説明

紙製ハンガー

【課題】製造工程に手間がかからず、製造コストが抑えられ、しかも収納がしやすいハンガーを提供する。
【解決手段】本発明の紙製ハンガーは、吊り下げ具に係合するフック部13が長手方向の中央部から幅方向の一方側に突出して設けられる本体基材12と、本体基材12の長手方向の一端部から幅方向の他方側に突出して設けられ、商品の一端側を保持する第1保持部19と、本体基材12の長手方向の他端部から幅方向の他方側に突出して設けられ、商品の他端側を保持する第2保持部21と、本体基材12の長手方向の中央部から幅方向の他方側に突出して設けられ、第1保持部19および第2保持部21に掛け渡される商品の中央部の内側に挿入される係合片26とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性用下着等の商品を店頭に展示するときに用いられる商品展示用のハンガーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパー、百貨店等の店頭において種々の下着を吊り下げて展示販売するための下着用のハンガーは、例えばプラスチック等の薄板で形成されているのが一般的である。このような下着用のハンガーは、図4に示すように、硬質プラスチック製の薄板で、左右に張り出す肩部1と、その中央から上方へ突出するフック2とを一体に形成したものが一般的である。肩部1の両端部下縁には、それぞれ複数本の傾斜した突起3が適宜間隔をおいて突出され、肩部1の両端寄り上部には、上方に開口する出し入れ口4と、出し入れ口4から先端方向へ延びる第1のスリット5及び中央方向へ延びる第2のスリット6とが形成されている。そして、両端部の突起3にショーツ、ガードル等の下半身用下着のウェスト口を係止し、第1のスリット5にスリップやブラジャーのストラップを引っ掛けて、吊り下げるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図4に示すような従来のハンガーは硬質プラスチック製であることから、製造工程に手間がかかり、製造コストもかかるという問題点を有していた。また、ハンガー本体に厚みがあるため、ダンボール箱等に収納する際にはかさばるという問題点を有していた。
【0004】
上記問題点を解決すべく、本発明の目的は、製造工程に手間がかからず、製造コストが抑えられ、しかも収納がしやすいハンガーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の紙製ハンガーは、商品を展示用の吊り下げ具に吊り下げて展示する紙製ハンガーであって、前記吊り下げ具に係合するフック部が長手方向の中央部から幅方向の一方側に突出して設けられる本体基材と、前記本体基材の長手方向の一端部から幅方向の他方側に突出して設けられ、前記商品の一端側を保持する第1保持部と、前記本体基材の長手方向の他端部から幅方向の他方側に突出して設けられ、前記商品の他端側を保持する第2保持部と、前記本体基材の長手方向の中央部から幅方向の他方側に突出して設けられ、前記第1および第2保持部に掛け渡される前記商品の中央部の内側に挿入される係合片とを有することを特徴とする。
【0006】
本発明の紙製ハンガーは、前記本体基材の長手方向の両端部にそれぞれ切断用の切り込みが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハンガーは紙製であるため、製造が簡単であり製造コストが抑えられ、軽いために取り扱いがしやすく、ハンガーの収納がしやすい。また、第1および第2保持部に掛け渡される商品の中央部の内側に挿入される係合片を有しているため、装着された商品の弾力性によりハンガーが長手方向に撓むのを抑制することができる。
【0008】
また、本発明のハンガーは、本体基材の長手方向の両端部にそれぞれ切断用の切り込みが形成されているため、2つの切り込みを結ぶ直線に沿ってハンガーを上部分と下部分とに切断することができ、切断した後の上部分のみを上半身用下着のハンガーとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態であるハンガーの正面図であり、図2は図1の斜視図である。
【0010】
図1及び図2に示すハンガー11は矩形状の本体基材12と本体基材12の長手方向の中央部から幅方向の一方側に突出するフック部13とを有している。フック部13は上方に湾曲しており、商品展示用の吊り下げ具にフック部13を引っ掛けることにより、ハンガー11を吊り下げ具に吊り下げることができる。
【0011】
本体基材12におけるフック部13が突出する地点から長手方向右側に延びる辺はゆるやかな凸状に湾曲している。一方、本体基材12におけるフック部13が突出する地点から長手方向左側に延びる辺はゆるやかな凹状に湾曲している。
【0012】
本体基材12の長手方向の両端部には、それぞれ係止部14が形成されている。この係止部14は、本体基材12の長手方向に向けて突設し互いに対向する一対の係止片15a,15bと、係止片15a,15bの付け根部分を結び本体基材12の長手方向と平行に延びる係止溝16とにより構成されている。一対の係止片15a,15bのうち、本体基材12の中心部側、すなわち内側に位置する係止片15aの先端は斜め下方向外側を向いて突設しており、本体基材12の両端部側、すなわち外側に位置する係止片15bの先端は本体基材12の長手方向と平行な方向で内側に向けて突設している。係止片15a,15bはともに先端が丸みを帯びた形状となっており、装着する商品を傷つけないようになっている。また、外側に位置する係止片15bの下辺には滑り止め用の半円状の突起が一つ形成されている。以上のように構成される係止部14は主にブラジャーやスリップ等の上半身用下着のストラップを装着するために用いられ、係止部14の係止片15aの先端と係止片15bの先端同士の隙間はストラップが入る程度の広さに設定されている。図1及び図2に示すハンガー11には上述の係止部14を設けたが、係止部14は必ずしも設ける必要はなく、本発明の他の実施例では係止部14を省略することができる。
【0013】
本体基材12の長手方向両端部には挟持部17がそれぞれ形成されている。挟持部17は、本体基材12の長手方向両端部から中心方向すなわち横方向内側に向けて切り込まれた切込状溝18により構成されている。切込状溝18は横方向内側に切り込まれてから一段下方に下がりさらに横方向内側に切り込まれており、段差を有する形状を有している。切込状溝18の奥部は丸みを帯びた形状となっており、装着する商品を傷つけないようになっている。切込状溝18の上辺には滑り止め用の半円状の突起が一つ形成されている。挟持部17も主にブラジャーやスリップ等の上半身用下着のストラップを装着するために用いられ、切込状溝18の入り口の幅はストラップが入る程度の広さに設定されている。図1及び図2に示すハンガー11には挟持部17を設けたが、挟持部17は必ずしも設ける必要はなく、本発明の他の実施例では挟持部17を省略することができる。
【0014】
本体基材12の長手方向の一端部からは、フック部13が突出する向きと逆方向すなわち下方に向けて第1保持部19が突設して形成されている。本体基材12の長手方向の他端部からは、フック部13が突出する向きと逆方向すなわち下方に向けて第2保持部21が突設して形成されている。第1保持部19および第2保持部21はそれぞれ、下方外側に向けてそれぞれ突設する一対の突設片22a,22bと、一対の突設片22a,22bとの間に形成されたスリット23により構成されている。一対の突設片22a,22bは互いに平行な向きで延びているが、本体基材12の中心部側すなわち内側に位置する突設片22bの方が、本体基材12の長手方向端部側すなわち外側に位置する突設片22aよりも、長さが長く、幅も広い。突設片22a,22bの先端はともに丸みを帯びた形状となっており、装着する商品を傷つけないようになっている。スリット23の奥部も丸みを帯びており、装着する商品を傷つけないようになっている。突設片22a,22bのスリット23側の辺にはそれぞれ滑り止め用の半円状の突起が一つずつ形成されている。突設片22aに形成された突起と突設片22bに形成された突起とは互いに対向しないように位置をずらしてある。以上のような第1保持部19および第2保持部21はショーツ、ブリーフ等の下半身用下着のウェスト部を装着するために用いられ、第1保持部19および第2保持部21の突設片22aの先端と突設片22bの先端同士の隙間はウェスト部が入る程度の広さに設定されている。装着する下半身用下着のウェスト部の幅が、ハンガー11の長手方向の長さと同じ長さ、もしくはやや狭い場合には、ウェスト部を第1保持部19及び第2保持部21に掛け渡すとウェスト部の弾力性により商品はずり落ちることがない。
【0015】
本体基材12における、第1保持部19および第2保持部21が設けられている位置よりも中心部よりには、左右それぞれ4本ずつの挟持用バー24が互いに一定の間隔を隔てて下方内側に向けて突設している。4本の挟持用バー24は左右それぞれにすべて同じ形状をしており、互いに平行な向きで延びている。挟持用バー24の先端は丸みを帯びた形状となっており、装着する商品を傷つけないようになっている。また、左右4本ずつの挟持用バー24はお互いの間隙にスリット25を形成している。スリット25の奥部も丸みを帯びており、装着する商品を傷つけないようになっている。挟持用バー24のうち、本体基材12の中心部側を向いた辺にはそれぞれ滑り止め用の半円状の突起が二つずつ形成されている。挟持用バー24はショーツ等の下半身用下着のウェスト部を装着するために用いられ、隣り合う挟持用バー24の先端同士の隙間はウェスト部が入る程度の広さに設定されている。商品のウェスト部の幅がハンガー11の長さよりも広い場合は、第1保持部19及び第2保持部21に商品を掛け渡しただけでは商品をしっかりと保持することはできない。その場合は、第1保持部19及び第2保持部21に掛け渡した商品の両端部をそれぞれ4本ある挟持用バー24のうちの1本にそれぞれ引っ掛ける。こうすることで、商品をしっかり保持することができるのである。つまり挟持用バー24を設けたことにより様々なサイズの商品に適用できるのである。図1及び図2に示すハンガー11には挟持用バー24を設けたが、挟持用バー24は必ずしも設ける必要はなく、本発明の他の実施例では挟持用バー24を省略することができる。
【0016】
本体基材12の下縁における中央部には、本体基材12の長手方向の長さの約三分の一の幅をもつ係合片26が、フック部13が突出する方向とは逆向きすなわち下方に向けて突設している。係合片26は逆台形状に形成されており、その両側辺は挟持用バー24が突設する方向と平行となっている。係合片26の下辺の位置は挟持用バー24の先端部の位置と同じ位置である。そして、係合片26の両側辺と下辺とが交わる頂点は丸みを帯びた形状となっており、装着する商品を傷つけないようになっている。また、係合片26の両側辺と最も内側に位置する挟持用バー24はその間隙にスリットを形成しており、前記スリットの幅はスリット25の幅と同程度となっている。商品を装着する際には、第1保持部19および第2保持部21に掛け渡される商品の中央部の内側に係合片26を挿入する。すなわち、商品のウェスト部における手前側の布と奥行側の布とにより係合片26を挟み込む形になる。第1保持部19および第2保持部21に掛け渡された商品は、その弾力性により商品の中央方向に引張力を生じ、ハンガー11を長手方向に撓ませようとする。しかしながら商品の中央部の内側に係合片26が挿入されているため、係合片26はハンガー11を長手方向に撓ませようとする力を抑えることができ、ハンガー11は撓むことがない。
【0017】
本発明のハンガー11は、コットンパルプや精製パルプから作られた原料紙を任意の厚さに積層後、乾燥してできる緻密で強靭なシート素材であるバルカナイズドファイバー素材を用いて形成されている。製造する際には、上記バルカナイズドファイバー素材を厚紙によって挟み込んだ3層構造のシート材料を金型でハンガー形状に打ち抜く。その際には、2つの金型をハンガー11のフック部13同士が引っ掛かり合うように、すなわち点対称になるように配置して、打ち抜くことによって、1枚の長方形状のシート材料から2つのハンガー11を製造することができ、歩留まりが向上する。また、シート材料に任意の色を付けることにより、表裏面に社名、商品名、商品の機能、取扱説明その他が表示された様々な色彩のハンガー11を形成することができる。これによりハンガー11にラベル、ヘッター等を別に取り付ける必要がないので、手間がかからずコストを安くすることができる。また、現在製造されているプラスチックハンガーにはアパレルメーカーの社名が入っていないため、大半のプラスチックハンガーはリサイクルのためにアパレルメーカーに戻されていないのが現状である。しかしながら本発明のハンガー11には、表裏面にアパレルメーカーの社名を表示することができるため、リサイクルのためアパレルメーカーに戻すことができる。
【0018】
本体基材12の長手方向の両端部には、ハンガー11を上部分と下部分とに切断するための切り込み27が形成されている。ハンガー11をスリップ等の上半身用下着のみの装着のために使用したいときには、左右の切り込み27を結ぶ直線に沿ってハンガー11を切断し、切断された上部分のみを使用することができる。したがって、1つの金型で2種類のハンガーを製造することができる。図1に示されているように、切り込み27は一対の円弧により形成されているため、上下に切り離した後でも切断部分の面取りを行う必要がない。
【0019】
図3は本発明の本発明の一実施形態である紙製ハンガーに商品を装着した状態の斜視図である。図3に示すように、商品28のウェスト部分の両側部が第1保持部19と第2保持部21により掛け渡されている。図3には示されていないが、商品28のウェスト部分の両側端部は、第1保持部19および第2保持部21からハンガー11の裏側部分を通って、挟持用バー24の一つに引っ掛けられている。そして、図3に示すようにハンガーの表側に掛け回されている商品の中央部分の内側に係合片26が挿入されている。つまり係合片26が位置する部分では、商品の手前側の布と奥行側の布とで係合片26を挟み込んでいる。このため、ハンガー11に装着された商品28はずり落ちることはなく、しかもハンガー11自体が商品28の弾力性によって撓むこともない。
【0020】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、本発明の紙製ハンガーは、ダンボール、板紙などの紙単体で形成してもよいし、紙の強度を高めるためにそれらを積層して一体化したものや、合成樹脂の板状であってもよい。挟持用バー24の本数は左右4本ずつではなく、もっと多くしたり少なくしたりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態である紙製ハンガーの正面図である。
【図2】図1の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態である紙製ハンガーに商品を装着した状態の斜視図である。
【図4】従来のハンガーを示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 肩部
2 フック
3 突起
4 出し入れ口
5 第1のスリット
6 第2のスリット
11 ハンガー
12 本体基材
13 フック部
14 係止部
15a,15b 係止片
16 係止溝
17 挟持部
18 切込状溝
19 第1保持片
21 第2保持片
22a,22b 突設片
23 スリット
24 挟持用バー
25 スリット
26 係合片
27 切り込み
28 商品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を展示用の吊り下げ具に吊り下げて展示する紙製ハンガーであって、
前記吊り下げ具に係合するフック部が長手方向の中央部から幅方向の一方側に突出して設けられる本体基材と、
前記本体基材の長手方向の一端部から幅方向の他方側に突出して設けられ、前記商品の一端側を保持する第1保持部と、
前記本体基材の長手方向の他端部から幅方向の他方側に突出して設けられ、前記商品の他端側を保持する第2保持部と、
前記本体基材の長手方向の中央部から幅方向の他方側に突出して設けられ、前記第1および第2保持部に掛け渡される前記商品の中央部の内側に挿入される係合片とを有することを特徴とする紙製ハンガー。
【請求項2】
請求項1記載の紙製ハンガーにおいて、前記本体基材の長手方向の両端部にそれぞれ切断用の切り込みが形成されていることを特徴とする紙製ハンガー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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