説明

紙幣取扱装置

【課題】入金紙幣をより正確に鑑別し、後鑑別作業を低減することのできる紙幣取扱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】紙幣取扱機構1に、紙幣を入出金する入出金口20と、入金紙幣を、正券、偽券及び疑券に鑑別する紙幣鑑別部30と、正券を収納する紙幣還流庫40と、偽券を収納する偽券収納庫61と、疑券を収納する疑券収納庫62と、正券の一時収納及び繰り出しを許容する第1の一時保留庫31と、疑券の一時収納及び繰り出しを許容する第2の一時保留庫51及び第3の一時保留庫52と、紙幣を、各保留部(31,40,50,60)及び入出金口20の間を搬送する搬送路(11〜18,22,23,33,71〜74,76)と、搬送路による搬送動作を制御する紙幣取扱機構制御部1aとを備え、各収納部、第2の一時保留庫51、並びに第3の一時保留庫52間の搬送路で構成する紙幣搬送経路に、紙幣鑑別部30を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば金融機関などで使用される現金自動取引装置に実装されるような紙幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関等でユーザに対する入出金に利用される現金自動取引装置(以下、ATMという)は、紙幣の入出金を行うための紙幣取扱装置を内蔵している。
このような紙幣取扱装置は、入金時に、入出金口から繰り出された入金紙幣の金種・真偽を鑑別して、入金した金額を計数する。この際、真正な紙幣である正券と鑑別された紙幣は一時保管庫に保管され、その他の紙幣は入出金口に返却される。この動作を「入金制御処理(入金計数処理とも言う)」と称する。
【0003】
その後、ユーザが入金金額を確認すると、紙幣取扱装置は、一時保管庫に保管していた入金紙幣を、金種ごとに環流用の保管庫(以下、環流庫と称する)に収納する。これと併せて、ATMは、入金金額、口座情報などを、ホストコンピュータに通知する。この動作を「入金収納処理」と称する。
上記「入金制御処理」と「入金収納処理」を総称して「入金取引処理」と称する。
【0004】
このような入金取引を実行する紙幣取扱装置について、例えば、環流庫、偽券収納庫、疑券収納庫及び一時保管庫を備えた紙幣取扱装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
環流庫は、環流に用いる紙幣を収納するための収納庫であり、金庫部に内蔵されている。偽券収納庫は、金庫部外に設けられ、紙幣鑑別部によって真正な紙幣と判断されなかった偽券を収納する収納庫である。
【0006】
疑券収納庫は、鑑別結果が疑わしい紙幣を収納する収納庫である。一時保管庫は、還流庫への紙幣の収納過程において、一時的に紙幣を収納するための収納庫である。
【0007】
この紙幣取扱装置は、入金取引時、紙幣鑑別部によって鑑別した入金紙幣を、紙幣取扱装置において一時保管庫に一旦収納する。その後、一時保管庫に収納した入金紙幣を順番に繰り出して、入金取引時に偽券と鑑別した入金紙幣は偽券収納庫へ搬送して収納し、正券と鑑別した入金紙幣は還流庫へ搬送して収納する。そして、鑑別結果が疑わしい入金紙幣を疑券収納庫に搬送して収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−92422
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、紙幣取扱装置では、偽券や疑券を鑑別する際の鑑別基準における閾値は、偽券を受け付けないという安全の観点から、状態の悪い入金紙幣も偽券や疑券として扱うように設定されることが多い。
【0010】
したがって、特許文献1で提案された紙幣取扱装置では、一旦偽券や疑券と鑑別されて各収納部に収納された入金紙幣に、正券が多く混ざって収納されるおそれがあった。
【0011】
通常、偽券収納部や疑券収納部に収納された紙幣は、回収後、人の手や目、または専用の鑑別装置で、詳しく後鑑別する必要がある。しかし、このように偽券収納部や疑券収納庫に収納された紙幣には、正券が多く混ざっている可能性があり、上記後鑑別に要する手間が非常に多くかかっていた。
【0012】
そのため本発明は、かかる課題を考慮して、入金紙幣をより正確に鑑別し、後鑑別作業を低減することのできる紙幣取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、紙幣を入出金する入出金口部と、入金紙幣を、真正な紙幣である正券、真正な紙幣でない偽券、及び疑わしい疑券に鑑別する紙幣鑑別部と、前記正券を収納する正券収納部と、前記偽券を収納する偽券収納部と、前記疑券を収納する疑券収納部と、前記正券を前記正券収納部に収納する前の一時収納及び繰り出しを許容する第1の一時保留部と、前記疑券を前記疑券収納庫に収納する前の一時収納及び繰り出しを許容する第2の一時保留部、及び第3の一時保留部と、前記紙幣を、各収納部、各一時保留部及び前記入出金口部の間を搬送する搬送路と、前記搬送路による搬送動作を制御する搬送制御部とを備え、前記各収納部、前記第2の一時保留部、並びに前記第3の一時保留部間の前記搬送路で構成する紙幣搬送経路に、前記紙幣鑑別部を配置した紙幣取扱装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成により、入金紙幣をより正確に鑑別し、後鑑別作業を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】現金自動取引装置の斜視図。
【図2】紙幣取扱装置の概略構成図。
【図3】保留部DBのデータ構成図。
【図4】現金自動取引装置の機能ブロックを示す説明図。
【図5】紙幣取扱装置の構成を示す側面から見た説明図。
【図6】紙幣取扱装置の動作モードを示す説明図。
【図7】入金制御処理のフローチャート。
【図8】入金収納処理のフローチャート。
【図9】出金制御処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、紙幣取扱装置に対応する紙幣取扱機構1を実装した現金自動取引装置101の外観の斜視図を示し、図2は現金自動取引装置101における制御ユニット201のブロック図を示している。
【0017】
図3は保留部DB206のデータ構造についての説明図を示し、図4は紙幣取扱機構1の制御関係のブロック図を示し、図5は本発明を適用した紙幣取扱機構1の構成を示す側面から見た説明図を示している。
【0018】
この現金自動取引装置101は、カード、紙幣、明細票を媒体とし、利用者の預け入れ、支払い、振り込みなどの処理を行う装置である。
現金自動取引装置101の上部には、利用者の通帳を処理し、取引明細を印字して放出する通帳処理機構106と、利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理機構107を備えている。
【0019】
この通帳処理機構106はスロット106aと連通し、スロット106aから投入された利用者の通帳を処理し、取引明細を印字して放出する。
カード・明細票処理機構107はスロット107aと連通し、スロット107aから投入された利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出する。
【0020】
現金自動取引装置101の装置前方上部には、取引の内容を表示するとともに、利用者による入力操作を許容する顧客操作部104を備えている。
現金自動取引装置101の紙幣取扱機構1の左側には、硬貨処理装置105を備えている。この硬貨処理装置105は、現金自動取引装置101の装置前方上部に備えたシャッタ105aに連通し、硬貨の入出金取引処理を行う装置である。なお、この硬貨処理装置105を備えない現金自動取引装置101であってもよい。
【0021】
また、現金自動取引装置101は、下段右側に紙幣取扱機構1を備えている。
紙幣取扱機構1は、現金自動取引装置101の装置前方上部に備えたシャッタ20aに連通する入出金口20(入出金口部に対応)を有し、紙幣の入金取引および出金取引を処理する装置である。
【0022】
上述したような構成の現金自動取引装置101には、全体の処理を制御する制御ユニット201を有している。
制御ユニット201には、搬送制御部に対応する紙幣取扱機構制御部1a(図4)を有する紙幣取扱機構1、カード・明細票処理機構107、電源部201、顧客操作部104、保留部DB206、本体制御部207、バス207a、インタフェース部207b、係員操作部207c、及び、外部記憶装置207dが納められている。
【0023】
制御ユニット201に納められた紙幣取扱機構1、カード・明細票処理機構107、電源部201、顧客操作部104、保留部DB206、インタフェース部207b、係員操作部207c、及び、外部記憶装置207dは、バス207aを介して本体制御部207に接続され、本体制御部207の制御によって動作する構成である。
なお、本体制御部207は、上記の他に、インタフェース部207bを介して図示しないホストコンピュータと接続されており、必要なデータの送受信を行うことができる。
【0024】
顧客操作部104は、タッチパネルを備え、タッチパネルに操作内容を表示し、利用者による入力操作を受け付ける操作部である。例えば、預入、引出し、振込み等の取引種別の選択入力、暗証暗号、金額等の入力操作を受け付けて、その入力信号を本体制御部207に送信する。
【0025】
係員操作部207cは、銀行係員等が現金自動取引装置101を運用、保守を行うための操作部であり、銀行係員が紙幣カセットのセットのための操作、紙幣枚数のセットのための入力部、装置状態、運用モード、障害個所等の表示のための表示部等を有している。
【0026】
紙幣取扱機構1は、上述したように、本体制御部207に接続されている。詳しくは、紙幣取扱機構1の紙幣取扱機構制御部1aがバス207aを介して本体制御部207に接続されている。そして、紙幣取扱機構1は、本体制御部207から紙幣取扱機構制御部1aに送信された制御信号に基づいて処理動作が制御されている。
【0027】
なお、紙幣取扱機構1が本体制御部207によって制御される処理動作は、入金制御処理(入金計数処理とも言う)及び入金収納処理で構成する入金取引処理、及び出金取引処理等がある。
なお、出金取引処理は、取引の種別が払出で、利用者から指定された金額、金種の紙幣を該当する金種別の紙幣環流庫から繰り出し、入出金口部に出金する処理動作である。
【0028】
また、入金制御処理は、取引の種別が預入で、利用者が入出金口部に投入した紙幣を鑑別するとともに計数する処理動作であり、入金収納処理は、鑑別及び入金計数の結果、利用者から確認の入力がされたとき、金種別の紙幣環流庫に入金紙幣を収納する処理動作である。
【0029】
本体制御部207は、顧客操作部104を操作した顧客から取引の種別として預入が選択入力された入力信号を受け付けた際の処理動作として、まず入金制御処理を指示し、鑑別及び入金計数の結果の確認入力操作を受け付けた際に、入金収納処理を指示する構成である。
【0030】
制御ユニット201において本体制御部207に接続されている保留部DB206について、図3とともに説明する。
なお、保留部DB206のデータ構造について説明する説明図を示す図3のうち、図3(a)はアドレス情報管理データ206aについて説明する説明図であり、図3(b)は鑑別結果管理データ206bについて説明する説明図である。
【0031】
保留部DB206は、第1の一時保留部に対応する第1の一時保留庫31,リジェクト庫32,万円環流庫41,五千円環流庫42,千円環流庫43,第2の一時保留部に対応する第2の一時保留庫51,第3の一時保留部に対応する第3の一時保留庫52,偽券収納部に対応する偽券収納庫61及び疑券収納部に対応する疑券収納庫62(以下において、これらを総称して保留部という)に収納する紙幣及びその紙幣の鑑別結果を管理するものである。そして、保留部DB206は、アドレス情報管理データ206aと、鑑別結果管理データ206bの2種類で構成している。
【0032】
アドレス情報管理データ206aは、鑑別結果が格納されるメモリのアドレス情報を、各保留部に収納する紙幣ごとに対応付けて管理している。
例えば、図3(a)に示すように、第1の一時保留庫31に収納された1枚目の紙幣に対応するデータはアドレス「0001」に管理されている。
【0033】
なお、各保留部における1枚目とは、各保留部に最初に搬入された紙幣を意味する。各保留部は、後から収納された紙幣が先に搬出されるため、アドレス情報管理データ206aはスタック型で紙幣データを管理している。つまり、各保留部に紙幣が収納される度に、アドレスの格納領域は「1枚目、2枚目・・・n枚目」と増加していく。これに対して、紙幣が搬出される度に、アドレスの格納領域は「n枚目・・・2枚目、1枚目」と低減する。このようにアドレスの格納領域は、各保留部にスタックポインタ、即ち各保留部に何枚の紙幣が保管されているかを示すデータによって管理している。
【0034】
また、アドレス情報管理データ206aは、鑑別結果管理データ206bのうち、空いている領域のアドレス情報も併せて管理している。空きアドレス領域には、「1枚目、2枚目・・・n枚目」という概念は存在しないが、本実施例では、データベース構造の簡素化を図るため、各保留部のデータと同様、スタック型で管理している。
【0035】
鑑別結果管理データ206bは、各紙幣の鑑別結果、及び出所情報を管理している。
本実施例において、鑑別結果として、金種、真偽、正損、及び表裏を設定して記憶している。また、出所情報とは、紙幣を搬入した顧客を特定するための情報であり、本実施例では、入金処理時にキャッシュカード等を通じて取得された口座番号を用いている。
【0036】
なお、管理者によって紙幣取扱機構1に収納された紙幣など口座番号等を特定できない紙幣については、出所情報無しとしてもよいし、「不明」「偽」「疑」、または収納されていた環流庫を特定する情報を、出所情報として記録してもよい。
【0037】
鑑別結果管理データ206bは、紙幣ごとにこれらの情報を管理する。例えば、図3(b)に示すように、アドレス「0001」で代表されるメモリ領域には、「金種=1万円、真偽=真、正損=正、表裏=表、出所情報=0000001」という鑑別結果を記憶している。ここでは、図示の便宜上、記憶されるべき鑑別結果を文字で表現しているが、各項目のデータは、それぞれ符号化して記憶されている。
【0038】
なお、本実施例では、鑑別結果として記憶されている「真偽」、「正損」によって鑑別紙幣を、真正な紙幣であると鑑別された正券、真正な紙幣でないと鑑別された偽券、鑑別結果が疑わしいと鑑別された疑券、及びそれ以外の不明券に鑑別している。
【0039】
まず、「真偽」の「真」は、鑑別紙幣を紙幣鑑別部30が真正な紙幣であると鑑別したことを示している。これに対し、「真偽」の「偽」は、鑑別紙幣を紙幣鑑別部30が真正な紙幣でないと鑑別したことを示している。
【0040】
次に「正損」の「正」は、鑑別紙幣を紙幣鑑別部30が正しく鑑別したことを示している。これに対し、「正損」の「損」は、鑑別紙幣がスキューや耳折れによって紙幣鑑別部30が正しく鑑別しなかったことを示している。
なお、鑑別結果管理データ206bに格納された「?」は、例えば、鑑別不能であるような場合に、格納するデータがないことを示している。
【0041】
このような鑑別結果管理データ206bに格納された鑑別結果に基づいて制御ユニット201は、「真偽」が「真」且つ「正損」が「正」である鑑別紙幣を、真正な紙幣である正券と鑑別するとともに、「真偽」が「偽」且つ「正損」が「正」である鑑別紙幣を、真正な紙幣でない偽券と鑑別する。
これに対し、「真偽」を問わず、「正損」が「損」である鑑別紙幣は、疑券と鑑別している。さらには、「?」が格納された紙幣は、不明券と鑑別する。
【0042】
なお、本実施例では、鑑別結果として「不明」または「偽」「疑」という出力を許容するものとした。例えば、真偽鑑別によって、明確に正券または偽券と鑑別できない紙幣については、「不明券」または「疑券」という結果が出力され、鑑別結果管理データ206bに登録される。
【0043】
このようなデータ構成である入出金口206において、紙幣の搬送が行われた場合のデータの管理について説明する。図3中に例示するように、第1の一時保留庫31の1枚目(アドレス情報:0001)、2枚目(アドレス情報:0002)および五千円環流庫42の1枚目(アドレス情報:0003)に紙幣が収納されている場合について説明する。
【0044】
上述したように、各紙幣についての鑑別結果は、アドレス情報管理データ206aで示されるアドレスに対応したメモリ領域に格納して管理している。
この状態において、第1の一時保留庫31の2枚目の紙幣(アドレス情報:0002)は鑑別の結果、偽券と鑑別されて偽券収納庫61に収納され、第1の一時保留庫31の1枚目の紙幣(アドレス情報:0001)は万円環流庫41に収納されるとする。
【0045】
アドレス情報管理データ206aでは、これら紙幣の搬送に伴って、第1の一時保留庫31の2枚目の領域に格納されていたアドレス情報「0002」を、偽券収納庫61の1枚目の領域に移行する。そして、第1の一時保留庫31の1枚目の領域に格納されていたアドレス情報「0001」を、万円環流庫41の1枚目の領域に移行する。
【0046】
次に、五千円環流庫42に収納されていた紙幣が入出金口20へ出金された場合について説明する。このように、各環流庫に収納されていた紙幣が出金された場合には、各保留部間の搬送とは異なり、出金後のその紙幣の鑑別結果の管理が不要となる。
【0047】
したがって、出金された紙幣に相当するアドレス「0003」に格納されているデータを鑑別結果管理データ206bから削除するとともに、アドレス情報管理データ206aでは、空いたアドレス情報「0003」を、空きアドレスを管理する領域に移行する。
【0048】
このように、本実施例の保留部DB206では、アドレス情報を移行することにより、鑑別結果のデータ全体を移行することなく、保留部間での紙幣の搬送に伴って鑑別結果を比較的容易に管理することができる。
【0049】
なお、保留部DB206は、ここで例示した構造に限定されるものではなく、各保留部の紙幣に対応付けて鑑別結果を管理可能な種々の構造を適用可能である。例えば、各保留部の紙幣に対応付けられた固定の領域を用意し、鑑別結果を示すデータ自体を移動させてもよい。本実施例では、各保留部における紙幣の配列と対応付けて鑑別結果を管理する態様を例示したが、両者の対応付けが可能であれば、いかなる方法で鑑別結果を管理してもよい。
【0050】
次に、紙幣取扱機構1の制御構造について、紙幣取扱機構1の制御関係のブロック図を示す図4とともに説明する。
紙幣取扱機構1に設けられた紙幣取扱機構制御部1aは、装置の本体制御部207とバス207aを介して接続され、本体制御部207からの指令および紙幣取扱機構1の状態検出に応じて紙幣取扱機構1の制御を行い、また、紙幣取扱機構1の状態を、必要に応じて本体制御部207に送る。
【0051】
紙幣取扱機構1の中では、各ユニット(紙幣鑑別部30、第1の一時保留庫31、リジェクト庫32、各搬送路(11〜18,22,23,33,71〜74,76)、入出金口20、正券収納部に対応する紙幣還流庫40、疑券一時保留庫50、紙幣収納庫60)の駆動モータや電磁ソレノイドやセンサと接続され、各取引に応じて、センサで状態を監視しながら、アクチュエータを駆動制御する。
【0052】
続いて、紙幣取扱機構1の構成について、本発明を適用した紙幣取扱機構1の構成を示す側面から見た説明図である図5とともに説明する。
紙幣取扱機構1の上部には、入出金口20、紙幣鑑別部30、第1の一時保留庫31、入出金口20等の主に利用者との紙幣の授受に必要な機構が集められている。
【0053】
詳しくは、利用者が紙幣の投入・取り出しを行う入出金口20は紙幣取扱機構1の上部前方(図5右側上段)に配置され、紙幣取扱機構1の後部上段(図5左側上段)に利用者が入金した紙幣を取引成立までの間一旦収納するとともに、繰り出し可能な第1の一時保留庫31が配置されている。
そして、入出金口20と第1の一時保留庫31との間に、紙幣取扱機構1の中央部に紙幣の鑑別を行う紙幣鑑別部30が配置されている。
【0054】
入出金口20は、シャッタ20aを介して、上から投入された紙幣を下方へ繰り出す紙幣繰出部20bと、下方から搬送されてきた紙幣を集積する紙幣集積部20cとが、この順で前後に配置されて構成されている。
【0055】
紙幣鑑別部30は前方から後方へ搬送する紙幣、および後方から前方へ搬送する紙幣のどちらであっても金種鑑別、真偽鑑別、正損鑑別及び表裏鑑別を行うことができ、紙幣をリジェクトか否か鑑別できる構成である。つまり、紙幣鑑別部30は、双方向に搬送される紙幣を鑑別できる構成である。
【0056】
入金取引や出金取引に供しないリジェクト紙幣、もしくは顧客の抜き取り忘れた取忘紙幣を収納するリジェクト庫32は、第1の一時保留庫31の下段に配置されている。
【0057】
紙幣取扱機構1の下部には、前面側(図5右側下段)から順に、紙幣還流庫40(41〜43)と、疑券一時保留庫50(51,52)と、紙幣収納庫60(61,62)とが配置されている。
【0058】
紙幣取扱機構1の下部後面側(図5左側下段)に配置された紙幣収納庫60は、偽券を収納する偽券収納庫61と、疑券を収納する疑券収納庫62とが、高さ方向に積み重なった状態で構成されている。
【0059】
紙幣収納庫60の前側に配置された疑券一時保留庫50は、疑券収納庫62に収納する前に一旦収納するとともに、繰り出し可能な一時保管庫であり、第2の一時保留庫51と、第3の一時保留庫52とが、高さ方向に積み重なった状態で構成されている。
【0060】
疑券一時保留庫50の前側には、入金された紙幣を金種別に上下方向に積層させて収納し繰り出しする紙幣還流庫40が前後に並べて配置されている。
なお、本実施例において紙幣還流庫40は、一万円札を収納して繰り出す万円環流庫41と、五千円札を収納して繰り出す五千円環流庫42と、千円札を収納して繰り出す千円環流庫43とで構成されている。
【0061】
入出金口20等が配置された紙幣取扱機構1の上段と、紙幣還流庫40や疑券一時保留庫50が配置された紙幣取扱機構1の下段との間には、紙幣を搬送するための搬送路が配置されている。
【0062】
搬送路について詳述すると、紙幣取扱機構1は、入出金口20の下方に配置され、振分ゲート19aから紙幣鑑別部30まで搬送する第1紙幣搬送路11、紙幣鑑別部30内部を紙幣搬送する第2紙幣搬送路12、紙幣鑑別部30の後側から紙幣鑑別部30上部の振分ゲート19bまで搬送する第3紙幣搬送路13、振分ゲート19bから紙幣鑑別部30上部で折り返して第1の一時保留庫31前側の振分ゲート19cまで搬送する第4紙幣搬送路14、振分ゲート19cから疑券一時保留庫50の上部後端の振分ゲート19dまで搬送する第5紙幣搬送路15、疑券一時保留庫50の上部後側で振分ゲート19dから振分ゲート19eまでを搬送する第6紙幣搬送路16、及び紙幣還流庫40の上部の振分ゲート19dから紙幣取扱機構1を縦断し、第1紙幣搬送路11の前端の振分ゲート19aまで搬送する第7紙幣搬送路17とを備えている。
【0063】
なお、第5紙幣搬送路15の下端と、第6紙幣搬送路16の前端と、第7紙幣搬送路17の後端とは、振分ゲート19dを介して三叉路状に接続されている。
【0064】
そして、第1紙幣搬送路11と第7紙幣搬送路17との境界部分には、入出金口20から入金された入金紙幣を搬送する入金搬送路22が振分ゲート19aを介して接続されている。
【0065】
同様に、第3紙幣搬送路13と第4紙幣搬送路14との境界部分には、入出金口20から出金する出金紙幣や返却する不明券を搬送する出金搬送路23が振分ゲート19bを介して接続されている。
【0066】
さらに、第4紙幣搬送路14と第5紙幣搬送路15との境界部分には、紙幣還流庫40への収納紙幣及び紙幣還流庫40からの繰出紙幣を搬送する一時収納搬送路18が振分ゲート19cを介して接続されている。
【0067】
また、第6紙幣搬送路16の後端には、疑券一時保留庫50への収納紙幣及び疑券一時保留庫50からの繰出紙幣を搬送する第1分岐搬送路74が振分ゲート19eを介して接続されるとともに、紙幣収納庫60へ紙幣を搬送する第2分岐搬送路76及び入出金口20に不明券を搬送するリジェクト搬送路33が振分ゲート19fを介して接続されている。
【0068】
なお、第1分岐搬送路74は、第2の一時保留庫51への収納紙幣及び第2の一時保留庫51からの繰出紙幣を搬送する部分と、そこから延長され、第3の一時保留庫52への収納紙幣及び第3の一時保留庫52からの繰出紙幣を搬送する第1分岐搬送路延長部分75とを有している。
【0069】
同様に、第2分岐搬送路76は、偽券収納庫61に紙幣を搬送する部分と、そこから延長され、疑券収納庫62へ紙幣を搬送する第2分岐搬送路延長部分77とを有している。
【0070】
さらに、第7紙幣搬送路17には、振分ゲートを介して紙幣還流庫40に紙幣を搬送する環流搬送路が接続されている。詳しくは、万円環流庫41に紙幣を搬送する第1環流搬送路71が振分ゲート19gを介して接続され、五千円環流庫42に紙幣を搬送する第2環流搬送路72が振分ゲート19hを介して接続され、千円環流庫43に紙幣を搬送する第3環流搬送路73が振分ゲート19iを介して接続されている。そして、これらの機構部はユニット化されている。
【0071】
なお、図5において搬送路の矢印の方向は紙幣を搬送する方向を示している。
したがって、搬送路の両端に矢印がある場合は、双方向に紙幣を搬送する双方向搬送路であることを示している。具体的には、第1紙幣搬送路11、第2紙幣搬送路12、第3紙幣搬送路13、第4紙幣搬送路14、第5紙幣搬送路15、第6紙幣搬送路16、第7紙幣搬送路17、一時収納搬送路18、第1環流搬送路71、第2環流搬送路72、第3環流搬送路73、第1分岐搬送路74及び第2分岐搬送路76は双方向に紙幣を搬送する双方向搬送路で構成している。
【0072】
紙幣取扱機構1は、上述の機構部と、紙幣取扱機構制御部1aとで構成されている。
この紙幣取扱機構1は、上述したように,各ユニットに駆動モータや電磁ソレノイドやセンサなど(図示せず)を有している。紙幣取扱機構1は、紙幣取扱機構制御部1aにより、後述の取引に応じてセンサで状態を監視しながら、アクチュエータ(駆動モータや電磁ソレノイド等)を駆動制御している。
【0073】
疑券一時保留庫50は入金取引や出金取引に供しない紙幣を収納する為のリジェクト庫や還流庫として用いてもよい。
また、紙幣収納庫60は還流庫として用いてもよい。
【0074】
また、紙幣還流庫40に紙幣収納庫60あるいは疑券一時保留庫50を備えてもよい。
さらにまた、疑券一時保留庫50と紙幣収納庫60とを入れ替えて用いてもよい。
【0075】
このように構成された紙幣取扱機構1を実装した現金自動取引装置101は、入金取引処理、出金取引処理、紙幣補充処理、紙幣回収処理、取り忘れ回収取引処理といった処理を実行することができる。
【0076】
まず、紙幣取扱機構1を実装した現金自動取引装置101による入金取引処理について図6,7とともに説明する。
なお、図6は紙幣取扱機構1の動作モードの説明図を示しており、図7は入金取引処理のフローチャートを示している。
【0077】
入金取引処理は、利用者が顧客操作部104を操作して、「預け入れ」や「現金での振り込み」等の入金を伴う取引を選択した時に、制御ユニット201が実行する処理である。
【0078】
なお、少なくとも一部の処理を、紙幣取扱機構1の紙幣取扱機構制御部1aで実現するものとしてもよい。
入金取引処理が開始されると、制御ユニット201は、キャッシュカードから顧客の口座番号など取引に必要な情報を読み込む(ステップS10)。
【0079】
次に、入出金口20から入金搬送路22を介して紙幣を取り込み(ステップS11)、第1紙幣搬送路11及び第2紙幣搬送路12で搬送した紙幣を紙幣鑑別部30で鑑別する(ステップS12)。そして、制御ユニット201は、その鑑別結果に基づき紙幣鑑別部30より下流側の紙幣の搬送を制御する(ステップS13)。
【0080】
詳しくは、制御ユニット201は、紙幣鑑別部30で真正な紙幣であると鑑別された正券を、第3紙幣搬送路13、第4紙幣搬送路14及び一時収納搬送路18を搬送して第1の一時保留庫31に一旦収納する制御を実行する。
【0081】
また、制御ユニット201は、紙幣鑑別部30で真正な紙幣でないと鑑別された偽券を、第3紙幣搬送路13、第4紙幣搬送路14、第5紙幣搬送路15、第6紙幣搬送路16及び第2分岐搬送路76を搬送して偽券収納庫61に収納する制御を実行する。
【0082】
さらに、制御ユニット201は、紙幣鑑別部30で鑑別結果が疑わしいと鑑別された疑券を、第3紙幣搬送路13、第4紙幣搬送路14、第5紙幣搬送路15、第6紙幣搬送路16及び第1分岐搬送路74を搬送して第2の一時保留庫51に一旦収納する制御を実行する。
【0083】
さらにまた、制御ユニット201は、紙幣鑑別部30で紙幣であることが鑑別できないような不明券を、第3紙幣搬送路13及び出金搬送路23を搬送して入出金口20に搬送して、利用者に返却する制御を実行する。
なお、制御ユニット201は、上記処理と併せて、計数結果を顧客操作部104に表示する(ステップS14)。
【0084】
そして、ステップS13で第2の一時保留庫51に疑券を収納し、利用者からの入金指示の入力がない場合(ステップS17:NO)、制御ユニット201は、第2の一時保留庫51から一旦収納した疑券を繰り出し、第6紙幣搬送路16、第7紙幣搬送路17、第1紙幣搬送路11、及び第2紙幣搬送路12を搬送して紙幣鑑別部30で再鑑別する(搬送制御に対応するステップS15)。
【0085】
制御ユニット201は、図6に示すように、ステップS13で一旦疑券と鑑別されて第2の一時保留庫51に収納された紙幣を紙幣鑑別部30の再鑑別結果に基づいて搬送制御する(再鑑別搬送制御に対応するステップS16)。
【0086】
詳しくは、制御ユニット201は、ステップS13で一旦疑券と鑑別されて第2の一時保留庫51に収納された紙幣が紙幣鑑別部30の再鑑別によって真正な紙幣であると鑑別された正券は、第3紙幣搬送路13、第4紙幣搬送路14及び一時収納搬送路18を搬送して第1の一時保留庫31に一旦収納する。
【0087】
同様に、制御ユニット201は、紙幣鑑別部30の再鑑別によっても、鑑別結果が疑わしいと鑑別された疑券や不明券は、第3紙幣搬送路13、第4紙幣搬送路14、第5紙幣搬送路15、第6紙幣搬送路16、第1分岐搬送路74及び第1分岐搬送路延長部分75を搬送して第3の一時保留庫52に一旦収納する。
【0088】
また、制御ユニット201は、紙幣鑑別部30の再鑑別によって真正な紙幣でないと鑑別された偽券を、第3紙幣搬送路13、第4紙幣搬送路14、第5紙幣搬送路15、第6紙幣搬送路16及び第2分岐搬送路76を搬送して偽券収納庫61に収納する。なお、この処理過程における鑑別結果は、保留部DB206に格納するとともに、制御ユニット201は最新の計数結果を顧客操作部104に表示する(ステップS14)。
【0089】
そして、顧客操作部104に表示された金額を確認した利用者によって入金指示が入力されると(ステップS17:YES)、制御ユニット201は後述する入金収納処理を行う(ステップS20)。
なお、この入金取引処理のうちステップS10〜S17までを入金制御処理としている。
【0090】
そして、上記入金収納処理後に、制御ユニット201は、入金制御処理(ステップS10〜S17)において不明券、偽券、疑券が発見された場合(ステップS40:YES)、所定の通知先、例えば、金融機関の責任者などに対して、ネットワークその他の通信回線を通じて、通知を行う(ステップS41)。
【0091】
逆に、入金制御処理(ステップS10〜S17)において、不明券、偽券、疑券が発見されていない場合(ステップS40:NO)、制御ユニット201は、キャッシュカードを返却して(ステップS42)、入金取引処理を完了する。
【0092】
次に、上述のステップS20における入金収納処理について、図8とともに説明する。
なお、図8は入金収納処理のフローチャート示している。
【0093】
制御ユニット201は、一時保管庫(31,50)に収納した紙幣を繰り出す(ステップS21)。
詳しくは、制御ユニット201は、疑券一時保留庫50から疑券や不明券を繰り出し(ステップS21)、ゲート19を制御するとともに、第6紙幣搬送路16、第5紙幣搬送路15、第4紙幣搬送路14、第3紙幣搬送路13、及び第2紙幣搬送路12を搬送して紙幣鑑別部30に搬送し、紙幣鑑別部30で鑑別する(ステップS22)。
【0094】
また、同様に、制御ユニット201は、第1の一時保留庫31から正券を繰り出し(ステップS21)、ゲート19を制御するとともに、一時収納搬送路18、第4紙幣搬送路14、第3紙幣搬送路13、及び第2紙幣搬送路12を搬送して紙幣鑑別部30に搬送し、紙幣鑑別部30で鑑別する(ステップS22)。
【0095】
そして、制御ユニット201は、紙幣鑑別部30での鑑別の結果が正券であれば(ステップS23:正券)、第1紙幣搬送路11及び第7紙幣搬送路17を搬送して金種に応じた紙幣還流庫40に正券を収納する(ステップS26)。
【0096】
逆に、制御ユニット201は、紙幣鑑別部30での鑑別の結果が偽券であれば(ステップS23:偽券)、第1紙幣搬送路11、第7紙幣搬送路17、第6紙幣搬送路16及び第2分岐搬送路76を搬送して、偽券収納庫61に偽券を収納する(ステップS27)。
【0097】
同様に、制御ユニット201は、紙幣鑑別部30での鑑別の結果が疑券であれば(ステップS23:疑券)、第1紙幣搬送路11、第7紙幣搬送路17、第6紙幣搬送路16、第2分岐搬送路76及び第2分岐搬送路延長部分77を搬送して疑券収納庫62に疑券を収納する(ステップS27)。
【0098】
制御ユニット201は、第1の一時保留庫31や疑券一時保留庫50に一旦収納されている紙幣の繰り出しが完了するまで(ステップS28)、以上の処理を繰り返し実行し、繰り出しが完了すると、制御ユニット201は入金収納処理を完了する。
【0099】
なお、この入金収納処理において、取忘紙幣が発見された場合には、制御ユニット201は、ゲート19を制御するとともに、その取忘紙幣をリジェクト庫32に収納する。
また、紙幣取扱機構1に不明券収納庫を備え、該不明券収納庫に不明券を分別してもよい。
【0100】
次に、紙幣取扱機構1を実装した現金自動取引装置101による出金取引処理における出金制御処理ついて、図9とともに説明する。
なお、図9は出金制御処理のフローチャートを示している。
【0101】
出金制御処理は、利用者が顧客操作部104を操作して、「引き出し」等の出金を伴う取引を選択した時に、制御ユニット201が実行する処理である。
この処理では、制御ユニット201は、利用者によって指定操作された金額および枚数に応じた紙幣を紙幣還流庫40から繰り出し(ステップS51)、第7紙幣搬送路17、第1紙幣搬送路11及び第2紙幣搬送路12を通って紙幣鑑別部30に搬送する。
【0102】
制御ユニット201は、搬送された紙幣を紙幣鑑別部30で鑑別し(ステップS52)、その鑑別の結果が不明券であれば(ステップS53:不明券)、第3紙幣搬送路13、第4紙幣搬送路14及び一時収納搬送路18を通って第1の一時保留庫31に搬送する(ステップS54)。
【0103】
これに対し、制御ユニット201は、紙幣鑑別部30での鑑別の結果が正券であれば(ステップS53:正券)、第3紙幣搬送路13及び出金搬送路23を通って入出金口20に搬送する(ステップS55)。
【0104】
制御ユニット201は、ステップS51〜S55までの処理を、指定された全紙幣の繰り出しが完了するまで繰り返し実行する(ステップS56:NO)。
繰り出しが完了して(ステップS56:YES)、第1の一時保留庫31に不明券が存在する場合には(ステップS57:YES)、制御ユニット201は、不明券をリジェクト庫32まで搬送し、収納して(ステップS58)、本出金制御処理を終了する。なお、繰り出し完了時点において、第1の一時保留庫31に不明券が存在しない場合(ステップS57:NO)も同様とする。
【0105】
また、ステップS57における判断は、保留部DB206を参照して行ってもよく、さらには、保留部DB206に代えて、不明券、偽券、疑券の有無を示すフラグを用いてもよい。
【0106】
このように、紙幣を入出金する入出金口20と、入金紙幣を、真正な紙幣である正券、真正な紙幣でない偽券、及び疑わしい疑券に鑑別する紙幣鑑別部30と、前記正券を収納する紙幣還流庫40と、前記偽券を収納する偽券収納庫61と、前記疑券を収納する疑券収納庫62と、前記正券を前記紙幣還流庫40に収納する前の一時収納及び繰り出しを許容する第1の一時保留庫31と、前記疑券を、前記疑券収納庫62に収納する前の一時収納及び繰り出しを許容する第2の一時保留庫51及び第3の一時保留庫52と、前記紙幣を、各保留部(31,40,50,60)及び前記入出金口20の間を搬送する搬送路(11〜18,22,23,33,71〜74,76)と、前記搬送路による搬送動作を制御する紙幣取扱機構制御部1aとを備え、前記各収納部、前記第2の一時保留庫51、並びに前記第3の一時保留庫52間の前記搬送路で構成する紙幣搬送経路に、前記紙幣鑑別部30を配置した紙幣取扱機構1は、入金紙幣をより正確に鑑別することができ、後鑑別作業を低減することができる。
【0107】
詳しくは、前記紙幣鑑別部30を、前記正券、前記偽券、及び前記疑券に加えて、還流に適さない不明券を鑑別する構成とし、上記紙幣取扱機構制御部1aが、ステップS13において、前記正券を前記第1の一時保留庫31へ搬送し、前記疑券を前記第2の一時保留庫51へ搬送し、前記偽券を前記偽券収納庫61へ搬送し、並びに、前記不明券を前記入出金口20へ搬送する搬送制御を実行するため、入金取引処理で入金された入金紙幣を、入金制御処理において紙幣鑑別部30で鑑別し、不明券は入出金口20に搬送して利用者に返却し、偽券を偽券収納庫61に収納するとともに、正券を第1の一時保留庫31に一旦収納し、疑券を第2の一時保留庫51に一旦収納する。そして、第2の一時保留庫51から疑券を繰り出し(ステップS15)、紙幣鑑別部30で再鑑別するため(ステップS16)、入金紙幣を精度よく鑑別することができる。
【0108】
さらにまた、前記紙幣取扱機構制御部1aが、ステップS15において、前記第2の一時保留庫51に一旦収納した前記疑券を繰り出して前記紙幣鑑別部30に搬送して再鑑別し、ステップS16において、再鑑別による正券を前記第1の一時保留庫31へ搬送し、再鑑別による偽券を前記偽券収納庫61へ搬送し、並びに、再鑑別による不明券及び再鑑別による疑券を前記第3の一時保留庫52へ搬送する再鑑別搬送制御を実行するため、鑑別結果によっては正券や偽券が混ざる疑券を複数回鑑別することで、最終的に疑券収納庫62に収納する疑券の枚数を低減することができる。したがって、疑券収納庫62に収納された紙幣を、人の手や目、または専用の鑑別装置で、詳しく後鑑別する手間を低減することができる。また、疑券に混ざっている正券を低減することができる。
【0109】
さらには、疑券を一旦収納する疑券一時保留庫50を、第2の一時保留庫51と第3の一時保留庫52とで構成したため、第2の一時保留庫51に収納された疑券を再鑑別して再度疑券と鑑別された疑券を第3の一時保留庫52に収納し、第3の一時保留庫52に収納された疑券を再鑑別して再度疑券と鑑別された疑券を第2の一時保留庫51に収納するといったように、第2の一時保留庫51と第3の一時保留庫52とを往復させて複数回再鑑別するため、紙幣の鑑別をより高精度化することができる。
【0110】
また、紙幣取扱機構1における入金取引処理において、制御ユニット201が、入金制御処理(ステップS10〜S17)において、不明券、偽券、疑券が発見された場合(ステップS40:YES)、所定の通知先、例えば、金融機関の責任者などに対して、ネットワークその他の通信回線を通じて、ステップS41で通知を行うため、不明券、偽券、疑券を投入した利用者を迅速に特定することができる。
【0111】
また、入金収納処理(ステップs20)において、第1の一時保留庫31や疑券一時保留庫50に一旦収納している入金紙幣を、紙幣鑑別部30を経由してから紙幣還流庫40や紙幣収納庫60に収納するため、入金紙幣をさらに精度よく鑑別してから紙幣還流庫40や紙幣収納庫60に収納することができる。
【0112】
例えば、入金制御処理で「正」と鑑別されたものの、その後の搬送や一時収納によって耳折れや破れが生じ、還流に適さない状態となった紙幣であっても、紙幣還流庫40や紙幣収納庫60への収納前に再度紙幣鑑別部30を経由させて鑑別するため、精度よく収納することができる。
【0113】
逆に、入金制御処理でスキューによって「偽」と鑑別されたものの、その後の搬送や一時収納によってスキューが解消された紙幣を、紙幣還流庫40や紙幣収納庫60への収納前に再度紙幣鑑別部30を経由させて鑑別することによって正券として紙幣還流庫40に収納することができる。
【0114】
さらにまた、紙幣還流庫40や疑券収納庫62に収納する前の「正券」や「疑券」を一時収納する一時保留庫として、第1の一時保留庫31、第2の一時保留庫51及び第3の一時保留庫52の3つの一時保留庫を備えたことにより、不明券を入出金口20に返却することができる。詳述すると、例えば、一時保留庫の数が、紙幣還流庫や疑券収納庫に収納する前に一時収納する紙幣の鑑別種類に比べて少ない場合、入出金口20を紙幣還流庫や疑券収納庫に収納する前の紙幣を一時収納する一時保留庫として用いることが考えられるが、そうすると、不明券の独立した搬送先がなく疑券等に混ぜる等して取り扱う必要がある。これに対し、本実施例では、紙幣鑑別部30が鑑別する「正券」、「偽券」、「疑券」及び、「不明券」のうち、直接偽券収納庫61に収納する「偽券」以外で、一時収納する「正券」及び「疑券」用の一時保留庫(61,51,52)をそれぞれ独立して備えたため、不明券を入出金口20に出金することができる。これにより、各紙幣を鑑別結果に応じて確実に収納することができる。
【0115】
また、上記の入金取引処理においては、入金収納処理(ステップs20)が完了してから、キャッシュカードを返却しているため(ステップs42)、利用者を現金自動取引装置101の所に留めることができ、入金収納処理で不明券、偽券、疑券が発見された場合の迅速な対応を可能とすることができる。
【0116】
さらにまた、紙幣取扱機構1の出金制御処理において制御ユニット201は、紙幣還流庫40に収納した正券を繰り出し(ステップS51)、紙幣鑑別部30で鑑別してから入出金口20に搬送するため、例えば、スキューなどによって不明券と鑑別された紙幣を入出金口20に搬送して利用者に渡すことがない。
【0117】
上述の入金制御処理では、ステップS11〜S15の処理を複数回繰り返し行い、鑑別結果により疑券以外に鑑別された紙幣は偽券収納庫61や第1の一時保留庫31に収納し、疑券鑑別された紙幣のみ他方の疑券一時保留庫50に収納する構成であったが、そのつど紙幣鑑別部30で鑑別しながら第2の一時保留庫51と第3の一時保留庫52とを往復させ、その鑑別結果を保留部DB206に格納し、保留部DB206に格納された鑑別結果を集計して、統計的に、紙幣の収納先を決定する構成であってもよい。なお、鑑別結果を集計して、統計的に、紙幣の収納先を決定するとは、もっとも多い鑑別結果を採用して、紙幣の収納先に決定するといったことを意味している。これにより、例えば、複数回の鑑別における最終鑑別結果に基づいて鑑別する場合と比較して、鑑別結果を蓄積して統計的に鑑別することにより高精度の鑑別を実現することができる。
【0118】
また、入金制御処理における疑券一時保留庫50に収納した疑券の複数回の鑑別や、入金制御処理及び入金収納処理における第1の一時保留庫31に収納した正券の複数回の鑑別を、それぞれ、鑑別基準変更手段に対応する制御ユニット201によって鑑別基準を変更させて鑑別してもよい。
【0119】
例えば、一回目の疑券を鑑別する場合の鑑別基準より、二回目の疑券を鑑別する場合の鑑別基準を厳しく設定してもよい。これにより、一回目の鑑別による大量枚の入金紙幣を大まかに鑑別し、厳しい鑑別基準での二回目の鑑別により、大まかな鑑別によって枚数が減った疑券を厳格に鑑別することができる。
【0120】
逆に、一回目の入金制御処理の鑑別基準を厳しくし、二回目の入金収納処理における鑑別基準を緩く設定してもよい。これにより、厳しい鑑別基準での一回目の鑑別によって厳格に鑑別された正券を、入金収納処理の際の二回目の鑑別で最終のチェック的な鑑別を実行することができる。
このように、複数回実行する鑑別の鑑別基準を変更することで、所望の精度の鑑別を効率よく実施することができる。
【0121】
また、上述の入金制御処理におけるキャッシュカードを返却するタイミングは、上述の実施例に限定されず、種々の設定が可能である。例えば、入金紙幣の鑑別時(ステップS12)に、不明券、偽券、疑券が発見されなかった場合には、入金指示(ステップS17)がなされた時点で、入金収納処理(ステップS20)と並行して、キャッシュカードを返却してもよい。入金紙幣の鑑別時(ステップS12)に不明券、偽券、疑券が発見された場合には、図7に示したタイミングでキャッシュカードの返却を行えばよい。このような処理を適用すれば、不明券、偽券、疑券が発見されなかった場合には、取引を早期に完了することができる。
【0122】
上述の入金制御処理では、また、紙幣取り込み、鑑別し(ステップS12)その結果に基づき紙幣の搬送を制御するとき、偽券、疑券と鑑別された紙幣はそれぞれ偽券収納庫、疑券収納庫に直接搬送して、利用者が表示された金額を確認して、入金指示を行うと(ステップS17)、制御ユニット201は入金収納処理を行う(ステップS20)ことで取引を早期に完了することができる。
【符号の説明】
【0123】
1…紙幣取扱機構,1a…紙幣取扱機構制御部,11〜17…紙幣搬送路,18…一時収納搬送路,20…入出金口,22…入金搬送路,23…出金搬送路,30…紙幣鑑別部,31…第1の一時保留庫,33…リジェクト搬送路,40…紙幣還流庫,51…第2の一時保留庫,52…第3の一時保留庫,61…偽券収納庫,62…疑券収納庫,71〜73…環流搬送路,74…第1分岐搬送路,76…第2分岐搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を入出金する入出金口部と、
入金紙幣を、真正な紙幣である正券、真正な紙幣でない偽券、及び疑わしい疑券に鑑別する紙幣鑑別部と、
前記正券を収納する正券収納部と、
前記偽券を収納する偽券収納部と、
前記疑券を収納する疑券収納部と、
前記正券を前記正券収納部に収納する前の一時収納及び繰り出しを許容する第1の一時保留部と、
前記疑券を前記疑券収納部に収納する前の一時収納及び繰り出しを許容する第2の一時保留部及び第3の一時保留部と、
前記紙幣を、各収納部、各一時保留部及び前記入出金口部の間を搬送する搬送路と、
前記搬送路による搬送動作を制御する搬送制御部とを備え、
前記各収納部、前記第2の一時保留部、並びに前記第3の一時保留部間の前記搬送路で構成する紙幣搬送経路に、前記紙幣鑑別部を配置した
紙幣取扱装置
【請求項2】
前記紙幣鑑別部を、
前記正券、前記偽券、及び前記疑券に加えて、還流に適さない不明券を鑑別する構成とし、
上記搬送制御部が、
前記正券を前記第1の一時保留部へ搬送し、前記疑券を前記第2の一時保留部へ搬送し、前記偽券を前記偽券収納部へ搬送し、並びに、前記不明券を前記入出金口部へ搬送する搬送制御を実行する
請求項1に記載の紙幣取扱装置。
【請求項3】
前記搬送制御部が、
前記第2の一時保留部に一旦収納した前記疑券を繰り出して前記紙幣鑑別部に搬送して再鑑別し、
再鑑別による正券を前記第1の一時保留部へ搬送し、再鑑別による偽券を前記偽券収納部へ搬送し、並びに、再鑑別による不明券及び再鑑別による疑券を前記第3の一時保留部へ搬送する再鑑別搬送制御を実行する
請求項2に記載の紙幣取扱装置。
【請求項4】
前記搬送制御部を、
前記第2の一時保留部から前記第3の一時保留部に、或いは前記第3の一時保留部から前記第2の一時保留部に、一旦収納した前記疑券を繰り出して、前記紙幣鑑別部を経由して搬送して再鑑別する再鑑別搬送制御を複数回実行する構成とするとともに、
複数回の再鑑別搬送制御による鑑別結果に基づいて統計的に、前記疑券の搬送先を、前記疑券収納部または前記偽券収納部あるいは前記第1の一時保留部に設定する
請求項2に記載の紙幣取扱装置。
【請求項5】
前記紙幣鑑別部に、
前記再鑑別搬送制御における再鑑別の際に、前記入金紙幣を鑑別する鑑別基準を変更させる鑑別基準変更手段を備えた
請求項3にあるいは請求項4に記載の紙幣取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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