説明

紙葉類識別装置

【課題】紙葉類に付着している磁性体付着物が磁気センサに付着する事態を防ぐことができる紙葉類識別装置を提供する。
【解決手段】紙葉類検知センサ(磁気センサ)の上流で搬送路Rを通過する紙葉類Wに付着した磁性体付着物Fを除去する付着物除去手段(当接部材9)を備える。このため、紙葉類Wが紙葉類検知センサに至る以前に予め付着物Fが除去されるため、この付着物Fが着磁体を設けた部位の搬送路Rの壁面に付着する事態を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着磁した紙葉類の残留磁気を検出して当該紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、紙幣や有価証券や商品券や磁気カードなどの紙葉類の真贋を判定する場合には、磁性体を含有してなる印刷インクによって紙葉類に印刷された文字や図形や記号などの磁気印刷部を磁気的に検出した信号と、本物の紙葉類から予め検出した信号とを比較して真偽判定を行っている。
【0003】
一般に、紙葉類の真贋判定を非接触で行う紙葉類識別装置の磁気センサは、紙葉類を搬送するための搬送路に設置してある。この磁気センサは、磁気検出素子として、外部磁界の変化によって抵抗値が変化する磁気抵抗素子、外部磁界の変化によってインピーダンスが変化する磁気インピーダンス素子、あるいは薄膜スラックスゲート素子などを有している。
【0004】
このうち、磁気抵抗素子を用いた紙葉類識別装置の磁気センサは、磁気抵抗素子が、セラミック基板の表面に形成してある。基板の裏側には、磁石(着磁体)が設けてある。この磁石は、磁気抵抗素子の垂直方向に補助磁界を加えている。そして、磁石によって磁気抵抗素子に磁界を印加することにより、紙葉類の磁気印刷部の微弱な磁気を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、磁気インピーダンス素子を用いた紙葉類識別装置の磁気センサは、E字形の着磁体が、その開放された側の3箇所の端部を紙葉類の相対移動方向に垂直に並ぶように、かつ紙葉類の面に対して垂直に接触または近接するように配置してある。また、磁気インピーダンス素子が、紙葉類の磁気印刷部の面に平行な面内で、上記相対移動方向に垂直な方向に感磁方向が一致するように配置してある。さらに、磁気インピーダンス素子の近傍には、当該磁気インピーダンス素子にバイアス磁界を加えて磁気インピーダンス素子を感度の良い動作点に設定するためのバイアス磁石が設置してある。そして、紙葉類の磁気印刷部の検知時に、紙葉類の移動に伴って着磁体によって磁気印刷部を着磁して、その着磁した部分の残留磁界を磁気インピーダンス素子によって検出する(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、薄膜フラックスゲート素子を用いた紙葉類識別装置の磁気センサは、磁気インピーダンス素子を用いた紙葉類識別装置の場合と同構成によって磁気センサを構成することで、紙葉類の磁気印刷部を検出する。
【0007】
【特許文献1】特開2003−35701号公報
【特許文献2】特開2000−105847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、磁気センサは、いずれの磁気検出素子を用いた場合でも磁石と磁気検出素子とで構成される。そして、紙葉類に印刷した磁気印刷部の印刷インクに含まれる磁性体の磁気量は、非常に微量である。このため、この磁性体の磁気を感度良く検出するには、磁石の磁力を大きくする必要がある。よって磁石には、体積効率の良い磁石が用いられる。例えば、特許文献1に参照する磁気センサでの磁石は150ガウス〜300ガウス程度、特許文献2に参照する磁気センサでの磁石は1Kガウス程度の磁力を有する。
【0009】
しかし、上述したように磁石を用いた磁気センサは、実際の使用環境下では、磁石の強力な磁力によって、紙葉類の面に付着している砂鉄や鉄粉などの磁性体付着物を吸引してしまう。磁石の磁極面に大量の磁性体付着物が吸引されて付着した場合、磁石の発生磁界が乱れて磁気センサでの誤検出を生じたり、搬送路が塞がれて紙葉類の搬送を阻害することで詰まりが発生したりすることになる。
【0010】
そこで、一定の期間ごとに紙葉類識別装置の保守点検を行い、磁石の磁極面に吸引され付着した磁性体付着物を除去する清掃作業が必要になる。一般での清掃作業は、磁気センサを設けた識別部のカバーを開き、水または中性洗剤などを染み込ませた綿棒などで清掃を行う。ところが、磁石の磁極面に吸引された磁性体付着物は、磁石の強力な磁力によって常に吸引されているため、当該付着物を完全に除去するには多くの労力と時間が必要になる。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みて、紙葉類に付着している磁性体付着物が磁気センサに付着する事態を防ぐことができる紙葉類識別装置を提供することを目的とする。また、磁気センサの着磁体によって吸引された磁性体付着物を取り除くことができる紙葉類識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決するために、本発明の請求項1に係る紙葉類識別装置は、磁性体を有した紙葉類を搬送する搬送路と、前記搬送路に設けてあって、紙葉類の磁性体に磁界を印加する着磁手段、および着磁手段の磁界の印加によって紙葉類の磁性体が帯びる残留磁気を検出する磁気検出手段からなる磁気センサとを有する紙葉類識別装置において、磁気センサの上流で搬送路を通過する紙葉類に付着した磁性体付着物を除去する付着物除去手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る紙葉類識別装置は、上記請求項1において、前記付着物除去手段は、紙葉類に接触可能に設けた当接部材からなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る紙葉類識別装置は、上記請求項1または2において、上方に搬送方向を向けた搬送路の上流部に付着物除去手段を配置し、搬送路の下流部に磁気センサを配置したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る紙葉類識別装置は、上記請求項3において、搬送路の上流部の下方の位置に付着物除去手段によって除去された付着物を受容する付着物収容部を設けたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る紙葉類識別装置は、上記請求項1において、前記付着物除去手段は、搬送路側に磁極面を向けて配置した磁石からなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項6に係る紙葉類識別装置は、磁性体を有した紙葉類を搬送する搬送路と、前記搬送路に設けてあって、紙葉類の磁性体に磁界を印加する着磁手段、および着磁手段の磁界の印加によって紙葉類の磁性体が帯びる残留磁気を検出する磁気検出手段からなる磁気センサとを有する紙葉類識別装置において、周方向に沿って当接部材を有し、当該当接部材を搬送路内にて磁気センサの着磁部位に絶えず接触させる態様で回転可能に設けた回転体と、搬送路に紙葉類を搬送させる搬送手段に対して前記回転体を同期して回転させる駆動伝達手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項7に係る紙葉類識別装置は、上記請求項6において、当接部材が搬送路の外部に逸脱する態様で前記回転体を配置して、当該搬送路の外部の位置で当接部材に接触する磁石を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の紙葉類識別装置によれば、付着物除去手段によって紙葉類が磁気センサに至る以前に紙葉類に付着している予め付着物を除去する。この結果、付着物が磁気センサに付着する事態を防ぐことができる。
【0020】
また、本発明の紙葉類識別装置によれば、搬送手段と同期して回転する回転体に設けた当接部材が、磁気センサの着磁部位に接触するため、着磁部位に吸引されている付着物を払い取る。この結果、付着物が磁気センサの着磁部位に付着する事態を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る紙葉類識別装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
<実施の形態1>
図1は本発明に係る紙葉類識別装置を模式的に示した概略図である。ここで例示する紙葉類識別装置1は、磁性体を含有してなる印刷インクによって紙葉類Wに印刷された文字や図形や記号(以下、適宜これらを単に「磁気印刷部」と称する)の磁気特性を検知し、かかる検知結果に基づいて紙葉類Wの真贋を判定するもので、紙葉類Wを搬送する搬送路Rの近傍に配設してある。この紙葉類識別装置1は、進入センサ2、紙葉類検知センサ(磁気センサ)3、進入検出部4、磁気検出部駆動部5、磁気検出回路6および信号処理回路7を備えている。
【0023】
進入センサ2は、搬送路Rの上流側であって搬送路Rの一側壁(図1中での上側壁)に配設してある。この進入センサ2は、例えば反射型フォトインタラブタのような光センサなどであり、進入する紙葉類Wを非接触で検知するものである。
【0024】
紙葉類検知センサ3は、搬送路Rにおける進入センサ2の下流側であって搬送路Rの一側壁(図1中での上側壁)に配設してある。この紙葉類検知センサ3は、着磁体(着磁手段)31及び磁気検出部(磁気検出手段)32を備えており、搬送路Rを搬送される紙葉類Wに印刷された磁気印刷部の磁気量を検知するものである。
【0025】
紙葉類検知センサ3は、着磁体31および磁気検出部32がケース33の内部に収納されて一体的に構成してある。着磁体31は、例えば3つの四角柱状の永久磁石を、紙葉類Wの搬送方向Sに対して直交する方向に沿って所定の間隔で並列させて立設させることにより構成したものである。ここに、永久磁石としては、例えばサマリウム・コバルト磁石やネオジム磁石などの磁気特性に優れた希土類磁石が用いられており、紙葉類Wの磁性体が有する保磁力以上の磁界強度を有するものである。着磁体31を構成する中央位置の永久磁石は、搬送路Rに向く検知側の磁極面がS極であり、その反対側がN極となる態様で立設してある。この中央位置の永久磁石の両側に配設された永久磁石は、ともに検知側の磁極面がN極であり、その反対側がS極となる態様で立設してある。これにより、着磁体31は、両側の永久磁石の検知側であるN極から中央位置の永久磁石の検知側であるS極に向かう磁界を搬送路Rに通過する紙葉類Wの磁気印刷部に印加させる。
【0026】
磁気検出部32は、搬送路Rにおける着磁体31の下流側に設けてある。この磁気検出部32は、例えば磁気インピーダンス素子や薄膜フラックスゲート型磁気検出素子により構成してある。このような磁気検出部32は、磁気検出部駆動部5から出力された指令信号に基づき通電状態となって駆動するものであり、着磁体31による印加により紙葉類Wの磁性印刷部が帯びる残留磁気によって生ずる磁界を検出するものである。また、磁気検出部32の周囲には、磁気シールド部材(図示せず)が設けてある。磁気シールド部材は、例えばパーマロイ、アモルファスなどから形成されるものであり、着磁体31からの磁界波及を抑制するためのものである。
【0027】
ケース33は、着磁体31および磁気検出部32などを収容する筐体である。ケース33は、磁界を透過し、かつ非磁性体である樹脂などの材料からなる。
【0028】
進入検出部4は、進入センサ2に接続してあり、該進入センサ2が紙葉類Wの進入を検知して出力した信号に基づき、紙葉類Wの進入を検出するものである。
【0029】
磁気検出部駆動部5は、進入検出部4および磁気検出部32のそれぞれに接続してあり、進入検出部4が紙葉類Wの進入を検出して出力した信号に基づき、磁気検出部32に駆動する旨の指令信号を出力するものである。
【0030】
信号処理回路7は、磁気検出回路6を通じて磁気検出部32に接続してあり、磁気検出部32が磁界を検出して出力した検出信号に基づき、予め記憶してある基準値と比較して所定の許容範囲内にあるか否かを判定して紙葉類Wの真贋を判定するものである。
【0031】
図2は上述した紙葉類識別装置1の搬送系を示す概略側断面図である。図2に示すように搬送路Rは、紙葉類識別装置1の前方に向けて開口する投入口R1を有している。紙葉類Wは、この投入口R1から投入される。また、搬送路Rは、投入口R1から後方に向かいつつ、そこから上方に搬送方向Sを向けた上流部R2を有している。さらに、搬送路Rは、上流部R2の上端から折り返して下方に搬送方向Sを向けた下流部R3を有している。そして、下流部R3の下端には、搬送路Rに搬送した紙葉類Wを収納するための収納庫R4が設けてある。このような搬送路Rにおいて、上流部R2と下流部R3との間の折り返し部と、収納庫R4手前の下流部R3の下端部とには、搬送手段を構成する搬送ローラR5,R6が設けてある。上流部R2と下流部R3との間の折り返し部に設けた搬送ローラR5は、上流部R2および下流部R3に外周面を表出してあり、この表出部分が搬送手段を構成する各従動ローラR7,R8に当接している。また、収納庫R4手前の下流部R3の下端部に設けた搬送ローラR6は、下流部R3に外周面を表出してあり、この表出部分が搬送手段を構成する従動ローラR9に当接している。搬送ローラR5,R6は、駆動モータなどの図示しない駆動源によって連動して回転駆動される。搬送ローラR5,R6が回転駆動されると、これに伴って従動ローラR7,R8,R9が従動する。
【0032】
上記搬送系において、進入センサ2は、投入口R1から搬送ローラR5と従動ローラR7とが当接する部位までの間の上流部R2に設けてある。また、搬送系において、紙葉類検知センサ3は、搬送ローラR5と従動ローラR8とが当接する部位から搬送ローラR6と従動ローラR9とが当接する部位までの間の下流部R3に設けてある。
【0033】
また、上記搬送系の上流部R2における上方の位置には、搬送ローラR5と従動ローラR7とが当接する部位の下流の直近には、付着物除去手段としての当接部材9が設けてある。当接部材9は、ナイロン(R)などの合成樹脂材からなる繊維や、獣毛などを束ね集めて図3に示すように刷毛状に形成もの、あるいは不織布などからなる。この当接部材9は、搬送路Rの両内壁から紙葉類Wの厚さ方向に対向して延在し、搬送路Rに搬送された紙葉類Wの表裏面に接触でき、かつ紙葉類Wを通過させるように間隔をおいて設けてある。なお、当接部材9は、紙葉類Wの搬送負荷にならず、かつ紙葉類Wに適宜接触できるように弾性を有し、かつ磁化が生じない樹脂などの非磁性体材料からなることが好ましい。さらに、上記搬送系の上流部R2における下方の位置には、搬送路Rに連通する付着物収容部10が設けてある。
【0034】
このような搬送系では、投入口R1から投入された紙葉類Wは、上流部R2において、正転(図2中反時計回り)方向に回転駆動された搬送ローラR5と、これに当接する従動ローラR7とで挟まれつつ搬送方向S(上方)に向けて搬送される。そして、紙葉類Wは、下流部R3の上端部において、図2中反時計回りに回転駆動された搬送ローラR5と、これに当接する従動ローラR8とに挟まれつつ搬送方向S(下方)に向けて搬送される。さらに、紙葉類Wは、下流部R3の下端部において、図2中反時計回りに回転駆動された搬送ローラR6と、これに当接する従動ローラR9とに挟まれつつ収納庫R4に搬送される。なお、搬送ローラR5,R6は、逆転(図2中時計回り)方向にも回転駆動される。例えば紙葉類Wが贋物であった場合など、搬送ローラR5,R6が逆転方向に回転駆動されて、投入口R1から搬出される。
【0035】
上記紙葉類識別装置1は、次のようにして搬送される紙葉類Wの真贋を判定する。
【0036】
搬送手段により搬送される紙葉類Wが搬送路Rの投入口R1から投入されると、進入センサ2が検知してその旨を信号として進入検出部4に出力され、進入したことが検出される。そして、進入検出部4から磁気検出部駆動部5に紙葉類Wが進入した旨の信号が出力されると、磁気検出部駆動部5から紙葉類検知センサ3の磁気検出部32に駆動指令が出力され、磁気検出部32が通電状態になって駆動する。さらに、搬送手段の搬送ローラR5,R6が正転方向に回転駆動する。
【0037】
搬送路Rに進入した下流部R3に至り、紙葉類Wが着磁体31の磁界が及ぶ領域に到達すると、紙葉類検知センサ3は、着磁体31において両側の永久磁石のN極から中央位置の永久磁石のS極に向かう磁界をケース33を透過して印加して、紙葉類Wの磁気印刷部を磁化させる。磁気印刷部が磁化された紙葉類Wは、そのまま搬送路Rを搬送される。
【0038】
そして、通電状態となった磁気検出部32が、磁性印刷部が帯びる残留磁気によって生ずる磁界を検出し、その検出結果を検出信号として磁気検出回路6を通じて信号処理回路7に出力し、その後通電状態が解除されて待機状態になる。信号処理回路7では、磁気検出部32により出力された検出信号に基づき、予め記憶してある基準値と比較して所定の許容範囲内にあるか否かを判定して紙葉類Wの真贋を判定する。
【0039】
このような紙葉類識別装置1では、搬送路Rに紙葉類Wを搬送している過程で、搬送路Rの上流部R2において、当接部材9が紙葉類Wの表裏面に接触する。このため、図4(a)および図4(b)に示すように紙葉類Wの表裏面に付着している砂鉄や鉄粉などの磁性体付着物(以下、適宜これらを単に「付着物」と称する)Fが除去される。この結果、紙葉類Wが紙葉類検知センサ3に至る以前に予め付着物Fが除去されるため、この付着物Fが着磁体31の着磁部位である搬送路Rの壁面に付着する事態を防ぐことが可能になる。よって、着磁体31により印加された紙葉類Wの磁界が大きく変動してしまうことがなく、紙葉類Wの残留磁気を良好に検知することができる。
【0040】
また、当接部材9が弾性を有していれば、図4(a)に示すように当接部材9が紙葉類Wの搬送方向Sに変形した後、図4(b)に示すように元に戻る弾性変形によって付着物Fを下方に弾き飛ばすことになる。この結果、当接部材9に残り得る付着物Fが少なくなるので、当接部材9の付着物Fの除去性能を維持することができる。
【0041】
また、搬送ローラR5と従動ローラR7とが当接する部位の下流の直近に当接部材9が設けてあるので、当接部材9の部位を紙葉類Wが通過する際の摩擦力が生じても当該摩擦力に抗して紙葉類Wの搬送を行うことが可能である。さらに、搬送ローラR5と従動ローラR7とは、当接部材9摩擦力に抗するため、搬送力が大きくなるように他のローラと比較して大径のローラを用いることが好ましい。
【0042】
また、当接部材9は、砂鉄や鉄粉など以外に、紙葉類Wの表裏面に付着している非磁性体の付着物をも除去することになるので、搬送路Rを通過した紙葉類Wを清潔に保つことができる。
【0043】
また、上方に搬送方向Sを向けた搬送路Rの上流部に当接部材9を配置し、搬送路Rの下流部に紙葉類検知センサ3を配置したことにより、除去した付着物Fを紙葉類検知センサ3の位置に至らせる事態を防ぐことができる。
【0044】
また、当接部材9によって除去された付着物は、付着物収容部10に収容されることになる。この結果、投入口R1から投入される他の紙葉類Wに対して除去した付着物を付着させる事態を防ぐことができる。
【0045】
また、本実施の形態1では上流部R2にて紙葉類Wに付着した付着物Fを取り除いている。このため、下流部R3の各ローラに付着物Fが付着する事態も防ぐことが可能になる。この結果、ローラ表面の汚れによる搬送力の低下によって紙葉類Wの詰まりが生じる事態、あるいはローラ表面の汚れによる搬送バランスの低下によって紙葉類Wが斜行して紙葉類Wの詰まりが生じる事態を防止することになり、信頼性の高い紙葉類識別装置を提供できる。
【0046】
<実施の形態2>
図5は本発明の実施の形態2に係る紙葉類識別装置を示す概略側断面図である。なお、以下に説明する実施の形態2では、上述した実施の形態1と基本構成が同一であって付着物除去手段が異なる。よって、同一部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
ここでの付着物除去手段は、搬送路R側に磁極面を向けて配置した磁石11からなる。磁石11は、永久磁石であり、その磁力が着磁体31よりも強いものを採用してある。この磁石11は、搬送路Rの上流部R2であって、本実施の形態2では搬送ローラR5と従動ローラR7とが当接する部位の上流に配置してあり、搬送路Rの外側から搬送路Rに壁部に磁極面を密着して配置してある。
【0048】
このような紙葉類識別装置1では、紙葉類Wの真贋を判定する過程にて、図6(a)に示すように搬送路Rに搬送されている紙葉類Wは、搬送路Rの上流部R2において磁石11を配置した部位を通過する。このため、図6(b)に示すように紙葉類Wの表裏面に付着している砂鉄や鉄粉などの磁性体付着物(以下、適宜これらを単に「付着物」と称する)Fが磁石11によって吸引されて除去される。この結果、紙葉類Wが紙葉類検知センサ3に至る以前に予め付着物Fが除去されるため、この付着物Fが着磁体31を設けた部位の搬送路Rの壁面に付着する事態を防ぐことが可能になる。よって、着磁体31により印加された紙葉類Wの磁界が大きく変動してしまうことがなく、紙葉類Wの残留磁気を良好に検知することができる。
【0049】
また、磁石11は、その磁力が着磁体31よりも強いものを採用してあるため、着磁体31によって吸引され得る付着物Fを適宜吸引することが可能である。
【0050】
また、本実施の形態2では投入口R1の直後であって搬送ローラR5と従動ローラR7とが当接する部位の上流にて紙葉類Wに付着した付着物Fを取り除いている。このため、各ローラR5,R6,R7,R8,R9に付着物Fが付着する事態も防ぐことが可能になる。この結果、ローラ表面の汚れによる搬送力の低下によって紙葉類Wの詰まりが生じる事態、あるいはローラ表面の汚れによる搬送バランスの低下によって紙葉類Wが斜行して紙葉類Wの詰まりが生じる事態を防止することになり、信頼性の高い紙葉類識別装置を提供できる。
【0051】
<実施の形態3>
図7は本発明の実施の形態3に係る紙葉類識別装置を示す概略側断面図である。なお、以下に説明する実施の形態3では、上述した実施の形態1と基本構成が同一であって付着物除去手段が異なる。よって、同一部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
ここでの付着物除去手段は、主に回転体12からなる。回転体12は、円柱形状のローラであって、その外周部に周方向に沿って当接部材13を有している。当接部材13は、ナイロン(R)などの合成樹脂材からなる繊維や、獣毛を回転体12の外周部から放射方向に延在して設けたもの、あるいは不織布などを回転体12の外周部に巻き付けて設けたものなどからなる。この回転体12は、搬送路Rを挟んで紙葉類検知センサ3に対向する位置であって、かつ外周部が紙葉類Wに接触しないように搬送路Rの外部で側方に向けた軸を中心に回転可能に設けてある。また、回転体12に設けた当接部材13は、紙葉類検知センサ3における着磁体31が搬送路Rに向く着磁部位(搬送路Rの壁面)に接触している。そして、回転体12が回転すると、当接部材13が着磁体31の着磁部位に絶えず接触することになる。なお、当接部材13は、紙葉類Wの搬送負荷にならず、かつ着磁体31の着磁部位に適宜接触できるように弾性を有し、かつ磁化が生じない樹脂などの非磁性体材料からなることが好ましい。
【0053】
また、回転体12は、駆動伝達手段によって搬送手段である搬送ローラR5と同期して回転する。駆動伝達手段は、図7に示すように搬送ローラR5の軸と回転体12の軸とに掛け回された無端状ベルト14からなる。すなわち、搬送ローラR5が駆動モータなどの図示しない駆動源によって回転駆動されると、無端状ベルト14を介して回転体12が同期して回転する。この駆動伝達手段は、図には明示しないが搬送ローラR6の軸と回転体12の軸とに掛け回された無端状ベルトであってもよい。なお、駆動伝達手段は、上記無端状ベルト14に限らず、図には明示しないが搬送ローラR5(または搬送ローラR6)の軸に設けた駆動歯車、回転体12の軸に設けた従動歯車、および駆動歯車と従動歯車との間で相互に噛み合う中間歯車によって構成してあってもよい。
【0054】
また、搬送路Rの外部であって、回転体12の紙葉類検知センサ3と相反する側には、磁石15が設けてある。磁石15は、永久磁石であり、その磁力が着磁体31よりも強いものを採用してある。この磁石15の磁極面には、搬送路Rの外部の位置で、搬送路Rの外部に逸脱した当接部材13が接触する。
【0055】
このような紙葉類識別装置1では、紙葉類Wの真贋を判定する過程にて、図8(a)に示すように紙葉類検知センサ3は、着磁体31の磁力によって、搬送路Rに搬送される紙葉類Wに付着している砂鉄や鉄粉などの磁性体付着物(以下、適宜これらを単に「付着物」と称する)Fを吸引してしまう。
【0056】
そのような場合、上述した紙葉類識別装置1では、紙葉類Wが紙葉類検知センサ3の位置を通過した後、図8(b)に示すように搬送手段と同期して回転する回転体12に設けた当接部材13が、紙葉類検知センサ3における着磁体31の着磁部位(搬送路Rの壁面)に接触する。このため、図8(c)に示すように回転体12の回転に伴って移動する当接部材13によって着磁体31の着磁部位に吸引されている付着物Fを払い取る。この場合、当接部材13が弾性を有していれば、図8(b)に示すように当接部材13が変形した後、図8(c)に示すように元に戻る弾性変形によって付着物Fを払い取ることになる。この結果、紙葉類検知センサ3における着磁体31の着磁部位に吸引された直後に付着物Fが除去されるため、この付着物Fが着磁体31の着磁部位に付着する事態を防ぐことが可能になる。よって、着磁体31により印加された紙葉類Wの磁界が大きく変動してしまうことがなく、紙葉類Wの残留磁気を良好に検知することができる。
【0057】
さらに、上述した紙葉類識別装置1では、当接部材13が搬送路Rの外部に逸脱する態様で回転体12を配置してあり、当該搬送路Rの外部の位置で当接部材13に接触する磁石15を設けてある。このため、図8(d)に示すように当接部材13に残留している付着物Fが磁石15の磁力によって吸引されて回収されることになる。この結果、当接部材13に残留した付着物Fが回転体12の回転によって再び着磁体31の磁力によって吸引されて着磁体31の着磁部位に付着する事態を防ぐことが可能になる。よって、着磁体31により印加された紙葉類Wの磁界が大きく変動してしまうことがなく、紙葉類Wの残留磁気を良好に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る紙葉類識別装置を模式的に示した概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る紙葉類識別装置の搬送系を示す概略側断面図である。
【図3】図2に示した当接部材の拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る紙葉類識別装置の作用を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る紙葉類識別装置を示す概略側断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る紙葉類識別装置の作用を示す概略図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る紙葉類識別装置を示す概略側断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る紙葉類識別装置の作用を示す概略図である。
【符号の説明】
【0059】
1 紙葉類識別装置
2 進入センサ
3 紙葉類検知センサ
31 着磁体
32 磁気検出部
33 ケース
4 進入検出部
5 磁気検出部駆動部
6 磁気検出回路
7 信号処理回路
9 当接部材
10 付着物収容部
11 磁石
12 回転体
13 当接部材
14 無端状ベルト
15 磁石
F 付着物
R 搬送路
R1 投入口
R2 上流部
R3 下流部
R4 収納庫
R5,R6 搬送ローラ
R7,R8,R9 従動ローラ
S 搬送方向
W 紙葉類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を有した紙葉類を搬送する搬送路と、
前記搬送路に設けてあって、紙葉類の磁性体に磁界を印加する着磁手段、および着磁手段の磁界の印加によって紙葉類の磁性体が帯びる残留磁気を検出する磁気検出手段からなる磁気センサと
を有する紙葉類識別装置において、
磁気センサの上流で搬送路を通過する紙葉類に付着した磁性体付着物を除去する付着物除去手段を備えたことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記付着物除去手段は、紙葉類に接触可能に設けた当接部材からなることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
上方に搬送方向を向けた搬送路の上流部に付着物除去手段を配置し、搬送路の下流部に磁気センサを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
搬送路の上流部の下方の位置に付着物除去手段によって除去された付着物を受容する付着物収容部を設けたことを特徴とする請求項3に記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記付着物除去手段は、搬送路側に磁極面を向けて配置した磁石からなることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
磁性体を有した紙葉類を搬送する搬送路と、
前記搬送路に設けてあって、紙葉類の磁性体に磁界を印加する着磁手段、および着磁手段の磁界の印加によって紙葉類の磁性体が帯びる残留磁気を検出する磁気検出手段からなる磁気センサと
を有する紙葉類識別装置において、
周方向に沿って当接部材を有し、当該当接部材を搬送路内にて磁気センサの着磁部位に絶えず接触させる態様で回転可能に設けた回転体と、
搬送路に紙葉類を搬送させる搬送手段に対して前記回転体を同期して回転させる駆動伝達手段と
を備えたことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項7】
当接部材が搬送路の外部に逸脱する態様で前記回転体を配置して、当該搬送路の外部の位置で当接部材に接触する磁石を設けたことを特徴とする請求項6に記載の紙葉類識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−3677(P2008−3677A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169968(P2006−169968)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】