説明

紙管

【課題】閉塞状態の紙管に指等を挿入可能な隙間を形成して紙管を開けやすい構造とすることで、収納物の収納作業を容易にする。
【解決手段】その一端が開放状態とされた中空筒状の紙管20であって、紙管20の開放状態とされた一方の端近傍には、紙管20の周側部の一部として一対の閉塞片10,10が形成され、一対の閉塞片10,10は、紙管20の径方向内方に押し込まれることで互いに近づくようへこみ変形するとともに、紙管20の径方向外方に押し戻すことで元の紙管20の周側部の一部に戻るばね作用が付与され、へこみ変形時の閉塞片10は、紙管20の軸方向に直交する断面で見て、紙管20の径方向外方に対して凹状となったアーチとなり、アーチとなった一対の閉塞片10,10の間には隙間部14,14が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙管に関する。具体的には、収納物を内部に収納し、その端部を閉塞状態とする筒状の紙管に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の紙管の従来例として、図10に示す通り、紙管36の端部に折曲線32,32が形成されたものがある(特許文献1を参照。)。折曲線32は円弧状に湾曲しており、その始端と終端とが紙管36の開口端縁に達している。この折曲線32で囲まれた紙管36の縁部が閉塞片34となり、紙管36の両端には、一対の閉塞片34,34が対向して設けられている。この一対の閉塞片34,34を互いに近づくよう紙管36の内側に向けて折り曲げることで紙管36が閉塞状態となる。
【特許文献1】登録実用新案第3036690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上述の紙管36では、閉塞片34,34を互いに接するよう折り曲げて隙間をほとんど開けずに閉塞させている。このため、閉塞片34,34の間には指先等を入れる隙間がほとんどなく、紙管36を開放する際には、その間に指先を強引にこじ入れながら元の状態に閉塞片34を戻さなければならなかった。また未使用状態の紙管36は、運搬時に閉塞片34,34が型くずれしないよう予め閉塞状態されている。このため商品となる収納物16を収納する前に紙管36を再度開放しなければならず、収納物16の収納作業に手間がかかっていた。
本発明は上述した点に鑑みて創案されたものである。つまり本発明が解決しようとする課題は、閉塞状態の紙管に指等を挿入可能な隙間を形成して紙管を開けやすい構造とすることで、収納物の収納作業を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の各発明は次の手段をとる。
先ず第1の発明に係る紙管は、少なくともその一端が開放状態とされた中空筒状の紙管であって、紙管の開放状態とされた一方の端近傍には、紙管の周側部の一部として一対の閉塞片が形成され、一対の閉塞片は、紙管の径方向内方に押し込まれることで互いに近づくようへこみ変形するとともに、紙管の径方向外方に押し戻すことで元の紙管の周側部の一部に戻るばね作用が付与され、へこみ変形時の閉塞片は、紙管の軸方向に直交する断面で見て、紙管の径方向外方に対して凹状となったアーチとなり、アーチとなった一対の閉塞片の間には隙間部が形成されていることを特徴とする。
【0005】
この第1の発明では、紙管の径方向内方に向けて一対の閉塞片が凹状にへこむ(凹む)ことで、紙管の開口が閉塞状態となる。凹状となった閉塞片は、紙管の径方向外方に対して凹状のアーチとなり、このアーチとなった一対の閉塞片の間には隙間部が形成される。この隙間部に指先等を差し込み、紙管の径方向外方に向けて閉塞片を押戻すと、閉塞片の有するばね作用によって紙管の周側部の所定位置(元の位置)に閉塞片が戻り、紙管が開放状態となる。
【0006】
次に第2の発明に係る紙管は、第1の発明に係る紙管であって、閉塞片は、紙管の開放状態とされた一方の端に形成された略矩形の片部であるとともに、紙管の周方向で見て対向状に形成され、閉塞片の長辺は、紙管の周方向に長尺で且つ紙管を厚み方向に貫通した切込みと紙管の端縁とで構成され、閉塞片の短辺は、紙管の軸線方向に対して平行な二つの折り目で形成され、二つの折り目のほぼ中央位置には第三の折り目が形成され、へこみ変形時の閉塞片は、紙管の軸方向に直交する断面で見て、第三の折り目と対応する部位が紙管の径方向内方に突出し、突出した部位と閉塞片の両短辺とが凹状のアーチを形成することを特徴とする。
【0007】
この第2の発明では、紙管の軸方向に直交する断面で見て、第三の折り目と対応する部位が紙管の径方向内方に突出した節となり、この節から閉塞片の端にかけては、その節を挟んで末広の半アーチとなっている。この半アーチは、紙管の周側部がその節に向けて押し込まれて形成されたものであり、元の状態よりも少し撓んだ状態となっている。この半アーチの撓みによって、上述のばね作用が閉塞片に付与される。
【0008】
次に第3の発明に係る紙管は、第1の発明に係る紙管において、閉塞片は、紙管の開放状態とされた一方の端とは離間して形成された略矩形の片部であるとともに、紙管の周方向で見て対向状に形成され、閉塞片の長辺は、紙管の周方向に長尺で且つ紙管を厚み方向に貫通するとともに、紙管の軸線方向に対して垂直に並んで形成された二つの切込みで構成され、閉塞片の短辺は、紙管の軸線方向に対して平行な二つの折り目で形成され、二つの折り目のほぼ中央位置には第三の折り目が形成され、へこみ変形時の閉塞片は、紙管の軸方向に直交する断面で見て、第三の折り目と対応する部位が紙管の径方向内方に突出し、突出した部位と閉塞片の両短辺とが凹状のアーチを形成することを特徴とする。
第3の発明では、閉塞片は、紙管の端部と離間して形成されている。また、紙管の端部自体は、紙管の閉塞状態においてもへこみ変形せず元の状態を保持する。
【0009】
次に第4の発明に係る紙管は、第1の発明から第3の発明に係る紙管において、紙管は、両端が開放状態とされ、閉塞片は、紙管の両端に形成されていることを特徴とする。
第4の発明では、開放状態とされた紙管の両端に一対の閉塞片が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明によれば次の効果を得ることができる。
先ず第1の発明によれば、指先等を差し込むための隙間部を形成するとともに閉塞片にばね作用を付与し紙管を開け易くすることで、収納物の収納作業が容易となる。
次に第2の発明によれば、比較的簡単な構成で、紙管を開けやすい構造となる。
次に第3の発明によれば、紙管の端部自体は、紙管の閉塞状態においても元の状態を保持するため、紙管の開口を下に向けて立設させても不安定とならない。
次に第4の発明によれば、閉塞片が紙管の両端に形成されているため、紙管の両端を開けやすい構造で閉塞状態とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
図1〜図6は実施例1を示した図であり,図7〜図9は実施例2を示した図である。
各実施例に示す紙管20,22は、巻回したカレンダーやポスター等の収納物16を収納するための、所望の直径と長さ寸法とを有する筒状の包装容器である。
【実施例1】
【0012】
実施例1の紙管20は、図1に示す開放状態では、その両端に開口12,12を有する中空状の筒体であり、両開口12,12近傍の周側部にはそれぞれ一対の閉塞片10,10が形成されている。この紙管20内に収納物16を収納した後、紙管20の径方向内方に向けて各閉塞片10を指先等で押し込むことで、図2に示す通り、紙管20の開口12が閉塞した状態となる。
【0013】
閉塞片10は、図3に示す通り、紙管20の周側部の一部をなす略矩形の片部であり、紙管20には、一対の閉塞片10,10が所定の間隔をあけて対向状に形成されている。略矩形の閉塞片10の長辺は、厚み方向に紙管20を貫通した切込み2と紙管20の端縁8とで構成されている。また短辺は、紙管20の軸線方向に対して平行な二つの折り目4で形成されている。この二つの折り目4,4の間には、後述のへこみ変形時に節となる第三の折り目6が更に形成されている。
【0014】
図4のように紙管20の開口12を閉塞すると、閉塞片10は、紙管20の径方向内方に対して凹状のアーチを形成するようにへこみ(凹み)変形した状態となる。凹状となった閉塞片10は、第三の折り目6部分が径方向内方に向けて突出した節となり、この節から閉塞片10の両端にかけては、その節を挟んで末広がりに広がった半アーチ10b,10bを形成する。この半アーチ10b,10bは、その節に向けて押し込まれた紙管20の周側部の一部であり、元の紙管20の周側部であった状態よりも少し撓んだ状態となって後述する元の状態に戻るためのばね作用が付与されている。そして一対の閉塞片10,10は互いの節部分で接近し、互いの半アーチ10b,10bに対応する箇所には隙間部14,14が形成される。
上述の隙間部14,14に指先を差し込み、半アーチ10b,10bを紙管20の径方向外方に向けて押し広げると、撓んだ半アーチ10b,10bのばね作用によって両閉塞片10,10が元の紙管20の周側部に戻り、紙管20が開放状態となる。
【0015】
なお紙管20は、収納物16の保護などの必要に応じて、紙管20内部が見えないよう栓部材15で蓋をしてもよい。つまり図5のように円盤状の栓部材15を、収納物16と閉塞片10との間に挟み込みつつ紙管20内に収納する。図6のように、収納された円盤状の栓部材15によって紙管20の両端が閉止されるため、紙管20の内部に収納された収納物16が外部から見えなくなる。
【実施例2】
【0016】
実施例2の紙管22も、図7〜図9の通り、その両端に開口12を有する中空状の筒体であり、開口12近傍の周側部には一対の閉塞片10a,10aが形成されている。そして、収納物16を紙管22内に収納した後に、紙管22の径方向内方に向けて各閉塞片10a,10aを指先等で押し込むことで、紙管22の開口12が閉塞した状態となる。
なお紙管22は、上述の紙管20と基本的構成は同一の構成をとるため、上述の紙管20と同一の構成部分には同一の符号を付し、その詳細説明を省略する。
【0017】
紙管22が上述の紙管20と異なる点は、紙管22の端部と離間して閉塞片10aが形成されている点である。つまり閉塞片10aは、図7の通り、紙管22の軸線方向に対して垂直に並んで形成された二つの切込み2,7からなり、この二つの切込み2,7に折り目4が橋渡し状態で形成されている。二つの折り目4,4の間には、へこみ変形時に節となる第三の折り目6が形成されている。
この閉塞片10aを、へこませて紙管22を閉塞すると、図8のように紙管22の端部は開放状態のまま紙管22が閉塞状態となる。紙管22の端部は開放したままの筒形状を維持するため、図9のように載置面9に紙管22を安定して垂直に立設できる。
【0018】
[その他の実施の形態]
本発明に係る紙管20,22は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その他各種の実施の形態を取り得る。
先ず閉塞片10,10aは、紙管20,22の一端のみに形成されていてもよい。つまり一方が開口していない筒状の紙管にも適用できる。また閉塞片10,10aの形状は、略矩形のほか様々な形状とすることもできる。
また閉塞片10,10aは、対とならずに一つだけ形成されていてもよく、等間隔で三つ(三対)以上形成されていてもよい。また第三の折り目6の形成位置は、必ずしも折り目4,4の中間位置である必要はなく、どちらかにズレていてもよい。
また一つの紙管に閉塞片10,10aを両方とも形成してもよい。例えば、紙管の一方の端には閉塞片10を形成し、他方の端には閉塞片10aを形成することもできる。また閉塞片10,10aの両者を紙管の同じ端に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係る紙管の開放状態時の斜視図である。
【図2】実施例1に係る紙管の閉塞状態時の斜視図である。
【図3】実施例1に係る紙管端部の開放状態時の斜視図である。
【図4】実施例1に係る紙管端部の閉塞状態時の斜視図である。
【図5】実施例1に係る紙管と栓部材と収納物との関係を示した図である。
【図6】栓部材を収納した実施例1に係る紙管の閉塞状態時の斜視図である。
【図7】実施例2に係る紙管端部の開放状態時の斜視図である。
【図8】実施例2に係る紙管端部の閉塞状態時の斜視図である。
【図9】実施例2に係る紙管の閉塞状態時の斜視図である。
【図10】従来の紙管の斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
2 切込み
4 折り目
6 第三の折り目
8 端縁
9 載置面
10,10a 閉塞片
10b 半アーチ
12 開口
14 隙間部
15 栓部材
16 収納物
20,22 紙管



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともその一端が開放状態とされた中空筒状の紙管であって、
前記紙管の開放状態とされた一方の端近傍には、前記紙管の周側部の一部として一対の閉塞片が形成され、
該一対の閉塞片は、該紙管の径方向内方に押し込まれることで互いに近づくようへこみ変形するとともに、該紙管の径方向外方に押し戻すことで元の前記紙管の周側部の一部に戻るばね作用が付与され、
前記へこみ変形時の閉塞片は、前記紙管の軸方向に直交する断面で見て、該紙管の径方向外方に対して凹状となったアーチとなり、該アーチとなった一対の閉塞片の間には隙間部が形成されていることを特徴とする紙管。
【請求項2】
請求項1に記載の紙管であって、
前記閉塞片は、前記紙管の開放状態とされた一方の端に形成された略矩形の片部であるとともに、前記紙管の周方向で見て対向状に形成され、
該閉塞片の長辺は、該紙管の周方向に長尺で且つ該紙管を厚み方向に貫通した切込みと前記紙管の端縁とで構成され、
該閉塞片の短辺は、前記紙管の軸線方向に対して平行な二つの折り目で形成され、
該二つの折り目のほぼ中央位置には第三の折り目が形成され、
前記へこみ変形時の前記閉塞片は、前記紙管の軸方向に直交する断面で見て、前記第三の折り目と対応する部位が該紙管の径方向内方に突出し、該突出した部位と前記閉塞片の両短辺とが前記凹状のアーチを形成することを特徴とする紙管。
【請求項3】
請求項1に記載の紙管であって、
前記閉塞片は、前記紙管の開放状態とされた一方の端とは離間して形成された略矩形の片部であるとともに、前記紙管の周方向で見て対向状に形成され、
該閉塞片の長辺は、該紙管の周方向に長尺で且つ該紙管を厚み方向に貫通するとともに、前記紙管の軸線方向に対して垂直に並んで形成された二つの切込みで構成され、
該閉塞片の短辺は、前記紙管の軸線方向に対して平行な二つの折り目で形成され、
該二つの折り目のほぼ中央位置には第三の折り目が形成され、
前記へこみ変形時の前記閉塞片は、前記紙管の軸方向に直交する断面で見て、前記第三の折り目と対応する部位が該紙管の径方向内方に突出し、該突出した部位と前記閉塞片の両短辺とが前記凹状のアーチを形成することを特徴とする紙管。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載の紙管であって、
前記紙管は、両端が開放状態とされ、
前記閉塞片は、前記紙管の両端に形成されていることを特徴とする紙管。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−96389(P2006−96389A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284526(P2004−284526)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(504220063)株式会社日本コアー (1)