説明

【課題】比引裂度が高く、かつ地合いが良く、異物欠陥が少ないため見栄えに優れた紙を提供する。
【解決手段】非木材パルプ及び木材パルプを混合した原料パルプを抄紙して得られる紙であって、前記非木材パルプ及び木材パルプの割合が、1:99〜20:80である紙。前記非木材パルプが、少なくともマニラ麻と、がんぴ及び/又はみつまたとを含有し、前記マニラ麻と、がんぴ及びみつまたの合計との割合が、80:20〜99:1であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非木材パルプ及び木材パルプを主成分とする紙に関する。更には非木材パルプが古紙から再生した再生パルプである紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷用紙においては印刷機の高速化に伴い、印刷時の張力(印刷時に紙を引張る力)が高くなる傾向があり、印刷時に断紙しないよう、比引裂度が高く強度に優れた印刷用紙が求められている。しかしながら一方で、印刷用紙においては、環境保護の観点から古紙配合率の上昇により、紙の比引裂度が低下する傾向にあり、加えて、印刷物の運送費低減のため、印刷用紙の軽量化が求められており、いずれも印刷用紙の比引裂度の低下を招いている。また、抄紙機で紙を製造する場合においても、抄紙速度の向上により断紙等の操業トラブルを抑制するため、より比引裂度が高い印刷用紙に対する要望がある。
【0003】
木材パルプからなる紙を製造する場合、強度を向上させるためには、一般に、叩解度合いを調整する方法や、各種紙力増強剤を使用する方法がある。
【0004】
繊維を適度に叩解し、繊維を毛羽立たせる(フィブリル化する)ことで、比引裂度を向上させることはできるが、良好な地合いを得ることは難しい。繊維を充分に叩解すると良好な地合いを得ることができるが、逆に比引裂度は低下する問題がある。つまり、比引裂度及び地合いは逆相関の関係にあり、比引裂度及び地合いの双方を向上させることは難しかった。
【0005】
紙力増強剤や澱粉等を内添及び外添する方法は、内添においては抄紙機内部の汚れや異物欠陥の発生原因となり、得られる紙の夾雑物が多く見栄えが低下したり、外添においては塗工ムラや塗料変動による断紙が発生するなど、他の問題が発生しやすくなる。
【0006】
また、パルプ原料としては、広葉樹や針葉樹を原料とし、強度に優れるクラフト法でパルプ化した広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)を用いることが一般的であるが、従来から和紙の原料として使用されているこうぞ、みつまた等の樹皮から得られる靭皮繊維や、マニラ麻等の葉脈から得られる維管束繊維は強靭であるため、このような非木材パルプを使用する方法もある(特許文献1参照)。しかしながらこれらの繊維は繊維長が1cm〜10数cmと長く、また剛直であるため、得られる紙は和紙としての風合いには優れるものの、紙の地合いが悪く見栄えに劣るものであった。これらの非木材繊維を使用した従来の和紙は、紙の繊維が肉眼で確認できるほど長いものが多く、地合いが悪いだけでなく印刷適性に劣り、印刷用紙や情報記録用紙等、印刷を施す洋紙用途には向かない問題があった。
【0007】
このように、充分に比引裂度が高く、地合いが良く、夾雑物が少なく見栄えの良好な紙を安定して生産する方法は、未だ得られていなかった。
【特許文献1】特開2001−151269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする主たる課題は、木材パルプ100%からなる紙に比べて、比引裂度が高く、かつ地合いが良く、異物欠陥が少ないため見栄えに優れた紙を提供することにある。また、この紙を安定して生産できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決した本発明は、非木材パルプ及び木材パルプを混合した原料パルプを抄紙して得られる紙であって、前記非木材パルプ及び木材パルプの割合が、1:99〜20:80であることを特徴とする、紙である。
【0010】
好ましくは、前記非木材パルプが、少なくともマニラ麻と、がんぴ及び/又はみつまたとを含有し、前記マニラ麻と、がんぴ及びみつまたの合計との割合が、80:20〜99:1である。
【0011】
好ましくは、前記非木材パルプの数平均繊維長が0.8〜1.2mmであり、繊維粗度が10〜12mg/100mである。
【0012】
好ましくは、前記非木材パルプが、非木材パルプを含む古紙から再生した再生パルプである。
【0013】
さらに本発明は、前記の紙を製造する方法であって、非木材パルプを含む古紙を蒸煮・離解・脱墨・漂白・精選工程に付すことで非木材再生パルプを得る工程、並びに、得られた非木材再生パルプと木材パルプとを混合した原料パルプを抄紙する工程、とを含むことを特徴とする、製造方法でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非木材パルプ及び木材パルプを含有し、比引裂度及び白色度が高く、かつ地合いが良く、夾雑物(異物欠陥)が少ないため見栄えに優れた紙を提供できる。また、この紙を安定して生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(本発明の具体的形態)
本発明の実施の形態を、印刷用紙の場合を例に説明する。
【0017】
〔パルプ〕
本発明においては、非木材パルプ及び木材パルプの双方を含有し、その割合は、JIS P 8120「紙、板紙及びパルプ−繊維組成試験方法」に準じてC染色液を用いて測定した繊維数で、1:99〜20:80であることが好ましく、5:95〜15:85であることが更に好ましい。ここで非木材パルプとは、わら・エスパルト、ぼろ(木綿、リネン、大麻、ラミーなど)、アバカ等のマニラ麻、竹・ガバス、がんぴ・みつまた、こうぞ・桑などの、皮や茎、葉、葉鞘から得られるパルプを言う。非木材パルプの割合が1%を下回ると比引裂度が低下し、20%を超過すると白色度及び地合いが低下するため本発明の効果を達成することができない。特に非木材パルプの含有率を20%超まで増加させると、従来の和紙のごとく地合いが悪くなり、本願発明の地合いの良好な紙が得られないため好ましくない。非木材パルプと木材パルプの割合は、1:99〜20:80の割合であって初めて、比引裂度及び白色度が高く、見栄えに優れた紙を提供できるのである。ここで言う比引裂度が高いとは、JIS P 8116:2000「紙−引裂強さ試験方法−エレメンドルフ形引裂試験機法」に準じて測定して70mN・m/g以上、より好ましくは80mN・m/g以上を指す。同様に白色度が高いとは、JIS P 8148:2001「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色反射率)の測定方法」に準じて測定して58%以上、より好ましくは60%以上を指す。
【0018】
<木材パルプ>
本発明で用いる木材パルプとしては、一般に製紙用途で使用されている木材パルプを使用することができ、例えば化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ等が挙げられる。
【0019】
化学パルプとしては、例えば、未晒針葉樹パルプ(NUKP)、未晒広葉樹パルプ(LUKP)、晒針葉樹パルプ(NBKP)、晒広葉樹パルプ(LBKP)等を使用することができる。
【0020】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等が挙げられる。
【0021】
古紙パルプとしては、例えば、雑誌古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、新聞古紙、上白古紙等から製造される離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0022】
木材パルプは、非木材パルプと絡み易く、非木材パルプの歩留りを向上できるよう、数平均繊維長を0.5〜1.5mmに調整することが好ましい。上記繊維長とするためには、木材パルプのフリーネスが400〜500CSFとなるよう叩解することが好ましい。400CSFを下回ると叩解しすぎて比引裂度が低下するため好ましくなく、500CSFを超過すると地合いが悪化するため好ましくない。また、上述のとおり、非木材パルプとしてアバカ等のマニラ麻を使用した場合には、繊維粗度の範囲が重複する広葉樹由来の木材パルプと組み合わせて使用することが好ましい。
【0023】
<非木材パルプ>
本発明に使用する非木材パルプは、皮、茎、葉、葉鞘から採取した繊維であり、例えば、わら・エスパルト、ぼろ(木綿、リネン、大麻、ラミーなど)、アバカ等のマニラ麻、竹・ガバス、がんぴ・みつまた、こうぞ・桑から得られるパルプがあるが、これらに限らず種々の原料を使用することができる。
【0024】
この中でも、アバカ等のマニラ麻は繊維粗度が10〜12mg/100mと小さいため、比引裂度及び地合いに優れるため好ましい。繊維粗度とは、繊維の太さ/細さを示す指標であり、繊維100m当たりの重量をmgで表し、繊維粗度が小さいほど繊維が細いことを意味する。繊維粗度はパルプの製造方法に関係なく、その材種に依存し、一般に繊維長が長いほど繊維粗度は大きくなる傾向にある。なお、繊維粗度はJIS P 8120:1998「紙、板紙及びパルプ−繊維組成試験方法」に準じて測定することができる。
【0025】
アバカ等のマニラ麻の他に、がんぴ又はみつまたを併用することが好ましい。がんぴ又はみつまたの繊維粗度はアバカと同程度であり、混合することで更に地合い及び比引裂度を向上することができる効果がある。
【0026】
上記アバカ等のマニラ麻に対する、がんぴ又はみつまたの合計割合は、JIS P 8120「紙、板紙及びパルプ−繊維組成試験方法」に準じてC染色液を用いて測定した繊維数の割合で80:20〜99:1の割合であることが好ましく、85:15〜95:5の割合であることが更に好ましい。アバカ等のマニラ麻が99%を超過すると、地合いが悪化するため好ましくなく、80%を下回ると比引裂度が低下するため好ましくない。上記範囲内とすることで、効果的に比引裂度及び地合いを向上させる事ができる。特に比引裂度の低い木材パルプと併用した場合においても、効果的に比引裂度及び地合いを向上できる効果があるため、アバカ等のマニラ麻と、がんぴ又はみつまたを組み合わせて用いることが好ましい。
【0027】
がんぴ又はみつまた以外にも、アバカ等のマニラ麻と繊維粗度が近く、併用できる非木材繊維として、ケナフ(繊維粗度:10〜11)、エスパルト(繊維粗度:8〜10)、サンヘンプ(繊維粗度:14〜15)、竹(繊維粗度:10〜11)等が挙げられる。
【0028】
非木材パルプの数平均繊維長は、0.8〜1.2mmであることが好ましく、0.9〜1.1mmであることが更に好ましい。数平均繊維長を上記範囲とすることで、木材パルプの好ましい繊維長である0.5〜1.5mmと同程度となるため、木材パルプ繊維及び非木材パルプ繊維を好適に混合させることができ、フィブリル化しにくい非木材パルプの歩留りを向上させる効果が得られ、夾雑物を低減できるだけでなく、比引裂度及び地合いを効果的に向上する事ができる。数平均繊維長が0.8mmを下回ると、夾雑物が増加し、比引裂度が低下するため好ましくなく、1.2mmを超過すると夾雑物が増加し、地合いが悪化するため好ましくない。なお、数平均繊維長は、カヤニ繊維長測定器(FIBER LAB)(METSO社製)を用いて5回測定して得られた値の平均値とした。この繊維長測定試験は、ガラス製測定セルを通過するパルプにヘリウム−ネオンレーザー及びキセノンランプを照射してCCDカメラで撮影した画像から、画像解析ソフトを用いて平均繊維長を求める方法である。
【0029】
非木材パルプのフリーネスは、上記数平均繊維長となるよう、50〜300CSFの範囲で叩解することが好ましく、100〜200CSFが更に好ましい。
【0030】
上記非木材パルプは、木材パルプである針葉樹(11〜20mg/100m)及び広葉樹(7〜13mg/100m)と組み合わせて用いることで、比引裂度が高く、地合いが木材パルプからなる紙と同程度にまで良好となるため好ましい。特にアバカ等のマニラ麻を使用した場合には、繊維粗度の範囲が重複する広葉樹由来の木材パルプと組み合わせて使用することで、地合いが良好でありながら、好適に比引裂度を向上できる効果が得られるため好ましい。
【0031】
上述のごとく、比引裂度及び地合いに優れた紙を得るためには、非木材パルプ及び木材パルプを、1:99〜20:80の割合で併用することが好ましく、このような非木材パルプとしてはアバカ等のマニラ麻を用いることが好ましく、がんぴ又はみつまたを併用することが更に好ましい。更には、アバカ等のマニラ麻とがんぴ又はみつまたとの割合を99:1〜80:20、特に95:5〜85:15とすることで、更に効果的に比引裂度及び地合いを向上できる。特に、非木材パルプの数平均繊維長を0.8〜1.2mm、好ましくは0.9〜1.1mmとすることで、特に比引裂度及び地合いを向上できるため好ましい。
【0032】
〔非木材パルプの製造方法〕
上記非木材パルプは、植物から直接製造しても良いが、回収古紙から再生した古紙パルプを用いると、繊維が柔らかいため木材パルプとのなじみが良く、得られる紙の比引裂度及び地合いを向上しやすい。加えて、非木材パルプの微細繊維の歩留りも良いため、抄紙機内部の汚れや異物欠陥の発生を抑制できるため好ましい。逆に、植物から直接製造した非木材パルプは、古紙から再生した再生パルプに比べて抄紙工程での歩留りが悪いだけでなく、繊維が強靭であるため木材パルプとなじみにくく、充分に叩解したとしても、比引裂度が向上しにくい。
【0033】
<植物からの非木材パルプの製造方法>
例えば特開平2−104788号公報、特開平11−286884号公報、特開2000−290885号公報に記載の方法で製造することができる。
【0034】
<古紙からの非木材パルプの製造方法>
使用できる古紙としては、従来一般に使用されている和紙を使用することができ、例えば証券、株券、商品券、証書、賞状、はがき、名刺、ポスター、便箋、封筒、カレンダー、カタログ、伝票、荷札等の古紙を原料として使用できる。また、本発明においては、非木材パルプとして再生した後に、好ましくは数平均繊維長を0.8〜1.2mmに調整するため、上記古紙を断裁した断裁古紙をも使用することもできる。特に、従来は破棄していた使用済み日本銀行券の断裁品についても、古紙原料として好適に使用できる特徴がある。
【0035】
古紙からパルプを製造する工程は、一般に、古紙を水及び/又はアルカリ性薬品に浸漬した後に機械的攪拌力を与えて繊維に離解する離解工程、離解後に繊維からインキ等の異物を除去する脱墨工程、漂白を行いパルプの白色度を向上させる漂白工程、脱墨工程で除去できなかった異物を形状により除去する精選工程からなる。しかしながら非木材パルプを含有する古紙は、木材パルプに比べて硬く、水になじみにくいため、上記工程では充分に離解できない場合がある。特に、耐水化剤や撥水剤などの水になじみにくい薬品が付与された古紙の場合には、上記方法では離解できない。そのため、これら難離解性古紙の離解方法として、特定の酵素を添加して離解する方法(特開平6−41886号公報)や、特定のハロゲン化物を添加する方法(特開2004−270092号公報)、過酸化水素とアルカリ性薬品で古紙を浸漬する方法(特開平08−127989号公報)、アルカリ条件下で熟成し、酸で中和すると同時に高剪断力で離解する方法(特開平11−200269号公報)等があるが、いずれも充分な離解効果を得るには至っていない。特に、非木材パルプに耐水化剤等を配合した古紙においては、上記方法では充分な離解が得られなかっただけでなく、古紙として使用した場合に、比引裂度が低く、地合いが悪く、白色度が低く、夾雑物が多い等、本発明の課題を充分に満足するものが得られにくかった。尚、非木材パルプに耐水化剤等を配合した古紙の例としては、証券や商品券、ポスター、封筒、カレンダー、日本銀行券等の古紙が挙げられる。
【0036】
〔蒸煮工程〕
これら非木材パルプに耐水化剤等を配合した古紙を離解し、比引裂度及び地合いに優れた紙として使用できる再生パルプを得るためには、離解前にアルカリ性薬品及び酸性薬品で蒸煮する蒸煮工程を設けることが好ましい。蒸煮工程は上記「過酸化水素とアルカリ性薬品で古紙を浸漬する方法(特開平08−127989号公報)」や、上記「植物からの非木材パルプの製造方法」に記載の内容に準じて、アルカリ性薬品及び酸性薬品で蒸煮すれば良いが、単にこの蒸煮条件で蒸煮するだけでは、充分に繊維できなかったり、繊維そのものを痛めてしまう問題がある。特に本発明において好適に使用できるアバカ等のマニラ麻、及び、がんぴ又はみつまたを含有する古紙を蒸煮する場合は、次の蒸煮条件で行なうことで、たとえ耐水化剤等の離解を阻害する薬品が含まれていたとしても、充分に離解でき、比引裂度や地合いに優れるのみならず、白色度が高く、夾雑物が少ない、優れた紙として使用できる再生パルプを得ることができる。ここで言う夾雑物が少ないとは、後述する夾雑物面積率において、150mm/m以下、好ましくは100mm/m以下、更に好ましくは50mm/m以下を言う。加えて、次の蒸煮条件では、従来地球釜等で加圧して蒸煮することが一般的であった難離解古紙のパルプ化において、常圧下で上記のとおり夾雑物面積率が低く、比引裂度が高い非木材パルプを得ることができるとの特長がある。
【0037】
〔蒸煮設備・蒸煮条件〕
本発明においては下記蒸煮条件にすることで、常圧下においても非木材パルプを充分に蒸解することができる。そのため蒸煮設備は、開放型のタンクやパルパー等を用いることができ、既存の設備の流用が利く利点がある。また、アジテーター等の攪拌設備を使用すると、均一な蒸煮が得られるため好ましい。加温方法も特に限定されず、蒸気を直接吹き込む方法を用いると、簡便に加温できるため好ましい。操業条件は次のとおり。
【0038】
(1)温度
80〜100℃で蒸煮することが好ましく、90〜100℃が更に好ましい。80℃を下回ると白色度の低下及び夾雑物の増加が発生しやすいため好ましくない。
【0039】
(2)パルプ濃度
3〜7質量%が好ましく、4〜6質量%が更に好ましい。3質量%を下回ると夾雑物が増加しやすいため好ましくなく、7質量%を超過すると比引裂度が低下しやすいため好ましくない。
【0040】
(3)アルカリ性薬品
アルカリ性薬品としては、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられるが、この中でも水酸化ナトリウムを使用すると、夾雑物の低減及び白色度の向上効果が高いため好ましい。アルカリ薬品の濃度は、固形分換算でパルプに対し1.5〜3.0質量%が好ましく、2.0〜2.5質量%が更に好ましい。1.5質量%を下回ると夾雑物が増加しやすいため好ましくなく、3.0質量%を超過すると白色度が低下しやすいため好ましくない。
【0041】
(4)酸性薬品
酸性薬品としては、二酸化塩素、次亜塩素酸ソーダ、酸素、オゾン、過酸化水素等が挙げられるが、この中でも過酸化水素を使用すると、白色度の向上効果が高く、比引裂度の低下が低いため好ましい。酸薬品の濃度は固形分換算でパルプに対し0.3〜0.7質量%が好ましく、0.4〜0.6質量%が更に好ましい。0.3質量%を下回ると白色度が低下しやすいだけでなく夾雑物も低下するため好ましくなく、0.7質量%を超過すると比引裂度が低下しやすいため好ましくない。
【0042】
(5)蒸煮時間
10〜40分が好ましく、15〜35分が更に好ましい。10分を下回ると白色度が低下しやすく、夾雑物が発生しやすいため好ましくなく、40分を超過すると比引裂度及び白色度が低下しやすいため好ましくない。
【0043】
上述のとおり、蒸煮工程において、(3)アルカリ性薬品として水酸化ナトリウムを固形分換算でパルプに対し1.5〜3.0質量%、(4)酸性薬品として過酸化水素を固形分換算でパルプに対し0.3〜0.7質量%で蒸煮することで、アバカ等のマニラ麻、及び、がんぴ又はみつまたを含有する古紙を蒸煮し、紙の原料として使用できる再生パルプを製造することができる。好ましくは、更に(1)温度80〜100℃、(2)パルプ濃度3〜7質量%、(5)蒸煮時間10〜40分とすることで、更に比引裂度が高く、夾雑物が少なく、地合いが良い、見栄えに優れた紙を得ることができる。上述のとおり、特にアバカ等のマニラ麻、及び、がんぴ又はみつまた等を含む古紙から再生パルプを製造するには、上記条件で蒸煮することで、常圧下で初めて比引裂度や地合いに優れるのみならず、白色度が高く、夾雑物が少ない、優れた紙として使用できる再生パルプを得ることができる。上記範囲外では、充分に離解できなかったり、離解したとしても繊維の強度が低下する傾向にあり、アバカ等のマニラ麻、及び、がんぴ又はみつまた等の非木材パルプを再生パルプとして使用しても、比引裂度や地合いに優れ、白色度が高く、夾雑物が少ない、優れた紙として使用することができなかった。
【0044】
〔離解工程・脱墨工程・漂白工程・精選工程〕
蒸煮後の非木材パルプは、離解工程・脱墨工程・漂白工程・精選工程を経ることで再生パルプが得られる。これらの工程は、一般にパルプ製造工程で用いられている方法を使用することができ、例えば、特開2002−155483号公報、特開2004−019024号公報、特開2004−019025号公報、特開2005−206979号公報に記載の方法を用いることができる。
【0045】
〔調成工程〕
離解工程・脱墨工程・漂白工程・精選工程を経た再生非木材パルプは、調成工程で叩解することで数平均繊維長を0.8〜1.2mmの範囲に調整することが好ましい。この再生非木材パルプを、パルプ総量のうち1〜20%を含有させた紙とすることで、比引裂度が高く、地合いが木材パルプからなる紙と同程度に高く、白色度が高く、夾雑物が少ない、見栄えに優れた紙を得ることができる。
【0046】
上記パルプは更に、凝結剤、凝集剤等の各種薬品が添加され、所定の品質に加工され、抄紙機に送られる。
【0047】
ここで非木材パルプは木材パルプに比べて繊維が硬いためフィブリル化しにくく、歩留りが悪い傾向がある。本発明においては、非木材パルプを数平均繊維長0.8〜1.2mmにまで叩解することで、歩留りの向上と、得られる紙の比引裂度及び地合いを向上させることができるが、しかしながら、古紙パルプ由来の非木材パルプは叩解段階で繊維がほぐされるだけでなく、繊維が切断して微細繊維が発生しやすく、抄紙機内部で微細繊維が堆積して異物化しやすいため、歩留りを向上させることが安定操業にとって重要となる。
【0048】
上記のごとく、数平均繊維長が0.8〜1.2mmと短い非木材パルプ、特に微細繊維を多く含む古紙由来の再生非木材パルプの歩留りを向上させるためには、次の種類の凝結剤及び凝集剤を用いた抄紙システムを使用することが好ましい。
【0049】
<凝結剤>
凝結剤の種類としては、2種類以上のポリマー成分をグラフト重合して得られる凝結剤を用いることが好ましい。前記ポリマー成分としては、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩等があげられる。これらの中でも、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリダドマック、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリアクリルアミドからなる群から選ばれる2種類以上のポリマー成分をグラフト重合して得られる凝結剤が好ましい。更に好ましくはポリエチレンイミンを主鎖とし、ポリアミン、又はポリダドマックをグラフト鎖としたものであり、特に好ましくはポリアミンをグラフト鎖としたものである。これらの構造の凝結剤を用いることにより、歩留りの悪い非木材パルプ、特に短繊維長の非木材パルプの歩留りを、特に古紙から再生した非木材パルプの歩留りを向上させることができ、非木材パルプを有効利用できるだけでなく、微細繊維が工程内で堆積したことに起因する工程内汚れ及び異物欠陥の発生をも防止できるため好ましい。また、上記凝結剤を使用することで、非木材パルプを配合しても地合いが充分に向上できるため好ましい。
【0050】
また、2種類以上のポリマー成分の重合状態は、2種類以上の成分が交互に、またはランダムに入り混じったランダム共重合体とするのは好ましくない。ランダム共重合体では、各成分の特性が組み合わさって均一な凝集性能を示すため、従来の一種類の成分からなる凝結剤と同様に、微細繊維の歩留り向上や比引裂度、地合いの向上を満足させることができない。凝集能力を有する主鎖に対し、同じく凝集能力を有するグラフト鎖をグラフト重合することで、微細繊維の歩留り向上や、比引裂度、地合いの向上の効果が得られる凝結剤となる。
【0051】
前記凝結剤の形状は、主鎖に対して複数本のグラフト鎖がグラフト重合した直鎖状であっても良く、主鎖に結合したグラフト鎖に更に、グラフト鎖成分や主鎖成分がグラフト重合した樹形図状(枝葉状)であっても良く、主鎖に結合したグラフト鎖同士が架橋した網目状であっても良く、主鎖あるいはグラフト鎖の一部が結晶化したミセル状であっても良い。より好ましくは、効率よく微細繊維をパルプ繊維に吸着でき、異物欠陥の発生が少なく、地合いが良い網目状または樹形図状であり、最も好ましくは樹形図状である。
【0052】
主鎖に対するグラフト鎖の割合は、構造や分子量によって異なるが、概ね5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。5質量%を下回ると、微細繊維の歩留り向上効果が得られにくく夾雑物が増加し、70質量%を上回ると、グラフト鎖が大きく凝集能力が増加しすぎて、地合いが悪化しやすくなるため好ましくない。
【0053】
前記凝結剤の分子量は、50万〜300万が好ましく、100万〜200万が好ましい。分子量が50万を下回ると、微細繊維の歩留りが低下し、得られる紙の密度が低下するため、紙の剛性が低下する。分子量が300万を超過すると、微細繊維の周囲に凝結剤が集中し、地合いが悪化する可能性があるため好ましくない。尚、本発明で言う分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)によって測定した重量平均分子量を言う。
【0054】
前記凝結剤は正電荷(カチオン性)であることが好ましい。電荷密度は、10〜25meq/gが好ましく、15〜20meq/gが更に好ましい。25meq/gを超過すると、微細繊維やアニオントラッシュを集めて異物化し易く、10meq/gを下回ると、微細繊維やアニオントラッシュを集め難く、紙表面が粗くなり、得られる紙の印刷適性が低下する。尚、本発明の電荷密度は、規定液にアニオン性高分子を用いたコロイド滴定法によって測定した。
【0055】
前記凝結剤の添加量は、パルプ総量に対して0.01〜0.15質量%が好ましく、0.03〜0.10質量%が更に好ましい。0.15質量%を超過すると、微細繊維の周囲に凝結剤が集中しやすく、地合いが悪化するため好ましくなく、0.01質量%を下回ると、微細繊維の歩留りが低下して夾雑物の発生が増加する。
【0056】
本発明では、2種類以上のポリマー成分をグラフト重合した凝結剤を用いることにより、フィブリル化しにくく、数平均繊維長が0.8〜1.2mmと短く、微細繊維の多い非木材繊繊維の歩留りを向上させ、非木材パルプを有効に使用することができる。これにより例えば、古紙パルプ由来であり微細繊維を多く含む非木材パルプを使用した場合においても、比引裂度及び地合いに優れた紙を製造することができる。特に、微細繊維が工程内に堆積したことに起因する工程内汚れをも効果的に防止することができ、夾雑物の発生が少ない紙を得ることができる。更に、主鎖とグラフト鎖の割合や、得られたグラフト重合体の分子構造、分子量、電荷密度を規定し、添加量を最適化することで、歩留りよく、異物欠陥の発生を防止でき、夾雑物が少なく、比引裂度及び地合いが特に高く、白色度が高く、特に見栄えに優れた紙を得ることができる。
【0057】
<凝集剤>
本形態においては、前記凝結剤を添加した後、さらに当該パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で、特定の凝集剤を添加することにより、更に非木材パルプの歩留りを向上させることで、異物欠陥の発生を防止するだけでなく、効果的に地合いを向上する効果があるため好ましい。凝集剤の成分としては、ベントナイトやコロイダルシリカなどの無機凝集剤、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンイミン(PEI)等の有機高分子系凝集剤のいずれをも用いることができる。但し、より好ましくはポリビニルアミン、ポリアクリルアミド、特に好ましくはポリアクリルアミドが、凝集能力が高く異物欠陥を発生しにくいだけでなく、地合いにも優れるため好ましい。ポリアクリルアミドを添加した後に抄紙する場合、地合いが悪化する可能性があるため、凝集剤はスクリーンの前に添加し、発生した凝集体をスクリーンで一旦、破壊し、適度に凝集性を弱めることが好ましい。かかるスクリーンは、目開きが0.33〜0.37mmのスリットタイプを用いると、効果的に地合いと歩留りを向上させることができるため好ましい。
【0058】
有機高分子系凝集剤の分子量は、好ましくは1000万〜2000万であり、更に好ましくは1200万〜1600万である。2000万を超過すると、微細繊維やアニオントラッシュを集めて異物化しやすくなり、1000万を下回ると、適度に繊維が凝集せず、得られる紙の比引裂度が低下するため、剛性が低下する。
【0059】
有機高分子系凝集剤の電荷密度は、好ましくは1〜10meq/gであり、更に好ましくは1〜5meq/gである。10meq/gを超過すると、微細繊維やアニオントラッシュを集めて異物化しやすくなり、1meq/gを下回ると、微細繊維やアニオントラッシュを集め難く、紙表面が粗くなり印刷適性が低下する。
【0060】
凝集剤の添加量は、パルプ総量に対して、好ましくは0.05〜0.30質量%であり、更に好ましくは0.10〜0.20質量%である。0.30質量%を超過すると、微細繊維やアニオントラッシュを集めて異物化しやすくなり、0.05質量%下回ると、適度に繊維が凝集せず、比引裂度が低下する。
【0061】
また、凝集剤の添加は、微細繊維を含むパルプ繊維と凝結剤を混合してから20分以上40分以下の間に添加することが好ましい。20分未満では、微細繊維の歩留りが低下し、40分を超過すると、地合いか悪化しやすいため好ましくない。
【0062】
このように、凝集剤の分子量や電荷密度、添加量を調整することで、歩留りの悪い非木材パルプの歩留りを、効果的に向上させることができるため好ましい。歩留りを向上できる理由としては、前記特定の凝結剤(グラフト重合体)により形成された、微細繊維が細かく分散されていない状態を、そのまま紙に抄き込むことができるためと考えられる。つまり、上記特定の凝集剤を用いない場合には、凝集剤により微細繊維が歩留らずに異物欠陥となったり、逆に一箇所に集まり易くなり、地合いが悪化する傾向にある。
【0063】
<その他薬品>
本形態においては、上記の凝結剤、凝集剤以外にも、必要に応じて填料、内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、嵩高剤、カチオン化剤、紙力増強剤、消泡剤、着色剤、染料等の各種製紙助剤等を添加しても良い。
【0064】
<填料>
填料としては、一般に抄紙用途で使用される填料を使用することができる。例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、シリカ、クレー、コロイド状含水シリカ(通称ホワイトカーボン)、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等の公知の填料を使用することができる。
【0065】
〔抄紙工程〕
本形態において使用できる抄紙設備としては、特に限定されないが、微細繊維の歩留りを向上させるには、ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型からなるプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるプレドライヤーパートを組み合わせることが好ましい。
【0066】
〔ワイヤーパート(ヘッドボックス)〕
調成されたパルプスラリーは、ヘッドボックスを経由してワイヤーパートに送られる。ワイヤーパートとしては、長網フォーマや、長網フォーマにオントップフォーマを組み合わせたもの、あるいはツインワイヤーフォーマなど、特に限定されないが、ヘッドボックスから噴出された紙料ジェットを2枚のワイヤーで直ちに挟み込むギャップタイプのギャップフォーマが、両面から脱水するため、パルプ繊維の移動が抑制され、地合いに優れるため好ましい。特に本発明のごとく、木材パルプと非木材パルプを併用した場合は、両者を均一に混合しにくく、凝集力の差により地合いが悪化しやすい。このため、地合いの悪化が発生しにくいギャップフォーマーを用いることが好ましい。
【0067】
〔プレスパート〕
ワイヤーパートでの紙層は、プレスパートに移行され、さらに脱水が行われる。プレス機としては、ストレートスルー型、インバー型、リバース型のいずれであってもよく、またこれらの組み合わせも使用することができるが、オープンドローを無くしたストレートスルー型が、紙を保持しやすく、断紙などの操業トラブルが少ないため、好ましい。脱水方式としては、通常行われているサクションロール方式やグルーブドプレス方式等の方法を使用することができるが、脱水性が高いシュープレスを用いると、紙に掛かる線圧が低減でき、地合の悪化を軽減することができるため好ましい。
【0068】
〔プレドライヤーパート〕
プレスパートを通った湿紙は、シングルデッキ方式のプレドライヤーパートに移行し、乾燥が図られる。プレドライヤーパートは、断紙が少なく高効率に乾燥を行えるノーオープンドロー形式のシングルデッキドライヤーが好ましい。ダブルデッキ方式にて乾燥する方式も可能だが、キャンバスマーク、断紙、シワ、紙継ぎ等の操業性の面で、シングルデッキ方式に劣るため好ましくない。
【0069】
上記のとおり、ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型からなるプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるプレドライヤーパートを組み合わせた抄紙設備を用いると、非木材パルプ及び木材パルプからなる紙であっても、地合いや断紙等の操業性が良く、生産性良く紙を製造することができるため好ましい。
【0070】
〔塗工工程〕
上記紙は、そのままで用いることもできるが、見栄えや印刷適性を向上させる目的で、紙上に水溶性高分子を主成分としたクリア塗工層や、顔料及び接着剤を主成分とした顔料塗工層を設けても良い。
【0071】
塗工層は、一般に製紙用途で用いられる塗工機で塗工することができ、例えば、2ロールサイズプレスコーターやゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、又はシムサイザーやJFサイザー等のフィルム転写型ロールコーター等の塗工機が挙げられる。
【0072】
塗工装置はまた、抄紙機と一体なったオンマシンコーターを用いると、オフマシンコーターに比べて、より短時間で製品を製造することができるため、幅方向、流れ方向の水分ムラが低減でき、より均一な被覆ができ、均一な表面強度が得られるため好ましい。なお、ドライヤーパートでの乾燥方法としては、例えば、熱風加熱、ガスヒーター加熱、赤外線ヒーター加熱等の各種加熱乾燥方式を適宜採用することができる。
【0073】
〔平坦化工程〕
上記塗工層には、少なくとも一方が熱ロールとされた一対のロール、好ましくは弾性ロール及び金属ロール間に紙を通して平坦化処理を施し、光沢性や平坦性、印刷適性を向上させることができる。
【0074】
平坦化設備としては、一般に製紙用途で使用する設備を用いることができ、例えばマシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等を挙げることができる。カレンダーの設置場所としては、抄紙機及び塗工機と一体になったオンマシンタイプが好ましい。オンマシンタイプでは、塗工後すぐ、紙面温度が高い状態で平坦化処理できるため、目的の塗工紙を得るために必要な線圧が低く、比引裂度や地合いの低下が少ないため好ましい。
【0075】
以上のようにして得られた紙は、非木材パルプ及び木材パルプを含有しているため、比引裂度が高く地合いが良く、見栄えに優れた紙を得ることができる。また、特定の凝集剤及び凝結剤を使用することにより、例えば古紙由来の非木材パルプのごとく、微細繊維を多く含む原料を使用しても、比引裂度が高く地合いが良く、歩留りが良いため微細繊維の工程内堆積に起因する異物欠陥の発生を防止でき、白色度が高い、特に見栄えの良い紙を得ることができる。加えて、特定の抄紙設備(ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型からなるプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるプレドライヤーパートを組み合わせた抄紙設備)を用いることで、断紙が発生しにくく操業性を向上することができ、特に生産性良く、木材パルプ及び非木材パルプを含有する紙を製造することができる。
【実施例】
【0076】
次に、本発明の紙を、実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0077】
まず、非木材パルプとして、表1に示す種類の非木材パルプを主成分とする古紙原料又は植物原料を、表1の蒸煮条件(非木材パルプ1及び2で共通)で蒸煮し、水洗した後、離解工程、脱墨工程、漂白工程、精選工程を経た後、表1に示す数平均繊維長になるまで叩解し、非木材パルプを得た。
【0078】
次に、非木材パルプ1、2及びLBKP(数平均繊維長:0.8mm)を表2の割合で混合した後、この混合パルプ100質量部(絶乾量)に対して、各々固形分で、カチオン化澱粉(品番:アミロファックスT−2600、アベベジャパン(株)製)1質量%、填料(軽質炭酸カルシウム:品番:TP121−6S、奥多摩工業(株)製)2質量%、および、表2のとおり凝結剤(0.05質量%)、凝集剤(0.15質量%)を添加してパルプスラリーを得た。用いた薬品は次のとおり。
【0079】
・凝結剤(全て正電荷であり、カチオン性を有する。主鎖に対するグラフト鎖の割合は30質量%、重量平均分子量は100万、電荷密度は18meq/gのものを用いた)
a)主鎖PEI、グラフト鎖PAm:ポリアミングラフトポリエチレンイミン(樹形図状、品番:SC924、ハイモ(株)製
b)主鎖PAM、グラフト鎖PAm:ポリアミングラフトポリアクリルアミド
c)主鎖PDADMAC、グラフト鎖PAm:ポリアミングラフトポリDADMAC
d)主鎖ポリアクリル酸Na、グラフト鎖PAm:ポリアミングラフトポリアクリル酸ナトリウム
e)主鎖PEI、グラフト鎖PDADMAC:ポリDADMACグラフトポリエチレンイミン
尚、実施例45〜47では、実施例1に記載の凝結剤の重合形態を変更した凝結剤を用いた。
【0080】
・凝集剤(重量平均分子量:1400万、電荷密度3.0meq/gのものを用いた)
a)PAM(品番:ND270、ハイモ(株)製)
b)コロイダルシリカ(品番:NP442、エカケミカルス(株)製)
c)PEI:ポリエチレンイミン(品番:ポリミンPR8150、BASF社製)
次に、ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型のプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるプレドライヤーパートを経て紙匹を製造した後、この両面に澱粉塗液を片面あたり0.5g/mの塗工量で、フィルム転写型ロールコーターを用いて塗工した。塗工後、アフタードライヤーパートで乾燥し、2ロール1スタックのソフトカレンダーからなるプレカレンダーを用いて、線圧25kN/mの線圧で平坦化処理を行った。その後、リールパート、ワインダーパートに供して塗工紙を得た。
【0081】
得られた塗工紙の米坪は、JIS P 8124:1998に準じて測定して70g/mであった。この塗工紙について、以下のとおり評価した。結果は、表2に示す。
【0082】
(a)数平均繊維長、繊維粗度及び非木材パルプと木材パルプとの割合
数平均繊維長は、カヤニ繊維長測定器(FIBER LAB)(METSO社製)を用いて5回測定して得られた値の平均値とした。繊維粗度及び非木材パルプと木材パルプとの割合は、JIS P 8120:1998「紙、板紙及びパルプ−繊維組成試験方法」に準じてC染色液を用いて測定した。なお、ここで非木材パルプは、C染色液を用いて次のとおり変色した繊維について数えた。緑みの青、又は灰青・すみれ青・強い青(わら・エスパルト)、ワインレッド又は茶赤色(ぼろ(木綿、リネン、大麻、ラミーなど))、黄みの灰色・薄い青及び灰紫(アバカ等のマニラ麻)、くすんだ青〜薄い紫(竹・ガバス)、明るいオリーブ色から明るい青みの灰色(がんぴ・みつまた)、薄い赤みの茶色(こうぞ・桑)。また、木材パルプは同様に、黄と茶色の陰影色(針葉樹・KP・未ざらし)、明るい青みの灰色又は灰色(針葉樹・KP・さらし)、茶色みの紫(針葉樹・KP・溶解)、青みの緑〜暗い青(広葉樹・KP・未ざらし)、強い青(広葉樹・KP・さらし)、青紫(広葉樹・KP・溶解)に変色した繊維について数えた。
【0083】
(b)比引裂度
JIS P 8116:2000「紙−引裂強さ試験方法−エレメンドルフ形引裂試験機法」に準じて測定した。
【0084】
(c)白色度
JIS P 8148:2001「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色反射率)の測定方法」に準じて測定した。
【0085】
(d)地合い
紙の地合いを目視にて、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:地合いのムラがなく、木材パルプからなる紙と同程度に良く、実使用可能。
○:地合いのムラが若干発生し、見た目は僅かに劣るが、実使用可能。
△:地合いのムラが多少発生し、見た目に多少劣るが、実使用可能。
×:地合いのムラが発生し、見た目に劣り、実使用不可能。
【0086】
(e)夾雑物面積率
得られた非木材パルプを手漉きで抄紙し、夾雑物試験機を用いて、1mあたりの夾雑物面積(mm)を測定し、異物欠陥の発生量の指標とした。夾雑物試験機はESKクリエイト有限会社製(スキャナ:EPSON ES−2000)を用い、解像度:1600DPI、最小測定面積:0.001mm、測定面積:A4で測定した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
表1及び2より、実施例の塗工紙はいずれも、非木材パルプ及び木材パルプを混合し、非木材パルプ及び木材パルプの割合が、1:99〜20:80であるため、比引裂度及び白色度が高く、地合いが良好で、夾雑物面積率(異物欠陥)が少ない紙であることが分かる。
【0090】
これに対して、比較例の塗工紙は、実施例の様に非木材パルプ及び木材パルプを混合していなかったり、非木材パルプ及び木材パルプの割合が、1:99〜20:80でないため、比引裂度が低く、白色度が低く、地合いが悪く、夾雑物面積率(異物欠陥)が多い紙である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明により、比引裂度及び白色度が高く、地合いが良好で、夾雑物面積率(異物欠陥)が少ないため、印刷用紙や加工紙等に好適に使用できる紙が得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非木材パルプ及び木材パルプを混合した原料パルプを抄紙して得られる紙であって、前記非木材パルプ及び木材パルプの割合が、1:99〜20:80であることを特徴とする、紙。
【請求項2】
前記非木材パルプが、少なくともマニラ麻と、がんぴ及び/又はみつまたとを含有し、前記マニラ麻と、がんぴ及びみつまたの合計との割合が、80:20〜99:1であることを特徴とする、請求項1に記載の紙。
【請求項3】
前記非木材パルプの数平均繊維長が0.8〜1.2mmであり、繊維粗度が10〜12mg/100mであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の紙。
【請求項4】
前記非木材パルプが、非木材パルプを含む古紙から再生した再生パルプであることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の紙。
【請求項5】
請求項4に記載の紙を製造する方法であって、非木材パルプを含む古紙を蒸煮・離解・脱墨・漂白・精選工程に付すことで再生非木材パルプを得る工程、並びに、得られた再生非木材パルプと木材パルプとを含む原料パルプを抄紙する工程、とを含むことを特徴とする、製造方法。

【公開番号】特開2010−111970(P2010−111970A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285885(P2008−285885)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】