽紙幣を使用する悪意や故意を持っていることを自覚しているので、これら悪意の利用者に対しては、当該利用者が現実に取り扱った紙幣は非正規の紙幣である旨を認知させることで、偽紙幣の使用を思い留めさせる抑止効果を発揮できる。そして、これら悪意の利用者に対しては、次回以降の紙幣入金を制限したり、入金紙幣を回収したりすることで、偽紙幣の使用を思い留めさせる抑止効果がより高まる。次回以降の紙幣入金制限は、種々の対処が可能であり、例えば、入金操作に用いるカードの回収や、入金操作で指定された口座の入出金凍結等の対処が可能である。入金部に受け入れた入金紙幣を回収すれば、非正規判定がなされた紙幣(偽紙幣)の更なる解析ができることに加え、回収された紙幣の返却を窓口等に求める利用者に対しての紙幣利用の意図(悪意の意図)の問い合わせが可能となる。回収紙幣の解析は、非正規基準データの更なる追加更新による真偽判定の精度向上に起用する。紙幣返却を窓口に求めた利用者が悪意の利用者であれば、窓口での問い合わせにより、当該利用者の偽紙幣使用をより確実に抑止できる可能性がある。
【0014】
上記した紙幣取引装置は、次のような態様とすることができる。例えば、前記紙幣判定データに含まれる前記非正規基準データを、前記非正規紙幣について特徴的なデータとして作成するようにできる。偽紙幣は真紙幣に似せて作成され、通常、その作成の過程において、偽紙幣に特徴的な痕跡を残す。よって、こうした特徴的な痕跡に適ったデータを非正規基準データとしておけば、非正規紙幣の判定精度が高まる。そして、非正規基準データを偽紙幣に特徴的な痕跡が反映したデータとすれば、十分に使用された紙幣であっても当該紙幣が真紙幣である限りにおいては非正規基準データに合致することは無くなるので、十分に使用された真紙幣を偽紙幣であると判定する確度は極めて低くなる。
【0015】
また、前記入金者データ作成部においては、前記入金状況データに、前記真偽判定部が前記非正規判定を下した際における該判定の対象となった非正規入金紙幣の枚数を含めて作成することとし、その上で、前記非正規入金処理部では、前記入金者データ作成部の作成した前記入金状況データにおける前記非正規入金紙幣の枚数が予め定めた所定枚数を超えると、前記特定した入金者についての過去の前記非正規判定の有無を判定するようにできる。悪意や故意を持って偽紙幣を使用する利用者は、通常、複数枚の偽紙幣を用いるので、上記したように入金紙幣枚数をも加味して過去の非正規判定の有無を判定すれば、上記した報知による偽紙幣使用の抑止効果が高まる。
【0016】
また、前記非正規入金処理部が前記特定した入金者についての過去の前記非正規判定の有無を判定する場合の前記所定枚数を可変設定するようにすることもでき、こうすれば、汎用性が高まる。
【0017】
更に、前記入金者に対して画像提供を行う表示部を備えるようにした上で、前記非正規入金処理部により、前記入金部に入金された入金紙幣は前記非正規判定とされた旨を報知する画像を前記表示部にて表示するようにすることができる。こうした画像報知に際して、前記スキャン部が前記非正規入金紙幣について作成したスキャン画像を前記表示部に表示したり、前記スキャン部が前記非正規入金紙幣をスキャンして取得した記番号の画像を前記表示部に表示したりできる。こうすれば、実際に入金された入金紙幣が非正規な偽紙幣であることのみならず、その偽紙幣のスキャン画像・記番号が記録されたことを悪意の利用者に認知させることができる。この結果、悪意の利用者による偽紙幣使用の抑止効果が高まる。
【0018】
[適用2:紙幣取引システム]
紙幣取引システムであって、
上記したいずれかの紙幣取引装置と管理装置とをデータ送受信可能に備え、
前記管理装置は、
正規の紙幣であることを示す真紙幣基準データと、正規の紙幣ではない非正規紙幣であることを示す非正規基準データとを含む紙幣判定データを更新しつつ記憶する管理側紙幣データ記憶部と、
該管理側紙幣データ記憶部の記憶した前記紙幣判定データを前記紙幣取引装置に送信する送信部とを備え、
前記紙幣取引装置は、
前記紙幣データ記憶部に前記紙幣判定データを記憶するに当たり、前記送信部から前記紙幣判定データの送信を受ける
ことを要旨とする。
【0019】
上記構成の紙幣取引システムでは、入金紙幣の真偽判定の基準となる紙幣判定データを管理装置の側において更新しつつ、その更新済みの紙幣判定データを、実際に真偽判定を行う紙幣取引装置の側に送信する。このため、個々の紙幣取引装置における真偽判定を最新の紙幣判定データに基づいて精度良く行うことができる。
【0020】
そして、前記紙幣取引装置は、前記入金者データ作成部にて作成した前記入金状況データを前記管理装置に送信し、前記管理装置は、前記送信を受けた前記入金状況データを、他の紙幣取引装置に送信するようにすることもできる。こうすれば、ある紙幣取引装置で作成した入金状況データを複数の紙幣取引装置で共有できるので、悪意の利用者に対しての偽紙幣の使用の抑止効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例としての紙幣取引システム10の全体像を概略的に示す説明図である。
【図2】紙幣取引システム10を構成する紙幣取引装置の実施例としての現金自動取引装置100の電気的な概略構成を示すブロック図である。
【図3】現金自動取引装置100における紙幣搬送の様子を機構的に示すブロック図である。
【図4】入金処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】金種ごとに入金紙幣の真偽判定を行う際に用いる真偽判定データの様子を模式的に示す説明図である。
【図6】図5の真偽判定基準データの性質を説明する説明図である。
【図7】特定偽紙幣判定基準データを含まない場合における入金紙幣返却の際の表示例を示す説明図である。
【図8】過去に偽紙幣の入金履歴が有った上で今回の入金にあっても偽紙幣の入金枚数が多い場合における表示報知例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例としての紙幣取引システム10の全体像を概略的に示す説明図、図2は紙幣取引システム10を構成する紙幣取引装置の実施例としての現金自動取引装置100の電気的な概略構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施例の紙幣取引システム10は、銀行の本支店に設置された現金自動取引装置100での紙幣取引に対応して構成され、図1に示すように、銀行統括店、例えば本店のホストコンピューターHCと、各支店行の現金自動取引装置100とをインターネットNWにてデータ送受信可能に備え、本店内においては、ホストコンピューターHCは現金自動取引装置100と専用線にてデータ送受信可能とされている。ホストコンピューターHCは、本店を含むそれぞれの支店行における現金自動取引装置100を統括管理するサーバーとして機能し、銀行本店で偽紙幣判定のためのデータ作成やその管理等を行う。
【0024】
ホストコンピューターHCは、現金自動取引装置100の他、紙幣読取機NSCと接続され、紙幣読取機NSCが偽紙幣NSについて読み取って作成した特徴的なデータの入力や、真紙幣についてのデータの入力等を受ける。偽紙幣NSについてのデータは、入金紙幣の真偽判定に用いられ、本願における非正規基準データに該当する。そして、この偽紙幣NSについてのデータ(以下、非正規基準データ)は、正規の紙幣ではない非正規紙幣であることを示すものであり、定期的或いは不定期に、実際の偽紙幣NSについての紙幣読取機NSCによる読取および後述のデータ解析機NSAによる画像解析を経て作成され、その都度、更新してホストコンピューターHCに入力される。真紙幣についてのデータにあっても、入金紙幣の真偽判定に用いられる。そして、この真紙幣についてのデータ(以下、真紙幣基準データ)は、正規の紙幣であることを示すものであり、紙幣読取機NSCが真紙幣について読み取って作成したデータそのものの他、公的機関等から提供を受けた真紙幣のデータとされる。この場合、真紙幣基準データは、新札の真紙幣についてのデータを含むほか、ある程度使い込まれた真紙幣(旧紙幣)にあっても、後述の現金自動取引装置100において真紙幣であると判定できるよう、上記の旧紙幣についてのデータも含まれている。上記した真紙幣・偽紙幣についての両基準データは金種ごとに用意され、偽紙幣基準データにあっては、金種ごとに複数種類用意されている。
【0025】
紙幣読取機NSCは、光学式のラインフォトセンサーを始めとする複数種のセンサーと紙幣搬送機器を内蔵し、紙幣の金種データや、記番号データ、画像データ等を紙幣搬送を行いながら取得し、そのデータをデータ解析機NSAに出力する。データ解析機NSAは、パーソナルコンピューター等のデータ入出力とデータ加工とが可能な機器であり、紙幣読取機NSCから受け取ったデータを解析して、偽紙幣NSに特徴的なデータを後述の偽紙幣基準データとして作成し、そのデータをホストコンピューターHCに送信する。この紙幣読取機NSCとデータ解析機NSAとをデータセンタに設置するようにすることもできる。
【0026】
ホストコンピューターHCは、CPUやRAM・ROMおよびプログラム等と協働して、通信部HCTとデータ記憶部HCMを構築し、上記したデータ解析機NSAから入力した様々な偽紙幣NSについての偽紙幣基準データと、真紙幣についての真紙幣基準データとをデータ記憶部HCMに金種ごとに記憶させる。こうして記憶された真紙幣・偽紙幣の基準データは、入金紙幣の真偽判定を下すための真偽判定データとされ、通信部HCTを経て、定期的或いは不定期にそれぞれの現金自動取引装置100に送信される。なお、偽紙幣基準データにあっては、データ解析機NSAにて更新されるたびにデータ記憶部HCMに更新蓄積され、その都度に、送信される。
【0027】
現金自動取引装置100は、図1に示すように、紙幣入金払出機構部110と、表示操作部120と、カード受付部130と、通帳受付部140とを装置筐体部に備える。これらは、紙幣の入金を欲する入金者の操作や入金者への表示、紙幣・通帳の受渡に関与する機器であり、紙幣入金払出機構部110は、装置前面に設置されたシャッター111の開閉を経て、入金者からの紙幣入金の受け入れ、返却紙幣の入金者への払い出しを行う。表示操作部120は、液晶ディスプレイをタッチパネルとして機能するように備え、液晶ディスプレイへの種々の文字情報・画像情報の表示を行うと共に、入金者が入金に伴って行う入金操作を受け付ける。また、この表示操作部120は、現金自動取引装置100の保守要員にあっては後述の偽紙幣判定枚数のセットに用いられる。カード受付部130は、カード搬送機器とカード読取機器を備え、入金者が入金に際して挿入した磁気ストライプカードやIC内蔵カードを受け付け、入金処理後にはカード返却を行う。このカード受付部130には、明細帳票に入出金明細事項を記入して帳票を排出する明細書発行機器が併設されている。通帳受付部140は、通帳搬送機器と通帳読取機器と通帳印字機器を備え、カードに代わって、もしくはカードと共に入金者が挿入した通帳を受け付け、入金処理後には入金処理明細を記入の上で通帳を返却する。紙幣入金払出機構部110におけるシャッター開閉や、表示操作部120での表示、カード受付部130でのカード受付・返却、通帳受付部140での通帳受付・印字・返却は、後述の制御部200からの制御信号に基づいてなされる。
【0028】
本実施例における入金者の特定は、入金者自身が挿入するカードや通帳を用いることとしたので、カード受付部130はカードから入金者情報を読み取り、通帳受付部140は通帳の磁気ストライプ等から入金者情報を読み取る。読み取られた入金者情報は、表示操作部120で入金者が実際に行った入金操作に対応する信号と共に、制御部200に出力され、この制御部200において、入金者の特定に用いられる。この入金者情報は、入金者に固有のデータとして、口座開設時等において本人確認の上に作成された情報であり、挿入されたカードや通帳から読み取られる他、表示操作部120での入金操作(例えば、暗証番号入力、指紋や静脈紋と言った生体識別データ)と対応付けられている。
【0029】
現金自動取引装置100は、上記した入金者に関与する機器に加え、図2に示すように、装置の統括制御を担う制御部200の他、紙幣搬送部150、紙幣読取部160、保管部170を備える。制御部200は、これら機器との間でデータ送信を行いながら、紙幣の入金はもとより、紙幣入金に伴うカードや通帳の受付・払出、後述の紙幣の真偽判定等の制御を行う。制御部200は、コンピューターを用いて構成され、CPUやRAM・ROMおよびプログラム等と協働して、通信部202と真偽判定部204と記憶部206と入金者特定部208とデータ処理部210と入出金処理部212を構成する。通信部202は、インターネットNWと接続され、真偽判定部204にて行った後述の真偽判定結果のデータ等のホストコンピューターHCへの送信や、ホストコンピューターHCからの真偽判定データの受信に関与する。真偽判定部204は、後述するように紙幣読取部160で読み取ったデータの照合を行い、その照合の結果により入金紙幣の真偽判定を実行する。記憶部206は、ホストコンピューターHCから送信を受けた既述した真偽判定データを更新して記憶する。
【0030】
入金者特定部208は、カード受付部130や通帳受付部140から入力した入金者情報に基づいて、或いはこの入金者情報と表示操作部120での入金者が実際行った入金操作とに基づいて、入金者を特定する。入金者が自己の口座に入金を行う場合には、カード受付部130や通帳受付部140から入力した入金者情報で入金者を特定でき、入金者が他人の口座に入金を行うような場合には、カード受付部130や通帳受付部140から入力した入金者情報と表示操作部120での入金者が実際行った入金操作(暗証番号入力等)とに基づいて、入金者を特定することが望ましい。
【0031】
データ処理部210は、入金操作を行った入金者についての入金状況データを、真偽判定の結果を含めて作成する。入出金処理部212は、入金紙幣の受付や払出などに関する処理を、紙幣搬送部150や紙幣入金払出機構部110等を駆動制御して行う。
【0032】
次に、紙幣搬送部150と保管部170による紙幣搬送とその保管について説明する。図3は現金自動取引装置100における紙幣搬送の様子を機構的に示すブロック図である。この図3に示すように、紙幣搬送は、紙幣入金を受け付ける紙幣入金払出機構部110と紙幣保管を行う保管部170との間において行われ、紙幣入金払出機構部110は、シャッター111の下方の紙幣投入ホッパー112とリジェクトスタッカー114と、一時保管庫116とを備える。紙幣投入ホッパー112は入金者が投入した入金紙幣を受け取り、リジェクトスタッカー114には入金者への返却紙幣が搬送される。一時保管庫116は、紙幣読取部160による紙幣読取の結果、後述するように真紙幣とされた紙幣を一時的に保管する。
【0033】
保管部170は、リジェクト庫172と収納庫173〜175にパーテーションされており、リジェクト庫172は、返却紙幣を一時的に保管する。収納庫173〜175は、現金自動取引装置100が取り扱うことのできる紙幣の金種ごとに用意され、入金紙幣を金種ごとに収納・保管する。本実施例では、3種類の金種の紙幣を取り扱うことを想定しているので、三つの収納庫173〜175が用意されている。リジェクト庫172と収納庫173〜175の紙幣出入り口には、紙幣通過を検知する紙幣通貨センサー155と、紙幣の搬送方向を切り換える切換ゲート156がそれぞれ設置されている。紙幣通貨センサー155の検知信号と紙幣読取部160が読み取った金種判定信号は、既述した入出金処理部212(図2参照)に出力され、入出金処理部212は、これら信号に基づいてそれぞれの切換ゲート156を駆動する。これにより、入金紙幣は、リジェクト庫172或いは収納庫173〜175に搬送されて保管される。
【0034】
紙幣搬送部150は、上記した紙幣入金払出機構部110と保管部170との間に、以下に説明する入金経路152や払出経路154等に沿って紙幣搬送を行う。入金経路152は、紙幣入金払出機構部110の紙幣投入ホッパー112から、紙幣読取部160を経由して一時保管庫116に到るまでの前半入金経路と、一時保管庫116から紙幣読取部160を経由して保管部170のリジェクト庫172や収納庫173〜175に到るまでの後半入金経路で構成される。払出経路154は、保管部170のリジェクト庫172や収納庫173〜175から紙幣読取部160を経て紙幣入金払出機構部110のリジェクトスタッカー114に到るまでの経路とされている。紙幣搬送部150は、制御部200、より詳しくは入出金処理部212からの制御指令を受けて図示しない駆動モータを駆動し、次のようにして紙幣搬送を行う。
【0035】
入金者が紙幣入金払出機構部110の紙幣投入ホッパー112に紙幣を投入すると、紙幣搬送部150は、入出金処理部212からの制御信号を受けて、紙幣投入ホッパー112から入金紙幣を1枚ずつ分離し、分離した入金紙幣を一枚ずつ、入金経路152の上記の前半入金経路に送り出す。こうして送り出された入金紙幣は、紙幣読取部160の手前の紙幣通貨センサー155にて紙幣通貨が検知された後に、紙幣読取部160に達する。紙幣読取部160は、この入金紙幣を内蔵するセンサにて読み取りスキャンし、そのスキャン結果を制御部200の真偽判定部204やデータ処理部210、入出金処理部212に出力する。紙幣読取部160でのスキャンデータにより、紙幣の金種やその真偽、或いは破れ等の紙幣使用状況等が判定されるので、その判定結果に応じて入金紙幣は紙幣搬送部150により引き続き搬送される。後述する真偽判定で真紙幣であるとされた入金紙幣は、一時保管庫116にまで搬送されて、保管部170への保管のための搬送に備える。一時保管庫116への紙幣搬送の際には、リジェクトスタッカー114の手前の払出経路154との分岐箇所の切換ゲート156が駆動制御される。その一方、金種判定が不可であって紙幣や、後述の真偽判定で偽紙幣とされた紙幣、寸法が異常な紙幣などは、切換ゲート156の駆動を経て、払出経路154によりリジェクトスタッカー114まで返却搬送される。これにより、上記紙幣は入金者に返却される。
【0036】
一時保管庫116に搬送された入金紙幣は、入金経路152の上記の後半入金経路に沿って、保管部170まで搬送される。つまり、一時保管庫116に搬送された入金紙幣は、切換ゲート156の手前の紙幣通貨センサー155にて紙幣通貨が検知された後に、切換ゲート156にて紙幣読取部160まで戻され、改めてこの紙幣読取部160にてスキャンされる。このスキャンにより、保管部170の側に向けて搬送されつつある紙幣の金種や紙幣使用状況が判ることから、その結果に応じた切換ゲート156の駆動を経て、一時保管庫116に搬送された入金紙幣は、入金経路152の上記した後半入金経路に沿って保管部170のリジェクト庫172や収納庫173〜175まで搬送される。この場合、紙幣に汚れや破れがあるために再度出金できない紙幣はリジェクト券と判定され、当該紙幣はリジェクト庫172に搬送されて保管される。収納庫173〜175には、金種ごとの紙幣が搬送される。
【0037】
次に、制御部200がその真偽判定部204や記憶部206等を用いつつ紙幣読取部160と協働して行う紙幣の真偽判定とこれに伴う入金処理について説明する。図4は入金処理の手順を示すフローチャートである。
【0038】
図4に示すように、本実施例の入金処理では、まず、入金者自体の入金取引があるまで待機する(ステップS100)。この入金取引の有無は、カード受付部130(図1、図2参照)への入金者によるカード挿入、通帳受付部140(図1、図2参照)への入金者による通帳挿入、表示操作部120(図1、図2参照)に表示された入金受付の操作部の入金者による操作で判定される。入金者による入金取引があると、制御部200は、入金者による入金操作を判読し(ステップS110)、その判読結果に基づいて入金者を特定する(ステップS120)。通常、紙幣入金は、紙幣の入金を欲する入金者が自身の銀行口座或いは自身が所望する振込先口座に対して行われることから、入金者には、予め所定の操作が求められる。例えば、入金者には予め暗証番号が個別に割り振られているので、紙幣の入金取引を欲する入金者には、この暗証番号の入力操作が求められる。よって、制御部200は、こうした暗証番号の表示操作部120での入金者の操作入力を判読して、判定した暗証番号の一致をもって入金者を特定する。この特定に際しては、制御部200の記憶部206に記憶した入金者特定データ、即ち、カードや通帳に付加された入金者ごとの入金者個別データと、入金者ごとに予め定めた暗証番号データとを対応付けた入金者特定データが参照される。この場合、自己の口座への入金でれば、暗証番号の入力を省き、カードや通帳の挿入で済ますことができる。なお、入力判読した暗証番号とカードや通帳の入金者個別データとが一致しない場合には、表示操作部120の表示画面に、暗証番号の誤入力等の旨を表示する。
【0039】
カードや通帳に付加された入金者個別データは入金者に固有のデータとして割り付けられているが、この入金者個別データが、その入金者が入金操作を行っている現金自動取引装置100に記憶されているとは限らない。例えば、銀行本店で入金者が口座開設等すれば、入金者個別データは銀行本店の現金自動取引装置100に記憶されるものの、他の支店行の現金自動取引装置100に記憶されている訳ではない。よって、カードや通帳に付加された入金者個別データが入金者が入金操作を行った現金自動取引装置100、詳しくはその制御部200の記憶部206に蓄積されていない場合には、制御部200は、ステップS120での入金者特定に際して、本店もしくは他の支店の現金自動取引装置100に入金者個別データの紹介を行い、その紹介を受けた入金者個別データと入金者の入金操作(例えば、暗証番号入力)とで入金者を特定する。
【0040】
入金者の特定に続いては、紙幣入金を受け付けるべく、制御部200は、紙幣入金払出機構部110におけるシャッター111(図3参照)の解放制御等を行い、入金紙幣を受け取る(ステップS130)。次いで、シャッター111を閉鎖した上で受け取った入金紙幣を一枚ずつ既述したように入金経路152(図3参照)に受け入れて紙幣読取部160に搬送(入金紙幣搬送)する(ステップS140)。紙幣読取部160は、搬送されてくる入金紙幣を一枚ずつ内蔵する各種センサーにてスキャンし(ステップS150)、そのスキャン結果を真偽判定部204に出力する。真偽判定部204は、受け取った入金紙幣についてのスキャン結果を記憶部206が記憶する真偽判定データとの照合を経て(ステップS160)、それ以降のステップにて入金紙幣の真偽判定を行う。本実施例の現金自動取引装置100にて行う真偽判定の説明に先立ち、データ照合について説明する。図5は金種ごとに入金紙幣の真偽判定を行う際に用いる真偽判定データの様子を模式的に示す説明図、図6は図5の真偽判定基準データの性質を説明する説明図である。
【0041】
図5に示す真偽判定データは、現金自動取引装置100での取扱を想定している金種ごとに用意され、正規の紙幣(真紙幣)であることを示す真紙幣判定基準データと、正規の紙幣ではない非正規紙幣(偽紙幣)であることを示す非正規基準データとを含んで構成されている。真紙幣判定基準データは、新札の状態に近い紙幣であっても使い込まれた紙幣(旧紙幣)であっても真紙幣であれば当該真紙幣を特定するに足りるデータを含むほか、紙幣表面のすり切れ、汚損等を考慮した上で、真紙幣であると判定しても支障のないデータを含んで構成されている。図6にてこの様子を説明すると、図中の点線で示す第1真紙幣判定境界KFで囲まれた範囲が新札および旧紙幣について真紙幣を特定するに足りるデータ範囲であり、その外側の第2真紙幣判定境界KSと第1真紙幣判定境界KFで囲まれた範囲が真紙幣であると判定しても支障のないデータ範囲である。そして、第2真紙幣判定境界KSより外側の範囲が、偽紙幣であるとの判定や使用不可の紙幣(取引想定外の金種紙幣、例えば外国紙幣等)であるとの判定を下せるデータ範囲である。
【0042】
通常、偽紙幣は真紙幣に似せて作成されるが、その作成工程(偽紙幣作成工程)は紙幣管理の公的機関での作成工程と相違するため、偽紙幣は、偽紙幣作成工程を経ることで特有の特徴を有する。例えば、紙幣の人物像付近に真紙幣とは相違する特徴があったり、紙幣の透かし領域に真紙幣とは相違する特徴があったりする。こうした偽紙幣に特有の特徴は、ホストコンピューターHCを有する銀行本店での紙幣読取機NSCとデータ解析機NSAによるデータ解析により把握され、データ化されている。この偽紙幣に特有のデータは、図5に示した特定偽紙幣判定基準データA、データB、データC・・・としてホストコンピューターHCにて更新記憶されている。そして、ホストコンピューターHCは、定期的或いは更新記憶の都度に、特定偽紙幣判定基準データA、データB、データC・・・を各支店行の現金自動取引装置100に送信し、現金自動取引装置100は、その送信を受けた特定偽紙幣判定基準データを、真紙幣判定基準データと共に記憶部206に記憶する。これにより、真紙幣判定基準データと特定偽紙幣判定基準データとを含む真偽判定データは、予め制御部200の記憶部206に記憶されることになる。
【0043】
偽紙幣に特有の特定偽紙幣判定基準データA、データB、データC・・・は、図6に示すように、第2真紙幣判定境界KSの外側に位置する性質のデータであるほか、偽紙幣作成工程が精緻になれば第1真紙幣判定境界KFと第2真紙幣判定境界KSの間に位置する性質のデータであることも有り得る。こうした点に配慮して、本実施例の真偽判定の最先のステップS170では、ステップS150にて紙幣読取部160から入手した入金紙幣のスキャンデータと図5の真偽判定基準データ(真紙幣判定基準データと特定偽紙幣判定基準データ)との照合(ステップS160)を経て、入金紙幣のスキャンデータに特定偽紙幣判定基準データA、データB、データC・・・が含まれているか否かを判定する。ここで、入金紙幣のスキャンデータに特定偽紙幣判定基準データが含まれていないと否定判定すれば、真偽判定の境界を第2真紙幣判定境界KSに設定して、入金紙幣のスキャンデータが第2真紙幣判定境界KSの内部の領域に含まれるか否かの判定を行い(ステップS180)、肯定判定すれば、入金紙幣は真紙幣であるとして、入金者が行った入金操作に応じた入金処理を実行し(ステップS190)、本ルーチンを終了する。
【0044】
入金紙幣のスキャンデータに特定偽紙幣判定基準データが含まれていない場合には、真偽判定の境界を第2真紙幣判定境界KSに設定したことから、使い込まれた旧紙幣の真札判定の範囲が広がる。通常、一般の利用者は、こうした旧紙幣を何の悪意も意図もなく使用することから、旧紙幣の真札判定の範囲が広がることで利便性を損なうことがない。
【0045】
ステップS190での入金処理としては、例えば、入金者が表示操作部120にて指定した自己の口座或いは他人の口座への入金紙幣に相当する額の入金の他、入金操作で指定した金額に相当する額の入金、或いは両替などを例示できる。口座への入金であれば、制御部200は、入金処理データを指定口座を有する本支店行もしくは他の系列の銀行本支店行に通信部202を用いてデータ送信する。この場合、制御部200は、紙幣搬送部150を制御して入金紙幣を金種ごとに保管部170の収納庫173〜175に搬送・保管するほか、再使用に適さない入金紙幣については、リジェクト庫172に搬送・保管する。入金操作が両替であれば、制御部200は、紙幣搬送部150を制御して入金紙幣を金種ごとに保管部170に搬送・保管した上で、入金紙幣に相当する額の分だけ、小額紙幣を紙幣搬送部150を介して紙幣入金払出機構部110のリジェクトスタッカー114に搬送し、両替済み紙幣を入金者に返却する。この返却に際して、制御部200は、シャッター111の開閉制御を行う。また、上記したステップS190において、制御部200は、入金者が挿入したカードや通帳の返却を行うほか、通帳受付部140での通帳への入金記録記帳、カード受付部130での入金明細票発行なども行う。
【0046】
上記したステップS180で、入金紙幣のスキャンデータが第2真紙幣判定境界KSの外部の領域に含まれているとすれば、制御部200は、紙幣搬送部150を制御して入金紙幣をリジェクトスタッカー114に搬送して入金者に返却すると共に、カードや通帳についても返却する(ステップS200)。この入金紙幣返却は、ステップS180に先立つステップS170における偽紙幣に特有の特定偽紙幣判定基準データを含まないという判断後のものであることから、入金紙幣が取扱不可の旨を入金者に報知する。図7は特定偽紙幣判定基準データを含まない場合における入金紙幣返却の際の表示例を示す説明図である。制御部200は、表示操作部120の画像表示部に図7の表示を行うので、この表示に接した入金者は、カードや通帳および返却紙幣を受け取った上で、再度の入金紙幣投入と入金操作を行う。
【0047】
上記したステップS170で入金紙幣のスキャンデータに特定偽紙幣判定基準データA、データB、データC・・・が含まれていると肯定判定すれば、特定偽紙幣判定基準データに相当する部位の入金紙幣のスキャンデータが偽紙幣であると判定するに足りる特定偽紙幣判定基準に合致しているか否かを判定する(ステップS210)。これは、図5で模式的に説明したように特定偽紙幣判定基準データにあってもそれぞれのデータ範囲があることから、こうしたデータ範囲の周縁に属する場合と、データ範囲の内側に属する場合との区別を取るためである。ステップS210で、否定判定すれば、既述したステップS180に移行して、真紙幣判定基準の合致判定、その結果に応じた処理を行う。
【0048】
その一方、ステップS210で特定偽紙幣判定基準に合致しているとの肯定判定は、入金紙幣は偽紙幣であると判定できたことを意味するので、この場合には、ステップS120で特定した入金者についての入金状況データを作成して、当該データを記憶部206に記憶する(ステップS220)。この入金状況データは、入金操作に伴い特定された入金者のデータ、例えば、既述したカードや通帳に付加された入金者氏名や口座番号等の入金者個別データと、入金操作を行った日時データ、入金紙幣が偽紙幣であると判定した判定結果、入金紙幣の金種データとその枚数データ等を対応して作成され、その作成の都度に記憶部206に記憶されることで、記憶部206に蓄積されることになる。制御部200は、偽紙幣の判定結果を含む上記の入金状況データを記憶部206に蓄積記憶するほか、ホストコンピューターHCにもこの入金状況データを送信する。そして、ホストコンピューターHCは、それぞれの支店行から送信を受けた入金状況データを自身のデータ記憶部HCMに記憶した上で、各支店行の現金自動取引装置100からの要求に応じて、或いは、定期的に入金状況データを送信する。このため、ある支店の現金自動取引装置100で作成された偽紙幣の判定結果を含む上記の入金状況データは、本支店のそれぞれの現金自動取引装置100で共有して用いられる。
【0049】
ステップS220に続いては、記憶部206に蓄積済みの上記した過去の入金状況データを用いて、上記特定済みの入金者の入金状況の履歴を照合し(ステップS230)、その上で、過去における偽紙幣の入金履歴の有無の判定(ステップS240)と、今回の入金における偽紙幣の入金枚数の過多の判定(ステップS250)とを引き続けて行う。ステップS240における偽紙幣の入金履歴有りとする判定は、ステップS170で含まれるとされた特定偽紙幣判定基準データA、データB、データC・・・と同じ特定偽紙幣判定基準データでの入金履歴が特定済みの入金者について存在した場合の他、ステップS170で含まれるとされた特定偽紙幣判定基準データA、データB、データC・・・とは異なる特定偽紙幣判定基準データでの入金履歴が特定済みの入金者について存在した場合にも下されるようにできる。ステップS250における判定で用いられる入金枚数は、保守要員による表示操作部120の操作を経て設定される。
【0050】
上記のステップS240において偽紙幣の入金履歴無しと否定判定した場合と、ステップS250における偽紙幣の入金枚数が少ない(例えば、1〜2枚)と否定判定した場合には、ステップS200に移行し、入金紙幣の返却および取扱不可の旨の表示(図7参照)を行う。これは次の理由による。ステップS240とステップS250は、ステップS210における偽紙幣の使用判定(真偽判定)を経たものであるが、この真偽判定は、紙幣読取部160による入金紙幣のスキャン結果を用いているのであって、公的機関や銀行に属する紙幣の真偽判定を行う専門官の目視による真偽判定と相違する。よって、こうした事情を鑑み、過去に偽紙幣の入金履歴が無い場合と、過去に偽紙幣の入金履歴があったとしても入金紙幣(この場合は偽紙幣)の枚数が少ない場合には、偽紙幣の使用が恒常的であるもしくは悪意や故意の偽紙幣使用の意図があったとして後述するように取引制限を課すことは妥当性を欠くとして、ステップS200に移行し、入金紙幣の返却および取扱不可の旨の表示に留める。よって、取引の利便性を大きく損なわないようにできる。
【0051】
その反面、ステップS240において偽紙幣の入金履歴有りと肯定判定した上で、ステップS250にて偽紙幣の入金枚数が多い場合には、偽紙幣の使用が恒常的であるもしくは悪意や故意の偽紙幣使用の意図があったとして、偽紙幣の使用があったことの報知と入金紙幣の返却を行う(ステップS260)。この場合、カードや通帳については、現金自動取引装置100に一時預かりとして入金者には直接返却しないようにし、窓口にての返却を図る。図8は過去に偽紙幣の入金履歴が有った上で今回の入金にあっても偽紙幣の入金枚数が多い場合における表示報知例を示す説明図である。制御部200は、表示操作部120の画像表示部に図8の表示を行うので、入金者は、入金紙幣の返却を受けたものの、図8の表示により、窓口に出向くことを余儀なくされる。また、入金者には、現金自動取引装置100にて実際に入金された上で入金不可な紙幣についての情報(本実施例では記番号)についても知らしめることができる。通常、過去に偽紙幣の入金履歴があった上で多くの枚数の偽紙幣の入金を図ろうとする入金者には、偽紙幣の使用が恒常的である、或いは悪意や故意の偽紙幣使用の意図があったと推認されることから、こうした入金者に図8の表示報知を行うことで、偽紙幣の使用が恒常的であることや悪意や故意の偽紙幣使用の意図が現金自動取引装置100にて判明されたことを知らしめることができる。
【0052】
ステップS260での紙幣返却を行うに当たり、上記のように偽紙幣との判定を受けた入金紙幣だけの返却の他、入金された全部の紙幣を返却するようにすることもできる。また、カードや通帳の一時預かりを行う際には、カード受付部130に併設の明細書発行機器により預かり証を印刷発行するようにできる。こうすれば、カードや通帳の一時預かりに伴う利用者の不信感を軽減できる。
【0053】
以上説明したように、本実施例の紙幣取引システム10では、現金自動取引装置100での紙幣の入金を欲する入金者を特定した上で(ステップS110〜120)、入金紙幣を紙幣読取部160にてスキャンし(ステップS150)、そのスキャンデータと記憶部206に記憶済みの真偽判定基準データ(図5参照:真紙幣判定基準データと特定偽紙幣判定基準データ)との照合(ステップS160)を経て、入金紙幣のスキャンデータに特定偽紙幣判定基準データA、データB、データC・・・が含まれているか否かを判定する(ステップS170)。ここで、偽紙幣判定基準データを含んでいなければ、真紙幣判定(ステップS180)を行い、真紙幣と判定すれば、入金者の入金操作に応じた処理を行う(ステップS190)。通常、一般の利用者は、真紙幣を入金することを前提としていることから、利用者の利便性を損なわない。
【0054】
その反面、ステップS170において、入金紙幣が偽紙幣である疑いがあるとした場合には、更なる真偽判定(ステップS210)を行い、ここで偽紙幣であると判定すれば、特定済みの入金者についての入金状況を反映した入金状況データを、この真偽判定の結果(偽紙幣判定結果)を入金者の入金者特定データと対応付けて作成・蓄積する(ステップS220)。そして、特定済みの入金者の入金状況の履歴照合(ステップS230)を経て、過去における偽紙幣の入金履歴の有無の判定(ステップS240)と、今回の入金における偽紙幣の入金枚数の過多の判定(ステップS250)とを引き続けて行う。この両判定により、偽紙幣の過去の入金履歴があった上で今回の入金紙幣(入金偽紙幣)が所定の枚数であれば、今回の紙幣入金は悪意や故意を持って偽紙幣を使用する利用者によるものであるとして、これら悪意の利用者に対しては、偽紙幣の入金があった旨を認知させることで、偽紙幣の使用を思い留めさせる抑止効果を発揮できる。そして、これら悪意の利用者に対しては、カードや通帳の一時預かりにより次回以降の紙幣入金を制限するので、偽紙幣の使用を思い留めさせる抑止効果がより高まる。しかも、カード通帳の一時預かりに加え、返却紙幣(偽紙幣)を窓口に持参するよう促すので、この点からも偽紙幣使用の抑止効果が高まる。なお、窓口への返却紙幣(偽紙幣)により、偽紙幣の更なる解析ができることに加え、窓口での紙幣利用の意図(悪意の意図)の問い合わせが可能となる。回収紙幣の解析は、偽紙幣を判定する特定偽紙幣判定基準データの更なる追加更新による真偽判定の精度向上に寄与する。窓口での問い合わせにより、当該利用者の偽紙幣使用をより確実に抑止できる可能性がある。
【0055】
また、本実施例の現金自動取引装置100では、偽紙幣を判定する基準データを、偽紙幣に特徴的なデータとして作成した特定偽紙幣判定基準データとしたので、紙幣作成過程で残された特徴的な痕跡の有無の判定により、偽紙幣の判定精度が高まる。
【0056】
更に、悪意の入金者には、図8に示すように、偽紙幣の入金が有ったことを文章および記番号表示にて表示操作部120により知らしめるので、悪意の利用者による偽紙幣使用の抑止効果の実効性が高まる。
【0057】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、上記した実施例では、偽紙幣と判定した入金紙幣を返却するようにしたが、当該入金紙幣(偽紙幣)を回収して窓口で返却するようにすることもできる。こうすれば、悪意や故意を自覚している入金者に対する偽紙幣使用の抑止効果がより高まる。なお、入金紙幣(偽紙幣)の回収に際しては、カード受付部130に併設の明細書発行機器により預かり証を印刷発行する。
【0058】
また、偽紙幣の悪意の利用者に表示操作部120にて偽紙葉入金があったことを記番号の表示にて知らしめるようにしたが、紙幣読取部160がスキャンしたスキャン画像を表示操作部120に表示するようにすることもできる。こうすれば、実際に入金された入金紙幣が非正規な偽紙幣であることのみならず、その偽紙幣のスキャン画像が記録されたことを悪意の利用者に認知させることができる。この結果、悪意の利用者による偽紙幣使用の抑止効果が高まる。
【符号の説明】
【0059】
10…紙幣取引システム
100…現金自動取引装置
110…紙幣入金払出機構部
111…シャッター
112…紙幣投入ホッパー
114…リジェクトスタッカー
116…一時保管庫
120…表示操作部
130…カード受付部
140…通帳受付部
150…紙幣搬送部
152…入金経路
154…払出経路
155…紙幣通貨センサー
156…切換ゲート
160…紙幣読取部
170…保管部
172…リジェクト庫
173〜175…収納庫
200…制御部
202…通信部
204…真偽判定部
206…記憶部
208…入金者特定部
210…データ処理部
212…入出金処理部
HC…ホストコンピューター
HCT…通信部
HCM…データ記憶部
NS…偽紙幣
NW…インターネット
NSA…データ解析機
NSC…紙幣読取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣入金に関する取引を行う入金者紙幣取引装置であって、
紙幣の入金を欲する入金者からの紙幣入金を受け入れる入金部と、
前記入金者が入金に伴って行う入金操作を受け付ける入金操作部と、
前記入金部に対しての紙幣入金と前記入金操作部での入金操作とを行った入金者を特定する入金者特定部と、
前記入金部に入金された入金紙幣をスキャンして入金紙幣データを作成するスキャン部と、
正規の紙幣ではない非正規紙幣であることを示す非正規基準データを含む紙幣判定データを記憶する紙幣データ記憶部と、
前記スキャン部にて作成済みの前記入金紙幣データを、前記紙幣データ記憶部の前記紙幣判定データと照合して、前記入金紙幣の真偽を判定する真偽判定部と、
入金者についての入金状況データを、前記入金特定部で特定した入金者の入金者特定データと前記真偽判定部による真偽判定の結果とを対応付けて作成して蓄積する入金者データ作成部と、
前記真偽判定部が前記入金紙幣は前記非正規紙幣であるとする非正規判定を下せば、前記入金者データ作成部の作成蓄積した前記入金状況データを参照して前記特定した入金者についての過去の前記非正規判定の有無を判定し、過去において前記非正規判定の履歴の有無に応じて前記特定した入金者に対して異なる報知処理を実行する非正規入金処理部とを備える
紙幣取引装置。
【請求項2】
前記非正規入金処理部は、過去において前記非正規判定の履歴がある前記特定した入金者に対しては、前記報知処理として、前記非正規判定とされた旨の報知と、前記特定した入金者の次回以降の紙幣入金の制限とを実行する請求項1に記載の紙幣取引装置。
【請求項3】
前記非正規入金処理部は、前記報知処理に加え、前記入金部に受け入れた入金紙幣を回収する請求項1または請求項2に記載の紙幣取引装置。
【請求項4】
前記紙幣判定データに含まれる前記非正規基準データは、前記非正規紙幣について特徴的なデータとして作成されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の紙幣取引装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の紙幣取引装置であって、
前記入金者データ作成部は、前記入金状況データに、前記真偽判定部が前記非正規判定を下した際における該判定の対象となった非正規入金紙幣の枚数を含めて作成し、
前記非正規入金処理部は、前記入金者データ作成部の作成した前記入金状況データにおける前記非正規入金紙幣の枚数が予め定めた所定枚数を超えると、前記特定した入金者についての過去の前記非正規判定の有無を判定する
紙幣取引装置。
【請求項6】
前記非正規入金処理部が前記特定した入金者についての過去の前記非正規判定の有無を判定する場合の前記所定枚数は、可変設定される請求項5に記載の紙幣取引装置。
【請求項7】
前記正規入金処理部は、前記正規入金処理として、前記入金操作部でなされた入金操作に応じた口座への入金および/または両替支払いを実行する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の紙幣取引装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の紙幣取引装置であって、
更に、
前記入金者に対して画像提供を行う表示部を備え、
前記非正規入金処理部は、
前記入金部に入金された入金紙幣は、前記非正規判定とされた旨を報知する画像を前記表示部にて表示する
紙幣取引装置。
【請求項9】
前記非正規入金処理部は、前記スキャン部が前記非正規入金紙幣について作成したスキャン画像を前記表示部にて表示する請求項8に記載の紙幣取引装置。
【請求項10】
前記非正規入金処理部は、前記スキャン部が前記非正規入金紙幣をスキャンして取得した記番号の画像を前記表示部にて表示する請求項8または請求項9に記載の紙幣取引装置。
【請求項11】
紙幣取引システムであって、
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の紙幣取引装置と管理装置とをデータ送受信可能に備え、
前記管理装置は、
正規の紙幣ではない非正規紙幣であることを示す非正規基準データを含む紙幣判定データを更新しつつ記憶する管理側紙幣データ記憶部と、
該管理側紙幣データ記憶部の記憶した前記紙幣判定データを前記紙幣取引装置に送信する送信部とを備え、
前記紙幣取引装置は、
前記紙幣データ記憶部に前記紙幣判定データを記憶するに当たり、前記送信部から前記紙幣判定データの送信を受ける
紙幣取引システム。
【請求項12】
請求項11に記載の紙幣取引システムであって、
前記紙幣取引装置は、前記入金者データ作成部にて作成した前記入金状況データを前記管理装置に送信し、
前記管理装置は、前記送信を受けた前記入金状況データを、他の紙幣取引装置に送信する
紙幣取引システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−181987(P2010−181987A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23262(P2009−23262)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】