説明

紙幣取扱装置

【課題】小型大容量と処理時間短縮を両立できる紙幣取扱装置を提供し、利用者の満足度を向上させる。
【解決手段】紙幣を判別する紙幣判別部30と、紙幣を収納し再分離するリサイクル庫71〜74と、前記リサイクル庫71〜74へ紙幣を補充又は前記リサイクル庫71〜74から紙幣を回収する装填庫61と、前記紙幣判別部30でリジェクトされたリジェクト紙幣を収納するリジェクト庫60および装填リジェクト庫62と、これらの各部へ紙幣を搬送する搬送路50a〜58とを備えた紙幣取扱装置1について、前記搬送路50a〜58を、紙幣を双方向に搬送可能な環状の搬送路に形成し、該搬送路50a〜58周囲に前記リサイクル庫71〜74、前記装填庫61、前記リジェクト庫60および前記装填リジェクト庫62を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば金融機関などで使用される現金自動取引装置に実装されるような紙幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金融機関などで使用される現金自動取引装置には、紙幣取扱装置が実装されている。この紙幣取扱装置は、利用者に入金された紙幣を一枚ずつ繰り出す機能及び出金紙幣を放出する機能を有する紙幣入出金口と、入金紙幣もしくは出金紙幣を判別する紙幣判別部と、入金した紙幣を一旦収納する一時収納部と、紙幣判別部で所定の基準に達しないリジェクト紙幣を収納するリジェクト庫と、入金紙幣を収納・保管し、出金紙幣等として繰り出す紙幣収納庫と、これらの各ユニットを接続する紙幣搬送路とが備えられている。
【0003】
最近になって多金種化や大容量化が進んだことにより、紙幣収納庫を装置の下部に並べて配置し、その他の部分を紙幣取扱装置上部の上部ユニットに集めて配置する構成の紙幣取扱装置が提供されている(特許文献1参照)。この紙幣取扱装置は、紙幣入出金口、紙幣判別部、一時収納部が装置上部の上部ユニットに配置されており、下部に縦長の紙幣収納庫が前後に複数配置されている。そして、この紙幣取扱装置は、それぞれの構成要素が、一方向搬送路で接続されている。
【0004】
ここで、上記の構成要素を一方向搬送路で接続した場合、搬送路が複雑になる。特に、入金時の紙幣と出金時の紙幣を、紙幣判別部で同一方向に搬送する必要があることから、概8の字の搬送ルートを構成する必要がある。すなわち、紙幣判別部に繋がる1つのループ状の搬送ルートに紙幣入出金口および一時収納部を配置し、紙幣判別部に繋がるもう1つのループ状の搬送ルートに紙幣収納庫を配置することになる。このため、装置全体に対して搬送路を構成する構造体の体積が増え、装置全体の大きさに対して紙幣収納部が小さくなってしまうという問題点があった。
【0005】
一方、紙幣収納庫(リサイクル庫)を横倒しにして上下に配置し、ループ状ではなく線状で上下方向に紙幣を搬送する双方向搬送路を備えた紙幣入出金機が提案されている(特許文献2参照)。この紙幣入出金機は、ループしない代わりに双方向に搬送できる搬送路を備えることで、装置の小型化を実現している。
【0006】
しかし、この構成では、紙幣収納庫から出金する際に、リジェクト紙幣を直接リジェクト庫に搬送することができなかった。詳述すると、この紙幣入出金機は、リジェクト紙幣を一時収納部(一時保管庫)に一時収納させておき、その後にリジェクト紙幣を一時収納部からリジェクト庫へ搬送する必要があった。また、紙幣補充等のために装填処理を実行する際に、装填された紙幣を一時収納部へ一旦全て搬送した後に紙幣収納庫へ収納する必要があった。このため、搬送効率が悪く、装填に要する時間が、全ての紙幣を繰り出すために必要な時間の倍の時間となっていた。この搬送効率が悪く時間が倍かかるという問題は、回収処理でも同様に生じていた。このため、この紙幣入出金機は、処理時間が長くなるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平8−221636号公報
【特許文献2】特許第3815651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述した問題に鑑み、小型大容量と処理時間短縮を両立できる紙幣取扱装置を提供し、利用者の満足度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、紙幣を判別する紙幣判別部と、入金取引処置の際に、紙幣を一時的に収納する一時収納部と、入金取引処理または出金取引処理の際に、前記紙幣判別部でリジェクトされた運用リジェクト紙幣を収納する運用リジェクト庫と、前記紙幣収納部へ紙幣を装填又は前記紙幣収納部から紙幣を回収する紙幣装填部であって、装填処理の際に、前記紙幣判別部でリジェクトされた装填リジェクト紙幣を収納する装填リジェクト庫を備えた紙幣装填部と、紙幣を前記紙幣判別部、前記紙幣収納部、前記運用リジェクト庫、前記紙幣装填部に搬送する搬送路とを備えた紙幣取扱装置であって、前記搬送路を、前記紙幣判別部において紙幣を双方向に搬送可能な環状搬送路に形成し、該環状搬送路と接続されるように前記紙幣収納部、前記紙幣装填部、および前記運用リジェクト庫を配置し、前記一時収納部は、前記環状搬送路と異なる搬送路を経由して前記環状搬送路に接続され、装填処理の際に、前記紙幣装填部から搬送された紙幣を前記紙幣判別部を通過し、前記紙幣収納部あるいは前記装填リジェクト庫に一方向に搬送するように形成し、前記環状搬送路は、前記紙幣収納部、前記一時収納部、前記紙幣装填部の前記装填リジェクト庫、及び前記運用リジェクト庫に対してそれぞれ異なる分岐合流部を有し、前記分岐合流部は、前記搬送路が、前記運用リジェクト庫へ紙幣を搬送するときに、回収処理時の紙幣の搬送方向である第一の搬送方向、および装填処理時の紙幣の搬送方向である第二の搬送方向のいずれの方向からでも収納可能な運用リジェクト分岐合流部と、前記搬送路が、前記装填リジェクト庫へ紙幣を搬送するときに、前記第二の搬送方向から紙幣を分岐搬送して収納する装填リジェクト分岐合流部とを有する紙幣取扱装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明により、小型大容量と運用停止時間短縮を両立できる紙幣取扱装置を提供し、利用者の満足度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、現金自動取引装置の外観を示す斜視図である。
現金自動取引装置101は、全体が装置筐体101cで囲われている。また、現金自動取引装置101は、正面上部に上部正面板101aが設けられている。この上部正面板101aは、上部に顧客操作部105が設けられている。この顧客操作部105は、取引の内容を表示および入力許容する。
【0012】
上部正面板101aは、顧客操作部105の下方右側にカードスロット102aが設けられている。また、現金自動取引装置101は、カードスロット102a部分の内部にカード・明細票処理機構102が設けられている。このカード・明細票処理機構102は、カードスロット102aと連通し、カードスロット102aから投入された利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出する。
【0013】
また、現金自動取引装置101は、高さ中央位置の正面に手前下がりに傾斜した正面板101bが設けられている。正面板101bは、左側に顧客操作部105が備えられ、右側に入出金口のシャッタ20aが備えられている。顧客操作部105は、取引の内容を表示および入力許容する。
【0014】
また、現金自動取引装置101は、右部内部に入出金機としての紙幣取扱装置1が備えられている。この紙幣取扱装置1は、入出金口がシャッタ20aに連通しており、紙幣を処理する。
【0015】
このように構成された現金自動取引装置101は、前面の接客面にて利用者による預け入れ、支払い、振り込みなどの処理を受け付け、これらの処理を実行する。この現金自動取引装置101は、カード、紙幣、明細票を媒体として使用する。
【0016】
図2は、現金自動取引装置101の制御関係を示す制御ブロック図である。
現金自動取引装置101に納められたカード・明細票処理機構102、紙幣取扱装置1および顧客操作部105は、それぞれUSB等の回線によって本体制御部107に接続されている。このカード・明細票処理機構102、紙幣取扱装置1および顧客操作部105は、本体制御部107の制御下で必要な動作を行なう。また、本体制御部107は、外部インタフェース部107b、係員操作部107c、外部記憶装置107dがバス接続等により接続されている。そして、本体制御部107は、これらの外部インタフェース部107b、係員操作部107c、外部記憶装置107dと必要なデータのやりとりを行なう。なお、101dは、上記各機構部分や構成部分に電力を供給する電源部である。
【0017】
図3は、現金自動取引装置101の中に配置される紙幣取扱装置1の制御関係を示す制御ブロック図である。
紙幣取扱装置1の制御部10は、現金自動取引装置101の本体制御部107と回線を介して接続されている。この制御部10は、本体制御部107からの指令および紙幣取扱装置1の状態検出に応じて紙幣取扱装置1の制御を行う。また、制御部10は、必要に応じて紙幣取扱装置1の状態を本体制御部107に送る。
【0018】
この紙幣取扱装置1は、各ユニット(紙幣入出金部としての紙幣入出金口20、紙幣判別部30、一時収納部40、搬送路51a〜58、運用リジェクト庫として機能するリジェクト庫60、紙幣収納部としてのリサイクル庫71〜74)に駆動モータや電磁ソレノイドやセンサなど(図示せず)をも有している。紙幣取扱装置1は、後述の取引に応じて、センサで状態を監視しながら、アクチュエータ(駆動モータや電磁ソレノイド等)を駆動制御する。
【0019】
図4は、紙幣取扱装置1の構成を示す側面図である。
紙幣取扱装置1は、大別して、上部紙幣機構1aと下部紙幣機構1bとに分割されて構成されている。
【0020】
上部紙幣機構1aは、主に利用者との紙幣の授受に必要な機構が集められている。この上部紙幣機構1aは、利用者が紙幣の投入・取り出しを行なう紙幣入出金口20と、紙幣の判別を行なう紙幣判別部30と、入金した紙幣を取引成立までの間一旦収納する一時収納部40と、制御部10とから構成される。なお、図4では制御部10が図示省略されている。また、一時収納部40は、紙幣を一時的に収納する空間と、該空間に紙幣を集積していくための搬送ローラや羽根車等が備えられており、図に点線で示すようにユニット化されている。
【0021】
上部紙幣機構1aについて詳述すると、接客面となる前面側に紙幣入出金口20が配置されている。該紙幣入出金口20の後方には、一時収納部40が隣接して配置されている。一時収納部40の後方には、該一時収納部40と少し離間して紙幣判別部30が配置されている。この紙幣判別部30は、前方から後方へ搬送する紙幣、および後方から前方へ搬送する紙幣のどちらであっても金種判別および真偽判別を行うことができる。つまり、紙幣判別部30は、双方向に搬送される紙幣を金種判別および真偽判別でき、該紙幣をリジェクトか否か判別できる。
【0022】
紙幣入出金口20は、上方のシャッタ20aが開いた状態で上から投入された紙幣を下方へ繰り出す紙幣繰出部20bと、下方から搬送されてきた紙幣を集積する紙幣集積部20cとが、この順で前後に配置されて構成されている。
【0023】
前記紙幣繰出部20bの下端から紙幣判別部30の前面までは、前後方向に伸びる搬送路51aおよび搬送路51bにより接続されている。搬送路51aの途中には、下部紙幣機構1bへ紙幣を振り分けるための分岐部としての紙幣振り分けゲート50cが設けられている。
【0024】
紙幣判別部30の後面から一時収納部40の後下部までは、搬送路52,53,54により接続されている。搬送路52は、紙幣判別部30の後面の上下方向略中央部から一端上方へ立ち上がり、紙幣判別部30の上方を前方へ略水平に進んで、紙幣判別部30の前面近傍の上方位置に設けられた分岐部としての紙幣振り分けゲート50aに接続されている。
【0025】
この紙幣振り分けゲート50aは、一時収納部40の後方上部の位置で、一時収納部40の背面になるべく近接する位置に配置されている。また、紙幣振り分けゲート50aは、紙幣判別部30から見て、紙幣判別部30の上方前部の近傍位置に配置されている。
【0026】
搬送路53は、紙幣振り分けゲート50aから斜め前下方向へ進み、一時収納部40の後下方に設けられた紙幣振り分けゲート50bに接続されている。搬送路54は、紙幣振り分けゲート50bから一時収納部40までを接続している。
【0027】
紙幣振り分けゲート50bから紙幣集積部20cの下端までは、搬送路55により接続されている。この搬送路55は、前後方向へ略水平に伸びている。従って、紙幣判別部30の後部から紙幣集積部20cまでは、搬送路52,53,55により接続されている。
【0028】
紙幣振り分けゲート50aから装置後方へは、搬送路56により接続されている。この搬送路56は、紙幣振り分けゲート50aから後方へ略水平に伸びた後、下方向へ向かい受渡し部57bにて下部紙幣機構1bと接続されている。
【0029】
紙幣入出金口20と紙幣判別部30とを繋ぐ搬送路51aの途中に設けられた紙幣振り分けゲート50cの下部には、下部紙幣機構1bとの紙幣の受け渡しを行なう受渡し部57aが設けられている。
【0030】
また、搬送路51aと搬送路51bの間には、紙幣振り分けゲート50kが設けられ、該紙幣振り分けゲート50kから紙幣集積部20cを接続する搬送路59が設けられている。これにより、紙幣判別部30を前後どちらの方向へ搬送し判別した紙幣であっても、紙幣入出金口20の紙幣集積部20cに収納することが可能な構成としている。
【0031】
これらの搬送路のうち少なくとも51a、51b、52、53、54、56は、紙幣が上流から下流および下流から上流のどちらの方向でも搬送可能な双方向搬送路で構成されている。
【0032】
このようにして、上流から下流へ向かって、紙幣入出金口20の紙幣繰出部20b、搬送路51a,51b、紙幣判別部30、搬送路52、紙幣振り分けゲート50a、搬送路53、紙幣振り分けゲート50b、搬送路55、紙幣集積部20cの順に接続されている。
【0033】
下部紙幣機構1bには、入金された紙幣を金種別に収納し、再繰り出しするためのリサイクル庫71〜74が設けられ、更にリサイクルに供しない紙幣を収納する為のリジェクト庫60が実装され、更にリサイクル庫に紙幣を装填・回収して紙幣装填部として機能する装填庫61を実装できるようになっている。
【0034】
装填庫61は、装填時に発生するリジェクト紙幣を収納する為の装填リジェクト庫62を有している。また前記各リサイクル庫71〜74、リジェクト庫60、装填庫61、装填リジェクト庫62の上部には、搬送路58が設けられている。
【0035】
この搬送路58は、前記上部紙幣機構1aの下部に設けられた受渡し部57a、57bと接続されており、紙幣を双方向に搬送可能で前後方向に略水平に伸びている。さらにリサイクル庫71〜74、リジェクト庫60、装填庫61、装填リジェクト庫62上部には、それぞれに収納すべき紙幣を振り分ける為の紙幣振り分けゲート50d〜50jが設けられている。
【0036】
更に装填庫61及びリサイクル庫71〜74は、前記搬送路58と一箇所で紙幣の受け渡しが可能であり、双方向の搬送路で接続されている。更にリジェクト庫60は、装置前方及び後方どちらからの搬送に対しても収納可能なように紙幣振り分けゲート50h及びリジェクト庫入口が構成されている。
【0037】
特に紙幣振り分けゲート50hは、紙幣が搬送路58をそのまま通過する状態、装置前方から搬送されて来た紙幣がリジェクト庫60へ収納される状態、および、装置後方から搬送されて来た紙幣がリジェクト庫60へ収納される状態の3つの状態に切り替えることができる。なお、紙幣振り分けゲート50hは、紙幣が搬送路58をそのまま通過する状態、および、装置前方または装置後方のどちらから来た紙幣であってもリジェクト庫60へ収納される状態の2つの状態に切り替える構成としてもよい。また、紙幣振り分けゲート50hの代わりに、前後に2つの紙幣振り分けゲートを備えて、装置前方からの紙幣をリジェクト庫60へ収納する際に一方の紙幣振り分けゲートを用い、装置後方からの紙幣をリジェクト庫60へ収納する際に他方の紙幣振り分けゲートを用い、リジェクト庫60へ収納せずに紙幣を通過させる場合に両方の紙幣振り分けゲートを退避させる構成にしてもよい。
【0038】
装填リジェクト庫62は、装置前方から搬送されてくる紙幣を収納可能なように構成されている。この装填リジェクト庫62は、後方から搬送されてくる紙幣も同様に収納できるように構成しておいても良い。
【0039】
このようにして装置内に設けられた紙幣判別部30、双方向搬送路51a、51b、52、56、58が、紙幣判別部を有する双方向の環状搬送路となる。
紙幣入出金口20の紙幣繰出部20bの後段には、まず紙幣判別部30が接続されており、その後段に一時収納部40が接続され、さらにその後段にリジェクト庫60、装填庫61、装填リジェクト庫62、およびリサイクル庫71〜74が接続されている。
また、リサイクル庫71〜74の後段には、まず紙幣判別部30が接続されており、その後段に一時収納部40、入出金口20の紙幣集積部20c、リジェクト庫60、装填庫61、および装填リジェクト庫62が並列関係に接続されている。この経路では、一時収納部40と紙幣集積部20cへ繋がる一部の搬送路52,53が共通であり、リジェクト庫60、装填庫61、および装填リジェクト庫62へ繋がる一部の搬送路52,56が共通である。
【0040】
なお、紙幣振り分けゲート50d〜50g,50jは、分岐合流部として機能し、紙幣振り分けゲート50hは、運用リジェクト分岐合流部として機能し、紙幣振り分けゲート50iは、装填リジェクト分岐合流部として機能する。
【0041】
次に、入金取引処理の際の紙幣取扱装置1の動作について説明する。
入金取引処理では、まず紙幣入出金口20の紙幣繰出部20bに投入された紙幣の真偽判別、金種判別、および係数を行う入金係数処理を実行する。
【0042】
この入金係数処理で、紙幣入出金口20の紙幣繰出部20bは、入金された複数枚の紙幣を一枚ずつ分離して下方へ繰り出す。紙幣繰出部20bから下方へ繰り出された紙幣は、搬送路51a,51bにより略水平に後方へ搬送され、紙幣判別部30を前面から後方へ通過する。紙幣判別部30は、内部に実装されているセンサ等によって、通過する紙幣の真偽、金種、および正損状態を判別する。
【0043】
紙幣判別部30を通過した紙幣は、紙幣判別部30の後面から搬送路52によって一旦上方へ搬送され、さらに前方へ略水平に搬送される。この搬送路52にて搬送している間に、前記紙幣判別部30による判別が完了すると共に、該判別結果による紙幣振り分けゲート50a、50bの切り替えが実行される。
【0044】
紙幣判別部30によって受け入れ可能な紙幣であると判別した場合は、紙幣振り分けゲート50a,50bを紙幣判別部30と一時収納部40を接続するように切り替え、搬送路53,54によって紙幣を前方へ搬送し該紙幣を一時収納部40内に集積する。
【0045】
紙幣判別部30によって受け入れできない紙幣であると判別された場合は、紙幣振り分けゲート50a,50bを紙幣判別部30と紙幣入出金口20に設けられた紙幣集積部20cを接続するように切り替え、搬送路53,54,55によって紙幣を搬送し該紙幣を紙幣集積部20cに集積し入金取引者に返却する。
【0046】
ここまでの入金係数処理で、搬送路51a,51b,52,53,54,55は、紙幣を第1の搬送方向へ搬送するように動作している。
【0047】
このようにして紙幣入出金口20に投入された全ての紙幣を処理し、入金された金額と紙幣取扱装置1の計数した金額とが一致し、利用者によって顧客操作部105(図2参照)で入金取引確定が入力されると、一時収納部40に一時収納していた紙幣をリサイクル庫71〜74へ収納する収納処理を実行する。
【0048】
この収納処理では、まず紙幣振り分けゲート50a,50bを一時収納部40と紙幣判別部30を接続するように切り替え、紙幣振り分けゲート50cを紙幣判別部30と下部紙幣機構1bの搬送路58を接続するように切り替える。
【0049】
一時収納部40によって一枚ずつ繰り出された紙幣は、搬送路54、紙幣振り分けゲート50b、搬送路53、紙幣振り分けゲート50a、搬送路52を通って紙幣判別部30へ搬送される。紙幣判別部30を通過した紙幣は、搬送路51b,51aによって搬送され、紙幣振り分けゲート50cによって搬送路57aを通じて下部紙幣機構1bへ搬送される。さらに紙幣は、下部紙幣機構1bの搬送路58によって搬送され、金種などによって切り替えられた紙幣振り分けゲート50d〜50hで振り分けられて、リジェクト庫60およびリサイクル庫71〜74のいずれか一つに収納される。
【0050】
なお、この収納処理の間に紙幣判別部30により紙幣の金種等を判別し、この判別結果によって紙幣振り分けゲート50d〜50hを切り替える構成とした場合、紙幣を搬送路51b,51a,58で搬送している間に、判別を完了して紙幣振り分けゲート50d〜50hを切り替えることができる。
【0051】
ここまでの収納処理で、搬送路54,53,52,51b,51a,57a,58は、上述した第1の搬送方向と逆方向となる第2の搬送方向へ紙幣を搬送するように動作する。
【0052】
次に、出金取引処理の際に紙幣取扱装置1が実行する動作について説明する。
出金取引処理では、各リサイクル庫71〜74から金種別に紙幣を一枚ずつ所定枚数まで繰り出す。繰り出された紙幣は、搬送路58,57a,51a,51bによって紙幣判別部30へ搬送される。
【0053】
紙幣判別部30は、通過する紙幣が出金可能な紙幣か否かを判定する。
出金可能な紙幣であれば、紙幣振り分けゲート50a,50bを紙幣判別部30と紙幣集積部20cを接続するように切り替え、搬送路52,53,55により紙幣集積部20cまで紙幣を搬送し、紙幣集積部20cに紙幣を集積する。
出金不可能な紙幣であれば、紙幣振り分けゲート50aを紙幣判別部30と搬送路56を接続するように切り替え、搬送路56、58を通して下部紙幣機構1bに実装されるリジェクト庫60へ紙幣を搬送する。この判別と判別結果による紙幣振り分けゲート50aの切り替えは、搬送路52で紙幣を搬送している間に完了する。
【0054】
このようにして紙幣の搬送動作が終了すると、紙幣入出金口20のシャッタ20aを開き、紙幣集積部20cに集積した紙幣を利用者が抜き取れる状態となる。利用者によって紙幣が抜き取られると、シャッタ20aを閉じ、出金取引処理を終了する。
【0055】
ここまでの出金取引処理の動作で、搬送路58,57a,51a,51b,52,53,55,56は、上述した第1の搬送方向へ紙幣を搬送するように動作する。
【0056】
次に、装填庫61からリサイクル庫71〜74へ紙幣を装填する装填処理の動作、及びリサイクル庫71〜74から紙幣を装填庫61に回収する回収処理の動作について説明する。
装填処理では、装填庫61から一枚ずつ繰出された紙幣は、搬送路58を通って受渡し部57bに搬送され、上部紙幣機構1aに受け渡され、搬送路56、52を通って、紙幣判別部30に搬送され、装填紙幣に値するかが判別される。その後、紙幣は、搬送路51b、51a、受渡し部57aを通して、下部紙幣機構1bの搬送路58に受け渡され、金種によって切り替えられた紙幣振り分けゲート50d〜50hで振り分けられてリサイクル庫71〜74のいずれか一つに収納される。紙幣判別部30でリジェクトと判定された紙幣は、紙幣振り分けゲート50iで切替えられ装填リジェクト庫62に収納される。
【0057】
ここまでの装填処理の動作で、搬送路58,57b,56,52,51b,51a,57aは、上述した第2の搬送方向へ紙幣を搬送するように動作する。
【0058】
回収処理では、リサイクル庫71〜74から繰出された紙幣は、搬送路58、受渡し部57a、搬送路51a、51bを通して紙幣判別部30に搬送され、その後搬送路52、56、受渡し部57bを通して、装填庫61に搬送収納される。但し紙幣判別部30でリジェクトと判別された紙幣は、紙幣振り分けゲート50jにて切替えられリジェクト庫60側に搬送され、紙幣振り分けゲート50hにて振り分けられリジェクト庫60に収納される。リジェクト庫60及び紙幣振り分けゲート50hは前記のように装置前方及び後方どちらからの搬送に対しても収納可能な構成となっている。
【0059】
ここまでの回収処理の動作で、搬送路58,57a,51a,51b,52,56,57bは、上述した第1の搬送方向へ紙幣を搬送するように動作する。
【0060】
以上の構成と動作により、紙幣判別部30とそれを繋ぐ双方向搬送路51a、51b、52、56、58で環状の搬送路を構成し、それらに紙幣リサイクル庫71〜74、リジェクト庫60、紙幣入出金口20、一時収納部40を接続する簡素な搬送路構成を実現し、最小限の搬送路で装置を構成することが可能となり、小型大容量化の要望に沿う紙幣取扱装置1を提供することができる。
【0061】
また、従来のように8の字の搬送ルートを構成する必要がなく、搬送路を簡潔に構成することができる。
【0062】
また、紙幣リサイクル庫71〜74から装填庫61へ紙幣を回収する回収処理は、第一の搬送方向で搬送し、装填庫61から紙幣リサイクル庫71〜74へ紙幣を装填する装填処理は、第二の搬送方向で搬送する構成とした。これにより、回収処理は、紙幣リサイクル庫71〜74から紙幣判別部30、装填庫61の順で紙幣を搬送し、装填処理は、装填庫61から紙幣判別部30、紙幣リサイクル庫71〜74の順で紙幣を搬送することができる。従って、紙幣を判別してから回収または装填する動作を、無駄のない効率よい搬送で実行することができる。
【0063】
また、リジェクト庫60を、第一及び第二の搬送方向のいずれの方向からでも収納可能な紙幣振り分けゲート50hで搬送路58に接続したため、回収処理での搬送方向と装填処理での搬送方向を逆向きにすることを実現でき、無駄のない効率よい搬送を実現できる。
【0064】
また、紙幣リサイクル庫71〜74及び装填庫61を、搬送路58に対してそれぞれ1箇所の紙幣振り分けゲート50d〜50g,50jで接続したため、構造をなるべく単純化させることができる。
【0065】
また、出金取引処理の際、紙幣集積部20cへ出金できないリジェクト紙幣を、紙幣振り分けゲート50aの切り替えによってリジェクト庫60へ直接搬送することができる。つまり、一時収納部40に一時収納しておく必要がなく、効率よく処理することができる。
【0066】
また、装填処理の際、紙幣を、一時収納部40に一時収納する必要がなく、装填庫61から紙幣判別部30を通って直接的にリサイクル庫71〜74のいずれか一つに収納することができる。また紙幣判別部30でリジェクトと判定された紙幣も、一時収納部40に一時収納する必要がなく、装填リジェクト庫62に直接収納することができる。
【0067】
また、回収処理の際、紙幣を、一時収納部40に一時収納する必要がなく、リサイクル庫71〜74から紙幣判別部30を通って直接的に装填庫61に収納することができる。また紙幣判別部30でリジェクトと判定された紙幣も、一時収納部40に一時収納する必要がなく、リジェクト庫60に直接収納することができる。
【0068】
また、一時収納部40から紙幣判別部30へ直接的に搬送する専用搬送路が不要となり、搬送路の構造を簡潔にすることができる。
また、逆方向の搬送である第二の搬送方向の際も、紙幣が紙幣判別部30を通過するため、全ての金種を判別して処理することができる。
【0069】
入金係数の際、紙幣が下部紙幣機構1bの搬送路58を通ることがないため、ジャム等のトラブルが生じても顧客紙幣と銀行紙幣を明確に区別することができる。つまり、この紙幣取扱装置1は、入金された顧客紙幣を処理確定するまで上部紙幣機構1aにて保持し、処理確定後に銀行紙幣として下部紙幣機構1bへ搬送する。従って、上部紙幣機構1aに存在する紙幣は顧客紙幣であり、下部紙幣機構1bに存在する紙幣は銀行紙幣であることを明確に区別できる。
【0070】
なお、上述した実施例では、リジェクト庫60を下部紙幣機構1bに備えたが、図5の構成図に示すように、リジェクト庫60を上部紙幣機構1aに備えても良い。
【0071】
この場合、上述した実施例の搬送路56を搬送路56a,56bに分割し、その接続部分とリジェクト庫60を接続すると良い。このリジェクト庫60は、紙幣判別部30の後方位置に配置すると良い。
【0072】
この場合でも、実施例1と同一の作用効果を得ることができる。
このように、紙幣判別部を含む双方向の環状の搬送路を備え、この搬送路の周りにリジェクト庫60、リサイクル庫71〜74を配置する構成にしておけば、図5のようにリジェクト庫60の位置を変更することを容易に行える。従って、全体構成に大きな変更を加えることなく実装位置の変更が可能となり、装置実装の要求に応じた構成変更も容易となる。
【0073】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】現金自動取引装置の外観を示す斜視図。
【図2】現金自動取引装置の制御関係を示す制御ブロック図。
【図3】紙幣取扱装置の制御関係を示す制御ブロック図。
【図4】紙幣取扱装置の構成を示す側面図。
【図5】他の実施例の紙幣取扱装置の構成を示す側面図。
【符号の説明】
【0075】
1…紙幣取扱装置、30…紙幣判別部、50d〜50g,50i,50j,50h…紙幣振り分けゲート、51a〜59…搬送路、60…リジェクト庫、61…装填庫、62…装填リジェクト庫、71〜74…リサイクル庫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を判別する紙幣判別部と、
紙幣を収納し再分離する紙幣収納部と、
入金取引処置の際に、紙幣を一時的に収納する一時収納部と、
入金取引処理または出金取引処理の際に、前記紙幣判別部でリジェクトされた運用リジェクト紙幣を収納する運用リジェクト庫と、
前記紙幣収納部へ紙幣を装填又は前記紙幣収納部から紙幣を回収する紙幣装填部であって、装填処理の際に、前記紙幣判別部でリジェクトされた装填リジェクト紙幣を収納する装填リジェクト庫を備えた紙幣装填部と、
紙幣を前記紙幣判別部、前記紙幣収納部、前記運用リジェクト庫、前記紙幣装填部に搬送する搬送路とを備えた紙幣取扱装置であって、
前記搬送路を、前記紙幣判別部において紙幣を双方向に搬送可能な環状搬送路に形成し、
該環状搬送路と接続されるように前記紙幣収納部、前記紙幣装填部、および前記運用リジェクト庫を配置し、
前記一時収納部は、前記環状搬送路と異なる搬送路を経由して前記環状搬送路に接続され、
装填処理の際に、前記紙幣装填部から搬送された紙幣を前記紙幣判別部を通過し、前記紙幣収納部あるいは前記装填リジェクト庫に一方向に搬送するように形成し、
前記環状搬送路は、前記紙幣収納部、前記一時収納部、前記紙幣装填部の前記装填リジェクト庫、及び前記運用リジェクト庫に対してそれぞれ異なる分岐合流部を有し、
前記分岐合流部は、
前記搬送路が、前記運用リジェクト庫へ紙幣を搬送するときに、回収処理時の紙幣の搬送方向である第一の搬送方向、および装填処理時の紙幣の搬送方向である第二の搬送方向のいずれの方向からでも収納可能な運用リジェクト分岐合流部と、
前記搬送路が、前記装填リジェクト庫へ紙幣を搬送するときに、前記第二の搬送方向から紙幣を分岐搬送して収納する装填リジェクト分岐合流部とを有する
紙幣取扱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−84300(P2013−84300A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−1226(P2013−1226)
【出願日】平成25年1月8日(2013.1.8)
【分割の表示】特願2007−281332(P2007−281332)の分割
【原出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】