説明

紙葉類の搬送方向切替装置、搬送方向制御方法、および紙葉類処理装置

【課題】搬送路などの部品点数や製造工数の削減が可能で、かつ搬送路の切替え制御が容易な紙葉類の搬送方向切替装置および搬送方向制御方法を提供する。
【解決手段】搬送方向切替装置1は、それぞれ搬送される紙幣の幅方向に対応した長さを有する同一の円筒形状を有する方向転換ドラム10,20から構成される。方向転換ドラム10,20の外周面には、90度の回転角だけそれぞれ離間して第1ないし第4の開口部11〜14,21〜24が配置され、回転角位置が所定の位相角となるように制御される。方向転換ドラム10の内部には、第1の開口部11と第4の開口部14が第1の曲線通路を形成する紙幣ガイド19Aによって接続され、第2の開口部12と第4の開口部14は、直線通路を形成する紙幣ガイド19Bによって接続され、第3の開口部13と第4の開口部14が、第2の曲線通路を形成する紙幣ガイド19Cによって接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣等の紙葉類を3方向に切替えて搬送する紙葉類の搬送方向切替装置、搬送方向制御方法、および紙葉類処理装置に関し、とくに紙幣入出金装置において金種毎に紙幣を異なる収納部に搬送するための紙幣の搬送方向切替装置、搬送方向制御方法、および紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣を入金処理する紙幣入出金装置では、金種別に所定の収納カセットなどに収納し、あるいは保管された紙幣から出金する際に、紙幣を多方向に搬送する必要があった。そのため、従来から銀行の自動支払い機(ATM)、自動販売機、自動券売機などでは、たとえば入金口から一方向に搬送されてくる紙幣を上下方向、あるいは左右方向などに、その搬送方向を切替える搬送方向切替装置が用いられていた。
【0003】
しかし、2以上に搬送方向が切替え可能な紙幣搬送ゲートを実現するには、複雑なゲート機構やパスウェイが不可欠であったため、構成部品が多数に及び、その製造工程が複雑になる。そこで、ある搬送システムでは、同一搬送路内で紙幣をスイッチバックさせる方法を採用して、切替え機構の単純化を図る対策などが採用されていた。
【0004】
特許文献1の搬送分岐機構は、対向する第1の搬送路24と第2の搬送路25とで双方向に紙幣の搬送が可能でかつこれら第1の搬送路24と第2の搬送路25とから搬送されてくる紙幣を多方向に分岐するものである。ここでは、4つの搬送路24〜27の交点に分岐部材を揺動可能に設けて、その停止位置をステッピングモータ56で制御して搬送路を選択している。
【0005】
また、特許文献2の循環式紙幣入出金機は、機体の後面側から係員により紙幣の補充と回収とが可能で、機体の前面側から顧客により入金紙幣の挿入と出金紙幣の取出しとが可能で、入金紙幣を出金紙幣に循環使用するものである。ここで、紙幣を循環使用するために、直進搬送ガイド面および曲折方向ガイド面を有するガイド部材が用いられている。これにより、交差搬送路に設けた三方向切替え機構による紙幣の三方向への切替えが簡単な構造となり、それによって紙幣搬送路の構造も簡略化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−280119号公報(段落番号〔0039〕〜〔0052〕、図1など)
【特許文献2】特開2006−127131号公報(段落番号〔0100〕〜〔0104〕、図9など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の紙幣処理装置では、一般に紙幣の搬送路に進退する各ゲートを投入紙幣の鑑別結果に基づいて駆動して搬送方向の切替えを行っており、その結果、1つのゲートで2方向にしか切替えができない。そのため、投入紙幣を収納する場合、返却口から返却する場合、および収納紙幣を返却口から出金する場合といった3方向への切替えをガイド部材によって実現するには、2つのゲートと3つの搬送路が必要になる。したがって、従来紙葉類処理装置は部品点数が多くなりコストが上昇するとともに、装置の小型化が阻害されるという問題点があった。
【0008】
また、搬送する紙幣の目的位置が増えれば、紙幣の搬送路はさらに複雑な構成になる。そして、搬送路の数に応じて搬送切替え部を配置する必要があった。そのため、各切替装置の近傍あるいは各搬送路で、それぞれ紙幣検知の必要が生じるような場合には、搬送機構全体が複雑化して大形化し、コストアップとなるだけでなく保守点検も難しくなるといった不具合があった。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、紙葉類の搬送路などの部品点数を削減し、あるいは製造工数を削減することが可能であって、かつ搬送路の切替え制御が容易に行える紙葉類の搬送方向切替装置および搬送方向制御方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の別の目的は、銀行の自動支払い機、自動販売機、自動券売機などの搬送機構全体を複雑化することなしに製造コストの低減を図り、かつ保守点検も容易な紙葉類処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、上記問題を解決するために、紙葉類の搬送方向を切替える搬送方向切替装置が提供される。この搬送方向切替装置は、前記紙葉類の搬入あるいは搬出が可能な複数の開口部が外周面に形成され、内部で前記開口部の間を接続するように複数の搬送路が形成された方向転換ドラムと、前記方向転換ドラムをその回転軸周りで所定の位相角に制御することにより、前記方向転換ドラムに搬入される前記紙葉類の搬送方向に前記開口部のいずれかを一致させる制御手段と、から構成される。
【0012】
この搬送方向切替装置では、前記開口部から搬出される前記紙葉類の搬送方向を、前記方向転換ドラムの位相角に応じて複数方向のいずれかに選択するようにした。
また、本発明の搬送方向制御方法は、方向転換ドラムの外周面に90度毎にそれぞれ離間して配置された第1ないし第4の開口部のうち、前記第1ないし第3の開口部が前記方向転換ドラムの内部で前記第4の開口部とそれぞれ通路によって接続され、前記方向転換ドラムをその回転軸周りで所定の位相角に制御する搬送方向切替装置を用いて、紙葉類の搬送方向を切替え制御する。
【0013】
そのために、前記方向転換ドラムの位相角を制御して、前記第1ないし第3のいずれかの開口部を選択する第1のステップと、前記方向転換ドラムの選択された前記開口部近傍の搬入用ローラを駆動して、前記方向転換ドラムの内部に前記紙葉類を搬入する第2のステップと、前記方向転換ドラムの前記第2の開口部と対向する外周面に配置された第4の開口部近傍の搬出用ローラを駆動して、前記紙葉類を搬出する第3のステップと、を有していることを特徴とする搬送方向制御方法が提供される。
【0014】
また、本発明の別の搬送方向制御方法では、方向転換ドラムの外周面に90度毎にそれぞれ離間して配置された第1ないし第4の開口部のうち、前記第1ないし第3の開口部が前記方向転換ドラムの内部で前記第4の開口部とそれぞれ通路によって接続され、前記方向転換ドラムをその回転軸周りで所定の位相角に制御する第1、第2の搬送方向切替装置を用いて、紙葉類の搬送方向を切替え制御する。
【0015】
そのために、前記第1の搬送方向切替装置が前記方向転換ドラムの位相角を制御して、前記第1ないし第3の開口部のいずれかを選択する第1のステップと、前記第2の搬送方向切替装置が前記方向転換ドラムの位相角を制御して、前記第1の搬送方向切替装置で前記方向転換ドラムの前記第2の開口部と対向する外周面に配置された前記第4の開口部に、前記第2の搬送方向切替装置の前記第1ないし第3の開口部のいずれかを接合させる第2のステップと、前記第1の搬送方向切替装置が選択された前記開口部近傍の搬入用ローラを駆動して、前記方向転換ドラムに前記紙葉類を搬入する第3のステップと、前記第1の搬送方向切替装置が前記第4の開口部近傍の搬出用ローラを駆動するとともに、前記第2の搬送方向切替装置が前記紙葉類を前記第1ないし第3の開口部のいずれかから搬入する第4のステップと、前記第2の搬送方向切替装置が前記第4の開口部近傍の搬出用ローラを駆動して、前記紙葉類を搬出する第5のステップと、を有していることを特徴とする搬送方向制御方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明では、上記問題を解決するために、投入された紙葉類を少なくとも3方向に分岐させて、複数の収納部に区分して収納処理する紙葉類処理装置が提供される。この紙葉類処理装置は、前記紙葉類を鑑別する鑑別部と、前記紙葉類の搬入あるいは搬出が可能な複数の開口部が外周面に形成され、内部で前記開口部の間を接続するように複数の搬送路が形成された方向転換ドラムと、前記方向転換ドラムをその回転軸周りで所定の位相角に制御することにより、前記開口部のいずれかと搬入される前記紙葉類の搬送方向とを一致させる制御手段と、を備えた搬送方向切替装置を有し、前記鑑別部による鑑別結果に応じて前記方向転換ドラムを所定の位相角に制御して、前記開口部から搬出される前記紙葉類の搬送方向を、前記方向転換ドラムの位相角に応じて前記収納部のいずれかを選択するようにした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、方向転換ドラムを搬送ゲートとして用いることにより、方向転換ドラムだけで搬送方向の切替えを可能にした搬送路が形成される。すなわち、複数の方向転換ドラムを適宜に重ね合わせることで搬送ゲートが構成されるため、複雑なゲート機構や紙葉類のパスウェイを不要とした搬送方向切替装置を実現できる。したがって、本発明の搬送方向切替装置を組合せて使用することによって、紙葉類の収納部における処理容量(カセット容量)の増減にも容易に対応できる紙葉類処理装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る2つの搬送方向切替装置を組合せた場合のゲート構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る紙幣搬送用の方向転換ドラムを用いた搬送方向切替装置であって、(A)は搬送方向切替装置の全体構成を示す平面図、(B)は方向転換ドラムのB−B断面に沿ってそのゲート構成を示す断面図である。
【図3】2つの方向転換ドラムを上下に配置して構成される各種の紙幣搬送路における、上方から下方への紙幣の流れを例示する図である。
【図4】2つの方向転換ドラムを上下に配置して構成される各種の紙幣搬送路における、右または左上方から右下方への紙幣の流れを例示する図である。
【図5】2つの方向転換ドラムを上下に配置して構成される各種の紙幣搬送路における、下方および左右下方から上方への紙幣の流れを例示する図である。
【図6】3つの方向転換ドラムによって構成される紙幣処理装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る2つの搬送方向切替装置を組合せた場合のゲート構成を示す断面図である。
搬送方向切替装置1は、それぞれ搬送される紙幣の幅方向に対応した長さを有する同一の円筒形状を有する2つの方向転換ドラム10,20から構成され、これらの2つの方向転換ドラム10,20が図1の左側、および上下いずれかより搬入された紙幣をいずれも右方向に搬送する状態で示している。第1の方向転換ドラム10には、図の背面側となる長手方向の一方端部に駆動ギヤ10Aが配置され、図の手前側に相当する他方端部に、後述する位相制御モータ(図示せず)を同軸上に配置することで、その回転角位置を所定の位相角となるように制御している。また、第1の方向転換ドラム10の外周面には、90度の回転角だけそれぞれ離間して第1ないし第4の開口部11〜14が配置されている。
【0020】
これらの開口部11〜14は、いずれも第1の方向転換ドラム10の回転軸に長手方向が平行するスリット形状を有している。そして、開口部11〜13は紙幣搬入路を構成し、開口部14は紙幣搬出路を構成している。第1ないし第3の紙幣搬入路となる開口部11〜13それぞれの近傍には、搬入用の駆動ローラ15A〜17Aが第1の方向転換ドラム10の外周面からやや後退した位置に軸支された状態で設けられ、それぞれ第1ないし第3の紙幣搬入機構を構成している。また、紙幣搬出路を構成する第4の開口部14の近傍には、同様に搬出用の駆動ローラ18Aが第1の方向転換ドラム10の外周面からやや後退した位置に軸支された状態で設けられている。
【0021】
第1の方向転換ドラム10の内部には、第1の開口部11と第4の開口部14が第1の曲線通路を形成する紙幣ガイド19Aによって接続されている。また、第2の開口部12と第4の開口部14は、直線通路を形成する紙幣ガイド19Bによって接続され、さらに第3の開口部13と第4の開口部14が、第2の曲線通路を形成する紙幣ガイド19Cによって接続されている。4つの開口部11〜14に設けられた駆動ローラ15A〜18Aには、それぞれピンチローラ15B〜18Bが紙幣ガイド19A〜19Cを通過する紙幣を挟むように、スプリング15C〜18Cによって押圧された状態で配置されている。そして、これらの開口部11〜14では、駆動ローラ15A〜18Aが所定方向に回転駆動するように、駆動ギヤ10Aとの間に点線によって示す伝達ギヤ15D〜18Dを介在させている。
【0022】
第1の方向転換ドラム10に隣接する第2の方向転換ドラム20も、図の背面側となる長手方向の一方端部に駆動ギヤ20Aが配置され、図の手前側に相当する他方端部には後述する位相制御モータ(図示せず)を同軸に配置することで、その回転角位置を所定の位相角となるように制御している。また、第2の方向転換ドラム20の外周面には、90度の回転角だけそれぞれ離間して第1ないし第4の開口部21〜24が配置されている。開口部21〜24には、それぞれ駆動ローラ25A〜28A、ピンチローラ25B〜28B、スプリング25C〜28C、伝達ギヤ25D〜28D、および紙幣ガイド29A〜29Cが、第1の方向転換ドラム10の開口部11〜14と同様に配置されている。
【0023】
図2は、本発明に係る紙幣搬送用の方向転換ドラムを用いた搬送方向切替装置であって、図2(A)は搬送方向切替装置の全体構成を示す平面図、図2(B)は方向転換ドラムのB−B断面に沿ってそのゲート構成を示す断面図である。
【0024】
この搬送方向切替装置は、図1に示す円筒形状の2つの方向転換ドラム10,20が互いに隣接して配置され、それぞれ2つの方向転換ドラム10,20の位相角を制御して、第1の方向転換ドラム10の第4の開口部14が第2の方向転換ドラム20の第1の開口部21と面接合するように位置決めされている。これら2つの方向転換ドラム10,20には、図1で説明したように、それぞれ内部に設けられた3本の紙幣搬送路によって開口部11〜13がそれぞれ開口部14と接続されている。
【0025】
2つの方向転換ドラム10,20は、いずれも搬送される紙幣の横幅に応じた長さに形成され、その外周面には櫛歯状の凹凸面がそれぞれ互いに左右対称の形状で形成されている。そして、第1の方向転換ドラム10は、その回転軸10S周りで所定の位相角に制御するための位相制御モータ10Mを備えている。また、第2の方向転換ドラム20にも、その回転軸20S周りで所定の位相角に制御するための位相制御モータ20Mを備え、2つの方向転換ドラム10,20がそれぞれ独立して位相角を制御できるように構成されている。
【0026】
これら2つの方向転換ドラム10,20には、図2(B)に示すように、それぞれ紙幣を搬入するための3つの開口部11〜13,21〜23と紙幣が搬出される開口部14,24が外周面に形成されている。そして、各開口部11〜14,21〜24には、それぞれ紙幣搬入・搬出機構が備わっている。開口部11の紙幣搬入機構は、図2(A)に示すように、搬入用の駆動ローラ15Aとピンチローラ15Bが2組配置され、そこから搬入される紙幣は、たとえば櫛歯状の凹凸面の段部に対応する離間した2か所で挟み込まれて内部に搬入される。
【0027】
すなわち、2つの方向転換ドラム10,20の各紙幣搬入機構を駆動する搬送モータ30は、タイミングベルト31により駆動ギヤ20Aに動力を伝達している。駆動ギヤ20Aは、第2の方向転換ドラム20の軸方向の一方端部に配置され、さらに駆動ギヤ20Aから伝達ギヤ32によって、第1の方向転換ドラム10の駆動ギヤ10Aにも動力が伝達されている。第1の方向転換ドラム10では、駆動ギヤ10Aから伝達ギヤ15Dを介して駆動軸15が所定の回転方向に駆動され、その2組の駆動ローラ15Aが回転駆動されることにより、ピンチローラ15Bとの間に挟まれた紙幣が内部の紙幣搬送路に取り込まれる。
【0028】
なお、開口部11〜14,21〜24に設ける搬入用の駆動ローラ15Aとピンチローラ15Bは、必要に応じて2組以上配置することも可能であって、そうすれば、搬送される紙幣に皺や歪みなどがある場合に搬送を一層確実に行えるようになる。また、2つの方向転換ドラム10,20は、その外周面に形成される櫛歯状の凹凸面をさらに細かく形成したものであってもよい。
【0029】
第2の方向転換ドラム20の回転軸20Sには位相制御モータ20Mと接続され、第2の方向転換ドラム20を回転軸20S周りで所定の位相角に制御することにより、開口部21〜23のいずれかを第1の方向転換ドラム10の第4の開口部14と一致させることができる。このとき、たとえば図2(B)に示すように、第1の方向転換ドラム10の開口部14が第2の方向転換ドラム20の第2の開口部22と面接合するように位置決めされた状態であれば、第1の方向転換ドラム10の3つの開口部11〜13のいずれかに搬入された紙幣は、第2の方向転換ドラム20の第2の開口部22に搬入され、さらに第2の方向転換ドラム20の直線通路を通って第4の開口部24まで搬送される。
【0030】
すなわち、2つの方向転換ドラム10,20を近接配置して構成された搬送方向切替装置が図2(B)に示す状態であれば、第1の方向転換ドラム10の第1の開口部11から搬入された紙幣は左方向90度に搬送方向を切替えて、第2の方向転換ドラム20の第4の開口部24に搬送される。また、第1の方向転換ドラム10の第2の開口部12から搬入された紙幣は、第2の方向転換ドラム20の第4の開口部24まで直線方向に継続して搬送され、あるいは第1の方向転換ドラム10の第3の開口部13から搬入された紙幣は、右方向90度に搬送方向が切替えられることになる。
【0031】
このように、構成され動作する搬送方向切替装置は、その搬送路の部品点数が少なく、製造工数の削減が可能であって、搬送路の切替え制御も容易である。また、この搬送方向切替装置では、第1の方向転換ドラム10の開口部14が第2の方向転換ドラム20の開口部21〜23のいずれかと接続可能であるため、搬送紙幣をさらに多様な方向に転換させることが可能である。しかも、これら2つの方向転換ドラム10,20には、それぞれ外周面が櫛歯状の凹凸面で面接合されるため、2つの開口部の接合面で紙幣がジャムを起こす恐れを少なくできる。
【0032】
つぎに、紙幣の搬送方向を切替え制御する搬送方向制御方法について説明する。
図3は、2つの方向転換ドラムを上下に配置して構成される各種の紙幣搬送路における、上方から下方への紙幣の流れを例示する図である。図4は、2つの方向転換ドラムを上下に配置して構成される各種の紙幣搬送路における、右または左上方から右下方への紙幣の流れを例示する図である。図5は、2つの方向転換ドラムを上下に配置して構成される各種の紙幣搬送路における、下方および左右下方から上方への紙幣の流れを例示する図である。
【0033】
ここでは、2つの方向転換ドラム10,20を上下位置に配置して、紙幣を分岐して搬送するための紙幣搬送路が構成されている。いま、第1の方向転換ドラム10に図3の上方から、すなわち開口部12から紙幣が搬入され、搬出側の第2の方向転換ドラム20だけでその位相角が制御されて、その搬送方向が切替えられるものとする。
【0034】
いま、図3(A)に示す状態となるように第2の方向転換ドラム20の位相角が制御されると、図3(A)の上方から第1の方向転換ドラム10に搬入された紙幣は、その直線通路を経由して第2の方向転換ドラム20の開口部21に搬送される。そして、第2の方向転換ドラム20で図の右方向に搬送方向が切替えられ、開口部24から搬出される。
【0035】
つぎに、図3(B)に示すように、第2の方向転換ドラム20の位相角を90度だけ時計方向に回転させた状態に制御する。この場合、図3(B)の上方から第1の方向転換ドラム10に搬入された紙幣は、その直線通路を経由して第2の方向転換ドラム20の開口部22に搬送され、第2の方向転換ドラム20でも同じ直線方向に継続して搬送されて、開口部24から搬出される。
【0036】
図3(C)に示す状態では、第2の方向転換ドラム20の位相角をさらに90度だけ時計方向に回転させて、紙幣搬送路を制御する場合である。ここでは、図3(C)の上方から第1の方向転換ドラム10に搬入された紙幣は、その直線通路を経由して第2の方向転換ドラム20の開口部23に搬送される。そして、第2の方向転換ドラム20で図の左方向に搬送方向が切替えられ、開口部24から搬出される。
【0037】
図4(D)では、上下位置の2つの方向転換ドラム10,20が図3(A)に示す状態と同じ位相で制御されている場合、紙幣搬入側に配置された第1の方向転換ドラム10に対して図の右方から、すなわち開口部11から搬入される紙幣の流れを示している。このとき、紙幣搬送方向は2つの方向転換ドラム10,20でそれぞれ90度ずつ方向が切替えられ、2つの方向転換ドラム10,20によって180度だけ搬送方向が転換されることになる。また、図4(E)では、第1の方向転換ドラム10に対して図4(E)の左方、すなわち開口部13から搬入される紙幣の流れを示している。このように上下位置に配置された2つの方向転換ドラム10,20が位相制御されている場合に、左右いずれかから搬入された紙幣を右下に搬送することができる。
【0038】
図5(F),(G),(H)では、図5の下方に配置された第2の方向転換ドラム20に紙幣が搬入される場合の紙幣の流れを示している。ここでは、搬出側の第1の方向転換ドラム10を180度回転した状態に位相角を制御し、第2の方向転換ドラム20をさらに90度だけ時計方向に回転させて、紙幣搬送方向が図の上方に設定される状態に位相制御されている。図5(F)では、第2の方向転換ドラム20の開口部22から搬入された紙幣は、その直線通路を経由して第1の方向転換ドラム10の開口部12に搬送され、第1の方向転換ドラム10でも同じ直線方向に継続して搬送されて、その開口部14から搬出される。
【0039】
また、図5(G)に示すように、紙幣搬入側に配置された第2の方向転換ドラム20に対して図5(G)の左方、すなわち開口部21から紙幣が搬入されるものとすれば、紙幣は上下位置に配置された2つの方向転換ドラム10,20によって左下から上方に搬送されることになる。さらに、図5(H)に示すように、紙幣が第2の方向転換ドラム20に対して図5(H)の右方、すなわち開口部23から搬入されるものとすれば、その紙幣は右下から上方に搬送される。
【0040】
このように、上下位置に配置された2つの方向転換ドラム10,20により構成された搬送方向切替装置では、開口部11〜13や開口部21〜23から搬入された紙幣の搬送方向をそれぞれ方向転換ドラム10,20の位相角に応じて複数方向のいずれかに選択して開口部14,24から搬出するようにしている。したがって、位相モータによってそれぞれの方向転換ドラム10,20を位相制御するだけで、搬送路の切替え制御が容易に行える。また、つぎに説明する紙幣処理装置に適用した場合には、搬送機構全体を複雑化することなしに製造コストの低減を図ることができる。
【0041】
つぎに、上述した搬送方向切替装置を利用して構成される紙幣処理装置について説明する。
図6は、3つの方向転換ドラムによって構成される紙幣処理装置の一例を示す図である。
【0042】
この紙幣処理装置40は、紙幣の投入口4aを有する鑑別部4A、紙幣の出金を制御する出金部4B、紙幣を金種別に収納するリサイクル収納部41〜46が接続される紙幣搬送用の搬送路4C、紙幣回収用のスタッカ4Dなどが取り外し可能に装着された装置基台部4Eから構成されている。ここでは、搬送路4Cに対して左右両側にリサイクル収納部41〜43と44〜46がそれぞれ上下3段に配置され、搬送路4C内の3つの方向転換ドラム47〜49によって、搬送路4Cを上下方向に搬送される紙幣の搬送方向を分岐するように制御している。なお、装置基台部4Eにはスタッカ4Dの他、紙幣の入金動作、出金動作、および回収動作の制御に係るコントロールパネル、およびそのコントロール部を備えている。
【0043】
紙幣処理装置40では、鑑別部4Aにおいて投入された紙幣の金種、真偽などを鑑別し、真券のみを搬送路4Cに送り込む。3つの方向転換ドラム47〜49では、下方に搬送される紙幣が、その金種に応じて左右方向、あるいは下方向のいずれかに搬送方向を切り替えるように制御され、金種別にリサイクル収納部41〜46に収納される。リサイクル収納部41〜46では、対応紙幣が満杯になった場合など、紙幣を3つの方向転換ドラム47〜49から再び搬送路4Cに搬出して、装置基台部4Eのスタッカ4Dに収納するようにしている。また、出金部4Bからの出金が要請された場合は、対応するリサイクル収納部41〜46から所定の金種の紙幣を選択し、3つの方向転換ドラム47〜49から搬送路4Cを経由して出金部4Bに搬出している。
【0044】
このように構成された紙幣処理装置40では、図6に示すような3つの方向転換ドラム47〜49を、装置基台部4Eから所定の長さで構成された搬送路4C内にドラムアッセンブリとして、上下方向に積み重ねて設置することができる。その場合に、搬送路4Cの長さは、その左右両側に配置するリサイクル収納部41〜46の大きさ、あるいは個数などによって決まるものである。したがって、3つの方向転換ドラム47〜49を搬送路4C内でどのように組み合わせて配置するかについては、それを必要とする顧客側の要求に対応して紙幣処理装置40を設計すればよい。すなわち、リサイクル収納部41〜46の個数や紙幣処理容量(大きさ)によって、3つの方向転換ドラム47〜49の大きさや数、直線搬送路との組み合わせなどを決定することができる。
【0045】
なお、本発明は紙幣処理以外にも、各種のカードなどの紙葉類を処理する紙葉類処理装置に適用した場合でも、同様の効果を奏するものである。
また、図1の搬送方向切替装置1は、2つの方向転換ドラム10,20の組み合わせとして説明したが、図6に示す紙幣処理装置40のように、各方向転換ドラム47〜49をそれぞれ単独で用いることもできる。その場合、搬送路4Cの長さと方向転換ドラム47〜49の大きさによっては、3つの方向転換ドラム47〜49だけで搬送路4Cを構成することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 搬送方向切替装置
4A 鑑別部
4B 出金部
4C 搬送路
4D スタッカ
4E 装置基台部
10 第1の方向転換ドラム
20 第2の方向転換ドラム
10A,20A 駆動ギヤ
10S,20S 回転軸
10M,20M 位相制御モータ
11〜14,21〜24 第1ないし第4の開口部
15,25 シャフト
15A〜18A,25A〜28A 駆動ローラ
15B〜18B,25B〜28B ピンチローラ
15C〜18C,25C〜28C スプリング
15D〜18D,25D〜28D 伝達ギヤ
19A〜19C,29A〜29C 紙幣ガイド
30 搬送モータ
31 タイミングベルト
32 伝達ギヤ
40 紙幣処理装置
41〜46 リサイクル収納部
47〜49 方向転換ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の搬送方向を切替える搬送方向切替装置において、
前記紙葉類の搬入あるいは搬出が可能な複数の開口部が外周面に形成され、内部で前記開口部の間を接続するように複数の搬送路が形成された方向転換ドラムと、
前記方向転換ドラムをその回転軸周りで所定の位相角に制御することにより、前記方向転換ドラムに搬入される前記紙葉類の搬送方向に前記開口部のいずれかを一致させる制御手段と、
を備え、前記開口部から搬出される前記紙葉類の搬送方向を、前記方向転換ドラムの位相角に応じて複数方向のいずれかに選択するようにしたことを特徴とする搬送方向切替装置。
【請求項2】
前記方向転換ドラムは、
回転軸周りで所定の位相角に制御可能な位相制御手段と、
前記回転軸に対して平行なスリット形状を有し、当該回転軸について前記方向転換ドラムの外周面で90度毎にそれぞれ離間して配置された第1ないし第4の開口部と、
前記方向転換ドラムの前記第1ないし第3の開口部近傍にそれぞれ設けられた搬入用ローラと、
前記方向転換ドラムの前記第4の開口部近傍で設けられた搬出用ローラと、
前記方向転換ドラムの内部で前記第4の開口部と前記第2の開口部を接続するように形成された直線通路と、
前記方向転換ドラムの内部で前記第4の開口部と前記第1の開口部、および前記第4の開口部と前記第3の開口部をそれぞれ接続する第1、第2の曲線通路と、
を備え、前記紙葉類を前記第1ないし第3の開口部のいずれかに搬入するとともに前記第4の開口部に排出して、前記紙葉類の搬送方向を切替えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の搬送方向切替装置。
【請求項3】
互いに隣接して配置された一組の前記方向転換ドラムには、それぞれの外周面に櫛歯状の凹凸面が形成され、
前記開口部が互いに面接合するように接続して前記紙葉類を搬送することを特徴とする請求項1記載の搬送方向切替装置。
【請求項4】
方向転換ドラムの外周面に90度毎にそれぞれ離間して配置された第1ないし第4の開口部のうち、前記第1ないし第3の開口部が前記方向転換ドラムの内部で前記第4の開口部とそれぞれ通路によって接続され、前記方向転換ドラムをその回転軸周りで所定の位相角に制御する搬送方向切替装置を用いて、紙葉類の搬送方向を切替え制御する搬送方向制御方法において、
前記方向転換ドラムの位相角を制御して、前記第1ないし第3のいずれかの開口部を選択する第1のステップと、
前記方向転換ドラムの選択された前記開口部近傍の搬入用ローラを駆動して、前記方向転換ドラムの内部に前記紙葉類を搬入する第2のステップと、
前記方向転換ドラムの前記第2の開口部と対向する外周面に配置された第4の開口部近傍の搬出用ローラを駆動して、前記紙葉類を搬出する第3のステップと、
を有していることを特徴とする搬送方向制御方法。
【請求項5】
方向転換ドラムの外周面に90度毎にそれぞれ離間して配置された第1ないし第4の開口部のうち、前記第1ないし第3の開口部が前記方向転換ドラムの内部で前記第4の開口部とそれぞれ通路によって接続され、前記方向転換ドラムをその回転軸周りで所定の位相角に制御する第1、第2の搬送方向切替装置を用いて、紙葉類の搬送方向を切替え制御する搬送方向制御方法において、
前記第1の搬送方向切替装置が前記方向転換ドラムの位相角を制御して、前記第1ないし第3の開口部のいずれかを選択する第1のステップと、
前記第2の搬送方向切替装置が前記方向転換ドラムの位相角を制御して、前記第1の搬送方向切替装置で前記方向転換ドラムの前記第2の開口部と対向する外周面に配置された前記第4の開口部に、前記第2の搬送方向切替装置の前記第1ないし第3の開口部のいずれかを接合させる第2のステップと、
前記第1の搬送方向切替装置が選択された前記開口部近傍の搬入用ローラを駆動して、前記方向転換ドラムに前記紙葉類を搬入する第3のステップと、
前記第1の搬送方向切替装置が前記第4の開口部近傍の搬出用ローラを駆動するとともに、前記第2の搬送方向切替装置が前記紙葉類を前記第1ないし第3の開口部のいずれかから搬入する第4のステップと、
前記第2の搬送方向切替装置が前記第4の開口部近傍の搬出用ローラを駆動して、前記紙葉類を搬出する第5のステップと、
を有していることを特徴とする搬送方向制御方法。
【請求項6】
投入された紙葉類を少なくとも3方向に分岐させて、複数の収納部に区分して収納処理する紙葉類処理装置において、
前記紙葉類を鑑別する鑑別部と、
前記紙葉類の搬入あるいは搬出が可能な複数の開口部が外周面に形成され、内部で前記開口部の間を接続するように複数の搬送路が形成された方向転換ドラムと、
前記方向転換ドラムをその回転軸周りで所定の位相角に制御することにより、前記方向転換ドラムに搬入される前記紙葉類の搬送方向に前記開口部のいずれかを一致させる制御手段と、
を備えた搬送方向切替装置を有し、
前記鑑別部による鑑別結果に応じて前記方向転換ドラムを所定の位相角に制御して、前記開口部から搬出される前記紙葉類の搬送方向を、前記方向転換ドラムの位相角に応じて前記収納部のいずれかを選択するようにしたことを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項7】
複数の前記搬送方向切替装置が互いに隣接して配置される紙葉類処理装置であって、
前記方向転換ドラムの外周には櫛歯状の凹凸面が形成され、前記搬送方向切替装置の前記各開口部を接続して前記紙葉類を搬送する際に、前記開口部が互いに面接合するように構成されていることを特徴とする請求項6記載の紙葉類処理装置。
【請求項8】
前記搬送方向切替装置が複数隣接して配置される紙葉類処理装置であって、
前記各搬送方向切替装置は、前記搬入用ローラおよび前記搬出用ローラが共通に伝達ギヤを介して、搬送モータで駆動されるように構成されていることを特徴とする請求項6記載の紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−132003(P2011−132003A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293663(P2009−293663)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】