説明

紡糸巻取機

【課題】巻取軸の先端側からの複数の加熱ローラへの糸掛け作業性を向上させる。
【解決手段】紡糸巻取機は、上方にある紡糸機から紡糸されて連続的に供給される複数の糸10を、ゴデットローラ群20及び2つの案内ローラ11、12を介して下方の巻取ユニットに送り、この巻取ユニットで巻き取っている。ゴデットローラ群20は、ボビンホルダ7の先端側に配置されており、ゴデットローラ群20に属するゴデットローラ21〜24の軸芯21a〜24aとボビンホルダ7の軸芯7aは平行である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸部から送出された複数の糸をボビンホルダに装着された複数のボビンにそれぞれ巻き取る紡糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の紡糸巻取機では、ボビンホルダの軸方向に沿って直列に複数のボビンが装着されており、ボビンホルダの軸方向中央の上方に、複数の糸を加熱延伸するための複数の加熱ローラが設けられている。これら複数の加熱ローラの軸方向はボビンホルダの軸方向に対して直交している。そして、紡糸部から送出された複数の糸は、下方の複数の加熱ローラに順に巻き掛けられた後、それぞれ対応するボビンに巻き取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/009498号(Fig.1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加熱ローラは糸を所望の温度まで十分に加熱するために複数設けられており、複数の加熱ローラに糸掛けする際には、複数の糸を吸引装置(エアサッカー)の吸引口から吸引して、吸引ホースの吸引口を複数の加熱ローラの間に端面側から差し込んで、複数の加熱ローラの間を移動させることで、複数の加熱ローラに糸掛けしている。また、吸引装置自体が大型で重くなっている。さらに、吸引装置のホースは複数の糸を詰まることなく吸引するために径が太くなっており、且つ、こしが強く曲げにくくなっている。
【0005】
そして、上述した特許文献1においては、複数の紡糸巻取機は、ボビンホルダの軸方向と直交する方向、すなわち加熱ローラの軸方向に並べられており、例えば、ボビンホルダからのボビンに糸が巻き取られたパッケージの取り外しなどの作業は、作業者がボビンホルダの軸方向の先端側よりも外側に位置して、ボビンホルダの軸方向の先端側から行われている。
【0006】
上述したように、複数の紡糸巻取機を複数の加熱ローラの軸方向に並べて配置した構成において、複数の加熱ローラに糸掛けしようとすれば、複数の糸を吸引した吸引ホースを、互いに隣接する紡糸巻取機の間の狭い空間に運んで、糸を吸引した吸引ホースの吸引口を加熱ローラの端面側を向くように90度曲げた上で、複数の加熱ローラの間に差し込んで、加熱ローラの周面に沿って作業者から見て上下前後に移動させる必要があり、糸掛けするのが困難であった。
【0007】
特に、加熱ローラの数が多い場合や、加熱ローラが奥側に並んでいる場合などには、複数の加熱ローラへの糸掛けは非常に困難であった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、巻取軸の先端側からの複数の加熱ローラへの糸掛け作業性を向上させた紡糸巻取機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の紡糸巻取機は、紡糸部から送出された複数の糸の糸道に沿って配置され、前記複数の糸が巻き掛けられる複数の加熱ローラと、複数のボビンが軸方向に沿って直列に装着されており、最終の前記加熱ローラから送られた前記複数の糸を前記複数のボビンにそれぞれ巻き取る巻取軸と、を備えており、前記巻取軸は、機台本体に回転自在に支持されており、前記複数の加熱ローラは、前記巻取軸の先端側に配置されており、前記複数の加熱ローラの軸方向と前記巻取軸の前記軸方向はほぼ平行である。
【0010】
本発明の紡糸巻取機によると、巻取軸に装着された複数のボビンは、巻取軸の先端側から取り外されることとなり、巻取軸よりも前方の空間が作業を行う作業空間となる。そして、複数の加熱ローラは、巻取軸の先端側に配置されて、さらに、加熱ローラの端面が作業空間側を向いている。これにより、作業空間から複数の加熱ローラに糸掛けする場合に、複数の糸を例えば吸引ホースの吸引口から吸引して、作業者から見て、この吸引ホースの吸引口を複数の加熱ローラの間に正面から差し込んで、加熱ローラの周面に沿って上下左右に移動させるだけとなり、巻取軸の先端側からの複数の加熱ローラへの糸掛け作業性を向上させることができる。
【0011】
また、前記紡糸巻取機は、前記巻取軸の前記軸方向と直交する方向に複数並んで設けられるものであることが好ましい。
【0012】
これによると、作業者が隣接する紡糸巻取機の間の狭いスペースに入り込んで作業をするのは困難なため、この点においても、作業者は巻取軸の先端側から作業を行うこととなる。
【0013】
さらに、前記複数の加熱ローラは、前記巻取軸の前記先端部の上方に配置されていることが好ましい。
【0014】
これによると、巻取軸の先端側から複数の加熱ローラへ糸掛けする際に、巻取軸がじゃまになることがなく、糸掛け作業性をさらに向上させることができる。
【0015】
また、前記複数の加熱ローラは、対応する前記機台本体とこの機台本体に隣接する前記機台本体との間に配置されていてもよい。
【0016】
これでも、巻取軸の先端側から複数の加熱ローラへ糸掛けする際に、巻取軸がじゃまになることがなく、糸掛け作業性をさらに向上させることができる。
【0017】
加えて、前記最終の加熱ローラと前記巻取軸の間の糸道には、前記最終の加熱ローラから送られた前記複数の糸が巻き掛けられる案内ローラと、前記巻取軸の前記軸方向に沿って、前記複数のボビンに対応して並べられており、前記案内ローラから送られた前記複数の糸を前記巻取軸に装着された前記複数のボビンにそれぞれ分配する複数の分配ガイドと、が設けられており、前記案内ローラの軸方向は、前記巻取軸の前記軸方向と直交していることが好ましい。
【0018】
加熱ローラの軸方向と巻取軸の軸方向が平行であり、仮に、案内ローラが設けられていないとすると、ボビンの数が多いほど巻取軸が長くなって、加熱ローラから離れた複数の糸は広がるように分配されて、巻取軸の端のボビンに巻き取られる糸ほど屈曲角が大きくなっている。これによると、加熱ローラに巻き掛けられた複数の糸は、巻取軸の軸方向と直交した案内ローラに送られて、複数のボビンの並び方向と直交した方向に並ぶこととなる。その上で、複数の糸の案内ローラへの巻き掛け角度を、対応する分配ガイドの位置によって変えてやることで、複数の糸の屈曲角を小さくして複数のボビンにそれぞれ分配することができる。
【0019】
また、各加熱ローラには、360度よりも小さい巻き掛け角度で前記複数の糸が巻き掛けられており、前記複数の加熱ローラが、それぞれ同一鉛直面上に配置されていることが好ましい。
【0020】
仮に、加熱効果を上げるために、1本の糸を同じ加熱ローラに何重にも巻き掛けて加熱しようとすると、複数の加熱ローラを軸方向に関してずらして、加熱ローラ間で糸の巻き掛け位置を巻取軸の軸方向にずらす必要があり、糸掛けが困難である。そこで、1本の糸を同じ加熱ローラに何重にも巻き掛けずに1回ずつ巻き掛けることで、加熱ローラの数は増えてしまうが、本発明のように、複数の加熱ローラが、巻取軸の先端側に同一鉛直面上に配置されて、さらに、端面がボビンホルダの先端側を向いていると、加熱ローラの数が増大しても糸掛け作業性が大きく低下することがない。
【発明の効果】
【0021】
複数の加熱ローラは、巻取軸の先端側に配置されて、さらに、加熱ローラの端面が作業空間側を向いている。これにより、作業空間から複数の加熱ローラに糸掛けする場合に、複数の糸を例えば吸引ホースの吸引口から吸引して、作業者から見て、この吸引ホースの吸引口を複数の加熱ローラの間に正面から差し込んで、加熱ローラの周面に沿って上下左右に移動させるだけとなり、巻取軸の先端側からの複数の加熱ローラへの糸掛け作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡糸巻取機の側面図である。
【図2】複数の紡糸巻取機の配置について説明する平面図である。
【図3】ゴデットローラ群と案内ローラの斜視図である。
【図4】ゴデットローラ群と案内ローラの正面図である。
【図5】ゴデットローラ群への糸掛け工程について説明する図である。
【図6】変形例における紡糸巻取機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る紡糸巻取機の側面図である。図1に示すように、紡糸巻取機1は、上方にある紡糸機2から紡糸されて連続的に供給される複数の糸10を、ゴデットローラ群20及び2つの案内ローラ11、12を介して下方の巻取ユニット3に送り、この巻取ユニット3で巻き取っている。
【0024】
図2は、複数の紡糸巻取機の配置について説明する平面図である。図2に示すように、複数の紡糸巻取機1は、例えば、紡糸巻取機1よりも糸走行方向の上流側(上方)の紡糸機2の複数の糸10を紡出する複数の口金の配置などを考慮したり、片持ち支持された後述するボビンホルダ7の先端側から複数のボビンBを取り外すことを考慮したりした上で、限られたスペース内に複数の紡糸巻取機1を効果的に配置しようとして、後述するボビンホルダ7の軸芯7aと直交する方向に複数列設されて、ボビンホルダ7の先端側が、前方であって、作業者が作業を行う作業空間30となっている。すなわち、作業者は、紡糸巻取機1と正面を向いて対向したときに、ボビンホルダ7の先端側から軸芯7aに沿って紡糸巻取機1を見る形で作業することになる。
【0025】
まず、巻取ユニット3について説明する。図1に示すように、巻取ユニット3は、紡糸機2の下方に配置されており、ゴデットローラ群20及び2つの案内ローラ11、12を介して紡糸機2から供給された複数の糸10を、複数のボビンBにそれぞれ巻き取って複数のパッケージPを形成する。
【0026】
この巻取ユニット3は、本体フレーム5と、本体フレーム5に回転可能に設けられた円板状のターレット6と、ターレット6に後方の一端が片持ち支持され、複数のボビンBが軸芯7aに沿って直列に装着される2本のボビンホルダ7(巻取軸)と、本体フレーム5に対して上下方向に移動可能であり、ボビンホルダ7に装着されたボビンBに対して離接するコンタクトローラ9などを有している。
【0027】
巻取ユニット3は、ボビンホルダ7が図示しないモータの駆動により回転することで、このボビンホルダ7に装着された複数のボビンBを回転させ、回転する複数のボビンBに複数の糸10をそれぞれ巻き取る。このとき、ボビンBに巻き取られる糸10は、複数のボビンBの上方にそれぞれ配置されたトラバースガイド8によって、後述する支点ガイド13を支点としてボビンBの軸方向に綾振りされる。
【0028】
そして、支点ガイド13を支点としてトラバースガイド8に綾振られた糸10は、ボビンBに巻き取られてパッケージPを形成する。このとき、コンタクトローラ9は、ボビンBへの糸巻き取り時に、パッケージPの外周面に接触して、所定の接圧を付与しながら回転して、パッケージPの形状を整える。そして、ボビンホルダ7に装着された複数のパッケージPは、満巻きになると図示しないプッシャーでボビンホルダ7の基端側から先端側に押し出されて、ボビンホルダ7の先端側に取り外される。
【0029】
図3は、ゴデットローラ群と案内ローラの斜視図である。図4は、ゴデットローラ群と案内ローラの正面図である。なお、図3、図4においては、保温箱26内部をわかりやすく図示するために、保温箱26を2点鎖線で図示している。
【0030】
図1に示すように、紡糸巻取機1は、巻取ユニット3に加えて、巻取ユニット3よりも図1における紙面奥方向に配置された枠状のフレーム14と、紡糸機2から送出された複数の糸10を引き取るゴデットローラ群20と、ゴデットローラ群20から送られた複数の糸10を引き取る2つの案内ローラ11、12と、下流側の案内ローラ12に巻き掛けられた複数の糸10を巻取ユニット3のボビンホルダ7に装着された複数のボビンBにそれぞれ分配し、且つ、トラバースガイド8による綾振り時に支点となる複数の支点ガイド13(分配ガイド)などを有している。
【0031】
まず、ゴデットローラ群20について説明する。図1〜図4に示すように、ゴデットローラ群20は、紡糸機2よりも下方であって、ボビンホルダ7の先端側の作業空間30側に配置されており、糸走行方向の上流側から順に並んだ、例えば4つのゴデットローラ21〜24からなる。ゴデットローラ21〜24は、断熱材からなる略直方体形状の保温箱26内に収容されている。そして、ゴデットローラ21〜24は千鳥状に配置されており、それぞれの軸芯21a〜24aがボビンホルダ7の軸芯7aと平行である。
【0032】
保温箱26には、ゴデットローラ21〜24の端面21b〜21bと対向し、開閉自在な扉26aが設けられている。そして、この扉26aを開けることで、保温箱26内からゴデットローラ21〜24の端面21b〜21bが作業空間30を向いて露出するようになっている。したがって、作業空間30からの作業者による、例えばゴデットローラ21〜24への糸掛けなどの保温箱26内における作業が容易となる。
【0033】
また、保温箱26には、2つのスリット28、29が形成されている。スリット28は、紡糸機2から最も上流側のゴデットローラ21に送られる複数の糸10を通過させている。また、スリット29は、最も下流側のゴデットローラ24から巻取ユニット3に送られる複数の糸10を通過させている。
【0034】
また、ゴデットローラ21〜24は、保温箱26の扉26aと反対側に配置された、図示しないフレームによって片持ち支持された駆動ローラである。まず、紡糸機2から送られた複数の糸10は、保温箱26のスリット29を通過して、保温箱26内に入って、最も上流側のゴデットローラ21に引き取られる。
【0035】
そして、ゴデットローラ21に引き取られた複数の糸10は、ゴデットローラ21〜24に上流側から順に360度以内の巻き掛け角度でそれぞれが掛けられ、図示しないモータの駆動によりゴデットローラ21〜24が回転することで、走行方向下流側に送られて、保温箱26のスリット28を通過して、保温箱26の外に出る。このとき、ゴデットローラ21〜24は、下流側のローラほど回転速度が速くなっており、ローラ間の速度差によって複数の糸10を延伸している。
【0036】
さらに、ゴデットローラ21〜24は、内部にヒータ27を備えた加熱ローラであり、ゴデットローラ21〜24に巻き掛けられた糸10は加熱される。そして、ゴデットローラ21〜24が保温箱26内に配置され、扉26aが閉じられることにより、ヒータ27により発生した熱が保温箱26から外部に逃げ出してしまうのを防止している。
【0037】
次に、2つの案内ローラ11、12について説明する。図1、図3、図4に示すように、2つの案内ローラ11、12は、巻取ユニット3の本体フレーム5の上方において、その軸芯11a、12aがボビンホルダ7の軸芯7a(ゴデットローラ21〜24の軸芯21a〜24a)と直交する方向に沿って延在して、フレーム14に回転可能に支持されており、図示しないモータによって回転駆動される駆動ローラである。案内ローラ11はゴデットローラ群20の直下に配置され、案内ローラ12は複数の支点ガイド13の並び方向のほぼ中央における上方に配置されている。なお、案内ローラ12は、糸掛け時には、案内ローラ11の近くの糸掛け位置12a(図1に破線で示す)まで移動するため、糸掛け作業が容易である。
【0038】
複数の支点ガイド13は、案内ローラ12の下方であって、複数のトラバースガイド8の上方において、複数のトラバースガイド8及びボビンホルダ7に装着された複数のボビンBの真上に、ボビンホルダ7の軸芯7aに沿って複数のボビンホルダ7の間隔と同じ間隔で並んで配置されている。
【0039】
紡糸機2から供給された複数の糸10は、下方に送出され、まず、最も上流側のゴデットローラ21から順に、ゴデットローラ21〜24にそれぞれの軸芯21a〜24aに沿って並んで巻き掛けられる。
【0040】
そして、最も下流側のゴデットローラ24から糸走行方向の下流側に送られた複数の糸10は、90度向きを変えながら案内ローラ11の軸芯11aに沿って並んで巻き掛けられる。その後、案内ローラ11に巻き掛けられた複数の糸10は、案内ローラ12に架け渡された後、複数の支点ガイド13にそれぞれ糸掛けされて、下方の巻取ユニット3に搬送される。
【0041】
ここで、ゴデットローラ群20のゴデットローラ21〜24への糸掛け動作について説明する。図5は、ゴデットローラ群への糸掛け工程について説明する図であり、ゴデットローラ群の斜視図である。
【0042】
ゴデットローラ21〜24へ糸掛けする際には、まず、図5(a)に示すように、紡糸機2から送出された複数の糸10を作業者が作業空間30から延ばしたエアサッカー40の吸引口40aから吸引捕捉する。そして、複数の糸10を吸引捕捉したエアサッカー40の吸引口40aを前方(正面)から保温箱26内に差し込む。
【0043】
その後、図5(b)に示すように、エアサッカー40を最も上流側のゴデットローラ21の左方側から反時計回りに周面に沿って移動させて、ゴデットローラ21、23の間を通過させた後、ゴデットローラ21、22の間を通過させて、ゴデットローラ22の左方側に移動させる。これにより、最も上流側のゴデットローラ21に複数の糸10が巻き掛けられる。
【0044】
その後、ゴデットローラ22〜24に対して同様にエアサッカー40を移動させることで、図5(c)に示すように、ゴデットローラ21〜24に複数の糸10が巻き掛けられる。
【0045】
本実施形態における紡糸巻取機1によると、複数のゴデットローラ21〜24は、作業空間30に近い、ボビンホルダ7の先端の上方において鉛直方向に関して重なって配置されて、さらに、端面21b〜21bがボビンホルダ7の先端側を向いている。これにより、作業空間30(ボビンホルダ7の先端側)から複数のゴデットローラ21〜24に糸掛けする場合に、複数の糸10をエアサッカー40の吸引口40aから吸引して、作業空間30から見て、このエアサッカー40の吸引口40aを複数のゴデットローラ21〜24の間に正面から差し込んで、エアサッカー40を曲げることもなく、ゴデットローラ21〜24の周面に沿って上下左右に移動させるだけとなる。
【0046】
したがって、ボビンホルダ7がじゃまになることがなく、作業空間30(ボビンホルダ7の先端側)からの複数のゴデットローラ21〜24への糸掛け作業性を向上させることができる。また、ゴデットローラ21〜24に巻きついた糸10を除去するなどのトラブル対応も容易となる。
【0047】
また、ゴデットローラ21〜24に巻き掛けられた複数の糸10は、ボビンホルダ7の軸芯7aと直交した軸芯11a、12aの案内ローラ11、12に送られて、複数のボビンBの並び方向と直交した方向に並ぶこととなる。そして、案内ローラ12から出た糸10は該ローラ12の接線方向に分配されるので、案内ローラ12から出た直後の糸10は屈曲することなく、綾振り支点ガイド13に向かって走行する。
【0048】
仮に、ゴデットローラの数が少ない場合、1本の糸10を同じゴデットローラに何重にも巻き掛けて加熱するために、複数のゴデットローラを軸方向に関してずらして、ゴデットローラ間で糸10の巻き掛け位置をボビンホルダ7の軸方向にずらす必要がある。一方、ゴデットローラの数を増やせば、1本の糸10を同じゴデットローラに何重にも巻き掛けずに1回ずつ巻き掛けて加熱することが可能となり、上述したように、複数のゴデットローラを同一鉛直平面上に配置することが可能となる。この場合、ゴデットローラの数は増えてしまうが、本実施形態のように、ゴデットローラ21〜24が、ボビンホルダ7の先端側に配置されて、さらに、端面21b〜21bがボビンホルダ7の先端側を向いていると、ゴデットローラの数が増大しても糸掛け作業性が大きく低下することがない。
【0049】
一例として、テント用、タイヤコード用の強度の必要な太い糸などの産業資材用の糸を製造する設備にはおいては、糸に必要な特性を引き出すために、ゴデットローラ(加熱ローラ)の数も多くなっている。このような場合にも、図6に示すように、複数のゴデットローラ50が、作業空間の近く(ボビンホルダ7の先端側)において、巻取ユニット3と巻取ユニット3の間(より具体的には本体フレーム5と本体フレーム5の間)に配置されて、さらに、端面がボビンホルダの先端側を向いていれば、ゴデットローラ50の数が増大しても糸掛け作業性が大きく低下することがなく、非常に効果的である。なお、本実施形態における巻取軸を片持ち支持する機台本体は、本実施形態におけるボビンホルダ7を片持ち支持するターレット6が設けられた本体フレーム5に相当する。
【0050】
次に、上述した実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。ただし、上述した実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0051】
本実施形態においては、1つのゴデットローラに対して1本の糸10を360度よりも小さい巻き掛け角度でそれぞれ1回ずつ巻き掛けていたが、1つのゴデットローラに対して1本の糸10を所定ピッチで何重にも巻き掛けてもよい。ただし、この場合、複数のゴデットローラは軸方向にずれて配置されることになる。
【0052】
また、本実施形態においては、案内ローラは、ボビンホルダ7の軸芯7aと直交して2つ設けられていたが、その数や向きはゴデットローラ群20から送られた複数の糸10を複数の支点ガイド13に屈曲角を小さくして送ることが可能な構成であれば適宜変更可能である。例えば、最も下流側の案内ローラについては、複数の支点ガイド13よりも非常に高い位置に設けるのであれば、ボビンホルダ7の軸芯7aと平行に配置してもよい。
【0053】
さらに、本実施形態においては、ゴデットローラ群20と複数の支点ガイド13の間に2つの案内ローラ11、12を設けていたが、この案内ローラ11、12を設けずに、ゴデットローラ群20から直接複数の支点ガイド13に複数の糸10を送ってもよい。
【0054】
また、本実施形態においては、支点ガイド13は、トラバース時の綾振りの支点となるガイドとしての機能に加えて、複数の糸10を複数のボビンBに分配する分配ガイドとして機能していたが、綾振りの支点ガイドと分配ガイドを別個に設けてもよい。
【0055】
さらに、本実施形態においては、ゴデットローラ21〜24の軸芯21a〜24aは、ボビンホルダ7の軸芯7aに対して平行であったが、作業空間30にいる作業者から見て、ゴデットローラ21〜24の端面21b〜21bが対向可能であれば、平行ではなく多少傾いていてもよい。
【0056】
さらに、本実施形態においては、ボビンホルダ7が巻取ユニット3のターレット6に片持ち支持された構成について説明したが、例えば、特公平7−5224号公報、特許第3440839号公報などに記載のように、ボビンホルダ7の基端側に加えて先端側も支持部材により支持された、ボビンホルダ7を両持ちした構成の紡糸巻取機としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 紡糸巻取機
2 紡糸機
3 巻取ユニット
7 ボビンホルダ
10 糸
11、12 案内ローラ
20 ゴデットローラ群
21〜24 ゴデットローラ
30 作業空間
B ボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸部から送出された複数の糸の糸道に沿って配置され、前記複数の糸が巻き掛けられる複数の加熱ローラと、
複数のボビンが軸方向に沿って直列に装着されており、最終の前記加熱ローラから送られた前記複数の糸を前記複数のボビンにそれぞれ巻き取る巻取軸と、を備えており、
前記巻取軸は、機台本体に回転自在に支持されており、
前記複数の加熱ローラは、前記巻取軸の先端側に配置されており、
前記複数の加熱ローラの軸方向と前記巻取軸の前記軸方向はほぼ平行であることを特徴とする紡糸巻取機。
【請求項2】
前記紡糸巻取機は、前記巻取軸の前記軸方向と直交する方向に複数並んで設けられるものであることを特徴とする請求項1に記載の紡糸巻取機。
【請求項3】
前記複数の加熱ローラは、前記巻取軸の前記先端部の上方に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の紡糸巻取機。
【請求項4】
前記複数の加熱ローラは、対応する前記機台本体とこの機台本体に隣接する前記機台本体との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の紡糸巻取機。
【請求項5】
前記最終の加熱ローラと前記巻取軸の間の糸道には、
前記最終の加熱ローラから送られた前記複数の糸が巻き掛けられる案内ローラと、
前記巻取軸の前記軸方向に沿って、前記複数のボビンに対応して並べられており、前記案内ローラから送られた前記複数の糸を前記巻取軸に装着された前記複数のボビンにそれぞれ分配する複数の分配ガイドと、が設けられており、
前記案内ローラの軸方向は、前記巻取軸の前記軸方向と直交していることを特徴とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の紡糸巻取機。
【請求項6】
各加熱ローラには、360度よりも小さい巻き掛け角度で前記複数の糸が巻き掛けられており、
前記複数の加熱ローラが、それぞれ同一鉛直面上に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の紡糸巻取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−214941(P2012−214941A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178741(P2011−178741)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】