説明

紫外線硬化型帯電防止性樹脂組成物

【課題】 低い表面固有抵抗値を有していながら、透明性、長期耐熱性、高屈折性に優れた硬化物を与える樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 (メタ)アクリレートモノマー(A)、数平均分子量が1,000〜30,000であるウレタンオリゴマー(B)、環状アミジン化合物(c1)と、分子内にカルボキシル基、スルホニル基、またはホスホニル基を1個以上と芳香環を含有する酸性化合物(c2)とから構成されるラジカル反応性基を含有しない有機4級塩化合物(C)、および光重合開始剤(D)を必須成分として含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物(Q)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線で硬化する光学レンズおよび光学レンズ用シートまたはフィルムとして有用な紫外線硬化型帯電防止性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、優れた帯電防止性能および高透明性を兼ね備えた硬化膜を与える紫外線硬化型帯電防止性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)等に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)は、パソコンやテレビ、携帯電話まで多くの電子機器に不可欠なものとなっており、FPDを構成する数多くの光学用材料の需要も大きく伸びている。また、近年パネルサイズの大型化やデバイスの高精細化が進み、それに対応する各種光学レンズ用材料の開発も重要となってきている。
しかし、従来の光学レンズ用材料は、体積固有抵抗値が高く、摩擦などによって接触面で容易に静電気を帯びるため、例えば、製造の金型剥離工程において塵埃が付着しやすく、生産性に影響を与えるという問題があった。従って、益々パネルサイズの大型化が進んでいくと考えられ、生産性の観点から、これまで以上に帯電防止性能を兼ね備えた光学レンズ用材料が望まれている。
【0003】
帯電防止性を付与する対策として、光学フィルム表面に、長鎖脂肪族カルボン酸のナトリウム塩や4級アンモニウム塩からなる帯電防止剤を含有させる方法(例えば非特許文献1)、カルボン酸を含有する(メタ)アクリルモノマーの4級アンモニウム塩のような反応性帯電防止剤を含有させる方法(例えば特許文献1)、無機の導電性フィラーを含有させる方法(例えば特許文献2)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、非特許文献1の方法では、紫外線硬化樹脂との相溶性が悪く透明性が確保できず、また長期耐熱試験で帯電防止剤が硬化物表面へブリードアウトすることによる白化の問題がある。
また反応性界面活性剤を使用する特許文献1の方法では、添加量が少ないと十分な帯電防止性が発現せず、反対に添加量が多いと相溶性が悪く透明性が確保できず、また屈折率を低下させる問題がある。
無機の導電性フィラーを含有させる特許文献2の方法は、硬化物の透明性を損ない、コストが高くなる等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-179727号公報
【特許文献2】特開平10−235807号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「界面活性剤入門」〔2007年三洋化成工業株式会社発行、藤本武彦著〕、297頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、塵埃が付着しにくい低い表面固有抵抗値を有していながら、透明性、長期耐熱性、高屈折性に優れた硬化物を与える樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、(メタ)アクリレートモノマー(A)、数平均分子量が1,000〜30,000であるウレタンオリゴマー(B)、イミダゾール環、2−イミダゾリン環、またはテトラヒドロピリミジン環を有する環状アミジン化合物(c1)と、分子内にカルボキシル基、スルホニル基、またはホスホニル基のうちいずれか1つと、芳香環を含有する酸性化合物(c2)とから構成され、かつラジカル反応性基を分子内に有しないアミジン塩化合物(C)、および光重合開始剤(D)を必須成分として含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物(Q);およびこの紫外線硬化型樹脂組成物(Q)を用いた光学レンズ、光学レンズ用シートまたはフィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、表面固有抵抗値が低いため帯電防止性能が高く、生産性に優れる。また帯電防止剤と紫外線硬化樹脂との相溶性が良いため、硬化物の透明性に優れ、高屈折率の硬化物が得られる。さらに、帯電防止剤による硬化物表面へのブリードアウトが起こらず、長期耐熱性に優れているため、光学用材料として長期間使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、(メタ)アクリレートモノマー(A)、ウレタンオリゴマー(B)、特定の種類の環構造を有する環状アミジン化合物(c1)と酸性化合物(c2)とから構成されかつラジカル反応性基を含有しないアミジン塩化合物(C)、および光重合開始剤(D)を必須成分として含有する。
そして、このアミジン塩化合物(C)は、ラジカル反応性基を含有しないことが必要であり、また、酸性化合物(c2)は、分子内にカルボキシル基、スルホニル基、またはホスホニル基のうちいずれか1つと芳香環を含有することが必要である。
【0011】
本発明における(メタ)アクリレートモノマー(A)としては、単官能(メタ)アクリレート(A1)と、多官能(メタ)アクリレート(A2)が挙げられる。(A1)単独、(A2)の単独使用でもよいが、(A1)と(A2)の混合物が好ましい。
【0012】
単官能(メタ)アクリレート(A1)としては、例えば脂肪族(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等]、脂環含有(メタ)アクリレート[シクロヘキシル(メタ)アクリレート等]、芳香環含有(メタ)アクリレート[ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等]、複素環含有化合物[テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等]およびフェノール類のアルキレンオキサイド(以下、アルキレンオキサイドを「AO」と略称する。)1〜10モル付加物の(メタ)アクリレート[例えばフェノールのプロピレンオキサイド(以下、プロピレンオキサイドを「PO」と略称する。)8モル付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのエチレンオキサイド(以下、エチレンオキサイドを「EO」と略称する。)8モル付加物の(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。これらは2種類以上組み合わせてもよい。
【0013】
多官能(メタ)アクリレート(A2)としては、2個の(メタ)アクリル基含有モノマー(A2−a)、および3個以上の(メタ)アクリル基含有モノマー(A2−b)が挙げられる。これらは2種類以上組み合わせてもよい。
【0014】
2個の(メタ)アクリル基含有モノマー(A2−a)としては、例えば脂肪族ジ(メタ)アクリレート[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等]、脂環含有ジ(メタ)アクリレート[ジメチロールシクロトリデカンジアクリレート等]およびビスフェノールのAO2〜10モル付加物のジ(メタ)アクリレート[例えばビスフェノールAのEO2モル、ビスフェノールA、ビスフェノール−Fおよびビスフェノール−SのPO4モル付加物の各ジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
これらのうち、屈折率の観点からビスフェノールのAO2〜10モル付加物のジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0015】
3個以上の(メタ)アクリル基含有モノマー(A2−b)としては、例えば多価(3価〜6価またはそれ以上)アルコール(炭素数3〜40)のポリ(メタ)アクリレート、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−PO3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−EO3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール−テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール−EO4モル付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール−ペンタ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトール−ヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)中の(メタ)アクリレート(A)は、(A1)単独、(A2)の単独使用でもよいが、金型への濡れ性、液垂れ性、硬化物の樹脂強度または靭性の観点から(A1)と(A2)の混合物が好ましい。
【0017】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)中の単官能(メタ)アクリレート(A1)と、多官能(メタ)アクリレートモノマー(A2)の重量比(A1)/(A2)は、上記の観点から、30/70〜95/5が好ましい。さらに好ましくは40/60〜90/10、特に好ましくは60/40〜80/20である。
重量比(A1)/(A2)が30/70以上であれば金型への濡れ性と光硬化後の靭性に優れ、95/5以下であれば液垂れを抑制でき、光硬化物の樹脂強度に優れる。
【0018】
紫外線硬化型樹脂組成物(Q)は樹脂粘度を調整するために、ウレタンオリゴマー(B)を含有する。ウレタンオリゴマー(B)の数平均分子量(以後、Mnと略称する。)は、金型への流れ込み性と塗工時の液垂れ防止の観点から好ましくは1,000〜30,000、さらに好ましくは2,000〜20,000、特に好ましくは3,000〜15,000である。Mnが1,000未満であると塗工時の液垂れの問題、および温度によるバラツキが大きい問題があり、30,000を超えると金型への流れ込み性に問題がある。
なお、本発明における数平均分子量Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定機器(HLC−8120GPC、東ソー(株)製)、カラム(TSKgel GMHXL2本+TSKgel Multpore HXL−M、東ソー(株)製)を用いて、GPC法により測定されるポリスチレン換算の値として求めた。
【0019】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の第2の必須成分であるウレタンオリゴマー(B)としては、末端(メタ)アクリルウレタンオリゴマー(B1)、末端水酸基ウレタンオリゴマー(B2)、および末端イソシアネート基ウレタンオリゴマー(B3)が挙げられる。
これらのうち、取り扱いの容易さと光硬化物の物性の観点から、好ましくは末端イソシアネートウレタンオリゴマー(B3)および末端水酸基ウレタンオリゴマー(B2)であり、さらに好ましくは末端(メタ)アクリルウレタンオリゴマー(B1)である。
【0020】
末端(メタ)アクリルウレタンオリゴマー(B1)は、有機イソシアネート(Ba)とポリオール(Bb)と水酸基含有(メタ)アクリレートの反応により合成する。
末端水酸基ウレタンオリゴマー(B2)、および末端イソシアネート基ウレタンオリゴマー(B3)は有機イソシアネート(Ba)とポリオール(Bb)の反応により合成する。
【0021】
本発明におけるウレタンオリゴマー(B)の原料の有機イソシアネート(Ba)には、芳香族イソシアネート(Ba−1)、脂肪族イソシアネート(Ba−2)、炭素数4〜45の脂環式イソシアネート(Ba−3)、芳香脂肪族イソシアネート(Ba−4)、および(Ba−1)〜(Ba−4)のイソシアヌレート化物(Ba−5)などが挙げられる。これらは2種類以上組み合わせてもよい。
【0022】
芳香族イソシアネート(Ba−1)としては、例えば、1,3−または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4, 4’−または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニ ル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、およびm−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;および3官能以上のイソシアネート(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
脂肪族イソシアネート(Ba−2)としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4 −トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート;および3官能以上のイソシアネート(トリイソシアネート等)、例えば1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートおよびリジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンの反応生成物のホスゲン化物、例えば2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート)等が挙げられる。
【0024】
脂環式イソシアネート(Ba−3)としては、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4−または2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−または2,6−ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI);および3官能以上のイソシアネート(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
芳香脂肪族イソシアネート(Ba−4)としては、例えば、m−またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジエチルベンゼンジイソシアネートおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0026】
これらの有機ポリイソシアネート(Ba)うち、屈折率の観点から、芳香族イソシアネート(Ba−1)および芳香脂肪族イソシアネート(Ba−4)が好ましい。
【0027】
本発明におけるウレタンオリゴマー(B)の原料のポリオール(Bb)には、例えば、
脂肪族2価アルコール(Bb−1)[(ジ)アルキレングリコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール、ドデカンジオール等)等]、脂環式骨格を有する2価アルコール(Bb−2)[1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等]、芳香脂肪族2価アルコール(Bb−3)[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタレン等]、上記(Bb−1)〜(Bb−3)のAO1〜50モル付加物(Bb−4)等が挙げられる。これらは2種類以上組み合わせても良い。
これらのうち、屈折率の観点から、C8〜20の芳香脂肪族2価アルコール(Bb−3)および(Bb−3)のAO1〜50モル付加物が好ましい。
【0028】
ウレタンオリゴマー(B)の原料の水酸基含有(メタ)アクリレート(Bc)としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]、アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミドなど]などが挙げられる。
【0029】
有機イソシアネート(Ba)とポリオール(Bb)、および水酸基含有(メタ)アクリレート(Bc)との反応におけるNCO/OH当量比は特に限定されないが、貯蔵安定性の観点から好ましくは1/0.5〜1/10、さらに好ましくは1/0.7〜1/5、とくに好ましくは1/1〜1/2である。
【0030】
原料の有機イソシアネート(Ba)とポリオール(Bb)、および水酸基含有(メタ)アクリレート(Bc)とを反応させてなるウレタンオリゴマー(B)の製造においては、ウレタン化触媒を用いてもよい。ウレタン化触媒には、金属化合物(有機ビスマス化合物、有機スズ化合物、有機チタン化合物等)および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0031】
ウレタン化触媒の使用量は、(Ba)と(Bb)、および(Bc)の合計重量に基づいて通常1%以下、反応性および透明性の観点から好ましくは0.001〜0.5%、さらに好ましくは、0.05〜0.2%である。
【0032】
(Ba)と(Bb)、および(Bc)のウレタン化反応の条件は、特に限定されず、通常40〜100℃、反応性および該混合物の安定性の観点から好ましくは60〜95℃で、2〜20時間反応させてウレタンオリゴマー(B)を製造することができる。また、必要により溶剤(酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン等)で希釈して反応させてもよい。 溶剤の使用量は、ウレタンオリゴマー(B)の合計重量に基づいて通常5,000%以下、下限は混合物の取り扱い性の観点から好ましくは10%、上限は反応速度の観点から好ましくは1,000%である。
【0033】
ウレタンオリゴマー(B)中のベンゼン骨格含量は、硬化物の屈折率および耐光性の観点から好ましくは15〜50%、さらに好ましくは18〜45%、とくに好ましくは20〜40%である。
ここにおいて、ベンゼン骨格とはベンゼン環またはその縮合環(ナフタレン環等)を構成する炭素のみを意味するものとする。このベンゼン骨格は、有機ポリイソシアネート(Ba)に由来するものでも、またポリオール(Bb)に由来するものでもよい。ベンゼン骨格含量は、1Hおよび13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)またはIR(赤外線吸収スペクトル)分析により測定することができる。
例えば、1H−NMRで、ベンゼン骨格含量を求める場合には、内部標準物質を添加し、内部標準物質由来の1Hのピークの積分値と、ウレタンオリゴマー(B)中のベンゼン骨格上の1Hのピーク(7〜8ppm付近)の積分値の比率からウレタンオリゴマー(B)中のベンゼン骨格のモル数が求められ、分子量を乗じることでベンゼン骨格含量を求めることができる。
【0034】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)中のウレタンオリゴマー化合物(B)の含有量は、通常1〜60%、好ましくは2〜55%、特に好ましくは3〜50%である。含有量が1%以上であれば樹脂の液だれを抑制でき、60%以下であれば金型への流れ込み性に優れる。
【0035】
本発明の第3の必須成分であるアミジン塩化合物(C)は、4級化カチオンとアニオンから構成され、このカチオンは環状アミジン化合物(c1)の4級化されたものである。一方、アニオンはカルボキシル基、スルホニル基、またはホスホニル基のうちいずれか1つと、芳香環の両方を分子内に含有する酸性化合物(c2)のアニオンである。
【0036】
この環状アミジン化合物(c1)の具体例としては、イミダゾール環を有する化合物(c1−1)、2−イミダゾリン環を有する化合物(c1−2)、テトラヒドロピリミジン環を有する化合物(c1−3)が挙げられる。これらは2種類以上組み合わせても良い。
【0037】
イミダゾール環を有する化合物(c1−1)としてイミダゾール単環化合物と、ベンゾイミダゾール化合物が挙げられ、具体例は下記のとおりである。
イミダゾール単環化合物: ・イミダゾール同族体:1−メチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾールなど ・オキシアルキル誘導体:1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール、1−メチル−4−オキシメチルイミダゾール、1−(β−オキシエチル)−イミダゾール、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾールなど ・ニトロおよびアミノ誘導体:1−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5(4)−アミノイミダゾール、1−メチル−4(5)−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−(β−アミノエチル)イミダゾールなどベンゾイミダゾール化合物:1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5(6)−ニトロベンゾイミダゾールなど。
【0038】
2−イミダゾリン環を有する化合物(c1−2)の具体例として、1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−(β−オキシエチル)−2−メチルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0039】
テトラヒドロピリミジン環を有する化合物(c1−3)の具体例としては、1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7,1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5 等が挙げられる。
【0040】
以上の環状アミジン化合物(c1)として例示したもののうち、好ましいものは、特に、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7,1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5である。
【0041】
分子内にカルボキシル基、スルホニル基、またはホスホニル基のうちいずれか1つと芳香環を含有する酸性化合物(c2)としては、一般式(1)で表される酸性化合物があげられる。
【0042】
【化1】

【0043】
式(1)中、Rは、水素原子、または炭素数1~20の直鎖または分岐の炭化水素基を示し、これらは、オルト位、メタ位、あるいはパラ位のいずれに配位しても差しつかえない。YはCOOH、SOHまたはPOを表す。
【0044】
アミジン塩化合物(C)を構成するアニオンは、上述したようにカルボキシル基、スルホニル基、またはホスホニル基のうちいずれか1つと、芳香環の両方を分子内に含有する酸性化合物(c2)のアニオンである。
このような酸化合物(c2)の具体例としては、カルボキシル基を含有する酸性化合物(c21)、スルホニル基を含有する酸性化合物(c22)、ホスホニル基を含有する酸性化合物(c23)が挙げられる。
カルボキシル基を含有する酸性化合物(c21)としては、安息香酸、アルキル置換安息香酸などが挙げられる。
スルホニル基を含有する酸性化合物(c22)としては、ベンゼンスルホン酸、アルキル置換ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
ホスホニル基を含有する酸性化合物(c23)としては、ベンゼンホスホン酸、アルキル置換ベンゼンホスホン酸等が挙げられる。
これらは2種類以上組み合わせてもよい。
【0045】
環状アミジン化合物(c1)と酸性化合物(c2)から、アミジン塩化合物(C)を合成する方法としては、環状アミジン化合物(c1)と酸性化合物(c2)を混合することによって、環状アミジン化合物(c1)が4級化されたカチオンと、酸性化合物(c2)のアニオンから成るアミジン塩化合物(C)を得る方法等が挙げられる。
【0046】
アミジン塩化合物(C)の含有量(重量%)は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計重量に基づいて、0.1〜10.0が好ましい。0.1より少ないと帯電防止性能が発現せず、10より多いと、ブリードアウト等により、帯電防止性が長期持続せず、また硬化物の透明性も損なわれる。
【0047】
(メタ)アクリル化合物(A)中の二重結合をラジカル重合反応させるため、紫外線硬化型樹脂組成物(Q)は光重合開始剤(D)を必須成分とする。
【0048】
光重合開始剤(D)としては、ベンゾイン化合物[C14〜18、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル];アセトフェノン化合物〔C8〜18、例えばアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン〕;アントラキノン化合物[C14〜19、例えば2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン];チオキサントン化合物[C13〜17、例えば2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン];ケタール化合物[C16〜17、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール];ベンゾフェノン化合物[C13〜21、例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン];ホスフィンオキシ化合物[C22〜28、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド]、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0049】
紫外線硬化型樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく光重合開始剤(D)の含有量は、0.001〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜7重量%、特に好ましくは0.05〜5重量%である。
0.001重量%以上であれば光硬化反応性がさらに良好に発揮でき、10重量%以下であれば硬化物の物性がさらに良好に発揮できる。
【0050】
紫外線硬化型樹脂組成物(Q)は、必要によりさらにその他の成分(E)を含有していてもよい。
その他成分(E)としては、増感剤(E1)、重合禁止剤(E2)、光安定剤(E3)、金型離型剤(E4)並びにその他の添加剤(例えば、無機顔料、無機微粒子、シランカップリング剤、染料、蛍光増白剤、黄変防止剤、酸化防止剤、及び消泡剤等)が挙げられる。
【0051】
増感剤(E1)としては、ニトロ化合物(例えば、アントラキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン,ベンズアントロン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物、ニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン及び2−ニトロフルオレン等)、芳香族炭化水素(例えば、アントラセン及びクリセン等)、硫黄化合物(例えば、ジフェニルジスルフィド等)及び窒素化合物(例えば、ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−ニトロ−2−アミノトルエン及びテトラシアノエチレン等)等が用いられる。
【0052】
光重合開始剤(D)の重量に基づく増感剤(E1)の含有量は、通常0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜80重量%、特に好ましくは1〜70重量%である。
【0053】
重合禁止剤(E2)としては、特に限定はなく、通常の反応に使用するものが用いられる。具体的には、ジフェニルヒドラジル、トリ−p−ニトルフェニルメチル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、p−ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、ニトロベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド及び塩化銅(II)等が挙げられる。
【0054】
紫外線硬化型樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく重合禁止剤(E2)の含有量は、0〜1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%、特に好ましくは0.02〜0.1重量%である。
【0055】
光安定剤(E3)としては、紫外線吸収剤(E31)およびHALS(E32)等があげられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。
【0056】
紫外線吸収剤(E31)としては、ベンゾトリアゾール化合物[2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]、トリアジン化合物〔2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール〕、ベンゾフェノン(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等)、シュウ酸アニリド化合物(2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド等)が挙げられる。
【0057】
HALS(E32)としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−{2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ{4.5}デカン−2,4−ジオン、「13700の化学商品」(化学工業日報社2000)、p1069〜1070等に記載されているHALSを挙げられる。
【0058】
紫外線硬化型樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく光安定剤(E3)の含有量は、0〜5.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜4.5重量%、特に好ましくは0.02〜4.0重量%である。
【0059】
金型離型剤(E4)としては、リン酸エステル系活性剤(例えば、特許公開2007−177161のリン酸エステル等)、フッ素系活性剤、シリコン系活性剤等が挙げられる。
【0060】
紫外線硬化型樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく金型離型剤(E4)の含有量は、0〜1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.8重量%、特に好ましくは0.02〜0.5重量%である。
【0061】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)は、必要により溶剤で希釈して、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、紫外線を照射して硬化させることにより、基材の表面および/または裏面の少なくとも一部に硬化物を有する被覆物を得ることができる。
塗工に際しては、通常用いられる装置、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター等]が使用できる。塗工膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、通常0.5〜300μm、乾燥性、硬化性の観点から好ましい上限は250μm、耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性の観点から好ましい下限は1μmである。
【0062】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)を溶剤で希釈して使用する場合は、塗工後に乾燥するのが好ましい。
乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、通常10〜200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から好ましい下限は30℃である。乾燥時間は通常10分以下、硬化膜の物性および生産性の観点から好ましくは1〜5分である。
【0063】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)を紫外線照射で硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置〔例えば型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製〕、光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を使用することができる。紫外線の照射量は、通常10〜10,000mJ/cm2、組成物の硬化性および硬化物(硬化膜)の可撓性の観点から好ましくは100〜5,000mJ/cm2である。
【0064】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)の光硬化物の23℃での屈折率は、光学部材への適用および硬化時の収縮の観点から通常1.550以上、好ましくは1.550〜1.593、さらに好ましくは1.562〜1.600である。
【0065】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)の25℃での表面固有抵抗値は、帯電防止性の観点から通常1×1013Ω/□以下である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0067】
<製造例1>
<ウレタンオリゴマー(B−1)の製造>
攪拌機および空気導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物207部を投入し、撹拌下、減圧しながら70℃で加熱し含有水分を除去した。脱水後、酢酸エチル500部を投入し均一にした後に、50℃以下まで温度を低下させた。
ついでイソホロンジイソシアネート(IPDI)114部、キシリレンジイソシアネート(XDI)56部、およびウレタン化触媒としてビスマス系触媒(ネオスタンU−600:日東化成(株)製)0.4部加え、撹拌下、75℃で10時間反応させることにより両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。
得られたウレタンプレポリマーに2−ヒドロキシエチルアクリレート43部加え、空気通気化、75℃、4時間反応させた後、50℃以下まで温度を低下させ、酢酸エチルを減圧除去することで両末端にアクリロイル基を有するウレタンオリゴマー(B−1)を得た。このウレタンオリゴマーの数平均分子量Mnは1,800であった。
【0068】
<製造例2>
<アミジン塩化合物(C−1)の製造>
攪拌機、コンデンサー、温度計、滴下ポンプを備えたフラスコに、酸性化合物としてドデシルベンゼンスルホン酸100部入れ、40℃まで昇温した後、環状アミジン化合物として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩のメタノール溶液(固形分濃度70%、合成方法は特開2001−316372号公報記載の方法に従った。)75.3部を3時間かけて滴下し、50℃で1時間熟成した。その後、メタノールを減圧除去しアミジン塩化合物(C−1)を得た。
【0069】
<製造例3>
<アミジン塩化合物(C−2)の製造>
フラスコに安息香酸100部を入れ、環状アミジン化合物(c1−2)として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU:サンアプロ(株)製)125部を加えて1時間攪拌し、アミジン塩化合物(C−2)を得た。
【0070】
<比較製造例1>
<アミジン塩化合物(C’−1)の製造>
ドデシルベンゼンカルボン酸をステアリン酸87.1部に変更した以外は製造例2と同様にして、芳香環を含有しない比較例のためのアミジン塩化合物(C’−1)を得た。
【0071】
<比較製造例2>
<アミジン塩化合物(C’−2)の製造>
安息香酸を2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸170部に、変更した以外は製造例3と同様にして、ラジカル反応性基を含有する比較例のためのアミジン塩化合物(C’−2)を得た。
【0072】
<比較製造例3>
<有機4級塩化合物(C’−3)の製造>
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩のメタノール溶液の代わりに、テトラメチルアンモニウムモノメチル炭酸塩のメタノール溶液(固形分濃度70%、合成方法は特開平7−155582号公報記載の方法に従った。)65.2部を使用した以外は製造例2と同様にして、環状アミジン化合物を含有しない有機4級塩化合物(C’−3)を得た。
【0073】
<実施例1>
攪拌機の付いた容器に、フェノキシエチルアクリレート[ライトアクリレートPO−A:共栄社化学(株)製](A1−1)30部、オルトフェニルフェノキシポリエトキシアクリレート[NKエステルA−LEN−10:新中村化学工業(株)製](A1−2)20部、ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加物のジアクリレート[ネオマーBA−641:三洋化成工業(株)製)10部、ビスフェノールFのエチレンオキシド4モル付加物のジアクリレート[アロニックスM−208:東亞合成(株)製](A2−1)10部、製造例1で合成したウレタンオリゴマー(B−1)20部、製造例2で合成した芳香環を含有するアミジン塩化合物(C−1)、および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[イルガキュア184:長瀬産業(株)製]5部を投入し、50℃で均一化させることで本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q−1)を得た。
【0074】
<実施例2、3および比較例1〜5>
表1に記載の原料と配合部数で、実施例1と同様にして、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q−2)、および比較例の紫外線硬化型樹脂組成物(Q’−1)〜(Q’−5)を得た。
【0075】
但し、表1中の比較例5の導電性フィラーはアンチモン酸亜鉛のメタノ−ル/イソプロパノールゾル[セルナックスCX−Z300IM:日産化学工業(株)製]を用いた。
【0076】
【表1】

【0077】
<性能評価>
紫外線硬化型樹脂組成物(Q−1)、(Q−2)、および(Q’−1)〜(Q’−5)の性能評価として、光硬化後のヘイズ、長期耐熱性、表面固有抵抗値、屈折率について以下の方法で評価した。
【0078】
<ヘイズ>
紫外線硬化型樹脂組成物を、厚さ40μmでガラス板に上に塗布した後に、PETフィルム(商品名 コスモシャインA4300−150μm:東洋紡(株)製)をかぶせて、500mJ/cmの紫外線照射し光硬化した。その後、PETフィルムと光硬化樹脂をガラス板より離型し、樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムを、ヘイズ測定装置(300A:日本電色(株)製)でヘイズの測定を行い、以下の基準により評価した。
○:ヘイズが0.5%以下
×:ヘイズが0.5%より大きい
【0079】
<表面固有抵抗値>
上記樹脂フィルムを23℃でデジタル超絶縁/微少電流計(DSM−8103/SME−8310:日置(株)製)を用いて表面固有抵抗値の測定を行い、以下の基準により評価した。
○:表面固有抵抗値が1×1013Ω/□以下
×:表面固有抵抗値が1×1013Ω/□より大きい
【0080】
<屈折率>
上記樹脂フィルムを23℃で屈折率計(DR−M2:アタゴ(株)製)を用いて屈折率の測定を行い、以下の基準により評価した。
○:屈折率が1.550以上
×:屈折率が1.550より小さい
【0081】
<長期耐熱性>
上記樹脂フィルムを85℃の送風定温恒温器(DKN302:ヤマト科学(株)製)に入れ、100時間温調した。温調後の樹脂フィルムを形状測定顕微鏡(超深度形状測定顕微鏡VK−8550、キーエンス(株)製)を用いて50倍で観察し、以下の基準により評価した。
○:温調前と変化が全く認められない
×:温調前と変化が認められる
【0082】
実施例1〜2で作製した本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(Q−1)、(Q−2)および比較例1〜5で作製した比較のための紫外線硬化型樹脂組成物(Q’−1)〜(Q’−5)の光硬化した樹脂の評価結果を表1に示す。
【0083】
表1から明らかなように、本発明の実施例1、2の紫外線硬化型樹脂組成物を用いると、低い表面固有抵抗値を有していながら、透明性、長期耐熱性、高屈折性に優れた硬化物を与えることがわかる。
一方、(c2)の代わりに芳香環を含有しない酸性化合物を用いた比較例1では、ヘイズが高く透明性に劣る。また、ラジカル反応性基を含有するアミジン塩化合物を少量用いた比較例2では、表面固有抵抗値が高く帯電防止性能が現れず、多量に用いた比較例3では、低表面固有抵抗値を示すものの、ヘイズが高く透明性に劣ることが分かる。さらに、(c1)の代わりにアミジン骨格を含有しない有機4級アンモニウム塩を用いた比較例4は長期耐熱性が悪い。
また、導電性フィラーを帯電防止剤として用いた比較例5では、ヘイズが高く透明性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、硬化後の硬化膜が長期帯電防止性を有し、かつ高屈折率で、透明性に優れている。そのため、特にプラスチック光学部品、フラットパネルディスプレイ、光学レンズ、光学レンズ用シートまたはフィルム等の静電気による塵埃等の付着防止が必要とされる分野に幅広く好適に使用することができ、極めて有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレートモノマー(A)、数平均分子量が1,000〜30,000であるウレタンオリゴマー(B)、イミダゾール環、2−イミダゾリン環、またはテトラピドロピリミジン環を有する環状アミジン化合物(c1)と、分子内にカルボキシル基、スルホニル基、またはホスホニル基のうちのいずれか1つと芳香環を含有する酸性化合物(c2)とから構成されラジカル反応性基を含有しないアミジン塩化合物(C)、および光重合開始剤(D)を必須成分として含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物(Q)。
【請求項2】
該環状アミジン化合物(c1)が、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7,1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5からなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)。
【請求項3】
該酸性化合物(c2)が、分子内にカルボキシル基、スルホニル基、またはホスホニル基のうちのいずれか1つと、芳香環を含有する下記一般式(1)で表される酸性化合物である請求項1または2記載の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)。
【化1】

[式(1)中、Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。YはCOOH、SOHまたはPOを表す。]
【請求項4】
(A)、(B)、(C)および(D)の合計重量に基づいて、該アミジン塩化合物(C)の含有量が0.1〜10.0重量%である請求項1〜3いずれか記載の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)
【請求項5】
該(メタ)アクリレートモノマー(A)が、単官能(メタ)アクリレートモノマー(A1)と、2官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマー(A2)の混合物からなり、該モノマー(A1)と該モノマー(A2)の重量比(A1)/(A2)が30/70〜95/5である請求項1〜4いずれか記載の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)。
【請求項6】
紫外線照射による硬化物の23℃での屈折率が1.550以上である請求項1〜5いずれか記載の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)。
【請求項7】
紫外線照射による硬化物の25℃での表面固有抵抗値が1×1013Ω/□以下である請求項1〜6いずれか記載の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の紫外線硬化型樹脂組成物(Q)を用いた光学レンズ、光学レンズ用シートまたはフィルム。

【公開番号】特開2012−77104(P2012−77104A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220475(P2010−220475)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】