説明

紙幣識別装置

【課題】磁気センサと紙幣の間隔を一定に保って、紙幣を搬送可能な紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】紙幣識別装置が備えるセンサ押さえ板20は、紙幣押さえ部23が紙幣を磁気センサに押し付ける二つの押さえリブ21、21を有する。二つの押さえリブ21、21は、一の押さえリブ21の紙幣押さえ部23と他の押さえリブ21の紙幣押さえ部23とに挟まれる領域R1内に磁気センサが位置するように、紙幣の搬送方向と略平行の向きで隔設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣識別装置に関し、特に磁性体を含むインクによって印刷された部分を有する紙幣を識別する処理を行うことができる紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機などに用いられている紙幣識別装置では、投入された紙幣から紙幣の光学的、磁気的な特性を検出し、そこから紙幣の特徴を抽出することにより金種判定および真贋判定を行っている。紙幣の磁気的な特性は、紙幣が磁性体を含むインキで印刷されていることにより、金種により異なった磁気パタンを有している。
【0003】
紙幣に印刷された磁性体は、磁気ヘッドを用いて検出している。磁気ヘッドは、その検知面が紙幣搬送通路に近接して配置され、紙幣の面を検知面に接触させながら紙幣を搬送することにより、紙幣に印刷された磁性体の量を検出している。磁性体の量は、磁気ヘッドが接触している側の面に印刷されたものしか検出できないので、その裏面の対応位置に印刷された磁性体を検出するには、裏面側にも別の磁気ヘッドを備える必要がある。
【0004】
また、磁気ヘッドは、検知面に接触した部分の磁性体だけを検出しているので、その他周辺の影響度合の少ない外部磁界変化を磁気ヘッドが感知することはなく、検知精度の安定化が図られていた。
【0005】
これに対し、磁気ヘッドよりも感度の高い磁気センサを用いた高精度な紙幣識別装置も知られている(たとえば、特許文献1参照)。この紙幣識別装置では、紙幣の磁気インピーダンス特性または紙幣の磁気抵抗特性を検出する磁気センサを用いている。このような磁気センサは、紙幣を着磁する着磁部と、着磁部により着磁された磁気インクの磁界を検出する磁気検出素子とから構成されている。このような高感度な磁気センサを使用したときの磁気センサ周辺の外部磁界変化の影響を低減させて磁気センサが識別紙幣の磁気パタンを安定して検出するために、磁気検出部と識別紙幣との間隔、着磁部と識別紙幣との間隔を一定に保つ必要がある。
【0006】
また、着磁部に搬送ローラを対向させて識別紙幣を挟持して搬送し、磁気センサにスプリングで付勢したタッチローラを対接して磁気検出をする磁気検出装置が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−105847号公報
【特許文献2】特開平11−96430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、着磁部または磁気検出部と識別紙幣の間隔を一定に保つために、付勢した搬送ローラやタッチローラを用いて識別紙幣を磁気センサとの間を搬送するようにすると、識別紙幣と磁気センサとの接触部がローラの円周上の一部に限られてしまう。また、磁気センサにおいて着磁をする着磁部と磁気検出をする磁気検出部との間に距離があると、一つのローラによっては識別紙幣と着磁部との間隔、および識別紙幣部と磁気検出部との間隔の両方を一定に保つことは難しい。また、複数のローラを設けた場合も、ローラ同士を近接して設けることにはローラ径からくる配設領域の制約があり、やはり近接して配置された着磁部と磁気検出部の両方について識別紙幣との間隔を一定に保つことは難しい。また、識別紙幣の濡れ、しわ、折り目などがあると、着磁部と磁気検出部の両方について識別紙幣との間隔を一定に保つことはいっそう難しくなる。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、着磁部または磁気検出部と識別紙幣の間隔を一定に保って、識別紙幣を搬送可能な紙幣識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では上記問題点を解決するために、紙幣に含まれた磁性体の磁気特性を検出する磁気センサおよび前記紙幣を前記磁気センサに押し付ける押さえ板が紙幣搬送路を挟んで対向して配置されている紙幣識別装置において、前記押さえ板は、頂部が前記紙幣を前記磁気センサに押し付ける複数のリブを有し、前記複数のリブで囲われた領域内に前記磁気センサが位置するように隔設されることを特徴とする紙幣識別装置が提供される。
【0010】
このような紙幣識別装置によれば、押さえ板は、隔設される複数のリブを有する。複数のリブで囲われた領域内には、磁気センサが位置する。これにより、複数のリブが紙幣を磁気センサに押し付ける。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の紙幣識別装置は、磁気センサと紙幣との間隔を一定に保って、紙幣を搬送可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は紙幣識別装置の斜視図、図2は紙幣識別装置の側面図、図3は紙幣識別装置の断面図である。
紙幣識別装置1は、フレームユニット2に識別ユニット3および収納ユニット4を設けて構成される。フレームユニット2は、自動販売機の正面の扉に内側から取り付けられるもので、紙幣を収納、排出するための紙幣投入口5を有している。
【0013】
紙幣投入口5から投入された紙幣は、二つの搬送ローラ6、9と4つのテンションローラ7、8、10、11により挟持され逆U字状の紙幣搬送路12を搬送される。
識別ユニット3は、紙幣搬送路12を挟んで対向する位置に複数のセンサ、具体的には、光学センサ45、46および磁気センサ50が設けられている。これらのセンサは、搬送されてくる紙幣の特定の識別ライン上にある紙幣の特徴を検出し、検出されたデータを処理して紙幣の金種および真贋を判定している。この判定処理の途中または判定処理が終了した後で投入された紙幣を正しく識別できなかった場合、投入された紙幣を紙幣投入口5へ返却する。
【0014】
収納ユニット4は、識別ユニット3による判定の結果、投入された紙幣を正しく識別できた場合には、その紙幣を識別ユニット3の紙幣識別部の延長上にある紙幣搬送路13に取り込み、取り込んだ紙幣をプッシャ14と呼ばれる機構によって紙幣搬送路13から紙幣収納庫15に押し込むようにし、これによって紙幣収納庫15に積層状態で収納する。
【0015】
ここで、磁気センサ50は、紙幣搬送路12上の二つの搬送ローラ6、9の間に位置し、センサ押さえ板20は、磁気センサ50と紙幣を挟持して対向する位置にある。二つの搬送ローラ6、9は、回転軸が固定された駆動ローラであり、搬送ローラ6、9の間に固定された磁気センサ50は、搬送ローラ6、9との相対的な位置関係が一定である。一方、テンションローラ7、8、10、11およびセンサ押さえ板20は、図示しない付勢ばね、および付勢ばね60により紙幣搬送路12側に付勢されて取り付けられる。これにより、しわ、折り目などがある紙幣でも好適に磁気センサ50に押さえつけることができ、磁気センサ50と紙幣との間隔を一定に保つ。
【0016】
次に、図4、図5を用いて、搬送ローラ6、9とテンションローラ8、11、磁気センサ50の配置、および磁気センサ50とセンサ押さえ板20の配置について説明する。図4は、紙幣識別装置に装着された識別ユニットの開放状態を示す斜視図である。図5は、識別ユニットの開放側サブユニットを示す斜視図である。
【0017】
識別ユニット3は、紙幣の詰まり、識別エラーなどに対処するために、紙幣搬送路12を露出させて詰まった紙幣の除去あるいは清掃などの保守ができるよう、図4に示したように、固定側サブユニット3Aに対して開放側サブユニット3Bを開閉できる構造になっている。
【0018】
搬送ローラ6は、紙幣搬送路12の幅方向中心から左右対称位置に一対6A、6Bが設けられ、対向する一対8A、8Bのテンションローラ8とで紙幣を挟持する。搬送ローラ6とテンションローラ8により挟持された紙幣は摩擦係合により搬送される。
【0019】
磁気センサ50は、紙幣搬送路12の幅方向中心から左右対称位置に一対50A、50Bが設けられる。紙幣に印刷された磁気インクの紙幣搬送方向の磁気インク印刷パタンを検出して紙幣の識別を行うため、磁気センサ50A、50Bは、紙幣の磁気インク印刷パタンの特徴を好適に検出できる位置に配置される。磁気センサ50A、50Bと、紙幣との間隔を一定に保つため、センサ押さえ板20A、20Bが磁気センサ50A、50Bと対向する位置にそれぞれ配置される。
【0020】
搬送ローラ9は、紙幣搬送路12の幅方向中心から左右対称位置に一対9A、9B(図示せず)が設けられ、対向する一対11A、11Bのテンションローラ11とで紙幣を挟持する。搬送ローラ9とテンションローラ11により挟持された紙幣は摩擦係合により搬送される。
【0021】
このように搬送ローラ6、磁気センサ50、搬送ローラ9は、左右に一対ずつが設けられ、各々が略一直線状に位置する。これにより、磁気センサ50上の紙幣は、紙幣の端部を除けば搬送ローラ6、9およびテンションローラ8、11とにより挟持された状態で磁気センサ50上を通過する。
【0022】
また、磁気センサ50Aとセンサ押さえ板20Aの対と、磁気センサ50Bとセンサ押さえ板20Bの対とを、幅方向中心から左右対称位置に配置したので、搬送抵抗が紙幣幅方向両側で同程度になり好適に紙幣を搬送可能となる。
【0023】
また、紙幣搬送路12上の搬送抵抗を軽減するため、開放側サブユニット3Bの搬送面16に搬送方向に平行して複数のリブ17を設けている。
次に、搬送面16から紙幣搬送路12を臨むセンサ押さえ板20について詳細に説明する。図6は、搬送面から紙幣搬送路を臨むセンサ押さえ板の斜視図である。
【0024】
センサ押さえ板20は、センサ押さえ板ガイド穴30から後述の付勢ばね60により付勢されて紙幣搬送路12を臨むようにして配設され、紙幣搬送路12の搬送面に対して前後方向にセンサ押さえ板ガイド穴30にガイドされて摺動する。
【0025】
センサ押さえ板20は、センサ押さえ板底面24から立設した2本の押さえリブ21、21を備える。2本の押さえリブ21、21は、互いに平行に距離t1(平行リブ間隔)だけ離して、リブ幅t2を有して設けられる。また押さえリブ21、21は、搬送面16にある複数のリブ17とともに紙幣搬送方向に平行に設けられる。押さえリブ21は、センサ押さえ板の紙幣搬送方向と同じ長さであり、紙幣導入部22A、22Bと紙幣押さえ部23とからなる。
【0026】
紙幣導入部22A、22Bは、紙幣導入側の端部251(図7(A)参照)から紙幣押さえ部23に向けてなだらかな傾斜(テーパ)を有し、紙幣の迎え角rで紙幣押さえ部23と接続する。また、紙幣導入部22A、22Bは、搬送されてくる紙幣の端部がセンサ押さえ板20に噛んで紙幣詰まりするのを防止するとともに、紙幣を滞りなく紙幣押さえ部23に案内する役割を果たす。紙幣の迎え角rは鋭角である方が紙幣詰まり防止の観点から望ましいが、紙幣導入側の端部から紙幣押さえ部23までの長さが大きくなるので、紙幣と接触する部分は、15°から30°程度が設定され、紙幣と接触しない部分は、45°程度が設定される。また、紙幣導入部22A、22Bの紙幣導入側の端部は、搬送面16より沈み込んだ位置にあり、先端が曲がった紙幣などであっても噛むことなく紙幣を好適に紙幣押さえ部23に案内する。
【0027】
紙幣押さえ部23は、断面U字状のリブであり、その頂点部分で長さt3(頂部長さ)をもって紙幣と接触する。2本の押さえリブ21、21の紙幣押さえ部23、23の頂点部分で囲われた領域(頂部により挟まれた領域)からなる当接面R1(ハッチング部分)は、磁気センサ50の紙幣接触面と平行面をなすことで、磁気センサ50と紙幣との距離が一定になるように紙幣を押さえる。
【0028】
このように、センサ押さえ板20は、紙幣押さえ部23、23の頂点部分で紙幣を押さえるので紙幣の搬送抵抗が過大になるのを防止し、紙幣詰まりの危険の低減と好適な磁気検出とを両立することができる。
【0029】
なお、当接面R1は、必ずしも押さえリブ21により周囲をぐるりと囲うことまでは要しない。複数の押さえリブにより、磁気センサ50と紙幣との距離が一定になる領域を形成すれば足りるので、四辺形の領域であれば4辺のうち対向する2辺に紙幣押さえ部を設定するように押さえリブを配設すればよい。
【0030】
センサ押さえ板底面24は、センサ押さえ板底面24の紙幣搬送方向の前後にセンサ押さえ板底面テーパ25A、25Bを有する。センサ押さえ板底面テーパ25A、25Bは、センサ押さえ板底面24で紙幣詰まりを防止するための傾斜(テーパ)面である。また、センサ押さえ板20の紙幣搬送路12に臨む各エッジ部(面と面との接合部)は、面取りがされた面取り部26を有し、エッジ部での紙幣詰まりの危険を低減している。
【0031】
センサ押さえ板ガイド穴30は、センサ押さえ板側面ガイド31(センサ押さえ板ガイド穴側壁)、センサ押さえ板側面ガイド32(センサ押さえ板ガイド穴前後端壁)により、紙幣搬送路12の搬送面に対して前後方向へ摺動するセンサ押さえ板20をガイドする。
【0032】
センサ押さえ板ガイド穴30は、紙幣搬送方向の前後にセンサ押さえ板ガイド穴テーパ面33A、33Bを有する。センサ押さえ板ガイド穴テーパ面33A、33Bは、センサ押さえ板ガイド穴30で紙幣詰まりを防止するための傾斜(テーパ)面である。
【0033】
次に、後述の付勢ばね60により付勢してセンサ押さえ板20をガイド穴30から紙幣搬送路12に摺動可能にして臨ませるための機構部について説明する。図7は、センサ押さえ板の説明図である。図7(A)は、センサ押さえ板の3面図である。センサ押さえ板20は、センサ押さえ板ガイド穴30から臨む本体部の背面側にスライダ27、27、センサ押さえ板ガイドボス28、28、および付勢ばねホルダ29を有する。
【0034】
スライダ27、27は、センサ押さえ板20の本体となる付勢ばねホルダ29の側面に左右方向に一対が鍔状にして備えられる。スライダ27は、後述のスライダ摺動部36に沿って紙幣搬送路12の搬送面に対して前後方向へ摺動する。また、左右方向に一対のスライダ27、27を設けたことで、センサ押さえ板20が左右方向に傾くのを好適に防止する。また、スライダ27は、センサ押さえ板20がセンサ押さえ板ガイド穴30から脱落するのを防止するためのストッパとしても機能する。
【0035】
センサ押さえ板ガイドボス28、28は、センサ押さえ板20の本体となる付勢ばねホルダ29の側面に紙幣搬送方向に一対がボス状(円筒状)にして備えられる。センサ押さえ板ガイドボス28は、後述のセンサ押さえ板ガイドボスホルダ44に沿って紙幣搬送路12の搬送面に対して前後方向へ摺動する。また、紙幣搬送方向に一対のセンサ押さえ板ガイドボス28、28を設けたことで、センサ押さえ板20が紙幣搬送方向に傾くのを好適に防止する。
【0036】
付勢ばねホルダ29は、略円筒形状であり後述の付勢ばね60を後述する付勢ばね収納室38に挿入後、保持可能になっている。また、付勢ばねホルダ29は、付勢ばねホルダ29の底面が後述の支持面47に当接することで、センサ押さえ板20の可動範囲を制限するためのストッパとしても機能する。
【0037】
また、スライダ27、27およびセンサ押さえ板ガイドボス28、28とにより、センサ押さえ板20は、左右方向および紙幣搬送方向への傾きが防止される。これにより、当接面R1(ハッチング部分)が磁気センサ50の紙幣接触面と平行面を維持した状態で、センサ押さえ板20を摺動可能にしている。
【0038】
図7(B)は、図7(A)のA−A矢視断面図である。押さえリブ21は、断面U字状のリブである。押さえリブ21の先端231は、半円形状であり、その頂点部232で紙幣と当接する。また、図7(C)は、図7(B)の変形例である。押さえリブ21の先端233は、半円形の頭を削ったような形状であり、その頂部234は、平面で紙幣と当接する。また、図7(D)は、図7(B)の変形例である。押さえリブ21は、断面台形状のリブである。押さえリブ21の先端235は、先端方向を上底とする台形状(先端方向ですぼまる)であり、その頂部236は、平面で紙幣と当接する。また、台形上に限らず、長方形状などであってもよく、また、複数の押さえリブ21で異なる形状としてもよい。たとえば、4本の押さえリブ21を備え、外側の2本の押さえリブ21は、図7(C)、または、図7(D)、内側の2本の押さえリブ21は、図7(B)のようであってもよい。また、頂点部232、または頂部234、236を押さえリブ21に対して中心に配置しているが、左右に偏らせて配置してもよい。
【0039】
次に、センサ押さえ板20により押さえられる紙幣と磁気センサ50と当接面R1との関係について説明する。図8は、紙幣と磁気センサと当接面R1との関係図である。図8(A)は、センサ押さえ板20、磁気センサ50、および紙幣53を側面から観察した図であり、図8(B)は、紙幣53と磁気センサ50と当接面R1との関係図である。
【0040】
紙幣53は、紙幣押さえ部23により磁気センサ50に押さえつけられ、当接面R1を磁気センサ50に接触させて図の左右方向に搬送される。なお、図中左から右方向が紙幣53の収納方向であり、図中右から左が紙幣53の返却方向である。
【0041】
磁気センサ50は、着磁部51(51A、51B、51C)(着磁用磁石)と、磁気検出部52(磁気検出素子)とを有する。着磁部51(51A、51B、51C)と磁気検出部52は、当接面R1の領域内にあり、紙幣に対して間隔が一定に保たれている。
【0042】
なお、必ずしも当接面R1の領域内に磁気センサ50がなければいけないというわけではなく、検出感度に影響のない範囲であれば、磁気センサ50の一部が当接面R1の領域から外れても構わない。言い換えれば、磁気センサ50について所定の検出感度を得るために必要な範囲が当接面R1の領域内にあるように設定されればよい。
【0043】
ここで、磁気センサ50について説明する。磁気センサ50は、図8(B)に示したように、紙幣の搬送方向に着磁部51(51A、51B、51C)および磁気検出部52が併置されている。着磁部51は、紙幣53に印刷された磁性体を着磁する。このとき、着磁部51の磁力線は紙幣を貫通するので、磁性体の着磁は、紙幣の両面に印刷されている磁性体に対して同時に行われる。このようにして着磁された磁性体は、その直後に、磁気検出部52によって検出される。磁気検出部52は、磁気ヘッドよりも検出深度が深く、高感度な磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス効果素子、またはフラックスゲートセンサを用いた素子とすることができる。これにより、磁気センサ50は、紙幣の表裏両面の磁性体の量を検出することができる。
【0044】
なお、検出対象とする紙幣に磁性体が含まれるとは、たとえば、紙幣の表面または裏面に、磁性体を含む磁気インクにより印刷された場合の他に、紙幣に磁性体が塗布、貼付された場合、紙幣の基材自体に混合(たとえば、紙繊維に混合)された場合をいう。
【0045】
次に、図9から図12を用いて、識別ユニット3の開放側サブユニット3Bにおけるセンサ押さえ板20の組み付け構造を説明する。図9は、開放側サブユニットの分解斜視図である。図10は、開放側サブユニットの分解斜視一部拡大図である。図11は、識別機構固定フレームの分解斜視図である。図12は、識別機構固定フレームの分解斜視一部拡大図である。
【0046】
センサ押さえ板20は、識別ユニット3の開放側サブユニット3Bの内部に組み付けられる。開放側サブユニット3Bは、識別機構収納筐体41と識別機構固定フレーム42とにより箱体を形成する。開放側サブユニット3Bは、センサ押さえ板20A、20Bを付勢ばね60A、60Bにより付勢して箱体内部に支持する。センサ押さえ板20A、20Bは、センサ押さえ板ガイド穴30から紙幣搬送路12を臨む。センサ押さえ板ガイド穴30は、識別機構収納筐体41に形成される。識別機構収納筐体41の裏面(箱体内側)には、一つのセンサ押さえ板ガイド穴30に対応する一対のスライダガイドボス34、34と、スライダガイド壁35がある。スライダガイドボス34は、断面が略U字状のボスでU字頂点部分がスライダ摺動部36となっている。スライダガイド壁35は、略U字状の起立壁である。起立壁の両端部で断面が略U字状となり、U字頂点部分がスライダ摺動部36となって、対向するスライダガイドボス34のスライダ摺動部36とによりセンサ押さえ板20のスライダ27をガイドする。また、スライダガイド壁35は、紙幣識別装置1を、たとえば、自動販売機などに標準方向で装着(天地方向を図1のようにして装着)すると、起立壁のU字状底面部が塵芥受け部39として機能する。これにより、センサ押さえ板20が摺動することで生じるセンサ押さえ板20とセンサ押さえ板ガイド穴30との間隙から紙幣の汚れなどの塵芥が侵入しても、開放側サブユニット3Bの内部に塵芥が拡散するのを防止することができる。また、スライダ摺動部36に沿って摺動するスライダ27は、スライダストッパ37に当接して、摺動範囲が規制される。
【0047】
センサ押さえ板20は、付勢ばねホルダ29の付勢ばね収納室38に付勢ばね60を収納する。付勢ばね60は、圧縮コイルばねであり、センサ押さえ板20を磁気センサ50に押さえつける方向に付勢する。付勢ばね収納室38は、付勢ばね60を収納可能な凹室であり、付勢ばねホルダ29に形成される。
【0048】
識別機構固定フレーム42は、一つのセンサ押さえ板20に対応する付勢ばねガイドボス43と一対のセンサ押さえ板ガイドボスホルダ44、44を有する。付勢ばねガイドボス43は、円筒状の付勢ばね60の中空部に嵌り、付勢ばね60の一側端部は、付勢ばねガイドボス43の起立する床面に当接する。センサ押さえ板ガイドボスホルダ44は、センサ押さえ板20のセンサ押さえ板ガイドボス28を嵌めて内壁を摺動部とする。付勢ばねガイドボス43とセンサ押さえ板ガイドボスホルダ44は、識別機構固定フレーム42の支持面47に備えられる。支持面47は、起立壁48の高さ分だけ奥まった位置にあり、支持面47と起立壁48とで形成される空間を、センサ押さえ板20の収納空間としている。
【0049】
このように、識別機構固定フレーム42(支持基盤1)は、一対のセンサ押さえ板ガイドボスホルダ44、44を備え、一対のセンサ押さえ板ガイドボス28、28を摺動可能に支持する。また、識別機構収納筐体41(支持基盤2)は、一対のスライダガイド(スライダガイド壁35のスライダ摺動部36と、対向するスライダガイドボス34のスライダ摺動部36とにより形成されるガイド部)を備え、一対のスライダ27、27を摺動可能に支持する。そして、各センサ押さえ板ガイドボス28、28を結ぶ軸と、各スライダ27、27を結ぶ軸とは直交する位置関係にあるので、センサ押さえ板20が紙幣搬送面に対して傾くのを好適に防止する。
【0050】
以上、本発明の紙幣識別装置1を図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、紙幣識別装置1の各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0051】
なお、センサ押さえ板20のセンサ押さえ板底面24から立設する押さえリブ21は、2本に限らず複数本であってもよい。たとえば、磁気センサ50のセンシング領域を含む幅で外側に押さえリブ21を2本配置し、その間に押さえリブ21をさらに配置するようにしてもよい。
【0052】
なお、紙幣導入部22A、22Bが有する傾斜(テーパ)は、直線状の傾きであってもよいし、湾曲していてもよいし、それの組み合わせであってもよい。センサ押さえ板底面テーパ25A、25B、センサ押さえ板ガイド穴テーパ面33A、33Bを含む、その他の傾斜(テーパ)についても同様である。
【0053】
なお、センサ押さえ板ガイド穴30は、センサ押さえ板20をガイドしない単なる開口であってもよい。
なお、センサ押さえ板20は、耐摩耗性に優れた材料、たとえば、ポリアセタール系樹脂などを使用するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】紙幣識別装置の斜視図である。
【図2】紙幣識別装置の側面図である。
【図3】紙幣識別装置の断面図である。
【図4】紙幣識別装置に装着された識別ユニットの開放状態を示す斜視図である。
【図5】識別ユニットの開放側サブユニットを示す斜視図である。
【図6】搬送面から紙幣搬送路を臨むセンサ押さえ板の斜視図である。
【図7】センサ押さえ板の説明図である。
【図8】紙幣と磁気センサと当接面R1との関係図である。
【図9】開放側サブユニットの分解斜視図である。
【図10】開放側サブユニットの分解斜視一部拡大図である。
【図11】識別機構固定フレームの分解斜視図である。
【図12】識別機構固定フレームの分解斜視一部拡大図である。
【符号の説明】
【0055】
20 センサ押さえ板
21 押さえリブ
22A、22B 紙幣導入部
23 紙幣押さえ部
24 センサ押さえ板底面
25A、25B センサ押さえ板底面テーパ
26 面取り部
30 センサ押さえ板ガイド穴
31 センサ押さえ板側面ガイド(センサ押さえ板ガイド穴側壁)
32 センサ押さえ板側面ガイド(センサ押さえ板ガイド穴前後端壁)
33A、33B センサ押さえ板ガイド穴テーパ面
t1 平行リブ間隔
t2 リブ幅
t3 頂部長さ
r 迎え角
R1 当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣に含まれた磁性体の磁気特性を検出する磁気センサおよび前記紙幣を前記磁気センサに押し付ける押さえ板が紙幣搬送路を挟んで対向して配置されている紙幣識別装置において、
前記押さえ板は、頂部が前記紙幣を前記磁気センサに押し付ける複数のリブを有し、
前記複数のリブで囲われた領域内に前記磁気センサが位置するように隔設されることを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
前記領域は、前記複数のリブの頂部で囲われた領域であることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
前記領域は、2本の前記リブで囲われた領域であることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項4】
前記複数のリブは、前記磁気センサについて所定の検出感度を得るために必要な範囲が前記領域内にあるように隔設されることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項5】
前記複数のリブは、前記紙幣の搬送方向と略平行の向きで隔設されることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項6】
前記紙幣搬送路の幅方向の中心から左右対称位置に、前記磁気センサおよび前記押さえ板を1組ずつ備えることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項7】
前記リブはテーパを設けて頂部に立ち上がる紙幣導入部を有することを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項8】
前記リブは、幅方向の断面を略U字形状とすることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項9】
前記押さえ板は、紙幣導入方向からテーパを設けて基底部に立ち上がる紙幣導入部を有することを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項10】
前記紙幣搬送路を形成する搬送壁に、前記押さえ板が前記紙幣搬送路を臨む開口部を設け、
前記開口部は、前記開口部を形成する開口壁の紙幣搬送方向にテーパを設けて前記搬送壁に立ち上がる紙幣導入部を有することを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項11】
前記紙幣搬送路の搬送面の一側に前記磁気センサと、前記紙幣を搬送する搬送ローラとを備え、
前記搬送面の他側に前記押さえ板と、付勢されて前記紙幣を前記搬送ローラとの間で挟持するテンションローラとを備えることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項12】
前記磁気センサは、二つの前記搬送ローラの間に位置することを特徴とする請求項11記載の紙幣識別装置。
【請求項13】
前記磁気センサは、前記紙幣に含まれる磁性体を着磁するマグネットと、着磁された磁性体の磁気特性を検出する磁気検出部とを有し、
前記領域内に前記マグネットおよび前記磁気検出部が位置することを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項14】
前記磁気検出部は、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス効果素子、またはフラックスゲートセンサを用いたことを特徴とする請求項13記載の紙幣識別装置。
【請求項15】
前記磁気センサは、前記紙幣の両面に印刷された磁性体の磁気特性を検出することを特徴とする請求項13記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−128688(P2010−128688A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301234(P2008−301234)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】