説明

紙幣識別装置

【課題】本発明の課題は、紙幣のリトライ操作を短時間でかつ客に不快感を与えないようにする紙幣識別装置を提供することにある。
【解決手段】紙幣挿入口より挿入された紙幣を搬送する搬送手段、挿入された紙幣の真偽を判定するための識別手段とを備えた紙幣識別装置において、前記識別手段にて偽と判定された紙幣を搬送手段により挿入口方向へ搬送する逆転手段と、該逆転手段による紙幣搬送時に再度紙幣の真偽を識別手段により判定する判定手段を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入された紙幣の真偽を判別するための紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣識別装置として、挿入された紙幣の真偽を判定し、偽と判定すると、
一旦、紙幣投入口に紙幣を戻し、ここで客に紙幣が抜き取られない限り、所定回数の識別操作(リトライ操作)を行うようにした紙幣識別装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−162310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1の自動販売機では、偽と判定された紙幣に関しては、紙幣投入口まで紙幣を一旦戻すため、客は、真紙幣を投入しているにもかかわらず、不快感を与えてしまう可能性があり、再識別操作を待たずに紙幣を抜き取ってしまう可能性がある。
また、再識別操作に関し、挿入方向でしか識別操作を行わないため、リトライ動作に時間がかかってしまうという問題点があった。
本発明は、上記問題点に鑑みて、紙幣のリトライ操作を短時間でかつ客に不快感を与えないようにする紙幣識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下のように構成する。
(1)紙幣挿入口より挿入された紙幣を搬送する搬送手段、挿入された紙幣の真偽を判定するための識別手段とを備えた紙幣識別装置において、前記識別手段にて偽と判定された紙幣を搬送手段により挿入口方向へ搬送する逆転手段と、該逆転手段による紙幣搬送時に再度紙幣の真偽を識別手段により判定する判定手段を備えたことを特徴とする。
(2)識別処理は所定回数行うことを特徴とする。
(3)前記判定手段により該判定により紙幣を真と判定した場合には、再受け入れ時には紙幣の真偽を判別せずに受け入れる受入手段とを備えたことを特徴とする。
(4)、所定回数の識別処理の中で、少なくとも1回でも真札と判定することにより、紙幣を取り込みことを特徴とする。
(5)上記逆転手段により紙幣を挿入口方向に搬送時に紙幣挿入口まで戻さないように搬送することを特徴とし、その具体的な構成として、前記紙幣挿入口から識別手段までの距離を紙幣挿入方向の全長より長い間隔に配置することを特徴とする。
(6)識別処理を所定回数行っても偽と判定された時点で、紙幣を紙幣挿入口に返却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、挿入口より挿入された紙幣を取り込む方向に搬送する搬送手段、挿入された紙幣の真偽を判定するための識別手段とを備えた紙幣識別装置において、上記識別手段にて偽と判定された紙幣を搬送手段により挿入口方向へ搬送する逆転手段と、該逆転手段による紙幣搬送時に再度紙幣の真偽を識別手段により判定する判定手段を備えたことにより、従来と同じリトライ回数としてもリトライ処理を短時間で行えるという効果を奏する。
しかも、上記逆転手段により紙幣を挿入口方向に搬送時に挿入口まで戻さないように搬送することで、客に挿入した紙幣が偽判定であったとの不快感を与えないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の実施形態について、図1、図2を用いて説明する。
まず、図1は、紙幣識別装置の概略側面図を示すもので、紙幣識別装置1は、自動販売機あるいは両替機等に搭載され、受け入れた紙幣の金種判定及び真贋判定を行うものである。
この紙幣識別装置1には、紙幣を受け入れるための紙幣挿入口2、紙幣搬送通路3の複数箇所に配置された紙幣受け入れおよび排出用の紙幣搬送ローラ4、紙幣から各識別要素をチェックするための紙幣識別センサ5、受け入れた紙幣を一時貯蔵する紙幣保留部6、紙幣搬送ローラ4を駆動する駆動部の制御、紙幣識別センサ5などの各構成要素を制御するための図示しない記憶部およびタイマを有する制御部7などが装備されている。
この構成において、紙幣挿入口2に挿入された紙幣は、紙幣搬送通路3に設けられた紙幣搬送ローラ4によって内部に搬入され、紙幣識別センサ5を通過したとき真券と判断されれば紙幣保留部6に保留されるものであり、紙幣が紙幣搬送通路3を通過する間に、紙幣の金種判定、真贋判定およびリトライ処理を主制御部7にて行う。
【0007】
この主制御部7には、予め紙幣の再識別を行うためのリトライ回数が設定されており、紙幣識別のリトライ処理における紙幣排出時にも紙幣識別センサ5にて紙幣の真偽判定を行えるように制御するものである。
また、紙幣識別センサ5の設置箇所は、紙幣識別のリトライ処理時においても、紙幣がその紙幣挿入口2まで排出されないように、紙幣挿入口2と紙幣識別センサ5との位置関係となるように配置してなる。
なお、紙幣識別装置1の主制御部7と自動販売機あるいは両替機等の外部制御装置とは、紙幣の真偽判別結果などを通知するための図示しない通信手段で接続されている。
この構成において、紙幣のリトライ処理を図2のフローチャートを用いて説明する。
まず、待機状態において、紙幣投入有無を判断しており(ステップS1)、紙幣が紙幣挿入口2に挿入され、図示しないセンサにて紙幣の挿入を検知すると(ステップS1:YES)、主制御部7は、紙幣搬送ローラ3を正転駆動して紙幣の取り込みを開始する(ステップS2)。次に、搬送される紙幣が紙幣識別センサ5を通過したかを判断し(ステップS3)、紙幣が紙幣識別センサ5を通過すれば(ステップS3:YES)、紙幣識別センサ5を通過する間に得られた信号が主制御部7に入力され、デジタル変換後、紙幣の真偽判定が行われ、挿入された紙幣が真札か否かを判断する(ステップS4)。その結果、真札ではないと判断した場合には(ステップS4:NO)、識別合格フラグがセットされているかを判断し(ステップS5)、識別合格フラグもセットされていないと判断すると(ステップS5:NO)、主制御部7は、紙幣搬送ローラ3を逆転駆動して紙幣の返却を開始する(ステップS6)。
【0008】
この逆転搬送される紙幣が紙幣識別センサ5を通過したかを判断し(ステップS7)、紙幣が紙幣識別センサ5を通過すれば(ステップS7:YES)、紙幣識別センサ5を通過する間に得られた信号が主制御部7に入力され、デジタル変換後、紙幣の真偽判定が行われ、返却処理中においても紙幣が真札か否かを判断する(ステップS8)。
この紙幣返却処理中の真札か否かを判断によっても、真札ではないと判断した場合には(ステップS8:NO)、次に、リトライ回数が所定回数以上かを判断する(ステップS9)。この実施形態の場合には、所定回数を3回と設定してあり、リトライ回数が3回以上で無ければ(ステップS9:NO)、リトライ回数の記憶に加算して(ステップS10)、ステップS2の紙幣搬送ローラ3を正転駆動して紙幣の取り込みを開始する処理に戻る。
【0009】
このようにして、ステップS2〜S10の処理を繰り返し行い、ステップS9にてリトライ回数が3回以上となれば(ステップS9:YES)、紙幣の返却動作を続行して、この時点で初めて、紙幣挿入口2から紙幣が取り出せる位置まで紙幣を排出する(ステップS11)。
前記ステップS8にて、紙幣返却処理中における紙幣の真札か否かを判断により、真札と判断した場合には(ステップS8:YES)、識別合格フラグをセットして(ステップS12)、ステップS2に戻る。
このステップS2からの紙幣再取り込みにより、搬送される紙幣が紙幣識別センサ5を通過したかを判断し(ステップS3)、紙幣が紙幣識別センサ5を通過すれば(ステップS3:YES)、紙幣識別センサ5を通過する間に得られた信号が主制御部7に入力され、デジタル変換後、紙幣の真偽判定が行われ、挿入された紙幣が真札か否かを判断する(ステップS4)。その結果、真札ではないと判断した場合には(ステップS4:NO)、識別合格フラグがセットされているかを判断し(ステップS5)、この場合、識別合格フラグがセットされているため(ステップS5:YES)、紙幣保留部6まで紙幣を搬送する(ステップS13)。
【0010】
このように、一度でも真札と判断すると、紙幣を真札として取り込むものである。
一方、最初の取り込みにおいて、真札と判断すると(ステップS4:YES)、紙幣保留部6まで紙幣を搬送する(ステップS13)。
このように、リトライ処理時にも紙幣の真偽判定を行うことにより、リトライ処理を短時間で行え、しかも、最後の返却時のみしか、紙幣を取り出せる位置にまで返却しないことで、利用者への不快感の低減並びにリトライ時間の短縮にもつながる。
なお、正転搬送時および逆転搬送時に紙幣の真偽判定を必ず行っているが、逆転搬送時において、真札と判断した場合には、次の正転時に真偽判定をせずにそのまま取り込むようにしてもよく、この場合には、より早くリトライ処理を行えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示す紙幣識別装置の概略側面図である。
【図2】本発明の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0012】
1 紙幣識別装置
2 紙幣挿入口
5 紙幣識別センサ
7 主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣挿入口より挿入された紙幣を搬送する搬送手段、挿入された紙幣の真偽を判定するための識別手段とを備えた紙幣識別装置において、前記識別手段にて偽と判定された紙幣を搬送手段により挿入口方向へ搬送する逆転手段と、該逆転手段による紙幣搬送時に再度紙幣の真偽を識別手段により判定する判定手段を備えたことを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
請求項1記載の紙幣識別装置において、識別処理は所定回数行うことを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項3】
請求項1記載の紙幣識別装置において、前記判定手段により該判定により紙幣を真と判定した場合には、再受け入れ時には紙幣の真偽を判別せずに受け入れる受入手段とを備えたことを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項4】
請求項2記載の紙幣識別装置において、所定回数の識別処理の中で、少なくとも1回でも真札と判定することにより、紙幣を取り込みことを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の紙幣識別装置において、上記逆転手段により紙幣を挿入口方向に搬送時に紙幣挿入口まで戻さないように搬送することを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項6】
請求項5に記載の紙幣識別装置において、前記紙幣挿入口から識別手段までの距離を紙幣挿入方向の全長より長い間隔に配置することを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の紙幣識別装置において、識別処理を所定回数行っても偽と判定された時点で、紙幣を紙幣挿入口に返却することを特徴とする紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−58285(P2007−58285A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239663(P2005−239663)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】