説明

紙葉類識別装置

【課題】搬送路の幅方向において搬送体の配置位置に合致する部位が欠損した紙葉類が詰まることを防止することができる紙葉類識別装置を提供する。
【解決手段】紙葉類識別装置は、紙葉類を搬送路の上流側から下流側に搬送する搬送手段と、搬送路に設定した検出位置において通過する紙葉類の検出を行う全長検出センサと、搬送路の幅方向位置が搬送体の配設位置に合致し、かつ検出位置よりも搬送路Rの上流側となる位置において通過する紙葉類の検出を行う挿入センサと、全長検出センサが紙葉類の前端を検出した時点から挿入センサが紙葉類の後端を検出する時点までの搬送体の駆動量に基づいて紙葉類の特定部分の長さを算出し、かつ全長検出センサが紙葉類の前端を検出した時点から後端を検出する時点までの搬送体の駆動量に基づいて紙葉類の全長を算出し、算出した特定部分の長さおよび全長から紙葉類の搬送を許容するか否か判断する制御手段35とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣等の紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙葉類識別装置の中には、紙幣等の紙葉類の識別を行うものがある。この紙葉類識別装置は、例えば図11および図12に示すように、筐体1の内部に形成してあり、挿入口2から一時収容部3に至る搬送路4と、搬送路4に設けた搬送ローラ(搬送体)5aの回転により紙葉類を搬送路4の上流側から下流側に搬送する搬送手段5と、搬送路4に設定した検出位置において通過する紙葉類の検出を行う検出センサ6と、検出センサ6が紙葉類の前端を検出した時点から後端を検出する時点までの搬送ローラ5aの回転量に基づいて紙葉類の全長を算出し、この算出した全長から当該紙葉類の搬送を許容するか否か判断する制御手段7とを備えている。
【0003】
上記搬送ローラ5aは、搬送路4の幅方向の両端に配置してある。検出センサ6は、発光手段6aと、発光手段6aから照射される光を受光する受光手段6bとで構成してあり、搬送路4の幅方向の中央に配置してある。
【0004】
この紙葉類識別装置では、挿入口2から搬送路4に紙葉類が挿入された場合、搬送手段5を駆動することで紙葉類を挿入口2の下流側に搬送し、かつ検出センサ6で紙葉類の通過を検出する。
【0005】
また、紙葉類の搬送および検出を行いながら、制御手段7は、図15に示すように、検出センサ6が紙葉類の前端を検出した時点から、後端を検出する時点までの搬送ローラ5aの回転量に基づいて紙葉類の全長を算出し、この算出した紙葉類の全長と、メモリに格納してある紙葉類の全長とを比較することで、両者が合致した場合には当該紙葉類の下流側への搬送を許容する一方、両者が相違した場合には、搬送手段5を逆駆動することで紙葉類の下流側への搬送を規制し、当該紙葉類を挿入口2に搬送していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記搬送路4の幅方向において、上記搬送ローラ5aの配置位置に合致した部位を欠損した紙幣Pが挿入口2に投入された場合、具体的には、図13に示すように、下流側の両側端部Paを折り曲げた紙幣Pが挿入口2に投入された場合、以下に記載するような問題が生じることとなる。
【0007】
すなわち、上記制御手段7は、検出センサ6の検出結果に基づき、上述したように挿入口2に挿入された紙幣Pの全長を算出し、この紙幣Pの全長と、メモリに格納してある紙葉類の全長とを比較するが、搬送路4の幅方向の中央に配置してある検出センサ6が上記紙幣Pの折り曲げた両側端部Paの影響を受けないため、挿入された紙幣の全長が、メモリに格納してある紙葉類の全長と合致すると判断して下流側への搬送を許容する。
【0008】
このような紙幣Pが搬送手段5によって下流側に搬送された場合、紙幣Pの両側端部Paが折り曲げられているため、図14に示すように、紙幣Pを一時収容部3に送り出す前に、最下流の搬送ローラ5bと、紙幣Pとの接触が断たれ、当該紙幣Pが搬送路4の途中で詰まってしまうこととなる。
【0009】
このように紙幣Pの特定部位を故意に折り曲げることで、搬送路4の途中で紙幣を詰まらせることを利用し、商品購入および釣銭回収後に異常が発生したとして店にクレームをつけ、挿入紙幣の返却を求める詐欺が発生した。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑み、搬送路の幅方向において搬送体の配置位置に合致する部位が欠損した紙葉類が詰まることを防止することができる紙葉類識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、搬送路に設けた搬送体を駆動させることにより紙葉類を前記搬送路の上流側から下流側に搬送する搬送手段と、前記搬送路に設定した検出位置において通過する紙葉類の検出を行う第1検出手段と、前記搬送路の幅方向位置が前記搬送体の配設位置に合致し、かつ前記検出位置よりも前記搬送路の上流側となる位置において通過する紙葉類の検出を行う第2検出手段と、前記第1検出手段が紙葉類の前端を検出した時点から前記第2検出手段が前記紙葉類の後端を検出する時点までの前記搬送体の駆動量に基づいて当該紙葉類の特定部分の長さを算出し、かつ前記第1検出手段が紙葉類の前端を検出した時点から後端を検出する時点までの前記搬送ローラの回転量に基づいて紙葉類の全長を算出し、これら算出した特定部分の長さおよび全長から当該紙葉類の搬送を許容するか否か判断する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る紙葉類識別装置は、上記請求項1において、前記搬送体は、搬送路に設けた搬送ローラであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る紙葉類識別装置は、上記請求項1において、前記搬送体は、搬送路に設けた搬送ベルトであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る紙葉類識別装置によれば、搬送路の幅方向位置が搬送体の配設位置に合致し、かつ検出位置よりも搬送路の上流側となる位置において通過する紙葉類の検出を行う第2検出手段と、第1検出手段が紙葉類の前端を検出した時点から第2検出手段が紙葉類の後端を検出する時点までの搬送体の駆動量に基づいて当該紙葉類の特定部分の長さを算出し、かつ第1検出手段が紙葉類の前端を検出した時点から後端を検出する時点までの搬送体の駆動量に基づいて紙葉類の全長を算出し、これら算出した特定部分の長さおよび全長から当該紙葉類の搬送を許容するか否か判断する制御手段とを備えるため、当該制御手段によって、搬送路の幅方向において搬送体の配置位置に合致する部位が欠損した紙葉類の搬送を規制することができる。よって、上述したような紙葉類が詰まることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本発明に係る紙葉類識別装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る紙葉類識別装置を概念的に示す説明図、図2は、その紙葉類識別装置において、搬送路の長さ方向における各構成要素の配置を概念的に示す説明図、図3は、その紙葉類識別装置のブロック図である。
【0017】
ここで例示する紙葉類識別装置は、例えば缶入り飲料、ビン入り飲料、又はペットボトル入り飲料等の商品を冷却、もしくは加熱した状態で販売する自動販売機に適用するものである。
【0018】
この紙葉類識別装置は、例えば紙幣等の紙葉類を識別するものであって、筐体10と、搬送手段15と、一対の挿入センサ(第2検出手段)20と、全長検出センサ(第1検出手段)25、一対の出口センサ30と、制御手段35と、送出機構40と、紙葉類収容部50とを備えている。
【0019】
筐体10は、例えば箱状に形成してある、この筐体10の表面には、挿入口11が形成してある一方、筐体10の内部には、紙葉類の一時収容を行う一時収容部12と、通路構成部材13とを設けてあり、挿入口11から一時収容部12に至る搬送路Rを形成してある。この搬送路Rは、例えば上流側端部から下流側端部に至るまで一様の幅で形成してある。
【0020】
搬送手段15は、不図示の駆動源と、駆動伝達機構と、一対の第1搬送ローラ(搬送体)16a,16bと、一対の第2搬送ローラ17a,17bとで構成してある。
【0021】
駆動源は、例えばモータであり、制御手段35から駆動指令が与えられた場合には、駆動することにより、出力軸に設けた駆動歯車を回転駆動するものである。また、駆動源は、制御手段35から停止指令が与えられた場合には、上記駆動歯車の回転駆動を停止するものである。
【0022】
駆動伝達機構は、例えば上記駆動歯車に歯合する従動歯車と、複数の歯車とで構成してあり、駆動歯車の回転駆動力を、搬送ローラ16a,16bに伝達し、搬送ローラ17a,17bに伝達するものである。
【0023】
各第1搬送ローラ16a,16bは、筐体10の内部に回転軸を中心に回転可能な態様で配設してあり、回転により接触する紙葉類を搬送路Rの上流側から下流側に搬送するものである。これら第1搬送ローラ16a,16bは、搬送路Rの長さ方向において、挿入センサ20の下流側であって、搬送路Rが屈曲する部位に配置してあり、搬送路Rの幅方向の両端にそれぞれ配置してある。
【0024】
一対の第1搬送ローラ16a,16bのうち、一方の第1搬送ローラ16aには、搬送量検出センサ18が設けてある。この搬送量検出センサ18は、一方の第1搬送ローラ16aが予め設定した角度だけ回転した場合、すなわち、第1搬送ローラ16aにおいて予め設定した回転量だけ回転した場合、上記制御手段35に出力する信号を反転するものである。制御手段35は、搬送量検出センサ18からの出力信号の反転回数をカウントすることで、搬送路Rの長さ方向における紙葉類の搬送量を算出する。換言すれば、制御手段35は、一方の第1搬送ローラ16aの回転量に基づいて、搬送路Rの長さ方向における紙葉類の搬送量を算出する。
【0025】
各第2搬送ローラ17a,17bは、筐体10の内部に回転軸を中心に回転可能な態様で配設してあり、回転により接触する紙葉類を搬送路Rの上流側から下流側に搬送するものである。これらの第2搬送ローラ17a,17bは、搬送路Rの長さ方向において、第1搬送ローラ16a,16bの下流側に配置してあり、搬送路Rの幅方向の両端にそれぞれ配置してある。
【0026】
各挿入センサ20は、通過する紙葉類の検出を行うものである。これら挿入センサ20は、搬送路Rの長さ方向において、挿入口11の下流側であって、挿入口11の近傍に配置してあり、後述する検出位置よりも上流側における上流側位置において、通過する紙葉類の検出を行うものである。また各挿入センサ20は、搬送路Rの幅方向において、最下流の第2搬送ローラ17a,17bに合致する位置、換言すれば、搬送路Rの幅方向の両端にそれぞれ配置してある。各挿入センサ20は、紙葉類の前端を検出した場合、制御手段35に検出信号を出力し、当該紙葉類の検出を継続している場合、検出信号の出力を継続し、当該紙葉類の後端が通過した場合、検出信号の出力を停止するものである。制御手段35は、挿入センサ20から検出信号の送信が開始された場合、挿入口11に紙葉類が挿入されたと判断し、上記駆動源に駆動指令を送信することで、第1搬送ローラ16a,16b、および第2搬送ローラ17a,17bに回転する。
【0027】
全長検出センサ25は、搬送路Rに設定した検出位置において、通過する紙葉類の検出を行うものであり、発光手段25aと、その発光手段25aに対向するよう配置した受光手段25bとで構成してある。この全長検出センサ25は、搬送路Rの長さ方向において、第1搬送ローラ16a,16bの下流側であって、第2搬送ローラ17a,17bの上流側に配置してある。換言すれば、全長検出センサ25は、第1搬送ローラ16a,16bと第2搬送ローラ17a,17bとの中間位置において、通過する紙葉類の検出を行うものである。また、全長検出センサ25は、搬送路Rの幅方向において、中央に配置してある。
【0028】
全長検出センサ25は、検出位置において、例えば搬送路Rを通過する紙葉類によって、発光手段25aから照射される光が遮断され、当該光を受光手段25bにより検出することができなくなっている状態においてのみ、制御手段35に検出信号を出力するものである。
【0029】
各出口センサ30は、通過する紙葉類の検出を行うものである、これら出口センサ30は、搬送路Rの長さ方向において、一時収容部12の上流側であって、一時収容部12の近傍に配置してある。この出口センサ30は、搬送路Rの長さ方向における下流側位置において、通過する紙葉類の検出を行うものである。また各出口センサ30は、搬送路Rの幅方向において、一対の第2搬送ローラ17a,17bの間に配置してある。各出口センサ30は、紙葉類の前端を検出した場合、制御手段35に検出信号を出力し、当該紙葉類の検出を継続している場合、検出信号の出力を継続し、当該紙葉類の後端が通過した場合、検出信号の出力を停止する。制御手段35は、出口センサ30から検出信号が送信された後、当該検出信号の出力が停止した場合、搬送手段15による紙葉類の搬送が不要になったと判断し、上記駆動源に停止指令を送信し、第1搬送ローラ16a,16b、および第2搬送ローラ17a,17bの回転を停止する。
【0030】
送出機構40および紙葉類収容部50は、一時収容部12を挟む態様で筐体10の内部に設けてある。送出機構40は、制御手段35から送出指令が与えられた場合、駆動することによって、一時収容部12で一時収容している紙葉類を、紙葉類収容部50に送り出すものである。紙葉類収容部50は、一時収容部12から送り出された紙葉類を収容する部位である。
【0031】
制御手段35は、紙葉類識別装置の各構成要素を統括的に制御するものである。この制御手段35は、メモリ36を備えている。このメモリ36には、各紙幣の全長、およびそれら紙幣における特定部分の長さがそれぞれ予め記憶させてある。具体的には、一万円券の全長である160mm、五千円券の全長である156mm、二千円券の全長である154mm、千円券の全長である150mm、および各紙幣に対応する特定部分の長さがそれぞれ予め記憶させてある。
【0032】
この制御手段35は、全長検出センサ25の出力信号と、挿入センサ20の出力信号と、搬送量検出センサ18の出力信号とから、図4に示す紙葉類において予め設定した特定部分の長さL1を算出する。具体的には、制御手段35は、全長検出センサ25から出力信号が送信され始めた時点から、挿入センサ20からの出力信号の送信が停止する時点までの搬送量検出センサ18の出力信号の反転回数をカウントすることにより、図4に示すように、紙葉類の特定部分の長さL1を算出するものである。
【0033】
また、この制御手段35は、全長検出センサ25の出力信号と、搬送量検出センサ18の出力信号とから、紙葉類の全長L2を算出する。具体的には、制御手段35は、全長検出センサ25から出力信号が送信され始めた時点から、当該出力信号の送信が停止する時点までの搬送量検出センサ18の出力信号の反転回数をカウントすることにより紙葉類の全長L2を算出するものである。
【0034】
さらに、この制御手段35は、算出した紙葉類の全長L2、および紙葉類の特定部分の長さL1から、当該紙葉類の搬送を許容するか否かの判断を行う。具体的には、制御手段35は、メモリ36から読み出した紙幣の全長と、算出した紙葉類の全長L2とが合致することを第1条件として判断する。また、制御手段35は、紙葉類の全長L2から、挿入口11に挿入された紙葉類がいずれの紙幣であるかを特定する。さらに、制御手段35は、紙幣を特定した後、当該紙幣に対応する特定部分の長さをメモリ36読み出し、読み出した紙幣の特定部分の長さと、算出した紙葉類の特定部分の長さL1とが合致することを第2条件として判断する。上記第1条件および第2条件を充足する場合、当該紙葉類の下流側への搬送を許容する。一方、第1条件または第2条件のいずれか一方を満たさない場合には、当該紙葉類の下流側への搬送を規制する。例えば、第1搬送ローラ16a,16bを逆回転し、かつ第2搬送ローラ17a,17bを逆回転することで、紙葉類を挿入口11に返却する。
【0035】
次に、上記紙葉類識別装置の動作を説明する。先ず、利用者によって、欠損がなく、かつ正規の紙幣Pが挿入口11に挿入された場合を説明する。
【0036】
挿入口11に挿入された上記紙幣Pの前端が、挿入センサ20によって検出され、当該挿入センサ20から検出信号の送信が開始された場合、制御手段35は、上記駆動源に駆動指令を送信し、第1搬送ローラ16a,16bを回転するとともに、第2搬送ローラ17a,17bを回転する。
【0037】
前端が第1搬送ローラ16a,16bに接触した紙幣Pは、第1搬送ローラ16a,16bの回転により搬送路Rの上流側から下流側に搬送される。その後、紙幣Pは、第1搬送ローラ16a,16bの回転により、図5に示すように、前端が検出位置となるまで搬送される。
【0038】
紙幣Pが検出位置まで搬送されると、制御手段35には、全長検出センサ25から検出信号が送信される。全長検出センサ25から検出信号が送信された場合、制御手段35は、上記紙幣Pの前端が検出位置に到達したと判断し、搬送量検出センサ18の出力信号の反転回数のカウントを開始する。その後、紙幣Pは、第1搬送ローラ16a,16bの回転、および第2搬送ローラ17a,17bの回転により、図6に示すように、後端が上流側位置となるまで搬送される。後端が上流側位置となるまで紙幣Pが搬送されると、挿入センサ20からの検出信号の送信が停止する。
【0039】
制御手段35は、挿入センサ20からの検出信号の出力が停止した場合、紙幣Pの後端が上流側出位置を通過したと判断する。そして、この判断に基づき、制御手段35は、全長検出センサ25が紙幣Pの前端を検出した時点から、挿入センサ20が紙幣Pの後端を検出する時点までの搬送量検出センサ18の出力信号の反転回数をカウントすることで、紙幣Pの特定部分の長さを算出する。その後、紙幣Pは、第1搬送ローラ16a,16bの回転、および第2搬送ローラ17a,17bの回転により、図7に示すように、後端が検出位置となるまで搬送される。後端が検出位置となるまで紙幣Pが搬送されると、全長検出センサ25からの検出信号の送信が停止する。
【0040】
制御手段35は、全長検出センサ25からの検出信号の送信が停止された場合、紙幣Pの後端が検出位置を通過したと判断する。そして、この判断に基づき、制御手段35は、全長検出センサ25が紙幣Pの前端を検出した時点から、全長検出センサ25が紙幣Pの後端を検出した時点までの搬送量検出センサ18の出力信号の反転回数をカウントすることで、紙幣Pの全長を算出する。
【0041】
このとき、制御手段35は、メモリ36に格納してある紙幣Pの全長を読み出し、メモリ36から読み出した紙幣Pの全長と、算出した紙幣Pの全長とが合致しているか否かの判断を行う。合致しているものがあれば、制御手段35は、紙幣Pの全長から紙幣Pを特定する。一方、合致しているものがなければ、挿入された紙幣Pは偽物であると判断して、搬送路Rの下流側への搬送を規制する。この例では、欠損がなく、かつ正規の紙幣Pを挿入口11に挿入したため、算出した紙幣Pの全長と、メモリ36から読み出した紙幣Pの全長とが合致し、当該紙幣Pは、制御手段35によって搬送路Rの下流側への搬送が許容される。
【0042】
また、紙幣Pを特定した後、制御手段35は、その特定した紙幣Pに対応する特定部分の長さをメモリ36から読み出し、読み出した紙幣Pの特定部分の長さと、算出した紙幣Pの特定部分の長さとが合致しているか否かの判断を行う。この例では、欠損がなく、かつ正規の紙幣Pを挿入口11に挿入したため、メモリ36から読み出した紙幣Pの特定部分の長さと、算出した紙幣Pの特定部分の長さとが合致し、当該紙幣Pは、制御手段35によって搬送路Rの下流側への搬送が許容される。
【0043】
その後、制御手段35は、出口センサ30によって紙幣Pの後端を検知した場合、搬送手段15による紙幣Pの搬送が不要になったと判断して、駆動源に停止指令を送信し、第1搬送ローラ16a,16bの回転を停止するとともに、第2搬送ローラ17a,17bの回転を停止する。このように、紙幣Pの搬送を停止した後、制御手段35は、送出機構40に送出指令を送信する。制御手段35から送出指令が与えられた送出機構40は、駆動することによって、一時収容部12で一時収容している紙幣Pを、紙葉類収容部50に送り出す。紙葉類収容部50は、一時収容部12から送り出された紙幣Pを収容する。
【0044】
ところで、このような紙葉類識別装置において、搬送路Rの幅方向位置が、最下流の第2搬送ローラ17a,17bの配設位置に合致する部分が欠損した紙幣Pが、当該欠損部分が後端となるよう挿入口11に挿入された場合を説明する。具体的には、四隅のうち、短手方向の隣接する2つの隅が折られた正規の紙幣Pが、当該折られた部位が後端となるよう挿入口11に挿入された場合を説明する。
【0045】
挿入口11に挿入された上記紙幣Pの前端が、挿入センサ20によって検出され、当該挿入センサ20から検出信号が入力された場合、制御手段35は、上記駆動源に駆動指令を送信し、第1搬送ローラ16a,16bに回転するとともに、第2搬送ローラ17a,17bを回転する。
【0046】
前端が第1搬送ローラ16a,16bに接触した紙幣Pは、第1搬送ローラ16a,16bの回転により搬送路Rの上流側から下流側に搬送される。その後、紙幣Pは、第1搬送ローラ16a,16bの回転により、図8に示すように、前端が検出位置となるまで搬送される。
【0047】
紙幣Pが検出位置まで搬送されると、制御手段35には、全長検出センサ25から検出信号が出力される。全長検出センサ25から検出信号が出力された場合、制御手段35は、上記紙幣Pの前端が検出位置に到達したと判断し、搬送量検出センサ18の出力信号の反転回数のカウントを開始する。その後、紙幣Pは、第1搬送ローラ16a,16bの回転、および第2搬送ローラ17a,17bの回転により、図9に示すように、後端が上流側位置となるまで搬送される。後端が上流側位置となるまで紙幣Pが搬送されると、挿入センサ20からの検出信号の送信が停止する。
【0048】
制御手段35は、挿入センサ20からの検出信号の出力が停止した場合、紙幣Pの後端が上流側位置を通過したと判断する。そして、この判断に基づき、制御手段35は、全長検出センサ25が紙幣Pの前端を検出した時点から、挿入センサ20が紙幣Pの後端を検出する時点までの搬送量検出センサ18の出力信号の反転回数をカウントすることで、紙幣Pの特定部分の長さを算出する。その後、紙幣Pは、第1搬送ローラ16a,16bの回転、および第2搬送ローラ17a,17bの回転により、図10に示すように、後端が検出位置となるまで搬送される。後端が検出位置となるまで紙幣Pが搬送されると、全長検出センサ25からの検出信号の送信が停止する。
【0049】
制御手段35は、全長検出センサ25からの検出信号の出力が停止された場合、紙幣Pの後端が検出位置を通過したと判断する。そして、この判断に基づき、制御手段35は、全長検出センサ25が紙幣Pの前端を検出した時点から、全長検出センサ25が紙幣Pの後端を検出した時点までの搬送量検出センサ18の出力信号の反転回数をカウントすることで、紙幣Pの全長を算出する。
【0050】
このとき、制御手段35は、メモリ36に格納してある紙幣Pの全長を読み出し、メモリ36から読み出した紙幣Pの全長と、算出した紙幣Pの全長とが合致しているか否かの判断を行う。
【0051】
この例では、四隅のうち、短手方向の隣接する2つの隅が折られた正規の紙幣Pが、当該折られた部位が後端となるよう挿入口11に挿入されているが、全長検出センサ25は、紙幣Pが折られたことによる影響を受けないため、算出した紙幣Pの全長と、メモリ36から読み出した紙幣Pの全長とが合致し、当該紙幣Pは、制御手段35によって搬送路Rの下流側への搬送が許容される。
【0052】
また、紙幣Pを特定した後、制御手段35は、その特定した紙幣Pに対応する特定部分の長さをメモリ36から読み出し、読み出した紙幣Pの特定部分の長さと、算出した紙幣Pの特定部分の長さとが合致しているか否かの判断を行う。この例では、四隅のうち、短手方向の隣接する2つの隅が折られた正規の紙幣Pが、当該折られた部位が後端となるよう挿入口11に挿入されているため、メモリ36から読み出した紙幣Pの特定部分の長さと、算出した紙幣Pの特定部分の長さとが合致せず、当該紙幣Pは、制御手段35によって搬送路Rの下流側への搬送が規制される。
【0053】
これは、図6および図9に示すように、四隅のうち、短手方向の隣接する2つの隅が折られた正規の紙幣Pが、当該折られた部位が後端となるよう挿入口11に挿入されているため、欠損がなく、かつ正規の紙幣Pが挿入口11に挿入された場合に比し、挿入センサ20による紙幣Pの後端を検出する位置が下流側にずれるためである。
【0054】
この紙葉類識別装置によれば、搬送路Rの幅方向位置が、最下流の第2搬送ローラ17a,17bの配設位置に合致する部分が欠損した紙幣Pが、当該欠損部分が後端となるよう挿入口11に挿入された場合でも、上記制御手段35によって、当該紙幣Pを搬送路Rの下流側へ搬送することを規制できるため、当該紙幣Pが搬送路Rの途中で詰まることを防止することができる。
【0055】
換言すれば、挿入された紙幣Pを搬送していく過程で、全長検出センサ25の検知結果に基づき制御手段35が算出した紙幣Pの全長と、全長センサ25による紙幣Pの前端を検出した時点から、挿入センサ20による紙幣Pの後端を検出した時点に基づき、制御手段35が算出した紙幣Pの特定部位の長さとから、外的要因を排除し、後端側両側部が折り曲げられた紙幣Pの検出精度を安価に向上することができ、詐欺による社会不安を防止することができる。
【0056】
なお、上述した実施の形態では、紙葉類に接触し、回転した場合には、当該接触する紙葉類を上流側から下流側に搬送する搬送ローラ16a,16bを搬送体として使用する紙葉類識別装置で説明した。しかし、この発明において、紙葉類に接触し、駆動源の駆動に応じて、接触する紙葉類を搬送する搬送体は、搬送ローラに限られない。例えば、搬送体としてベルトを使用することができる。より具体的には、紙葉類識別装置は、複数の搬送ローラと、複数の搬送ローラに掛け渡し、一部が搬送路に露出するよう筐体の内部に配設したベルト(搬送体)とを備え、駆動源を駆動した場合には搬送ローラの回転を介してベルトが移動し、当該ベルトの移動により、ベルトに接触する紙葉類を上流側から下流側に搬送するものでも良い。
【0057】
もちろん、この発明は、それに限られず、紙葉類に接触する搬送ローラ16a,16bと、駆動源と、駆動伝達機構とで搬送手段15を構成しても良いし、上述したように、駆動源と、紙葉類に接触するベルトと、当該ベルトを掛け渡す複数の搬送ローラと、搬送ローラに駆動源の回転駆動力を伝達する駆動伝達機構とで、搬送手段を構成しても良いし、上記搬送ローラ16a,16bおよびベルトをともに備える搬送手段を適用することもできる。
【0058】
また、上述した実施の形態では、複数の紙幣Pを識別できる紙葉類識別装置を用いて説明した。しかし、この発明はそれに限られず、一種類の紙葉類識別装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る紙葉類識別装置を概念的に示す説明図である。
【図2】図1に示した紙葉類識別装置において、搬送路の長さ方向における各構成の配置を概念的に示す説明図である。
【図3】図1に示した紙葉類識別装置のブロック図である。
【図4】図1に示した紙葉類識別装置が備える制御手段の判断を示す説明図である。
【図5】図1に示した紙葉類識別装置の挿入口に、欠損がなく、かつ正規の紙幣が挿入口に挿入された場合を示す説明図である。
【図6】図1に示した紙葉類識別装置の挿入口に、欠損がなく、かつ正規の紙幣が挿入口に挿入された場合を示す説明図である。
【図7】図1に示した紙葉類識別装置の挿入口に、欠損がなく、かつ正規の紙幣が挿入口に挿入された場合を示す説明図である。
【図8】図1に示した紙葉類識別装置の挿入口に、四隅のうち、短手方向の隣接する2つの隅が折られた正規の紙幣が、挿入口に挿入された場合を示す説明図である。
【図9】図1に示した紙葉類識別装置の挿入口に、四隅のうち、短手方向の隣接する2つの隅が折られた正規の紙幣が、挿入口に挿入された場合を示す説明図である。
【図10】図1に示した紙葉類識別装置の挿入口に、四隅のうち、短手方向の隣接する2つの隅が折られた正規の紙幣が、挿入口に挿入された場合を示す説明図である。
【図11】従来の紙葉類識別装置を概念的に示す説明図である。
【図12】図11に示した紙葉類識別装置において、搬送路の長さ方向における各構成の配置を概念的に示す説明図である。
【図13】図11に示した紙葉類識別装置の挿入口に、下流側の両側端部が折り曲げられた紙幣が挿入された場合を示す説明図である。
【図14】図11に示した紙葉類識別装置の挿入口に、下流側の両側端部が折り曲げられた紙幣が挿入された場合を示す説明図である。
【図15】図11に示した紙葉類識別装置が備える制御手段の判断を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
10 筐体
11 挿入口
12 一時収容部
13 通路構成部材
15 搬送手段
16a 第1搬送ローラ(搬送体)
16b 第1搬送ローラ(搬送体)
17a 第2搬送ローラ
17b 第2搬送ローラ
18 搬送量検出センサ
20 挿入センサ
25 全長検出センサ
25a 発光手段
25b 受光手段
30 出口センサ
35 制御手段
36 メモリ
40 送出機構
50 紙葉類収容部
P 紙幣
R 搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に設けた搬送体を駆動させることにより紙葉類を前記搬送路の上流側から下流側に搬送する搬送手段と、
前記搬送路に設定した検出位置において通過する紙葉類の検出を行う第1検出手段と、
前記搬送路の幅方向位置が前記搬送体の配設位置に合致し、かつ前記検出位置よりも前記搬送路の上流側となる位置において通過する紙葉類の検出を行う第2検出手段と、
前記第1検出手段が紙葉類の前端を検出した時点から前記第2検出手段が前記紙葉類の後端を検出する時点までの前記搬送体の駆動量に基づいて当該紙葉類の特定部分の長さを算出し、
かつ前記第1検出手段が紙葉類の前端を検出した時点から後端を検出する時点までの前記搬送体の駆動量に基づいて紙葉類の全長を算出し、これら算出した特定部分の長さおよび全長から当該紙葉類の搬送を許容するか否か判断する制御手段と
を備えることを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記搬送体は、搬送路に設けた搬送ローラであることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記搬送体は、搬送路に設けた搬送ベルトであることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−43014(P2009−43014A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207225(P2007−207225)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】