説明

紡績ユニット及び紡績機

【課題】 糸貯留装置に対する作業の効率化を図ることができる紡績ユニット、及びそのような紡績ユニットを複数備える紡績機を提供する。
【解決手段】 紡績ユニットは、紡績糸を供給するドラフト装置及び紡績装置と、紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、ドラフト装置、紡績装置及び巻取装置を支持するユニットフレームと、ユニットフレームに対して着脱自在に取り付けられた糸処理モジュール80と、を備える。糸処理モジュール80は、ドラフト装置及び紡績装置と巻取装置との間において紡績糸を貯留する糸貯留装置50を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績糸を生成してパッケージに巻き取る紡績ユニット、及びそのような紡績ユニットを複数備える紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紡績ユニットとして、紡績糸を供給する給糸装置と、紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、給糸装置と巻取装置との間において紡績糸を貯留する糸貯留装置と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−174421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような紡績ユニットにおいては、糸貯留装置の組付け、動作確認、メンテナンス等、糸貯留装置に対する作業の効率化が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、糸貯留装置に対する作業の効率化を図ることができる紡績ユニット、及びそのような紡績ユニットを複数備える紡績機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の紡績ユニットは、紡績糸を供給する給糸装置と、紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、給糸装置及び巻取装置を支持するユニットフレームと、ユニットフレームに対して着脱自在に取り付けられた糸処理モジュールと、を備え、糸処理モジュールは、給糸装置と巻取装置との間において紡績糸を貯留する糸貯留装置を有する。
【0007】
この紡績ユニットでは、糸貯留装置を有する糸処理モジュールが、ユニットフレームに対して着脱自在に取り付けられている。このように、ユニットフレームから取り外すことが可能な糸処理モジュールに糸貯留装置が設けられているので、この紡績ユニットによれば、糸貯留装置の組付け、動作確認、メンテナンス等、糸貯留装置に対する作業の効率化を図ることができる。
【0008】
また、糸処理モジュールは、紡績ユニットの動作状態を表示する表示部と、紡績ユニットに動作指示を与えるために作業者によって操作される操作部と、を更に有してもよい。この構成によれば、糸貯留装置に対する作業の効率化と共に、表示部及び操作部に対する作業の効率化を図ることができる。
【0009】
また、糸処理モジュールは、給糸装置と糸貯留装置との間において紡績糸の糸欠点を検出する糸欠点検出装置を更に有してもよい。この構成によれば、糸貯留装置に対する作業の効率化と共に、糸欠点検出装置に対する作業の効率化を図ることができる。
【0010】
また、糸処理モジュールは、糸貯留装置と巻取装置との間において紡績糸にワックスを付与するワキシング装置を更に有してもよい。この構成によれば、糸貯留装置に対する作業の効率化と共に、ワキシング装置に対する作業の効率化を図ることができる。
【0011】
また、糸処理モジュールは、給糸装置と糸貯留装置との間において紡績糸のテンションを測定するテンション測定装置を更に有してもよい。この構成によれば、糸貯留装置に対する作業の効率化と共に、テンション測定装置に対する作業の効率化を図ることができる。
【0012】
また、糸貯留装置は、紡績糸が巻き付けられる糸貯留ローラと、糸貯留ローラを回転させる駆動モータと、駆動モータの回転を制御するモータ制御部と、を有してもよい。この構成によれば、糸貯留ローラ、駆動モータ及びモータ制御部に対する作業を容易に且つ確実に実施することができる。
【0013】
また、糸貯留装置は、糸貯留ローラに巻き付けられた紡績糸の貯留量を検出する糸貯留量センサを更に有してもよい。この構成によれば、糸貯留量センサに対する作業を容易に且つ確実に実施することができる。
【0014】
また、糸貯留装置は、糸貯留ローラに対向するように配置された吸引口にエアーの吸引流を発生させる吸引機構を更に有してもよい。この構成によれば、吸引機構に対する作業を容易に且つ確実に実施することができる。
【0015】
また、糸貯留装置は、紡績糸を引っ掛けて糸貯留ローラに巻き付ける糸掛け部材と、糸掛け部材から紡績糸を外す糸外し部材と、を更に有してもよい。この構成によれば、糸掛け部材及び糸外し部材に対する作業を容易に且つ確実に実施することができる。
【0016】
また、糸処理モジュールは、ユニットフレームに対して着脱自在に固定されたモジュールフレームを更に有し、ユニットフレーム及びモジュールフレームの一方には、モジュールフレームをユニットフレームに対して位置決めするための案内部が設けられており、ユニットフレーム及びモジュールフレームの他方には、案内部に案内される被案内部が設けられていてもよい。この構成によれば、糸処理モジュールのモジュールフレームをユニットフレームに取り付ける際に、モジュールフレームをユニットフレームに対して容易に且つ確実に位置決めすることができる。
【0017】
また、紡績ユニットは、エアーが流通するユニット配管を更に備え、糸処理モジュールは、ユニット配管に対して着脱自在に接続されたモジュール配管を更に有し、ユニット配管に対するモジュール配管の接続方向は、案内部による被案内部の案内方向と略一致していてもよい。この構成によれば、糸処理モジュールのモジュールフレームをユニットフレームに取り付ける際に、ユニットフレームに対するモジュールフレームの位置決めと共に、ユニット配管に対するモジュール配管の位置決めを実現することができる。
【0018】
また、モジュール配管は、モジュール配管の接続端及びユニット配管の接続端の少なくとも一方に配置された弾性部材を介して、ユニット配管に接続されていてもよい。この構成によれば、糸処理モジュールのモジュールフレームをユニットフレームに取り付ける際に、ユニット配管に対するモジュール配管の接続を容易に且つ確実に実現することができる。
【0019】
また、給糸装置は、繊維束をドラフトするドラフト装置と、繊維束に撚りを与えて紡績糸を生成する紡績装置と、を有してもよい。この構成によれば、高品質の紡績糸を効率良く供給することができる。
【0020】
また、紡績装置は、エアーの旋回流によって繊維束に撚りを与えて紡績糸を生成する空気紡績装置であってもよい。この構成によれば、より高品質の紡績糸をより効率良く供給することができる。
【0021】
本発明の紡績機は、上述した紡績ユニットを複数備える。
【0022】
この紡績機では、紡績ユニットごとに糸処理モジュールを着脱することができるので、例えば、作業対象となる紡績ユニットのみの動作を停止させ、他の紡績ユニットの動作を継続させた状態で、動作を停止させた紡績ユニットから糸処理モジュールを取り外し、糸貯留装置に対する作業を実行することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、糸貯留装置に対する作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の紡績機の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態の紡績ユニットの側面図である。
【図3】図2の紡績ユニットの糸貯留装置の斜視図である。
【図4】糸欠点検出時の糸貯留装置の斜視図である。
【図5】糸欠点検出時の紡績ユニットの側面図である。
【図6】糸欠点検出時の紡績ユニットの側面図である。
【図7】糸切れ時の紡績ユニットの側面図である。
【図8】糸切れ時の糸貯留装置の斜視図である。
【図9】図2の紡績ユニットの糸処理モジュールの正面図である。
【図10】図9の糸処理モジュールの背面図である。
【図11】図9の糸処理モジュールの側面図である。
【図12】図2の紡績ユニットのユニットフレームの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[紡績機及び紡績ユニットの構成]
【0026】
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、ブロアボックス4と、原動機ボックス5と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されており、各紡績ユニット2は、紡績糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。糸継台車3は、紡績糸Yが切断された紡績ユニット2において糸継動作を行う。ブロアボックス4には、紡績ユニット2の各部において吸引流や旋回流等を発生させるためのエアー供給源等が収容されている。原動機ボックス5には、紡績ユニット2の各部に動力を供給するための原動機等が収容されている。
【0027】
なお、以下の説明では、紡績糸Yが走行する経路(すなわち、糸道)において、紡績糸Yが生成される側を上流側といい、紡績糸Yが巻き取られる側を下流側という。また、糸継台車3に対して糸道が位置する側を前側といい、その反対側を後側という。ここでは、複数の紡績ユニット2の配列方向に延在する作業通路(図示省略)が紡績機1の前側に設けられている。従って、作業者は、その作業通路から各紡績ユニット2の操作や監視等を行うことができる。
【0028】
図1及び図2に示されるように、各紡績ユニット2は、上流側から順に、ドラフト装置(給糸装置)6と、紡績装置(給糸装置)7と、ヤーンクリアラ(糸欠点検出装置)8と、テンションセンサ(テンション測定装置)9と、糸貯留装置50と、ワキシング装置11と、巻取装置12と、を備えている。これらの装置は、上流側が上側となるように(すなわち、下流側が下側となるように)、フレーム13によって直接的に又は間接的に支持されている。ヤーンクリアラ8、テンションセンサ9、糸貯留装置50及びワキシング装置11は、糸処理モジュール80として、フレーム13に対して着脱自在に取り付けられている。
【0029】
ドラフト装置6は、スライバSを延伸して繊維束Fを生成する(すなわち、繊維束Fをドラフトとする)装置であり、バックローラ対14と、サードローラ対15と、エプロンベルト16が架けられたミドルローラ対17と、フロントローラ対18と、を有している。各ローラ対14,15,17,18のボトムローラは、原動機ボックス5からの動力、又は紡績ユニット2ごとに設けられた電動モータ(図示省略)によって、異なる回転速度で駆動される。これにより、ドラフト装置6は、上流側から供給されたスライバSを延伸して繊維束Fを生成し、下流側の紡績装置7に供給する。
【0030】
紡績装置7は、エアーの旋回流によって繊維束Fに撚りを与えて紡績糸Yを生成する空気紡績装置である。より詳細には(ただし、図示省略)、紡績装置7は、紡績室と、繊維案内部と、旋回流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流側のドラフト装置6から供給された繊維束Fを紡績室内に案内する。旋回流発生ノズルは、繊維束Fが走行する経路の周囲に配置されており、紡績室内に旋回流を発生させる。この旋回流によって、紡績室内に案内された繊維束Fの繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、紡績された紡績糸Yを紡績室内から紡績装置7の外部に案内する。
【0031】
ヤーンクリアラ8は、紡績装置7と糸貯留装置50との間において、走行する紡績糸Yの糸欠点を検出し、糸欠点検出信号をユニットコントローラ10に送信する。なお、ヤーンクリアラ8は、糸欠点として、例えば、紡績糸Yの太さ異常や紡績糸Yに含有されている異物を検出するように構成されている。テンションセンサ9は、紡績装置7と糸貯留装置50との間において、走行する紡績糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。ワキシング装置11は、糸貯留装置50と巻取装置12との間において、走行する紡績糸Yにワックスを付与する。なお、ユニットコントローラ10は、紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。
【0032】
糸貯留装置50は、紡績装置7と巻取装置12との間において、走行する紡績糸Yを貯留する。糸貯留装置50は、紡績装置7から紡績糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時等に紡績装置7から送り出される紡績糸Yを滞留させて紡績糸Yが弛むのを防止する機能、及び巻取装置12側における紡績糸Yのテンションを調節して巻取装置12側における紡績糸Yのテンションの変動が紡績装置7側に伝わるのを防止する機能を有している。
【0033】
巻取装置12は、紡績糸YをパッケージPに巻き取って満巻のパッケージPを形成する装置であり、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバース装置23と、を有している。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、回転可能に支持するボビンBやパッケージP(すなわち、ボビンBに紡績糸Yが巻き付けられたもの)の表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。巻取ドラム22は、紡績ユニット2ごとに設けられた電動モータ(図示省略)によって駆動されて、接触するボビンBやパッケージPを回転させる。トラバース装置23は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフト25によって駆動されて、回転するボビンBやパッケージPに対して紡績糸Yを所定幅で綾振りする。
【0034】
糸継台車3は、紡績糸Yが切断された紡績ユニット2まで走行し、当該紡績ユニット2において糸継動作を行う。糸継台車3は、スプライサ(糸継装置)26と、サクションパイプ27と、サクションマウス28と、を有している。サクションパイプ27は、支軸31によって回動可能に支持されており、紡績装置7側の紡績糸Yの糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ26に案内する。サクションマウス28は、支軸32によって回動可能に支持されており、巻取装置12側の紡績糸Yの糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ26に案内する。スプライサ26は、引き渡された糸端同士の糸継ぎを行う。
[糸貯留装置の構成]
【0035】
次に、上述した糸貯留装置50の構成について説明する。図2及び図3に示されるように、糸貯留装置50は、糸貯留ローラ51と、電動モータ(駆動モータ)55と、下限側糸貯留量センサ56と、上限側糸貯留量センサ57と、糸掛け部材61と、糸外し部材64と、吸引機構65と、規制部材71と、を備えている。更に、紡績装置7と糸貯留ローラ51との間には、上流側から順に、第1案内部材78と、糸動作制御部材75と、が設けられており、糸貯留ローラ51と巻取装置12との間には、第2案内部材79が設けられている。
【0036】
糸貯留ローラ51は、電動モータ55の駆動軸に固定されており、電動モータ55によって回転させられる。糸貯留ローラ51は、糸貯留部52と、基端側テーパ部53と、先端側テーパ部54と、を有している。糸貯留部52は、紡績糸Yが巻き付けられる円筒状の部分であり、先端側に向かって僅かに先細りとなっている。基端側テーパ部53は、糸貯留部52の巻付け開始側の基端部52aから上流側に向かって末広がりとなっている。先端側テーパ部54は、糸貯留部52の先端部52bから下流側に向かって末広がりとなっている。
【0037】
基端側テーパ部53は、上流側から糸貯留ローラ51に導入される紡績糸Yを受けて糸貯留部52の基端部52aに円滑に案内する。これにより、糸貯留部52には、基端側から先端側に向かって整然と紡績糸Yが巻き付けられていく。一方、先端側テーパ部54は、糸貯留ローラ51から紡績糸Yが解舒される際に、糸貯留部52に巻き付けられた紡績糸Yが一度に抜け落ちる輪抜け現象の発生を防止しつつ、糸貯留ローラ51から下流側に紡績糸Yを円滑に導出する。
【0038】
下限側糸貯留量センサ56は、非接触で糸貯留ローラ51上の紡績糸Yの有無を検出するセンサであり、糸貯留部52に対向するように糸貯留ローラ51の後側に配置されている。下限側糸貯留量センサ56は、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yの貯留量が下限量に達した場合に、下限貯留量検出信号をユニットコントローラ10に送信する。上限側糸貯留量センサ57は、非接触で糸貯留ローラ51上の紡績糸Yの有無を検出するセンサであり、糸貯留部52の先端部52bに対向するように糸貯留ローラ51の側方に配置されている。上限側糸貯留量センサ57は、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yの貯留量が上限量に達した場合に、上限貯留量検出信号をユニットコントローラ10に送信する。
【0039】
糸掛け部材61は、糸貯留ローラ51に対して巻取装置12側に設けられ、紡績糸Yを引っ掛けて糸貯留ローラ51に巻き付ける部材であり、フライヤ軸62と、フライヤ63と、を有している。フライヤ軸62は、糸貯留ローラ51の先端側において糸貯留ローラ51に対して同一軸回りに相対回転可能に支持されている。フライヤ63は、フライヤ軸62の先端に固定されており、紡績糸Yが引っ掛かるように糸貯留ローラ51の先端側テーパ部54上に湾曲している。ここで、糸貯留ローラ51とフライヤ軸62との間には磁力が作用させられており、糸掛け部材61を糸貯留ローラ51に対して相対回転させるためには、糸掛け部材61に所定値以上のトルクを生じさせることが必要となっている。
【0040】
糸外し部材64は、糸掛け部材61から紡績糸Yを外す部材であり、糸貯留ローラ51の先端側テーパ部54近傍に配置されている。糸外し部材64は、下降位置と上昇位置との間で遥動可能に支持されている。ここで、下降位置は、糸道から退避した位置であり、上昇位置は、糸道上の紡績糸Yを押し上げて糸掛け部材61から紡績糸Yを外す位置である。糸外し部材64は、ばね(図示省略)によって下降位置側に付勢されているので、通常は下降位置に位置しており、糸継動作時等には、糸継台車3に設けられた空気圧シリンダ(図示省略)によって上昇位置に移動させられる。
【0041】
吸引機構65は、糸貯留ローラ51の基端側テーパ部53に対向するように配置された吸引口66aにエアーの吸引流を発生させる。吸引口66aは、パイプ状部材66の一端に設けられており、パイプ状部材66の他端は、サクションパイプ27やサクションマウス28と共通の繊維屑回収室(図示省略)に配管(図示省略)を介して接続されている。後述するように、紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合には、糸貯留部52の基端部52a側において紡績糸Yの糸端が振り回されることになるが、その糸端は、吸引口66aに発生させられた吸引流の作用を受ける。そのため、その糸端の繊維屑は、殆ど飛散することなく、吸引機構65によって除去される。
【0042】
規制部材71は、糸貯留ローラ51の側方に(糸貯留部52に対向するように)配置された板材であり、第1規制部72と、第2規制部73と、第3規制部74と、を有している。第1規制部72は、紡績糸Yの巻付け時の糸貯留ローラ51の回転方向における吸引口66aの上流側に位置しており、第2規制部73は、当該回転方向における吸引口66aの下流側に位置している。第1規制部72及び第2規制部73は、糸貯留部52の基端部52aに対向するように配置されており、紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合に糸貯留部52の基端部52a側において振り回される紡績糸Yの糸端が糸貯留部52の先端部52b側からの紡績糸Yの解舒に先行して糸貯留部52の先端部52b側に移動するのを規制する。第3規制部74は、糸貯留部52に対向するように配置されており、紡績糸Yが巻取装置12側で切断された場合に糸貯留部52の先端部52b側において振り回される紡績糸Yの糸端が糸貯留部52の基端部52a側からの紡績糸Yの解舒に先行して糸貯留部52の基端部52a側に移動するのを規制する。なお、上限側糸貯留量センサ57は、規制部材71の下端部に取り付けられている。
【0043】
糸動作制御部材75は、糸貯留ローラ51の上流側(ここでは、テンションセンサ9の下面(下流側の端面))に取り付けられた板材であり、案内機能部76と、規制機能部77と、を有している。案内機能部76は、紡績糸Yにテンションを付与して紡績糸Yを糸貯留ローラ51の基端側テーパ部53に案内すると共に、紡績装置7から伝わってくる紡績糸Yの撚りが案内機能部76よりも下流側に伝わるのを防止する。規制機能部77は、紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合に紡績糸Yの糸端が糸貯留装置50に案内される紡績糸Yの糸道から外れて糸貯留ローラ51を越えて糸掛け部材61側に移動するのを規制する。
【0044】
第1案内部材78は、糸貯留ローラ51の上流側(ここでは、テンションセンサ9の下面(下流側の端面))に取り付けられた板材であり、テンションセンサ9の筐体に形成されたスリットから、筐体内に配置された所定の検出位置に紡績糸Yを案内する。一方、第2案内部材79は、糸貯留ローラ51の下流側(ここでは、糸処理モジュール80のモジュールフレーム81上)に取り付けられた板材であり、ワキシング装置11の所定位置に紡績糸Yを案内すると共に、回転する糸掛け部材61によって振り回される紡績糸Yの軌道を規制して、第2案内部材79よりも下流側の紡績糸Yの走行を安定化させる。
[糸貯留装置の動作]
【0045】
次に、上述した糸貯留装置50の動作について説明する。紡績ユニット2において、紡績糸Yが生成されてパッケージPに巻き取られる通常動作が行われる場合には、電動モータ55が糸貯留ローラ51を略一定の回転速度で駆動させる。これにより、糸掛け部材61が糸貯留ローラ51と一体的に回転して、フライヤ63が紡績糸Yを引っ掛ける。そして、紡績糸Yを引っ掛けた状態で回転する糸掛け部材61が、回転する糸貯留ローラ51に紡績糸Yを巻き付けていく。
【0046】
糸貯留ローラ51に紡績糸Yが巻き付けられると、ユニットコントローラ10は、下限側糸貯留量センサ56から送信される下限貯留量検出信号、及び上限側糸貯留量センサ57から送信される上限貯留量検出信号に基づいて、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yの貯留量が下限量以上且つ上限量以下となるように紡績ユニット2の動作を制御する。ここで、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yの貯留量が下限量以上になると、糸貯留ローラ51の糸貯留部52と紡績糸Yとの接触面積が大きくなり、糸貯留部52と紡績糸Yとの間でスリップ等が殆ど発生しなくなる。従って、糸貯留装置50は、糸貯留ローラ51の回転によって紡績装置7から紡績糸Yを安定して(すなわち、略一定品質且つ略一定速度で)引き出すことができる。
【0047】
そして、糸貯留ローラ51に紡績糸Yが巻き付けられた状態で、巻取装置12側における紡績糸Yのテンションが高くなると、糸掛け部材61を糸貯留ローラ51に対して相対回転させようとする力(すなわち、糸掛け部材61の回転を停止させようとする力)がフライヤ63に作用する。これにより、糸掛け部材61に生じるトルクが所定値以上になると、糸掛け部材61が糸貯留ローラ51に対して相対回転し、その結果、糸貯留ローラ51から紡績糸Yが解舒される。逆に、巻取装置12側における紡績糸Yのテンションが低くなり、糸掛け部材61に生じるトルクが所定値未満になると、糸掛け部材61が糸貯留ローラ51と一体的に回転し、その結果、糸貯留ローラ51に紡績糸Yが巻き付けられる。このように、糸貯留装置50は、巻取装置12側における紡績糸Yのテンションを調節して巻取装置12側における紡績糸Yのテンションの変動が紡績装置7側に伝わるのを防止することができる。
[糸欠点検出時の紡績ユニットの動作]
【0048】
次に、糸欠点検出時の紡績ユニット2の動作について説明する。紡績ユニット2において、紡績糸Yが生成されてパッケージPに巻き取られる通常動作が行われている際に、ヤーンクリアラ8が糸欠点を検出すると、ヤーンクリアラ8は糸欠点検出信号をユニットコントローラ10に送信する。ユニットコントローラ10は、糸欠点検出信号を受信すると、直ちにドラフト装置6や紡績装置7等の動作を停止させる。これにより、繊維束Fに撚りが与えられなくなり、紡績糸Yが紡績装置7側で切断される。
【0049】
紡績糸Yが紡績装置7側で切断されても、ユニットコントローラ10は、糸貯留ローラ51の回転及び巻取装置12による巻取りを継続させる。そのため、図4に示されるように、切断された紡績糸Yの糸端は、糸貯留ローラ51に巻き取られ、糸貯留ローラ51から巻取装置12側に紡績糸Yが解舒されている間、糸貯留部52の基端部52a側において振り回される。このとき、その糸端は、規制部材71の第1規制部72によって糸貯留部52の先端部52b側への移動が規制されつつ、吸引口66aに発生させられた吸引流の作用を受ける。そのため、糸貯留ローラ51から巻取装置12側に紡績糸Yが円滑に解舒され、しかもその間、上流側の糸端の繊維屑は、殆ど飛散することなく、吸引機構65によって除去される。
【0050】
そして、巻取装置12が、切断された紡績糸Yの糸端までパッケージPに巻き取ると、ユニットコントローラ10は、紡績糸Yが切断された紡績ユニット2を示す制御信号を糸継台車3に送信する。これにより、糸継台車3は、当該紡績ユニット2の前まで走行し、糸継動作を開始する。
【0051】
まず、図5に示されるように、サクションマウス28がパッケージPの表面近傍まで回動して吸引流を発生させると共に、巻取装置12がパッケージPを逆回転させる。これにより、サクションマウス28は、パッケージPの表面から紡績糸Yの糸端を引き出して捕捉する。続いて、図6に示されるように、サクションマウス28が元の位置(待機位置)に回動して、巻取装置12側の紡績糸Yの糸端をスプライサ26に案内する。ここで、巻取装置12がパッケージPの回転を停止させる。
【0052】
その一方では、図5に示されるように、サクションパイプ27が紡績装置7の下流側まで回動して吸引流を発生させる。このとき、ユニットコントローラ10がドラフト装置6や紡績装置7等の動作を再開させるので、サクションパイプ27は、生成された紡績糸Yの糸端を捕捉する。続いて、図6に示されるように、サクションパイプ27が元の位置(待機位置)に回動して、紡績装置7側の紡績糸Yの糸端をスプライサ26に案内する。
【0053】
巻取装置12側の紡績糸Yの糸端及び紡績装置7側の紡績糸Yの糸端がスプライサ26に案内されると、糸貯留装置50においては、糸掛け部材61が紡績装置7側の紡績糸Yを引っ掛け、一体的に回転する糸貯留ローラ51に紡績糸Yを巻き付けていく。これにより、巻取装置12による巻取りが停止されていても、紡績装置7から送り出される紡績糸Yには殆ど弛みが発生しない。このように、糸貯留装置50は、糸継台車3による糸継動作時等に紡績装置7から送り出される紡績糸Yを滞留させて紡績糸Yが弛むのを防止することができる。
【0054】
そして、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yの貯留量が下限量に達すると、糸貯留ローラ51の糸貯留部52と紡績糸Yとの間でスリップ等が殆ど発生しなくなるので、紡績装置7から紡績糸Yが安定して(すなわち、略一定品質且つ略一定速度で)引き出されるようになる。ここで、ユニットコントローラ10が糸外し部材64を下降位置から上昇位置に移動させ、糸外し部材64が糸掛け部材61から紡績糸Yを外す。
【0055】
このように、糸貯留ローラ51が回転している状態で糸掛け部材61から紡績糸Yが外されると、糸貯留ローラ51から紡績糸Yが解舒されるのを阻止する抵抗が殆どなくなる。これにより、紡績糸Yの貯留量が下限量に達する前に糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Y(すなわち、品質の不安定な紡績糸Y)は、サクションパイプ27によって糸貯留ローラ51から解舒されて吸い込まれることになる。なお、この間にも、紡績装置7から紡績糸Yが安定して引き出されて糸貯留ローラ51に巻き付けられているので、紡績糸Yの貯留量は下限量以上に維持される。
【0056】
サクションパイプ27によって品質の不安定な紡績糸Yが除去されると、ユニットコントローラ10が糸外し部材64を上昇位置から下降位置に移動させる。これにより、紡績装置7側の紡績糸Yが糸掛け部材61に掛けられ、糸貯留ローラ51から下流側に紡績糸Yが解舒されなくなる。ここで、スプライサ26が、巻取装置12側の紡績糸Yの糸端と紡績装置7側の紡績糸Yの糸端とを継ぐ。このとき、スプライサ26において切断された不要な糸端は、サクションパイプ27及びサクションマウス28によって除去される。そして、スプライサ26による糸継ぎが終了すると、ユニットコントローラ10は、巻取装置12による巻取りを再開させる。
[糸切れ時の紡績ユニットの動作]
【0057】
次に、糸切れ時の紡績ユニット2の動作について説明する。図7に示されるように、紡績ユニット2において、紡績糸Yが生成されてパッケージPに巻き取られる通常動作が行われている際に、糸貯留装置50よりも下流側で紡績糸Yが切れると、糸貯留装置50の下流側に設けられた糸走行センサ(図示省略)によって紡績糸Yが検知されなくなる。これにより、ユニットコントローラ10は、糸貯留装置50と巻取装置12との間で糸切れが発生したと判断し、直ちにドラフト装置6や紡績装置7等の動作を停止させる。これにより、繊維束Fに撚りが与えられなくなり、紡績糸Yが紡績装置7側でも切断される。
【0058】
紡績糸Yが紡績装置7側で切断されても、ユニットコントローラ10は、糸貯留ローラ51の回転及び巻取装置12による巻取りを継続させる。そのため、切断された紡績糸Yの糸端は、糸貯留ローラ51に巻き取られ、糸貯留部52の基端部52a側において振り回される。このとき、その糸端は、規制部材71の第1規制部72によって糸貯留部52の先端部52b側への移動が規制されつつ、吸引口66aに発生させられた吸引流の作用を受ける。そのため、上流側の糸端の繊維屑は、殆ど飛散することなく、吸引機構65によって除去される。
【0059】
ここで、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yは下流側でも切れているので、糸貯留ローラ51から下流側に解舒されることはない。そのため、ユニットコントローラ10は、糸貯留ローラ51の正回転(通常の回転方向)を停止させ、糸貯留ローラ51を逆回転させる。このとき、糸貯留ローラ51に巻き付けられていた紡績糸Yの上流側の糸端は、規制部材71の第2規制部73によって糸貯留部52の先端部52b側への移動が規制される。そのため、図8に示されるように、上流側の糸端は、吸引機構65の吸引口66aに確実に補足される。更に、糸貯留ローラ51に巻き付けられていた紡績糸Yの下流側の糸端は、規制部材71の第3規制部74によって糸貯留部52の基端部52a側への移動が規制される。従って、糸貯留ローラ51に巻き付けられていた紡績糸Yは、糸貯留部52の基端部52a側から円滑に解舒され、吸引機構65に吸い込まれていく。
【0060】
糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yが吸引機構65によって除去されると、ユニットコントローラ10は、糸貯留ローラ51の逆回転を停止させ、糸貯留ローラ51を正回転させる。ユニットコントローラ10は、紡績糸Yが切れた紡績ユニット2を示す制御信号を糸継台車3に送信する。これにより、糸継台車3は、当該紡績ユニット2の前まで走行し、上述したように糸継動作を実行する。
[糸処理モジュールの構成]
【0061】
次に、糸処理モジュール80の構成について説明する。図9、図10及び図11に示される糸処理モジュール80は、図12に示されるユニットフレーム40に対して着脱自在に取り付けられる。図12に示されるように、ユニットフレーム40は、紡績機1のフレーム13の一部であり、ドラフト装置6、紡績装置7、巻取装置12等を直接的に又は間接的に支持している。
【0062】
図9及び図10に示されるように、糸処理モジュール80は、一対のサイドフレーム82、ミドルフレーム83、ボトムフレーム84及びフロントフレーム85を含むモジュールフレーム81を有している。ミドルフレーム83は、一対のサイドフレーム82の中間部間に掛け渡されており、ボトムフレーム84は、一対のサイドフレーム82の下端部間に掛け渡されている。フロントフレーム85は、ミドルフレーム83の上側において、一対のサイドフレーム82間に掛け渡されている。なお、以下の説明では、一対のサイドフレーム82の間の空間のうち、ミドルフレーム83の上側の空間を上側空間S1といい、ミドルフレーム83の下側の空間を下側空間S2という。
【0063】
糸処理モジュール80は、糸貯留装置50を有している。糸貯留装置50の構成のうち、電動モータ55は、上側空間S1に配置されており、ミドルフレーム83から駆動軸を下側に突出させた状態でミドルフレーム83に取り付けられている。糸貯留ローラ51は、下側空間S2に配置されており、電動モータ55の駆動軸に固定されている。糸掛け部材61は、下側空間S2に配置されており、糸貯留ローラ51の先端側において糸貯留ローラ51に対して同一軸回りに相対回転可能に支持されている。糸外し部材64は、下側空間S2に配置されており、一方のサイドフレーム82に遥動可能に支持されている。
【0064】
規制部材71は、下側空間S2に配置されており、糸貯留ローラ51の側方においてミドルフレーム83に取り付けられている。下限側糸貯留量センサ56は、下側空間S2に配置されており、ブラケット86を介してミドルフレーム83に取り付けられている。上限側糸貯留量センサ57は、下側空間S2に配置されており、規制部材71の下端部に取り付けられている。なお、規制部材71は、糸貯留ローラ51よりも後側に突出するようにミドルフレーム83に取り付けられているため(図11参照)、糸処理モジュール80が背面側を下にして作業通路に置かれた場合等に糸貯留ローラ51が破損するのを防止することができる。
【0065】
吸引機構65の構成のうち、パイプ状部材66は、下側空間S2に配置されており、吸引口66aが糸貯留ローラ51の基端側テーパ部53に対向した状態でミドルフレーム83に取り付けられている。パイプ状部材66の他端は、上側空間S1に配置されたモジュール配管34の一端に接続されている。モジュール配管34の他端は、例えば直方体箱状の接続部35に接続されている。接続部35は、上側空間S1に配置されており、フロントフレーム85に取り付けられている。接続部35の後側の端面(モジュール配管の接続端)35aには、モジュール配管34に連通する開口36が設けられている。
【0066】
更に、糸処理モジュール80は、上流側から順に、案内部材37と、ヤーンクリアラ8と、テンションセンサ9と、第1案内部材78と、糸動作制御部材75と、第2案内部材79と、ワキシング装置11と、を有している。なお、案内部材37は、前側からヤーンクリアラ8の所定位置に紡績糸Yを案内する部材である。
【0067】
案内部材37、ヤーンクリアラ8及びテンションセンサ9は、糸道がフロントフレーム85の前側に位置するようにフロントフレーム85に取り付けられている。ただし、ヤーンクリアラ8は、フロントフレーム85を貫通しており、ユニットコントローラ10と電気的に接続するためのポート8aは、フロントフレーム85の後側に位置している。第1案内部材78及び糸動作制御部材75は、フロントフレーム85の前側においてテンションセンサ9の下面に取り付けられている。第2案内部材79及びワキシング装置11は、糸道が前側に位置するようにボトムフレーム84に取り付けられている。
【0068】
上側空間S1には、電動モータ55の回転を制御するモータ制御部を含み、糸処理モジュール80の各部を制御する回路基板38が複数配置されている。各回路基板38は、フロントフレーム85に取り付けられており、各回路基板38には、ユニットコントローラ10と電気的に接続するためのコネクタ38aが設けられている。
【0069】
モジュールフレーム81の前側には、フロントパネル87が取り付けられている。フロントパネル87には、下側空間S2に配置された糸貯留ローラ51、糸掛け部材61及び糸外し部材64を前側に露出させる切欠部87aが設けられている。更に、フロントパネル87には、回路基板38と電気的に接続された表示部88及び操作部89が設けられている。表示部88は、紡績ユニット2の動作状態を表示する。操作部89は、紡績ユニット2に動作指示を与えるために作業者によって操作される操作ボタン等である。
【0070】
図11に示されるように、一対のサイドフレーム82のそれぞれには、後側に開口する案内溝(案内部)82aが設けられている。一方、図12に示されるように、ユニットフレーム40側の一対の縦フレーム41のそれぞれには、内側に突出する案内ピン(被案内部)41aが設けられている。モジュールフレーム81は、案内ピン41aが案内溝82aに係合して案内されることで、ユニットフレーム40に対して位置決めされる。そして、そのように位置決めされた状態で、ボトムフレーム84は、ユニットフレーム40側の下側横フレーム42にねじ止めされる。つまり、糸処理モジュール80のモジュールフレーム81は、ユニットフレーム40に対して着脱自在に固定される。
【0071】
更に、ユニットフレーム40側の上側横フレーム43には、例えば直方体箱状の接続部44が取り付けられている。接続部44は、エアーが流通するユニット配管45を介してブロアボックス4に接続されている。接続部44の前側の端面(ユニット配管の接続端)44aには、ユニット配管45に連通する開口46が設けられており、その開口46を包囲するように所定厚さの弾性部材47が取り付けられている。モジュールフレーム81がユニットフレーム40に対して位置決めされて固定されると、糸処理モジュール80の接続部35の端面35aが接続部44の端面44aに対向して弾性部材47を押圧し、糸処理モジュール80のモジュール配管34がユニット配管45に接続される。このように、モジュール配管34は、ユニット配管45に対して着脱自在に接続され、その接続方向は、案内溝82aによる案内ピン41aの案内方向(ここでは、前後方向)と略一致している。
【0072】
なお、ユニットフレーム40近傍には、ユニットコントローラ10と電気的に接続された配線48が延在しており、配線48の端部には、ヤーンクリアラ8のポート8aと接続されるコネクタ48aが設けられている。同様に、ユニットフレーム40近傍には、ユニットコントローラ10と電気的に接続された複数の配線49が延在しており、各配線49の端部には、各回路基板38のコネクタ38aと接続されるコネクタ49aが設けられている。これにより、紡績機1の前側に設けられた作業通路から、作業者が糸処理モジュール80をユニットフレーム40に対して着脱する際には、ポート8aとコネクタ48aとの着脱、及びコネクタ38aとコネクタ49aとの着脱を併せて実施することができる。
[紡績機及び紡績ユニットの作用及び効果]
【0073】
以上説明したように、紡績ユニット2では、糸貯留装置50を有する糸処理モジュール80が、ユニットフレーム40に対して着脱自在に取り付けられている。このように、ユニットフレーム40から取り外すことが可能な糸処理モジュール80に糸貯留装置50が設けられているので、紡績ユニット2によれば、糸貯留装置50の組付け、動作確認、メンテナンス等、糸貯留装置50に対する作業の効率化を図ることができる。特に、糸処理モジュール80がユニットフレーム40に対して前側に取り付けられており、しかも、案内溝82aによる案内ピン41aの案内方向、及びユニット配管45に対するモジュール配管34の接続方向が前後方向となっているため、作業者は、紡績機1の前側に設けられた作業通路から各紡績ユニット2の糸処理モジュール80に容易にアクセスすることができる。
【0074】
また、糸貯留装置50が、糸貯留ローラ51、電動モータ55、回路基板38、下限側糸貯留量センサ56、上限側糸貯留量センサ57、吸引機構65、糸掛け部材61及び糸外し部材64を有している。そのため、これらの糸貯留装置50の構成部品に対する作業を容易に且つ確実に実施することができる。
【0075】
更に、糸処理モジュール80が、表示部88、操作部89、ヤーンクリアラ8、テンションセンサ9及びワキシング装置11を有している。これにより、糸貯留装置50に対する作業の効率化と共に、表示部88、操作部89、ヤーンクリアラ8、テンションセンサ9及びワキシング装置11に対する作業の効率化を図ることができる。
【0076】
また、糸処理モジュール80の一対のサイドフレーム82のそれぞれには、後側に開口する案内溝82aが設けられており、ユニットフレーム40の一対の縦フレーム41のそれぞれには、案内ピン41aが設けられている。そして、糸処理モジュール80のモジュールフレーム81は、案内ピン41aが案内溝82aに案内されることで、ユニットフレーム40に対して位置決めされる。これにより、糸処理モジュール80のモジュールフレーム81をユニットフレーム40に取り付ける際に、モジュールフレーム81をユニットフレーム40に対して容易に且つ確実に位置決めすることができる。
【0077】
また、糸処理モジュール80のモジュール配管34は、ユニット配管45に対して着脱自在に接続され、その接続方向は、案内溝82aによる案内ピン41aの案内方向(ここでは、前後方向)と略一致している。これにより、ユニットフレーム40に対するモジュールフレーム81の位置決めと共に、ユニット配管45に対するモジュール配管34の位置決めを実現することができる。
【0078】
更に、モジュール配管34は、ユニット配管45の接続端である接続部44の端面44aに配置された弾性部材47を介して、ユニット配管45に接続される。これにより、糸処理モジュール80のモジュールフレーム81をユニットフレーム40に取り付ける際に、ユニット配管45に対するモジュール配管34の接続を容易に且つ確実に実現することができる。
【0079】
また、紡績糸Yを供給する給糸装置がドラフト装置6及び紡績装置7によって構成されている。しかも、紡績装置7は、エアーの旋回流によって繊維束Fに撚りを与えて紡績糸Yを生成する空気紡績装置である。これらにより、高品質の紡績糸Yを効率良く供給することができる。
【0080】
また、紡績機1では、紡績ユニット2ごとに糸処理モジュール80を着脱することができるので、例えば、作業対象となる紡績ユニット2のみの動作を停止させ、他の紡績ユニット2の動作を継続させた状態で、動作を停止させた紡績ユニット2から糸処理モジュール80を取り外し、糸貯留装置50等に対する作業を実行することができる。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、紡績機1及び紡績ユニット2では、紡績糸を供給する給糸装置がドラフト装置6及び紡績装置7によって構成されていたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットには、紡績糸が巻き付けられたボビンから紡績糸を供給するように構成された給糸装置等、紡績糸を供給することができれば、その他の給糸装置が適用されてもよい。
【0082】
なお、紡績装置が空気紡績装置である場合には、紡績装置は、繊維束の撚りが紡績装置の上流側に伝わるのを防止するために、繊維案内部に保持されて紡績室内に突出するように配置されたニードルを更に備えていてもよい。また、紡績装置は、そのようなニードルに代えて、繊維案内部の下流側端部によって、繊維束の撚りが紡績装置の上流側に伝わるのを防止するものであってもよい。更に、紡績装置は、互いに反対方向に撚りを掛ける一対のエアージェットノズルを備えていてもよい。
【0083】
また、紡績機1及び紡績ユニット2では、糸貯留装置50が紡績装置7から紡績糸Yを引き出す機能を有していたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットでは、紡績糸を供給する給糸装置から、デリベリローラとニップローラとで紡績糸が引き出されてもよい。
【0084】
また、紡績機1及び紡績ユニット2では、糸欠点検出時における紡績糸Yの切断が、紡績装置7における旋回流の停止によって実施されていたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットでは、糸欠点検出時における紡績糸の切断がカッターによって実施されてもよい。その場合、カッターは、糸処理モジュール80に取り付けられてもよい。カッターが糸処理モジュール80に取り付けられれば、カッターを糸貯留装置50等と共にユニットフレーム40に対して着脱することができる。
【0085】
また、紡績機1及び紡績ユニット2では、上側で供給された紡績糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されていたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットでは、下側で供給された紡績糸が上側で巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。
【0086】
また、紡績機1及び紡績ユニット2では、ドラフト装置6のボトムローラやトラバース装置23のトラバース機構が、原動機ボックス5からの動力によって(すなわち、複数の紡績ユニット2共通で)駆動されていたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットでは、紡績ユニットの各部(例えば、ドラフト装置、紡績装置、巻取装置等)が紡績ユニット2ごとに独立して駆動されてもよい。
【0087】
紡績糸Yの走行方向において、テンションセンサ9がヤーンクリアラ8の上流側に配置されてもよい。また、ユニットコントローラ10は、紡績ユニット2ごとでなく、複数の紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。また、巻取装置12は、紡績ユニット2ごとに設けられた駆動モータによって駆動されるのではなく、複数の紡績ユニット2に共通で設けられた駆動源によって駆動されてもよい。この場合において、パッケージPを逆回転させるときには、パッケージPが巻取ドラム22から離間するように、クレードルアーム21がエアシリンダ(図示省略)によって移動させられ、糸継台車3に設けられた逆回転用ローラ(図示省略)によってパッケージPが逆回転させられる。
【0088】
ワキシング装置11、テンションセンサ9、ヤーンクリアラ8、表示部88及び操作部89は、紡績ユニット2に設けられなくてもよい。或いは、ワキシング装置11、テンションセンサ9、ヤーンクリアラ8、表示部88及び操作部89は、糸処理モジュール80に設けられずに、ユニットフレーム40に直接的に設けられてもよい。
【0089】
また、紡績機1及び紡績ユニット2では、案内部である案内溝82aが糸処理モジュール80のモジュールフレーム81に設けられており、被案内部である案内ピン41aがユニットフレーム40に設けられていたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットでは、案内ピン等の被案内部が糸処理モジュールのモジュールフレームに設けられており、案内溝等の案内部がユニットフレームに設けられていてもよい。
【0090】
また、紡績機1及び紡績ユニット2では、ユニット配管45の接続端である接続部44の端面44aに配置された弾性部材47を介して、モジュール配管34がユニット配管45に接続されていたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットでは、モジュール配管の接続端、或いはモジュール配管の接続端及びユニット配管の接続端の両方に配置された弾性部材を介して、モジュール配管がユニット配管に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…紡績機、2…紡績ユニット、6…ドラフト装置(給糸装置)、7…紡績装置(給糸装置)、8…ヤーンクリアラ(糸欠点検出装置)、9…テンションセンサ(テンション測定装置)、11…ワキシング装置、12…巻取装置、34…モジュール配管、35a…端面(モジュール配管の接続端)、38…回路基板(モータ制御部)、40…ユニットフレーム、41a…案内ピン(被案内部)、44a…端面(ユニット配管の接続端)、45…ユニット配管、47…弾性部材、50…糸貯留装置、51…糸貯留ローラ、55…電動モータ(駆動モータ)、56…下限側糸貯留量センサ(糸貯留量センサ)、57…上限側糸貯留量センサ(糸貯留量センサ)、61…糸掛け部材、64…糸外し部材、65…吸引機構、66a…吸引口、80…糸処理モジュール、81…モジュールフレーム、82a…案内溝(案内部)、88…表示部、89…操作部、S…スライバ、Y…紡績糸、F…繊維束、P…パッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績糸を供給する給糸装置と、
前記紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、
前記給糸装置及び前記巻取装置を支持するユニットフレームと、
前記ユニットフレームに対して着脱自在に取り付けられ、前記給糸装置と前記巻取装置との間において前記紡績糸を貯留する糸貯留装置を有する糸処理モジュールと、を備えることを特徴とする紡績ユニット。
【請求項2】
前記糸処理モジュールは、
前記紡績ユニットの動作状態を表示する表示部と、
前記紡績ユニットに動作指示を与えるために作業者によって操作される操作部と、を更に有することを特徴とする請求項1記載の紡績ユニット。
【請求項3】
前記糸処理モジュールは、
前記給糸装置と前記糸貯留装置との間において前記紡績糸の糸欠点を検出する糸欠点検出装置を更に有することを特徴とする請求項1又は2記載の紡績ユニット。
【請求項4】
前記糸処理モジュールは、
前記糸貯留装置と前記巻取装置との間において前記紡績糸にワックスを付与するワキシング装置を更に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の紡績ユニット。
【請求項5】
前記糸処理モジュールは、
前記給糸装置と前記糸貯留装置との間において前記紡績糸のテンションを測定するテンション測定装置を更に有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の紡績ユニット。
【請求項6】
前記糸貯留装置は、
前記紡績糸が巻き付けられる糸貯留ローラと、
前記糸貯留ローラを回転させる駆動モータと、
前記駆動モータの回転を制御するモータ制御部と、を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の紡績ユニット。
【請求項7】
前記糸貯留装置は、
前記糸貯留ローラに巻き付けられた前記紡績糸の貯留量を検出する糸貯留量センサを更に有することを特徴とする請求項6記載の紡績ユニット。
【請求項8】
前記糸貯留装置は、
前記糸貯留ローラに対向するように配置された吸引口にエアーの吸引流を発生させる吸引機構を更に有することを特徴とする請求項6又は7記載の紡績ユニット。
【請求項9】
前記糸貯留装置は、
前記紡績糸を引っ掛けて前記糸貯留ローラに巻き付ける糸掛け部材と、
前記糸掛け部材から前記紡績糸を外す糸外し部材と、を更に有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項記載の紡績ユニット。
【請求項10】
前記糸処理モジュールは、
前記ユニットフレームに対して着脱自在に固定されたモジュールフレームを更に有し、
前記ユニットフレーム及び前記モジュールフレームの一方には、前記モジュールフレームを前記ユニットフレームに対して位置決めするための案内部が設けられており、
前記ユニットフレーム及び前記モジュールフレームの他方には、前記案内部に案内される被案内部が設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載の紡績ユニット。
【請求項11】
エアーが流通するユニット配管を更に備え、
前記糸処理モジュールは、
前記ユニット配管に対して着脱自在に接続されたモジュール配管を更に有し、
前記ユニット配管に対する前記モジュール配管の接続方向は、前記案内部による前記被案内部の案内方向と略一致していることを特徴とする請求項10記載の紡績ユニット。
【請求項12】
前記モジュール配管は、前記モジュール配管の接続端及び前記ユニット配管の接続端の少なくとも一方に配置された弾性部材を介して、前記ユニット配管に接続されていることを特徴とする請求項11記載の紡績ユニット。
【請求項13】
前記給糸装置は、
繊維束をドラフトするドラフト装置と、
前記繊維束に撚りを与えて前記紡績糸を生成する紡績装置と、を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項記載の紡績ユニット。
【請求項14】
前記紡績装置は、エアーの旋回流によって前記繊維束に撚りを与えて前記紡績糸を生成する空気紡績装置であることを特徴とする請求項13記載の紡績ユニット。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項記載の紡績ユニットを複数備えることを特徴とする紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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