説明

紙幣識別装置

【課題】紙幣識別装置の製造コストを低減させる。
【解決手段】スタッカ12を収納する本体の収納部13の側壁15に外向きに、南京錠の略U字状のつるを挿通させるための施錠孔が穿設された帯状の鍵金具19を突設する。また、鍵金具19をガイドにし側壁15を介して進退自在に、収納部13への挿入位置ではスタッカ12を係止させるとともに施錠孔を出現させ、収納部13からの離脱位置ではスタッカ12を係止解除させるとともに施錠孔を隠蔽させるようにしたストッパ21を設ける。このようにすると、スタッカ12には鍵金具19が不要であるため、紙幣識別装置10に対する施錠装置17の要否に拘わらずスタッカ12を共通化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣識別装置に関し、特に自動販売機などに搭載されて投入された紙幣を識別して収納し、収納された紙幣の盗難を抑止することができる紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、缶ジュースや煙草などの自動販売機においては、その前面扉に、硬貨を投入する硬貨挿入口、紙幣を投入する紙幣挿入口、投入された硬貨や紙幣を返却するための返却レバー、および、釣銭としての硬貨や返却される硬貨を取り出す硬貨返却口などが設けられている。これらの硬貨挿入口および紙幣挿入口は、前面扉の裏面にそれぞれ設けられた硬貨識別装置および紙幣識別装置に一体に形成されている。
【0003】
このような自動販売機に紙幣が投入されると、その紙幣を紙幣識別装置が識別し、正しく識別できた場合には投入された紙幣を内部に設けられた紙幣を収納するスタッカに収納し、正しく識別できなかった場合には返却している。
【0004】
自動販売機に収納された紙幣を回収する場合などの保守時には、自動販売機の前面扉が開けられて内部が露出し、同時に、スタッカを備えた紙幣識別装置も露出することになる。その際、自動販売機は屋外に設置される場合が多いので、紙幣もしくは紙幣を収納したスタッカが盗難される危険がある。
【0005】
このような危険を抑止するため、紙幣識別装置本体にスタッカを装着している場合には、紙幣識別装置本体とスタッカとを施錠して保守時以外はスタッカを容易に取り外せないようにした紙幣識別装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この紙幣識別装置では、紙幣識別装置本体とスタッカとに鍵金具が設けられ、これらの鍵金具を南京錠で互いに結合させることで施錠している。このような南京錠によるスタッカの施錠例について、以下に説明する。
【0006】
図9は従来の紙幣識別装置の外観斜視図、図10は従来の紙幣識別装置の施錠状態を示す外観斜視図である。
従来の紙幣識別装置100は、図9に示したように、その本体に着脱可能に構成されたスタッカ101を備え、そのスタッカ101とこれを紙幣識別装置100本体に収納する収納部の側壁102とにそれぞれ鍵金具103,104が設けられている。これらの鍵金具103,104には、スタッカ101を紙幣識別装置100本体の収納部へ装着した場合に互いに整合する孔部105,106が穿設されている。
【0007】
通常の運用時では、図10に示したように、スタッカ101は、紙幣識別装置100本体の収納部へ装着され、さらに、鍵金具103,104の孔部105,106に南京錠107の略U字状のつるを挿通して施錠される。これにより、着脱可能なスタッカ101は紙幣識別装置100本体に固定され、南京錠107を開錠しない限り紙幣識別装置100本体から取り外すことができなくなる。これにより、保守作業を行っている際に自動販売機の前面扉を開けたままにしても盗難に遭う危険性を低減することができる。
【特許文献1】特許第3137161号公報(段落〔0093〕〜〔0094〕、図30〜図31)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の紙幣識別装置では、以上のような施錠装置を必要とするものと必要としないものとが要求されているので、スタッカと紙幣識別装置本体との双方において、それぞれ2種類用意する必要があり、どうしても紙幣識別装置の製造コストが増加してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、製造コストを低減させることができる紙幣識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上記課題を解決するために、紙幣を収納するスタッカが本体に対して着脱自在にかつ施錠可能に設けられた紙幣識別装置において、前記スタッカを収納する前記本体の収納部の側壁に外向きに突設され、南京錠の略U字状のつるを挿通させるための施錠孔が穿設された帯状の鍵金具と、前記鍵金具をガイドにし前記側壁を介して進退自在に設けられ、前記収納部への挿入位置では前記スタッカを係止させるとともに前記施錠孔を出現させ、前記収納部からの離脱位置では前記スタッカを係止解除させるとともに前記施錠孔を隠蔽させるようにしたストッパと、を備えていることを特徴とする紙幣識別装置が提供される。
【0011】
このような紙幣識別装置によれば、スタッカには鍵金具が不要であるため、紙幣識別装置に対する施錠装置の要否に拘わらずスタッカを共通化することができる。これにより、1種類のスタッカを用意すればよいので、紙幣識別装置の製造コストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の紙幣識別装置は、スタッカには鍵金具が不要であるため、紙幣識別装置に対する施錠装置の要否に拘わらずスタッカを共通化することができる。これにより、1種類のスタッカを用意すればよいので、紙幣識別装置の製造コストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、缶ジュースや煙草などの自動販売機に適用される場合を例に、図面を参照して詳細に説明する。
まず、紙幣識別装置の構成について説明する。
【0014】
図1は本発明による紙幣識別装置の外観斜視図、図2は施錠装置の要部を拡大して示す斜視図、図3は施錠装置の要部詳細を拡大して示す部分破断斜視図、図4は紙幣識別装置の断面を示す斜視図である。
【0015】
この紙幣識別装置10は、自動販売機の前面扉に内側から取り付けられ、図1に示した状態の上部背面側に、紙幣を投入する紙幣挿入口が一体に設けられている。
紙幣識別装置10は、その上部に紙幣挿入口を有する紙幣識別部11が設けられ、下部には、スタッカ12を収納する収納部13が設けられている。この収納部13には、スタッカ12が着脱自在に取り付けられている。すなわち、スタッカ12は、その下部が収納部13に係脱自在に取り付けられる構成を有し、収納部13に係止されている状態では、その係止部を中心に揺動可能になっていて、図1に示したように、上部を引き起こすことができるようになっている。スタッカ12を収納部13に装着するときには、スタッカ12の上部を収納部13へ押し込むことで、スタッカ12の上部両側面に設けられたラッチ14が収納部13の側壁15の縁部に係止され、スタッカ12は、紙幣識別装置10本体に固定される。
【0016】
スタッカ12をその収納部13から取り外す際には、まず、ラッチ14に連結されたラッチ操作部16をそれぞれ内側方向へ移動させ、これによりラッチ14を側壁15の縁部から外す。引き続いて、スタッカ12の上部をそのまま引き起こし、さらにその下部の係止部を外すことによって、スタッカ12をその収納部13から取り外すことができる。
【0017】
紙幣識別装置10は、また、収納部13を構成する側壁15に、施錠装置17が設けられ、スタッカ12の両側面には、その施錠装置17と協働するリブ18がそれぞれ突設されている。
【0018】
施錠装置17は、図2および図3に示すように、収納部13の側壁15に外向きに突設された帯状の鍵金具19を有している。この鍵金具19は、図示はしないが、ねじにより側壁15に固定されている。また、この鍵金具19には、施錠孔20が穿設されている。また、施錠装置17は、鍵金具19をガイドにし、側壁15に進退自在に設けられたストッパ21を有している。
【0019】
このストッパ21は、収納部13の側壁15に設けられたスリット22を介して収納部13の中に鍵金具19を挟んで平行に延びる2つのビーム23と、2つのビーム23の自由端にそれぞれ形成される突起部24とを有している。2つのビーム23は結合部25により結合されていて、その結合部25には鍵金具19が遊貫するガイド孔26が穿設されている。これらのビーム23、突起部24および結合部25は、プラスチックなどの可撓性の樹脂により一体に形成されている。このようなストッパ21は、突起部24によるスナップフィット構造により、ビーム23の自由端が側壁15のスリット22を貫通して配置されている。このストッパ21の突起部24は、スリット22からのストッパ21の脱落を防止している。
【0020】
また、側壁15とストッパ21との間には、ばね27が設けられている。このばね27は、ストッパ21を、ビーム23が収納部13に挿入されている挿入位置から、ビーム23が収納部13から離脱している離脱位置に向けて付勢している。
【0021】
以上の構成の紙幣識別装置10において、その動作について説明する。
まず、スタッカ12に収納された紙幣を回収する際に、施錠装置17が開錠されている場合について説明する。
【0022】
ストッパ21は、ばね27により、収納部13から離脱する方向に付勢されている。このストッパ21が、図4に示すように、離脱位置に移動し、ビーム23とスタッカ12のリブ18との係止状態が解除され、かつ、突起部24が側壁15に係止する。この際、ストッパ21は、鍵金具19の施錠孔20を隠蔽する。さらに、ラッチ操作部16が指で操作されると、この操作に連動してラッチ14はスタッカ12の内側に向かって退避し、ラッチ14と側壁15の縁部との係止は解除され、スタッカ12は、図1に示すような状態になる。これにより、スタッカ12は、その上部が開放されるので、この段階で、スタッカ12に収納されている紙幣を引き抜くことによって回収することができる。あるいは、スタッカ12をその収納部13から取り外し、紙幣を収納したまま会計場所まで持ち運び、そこでスタッカ12内の紙幣を回収することもできる。
【0023】
自動販売機の運用時のような通常状態では、紙幣識別装置10は、その本体にスタッカ12が施錠されることになるが、次に、その施錠動作について説明する。
図5は本発明による紙幣識別装置の施錠状態を示す外観斜視図、図6は施錠状態の施錠装置の要部を拡大して示す斜視図、図7は施錠状態の施錠装置の要部詳細を拡大して示す部分破断斜視図、図8は施錠状態の紙幣識別装置の断面を示す斜視図である。
【0024】
上述のように、スタッカ12をその収納部13へ装着した状態では、施錠装置17のストッパ21は、ばね27によって外側に付勢されているので、鍵金具19の施錠孔20はストッパ21によって隠蔽されている。ここで、ストッパ21をばね27の付勢力に抗して収納部13へ押し込むと、鍵金具19の施錠孔20が出現するので、その施錠孔20に南京錠の略U字状のつるを挿通し、その南京錠を施錠する。これにより、ストッパ21は、図5および図6に示したように、南京錠の略U字状のつるによって収納部13へ押し込まれた状態が維持される。この際、押し込まれたストッパ21は、図7および図8に示したように、そのビーム23の自由端がスタッカ12のリブ18に係合するので、スタッカ12は、たとえラッチ14を外したとしても、取り外すことはできなくなる。これにより、自動販売機の前面扉を開放した状態で係員が持ち場を離れたとしても、紙幣が収納されているスタッカ12の盗難を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による紙幣識別装置の外観斜視図である。
【図2】施錠装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【図3】施錠装置の要部詳細を拡大して示す部分破断斜視図である。
【図4】紙幣識別装置の断面を示す斜視図である。
【図5】本発明による紙幣識別装置の施錠状態を示す外観斜視図である。
【図6】施錠状態の施錠装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【図7】施錠状態の施錠装置の要部詳細を拡大して示す部分破断斜視図である。
【図8】施錠状態の紙幣識別装置の断面を示す斜視図である。
【図9】従来の紙幣識別装置の外観斜視図である。
【図10】従来の紙幣識別装置の施錠状態を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
10 紙幣識別装置
11 紙幣識別部
12 スタッカ
13 収納部
14 ラッチ
15 側壁
16 ラッチ操作部
17 施錠装置
18 リブ
19 鍵金具
21 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を収納するスタッカが本体に対して着脱自在にかつ施錠可能に設けられた紙幣識別装置において、
前記スタッカを収納する前記本体の収納部の側壁に外向きに突設され、南京錠の略U字状のつるを挿通させるための施錠孔が穿設された帯状の鍵金具と、
前記鍵金具をガイドにし前記側壁を介して進退自在に設けられ、前記収納部への挿入位置では前記スタッカを係止させるとともに前記施錠孔を出現させ、前記収納部からの離脱位置では前記スタッカを係止解除させるとともに前記施錠孔を隠蔽させるようにしたストッパと、
を備えていることを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
前記ストッパは、前記鍵金具を挟んで平行に延びる2つのビームと、前記側壁に穿設されたスリットを介して前記収納部の中に延びるそれぞれの前記ビームの自由端に形成されて前記スリットからの脱落を防止する突起部と、それぞれの前記ビームの結合部に穿設されて前記鍵金具が遊貫されるガイド孔とを有していることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
前記ストッパは、前記ビーム、前記突起部および前記結合部が可撓性の樹脂により一体に形成され、前記ビームの自由端が前記突起部によるスナップフィット構造により前記側壁の前記スリットを貫通して配置されるようにしたことを特徴とする請求項2記載の紙幣識別装置。
【請求項4】
前記スタッカは、前記鍵金具が設けられた前記側壁に対向する側面に突設され、前記ストッパが前記挿入位置にあるときに前記ストッパにより係止されて前記本体からの離脱を防止するリブを有していることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項5】
前記ストッパと前記側壁との間に配置されて前記ストッパを前記挿入位置から前記離脱位置へ向けて付勢するばねをさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項6】
前記鍵金具は、前記側壁にねじにより固定されていることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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