紙製品
本発明は、第一のセルロース性の繊維と、填料又は塗工顔料としての石膏−繊維複合製造物とを有するスーパー仕上げ紙製品に関し、該石膏−繊維複合製造物においては石膏が繊維の表面に結晶として現れ、該石膏の結晶は硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と第二の繊維の水性懸濁液とを接触させることによって得られる。本発明は、スーパー仕上げ紙製の製造方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工顔料又は填料として石膏−繊維複合製造物を含むスーパー仕上げ紙製品に関する。本発明は、スーパー仕上げ紙製品の製造方法、及びスーパー仕上げ紙製品の製造において石膏−繊維複合製造物の塗工顔料又は填料としての使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工程は、セルロース系繊維を水及び無機填料(通常は、粘土又は炭酸カルシウム或いは石膏)と混合して供給原料を製造することから始まる。得られたスラリーをヘッドボックスによって抄紙用ワイヤ又はプレス用布又はワイヤ上に搬送し、製紙機械の形成セクションでセルロース系繊維の繊維ウェブを形成する。次に、排水セクションで排水を行い、形成されたウェブは一連の圧搾ロールを有する圧搾セクションに送られて、そこでさらに水が除去される。そして、ウェブは製紙機械の乾燥セクションに送られ、そこで、典型的には蒸気乾燥ドラムによって残っている水分を蒸発させる。乾燥後の操作としては、加圧下でロールの間を乾燥紙製品が通過するカレンダーがけがあり、それによって表面の平滑性と光沢とを向上させ、紙の厚みをより均一にする。カレンダーとしては、複数のロールが通常鋼鉄製のロールであって加熱されたロール(熱ロール)を含む機械式カレンダー装置、そして加熱された固いロールと柔らかいロールとを交互に使用するスーパーカレンダーなどの様々なものがある。
【0003】
スーパーカレンダーは、固いロールと柔らかいロールとを交互に積み重ねたものであり、その間を紙が通過して密度、平滑性及び光沢を高める。
【0004】
石膏、即ち硫酸カルシウム二水和物CaSO4・2H2Oは、特に製紙における塗工顔料及び填料の材料として適している。この石膏が高い白色度、光沢及び不透明度を有していると、特に優れた塗工顔料と填料とを得ることができる。粒子が十分に小さく、平たくて幅広(板状)であると、高い光沢が得られる。粒子が屈折性で、小さくて大きさが等しい(粒子径分散が小さい)と、不透明度が高くなる。
【0005】
石膏製品の粒子の形態は、走査型電子顕微鏡写真を調べることによって知ることができる。有用な顕微鏡写真は、例えば、フィリップスのFEI XL 30 FEG型の走査型電子顕微鏡で得られる。
【0006】
石膏製品の粒子の大きさは、そこに閉じ込められている粒子の重量平均粒子径D50として示される。より正確には、D50は球形であると推定される粒子の直径であって、全粒子重量の50%を成す粒子の直径よりも小さい。D50は、顕微鏡等の適切な装置で測定することができる。
【0007】
ある結晶が平たいということは、当該結晶が薄いということである。平たい結晶の形態は、形状比SRによって適切に表現される。SRは、結晶の厚さ(最短の横断長さ)に対する結晶の長さ(最長の長さ)の比である。石膏製品のSRは、個々の結晶の平均SRを意味している。
【0008】
結晶が板状であるということはそれが幅広であることを意味する。板状度はアスペクト比ARで表現されるのが適している。ARは、結晶長(最長の長さ)と結晶の幅(最も長い横断方向の長さ)との比である。石膏製品のARは、個々の結晶の平均ARを意味している。
【0009】
石膏製品のSRとARとの両方を、走査型電子顕微鏡写真を調べることによって評価することができる。好適な走査型電子顕微鏡は、先に記載したフィリップスのFEI XL 30 FEGである。
【0010】
結晶粒子径が等しいということは、結晶粒子径の分散幅が狭いということを意味する。分散幅は重量分散WPSDで示され、また、(D75−D25)/D50(但し、D75、D25及びD50は、粒子の全重量のそれぞれ75%、25%、50%を成す粒子よりも小さい、球形であると推定される粒子の直径である。分子分散の幅については、先に記載したセディグラフ5100のタイプの適切な粒子サイズ分析器を用いて得ることができる。
【0011】
石膏は天然鉱物として生じ、また、化学反応の副産物として、例えばリン酸石膏又は排ガス石膏として形成される。さらに石膏を結晶化することによって塗工顔料や填料へと石膏を精製するためには、最初に石膏を焼成して硫酸カルシウム半水和物(CaSO4・1/2H2O)にしなければならない。その後該半水和物を水に溶かして純粋な石膏を析出させることによって水和状態に戻すことができる。硫酸カルシウムは結晶水のない無水物の形態(CaSO4)で生成することもある。
【0012】
石膏原料の焼成条件によって、硫酸カルシウム半水和物はα−半水和物とβ−半水和物との2つの形態で生成する。β形態のものは石膏原料を大気圧下で加熱処理することによって得られ、α形態のものは石膏原料を、大気圧より高い蒸気圧下で処理することによって、又は塩若しくは酸溶液から例えば約45℃で化学的湿式焼成を行うことによって得ることができる。
【0013】
WO 88/05423は、硫酸カルシウム半水和物を当該半水和物と水とのスラリー中で水和させることによって石膏を製造する方法を開示している。スラリー中の乾物の量は20〜25重量%である。このようにして石膏が得られ、その最大長さは100〜450μmであり、二番目の長さは10〜40μmである。
【0014】
AU 620857(EP 0334282 A1)は、粉砕した硫酸カルシウム半水和物を33.33重量%以下の割合で含有するスラリーから石膏を製造し、平均粒子径が2〜200μm、アスペクト比が5〜50である針状の結晶を生産した。この文献の第15頁第5行〜第11行及び例を参照されたい。
【0015】
US 2004/0241082は、乾物含有量が5〜25重量%である硫酸カルシウム半水和物の水性スラリーから小さな針状の石膏の結晶(長さ5〜35μm、幅1〜5μm)を製造する方法を記載している。この米国文献における思想は、製紙工程中に結晶が溶解するのを防ぐために添加剤を加えることによって石膏の水への溶解度を低下させることである。
【0016】
DE 32 23 178 C1は一種又はそれ以上の鉱物物質で被覆された有機繊維を製造する方法を開示している。その方法の一態様は、セルロース繊維と石膏と水とを混合することを含む。得られた混合物は圧縮されて塑性塊状体となり、続いて、この塑性塊状態を乾燥して機械的に粉砕して細かな粒子にする。得られた製品は、例えばビチューメンの塊状体やパテに添加される添加剤又は充填材として使用される。
【0017】
WO 2008/092990は、0.1〜2.0μmの大きさの無傷の結晶からなる石膏製品を開示している。結晶は、形状比SRが少なくとも2.0、好ましくは2.0〜50、そしてアスペクト比が1.0〜10、好ましくは1.0以上5.0未満である。
【0018】
WO 2008/092911は、硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と水とを接触させて、硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と水とが相互に反応して結晶性石膏製品を形成する、石膏製品の製造方法を開示している。形成された反応混合物の乾物含有量は34〜84重量%である。
【0019】
WO 2007/003697は、溶解したセルロースから析出によって製造したセルロース粒子を光散乱材と接触させ、該光散乱材をセルロース粒子の表面に付着させることによって、セルロース粒子を被覆する方法を開示している。セルロース粒子の大きさは0.05〜10μmである。光散乱材は、シリカ、シリケート、PCC、石膏、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム又は酸化亜鉛を含む。被覆されたセルロース粒子は、紙又はボードの填料又は塗工顔料として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】WO 88/05423
【特許文献2】AU 620857(EP 0334282 A1)
【特許文献3】US 2004/0241082
【特許文献4】DE 32 23 178 C1
【特許文献5】WO 2008/092990
【特許文献6】WO 2008/092911
【特許文献7】WO 2007/003697
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、高白色度(brightness)、高白度(whiteness)、低黄色度、高光散乱度、高不透明度、低粗度、高光沢及び高密度などの向上した特性を有するスーパー仕上げ紙製を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によると、石膏が繊維の表面で結晶化して繊維にかなり強固に付着している石膏−繊維複合製造物は、スーパー仕上げ紙製品の製造において填料又は塗工顔料として使用することができることが見出されており、このようなスーパー仕上げ紙製品は、高白色度、高白度、低黄色度、高光散乱度、高不透明度、低粗度、高光沢及び高密度などの紙の特性に関して予期し得ないほど向上している。スーパー仕上げ紙製品の製造においては、填料の歩留まりを向上させ、填料の分散を均一化させることができる。また、充填材量を多くすることもできる。
【0023】
このように、本発明の第一の面によると、第一のセルロース性の繊維と、填料又は塗工顔料としての石膏−繊維複合製造物とを有するスーパー仕上げ紙製品が与えられ、該石膏−繊維複合製造物においては石膏が繊維の表面に結晶として現れ、該石膏の結晶は硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と第二の繊維の水性懸濁液とを接触させることによって得られる。
【0024】
石膏−繊維複合製造物は、2008年8月11日に提出された、フィンランド特許出願 FI 20085767号に記載されているものに類似する。
【0025】
石膏は繊維に付着し、結果として、石膏−繊維複合体は大多数の測定方法では単一のものとして示される。石膏の形状と大きさとは、顕微鏡画像によって大まかに評価することができる。繊維に付着した石膏の結晶は、WO 2008/092990及びWO 2008/092991に記載されている形状と大きさとを有していることもある。しかしながら、本発明によると、結晶化した石膏は針状であることもあり得る。
【0026】
繊維の表面に形成された石膏の結晶の大きさは、好ましくは、0.1〜5.0μmであり、より好ましくは0.1〜4.0μmであり、最も好ましくは0.2〜4.0μmである。しかしながら、出来上がったスーパー仕上げ紙製品においては、石膏の結晶の大きさが大きくなっている場合もある。
【0027】
好ましくは、第一のセルロース性の繊維としては、化学パルプ繊維、機械パルプ繊維、化学機械パルプ繊維又は脱インキパルプ繊維等の従来から用いられている製紙用パルプ繊維を使用することができる。化学パルプとしては、クラフトパルプ及び亜硫酸パルプを挙げることができる。機械パルプとしては、砕木パルプ(SGW)、リファイナ砕木パルプ(RMP)、圧力砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、そしてケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の化学的に処理された高収率パルプを挙げることができる。脱インキパルプは、オフィス古紙(MOW)、新聞印刷用紙(ONP)、雑誌(OMG)等を用いて作ることができる。また、異なるパルプの混合物も使用することができる。
【0028】
第一のセルロース性の繊維の平均長は、好ましくは0.5〜5 mm である。軟材から得られたセルロール性の繊維の平均長は、通常1〜5mmであり、好ましくは2〜4mmである。硬材から得られたセルロール性の繊維の平均長は、通常0.5〜3mmであり、好ましくは1〜2mmである。
【0029】
石膏−繊維複合製造物の第二の繊維は第二のセルロース性の繊維を含んでいると好ましく、該繊維としては、化学パルプ繊維、機械パルプ繊維、化学機械パルプ繊維若しくは脱インキパルプ繊維等、又はポリオレフィン、例えばポリプロペン等の合成繊維を使用することができる。化学パルプとしては、クラフトパルプ及び亜硫酸パルプを挙げることができる。機械パルプとしては、砕木パルプ(SGW)、リファイナ砕木パルプ(RMP)、圧力砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、そしてケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の化学的に処理された高収率パルプを挙げることができる。脱インキパルプは、オフィス古紙(MOW)、新聞印刷用紙(ONP)、雑誌(OMG)等を用いて作ることができる。また、異なるパルプの混合物も使用することができる。
【0030】
第二の繊維の平均長は、好ましくは0.5〜5 mm である。軟材から得られたセルロール性の繊維の平均長は、通常1〜5mmであり、好ましくは2〜4mmである。硬材から得られたセルロール性の繊維の平均長は、通常0.5〜3mmであり、好ましくは1〜2mmである。
【0031】
前記第一のセルロース性の繊維と第二のセルロース性の繊維とは類似していても相違していてもよいが、類似しているのが好ましい。
【0032】
好ましくは、石膏−繊維複合製造物における繊維に対する石膏の重量比は乾燥量基準で95:5〜50:50であり、より好ましくは75:25〜50:50である。
【0033】
本発明によるスーパー仕上げ紙製品は、以下の物質の一種又は二種以上をさらに含むことができる。天然若しくは合成のポリマーバインダ、蛍光発光剤、レオロジー調整剤及びサイズ剤。これらの物質、又はこれらの物質の内のあるものは、石膏−繊維複合製造物に導入することができる。サイズ剤は、ロジンサイズであってもよいし、アルキルケテンダイマー(AKD)又はアルケニル無水コハク酸(ASA)等の反応性サイズ剤であってもよい。
【0034】
スーパー仕上げ紙製品における石膏−繊維複合製造物の量は、乾燥量基準で、好ましくは10〜60重量%であり、より好ましくは20〜50重量%である。これに対応して、スーパー仕上げ紙製品における第一のセルロース性の繊維の量は、乾燥量基準で、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。
【0035】
塗工顔料として使用される場合、石膏−繊維複合製造物は、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.5〜1.0μmの大きさを有する石膏の結晶を含有する。充填材として使用される場合、石膏−繊維複合製造物は、好ましくは1.0〜5.0μm、より好ましくは1.0〜4.0μmの大きさの石膏の結晶を含有する。先に記載したように、出来上がったスーパー仕上げ紙製品における石膏の結晶の大きさが大きくなっている場合もある。
【0036】
結晶化に際して、水に対する硫酸カルシウム半水和物及び/又硫酸カルシウム無水物の比は好ましくは0.03〜0.6:1、より好ましくは0.05〜0.5:1である。
【0037】
結晶化段階において、乾燥状態での繊維量は、好ましくは3〜30重量%である。
【0038】
結晶化段階における硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物の量は、好ましくは10〜57重量%である。
【0039】
得られた石膏−繊維複合製造物をさらに均質化して均質化製造物を形成してもよいし、また、乾燥して細かく粉砕し、乾燥粒子状の石膏−繊維複合体を形成してもよい。
【0040】
石膏を繊維の上に結晶化させる前に、第二の繊維も細かく粉砕してもよい。しかしながら、石膏−繊維複合製造物を粉砕する方がより好ましい。
【0041】
石膏−繊維複合製造物はパルプ工場で製造することもできるし、又は製紙工場の現場で製造することもできる。後者の場合、石膏−繊維複合製造物は、好ましくは少なくとも15分の保持時間を必要とする。
【0042】
結晶を形成する段階で固定剤を導入することができる。
【0043】
固定剤は、ポリ塩化アルミニウム、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(ポリDADMAC)、アニオン性及びカチオン性ポリアクリレートよりなる群から選択することができる。
【0044】
晶析は、媒晶剤を使用することなく行うことができる。
【0045】
また、媒晶剤を使用しても晶析を行うことができる。
【0046】
該媒晶剤は、硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物を添加する前に、水又は繊維の水性懸濁液に添加することができる。
【0047】
反応混合物における水の温度は0〜100 ℃の間であれば何度でもよい。水の温度は好ましくは0〜80℃であり、より好ましくは0〜50℃であり、さらに好ましくは0〜40℃であり、最も好ましくは0〜25℃である。
【0048】
媒晶剤は無機酸、無機酸化物、無機塩基又は無機塩であってもよい。使用することのできる無機酸化物、無機塩基及び無機塩の例としては、AlF3、Al2(SO4)3、CaCl2、Ca(OH)2、H3BO4、NaCl、Na2SO4、NaOH、NH4OH、(NH4)2SO4、MgCl2、MgSO4及びMgOを挙げることができる。
【0049】
媒晶剤は、アルコール、酸又は塩などの有機化合物であってもよい。好適なアルコールとしては、メタノール、エタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-オクタノール、グリセロール、イソプロパノール及びアルキルポリグルコシドを基材としたC8〜C10脂肪アルコールを挙げることができる。
【0050】
媒晶剤は、その分子中に1又は複数のカルボキシル基若しくはスルホン酸基を有する化合物、又はそのような化合物の塩であると好ましい。有機酸の例として、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、イミノジコハク酸(ISA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、N-ビス-(2-(1,2-ジカルボキシエトキシ)エチルアスパラギン酸(AES)、並びにアミノ-1-ナフトール-3,6-ジスルホン酸、8-アミノ-1-ナフトール-3,6-ジスルホン酸、2-アミノフェノール-4-スルホン酸、アントラキノン-2,6-ジスルホン酸、2-メルカプトエタンスルホン酸、ポリ(スチレン−スルホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)及びジ−、テトラ−、ヘキサ−アミノスチルベンスルホン酸等のスルホン酸を挙げることができる。
【0051】
有機塩の例として、Mg蟻酸塩、Na-及びNH4-酢酸塩、Na2−マレイン酸塩、NH4−クエン酸塩、Na2-コハク酸塩、K-オレイン酸塩、K-ステアリン酸塩、Ma2−エチレンジアミンテトラ酢酸(Na2-EDTA)、Na6-アスパルタミック酸エトキシコハク酸塩(Na6-AES)及びNa6-アミノトリエトキシコハク酸塩(Na6-TCA)等のカルボン酸の塩を挙げることができる。
【0052】
また、Na-n-(C10〜C13)-アルキルベンゼンスルホン酸塩、C10〜C16-アルキルベンゼンスルホン酸塩、Na-1-オクチルスルホン酸塩、Na-1-ドデカンスルホン酸塩、K-脂肪酸スルホン酸塩、Na-C14〜C16-オレフィンスルホン酸塩、アニオン性又は非イオン性界面活性剤と共に使用されるNa-アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジK-オレイン酸スルホン酸塩、並びにジ−、テトラ−及びヘキサ−アミノスチルベンスルホン酸の塩等のスルホン酸の塩も用いることができる。イオウを含む有機塩の例として、C12〜C14脂肪アルコールエーテル硫酸塩、Na-2-エチルヘキシル硫酸塩、Na-n-ドデシル硫酸塩及びNa-ラウリル硫酸塩等の硫酸塩、並びにNa-スルホコハク酸、Na-ジオクチルスルホコハク酸、及びNa-ジアルキルスルホコハク酸のモノアルキルポリグリコールエーテル等のスルホコハク酸を挙げることができる。
【0053】
Na-ノニルフェニル−及びNa-ジノニルフェニルエトキシル化リン酸エステル、K-アリールエーテルリン酸塩、並びにポリアリールポリエーテルリン酸塩のトリエタノールアミン塩等のリン酸塩も使用することができる。
【0054】
媒晶剤として、オクチルアミン、トリエタノールアミン、ジ(水素化獣脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性界面活性剤、及び様々な変性脂肪アルコールエトキシ化物等の非イオン性界面活性剤も使用することができる。使用することのできる重合性酸、塩、アミド及びアルコールの例として、ポリアクリル酸及びポリアクリレート、アクリレート−マレエート共重合体、ポリアクリアミド、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリビニルリン酸、アクリル酸とアリルヒドロキシプロピルスルホン酸塩との共重合体(AA−AHPS)、ポリ-α-ヒドロキシアクリル酸(PHAS)、ポリビニルアルコール、及びポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)を挙げることができる。
【0055】
特に好ましい媒晶剤としては、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、イミノジコハク酸(ISA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、N-ビス-(2-(1,2-ジカルボキシエトキシ)エチルアスパラギン酸(AES)、ジ−、テトラ−及びヘキサ−アミノスチルベンスルホン酸、並びにNa-アミノトリエトキシコハク酸塩(Na6-TCA)等のこれらの化合物の塩、さらにアルキルベンゼンスルホン酸塩を挙げることができる。
【0056】
媒晶剤は、硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物の重量に基づいて、0.01〜5.0%、最も好ましくは0.02〜1.78%の量で用いることができる。
【0057】
結晶化においては、通常、β−硫酸カルシウム半水和物が使用される。これは、石膏原料を140〜300℃、好ましくは150〜200℃の温度に加熱することによって製造することができる。これよりも低い温度では石膏原料が十分に脱水されず、一方、これよりも高い温度では過剰に脱水されて無水物になってしまう。焼成した硫酸カルシウム半水和物は、通常、少量の硫酸カルシウム二水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物の形態の不純物を含んでいる。流動床フラッシュ焼成等のフラッシュ焼成によって得られたβ−硫酸カルシウム半水和物を使用するのが好ましく、それによって石膏原料は必要な温度まで可能な限り早く加熱される。しかしながら、結晶化においてα−硫酸カルシウム半水和物を使用することも可能である。
【0058】
反応開始材料として硫酸カルシウム無水物を使用することも可能である。硫酸カルシウム無水物は、石膏原料を焼成することによって得られる。無水物には3つの形態がある。第1の形態は所謂無水物Iであり、不溶性の無水物II-uやII-Eのように、水との反応によって石膏を形成することができない。所謂無水物IIIであり、可溶性無水物としても知られている他の態様のものは、3つの形態を有している。それらは、β−無水物III、β−無水物III'、及びα−無水物IIIである。これらと無水物II-sとは、水と接触すると純粋な石膏を形成する。
【0059】
硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と、繊維の水性懸濁液と、任意成分である媒晶剤とを接触させた後に、これらを反応させて硫酸カルシウム二水和物、即ち石膏にする。この反応は、前記物質を一緒に十分な時間、例えば、混合することによって、好ましくは強く混合することによって起こすことができる。混合の時間は実験によって容易に定めることができる。乾物の含有量が多いときは、スラリーが濃くて薬品が容易には相互に接触しないので、強い混合が必要になる。硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物、繊維の水性懸濁液、並びに任意に使用される媒晶剤は水に対して示された前記温度で混合されるのが好ましい。初期のpHは、通常、酸性領域にあり、好ましくは3〜7であり、より好ましくは3〜6である。必要であれば、NaOH及び/又はH2SO4の水溶液、典型的にはNaOH及び/又はH2SO4の10%水溶液によってpHを調整する。
【0060】
石膏は、前記半水和物や可溶性の前記無水物よりも水に対する溶解度が低いので、前記半水和物及び/又は無水物と水との反応によって形成される石膏は水媒体から直ちに第二の繊維上に結晶化する傾向がある。結晶化は、有用な石膏−繊維複合製造物が得られるように前記媒晶剤によって調整することができる。
【0061】
石膏−繊維複合製造物は他の添加剤によって処理することもできる。典型的な添加剤としては、製造物を貯蔵して使用するに際して微生物が活性化するのを防止する殺生物剤を挙げることができる。
【0062】
本発明の第二の面によると、前記スーパー仕上げ紙製品の製造方法が提供され、第一のセルロース性の繊維が水及び石膏−繊維複合製造物と混合された原料を作り、得られたスラリーを製紙機械の形成セクションに送り、次いで排水セクションで水を排水し、形成されたウェブを圧搾セクションに送ってそこでさらに水を除去し、前記ウェブを乾燥セクションに送って、そこで残っている水分を蒸発させ、最後に紙にスーパーカレンダーがけを行い、それによって紙の表面の平滑性と光沢とを向上させる。
【0063】
石膏−繊維複合製造物は水性製造物として、又は乾燥状態で導入することができ、任意で粒子の形態に粉砕してもよい。
【0064】
紙のスーパーカレンダーがけはオンラインカレンダー又はオフラインカレンダーで行うことができる。後者の場合、カレンダーは実際の製紙機械とは分かれている。スーパーカレンダーのロールは加熱されたサーモロールであってもよい。
【0065】
さらに、本発明は、石膏−繊維複合製造物であって、該石膏−繊維複合製造物においては石膏が繊維の表面に結晶として現れ、該石膏の結晶は硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と繊維の水性懸濁液とを接触させることによって得られる石膏−繊維複合製造物の、スーパー仕上げ紙製品の製造における填料又は塗工顔料としての使用にも係る。
【0066】
スーパー仕上げ紙製品における石膏−繊維複合製造物の量は、乾燥量基準で10〜60重量%であり、好ましくは20〜50重量%である。これに対応して、スーパー仕上げ紙製品における前記セルロース性の繊維の量は、乾燥量基準で、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1〜8は、例1〜8の硫酸カルシウム無水物の電子顕微鏡写真であり、図9〜17は、充填材が硫酸カルシウム二水和物−繊維複合製造物、沈降硫酸カルシウム(PCS)又はカオリン粘土であるスーパー仕上げ(SC)紙製品試料の様々な性質を示している。
【図1a】半水和物固形分量が18%(半水和物/(半水和物+水))である硫酸カルシウム二水和物/TMP複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図1b】図1aに示されている複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図2a】半水和物固形分量が42%(半水和物/(半水和物+水))である硫酸カルシウム二水和物/TMP複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図2b】図2aに示されている複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図3】半水和物固形分量が6.25%(半水和物/(半水和物+水))である硫酸カルシウム二水和物/ユーカリクラフトパルプ複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図4】半水和物固形分量が7.5%(半水和物/(半水和物+水))である硫酸カルシウム二水和物/ユーカリクラフトパルプ複合体の繊維のSEM顕微鏡写真である。
【図5a】ポリ塩化アルミニウムを固定剤として用いた硫酸カルシウム二水和物/マツクラフトパルプ複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図5b】図5aに示される複合体をハイドルフ(Heidolph)試験用ミキサを用いて350 rpmで数分撹拌した後の複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図6a】ポリDACMACを固定剤として用いた硫酸カルシウム二水和物/マツクラフトパルプ複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図6b】図6aに示される複合体をハイドルフ(Heidolph)試験用ミキサを用いて350 rpmで数分撹拌した後の複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図7】硫酸カルシウム二水和物/カバ材クラフトパルプ複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図8】硫酸カルシウム二水和物/プラスチックファイバ複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図9】SC紙試料のISO白色度を示している。
【図10】SC紙試料のCIE白度を示している。
【図11】SC紙試料の黄色度を示している。
【図12】SC紙試料の光散乱度を示している。
【図13】SC紙試料の不透明度を示している。
【図14】SC紙試料のPPS粗度を示している。
【図15】SC紙試料の光沢を示している。
【図16】SC紙試料の紙の嵩に対する光沢を示している。
【図17】SC紙試料の透気度(ベントセン(Bendtsen)空隙率)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0068】
(実施例)
以下において、以下において、例によって本発明をより詳細に説明する。例の目的は請求項の範囲を制限することではない。この明細書においては、パーセント表示は、そうでない旨の記載がない限り、重量%を意味する。
【0069】
第一に、合成と製造物の分析についての一般的な情報を記載する。次に、各例についてのデータを示す。
【0070】
<合成>
一般的な情報を最初に示す。紙用顔料を最適化する方法を行った。パラメータは次の通りであった。
HH(初期の半水和物、重量%) 5〜57
繊維濃度(重量%) 3〜30
添加剤濃度(DH(二水和物)の重量%) 0.100〜1
溶液自体のpHで反応が行われた。媒晶薬剤は、析出した硫酸カルシウム二水和物のパーセント(DHの重量%)として計算するものとする。
【0071】
次の機器を用いて実験を行った。
【0072】
反応器としてはホバート(Hobart)N50CE型のものを用いた。繊維の水性懸濁液相に半水和物と薬剤とを回分式で加え、初期の固形分が5〜57重量%である半水和物スラリーを得た。混合速度は250〜500 rpmである。反応は混合物自体のpHで行われた。
【0073】
<分析>
硫酸カルシウム二水和物の形態を、FEI XL 30 FEG走査型電子顕微鏡を用いて調べた。半水和物から二水和物への転換は、メトラー・トレド製のTGA/SDTA85 1/1100型熱重量分析機(TG)を用いて分析した。結晶構造は、フィリップスのエキスパートX線粉末ディフラクトメータ(XRD)によって測定した。
【0074】
(例1)
1.800 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.固形分含有量が36%であるTMP(サーモメカニカルパルプ)を200 g、前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は200 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が18重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0075】
得られた顔料−繊維複合体を図1aに示す。また、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図1bに示す。
【0076】
(例2)
1.430 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.固形分含有量が36%であるTMP(サーモメカニカルパルプ)を570 g、前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は570 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が42重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0077】
得られた顔料−繊維複合体を図2aに示す。また、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図2bに示す。
【0078】
(例3)
1.固形分含有量が17.7%であるユーカリクラフトパルプ456.5 gをホバートN50 CE型試験用ミキサーに入れた。
2.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は25 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が16.5重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
3.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0079】
得られた顔料−繊維複合体を、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図3に示す。
【0080】
(例4)
1.47 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.固形分含有量が17.7%であるユーカリクラフトパルプの295.5 gを前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は25 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が7.5重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0081】
得られた繊維製造物を図4に示す。
【0082】
(例5)
1.44.8 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。1.6 gのポリ塩化アルミニウムと数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.固形分含有量が7%であるマツクラフトパルプの640 gを前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は160 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が20重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0083】
得られた顔料−繊維複合体を、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図5に示す。
【0084】
(例6)
1.15.8 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。0.6 gのポリDACMACと数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.固形分含有量が7%であるマツクラフトパルプの226 gを前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は300 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が57重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0085】
得られた顔料−繊維複合体を、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図6に示す。
【0086】
(例7)
1.116 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.800 gのカバ材クラフトパルプ(固形分含有量が14.5%)を前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は200 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が20重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0087】
得られた顔料−繊維複合体を、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図7に示す。
【0088】
(例8)
1.600 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.10 gの合成ポリプロペン繊維を前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は300 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が34重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0089】
得られた顔料−繊維複合体を、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図8に示す。
【0090】
(例9)
繊維固形分含有量が8%であるサーモメカニカルパルプ(TMP)を用いて、例1に記載されているように顔料−充填剤複合体を製造した。か焼したβ−硫酸カルシウム半水和物を、半水和物/(半水和物+水)が20%になるように添加した。
【0091】
被覆していないスーパー仕上げ紙について、次のようにして適用試験を行った。
【0092】
ホーランダーのリファイナを用いて複合体試料を砕解した。枚葉紙形成においては、複合体を未処理の繊維成分と混合し、従来から使用されているカオリンとPCS(沈降硫酸カルシウム)との充填剤と比較した。使用された充填剤の量は30%(複合体に対しては、充填剤の量は石膏の量を意味する)であり、目標秤量は60±2g/m2であった。充填材の含有量は、複合体と未処理の繊維との割合を変更することによって調節した。2+2個のニップロールを用いて100、175及び250 kN/mの線荷重で試料にカレンダーがけをした。ロール温度は80℃、湿度は85%、カレンダー速度は30m/分であった。
【0093】
紙試料のISO白色度(brightness)はR457で測定した。結果を図9に示す。この結果は、PCSと本発明の複合体の、紙の白色度に関する効果は類似しているが、カオリン粘土の場合はPCS及び複合体よりも白色度が約4%単位低かったことを示している。
【0094】
紙試料のCIE白度(whiteness)を測定した。結果を図10に示す。この結果は、充填材−繊維複合体は、PCS及びカオリン粘土よりも、紙の白度をはるかに高くしたことを示している。
【0095】
紙試料の黄色度(CIE黄色座標b*(C/2°))を測定した。結果を図11に示す。この結果は、充填材−繊維複合体は、PCS及びカオリン粘土よりも、紙の黄色度をはるかに低くしたことを示している。
【0096】
紙試料の光散乱度を測定した。結果を図12に示す。この結果は、PCS及びカオリン粘土に比べて、充填材−繊維複合体は光散乱度を約5〜10単位改善させたことを示している。
【0097】
紙試料の不透明度を測定した。結果を図13に示す。この結果より、光散乱度が改善されると不透明度にも良い影響を与えると結論づけることができる。線荷重が低いときには、充填材−繊維複合体はカオリンよりも約1単位高い不透明度を与え、PCSよりも約2単位高い不透明度を与えた。この不透明度の差は線荷重が高くなると大きくなり、複合体の不透明度はカオリンよりも2単位、PCSよりも3単位高くなった。
【0098】
紙試料のPPS粗度を測定した。結果を図14に示す。この結果は、カオリンと充填材−繊維複合体とは紙試料に類似の粗度を与え、PCSは0.1μm高い粗度を与えたことを示している。充填材−繊維複合体は紙の上方面(TS)とワイヤ側面(MS)との粗度の差も小さくした。
【0099】
紙試料の光沢75°を測定した。結果を図15に示す。この結果は、充填材−繊維複合体がPCSよりも約4単位高い、また、カオリンよりも1単位高い、カレンダー加工に由来する光沢を紙に与えたことを示している。
【0100】
図16においては、紙の嵩に対するカレンダー加工に由来する光沢について示している。この結果より、光沢の値が同じであれば、充填材−繊維複合体で処理した紙の方がカオリンで処理した紙よりも約0.1単位嵩高いということが理解される。
【0101】
紙試料の空隙率をベントセン(Bendtsen)法で測定した。この方法では、所定の複数の圧力において紙のシートを空気が通過する速度を測定する。空隙率が高いことは、紙が空気を比較的容易に通すことを意味する。結果を図17に示す。この結果から、充填材−繊維複合体で処理した紙は、PCSで処理した紙よりも空隙率が低い、即ち密度が高いことがわかる。カオリンで処理した紙試料が最も高い密度を有している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工顔料又は填料として石膏−繊維複合製造物を含むスーパー仕上げ紙製品に関する。本発明は、スーパー仕上げ紙製品の製造方法、及びスーパー仕上げ紙製品の製造において石膏−繊維複合製造物の塗工顔料又は填料としての使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工程は、セルロース系繊維を水及び無機填料(通常は、粘土又は炭酸カルシウム或いは石膏)と混合して供給原料を製造することから始まる。得られたスラリーをヘッドボックスによって抄紙用ワイヤ又はプレス用布又はワイヤ上に搬送し、製紙機械の形成セクションでセルロース系繊維の繊維ウェブを形成する。次に、排水セクションで排水を行い、形成されたウェブは一連の圧搾ロールを有する圧搾セクションに送られて、そこでさらに水が除去される。そして、ウェブは製紙機械の乾燥セクションに送られ、そこで、典型的には蒸気乾燥ドラムによって残っている水分を蒸発させる。乾燥後の操作としては、加圧下でロールの間を乾燥紙製品が通過するカレンダーがけがあり、それによって表面の平滑性と光沢とを向上させ、紙の厚みをより均一にする。カレンダーとしては、複数のロールが通常鋼鉄製のロールであって加熱されたロール(熱ロール)を含む機械式カレンダー装置、そして加熱された固いロールと柔らかいロールとを交互に使用するスーパーカレンダーなどの様々なものがある。
【0003】
スーパーカレンダーは、固いロールと柔らかいロールとを交互に積み重ねたものであり、その間を紙が通過して密度、平滑性及び光沢を高める。
【0004】
石膏、即ち硫酸カルシウム二水和物CaSO4・2H2Oは、特に製紙における塗工顔料及び填料の材料として適している。この石膏が高い白色度、光沢及び不透明度を有していると、特に優れた塗工顔料と填料とを得ることができる。粒子が十分に小さく、平たくて幅広(板状)であると、高い光沢が得られる。粒子が屈折性で、小さくて大きさが等しい(粒子径分散が小さい)と、不透明度が高くなる。
【0005】
石膏製品の粒子の形態は、走査型電子顕微鏡写真を調べることによって知ることができる。有用な顕微鏡写真は、例えば、フィリップスのFEI XL 30 FEG型の走査型電子顕微鏡で得られる。
【0006】
石膏製品の粒子の大きさは、そこに閉じ込められている粒子の重量平均粒子径D50として示される。より正確には、D50は球形であると推定される粒子の直径であって、全粒子重量の50%を成す粒子の直径よりも小さい。D50は、顕微鏡等の適切な装置で測定することができる。
【0007】
ある結晶が平たいということは、当該結晶が薄いということである。平たい結晶の形態は、形状比SRによって適切に表現される。SRは、結晶の厚さ(最短の横断長さ)に対する結晶の長さ(最長の長さ)の比である。石膏製品のSRは、個々の結晶の平均SRを意味している。
【0008】
結晶が板状であるということはそれが幅広であることを意味する。板状度はアスペクト比ARで表現されるのが適している。ARは、結晶長(最長の長さ)と結晶の幅(最も長い横断方向の長さ)との比である。石膏製品のARは、個々の結晶の平均ARを意味している。
【0009】
石膏製品のSRとARとの両方を、走査型電子顕微鏡写真を調べることによって評価することができる。好適な走査型電子顕微鏡は、先に記載したフィリップスのFEI XL 30 FEGである。
【0010】
結晶粒子径が等しいということは、結晶粒子径の分散幅が狭いということを意味する。分散幅は重量分散WPSDで示され、また、(D75−D25)/D50(但し、D75、D25及びD50は、粒子の全重量のそれぞれ75%、25%、50%を成す粒子よりも小さい、球形であると推定される粒子の直径である。分子分散の幅については、先に記載したセディグラフ5100のタイプの適切な粒子サイズ分析器を用いて得ることができる。
【0011】
石膏は天然鉱物として生じ、また、化学反応の副産物として、例えばリン酸石膏又は排ガス石膏として形成される。さらに石膏を結晶化することによって塗工顔料や填料へと石膏を精製するためには、最初に石膏を焼成して硫酸カルシウム半水和物(CaSO4・1/2H2O)にしなければならない。その後該半水和物を水に溶かして純粋な石膏を析出させることによって水和状態に戻すことができる。硫酸カルシウムは結晶水のない無水物の形態(CaSO4)で生成することもある。
【0012】
石膏原料の焼成条件によって、硫酸カルシウム半水和物はα−半水和物とβ−半水和物との2つの形態で生成する。β形態のものは石膏原料を大気圧下で加熱処理することによって得られ、α形態のものは石膏原料を、大気圧より高い蒸気圧下で処理することによって、又は塩若しくは酸溶液から例えば約45℃で化学的湿式焼成を行うことによって得ることができる。
【0013】
WO 88/05423は、硫酸カルシウム半水和物を当該半水和物と水とのスラリー中で水和させることによって石膏を製造する方法を開示している。スラリー中の乾物の量は20〜25重量%である。このようにして石膏が得られ、その最大長さは100〜450μmであり、二番目の長さは10〜40μmである。
【0014】
AU 620857(EP 0334282 A1)は、粉砕した硫酸カルシウム半水和物を33.33重量%以下の割合で含有するスラリーから石膏を製造し、平均粒子径が2〜200μm、アスペクト比が5〜50である針状の結晶を生産した。この文献の第15頁第5行〜第11行及び例を参照されたい。
【0015】
US 2004/0241082は、乾物含有量が5〜25重量%である硫酸カルシウム半水和物の水性スラリーから小さな針状の石膏の結晶(長さ5〜35μm、幅1〜5μm)を製造する方法を記載している。この米国文献における思想は、製紙工程中に結晶が溶解するのを防ぐために添加剤を加えることによって石膏の水への溶解度を低下させることである。
【0016】
DE 32 23 178 C1は一種又はそれ以上の鉱物物質で被覆された有機繊維を製造する方法を開示している。その方法の一態様は、セルロース繊維と石膏と水とを混合することを含む。得られた混合物は圧縮されて塑性塊状体となり、続いて、この塑性塊状態を乾燥して機械的に粉砕して細かな粒子にする。得られた製品は、例えばビチューメンの塊状体やパテに添加される添加剤又は充填材として使用される。
【0017】
WO 2008/092990は、0.1〜2.0μmの大きさの無傷の結晶からなる石膏製品を開示している。結晶は、形状比SRが少なくとも2.0、好ましくは2.0〜50、そしてアスペクト比が1.0〜10、好ましくは1.0以上5.0未満である。
【0018】
WO 2008/092911は、硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と水とを接触させて、硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と水とが相互に反応して結晶性石膏製品を形成する、石膏製品の製造方法を開示している。形成された反応混合物の乾物含有量は34〜84重量%である。
【0019】
WO 2007/003697は、溶解したセルロースから析出によって製造したセルロース粒子を光散乱材と接触させ、該光散乱材をセルロース粒子の表面に付着させることによって、セルロース粒子を被覆する方法を開示している。セルロース粒子の大きさは0.05〜10μmである。光散乱材は、シリカ、シリケート、PCC、石膏、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム又は酸化亜鉛を含む。被覆されたセルロース粒子は、紙又はボードの填料又は塗工顔料として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】WO 88/05423
【特許文献2】AU 620857(EP 0334282 A1)
【特許文献3】US 2004/0241082
【特許文献4】DE 32 23 178 C1
【特許文献5】WO 2008/092990
【特許文献6】WO 2008/092911
【特許文献7】WO 2007/003697
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、高白色度(brightness)、高白度(whiteness)、低黄色度、高光散乱度、高不透明度、低粗度、高光沢及び高密度などの向上した特性を有するスーパー仕上げ紙製を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によると、石膏が繊維の表面で結晶化して繊維にかなり強固に付着している石膏−繊維複合製造物は、スーパー仕上げ紙製品の製造において填料又は塗工顔料として使用することができることが見出されており、このようなスーパー仕上げ紙製品は、高白色度、高白度、低黄色度、高光散乱度、高不透明度、低粗度、高光沢及び高密度などの紙の特性に関して予期し得ないほど向上している。スーパー仕上げ紙製品の製造においては、填料の歩留まりを向上させ、填料の分散を均一化させることができる。また、充填材量を多くすることもできる。
【0023】
このように、本発明の第一の面によると、第一のセルロース性の繊維と、填料又は塗工顔料としての石膏−繊維複合製造物とを有するスーパー仕上げ紙製品が与えられ、該石膏−繊維複合製造物においては石膏が繊維の表面に結晶として現れ、該石膏の結晶は硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と第二の繊維の水性懸濁液とを接触させることによって得られる。
【0024】
石膏−繊維複合製造物は、2008年8月11日に提出された、フィンランド特許出願 FI 20085767号に記載されているものに類似する。
【0025】
石膏は繊維に付着し、結果として、石膏−繊維複合体は大多数の測定方法では単一のものとして示される。石膏の形状と大きさとは、顕微鏡画像によって大まかに評価することができる。繊維に付着した石膏の結晶は、WO 2008/092990及びWO 2008/092991に記載されている形状と大きさとを有していることもある。しかしながら、本発明によると、結晶化した石膏は針状であることもあり得る。
【0026】
繊維の表面に形成された石膏の結晶の大きさは、好ましくは、0.1〜5.0μmであり、より好ましくは0.1〜4.0μmであり、最も好ましくは0.2〜4.0μmである。しかしながら、出来上がったスーパー仕上げ紙製品においては、石膏の結晶の大きさが大きくなっている場合もある。
【0027】
好ましくは、第一のセルロース性の繊維としては、化学パルプ繊維、機械パルプ繊維、化学機械パルプ繊維又は脱インキパルプ繊維等の従来から用いられている製紙用パルプ繊維を使用することができる。化学パルプとしては、クラフトパルプ及び亜硫酸パルプを挙げることができる。機械パルプとしては、砕木パルプ(SGW)、リファイナ砕木パルプ(RMP)、圧力砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、そしてケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の化学的に処理された高収率パルプを挙げることができる。脱インキパルプは、オフィス古紙(MOW)、新聞印刷用紙(ONP)、雑誌(OMG)等を用いて作ることができる。また、異なるパルプの混合物も使用することができる。
【0028】
第一のセルロース性の繊維の平均長は、好ましくは0.5〜5 mm である。軟材から得られたセルロール性の繊維の平均長は、通常1〜5mmであり、好ましくは2〜4mmである。硬材から得られたセルロール性の繊維の平均長は、通常0.5〜3mmであり、好ましくは1〜2mmである。
【0029】
石膏−繊維複合製造物の第二の繊維は第二のセルロース性の繊維を含んでいると好ましく、該繊維としては、化学パルプ繊維、機械パルプ繊維、化学機械パルプ繊維若しくは脱インキパルプ繊維等、又はポリオレフィン、例えばポリプロペン等の合成繊維を使用することができる。化学パルプとしては、クラフトパルプ及び亜硫酸パルプを挙げることができる。機械パルプとしては、砕木パルプ(SGW)、リファイナ砕木パルプ(RMP)、圧力砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、そしてケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の化学的に処理された高収率パルプを挙げることができる。脱インキパルプは、オフィス古紙(MOW)、新聞印刷用紙(ONP)、雑誌(OMG)等を用いて作ることができる。また、異なるパルプの混合物も使用することができる。
【0030】
第二の繊維の平均長は、好ましくは0.5〜5 mm である。軟材から得られたセルロール性の繊維の平均長は、通常1〜5mmであり、好ましくは2〜4mmである。硬材から得られたセルロール性の繊維の平均長は、通常0.5〜3mmであり、好ましくは1〜2mmである。
【0031】
前記第一のセルロース性の繊維と第二のセルロース性の繊維とは類似していても相違していてもよいが、類似しているのが好ましい。
【0032】
好ましくは、石膏−繊維複合製造物における繊維に対する石膏の重量比は乾燥量基準で95:5〜50:50であり、より好ましくは75:25〜50:50である。
【0033】
本発明によるスーパー仕上げ紙製品は、以下の物質の一種又は二種以上をさらに含むことができる。天然若しくは合成のポリマーバインダ、蛍光発光剤、レオロジー調整剤及びサイズ剤。これらの物質、又はこれらの物質の内のあるものは、石膏−繊維複合製造物に導入することができる。サイズ剤は、ロジンサイズであってもよいし、アルキルケテンダイマー(AKD)又はアルケニル無水コハク酸(ASA)等の反応性サイズ剤であってもよい。
【0034】
スーパー仕上げ紙製品における石膏−繊維複合製造物の量は、乾燥量基準で、好ましくは10〜60重量%であり、より好ましくは20〜50重量%である。これに対応して、スーパー仕上げ紙製品における第一のセルロース性の繊維の量は、乾燥量基準で、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。
【0035】
塗工顔料として使用される場合、石膏−繊維複合製造物は、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.5〜1.0μmの大きさを有する石膏の結晶を含有する。充填材として使用される場合、石膏−繊維複合製造物は、好ましくは1.0〜5.0μm、より好ましくは1.0〜4.0μmの大きさの石膏の結晶を含有する。先に記載したように、出来上がったスーパー仕上げ紙製品における石膏の結晶の大きさが大きくなっている場合もある。
【0036】
結晶化に際して、水に対する硫酸カルシウム半水和物及び/又硫酸カルシウム無水物の比は好ましくは0.03〜0.6:1、より好ましくは0.05〜0.5:1である。
【0037】
結晶化段階において、乾燥状態での繊維量は、好ましくは3〜30重量%である。
【0038】
結晶化段階における硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物の量は、好ましくは10〜57重量%である。
【0039】
得られた石膏−繊維複合製造物をさらに均質化して均質化製造物を形成してもよいし、また、乾燥して細かく粉砕し、乾燥粒子状の石膏−繊維複合体を形成してもよい。
【0040】
石膏を繊維の上に結晶化させる前に、第二の繊維も細かく粉砕してもよい。しかしながら、石膏−繊維複合製造物を粉砕する方がより好ましい。
【0041】
石膏−繊維複合製造物はパルプ工場で製造することもできるし、又は製紙工場の現場で製造することもできる。後者の場合、石膏−繊維複合製造物は、好ましくは少なくとも15分の保持時間を必要とする。
【0042】
結晶を形成する段階で固定剤を導入することができる。
【0043】
固定剤は、ポリ塩化アルミニウム、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(ポリDADMAC)、アニオン性及びカチオン性ポリアクリレートよりなる群から選択することができる。
【0044】
晶析は、媒晶剤を使用することなく行うことができる。
【0045】
また、媒晶剤を使用しても晶析を行うことができる。
【0046】
該媒晶剤は、硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物を添加する前に、水又は繊維の水性懸濁液に添加することができる。
【0047】
反応混合物における水の温度は0〜100 ℃の間であれば何度でもよい。水の温度は好ましくは0〜80℃であり、より好ましくは0〜50℃であり、さらに好ましくは0〜40℃であり、最も好ましくは0〜25℃である。
【0048】
媒晶剤は無機酸、無機酸化物、無機塩基又は無機塩であってもよい。使用することのできる無機酸化物、無機塩基及び無機塩の例としては、AlF3、Al2(SO4)3、CaCl2、Ca(OH)2、H3BO4、NaCl、Na2SO4、NaOH、NH4OH、(NH4)2SO4、MgCl2、MgSO4及びMgOを挙げることができる。
【0049】
媒晶剤は、アルコール、酸又は塩などの有機化合物であってもよい。好適なアルコールとしては、メタノール、エタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-オクタノール、グリセロール、イソプロパノール及びアルキルポリグルコシドを基材としたC8〜C10脂肪アルコールを挙げることができる。
【0050】
媒晶剤は、その分子中に1又は複数のカルボキシル基若しくはスルホン酸基を有する化合物、又はそのような化合物の塩であると好ましい。有機酸の例として、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、イミノジコハク酸(ISA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、N-ビス-(2-(1,2-ジカルボキシエトキシ)エチルアスパラギン酸(AES)、並びにアミノ-1-ナフトール-3,6-ジスルホン酸、8-アミノ-1-ナフトール-3,6-ジスルホン酸、2-アミノフェノール-4-スルホン酸、アントラキノン-2,6-ジスルホン酸、2-メルカプトエタンスルホン酸、ポリ(スチレン−スルホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)及びジ−、テトラ−、ヘキサ−アミノスチルベンスルホン酸等のスルホン酸を挙げることができる。
【0051】
有機塩の例として、Mg蟻酸塩、Na-及びNH4-酢酸塩、Na2−マレイン酸塩、NH4−クエン酸塩、Na2-コハク酸塩、K-オレイン酸塩、K-ステアリン酸塩、Ma2−エチレンジアミンテトラ酢酸(Na2-EDTA)、Na6-アスパルタミック酸エトキシコハク酸塩(Na6-AES)及びNa6-アミノトリエトキシコハク酸塩(Na6-TCA)等のカルボン酸の塩を挙げることができる。
【0052】
また、Na-n-(C10〜C13)-アルキルベンゼンスルホン酸塩、C10〜C16-アルキルベンゼンスルホン酸塩、Na-1-オクチルスルホン酸塩、Na-1-ドデカンスルホン酸塩、K-脂肪酸スルホン酸塩、Na-C14〜C16-オレフィンスルホン酸塩、アニオン性又は非イオン性界面活性剤と共に使用されるNa-アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジK-オレイン酸スルホン酸塩、並びにジ−、テトラ−及びヘキサ−アミノスチルベンスルホン酸の塩等のスルホン酸の塩も用いることができる。イオウを含む有機塩の例として、C12〜C14脂肪アルコールエーテル硫酸塩、Na-2-エチルヘキシル硫酸塩、Na-n-ドデシル硫酸塩及びNa-ラウリル硫酸塩等の硫酸塩、並びにNa-スルホコハク酸、Na-ジオクチルスルホコハク酸、及びNa-ジアルキルスルホコハク酸のモノアルキルポリグリコールエーテル等のスルホコハク酸を挙げることができる。
【0053】
Na-ノニルフェニル−及びNa-ジノニルフェニルエトキシル化リン酸エステル、K-アリールエーテルリン酸塩、並びにポリアリールポリエーテルリン酸塩のトリエタノールアミン塩等のリン酸塩も使用することができる。
【0054】
媒晶剤として、オクチルアミン、トリエタノールアミン、ジ(水素化獣脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性界面活性剤、及び様々な変性脂肪アルコールエトキシ化物等の非イオン性界面活性剤も使用することができる。使用することのできる重合性酸、塩、アミド及びアルコールの例として、ポリアクリル酸及びポリアクリレート、アクリレート−マレエート共重合体、ポリアクリアミド、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリビニルリン酸、アクリル酸とアリルヒドロキシプロピルスルホン酸塩との共重合体(AA−AHPS)、ポリ-α-ヒドロキシアクリル酸(PHAS)、ポリビニルアルコール、及びポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)を挙げることができる。
【0055】
特に好ましい媒晶剤としては、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、イミノジコハク酸(ISA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、N-ビス-(2-(1,2-ジカルボキシエトキシ)エチルアスパラギン酸(AES)、ジ−、テトラ−及びヘキサ−アミノスチルベンスルホン酸、並びにNa-アミノトリエトキシコハク酸塩(Na6-TCA)等のこれらの化合物の塩、さらにアルキルベンゼンスルホン酸塩を挙げることができる。
【0056】
媒晶剤は、硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物の重量に基づいて、0.01〜5.0%、最も好ましくは0.02〜1.78%の量で用いることができる。
【0057】
結晶化においては、通常、β−硫酸カルシウム半水和物が使用される。これは、石膏原料を140〜300℃、好ましくは150〜200℃の温度に加熱することによって製造することができる。これよりも低い温度では石膏原料が十分に脱水されず、一方、これよりも高い温度では過剰に脱水されて無水物になってしまう。焼成した硫酸カルシウム半水和物は、通常、少量の硫酸カルシウム二水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物の形態の不純物を含んでいる。流動床フラッシュ焼成等のフラッシュ焼成によって得られたβ−硫酸カルシウム半水和物を使用するのが好ましく、それによって石膏原料は必要な温度まで可能な限り早く加熱される。しかしながら、結晶化においてα−硫酸カルシウム半水和物を使用することも可能である。
【0058】
反応開始材料として硫酸カルシウム無水物を使用することも可能である。硫酸カルシウム無水物は、石膏原料を焼成することによって得られる。無水物には3つの形態がある。第1の形態は所謂無水物Iであり、不溶性の無水物II-uやII-Eのように、水との反応によって石膏を形成することができない。所謂無水物IIIであり、可溶性無水物としても知られている他の態様のものは、3つの形態を有している。それらは、β−無水物III、β−無水物III'、及びα−無水物IIIである。これらと無水物II-sとは、水と接触すると純粋な石膏を形成する。
【0059】
硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と、繊維の水性懸濁液と、任意成分である媒晶剤とを接触させた後に、これらを反応させて硫酸カルシウム二水和物、即ち石膏にする。この反応は、前記物質を一緒に十分な時間、例えば、混合することによって、好ましくは強く混合することによって起こすことができる。混合の時間は実験によって容易に定めることができる。乾物の含有量が多いときは、スラリーが濃くて薬品が容易には相互に接触しないので、強い混合が必要になる。硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物、繊維の水性懸濁液、並びに任意に使用される媒晶剤は水に対して示された前記温度で混合されるのが好ましい。初期のpHは、通常、酸性領域にあり、好ましくは3〜7であり、より好ましくは3〜6である。必要であれば、NaOH及び/又はH2SO4の水溶液、典型的にはNaOH及び/又はH2SO4の10%水溶液によってpHを調整する。
【0060】
石膏は、前記半水和物や可溶性の前記無水物よりも水に対する溶解度が低いので、前記半水和物及び/又は無水物と水との反応によって形成される石膏は水媒体から直ちに第二の繊維上に結晶化する傾向がある。結晶化は、有用な石膏−繊維複合製造物が得られるように前記媒晶剤によって調整することができる。
【0061】
石膏−繊維複合製造物は他の添加剤によって処理することもできる。典型的な添加剤としては、製造物を貯蔵して使用するに際して微生物が活性化するのを防止する殺生物剤を挙げることができる。
【0062】
本発明の第二の面によると、前記スーパー仕上げ紙製品の製造方法が提供され、第一のセルロース性の繊維が水及び石膏−繊維複合製造物と混合された原料を作り、得られたスラリーを製紙機械の形成セクションに送り、次いで排水セクションで水を排水し、形成されたウェブを圧搾セクションに送ってそこでさらに水を除去し、前記ウェブを乾燥セクションに送って、そこで残っている水分を蒸発させ、最後に紙にスーパーカレンダーがけを行い、それによって紙の表面の平滑性と光沢とを向上させる。
【0063】
石膏−繊維複合製造物は水性製造物として、又は乾燥状態で導入することができ、任意で粒子の形態に粉砕してもよい。
【0064】
紙のスーパーカレンダーがけはオンラインカレンダー又はオフラインカレンダーで行うことができる。後者の場合、カレンダーは実際の製紙機械とは分かれている。スーパーカレンダーのロールは加熱されたサーモロールであってもよい。
【0065】
さらに、本発明は、石膏−繊維複合製造物であって、該石膏−繊維複合製造物においては石膏が繊維の表面に結晶として現れ、該石膏の結晶は硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と繊維の水性懸濁液とを接触させることによって得られる石膏−繊維複合製造物の、スーパー仕上げ紙製品の製造における填料又は塗工顔料としての使用にも係る。
【0066】
スーパー仕上げ紙製品における石膏−繊維複合製造物の量は、乾燥量基準で10〜60重量%であり、好ましくは20〜50重量%である。これに対応して、スーパー仕上げ紙製品における前記セルロース性の繊維の量は、乾燥量基準で、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1〜8は、例1〜8の硫酸カルシウム無水物の電子顕微鏡写真であり、図9〜17は、充填材が硫酸カルシウム二水和物−繊維複合製造物、沈降硫酸カルシウム(PCS)又はカオリン粘土であるスーパー仕上げ(SC)紙製品試料の様々な性質を示している。
【図1a】半水和物固形分量が18%(半水和物/(半水和物+水))である硫酸カルシウム二水和物/TMP複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図1b】図1aに示されている複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図2a】半水和物固形分量が42%(半水和物/(半水和物+水))である硫酸カルシウム二水和物/TMP複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図2b】図2aに示されている複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図3】半水和物固形分量が6.25%(半水和物/(半水和物+水))である硫酸カルシウム二水和物/ユーカリクラフトパルプ複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図4】半水和物固形分量が7.5%(半水和物/(半水和物+水))である硫酸カルシウム二水和物/ユーカリクラフトパルプ複合体の繊維のSEM顕微鏡写真である。
【図5a】ポリ塩化アルミニウムを固定剤として用いた硫酸カルシウム二水和物/マツクラフトパルプ複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図5b】図5aに示される複合体をハイドルフ(Heidolph)試験用ミキサを用いて350 rpmで数分撹拌した後の複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図6a】ポリDACMACを固定剤として用いた硫酸カルシウム二水和物/マツクラフトパルプ複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図6b】図6aに示される複合体をハイドルフ(Heidolph)試験用ミキサを用いて350 rpmで数分撹拌した後の複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図7】硫酸カルシウム二水和物/カバ材クラフトパルプ複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図8】硫酸カルシウム二水和物/プラスチックファイバ複合体を飽和硫酸カルシウム溶液で洗浄した後の当該複合体のSEM顕微鏡写真である。
【図9】SC紙試料のISO白色度を示している。
【図10】SC紙試料のCIE白度を示している。
【図11】SC紙試料の黄色度を示している。
【図12】SC紙試料の光散乱度を示している。
【図13】SC紙試料の不透明度を示している。
【図14】SC紙試料のPPS粗度を示している。
【図15】SC紙試料の光沢を示している。
【図16】SC紙試料の紙の嵩に対する光沢を示している。
【図17】SC紙試料の透気度(ベントセン(Bendtsen)空隙率)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0068】
(実施例)
以下において、以下において、例によって本発明をより詳細に説明する。例の目的は請求項の範囲を制限することではない。この明細書においては、パーセント表示は、そうでない旨の記載がない限り、重量%を意味する。
【0069】
第一に、合成と製造物の分析についての一般的な情報を記載する。次に、各例についてのデータを示す。
【0070】
<合成>
一般的な情報を最初に示す。紙用顔料を最適化する方法を行った。パラメータは次の通りであった。
HH(初期の半水和物、重量%) 5〜57
繊維濃度(重量%) 3〜30
添加剤濃度(DH(二水和物)の重量%) 0.100〜1
溶液自体のpHで反応が行われた。媒晶薬剤は、析出した硫酸カルシウム二水和物のパーセント(DHの重量%)として計算するものとする。
【0071】
次の機器を用いて実験を行った。
【0072】
反応器としてはホバート(Hobart)N50CE型のものを用いた。繊維の水性懸濁液相に半水和物と薬剤とを回分式で加え、初期の固形分が5〜57重量%である半水和物スラリーを得た。混合速度は250〜500 rpmである。反応は混合物自体のpHで行われた。
【0073】
<分析>
硫酸カルシウム二水和物の形態を、FEI XL 30 FEG走査型電子顕微鏡を用いて調べた。半水和物から二水和物への転換は、メトラー・トレド製のTGA/SDTA85 1/1100型熱重量分析機(TG)を用いて分析した。結晶構造は、フィリップスのエキスパートX線粉末ディフラクトメータ(XRD)によって測定した。
【0074】
(例1)
1.800 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.固形分含有量が36%であるTMP(サーモメカニカルパルプ)を200 g、前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は200 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が18重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0075】
得られた顔料−繊維複合体を図1aに示す。また、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図1bに示す。
【0076】
(例2)
1.430 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.固形分含有量が36%であるTMP(サーモメカニカルパルプ)を570 g、前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は570 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が42重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0077】
得られた顔料−繊維複合体を図2aに示す。また、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図2bに示す。
【0078】
(例3)
1.固形分含有量が17.7%であるユーカリクラフトパルプ456.5 gをホバートN50 CE型試験用ミキサーに入れた。
2.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は25 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が16.5重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
3.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0079】
得られた顔料−繊維複合体を、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図3に示す。
【0080】
(例4)
1.47 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.固形分含有量が17.7%であるユーカリクラフトパルプの295.5 gを前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は25 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が7.5重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0081】
得られた繊維製造物を図4に示す。
【0082】
(例5)
1.44.8 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。1.6 gのポリ塩化アルミニウムと数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.固形分含有量が7%であるマツクラフトパルプの640 gを前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は160 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が20重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0083】
得られた顔料−繊維複合体を、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図5に示す。
【0084】
(例6)
1.15.8 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。0.6 gのポリDACMACと数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.固形分含有量が7%であるマツクラフトパルプの226 gを前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は300 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が57重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0085】
得られた顔料−繊維複合体を、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図6に示す。
【0086】
(例7)
1.116 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.800 gのカバ材クラフトパルプ(固形分含有量が14.5%)を前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は200 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が20重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0087】
得られた顔料−繊維複合体を、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図7に示す。
【0088】
(例8)
1.600 gの水をホバートN50 CE型試験用ミキサーに投入した。数滴の殺生物剤(Fennosan IT21)を添加した。
2.10 gの合成ポリプロペン繊維を前記反応器に入れた。
3.流動層か焼されたβ−硫酸カルシウム半水和物を、動作速度を「1」にセットした攪拌機で攪拌しながら、前記反応器に均等に投入した。投入した半水和物の合計量は300 g(これより、半水和物/(半水和物+水)が34重量%であることが算出される。)であった。この投入の後、攪拌機の動作速度を「2」に上げた。複合体を5分間攪拌した。
4.硫酸カルシウム二水和物が形成されるのを一時間待った。
【0089】
得られた顔料−繊維複合体を、硫酸カルシウムを飽和させた水で洗浄した後の複合体を図8に示す。
【0090】
(例9)
繊維固形分含有量が8%であるサーモメカニカルパルプ(TMP)を用いて、例1に記載されているように顔料−充填剤複合体を製造した。か焼したβ−硫酸カルシウム半水和物を、半水和物/(半水和物+水)が20%になるように添加した。
【0091】
被覆していないスーパー仕上げ紙について、次のようにして適用試験を行った。
【0092】
ホーランダーのリファイナを用いて複合体試料を砕解した。枚葉紙形成においては、複合体を未処理の繊維成分と混合し、従来から使用されているカオリンとPCS(沈降硫酸カルシウム)との充填剤と比較した。使用された充填剤の量は30%(複合体に対しては、充填剤の量は石膏の量を意味する)であり、目標秤量は60±2g/m2であった。充填材の含有量は、複合体と未処理の繊維との割合を変更することによって調節した。2+2個のニップロールを用いて100、175及び250 kN/mの線荷重で試料にカレンダーがけをした。ロール温度は80℃、湿度は85%、カレンダー速度は30m/分であった。
【0093】
紙試料のISO白色度(brightness)はR457で測定した。結果を図9に示す。この結果は、PCSと本発明の複合体の、紙の白色度に関する効果は類似しているが、カオリン粘土の場合はPCS及び複合体よりも白色度が約4%単位低かったことを示している。
【0094】
紙試料のCIE白度(whiteness)を測定した。結果を図10に示す。この結果は、充填材−繊維複合体は、PCS及びカオリン粘土よりも、紙の白度をはるかに高くしたことを示している。
【0095】
紙試料の黄色度(CIE黄色座標b*(C/2°))を測定した。結果を図11に示す。この結果は、充填材−繊維複合体は、PCS及びカオリン粘土よりも、紙の黄色度をはるかに低くしたことを示している。
【0096】
紙試料の光散乱度を測定した。結果を図12に示す。この結果は、PCS及びカオリン粘土に比べて、充填材−繊維複合体は光散乱度を約5〜10単位改善させたことを示している。
【0097】
紙試料の不透明度を測定した。結果を図13に示す。この結果より、光散乱度が改善されると不透明度にも良い影響を与えると結論づけることができる。線荷重が低いときには、充填材−繊維複合体はカオリンよりも約1単位高い不透明度を与え、PCSよりも約2単位高い不透明度を与えた。この不透明度の差は線荷重が高くなると大きくなり、複合体の不透明度はカオリンよりも2単位、PCSよりも3単位高くなった。
【0098】
紙試料のPPS粗度を測定した。結果を図14に示す。この結果は、カオリンと充填材−繊維複合体とは紙試料に類似の粗度を与え、PCSは0.1μm高い粗度を与えたことを示している。充填材−繊維複合体は紙の上方面(TS)とワイヤ側面(MS)との粗度の差も小さくした。
【0099】
紙試料の光沢75°を測定した。結果を図15に示す。この結果は、充填材−繊維複合体がPCSよりも約4単位高い、また、カオリンよりも1単位高い、カレンダー加工に由来する光沢を紙に与えたことを示している。
【0100】
図16においては、紙の嵩に対するカレンダー加工に由来する光沢について示している。この結果より、光沢の値が同じであれば、充填材−繊維複合体で処理した紙の方がカオリンで処理した紙よりも約0.1単位嵩高いということが理解される。
【0101】
紙試料の空隙率をベントセン(Bendtsen)法で測定した。この方法では、所定の複数の圧力において紙のシートを空気が通過する速度を測定する。空隙率が高いことは、紙が空気を比較的容易に通すことを意味する。結果を図17に示す。この結果から、充填材−繊維複合体で処理した紙は、PCSで処理した紙よりも空隙率が低い、即ち密度が高いことがわかる。カオリンで処理した紙試料が最も高い密度を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のセルロース性の繊維と、填料又は塗工顔料としての石膏−繊維複合製造物とを有するスーパー仕上げ紙製品であって、該石膏−繊維複合製造物においては石膏が繊維の表面に結晶として現れ、該石膏の結晶は硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と第二の繊維の水性懸濁液とを接触させることによって得られることを特徴とするスーパー仕上げ紙製品。
【請求項2】
前記第一のセルロース性の繊維が、化学パルプ繊維、機械パルプ繊維、化学機械パルプ繊維又は脱インキパルプ繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項3】
前記石膏−繊維複合製造物の前記第二の繊維が、化学パルプ繊維、機械パルプ繊維、化学機械パルプ繊維若しくは脱インキパルプ繊維、又は合成繊維等の第二のセルロース性の繊維を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項4】
前記石膏−繊維複合製造物における前記第二の繊維の平均長が0.5〜5 mm であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項5】
前記石膏−繊維複合製造物における乾燥量基準での前記第二の繊維に対する前記石膏の重量比が95:5〜50:50、好ましくは75:25〜50:50であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項6】
天然若しくは合成のポリマーバインダ、蛍光発光剤、レオロジー調整剤及びサイズ剤の一種以上をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項7】
前記石膏−繊維複合製造物の量が、乾燥量基準で、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項8】
結晶化に際して、前記硫酸カルシウム半水和物がα−硫酸カルシウム半水和物又はβ−硫酸カルシウム半水和物を含んでいることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項9】
結晶化に際して、水に対する硫酸カルシウム半水和物及び/又硫酸カルシウム無水物の割合が0.03〜0.6:1、好ましくは0.05〜0.5:1であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項10】
結晶化に際して、乾燥状態での第二の繊維量が3〜30重量%であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項11】
結晶化に際して、硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物の量が10〜57重量%であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項12】
第一のセルロース性の繊維が水及び前記石膏−繊維複合製造物と混合された原料を作り、得られたスラリーを製紙機械の形成セクションに送り、次いで排水セクションで水を排水し、形成されたウェブを圧搾セクションに送ってそこでさらに水を除去し、前記ウェブを乾燥セクションに送って、そこで残っている水分を蒸発させ、最後に紙にスーパーカレンダーがけを行い、それによって紙の表面の平滑性と光沢とを向上させることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品の製造方法。
【請求項13】
前記石膏−繊維複合製造物が水性製造物として、又は乾燥状態で、任意で粒子の形態に粉砕した状態で導入されることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
石膏−繊維複合製造物であって、該石膏−繊維複合製造物においては石膏が繊維の表面に結晶として現れ、該石膏の結晶が硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と繊維の水性懸濁液とを接触させることによって得られる石膏−繊維複合製造物の、スーパー仕上げ紙製品の製造における填料又は塗工顔料としての使用。
【請求項15】
前記石膏−繊維複合製造物の量が、前記スーパー仕上げ紙製品の乾燥量を基準として10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%であることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項1】
第一のセルロース性の繊維と、填料又は塗工顔料としての石膏−繊維複合製造物とを有するスーパー仕上げ紙製品であって、該石膏−繊維複合製造物においては石膏が繊維の表面に結晶として現れ、該石膏の結晶は硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と第二の繊維の水性懸濁液とを接触させることによって得られることを特徴とするスーパー仕上げ紙製品。
【請求項2】
前記第一のセルロース性の繊維が、化学パルプ繊維、機械パルプ繊維、化学機械パルプ繊維又は脱インキパルプ繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項3】
前記石膏−繊維複合製造物の前記第二の繊維が、化学パルプ繊維、機械パルプ繊維、化学機械パルプ繊維若しくは脱インキパルプ繊維、又は合成繊維等の第二のセルロース性の繊維を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項4】
前記石膏−繊維複合製造物における前記第二の繊維の平均長が0.5〜5 mm であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項5】
前記石膏−繊維複合製造物における乾燥量基準での前記第二の繊維に対する前記石膏の重量比が95:5〜50:50、好ましくは75:25〜50:50であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項6】
天然若しくは合成のポリマーバインダ、蛍光発光剤、レオロジー調整剤及びサイズ剤の一種以上をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項7】
前記石膏−繊維複合製造物の量が、乾燥量基準で、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項8】
結晶化に際して、前記硫酸カルシウム半水和物がα−硫酸カルシウム半水和物又はβ−硫酸カルシウム半水和物を含んでいることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項9】
結晶化に際して、水に対する硫酸カルシウム半水和物及び/又硫酸カルシウム無水物の割合が0.03〜0.6:1、好ましくは0.05〜0.5:1であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項10】
結晶化に際して、乾燥状態での第二の繊維量が3〜30重量%であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項11】
結晶化に際して、硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物の量が10〜57重量%であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品。
【請求項12】
第一のセルロース性の繊維が水及び前記石膏−繊維複合製造物と混合された原料を作り、得られたスラリーを製紙機械の形成セクションに送り、次いで排水セクションで水を排水し、形成されたウェブを圧搾セクションに送ってそこでさらに水を除去し、前記ウェブを乾燥セクションに送って、そこで残っている水分を蒸発させ、最後に紙にスーパーカレンダーがけを行い、それによって紙の表面の平滑性と光沢とを向上させることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のスーパー仕上げ紙製品の製造方法。
【請求項13】
前記石膏−繊維複合製造物が水性製造物として、又は乾燥状態で、任意で粒子の形態に粉砕した状態で導入されることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
石膏−繊維複合製造物であって、該石膏−繊維複合製造物においては石膏が繊維の表面に結晶として現れ、該石膏の結晶が硫酸カルシウム半水和物及び/又は硫酸カルシウム無水物と繊維の水性懸濁液とを接触させることによって得られる石膏−繊維複合製造物の、スーパー仕上げ紙製品の製造における填料又は塗工顔料としての使用。
【請求項15】
前記石膏−繊維複合製造物の量が、前記スーパー仕上げ紙製品の乾燥量を基準として10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%であることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−524180(P2012−524180A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506539(P2012−506539)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050316
【国際公開番号】WO2010/122221
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(504186286)ケミラ ユルキネン オサケイティエ (18)
【氏名又は名称原語表記】KEMIRA OYJ
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050316
【国際公開番号】WO2010/122221
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(504186286)ケミラ ユルキネン オサケイティエ (18)
【氏名又は名称原語表記】KEMIRA OYJ
【Fターム(参考)】
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