紙葉類の認識装置
【課題】 紙葉類の形状などを正確に認識でき、かつ安定した読み取りが可能で、かつ出射光の光量や光軸のばらつきを抑制できる紙葉類の認識装置を提供する。
【解決手段】 紙葉類の認識装置は、照明装置10から出射され紙葉類20を透過した光をレンズアレイ11により受光素子12へ導くよう構成されている。照明装置10は、導光体1と、光源ユニットと、光源ユニットから導光体1に入射された光を紙葉類20に向けて出射するための光拡散パターン2とを有し、光拡散パターン2は、導光体1に形成された複数の楔状の溝により構成され、複数の楔状の溝の各々は導光体1の長手方向の直交方向に同じ長さを有し、かつ長手方向に一直線状に整列している。
【解決手段】 紙葉類の認識装置は、照明装置10から出射され紙葉類20を透過した光をレンズアレイ11により受光素子12へ導くよう構成されている。照明装置10は、導光体1と、光源ユニットと、光源ユニットから導光体1に入射された光を紙葉類20に向けて出射するための光拡散パターン2とを有し、光拡散パターン2は、導光体1に形成された複数の楔状の溝により構成され、複数の楔状の溝の各々は導光体1の長手方向の直交方向に同じ長さを有し、かつ長手方向に一直線状に整列している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類の認識装置に関し、より特定的には、紙葉類を透過した光を受光することで紙葉類を認識する紙葉類の認識装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙葉類の認識装置は、例えば金融端末機器において紙幣や有価証券の鑑別装置や、印刷機器などにおいて紙葉類の形状などの認識に用いられる装置である。この紙葉類の認識装置は、基板上に受光素子を直線状に配したセンサと、原稿を照明するための棒状の照明装置と、原稿で反射された光を各受光素子に導くためのレンズアレイとから構成されている。
【0003】
このような紙葉類の認識装置は、たとえば特開2003−46726号公報に開示されている。この公報に開示された装置においては、紙葉類を照明する照明装置が光源と導光体とを有し、その光源から導光体に入射された光を紙葉類に向けて出射させるための光拡散層が形成されている。その光拡散層は、紙葉類に照射される光を一定とするため(照度むらを無くすため)に、導光体の長手方向において光源が配置される一端側から他端側へ向かって徐々に光拡散層の面積が増加するように構成されている。具体的には、光拡散層が長手方向に分割されたり、また光拡散層の幅が長手方向に変化している。
【0004】
図10(a)は光拡散層102aを長手方向に分割した構成を示す図であり、図11(a)は光拡散層102bの幅を長手方向に変化させた構成を示す図である。図10(a)を参照して、導光体1の長手方向(図中左右方向)の両端に光源が配置される場合、長手方向に分割された光拡散層102aの各分割部の面積は導光体1の端部側から中央側に向かって大きくなっている。また図11(a)を参照して、導光体1の長手方向(図中左右方向)の両端に光源が配置される場合、光拡散層102bの短手方向の幅Lは導光体1の端部側から中央側に向かって大きくなっている。
【特許文献1】特開2003−46726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10(a)に示す光拡散層102aの形状では、図10(b)および図10(c)に示すセンサの出力が得られる。図10(b)は導光体1とセンサとの間に紙葉類がない場合を示し、図10(c)は導光体1とセンサとの間に紙葉類がある場合を示している。導光体1から出射した光を紙葉類に照射し、紙葉類を透過した光をセンサにより受光するため、導光体1とセンサとの間に紙葉類がある場合には、図10(c)に示すように紙葉類のある部分でのセンサ出力は、紙葉類がない部分でのセンサ出力よりも低くなる。このセンサ出力の低下した部分を検出することにより紙葉類の形状を認識することができる。
【0006】
しかし、図10(a)に示すように光拡散層102aは長手方向に分割されているため、図10(b)に示すように分割部間の光拡散層102aがない部分でのセンサ出力は光拡散層102aがある部分でのセンサ出力よりも低くなる。このため、図10(c)に示すように紙葉類のない部分においても、分割部間の光拡散層102aがない部分でセンサ出力の低い部分Sが生じ、この部分Sに基づいて紙葉類の形状を誤って認識するという問題がある。
【0007】
また図11(a)に示す光拡散層102bの形状では、図11(b)に示すセンサ出力が得られる。導光体1とセンサとの間に紙葉類がある場合には導光体1とセンサとの間に紙葉類がない場合よりもセンサ出力は低くなる。
【0008】
この図11(a)に示す光拡散層102bの形状では、導光体1の端部側と中央側とで光拡散層102bの幅が異なっているため、紙葉類と導光体との距離が離れると、光拡散層102bの幅の広い部分において紙葉類に照射する光の強度が急激に低下するため安定な読み取りができないという問題がある。以下、そのことを説明する。
【0009】
図12は、導光体と紙葉類との距離を変えた場合に、図11(a)に示す形状の光拡散層の幅Lが太い部分と細い部分とで紙葉類を照射する光の強度がどのように変わるかを示す図である。図12を参照して、光拡散層102bの幅Lが細い部分では、導光体1と紙葉類20との距離を変えても、紙葉類20を照射する光の強度は一点鎖線で示すようにあまり変化しない。これに対して、光拡散層102bの幅Lが太い部分では、導光体1と紙葉類20との距離を大きくすると、紙葉類20を照射する光の強度は二点鎖線で示すように急激に低下する。このように光の強度が低下すると、センサによる検出が不正確になり、安定した読み取りができなくなる。
【0010】
また図10(a)および図11(a)に示す光拡散層102a、102bは白色塗料などの拡散材を印刷塗布して形成されており、印刷のダレや位置ずれにより、導光体1から出射される光の光量や光軸のばらつきが大きいという問題もあった。
【0011】
それゆえ本発明の目的は、紙葉類の形状などを正確に認識でき、かつ安定した読み取りが可能で、かつ出射光の光量や光軸のばらつきを抑制できる紙葉類の認識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の紙葉類の認識装置は、紙葉類に光を照射する照明装置と、その照明装置から出射され紙葉類を透過した光を導くためのレンズアレイと、そのレンズアレイにより導かれた透過光を受光する受光素子とを備えた紙葉類の認識装置において、照明装置は、長手状に延びる導光体と、その導光体の長手方向の少なくとも一方の端面付近に配置された光源と、その光源から導光体に入射された光を紙葉類に向けて出射するための光拡散パターンとを有し、光拡散パターンは、導光体に形成された複数の楔状の溝により構成され、複数の楔状の溝の各々は長手方向の直交方向に同じ長さを有し、かつ長手方向に一直線状に整列していることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の紙葉類の認識装置によれば、光拡散パターンは長手方向に沿って整列した複数の楔状の溝により構成されているため、紙葉類の形状を正確に認識することができる。また、複数の楔状の溝の各々が長手方向の直交方向に同じ長さを有しているため、光拡散パターンの幅が異なることによって紙葉類を照射する光の強度が紙葉類と導光体との距離の変化により急激に低下するということもない。また光拡散パターンは、導光体に形成された複数の溝により構成されているため、光拡散パターンに白色塗料を用いた場合に生じる導光体からの出射光の光量や光軸のばらつきも抑制することができる。
【0014】
上記の紙葉類の認識装置において好ましくは、光拡散パターンの長手方向の寸法は受光素子の読取領域の幅よりも大きい。
【0015】
これにより、光量が一定となり、受光素子による光の検出が容易となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明の紙葉類の認識装置によれば、紙葉類の形状などを正確に認識することができ、かつ安定した読み取りが可能で、かつ出射光の光量や光軸のばらつきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態における紙葉類の認識装置の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示される紙葉類の認識装置における照明装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【0019】
図1を参照して、本実施の形態の紙葉類の認識装置は、透過型であって、紙葉類(原稿)20の一方側に保護ガラス14aおよび照明装置10を有し、かつ紙葉類20の他方側に保護ガラス14b、レンズアレイ11、受光素子12および基板13を有している。
【0020】
照明装置10は、紙葉類20に向けて光を出射するものである。レンズアレイ11は紙葉類20を透過した透過光を受光素子12へ導くものである。受光素子12は透過光を受けて光電変換により光出力として画像を読み取るものである。基板13は受光素子12を実装するものである。
【0021】
受光素子12の材質・構造は特に規定されるものではなく、アモルファスシリコン、結晶シリコンあるいはCdS、CdSeなどを含むフォトダイオードやフォトトランジスタを配置したもの、またCCD(Charge Coupled Device)リニアイメージセンサであってもよい。さらに受光素子12として、フォトダイオードやフォトトランジスタと駆動回路やアンプ回路とを一体としたIC(Integrated Circuit)を複数個並べた、いわゆるマルチチップ方式のリニアイメージセンサを用いることもできる。
【0022】
また、必要に応じて基板13上にドライブICやアンプ回路などの電気回路、あるいは信号を外部に取り出すためのコネクタなどを実装することもできる。さらに図9のブロック図に示すようにA/Dコンバータ、各種補正回路、画像処理回路、ラインメモリ、I/O制御回路などを同時に実装してデジタル信号を外部に取り出すこともできる。
【0023】
レンズアレイ11は原稿面で散乱された光を受光素子に等倍で結像するものであり、セルフォックレンズアレイ(登録商標:日本板硝子製)などのロッドレンズアレイをレンズアレイ11として用いることができる。
【0024】
保護ガラス14a、14bは必ずしも本発明に必要ではなく省略することもできるが、使用中のごみの飛散や傷つきから照明装置10やレンズアレイ11を保護するために設置することが望ましい。また、保護ガラス14a、14bの材質はガラスにこだわらず、例えばアクリルやポリカーボネートといった透明の樹脂に必要に応じて表面にハードコートを施した部材であってもよい。
【0025】
図2を参照して、照明装置10は、長手状に延びる導光体1と、光拡散パターン2と、長手方向の一方の端面付近に設けられた光源ユニット3と、導光体1を保持するためのカバー4とを有している。
【0026】
また光源ユニット3は図2に示すように導光体1の一方端部のみに設置してもよいが、図3に示すように必要に応じて両方の端部に設置することもできる。この場合、2つの光源ユニット3は同一のものであってもよいし、別のものであってもよい。例えば一方の光源ユニット3と他方の光源ユニット3とで異なる波長のLEDを実装しておけば、多数の波長を同時にあるいは切り替えて使用することができる。
【0027】
導光体1はアクリルやポリカーボネートなどの光透過性の高い樹脂、あるいは光学ガラスで形成される。特に光源として紫外波長を用いる場合には導光体1としてフッ素系樹脂あるいはシクロオレフィン系樹脂が好ましい。この導光体1の長手方向に直交する断面の形状は、図1に示すような形状となっている。
【0028】
光源ユニット3には、たとえば近赤外、赤、緑の各波長の光を発する3種のLED(Light Emitting Diode)が用いられている。各LEDは、正の電圧が印加されるリードフレームにたとえばワイヤーボンディングにより電気的に接続されており、また負の電圧が印加されるリードフレームにたとえば半田などにより電気的に接続されている。なお、各LEDのリードフレームへの電気的接続は上記の接続形態に限定されるものでなく、各LEDはリードフレームの双方にワイヤーボンディングにより電気的に接続されていてもよい。
【0029】
光拡散パターン2は、導光体1の光を出射する側とは反対側の面に形成されている。この光拡散パターン2は、図4(a)に示すように導光体1の長手方向に一定の幅を維持して一直線状に延びている。また光拡散パターン2の長手方向の寸法は、イメージセンサの読取長(つまり受光素子12の読取領域の幅)よりも長くなるように形成されている。
【0030】
この光拡散パターン2は、図5に示すように導光体1の表面に形成された複数の楔状の溝2aにより構成されている。この複数の楔状の溝2aの各々は、導光体1の長手方向に直交する方向(短手方向)に延びるよう形成されており、短手方向に互いに同じ長さを有している。複数の楔状の溝2aの各々の短手方向の一方端は仮想直線B1−B1線上に位置しており、他方端は仮想直線B2−B2線上に位置している。これにより、複数の楔状の溝2aより構成される光拡散パターン2は、上述したように導光体1の長手方向に一定の幅を維持して一直線状に延びるよう構成されている。
【0031】
また複数の楔状の溝2aは、図6に示すように断面がたとえば二等辺三角形状を有し、かつ導光体1の長手方向の端部側にいくほどその深さ(D1、D2、D3、・・・)が深くなっている。また複数の楔状の溝2aの各開口幅(W1、W2、W3、・・・)は同じであるため、複数の楔状の溝2aの各頂角の角度は端部側ほど小さくなっている。
【0032】
最も深い溝2aの深さはたとえば140μmであり、最も浅い溝2aの深さはたとえば100μmであり、各溝2aの開口幅はたとえば70μmである。
【0033】
また複数の楔状の溝2aの各々は同じピッチで形成されている。溝2a同士のピッチは好ましくは受光素子同士のピッチ以下であり、より好ましくは受光素子同士のピッチの1/4以下である。受光素子同士のピッチはたとえば500μmであり、溝2a同士のピッチはたとえば100μmである。
【0034】
複数の楔状の溝2aのそれぞれが上記のように構成されているため、導光体1の端部から入射された光は端部におけるよりも中央部においてより拡散される。これにより、図4(b)に示すように、導光体1の長手方向の全体において紙葉類に照射される光をほぼ一定とすることができるため、照度むらを無くすことができる。
【0035】
なお図6は、図3に示すように光源ユニット3を導光体1の両端に配置した場合の構成を示している。図2に示すように光源ユニット3を導光体1の一方端にのみ配置する場合には、光源ユニット3が配置される側の端部ほど溝2aの深さを深くし、逆に光源ユニット3が配置されない側の端部ほど溝2aの深さを浅くすることで、照度むらを無くすことができる。
【0036】
複数の楔状の溝2aは、導光体1の成型と同時に形成される。これにより、導光体1の成型後に溝2aの形成工程を別途設ける必要がなくなり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0037】
本実施の形態によれば、光拡散パターン2は導光体1の長手方向に一定の幅を維持して一直線状に延びるよう構成されているため、紙葉類の形状を正確に認識することができる。また、複数の楔状の溝2aの各々が長手方向に直交する方向(短手方向)に同じ長さを有しているため、光拡散パターンの幅が長手方向で異なることによって紙葉類を照射する光の強度が紙葉類と導光体との距離の変化により急激に低下するということもない。また光拡散パターン2は、導光体1に形成された複数の溝2aにより構成されているため、光拡散パターンに白色塗料を用いた場合に生じる導光体1からの出射光の光量や光軸のばらつきも抑制することができる。
【0038】
なお上記においては楔状の溝2aが形成される導光体1の面が平坦な場合について説明したが、この面は図7に示すように中央部に凸部1aを有していてもよく、また図8に示すように中央部に凹部1bを有していてもよい。図7に示すように導光体1が中央部に凸部1aを有している場合には、複数の楔状の溝2aの各々は凸部1aに形成されており、かつ凸部1aの両端部に達している。また図8に示すように導光体1が中央部に凹部1bを有している場合には、複数の楔状の溝2aの各々は凹部1bに形成されており、かつ凹部1bの両端部に達している。
【0039】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、紙葉類を透過した光を受光することで紙葉類を認識する紙葉類の認識装置に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態における紙葉類の認識装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示される紙葉類の認識装置における照明装置の構成を概略的に示す分解斜視図であり、導光体の一方端部にのみ光源ユニットが配置された構成を示す図である。
【図3】図1に示される紙葉類の認識装置における照明装置の構成を概略的に示す分解斜視図であり、導光体の両端部に光源ユニットが配置された構成を示す図である。
【図4】導光体に形成される光拡散パターンの構成を示す図(a)と、この光拡散パターンにより得られるセンサ出力を紙葉類がある場合と無い場合とで示す図(b)である。
【図5】本発明の一実施の形態における紙葉類の認識装置に用いられる導光体の構成を示す斜視図である。
【図6】図5の矢印VI−VI線に沿う概略断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態における紙葉類の認識装置に用いられる導光体の他の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施の形態における紙葉類の認識装置に用いられる導光体のさらに他の構成を示す斜視図である。
【図9】受光素子を説明するためのブロック図である。
【図10】光拡散層を長手方向に分割した構成を示す図(a)と、その形状の光拡散層により得られるセンサ出力を示す図(b)、(c)である。
【図11】光拡散層の幅を長手方向に変化させた構成を示す図(a)と、その形状の光拡散層により得られるセンサ出力を示す図(b)である。
【図12】光拡散層の幅を長手方向に変化させた構成の問題点を説明するための導光体の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 導光体、1a 凸部、1b 凹部、2 光拡散パターン、2a 楔状の溝、3 光源ユニット、4 カバー、10 照明装置、11 レンズアレイ、12 受光素子、13 基板、14a,14b 保護ガラス、20 紙葉類。
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類の認識装置に関し、より特定的には、紙葉類を透過した光を受光することで紙葉類を認識する紙葉類の認識装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙葉類の認識装置は、例えば金融端末機器において紙幣や有価証券の鑑別装置や、印刷機器などにおいて紙葉類の形状などの認識に用いられる装置である。この紙葉類の認識装置は、基板上に受光素子を直線状に配したセンサと、原稿を照明するための棒状の照明装置と、原稿で反射された光を各受光素子に導くためのレンズアレイとから構成されている。
【0003】
このような紙葉類の認識装置は、たとえば特開2003−46726号公報に開示されている。この公報に開示された装置においては、紙葉類を照明する照明装置が光源と導光体とを有し、その光源から導光体に入射された光を紙葉類に向けて出射させるための光拡散層が形成されている。その光拡散層は、紙葉類に照射される光を一定とするため(照度むらを無くすため)に、導光体の長手方向において光源が配置される一端側から他端側へ向かって徐々に光拡散層の面積が増加するように構成されている。具体的には、光拡散層が長手方向に分割されたり、また光拡散層の幅が長手方向に変化している。
【0004】
図10(a)は光拡散層102aを長手方向に分割した構成を示す図であり、図11(a)は光拡散層102bの幅を長手方向に変化させた構成を示す図である。図10(a)を参照して、導光体1の長手方向(図中左右方向)の両端に光源が配置される場合、長手方向に分割された光拡散層102aの各分割部の面積は導光体1の端部側から中央側に向かって大きくなっている。また図11(a)を参照して、導光体1の長手方向(図中左右方向)の両端に光源が配置される場合、光拡散層102bの短手方向の幅Lは導光体1の端部側から中央側に向かって大きくなっている。
【特許文献1】特開2003−46726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10(a)に示す光拡散層102aの形状では、図10(b)および図10(c)に示すセンサの出力が得られる。図10(b)は導光体1とセンサとの間に紙葉類がない場合を示し、図10(c)は導光体1とセンサとの間に紙葉類がある場合を示している。導光体1から出射した光を紙葉類に照射し、紙葉類を透過した光をセンサにより受光するため、導光体1とセンサとの間に紙葉類がある場合には、図10(c)に示すように紙葉類のある部分でのセンサ出力は、紙葉類がない部分でのセンサ出力よりも低くなる。このセンサ出力の低下した部分を検出することにより紙葉類の形状を認識することができる。
【0006】
しかし、図10(a)に示すように光拡散層102aは長手方向に分割されているため、図10(b)に示すように分割部間の光拡散層102aがない部分でのセンサ出力は光拡散層102aがある部分でのセンサ出力よりも低くなる。このため、図10(c)に示すように紙葉類のない部分においても、分割部間の光拡散層102aがない部分でセンサ出力の低い部分Sが生じ、この部分Sに基づいて紙葉類の形状を誤って認識するという問題がある。
【0007】
また図11(a)に示す光拡散層102bの形状では、図11(b)に示すセンサ出力が得られる。導光体1とセンサとの間に紙葉類がある場合には導光体1とセンサとの間に紙葉類がない場合よりもセンサ出力は低くなる。
【0008】
この図11(a)に示す光拡散層102bの形状では、導光体1の端部側と中央側とで光拡散層102bの幅が異なっているため、紙葉類と導光体との距離が離れると、光拡散層102bの幅の広い部分において紙葉類に照射する光の強度が急激に低下するため安定な読み取りができないという問題がある。以下、そのことを説明する。
【0009】
図12は、導光体と紙葉類との距離を変えた場合に、図11(a)に示す形状の光拡散層の幅Lが太い部分と細い部分とで紙葉類を照射する光の強度がどのように変わるかを示す図である。図12を参照して、光拡散層102bの幅Lが細い部分では、導光体1と紙葉類20との距離を変えても、紙葉類20を照射する光の強度は一点鎖線で示すようにあまり変化しない。これに対して、光拡散層102bの幅Lが太い部分では、導光体1と紙葉類20との距離を大きくすると、紙葉類20を照射する光の強度は二点鎖線で示すように急激に低下する。このように光の強度が低下すると、センサによる検出が不正確になり、安定した読み取りができなくなる。
【0010】
また図10(a)および図11(a)に示す光拡散層102a、102bは白色塗料などの拡散材を印刷塗布して形成されており、印刷のダレや位置ずれにより、導光体1から出射される光の光量や光軸のばらつきが大きいという問題もあった。
【0011】
それゆえ本発明の目的は、紙葉類の形状などを正確に認識でき、かつ安定した読み取りが可能で、かつ出射光の光量や光軸のばらつきを抑制できる紙葉類の認識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の紙葉類の認識装置は、紙葉類に光を照射する照明装置と、その照明装置から出射され紙葉類を透過した光を導くためのレンズアレイと、そのレンズアレイにより導かれた透過光を受光する受光素子とを備えた紙葉類の認識装置において、照明装置は、長手状に延びる導光体と、その導光体の長手方向の少なくとも一方の端面付近に配置された光源と、その光源から導光体に入射された光を紙葉類に向けて出射するための光拡散パターンとを有し、光拡散パターンは、導光体に形成された複数の楔状の溝により構成され、複数の楔状の溝の各々は長手方向の直交方向に同じ長さを有し、かつ長手方向に一直線状に整列していることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の紙葉類の認識装置によれば、光拡散パターンは長手方向に沿って整列した複数の楔状の溝により構成されているため、紙葉類の形状を正確に認識することができる。また、複数の楔状の溝の各々が長手方向の直交方向に同じ長さを有しているため、光拡散パターンの幅が異なることによって紙葉類を照射する光の強度が紙葉類と導光体との距離の変化により急激に低下するということもない。また光拡散パターンは、導光体に形成された複数の溝により構成されているため、光拡散パターンに白色塗料を用いた場合に生じる導光体からの出射光の光量や光軸のばらつきも抑制することができる。
【0014】
上記の紙葉類の認識装置において好ましくは、光拡散パターンの長手方向の寸法は受光素子の読取領域の幅よりも大きい。
【0015】
これにより、光量が一定となり、受光素子による光の検出が容易となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明の紙葉類の認識装置によれば、紙葉類の形状などを正確に認識することができ、かつ安定した読み取りが可能で、かつ出射光の光量や光軸のばらつきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態における紙葉類の認識装置の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示される紙葉類の認識装置における照明装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【0019】
図1を参照して、本実施の形態の紙葉類の認識装置は、透過型であって、紙葉類(原稿)20の一方側に保護ガラス14aおよび照明装置10を有し、かつ紙葉類20の他方側に保護ガラス14b、レンズアレイ11、受光素子12および基板13を有している。
【0020】
照明装置10は、紙葉類20に向けて光を出射するものである。レンズアレイ11は紙葉類20を透過した透過光を受光素子12へ導くものである。受光素子12は透過光を受けて光電変換により光出力として画像を読み取るものである。基板13は受光素子12を実装するものである。
【0021】
受光素子12の材質・構造は特に規定されるものではなく、アモルファスシリコン、結晶シリコンあるいはCdS、CdSeなどを含むフォトダイオードやフォトトランジスタを配置したもの、またCCD(Charge Coupled Device)リニアイメージセンサであってもよい。さらに受光素子12として、フォトダイオードやフォトトランジスタと駆動回路やアンプ回路とを一体としたIC(Integrated Circuit)を複数個並べた、いわゆるマルチチップ方式のリニアイメージセンサを用いることもできる。
【0022】
また、必要に応じて基板13上にドライブICやアンプ回路などの電気回路、あるいは信号を外部に取り出すためのコネクタなどを実装することもできる。さらに図9のブロック図に示すようにA/Dコンバータ、各種補正回路、画像処理回路、ラインメモリ、I/O制御回路などを同時に実装してデジタル信号を外部に取り出すこともできる。
【0023】
レンズアレイ11は原稿面で散乱された光を受光素子に等倍で結像するものであり、セルフォックレンズアレイ(登録商標:日本板硝子製)などのロッドレンズアレイをレンズアレイ11として用いることができる。
【0024】
保護ガラス14a、14bは必ずしも本発明に必要ではなく省略することもできるが、使用中のごみの飛散や傷つきから照明装置10やレンズアレイ11を保護するために設置することが望ましい。また、保護ガラス14a、14bの材質はガラスにこだわらず、例えばアクリルやポリカーボネートといった透明の樹脂に必要に応じて表面にハードコートを施した部材であってもよい。
【0025】
図2を参照して、照明装置10は、長手状に延びる導光体1と、光拡散パターン2と、長手方向の一方の端面付近に設けられた光源ユニット3と、導光体1を保持するためのカバー4とを有している。
【0026】
また光源ユニット3は図2に示すように導光体1の一方端部のみに設置してもよいが、図3に示すように必要に応じて両方の端部に設置することもできる。この場合、2つの光源ユニット3は同一のものであってもよいし、別のものであってもよい。例えば一方の光源ユニット3と他方の光源ユニット3とで異なる波長のLEDを実装しておけば、多数の波長を同時にあるいは切り替えて使用することができる。
【0027】
導光体1はアクリルやポリカーボネートなどの光透過性の高い樹脂、あるいは光学ガラスで形成される。特に光源として紫外波長を用いる場合には導光体1としてフッ素系樹脂あるいはシクロオレフィン系樹脂が好ましい。この導光体1の長手方向に直交する断面の形状は、図1に示すような形状となっている。
【0028】
光源ユニット3には、たとえば近赤外、赤、緑の各波長の光を発する3種のLED(Light Emitting Diode)が用いられている。各LEDは、正の電圧が印加されるリードフレームにたとえばワイヤーボンディングにより電気的に接続されており、また負の電圧が印加されるリードフレームにたとえば半田などにより電気的に接続されている。なお、各LEDのリードフレームへの電気的接続は上記の接続形態に限定されるものでなく、各LEDはリードフレームの双方にワイヤーボンディングにより電気的に接続されていてもよい。
【0029】
光拡散パターン2は、導光体1の光を出射する側とは反対側の面に形成されている。この光拡散パターン2は、図4(a)に示すように導光体1の長手方向に一定の幅を維持して一直線状に延びている。また光拡散パターン2の長手方向の寸法は、イメージセンサの読取長(つまり受光素子12の読取領域の幅)よりも長くなるように形成されている。
【0030】
この光拡散パターン2は、図5に示すように導光体1の表面に形成された複数の楔状の溝2aにより構成されている。この複数の楔状の溝2aの各々は、導光体1の長手方向に直交する方向(短手方向)に延びるよう形成されており、短手方向に互いに同じ長さを有している。複数の楔状の溝2aの各々の短手方向の一方端は仮想直線B1−B1線上に位置しており、他方端は仮想直線B2−B2線上に位置している。これにより、複数の楔状の溝2aより構成される光拡散パターン2は、上述したように導光体1の長手方向に一定の幅を維持して一直線状に延びるよう構成されている。
【0031】
また複数の楔状の溝2aは、図6に示すように断面がたとえば二等辺三角形状を有し、かつ導光体1の長手方向の端部側にいくほどその深さ(D1、D2、D3、・・・)が深くなっている。また複数の楔状の溝2aの各開口幅(W1、W2、W3、・・・)は同じであるため、複数の楔状の溝2aの各頂角の角度は端部側ほど小さくなっている。
【0032】
最も深い溝2aの深さはたとえば140μmであり、最も浅い溝2aの深さはたとえば100μmであり、各溝2aの開口幅はたとえば70μmである。
【0033】
また複数の楔状の溝2aの各々は同じピッチで形成されている。溝2a同士のピッチは好ましくは受光素子同士のピッチ以下であり、より好ましくは受光素子同士のピッチの1/4以下である。受光素子同士のピッチはたとえば500μmであり、溝2a同士のピッチはたとえば100μmである。
【0034】
複数の楔状の溝2aのそれぞれが上記のように構成されているため、導光体1の端部から入射された光は端部におけるよりも中央部においてより拡散される。これにより、図4(b)に示すように、導光体1の長手方向の全体において紙葉類に照射される光をほぼ一定とすることができるため、照度むらを無くすことができる。
【0035】
なお図6は、図3に示すように光源ユニット3を導光体1の両端に配置した場合の構成を示している。図2に示すように光源ユニット3を導光体1の一方端にのみ配置する場合には、光源ユニット3が配置される側の端部ほど溝2aの深さを深くし、逆に光源ユニット3が配置されない側の端部ほど溝2aの深さを浅くすることで、照度むらを無くすことができる。
【0036】
複数の楔状の溝2aは、導光体1の成型と同時に形成される。これにより、導光体1の成型後に溝2aの形成工程を別途設ける必要がなくなり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0037】
本実施の形態によれば、光拡散パターン2は導光体1の長手方向に一定の幅を維持して一直線状に延びるよう構成されているため、紙葉類の形状を正確に認識することができる。また、複数の楔状の溝2aの各々が長手方向に直交する方向(短手方向)に同じ長さを有しているため、光拡散パターンの幅が長手方向で異なることによって紙葉類を照射する光の強度が紙葉類と導光体との距離の変化により急激に低下するということもない。また光拡散パターン2は、導光体1に形成された複数の溝2aにより構成されているため、光拡散パターンに白色塗料を用いた場合に生じる導光体1からの出射光の光量や光軸のばらつきも抑制することができる。
【0038】
なお上記においては楔状の溝2aが形成される導光体1の面が平坦な場合について説明したが、この面は図7に示すように中央部に凸部1aを有していてもよく、また図8に示すように中央部に凹部1bを有していてもよい。図7に示すように導光体1が中央部に凸部1aを有している場合には、複数の楔状の溝2aの各々は凸部1aに形成されており、かつ凸部1aの両端部に達している。また図8に示すように導光体1が中央部に凹部1bを有している場合には、複数の楔状の溝2aの各々は凹部1bに形成されており、かつ凹部1bの両端部に達している。
【0039】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、紙葉類を透過した光を受光することで紙葉類を認識する紙葉類の認識装置に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態における紙葉類の認識装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示される紙葉類の認識装置における照明装置の構成を概略的に示す分解斜視図であり、導光体の一方端部にのみ光源ユニットが配置された構成を示す図である。
【図3】図1に示される紙葉類の認識装置における照明装置の構成を概略的に示す分解斜視図であり、導光体の両端部に光源ユニットが配置された構成を示す図である。
【図4】導光体に形成される光拡散パターンの構成を示す図(a)と、この光拡散パターンにより得られるセンサ出力を紙葉類がある場合と無い場合とで示す図(b)である。
【図5】本発明の一実施の形態における紙葉類の認識装置に用いられる導光体の構成を示す斜視図である。
【図6】図5の矢印VI−VI線に沿う概略断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態における紙葉類の認識装置に用いられる導光体の他の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施の形態における紙葉類の認識装置に用いられる導光体のさらに他の構成を示す斜視図である。
【図9】受光素子を説明するためのブロック図である。
【図10】光拡散層を長手方向に分割した構成を示す図(a)と、その形状の光拡散層により得られるセンサ出力を示す図(b)、(c)である。
【図11】光拡散層の幅を長手方向に変化させた構成を示す図(a)と、その形状の光拡散層により得られるセンサ出力を示す図(b)である。
【図12】光拡散層の幅を長手方向に変化させた構成の問題点を説明するための導光体の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 導光体、1a 凸部、1b 凹部、2 光拡散パターン、2a 楔状の溝、3 光源ユニット、4 カバー、10 照明装置、11 レンズアレイ、12 受光素子、13 基板、14a,14b 保護ガラス、20 紙葉類。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類に光を照射する照明装置と、前記照明装置から出射され紙葉類を透過した光を導くためのレンズアレイと、前記レンズアレイにより導かれた透過光を受光する受光素子とを備えた紙葉類の認識装置において、
前記照明装置は、長手状に延びる導光体と、前記導光体の長手方向の少なくとも一方の端面付近に配置された光源と、前記光源から前記導光体に入射された光を紙葉類に向けて出射するための光拡散パターンとを有し、
前記光拡散パターンは、前記導光体に形成された複数の楔状の溝により構成され、前記複数の楔状の溝の各々は前記長手方向の直交方向に同じ長さを有し、かつ前記長手方向に一直線状に整列していることを特徴とする、紙葉類の認識装置。
【請求項2】
前記光拡散パターンの前記長手方向の寸法は、前記受光素子の読取領域の幅よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の紙葉類の認識装置。
【請求項1】
紙葉類に光を照射する照明装置と、前記照明装置から出射され紙葉類を透過した光を導くためのレンズアレイと、前記レンズアレイにより導かれた透過光を受光する受光素子とを備えた紙葉類の認識装置において、
前記照明装置は、長手状に延びる導光体と、前記導光体の長手方向の少なくとも一方の端面付近に配置された光源と、前記光源から前記導光体に入射された光を紙葉類に向けて出射するための光拡散パターンとを有し、
前記光拡散パターンは、前記導光体に形成された複数の楔状の溝により構成され、前記複数の楔状の溝の各々は前記長手方向の直交方向に同じ長さを有し、かつ前記長手方向に一直線状に整列していることを特徴とする、紙葉類の認識装置。
【請求項2】
前記光拡散パターンの前記長手方向の寸法は、前記受光素子の読取領域の幅よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の紙葉類の認識装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−39996(P2006−39996A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219724(P2004−219724)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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