説明

紫外線殺菌装置

【課題】空間内を効率よく、確実に紫外線照射により殺菌する。
【解決手段】紫外線をビーム状に集光して放出する光源1と、放出された紫外線を導入する第1中空管16と、第1中空管16を通過した紫外線を直角に反射する第1反射部材21と、第1反射部材21を第1中空管16の長手方向軸周りに回転させ得る第1回転駆動機構12、13、14と、第1反射部材21で反射した紫外線が通過する第2中空管22と、第2中空管22を通過した紫外線を直角に反射する第2反射部材27と、第2反射部材27を第2中空管22の長手方向軸周りに自転しながら第1中空管16の長手方向軸周りに公転するように駆動する第2回転駆動機構19、23と、第2反射部材27で反射された紫外線を放出する放出部28とを備え、第1回転駆動機構12、13、14及び第2回転駆動機構19、23を作動させることで、紫外線で予め設定した空間内を走査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に浮遊する細菌や、天井、床、壁等に付着している細菌を紫外線照射により殺菌する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中に浮遊する細菌等を死滅させる手段として、紫外線照射が知られている。薬品処理等による殺菌では、薬品の残留や有害物質の生成等の問題があるが、紫外線照射による殺菌では、これらの問題が生じない。したがって、紫外線照射による殺菌は食品工場、製薬工場、化粧品工場、病院等の室内の殺菌に適している。紫外線照射による殺菌装置としては、例えば、天井に直接取り付けたり、吊り下げたりする、いわゆる殺菌灯が知られている。
【0003】
しかし、殺菌灯は紫外線が拡散してしまうので、紫外線照射灯の近くしか殺菌効果が得られず、室内全体でみると十分な殺菌効果が得られるとはいえない。
【0004】
この問題を解決する装置として、例えば特許文献1には、室内の空気を装置内に吸引し、装置内で空気に紫外線を照射し、殺菌済みの空気を室内に放出する、というサイクルを繰り返し行うことによって室内全体の空気を殺菌する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−090831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、室内に空気の流れが淀む場所ができる場合等には、室内のすべての空気が装置を循環しないおそれがある。仮にすべての空気が装置を循環するとしても、殺菌後に室内に放出された空気は未殺菌の空気と混合してしまうので、室内空間全体が殺菌後の空気に置換されるまでには長時間を要することとなる。
【0007】
そこで本発明では、室内の空気を確実かつ効率的に殺菌することが可能な紫外線殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の紫外線殺菌装置は、紫外線ランプで発生した紫外線をビーム状に集光して放出する光源と、光源から放出された紫外線を直接または間接的に導入する第1中空管と、第1中空管に対する位置が固定され、かつ第1中空管を通過した紫外線を直角に反射する第1反射部材と、第1反射部材を第1中空管の長手方向軸周りに回転させ得る第1回転駆動機構と、第1反射部材で反射した紫外線が通過する第2中空管と、第2中空管に対する位置が固定され、かつ第2中空管を通過した紫外線を直角に反射する第2反射部材と、第1反射部材の回転に同期して第2反射部材を第2中空管の長手方向軸周りに自転しながら第1中空管の長手方向軸周りに公転するように駆動する第2回転駆動機構と、第2反射部材で反射された紫外線を放出する放出部と、を備え、紫外線ランプで紫外線を発生させながら第1回転駆動機構及び第2回転駆動機構を作動させることで、放出部から放出される紫外線で予め設定した空間内を走査する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、公転しながら公転軸と直交する軸周りに自転する第2反射部材で反射した紫外線で空間内を走査するので、空気の流れの淀みの有無に関わらず、かつ短時間で空間内を殺菌することができる。また、紫外線は空間を仕切る壁、天井、床等の表面も走査することになるので、これらに付着した細菌等も殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る紫外線殺菌装置の一例を示す図である。
【図2】紫外線殺菌装置の適用例を説明するための図である(第1実施形態)。
【図3】紫外線殺菌装置の適用例を説明するための図である(第1実施形態)。
【図4】紫外線殺菌装置の適用例を説明するための図である(第2実施形態)。
【図5】紫外線殺菌装置の適用例を説明するための図である(第2実施形態)。
【図6】紫外線殺菌装置の適用例を説明するための図である(第3実施形態)。
【図7】紫外線殺菌装置の適用例を説明するための図である(第3実施形態)。
【図8】紫外線殺菌装置の適用例を説明するための図である(第4実施形態)。
【図9】紫外線殺菌装置の適用例を説明するための図である(第4実施形態)。
【図10】本発明に係る紫外線殺菌装置の他の例を示す図である。
【図11】紫外線殺菌装置の適用例を説明するための図である(第5実施形態)。
【図12】紫外線殺菌装置の適用例を説明するための図である(第5実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る紫外線殺菌装置の一例を示す図である。
【0013】
紫外線殺菌装置100は、紫外線を発生する光源1と、光源1からの紫外線を後述するように室内等の空間全体に照射する照射部2とを備える。
【0014】
光源1は、光源カバー7と、この光源カバー7内に配置するUVランプ3、曲面ミラー4、凸レンズ5、凹レンズ6を備える。
【0015】
光源カバー7は、一端が開放しており、他端にはUVランプ3の取り付け部を有する筒状の部材である。以下、開放している側を先端側、UVランプ3取り付け部がある側を基端側とする。
【0016】
UVランプ3は、光源カバー7の基端側の取り付け部に、光源カバー7内に紫外線を放射するよう設置する。なお、ここで用いるUVランプ3は、殺菌用紫外線として知られるUV−C(短波)の中で最も殺菌力が強い約254nmの波長の紫外線を発生するものである。
【0017】
曲面ミラー4は、基端側から先端に向けて径が広がる傘状の部材であり、UVランプ3を取り囲むように設置する。曲面ミラー4の内面は、UVランプ3から放射された紫外線を凸レンズ5に向けて反射する形状となっている。曲面ミラー4の内面は紫外線反射率がより高い方が望ましいので、例えば曲面ミラー4の内側の表面にアルミニウムを蒸着する。なお、アルミニウム蒸着に限られるわけではなく、例えば曲面ミラー4自体をアルミニウムで形成し、内面を研磨または電解研磨等してもよい。
【0018】
曲面ミラー4より先端側には凸レンズ5を、さらに先端側には凹レンズ6を配置する。凸レンズ5及び凹レンズ6の曲率は、凸レンズ5にUVランプ3から直接入射した紫外線及び曲面ミラー4に反射して入射した紫外線が、凹レンズ6通過後には一定の照射幅をもって併進する、いわゆるビーム状になるように設定する。
【0019】
照射部2は、光源1から紫外線が入射し、この紫外線の進行方向を変換する導入部8と、導入部8を通過した紫外線の進行方向を変換する変更部20と、変更部20を通過した紫外線の進行方向を変換して室内等の空気中に照射する放出部26と、を備える。
【0020】
導入部8は、内部に導入部反射材9を備え、光源1の先端開口部と対向する部分には、光源1から放出されたビーム状の紫外線が導入部反射材9に入射するよう第1導入孔10が開口する。そして、導入部8は導入部反射材9で反射した紫外線の進行方向部分に第1放出孔11が開口する。
【0021】
導入部反射材9は板状の部材で、紫外線が反射する側の表面には、曲面ミラー4と同様にアルミニウムが蒸着してある。そして、導入部反射材9は、第1導入孔10から導入部8内に入ってきた紫外線を第1放出孔11方向に反射する。なお、図1では、第1導入孔10と第1放出孔11がそれぞれ直交する面に開口し、第1導入孔10が開口する面に対して直交する方向から紫外線が入射しているが、これに限られるわけではない。例えば、光源1からの紫外線が、第1導入孔10が開口する面の法線に対して傾きをもつ方向(例えば図1中の斜め上方向)から第1導入孔10に入射する構成であってもよい。
【0022】
変更部20は、第1放出孔11と対向する部位に中空の第1導光管16が接続され、第1導光管16を介して導入部8と連通している。また、変更部20の内部には、第1導光管16を介して変更部20に入射した紫外線の進行方向を略直交する方向に変化させるように、変更部反射材21が固定されている。そして、変更部20には、変更部反射材21で反射した紫外線が通過するように第2導光管22が接続されている。
【0023】
すなわち、第1放出孔11を通過した紫外線は第1導光管16を介して変更部20に入射し、変更部反射材21で反射して第2導光管22を介して変更部20から放出される。
【0024】
なお、変更部反射材21は導入部反射材9と同様に、板状の部材であって、紫外線が反射する側の表面にはアルミニウムが蒸着してある。
【0025】
第1導光管16は、支持部材15の貫通穴に第1軸受17及び第2軸受18を介して回転可能に支持されている。また、第1導光管16の支持部材15から突出した部分の外周部には、スパーギヤ14が圧入等により固定されている。このスパーギヤ14は、モータ12のシャフトに固定されたピニオンギヤ13と噛み合っている。一方、支持部材15の変更部20側の外周部には、第1ギヤ19が設けられている。第1ギヤ19は支持部材15と一体に成形してもよいし、別体で形成したリング状のギヤを支持部材15の外周に嵌合させてもよい。
【0026】
放出部26は、第3軸受24及び第4軸受25を介して第2導光管22に回転可能に支持されており、かつ第2導光管22を介して変更部20と連通している。また、放出部26の内部には、第2導光管22を介して入射した紫外線の進行方向を略直交する方向に変化させるように放出部反射材27が配置されている。そして、放出部26には、放出部反射材27で反射した紫外線が放出部26の外部に放出されるように放出孔28が設けられている。したがって、第2導光管22を介して放出部26に入射した紫外線は、放出部反射材27で反射して、放出孔28から放出部26の外部に放出される。なお、放出部反射材27も導入部反射材9、変更部反射材21と同様に板状の部材であって、紫外線が反射する側の表面にはアルミニウムが蒸着してある。
【0027】
また、放出部26の外周には、第1ギヤ19と噛み合う第2ギヤ23が設けられている。第1ギヤ19と第2ギヤ23はかさ歯車である。第2ギヤ23は、放出部26と一体に形成してもよいし、別体で形成したリング状のギヤを放出部26の外周に嵌合させてもよい。
【0028】
支持部材15の少なくとも第1ギヤ19を設けた部分と、放出部26の少なくとも第2ギヤ23を設けた部分と、変更部20は第2ケース30に覆われている。放出部26の第2ケース30に覆われない部分は第1ケース29に覆われており、放出孔28を介して第1ケース29の外部と放出部26とが連通している。
【0029】
上記のような構成の照射部2において、モータ12を駆動すると、ピニオンギヤ13を介してモータ12の駆動力がスパーギヤ14に伝達され、第1導光管16が軸心周りに回転する。このとき、第1導光管16は支持部材15に対して回転可能に支持されているので、支持部材15は回転せずに停止したままである。
【0030】
第1導光管16が回転すると、これに接続されている変更部20及び変更部20に接続されている第2導光管22も第1導光管16の軸心周りに回転し、その結果、第2導光管22に支持されている放出部26も第1導光管16の軸心周りに回転する。
【0031】
また、放出部26は外周部に設けた第2ギヤ23は停止している支持部材15の外周に設けた第1ギヤ19と噛み合っており、かつ第2導光管22に回転可能に支持されている。このため、放出部26は第1導光管16の軸心周りに回転する際に、第2導光管22の軸心周りに回転する。
【0032】
すなわち、モータ12を駆動すると、放出孔28は第2導光管22の軸心周りに自転しながら、第1導光管16の軸心周りに公転する。
【0033】
このとき、変更部反射材21も第1導光管16の軸心周りに回転するので、変更部反射材21の導入部反射材9に対する向きは変わるが、導入部反射材9は反射した紫外線が変更部反射材21に入射するよう配置されているので、導入部反射材9で反射した紫外線は第2導光管22を通り変更部反射材21に入射する。変更部反射材21と放出部反射材27についても同様に、放出部26が回転することによって放出部反射材27の変更部反射材21に対する向きは変わるが、変更部反射材21で反射した紫外線は放出部反射材27で反射して放出孔28から放出される。
【0034】
したがって、照射部2によれば、光源1で発生した紫外線で、第2導光管22の軸心を中心とし放出孔28から放出された紫外線を半径とする円を第1導光管16の軸心周りに回転させることで形成される領域を走査することができる。そこで、上述した紫外線殺菌装置100を、室内や廊下等の天井や壁等に設置して、紫外線を照射しながらモータ12を駆動することで、その室内空間に浮遊する細菌や、天井、廊下、壁等に付着した細菌を殺菌することができる。
【0035】
なお、紫外線殺菌装置100は図10に示す形態であってもよい。図1の構成と図10の構成の相違点は、図10には導入部8がなく、光源1からの紫外線が直接変更部反射材21に入射する点である。
【0036】
ところで、紫外線による殺菌では、殺菌の対象とする細菌等に対して、これらを死滅させるために必要な照射エネルギを照射する必要がある。照射エネルギは紫外線の強度(μW./cm2)と、照射時間(sec)の積(μW.sec/cm2)で表されるが、各種細菌等を死滅させる為に必要な照射エネルギは、細菌等によって大きく異なる。また、紫外線強度は、UVランプ3からの距離が長くなるほど低下する特性がある。
【0037】
そこで、上述した紫外線殺菌装置100を設置する際には、殺菌対象とする細菌を死滅させるために必要な照射エネルギをIES Lighting Handbook等で調べ、これと殺菌対象とする空間の広さに基づいて使用するUVランプ3の紫外線強度、及び照射時間を決定する。例えば、殺菌に要する時間を短縮したい場合や、より広い空間を殺菌する場合には、より高い紫外線強度のUVランプ3を用いるようにする。
【0038】
照射時間を決めたら、この照射時間に基づいてピニオンギヤ13とスパーギヤ14の減速比及び第1ギヤ19と第2ギヤ23の減速比を設定する。このとき、ビーム状の紫外線の幅も考慮する。例えば、照射部2の回転速度が一定でも、紫外線の幅が広くなるほど紫外線が空間内の所定位置を通過するのに要する時間は長くなり、結果として照射時間が長くなるからである。
【0039】
そして、設定した各減速比で紫外線殺菌装置100を作動させたときに、殺菌対象となる空間全域に必要照射エネルギを照射するのに必要な時間だけモータ12を駆動する。これにより、殺菌対象とする空間に浮遊する細菌等を死滅させることができる。
【0040】
なお、モータ12及びUVランプ3の作動・停止は、図示しないコントローラによって制御する。
【0041】
次に、上述した紫外線殺菌装置100を利用した殺菌システムについて説明する。
【0042】
図2、図3は建物内の通路や室内に適用する殺菌システムを説明するための図である。
【0043】
ここでは、天井46と、床47と、側壁50、51と、扉43を備える壁49と、扉44を備える壁48とで囲まれる部屋45を殺菌の対象とする。部屋45の略中央部の天井46には紫外線殺菌装置100が配置される。また、天井46には、扉43から部屋45に出入りする人間を検知するセンサ41と、扉44から部屋45に出入りする人間を検知するセンサ42が配置される。センサ41及びセンサ42は、人間を検知した場合にはON、検知しない場合はOFFとなる。つまり、部屋45内に人間が居ない場合は、センサ41及びセンサ42はOFFになっている。
【0044】
そして、センサ41、センサ42のいずれかがONのときには、紫外線殺菌装置100は作動しないようにコントロールユニットに制御される。
【0045】
図2に示すように、人間が扉43から部屋45に入ると、センサ41は人間を検知してONの状態になる。この状態では、紫外線殺菌装置100は作動しない。ただし、UVランプ3はその特性上、発光可能になるまでに時間を要するので、人間が退室した後に備えて、紫外線照射の準備を開始する。
【0046】
人間が部屋45の中にいる限りセンサ41はONのままである。そして、人間が扉43から退室した場合にOFFになる。また、センサ41がONの状態で、人間が扉44から退室すると、センサ41及びセンサ42はOFFとなる。
【0047】
図3に示すように、人間が扉43から、または扉44から退室してセンサ41及びセンサ42がOFFになると、コントロールユニットは部屋45内の細菌を死滅させるのに必要な照射時間だけ紫外線殺菌装置100を作動させる。
【0048】
なお、紫外線殺菌装置100の作動中であっても、人間が部屋45に入室してセンサ41またはセンサ42がONになったら、コントロールユニットは、ただちに紫外線殺菌装置100を停止する。この場合、モータ12及びUVランプ3の両方を停止させてもよいし、モータ12は停止せずにUVランプ3のみを停止するようにしてもよい。
【0049】
上述したように、コントロールユニットは、部屋45から人間が退室するたびに紫外線殺菌装置100を作動させて、部屋45内を殺菌する。したがって、細菌等が付着していたり、ウィルス感染している人間が部屋45に入室することで細菌等が部屋内に持ち込まれたとしても、持ち込まれた細菌等は人間の退出後に殺菌されるので、その後部屋45内で菌が繁殖したり、その後の入室者にウィルスが感染したりすることを防止できる。
【0050】
上記のシステムは、部屋45に限られず、廊下の途中に扉43及び扉44を設けることで、部屋45に相当する閉じられた空間を形成する場合にも適用可能である。例えば病院の廊下等に適用し、人間が通過するたびに殺菌を行うシステムとすることができる。
【0051】
なお、上記説明では部屋45に紫外線殺菌装置100を一つだけ配置しているが、部屋45の広さや形状によっては、2つ以上配置しても構わない。
【0052】
第2実施形態について説明する。
【0053】
本実施形態は、紫外線殺菌装置100の構成は第1実施形態と同様であるが、紫外線殺菌装置100を用いたシステムの制御方法が異なる。
【0054】
本実施形態で殺菌の対象とするのは、医薬品や化粧品等の研究施設や製造現場のような無菌室である。
【0055】
図4、図5は、本実施形態を適用する殺菌システムを説明するための図である。
【0056】
本実施形態の部屋45は、扉44及び扉44からの入退室を検知するセンサ42を備えない点を除けば、第1実施形態の部屋45と同様の構成である。そして、この部屋45に入室する人間は、紫外線被曝を防止するための防護服、手袋及びゴーグルを装着して入室することとする。
【0057】
図4に示すように、センサ41が人間を検知してONになったら、コントロールユニットは、UVランプ3及びモータ12を作動させる。これにより、人間が部屋45内で作業している間、部屋45内の空間は紫外線殺菌装置100により殺菌される。そして、人間の退室を検知したら、コントロールユニットは予め設定した時間だけ紫外線殺菌装置100を継続して作動させ、その後停止させる。
【0058】
上述したようなシステムによれば、コンタミの問題等で殺菌、消毒に薬品を用いる事が出来ない医薬品取扱現場や、細菌が繁殖しやすい環境となる化粧品取扱現場で、空気中に浮遊したり設備や壁面に付着していたりする細菌等を死滅させることができる。
【0059】
第3実施形態について説明する。
【0060】
本実施形態の紫外線殺菌装置100は、光源1及び照射部2の構成は第1実施形態のものと同様であるが、第1実施形態の紫外線殺菌装置100が天井に据え付けるものであるのに対し、本実施形態の紫外線殺菌装置100は移動可能である点、及び人間の入退室を検知するセンサが紫外線殺菌装置100に取り付けられている点が異なる。
【0061】
図6、図7は本実施形態を適用する殺菌システムを説明するための図である。
【0062】
図6に示すように、紫外線殺菌装置100は、図1に示した光源1及び照射部2に加え、センサ41が備えられており、例えば三脚55等のような台にセットした状態で使用する。
【0063】
まず、図6に示すように、部屋45の中央部の、床47から天井46までの約半分程度の高さの位置に紫外線殺菌装置100を設置する。紫外線殺菌装置100を設置したら、操作者はスタートスイッチをONにして、部屋45から退室する。センサ41はスタートスイッチをONにすることで起動し、操作者を検知してONの状態になる。コントロールユニットは、スタートスイッチがONになっても、センサ41がOFFになるまではUVランプ3及びモータ12の作動を禁止する。操作者が退室して扉43が閉まると、センサ41はOFFになるので、コントロールユニットはUVランプ3及びモータ12を予め設定した時間だけ作動させ、設定した時間が経過したら停止させる。
【0064】
殺菌の途中で人間が入室してセンサ41がONになった場合には、コントロールユニットはただちにUVランプ3及びモータ12を停止する。
【0065】
なお、図6、図7では部屋45にある電源から駆動用の電力を供給しているが、バッテリ等から供給するようにしてもよい。
【0066】
上述したような移動式の紫外線殺菌装置100は、第1、第2実施形態のように天井に備え付けるほどには作動頻度が高くない部屋の殺菌や、車両内や航空機内等の殺菌に適している。例えば、鉄道車両の殺菌を行う場合には、車両が終着駅に到着して乗客を降ろした後で紫外線殺菌装置100を持ち込んで殺菌を行う。紫外線殺菌装置100によれば、吸引した空気に紫外線を照射する方式に比べて短時間で車内全域を殺菌することができ、また、紫外線による殺菌は薬品による殺菌のように座席が湿ったり臭いが残ったり残留物質が発生することもないので、直ちに折り返し運転する場合のように再出発までの時間が限られている場合でも、車内を殺菌することができる。なお、窓ガラスは紫外線透過率がゼロ%なので、到着したホームに停止した状態で紫外線殺菌装置100を作動させても、ホームにいる人間が紫外線被曝することはなく、安全性にも優れる。
【0067】
第4実施形態について説明する。
【0068】
本実施形態は、紫外線殺菌装置100の構成は第1実施形態と同様であるが、紫外線殺菌装置100を用いる対象が異なる。本実施形態で殺菌の対象とするのは、空港等の入出国審査設備である。
【0069】
図8、図9は、本実施形態を説明するための図である。
【0070】
入国審査設備としてA室及びB室の2部屋を設け、各部屋の天井略中央には、それぞれ紫外線殺菌装置100A、紫外線殺菌装置100Bを設置する。また、各部屋には入国審査用のカウンタ64が複数設置する。
【0071】
航空機等が到着したら、図8に示すように、まずA室の入口60及び出口61を開放し、入国者をA室に誘導する。このとき、A室の紫外線殺菌装置100Aは停止しておく。一方、B室は入口62及び出口63を閉鎖し、紫外線殺菌装置100Bを作動させて室内を殺菌する。紫外線殺菌装置100Bの作動時間は、使用するUVランプ3の殺菌線出力や部屋の広さ等に応じて予め設定する。紫外線殺菌装置100Bによる殺菌が終了しても、B室の入口62及び出口63は閉鎖したままにしておく。
【0072】
A室に誘導した入国者の審査がすべて終了し、入国審査官が退室したらA室の入口60及び出口61を閉鎖する。
【0073】
そして、次便の航空機等が到着したら、図9に示すようにB室の入口62及び出口63を開放し、入国者をB室に誘導する。このとき、A室では紫外線殺菌装置100Aを作動させて室内を殺菌する。
【0074】
以降、航空機等が到着する度に、上記のようにA室とB室を交互に使用し、使用していない方の部屋を殺菌する。
【0075】
上記のようにA室とB室を交互に使用、殺菌すれば、ある便にウィルスに感染した乗客がいたとしても、その後到着した他の便の乗客への入国審査での感染を防止できるので、感染被害の低減を図ることができる。
【0076】
なお、3部屋以上を用意して、上記と同様に全室を同時に使用せずに、いずれか1部屋は殺菌のために閉鎖するようにしてもよい。
【0077】
また、航空機等出口からA室及びB室に至る通路に、図2、図3に示したシステムを適用すれば、より確実に他の便の乗客への感染を防止することができる。
【0078】
第5実施形態について説明する。
【0079】
本実施形態は、紫外線殺菌装置100の構成は第1実施形態と同様であるが、紫外線殺菌装置100を用いる対象が異なる。本実施形態で殺菌の対象とする空間は、バイオリアクタや、食品工場等で使用する貯槽等の内部空間である。
【0080】
図11、図12は、本実施形態を説明するための図であり、攪拌槽型バイオリアクタの内部を洗浄、殺菌するシステムについて示した断面図である。
【0081】
攪拌槽型バイオリアクタは、図11、図12に示すようにタンク70と、タンク70内に回転可能に設置された攪拌羽74と、攪拌羽74を回転駆動する攪拌用モータ71と、3次元洗浄ノズルやジェットシリンダ72等からなる高圧洗浄システムと、紫外線殺菌装置100を備える。攪拌羽74及び攪拌用モータ71、並びに3次元洗浄ノズル及びジェットシリンダ72は、公知のものを用いるので、簡単に説明する。
【0082】
攪拌羽74は、攪拌用モータ71のシャフトに連結されるシャフト74aと、シャフト74aの先端付近に設けられた複数の羽74bで構成され、攪拌用モータ71によりシャフト74a周りに回転し、タンク70の内容物を攪拌する。
【0083】
3次元洗浄ノズル73は、例えば特開平8−010734号公報に開示されているものと同様の構造であり、この3次元洗浄ノズル73を、タンク70内を昇降可能に取り付けられたジェットシリンダ72のシリンダ72aの先端に取り付ける。そして、シリンダ72aを昇降させながら3次元洗浄ノズル73を作動させることにより、タンク70の内面全域を高圧洗浄することができる。なお、3次元洗浄ノズル73は、非作動時にはタンク70の上部に設けられたノズル格納部75に格納される。
【0084】
紫外線殺菌装置100は、基本的には図1または図10と同様の構成であるが、第1導光管16が図1等に比べて長く形成される。この第1導光管16はジェットシリンダ72のシリンダ72aと同様に作用し、紫外線殺菌装置100は作動時にはタンク70内に突出する位置にあり、非作動時は紫外線殺菌装置格納部76に格納される。なお、第1導光管16はタンク70の中心軸に対して傾いて設置されている。
【0085】
次に、タンク70内の洗浄、殺菌動作について説明する。
【0086】
タンク70の内部を空にしたら、図11に示すように、まずシリンダ72aを昇降させながら3次元洗浄ノズル73を作動させて、タンク70の内面を高圧洗浄する。高圧洗浄が終了したら、図12に示すように3次元洗浄ノズル73をノズル格納部75に格納し、紫外線殺菌装置100をタンク70内の突出する位置に移動させてから、予め設定した作動時間だけ作動させて殺菌を行う。作動時間が経過したら紫外線殺菌装置格納部76に戻す。
【0087】
高圧洗浄を行うだけでは殺菌はできないが、薬品や食品を扱う攪拌槽の場合には、コンタミの発生を避けるために薬品による殺菌は難しいという問題があった。しかし、紫外線殺菌装置100であればコンタミは発生し得ないので、上述したシステムによって、タンク70内面の洗浄及び殺菌を行うことができる。
【0088】
また、第1導光管16をタンク70の中心軸に対して傾けて設置することで、紫外線殺菌装置100から発せられた紫外線がタンク70内面に対して直角に入射する頻度が低くなり、図12に示すようにタンク70内面での反射を利用して効率的に殺菌することができる。
【0089】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
1 光源
2 照射部
3 UVランプ
4 曲面ミラー
5 凸レンズ
6 凹レンズ
7 光源カバー
8 導入部
9 導入部反射材
10 第1導入孔
11 第1放出孔
12 モータ
13 ピニオンギヤ
14 スパーギヤ
15 支持部材
16 第1導光管
17 第1軸受
18 第2軸受
19 第1ギヤ
20 変更部
21 変更部反射材
22 第2導光管
23 第2ギヤ
24 第3軸受
25 第4軸受
26 放出部
27 放出部反射材
28 放出孔
29 第1ケース
30 第2ケース
41 センサ
42 センサ
43 扉
44 扉
45 部屋
46 天井
47 床
48 壁
49 壁
50 側壁
51 側壁
55 三脚
70 タンク
73 3次元洗浄ノズル
74 攪拌羽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線ランプで発生した紫外線をビーム状に集光して放出する光源と、
前記光源から放出された紫外線を直接または間接的に導入する第1中空管と、
前記第1中空管に対する位置が固定され、かつ前記第1中空管を通過した紫外線を直角に反射する第1反射部材と、
前記第1反射部材を前記第1中空管の長手方向軸周りに回転させ得る第1回転駆動機構と、
前記第1反射部材で反射した紫外線が通過する第2中空管と、
前記第2中空管に対する位置が固定され、かつ前記第2中空管を通過した紫外線を直角に反射する第2反射部材と、
前記第1反射部材の回転に同期して前記第2反射部材を前記第2中空管の長手方向軸周りに自転しながら前記第1中空管の長手方向軸周りに公転するように駆動する第2回転駆動機構と、
前記第2反射部材で反射された紫外線を放出する放出部と、
を備え、
前記紫外線ランプで紫外線を発生させながら前記第1回転駆動機構及び前記第2回転駆動機構を作動させることで、前記放出部から放出される紫外線で予め設定した空間内を走査することを特徴とする紫外線殺菌装置。
【請求項2】
前記紫外線ランプ、前記第1回転駆動機構及び前記第2回転駆動機構は、作動開始したら、少なくとも、殺菌しようとする対象物を死滅させるための必要照射エネルギを紫外線で走査する空間全域に対して照射するのに必要な時間は作動することを特徴とする請求項1に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項3】
前記第1回転駆動機構は、前記第1中空管を回転駆動させる電動モータと、前記電動モータの回転数を減速する減速機構と、を備え、
前記第2回転駆動機構は、前記第1中空管を回転可能に支持する固定支持部材と、前記固定支持部材の外周に設けた第1かさ歯車と、その一部が前記第2中空管の外周に回転可能に支持され内部に前記第2反射部材を備える回転部材と、前記回転部材の外周に設けられ前記第1かさ歯車と直交する向きで噛み合う第2かさ歯車と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項4】
前記予め設定した空間内への人間の進入及び退出を検知する人感センサを備え、
前記人感センサで進入を検知したら、その後退出を検知した後で前記前記紫外線ランプ、前記第1回転駆動機構及び前記第2回転駆動機構が作動することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載する紫外線殺菌装置。
【請求項5】
前記予め設定した空間内への人間の進入及び退出を検知する人感センサを備え、
前記人感センサで進入を検知したら前記前記紫外線ランプ、前記第1回転駆動機構及び前記第2回転駆動機構が作動し、前記人感センサが退出を検知したら退出から予め設定した時間が経過した後に停止することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載する紫外線殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−98156(P2011−98156A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256174(P2009−256174)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(591055632)株式会社ミウラ (7)
【Fターム(参考)】