説明

紙葉類識別機の光センサ装置

【課題】複数の光センサを用いて安価かつ小型の紙葉類識別機の光センサ装置を提供する。
【解決手段】紙幣識別機は、複数の発光素子11,12と受光素子13,14からなる光センサ10が紙幣通路15などに配置され、その真贋、種別などを識別する。この光センサ装置は、各受光素子13,14の基準となる受光量に基づいて調整抵抗値を記憶する不揮発性メモリ31、各発光素子11,12に対応する電流値制御信号により抵抗値を可変する電子ボリューム25、電子ボリューム25を発光素子11,12それぞれと時分割で切り替えて接続するアナログスイッチ24、アナログスイッチ24を切り替えて電子ボリューム25と各発光素子11,12とを順次に接続するとともに、不揮発性メモリ31で記憶された発光素子11,12に対応する調整抵抗値に基づいて電流値制御信号を電子ボリューム25に出力するCPU30からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類の真贋、種別などを識別する紙葉類識別機の光センサ装置に関し、とくに両替機、玉貸機や自販機などに搭載される紙幣識別機などで、光センサの出力レベルの調整を可能にした紙葉類識別機の光センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙葉類はその性質上、偽造および改竄の防止が要求されている。とくに、両替機、玉貸機や自販機などに搭載される紙幣識別機などは、紙幣データを収集するために多数の識別用光センサが配置され、それらの識別精度を保持することが重要になる。また、紙幣などの紙葉類の偽造および改竄の防止策として、例えば赤外光の透過光量、赤色光の透過光量、および赤外光と赤色光の透過光量比のデータなど、多様なデータを収集する光センサ装置が用いられることがある。さらに、識別用光センサの識別動作を安定に行うためには、光センサ装置の製作時に発光素子の発光強度を所定の基準値に合わせておく必要もある。
【0003】
従来は、光センサの発光強度を設定したり調整したりするには、発光素子ごとに1個ずつ可変抵抗器を接続して、発光素子に流れる最適な電流値となるように手動調整しなければならなかった。ところが、こうした発光素子の電流調整には人手が必要であるだけでなく、その作業が煩わしいことから、紙幣識別機の識別用発光素子などの電流を自動的に調整する発光素子の電流値調整回路が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図4は、紙幣識別に用いられる従来の光センサ装置の構成を示すブロック図である。
光センサ100は2つの発光素子101,102と2つの受光素子103,104によって構成され、発光素子101,102はいずれも赤外、赤色の2波長分のLED(発光ダイオード)からなる。搬送路105に配置された光センサ100では、その近傍を通過して搬送される紙幣から識別信号が読み取られる。光センサ100の受光素子103,104では、搬送路105を介して受光された識別信号が電気信号に変換され、増幅器106,107によって増幅され、演算制御部を構成するマイクロコンピュータ(以下、CPUという。)120に入力される。
【0005】
一方で、発光素子101,102には、それぞれ赤外LEDの点灯回路108,109および赤色LEDの点灯回路110,111が接続されるとともに、所定の直流電源112,113から電源供給されている。そして、これら4つの点灯回路108〜111には、CPU120によって抵抗値が可変される電子ボリューム114〜117が接続され、発光素子101,102に流れる電流値を制御している。また、CPU120には不揮発性メモリ121が接続されている。
【0006】
このような従来の光センサ装置では、抵抗値可変手段(電子ボリューム114〜117)が複数の固定抵抗とこの固定抵抗のいずれかの端子が発光素子またはその電源の一端に接続された複数のトランジスタとによって構成され、これらのトランジスタのオンの組合せでその全抵抗値を可変するようにしている。そして、紙幣識別機を制御するCPU120の調整モード時に、発光素子101,102の発光量を検出しながらトランジスタのオンの組合せを変え、発光量が紙幣識別に適した所定値に一致したときに、そのトランジスタのオンの組合せを不揮発性メモリ121で記憶し、通常の紙幣識別モード時には、このメモリ121に記憶したオン組合せとなるようにトランジスタをオンさせるようにしている。
【特許文献1】特開平05−226079号公報(段落番号[0010]〜[0014]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した紙幣識別機は、2組の発光素子101,102と受光素子103,104からなる光センサ100が識別センサとして配置されたものであるが、さらに多数の識別センサを配置した場合には、その電圧調整手段としての電子ボリューム114〜117がセンサ数に応じて必要になる。そのため、抵抗やトランジスタスイッチなどの部品点数が増加する。したがって、紙葉類識別機のプリント基板内で電圧調整手段の占有面積が増加するために、光センサ装置の小型化が困難であった。また、光センサ数に比例して部品点数が増加することから、識別精度を高めて偽札排除性能を向上させるうえで、その製品コストもアップするという問題が生じていた。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、複数の光センサを用いた識別精度の高い紙葉類識別機を安価、かつ小型に製造するための紙葉類識別機の光センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記問題を解決するために、複数の発光素子および受光素子からなる光センサが紙葉類の通路などに配置され、前記紙葉類の真贋、種別などを識別する紙葉類識別機の光センサ装置が提供される。この紙葉類識別機の光センサ装置は、前記各受光素子の基準となる受光量に基づいて調整抵抗値を記憶する記憶手段と、前記各発光素子に対応する電流値制御信号により抵抗値を可変する電圧調整手段と、前記電圧調整手段を前記発光素子それぞれと時分割で切り替えて接続する切替手段と、前記切替手段を切り替えて前記電圧調整手段と前記各発光素子とを順次に接続するとともに、前記記憶手段で記憶された前記発光素子に対応する前記調整抵抗値に基づいて前記電流値制御信号を前記電圧調整手段に出力する制御手段とから構成される。
【0010】
この光センサ装置では、記憶手段は例えば不揮発性メモリであって、各受光素子の基準となる受光量に基づいて調整抵抗値を記憶する。電圧調整手段は例えば電子ボリュームであって、各発光素子に対応する電流値制御信号により抵抗値を可変する。切替手段は例えばアナログスイッチであって、電圧調整手段を発光素子それぞれと時分割で切り替えて接続する。制御手段は例えばCPUであって、記憶手段で記憶された発光素子に対応する調整抵抗値に基づいて電流値制御信号を電圧調整手段に出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多数の発光素子に対して電圧調整手段としての電子ボリュームが1個ですむため、安価に光センサ装置を構成することができる。したがって、光センサ装置に多数の発光素子を設けることで、紙幣などの紙葉類識別機の識別精度を高めて、偽札排除性能を向上させることができる。また、光センサを増設しても、その電圧調整手段のプリント基板内での占有面積がそれほど増加しないから、光センサ装置のコストアップも抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態に係る光センサ装置の構成を示すブロック図である。
光センサ10は2つの発光素子11,12と2つの受光素子13,14によって構成され、発光素子11,12はいずれも赤外、赤色の2波長分のLEDからなる。搬送路15に配置された光センサ10では、その近傍を通過して搬送される紙幣から識別信号が読み取られる。また、光センサ10の受光素子13,14では、搬送路15を介して受光された識別信号が電気信号に変換され、さらに増幅器16,17によって増幅された信号として演算制御部を構成するCPU30に入力される。
【0013】
発光素子11,12には、それぞれ赤外LEDの点灯回路18,19および赤色LEDの点灯回路20,21が接続されるとともに、所定の直流電源22,23から電源供給されている。点灯回路18〜21は、CPU30からの点灯制御信号が供給されていて、直流電源22,23によって発光素子11,12のそれぞれ赤外、赤色のLEDを所定のタイミングで発光するようにオンオフ制御している。
【0014】
また、点灯回路18〜21はアナログスイッチ24を介して電子ボリューム25に接続されている。アナログスイッチ24は、電子ボリューム25を点灯回路18〜21それぞれと時分割で切り替えて接続するものであって、CPU30からの制御信号によって制御されている。電子ボリューム25は、発光素子11,12に流れる電流値を制御するための回路であって、後述する図2に示す構成を有しており、CPU30からの電流値制御信号によりその抵抗値が可変設定される。
【0015】
また、CPU30には不揮発性メモリ31が接続されており、ここにはCPU30の調整モード時に、各受光素子13,14の基準となる受光量に基づいて調整された電子ボリューム25の抵抗値に関する情報などが記憶される。
【0016】
さらに、点灯回路18〜21はそれぞれ電子ボリューム25に並列接続された固定抵抗26〜29の一端と接続され、これらの固定抵抗26〜29の他端は接地されている。したがって、各点灯回路18〜21と接続されたLEDには、それがアナログスイッチ24によって電子ボリューム25と接続されていないときでも、これらの固定抵抗26〜29によって常に所定の大きさの電流が流れる。
【0017】
図2は、図1の光センサ装置に用いられる電子ボリュームの構成を示すブロック図である。
ここでは、2個の直列接続された基準抵抗R11,R12と、この直列抵抗回路を選択するためのトランジスタスイッチS1、同じく直列接続された基準抵抗R21,R22とトランジスタスイッチS2、などから構成されている。トランジスタスイッチS1,S2などは、CPU30から電流値制御信号によってオンオフ制御される。複数の直列抵抗回路は、それぞれ異なる抵抗値の基準抵抗R11〜R42などによって構成され、これらのトランジスタスイッチS1,S2などが任意に選択されることにより種々の並列抵抗回路を構成できる。したがって、全体としての電子ボリューム25の抵抗値が、CPU30からの電流値制御信号により可変設定できる。
【0018】
CPU30の調整モードでは、発光素子11,12の発光量を検出しながら電子ボリューム25におけるトランジスタスイッチS1,S2のオンの組合せを変え、発光量が紙幣識別に適した所定値に一致したときのトランジスタスイッチS1,S2のオンの組合せとして、不揮発性メモリ31に記憶する。そして、通常の紙幣識別動作時には、この不揮発性メモリ31に記憶されたオン組合せとなるようにトランジスタスイッチS1,S2をオンさせる。
【0019】
図3は、図1の光センサ装置における発光素子の点滅動作を示すタイミング図である。
同図(a)は、CPU30における受光素子13,14の識別信号を読み取るためのタイマ割り込み信号である。CPU30ではタイミングt1,t2間が1msに設定され、その間をn分割してアナログスイッチ24によって2n個の光センサ10を順次に点灯するように制御している。同図(b)〜(e)には、図1の光センサ装置に示す2つの発光素子11,12の点灯タイミングを示している。
【0020】
最初の点灯タイミングt1では、各発光素子11,12の赤外波長のLEDが点灯制御され、次の点灯タイミングt2では、各発光素子11,12の赤色波長のLEDが点灯制御される。また、点灯期間T1は前後半分に区分され、前半期間に第1の発光素子11が点灯し、後半期間に第2の発光素子12が点灯する。それぞれの発光素子11,12に流れる電流は、CPU30が不揮発性メモリ31に記憶された基準抵抗値に基づいて電子ボリューム25を制御して電流値が設定され、それぞれ発光素子11,12の発光輝度を調整することができる。
【0021】
このようにCPU30は、該当する光センサ10を選択すると同時に、調整時に不揮発性メモリ31で記憶しておいた調整抵抗値によって電子ボリューム25を制御する。点灯期間T1には光センサ10は点灯状態となるが、それが選択されない場合には、固定抵抗26〜29で光センサ10に最低限の基準電流(例えば1mA)を流すようにしている。そのため、光センサ10を熱的に安定して駆動することができる。
【0022】
したがって、紙幣識別機に複数の光センサ10を用いた場合であっても、光センサ10の識別性能を維持したまま、電圧調整用の電子ボリューム25を1個(1組)だけで構成することができる。また、光センサ10の数がさらに増加した場合でも、電圧調整用の電子ボリューム25は1個のままで済むから、紙幣識別機のプリント基板内での占有面積の増加を抑制し、安価に偽札排除性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る光センサ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の光センサ装置に用いられる電子ボリュームの構成を示すブロック図である。
【図3】図1の光センサ装置における発光素子の点滅動作を示すタイミング図である。
【図4】紙幣識別に用いられる従来の光センサ装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0024】
10 光センサ
11,12 発光素子
13,14 受光素子
15 搬送路
16,17 増幅器
18〜21 点灯回路
22,23 直流電源
24 アナログスイッチ
25 電子ボリューム
26〜29 固定抵抗
30 CPU(マイクロコンピュータ)
31 不揮発性メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子および受光素子からなる光センサが紙葉類の通路などに配置され、前記紙葉類の真贋、種別などを識別する紙葉類識別機の光センサ装置において、
前記各受光素子の基準となる受光量に基づいて調整抵抗値を記憶する記憶手段と、
前記各発光素子に対応する電流値制御信号により抵抗値を可変する電圧調整手段と、
前記電圧調整手段を前記発光素子それぞれと時分割で切り替えて接続する切替手段と、
前記切替手段を切り替えて前記電圧調整手段と前記各発光素子とを順次に接続するとともに、前記記憶手段で記憶された前記発光素子に対応する前記調整抵抗値に基づいて前記電流値制御信号を前記電圧調整手段に出力する制御手段と、
を備えたことを特徴とする紙葉類識別機の光センサ装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記調整抵抗値を記憶する不揮発性メモリであることを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別機の光センサ装置。
【請求項3】
前記各発光素子は、前記電圧調整手段と並列接続された固定抵抗をそれぞれ備え、
前記発光素子が前記切替手段によって前記電圧調整手段と接続されていないとき、前記固定抵抗から所定の大きさの電流を流すようにしたことを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別機の光センサ装置。
【請求項4】
前記各光センサは、それぞれ波長の異なる点灯回路に接続された複数の発光素子を備えていることを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別機の光センサ装置。
【請求項5】
前記電圧調整手段は、複数の基準抵抗と前記各基準抵抗を選択するためのトランジスタスイッチから構成され、前記電圧調整手段によって前記トランジスタスイッチを選択して抵抗値を調整する電子ボリュームであることを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別機の光センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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