説明

紫外線照射装置

【課題】TOC分解処理を行うにあたって、DOの発生を抑制する。
【解決手段】紫外線ランプを収納した紫外線透過管を複数配置し、該紫外線透過管を透過した紫外線を被処理液体に照射する紫外線照射装置において、複数の紫外線透過管のうちの一部の管の紫外線透過特性が220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線を吸収する特性のものからなるものとする。DOが増加したとき、前記一部の管のランプのみを点灯することで、被処理液体中のOHラジカルの生成を抑制し、DOの増加を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射により被処理液体中のTOC(全有機体炭素)の分解処理を行う紫外線照射装置に関し、例えば、半導体ウェハー製造過程において洗浄水として使用する超純水の製造等に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハーの製造過程において使用する洗浄水には超純水が用いられる。超純水の水質には、TOC(全有機体炭素)、DO(溶存酸素)、細菌がいずれも所定水準以下であることが求められ、紫外線照射装置により被処理水に所定波長の紫外線を照射することにより、TOC除去及び殺菌処理を行うことで超純水を製造している。典型的には、TOCの酸化分解のためには185nm波長の紫外線が寄与し、殺菌には254nm波長の紫外線が寄与する。TOC酸化分解に用いられる185nm光を放射する紫外線ランプからは同時に254nm光も放射されるため、1つのランプでTOC除去とUV殺菌の機能を果たすことができる。なお、紫外線ランプには主に低圧水銀灯が用いられているが、稀に中庄水銀灯、高圧水銀灯が用いられる場合もある。また、220nm以下の紫外線を発するランプであれば液体中の有機物を低減することができる。
【0003】
ところで、TOC酸化分解においては、185nm波長光により水のH2Oからヒドロキシルラジカル(OHラジカル)を生成し、OHラジカルが有機物を酸化分解している。有機物に対してOHラジカルが過多の場合、OHラジカル同士が結合してH22(過酸化水素)が生成される。TOC酸化分解用の紫外線液体処理装置の後段にはイオン交換樹脂が設けられている。このイオン交換樹脂に過酸化水素が入ると過酸化水素の一部が水と酸素に分離し、イオン交換樹脂の出口でDOがその入口より高くなる現象が起こる。このように、TOC酸化分解処理にてTOCを低減しているが、同時にDOを上昇させることになってしまうという不都合があった。DOも超純水の水質として重要な項目であるため、DOが上昇することは運転管理上、問題となっている。
【0004】
このような問題を解決するために、下記特許文献1においては、紫外線TOC分解装置内における185nm波長光と254nm波長光の比率を、従前の1:5乃至1:7.8の範囲に対して、1:「8以上」とすることが示されている。これにより、紫外線TOC分解装置内で被処理液体に照射される185nm波長光の比率を相対的に下げ、DOの減少を図っている。
【特許文献1】特開平9−276858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に示された装置においては、紫外線TOC分解装置内で被処理液体に照射される185nm波長光の比率を相対的に下げることができるだけであったため、DOの発生を確実に抑制するには不十分であった。
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、TOC分解処理を行うにあたって、DOの発生を抑制することに適した紫外線照射装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る紫外線照射装置は、紫外線ランプを収納した紫外線透過管を複数配置し、該紫外線透過管を透過した紫外線を被処理物に照射する紫外線照射装置において、複数の前記紫外線透過管のうちの一部の管の紫外線透過特性が220nm以下の波長の紫外線を吸収する特性のものからなることを特徴とする。
【0007】
これにより、前記一部の紫外線透過管では220nm以下の波長の紫外線を吸収することにより、該一部の紫外線透過管を通して被処理物に照射される紫外線においては、220nm以下の波長の紫外線が含まれないものとなり、それ以上の波長(例えば254nm)の紫外線だけが照射されるようになる。従って、例えばDOの発生を確実に抑制したい場合は、前記一部の紫外線透過管に収納された紫外線ランプのみを選択的に点灯することにより、220nm以下の波長の紫外線を照射することなく、それ以上の波長(例えば254nm)の紫外線だけが照射されるように被処理物の紫外線照射処理を行うことができる。こうして、TOC分解処理を行うにあたって、従来装置に比べてDOの発生をより一層抑制することに適した紫外線照射装置を提供することができる。また、紫外線透過特性の異なる紫外線透過管を紫外線照射装置内に混在させることにより、各紫外線透過管から異なる特性の紫外線を放射させようとする場合において、その内部の紫外線ランプは同じタイプのものを使用することができることとなり、従って、ランプ交換のメンテナンス時におけるランプの着け間違いの問題が起こらなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
図1は、密閉した管路1内に被処理液体Pを通して紫外線処理するタイプの紫外線液体処理装置における本発明の一実施例を示す断面略図である。被処理液体Pを通す管路つまり容器(以下、便宜上、密閉管という)1は、その両端がシール部2及び3によって液密に密閉されており、液体入口1aから取り入れた被処理液体Pを管内に通し、液体出口1bから排出する。この密閉管1内には、石英ガラス製の透光性のランプ保護管(紫外線透過管)4a,4b内に液密に挿入された状態で紫外線ランプ5が配置される。この紫外線ランプ5は、220nm以下、典型的には185nm、の波長の紫外線を発するもので、この波長の紫外線は被処理液体P中の有機物を分解する機能を発揮する。また、紫外線ランプ5は、併せて、220nm以上の、典型的には254nm、の波長の紫外線を発するもので、この波長の紫外線は殺菌効果を発揮する。
【0009】
密閉管1の両端に設けられたカバー部6及び7は、シール部2,3を介して密閉管1の内部空間とは液密に遮断され、かつ、ランプ保護管(紫外線透過管)4a,4bの内部空間とは通じた状態である。すなわち、ランプ保護管(紫外線透過管)4a,4bの両端はシール部2,3を通り抜けてカバー部6及び7内の空間に臨んでおり、これにより、紫外線ランプ5は、その交換時において、ランプ保護管(紫外線透過管)4a,4bの端部から出し入れできるようになっている。カバー部6及び7は公知の構造により(例えば蓋6a,7aの開閉により)任意に開閉自在であり、勿論、紫外線ランプ5の出し入れ等のメンテナンス作業時には、カバー部6及び7が開放される(蓋6a,7aが開かれる)。
【0010】
図2は、カバー部6の蓋6aを外した状態で、長手状の紫外線ランプ5の軸線方向に該カバー部6を見た端面略図であり、複数のランプ保護管(紫外線透過管)4a,4b及びその中に挿入配置された紫外線ランプ5の一端が示されている。複数のランプ保護管(紫外線透過管)4a,4bのうち一部のランプ保護管(紫外線透過管)4aは、その紫外線透過特性が220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線を吸収する特性のものからなる。そのようなランプ保護管(紫外線透過管)4aとして、一例として、酸化チタンを10乃至1000ppm含有する(典型的には100ppm程度含有する)オゾンレス石英管を使用することができる。あるいは、そのようなランプ保護管(紫外線透過管)4aの別の例として、フッ素樹脂のFEP材質からなる紫外線透過管を使用することができる。なお、ランプ保護管(紫外線透過管)4aは、220nmよりも長い(典型的には254nm)の波長の紫外線は吸収することなく透過する。その他のランプ保護管(紫外線透過管)4bは、220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線を吸収することなく透過し、また、それ以上の(典型的には254nm)の波長の紫外線も吸収することなく透過する。
【0011】
このように、紫外線透過特性の異なる複数のランプ保護管(紫外線透過管)4a,4bが、密閉管1内に配置されている。この配置は、例えば、紫外線透過特性の異なるランプ保護管(紫外線透過管)4a,4bが偏ることなく、できるだけ均一に分散して配置されるのが好ましい。なお、紫外線透過特性の異なるランプ保護管(紫外線透過管)4a,4bであっても、その中に挿入配置する紫外線ランプ5の特性は、同じものであってよい。つまり、どのタイプのランプ保護管(紫外線透過管)4a,4bであっても、有機物分解処理用の220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線と殺菌用の220nm以上(典型的には254nm)の波長の紫外線の双方を放射することのできる紫外線ランプ5を収納するようにしてよい。これによって、ランプ取り替えのメンテナンスの際に、ランプの着け間違いといった問題が起こらないようになる。因みに、異なるタイプの紫外線ランプを使用した場合、不注意によるランプの着け間違いといった問題が起こるおそれがある。同じタイプの紫外線ランプ5を収納したとしても、一方のランプ保護管(紫外線透過管)4aを通して被処理液体Pに照射されるのは殺菌用の220nm以上(典型的には254nm)の波長の紫外線のみとなり、有機物分解処理用の220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線は照射されないが、他方のランプ保護管(紫外線透過管)4bを通して被処理液体Pに照射されるのは有機物分解処理用の220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線と殺菌用の220nm以上(典型的には254nm)の波長の紫外線の双方である。
【0012】
以上のように、有機物分解処理用の220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線と殺菌用の220nm以上(典型的には254nm)の波長の紫外線の双方の照射を可とするランプ保護管(紫外線透過管)4bと、殺菌用の220nm以上(典型的には254nm)の波長の紫外線の照射は可とするが有機物分解処理用の220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線の照射は可とするランプ保護管(紫外線透過管)4aを、密閉管1内に混在させることにより、全体的に、被処理液体Pに照射する有機物分解処理用の220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線を相対的に減少させることができる。これにより、本発明の紫外線照射装置を応用したTOC酸化分解装置においては、TOC酸化分解処理工程においてOHラジカルが過多になる事態を防ぎ、従って、その後段におけるイオン交換処理工程においてDO(溶存酸素)が増加することを防ぐことができる。従って、本発明の紫外線照射装置を超純水製造装置に応用した場合、TOC及び細菌のみならずDOの含有量も少ない、良質の超純水を提供することができる。よって、本発明の紫外線照射装置を応用した超純水製造装置を、半導体ウェハーの製造過程において使用する洗浄水用の超純水製造装置として使用することで、良質の半導体ウェハーを提供することができる。
【0013】
図3は、本実施例の紫外線照射装置に関連する制御系統の一例を示すブロック図である。点灯制御装置10は、密閉管1内の各紫外線ランプ5の点灯/消灯を制御するものである。例えば、有機物分解処理用の220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線と殺菌用の220nm以上(典型的には254nm)の波長の紫外線の双方の照射を可とするタイプのランプ保護管(紫外線透過管)4b内に収納されている紫外線ランプ5のみを点灯し、他を消灯したり、あるいは、殺菌用の220nm以上(典型的には254nm)の波長の紫外線の照射は可とするが有機物分解処理用の220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線の照射は可とするタイプのランプ保護管(紫外線透過管)4a内に収納されている紫外線ランプ5のみを点灯し、他を消灯したり、あるいは、すべての紫外線ランプ5を点灯するといったように、密閉管1内の各紫外線ランプ5の点灯/消灯を選択的に制御することができる。
【0014】
DO監視装置11は、本実施例の紫外線照射装置を適用している液体処理システム(例えば超純水製造装置)内の所定箇所(例えばイオン交換処理工程)における被処理液体中のDO(溶存酸素)量を監視し、所定水準以上の溶存酸素量が生じた場合に、点灯制御装置10にDO超過時の点灯/消灯制御信号を与える。点灯制御装置10では、このDO超過時の点灯/消灯制御信号に応じて、殺菌用の220nm以上(典型的には254nm)の波長の紫外線の照射は可とするが有機物分解処理用の220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線の照射は可とするタイプのランプ保護管(紫外線透過管)4a内に収納されている紫外線ランプ5のみを選択的に点灯し、他を消灯するよう制御する。このような点灯制御を行うことにより、DO量が所定水準以上となった場合に、ランプ保護管(紫外線透過管)4a内に収納されている紫外線ランプ5のみを選択的に点灯することで、220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線をカットし、殺菌用の220nm以上(典型的には254nm)の波長の紫外線のみを被処理液体に照射することができる。これにより、DOを抑制することができる一方で、殺菌効果は維持できる。その後、DO量が所定水準未満となったならば、通常の点灯モードに戻し、220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線も被処理液体に照射されるようにして、有機物の分解処理が行われるようにすればよい。
【0015】
被処理液体Pが通される容器は、密閉管1つまり円筒形容器に限らず、どのような構造であってもよい。また、液体処理に限らず、その他の被処理物の紫外線照射処理処理に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】被処理液体を管路に通すタイプの紫外線照射装置における本発明の一実施例を示す側面断面略図。
【図2】同実施例における複数のランプ保護管(紫外線透過管)の配置例を示す端面図。
【図3】同実施例におけるランプ点灯/消灯制御系統の一例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0017】
1 管路(密閉管)
1a 液体入口
1b 液体出口
2,3 シール部
4a 220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線を吸収するタイプのランプ保護管
4b 220nm以下(典型的には185nm)の波長の紫外線を透過するタイプのランプ保護管
5 紫外線ランプ
6,7 カバー部
10 点灯制御装置
11 DO監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線ランプを収納した紫外線透過管を複数配置し、該紫外線透過管を透過した紫外線を被処理物に照射する紫外線照射装置において、
複数の前記紫外線透過管のうちの一部の管の紫外線透過特性が220nm以下の波長の紫外線を吸収する特性のものからなることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記複数の紫外線透過管が、被処理液体が通される容器内に配置されたものであることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記紫外線ランプは、220nm以下の波長の紫外線及びそれ以上の波長の紫外線を放射するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記220nm以下の波長の紫外線を吸収する特性の前記一部の紫外線透過管に収納された紫外線ランプを選択的に点灯し、その他の紫外線透過管に収納された紫外線ランプは消灯する点灯制御装置を更に具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記被処理物たる被処理水中の溶存酸素量を監視し、所定水準以上の溶存酸素量が生じた場合に、前記点灯制御装置により前記一部の紫外線透過管に収納された紫外線ランプのみを選択的に点灯することを特徴とする請求項4に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記220nm以下の波長の紫外線を吸収する特性の前記一部の紫外線透過管は、酸化チタンを10乃至1000ppm含有するオゾンレス石英管である請求項1乃至5のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記220nm以下の波長の紫外線を吸収する特性の前記一部の紫外線透過管は、フッ素樹脂で形成されたものである請求項1乃至5のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記被処理物たる被処理水に対して紫外線照射処理して超純水を製造することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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