説明

紫外線水処理装置およびその監視制御システム

【課題】不測の事態が発生した場合でも紫外線水処理装置の後段にガラス片,水銀、および水銀と接触した処理水が流出することを防止できる紫外線水処理装置およびその監視制御装置を提供する。
【解決手段】水槽の底部に設けられた沈殿物集積部20と、沈殿物集積部20の沈殿物情報を検知する検知器21と、検知器21で得られた沈殿物情報に基づき、紫外線ランプ5および保護管6の破損を判断する判定器14と、判定器14が出力する破損信号に基づき、水槽30の流入路制御器2,流出路制御器10のうち少なくとも1つを閉の状態とする系列切り離し機構と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水,中水,下水に用いられる紫外線水処理装置およびその監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大腸菌などの細菌類や病原性原虫のクリプトスポリジウムを消毒し、不活化させるため、紫外線水処理が導入されつつある。濁度が高いと紫外線が到達せず充分な消毒,不活化効果が期待できないため、例えば浄水を対象とする場合には、除濁処理の後段に紫外線水処理装置が設けられる。
【0003】
紫外線水処理の主要な装置は紫外線ランプであり、一般に水銀をガラス管内に封入した放電管が用いられる。この放電管から照射される紫外線が大腸菌などのDNAを損傷させることにより、消毒,不活化が可能である。紫外線ランプは、ある期間ごとに交換する必要があるため、紫外線水処理装置では紫外線ランプと被処理水の間に石英ガラス製の保護管が設けられる。
【0004】
紫外線ランプは通常4000から12000時間で交換となり、平均して年1回程度の交換が必要となる。紫外線ランプおよび保護管はいずれもガラス製であるため、装置周辺の状況や装置の構造,交換する作業者の不注意などにより、誤って破損してしまう可能性がある。また、地震などが発生した際にも、紫外線ランプおよび保護管が破損する可能性がある。また、紫外線ランプ周辺の水の流速が早いため、紫外線水処理装置前後のポンプや弁の運転状況によっては水撃(ウォーターハンマー)が発生することも想定され、その水撃作用によって保護管や紫外線ランプが破損する可能性がある。
【0005】
一方、紫外線ランプには水銀が含まれているため、紫外線ランプと保護管が破損した場合には処理水に水銀が混入することとなる。浄水の場合、紫外線水処理装置の後段には水銀などの金属を分離除去する処理は無く、場合によっては住民や水生生物の健康被害に直結する可能性がある。
【0006】
〔非特許文献1〕には、万が一紫外線ランプが破損した場合、ガラス片や水銀片が処理水へ混入することを防ぐために、サイクロン型紫外線リアクタとして装置下方にトラップする機構を設けることが開示されている。
【0007】
〔特許文献1〕には、紫外線照射装置の上流側に通水弁を、下流側に排水弁及び遮断弁を設け、破損検出器が紫外線ランプの破損を検出した時には、通水弁,遮断弁を閉じ、排水弁を開き、紫外線ランプの破損によって放出された水銀を含む汚染水を排水受け槽を介して重金属吸着塔に導入するようにした水処理設備が開示されている。
【0008】
また、〔特許文献2〕には、水槽中の水を槽外に取出しては戻す循環式の水流管を形成し、水流管の途中に、オゾン供給装置,濾過装置,紫外線照射装置を設けた水処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−188274号公報
【特許文献2】特開平1−194990号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】東芝レビュー Vol.61 No.5(2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
〔非特許文献1〕に記載の技術では、水銀やガラス片の流出を完全に防ぐことはできないという問題がある。すなわち、破損した際に、水流に同伴されない程度の大きな固形物と水銀は処理水から分離できるが、微小な固形物や微小な水銀は処理水とともに継続して流出してしまう問題点がある。通常、紫外線水処理装置内での被処理水の滞留時間は数秒である。従って、トラップの蓄積物を目視確認した後で装置を系列から切り離す操作をしても、一定量のガラス片,水銀は浄水の場合には浄水池や配水管へ、下水の場合には放流先へ流出してしまい、手遅れとなってしまう問題点がある。また、トラップに蓄積された水銀を完全に分離除去するまで処理水は水銀と直接接触した状態を維持して流れ続けるため、時間とともに微量ずつ水銀が処理水に混入してしまう問題点がある。いずれの場合にも、一度後段へ流出した水銀を回収し、汚染された槽や配管,河川を完全な状態に回復するためには、多大な労力と時間および費用が必要となる。
【0012】
〔特許文献1〕に記載の技術は、保護管の歪みを検出、あるいは保護管への水の浸入を検知して弁の開閉制御をするものであり、歪みの検知は困難な点があり、また水の浸入の検知は応答が遅いため、紫外線ランプの破損が検出できないか、検出が遅れて処理水に水銀が混入する恐れがある。また、保護管等が並列に複数配列された場合に、弁を急激に閉じることによる水撃によって他の保護管等が破損することについては配慮されていないものであった。
【0013】
〔特許文献2〕に記載の技術は、音響センサにより透明パイプが万一破損した時に、破損音を感知して弁閉とし、水をバイパス路に導くものであり、破損音の検知は困難な点があり、透明パイプの破損が検出できない恐れがある。また、紫外線ランプの破損については配慮がされていなく、保護管等が並列に複数配列された場合に、弁を急激に閉じることによる水撃によって他の保護管等が破損することについては配慮されていないものであった。
【0014】
本発明の目的は、不測の事態が発生した場合でも紫外線水処理装置の後段にガラス片,水銀、および水銀と接触した処理水が流出することを防止できる紫外線水処理装置およびその監視制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明の紫外線水処理装置は、水槽の底部に設けられた沈殿物集積部と、該沈殿物集積部の沈殿物情報を検知する検知器と、該検知器で得られた沈殿物情報に基づき、前記紫外線ランプおよび保護管の破損を判断する判定器と、該判定器が出力する破損信号に基づき、前記水槽の流入路制御器,流出路制御器のうち少なくとも1つを閉の状態とする系列切り離し機構と、を備えたものである。
【0016】
また、前記水槽の沈殿物集積部は、少なくとも一部が透明な材料で形成されるか、沈殿物集積部を画像計測する沈殿物画像計測部を備えているものである。
【0017】
また、前記検知器は、前記沈殿物集積部に設けた電極間の電気抵抗,沈殿物集積部の沈殿物重量変化,沈殿物集積部の画像計測情報,沈殿物集積部に設けた光感知センサの出力情報,沈殿物集積部の交流電気抵抗のうち少なくとも1つの情報を検知するものである。
【0018】
また、紫外線ランプおよび保護管の破損を判断する判定器と、該判定器が出力する破損信号に基づき、紫外線水処理装置の紫外線ランプを全て自動的に電源をオフにする緊急消灯部と、を備えたものである。
【0019】
本発明の紫外線水処理装置の監視制御システムは、紫外線ランプおよび保護管の破損を判断する判定器と、該判定器が出力する破損信号を、中央監視制御装置に送信する破損信号通信装置と、を備えたものである。
【0020】
また、紫外線ランプおよび保護管の破損を判断する判定器と、該判定器が出力する破損信号を、操作員の携帯電話あるいは携帯情報端末に送信する破損信号携帯端末通信装置と、を備えたものである。
【0021】
また、複数系列の紫外線水処理装置が設置され、紫外線ランプおよび保護管の破損を判断する判定器と、該判定器が出力する破損信号に基づき、他系列の水処理量および紫外線ランプの光量を制御する他系列運転量変更部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、不測の事態が発生した場合でも紫外線水処理装置の後段にガラス片,水銀および水銀と接触した処理水が流出することを防止することができ、高い安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の紫外線水処理装置の構成図。
【図2】実施例2の紫外線水処理装置の構成図。
【図3】実施例3の紫外線水処理装置の構成図。
【図4】実施例6の紫外線水処理装置の監視制御システムの構成図。
【図5】実施例6の紫外線水処理装置の他の監視制御システムの構成図。
【図6】実施例7の紫外線水処理装置の監視制御システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の各実施例を図面により説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の実施例1である紫外線水処理装置の構成図である。図1に示すように、紫外線水処理装置4は、水槽30内に設置された紫外線ランプ5とその保護管6,紫外線ランプ5に電線7により接続された電源装置8,水槽30の下部に接続され、流入側ポンプ又は弁を備えた流入路制御器2及び流出側ポンプ又は弁を備えた流出路制御器10,水槽30内に設けられた紫外線ランプ5,紫外線ランプ5の周囲を覆う透明の保護管6,紫外線ランプ5,保護管6の状態を検出する検知器12,検知器12に接続され紫外線ランプ5,保護管6の破損,故障を検出する判定器14,流入路制御器2及び流出路制御器10と信号線17を介して接続され、判定器14が紫外線ランプ5,保護管6の破損,故障を検出した場合に信号を受信し、流入路制御器2,流出路制御器10の切り離し制御を行う制御部16で構成されている。水槽30は、複数列設置してもよく、単列であってもよい。複数列設置する場合は、各水槽30は配管で並列に接続される。
【0026】
ここで、検出器12は、水槽30内の表面に設けてもよく、電線7,電源装置8に設けてもよい。検出器12には、紫外線ランプの光量を計測する機器,電線7の電圧,電流を計測する機器と変化を計算する演算部が用いられる。
【0027】
水槽30には流入路制御器2を通って被処理水1が流入し、処理された後、処理水9として流出路制御器10を通って流出する。水槽30に流入する被処理水1には、浄水のように除濁処理後の清澄な水や、地下水や伏流水のように低濁度の原水がある。
【0028】
水槽30に流入路制御器2を通って流入した被処理水1は、電源装置8から電線7を通じて電力が供給される紫外線ランプ5から紫外線が照射される。検知器12で得られた紫外線ランプ5および保護管6の状態情報13は、判定器14に入力され、判定器14では、紫外線ランプ5および保護管6の破損を判定し、破損が生じたと判断された場合は、破損信号15を出力する。
【0029】
紫外線ランプ5が破損した場合、紫外線が照射されなくなるため、電流,電圧,光量の物理量が急激に変化する。又、保護管6が破損すると、被処理水1が保護管6内に流入するため、ランプ内の気圧やランプ表面の温度は急激に変化する。これらの変化は瞬間的に生じるため、検知器12で紫外線ランプ5および保護管6の状態情報13を得て、その情報を例えば過去の履歴データに基づき統計的に、あるいは予め設定した閾値との比較により、あるいは他系列の計算値との比較により、判定器14が破損か否かを判定し、破損と判定した場合は破損信号15を出力し、破損信号15は制御部16に入力され、流入路制御器2,流出路制御器10のうち少なくともいずれか一つを閉の状態とする。制御部16が系列を切り離すことで、ガラス片,水銀および水銀に直接接触して汚染された水が装置外へ流出することを防ぐことができる。
【0030】
ここで、検出器12は、急激に変化する電流,電圧,光量を検知し、判定器14と制御部16に電子回路あるいはコンピュータを用いて処理しているので、水槽30内に被処理水1が滞留する時間はたかだか数秒であるが、時間遅れなく系列を切り離すことができる。
【0031】
紫外線ランプ5が破損すると、瞬間的に放電管内へ空気あるいは被処理水1が流入し、放電が停止する。空気が入った場合には紫外線ランプ5のフィラメントが酸化して焼き切れたり、被処理水1が流入した際には短絡や漏電が発生し、紫外線ランプ5の電流の値が通常の値から大きく変化する。この電流値を例えば電流計、あるいは電子回路を用いて検出し、閾値との比較あるいは過去の統計データとの比較あるいは他系列の計算値との比較により紫外線ランプ5の破損を瞬時に知ることが可能である。同様に、紫外線ランプ5の電圧も急変することとなり、これは電圧計や電子回路として検出することができる。電流および電圧の計測は、紫外線ランプ5のそれぞれに対して実施することが望ましいが、紫外線ランプ5の破損時の電流および電圧の変動量が外的ノイズより大きい範囲であれば、複数本の紫外線ランプ5に対して1つの検知器12を設けても良い。
【0032】
一方、保護管6が破損した場合には、紫外線ランプ5の管表面に被処理水1が接触して表面温度が低下する。その結果、ランプ内の気圧も下がる。紫外線ランプ5の表面温度は紫外線発生効率に影響するため、被処理水1が紫外線ランプ5の表面に直接接触すると表面温度が低下して紫外線発生効率に影響し、結果として紫外線ランプ5の電流値や電圧値が変動する。この変動量は、紫外線ランプ5が破損した場合に比べると小さいが、電流や電圧値を高精度に得られる検知器12を設けることにより保護管6の破損も検知することが可能となる。
【0033】
紫外線水処理装置4では、一般的に装置内の光量を計測している。これは、紫外線ランプ5の経時的な光量低下を把握するためのものである。これを検知器12と併用することで、新たなセンサを設けることなく、紫外線ランプ5および保護管6の破損を検出できる。
【0034】
紫外線ランプ5が破損すると、発光は停止する。紫外線ランプ5が1本の場合には、光量が0になると紫外線ランプ5の破損と判断することが可能である。紫外線ランプ5が複数本存在する場合には、光量が一定量低減したときに紫外線ランプ5の破損と判断することになる。
【0035】
紫外線水処理装置4では、保護管6に対して紫外線ランプ5は気相側に設置される。従って、保護管6が破損した場合には保護管6の内側、すなわち紫外線ランプ5側に漏水が発生することになる。検知器12として漏水を検知するセンサを用いることにより、保護管6の破損を短時間で検知することが可能となる。
【0036】
このように、本実施例1によれば、紫外線ランプ5あるいは保護管6が破損した場合に、その水槽30を系列から短時間で切り離すことができ、ガラス片や水銀および水銀に接触した処理水9が浄水池や配水管、あるいは放流先へ流出することを防ぐことが可能となる。その結果、住民や水棲生物が健康被害にあう可能性を大幅に低減できる利点を得ることができる。
【実施例2】
【0037】
本発明の実施例2を図2により説明する。実施例2は、実施例1と同様に構成されているが、本実施例では、水槽30の上部に通路を設け、通路に紫外線ランプ5および保護管6よりも水撃に弱い部材で遮蔽された安全弁機構18を、水槽30の外側に通路と接続された汚染水水槽19を設けている。安全弁機構18は、片側が水槽30の中の被処理水1と接触しており、反対側の汚染水水槽19は大気開放されている。
【0038】
水槽30が複数列設置されている場合、弁を急に閉じる、あるいはポンプを急に停止させると、水槽30内の圧力が急激に増大する、いわゆる水撃(ウォーターハンマー)現象が生じる。この水撃が強い場合には、並列された他の水槽内の破損していない正常な保護管6および紫外線ランプ5のガラス面に高圧が発生し、破損してしまう可能性がある。このような破損が生じると、紫外線水処理装置4を復旧するための費用が増大するとともに、外部環境中へ水銀が漏洩,拡散する可能性が高まる。
【0039】
本実施例では、安全弁機構18が水撃により破壊されて開の状態になると、水槽30の中の被処理水1が流出して汚染水水槽19にトラップされる。汚染水水槽19は充分大きく、外部環境中へ被処理水1が流出しないようになっている。
【0040】
紫外線ランプ5あるいは保護管6の破損が検出された場合、その瞬間に紫外線水処理装置4の流入側と流出側を閉じ、ガラス片や水銀および水銀に接触した処理水9が全く外部へ流出しないようにすることが望ましい。瞬間的に流入側と流出側を閉とした場合、他の系列に大きな水撃が発生するが、保護管6や紫外線ランプ5よりも水撃に弱い部材、例えば薄いガラスや薄いプラスチックなどで構成される安全弁機構18を設けているので、安全弁機構18が先に水撃で破壊され、他の系列の正常な保護管6や紫外線ランプ5が破壊されることはなくなる。
【0041】
安全弁機構18は上述のように水撃で破壊される部材を用いるほかに、ゴムや蛇腹を用いることによって水圧に応じて容積を自動的に変化させ、水撃作用を吸収できる構造としても良い。
【0042】
このように、本実施例によれば、紫外線ランプあるいは保護管が破損した紫外線水処理装置を系列から最短時間で切り離すことができ、他の系列の正常な保護管や正常な紫外線ランプが破壊されることを防止できる。その結果、紫外線水処理装置4を復旧するための費用を最小限にでき、ガラス片や水銀および水銀に接触した処理水が浄水池や配水管、あるいは放流先の外部環境中へ流出することを防ぐことが可能となる。その結果、住民や水棲生物が健康被害にあう可能性を大幅に低減できる利点を得ることができる。
【実施例3】
【0043】
本発明の実施例3を図3により説明する。本実施例は、実施例1と同様に構成されているが、本実施例では、水槽30の底部に傾斜を設け、凹凸を側面より小さくした表面とし、沈殿物集積部20を形成しており、沈殿物集積部20には、沈殿物集積部20の状態を検知する検知器21が設けられている。検知器21には、例えば沈殿物の重量計測や沈殿物の画像計測,電気抵抗のセンシングにより水銀を検知するものなどがある。なお、沈殿物集積部20は、ガラス片や水銀片など沈降性の物質を一箇所に集積する機能を持つ構造であればよい。
【0044】
紫外線ランプ5あるいは保護管6が破損した場合、破損により生じたガラス片や水銀片は水より比重が大きいため沈殿する。水槽30の底部にこれらの物質が拡散して沈殿した場合には検出が容易でないが、本実施例では沈殿物集積部20が設けられているので、検知器21部に集めることができ検知できる。
【0045】
また、ガラス片や水銀の沈降時間や斜面を移動してくる時間を要するため、瞬時に紫外線ランプ5や保護管6の破損を検知することは難しい。しかし、本実施例では、例えばランプ交換時に誤って保護管6や紫外線ランプ5を破損してしまい、保護管6や紫外線ランプ5を新しいものに交換した後、誤って上位管理者へその情報が伝わらない状況であっても、検知器21と判定器14をランプ交換時にも連続して稼動させておくことにより、確実に紫外線ランプ5や保護管6の破損を検知することができる。
【0046】
検知器21からは、沈殿物情報22が出力され、この沈殿物情報22は、判定器14に入力される。判定器14では、紫外線ランプ5および保護管6の破損を判定し、破損信号15を出力する。破損信号15は制御部16に与えられ、流入側ポンプあるいは弁2、流出側ポンプあるいは弁10のうち少なくともいずれか一つを閉の状態とする。
【0047】
判定器14は沈殿物情報22の値を用いて、例えば過去の履歴データに基づき統計的にあるいは予め設定した閾値との比較により破損か否かを判定し、破損と判断された場合は、破損信号15を出力し、制御部16が系列を切り離すことで、ガラス片,水銀片および水銀に直接接触して汚染された水が装置外へ流出することを防ぐことができる。
【0048】
本実施例によれば、紫外線ランプ5あるいは保護管6が破損した紫外線水処理装置4を系列から切り離すことができ、ガラス片や水銀片および水銀に接触した処理水9が浄水池や配水管、あるいは放流先へ流出することを防ぐことが可能となる。その結果、住民や水棲生物が健康被害にあう可能性を大幅に低減できる利点を得ることができる。
【0049】
ここで、機械品である以上、センサの信頼性は100%ではない検知器21の代わりに、沈殿物集積部20に、沈殿物が装置外部から目視できるように少なくとも一部が透明な材料を用いて目視確認部を設けるか、CCDカメラにより沈殿物集積部20を画像計測できる沈殿物画像計測器を設けてもよい。
【0050】
このように構成することにより、操作員および管理者が目視で沈殿物の有無を確認することができ、沈殿物の有無およびその性状を目視あるいは画像として得ることができるため、破損の有無を判断する情報が増えることとなり、紫外線水処理装置4の安全性をさらに高めることができる。
【実施例4】
【0051】
本発明の実施例4は、実施例3の沈殿物集積部20の性状を検知する検知器21として、沈殿物集積部20に設けた電極間の電気抵抗,沈殿物集積部20の沈殿物重量変化,沈殿物集積部の画像計測情報,沈殿物集積部20に設けた光感知センサの出力情報,沈殿物集積部20の交流電気抵抗のうち少なくとも1つの情報を用いるものである。
【0052】
紫外線ランプ5が破損すると、ガラス片と水銀片が生じ、紫外線水処理装置4の底部に沈殿し、保護管6が破損すると、ガラス片が生じ、これも紫外線水処理装置4の底部に沈殿する。
【0053】
沈殿物集積部20に電極を設ける方法では、水銀片が沈殿して電極間を短絡させるとその間の電気抵抗が急激に低下する現象を利用して紫外線ランプ5の破損を検知することができる。
【0054】
沈殿物集積部20に重量センサを設け、沈殿物の重量変化を計測する方法では、ガラス片および水銀片のいずれが沈殿しても検知が可能であり、紫外線ランプ5あるいは保護管6の破損を検知することができる。
【0055】
沈殿物集積部20の画像計測情報を利用する方法では、例えばCCDカメラなどを用いて画像を取得し、画像処理を実施することで沈殿物の有無あるいは変動を計測して紫外線ランプ5あるいは保護管6の破損を検知することができる。また、沈殿物集積部20の領域での光の反射率を計測し、水銀片やガラス片があれば反射率が高くなる現象を活用する方法でも良い。
【0056】
沈殿物集積部20に光感知センサを設ける方法では、例えばCdsセル,フォトトランジスタや太陽電池を沈殿物集積部の底に上向きに設置しておき、その上側に水銀片やガラス片が沈降した際に生じる抵抗値の変化や発電量の変動をもとに紫外線ランプ5あるいは保護管6の破損を検知するものである。
【0057】
沈殿物集積部20の交流電気抵抗を利用する方法では、例えば沈殿物集積部の外側に電磁誘導コイルを配置して交流電圧を加える方法がある。水と異なり水銀は導電性を有するため、交流電圧を加えると渦電流が発生して熱を生じる。その結果、水銀が存在する場合には水の場合と異なる電流波形となるため、水銀片が沈殿物集積部20に存在するか否かを判断することができる。
【0058】
本実施例の構成をとることで、紫外線ランプ5あるいは保護管6の破損を検知することができる。
【実施例5】
【0059】
本発明の実施例5は、紫外線水処理装置4において、紫外線ランプ5および保護管6の破損を判断する判定器14と、判定器14が出力する破損信号15に基づき、紫外線水処理装置4の紫外線ランプ5を全て消灯させる緊急消灯部を備えている。
【0060】
判定器14により破損が検出された場合、まず紫外線水処理装置4を切り離して処理水が流れださないようにし、処理水9とともにガラス片や水銀片が流出することを防止することが最優先であるが、同時に操作員や管理者の安全面から紫外線水処理装置4の紫外線ランプ5を全て消灯させることが必要である。これは手動で実施してもよいが、本実施例のように自動的に消灯させる緊急消灯部を備えることで以下の問題点を解決できる。
【0061】
(1)紫外線ランプ5あるいは保護管6が破損した場合、緊急事態であるため他の作業に意識をとられ、電源のオフを忘れるヒューマンエラーが発生する可能性がある。
(2)電源がオフされていない場合、水を介した感電事故が起きる可能性がある。
(3)電源がオフされていない場合、水を介した漏電事故が起きる可能性がある。
(4)処理水が停止している場合には水温および紫外線ランプ5表面が過熱し、火傷などの事故や正常な紫外線ランプの性能劣化および寿命低下につながる可能性がある。
【0062】
以上のように、本実施例によれば、紫外線ランプ5あるいは保護管6の破損時にも操作員および管理者の安全を確保することができる。
【実施例6】
【0063】
本発明の実施例5を図4,図5により説明する。図4は、紫外線水処理装置4の監視制御システムの構成である。本実施例では、紫外線水処理装置4の紫外線ランプ5および保護管6の破損を判断する判定器14が出力する破損信号15を中央監視制御装置24に送信する破損信号通信装置23を設けている。
【0064】
判定器14により破損が検出された場合、まず紫外線水処理装置4を切り離して処理水が流れださないようにし、処理水9とともにガラス片や水銀片が流出することを防止することが最優先であるが、同時にその事故の情報を中央監視制御装置24に送信し、操作員に知らせることが重要である。本実施例では、直接に破損信号15を中央監視制御装置24へ送信することで、より短時間で事故の情報を操作員や管理者に知らせることができる。
【0065】
図5は紫外線水処理装置4の他の監視制御システムの構成である。この例では、紫外線水処理装置4の紫外線ランプ5および保護管6の破損を判断する判定器14が出力する破損信号15を、操作員の携帯電話あるいは携帯情報端末26に送信する破損信号携帯端末通信装置25を設けている。
【0066】
判定器14により破損が検出された場合、まず紫外線水処理装置4を切り離して処理水が流れださないようにし、処理水9とともにガラス片や水銀片が流出することを防止することが最優先であるが、同時にその事故の情報をできるだけ短時間のうちに操作員へ知らせることが必要である。しかしながら、操作員が監視制御室に在室していない場合には、緊急情報の伝達が遅延することになる。本実施例によれば、破損信号15を直接に操作員の携帯電話あるいは携帯情報端末26へ送信することで、より速やかに事故の情報を操作員や管理者に知らせることが可能となる。
【実施例7】
【0067】
本発明の実施例7を図6により説明する。図6は本実施例の紫外線水処理装置4の監視制御システムの構成図である。
【0068】
本実施例では、複数系列の紫外線水処理装置4が備えられている場合を対象としており、判定器14が出力する破損信号15に基づいて、正常な系列の紫外線水処理装置28の水処理量および紫外線ランプ5の光量を制御する他系列運転量変更部27を備えている。
【0069】
中規模から大規模の浄水場においては、紫外線水処理装置4は複数系列備えられる場合が多い。そのうちのある1系列で紫外線ランプ5や保護管6の破損が検知された場合、その系列を正常な状態に回復するには装置内の洗浄などが必要となり、ある程度長い期間、その系列停止が避けられない。
【0070】
そのため、その系列の停止期間は、他の正常な系列の紫外線水処理装置28の水処理量を増加して運転することが必要となる。その場合、正常な系列の紫外線水処理装置28での処理速度を速める必要があるため、大腸菌などの細菌やクリプトスポリジウムなどの病原性原虫を確実に消毒,不活化処理するためには、正常な系列の紫外線水処理装置28の光量を増加することが必要となる。
【0071】
他系列運転量変更部27には、処理時間と紫外線ランプ5の光量が大腸菌などの細菌やクリプトスポリジウムなどの病原性原虫の消毒,不活化に与える影響の情報が記憶されている。この代わりに、物理理論に基づく光量計算式か、予め備えられたテーブルで記憶し、該当するデータを取り出すか、内挿或いは外挿値として取り出すようにしてもよい。
【0072】
ある系列が停止した場合には、他の系列の流量が増大するため、処理時間の変化を算出し、算出した値と予め設定した大腸菌などの細菌やクリプトスポリジウムなどの病原性原虫の消毒,不活化閾値の値に基づき、他系列運転量変更部27は紫外線ランプ5の光量設定値を出力する。
【0073】
本実施例によれば、正常な系列の水処理量とともに光量を自動的に制御するため、破損が検知された緊急時にも素早く対応でき、より確実な消毒処理や不活化処理を施すことが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
2 流入路制御器
4 紫外線水処理装置
5 紫外線ランプ
6 保護管
7 電線
8 電源装置
10 流出路制御器
12,21 検知器
14 判定器
16 制御部
18 安全弁機構
19 汚染水水槽
20 沈殿物集積部
23 破損信号通信装置
24 中央監視制御装置
25 破損信号携帯端末通信装置
26 携帯情報端末
27 他系列運転量変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線ランプおよび保護管の破損を判断する判定器と、該判定器が出力する破損信号に基づき、紫外線水処理装置の紫外線ランプを全て自動的に電源をオフにする緊急消灯部と、を備えた紫外線水処理装置。
【請求項2】
紫外線ランプおよび保護管の破損を判断する判定器と、該判定器が出力する破損信号を、中央監視制御装置に送信する破損信号通信装置と、を備えた紫外線水処理装置の監視制御システム。
【請求項3】
紫外線ランプおよび保護管の破損を判断する判定器と、該判定器が出力する破損信号を、操作員の携帯電話あるいは携帯情報端末に送信する破損信号携帯端末通信装置と、を備えた紫外線水処理装置の監視制御システム。
【請求項4】
複数系列の紫外線水処理装置が設置され、紫外線ランプおよび保護管の破損を判断する判定器と、該判定器が出力する破損信号に基づき、他系列の水処理量および紫外線ランプの光量を制御する他系列運転量変更部と、を備えた紫外線水処理装置の監視制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−75296(P2013−75296A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−18019(P2013−18019)
【出願日】平成25年2月1日(2013.2.1)
【分割の表示】特願2011−2652(P2011−2652)の分割
【原出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】