説明

紙幣識別装置

【課題】蛍光表示された紙幣の識別においては、複数個の発光ダイオードと受光トランジスタが必要であり大型化していた。
【解決手段】紙幣2の挿入口21と、この挿入口21に連結された通路23と、この通路23に設けられた搬送手段24と、通路23の一方の壁面に設けられた発光ダイオード25と、他方の壁面に設けられたフォトトランジスタ26と、このフォトトランジスタ26から出力される信号に基づいて紙幣2の識別を行う識別部30を備え、発光ダイオード25から放射される光は紙幣2を透過するとともに紙幣2の蛍光表示部16に塗布された蛍光体を励起させる波長としたものである。これにより、初期の目的を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の面が蛍光表示された紙幣を識別する紙幣識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、一方の面が蛍光表示された紙幣を識別する従来の紙幣識別装置について図面を参照しながら説明する。図4において、1は紙幣2の挿入口であり、この挿入口1には通路3が連結されている。また、この通路3にはプーリとタイミングベルトとで構成された搬送手段4が設けられている。
【0003】
5は、通路3の上壁面に設けられた紫外線を放射する発光ダイオードであり、6は、紙幣2で反射された紫外線を受光するフォトトランジスタである。この発光ダイオード5とフォトトランジスタ6は、通路3の上壁面に設けられている。
【0004】
また、7は、通路3の下壁面に設けられた紫外線を放射する発光ダイオードであり、8は、紙幣2で反射された紫外線を受光するフォトトランジスタである。このフォトトランジスタ8は、通路3の下壁面に設けられている。
【0005】
そして、これらのフォトトランジスタ6と8の出力はリニア増幅器9と、対数増幅器10と、A/D変換器11を介して識別部12に接続されている。また、14は、識別部12の出力が接続された出力端子である。
【0006】
また、15は制御部であり、この制御部15からは発光ダイオード5と7に接続されている。13はメモリであり、識別部12に接続されている。17は制御部15に接続された駆動手段であり、搬送手段4を駆動するものである。14は、識別部12の出力が接続された出力端子である。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平10−3561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような一方の面が蛍光表示された紙幣を識別する従来の紙幣識別装置では、通路3の上壁面に紫外線を放射する発光ダイオード5とフォトトランジスタ6が設けられ、通路3の下壁面にも同様に紫外線を放射する発光ダイオード7とフォトトランジスタ8とが設けられていた。このように、複数個の紫外線を放射する発光ダイオード5,7とフォトトランジスタ6,8が設けられている。これらの素子で紙幣2の蛍光表示部16(図2参照)に塗布された蛍光体を検出する必要があった。
【0009】
これは、以下の理由によるものである。即ち、紫外線を放射する発光ダイオード5,7から放射される紫外線は紙幣2の蛍光表示部16に塗布された蛍光体を励起させることはできるが、紙幣2を透過することはできない。従って、紙幣2の表面を上にして挿入口1に挿入した場合でも紙幣2の裏面を上にして挿入口1に挿入した場合でも、共に紙幣2が識別できるように紙幣2を挟んで、通路3の上壁面と下壁面に夫々反射型のセンサを設ける必要があった。
【0010】
そのために、複数個の発光ダイオード5,7とフォトトランジスタ6,8が必要であったため、紙幣識別装置が大型化してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、この問題を解決したもので、小型化された紙幣識別装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために本発明の紙幣識別装置は、発光ダイオードから放射される光は紙幣を透過するとともに前記紙幣の蛍光表示部に塗布された蛍光体を励起させる波長を有する発光ダイオードを用いたものである。これにより、初期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、発光ダイオードから放射される光は紙幣を透過するとともに前記紙幣の蛍光表示部に塗布された蛍光体を励起させる波長を有する発光ダイオードを用いたものであるので、紙幣の表面挿入であっても裏面挿入であっても、通路の一方の壁面に発光ダイオードを設けるとともに他方の壁面には受光素子の一組を設けるのみで、透過した光で紙幣の蛍光表示を検出することができる。
【0014】
従って、従来のように通路の上壁面に発光ダイオードと受光素子を設けるとともに通路の下壁面にも発光ダイオードと受光素子を設ける必要はなく、発光ダイオードと受光素子の数を減らすことができるので、小型化された紙幣識別装置を提供することができる。
【0015】
また、発光ダイオードと受光素子の数を少なくすることができるので、低価格化が実現できるとともに、センサの構成が単純化され故障原因が少なくなる。
【0016】
更に、偽貨では蛍光印刷が少ないので、偽造紙幣の検出が容易にできる。
【0017】
更にまた、発光ダイオードとして、紫色発光ダイオードを用いれば、紫色は可視光であるので、サービス性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における紙幣識別装置のブロック図である。図1において、21は紙幣2の挿入口であり、23はこの挿入口21に連結して設けられた通路である。24は、通路23に設けられた搬送手段であり、プーリとこのプーリに架けられたタイミングベルトとで構成されている。
【0019】
25は、通路23の上壁面に設けられた発光ダイオードであり、発光色は紫色を発光するものである。26は受光素子としてのフォトトランジスタであり、通路23の下壁面に設けられるとともに、発光ダイオード25と対向して設けられている。そして、紙幣2はこの発光ダイオード25とフォトトランジスタ26の間を走行する。
【0020】
27は、フォトトランジスタ26の出力が接続されたリニア増幅器であり、このリニア増幅器27の出力には、対数増幅器28が接続されている。対数増幅器28を用いる理由は、入力レンジを大きくできるためである。即ち、対数的に増幅されるので、小信号入力では増幅度が大きくなり、詳細な信号の変化を正確に検出することができる。また、大信号入力では増幅度が小さくなり、適正な信号を出力することができることによる。これは、人間の感覚に近いものである。
【0021】
この対数増幅器28の出力はA/D変換器29を介して識別部30に接続されている。そして、この識別部30の出力は出力端子31に接続されている。32は、紙幣2の基準データが格納されたメモリであり、識別部30に接続されている。
【0022】
なお、図示していないが、識別部30内には、A/D変換器29の出力が一方の入力に接続されるとともに他方の入力にはメモリ32の出力が接続された比較器と、この比較器の出力が接続された判別器とが設けられており、この判別器の出力は出力端子31に接続されている。
【0023】
33は、制御部であり、この制御部33の出力は搬送手段24を駆動する駆動手段34に接続されている。また、この制御部33の出力は発光ダイオード25にも接続されている。
【0024】
以上のように構成された紙幣識別装置について、以下にその動作を説明する。挿入口21から図2に示すような紙幣2が挿入されると、この紙幣2は通路23に設けられた搬送手段24によって、奥方向に引き込まれる。この搬送手段24は駆動手段34で駆動されており、1秒間に1枚の速度で紙幣2を搬送する。なお、紙幣2は、蛍光表示部16内に蛍光塗料が塗布された蛍光体を有したものである。
【0025】
このようにして、挿入された紙幣2は、通路23の上壁面に設けられた発光ダイオード25から放射された紫色光で、紙幣2の表面に設けられた蛍光表示部16内に塗布された蛍光体が励起されて略黄色光を発光する。この黄色光は紙幣2を透過してフォトトランジスタ26で電気エネルギーの信号に変換される。そして、この信号は増幅器27と28で増幅されたのち、A/D変換器29でデジタル量に変換される。
【0026】
デジタル量に変換された信号は識別部30内の比較器で、メモリ32内に格納された紙幣2の基準データと比較される。そして、この比較値が予め定められた範囲内に有るか否かを判別器で判別する。判別器では挿入された紙幣2の真偽と金種を判別する。この判別結果は出力端子31から出力される。
【0027】
また、制御部33では、発光ダイオード25を点灯させるとともに、駆動手段34の制御も行っている。
【0028】
図3は、紙幣の透過率の特性曲線である。図3において、縦軸41は透過率(%)であり、横軸42は波長(nm)である。また、43は透過率の特性曲線である。
【0029】
図3において、44は、紫外線(375nm)を紙幣2へ放射した場合の透過率である。この場合、紙幣2の透過率は約1%と非常に小さい。従って、紫外線を用いた場合には、従来のように、反射型の発光ダイオード5,7とフォトトランジスタ6,8を上壁面と下壁面に夫々設ける必要がある。従って、複数個の反射型の発光ダイオードとフォトトランジスタとが必要となる。
【0030】
45は、紫色光(410nm)を紙幣2へ放射した場合の透過率である。この場合、紙幣2の透過率は約4%有することになる。本実施の形態においては、紫色光を発光する発光ダイオード25を用いているので、紙幣2の蛍光表示部16内に塗布された蛍光体を略黄色光に励起するとともに、この略黄色光を透過させてフォトトランジスタ26に伝達することができる。従って、紙幣2を表側挿入しても裏側挿入しても、透過率の相違は若干あるが判定基準を表側挿入用と裏側挿入用と2種類設けることにより、一組の発光ダイオード25とフォトトランジスタ26を用いて識別することができる。
【0031】
これは、紙幣2の特徴データを全て取り込んだ後、挿入された紙幣2が表面挿入か裏面挿入かを判断するので、判定基準を使い分けることができるものである。その判定基準は、紫色光の紙幣2の透過率は約4%、略黄色光の紙幣2への透過率は約10%であることに基づいて設けている。透過率4%の場合は小信号となるが、対数増幅器28を設けているので、効率良く小信号を増幅することができる。
【0032】
このような配慮をすることにより、紙幣2の挿入口21への挿入が表面挿入であっても裏面挿入であっても、通路23の一方の壁面に発光ダイオード25を設けるとともに他方の壁面にはフォトトランジスタ26を設けるのみで、紙幣2の蛍光表示部16に塗布された蛍光体を検出することができる。
【0033】
従って、従来のように通路3の上壁面に発光ダイオード5とフォトトランジスタ6を設けるとともに通路3の下壁面にも発光ダイオード7とフォトトランジスタ8を設ける必要はなく、小型化された紙幣識別装置を提供することができる。なお、蛍光体は波長が410nmの紫色光以下の波長で励起させることができる。
【0034】
また、発光ダイオード25とフォトトランジスタ26の数を少なくすることができるので、紙幣識別装置の低価格化が実現できる。また、構成が単純化されるので、故障原因が少なくなる。
【0035】
更に、偽造紙幣では、蛍光印刷がされることは少ないことが予想され、本実施の形態の紙幣識別装置を用いることにより、蛍光印刷の無い偽造紙幣の検出が容易にできる。
【0036】
更にまた、発光ダイオード25として、紫色発光ダイオードを用いており、この紫色は可視光であるので、故障時におけるサービス性が向上する。
【0037】
46は、青色光(460nm)を紙幣2へ放射した場合の透過率であり、47は赤色光(644nm)を紙幣2へ放射した場合の透過率である。また、48は赤外線(960nm)を紙幣2へ放射した場合の透磁率である。
【0038】
可視光の範囲は、波長が380nm〜810nmであり、紫色光の波長は410nmである。従って、この紫色光は目視が可能である。即ち、紫色光ダイオード25が良品か不良品かは目視で容易に判別することができ、サービス性が向上する。
【0039】
なお、発光ダイオードとして、紫色光の他に赤色光ダイオードと赤外線ダイオードも併せて用いることにより、性質の異なる情報を容易に効率良く検出することができ、より正確な紙幣2の識別をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明にかかる紙幣識別装置は、蛍光体を励起するとともに小型化された紙幣識別装置を実現することができるので、蛍光表示された紙幣を使用する自動販売機や券売機等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1における紙幣識別装置のブロック図
【図2】一方の面が蛍光表示された紙幣の平面図
【図3】紙幣の透過率の特性曲線図
【図4】従来の紙幣識別装置のブロック図
【符号の説明】
【0042】
2 紙幣
16 蛍光表示部
21 挿入口
23 通路
24 搬送手段
25 発光ダイオード
26 フォトトランジスタ
30 識別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に蛍光表示された紙幣を識別する紙幣識別装置であって、前記紙幣識別装置は、前記紙幣の挿入口と、この挿入口に連結された通路と、この通路に設けられた搬送手段と、前記通路の一方の壁面に設けられた発光ダイオードと、他方の壁面に設けられた受光素子と、この受光素子から出力される信号に基づいて紙幣識別を行う識別部とを備え、前記発光ダイオードから放射される光は前記紙幣を透過するとともに前記紙幣の蛍光表示部に塗布された蛍光体を励起させる波長を有する発光ダイオードを用いた紙幣識別装置。
【請求項2】
紫色を発光する発光ダイオードを用いた請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
紫色光と赤色光と赤外線を放射する発光ダイオードを用いた請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項4】
受光素子と識別部との間に対数増幅器が挿入された請求項1に記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−318252(P2006−318252A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140923(P2005−140923)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】