説明

紙強度を改良する方法

本発明は、改良された強度の紙又は板紙の製造方法であって、i)セルロースの濃厚ストックを用意し、ii)工程i)の濃厚ストックを希釈して希薄ストックを形成し、iii)工程ii)の希薄ストックをワイヤで水切りしてウェブを形成し、iv)工程iii)のウェブを乾燥して紙又は板紙を形成する工程を含み、工程(i)のセルロースの濃厚ストックが有機ポリマー微粒子を含む、紙又は板紙の製造方法、並びに上述の方法により得られる紙を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度の改良された紙又は板紙の製造方法、及び本方法により得られる紙又は板紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紙の製造に用いられる機械は、ウエットエンドセクション(wet end section)、プレスセクション、ドライヤーセクション及びカレンダーセクションで構成される。ウエットエンドセクションにおいて、水中のファイバー約3%の濃厚ストックを、通常ファンポンプ(fan pump)の入口で、水又は再利用水(白水)で希釈してファイバー約1%の希薄ストックを形成し、これをヘッドボックスによって一つ又は多数のワイヤ上に載せ、そこでウェブを形成し、排出された水(白水)を回収する。ウエットエンドセクションにおいける種々の添加点で、種々の化学物質をファイバーに加えて、最終の紙特性又は製紙方法を改良することができる。
【0003】
例えば、ウエットエンドセクションにおいて、乾燥紙力増強剤、例えばデンプンを加えて、最終の紙強度を改良することができる。通常、カチオンデンプンを濃厚ストックに加えかつ/又は形成するウェブ上に天然デンプンを噴霧する。ウエットエンドセクションにおいてデンプンを添加することの一つの欠点は、回収する白水がデンプンを含有することである。白水中にデンプンが存在すると、過大なバクテリアの増殖及びスライム形成を導くおそれがあり、この白水を費用のかかる廃棄物として処分するか、又は再利用を実行する前に増量した殺生剤で処理しなければならない。形成するウェブ上に噴霧によりデンプンを付着する別の欠点は、デンプンの噴霧に用いるノズルが詰まりがちなので、機械の生産性の問題がしばしば発生することである。
【0004】
湿潤ウェブ強度とは、製紙方法の間の湿潤紙の強度を指す。湿潤ウェブの強度が高いほど、紙をワイヤからプレスセクションへ、必然的にプレスセクションからドライヤーセクションへ誘導するのが容易になる。したがって、湿潤ウェブ強度が高まると、抄紙機の生産性がより良好になる。湿潤ウェブ強度は、セクション間の十分なガイダンスを持たない抄紙機、例えば、オープンドロー(open draw)を有する機械にとって特に重要である。
【0005】
本発明の目的は、改良された強度の、特に改良された内部結合強度(internal bond strength)並びに湿潤ウェブ強度の紙又は板紙の製造方法を提供することである。さらに、本方法は、良好なリテンション及びフォーメーション(formation)を示す。
【0006】
請求項1の方法及び請求項7の紙。
【0007】
紙又は板紙を製造する本発明の方法は、
i)セルロースの濃厚ストックを用意し、
ii)工程i)の濃厚ストックを希釈して希薄ストックを形成し、
iii)工程ii)の希薄ストックをワイヤで水切りしてウェブを形成し、
iv)工程iii)のウェブを乾燥して紙又は板紙を形成する
工程を含み、工程(i)のセルロースの濃厚ストックが有機ポリマー微粒子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】製紙工場において紙又は板紙を製造するための本発明の方法の概要を示す図である。
【0009】
有機ポリマー微粒子は、非イオン、カチオン又はアニオンでよい。好ましくは、有機ポリマー微粒子は、カチオン又はアニオンである。より好ましくは、有機ポリマー微粒子は、アニオンである。有機ポリマー微粒子は、実質的に水不溶性である。未膨潤状態で、有機ポリマー微粒子の数平均粒径は、1000nm未満、好ましくは750nm未満、より好ましくは300nm未満であってよい。
【0010】
好ましくは、有機ポリマー微粒子はエチレン性不飽和モノマーから形成される。
【0011】
エチレン性不飽和モノマーの例は、アクリルモノマー、例えば(メタ)アクリル酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N−C1-4−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(C1-4−アルキル)(メタ)アクリルアミド、C1-4−アルキル(メタ)アクリレート、[N,N−ジ(C1-4−アルキル)アミノ]C1-6−アルキル(メタ)アクリレート及びそのC1-4−ハロゲン化アルキル付加物、[N,N−ジ(C1-4−アルキル)アミノ]C1-6−アルキル(メタ)アクリルアミド及びそのC1-4−ハロゲン化アルキル付加物、又はアクリロニトリル、スチレンモノマー、例えばスチレン又は4−スチレンスルホン酸及びその塩、ビニルモノマー、例えば酢酸ビニル又はN−ビニルピロリドン、アリルモノマー、例えばジアリルジメチルアンモニウムクロリド又はテトラアリルアンモニウムクロリド、オレフィンモノマー、例えばエチレン、プロピレン又はブタジエン、並びにマレイン酸モノマー、例えばマレイン酸及びその塩、無水マレイン酸又はマレイミドである。それぞれの酸の塩は、例えば、アンモニウム又はアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩とすることができる。
【0012】
非イオン有機ポリマー微粒子は、全体的なカチオン電荷が0であるという条件で、非イオンエチレン性不飽和モノマーから、又は非イオン、アニオン及びカチオンのエチレン性不飽和モノマーから、又はアニオン及びカチオンのエチレン性不飽和モノマーから、もっぱら形成することができる。カチオン有機ポリマー微粒子は、全体的な電荷が正であるという条件で、カチオン、及び場合により非イオン及び/又はアニオンのモノマーから形成することができる。アニオン有機ポリマー微粒子は、全体的な電荷が負であるという条件で、アニオン、及び場合により非イオン及び/又はカチオンのモノマーから形成することができる。好ましくは、アニオン有機ポリマー微粒子は、アニオン及び非イオンのエチレン性不飽和モノマーから形成される。
【0013】
より好ましくは、有機ポリマー微粒子は、アクリルモノマー、最も好ましくは、少なくとも1種のアクリルアニオンモノマー及び少なくとも1種のアクリル非イオンモノマーを含むアクリルモノマーから形成される。
【0014】
アクリルアニオンモノマーの例は、(メタ)アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸及びその塩である。好ましいアクリルアニオンモノマーは、(メタ)アクリル酸及びその塩である。より好ましくは、アニオンモノマーはアクリル酸及びその塩である。
【0015】
アクリル非イオンモノマーの例は、(メタ)アクリルアミド、N−C1-4−アルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(C1-4−アルキル)(メタ)アクリルアミド、例えばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、C1-4−アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート及びアクリロニトリルである。好ましくは、アクリル非イオンモノマーは(メタ)アクリルアミドである。より好ましくは、アクリルアミドである。
【0016】
アクリルアニオンモノマー/アクリル非イオンモノマーの重量比は、99/1〜1/99でよい。好ましくは、90/10〜10/90、より好ましくは80/20〜20/80、最も好ましくは70/30〜50/50である。
【0017】
好ましくは、ポリマー微粒子は架橋剤の存在下で形成される。好ましくは、モノマーに基づいて少なくとも4モルppmの架橋剤を用いる。架橋剤の量は、好ましくは4〜6000モルppm、より好ましくは、10〜2000モルppm、より好ましくは、20〜500モルppmである。架橋剤の例は、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、テトラアリルアンモニウムクロリド及びジアリルフタレートである。好ましい架橋剤は、N,N−メチレンビスアクリルアミドである。
【0018】
有機ポリマー微粒子の溶液粘度は、1.0〜2.0mPasでよい。
【0019】
有機ポリマー微粒子は、当技術分野において公知の方法によるモノマーのマイクロエマルション重合より製造することができる。例えば、有機ポリマー微粒子は、(i)モノマーの水溶液を含む水性相を、炭化水素液及び界面活性剤又は界面活性剤混合物を含む油相に添加して、油相中に小さな水性液滴の逆マイクロエマルションを形成し、(ii)モノマーを、開始剤又は開始剤混合物の存在下で重合してポリマー微粒子を含むマイクロエマルションを形成することを含む方法により製造することができる。
【0020】
水性相は、他の添加剤、例えば架橋剤、金属封鎖剤(sequesterant agent)、例えばジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、又はpH調整剤、例えば無機又は有機の酸又は塩基を含んでもよい。水性相はまた、開始剤又は開始剤混合物(又はその一部)を含んでもよい。
【0021】
炭化水素液は、1種以上の液状炭化水素、例えばトルエン、ヘキサンパラフィン油又は鉱油で構成できる。水性相/油相の重量比は、通常、1/4〜4/1の範囲、好ましくは1/2〜2/1の範囲にある。
【0022】
8〜約11の範囲のHLB(Hydrophilic Lipophilic Balance:親水性親油性バランス)値を得るために、界面活性剤1種以上が通常選択される。適切なHLB値に加えて、逆マイクロエマルションを得るために、界面活性剤の濃度も注意深く選択しなければならない。典型的な界面活性剤は、ソルビタンセスキオレエート及びポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレエートである。
【0023】
開始剤又は開始剤混合物を、通常、油相と混合する前に水性相に加える。あるいはまた、開始剤の一部を、水性相に加えることができ、そして開始剤の一部を、水性相と油相を混合した後に得られたマイクロエマルションに加えることができる。開始剤は、過酸化物、例えば過酸化水素又はt−ブチルヒドロペルオキシド、過硫酸塩、例えば過硫酸カリウム、アゾ化合物、例えば2,2−アゾビスイソブチロニトリル、あるいは酸化剤及び還元剤からなるレドックス対でよい。酸化剤の例は、過酸化物及び過硫酸塩である。還元剤の例は、二酸化硫黄及び硫酸鉄アンモニウムである。
【0024】
場合により、連鎖移動剤、例えばチオグリコール酸、次亜リン酸ナトリウム、2−メルカプトエタノール又はN−ドデシルメルカプタンを、重合中に含有してもよい。
【0025】
場合により、ストリッピングによって、有機ポリマー微粒子をマイクロエマルションから単離することができる。さらに、有機ポリマー微粒子を、単離後、場合により乾燥してもよい。有機ポリマー微粒子は、製紙で用いるために水に再分散することができる。
【0026】
あるいはまた、ポリマー微粒子を含むマイクロエマルションを、水に直接分散してもよい。マイクロエマルションに用いる界面活性剤の種類及び量に応じて、水中分散液は、高いHLB値を有する界面活性剤を用いる必要がある可能性がある。
【0027】
セルロースの濃厚ストックは、一般に、針葉樹の木、例えばトウヒ、マツ、モミ、カラマツ及びツガ(hemlock)から、また一部の広葉樹の木、例えばユーカリ及びカバノキから得られる木材パルプから製造することができる。木材パルプは、化学パルプ、例えばクラフトパルプ(硫酸塩パルプ)、機械パルプ、例えば砕木、サーモメカニカル若しくはケミサーモメカニカルパルプ、又は再生パルプでよい。パルプは、化学、機械及び/又は再生パルプの混合物であってもよい。パルプは、酸素、オゾン又は過酸化水素で漂白することができる。
【0028】
濃厚ストックは通常、固形分が0.5〜5%、好ましくは1.0〜4%、より好ましくは1.5〜3.5重量%、最も好ましくは2.5〜3.5重量%の範囲である。
【0029】
希薄ストックは、水で希釈することにより濃厚ストックから形成され、通常、固形分が0.1〜2%、好ましくは0.3〜1.5%、より好ましくは0.5〜1.5重量%の範囲である。
【0030】
種々の添加剤、例えば充填剤、カチオン凝固剤、乾燥紙力増強剤、リテンション助剤(retention aid)、サイズ剤、ケイ光増白剤、及び染料固着剤を、ストックに、ウエットエンドセクションにおいて加えることができる。添加の順序及び具体的な添加点は、具体的な用途に依存し、一般的な製紙のやり方である。
【0031】
充填剤の例は、ケイ酸金属塩(mineral silicate)、例えばタルク、マイカ及びクレイ、例えばカオリン、炭酸カルシウム、例えば重質炭酸カルシウム(GCC)及び沈降炭酸カルシウム(PCC)、並びに二酸化チタンである。添加する充填剤の量は、最終の紙の乾燥重量に基づいて60重量%までとすることができる。充填剤は通常、濃厚ストックに添加する。
【0032】
カチオン凝固剤は、比較的高いカチオン電荷の水溶性低分子量化合物である。カチオン凝固剤は、無機化合物、例えば硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム(ミョウバン)若しくはポリ塩化アルミニウム(PAC)、又は有機ポリマー、例えばポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリアミドアミン/エピクロロヒドリン(epichlorhydrin)縮合物又はポリエチレンイミンとすることができる。カチオン凝固剤はまた、通常、濃厚ストックに添加し、ピッチ(pitch)及び/又はスティッキーズ(stickies)を固定する働きをする。
【0033】
例えば、比較的高い分子量のアニオンリテンション助剤を後で希薄ストックに添加する場合、必要かもしれないストックの電荷を中和するために、有機ポリマーであるカチオン凝固剤を添加することもできる。この場合、カチオン凝固剤は通常、濃厚ストックを希薄ストックにする希釈点間近で添加する。
【0034】
乾燥紙力増強剤の例は、比較的低い分子量(通常1000000g/mol未満)のアクリルアミドの水溶性アニオンコポリマー、及び比較的高い分子量の多糖類である。アクリルアミドのアニオンコポリマーの例は、アクリルアミド及びアニオンモノマー、例えばアクリル酸から誘導されるコポリマーである。アクリルアミドのアニオンコポリマーは通常、希薄ストックに添加する。多糖類の例は、カルボキシメチルセルロース、グアーゴム誘導体及びデンプンである。非加熱天然デンプンは形成するウェブ上に噴霧することができるのに対して、カチオンデンプン、カルボキシメチルセルロース及びグアーゴム誘導体は通常、濃厚ストックに添加する。
【0035】
好ましくは、ウェブ上の微粉、充填剤及びファイバーのリテンションを改良するために、リテンション助剤を、ウエットエンドセクションにおいて添加する。リテンション助剤の例は、水溶性ポリマー、アニオン無機微粒子、ポリマー有機微粒子及びこれらの組合せ(リテンションシステム)である。リテンション助剤は通常、ファンポンプの後、希薄ストックに添加する。
【0036】
リテンション助剤として用いる水溶性ポリマーは、非イオンでも、カチオンでも、アニオンでもよい。非イオンポリマーの例は、ポリエチレンオキシド及びポリアクリルアミドである。カチオンポリマーの例は、アクリルアミド及びカチオンモノマー、例えばN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートのハロゲン化アルキル付加物、例えばN,Nジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリドから誘導されるコポリマーである。アニオンポリマーの例は、アクリルアミド及びアニオンモノマー、例えばアクリル酸又は2−アクリルアミド−2メチル−1−プロパンスルホン酸から誘導されるコポリマーである。好ましくは、リテンション助剤として用いるアニオンポリマーは、比較的高い分子量(通常、1000000g/molを超える)である。
【0037】
アニオン無機微粒子の例は、コロイドシリカ及び膨潤クレイ、例えばベントナイトである。ポリマー有機微粒子の例は上述した。
【0038】
2種以上のリテンション助剤を組み合わせて、リテンションシステムを形成することができる。
【0039】
リテンションシステムの例は、アニオン水溶性ポリマー及びアニオン無機微粒子の組合せ、並びにカチオン水溶性ポリマー、アニオン水溶性ポリマー及びアニオン無機微粒子の組合せである。アニオン水溶性ポリマーを、アニオン無機微粒子と組み合わせて添加する場合、二つの成分を同時に加えても、アニオン無機微粒子を最初に加え、その後ポリマーを添加してもよい。リテンションシステムがまた、カチオン水溶性ポリマーを含む場合、このカチオンポリマーは通常、アニオン水溶性ポリマー及びアニオン無機微粒子を加える前に、添加する。
【0040】
リテンションシステムの別の例は、カチオン水溶性ポリマー及びポリマー有機微粒子の組合せ、並びにカチオン水溶性ポリマー、アニオン水溶性ポリマー及びポリマー有機微粒子の組合せである。
【0041】
好ましくは、リテンション助剤は、カチオン水溶性ポリマー、又はカチオン水溶性ポリマーを含むリテンションシステムである。
【0042】
サイズ剤の例は、天然サイズ剤、例えばロジン、並びに合成サイズ剤、例えばアルケニル無水コハク酸(ASA)及びアルキルケテンダイマー(AKD)である。
【0043】
ケイ光増白剤の例は、例えば、商品名Ciba(登録商標)Tinopal(登録商標)CBS-Xで売られているようなスチルベン誘導体である。
【0044】
有機ポリマー微粒子は、濃厚ストックに、他の濃厚ストック添加剤の添加の前、又は後、又は間に添加することができる。
【0045】
有機ポリマー微粒子は、固体状で、又は水性分散液として添加することができる。典型的には、有機ポリマー微粒子は、固形分が1重量%未満の水性分散液として添加する。
【0046】
通常、濃厚ストックに添加する有機ポリマー微粒子の量は、ストックの乾燥重量に基づいて、50〜5000ppm、好ましくは100〜3000ppm、より好ましくは300〜2000ppm、最も好ましくは400〜1000重量ppmである。
【0047】
有機ポリマー微粒子をリテンション助剤として希薄ストックにさらに添加する場合、希薄ストックに加える有機ポリマー微粒子の量は、ストックの乾燥重量に基づいて、50〜5000ppm、好ましくは100〜3000ppm、より好ましくは300〜2000ppm、最も好ましくは300〜1000重量ppmの範囲にある。
【0048】
また本発明の一部は、本発明の方法により得られる紙又は板紙である。
【0049】
また本発明の一部は、有機ポリマー微粒子を濃厚ストックに添加することを含む、紙又は板紙の強度、特に内部結合強度、並びに湿潤ウェブ強度を改良するための方法である。
【0050】
本発明の紙又は板紙の製造方法の利点は、有機ポリマー微粒子を濃厚ストックへ添加すると、湿潤ウェブ強度を、必然的にプレス及びドライヤーセクションにおける機械の生産性を相当改良することである。
【0051】
本発明の方法のさらなる利点は、高い乾燥強度、特に高い内部結合強度の紙を実現するために、ウエットエンドセクションにおいて、デンプンの添加が不要か、又は低減された量のデンプンの添加だけが必要であることである。したがって、必要な添加工程が少ないので、方法全体が簡単である。特に、通常生産性の問題を起こすウェブ上へのデンプンの噴霧を、今や省くことができる。さらに、ウエットエンドセクションにおいて回収する白水は、デンプンを含有しないか、又は低減された量のデンプンを含有するだけである。白水中にデンプンが存在すると、通常、過大なバクテリアの増殖及びスライム形成をまねき、増量した殺生剤が必要なので、デンプンの不在又はデンプンの存在量の低減は、発生するスライム形成が低減すること、そして低減された量だけの殺生剤が必要であることを意味する。
【0052】
図1は、製紙工場において紙又は板紙を製造するための本発明の方法の概要を示す。
【0053】
実施例
実施例1
有機ポリマー微粒子の製造
アクリルアミド/アクリル酸(アンモニウムアクリレートとして48重量%)重量比40/60から、メチレンビスアクリルアミド53モルppm(全モノマーに基づいて)の存在下で、水酸化ナトリウムを水酸化アンモニウムで置き換えた他は、EP 0 462 365 A1"Procedure for the Preparation of Anionic Microemulsion "の9頁、14〜38行と同様に、有機ポリマー微粒子を製造した。
【0054】
実施例2
10〜11t/hの紙を、320m/minに近い速度で製造する長綱抄紙機を用いて、100g/m2のパッケージ用板紙を製造した。
【0055】
ウエットエンドセクションを、図1に概要を示し、以下のようにさらに説明する。ファイバー(Needle Bleached Kraft Pulp12%及びLeaf Bleached Kraft Pulp88%)3.2重量%を含有する濃厚ストックを調製し、Canadian Standard390〜420mlまで叩いた。沈降炭酸カルシウム(PCC)20重量%(ファイバーの乾燥重量に基づいて)。ファイバー及び充填剤を含有し、固形分3.2重量%の濃厚ストックに、実施例1の有機ポリマー微粒子711重量ppm、蛍光増白剤(OB)0.45重量%、アルケニルケテンダイマー(AKD)0.9重量%、及びポリ塩化アルミニウム(PAC)0.015重量%(全てファイバーの乾燥重量に基づく)を加えた。ファンポンプの前で、濃厚ストックを、白水を用いて固形分0.6〜0.7重量%に希釈して希薄ストックを形成した。最後の高剪断工程、マシンスクリーンを通った後、実施例1の有機ポリマー微粒子をさらに633重量ppmを加えた。次に、希薄ストックを、ヘッドボックスを介してワイヤ上に載せた。
【0056】
最初の通過リテンションは82.3であり、灰分の最初の通過リテンションは66.0である。
【0057】
比較例1
実施例1の方法を繰り返したが、濃厚ストックに有機ポリマー微粒子を添加せず、ヘッドボックスのすぐ前の希薄ストックに633重量ppmではなく1200重量ppmのポリマー微粒子を添加した。さらに、カチオンデンプンである0.8重量%のCiba(登録商標)Raisamyl(登録商標)40041を濃厚ストックに加え、最初の排水構成要素である、ボード形成の直後、細かい上向きの放物線状シャワー中で、天然デンプン0.6重量%を湿潤ウェブ上に噴霧した。デンプンを、全ての製紙材料の乾燥重量に基づいて重量%で示す。
【0058】
試験結果:
紙又は板紙の内部結合強度は、引張荷重を紙の厚さを介して、すなわちシートのZ方向に加えたときに、裂けるのを阻止することができる生成物の能力であり、紙又は板紙の内部強度の尺度である。実施例1で得たパッケージボード、及び比較例1で得たパッケージ用板紙の内部結合強度を、Scott Bond Testerで測定した。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から、有機ポリマー微粒子を全て、最後の剪断工程の後かつヘッドボックスの前にのみ添加せず、有機ポリマー微粒子の一部を濃厚ストックにも供給した場合、内部結合強度、したがって紙の内部結合強度は高くなることが分かる。有機ポリマー微粒子の分割添加が、デンプンの完全な除外を可能にすることはさらに驚くべきである。両方の方法において、フォーメーションは類似している。
【0061】
さらに、実施例2の方法での湿潤ウェブ強度は、比較例1の方法に比べて相当に高まった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙又は板紙の製造方法であって、
i)セルロースの濃厚ストックを用意し、
ii)工程i)の濃厚ストックを希釈して希薄ストックを形成し、
iii)工程ii)の希薄ストックをワイヤで水切りしてウェブを形成し、
iv)工程ii)のウェブを乾燥して紙又は板紙を形成する
工程を含み、工程(i)のセルロースの濃厚ストックが有機ポリマー微粒子を含む、製造方法。
【請求項2】
有機ポリマー微粒子がカチオン又はアニオンである、請求項1の方法。
【請求項3】
有機ポリマー微粒子がアニオンである、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
微粒子がエチレン性不飽和モノマーから形成される、請求項1〜3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
有機ポリマー微粒子がアクリルモノマーから形成される、請求項1〜4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
ポリマー微粒子が架橋剤の存在下で形成される、請求項1〜5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の方法により得られる紙。
【請求項8】
有機ポリマー微粒子を濃厚ストックに添加することを包含する、紙又は板紙の強度、特に内部結合強度及び湿潤ウェブ強度を改良させるための方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−507731(P2010−507731A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533787(P2009−533787)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060929
【国際公開番号】WO2008/049748
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】