説明

紫外線殺菌装置と、それを用いた空調装置

【課題】 高価な紫外線遮光部材の使用量を減らしてコストが低減できるとともに、通風抵抗も低減できる紫外線殺菌装置と、それを用いた空気清浄機を提供することを目的とする。
【解決手段】 紫外線殺菌装置8を構成するケース9を左右方向に三分割し、三分割された一側に紫外線ランプ11を縦長状に収納した紫外線ランプ収納部9aを設け、他側に、前後方向に突出するように形成され、前後面に長円状の流通孔10を多数穿設した主殺菌室9cを設け、これらの間に、通路幅が狭小に形成され、その前後面に紫外線遮光部材12a及び12bを装着した副殺菌室9bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌用の紫外線ランプを備えた紫外線殺菌装置と、それを用いた空調装置としての空気清浄機の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空調装置等に内臓される紫外線殺菌装置は、例えば特許文献1に開示されているように、吸込口と吹出口とを備えた筐体内の空気通路にユニットケースを設け、その中心部に紫外線ランプを配設している。同ユニットケースの前後面には切起こし片による複数のスリットが形成され、同スリットから吸込まれた空気は、前記紫外線ランプから照射される紫外線を受けて流出するようになっており、空気中に含有される細菌あるいは雑菌は紫外線の照射を受け、その殺菌作用により消滅するようになっている。又、前記切起こし片により紫外線の外部への漏洩が防止されるようになっている。しかしながら、前記切起こし片により前記ユニットケース内に流入しようとする空気に対し通風抵抗が大きくなり、一部の空気しか前記ユニットケースを通過しないため殺菌効果が低下するという問題点があった。
【0003】
これらの問題点を解決するため、例えば図6の上方からの断面図で示すように、前面に多数の流入孔31を穿設するとともに後面に流出孔32を穿設し、閉塞された方形状のケース30と、同ケース30の中央に縦長状に配置された紫外線ランプ33と、前記流入孔31及び前記流出孔32を覆うように装着された紫外線遮光部材34a及び34bとから紫外線殺菌装置を構成した事例もある。前記紫外線遮光部材34a及び34bは、アルミ箔等からなり前後面が開放された断面略六角形状のセルを連続的に接合させて所謂ハニカム状に形成されており、セル内部には紫外線を吸収する紫外線吸収部材が塗布されている。前記流入孔31から吸込まれた空気は、前面に配置された前記紫外線遮光部材34aを通過し、前記紫外線ランプ33から照射される紫外線により含有する雑菌あるいは細菌を殺菌処理された後、後面に配置された前記紫外線遮光部材34bを通過し、前記流出孔34bから前記ケース30外に放出されるようになっている。
【0004】
又、前記紫外線ランプ33から照射され、前記紫外線遮光部材34a及び34bに入射した紫外線はセル内部で反射を繰り返す毎に、内部に塗布された紫外線吸収部材により次第に吸収され、これにより前記ケース9外への漏洩を防止されるようになっている。
【0005】
しかしながら、アルミ箔等からなり略六角形状のセルを連続的に接合させて形成された前記紫外線遮光部材34a及び34bは、高価な原材料と製作が困難なことにより製作費用が高く、これを多量に使用する紫外線殺菌装置ひいては同紫外線殺菌装置を用いた空気清浄機等のコストを押し上げる要因となっていた。又、多数のセルにより紫外線遮光部材を形成することにより、これを通過する空気への通風抵抗が上昇し、騒音を発生させる要因ともなっていた。
【0006】
【特許文献1】特開平11−63592号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、高価な紫外線遮光部材を多量に使用しなくとも、殺菌能力を低下させることなく、充分に殺菌処理を行えるとともに、通風抵抗を低減させた紫外線殺菌装置と、それを用いた空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、空気流通孔を穿設したケースと、同ケース内に配設された紫外線ランプとからなる紫外線殺菌装置において、前記ケースに、前記紫外線ランプを設けるとともに、前後面に空気流通孔を穿設した主殺菌室を設け、前記紫外線ランプと、前記主殺菌室との間に、前後面に紫外線遮光部材を装着した副殺菌室を設けた構成となっている。又、前記紫外線遮光部材が、内部に紫外線吸収部材を有したセルを連続的に接合させて形成された構成となっている。又、前記セル内部に光触媒あるいはオゾン分解触媒を担持させた構成となっている。又、紫外線ランプと、前後面に流通孔を穿設した主殺菌室と、前記紫外線ランプと、前記主殺菌室との間に、前後面に紫外線遮光部材を装着した副殺菌室とから構成してなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、紫外線殺菌装置を構成するケースを左右方向に三分割し、三分割された一側に紫外線ランプを縦長状に収納した矩形状の紫外線ランプ収納部を設け、他側に、前後方向に突出するように方形状に形成され、前後面に長円状の流通孔を多数穿設した主殺菌室を設け、前記紫外線ランプ収納部と、前記主殺菌室との間に、通路幅が狭小に形成され、その前後面に紫外線遮光部材を装着した副殺菌室を設けることにより、前記紫外線ランプ収納部に収納された前記紫外線ランプから照射された紫外線は、通路幅が狭小に形成された前記副殺菌室を通過することにより光束が細いビーム状に絞られて前記主殺菌室を通過する空気に対し殺菌処理を行うとともに、外部への漏洩を防止されるようになっている。これにより紫外線遮光部材を多量に使用しなくても充分な殺菌処理を行えるコストが低減され、又通風抵抗を低減して騒音等の発生を防止できる紫外線殺菌装置と、それを用いた空気清浄機とすることができるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明による紫外線殺菌装置を設けた空気清浄機の断面図であり、図2はその分解斜視図である。図3(A)は紫外線殺菌装置の第一実施例での縦断面図及び図3(B)はその正面図であり、図4(A)は紫外線遮光部材の斜視図及び図4(B)はその断面図である。又、図5は第二実施例での断面図である。
【0012】
本発明による紫外線殺菌装置を設けた空気清浄機は、図1及び図2で示すように、前面に表示部1bを備えるとともに左右両側面に吸込口1aを形成した前面パネル1と、上面に複数の桟により吹出口2aを形成した後部パネル2とで本体を構成している。同本体内は中央部に流入孔3aを穿設し、その前面に後述する紫外線殺菌装置8を装着する矩形状の装着部3bを形成したベース3により前後に区画され、後部区画には、前記流入孔3aに臨んで、多数のブレードを周上に配設した円筒状の遠心ファン5と、同遠心ファン5を軸支したファンモータ4が設けられている。前部区画には前記側面吸込口1に対応して、プレフィルターと集塵フィルターと脱臭フィルターとを順次積層するように一体化したフィルター7が着脱自在に装着され、同フィルタ7は非常に目の細かい所謂HEPA(HIGH EFFICIENCY PARTICULATE AIR)フィルタから形成され、1μm以下の細菌も捕集できるようになっている。その後方には紫外線ランプ11を内蔵した紫外線殺菌装置8が設けられており、又これらの上方には前記紫外線ランプ11に電圧を供給する電源装置6aを備えた電源室6が備えられている。前記吸込口1aから吸込まれた室内の空気は、前記フィルター7により塵埃及び臭気成分が除去されるとともに、前記紫外線殺菌装置8に流入し、これを通過することにより前記紫外線ランプ11から殺菌作用のある特定波長の紫外線照射を受け、含有する細菌あるいは雑菌等を殺菌処理するようになっている。
【0013】
前記ベース3は、図2に示すように、前面が開放された薄型の箱体状に形成され、背面壁中央に上述したように円形状の流入孔3aを穿設するとともに、背面壁周囲を前方を突設させ、その内部を前記紫外線殺菌装置8が埋め込まれ螺着される装着部3bとしている。これにより、前記吸込口1aから吸込まれ、前記フィルター7を通過した空気は全て前記紫外線殺菌装置8を通過することとなり、周囲に拡散して流れようとする空気を遮蔽するようになっている。
【0014】
前記紫外線殺菌装置8は、図3(A)の縦断面図及び図3(B)の正面図で示すように、反射率の低いSECC鋼板(亜鉛メッキ鋼板)で形成された略方形状のケース9と、同ケース9の一側に縦長状に配設された紫外線ランプ11と、同ケース9の前後面の一側に配置された紫外線遮光部材12a及び12bとからなっている。反射率の低いSECC鋼板でケース9を形成することにより、前記紫外線ランプ11から照射された紫外線の反射を極力抑制し、反射した紫外線が外部へ漏出することを防止するようになっている。
【0015】
前記ケース9は、図3(A)で示すように左右方向に三分割され、一側に紫外線ランプ11を縦長状に収納した矩形状の紫外線ランプ収納部9aを設けており、その上下面には、前記電源装置6aに接続される配線を導出した紫外線ランプの電極13が固定されている。同ケース9の他側には、前後方向に突出するように方形状に形成され、前後面に長円状の空気流通孔10を多数穿設した主殺菌室9cが形成され、前記吸込口1aから吸込まれ、前面の空気流通孔10から同主殺菌室9cに流入した空気は、前記紫外線ランプ11から照射される紫外線により含有する雑菌あるいは細菌を殺菌処理された後、後面の空気流通孔10から流出するようになっている。又、前記空気流通孔10の周縁10aは部分拡大図で示すように内側に突出する所謂バーリング状に形成されており、紫外線が外部に漏洩することを極力防止するようになっている。
【0016】
前記紫外線ランプ収納部9aと、前記主殺菌室9cとの間は、通路幅が狭小に形成され、その前後面に矩形状の紫外線遮光部材12a及び12bを装着した副殺菌室9bが形成されている。前記紫外線ランプ収納部9aに収納された前記紫外線ランプ11から照射された紫外線は、通路幅が狭小に形成された前記副殺菌室9bを通過することにより、図2(A)で示すように、光束11aが細いビーム状に絞られて前記主殺菌室9cを通過する空気に対し照射されることとなり、これより前記空気流通孔10からの外部への漏洩を防止されるようになっている。又、前記紫外線遮光部材12a及び12bを通過する空気も紫外線により併せて殺菌処理されるようになっている。
【0017】
前記副殺菌室9bに設けられた前記紫外線遮光部材12a及び12bは、図3(A)の斜視図で示すように、約10〜30μm程度の薄肉のアルミ箔から形成され、前後面が開放された正六角筒状のセルを平方インチ当たり500〜1000個程度、連続的に接合させて所謂ハニカム状となっている。セルの長さ寸法は約10mm程度であり、その内壁面には紫外線を吸収するフッソ系樹脂材からなる黒色塗料の紫外線吸収部材が塗布されている。同セルが、図3(B)で示すように、細径の正六角筒状に形成されていることにより、その長手方向の中心軸から約10度以上の斜めの角度で、入射してきた紫外線は、内部で反射を繰り返す毎に紫外線吸収部材に吸収され他端の開放口からは漏洩しないようになっている。これにより、前記副殺菌室9bでも空気が通過しながら殺菌処理が行われるようになっている。
【0018】
前記紫外線ランプ11は、殺菌効率の最も高い約254nm(ナノメートル)の特定波長の紫外線を周囲に照射するようになっており、前記紫外線殺菌装置8内に流入してきた空気は、含有する細菌あるいは雑菌を波長254nmの紫外線により殺菌処理され、清浄化された新鮮な空気となって流出するようになっている。
【0019】
次に動作について説明する。前記前面パネル1の側面吸込口1aから吸込まれた室内の空気は、まず前記フィルター7を通過することにより、これを構成する一層目のプレフィルターにより比較的粒径の大きい塵埃が除去されるとともに、続いて二層目の集塵フィルターにより粒径の微細な塵埃も除去されるようになっている。塵埃が除去された空気は次に三層目の脱臭フィルターにより含有する臭気成分を吸収されるようになっている。塵埃と臭気成分とが除去され吸収された空気は、前記紫外線殺菌装置8に流入し、前記主殺菌室9cと前記副殺菌室9bとを通過することにより、前記紫外線ランプ11から照射される紫外線を受け、含有する細菌あるいは雑菌を殺菌処理され清浄化された空気となる。清浄化された空気は前記流入孔3aを介して前記ベース3後方の後部区画に流入し、前記遠心ファン5により前記吹出口2から再び室内に送出されるようになっている。
【0020】
前記紫外線殺菌装置8に装着される前記紫外線遮光部材12a及び12bが前記副殺菌室9bの範囲であることにより、殺菌処理能力を低下させることなく、前記紫外線殺菌装置8の構造の簡素化とコストの低減を行えるようになっている。又、前記主殺菌室9cに穿設された長円状の前記空気流通孔10を介して空気が通過することにより、通風抵抗が低減されて騒音等の発生を防止することができるようになっている。
【実施例2】
【0021】
次に、第二実施例について説明する。第二実施例は、図5で示すように、ケース14の中央に紫外線ランプ11を収納した紫外線ランプ収納部15を設け、その左右両側に、紫外線遮光部材18を前後に装着した副殺菌室17を設けるとともに、更にその両側に空気流通孔を前後面に穿設した主殺菌室16を設けている。これにより、前記副殺菌室17を通過したビーム状の紫外線を前記主殺菌室16に照射し、殺菌処理を行うようになっている。
【0022】
尚、前記紫外線遮光部材12a及び12bのセル内部には、紫外線吸収部材とともに、光触媒あるいはオゾン分解触媒を塗布あるいは担持させてもよい。光触媒及びオゾン分解触媒は紫外線を受けると臭気分解成分を放出する機能を有しており、これにより殺菌処理と脱臭処理とを平行して行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による空気清浄機を示す断面図である。
【図2】本発明による空気清浄機を示す分解斜視図である。
【図3】(A)は本発明による紫外線殺菌装置の第一実施例での縦断面図である。 (B)は本発明による紫外線殺菌装置の第一実施例での正面図である。
【図4】(A)は紫外線遮光部材の斜視図である。 (B)はその正面図である。
【図5】紫外線殺菌装置の第二実施例を示す縦断面図である。
【図6】従来の紫外線殺菌装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 前面パネル
1a 吸込口
1b 表示部
2 後部パネル
2a 吹出口
3 ベース
3a 流入孔
3b 装着部
4 ファンモータ
5 遠心ファン
6 電源室
6a 電源装置
7 フィルタ
8 紫外線殺菌装置
9 ケース
9a 紫外線ランプ収納部
9b 副殺菌室
9c 主殺菌室
10 空気流通孔
11 紫外線ランプ
11a 光束
12a、12b 紫外線遮光部材
13 電極
14 ケース
15 紫外線ランプ収納部
16 主殺菌室
17 副殺菌室
18 紫外線遮光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流通孔を穿設したケースと、同ケース内に配設された紫外線ランプとからなる紫外線殺菌装置において、
前記ケースに、前記紫外線ランプを設けるとともに、前後面に空気流通孔を穿設した主殺菌室を設け、前記紫外線ランプと、前記主殺菌室との間に、前後面に紫外線遮光部材を装着した副殺菌室を設けたことを特徴とする紫外線殺菌装置。
【請求項2】
前記紫外線遮光部材が、内部に紫外線吸収部材を有したセルを連続的に接合させて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項3】
前記セル内部に光触媒あるいはオゾン分解触媒を担持させてなることを特徴とする請求項2に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項4】
紫外線ランプと、前後面に流通孔を穿設した主殺菌室と、前記紫外線ランプと、前記主殺菌室との間に、前後面に紫外線遮光部材を装着した副殺菌室とからなる紫外線殺菌装置を備えたことを特徴とする空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−366(P2006−366A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179560(P2004−179560)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】