説明

素子を眼球に結合する装置

【課題】眼レーザー放射を正確に眼球に結合させるために、固定装置を用いて眼球を固定する固定装置である眼科手術用の吸引リングを提供する。
【解決手段】吸引リングを眼球18上に吸引するように設計された第1吸引領域4、及び機能素子12を吸引するように設計された第2吸引領域10を有する。機能素子12及び/または吸引リングは測定手段を有することができる。機能素子12はコンテナの様式で形成することができ、これにより機能素子12は、動作中に眼球18の角膜19とレンズとの間に位置する液体を受け入れることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科手術用の吸引リングに関するものであり、この吸引リングは、当該吸引リングを眼球上に吸引すべく指定された第1吸引領域、及び機能素子を吸引すべく指定された第2吸引領域を有する。
【背景技術】
【0002】
パルスレーザー放射は、眼科手術、例えば角膜の切開を行う目的で、あるいは組織を角膜から切除(アブレーション、焼灼)する目的で用いられている。放射されたレーザー放射は、角膜組織内に光破壊または光剥離プロセスをもたらし、組織の切断または組織物質の除去を生じさせる。こうした角膜の治療は、例えば目の視覚障害を軽減または完全に解消するための屈折矯正プロセスの範囲内であり、このプロセスでは、角膜が再形成され、この方法により角膜の屈折特性が変化する。
【0003】
角膜手術の有力な屈折矯正プロセスはいわゆるLASIK(Laser in-situ Keratomileusis)(レーシック:レーザー近視手術)である。この場合は、カバーのエッジの一部分によって角膜に接続されたままである小型カバーを、(いわゆる微小(マイクロ)角膜切開刀における振動カッティングブレード(切刃)を用いて)機械的に、あるいは(レーザー放射を用いて、例えばフェムト秒レーザーシステムを用いて)光学的に、のいずれかで角膜から切り取る。その後に、通常はフラップとも称されるこのカバーを脇に折り畳み、その結果、(カバーの)下にある間質(固有質)に達することができる。そして間質組織を、それぞれの患者用に確定したアブレーション特性に応じたレーザー放射で切除する。そして折り畳んだカバーを戻し、その結果、傷は比較的速く治癒することができる。
【0004】
レーザー放射を正確に眼球に結合させるために、この場合は、固定装置を用いて眼球を固定することが知られ、この固定装置は不完全真空によって眼球に吸着する。この固定装置は、レーザー放射用の結合素子として働くガラスを表に出すことができる。こうした型の固定装置は吸引リングとも称される。
【0005】
吸引リングを患者の眼球上に配置し、不完全真空を用いて固定するとすぐに、フェムト秒レーザーのパルスによってエネルギーが角膜の内部に導入される。その結果、角膜の切開が行われ、組織片を上向きに折り畳むことができ、そして視覚障害の矯正を、露出した角膜組織の所定の切除によって行うことができる。
【0006】
吸引リング自体は、例えば次の特許文献のように当業者に知られている:
特許文献1(米国特許第5336215号明細書)及び特許文献2(米国特許第5549632号明細書)は、その周辺領域に開口部を含む吸引リングを開示し、これらの開口部は、眼球に吸着する目的の吸引領域の形をとる。特許文献3(欧州特許第0993814号明細書)及び特許文献4(米国特許第6432053号明細書)は、不完全真空が圧平面の領域内に発生して眼球の角膜がこの領域上に置かれる吸引リングを開示している。特許文献5(米国特許第6344040号明細書)は、不完全真空が圧平面の領域内に発生する吸引リングを提示し、この吸引リングはさらに、動作中に角膜に突き通り、光破壊プロセス中に生じる気体及び粒子を吸引によって抽出するプローブを含む。特許文献6(国際公開第03/002008号パンフレット)は、吸引リングの周辺に形成された吸引領域、及び鉗子状のグリッパ(つかみ具)を用いて吸引リング上に配置されたレンズを持つ円錐形のレンズマウントを有する吸引リングを開示している。
【0007】
特許文献7(国際公開第00/41660号パンフレット)は、目の手術を実行する装置を記載し、この装置は、第1の環状の固定真空領域、及び中央の可動真空領域を有する。動作中には、可動真空領域が手術する角膜上に配置され、この角膜に手術のための所望形状を与えることができる。第2の真空領域は複数の素子を含むことができ、これにより手術中にその形状、従って角膜の輪郭を変化させることができる。
【0008】
特許文献8(国際公開第03/001991号パンフレット)は、眼圧を測定するための複数のストレイン(歪み)ゲージを有するコンタクトレンズを開示している。これらのストレインゲージへの給電及び通信は非接触の方法で行われる。
【0009】
現在技術に属する吸引リングは圧平素子を含み、これらの圧平素子は、精巧な機械的器具を用いて吸引リングに結合されている。
【0010】
吸引リングの吸引中に作用する眼圧は損傷を生じさせることがあり、そして今までは、この眼圧は目の治療中に手術医が知ることができなかった。さらに、例えばフェムト秒レーザーシステムに関しては、吸引リングの位置決めは厳密であり、特定の環境下では、治療台の変位の結果として治療の誤りまたは傷害を生じさせ得る。特に治療台及びレーザービームに関しては、吸引リングの位置及び眼球の位置は安全にかかわる。レーザー治療中に眼球に作用する機械力は、特定環境下では、頭部の移動中に生じる機械力に影響され、傷害をもたらし得る。治療中には、角膜の含水量及び/または生体力学特性は、治療の結果にとって重要であり得る。角膜の透明度も同様に、手術の安全性を改善するために、レーザーパルスによる治療にとって重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5336215号明細書
【特許文献2】米国特許第5549632号明細書
【特許文献3】欧州特許第0993814号明細書
【特許文献4】米国特許第6432053号明細書
【特許文献5】米国特許第6344040号明細書
【特許文献6】国際公開第03/002008号パンフレット
【特許文献7】国際公開第00/41660号パンフレット
【特許文献8】国際公開第03/001991号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、吸引リングの可能な応用を拡張することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、動作中に眼球吸引装置を眼球上に吸引するように設計された第1吸引領域、及び機能素子を含む眼球吸引装置によって達成される。これらの眼球吸引装置または機能素子は、動作中に機能素子を眼球吸引装置に吸引するように設計された第2吸引領域を含む。第2吸引領域は、機能素子上及び/または眼球吸引装置上に配置することができる。手術前、手術中、及び/または手術後に、手術医は任意の必要な素子を、複雑で時間を要する作業ステップを必要とすることのない単純な方法で眼球吸引装置に結合することができ、その結果、治療の成功が保証される。さらに、手術の手順の前に、手術医は適切な機能素子をより簡単に選択して眼球吸引装置に結合することができる。「眼球吸引装置」とは、眼球上に吸引されるように設計されたあらゆる装置、例えばいわゆる吸引リングを包含する。上記吸引領域は、例えば開口部または凹部によって形成することができ、動作中にこの開口部または凹部内が不完全真空になる。この不完全真空は、例えば上記吸引領域に接続した真空ポンプによって発生することができる。しかし、例えば真空吸引領域が生じるように変位させた封止(シール)リップによって、機能素子を眼球吸引装置に結合すると、あるいは眼球吸引装置を眼球に結合すると、この部分真空が自動的に生じることも可能である。
【0014】
上記機能素子は光学素子、例えばガラスまたはレンズとすることができ、これらの光学素子を通してレーザー放射が角膜内に導入される。さらに、この光学素子はいわゆる圧平レンズまたは圧平プレートとすることができる。上記機能素子は、他の素子をこの機能素子上に配置できるように設計された保持素子とすることができる。この保持素子上に光学素子を配置することができる。その結果、この光学素子を非常に容易に交換することができるので、特に多用途の眼球吸引装置ができる。この保持素子上には圧平素子も配置することができ、この場合は、保持素子上に配置した光学素子も圧平レンズの形をとることができる。上記機能素子は、光学素子に結合されるように設計することができる。この光学素子は、レーザーシステム、例えば関連する光学素子を伴うフェムト秒レーザーシステムとすることができる。上記機能素子は、導入部で述べた機械的微小角膜切開刀とすることもできる。上記機能素子は、アダプタコーン(適合円錐体)とすることもでき、この適合円錐で吸引リングを眼科用装置上に結合する。上記機能素子は、圧平素子を保持するため、及び眼球吸引装置を眼科用装置に結合するための両方で設けることができる。以下では、こうした種類の機能素子を保持素子と称する。
【0015】
上記眼球吸引装置は、上記第1吸引領域に接続された第1不完全真空供給管、及び上記第2吸引領域に接続された第2不完全真空供給管を含むことができる。これらの真空供給管は1つ以上の吸引ポンプに接続することができる。動作中に、第1不完全真空供給管を、第2不完全真空供給管とは異なる不完全真空にすることができ、その結果、第1吸引領域内と第2吸引領域内とに異なる不完全真空が生じる。その結果、第1吸引領域内に発生するような眼球を損傷させ得る高度な不完全真空なしに、上記機能素子を眼球吸引装置に強固に結合することができる。
【0016】
上記眼球吸引装置は、動作中に、眼球の角膜の少なくとも1つの領域が上記機能素子上及び/またはその上に配置した素子上に置かれるように設計することができる。その結果、角膜の正確な固定が生じ、安全な手術手順を保証する。上記眼球吸引装置は第3吸引領域を含むことができ、この第3吸引領域は、動作中に、眼球の角膜が置かれる上記機能素子の表面及び/またはこの機能素子に取り付けられた素子の表面と流体連通する。その結果、角膜はその定位置に特に良好に固定される、というのは、角膜と機能素子、または保持素子上に配置された素子との間の領域が真空吸引されるか、あるいは不完全真空にされるからである。さらに、角膜と機能素子及び/または機能素子上に配置された素子との間の領域内に行き渡る不完全真空を、第1及び第2吸引領域内の不完全真空とは無関係に設定することができる。その結果、傷害の恐れが最小化され、及び/または患者にとっての治療の快適性が増加する、というのは、眼球吸引装置が眼球上に吸引される力は、角膜が機能素子及び/または機能素子上に配置された素子上に吸引される力と異ならせることができるからである。これに加えて、冗長性を示す特に安全な眼球吸引装置が生じる、というのは、2つの真空吸引システムを用いて、一方では眼球吸引装置を眼球に固定し、他方では、角膜を機能素子及び/または機能素子上に配置された素子に固定するからである。眼球吸引装置は弾力的に、第1、第2、及び/または第3吸引領域上に形成することができる。
【0017】
簡略化した好適例では、第3不完全真空供給管は、第1または第2不完全真空供給管と流体連通することができる。
【0018】
上記光学素子は圧平素子とすることができる。この圧平素子は眼球吸引装置に取り付けることができる。圧平素子がレーザー放射にさらされた手術後には、圧平素子を交換しなければならない。眼球吸引装置は、動作中に不可分に取り付けられた圧平素子を含むことができる。圧平素子は結果的に、眼球吸引装置に統合される。眼球吸引装置は、動作中にこれに不可分に取り付けた滅菌した使い捨て品の形の圧平素子によって利用可能にすることができる。その結果、より費用効果的な眼球吸引装置を得ることができる。さらに、こうした種類の眼球吸引装置により、圧平素子及び吸引された再使用可能な保持素子に至る機械的公差(許容誤差)の連鎖を低減することができ、この保持素子はアダプタコーン(適合円錐体)とも称する。低減された公差の連鎖により、治療の結果が改善される。
【0019】
機能素子はコンテナ(容器)素子の形をとることができ、このコンテナ素子は、動作中に眼球吸引装置の第2吸引領域によって吸引される第1軸端、第1軸端と反対側の第2軸端、及び第1軸端から第2軸端まで延びる壁面を含む。このコンテナ素子は、その第1軸端及び第2軸端を開口させることができ、軸方向の周りは壁面によって閉じることができ、そして光学素子は第2軸端に配置することができる。この壁面は第1開口部を有することができ、この第1開口部を通って流体が流出することができる。光学素子はレーザービーム用の集束レンズとすることができる。コンテナ素子の理由により、集束レンズは角膜からの固定間隔を有し、その結果、安全な治療が保証される。
【0020】
流体が第1開口部を通って導入される場合は、第1吸引領域の特に良好な封止(シール)を保証する湿性のフィルム(薄膜)を第1吸引領域の付近に配置し、その結果、眼球吸引装置が眼球に特に強く結合される。液体の粘性が高いほど、追加的な封止効果はより良好になる。
【0021】
上記コンテナ素子に流体を満たすことができ、この流体の屈折率は角膜の屈折率にほぼ相当する。その結果、角膜への遷移点において光の光学収差は生じず、その結果、レーザービームの良好な集束性、及びレーザービームの高い光学品質が保証される。この流体は、約1.35から約1.40までの屈折率ηfluid、好適には約1.36から1.38まで、最も好適には約1.37の屈折率ηfluidを示すことができる。角膜の屈折率ηcorneaは約1.376に等しく、流体の屈折率が同様の屈折率を示せば、アイコンタクト(眼球接触)光学素子から角膜への遷移点において、光ビームまたはレーザービームの品質及び/または強度は低下しない。
【0022】
反射損失は次式のように計算される:
【数1】

【数2】

とすれば、反射損失はほとんど生じない。
【0023】
第2開口部を通って、コンテナ素子の充填過程中に空気が逃げることができる。
【0024】
さらに、この好適例では圧平素子を必要とせず、その結果、治療中に眼圧は増加しない。さらに、圧平素子を用いる場合のような球面または非球面の圧平の理由による、例えば波面誤差のような収差は生じ得ない。その結果、低い波面誤差を有するレーザー放射が得られ、このことは集束に関して有利である、というのは、焦点位置の散乱がより小さく、レーザー放射がより小さい焦点領域上に集中するからである。
【0025】
出願人は、前述したコンテナ素子を有する眼球吸引装置に関する態様の保護のための別出願を行う権利を明示的に留保し、これらの眼球吸引装置及びコンテナ素子は一体に形成することもでき、あるいは不完全真空によってだけでなく機械的に、例えば積極的に、あるいは摩擦で互いに結合することができる。
【0026】
眼球吸引装置は少なくとも1つの測定手段を含むことができる。「測定手段」とは、この関係では、幾何学的量、物理量、及び/または化学量の質的及び/または量的な測定または確認も含む。眼球吸引装置は複数の測定手段を含むことができる。機能素子は少なくとも1つの測定手段を含むことができる。
【0027】
既知の吸引リングは頻繁に消毒、滅菌、及び交換しなければならず、そして目は特に敏感な器官であるので、特に手術中は、非常に敏感な角膜の部分を上向きに折り畳むので、当業者は今までは、吸引リング上により巧妙な測定手段を配置すること、あるいは眼球の直近にある吸引リング上または吸引リング内に配置されるより巧妙な測定手段を作製することを阻まれてきた。
【0028】
眼球吸引装置の測定手段の少なくとも1つは、眼球の特性に関する測定を実行するように設計することができる。この測定手段は眼圧を測定するように設計することができ、この場合は、例えば触覚(触知、触認)、機械的、音響、及び光学プロセス、また特に共振プロセスによって眼圧を確認することができる。
【0029】
眼球吸引装置の少なくとも1つの測定手段は、眼球の角膜の特性を測定するように設計することができる。眼球の角膜の特性を測定するための測定手段は、角膜の含水量、角膜の生体力学的特性、及び/または角膜の透明度を測定することができる。含水量は例えば分光計によって測定することができ、角膜の生体力学特性は例えば機械的分光プロセスによって測定することができ、そして角膜の透明度は光を散乱させることによって測定することができる。
【0030】
眼球吸引装置は、眼球に作用する量を測定する測定手段を含むことができる。眼球に作用する量を測定する測定手段は、眼球に作用する力を測定することができる。この目的のために、圧力センサ、例えば圧電型圧力センサ、あるいは力センサを吸引リングに統合することができる。さらに、例えば当該光学素子を通してレーザー放射を導入する光学素子上に配置した微小電気機械(MEM)システムを用いることができる。
【0031】
眼球吸収装置は、環境に対する眼球の特性及び/または眼球吸引装置の特性を測定するための少なくとも1つの測定手段を含むことができる。環境に対する眼球の特性及び/または眼球吸引装置の特性を測定する測定手段は、例えば、空間内の眼球の位置及び/または眼球吸引装置の位置を測定することができる。環境に対する眼球の位置及び/または吸引リングの位置を測定する手段は、治療台の位置決め手段及び/またはレーザー放射の位置決め手段と相互作用するように設計することができる。その結果、眼球が常に適正位置に配置され、レーザー放射が眼球の角膜上の適正位置に適正な角度で当たることが保証される。眼球の位置及び/または吸引リングの位置は、機械的、高周波ベースの、音響的、あるいは(三次元の)光学的位置検出に基づくことができる。この測定手段は、眼球吸引装置上に吸引される機能素子上に配置することができる。
【0032】
この測定手段は、確定した測定データを送信するように設計することができる。測定データは、誘導的に、ケーブルを介して、光インタフェースを介して、あるいは電磁気インタフェースを介して送信することができる。この測定手段は、バッテリを含むことができ、誘導的に電流を供給することができ、あるいは給電線経由で電流を供給することができる。この測定手段はさらに、通信装置を含むことができる。例えば、この測定手段はトランスポンダの形をとることができ、誘導励起または電磁励起が外部から行われ、測定装置の通信装置は確定した測定値を誘導的または電磁的に送信する。出願人は、機能素子を吸引リング上に吸引する必要なしに、測定装置付きの眼球吸引リングまたは眼球吸引装置について別個に、保護を請求する権利を明示的に留保する。
【0033】
以下、本発明を図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施例による定縮尺でない概略断面図である。
【図2a】図2aは、本発明の第1実施例による定縮尺ではない概略断面図である。
【図2b】図2bは、本発明の第3実施例による定縮尺でない概略断面図であり、第2吸引領域が機能素子上に位置する。
【図3】本発明の概略正面図である。
【図4】本発明の第4実施例の定縮尺でない概略断面図であり、治療中に液体が集束レンズと角膜との間に配置されている。
【図5】本発明の第5実施例の定縮尺でない概略断面図であり、圧平素子が眼球吸引装置に取り付けられている。
【図6】本発明の第6実施例の定縮尺でない概略断面図であり、圧平素子が眼球吸引装置に取り付けられている。
【図7】本発明の第7実施例の定縮尺でない透視図であり、測定装置を有する眼球吸引装置を含む。
【図8】本発明の第7実施例による定縮尺でない概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に、第1吸引領域4及び第2吸引領域10を有する眼球吸引装置2を示し、第1吸引領域4は、動作中に眼球吸引装置2を眼球18上に吸引するように設計され、第2吸引領域10は、動作中に機能素子12を吸引するように設計されている。機能素子12は、レンズまたはプレート(平板)11の形をとる光学素子11を含む。さらに、機能素子12は接続領域13を含み、接続領域13により、機能素子をレーザーシステム、例えばフェムト秒レーザーシステムの光学装置(図示せず)上に結合することができる。
【0036】
眼球吸引装置2はさらに、機能素子12と眼球18の角膜19との間の空間と流体連通し、これにより角膜の少なくとも一部分が機能素子12上に置かれる。角膜19が置かれる領域は、圧平レンズまたは圧平板11の形をとることができる。眼球吸引装置2は複数の不完全真空供給管20、22、24(図1では1つだけ見える)を含み、これらの供給管は1つの吸引ポンプに接続され、あるいは各々が1つの吸引ポンプに接続され、あるいは3つの別個の制御装置または3つの別個の制御バルブを有する吸引ポンプに接続されている。その結果、異なる不完全真空を、第1吸引領域4内、第2吸引領域10内、及び第3吸引領域6内に発生することができる。第2吸引領域10内では、高度な不完全真空を設定して、機能素子12を眼球吸引装置上に固定配置することができる。第1吸引領域4及び/または第3吸引領域6内では、より低い不完全真空を設定して眼球18を負傷させないことができる。さらに、手術前に、手術医は不完全真空を第2吸引領域2のみに適用して、機能素子12を眼球吸引装置2上に配置することができる。眼球吸引装置2を患者の眼球18上に位置決めする過程中に、第1吸引領域4内に不完全真空を発生させて、眼球吸引装置2を眼球18上に固定配置することができる。最後に、第3吸引領域6内に不完全真空を発生させて、眼球18の角膜を機能素子12上に固定配置することができる。しかし、まず眼球吸引装置2を眼球18上に配置し、その後に第2吸引領域10内に真空を発生させて機能素子12を配置することも考えられる。
【0037】
本発明による眼球吸引装置は、眼球に対する傷害を回避する、というのは、第1吸引領域4内には、第2吸引領域10内及び/または第3吸引領域6内とは異なる不完全真空を発生させることができるからである。さらに本発明は、眼球吸引装置が第1吸引領域4及び第3吸引領域6の両方によって保持されるので、冗長性を生み出す。
【0038】
第1吸引領域4は、眼球吸引装置内の周囲溝の形をとることができる。第2吸引領域10は、眼球吸引装置の前面または上面上の2つの円形周囲溝によって形成される。ここでも、第1吸引領域に関して前述した構成が可能である。第1実施例では、第3吸引領域は、眼球吸引装置2から機能素子12への遷移領域内に位置する。その結果、角膜19の一部分が機能素子12の表面上に吸引されることを保証することができる。
【0039】
機能素子12は、そのための特別なツール及び/または巧妙な動作ステップを必要とせずに、簡単に交換することができる。動作中には、機能素子12は、例えば他の光学素子11、圧平素子11、及び/または他の接続領域13を含む他のものと簡単に交換することができる。
【0040】
図2aに、本発明の第2実施例を示し、同一参照符号は同一要素を表す。第1、第2及び第3吸引領域、並びに不完全真空供給管に関しては、図1による実施例の説明を参照されたい。
【0041】
図1による実施例とは対照的に、図2aによる実施例では、保持素子14が第2吸引領域10内の不完全真空によって眼球吸引装置2上に配置される。保持素子14は、他の素子を上に配置するか取り付けることのできるあらゆる素子とすることができる。保持素子14は、眼球吸引装置2に対面するその領域上に円形の周囲凹部を含み、この周囲凹部内に光学素子16が配置される。光学素子16は圧平素子または圧平レンズの形をとることができる。保持素子14は接続領域(図示せず)も含み、この接続領域により保持素子をレーザーシステムの光学器に結合することができる。
【0042】
第3吸引領域6内の不完全真空により、角膜19は保持素子14上に配置された光学素子16上に吸引される。
【0043】
図2bに、本発明の第3実施例を示し、この実施例は第2実施例に似ている。第2実施例とは対照的に、第3実施例では、眼球吸引装置2’が第2吸引領域を含まない。第2吸引領域10’は機能素子14’内に配置されている。第2不完全真空供給管22’を介して、第2吸引領域10’内に不完全真空が発生する。眼球吸引装置2’の構成及び機能素子14’の構成は、第2実施例のそれぞれ眼球吸引装置2の構成及び機能素子14の構成に相当する。
【0044】
図3に、動作中の機能素子を装着していない、本発明による吸引装置の前面図を示す。
【0045】
この眼球吸引装置は、第1吸引領域に接続された第1不完全真空供給管20、第2吸引領域に接続された第2不完全真空供給管22、及び第3吸引領域に接続された第3不完全真空供給管24を含む。この眼球吸引装置は、ほぼ円形である必要はない。この眼球吸引装置は、例えば楕円形リングまたは多角形リングの形をとることもできる。
【0046】
図4に、本発明による吸引リング2の第4実施例を示し、この実施例では、眼球18の治療中に、流体が集束レンズ64と眼球18の角膜との間に配置される。第1不完全真空領域4を利用して、眼球吸引装置2は眼球18上の、例えば強膜または縁上に結合される。眼球吸引装置2における眼球18に接触する領域は、この領域内の眼球18の解剖学的形状を模倣し、このため眼圧は増加しないか少し増加するだけである。しかし、眼球吸引装置2及びその上に配置された要素は、治療する角膜の領域内で眼球18に接触せず、及び/または眼球18を覆わず、その結果、約10mmの開口数が生じる。
【0047】
眼球吸引装置2は、コンテナ素子50をその第1軸端56で吸引する第1吸引領域4を含む。コンテナ素子50の第1軸端56の反対側には第2軸端58が位置し、第2軸端58上に集束レンズ64を配置することができる。壁面52が、コンテナ素子50の第1軸端56から第2軸端58まで、コンテナ素子50の長軸の周りに軸方向に延びる。その結果、コンテナ素子50はその側面が壁面52によって閉じられ、上方は集束レンズ64によって閉じられ、下方は眼球18の角膜によって閉じられる。
【0048】
壁面52は第1開口部60及び第2開口部62を有し、第1開口部60を通して流体を供給することができ、第2開口部62を通して流体を放出することができる。第1開口部60を通して流体を供給すれば、コンテナ素子50の内部66の空気は第2開口部62を通って逃げる。コンテナ素子50の内部66に供給される流体は屈折率ηを示し、この屈折率は角膜の屈折率とほぼ同様または同一であることが好ましく、角膜の屈折率ηcorneaは約1.376に等しい。しかし、水を用いることもでき、水の屈折率ηwaterは約1.333に等しい。屈折率の適応により、角膜への遷移点において光の光学収差は生じず、その結果、レーザービームの良好な集束性及びレーザービームの高い光学的品質が保証される。
【0049】
前述したように、湿性のフィルムを第1吸引領域6の付近に配置すれば、第1吸引領域6の特に良好な封止が保証され、その結果、眼球吸引装置が眼球上に特に強く結合される。液体の粘性が高いほど、追加的な封止効果が良好である。
【0050】
さらに、前述したように、この実施例では圧平素子を必要とせず、このことは、治療中に眼圧が増加しないという結果を有する。さらに、圧平素子を用いる場合のような球面または非球面の圧平の理由による、例えば波面誤差のような収差は生じ得ない。その結果、低い波面誤差を有するレーザー放射が得られ、このことは集束に関して有利である、というのは、焦点位置の散乱がより小さく、レーザー放射がより小さい焦点領域上に集中するからである。
【0051】
コンテナ素子50及び眼球吸引装置2は、一体に形成することができ、あるいは積極的に、または摩擦で互いに結合することができる。
【0052】
図5及び6に、それぞれ本発明の第5実施例及び第6実施例を示す。光学素子16は圧平素子である。圧平素子16は眼球吸引装置2a、2bに取り付けられている。前述したように、圧平素子16は、レーザー放射にさらされた手術後に交換しなければならない。眼球吸引装置2a、2bは、これに取り付けた滅菌された使い捨て品の形の圧平素子16によって利用可能にすることができる。その結果、より費用効果的な眼球吸引装置を得ることができる。さらに、こうした種類の眼球吸引装置により、圧平素子16及び吸引された再使用可能な保持素子14a、14bに至る機械的公差(許容誤差)の連鎖を低減することができ、この保持素子はアダプタコーン(適合円錐体)とも称する。低減された公差の連鎖により、治療の結果が改善される。
【0053】
前述したように、第1不完全真空供給管20により第1吸引領域4内に不完全真空が発生し、これにより眼球吸引装置2a、2bが眼球18上に保持される。第2不完全真空供給管21は第2吸引領域10a、10b内に第2不完全真空10a、10bを発生させ、これにより保持素子またはアダプタコーン14a、14bが圧平素子16上に固定保持される。
【0054】
図5による第5実施例では、保持素子またはアダプタコーン14aが、圧平素氏16及び眼球吸引装置2aに共に接触する。眼球吸引装置2aのこの実施例では、圧平素子16のエッジ(縁)は眼球吸引装置によって完全に包囲される。
【0055】
図6による第6実施例では、保持素子またはアダプタコーン14bが圧平素子16のみに接触し、眼球吸引装置2bには接触しない。眼球吸引装置2bのこの実施例では、圧平素子16はその下部エッジのみを眼球吸引装置2b上に置くことができる。圧平素子16は追加的に、例えば接着剤によって固定することができる。また、この実施例では、眼球吸引装置2bが圧平素子16を完全に包囲することもでき、これにより接着材を必要としない。この場合は、保持素子14bの圧平素子16に向いた側は、圧平素子より小さい径を有しなければならない。
【0056】
図7及び図8に、本発明の第7実施例を示し、この実施例は、眼球吸引装置116、保持素子102、圧平素子104、不完全真空供給装置110を含み、不完全真空供給装置110は、少なくとも1つの不完全真空ライン(管)を有し、そして少なくとも1つの測定手段用の電源及び信号接続線も有する。眼球吸引装置116の下側には第1吸引領域128が位置し、この領域により、眼球吸引装置116が眼球122に対して固定される。眼球吸引装置116は、不完全真空になる第2吸引領域124によって保持素子102を固定することができる。保持素子102は、圧平素子104を随意的な第3吸引領域によって固定する。圧平素子104により、レーザーシステム(図示せず)、例えばフェムト秒レーザーシステムの放射が結合される。圧平素子はレンズの形をとることもできる。圧平素子104は、その下端が眼球122の角膜に置かれ、その結果、角膜の位置が固定される。
【0057】
保持素子102の上面には、レーザーのビーム経路及び/または閉鎖メカニズムを結合するための複数の機械的ガイド106が形成されている。これらの機械的ガイド106は、力センサ(図示せず)を含むことができる。さらに、この力センサは機械的ガイド上に配置することができ、この場合は、レーザーの光学器が力センサに結合される。この力センサは、例えば圧電センサとすることができ、あるいはストレイン(歪み)ゲージによって構成することができる。
【0058】
圧平素子104上には、眼圧を測定するための測定手段を配置することができる。この測定手段は、微小電気機械システム(MEMシステム)によって設けることができる。圧平素子104のエッジには、例えば近赤外領域における分光プロセスを実現するための、及び/または光の散乱を測定するための、複数のファイバセンサ108が配置されている。これらのファイバサンサにより、角膜の特性、例えばその含水量を測定することができる。光の散乱の測定により、角膜の透明度も測定することができる。しかし、第5実施例では、別個の透明度センサ114を設け、透明度センサ114は、例えば角膜による光の散乱の測定により、その透明度を確定する。機械的分光装置112は、例えば危機的共振に基づいて、角膜の生体力学的特性を確定する。不完全真空は、供給装置110によって眼球吸引装置に与えられる。さらに、供給装置110と共に電源が保証され、測定手段の測定信号は、電気ケーブル、グラスファイバー、及び/または無線を介して評価装置(図示せず)に送信される。圧平素子104上及び眼球吸引装置102上には、電気信号を送信し電源を供給するための接点素子を設けることができる。
【0059】
保持素子102上にはさらに、眼球吸引装置116または保持素子102の空間内の位置を測定するための位置測定手段120が設けられている。位置測定手段120は例えば音響センサまたは光センサとすることができ、基準幾何学系に対する位置を測定する。さらに、位置センサ120の場合は、基準位置から放射されたビームを受光する純然たる受動センサの問題とすることができ、眼球吸引装置116の位置または保持素子102の位置は、受信した信号に基づいて測定される。同様に、位置測定手段120は、光ビームまたは音響ビームを放出する純然たる能動素子とすることができ、このビームは基準位置にある対応する受信装置によって受信され、位置測定手段120の空間内の位置は受信した信号に基づいて測定することができる。眼球吸引装置116上には、空間内に配置されたカメラによって位置合わせされる基準マークを配置することもできる。同様に、眼球の位置を合わせる光センサは、眼球吸引装置の内部に配置することができる。眼球吸引リング102に対して合わせた眼球の位置、及び位置測定手段120によって位置合わせした空間内の眼球吸引リングの位置を利用して、眼球122の空間内の位置を測定することができる。
【0060】
空間内の吸引リングの位置を測定する手段は、治療台の位置制御装置(図示せず)またはレーザーシステムの位置制御装置(図示せず)に結合することができる。
【0061】
動作中に、眼球吸引装置116は眼球に接触する。眼球吸引装置116に力センサ118を統合して眼球に作用する力を測定することができ、この測定値から眼圧を測定することができる。複数の力センサ118を眼球吸引装置116内に配置することができる。その結果、接触素子116の周囲に沿った力特性を作成することができ、その結果、角膜の特性を確定し、従って眼圧をより正確に確定することができる。
【0062】
眼球吸引装置116または保持素子102はさらに第4吸引領域(図示せず)を含むことができ、第4級印領域は、圧平素子と角膜との間の領域を真空排気して、眼球122の角膜を圧平素子104に確実に置く。
【0063】
眼球吸引装置116及び保持素子102は一体に形成することができ、あるいは非積極的または積極的に接続することができる。
【0064】
本発明は冗長性を生み出す利点を有する、というのは、一方では、角膜の一部分が機能素子上またはその上に配置した素子上に吸引されるからである。さらに本発明は、手術前、手術中、及び/または手術後に、手術医が機能素子、例えばレンズ、圧平レンズ、またはレーザーシステムの光学器用の接続領域を、操作することが困難なツールを用いずに簡単に交換することができるという利点を有する。本発明はさらに、機能素子を配置するために機械的締結要素を必要としない利点を有し、このことは眼球吸引装置を小型化しその重量を低減することに寄与する。機械的締結要素を必要としないので、眼球吸引装置はより少数の構成要素でより簡単に構成することができ、その結果、手術医は手術視野のより良好な視認を与えられ、眼球吸引装置はより高い開口数を与えられ、失敗の恐れが低減される。さらに、本発明による眼球吸引装置は、現在技術状況に属するものよりも高い製造公差を許容する。
【0065】
なお、各吸引領域は複数の「自給」吸引領域に分割することができ、その結果、安全性を増強したさらなる冗長性が生じる。
【0066】
眼球吸引装置116及び保持素子102は一体に形成することができ、あるいは非積極的または積極的に接続することができる。
【0067】
本発明は、手術前、手術中、及び手術後に、眼球に関する測定データを提供する利点を有する。本発明は、眼圧、空間内の吸引リングの位置、眼球に作用している機械力に関する測定データ、角膜に関する測定データ、例えばその含水量、その生体力学特性、及びその透明度を提供する。さらに、手術中に眼球を監視するための追加的測定器を設ける必要がない。
【0068】
本発明は、いくつかの実施例によって説明してきた。種々の実施例の特徴及び特徴の組合せを組み合わせることができることは、当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球の治療中に、集束レンズ(64)と前記眼球の角膜との間に空気以外の流体を保持するように構成された眼科手術用の装置において、この装置が、
治療すべき前記眼球(18)上に配置され、第1吸引領域を有する吸引リング(2)と;
コンテナ素子(50)とを具え、
前記第1吸引領域は、当該第1吸引領域内に真空を発生することによって、前記吸引リングを前記眼球上に吸引するように構成され、
前記コンテナ素子は、前記吸引リングと一体に形成されるか、真空によって、または機械的に前記吸引リングと結合されるように構成され、長軸、及び前記流体を受けるための内部(66)を有し、前記コンテナ素子は、当該コンテナ素子の第1軸端(56)から反対側の第2軸端(58)まで前記長軸の周りに延びる壁面(52)を含み、前記壁面は、前記コンテナ素子の側面を閉じ、前記流体を供給するための第1開口部(60)及び前記流体を放出するための第2開口部(62)が前記壁面内に設けられ、前記第1開口部と前記第2開口部とは、互いに軸をずらして前記壁面内に配置されていることを特徴とする眼科手術用の装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−99549(P2013−99549A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−288583(P2012−288583)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2009−553076(P2009−553076)の分割
【原出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(509114077)ウェーブライト アーゲー (7)