説明

紫外線発光ダイオード硬化性インキ

【課題】 本発明の課題は、紫外線光源として発光ダイオード(LED)で好適に硬化するプラスチックフィルム用インキを提供することにある。
【解決手段】 1分子あたり2個又は3個の(メタ)アクリレート基を含む活性エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー成分が、インキ中の(メタ)アクリレート基を含む活性エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー成分の総量に対して60質量%以上であり、かつインキ中にシリカを2〜8質量%含有することを特徴とする紫外線発光ダイオード硬化性インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線光源として発光ダイオード(LED)で好適に硬化するプラスチックフィルム用インキに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化性印刷物の製造には、光源として低圧、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の紫外線ランプが硬化システムとして広く用いられてきた。
【0003】
近年、これら紫外線ランプに変わる硬化システムとして、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線装置が開発され(例えば、特許文献1参照)、インクジェット方式等の印刷分野において、LED光源に対応する印刷物の製造方法、それに用いるインキ組成が検討されてきた(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。UV−LED光源は既存の紫外線ランプ方式と比較して光源寿命が長く、省エネルギー性において大きく優れていることから、UV−LED光源の実用化は印刷業界各社から強く要望されるものである。
【0004】
一方、UV−LED光源の短所として、紫外線ランプ光源と比較して紫外線硬化性組成物の皮膜強度(硬化性)が劣る点が挙げられる。印刷物の硬化用途に適用可能な発光強度を有する汎用のUV−LED光源は、発光波長域がおよそ350〜420nmに限られている。そのため、広域波長の紫外線を発する紫外線ランプ光源と比較して紫外線エネルギーの総量が小さく、光重合開始剤から生成するラジカルの発生量が少ない為に、LED照射により得られた紫外線組成物は、一般に皮膜の硬化性が劣る傾向が確認されている。
【0005】
特にプラスチックフィルム用UVインキにおいては、基材に対する接着性を考慮すると硬化収縮の大きな高硬化性モノマー類を使用出来ないことから、特にUV−LED光源対応のインキ製品を開発することが困難である。UV−LED光源に対応したプラスチックフィルム用インキは、自社、他社製品共に存在するが、現状硬化不良に起因するスクラッチ不良(キズ)等の問題を抱えており、顧客要求を満足させるレベルに無い。さらに硬化不良が発生し易い墨インキの場合において、改善策が強く期待されている。
【0006】
紫外線硬化性組成物に対して、UV−LED光源を照射させる例があるが、非常に広範に渡っており、その具体性と実用性が十分とは言えない(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
ハードコート剤にシリカを混同すると皮膜物性が向上する例として、例えば、特許文献5参照が挙げられるが、紫外線ランプ光源を対象としたハードコート剤であり、UV−LED光源を対象とする印刷分野向け紫外線発光ダイオード硬化性インキとは大きく異なる。
【0008】
印刷インキに体質成分としてシリカを1〜2%程度添加して使用するケースはあるが、
これは、流動性・乳化適性を調整する目的であり、硬化性向上の目的ではない。
【0009】
【特許文献1】特開2005−153193
【特許文献2】特開2006−176734
【特許文献3】特開2006−206875
【特許文献4】特表2006−511684
【特許文献5】特表2009−90523
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、紫外線発光ダイオード(UV−LED)光源に対して好適に硬化し、プラスチックフィルム基材との接着性にも優れるプラスチックフィルム用UV−LEDインキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、(メタ)アクリレート基を含む活性エネルギー線硬化性のモノマー又はオリゴマー成分の、モノマー又はオリゴマー成分の総量に対する割合、かつインキ中に添加するシリカの質量%を特定することで、紫外線発光ダイオード(LED)硬化性インキを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、1分子あたり2個又は3個の(メタ)アクリレート基を含む活性エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー成分が、インキ中の(メタ)アクリレート基を含む活性エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー成分の総量に対して60質量%以上であり、かつインキ中にシリカを2〜8質量%含有することを特徴とする紫外線発光ダイオード硬化性インキを提供する。
【0013】
体質顔料としてシリカを使用することで皮膜強度が向上するメカニズムは完全に明確化されてはいないが、比表面積が大きく、且つ、重合反応に寄与しない硬い体質顔料を使用することでコンクリート効果が生じ、また相対的に樹脂やモノマー等のバインダ成分の配合割合が減少することから、インキの硬化皮膜強度が向上することに依るものと推察される。一方、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の他の体質顔料では、比表面積がシリカと較べると小さい為に十分なコンクリート効果が発生せず、シリカほどの硬化性が得られないものと推察される。また炭酸マグネシウム等の一部の体質顔料はシリカと比較してインキ製造時の練肉分散適性が劣る傾向があり、生産性の観点から多量配合し難い場合がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、UV−LED光源にて好適に硬化し得るプラスチックフィルム用インキを提供する。紫外線ランプ光源の使用が通例であったプラスチックフィルム基材に対して、UV−LED光源でも硬化・接着共に優れる印刷物を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で述べる紫外線発光ダイオード(LED)硬化性インキは、1分子あたり2個又は3個の(メタ)アクリレート基を含む活性エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー成分のインキ総量に対する割合が60質量%以上であり、かつインキ中にシリカを2〜8質量%含有することで、プラスチックフィルム上で好適な硬化性と接着性を発現する。尚、本発明は本例に限定されるものではない。
【0016】
本発明で述べる活性エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー成分としては、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、重合性オリゴマー等、公知慣用であるもの、ランプ方式で実績のあるものが、本発明においてもそのまま使用することが可能であるが(例えば、特許文献6参照)、2官能又は3官能の(メタ)アクリレート基を含む活性エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー成分が、インキ中の(メタ)アクリレート基を含む活性エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー成分の総量に対して60質量%以上となることが好ましい。上述の範囲を超えて単官能モノマーが存在する場合はLED光源に対して良好なインキ硬化性を得ることが困難であり、また低分子量の単官能モノマーに関しては、印刷機のローラーやブランケット等のゴム素材へ浸透しやすい性状を有するため、インキ粘度の過度の増大による印刷適性不良やゴム素材の劣化を促進する傾向が懸念されることからも、より高分子量の2官能又は3官能のモノマー及び/又はオリゴマー成分を用いることが好ましい。一方上述の範囲を超えて4官能以上のモノマー及び/又はオリゴマー成分が存在する場合は硬化時におけるインキ皮膜の体積収縮が大きくなり、プラスチックフィルム基材に対して好適な接着性を得ることが困難である。特に本発明で述べる活性エネルギー線硬化性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート及び/又はアルコキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートを用いることが好適な硬化性と接着性を両立させる点で好ましい。
【特許文献6】特開2010−742
【0017】
本発明で述べるシリカとして、印刷インキ・コーティング等の用途で実績ある公知慣用の、乾式法、湿式法により製造された非晶質合成シリカ類を挙げることが出来るが、シリカの平均一次粒子径が10〜20nm程度であり、更に疎水性に表面を改質された疎水性シリカを用いることが好ましい。平均一次粒子径が上述の範囲を大幅に下回る場合はシリカの比表面積が過大となり、インキ中に適量を配合することが難しく、インキの流動性が大幅に低下することから良好な印刷適性が得られない。一方粒子径が上述の範囲を大幅に上回る場合はシリカの比表面積が過少となり、コンクリート効果に伴う好適な硬化性を得ることが困難となる。また上述の表面改質とはシリカのシラノール基をハロシラン、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン等の各種シラン化合物と反応させることによって疎水性に表面を改質することを示すが、未処理の親水性シリカではバインダ成分である樹脂やモノマー類に対する親和性が不十分となり、インキ流動性が低下する場合があることからも、疎水性シリカを用いることがより好ましい。更にインキ中のシリカの配合量は2〜8質量%程度が好ましく、2〜5質量%程度であることが特に好ましい。シリカの配合量が上述の範囲を大幅に下回る場合は好適な硬化性を得ることが難しく、また大幅に上回る場合はインキの流動性が大幅に低下する。
【0018】
本発明で述べるアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等のモノアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられ、特に、これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドは、紫外線発光ダイオードの発光波長領域に合致するUV吸収波長を有し、好適な硬化性が得られる点でより好ましい。
【0019】
その他、本発明のLED硬化性インキに使用可能な重合開始剤としては、LEDの発光波長域に対して吸収特性を有する公知慣用の開始剤を挙げることが可能である(例えば、特許文献6参照)。また、本発明で述べるプラスチックフィルム用LED硬化性インキにおいては、重合開始剤の総量は10質量%以上あることが好ましい。重合開始剤の総量が10%未満ではLED光源に対して好適な硬化性を得ることが困難である。
【0020】
本発明で述べるLED硬化性インキを印刷するプラスチックフィルムとしては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されているフィルム類を印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
【0021】
本発明の印刷物を製造するために使用する紫外線発光ダイオード光源より発せられる紫外線の発光波長としては、例えば、発光ピーク波長が350〜420nm程度であるものが好ましい。
【0022】
本発明の印刷物を製造するために使用する紫外線発光ダイオード光源より紫外線硬化性組成物へ照射される紫外線の積算光量値(mJ/cm)に関しては、プラスチックフィルム上の紫外線発光ダイオード(LED)硬化性インキの種別や印刷層の厚み等により異なる為、厳密には特定出来ず、適宜好ましい条件を選択するものであるが、例えば、積算光量値が5〜200mJ/cm程度であり、より好ましくは、10〜100mJ/cm程度である。積算光量値が上述の範囲を大幅に下回る条件では良好な皮膜硬化性が得られず、一方上述の範囲を大幅に上回る条件は、省エネルギー性の観点から好ましいとはいえない。
【0023】
本発明の印刷物を製造するために使用する紫外線発光ダイオード光源より、プラスチックフィルム上の紫外線発光ダイオード(LED)硬化性インキへ照射される紫外線の照射強度(mW/cm)に関しては、印刷方向に並べる紫外線発光ダイオード光源の個数、光源から組成物までの照射距離等の諸条件によっても適切な照射強度範囲が変動することから厳密には特定出来ず、適宜好ましい条件を選択するものであるが、例えば、500mW/cm以上であることが好ましい。
【0024】
次に実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは無い。
【0025】
〔実施例1〕
インキの製造方法
実施例1のインキは表1に示す原材料組成にて、体質顔料として疎水性シリカを2.0質量%、炭酸マグネシウムを3.0質量%配合し、ミキサーで均一撹拌した後にロールミルを使用し練肉分散することで製造した。ロールミルとしてはビューラー株式会社製SDY−300を使用し、ロール温度40℃、ロール圧16barの条件において3回ロールパスを実施することで製造を実施した。
印刷物の製造方法
続いて実施例1のインキ0.125mlを、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を使用して、PPフィルム(出光スーパーピュアレイ140−SG)上、約220cmの面積範囲に印刷した後、UV−LEDとして発光波長ピークが385nmである紫外線発光ダイオード照射装置(パナソニック電工社製、ANUD8002T01)を用い、UVインキを印刷した出光スーパーピュアレイ140−SGに対して、紫外線発光ダイオード光源の直下を通過させるよう、照射距離1センチ、出力100%、1灯、ラインスピード120m/min.にて紫外線照射を施した。
【0026】
〔実施例2〕
実施例2のインキは表1に示す原材料組成にて、体質顔料として疎水性シリカ5.0質量%、炭酸マグネシウム3.0質量%を配合した他は実施例1と同方法にてインキ製造し、同方法にて印刷物を製造した。
【0027】
〔比較例1〜8〕
比較例1〜8のインキは表1〜3に示す原材料組成にて、体質顔料の疎水性シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの各添加量、及び、アクリレートモノマー総量に対する2官能および3官能アクリレートモノマーの割合を変更した。実施例1,2と同方法にてインキ製造し、同方法にて印刷物を製造した。
【0028】
〔インキ製造時の生産性の評価方法〕
ロールミルを使用し上述の条件で練肉製造したインキに関して、グラインドメーターを用いてJIS K5101,5701に則った方法でインキ中の顔料および体質顔料粒子の分散状態を観察し、練肉性(生産性)を評価した。
○・・・分散状態が良好であり、練肉容易
×・・・分散状態が不良であり、練肉困難
【0029】
〔印刷物の評価方法〕
紫外線照射後における印刷物の硬化性(乾燥性)の評価方法としては、爪スクラッチテストによりインキの硬化状態を確認し、次の5段階で評価し、3以上を合格と定めた。
5・・・完全に硬化しており、強い力で擦っても皮膜に傷が発生しない
4・・・ほぼ硬化しており、強い力で擦ると皮膜に僅かに傷が発生する
3・・・ほぼ硬化しており、強い力で擦ると皮膜に明確に傷が発生する
2・・・僅かに硬化しており、弱い力でも皮膜に明確に傷が発生する
1・・・全く硬化していない
【0030】
紫外線照射後における印刷物の接着性の評価方法としては、テープ剥離テストにより確認した。セロハン粘着テープを紫外線照射後のインキ皮膜に強く押し付け、素早く垂直方向に引き上げて剥がすことにより、インキ皮膜の基材上への接着状態を、次の5段階で評価した。
5・・・完全に接着しており、ほぼ全ての面積が剥離せず残っている
4・・・ほぼ接着しており、半分を超える面積が剥離せず残っている
3・・・ほぼ接着しており、約半分の面積が剥離せず残っている
2・・・僅かに接着しており、半分を超える面積が剥離する
1・・・全く接着していない、ほぼ全ての面積が剥離する
【0031】
〔インキ流動性の評価方法〕
インキ流動性はスプレッドメーター法(平行板粘度計)によりJIS K5101,5701に則った方法で測定を実施し、水平に置いた2枚の平行板の間に挟まれたインキが、荷重板の自重(115グラム)によって、同心円状に広がる特性を経時的に観察し、60秒後のインキの広がり直径をダイアメーター値(DM[mm])とし、インキ印刷適性が良好となるDM30mm以上を合格と定めた。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

カーボンブラック:カーボン ラーベン1060(コロンビアカーボン社製)
フタロシアニンブルー:ファストゲンブルー TGR−1(DIC社製)
疎水性シリカ:AEROSIL R972(日本アエロジル社製)
炭酸カルシウム:白艶化CC(白石工業社製)
炭酸マグネシウム:炭酸マグネシウムTT(トクヤマ社製)
ユニディックV−3221:エポキシエステル樹脂60質量%とアルコキシ変性トリメチロールプロパントリアクリレート20質量%とアルコキシ変性ネオペンチルグリコールジアクリレート20質量%の混合物(DIC社製)
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート:アロニックスM−408(東亞合成社製)
トリメチロールプロパントリアクリレート:アロニックスM−309(東亞合成社製)
ポリエチレンワックス:サゾールワックスSPRAY40(サゾールワックス社製)
2−tert−ブチルヒドロキノン:TBH(精工化学社製)
イルガキュア907:2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製)
イルガキュア369:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製)
EAB−SS:4,4‘−ジエチルアミノベンゾフェノン(大同化成工業社製)
ダロキュアTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製)
【0035】
実施例1、2の結果において、疎水性シリカを適量使用することでPPフィルム上の紫外線硬化性インキの硬化性が良好(評価:3以上)であることを確認した。
比較例1、2の結果において、疎水性シリカを無添加あるいは適量以下の場合、プラスチックフィルム上の紫外線硬化性インキの硬化性が劣ること(評価:2以下)を確認した。
比較例3の結果において、疎水性シリカを過剰添加した場合、インキ流動性が不良となる(DM=30以下)ことを確認した。
比較例4、5の結果において、炭酸カルシウムを添加した場合、プラスチックフィルム上の紫外線硬化性インキの硬化性が劣ること(評価:2以下)を確認した。
比較例6、7の結果において、炭酸マグネシウムを添加した場合、ロール練肉分散性が悪く、プラスチックフィルム上の紫外線硬化性インキの硬化性が劣ること(評価:2以下)を確認した。
比較例8の結果において、アクリレートモノマー総量に対する2官能および3官能アクリレートモノマーの割合が60質量%以下となり、4官能以上のアクリレートモノマーが過剰に存在する場合、インキ接着性が不良となること(評価:3以下)を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の紫外線発光ダイオード硬化性インキおよびそれを用いた紫外線硬化型印刷物は、UV硬化による印刷が求められるグラフィックイメージの印刷、印字図形、プラスチック電子材料など非吸収原反への刷り物において、好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子あたり2個又は3個の(メタ)アクリレート基を含む活性エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー成分のインキ中の(メタ)アクリレート基を含む活性エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー成分の総量に対する割合が60質量%以上であり、かつインキ中にシリカを2〜8質量%含有することを特徴とする紫外線発光ダイオード硬化性インキ。
【請求項2】
前記したシリカの平均一次粒子径が10〜20nmである請求項1に記載の紫外線発光ダイオード硬化性インキ。
【請求項3】
前記したシリカが疎水性シリカである請求項2に記載の紫外線発光ダイオード硬化性インキ。
【請求項4】
前記した活性エネルギー線硬化性モノマー成分が、トリメチロールプロパントリアクリレート及び又はアルコキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートを含む、請求項1〜3の何れかに記載の紫外線発光ダイオード硬化性インキ。
【請求項5】
光重合開始剤にアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤を含有し、光重合開始剤の総量が10質量%以上である請求項1〜4の何れかに記載の紫外線発光ダイオード硬化性インキ。
【請求項6】
前記したアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドである請求項1〜5の何れか記載の紫外線発光ダイオード硬化性インキ。
【請求項7】
顔料としてカーボンブラックを含むオフセット墨インキであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の紫外線発光ダイオード硬化性インキ。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の紫外線発光ダイオード硬化性インキの印刷基材がプラスチックフィルムであり、350〜420nmにピーク波長を有する紫外線発光ダイオード光源で紫外線を照射することにより得られる印刷物。

【公開番号】特開2012−162646(P2012−162646A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23825(P2011−23825)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(310000244)DICグラフィックス株式会社 (27)
【Fターム(参考)】