説明

紙幣識別装置

【課題】紙幣収納ユニットがロック不要のユーザ仕様であってもある程度の防盗性を持たせた紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】スライド部材7は、ガイド板8aに沿って上方にスライドさせることができる。このような状態とすれば、紙幣収納ユニットを手前側に引き出そうとしたとき、そのロック突起部4aがスライド部材7の係合部7aと干渉する。そのため、紙幣収納ユニットの裏側正面に設けられた操作部4bを片手で操作しただけでは、紙幣収納ユニットを開放して紙幣を取り外すことはできず、南京錠などによる施錠をしなくても紙幣収納ユニットが無断開放されにくくなる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣識別装置に関し、特に自動販売機、券売機、現金自動預け払い機などに搭載可能な紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、清涼飲料水などを無人販売するための自動販売機では、その内部に商品を保管するとともに、前面扉に硬貨を投入する硬貨挿入口、紙幣を投入する紙幣挿入口、投入された硬貨や紙幣を返却するための返却レバー、およびつり銭硬貨などを返却する硬貨返却口などが設けられている。これらの硬貨挿入口、紙幣挿入口は、それぞれ硬貨識別装置、紙幣識別装置と一体に形成され、自動販売機の前面扉に配置される。そして、硬貨識別装置、紙幣識別装置は前面扉の裏側に設置されている。
【0003】
こうした自動販売機をはじめとして、券売機、現金自動預け払い機などに設置される紙幣識別装置は、その内部に紙幣収納用のスタッカを備え、投入された紙幣を識別して、正しく識別できたものについてはスタッカに収納することとし、識別できなかった場合には同じ紙幣挿入口から返却するように構成されている。そのため、このような紙幣識別装置ではスタッカに収納された紙幣が満杯となったとき、その運転を停止しなければならない。したがって、特に自動販売機などへの商品の補給時や保守点検時には、その前面扉を開いて裏面に設置された紙幣識別装置から紙幣を回収する必要が生じる。
【0004】
ところが、屋外に設置される場合が多い自動販売機などでは、その前面扉を開くことでその裏側に設置された紙幣識別装置とともに紙幣が収納されているスタッカが人目に晒されることになる。そのため、スタッカ内の紙幣、あるいはスタッカ自体を盗難される危険があった。
【0005】
このような危険性を抑止する紙幣識別装置として、投入された紙幣を識別する紙幣識別ユニット、および紙幣識別ユニットで識別された紙幣を収納する紙幣収納ユニットを有する紙幣識別装置において、装置本体に紙幣収納ユニットを施錠した状態で設置し、その鍵を持った管理者以外には装置本体から紙幣収納ユニットを取り外したり、その中の紙幣を回収したりすることができないようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図7は、従来の鍵金具を備えた紙幣識別装置を示す斜視図である。紙幣識別装置101のフレームユニット102には、紙幣識別ユニット本体103と紙幣収納ユニット104が設けられている。
【0007】
図7に示すように、紙幣取り出し口104aを備えた紙幣収納ユニット104は、その下部の軸104b周りで支持された状態で、その紙幣取り出し口104aを開いた状態となる。また、フレームユニット102と紙幣収納ユニット104には、それぞれ所定形状の孔部H1,H2が形成された鍵金具105,106が設けられている。
【0008】
この紙幣識別装置1では、紙幣収納ユニット104をフレームユニット102内に押し込むことで、その紙幣取り出し口104aが閉じられた状態となり、フレームユニット102側の鍵金具105と紙幣収納ユニット104側の鍵金具106が重なった状態になる。そこで、これら鍵金具105,106の孔部H1,H2が互いに整合するから、それらを貫通するように南京錠などを用いて施錠することができる。
【0009】
また、南京錠などを使用しない場合には、紙幣収納ユニット104の上部に設けた操作部104cに指を掛けてラッチ104dを外した状態としてから、フレームユニット102内に保持された状態の紙幣収納ユニット104を手前に引き出すだけで、その内部に収納されている紙幣を上部の紙幣取り出し口104aから簡単に取り出すことができる。しかも、南京錠などで施錠をしたときには、紙幣盗難の目的で自動販売機などがバールなどで破壊された場合であっても、紙幣識別ユニット本体103がその設置箇所から安易には取り外せない構造となっているために、防盗性の高い紙幣識別装置となる。
【0010】
こうした紙幣識別装置は、管理者以外の第三者により装置本体の扉が無断で開けられた場合でも、南京錠などの錠前を開けなければ紙幣収納ユニット104の上部を開放できないため、紙幣の不正な抜き取りを可及的に防止することができる。ところが、紙幣収納ユニット104の防盗性が高くなる一方で、南京錠を用いない場合には、片手で紙幣収納ユニット104とフレームユニット102との間のラッチを操作するのみで紙幣の取り出しが可能である。したがって、紙幣収納ユニット104に南京錠などの鍵装置を使用してロック状態とするユーザ仕様と、ロック不要のユーザ仕様とが自由に選択できるという利点がある。
【特許文献1】特許第3137161号公報(段落番号[0093]〜[0094]、図30〜図31)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上述した従来装置が南京錠などによるロックを施していない状態では、紙幣収納ユニット104の操作部104cを片手で操作するだけで紙幣収納ユニット104が開放されてしまう。したがって、自動販売機の前面扉を開いた状態で商品の収納作業が継続して行われるような場合には、紙幣収納ユニット104をいちいち南京錠などによってロックしないと、現金が盗難されるおそれが生じる。
【0012】
また、夜間などに自動販売機の前面扉が部分的にバールなどで破壊されてしまった場合には、南京錠などによってロックされていなければ片手の一動作だけで紙幣収納ユニット104から紙幣を取り出せる。このため、従来の紙幣識別装置では、結局は南京錠などによるロックが不可欠となるという問題があった。
【0013】
そこで、従来の紙幣識別装置には装置本体から紙幣収納ユニットの無断開放を防止するうえでも、南京錠などによらない、より簡易なロック機能が備わっていることが好ましい。
【0014】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、紙幣収納ユニットがロック不要のユーザ仕様であっても、ある程度の防盗性を持たせた紙幣識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では上記問題を解決するために、投入された紙幣を識別する紙幣識別ユニット、および前記紙幣識別ユニットで識別された紙幣を収納する紙幣収納ユニットを有する紙幣識別装置において、前記紙幣識別ユニットおよび前記紙幣収納ユニットが着脱自在に装着されるフレームユニットと、前記フレームユニットの側壁に摺動自在に取り付けられ、前記フレームユニットの側壁から内側に突設された係合部を有するスライド部材と、前記紙幣収納ユニットの側面に前記フレームユニットの側壁と対向して固着され、前記スライド部材を所定のロック位置にスライドさせたとき、前記係合部と係合するように突設されたロック突起部と、を備え、前記紙幣収納ユニットが前記フレームユニットに装着された状態で前記スライド部材を前記ロック位置にスライドして前記係合部に前記ロック突起部を係合させることにより、前記紙幣収納ユニットを前記フレームユニットから離脱不能なロック状態にしたことを特徴とする紙幣識別装置が提供される。
【0016】
この紙幣識別装置では、片手の一動作だけでは紙幣収納ユニットを取り外すことができないようになる。したがって、紙幣収納ユニットが無断開放されにくくなるから、そのことで生じる紙幣の盗難を容易に防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の紙幣識別装置によれば、紙幣収納ユニットに簡易ロック機能を持たせることで、南京錠などのロック手段を用いない場合でも、ある程度の防盗性を持たせた紙幣識別装置が提供される。したがって、紙幣識別装置がロック機能を必要としない状態で使用される場合でも、ある程度の防盗性が保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態に係る紙幣識別装置について、図面を参照して説明する。
最初に、紙幣識別装置の構成について説明する。
図1は実施の形態に係る紙幣識別装置を示す斜視図、図2は紙幣収納ユニットを開放状態としたときの紙幣識別装置を示す斜視図、図3は紙幣収納ユニット、スライド部材、ガイド部材の形状を示す斜視図、図4はフレームユニット、およびそこに取り付けられるスライド部材とガイド部材を示す斜視図である。
【0019】
この紙幣識別装置1は、フレームユニット2、紙幣識別ユニット3、および紙幣収納ユニット4から構成されている。フレームユニット2には、その上下に突出する切り起し片2a,2bが設けられており、自動販売機などの前面扉(図示せず)に取り付けられるようになっている。紙幣識別ユニット3は、その紙幣挿入口を正面に向けた状態で、前面扉の裏側からフレームユニット2の上部に着脱自在に装着される。紙幣収納ユニット4は、紙幣識別ユニット3の直下でフレームユニット2に着脱自在に装着される。
【0020】
図1の紙幣識別装置1は、紙幣収納ユニット4がフレームユニット2に装着された状態を示している。ここで、紙幣収納ユニット4をフレームユニット2に装着するには、フレームユニット2の裏側から紙幣収納ユニット4の下部を斜めに差し込んで、図3に示す紙幣収納ユニット4の側面に形成されたガイド5を、フレームユニット2の左右側壁にねじ込まれたガイドピン6に係合させる。そして、紙幣収納ユニット4の上部が紙幣識別ユニット3の下面に一致するまで起立させることにより、フレームユニット2内に押し込むことができる。
【0021】
なお、スライド部材7、およびこのスライド部材7をロック位置とロック解除位置との間でガイドするガイド部材8などは、後述する状態でフレームユニット2にあらかじめ取り付けられている。
【0022】
図2では、紙幣識別装置1の紙幣収納ユニット4が開放された状態で示してある。紙幣収納ユニット4には、図3(A)にも示されるように、その側面上部のフレームユニット2の側壁2c,2dと対向する位置にロック突起部4aが固着されている。このロック突起部4aは、図3(B)に拡大して示すスライド部材7の係合部7aと係合可能な形状をなしている。図3には、紙幣収納ユニット4、スライド部材7とともに、ガイド部材8がいずれもフレームユニット2から分離した状態で示されている。
【0023】
紙幣収納ユニット4の正面には、一対の操作部4bが所定間隔離れて左右に並んで配置されており、これらの操作部4bに連動するように、紙幣収納ユニット4の左右側面に設けられたラッチ4cを内側方向に移動させることができる。すなわち、ラッチ4cはフレームユニット2の左右の縁部に係止されることで、図1に示すように紙幣収納ユニット4をフレームユニット2に固定できる。また、操作部4bを内側に移動させることで、ラッチ4cの係止が外れるから、紙幣収納ユニット4を図2の状態まで引き出して、そこに収納された紙幣を紙幣取り出し口4dから抜き取ることができる。
【0024】
スライド部材7には、互いに同一方向に平行に延びる係合部7aとビーム7bとが左右に並んで設けられており、さらに上下方向にスリット7cが形成されている。また、ビーム7bの自由端には、外側を向く突起7dが形成され、さらにスライド部材7には、後述する簡易ロック状態を維持するための位置決め穴7eが形成されている。また、ガイド部材8はフレームユニット2の側壁に取り付けられたとき、垂直に起立するガイド板8aを備え、そこに孔部8bが形成されている。
【0025】
つぎに、フレームユニット2にスライド部材7とガイド部材8とを設置する手順について説明する。
図4に示すように、フレームユニット2の左右側壁2c,2dのうち、一方の側壁2dには、スライド部材7の左右の幅に合わせて2つの開口9a,9bが形成されている。最初に、これらの開口9a,9bに、フレームユニット2の側壁2dの外側から、それぞれスライド部材7の係合部7aとビーム7bをはめ込む。これによって、スライド部材7はその係合部7aがロック突起部4aと係合するロック位置から、その係合が解除されるロック解除位置まで、フレームユニット2の側壁2dを上下方向にスライドすることができる。
【0026】
その後、フレームユニット2の内側からガイド部材8のガイド板8aを開口9bに挿入して、最後に、フレームユニット2の外側からガイド部材8がねじ10によって固定される。これによって、ガイド部材8のガイド板8aはスライド部材7のスリット7cに挿入された状態となる。なお、紙幣識別ユニット3および紙幣収納ユニット4は、その後にフレームユニット2に装着される。なお、図4におけるフレームユニット2の右側壁2dには、後述する簡易ロック状態を維持するための位置決め突起9cが形成されている。
【0027】
以上のように構成された紙幣識別装置において、その動作について説明する。
図5は、簡易ロックの開錠状態を示す動作説明図である。ここで、同図(A)に矢印で示すように、スライド部材7はフレームユニット2の内側から突出しているガイド部材8に対して、そのガイド板8aに沿ってスライドし、下方のロック解除位置まで下降している。この状態では、同図(B)に示すように、スライド部材7の係合部7aと紙幣収納ユニット4のロック突起部4aとは干渉しない。すなわち、簡易ロックは開錠状態となって、単に紙幣収納ユニット4の操作部4bを操作するだけで、紙幣取り出し口4dを開放できる。
【0028】
図6は、簡易ロックの施錠状態を示す動作説明図である。同図(A)に矢印で示すように、ガイド部材8のガイド板8aに沿ってスライド部材7が上方のロック位置までスライドしている。この状態であれば、紙幣収納ユニット4を手前側に引き出そうとしたとき、そのロック突起部4aがスライド部材7の係合部7aと干渉することになる。
【0029】
なお、この簡易ロックの施錠状態では、スライド部材7は係合部7aとビーム7bがフレームユニット2の開口9a,9bに圧接され、さらにフレームユニット2に形成された位置決め突起9c(図4参照)がスライド部材7の位置決め穴7e(図3参照)に係合した状態であるため、その自重で開錠状態まで落下するようなことはない。また、スライド部材7のビーム7bには、その自由端に外側を向く突起7dが形成されているから、スライド部材7がフレームユニット2から簡単には脱落しない。
【0030】
このように簡易ロックされた状態の紙幣識別装置1において、ガイド部材8のガイド板8aに形成された孔部8bに南京錠などを取り付けることができる。こうすれば、スライド部材7を下方にスライドさせることができなくなって、従来装置と同等の、完全なロック状態を実現できる。なお、南京錠などによる施錠を必要としない場合には、上述したガイド部材8を設けない構成であってもよい。
【0031】
以上、本発明の紙幣識別装置1にはスライド部材7が設けられているため、それがロック状態となっていれば、紙幣収納ユニット4の裏側正面に設けられた操作部4bを片手で操作しただけでは、紙幣収納ユニット4を開放して紙幣を取り外すことはできない。したがって、南京錠などによる施錠をしなくても、紙幣収納ユニット4が無断開放されにくくなるから、そのことで生じる紙幣の盗難を容易に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態に係る紙幣識別装置を示す斜視図である。
【図2】紙幣収納ユニットを開放状態としたときの紙幣識別装置を示す斜視図である。
【図3】紙幣収納ユニット、スライド部材、ガイド部材の形状を示す斜視図である。
【図4】フレームユニット、およびそこに取り付けられるスライド部材とガイド部材を示す斜視図である。
【図5】簡易ロックの開錠状態を示す動作説明図である。
【図6】簡易ロックの施錠状態を示す動作説明図である。
【図7】従来の鍵金具を備えた紙幣識別装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 紙幣識別装置
2 フレームユニット
3 紙幣識別ユニット
4 紙幣収納ユニット
4a ロック突起部
4b 操作部
4c ラッチ
4d 紙幣取り出し口
5 ガイド
6 ガイドピン
7 スライド部材
7a 係合部
7b ビーム
7c スリット
7d 突起
7e 位置決め穴
8 ガイド部材
8a ガイド板
8b 孔部
9a,9b 開口
9c 位置決め突起
10 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された紙幣を識別する紙幣識別ユニット、および前記紙幣識別ユニットで識別された紙幣を収納する紙幣収納ユニットを有する紙幣識別装置において、
前記紙幣識別ユニットおよび前記紙幣収納ユニットが着脱自在に装着されるフレームユニットと、
前記フレームユニットの側壁に摺動自在に取り付けられ、前記フレームユニットの側壁から内側に突設された係合部を有するスライド部材と、
前記紙幣収納ユニットの側面に前記フレームユニットの側壁と対向して固着され、前記スライド部材を所定のロック位置にスライドさせたとき、前記係合部と係合するように突設されたロック突起部と、
を備え、
前記紙幣収納ユニットが前記フレームユニットに装着された状態で前記スライド部材を前記ロック位置にスライドして前記係合部に前記ロック突起部を係合させることにより、前記紙幣収納ユニットを前記フレームユニットから離脱不能なロック状態にしたことを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
前記フレームユニットには、前記ロック位置、および前記係合部との係合が解除されるロック解除位置の間に、前記スライド部材をガイドするガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記スライド部材を前記ロック位置までスライドさせた状態で、施錠用の南京錠のつる部が挿通可能な開孔が形成されていることを特徴とする請求項2記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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