説明

紙製挟持具の製造方法

【課題】紙製挟持具によって構成されるカレンダーであって、挟持するポスターをそのまま再利用できるカレンダーを提供することである。
【解決手段】折り返した紙片2により構成される紙製挟持具1であって、該紙片2の折り返し側を、折り返し線に沿って一定幅貼着しており、該紙片2の他端側の2つの紙片端部の内、一方の紙片端部が内側に折り返されている紙製挟持具1。また、前記紙製挟持具1により、吊下げ部を構成し、ポスター11を挟持するカレンダー10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉を挟持する紙製挟持具、及び紙製挟持具を用いたカレンダーの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メモ用紙、又はカレンダーの挟持具として、クリップやバインダーは公知である。
一方、近年の環境保護の観点から、使用済み製品や物品等の廃棄処理において、リサイクル性の向上が望まれている。例えばメモ帳やカレンダー等の紙製品は、金属やプラスチック等の異質の材料が混用されている場合はリサイクル性が低下する。このことから、紙製挟持具は、メモ帳やカレンダー等の紙製品のリサイクル性を向上することができる。このような背景を踏まえ、近年の環境保護の高まりと共に紙製挟持具の需要が注目されている。これらの金属製又はプラスチック製の挟持具に代わる紙製の挟持具は、公知となっている(特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】登録実用新案第3001182号
【特許文献2】特開平11−321156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
他方、紙製挟持具は、紙で作成されているため、挟持具自体にロゴやイラストを印刷できる利点を有する。これを踏まえて、例えば、自社のロゴや商標を印刷した紙製挟持具に美感性の高い風景画や人物のポスターを挟持して、自社宣伝用のカレンダーとすることができる。
このようなカレンダーは、使用された後であってもポスターとして十分に価値があるため、再利用されることが多い。このとき、特許文献1又は2に代表される従来の紙製挟持具は、挟持に接着が必要である、或いは挟持するためにポスターに綴じ孔を設ける必要があった。そのため、カレンダーとしての使用が終わった後に、ポスターとしてそのまま再利用することが困難であった。
そこで、解決しようとする課題は、挟持するポスターをそのまま再利用できる紙製挟持具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
発明者は、紙製の挟持具を容易かつ短時間で作成すべく、研究を重ね、紙片を折り畳み、挟持具とすることを発明した。挟持具は、折り返した紙片により構成される紙製挟持具であり、折られた紙片の折り返し側、即ち谷部分を貼り付けるものである。これにより、紙片の端部を閉じる方向に付勢する。紙片には厚み1mm程度の厚紙を用いるものであり、折り返し線に沿って一定幅貼着している。そして、この紙片には、複数枚の使用を挟持するのに十分な付勢力得られるものであれば良い。また、折り返し部の内側に厚紙などのスペーサーを配設して、挟持具の幅を調節でき、折り目に沿ってスペーサーを配設し、このスペーサーを介して折り返し部の紙片を接着することにより、挟持具の剛性を向上でき、挟持具の反りを抑制できる。
そして、折り返し部とは反対側の他端側の2つの紙片端部の内、一方の紙片端部を内側に折り返しているものである。折り返した紙片の解放側の端部において、紙片端部を内側に折り込むことにより、折り込まれた部位が折り返した紙片の間に挿入されるものに対して、かえしとして作用し、紙片間より抜け出す方向に対して抵抗力を発生させやすくなる。さらに、端部の折り返しにおいて、紙片厚み方向の折り曲げにより余剰する部位を内側に突出させることにより、端部を開放する方向に付勢でき、挿入物を紙片により抑える力を増大させることができる。
紙片の貼着は、既存の接着剤を用いるものであり、特に、ヒートシールやホットメルトを用いることにより、紙製挟持具の製造にかかる時間を短縮し、製造効率を向上できる。折り曲げて内側となる紙片面にヒートシールをあらかじめ塗布しておき、折り曲げ部の貼着の際に高周波やヒーターを用いて貼着することができる。また、貼着の工程においてホットメルトを塗布して貼着することもできる。
【0005】
すなわち、請求項1においては、折り返した紙片により構成される紙製挟持具であって、該紙片の折り返し側を、折り返し線に沿って一定幅貼着しており、該紙片の他端側の2つの紙片端部のうち、一方の紙片端部が内側に折り返されているものである。
【0006】
請求項2においては、紙片に溝線を形成し、該溝線に沿って紙片を折り曲げる紙製挟持具の製造方法であって、紙片に形成部の反対面が凸形状となる少なくとも平行な2本の溝線を形成するステップと、該紙片に前記溝線と平行な帯状凹部を形成するステップと、該紙片中央側の溝線を第一溝線とし、他の溝線の一つを第二溝線とし、該紙片を前記第一溝線に沿って凸形状側を内側に折り曲げるステップと、該紙片を前記第二溝線に沿って折り曲げるステップと、該紙片を前記第一溝線に沿って、折り曲げるステップと、該折り曲げた紙片の内側面と、前記帯状凹部の裏側の突出面とを貼着するステップとを有するものである。
【0007】
請求項3においては、紙片に溝線を形成し、該溝線に沿って紙片を折り曲げる紙製挟持具の製造方法であって、第一の紙片に形成部の反対面が凸形状となる少なくとも平行な2本の溝線を形成するステップと、該第一の紙片中央側の溝線を第一溝線とし、他の溝線の一つを第二溝線とし、該第一の紙片を前記第一溝線に沿って凸形状側を内側に折り曲げるステップと、第一の紙片を前記第二溝線に沿って折り曲げるステップと、該第一溝線に沿って第二の紙片の一側面を第一の紙片に貼着するステップと、第一の紙片が貼着された第二の紙片の反対面を、前記第一の紙片に貼着するステップとを有するものである。
【0008】
請求項4においては、請求項1記載の紙製挟持具により、吊下げ部を構成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、紙製挟持具の上層紙の折れ部が復元しようとする弾性力のみで紙葉を挟持できる。そのため、紙製挟持具と紙葉との接着、或いは紙葉に設ける綴じ孔が不要であるため、コストが削減できる。
【0011】
請求項2においては、2枚の紙片から紙製挟持具を効率良く大量に製造できる。
【0012】
請求項3においては、1枚の紙片から紙製挟持具を効率良く大量に製造できる。
【0013】
請求項3においては、請求項1記載の紙製挟持具を用いて、挟持する美感性の高いポスターをカレンダーとして、使用後にそのまま再利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例であるカレンダーの全体構成を示す斜視図、図2は(a)同じくAA´断面を示す断面構成図(b)別構成の紙製挟持具の断面を示す断面構成図、図3は同じく厚紙が形成される過程を示す構成図である。
図4は同じく別実施例のエンボス加工を施した厚紙が形成される過程を示す構成図である。
【0015】
まず、図1を用いて、本発明の紙製挟持具1を適用する代表例としてカレンダー10について、簡単に説明する。なお、本実施例において、カレンダー10は、営業活動等において利用される宣伝広告入りのカレンダーとしている。
図1に示すように、カレンダー10は、吊下げ部である紙製挟持具1、該紙製挟持具1に上端を挟持される月毎の日付を示す12枚のポスター11・・・11、背紙5、及びペーパーリング8とで構成されている。
本実施例のポスター11は、例えば「車」の写真であって、十分に美感性が高いポスターである。また、ポスター11は、上部11aと下部11bから構成される見開きの構成とされている。さらに、上部11aの下端と下部11bの上端は、背紙5と共にペーパーリング8によって綴じられている。
さらに、紙製挟持具1は、紙のみを材質に構成されている。紙製挟持具1の正面には、会社名、住所、及び電話番号の記載7が印刷されている。カレンダー10の吊下げ部を紙製挟持具1により構成するため、紙製挟持具1の紙面に容易に印刷でき、安価に広告情報を入れることができる。また、紙製挟持具1は、その中央に孔が設けられることで、壁等に掛止可能とされている。
このようにして、カレンダー10は、配付元の会社の宣伝効果、並びにポスター11としての美感性を発揮している。
【0016】
次に、図2を用いて、本発明の紙製挟持具1について、詳細に説明する。なお、図2は、図1におけるAA´断面図である。
図2(a)に示すように、紙製挟持具1は、第一の紙片として厚紙2(詳しくは後述)及び第二の紙片として介在紙3から構成されている。厚紙2は、折り曲げられて介在紙3を挟着し、上層紙2bと下層紙2aが形成されている。このとき、上層紙2bと下層紙2aの短手方向端側は十分に余白が残され、特に上層紙2bについては下層紙2aに比較して大きい余白が残されている。下層紙2aは、端側において背紙5が貼着されている。上層紙2bは、端側を介在紙3に向かって折り曲げられ、折り部2cが形成されている。
このような構成とすることで、紙製挟持具1は、ポスター11を、下層紙2aと折り部2cとで挟持することができる。このとき、折り部2cの復元しようとする弾性力が、ポスター11を押さえつける構成とされている。
【0017】
このようにして、紙製挟持具1は、特に接着剤、又はポスター11に綴じ孔をあけての挟持をすることなく、紙の弾性力のみでポスター11を挟持することができる。すなわち、ポスター11は、カレンダー10として使用後においても、そのままポスターとして再利用できる。挟持具が紙製であるため、ポスターの印刷面を傷つけ難く、ポスターの品質を維持しやすい。さらに、紙製挟持具1の下端部が折り部2cにより構成されるので、紙製挟持具1の下端表面を表面により構成でき、意匠性を向上できる。
また、紙製挟持具1が挟持するものの厚みや枚数に応じて、介在紙3の厚みを調節することも可能である。紙製挟持具1は上層紙2bと下層紙2aとを貼着する幅と、貼着されていない上層紙2bの幅とにより、挟持力(ポスター11に与える付勢力)を調節可能であり、介在紙3の材質の選択により挟持力の調節を行うことも可能である。例えば、介在紙3を硬質紙にすることにより紙製挟持具1の剛性を向上させ、挟持力を大きくでき、介在紙3にフエルトなどの軟質のものを用いることにより挟持力を弱くすることができる。そして、介在紙3により挿入される背紙の位置決めを行うことができ、製造を容易にする。
【0018】
また、図2(b)に示すように、紙製挟持具1は、介在紙3を挟着することなく、厚紙2のみで構成することも可能である。例えば、挟持するポスター11の枚数が少ないときは、本構成を用いることができる。これにより、簡便な構成により紙製挟持具1を構成でき、製造工程を短縮して製造効率を向上できる。
【0019】
次に、図3を用いて、厚紙2の工程及び形成について説明する。
図3に示すように、厚紙2は、長手方向の2本の溝線に従い、2回折り曲げられ形成される。以下に、図3(a)〜(d)の順に従い、厚紙2が形成される過程について、詳細に説明する。
図3(a)に示すように、厚紙2は、細長体(短冊状の紙片)にて形成されている。
次に、図3(b)に示すように、厚紙2は、長手方向に沿って略中央に第一溝線2pが、該第一溝線2pより上方に第二溝線2qが形成される。第二溝線2qは第一溝線2pに対して平行に形成される。この2つの溝線2p・2qの形成方法としては、型押しや、溝に該当する箇所に凸を設けたローラに厚紙2を押し付ける方法等を用いることができる。型押しの場合には、形成可能な溝形状の自由度を増すことが出来る。ローラを用いる場合には、連続的に溝を形成でき、成形工程における効率を向上できる。
次に、図3(c)に示すように、厚紙2は、2本の溝線2p・2qを谷側として、折り曲げられる。
最終的には、図3(d)に示すように、厚紙2は、下層紙2a、上層紙2b、及び折り部2cが形成された状態となる。
このような構成とすることで、以下の利点が得られる。
まず、図3(d)に示すように、予め溝線2p・2qを形成しておくことで、折り曲げ時に各溝線2p・2qの谷側に凸部2tが形成される。このため、介在紙3を挟着する、並びにポスター11を挟持する際には、介在紙3及びポスター11の厚み分を挟持できる隙間を形成することができる。
さらに、予め溝線2p・2qを形成しておくことで、山側に凹部2sが形成され、厚紙の表層に余裕しろができる。このため、折り曲げ時においても、厚紙の表層部が破れることを防止できる。
厚紙2への介在紙3の貼り付けは、溝線2p・2qを形成した後もしくは、溝線2p・2qに沿って折り曲げを行った後に行うことができる。溝線2qを基準に介在紙3の貼り付けを行うことができ、位置決めが容易となる。
【0020】
次に、図4を用いて、別実施例である厚紙2の工程及び形成について説明する。
図4に示すように、厚紙2は、介在紙3の代わりに、凹型のエンボス加工が形成される。以下に、図3(a)〜(d)の順に従い、厚紙2が形成される過程について、詳細に説明する。
図4(a)に示すように、厚紙2は、細長体(短冊状の紙片)にて形成されている。
次に、図4(b)に示すように、厚紙2は、長手方向に沿って略中央に第一溝線2pが、該第一溝線2pより上方に第二溝線2qが形成される。第二溝線2qは第一溝線2pに対して平行に形成される。さらに、厚紙2は、長手方向に沿って第二溝線2qの下方に凹部2wが形成される。
厚紙2において、第一溝線2p、第2溝線2q、凹部2wは、紙面に対して同一方向に凹又は凸となるものである。
凹部2wは、エンボス加工にて形成することができる。エンボス加工とは、厚紙2の表面に凸凹の型押し加工を施すことをいう。通常、エンボス加工は、紙をゴムのロールと凸凹の加工をした金属のロールの間に通して行うことができる。
次に、図4(c)に示すように、厚紙2は、2本の溝線2p・2qを谷側として、折り曲げられる。
最終的には、図4(d)に示すように、厚紙2は、下層紙2a、上層紙2b、折り部2c、及び凹部2wが形成された状態となる。ここで、例えば、凹部2wの表面にヒートシールを施し上層紙2bと溶着することで、厚紙2のみから紙製挟持具1を形成できる。
このような構成とすることで、介在紙3を不要とできるため、紙製挟持具1の製造工数・コストを低減することができる。また、1枚の紙片により紙製挟持具1を成形可能であり、製造工程をシンプルに構成できる。また、凹部2wを構成することにより、紙製挟持具1の剛性を向上でき、反り方向に対する抵抗部位を増大できる。
上記の構成において、厚紙2には予めヒートシールを施したものを用いて、製造工程における接着機構を過熱のみの簡便のものとすることが可能であり、この他にホットメルトの塗布装置により接着をおこない、前処理の必要ない厚紙を用いることも可能である。
【0021】
本発明の紙製挟持具1は、従来の紙製挟持具に対して、挟持する紙葉群(ポスター11など)を再利用でき、かつ挟持のための接着を不要とする利点を得ることができる。
本実施例は、紙製挟持具1の適用例として、カレンダー10紹介したが、適用例は本実施例に限定されることはない。例えば、メモ帳又はクリップボードのクリップ等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例であるカレンダーの全体構成を示す斜視図。
【図2】(a)同じくAA´断面を示す断面構成図(b)別構成の紙製挟持具の断面を示す断面構成図。
【図3】同じく厚紙が形成される過程を示す構成図。
【図4】同じく別実施例のエンボス加工を施した厚紙が形成される過程を示す構成図。
【符号の説明】
【0023】
1 紙製挟持具
2 厚紙
3 介在紙
2a 下層紙
2b 上層紙
2c 折り部
2p 第一溝線
2q 第二溝線
2w 凹部
10 カレンダー
11 ポスター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り返した紙片により構成される紙製挟持具であって、
該紙片の折り返し側を、折り返し線に沿って一定幅貼着しており、
該紙片の他端側の2つの紙片端部のうち、一方の紙片端部が内側に折り返されていることを特徴とする紙製挟持具。
【請求項2】
紙片に溝線を形成し、該溝線に沿って紙片を折り曲げる紙製挟持具の製造方法であって、
紙片に形成部の反対面が凸形状となる少なくとも平行な2本の溝線を形成するステップと、
該紙片に前記溝線と平行な帯状凹部を形成するステップと、
該紙片中央側の溝線を第一溝線とし、他の溝線の一つを第二溝線とし、該紙片を前記第一溝線に沿って凸形状側を内側に折り曲げるステップと、
該紙片を前記第二溝線に沿って折り曲げるステップと、
該紙片を前記第一溝線に沿って、折り曲げるステップと、
該折り曲げた紙片の内側面と、前記帯状凹部の裏側の突出面とを貼着するステップと
を有することを特徴とする紙製挟持具の製造方法。
【請求項3】
紙片に溝線を形成し、該溝線に沿って紙片を折り曲げる紙製挟持具の製造方法であって、
第一の紙片に形成部の反対面が凸形状となる少なくとも平行な2本の溝線を形成するステップと、
該第一の紙片中央側の溝線を第一溝線とし、他の溝線の一つを第二溝線とし、該第一の紙片を前記第一溝線に沿って凸形状側を内側に折り曲げるステップと、
第一の紙片を前記第二溝線に沿って折り曲げるステップと、
該第一溝線に沿って第二の紙片の一側面を第一の紙片に貼着するステップと、
第一の紙片が貼着された第二の紙片の反対面を、前記第一の紙片に貼着するステップとを有することを特徴とする紙製挟持具の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の紙製挟持具により、吊下げ部を構成することを特徴とするカレンダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−143110(P2008−143110A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335134(P2006−335134)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【特許番号】特許第4097678号(P4097678)
【特許公報発行日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(506271474)株式会社カズマサ (1)
【Fターム(参考)】