説明

紙幣識別装置の紙幣挿入センサ装置

【課題】紙幣の挿入を検出する際に外乱光による悪影響を排除し、紙幣の挿入を確実に検出することが可能である紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】紙幣識別装置(1)のセンサ手段(9)は、紙幣通路(8)の第1の位置に対向して配置された光源(12)と、第2の位置に対向して配置された受光素子(13)とを含み、さらに、光源(12)と対向する入力端(14a)と受光素子(13)と対向する出力端(14b)とを備えると共に紙幣通路(8)を隔てて光源(12)と受光素子(13)の反対の側の光学手段(14)を含み、紙幣通路(8)の第1の位置と第2の位置は、紙幣搬送手段(33)に対して紙幣搬送方向の上流部に位置し、光学手段(14)は、紙幣通路(8)を隔てて光源(12)から受光した光を受光素子(13)に誘導し、紙幣通路(8)の第1の位置と第2の位置の双方が挿入紙幣(31)により遮光される際の受光素子(13)の出力により紙幣(31)の挿入を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣の挿入を検出する際に外乱光による悪影響を排除し、外乱光の影響下においても紙幣の挿入を確実に検出することが可能な紙幣識別装置の紙幣挿入センサ手段に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣識別装置は、通常、紙幣搬送路に沿って設けられた磁気センサ及び光センサを併用して紙幣から識別情報を収集し、この識別情報に基いて紙幣の真偽や種別を判定する。しかしながら、糸やテープ等を紙幣に取り付け、識別情報の収集が完了し、挿入された紙幣が有効であると判定された段階で糸やテープにより紙幣を引き戻す操作が行われることがある。かかる問題を解決するためには、上記の磁気センサ及び光センサに対して紙幣の搬送方向の上流の位置にシャッタ部材を設けて、紙幣がシャッタ部材を通過した後に紙幣搬送路を閉鎖してから紙幣の有効性を判定する必要がある。上記のシャッタ部材の動作のタイミングを正確に決定するためには、紙幣挿入口の近傍に紙幣挿入センサ部を設けて、紙幣の挿入を検出する必要がある。
【0003】
上記の紙幣の挿入を検出する手段として、弾性体により所定の位置に付勢したレバーを使用し、紙幣がそのレバーを押す際のレバーの復元力に基づいて紙幣の挿入を検出する手段が使用されていた。上記のレバーを使用する方法は、外乱光の影響を受けることがなく、強度が十分である新しい紙幣の挿入を検出する際には問題を生じない。しかしながら、使い古してしわにより強度が低下した紙幣やぬれて強度が低下した紙幣の挿入を検出する際には、上記のレバーが正常に動作せず、挿入された紙幣が詰まりやすいという問題があった。
【0004】
上記の問題を解決するため、光センサを使用して紙幣の挿入を検出する方法が特許第3420787号明細書において提案されている。上記の方法においては、検出の精度を高めるため、発光素子と受光素子とを組み合わせて使用する方法が採用されている。すなわち、紙幣通路を隔てて発光素子と受光素子とを対向するように配置し、その発光素子と受光素子との間を紙幣が通過する際にその紙幣を透過した光の減衰を受光素子が受光した光量を検知し、その光の減衰量に基づいて紙幣の挿入を検出しようというものである。しかしながら、上記の方法においては、発光素子と受光素子とを対向して配置する必要があるため、基板を複数用意せざるを得なくなり、製造時のコストが増大するという問題がある。
【0005】
基板を複数用意する必要性を排除する方法は、例えば、特開2001-297349号公報に開示されている。第6図は、特開2001-297349号公報に開示されている紙幣挿入センサ部を図解したものである。
【0006】
この紙幣挿入センサ部60は、発光素子61と受光素子62とプリズム63とからなる。発光素子61と受光素子62は、基板64上に配置されて、紙幣通路66からみて一方の側に位置する。発光素子61と受光素子62は、紙幣通路66に沿って、発光素子61が紙幣通路66の第1の位置と対向するように、また、受光素子62が紙幣通路66の第2の位置と対向するように配置される。発光素子61と受光素子62との間には、紙幣搬送用ローラ67が位置する。第1の位置と第2の位置は、紙幣挿入口6に対して紙幣挿入方向の下流部分に位置する。プリズム63は、紙幣通路66からみて発光素子61と受光素子62が位置する側と反対の側に位置する。プリズム63は、紙幣通路66の第1の位置において発光素子61と対向する入力端63aと紙幣通路66の第2の位置において受光素子62と対向する出力端63bとを備え、紙幣通路66の第1の位置において対向する発光素子61から放射された光69aを入力端63aで受光し、その受光した光を誘導して、紙幣通路66の第2の位置において対向する受光素子62に出力することが可能であるように、U字形状を有するように形成される。
【0007】
紙幣識別装置に挿入された紙幣31は、紙幣挿入口6、発光素子61とプリズム63の入力端63aとの間にある第1の位置、搬送用ローラ67、プリズム63の出力端63bと受光素子62との間にある第2の位置の順番に通過する。発光素子61から放射された光69aは、紙幣通路66の第1の位置において挿入紙幣31を透過して減衰し、そして入力端63aからプリズム63に入射する。プリズム63は、紙幣通路66に位置する挿入紙幣31を第1の位置において透過した後の光量69bを受光し、その光を誘導して、再び紙幣通路66に戻す。プリズム63を伝播した光は、再び紙幣通路66にいたり、受光素子62によって受光される。
【0008】
第7図は、紙幣挿入センサ部60の各部の光量に対応する電圧レベルと閾値電圧71との関係を示している。紙幣31が紙幣挿入口6に挿入されると、挿入紙幣31は、プリズム63の入力端63aと発光素子61との間に位置する。発光素子61から放射された光69aは、挿入紙幣31を透過して減衰し、入力端63aからプリズム63に入射する。外乱光36の影響を無視できる場合には、紙幣31を透過した後の減衰した光量69bは、減衰した後の光量を保ったまま受光素子62で受光される。受光素子62で受光された減衰した光量69bに対応する電圧レベルは、第7図の点線で示されるレベルとなり閾値71よりも小さな値となる。この状況下では、紙幣挿入センサ部60は、紙幣31の挿入を検出することが可能である。紙幣31の挿入を検出すると、図示しない制御装置が図示しない搬送用モータを制御して搬送用ローラ67を駆動させる。
【0009】
これに対して、外乱光36の影響を無視できない場合には、紙幣31を透過し一度減衰した光69bの光量は、外乱光の影響を受けて所定の光量よりも大きな光量となる。この外乱光36の影響を受けた光69bが受光素子62で受光されると、光69bの光量に対応する電圧レベルは、第7図の実線で示された値まで減少するのみであるため、閾値71よりも大きな値となる。この状況下では、紙幣挿入センサ部60が紙幣68の挿入を検出することは不可能である。従って、紙幣挿入センサ部60が信号を出力しないため、制御装置が搬送用モータを制御して搬送用ローラ67を駆動させることはない。挿入紙幣31は、搬送用ローラ67に阻まれて先に進むことができず、紙幣を搬送することが不可能であるという問題を生ずる。
【0010】
上記の紙幣識別センサ部を使用する紙幣識別装置は、外乱光の影響を無視することができない屋外のような場所で自動販売機等を使用する場合に、紙幣の挿入を確実に検出することができないことに起因して、挿入された紙幣を搬送することができず、その結果、紙幣の識別動作ができないことから自動販売機等では販売のチャンスを失ってしまうという問題があった。
【0011】
【特許文献1】特許第3420787号明細書
【特許文献2】特開2001-297349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本願発明の目的とするところは、外乱光の影響を無視することができない屋外のような場所で自動販売機等を使用する場合においても、紙幣の挿入を確実に検出することが可能であるように紙幣挿入センサ部を改良し、紙幣が挿入されているにもかかわらずその紙幣を検出することができないことに起因して挿入紙幣を搬送することができず、その結果、その紙幣の識別動作ができないことから自動販売機等で起こる販売のチャンスを失ってしまうという課題を解決することが可能である紙幣識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの態様において、本発明に従った紙幣識別装置は、紙幣通路と紙幣搬送手段と紙幣識別部とを備え、紙幣通路に面して配置され紙幣の挿入を検出するセンサ装置を含む。そのセンサ装置は、紙幣通路の第1の位置と対向するように配置された少なくとも1つの光源と、紙幣通路の第2の位置と対向するように配置された少なくとも1つの受光素子とを含む。センサ装置は、さらに、光源と対向する少なくとも1つの入力端と受光素子と対向する少なくとも1つの出力端とを備えると共に紙幣通路を隔てて光源と受光素子とが配置された側と反対の側に配置された光学手段を含み、紙幣通路の第1の位置と第2の位置は、紙幣搬送手段に対して紙幣搬送方向の上流部に位置し、光学手段は、紙幣通路を隔てて光源から受光した光を受光素子に誘導するように構成されており、紙幣通路の第1の位置と第2の位置の双方が紙幣の挿入に伴って紙幣により遮光される際の受光素子の出力によって紙幣の挿入を検出する。
【0014】
また、本発明の更なる態様において、本発明に従った紙幣識別装置は、紙幣通路と紙幣搬送手段と紙幣識別部とを備え、紙幣通路に面して配置され紙幣識別装置において紙幣の挿入を検出するセンサ装置を含む。そのセンサ装置は、紙幣通路の第1の位置と対向するように配置された少なくとも1つの光源と、紙幣通路の第2の位置と対向するように配置された少なくとも1つの受光素子と、光源と対向する少なくとも1つの入力端と受光素子と対向する少なくとも1つの出力端とを備える。さらに、センサ装置は、紙幣通路を隔てて光源と受光素子とが配置された側と反対の側に配置された光学手段とを含む。紙幣通路の第1の位置と第2の位置は、紙幣搬送手段に対して紙幣搬送方向の上流部に位置し、紙幣通路の第1の位置において紙幣により遮光され、且つ、光学手段の出力端から受光素子が受光する光の少なくとも一部分が紙幣通路の第2の位置において紙幣により遮光されることにより、受光素子が受光する光が所定の光量よりも小さな光量を有する場合に、受光素子が受光した光量に基づいて該紙幣を検出する。
【0015】
上記の構成により、本発明の紙幣識別装置は、外乱光の影響を無視することができない屋外のような場所で自動販売機等を使用する場合においても、紙幣の挿入を確実に検出することが可能となり、紙幣が挿入されているにもかかわらずその紙幣を検出できないことに起因して挿入紙幣を搬送することができず、その結果、紙幣の識別動作ができないことから自動販売機等で起こる販売のチャンスを失ってしまうという課題を解決することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1Aは、本発明に従った紙幣識別装置1の斜視図を示しており、図1Bは、紙幣識別装置1の断面図を示している。本発明の紙幣識別装置1は、紙幣識別部2と、紙幣収容部3と、紙幣識別部2と紙幣収容部3とを収容する本体部4と、本体部4の前面に取り付けられ、紙幣挿入口6を備えたマスク部5とからなる。
【0017】
紙幣識別部2は、取り付け軸10により本体部4に着脱可能に取り付けられる。紙幣識別部2は、主基板7を備えており、主基板7には、本発明の紙幣識別装置において使用される電子部品が集中配置されている。また、紙幣識別部2は、紙幣挿入口6から紙幣収容部3にわたって延在する紙幣通路8を備えており、紙幣通路8に沿って、紙幣挿入センサ部9と、図示しない紙幣識別センサ部とを備えている。紙幣通路8において、挿入された紙幣は、図示しない紙幣搬送手段によって搬送される。マスク部5は、紙幣挿入口6を備えている。マスク部5の外壁は、好ましくは、ダイキャスト合金等の剛性部材によって形成され、通常は、マスク部5は、ねじ等により本体部4に固着されている。紙幣収容部3は、有効であると判定された紙幣の束を整列した状態で蓄積する区画と、紙幣を押圧する図示しないリフト部材とそのリフト部材を駆動させるための図示しない駆動用モータ等を収容する区画とからなる。紙幣収容部3は、本体部4に着脱可能に装置されている。
【0018】
第2図は、紙幣識別部2及びマスク部5の周辺部分の拡大図である。挿入紙幣は、紙幣挿入口6を介して紙幣通路8に至る。紙幣は、紙幣通路8を通過して紙幣収容部3へと、紙幣挿入口6が存在する上流部から紙幣収容部3が存在する下流部へと紙幣搬送手段33によって搬送される。紙幣通路8に沿って紙幣搬送手段33のさらに上流の部分には、紙幣挿入センサ部9が設けられている。従って、紙幣挿入口6から挿入された紙幣は、紙幣通路8の紙幣挿入センサ部9を通過し、紙幣搬送手段33によって搬送される。
【0019】
紙幣挿入センサ部9は、光源12と、受光素子13と、光学手段14、光ガイド15、及び光ガイド16とからなる。光源12と受光素子13は、紙幣搬送方向の上流から下流に向かって、紙幣通路8に沿って、主基板7上に、光源12、受光素子13の順に配置される。光源12としては、通常の電球のみならず、発光ダイオード(LED)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、レーザダイオード等の素子を使用することが可能である。LEDを光源として使用する場合には、可視光放射LEDはもちろん、紫外線放射LED、赤外LEDを使用してもよい。さらに、離れた位置にある上記の発光素子に一端において光学的に接続された光ファイバ等の光導波路の他端を光源として使用してもよい。また、受光素子としては、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトIC等を使用することが可能である。光源12と受光素子13は、紙幣通路8に沿って、光源12が紙幣通路8の第1の位置と対向するように、また、受光素子13が紙幣通路8の第2の位置と対向するように配置される。
【0020】
光ガイド15は、光源12と向かい合う入力端15aを備え、光ガイド16は、受光素子13と向かい合う出力端16aを備え、光ガイド15と光ガイド16は、紙幣通路8からみて光源12及び受光素子13と同じ側に配置される。光ガイド15及び光ガイド16は、透明プラスティック部材、グラスファイバ、ポリマファイバ、光導波路用フッ化ポリイミドその他の光導波路形成用の部材を使用して形成することが可能である。光学手段14は、第1の位置において紙幣通路8を隔てて光ガイド15と対向すると共に、第2の位置において紙幣通路8を隔てて光ガイド16と対向するように配置されている。光学手段14は、紙幣通路8に位置する挿入紙幣を第1の位置において透過した後の光を受光し、その光を誘導して、再び紙幣通路8に戻すようにU字形状の断面を有するような形状に形成される。従って、この光学手段14は、プリズム、グラスファイバ、ポリマファイバ、光導波路用フッ化ポリイミドその他の光導波路形成用の部材を使用して形成することが可能であり、さらに、所定の角度をなして対向して配置される一対のミラーを使用してもよい。第1の位置と第2の位置は、共に、紙幣搬送手段33に対して紙幣通路8の紙幣搬送方向の上流部に位置し、上流から下流に向かって第1の位置、第2の位置、紙幣搬送手段33の順番で配置される。挿入された紙幣は、光ガイド15と光学手段14との間と光ガイド16と光学手段14との間を通過する。
【0021】
紙幣挿入センサ部9が紙幣の挿入を検出すると、主基板7上の図示しない制御部は、図示しないモータを制御して紙幣通路8に沿って配置された紙幣搬送手段33を駆動させる。紙幣通路8に沿って図示しない搬送位置検出センサが設けられており、搬送位置検出センサは、紙幣の搬送位置を検出する。挿入紙幣が搬送位置検出センサを通過し、通過した紙幣が真券であると判定されると、紙幣通路8を逆戻りしないように図示しないシャッタ部材により紙幣通路8を閉鎖する。シャッタ部材による紙幣搬送路が閉鎖されるまでの間に、紙幣位置検出センサ、紙幣挿入センサの順で紙幣を検出した場合には、紙幣の不正な抜き取りが行われたと判断し、紙幣識別センサは、紙幣真券信号を出力しない。
【0022】
シャッタ部材が紙幣通路8を閉鎖する前に、図示しない紙幣識別センサ部が紙幣の有効性を判定する。紙幣の識別は、磁気センサと光センサとを併用することにより行われ、挿入された紙幣についてパターンマッチングを行うことにより紙幣の真偽を判定する。紙幣識別センサは、上記の判定の際に、あるレンジの範囲内にある紙幣を有効な紙幣であると判定する。紙幣識別部2は、このレンジを調整するための機能を備えている。例えば、紙幣識別部2のメンテナンスの後に、紙幣識別部2を紙幣識別装置の本体部1に完全に取り付けることなく放置した場合には、隙間からの外乱光等により、光センサの感度に影響を与える。上記のような場合に、レンジを調整することなく真偽を判定すると、紙幣識別センサは、本来有効であると判断するべき紙幣を拒絶し、あるいは、有効ではないと判断するべき紙幣を有効であると判断することになる。紙幣識別センサが、挿入された紙幣が有効ではないと判断した場合には、その紙幣は、紙幣通路8を逆に通って紙幣挿入口6に戻される。紙幣識別センサ部が、挿入された紙幣が有効であると判断した場合には、シャッタ部材が紙幣通路8を閉鎖すると共に、図示しない紙幣識別手段が、紙幣判定信号を出力し、その紙幣は、紙幣収容部3に搬送される。
【0023】
紙幣収容部3は、図示しないリフト部材とリフト部材を駆動する駆動用モータとを収容する区画と、紙幣を収容するための区画とからなる。紙幣を収容するための区画には、図示しない背板が配置され、背板は、スプリング等により付勢され、収容された紙幣の束をリフト部材に向かって押す。紙幣識別部2を通過した紙幣は、紙幣識別部2と紙幣収容部3との間にあるスリットを介して紙幣収容部3内に誘導される。リフト部材は、誘導された紙幣の束を整列させ、紙幣を収容するための区画に収容するようにその束を背板に向かって押圧する。
【0024】
第3図は、紙幣挿入センサ部9及びその周辺部の拡大図である。挿入紙幣31は、紙幣挿入口6を介して紙幣通路8にいたる。上記のように、紙幣挿入センサ部9は、光源12と、受光素子13と、光導波路として機能する光学手段14、光ガイド15、及び光ガイド16とからなる。光源12と受光素子13は、共に、主基板7上に配置され、紙幣挿入口6と紙幣搬送手段33との間で、紙幣通路8からみて一方の側に位置する。光源12と受光素子13は、紙幣搬送方向の上流から下流に向かって、光源12、受光素子13の順に配置される。光源12は、光ガイド15を介して紙幣通路8の第1の位置に光を光学的に結合することが可能である位置に配置され、受光素子13は、紙幣通路8の第2の位置を通過した光を光ガイド16を介して受光することが可能である位置に配置される。第1の位置と第2の位置は、共に、紙幣搬送手段33に対して紙幣通路8の紙幣搬送方向の上流部に位置し、上流から下流に向かって第1の位置、第2の位置、紙幣搬送手段33の順番で配置される。
【0025】
光ガイド15は、光源12と向かい合う入力端15aを備え、光ガイド16は、受光素子13と向かい合う出力端16aを備え、光ガイド15と光ガイド16は、紙幣通路8からみて光源12及び受光素子13と同じ側に配置される。光ガイド15は、光源12が放射した光を紙幣通路8の第1の位置に光学的に結合し、光ガイド16は、紙幣通路8の第2の位置を通過した光を受光素子13に光学的に結合する。光学手段14は、上記の第1の位置において紙幣通路8を隔てて光ガイド15と対向すると共に、第2の位置において紙幣通路8を隔てて光ガイド16と対向するように配置されている。光学手段14は、挿入紙幣31を紙幣通路8の第1の位置において透過した後の光を受光し、その光を誘導して、再び紙幣通路8に戻すようにU字形状の断面を有するような形状に形成される。
【0026】
挿入紙幣31は、光ガイド15と光学手段14とが対向している第1の位置と、光ガイド16と光学手段14とが対向している第2の位置とを通過する。挿入紙幣31は、紙幣挿入口6、第1の位置、第2の位置の順に通過し、紙幣搬送手段33にいたる。光源12から放射された光35aは、入力端15aから光ガイド15に入射する。光ガイド15を伝播して紙幣通路8にいたり、紙幣通路8の第1の位置において挿入紙幣31を透過して減衰し、そして光学手段14の入力端14aに入射する。光学手段14は、挿入紙幣31を紙幣通路8の第1の位置において透過した後の光35bを受光し、その光を誘導して、再び紙幣通路8に戻す。光学手段14を伝播した光は、出力端14bを経て再び紙幣通路8にいたり、第2の位置において挿入紙幣31を再び透過して光ガイド16に入射する。光ガイド16の出力端16aから放射された光は、挿入紙幣31を紙幣通路8の第2の位置において再び透過して減衰する。挿入紙幣31を第2の位置において透過した光35cは、受光素子13によって受光される。
【0027】
第4図(a)及び(b)は、光源12が放射した光35aの光量に対応する電圧レベルと、挿入紙幣31を第1の位置において透過した後の光35bの光量に対応する電圧レベルと、挿入紙幣31を第2の位置において透過した後の光35cの光量に対応する電圧レベルと、閾値電圧41との関係を示した図である。光源12が放射する光は、連続光であってもよいが、パルス発生回路が所定の周期で生成したパルス列を使用して光源12を駆動することにより放射される光パルス列であってもよい。以下では、光源12は、連続光を放射しているものとして説明する。
【0028】
第4図(a)は、外乱光36が存在しない場合の電圧レベルと閾値電圧41との関係を示している。自動販売機を屋内に配置して使用する場合には、通常、外乱光の影響はきわめて小さく、外乱光が存在しないものとして考えてよい。紙幣挿入口6を通過した挿入紙幣31は、光ガイド15と光学手段14とが対向する紙幣通路8の第1の位置に到達する。外乱光が存在しない場合には、光源12から放射された光35aは、挿入紙幣31を1回透過することにより十分に減衰され、第1の位置において挿入紙幣31を透過した後の光35bの光量に対応する電圧レベルは、閾値電圧41よりも小さな値となる。挿入紙幣31が第2の位置に達する前であれば、上記の光35bがそのまま光学手段14及び光ガイド16により案内されて受光素子13によって受光される。紙幣挿入センサ部9は、この段階で紙幣31の挿入を検出することが可能である。
【0029】
紙幣挿入センサ部9が紙幣31の挿入を検出すると、主基板7上の図示しない制御部が図示しない駆動用モータを制御し、紙幣搬送手段33を駆動させる。その後、紙幣31は、紙幣通路8内を搬送されて搬送位置検出センサが設けられた位置に達する。従って、外乱光の影響がない屋内で自動販売機を使用する場合には、本発明の紙幣識別装置は、紙幣31が第1の位置に達した段階でその挿入を検出することが可能である。
【0030】
第4図(b)は、外乱光36が存在する場合の電圧レベルと閾値電圧41との関係を示している。自動販売機を屋外のような場所に配置して使用する場合には、外乱光の影響を無視することはできない。紙幣挿入口6を通過した挿入紙幣31は、光ガイド15と光学手段14とが対向する紙幣通路8の第1の位置に到達する。光源12から放射された光35aは、第1の位置において挿入紙幣31を1回透過し減衰するが、紙幣31を透過した後の光35bの光量は、外乱光36の影響を受けて十分には低下しないため、光35bの光量に対応する電圧レベルは、依然として閾値電圧41よりも大きな値である。従って、この状態では、紙幣挿入センサ部9が紙幣31の挿入を検出することは不可能である。その後、紙幣31は、光学手段14と光ガイド16とが対向する紙幣通路8の第2の位置に到達する。すなわち、紙幣31は、紙幣通路8の第1の位置において光ガイド15と光学手段14との間に位置すると共に、紙幣通路8の第2の位置においても光ガイド16と光学手段14との間に位置する。第2の位置は、第1の位置の下流に位置するため、紙幣挿入口6からの距離が第1の位置と比較してより大きく、外乱光36の影響を比較的受けにくい。上記の状態において、光源12が放射した光35aは、第1の位置において紙幣31を最初に透過することにより光35bの光量まで減衰し、第2の位置において再び紙幣31を透過することにより光35cの光量にまで大きく減衰する。受光素子13は、光35cを受光し、光35cの光量に対応する電圧レベルは、閾値電圧41よりも小さな値となる。受光素子13が受光した光35cの光量に対応する電圧レベルが閾値41よりも小さな値となった時点で、紙幣挿入センサ部9は挿入紙幣31を検出することが可能であるため、挿入紙幣31は、光ガイド16の出力端16aから放射されて受光素子13が受光する光の全てを遮光する必要はない。すなわち、光学手段の出力端14bから放射されて受光素子13が受光する光の少なくとも一部分を挿入紙幣31が遮光することにより、受光素子13が受光した光35cの光量に対応する電圧レベルが閾値41よりも小さな値となった場合には、紙幣挿入センサ手段9は、挿入紙幣31を検出することが可能である。
【0031】
紙幣挿入センサ部9が紙幣31の挿入を検出すると、主基板7上の制御部が駆動用モータを制御し、紙幣搬送手段33を駆動させる。従って、本発明の紙幣識別装置は、外乱光の影響を無視することができない屋外のような場所で自動販売機を使用する場合においても、紙幣31の挿入を確実に検出することが可能である。上記のことから、本願発明の紙幣挿入センサ部9を使用する紙幣識別装置は、紙幣31が挿入されているにもかかわらずその挿入を検出することができないことに起因して挿入紙幣を搬送することができず、その結果、その紙幣の識別動作ができないことから自動販売機等で起こる販売のチャンスを失ってしまうという問題を解決することが可能である。
【0032】
第5図に、本発明の紙幣識別装置に使用する紙幣挿入センサ部9の他の実施形態を示す。第3図と共通する構成要素には、同一の番号を付すものとする。第3図において説明したのと同様に、紙幣挿入口6から挿入された紙幣31は、紙幣通路8にいたる。紙幣挿入センサ部9は、光源12と、受光素子13と、光導波路として機能する光学手段14とからなる。光源12と受光素子13は、共に、主基板7上に配置され、紙幣挿入口6と紙幣搬送手段33との間で、紙幣通路8からみて一方の側に位置する。光源12と受光素子13は、紙幣搬送方向の上流から下流に向かって、光源12、受光素子13の順に配置される。ここで、光源12は、紙幣通路8の第1の位置と直接対向するように配置され、受光素子13は、紙幣通路8の第2の位置と直接対向するように配置される。光学手段14は、光源12と対向する入力端14aと受光素子13と対向する出力端14bとを備え、紙幣通路8を隔てて光源12と受光素子13と反対の側に配置される。光学手段14の入力端14aは、紙幣通路8を隔てて、紙幣通路8の第1の位置において光源12と直接対向し、光学手段14の出力端14bは、紙幣通路34の第2の位置において受光素子13と直接対向する。
【0033】
挿入紙幣31は、入力端14aと光源12とが対向している第1の位置と出力端14bと受光素子13とが対向している第2の位置とを通過する。挿入された紙幣31は、第1の位置、第2の位置の順に通過し、紙幣搬送手段33にいたる。光源12から放射された光55aは、紙幣通路8の第1の位置において挿入紙幣31を透過して減衰し、そして入力端14aから光学手段14に入射する。光学手段14は、紙幣通路8に位置する挿入紙幣31を第1の位置において透過した後の光55bを受光し、その光を誘導して、再び紙幣通路8に戻す。光学手段14を伝播した光は、再び紙幣通路8にいたり、第2の位置において挿入紙幣31を再び透過する。挿入紙幣31を第2の位置において透過した光55cは、受光素子13によって直接受光される。
【0034】
上記の紙幣挿入センサ部9の各部における光の光量に対応する電圧レベルと閾値電圧との関係は、第4図(a)及び(b)において説明したのと同様である。従って、第5図に示された紙幣挿入センサ部9を使用した紙幣識別装置も、同様に、外乱光の影響を無視することができない屋外のような場所で自動販売機を使用する場合においても、紙幣31の挿入を確実に検出することが可能であり、それによって紙幣31が挿入されているにもかかわらずその挿入を検出することができないことに起因して挿入紙幣を搬送することができず、その結果、その紙幣の識別動作ができないことから自動販売機等で起こる販売のチャンスを失ってしまうという問題を解決することが可能である。
【0035】
以上の実施形態においては、光源12が連続光を放射しているものとして説明したが、パルス発生回路が生成する所定の周期のパルス列を使用して光源12を駆動し、光源12が所定の周期の光パルス列を放射するように構成してもよい。この場合には、上記の実施形態で説明したように、挿入紙幣を透過することにより各パルスについてその光量が減衰する。従って、所定の閾値を設定することにより、受光素子13の出力のうち、所定の光量以上の光量のパルスに対応する出力電圧のパルスのみをカウントするように構成すれば、パルスのカウント数の減少により挿入紙幣を検出することが可能である。この場合においても、挿入紙幣を2回透過した光を受光素子13が受光するようにすれば、外乱光の影響を無視することができない屋外のような場所で自動販売機等を使用するときであっても、挿入紙幣を確実に検出することが可能であり、それによって紙幣が挿入されているにもかかわらずその挿入を検出することができないことに起因して挿入紙幣を搬送することができず、その結果、その紙幣の識別動作ができないことから自動販売機等で起こる販売のチャンスを失ってしまうという問題を解決することが可能である。
【0036】
従って、本発明の紙幣識別装置は、外乱光の影響を無視することができない屋外のような場所で自動販売機を使用する場合においても、紙幣の挿入を確実に検出することが可能であるため、紙幣が挿入されているにもかかわらずその挿入を検出することができないことに起因して挿入紙幣を搬送することができず、その結果、その紙幣の識別動作ができないことから自動販売機等で起こる販売のチャンスを失ってしまうという問題を解決することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1A】本発明に従った紙幣識別装置の斜視図を示す図である。
【図1B】本発明に従った紙幣識別装置の断面図を示す図である。
【図2】本発明の紙幣識別装置の紙幣識別部及びマスク部の周辺部を拡大して示す図である。
【図3】本発明の紙幣識別装置の紙幣挿入センサ部及びその周辺部を拡大して示す図である。
【図4(a)】外乱光36が存在しない場合の紙幣挿入センサ部の各部における光の光量に対応する電圧レベルと閾値電圧との関係を示す図である。
【図4(b)】外乱光36が存在する場合の紙幣挿入センサ部の各部における光の光量に対応する電圧レベルと閾値電圧との関係を示す図である。
【図5】本発明の紙幣識別装置の紙幣挿入センサ部及びその周辺部の他の実施形態を示す図である。
【図6】従来の紙幣挿入センサ部及びその周辺部を拡大して示す図である。
【図7】従来の紙幣挿入センサ部の各部の光量に対応する電圧レベルと閾値電圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 紙幣識別装置
2 紙幣識別部
3 紙幣収容部
4 本体部
6 紙幣挿入口
8 紙幣通路
9 紙幣挿入センサ部
12 光源
13 受光素子
14 光学手段
14a 光学手段14の入力端
14b 光学手段14の出力端
15 光ガイド
15a 光ガイド15の入力端
16 光ガイド
16a 光ガイド16の出力端
33 紙幣搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣通路と紙幣搬送手段と紙幣識別部とを備えた紙幣識別装置において紙幣の挿入を検出するセンサ装置であって、
該紙幣通路の第1の位置と対向するように配置された少なくとも1つの光源と、
該紙幣通路の第2の位置と対向するように配置された少なくとも1つの受光素子と、
該光源と対向する少なくとも1つの入力端と該受光素子と対向する少なくとも1つの出力端とを備え、該紙幣通路を隔てて該光源と該受光素子とが配置された側と反対の側に配置された光学手段とを含み、
該光学手段は、該紙幣通路を隔てて該光源から受光した光を該受光素子に誘導するように構成されており、該紙幣通路の該第1の位置と該第2の位置の双方が紙幣の挿入に伴って該紙幣により遮光される際の該受光素子出力によって紙幣の挿入を検出するようにしたセンサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたセンサ装置において、該紙幣通路の該第1の位置と該第2の位置は、該紙幣搬送手段に対して紙幣搬送方向の上流部に位置するセンサ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサ装置において、該紙幣通路の該第1の位置は、該第2の位置に対して紙幣搬送方向の上流部に位置するセンサ装置。
【請求項4】
紙幣通路と紙幣搬送手段と紙幣識別部とを備えた紙幣識別装置において紙幣の挿入を検出するセンサ装置であって、
該紙幣通路の第1の位置と対向するように配置された少なくとも1つの光源と、
該紙幣通路の第2の位置と対向するように配置された少なくとも1つの受光素子と、
該光源と対向する少なくとも1つの入力端と該受光素子と対向する少なくとも1つの出力端とを備え、該紙幣通路を隔てて該光源と該受光素子とが配置された側と反対の側に配置された光学手段とを含み、
該紙幣通路の該第1の位置と該第2の位置は、該紙幣搬送手段に対して紙幣搬送方向の上流部に位置し、
該紙幣通路の第1の位置において該紙幣により遮光され、且つ、該光学手段の出力端から該受光素子が受光する光の少なくとも一部分が該紙幣通路の第2の位置において該紙幣により遮光されることにより、該受光素子が受光する光が所定の光量よりも小さな光量を有する場合に、該受光素子が受光した光量に基づいて該紙幣を検出するセンサ装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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