説明

紙断裁装置及び断裁方法

【課題】 テーブル上に複数枚重ね合せて載置した積層紙をより小さい負荷で切断することが出来ると共にコンパクトな紙の断裁装置の提供。
【解決手段】 上方から降下する紙押え2を有し、また下方から上昇するカッター3を備えたもので、カッター3の表面両側部にはボス14a,14bを突出して設けると共に、該ボス14a,14bはカッター3を挟み込んだガイドに形成しているガイド溝13a,13bに嵌り、カッター3の刃先が積層紙1に対して傾斜し、該積層紙1の片側から逐次切断することが出来るように両ガイド溝13a,13bの形状を互いに違わせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重ね合わせた複数枚の紙を小さい負荷で、しかもカッターのスライド動きを小さくして切断することが出来るコンパクトな紙の断裁装置及び断裁方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積み重ねた複数枚の紙を一気に切断する為の断裁装置にも色々あるが、一般的には大掛かりで大きな装置である。例えば1000枚以上重ねた紙を位置ズレしないように紙押えを降下してクランプし、上方からカッターを降下して切断することが出来る。そして紙押え及びカッターは油圧駆動方式と成っていて、数トンの力を発揮して紙を切断している。勿論、油圧駆動方式ではなくてモータを利用した断裁装置もあるが、一般には100V交流電源で数百Wのモータが用いられている。
従って、従来の紙断裁装置はサイズ並びに重量が大きく、その為に事務機の付属装置として内蔵することは出来ない。そこで、出願人は事務機付属装置として収容することが出来るコンパクトでしかも紙の切断に大きな負荷を必要としない紙の断裁装置を開発し、平成13年10月26日付けで特許出願を行なっている(特開2003−136471号)。
【0003】
この紙の断裁装置はテーブル上に重ね合わせて載置した複数枚の紙(積層紙)を切断する装置であって、紙押え及びカッターを小型モータで駆動することが出来るように構成している。すなわち、紙が位置ズレしないようにする紙押え機構はモータで回転するスクリューにナットを螺合し、このナットと紙押えをリンクを介して連結し、そしてカッターは傾斜したガイド溝を形成したガイドに取付けられ、カッター表面から突出したピンはガイド溝に嵌ると共にピンはモータによって回転するスクリューに螺合したナットに設けている受けの溝に係合・連結している。
【0004】
図4は上記紙の断裁装置にて積層した紙(積層紙イ)を切断する場合のカッター(ロ)の動きを示しているが、カッター(ロ)の刃先は紙面に対して常に平行を保ち、横滑り(スライド)しながら上昇することが出来る。従って、カッター刃先は紙全長にわたって接し、カッターの上昇に伴って下層から1枚づつ切断される。その為に、カッターに作用する負荷は大きくなり、必然的に駆動モーターは大型となる。
【0005】
一方、カッター(ロ)は上昇動だけでは紙の切断がスムーズに行われないことから、紙面に沿ってスライド(横滑り)を伴う動きが必要であり、その為に、切断される紙の長さ寸法Lにスライド距離を加えた寸法のカッター長さが必要となり、結果的に紙の断裁装置が大型化してしまう。
【特許文献1】特開2003−136471号に係る「紙の断裁装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の紙断裁装置には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、よりコンパクト化すると共に更に小型モータで駆動することが出来る紙の断裁装置及び断裁方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紙断裁装置は重ね合わせた複数枚の紙が位置ズレしないように押さえる紙押えを有し、カッターは紙押えの下方に取付けられてカッターが上昇することで積層された紙は切断される。紙押えの具体的な構造は限定しないが、一般的なリンク機構を用いて小型モータで強力に押えることが出来るように構成される。ただし、該カッターは従来のように積層された紙面に平行を保って上昇するのではなく傾斜しており、しかもカッターの右側端と左側端での動きを異にしている。
【0008】
そこで、傾斜したカッターの高い一方側(積層紙に近い側)を上昇すると共に、他方側へスライドして積層紙の一部を切断する。ここで、カッターの一方側は積層紙の上面まで上昇する。そして、次に低い側を上昇させると共に低い方へスライドさせ、カッターの傾きをほぼ一定に保った状態で低い側へスライドさせる。更に、低い側を上昇させることで積層紙を切断することが出来、低い側のカッターは積層紙の上面まで上昇することで切断が完了する。
【0009】
このように、本発明の紙の断裁装置のカッターは、切断の開始時には傾斜しており、そして、カッターの両側を交互に上昇させながら切断することが出来るように構成している。そこで、カッターの両側部にはボスを突出し、このボスはガイド溝に嵌って移動することが出来、カッターの右側及び左側を交互に上昇させて積層紙を逐次切断することが可能と成る。そして、カッターを左右方向へ移動することが出来る移動手段を備え、この左右方向移動に伴ってカッター両側がガイド溝に沿って昇降動するように制御される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る紙の断裁装置は、紙押えによって重ね合わせた紙(積層紙)をクランプし、下方より上方へ上昇するカッターによって切断するように構成したものである。紙押えの押え機構をスクリューとリンクの組み合せで構成するならば小型のモータでもって紙を強力にクランプすることが出来、クランプした紙のズレを防止する。そして紙がズレようとすればリンクがより起立する方向となって、クランプ力は一段と強化される。すなわち、カッターのスライド方向とリンクが起立する方向を合わせている。
一方、カッターは積層紙の紙面に平行を保って上昇するのではなく、一方側を先に上昇させることで積層紙の一部を切断し、その後、他方側を上昇させることで切断することが出来る。すなわち、積層紙を部分的に切断する為に、切断に要する負荷は小さくなる。しかも、紙面に沿ってスライドする距離も小さく出来るためにカッター長さが抑制され、よりコンパクトな紙裁断装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る紙の断裁装置を示す実施例。
【図2】積層紙の切断行程。
【図3】カッターに設けたボスがガイド溝に嵌っている状態。
【図4】従来の紙断裁装置のカッターの動き。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係る紙断裁装置を示す実施例であり、同図の1は重ね合わせた複数枚の紙(積層紙1)を示し、2は該積層紙1が位置ズレしないように押える紙押え、3は該積層紙1を切断する為のカッターを夫々表わしている。重ね合わされた積層紙1は平坦なテーブル4の上に載置され、紙押え2は上方から降下して積層紙1が切断される際にズレないように該紙押え2にて強固にクランプされる。
紙押え2は角型断面の棒体であって、該紙押え2の両側にはリンク5a,5bが軸6a,6bを介して連結され、該リンク5a,5bはスクリュー7に螺合しているナット8a,8bに軸9a,9bを介して連結している。そこで、スクリュー7が回転するならば、ナット8a,8bはスクリュー7に沿って移動し、その結果、リンク5a,5bの傾きは変化する。
【0013】
同図において、ナット8a,8bが左側へ移動するならば、紙押さえ2は降下して積層紙1を押圧する。紙押え2の両サイドはガイドされている為に、左右方向へ移動することはなく、ナット8a,8bの移動に伴って紙押え2は上下動する。スクリュー7はモータ10によって回転駆動され、間には複数のギア11,11・・が介在して回転速度を落とし、例えばDC24Vの電源で25W相当のモータ10を使用しても積層紙1を強力にクランプすることが出来る。そしてナット8a,8bの位置を検出するならばリンク5a,5bの傾きθが分かり、その結果、紙押え2にて押えられている積層紙1の厚さを知ることが出来る。
【0014】
一方、カッター3は上記紙押え2の下側に装着され、両ガイド12a,12bの間に嵌ってスライドすることが出来る。しかも、カッター3のスライド方向は一定方向ではなく、左右両側が交互に上昇しながら横方向へスライドすることが出来る構造としている。そこで、各ガイド12a,12bには2本のガイド溝13a,13bが所定の距離をおいて夫々形成され、しかもガイド溝13a,13bの形状は違っている。すなわち、従来のように傾斜した直線状のガイド溝ではなく、湾曲した形状と成っている。
【0015】
そして、カッター3の両面にはボス14a,14bがそれぞれ水平に突出し、これらボス14a,14bはガイド溝13a,13bに遊嵌している。ボス14a,14bがガイド溝13a,13bに沿って移動するならば、カッター3はその両側が交互に上昇しながら横方向へスライドすることが出来る。すなわち、カッター3の両側が交互に上昇してスライドするようなガイド溝形状と成っている。従来の裁断装置のようにカッターは積層紙1の紙面に平行ではなく、傾斜した状態で上昇して積層紙1が部分的に切断される。
【0016】
そしてカッター3の下側にはスクリュー15が水平に取付けられ、該スクリュー15はモータ16によって複数のギア17,17・・を介して回転駆動され、スクリュー15に螺合しているナット18は該スクリュー15の回転と共に移動することが出来る。ナット18からは、受け19,19がガイド溝13bを挟むように起立し、受け19,19の上方を開口した溝20,20にはカッター3から突出しているボス14b,14bが係合している。
【0017】
従って、モータ16によってスクリュー15が回転するならば、ナット18はスクリュー15に沿って移動し、受け19の溝20に係合しているボス14bはナット18と共に移動することになる。しかし、ボス14bはガイド溝13bにガイドされている為に、溝20を上下動すると共にガイド溝13bに沿って移動する。同じく、ガイド溝13aに嵌っているボス14aもガイド溝13aに沿って移動し、カッター3の両側は交互に上昇することが出来る。
【0018】
図2は積層紙1とカッター3の関係を表している。
(a)積層紙1はテーブル4に配置されて上方から紙押え2によって動かないように固定されている。そして、カッター3は右側が僅かに高く傾斜した状態にあり、積層紙1に接近している。
(b)高い位置にある右側を上昇させて積層紙1の右側下層部を切断する。そして、傾斜して低い位置にあるカッター3の左側は積層紙1との間に隙間を有している。
(c)カッター3の右側は上昇して積層紙1の上層まで達し、該積層紙1の右側部は切断される。右側の上昇が終わった段階で、低い位置にある左側を僅かに上昇させる。この場合、カッター3は真上へ上昇するのではなく、左方向へのスライドを伴って上昇する。
同図に示す矢印軌跡はガイド溝13a,13bを示し、このガイド溝13a,13bに沿ってボス14a,14bが移動することでカッター3の動きが行われる。
(d)カッター3の右側及び左側は共に上昇しながら左方向へスライドすることが出来る。同図には所定の長さLを切断幅として表しているように、カッター3を傾斜して上昇することで、カッター3が積層紙1に噛み込んで切断することが出来る長さLを小さく抑えることが出来る。
(e)カッター3は上昇しないで左方向へスライドして積層紙1を切断するが、該カッター3は傾斜していることで、この傾きを保った状態で左方向へスライドするならば、切断幅を拡大することなく切断することが出来る。
(f)右側は左方向へスライドし、左側は左方向へのスライドを伴って上昇する。
(g)更に、右側は左方向へスライドし、左側も同じく左方向へのスライドを伴って僅かに上昇する。
(h)更に、右側は左方向へスライドし、左側も同じく左方向へのスライドを伴って僅かに上昇する。
(i)更に、右側は左方向へスライドし、左側は左方向へのスライドを伴って上昇する。そして、積層紙1の切断が完了する。
【0019】
このように、本発明ではカッター3を傾斜して配置し、該カッター3の左右側端を交互に上昇させて積層紙1を切断し、積層紙1への噛み込み(切断幅L)を小さくし、その為に切断負荷を非常に小さく抑えることが出来る。又、カッター3の長さも小さく出来る。
【0020】
図3は両ガイド溝13a,13bに取付けられたカッター3を表している具体例である。両ガイド溝13a,13bは前記図2(i)に示すような曲線をもって形成され、このガイド溝13a,13bにカッター3から突出したボス14a,14bが嵌っている。そして、図1の場合とは多少異なっているが、該カッター3の左側には別なボス24が突出して設けられている。
【0021】
そして、該カッター3には別部材となる刃先21がネジ止めにて取付けられ、この刃先21が切れ止むならば交換できる構造としている。ところで、上記ボス24は受け22に形成した溝23に嵌り、該受け22が水平方向に移動するならば溝23に嵌っているボス24も移動してカッター3はスライドする。ただし、溝23は上方を開口した長溝として形成され、受け22が移動することに伴うカッター3の上昇並びに傾きに応じて上下動することが出来る。
【0022】
ところで、受け22が左方向へ距離S移動するならば、ガイド溝13aに嵌っているボス14aは左方向へ距離S移動し、そして上方へ高さT移動することが出来る。又、ガイド溝13bに嵌っているボス14bは左方向へ距離S移動し、そして上方へ高さT移動することが出来る。このように、ボス24が左方向へ距離S移動することで、ボス14a,14bも同じく左方向へ距離S移動するが、ガイド溝13a,13bの形状に基づいて上方へ高さT、T上昇することが出来る。
【0023】
従って、カッター3は上昇すると共にその傾きを変化させることが出来る。カッター3の動きが図2に示すように動作する為に、両ガイド溝13a,13bの形状が定められる。ところで、本発明では受け22を左方向へ移動する為の手段は限定しないが、図1に示す場合と同じく受け22にナット18を取着し、このナット18をスクリュー15に螺合するならば、該スクリュー15の回転に伴ってナット18はスクリュー15に沿って移動することが出来、同時に受け22も移動する。
【符号の説明】
【0024】
1 積層紙
2 紙押え
3 カッター
4 テーブル
5 リンク
6 軸
7 スクリュー
8 ナット
9 軸
10 モータ
11 ギヤ
12 ガイド
13 ガイド溝
14 ボス
15 スクリュー
16 モータ
17 ギヤ
18 ナット
19 受け
20 溝
21 刃先
22 受け
23 溝
24 ボス













【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル上に複数枚重ね合せて載置した積層紙を切断する為の紙の断裁装置において、上方から降下する紙押えを有し、また下方から上昇するカッターを備えたもので、カッターの表面両側部にはボスを突出して設けると共に、該ボスはカッターを挟み込んだガイドに形成しているガイド溝に嵌り、カッターの刃先が積層紙に対して傾斜し、該積層紙の片側から逐次切断することが出来るように両ガイド溝の形状を互いに違わせ、そして、カッターを水平方向へスライドすることが出来るスライド手段を備えたことを特徴とする紙の裁断装置。
【請求項2】
上記カッターのスライド手段として、カッター表面から突出したボスを受けに形成した溝に嵌め、該受けはナットに取付けると共にナットはモータによって回転するスクリューに螺合した請求項1記載の紙の断裁装置。
【請求項3】
テーブル上に複数枚重ね合せて載置した積層紙を切断する方法において、該積層紙は上方から降下する紙押えにて押圧・固定し、そして、下方から上昇するカッターによって積層紙の下層から逐次切断するもので、カッターは積層紙の紙面に対して傾斜し、該カッターの一方側を上昇すると共に他方側へスライドして積層紙の一方側を切断し、その後、カッターの他方側を上昇すると共に他方側へスライドすることで積層紙を小さい負荷で切断することを特徴とする積層紙の裁断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−30335(P2012−30335A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173589(P2010−173589)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000207425)大同工業株式会社 (45)