説明

紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法

【課題】低密度化性に優れ、強度低下の少ない低密度紙を与え得る紙用低密度化剤、及び該低密度化剤を用いて、低密度紙を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】(A)炭素数8〜36の脂肪酸、炭素数8〜36のアルケニル基を有するコハク酸及びその酸無水物、ダイマー酸、ロジン酸及びその酸変性物、酸化ワックス、並びに炭素数9〜37のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有するカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物と、(B)エピハロヒドリンとの反応物を含有する紙用低密度化剤、並びに紙の製造に使用するパルプを、前記紙用低密度化剤と接触させる工程を含む低密度紙の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、低密度化性に優れ、強度低下の少ない低密度紙を与え得る紙用低密度化剤、及び該低密度化剤を用いて、低密度紙を効果的に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、森林資源の有効利用、自然環境保護の面から、パルプの使用量を抑えるために紙製品の坪量を下げる努力がなされている。紙のボリューム感や柔軟性は、紙の低密度化により得られ、これにより、パルプの有効利用を図ることができる。従来、紙の嵩を高くする方法として、架橋パルプを用いる方法、合成繊維との混抄による方法、パルプ繊維に無機物を充填する方法等が行われている。しかしながら、架橋パルプを用いる方法や合成繊維との混抄による方法では、紙のリサイクルが難しくコスト高になるのを免れない。また、無機物を充填する方法では、紙の強度を著しく低下させるという欠点がある。これらの欠点を解消するために、抄紙時に有機化合物を添加して嵩を高くする低密度化剤が検討されている。
【0003】
紙力を損なうことなく低密度化されたシートが得られる紙用低密度化剤としては、例えば油脂系非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤又は糖系非イオン界面活性剤を含有する紙用低密度化剤(例えば、特許文献1参照)、高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加物を含有する紙用低密度化剤(例えば、特許文献2参照)、高級アルコールのアルキレンオキシド付加物を含有する紙用低密度化剤(例えば、特許文献3参照)、オキシアルキレン基を有する多価アルコール脂肪酸エステル化合物を含有する紙用低密度化剤(例えば、特許文献4参照)などが提案されている。
しかしながら、これらの低密度化剤には、下記の問題があった。
(1)紙への定着性が低く、使用量の割には紙の低密度化効果が低い。
(2)高級アルコールのアルキレンオキシド付加物、高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加物、油脂系非イオン界面活性剤では、サイズ度が著しく低下する。
(3)多価アルコール脂肪酸エステル化合物は紙への定着性が悪く、使用量の割には紙の低密度化効果が低い。また、定着性が悪いため、抄紙系に低密度化剤が蓄積して発泡や浮き種によるトラブルが発生する。
【特許文献1】特開平11−200283号公報
【特許文献2】特開平11−200284号公報
【特許文献3】特再WO98/03730号公報
【特許文献4】特開平11−350380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情のもとで、低密度化性に優れ、強度低下の少ない低密度紙を与え得る紙用低密度化剤、及び該低密度化剤を用いて、低密度紙を効率よく製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定のカルボン酸化合物とエピハロヒドリンとの反応物を含む低密度化剤は、優れた低密度化性を有し、強度低下が少なく、かつサイズ低下のない低密度紙を効率よく与えることができ、その目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1](A)炭素数8〜36の脂肪酸、炭素数8〜36のアルケニル基を有するコハク酸及びその酸無水物、ダイマー酸、ロジン酸及びその酸変性物、酸化ワックス、並びに炭素数9〜37のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有するカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物と、(B)エピハロヒドリンとの反応物を含有することを特徴とする紙用低密度化剤、
[2](A)成分のカルボン酸化合物が、炭素数12〜22の脂肪酸、炭素数12〜22のアルケニル基を有するコハク酸及びその酸無水物、並びに炭素数13〜23のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有するカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]項に記載の紙用低密度化剤、
[3](A)成分のカルボン酸化合物に対して、(B)成分のエピハロヒドリンを0.5〜10モル倍の割合で用いる、上記[1]又は[2]項に記載の紙用低密度化剤、及び
[4]紙の製造に使用するパルプを、上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の紙用低密度化剤と接触させる工程を含むことを特徴とする低密度紙の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の低密度化剤及び低密度紙の製造方法によれば、強度低下の少ない低密度紙を得ることができるため、パルプ原料の使用量低減、自然環境保護に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、本発明の紙用低密度化剤(以下、単に低密度化剤と称することがある。)について説明する。
[紙用低密度化剤]
本発明の紙用低密度化剤は、(A)炭素数8〜36の脂肪酸、炭素数8〜36のアルケニル基を有するコハク酸及びその酸無水物、ダイマー酸、ロジン酸及びその酸変性物、酸化ワックス、並びに炭素数9〜37のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有するカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物と、(B)エピハロヒドリンとの反応物を含有することを特徴とする。
【0008】
((A)カルボン酸化合物)
本発明の紙用低密度化剤において、(A)成分として用いられるカルボン酸化合物としては、炭素数8〜36の脂肪酸、炭素数8〜36のアルケニル基を有するコハク酸及びその酸無水物、ダイマー酸、ロジン酸及びその酸変性物、酸化ワックス、並びに炭素数9〜37のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有するカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種を使用する。
【0009】
<炭素数8〜36の脂肪酸>
本発明において、(A)カルボン酸化合物として用いることのできる炭素数8〜36の脂肪酸は、飽和、不飽和のいずれであってもよいし、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このような炭素数8〜36の脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、2−ブチルカプリル酸、トリデシル酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、2−ヘキシルカプリル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、2−オクチルラウリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、2−デシルミリスチン酸、メリシン酸、ラクセル酸、セロメリシン酸、ゲダ酸、セロプラスチン酸などの飽和脂肪酸;ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、ペトロセリジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、プニカ酸、ステアリドン酸、リシノール酸、リシネラジン酸、ガドレイン酸、ゴドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ブラッシジン酸、ドコサペンタエン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸、ネルボン酸、セレブロン酸などの不飽和脂肪酸;牛脂脂肪酸、豚脂脂肪酸、魚油脂肪酸、鯨油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヤシ脂肪酸、パーム油脂肪酸、大豆油脂肪酸、菜種油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、米糠油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、落花生油脂肪酸、ラノリン脂肪酸などの混合脂肪酸や硬化脂肪酸が挙げられる。
【0010】
前記炭素数8〜36の脂肪酸には、炭素数が8未満のものや炭素数が36を超えるものが含まれていても良いが、8未満の炭素数の脂肪酸が多くなるとエピハロヒドリンとの反応物により製造される紙の低密度化性が低下し、サイズ度も低下するおそれがある。36を超えた炭素数の脂肪酸が多くなると、エピハロヒドリンとの反応物の水への分散又は乳化が困難となる。これらの脂肪酸の中でも炭素数12〜22の脂肪酸はエピハロヒドリンとの反応物が優れた低密度化性を発揮し、強度低下の少ない低密度紙を製造することができるため、好ましく用いることができる。不飽和脂肪酸とエピハロヒドリンの反応物は液状化しやすい傾向にあるため、扱いやすいが、サイズ性が若干低下するおそれがある。一方飽和脂肪酸とエピハロヒドリンの反応物は固体化しやすい傾向にあるため取り扱い難くなるが、サイズ維持性がよい。
【0011】
<炭素数8〜36のアルケニル基を有するコハク酸及びその酸無水物>
本発明において、(A)カルボン酸化合物として用いることのできる炭素数8〜36のアルケニル基を有するコハク酸及びその酸無水物としては、例えばオクテニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デセニルコハク酸、ウンデセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、トリデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、ヘプタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、ノナデセニルコハク酸、エイコセニルコハク酸、ヘネコセニルコハク酸、ドコセニルコハク酸、トリコセニルコハク酸、テトラコセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸及びこれらの酸無水物等を用いることができる。より好ましいアルケニル基の炭素数の範囲は、乳化、分散など製品の取り扱い易さから炭素数12〜22である。これらは2種以上を混合して用いることもできる。
【0012】
<ダイマー酸、ロジン酸及びその酸変性物、酸化ワックス>
本発明において、(A)カルボン酸化合物として用いることのできるダイマー酸は、不飽和C18脂肪酸をモノマー単位とする二量化脂肪酸の通称である。ダイマー酸は、モノマー酸、トリマー酸を含有していても良い。ダイマー酸としては市販の「ハリダイマー200N」[ハリマ化成(株)製]などを用いることができる。ダイマー酸とエピハロヒドリンの反応物は、嵩高性及びサイズ維持性に優れているため、好適に用いることができる。
また、本発明で用いることのできるロジン酸及びその酸変性物としては、ロジン酸(主成分アビエチン酸)、フマル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジンなどが挙げられる。これらロジン酸系化合物とエピハロヒドリンとの反応物からは低密度性はやや劣るものの、強度及びサイズ低下の少ない低密度紙を得ることができる。
さらに、酸化ワックスとは、カルボキシル基を有するワックスである。そのエピハロヒドリン反応物の低密度化性はやや劣るものの、強度及びサイズ低下の少ない低密度紙を得ることができる。
【0013】
<炭素数9〜37のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有するカルボン酸>
本発明において、(A)カルボン酸化合物として用いることのできる炭素数9〜37のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有するカルボン酸は、公知の方法を用いて多価カルボン酸と高級アルコールのエステル化反応により得ることができる。ここで用いられる高級アルコールは、炭素数8〜36の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシル基を有していてもよいアルキル基もしくはアルケニル基を有するアルコールであり、炭素数2〜30のアルキル基又はアルケニル基を置換基に持つシクロヘキサノール、さらに炭素数8〜36のアルキル又はアルケニルフェノールを用いることもできる。
【0014】
このような高級アルコールとして例えば、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、1−ノナデカノール、1−エイコサノール、1−ヘンエイコサノール、1−ドコサノール、1−トリコサノール、1−テトラコサノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、2−ウンデカノール、2−ドデカノール、2−トリデカノール、2−テトラデカノール、2−ペンタデカノール、2−ヘキサデカノール、2−ヘプタデカノール、2−オクタデカノール、2−ノナデカノール、2−エイコサノール、2−オクテン−1−オール、2−ドデセン−1−オール、2−ウンデセン−1−オール、2−テトラデセン−1−オール、2−ペンタデセン−1−オール、2−ヘキサデセン−1−オール、2−オクタデセン−1−オール、8−ノネン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、11−ドデセン−1−オール、12−トリデセン−1−オール、15−ヘキサデセン−1−オール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エレオステアリルアルコール、リシノイルアルコール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、ミリシルアルコール、メリシルアルコール、ラクセリルアルコール、セロメリシルアルコール、テトラトリアコンタノール、ヘプタトリアコンタノール、ヘキサトリアコンタノール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、デトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、オクタデカンジオール、エイコサンジオール、ドコサンジオール、トリコサンジオール、テトラコサンジオール、オクテンジオール、ノネンジオール、デセンジオール、ドデセンジオール、テトラデセンジオール、ヘキサデセンジオール、オクタデセンジオール、エイコセンジオール、ドコセンジオール、テトラコセンジオール、トリアコンテンジオール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール等を挙げることができる。
【0015】
これらは1種用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。炭素数8未満のアルコールや炭素数が36を超えるアルコールが含まれていても良いが、乳化、分散のし易さなど製品の取り扱い性から判断して、炭素数12〜22の高級アルコール(多価カルボン酸とエステル化反応したアルコキシカルボニル基としては炭素数13〜23)が特に好ましい。
高級アルコールとして不飽和アルコールをアルコキシカルボニル基とした場合、カルボン酸化合物とエピハロヒドリンとの反応物は液状化する傾向にあるため、取り扱い易いが、サイズ性を低下させる傾向にある。一方、飽和アルコールを用いてアルコキシカルボニル基とした場合のカルボン酸化合物とエピハロヒドリンとの反応物は、固体化の傾向にあり取り扱い難いが、サイズ維持の点で良くなる。なお、ヒドロキシル基を有していても良いアルキル基もしくはアルケニル基を有するアルコールとカルボン酸系化合物とのエステル化反応により、エピハロヒドリンとの反応部位は、ヒドロキシル基とアルコキシカルボニル基の2種が存在することになるが、エピハロヒドリンは主にアルコキシカルボニル基に反応する。
【0016】
一方、前記炭素数8〜36の高級アルコールとエステル化反応し、炭素数9〜37のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基を、それぞれ1つ以上有するカルボン酸を得るのに用いられる多価カルボン酸に特に限定はなく、脂肪族系多価カルボン酸、芳香族系多価カルボン酸、ダイマー酸、フマル酸変成ロジン、マレイン酸変成ロジン、酸化ワックス類など、1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物を用いることができ、さらにカルボン酸無水物を用いることもできる。
【0017】
脂肪族系多価カルボン酸、芳香族系多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ゲライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸などの飽和ジカルボン酸;タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸などのヒドロキシジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、8,13−ジメチルエイコサ−8,12−ジエン二酸、ダイマー酸などの不飽和ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、ブタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸などの脂肪族トリカルボン酸;シクロヘキサントリカルボン酸などの脂環式トリカルボン酸;クエン酸、イソクエン酸などのヒドロキシトリカルボン酸;トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸などの芳香族トリカルボン酸;シクロヘキサンテトラカルボン酸などの脂環式テトラカルボン酸;ピロメリット酸、メロファン酸、ブレーニト酸などの芳香族テトラカルボン酸が挙げられる。
【0018】
カルボン酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸などの芳香族多価カルボン酸無水物類、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸などの脂肪族多価カルボン酸無水物類、無水ヘキサヒドロフタル酸、3,4−ジメチルテトラヒドロフタル酸無水物、1,2,4−シクロペンタントリカルボン酸無水物、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂環族多価カルボン酸無水物類などが挙げられる。
【0019】
炭素数9〜37のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基を、それぞれ1つ以上有するカルボン酸を合成する際の高級アルコールと多価カルボン酸との反応モル比は、カルボキシル基が残留するモル比とする必要があるが、低密度化性向上の効果が高いという観点から、炭素数12〜22のアルコキシカルボニル基を1〜3つ有し、かつカルボキシル基を1つ以上有するカルボン酸エステルがより好ましい。このエステル化反応により、すべてのカルボキシル基がアシル化した分子が混ざっていても良く、未反応の多価カルボン酸として残留していても良い。エピハロヒドリンは残留しているカルボキシル基と反応して本発明の化合物となるが、一分子中に4以上のアルコキシカルボニル基を有するカルボン酸化合物とエピハロヒドリンとの反応物は水への分散又は乳化性が悪くなるため使用しにくい。
なお、本発明においては、(A)成分のカルボン酸化合物として、前述した各種のカルボン酸化合物を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、炭素数12〜22の脂肪酸、炭素数12〜22のアルケニル基を有するコハク酸及びその酸無水物、並びに炭素数13〜23のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基を、それぞれ1つ以上有するカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種を用いることが、得られる低密度化剤の性能の観点から好ましい。
【0020】
((B)エピハロヒドリン)
本発明の紙用低密度化剤において、(B)成分として用いられるエピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどが挙げられる。これらの中で、価格、反応性、生成物の有用性などの観点から、エピクロロヒドリンが好ましい。低密度化剤として、脂肪酸を用いた場合、低密度性はあまり発現しないが、この脂肪酸にエピハロヒドリンを反応させることにより、極めて高い、低密度性が得られ、比較的強度低下が少ない紙が得られる。また、多価カルボン酸の脂肪酸エステル化物でも低密度性が得られるが、この脂肪酸エステル化物の残留カルボキシル基にエピハロヒドリンを反応した化合物を低密度化剤として使用することにより、さらに、低密度性が向上し比較的強度低下が少ない紙が得られる。
【0021】
((A)カルボン酸化合物と(B)エピハロヒドリンとの反応)
本発明において、(A)カルボン酸化合物と(B)エピハロヒドリンとを反応させる方法に特に制限はなく、例えば、当該カルボン酸化合物に対して、好ましくは0.5〜10モル倍、より好ましくは0.5〜4モル倍のエピハロヒドリンを添加し、必要に応じて反応触媒や溶媒を用いて、40〜180℃程度、好ましくは60〜160℃で反応させることにより、目的の反応物を得ることができる。反応終了後、未反応のエピハロヒドリンは除去することが好ましい。エピハロヒドリンの添加量が、当該カルボン酸化合物に対して0.5モル倍未満であると、未反応のカルボキシル基が残存し、低密度化性が低下するおそれがあるが、この残留カルボキシル基を塩にすることで、前記反応物の水又は溶剤への乳化、分散又は溶解を容易とし製品安定性を向上させることができる。一方、10モル倍を超えると、バッチスケールが大幅に低下し、生産性が低下するほか、エピハロヒドリン由来の不純物が多く生成するおそれがあり、無駄となるばかりで経済性が低下するおそれがある。
【0022】
前記残留カルボキシル基を塩にするために用いる化合物としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物等を挙げることができる。これらのアルカリ剤は1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上組み合わせて用いることもできる。このアルカリ剤による対塩は本発明を限定するものではない。
【0023】
<反応触媒>
カルボン酸化合物とエピハロヒドリンとの反応における反応触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩;トリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩などの3級アミン塩酸塩;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン化合物等が挙げられるが、本発明を限定するものではない。
これらの反応触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
<反応溶媒、反応物の形態>
本発明においては、反応溶媒として、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、ジクロルエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びこれらの混合溶媒などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、得られる低密度化剤の形態に特に制限はなく、化合物をそのまま固体又は液状で用いることができ、あるいは、水や溶剤に乳化、分散又は溶解して用いることもできる。また、低密度化剤としての性能を損なわない範囲で、微量の界面活性剤などを用いて、水や溶剤に乳化、分散又は溶解して使用することもできる。
【0025】
次に、本発明の低密度紙の製造方法について説明する。
[低密度紙の製造方法]
本発明の低密度紙の製造方法は、紙の製造に使用するパルプを、前述した紙用低密度化剤と接触させる工程を含むことを特徴とする。
本発明方法において、前記パルプを、当該紙用低密度化剤と接触させる工程としては、例えば、離解工程直後、叩解前後、薬品などを添加する紙料調成工程又はその前後、抄紙前、古紙の再生処理前後などを挙げることができる。
本発明方法において、紙用原料パルプに接触させるに要する紙用低密度化剤の添加量に特に制限はないが、パルプ100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましく、0.1〜3質量部であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明方法に使用するパルプに特に制限はなく、例えば、広葉樹、針葉樹などから得られる木材パルプ、バガス、ケナフ、竹パルプ、古紙再生パルプなどの植物繊維、パルプモールドなどの繊維材料などを挙げることができる。また、本発明方法により製造する低密度紙は、植物繊維、その他の繊維を膠着させて製造したものであって、素材としてレーヨン、ポリエステルなどの合成高分子物質を用いて製造した合成紙や、繊維状無機材料を配合した紙なども含まれる。
【0027】
本発明方法により製造する低密度紙の種類に特に制限はなく、例えば、新聞用紙、印刷用紙、記録用紙、包装用紙、板紙、ライナー、中芯などのダンボール用紙、壁紙、襖紙原紙やその裏打ち紙、テッシュペーパー、トイレットペーパーなどの衛生用紙などの紙製品を挙げることができる。紙の形態にも特に制限はなく、例えば、感熱記録紙、インクジェット記録紙、コート紙、アート紙、微コート紙など塗被紙にも応用することができる。また、低密度化にする目的にも特に制限はなく、例えば、めくりやすさ、印刷適性、ボリューム感、風合い、手触りなどの柔軟性、紙の割れ防止、層間剥離のしやすさ、吸水性、吸油性、吸樹脂性、含水伸度の低下、湿度による伸縮低下、不透明性、コスト低減、パルプ使用量の節減などを挙げることができる。
【0028】
本発明による低密度紙製造の際には、低密度化の性能を損なわない範囲で他の薬剤を併用することができる。他の薬剤として、例えば、すでに公知の低密度化剤、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤、澱粉、ポリビニルアルコールなどの紙力剤、ドライヤー剥離剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、脱墨剤、サイズ剤、紙質改善剤、填料、顔料、染料、消泡剤などを挙げることができる。これらの他の薬剤は、紙料調成工程において、単独に添加することができ、あるいは、あらかじめ本発明の紙用低密度化剤に混合して添加することもできる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、低密度紙の評価は下記の方法により行った。
(1)低密度化性
JIS P 8118(1998)に従い低密度紙の密度を測定し、下式により低密度化率を求めた。密度が小さいほど、低密度化率が大きいほど、低密度化性が良好である。
低密度化率(%)=[(A−B)/A]×100(%)
A:低密度化剤無添加時の密度
B:低密度化剤添加時の密度
(2)比破裂強度
JIS P 8112(1994)に従い低密度紙の破裂度試験器[「BURSTING TESTER MD−200」、熊谷理機工業(株)]にて、破裂強度を測定し、下式により比破裂強度保持率を求めた。
比破裂強度保持率=(D/C)×100(%)
C:低密度化剤無添加時の比破裂強度
D:低密度化剤添加時の比破裂強度
(3)サイズ度
JIS P 8122(2004)に従いステキヒトサイズ度を測定した。
【0030】
試験紙作製方法1
広葉樹晒しクラフトパルプを、フリーネス440mlに叩解してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを、ラボスターラー[ヤマト科学(株)製]にて撹拌しながら、対パルプ0.8質量%の低密度化剤を添加し、5分間撹拌した。対パルプ0.5質量%(1質量%水溶液で)のカチオン澱粉[「EXCELL(登録商標)V−7」、日澱化学(株)製]を添加し、5分間撹拌した。丸型シートマシン[熊谷理機工業(株)製]にて坪量80g/m2となるように抄紙し、プレス機[熊谷理機工業(株)製]により0.7MPaで5分間プレスしたのち、ヤンキードライヤー[熊谷理機工業(株)製]にて105℃で3分間乾燥して低密度紙を得た。
【0031】
試験紙作製方法2
広葉樹晒しクラフトパルプを、フリーネス440mlに叩解してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを、ラボスターラー[ヤマト科学(株)製]にて撹拌しながら、対パルプ0.8質量%の低密度化剤を添加し、5分間撹拌した。さらに、対パルプ0.5質量%(1質量%水溶液で)のカチオン澱粉[「EXCELL(登録商標)V−7」、日澱化学(株)製]を添加し、5分間撹拌した。次に対パルプ0.1質量%のAKDサイズ剤[「サイズパイン(登録商標)K−903」、荒川化学工業(株)製]を添加し、5分間撹拌した。丸型シートマシン[熊谷理機工業(株)製]にて坪量80g/m2となるように抄紙し、プレス機[熊谷理機工業(株)製]により0.7MPaで5分間プレスしたのち、ヤンキードライヤー[熊谷理機工業(株)製]にて105℃で3分間乾燥して低密度紙を得た。
【0032】
実施例1
フラスコにパルミチン酸15.4g(0.06モル)、ステアリン酸39.8g(0.14モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液1.2gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜160℃にて約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、パルチミン酸とステアリン酸混合物のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は8.2mgKOH/gであった。得られた反応物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0033】
実施例2
フラスコにパルミチン酸15.4g(0.06モル)、ステアリン酸39.8g(0.14モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液1.2gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン10.2g(0.11モル)を70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに、70〜160℃約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、パルチミン酸とステアリン酸混合物のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は88.1mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0034】
実施例3
フラスコにステアリン酸56.9g(0.2モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液1.2gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、ステアリン酸のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は10.8mgKOH/gであった。
得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0035】
実施例4
フラスコにオレイン酸56.5g(0.2モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液1.2gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、オレイン酸のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は8.6mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0036】
実施例5
フラスコにトール油脂肪酸[「ハートール(登録商標)FA−1」、ハリマ化成(株)製:酸価194mgKOH/g]57.8g(0.2モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液1.2gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、トール油脂肪酸のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は8.8mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0037】
実施例6
フラスコにヤシ脂肪酸[「ヤシ脂肪酸」、日油(株)製:酸価265mgKOH/g]42.3g(0.2モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液0.9gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、ヤシ脂肪酸のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は11.9mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0038】
実施例7
フラスコにイソステアリン酸(酸価195mgKOH/g)57.5g(0.2モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液1.2gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、イソステアリン酸のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は15.3mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0039】
実施例8
フラスコにダイマー酸[「ハリダイマー200N」、ハリマ化成(株)製:酸価191mgKOH/g]117.5(0.2モル)、トリフェニルホスフィン0.3gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン18.5g(0.20モル)を、70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、ダイマー酸のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は82.9mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0040】
実施例9
フラスコにダイマー酸[「ハリダイマー200N」、ハリマ化成(株)製:酸価191mgKOH/g]117.5g(0.2モル)、トリフェニルホスフィン0.3gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン38.9g(0.42モル)を、70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、ダイマー酸のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は8.9mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0041】
実施例10
フラスコにマレイン酸変性ロジン[ハリマ化成(株)製:酸価228mgKOH/g測定値]49.2g(0.2モル当量)、トリフェニルホスフィン0.15gを仕込み、90〜120℃で均一に混合した。ここに、エピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、90〜140℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜140℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して90〜140℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、マレイン酸変性ロジンのエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は18.3mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0042】
実施例11
フラスコにフマル酸変性ロジン[ハリマ化成(株)製:酸価240mgKOH/g測定値]46.8g(0.2モル当量)、トリフェニルホスフィン0.15gを仕込み、90〜120℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、90〜140℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90〜140℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して90〜140℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、フマル酸変性ロジンのエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は20.0mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0043】
実施例12
フラスコにロジン酸の代表成分であるアビエチン酸(試薬)60.5g(0.2モル)、イソプロピルアルコール20g、トリフェニルホスフィン0.3gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、70〜140℃で約4時間かかけて滴下し、滴下終了後さらに70〜140℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜140℃で未反応のエピクロロヒドリンとイソプロピルアルコールを留去し、アビエチン酸のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は19.5mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0044】
実施例13
フラスコにドデセニル無水コハク酸(中和価413mgKOH/g)54.3g(0.4モル当量)、48質量%水酸化ナトリウム水溶液1.5gを仕込み、70〜90℃で均一に混合しした。ここにエピクロロヒドリン18.5g(0.2モル)を、70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、ドデセニル無水コハク酸のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の中和価は158.4mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0045】
実施例14
フラスコにドデセニル無水コハク酸(中和価413mgKOH/g)54.3g(0.4モル当量)、48質量%水酸化ナトリウム水溶液1.5gを仕込み、70〜90℃で均一に混合した。ここにエピクロロヒドリン38.9g(0.42モル)を、70〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して70〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、ドデセニル無水コハク酸のエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の中和価は8.5mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0046】
実施例15
無水トリメリット酸48.0g(0.25モル)とステアリルアルコール135g(0.5モル)と反応触媒としてパラトルエンスルホン酸0.4gを脱水管と、温度計と窒素ガス吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコに仕込み、マントルヒーターにて徐々に加熱し、窒素ガスを吹き込みながら、200〜220℃にて5時間脱水反応を行い、トリメリット酸ジステアレートを得た。
この化合物142.8g(0.2モル)をフラスコに仕込み、エピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、90〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して90〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、トリメリット酸ジステアレートのエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は8.0mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0047】
実施例16
無水ピロメリット酸54.5g(0.25モル)とステアリルアルコール135g(0.5モル)を脱水管と、温度計と窒素ガス吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコに仕込み、マントルヒーターにて徐々に加熱し、窒素ガスを吹き込みながら、200〜280℃にて2時間反応を行い、ピロメリット酸ジステアレートを得た。
フラスコにこの化合物151.6g(0.2モル)と48質量%水酸化カリウム水溶液4gを仕込み、70〜90℃で均一に混合し、エピクロロヒドリン18.5g(0.2モル)を、90〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して90〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、ピロメリット酸ジステアレートのエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は67.9mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0048】
実施例17
無水ピロメリット酸54.5g(0.25モル)とステアリルアルコール135g(0.5モル)を脱水管と、温度計と窒素ガス吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコに仕込み、マントルヒーターにて徐々に加熱し、窒素ガスを吹き込みながら、200〜280℃にて2時間反応を行い、ピロメリット酸ジステアレートを得た。
フラスコにこの化合物151.6g(0.2モル)と48質量%水酸化カリウム水溶液4gを仕込み、70〜90℃で均一に混合し、エピクロロヒドリン38.9g(0.42モル)を、90〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して90〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、ピロメリット酸ジステアレートのエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は8.7mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0049】
実施例18
フラスコにドデセニル無水コハク酸(中和価413mgKOH/g)108.6g(0.8モル当量)、ステアリルアルコール108.0g(0.4モル当量)を脱水管と、温度計と窒素ガス吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコに仕込み、マントルヒーターにて徐々に加熱し、窒素ガスを吹き込みながら、120〜200℃にて2時間反応を行い、ドデセニルコハク酸モノステアレートを得た。
別のフラスコにこの化合物108.3g(0.2モル)と48質量%水酸化カリウム水溶液3gを仕込み、70〜90℃で均一に混合し、エピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、90〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90〜160℃にて約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して90〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、ドデセニルコハク酸モノステアレートのエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は10.3mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0050】
実施例19
フラスコにドデセニル無水コハク酸(中和価413mgKOH/g)108.6g(0.8モル当量)、オレイルアルコール106.9g(0.4モル当量)を脱水管と、温度計と窒素ガス吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコに仕込み、マントルヒーターにて徐々に加熱し、窒素ガスを吹き込みながら、120〜200℃にて2時間反応を行い、ドデセニルコハク酸モノオレートを得た。
別のフラスコにこの化合物107.8g(0.2モル)と48質量%水酸化カリウム水溶液3gを仕込み、70〜90℃で均一に混合し、エピクロロヒドリン20.4g(0.22モル)を、90〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90〜160℃で約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して90〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、ドデセニルコハク酸モノオレートのエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は9.4mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0051】
実施例20
無水マレイン酸98.06g(1モル)とオレイルアルコール267.1g(1モル)を取り、脱水管と、温度計と窒素ガス吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコに仕込み、マントルヒーターにて徐々に加熱し、窒素ガスを吹き込みながら、140〜160℃にて5時間反応を行い、マレイン酸モノオレートを得た。
別のフラスコにこの化合物146.1g(0.4モル)と48質量%水酸化カリウム水溶液3gを仕込み、70〜90℃で均一に混合し、エピクロロヒドリン38.9g(0.42モル)を、90〜160℃で約4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90〜160℃約4時間反応した。反応終了後、6kPaに減圧して90〜160℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、マレイン酸モノオレートのエピクロロヒドリン反応物を得た。この化合物の酸価は8.8mgKOH/gであった。得られた化合物を低密度化剤として用い、試験紙作製方法1、試験紙作製方法2の操作を行って、低密度紙を得た。
【0052】
前記実施例の化合物はそれぞれ乳化して評価を行った。
酸価が20mgKOH/g未満の化合物についてはオレイン酸アンモニウム塩を2質量%配合し、実施例の化合物が5質量%になるようにホモミキサーにて、強制乳化したものを使用した。
酸価が20mgKOH/g以上の化合物については、カルボキシル基をアンモニアで中和した後、実施例の化合物が5質量%になるように、ホモミキサーにて強制乳化したものを使用した。
【0053】
比較例1
低密度化剤を添加することなく、実施例1同様にして、抄紙した。
比較例2
低密度化剤として、ステアリルアルコールのエチレンオキシド5モル付加物を用い、水にて10質量%となるように乳化・分散させた分散液を用いた以外は、実施例1の操作を行って、低密度紙を得た。
比較例3
低密度化剤として、ペンタエリスリトールのステアリン酸トリエステル/ラウリルアルコールのエチレンオキシド10モル・プロピレンオキシド7.5モルランダム付加物(質量比90/10)を用い、水にて10質量%となるように乳化・分散させた分散液を用いた以外は、実施例1の操作を行って、低密度紙を得た。
【0054】
比較例4
低密度化剤として、ジエチレントリアミンジステアリルアミド酢酸塩/ラウリルアルコールのエチレンオキシド10モル・プロピレンオキシド7.5モルランダム付加物(質量比90/10)を用い、水にて10質量%となるように乳化・分散させた分散液を用いた以外は、実施例1の操作を行って、低密度紙を得た。
比較例5
実施例3で使用したステアリン酸56.9g(0.2モル)の代わりに、カプロン酸23.2g(0.2モル)を使用した以外は実施例3と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1の操作を行って、低密度紙を得た。
比較例6
実施例3で使用したステアリン酸56.9g(0.2モル)の代わりに、トリメリット酸ジヘキシルエステル75.7g(0.2モル)を使用した以外は実施例3と同様にして低密度化剤を得た。得られた低密度化剤を用い、実施例1の操作を行って、低密度紙を得た。
【0055】
比較例7
ステアリン酸を水酸化ナトリウムにて中和して溶解し、実施例1の操作を行って、低密度紙を得た。
比較例8
無水トリメリット酸48.0g(0.25モル)とステアリルアルコール135g(0.5モル)と反応触媒としてパラトルエンスルホン酸0.4gを脱水管と、温度計と窒素ガス吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコに仕込み、マントルヒーターにて徐々に加熱し、窒素ガスを吹き込みながら、200〜220℃にて5時間脱水反応を行い、トリメリット酸ジステアレートを得た。これを水酸化ナトリウムにて中和して乳化し、実施例1の操作を行って、低密度紙を得た。
【0056】
実施例1〜20及び比較例1〜8で得られた低密度紙について、前述のようにして低密度化性、比破裂強度を評価した。得られた結果を第1表及び第2表に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
第1表及び第2表に示した結果からも明らかなように、本発明の低密度化剤を用いて製造した低密度紙は、優れた低密度化性を有していると共に、強度低下が少ない結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の低密度化剤及び低密度紙の製造方法によれば、低密度性に優れ、強度低下の少ない低密度紙を容易に得ることができ、パルプ原料の使用量を低減し、森林保護、自然環境問題に寄与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数8〜36の脂肪酸、炭素数8〜36のアルケニル基を有するコハク酸及びその酸無水物、ダイマー酸、ロジン酸及びその酸変性物、酸化ワックス、並びに炭素数9〜37のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有するカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物と、(B)エピハロヒドリンとの反応物を含有することを特徴とする紙用低密度化剤。
【請求項2】
(A)成分のカルボン酸化合物が、炭素数12〜22の脂肪酸、炭素数12〜22のアルケニル基を有するコハク酸及びその酸無水物、並びに炭素数13〜23のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有するカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の紙用低密度化剤。
【請求項3】
(A)成分のカルボン酸化合物に対して、(B)成分のエピハロヒドリンを0.5〜10モル倍の割合で用いる、請求項1又は2に記載の紙用低密度化剤。
【請求項4】
紙の製造に使用するパルプを、請求項1〜3のいずれかに記載の紙用低密度化剤と接触させる工程を含むことを特徴とする低密度紙の製造方法。

【公開番号】特開2009−275304(P2009−275304A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125932(P2008−125932)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】