説明

紙葉類識別装置、自動取引装置及び紙葉類識別方法

【課題】地域別に定められた識別基準で紙葉類を識別することにより、偽紙葉類や損傷紙葉類の発生頻度等を考慮したそれぞれの地域特性に見合った取引運用が図れる紙葉類識別装置、自動取引装置及び紙葉類識別方法を提供する。
【解決手段】紙幣40の固有情報を読み取る固有特徴センサ28〜31と、前記固有特徴センサ28〜31が読み取った紙幣40の固有情報と予め定められている識別基準に基づいて前記紙幣40の金種や真偽を識別するCPU21とを備えた紙幣識別装置11であって、該装置11が設置された位置の位置情報を取得するGPS18と、地域別に識別基準が定められた地域別基準情報を記憶するROM16と、前記地域別基準情報に基づいて前記位置情報に対応する地域の識別基準に調整するCPU15とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば金融機関で利用される自動取引装置に内蔵されるような紙葉類識別装置及びその紙葉類識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類の一例に以下紙幣を例にとって説明する。従来、紙幣を扱うATM(現金自動預払装置)、両替機、自動販売機等の自動取引装置は、取り扱う紙幣を識別する紙幣識別装置が内蔵されており、この紙幣識別装置で紙幣特有の固有情報を識別している。この固有情報の識別には種々の識別センサが備えられ、該識別検知センサが検知した検知信号が識別基準の許容範囲内にあるか否かによって紙幣の金種、真偽、破損度合い等を識別している。
【0003】
このような紙幣識別装置は、紙幣の金種ごとに識別基準が異なるため、識別対象金種に応じた判定プログラムが使用されることになる。また、識別基準は国ごとに異なるため、国ごとに識別基準が異なった判定プログラムが使用される。ことに、同じ国であっても、その国内の設置場所等によって偽札の発生頻度、犯罪の発生頻度などの特性が異なるため、その特性に見合った識別基準になるように複数種類の判定プログラムが提供される場合がある。
【0004】
前記判定プログラムは、複数の判定プログラムから係員が一つ選択することにより採用されるため、判定プログラムが誤って選択される可能性があった。判定レベルの異なるプログラムが誤って採用されると、真札を偽札と判定したり、偽札を真札と判定したりするなど利用者の利便性を著しく損なうとともに、偽札等による予期せぬ不利益が発生する。
【0005】
このため、ホストコンピュータと通信し、貨幣の投入状況や時間帯などの使用状態、店舗内や店舗外などの設置形態等により貨幣の識別基準を変更するという自動販売機及び自動販売機ネットワークシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−222745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、このような構成では現在の使用状態や設置形態に応じて識別基準を変更できるものの、例えば偽札等の犯罪多発地域を考慮した地域別の運用管理に適した対処ができない問題を有していた。
【0008】
そこでこの発明は、地域別に定められた識別基準で紙葉類を識別することにより、地域別にふさわしい取引運用を図ることができる紙葉類識別装置、自動取引装置及び紙葉類識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、紙葉類の固有情報を読み取る読取手段と、前記読取手段が読み取った紙葉類の固有情報と予め定められている識別基準に基づいて前記紙葉類を識別する識別手段とを備えた紙葉類識別装置であって、該装置が設置された位置の位置情報を取得する位置情報取得手段と、地域別に前記識別基準が定められた地域別基準情報を記憶する記憶手段と、前記地域別基準情報に基づいて前記位置情報に対応する地域の識別基準に調整する基準調整手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、誤った判定レベルのプログラムで動作することを防止し、しかも地域別に適した識別条件で紙葉類を識別するため取引信頼性が高くなり、経済社会における健全な取引の維持に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】両替機の外観を表した斜視図。
【図2】両替機の制御回路ブロック図。
【図3】紙幣識別装置の制御回路ブロック図。
【図4】紙幣とセンサの配置例とを示す説明図。
【図5】センサの検出波形状態を示す図表。
【図6】地域別を表わす緯度と経度別のテンプレート選択テーブルを示す図表。
【図7】図6に対応するセンサ別のテンプレートを示す図表。
【図8】テンプレートの選択処理動作を示すフローチャート。
【図9】センサの検出波形状態を示す図表。
【図10】テンプレートの選択処理動作における動作停止例を示すフローチャート。
【図11】テンプレートの選択処理動作における高識別設定例を示すフローチャート。
【図12】紙幣の受付率に応じたテンプレートの修正処理動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は銀行等の各種店舗に設置される両替機1を示し、この両替機1は上部前面に、硬貨取出口2、包装硬貨取出口3、トレー4、スピーカ5、カード挿入口6、明細票排出口7、紙幣入出口8、及びタッチモニタ9(タッチ入力兼用の表示器)等を備えている。
【0014】
さらに、前記紙幣入出口8と連通する内方には、紙幣識別装置11と、紙幣を金種ごとに仕分けて格納する金種別格納部(図示省略)と、紙幣を収納及び繰り出す紙幣処理装置(図示省略)とが内蔵されている。そして、両替機1は紙幣識別装置11で紙幣の金種判別及び真偽判定を実行して紙幣の両替取引を可能にしている。
【0015】
次に、図2に示す両替機1の制御回路ブロック図について説明する。CPU15はROM16に格納されたプログラムに沿って各回路装置を制御し、その制御データをRAM17で読出し可能に記憶する。
【0016】
CPU15は両替機1を制御する制御手段として設けられ、I/Oインタフェース14を介して紙幣搬送部10、紙幣識別装置11、操作部12、表示部13、及びGPS18を制御する。
【0017】
ROM16には、その場所で使われるべき紙幣の判定情報が記憶された国別及び地域別の複数の紙幣テンプレートデータが格納されており、I/Oインタフェース14を介してCPU15は紙幣識別装置11のRAM23(図3参照)に適切な紙幣テンプレートデータを送信する。
【0018】
紙幣搬送部10は、CPU15の制御信号に基づいて駆動され、入出金される紙幣を紙幣識別装置11に導いて識別した後、紙幣を紙幣入出口8や金種別格納部等の所定の位置へと搬送する。
【0019】
紙幣識別装置11は、紙幣の金種を判別した上で該紙幣の真偽判定を実行する装置であり、その詳細については後述する。
【0020】
操作部12は、顧客に両替時の取引データを、タッチモニタ9を介して入力させ、また顧客の取引カードをカード挿入口6より挿脱させ、さらに紙幣を紙幣入出口8より入出金させる。
【0021】
表示部13は、タッチモニタ9と付属の表示器(図示省略)及び係員パネル(図示省略)に入力項目や操作案内項目を表示する。このうち、係員パネルは位置情報取得手段の一要素として設けられ、この係員パネルに現在位置を表わす地図、住所、緯度経度の位置情報を手動により入力操作させる。
【0022】
GPS(Global Positioning System)18は、位置情報取得手段の一要素として衛星からの電波を受信し、緯度、経度、高度情報から求められる現在位置情報を取得する装置である。その現在位置情報をCPU15はI/Oインタフェース14を介して得ることができる。前記位置情報取得手段としての係員パネルとGPS18は、単独で用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0023】
以上の構造により、両替機1は紙幣入出口8より受け付けた両替すべき紙幣を、タッチモニタ9を介して入力指示された取引データに基づいて、両替処理を実行する。
【0024】
次に、図3に示す紙幣識別装置11の制御回路ブロック図について説明する。この紙幣識別装置11の制御回路は、CPU21、ROM22、RAM23、通信装置24、及びI/Oドライバ25を備えて構成すると共に、該I/Oドライバ25を介して、トリガセンサ26、画像センサ27、第1赤外線センサ28、第2赤外線センサ29、第1磁気センサ30、第2磁気センサ31を備えて構成している。前記した両赤外線センサ28,29と両磁気センサ30,31との合計4個のセンサ群を説明上、総称して固有特徴センサ28〜31と称す。
【0025】
CPU21は、両替機1のCPU15から送信された画像テンプレート及び波形テンプレート(固有特徴センサ用)と、RAM23に格納されている検出データとをマッチングさせる処理を実行する。該マッチングの結果、類似度が適正範囲内であれば真券と判定し、適正範囲外であれば偽券と判定し、その判定結果を、通信装置24を介して両替機1のCPU15に送信する。
【0026】
ROM22は、紙幣識別装置11を動作させるためのプログラムを格納している。
【0027】
RAM23は、画像センサ27と固有特徴センサ28〜31で検出した画像データと波形データとの検出データを一時的に格納する。また、RAM23は、両替機から送信されたテンプレートデータを一時的に格納する。
【0028】
通信装置24は、両替機1のCPU15との通信を実行し、前述の判定結果をCPU15に送信する。
【0029】
I/Oドライバ25は、各種センサ26〜31を接続するためのドライバであり、各種センサ26〜31とCPU21との間での送受信を中継する。
【0030】
トリガセンサ26は、紙幣識別装置11に紙幣が搬送されてきたことを検知し、その検知信号をCPU21に送信する。該検知信号により、CPU21は識別処理を開始する。
【0031】
画像センサ27は、読取手段の一要素として紙幣の画像を読み取り、読み取った画像データを検出データとしてCPU21に送信する。この画像データにより、紙幣の金種を判別する。
【0032】
固有特徴センサ28〜31は、第1・第2の赤外線センサ28,29と、第1・第2の磁気センサ30,31とで紙幣が持つ固有情報の特徴を読み取るセンサ群であり、これらのセンサ28〜31が読取手段の一要素として備えられる。該固有特徴センサ28〜31の構成はこれに限らず、センサの種類及び数量を選択して様々な組み合わせのパターンに構成することができる。
【0033】
以上の構成により、画像センサ27による検出画像データと、金種判別画像データ(画像テンプレート)とをマッチングして金種判別を行い、固有特徴センサ28〜31での検出データと、真偽判別データ(波形テンプレート)とを照合して真偽判定を実行することができる。この場合、赤外線センサ28,29と磁気センサ30,31との識別精度の度合いは、どちらかを高識別精度に設定して紙幣に対する高精度の識別が得られるようにしている。
【0034】
次に、紙幣と、固有特徴センサ28〜31と、波形テンプレートとの関係と構成について図4及び図5について説明する。
図4(A)は紙幣40の図柄の一例を表わした平面図を示し、図4(B)は紙幣40の平面的な位置に対応する固有特徴センサ28〜31の配置構成図を示している。図4(A)の紙幣40の平面上に図4(B)に示す左側位置の第1赤外線センサ28が対向し、該第1赤外線センサ28が紙幣40を読み取った場合、その読み取った位置の検出データの波形は、図5(C)に仮想線で示す検出波形28aのようになる。この検出波形28aに、真券として判定するための所定の適正範囲の許容幅を設定した波形テンプレートデータ28bを形成する。
【0035】
同様に、図4(A)の紙幣40の平面上に図4(B)に示す左側寄りの位置の第2赤外線センサ29が対向し、該第2赤外線センサ29が紙幣40を読み取った場合、その読み取った位置の検出データの波形は図5(D)に仮想線で示す検出波形29aのようになる。この検出波形29aに、真券として判定するための所定の適正範囲の許容幅を設定した波形テンプレートデータ29bを形成する。
【0036】
同じく、図4(A)の紙幣40の平面上に図4(B)に示す右側寄りの位置の第1磁気センサ30が対向し、該第1磁気センサ30が紙幣を40読み取った場合、その読み取った位置の検出データの波形は図5(E)に仮想線で示す検出波形30aのようになる。この検出波形30aに、真券として判定するための所定の適正範囲の許容幅を設定した波形テンプレートデータ30bを形成する。
【0037】
また、図4(A)の紙幣40の平面上に図4(B)に示す一段低い右側位置の第2磁気センサ31が対向し、該第2磁気センサ31が紙幣40を読み取った場合、その読み取った位置の検出データの波形は図5(F)に仮想線で示す検出波形31aのようになる。この検出波形31aに、真券として判定するための所定の適正範囲の許容幅を設定した波形テンプレートデータ31bを形成する。
【0038】
なお、図5(C)〜(F)に示した検出波形28a〜31aは、紙幣40を読み込んだ際の平均的な波形を示している。これらの検出波形28a〜31aに基づいて波形テンプレートデータ28b〜31bを形成する際に、真券のばらつきが波形のグラフ上で上方に突出する傾向にあれば、図5(C)に示すように、上方の許容幅を広げ、固有特徴センサ28〜31に応じた適正範囲に設定している。
【0039】
図6のテンプレート選択テーブルにはGPS18により求められる地域に対し、その地域別(緯度と経度別)に識別基準が異なる地域別基準情報としての複数種類のテンプレートを作成している。このうち、テンプレート番号1を標準のテンプレートに設定し、テンプレート番号2を偽札の排除性能を少し高めたテンプレートに設定し、以下テンプレート番号が増す順に偽札の排除性能が次第に高められるテンプレートに設定している。そして、両替機1が設置された地域に対応した特定のテンプレート番号1,2…の何れかが選択される。
【0040】
図7は複数種類のテンプレート番号1,2,3…nと、固有特徴センサ28〜31別のテンプレートデータとの関係を示した図表である。この図表はセンサ28〜31ごとに紙幣に対する識別基準の高低レベルを表わす符号a〜eが定められている。例えば、符号aを普通の識別基準レベルに設定し、これよりb・c・d・eの順に識別基準レベルを高く設定して5段階に分けている。
【0041】
従って、GPS18が両替機1の設置された位置を特定し、その特定した位置の両替機1の位置情報に応じて図6のテンプレート番号を特定し、図7に示すように、そのテンプレート番号に応じたセンサ28〜31別の識別基準レベルa・b・c・d・eを定める。これらの識別基準レベルa・b・c・d・eに基づいて紙幣識別装置11の識別基準を設定する。
【0042】
前記識別基準は、基準値としての検出波形28a〜31aに対して所定範囲内であれば識別結果が真とする許容幅(波形テンプレートデータ28b〜31b)を示す許容幅情報、紙幣の特徴を表すテンプレート、またはこれらの各情報の組み合わせ等、紙幣の金種や真偽を識別する際の基準で構成する。
【0043】
さらに、前記位置情報の取得に際しては、GPS18により位置情報を自動的に取得する構成例を示したが、これに限らず、係員により位置情報を手動により取得する機能も合わせて構成することができる。前記係員が手動により入力して取得する際の入力情報はROM16に格納されている。このROM16に例えば、図示しない係員パネルから現在位置の住所を入力させて両替機1の現在位置の情報を特定させることができる。また、係員パネルに表わされた地図から現在位置を係員によりタッチ入力させて両替機1の現在位置の情報を特定させることができる。
【0044】
次に、テンプレートの選択処理動作を図8のフローチャートを参照して説明する。
上位の制御手段である両替機1のCPU15は、該両替機1が設置されている現在位置情報の取得をGPS18に要求する(ステップS001)。この要求に基づいてGPS18は衛星からの電波を受信し、両替機1の位置情報(緯度・経度)を取得する。このとき、GPS18が両替機1の現在位置情報を取得すると、CPU15は図6に示すテンプレート選択テーブルより該当するテンプレート番号を選択(ステップS007)し、I/Oインタフェース14を介して紙幣識別装置11に、該テンプレートデータを送信する(ステップS008)。
【0045】
もし、前記ステップS001にて、GPS18が両替機1の現在位置情報を取得できなかった場合、CPU15は、係員パネルに当該地区の地図を表示させ、係員に両替機1が設置されている現在位置を入力するように促す(ステップS002)。現在位置が表示された地図から係員が入力すると、CPU15は入力情報を緯度・経度に変換(ステップS005)し、図6に示すテンプレート選択テーブルより該当するテンプレートを選択(ステップS007)し、選択した該テンプレートデータをI/Oインタフェース14を介して紙幣識別装置11に送信する(ステップS008)。
【0046】
もし、前記ステップS002にて、地図から両替機1の現在位置の入力ができなければ、CPU15は係員パネルから両替機1の現住所を入力するよう係員に促す(ステップS003)。両替機1の現住所が係員パネルに入力されると、CPU15は現住所の入力情報から緯度・経度に変換(ステップS006)し、図6に示すテンプレート選択テーブルより該当するテンプレートを選択(ステップS007)し、選択した該テンプレートデータをI/Oインタフェース14を介して紙幣識別装置11に送信する(ステップS008)。
【0047】
もし、前記ステップS003にて両替機1の現住所が入力できなければ、CPU15は係員パネルから両替機1の緯度・経度の情報を入力するよう係員に促す(ステップS004)。両替機1の現在位置の緯度・経度の情報が入力されると、CPU15は図6に示すテンプレート選択テーブルより該当するテンプレートを選択(ステップS007)し、I/Oインタフェース14を介して紙幣識別装置11に、該テンプレートデータを送信する(ステップS008)。
【0048】
このように、両替機1は位置情報取得手段としてのGPS、地図入力、住所入力、緯度・経度入力の機能を持ち、そこから得られる位置情報を使って、図6に示すテンプレート選択テーブルから紙幣識別テンプレートを選択するため、紙幣識別装置11の識別基準を自動的に設定することができる。
【0049】
このため、係員が識別判定用のプログラムを誤選択して使用するような行為が解消され、両替機1が設置される地域に適した識別基準となり、地域別に適した識別基準で紙幣を識別することができる。また、両替機1の設置場所を変えても、前記テンプレート選択テーブルから紙幣識別装置11の識別基準を自動的に設定できるため、プログラムを再インストールするような必要もなくなる。したがって、判定レベルが異なったプログラムが採用されるおそれもない。
【0050】
図9(G)はセンサの検出波形28aを中心とする適正範囲の幅(標準の許容幅)を持つ標準のテンプレート28cである。これに対し、図9(H)は適正範囲を狭くした幅(偽札最大排除の許容幅)の偽札排除性を最大限高めたテンプレート28dである。
【0051】
ここでは、一例として第1赤外線センサ28の波形テンプレートを例にとって説明したが、他の固有特徴センサ29〜31についても同様である。なお、テンプレート選択テーブルが持つテンプレート数及びテンプレートの適正範囲はこれに限らず、センサの特性やセンサの数により様々に構成することができる。
【0052】
次に、テンプレートの選択処理動作における動作停止例を図10のフローチャートを参照して説明する。
両替機1の現在位置情報をGPS18から自動的に取得、または係員が手動により入力操作して現在位置情報を取得したとき、その両替機1の現在位置情報をRAM17に記憶しておき、次からは毎回位置情報の取得または入力をしなくても、適切なテンプレートデータを紙幣識別装置11に送信して設定できるような場合に適用する。
【0053】
ところが、この場合は入力の手間が省略できる利点があるものの、取得された位置情報が一致しない場合が発生する。このような位置情報が不一致となった時の対処動作について述べる。
【0054】
両替機1のCPU15は、GPS18から位置情報の受信履歴があるか否かをチェックする(ステップS101)。受信履歴があれば、その位置情報をRAM17に記憶する(ステップS102)。
【0055】
さらに、CPU15は係員パネルに表示された地図から、位置情報が入力されたか否かをチェックする(ステップS103)。入力されていることを確認すると、その位置情報をRAM17に記憶させる(ステップS104)。
【0056】
また、CPU15は係員パネルから現住所が入力されたか否かをチェックする(ステップS105)。入力されていることを確認すると、その位置情報をRAM17に記憶させる(ステップS106)。
【0057】
また、CPU15は係員パネルから緯度・経度が入力されたか否かをチェックする(ステップS107)。入力されていることを確認すると、その位置情報をRAM17に記憶させる(ステップS108)。
【0058】
次に、CPU15はRAM17に記憶させた各位置情報が一致するか否かをチェックする(ステップS109)。一致したことを確認すると、CPU15はテンプレート選択テーブルより該当するテンプレートを選択(ステップS110)し、I/Oインタフェース14を介して紙幣識別装置11に、該テンプレートデータを送信する(ステップS111)。
【0059】
CPU15がRAM17に記憶させた各位置情報が一致しないことを確認すると、CPU15は係員パネルに警告表示を出力し、両替機1の取引動作を停止する(ステップS112)。例えば、両替機1を移動させたことにより、GPS18による位置情報が変わると、地図や住所入力による位置情報が元のままだと、誤差が発生して係員パネルに警告が出力される。この警告を受けた際は、係員が住所入力や地図入力の入力間違いがないかチェックし、間違いがあれば修正して、再び識別基準を設定動作させる。
【0060】
このように、両替機1の位置情報の取得に際して、複数の取得手段により取得された位置情報が一致せず、異なった場合は停止手段としてのCPU15が紙幣識別装置11の稼動を停止し、取引を中止させることができる。このため、誤った識別基準での紙幣の金種や真偽の判定を防止することができる。つまり、識別基準が誤っている場合は、適切な識別基準に再設定できるように制御する機能を有している。
【0061】
次に、テンプレートの選択処理動作における高識別設定例を図11のフローチャートを参照して説明する。
前記図10のフローチャートと比較して、ステップS112に対応するステップS212のみが異なり、他は同じであるため同一の部分の同じ構成の説明についてはその説明を省略し、異なる部分の構成(ステップS212)についてのみ説明する。
【0062】
CPU15がRAM17に記憶された複数の位置情報が一致するか否かをチェック(ステップS209)し、一致しないと確認すると、CPU15は地域別基準情報を最も高いレベルに設定する。つまり、最も適正範囲が厳しい許容幅の狭いテンプレートを紙幣識別装置11に送信する(ステップS212)。
【0063】
このように、両替機1の位置情報の取得に際して、複数の取得手段により取得された複数の位置情報が一致しない場合は、最も厳しい識別基準に設定して紙幣識別装置11を稼動させることができる。このため、誤った位置情報が入力された可能性のある場合は、偽札受付の危険性を最も小さくして紙幣識別装置11を稼動させることができる。
【0064】
ところで、両替機1を運用した場合、紙幣40の識別に基づいて受入または拒否された紙幣40の受入率が、予め定められた基準受入率より低い場合は不適な識別基準なのでCPU15がエラー出力する。また、前記基準受入率を地域別に応じて設定する。これにより、地域別に応じた基準の受入率となり、受入率の適否が正確になる。
【0065】
次に、紙幣識別装置11の紙幣受入率によるチェックの処理動作を図12のフローチャートを参照して説明する。
【0066】
両替機1の運用開始時に、CPU15は前日の両替取引された両替機1の紙幣の受入率をチェックし(ステップS301)、CPU15は特定の地域での受入率が基準受入率(設定値)以上か否かを判定する(ステップS302)。このとき、設定値以上であれば、適正な識別基準に基づいた両替取引が実行されていると判定してCPU15は本日の両替機1の稼動を開始させる(ステップS303)。
【0067】
これに対し、(ステップS302)で特定の地域での識別基準が設定値以下であると判定したときは、CPU15は両替機1の位置情報の再確認を促す(ステップS304)。
【0068】
CPU15は位置情報をチェックして適正であれば、識別基準が地域に応じて適正なため両替機1の稼動を開始させる(ステップS305)。CPU15は位置情報をチェックして不適であれば、識別基準が地域にそぐわないため両替機1の位置情報を修正する。修正完了後に、両替機1の稼動を開始させる(ステップS306)。
【0069】
このように、両替機1を運用した際に、CPU15は運用した両替機1の受入率をチェックすることができる。このとき、紙幣の受入率が過度に低い場合は、紙幣識別装置11での拒否率が高く取引できない場合が多いことを表わしている。このような場合、例えば偽札の判定は少なく、流通紙幣の損傷レベルによる受付率の低下によるものであれば、地域にそぐわない識別基準であると判定し、紙幣識別装置11の識別基準を通常の識別レベルあるいは低い識別レベルに調整して、その地域にふさわしい識別基準レベルに設定変更することができる。従って、設定が間違った場合や設定が不適になった場合に直ぐに気付いて訂正できる。
【0070】
上述のように、両替機はGPS、地図入力、住所入力、緯度・経度入力機能を持ち、そこから得られる位置情報を使って、テンプレート選択テーブルから紙幣識別テンプレートを選択するため、紙幣識別装置の識別基準を自動的に設定することができる。このため、人の判断に頼るところが少なくなり、識別基準の誤設定のおそれがなくなる。特に、ファームウェアの更新でレベルを変えるような従来方式では、間違って設定しても気付き難いが、位置を地図表示する等により表示出力させれば間違いを目視で直ぐに確認できる。また、両替機の設置場所に応じた紙幣の識別が可能になり、損傷紙幣や偽札の発生頻度等を考慮した地域特性に合わせた紙幣識別装置の運用が図れる。
【0071】
この発明は、上述の一実施例に記載された構成に限定されるものではなく、請求項に記載された技術思想に基づいて応用することができる。例えば、上述の実施例では、自動取引装置の一例に両替機1を例にとって説明したが、ATMや自動券売機などにも適用することができる。また、紙葉類として紙幣を例にとって示したが、小切手、証券、明細票、通帳などの価値情報を備えた印刷媒体であれば、この発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
ATMや券売機などの自動取引機の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1・・・両替機
11・・・紙幣識別装置
13・・・表示部
15,21・・・CPU
16,22・・・ROM
17,23・・・RAM
18・・・GPS
26・・・トリガセンサ
27・・・画像センサ
28,29・・赤外線センサ
30,31・・・磁気センサ
40・・・紙幣
28a,29a・・・赤外線センサの検出波形
30a,31a・・・磁気センサの検出波形
28b,29b・・・赤外線センサの波形テンプレートデータ
30b,31b・・・磁気センサの波形テンプレートデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の固有情報を読み取る読取手段と、前記読取手段が読み取った紙葉類の固有情報と予め定められている識別基準に基づいて前記紙葉類を識別する識別手段とを備えた紙葉類識別装置であって、
該装置が設置された位置の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
地域別に前記識別基準が定められた地域別基準情報を記憶する記憶手段と、
前記地域別基準情報に基づいて前記位置情報に対応する地域の識別基準に調整する基準調整手段と、
を備えた紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記位置情報取得手段を複数備え、
異なる位置情報取得手段でそれぞれ取得された位置が異なっていれば該装置の稼動を停止する停止手段を備えた
請求項1に記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記位置情報取得手段を複数備え、
前記基準調整手段は、異なる位置情報取得手段でそれぞれ取得された位置が異なっていれば、前記地域別基準情報を最も高いレベルに設定する
請求項1に記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記紙葉類の識別に基づいて受入または拒否された紙葉類の受入率が、予め定められた基準受入率より低い場合はエラー出力する
請求項1、2または3に記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記基準受入率を、
地域別に応じて設定した
請求項4に記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の紙葉類識別装置を備え、
前記紙葉類識別装置の地域別基準情報に基づいて定められた識別基準で紙葉類を識別して取引する制御手段を備えた
取引処理装置。
【請求項7】
紙葉類識別装置が設置された位置の位置情報を位置情報取得手段により取得し、地域別に識別基準が定められた地域別基準情報に基づいて前記位置情報に対応する地域の識別基準に調整して紙葉類を識別する
紙葉類識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−118600(P2011−118600A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274591(P2009−274591)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】