説明

紫外線硬化性インク組成物

【課題】紫外線硬化性インク組成物を提供する。
【解決手段】アルキル変性ポリビニルピロリドン、親水性モノマー、及び光重合性開始剤を含有することを特徴とする紫外線硬化性インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD−R、CD−RW、DVD−R、書き換え型DVD等の光記録媒体は、多くの情報をレーザ光を用いて記録、再生を行う大容量記録媒体として注目されている。このような光記録媒体のレーベル面(光を照射して情報の記録を行う面とは反対側の面)には、インクジェットインク(例えば、代表的には水性インク)による印刷が可能な印刷受容層が設けられ、媒体に記録された情報の内容表示等に活用されている。
【0003】
従来、このような印刷受容層の光沢性を高め、インクジェットインクによる高品質な印刷を可能にするために種々の方法が報告されている。例えば、インク受容層上に樹脂を主成分とする塗工液、又は顔料と樹脂結着剤を主成分として含有する塗工液を塗布し、これが湿潤状態にある間に、加熱された鏡面ドラムを圧接して乾燥させるキャストコーティング法についての報告(特許文献1参照)がある。また、光記録媒体上にインク吸収性の優れるインク受理層を設け、その上層にカチオン性有機粒子を含有する層を設ける方法(特許文献2参照)が知られている。さらに、紫外線硬化性樹脂を用いて下地層を形成し、その上に、多孔性アルミナ水和物粒子を配合した光沢プリンタブル層を設ける方法(特許文献3参照)、シリカを含有させたインキ受容層を形成する方法(特許文献4参照)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−296912号公報(段落0006、段落0008、図1参照)
【特許文献2】特開2002−133722号公報(段落0052、段落0063、段落0064参照)
【特許文献3】特開2002−237103号公報(段落0054〜段落0060参照)
【特許文献4】特開2003−123323号公報(段落0009〜段落0010、段落0028参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような印刷受容層の光沢性は、例えば、特許文献3に記載されているように、JISに準拠した60°鏡面光沢度を基準として評価されている。
しかし、本発明者等がさらに検討を進めていくと、このような従来の評価基準により判断されていた印刷受容層の光沢性が必ずしも充分ではなく、高品質な印刷を可能にするためには、さらに改良の必要性があることが判明した。
【0006】
具体的には、従来の評価基準として採用している60°鏡面光沢度は必ずしも適当ではなく、これに代わり、20゜鏡面光沢度が、人間の目から見て良好な光沢性を有するか否かを判断するための評価指標としてふさわしいことが判明している。このため、20゜鏡面光沢度を高くすることにより、人間の目から見た光沢性の高い(審美性(aesthetic)の高い)光記録媒体を得ることができる。
【0007】
本発明の目的は、紫外線硬化性インク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(5)が提供される。
(1)アルキル変性ポリビニルピロリドン、親水性モノマー、及び光重合性開始剤を含有することを特徴とする紫外線硬化性インク組成物。
(2)前記インク組成物が、定着剤をさらに含有することを特徴とする(1)に記載の紫外線硬化性インク組成物。
(3)前記インク組成物が、重合性オリゴマー成分をさらに含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の紫外線硬化性インク組成物。
(4)前記インク組成物が、界面活性剤をさらに含有することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の紫外線硬化性インク組成物。
(5)アルキル変性ポリビニルピロリドンを5重量%以上、50重量%以下含有することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の紫外線硬化性インク組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レーベル面に高品質な印刷が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態が適用される光記録媒体(基板面入射型のCD型媒体)を説明するための図(断面図)である。
【図2】本実施の形態が適用される光記録媒体における記録再生機能層の表面に形成された情報記録層(CD−Rの例)と印刷受容層とを説明するための図(断面図)である。
【図3】本実施の形態が適用される光記録媒体に設けられた印刷受容層の第2の実施形態を説明するための図(断面図)である。
【図4】インク滲み評価法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について、図面に基づき説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0012】
図1は、本実施の形態が適用される光記録媒体100(この例では、基板面入射型のCD型媒体)を説明するための図(断面図)である。光記録媒体100は、レーザ光30が照射されることにより情報の記録または再生が少なくとも可能な記録再生機能層10と、インクジェットインク等の水性インクによる印刷が可能な印刷受容層20を有している。図1に示すように、印刷受容層20は、記録再生機能層10のレーザ光30が入射する側とは反対側の面に形成されている。また、記録再生機能層10は、光透過性材料からなる基板11と、基板11の表面に形成された情報記録層12とを有している。尚、図示しないが、レーザ光30は、所定の開口数(NA)を有する対物レンズを介して情報記録層12に照射される。また、図1においては、記録再生機能層10と印刷受容層20とは接しているが、後述する下地層等を、記録再生機能層10と印刷受容層20との間に設けてもよいことはいうまでもない。
【0013】
図2は、本実施の形態が適用される光記録媒体100における基板11の表面に形成された情報記録層12(ここでは、CD−Rの例を示す。)と、印刷受容層20とを説明するための図(断面図)である。図2に示すように、基板11と情報記録層12とが記録再生機能層10となる。さらに、図2に示すように、情報記録層12は、基板11の表面に形成された所定のトラッキング用案内溝111上に、有機色素を含む記録層121と、例えば、Ag、Al等の金属からなる反射層122と、紫外線硬化性樹脂等から形成されている保護層123とが、順番に積層された構造を有している。
【0014】
また、記録再生機能層10のレーザ光が入射する側とは反対側の表面上に形成された印刷受容層20は、保護層表面12Fと接し、所定量の有機フィラー及び/または無機フィラーを含むフィラー配合層22と、フィラー配合層表面22F上に形成され、有機フィラー及び/または無機フィラーを含まない無フィラー層21と、から構成されている。印刷受容層20は、無フィラー層表面21Fからインクが吸着される。
【0015】
1.印刷受容層
次に、印刷受容層20について説明する。
本実施の形態が適用される光記録媒体100における印刷受容層20は、水性インクを用いる印刷を行う場合、実使用に耐えうる程度の良好な印刷(具体的には、インクのにじみが少なくかつ十分な乾燥速度を有することをいう。)が行える層である。そして、印刷受容層20は、前述した記録再生機能層10側に設けられるフィラー配合層22と、インクが最初に吸着する側に設けられる無フィラー層21とから構成されている。
【0016】
ここで、「フィラー配合層」とは、所定のマトリックス中に有機フィラー又は無機フィラーを含有する層である。フィラー配合層22を用いることにより、印刷受容層20表面の光沢度及びインク吸収性を確保し、且つ印刷受容層20と記録再生機能層10との接着性を高めやすくなる。フィラー配合層22は単層構造であっても多層構造であってもよい。また、フィラー配合層22を構成する層数は、通常、1層以上、10層以下の範囲から適宜選択される。フィラー配合層22を構成する層数は、好ましくは5層以下、より好ましくは4層以下である。一方、フィラー配合層22を構成する層数は、好ましくは2層以上とする。フィラー配合層22は、最も好ましくは2層構造である。フィラー配合層22の層数がこの範囲内の場合、生産効率を維持しつつフィラー配合層22の機能分離等を良好に行いやすくなる。
【0017】
次に、「無フィラー層」とは、実質的に有機フィラー又は無機フィラーを含有しない層である。無フィラー層21を用いることにより、所定のインク吸収性を有しつつ印刷受容層20表面の光沢度を確保しやすくなる。無フィラー層21は単層構造または多層構造のいずれでもかまわない。また、無フィラー層21を構成する層数は、通常1層以上、10層以下の範囲から適宜選択される。無フィラー層21を構成する層数は、好ましくは5層以下、より好ましくは3層以下、さらに好ましくは2層以下である。無フィラー層21の層数は、最も好ましくは1層である。無フィラー層21の層数がこの範囲内の場合、印刷受容層20の光沢性を確保しやすくなる。
【0018】
次に、印刷受容層20を構成する材料について説明する。
フィラー配合層22及び無フィラー層21を構成する材料は、所定の光沢度、所定のインク吸収性及び記録再生機能層10との接着性等を確保できる材料であれば特に限定されない。このような観点から、フィラー配合層22は、樹脂と有機フィラー又は無機フィラーとを主成分として形成されることが好ましい。また、無フィラー層21は、樹脂を主成分として形成されることが好ましい。ここで、主成分とは、該成分が、層全体の、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有され、通常、層全体の99.9重量%以下含有される場合をいう。
【0019】
さらに、フィラー配合層22及び無フィラー層21を構成する材料として樹脂を用いる場合、紫外線硬化性樹脂と親水性樹脂とを併用することが好ましい。
なお、「親水性」の物質という場合、一般に分子構造中にヘテロ原子を有する物質をいう。ここで、「親水性」の物質としては、例えば、親水性樹脂、親水性オリゴマー(例えば、親水性ウレタンアクリレート)、親水性モノマー等を挙げることができる。
【0020】
具体的には、「親水性樹脂」とは、樹脂の側鎖にヘテロ原子を含む置換基を有する樹脂をいう。より具体的には、「親水性樹脂」とは、酸素、硫黄、リン、窒素を含む置換基を側鎖に有する樹脂をいう。さらに具体的には、「親水性の樹脂」とは、例えば、水酸基、エーテル基、スルホン酸基、アミノ基、カルボン酸基等を側鎖に有する樹脂をいう。
【0021】
また、具体的に、「親水性オリゴマー」も、分子内にヘテロ原子を含む置換基を有するオリゴマーをいう。具体的には、「親水性オリゴマー」とは、酸素、硫黄、リン、窒素を含む置換基を有するオリゴマーをいう。さらに具体的には、「親水性オリゴマー」とは、例えば、水酸基、エーテル基、スルホン酸基、アミノ基、カルボン酸基等を有するオリゴマーをいう。
【0022】
さらに、具体的に、「親水性モノマー」も、分子内にヘテロ原子を含む置換基を有するモノマーをいう。具体的には、「親水性モノマー」とは、酸素、硫黄、リン、窒素を含む置換基を有するモノマーをいう。さらに具体的には、「親水性モノマー」とは、例えば、水酸基、エーテル基、スルホン酸基、アミノ基、カルボン酸基等を有するモノマーをいう。
【0023】
(1)紫外線硬化性樹脂
(紫外線硬化性モノマー)
印刷受容層20を構成する材料の紫外線硬化性樹脂としては、ラジカル系紫外線硬化性樹脂が挙げられる。ラジカル系紫外線硬化性樹脂は、紫外線硬化性モノマーと光重合開始剤を必須成分として含む組成物が用いられる。紫外線硬化性モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを重合性モノマー成分として用いることができる。紫外線硬化性モノマーの中でも、親水性モノマーが好ましい。これらは、各々、単独または2種類以上併用して用いることができる。ここで、アクリレートとメタアクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称する。
【0024】
具体的には、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、置換基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、テトラヒドロフルフリル、グリシジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1、3−ブチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、8−オクタンジオール、1、9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
また、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
紫外線硬化性樹脂の架橋密度を向上させるために、架橋性モノマーを含有させてもよい。架橋性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、1、4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、シクロデカントリアクリレート等が挙げられる。
【0028】
インクの吸着や吸収を促進させやすくするために、紫外線硬化性モノマーとして親水性モノマーを用いることが好ましい。
親水性モノマーとしては、例えば、水溶性アクリレートモノマー、ウレタンアクリレートオリゴマーが挙げられる。水溶性アクリレートモノマーの具体例としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、変性トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
また、水溶性アクリレートモノマーの主成分としては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリンのうち少なくとも一種を含有することが好ましい。これらの水溶性アクリレートモノマーは、単独又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
紫外線硬化性モノマーは、印刷受容層20を形成するための塗布液中に、通常20重量部以上、好ましくは30重量部以上、より好ましくは40重量部以上含有される。一方、紫外線硬化性モノマーは、印刷受容層20を形成するための塗布液中に、通常70重量部以下、好ましくは60重量部以下、より好ましくは55重量部以下含有される。紫外線硬化性モノマーを上記範囲とすれば、耐水性や記録再生機能層10との接着性も良好となりやすい。特に、紫外線硬化性モノマーとして親水性モノマーを上記範囲で用いることにより、印刷受容層20として十分なインクの受理性を得やすくなる。
【0031】
(重合性オリゴマー)
また、これらの紫外線硬化性モノマー(重合性モノマー)と同時に、重合性オリゴマー(本明細書においては、重合性オリゴマーをオリゴマー成分と呼ぶ場合がある。)を併用することができる。重合性オリゴマーとして、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー(以下、ウレタンアクリレートオリゴマーと呼ぶ場合がある。)を用いることが好ましい。
【0032】
ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることにより、紫外線硬化後の印刷受容層20に架橋構造を導入することができる。また、ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることにより、紫外線硬化の際の硬化収縮が低減されやすくなる。さらに、ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることにより、記録再生機能層10との接着性を維持しやすくなる。
【0033】
ここで、一般に、ウレタンアクリレートオリゴマーは疎水性のものを指すが、水との親和性を向上させるため、水酸基、エーテル基、アミン基、カルボン酸基等の極性基を導入することが好ましい。すなわち、このような極性基を導入することによって、親水性ウレタンアクリレートオリゴマーとし、水との任意混合を可能にすることができる。したがって、このような親水性ウレタンアクリレートオリゴマーを使用した場合、親水性樹脂や親水性モノマーとの親和性が良好になって、インクの受理特性を向上させやすくなる。以下に、疎水性ウレタンアクリレートオリゴマー、親水性ウレタンアクリレートオリゴマーについて説明する。
【0034】
疎水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、所定の架橋構造を形成して塗膜強度を上げるため、及び、記録再生機能層10との接着性を高めるために、主に用いられる。すなわち、疎水性のウレタンアクリレートオリゴマーを含有させることにより、十分な架橋構造をとるとともに、記録再生機能層10への接着性、硬化収縮の緩和、及び耐水性、耐スクラッチ性を備えやすくなる。
【0035】
疎水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、印刷受容層20を形成するための塗布液中に、通常1重量部以上、好ましくは2重量部以上、より好ましくは3重量部以上、さらに好ましくは3.5重量部以上含有される。一方、疎水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、印刷受容層20を形成するための塗布液中に、通常20重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは9重量部以下、特に好ましくは8重量部以下含有される。
【0036】
上記範囲内とすれば、十分な塗膜強度を持つ架橋構造を形成しやすくなり、記録再生機能層10への接着性を良好にしやすくなる。また、インクの受理特性も良好にしやすい。
【0037】
なお、具体的に、疎水性ウレタンアクリレートオリゴマーの水(25℃)に対する溶解度は100g/リットル未満とすることが好ましく、50g/リットル未満とすることがより好ましく、10g/リットル未満とすることがさらに好ましい。一方、溶解度の下限は、現実的には、0.1g/リットルとなる。
【0038】
親水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、所定の架橋構造を形成して塗膜強度及び耐水性を上げるため、さらにインク受理性を備えるため、に主に用いられる。すなわち、親水性ウレタンアクリレートオリゴマーを含有させることにより、十分な架橋構造が形成されやすくなる。このため、印刷受容層20の硬化収縮が緩和されて、印刷受容層20に所定の耐水性及び耐スクラッチ性を付与しやすくなる。そして、親水性のウレタンアクリレートオリゴマーを用いることにより、インクの受理特性も向上しやすくなる。
【0039】
親水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、印刷受容層20を形成するための塗布液中に、通常0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは1.5重量部以上含有される。一方、親水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、印刷受容層20を形成するための塗布液中に、通常30重量部以下、好ましくは25重量部以下、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは19重量部以下、特に好ましくは18重量部以下含有される。
上記範囲内とすれば、十分な膜強度を有する架橋構造を得やすくなる。また、タック性、耐水性、記録再生機能層10との接着性も確保しやすい。さらに、インクの受理性も良好としやすい。
【0040】
なお、具体的に、親水性ウレタンアクリレートオリゴマーの水(25℃)に対する溶解度は100g/リットル以上とすることが好ましく、300g/リットル以上とすることがより好ましく、1000g/リットル以上とすることがさらに好ましい。一方、溶解度の上限は、現実的には、5000g/リットルとなる。
【0041】
このようなウレタンアクリレートオリゴマーの他に、同様な効果を目的として、親水性を示すポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等の紫外線硬化性オリゴマーと併用することも好ましい様態である。
【0042】
また、上述した成分以外の配合成分として、紫外線硬化後の印刷受容層20の硬化収縮を緩和する等の目的で、下記化合物をさらに用いてもよい。つまり、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも一種もしくは二種以上を含有させることが好ましい。これら化合物は、印刷受容層20を形成するための塗布液中に、通常0重量部以上、40重量部以下含有される。
【0043】
(光重合開始剤等の添加剤)
光重合開始剤を用いる場合には以下のようにすればよい。
つまり、光重合開始剤としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、オリゴ〔2−ヒドロキシ−2−メチル1−[4−(メチルビニル)フェニル]プロパノン〕等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0044】
光重合開始剤は、印刷受容層20を形成するための塗布液中に、通常1重量部以上、好ましくは2重量部以上、より好ましくは3重量部以上含有される。一方、光重合開始剤は、印刷受容層20を形成するための塗布液中に、通常15重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下含有される。
【0045】
上記範囲内とすれば、紫外線硬化時においても十分な硬化反応を得ることができる。この結果、印刷受容層20を均一な構造にしやすくなる。さらに、印刷受容層20の経時劣化を抑制しやすくなる。つまり、光重合開始剤が過度に多く含有されると、紫外線硬化後に未反応物の残存や経時による架橋の過度な進行により、形成された印刷受容層20が経時劣化を起こす場合がある。上記数値範囲内とすれば、このような経時劣化を抑制しやすくなる。
【0046】
紫外線硬化性樹脂には光重合開始剤とともに増感剤を併用することができる。増感剤としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N、N−ジメチルベンジルアミンおよび4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0047】
また、必要に応じてさらに含有されるその他の添加剤として、熱重合禁止剤;ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤;可塑剤;エポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤;等が挙げられる。これらの添加剤は、各種特性を改良する目的で配合することができる。これらは、紫外線硬化性樹脂への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いられる。
【0048】
(無フィラー層21に紫外線硬化性樹脂を用いる場合)
無フィラー層21に紫外線硬化性樹脂を用いる場合、上記材料を用いて、以下のようにすることがさらに好ましい。
まず、硬化前の塗布液の粘度を低下させる観点から、重合性オリゴマーの含有量を少なくすることが好ましい。そして、重合性オリゴマーの中でも、親水性ウレタンアクリレート等の親水性オリゴマーの含有量を少なくすることが好ましい。具体的には、重合性オリゴマーは、無フィラー層21を形成する塗布液中に、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下含有される。一方、重合性オリゴマーは、無フィラー層21を形成する塗布液中に、通常0重量%以上含有される。
【0049】
一方、印刷受容層20のインク受理性を向上させるために、無フィラー層21に含有される親水性モノマーを多くすることが好ましい。具体的には、親水性モノマーは、無フィラー層21を形成する塗布液中に、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有される。一方、親水性モノマーは、無フィラー層21を形成する塗布液中に、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下含有される。
【0050】
(フィラー配合層22に紫外線硬化性樹脂を用いる場合)
フィラー配合層22に紫外線硬化性樹脂を用いる場合、上記材料を用いて、以下のようにすることがさらに好ましい。
まず、インクの受理性を向上させる観点から、親水性ウレタンオリゴマーを所定量用いることが好ましい。親水性ウレタンオリゴマーは、フィラー配合層22を形成する塗布液中に、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上含有させる。一方、親水性ウレタンオリゴマーは、フィラー配合層22を形成する塗布液中に、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下含有させる。
【0051】
また、記録再生機能層10との接着性確保の観点から、疎水性ウレタンオリゴマーを所定量を用いることが好ましい。疎水性ウレタンオリゴマーは、フィラー配合層22を形成する塗布液中に、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上含有させる。一方、疎水性ウレタンオリゴマーは、フィラー配合層22を形成する塗布液中に、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下含有させる。
【0052】
また、インクの受理性を精密に制御する観点から、親水性モノマーを所定量含有させることも好ましい。親水性モノマーは、フィラー配合層22を形成する塗布液中に、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上含有させる。一方、親水性モノマーは、フィラー配合層22を形成する塗布液中に、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下含有される。
【0053】
(2)親水性樹脂
親水性樹脂を用いる場合は以下のようにすればよい。
つまり、親水性樹脂の例としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルホルマール、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物、アルキル変性ポリビニルピロリドン、ケトン樹脂、スチレン/無水マレイン酸共重合物、セラック、デキストリン、ポリ(アクリル酸ピロリドニルエチルエステル)、ポリアクリル酸及びその金属塩、ポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルヒドロキシベンゾエート、ポリフタル酸、酢酸セルロースヒドロキシジエンフタレート、水溶性アルキッド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリエポキシ、ポリアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリ酢酸ビニルのケン化物、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、アラビアガム、グアガム、アルギン酸ソーダ等を挙げることができる。また、例えば、メチルメタクリレートからなる主鎖とN−メチロールアクリルアミドからなる側鎖とから構成されるグラフトポリマー類(綜研化学株式会社製LH−40)も使用することができる。
【0054】
上述した、フィラー配合層22及び無フィラー層21を構成する材料として樹脂を用いる場合、これらの樹脂は、印刷受容層20の光沢性、インク吸収性、記録再生機能層10との接着性、光記録媒体の耐候性、耐水性、反り等の信頼性や製造性を考慮し、配合バランスを調整して混合する。
【0055】
特に、親水性樹脂は、印刷受容層20中に、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上含有される。一方、親水性樹脂は、印刷受容層20中に、通常30重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下含有される。
【0056】
(フィラー配合層22に親水性樹脂を用いる場合)
フィラー配合層22は、有機フィラー又は無機フィラーを含有することにより、インク吸収性を確保しやすくなる。このため、フィラー配合層22中の親水性樹脂の含有量を低減することが可能である。具体的には、親水性樹脂は、フィラー配合層22中に、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下含有される。一方、親水性樹脂は、フィラー配合層22中に、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上含有される。
【0057】
フィラー配合層22に用いる親水性樹脂としては、上述した様々な材料を用いることができる。これら材料の中でも、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物を用いることが好ましい。ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物を用いてフィラー配合層22を形成することにより、インク吸収性を向上させ、且つ紫外線硬化性樹脂を構成するモノマー成分との相溶性を向上させることができる。
【0058】
ここで、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の重量平均分子量(Mw)は、通常10,000以上、好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上とする。上記範囲内とすれば、印刷受容層20の均一性を良好にしやすくなる。さらに、インク吸収性及び耐水性やタック性も良好にしやすくなる。
【0059】
一方、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の重量平均分子量(Mw)は、通常500,000以下、好ましくは300,000以下、より好ましくは200,000以下とする。上記範囲内とすれば、親水性アクリレートモノマーまたはウレタンアクリレートオリゴマーとの相溶性を良好にしやすくなる。さらに、塗布液の粘度も良好にしやすくなる。
【0060】
尚、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の重量平均分子量は、ゲルパミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレン換算の分子量として測定することができる。
【0061】
また、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の重合度は、通常300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上とする。上記範囲内とすれば、インク吸収性、耐水性、及びタック性を良好にしやすくなる。
【0062】
一方、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の重合度は、通常700以下、好ましくは650以下、より好ましくは600以下とする。上記範囲内とすれば、親水性アクリレートモノマーまたはウレタンアクリレートオリゴマーとの相溶性を良好にしやすくなる。さらに、塗布液の粘度も良好にしやすくなる。
【0063】
ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物におけるビニルピロリドンモノマーと酢酸ビニルモノマーとの共重合比(モル換算)は、(ビニルピロリドンモノマー):(酢酸ビニルモノマー)が、通常、(100:10)〜(100:75)、好ましくは、(100:15)〜(100:70)、より好ましくは、(100:20)〜(100:67)の範囲内である。
【0064】
ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物における酢酸ビニルモノマーの共重合比を上記範囲内とすれば、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の凝集力を良好にしやすくなり、その結果、フィラー配合層22の凝集力も良好な傾向となる。また、水溶性アクリレートモノマーとの相溶性、ウレタンアクリレートオリゴマーとの親和性も良好となりやすい。さらに、印刷作業性も良好にしやすい。さらに、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の水溶性を良好にすることもできる。このため、塗布液が取り扱いやすくなる。そして、インク吸収特性、耐水性、及びタック性を良好に確保しやすくなる。
【0065】
ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物は、粉体状態で使用することが好ましい。粉体状態のポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物を用いることにより、例えば、紫外線硬化型インキを使用する場合の含水率の調整が容易になり、特定の水溶性ポリマーと水溶性モノマーとの間の親和性がさらに良好になるばかりか、水性インクの特性のばらつき、水性インクの種類の変動に際して、印刷の滲みを著しく低減することができる。
【0066】
粉体状態のポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体の平均粒径は、通常0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上とする。一方、粉体状態のポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体の平均粒径は、通常5mm以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下とする。上記範囲内とすれば、吸湿性を良好に制御しやすくなるため、取り扱いが容易となるとともに、含水率の制御も良好となりやすい。また、上記範囲内とすれば、親水性モノマーに対する溶解時間も短くしやすくなる。
【0067】
粉体状態のポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の含水率は、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の全体量に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上とする。一方、粉体状態のポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の含水率は、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物の全体量に対して、通常10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下とする。上記範囲内とすれば、製造上の安定性が向上する傾向になる。また、吸湿性も良好に制御することができる。さらに、ウレタンアクリレートオリゴマーとの親和性も向上しやすくなり、塗布液中の含水率の制御が行いやすい。
【0068】
ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物は、フィラー配合層22中に、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上含有される。一方、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物は、フィラー配合層22中に、通常10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下含有される。上記範囲内とすれば、十分なインク吸収特性を付与しつつ、耐水性、タック性、及び印刷作業性を良好にしやすくなる。
【0069】
(無フィラー層21に親水性樹脂を用いる場合)
また、無フィラー層21に用いる親水性樹脂としては、上述した様々な材料を用いることができる。これら材料の中でも、アルキル変性ポリビニルピロリドンを用いることが好ましい。アルキル変性ポリビニルピロリドンを用いて無フィラー層21を形成することにより、印刷受容層20の表面性を良好(例えば、指で触れたときのべたつきが抑制され、表面平滑性が高くなる等)にすることができる。アルキル変性ポリビニルピロリドンとしては、例えば、ポリビニルピロリドンの水素基をアルキル基で置換したものが挙げられる。
【0070】
具体的には、炭素数1〜炭素数6のアルキル基、好ましくは炭素数4のアルキル基(例えば、1−ブテン)や炭素数6のアルキル基(例えば、1−ヘキサデン)を付加させる。これらアルキル基は、通常5%以上、好ましくは10%以上付加させる。一方、これらアルキル基は、通常80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは20%以下付加される。上記付加率は、アルキル変性ポリビニルピロリドンに求められる性能に応じて適宜制御すればよい。
【0071】
無フィラー層21は有機又フィラーは無機フィラーを含有しないのでインク吸収性が低い性質を示す。このため、無フィラー層21には親水性樹脂を多く含有させることが好ましい。親水性樹脂は、無フィラー層21中に、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上含有される。一方親水性樹脂は、無フィラー層21中に、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下含有される。
【0072】
(3)界面活性剤
印刷受容層20の光沢性を向上させるために、フィラー配合層22及び無フィラー層21のそれぞれの表面を平滑(即ち、表面粗さを小さくする)にすることが好ましい。フィラー配合層22及び無フィラー層21の表面を平滑にする方法としては、これらの層を構成する樹脂を含む塗布液に界面活性剤を含有させ、この塗布液を塗布・乾燥(又は硬化)して、フィラー配合層22及び無フィラー層21を形成することが好ましい。
【0073】
加えて、界面活性剤を用いることにより、塗布液を塗布し乾燥又は硬化させてフィラー配合層22及び無フィラー層21を得る場合において、塗布後の消泡作用も期待できる。
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリシロキサン類、アクリル共重合物等が挙げられる。
【0074】
界面活性剤は、印刷受容層20中に、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上含有される。一方、界面活性剤は、印刷受容層20中に、通常10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは6重量%以下で含有される。上記範囲内とすれば、フィラー配合層22及び無フィラー層21の平滑性を向上させやすくなる。また、上記塗布後の消泡作用も得やすくなる。
【0075】
(4)定着剤
印刷受容層20には、インクの定着性を向上させる観点から、定着剤を含有させることが好ましい。定着剤としては、具体的には、カチオン定着剤を挙げることができる。このような定着剤を用いることにより、インクがアニオンである場合に、インクの定着性を向上させやすくなる。特にインクジェット印刷用のインクは、アニオンである場合が多いので、インクジェット印刷を用いる場合において、印刷受容層20に定着剤を用いることが好ましい。
【0076】
定着剤は、印刷受容層20中に、通常1重量%以上、5重量%以下含有される。定着剤は、印刷受容層20中に、好ましくは3重量%以下含有される。上記範囲内とすれば、印刷受容層20全体の特性のバランスをとりながら、インクの定着性を確保しやすくなる。
【0077】
(5)有機フィラー及び無機フィラー
次に、フィラー配合層22に配合される有機フィラー及び無機フィラーについて説明する。
フィラー配合層22に配合される有機フィラーとしては、吸水性および/または吸油性フィラーが挙げられる。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、スチレン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、変性メラミン樹脂微粒子、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ゴム等の微粒子の他、これらポリマーの架橋微粒子、さらに、リグニン、プロテイン、セルロース、絹の粉末等が挙げられる。
【0078】
特に、リグニン、プロテイン、セルロース、絹の粉末は、吸水性や吸油性が高いために好ましい。尚、有機フィラーの粒径は、通常、0.1μm以上、20μm以下である。有機フィラーの粒径がこの範囲であれば、印刷インクの定着性を効果的に発揮することができる。
【0079】
フィラー配合層22に配合される無機フィラーとしては、吸水性および/または吸油性フィラーが挙げられる。具体的には、例えば、酸化珪素(シリカ)、タルク、酸化チタン、クレー、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、珪藻土シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0080】
これらの中でも、酸化珪素(シリカ)、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナが好ましい。特に好ましくは、酸化珪素(シリカ)、タルク、酸化チタン、アルミナである。また、他の顔料で、着色することも可能である。尚、無機フィラーの粒径は、通常、0.01μm以上、20μm以下である。無機フィラーの粒径がこの範囲であれば、印刷インクに対する吸水性を効果的に発揮することができる。
【0081】
フィラー配合層22に配合される有機フィラー又は無機フィラーの含有量は、有機フィラー又は無機フィラーの粒径(粒度分布)に依存する。インク吸収性の確保から、有機フィラー又は無機フィラーは、フィラー配合層22中に、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上含有される。一方、有機フィラー又は無機フィラーは、フィラー配合層22中に、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下含有される。有機フィラー又は無機フィラーの含有量がこの範囲内の場合、無フィラー層、フィラー配合層、印刷受容層の表面の平滑性を確保しやすくなる。
【0082】
(6)印刷受容層20の製造方法
印刷受容層20の製造方法は、特に限定されない。
フィラー配合層22は、通常以下のようにして製造される。すなわち、親水性樹脂、紫外線硬化性樹脂、光重合性開始剤、その他の添加剤、及び有機フィラー及び/または無機フィラーを配合して塗布液を調製する。そして、この塗布液を、スピンコート、バーコート、ブレードコート、エアナイフコート、ロールコート、スプレーコートまたはスクリーン印刷等により、記録再生機能層10上に塗布する。その後、塗布膜に紫外線を照射して硬化させる。
【0083】
無フィラー層21は、通常以下のようにして製造される。すなわち、親水性樹脂、紫外線硬化性樹脂、光開始性開始剤及びその他の添加剤を含有する塗布液を調整する。そして、この塗布液を、スピンコート、バーコート、ブレードコート、エアナイフコート、ロールコート、スプレーコートまたはスクリーン印刷等により、フィラー配合層上に塗布する。その後、塗布膜に紫外線を照射して硬化させる。
【0084】
なお、上記製造例では、フィラー配合層22及び無フィラー層21を塗布した後に、それぞれ紫外線照射を行って塗布膜を硬化させている。無論、フィラー配合層22、無フィラー層21の塗布を行った後に、この塗布膜に紫外線を照射して、フィラー配合層22、無フィラー層21を一度に硬化させてもよい。
【0085】
また、上記塗布方法の中でも、スクリーン印刷が、厚さの制御が容易であり、生産性が高いことから好ましい。紫外線照射源としては、水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が使用される。照射エネルギー量は、通常150mJ/cm以上、好ましくは250mJ/cm以上とする。一方、照射エネルギー量は、通常2000mJ/cm以下、好ましくは1000mJ/cm以下とする。
【0086】
(7)印刷受容層20の光沢の確保
次に、印刷受容層20の光沢について説明する。本実施の形態が適用される光記録媒体100の印刷受容層20は、最初に水性インクが吸着される面(図2における無フィラー層表面21F)の光沢度が、30以上であることが好ましい。40以上がより好ましく、50以上が更に好ましい。ここで、光沢度は、JISZ8741(ISO2813、ASTMD523、DIN67530)に準拠し、所定の光沢度計を用いて20°入射角の条件で測定した「20゜鏡面光沢度」として評価される。
【0087】
印刷受容層20の最初に水性インクが吸着される面の光沢度が30以上であることにより、印刷受容層20の高い光沢度を保ちつつ、良好な印刷特性及び記録再生機能層10との良好な接着性を確保することができる。
光沢度は製品に要求される性能にも左右されるが、通常100以下の範囲である。
印刷受容層20の光沢性は、フィラー配合層22と無フィラー層21とにそれぞれ以下の制御を施すことにより、達成されやすくなる。
【0088】
(フィラー配合層22)
印刷受容層20表面の光沢度を確保するために、記録再生機能層10側に設けられるフィラー配合層22の表面粗さを制御する必要がある。具体的には、フィラー配合層表面22Fの表面粗さRa(算術平均粗さ)を小さくすることが好ましい。ここで、算術平均粗さの定義については、例えば、JIS B0601(1994)やJIS B0031(1994)に記載されている通りである。
【0089】
より具体的には、フィラー配合層表面22Fの表面粗さRaは、通常5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに1μm以下であることがより好ましい。尚、フィラー配合層表面22Fの表面粗さは、小さければ小さいほど好ましい。但し、現実的には、フィラー配合層表面22Fの表面粗さRaの下限値は、通常0.1μmとなる。フィラー配合層表面22Fの表面粗さRaが、上記数値範囲内の場合は、印刷受容層20の光沢性が確保されやすくなる。
【0090】
フィラー配合層表面22Fの表面粗さRaを低減するための具体的な方法としては、例えば、フィラー配合層22の材料の制御、または製造条件の制御が挙げられる。フィラー配合層22の材料の制御方法の具体例は以下のとおりである。
(a)フィラー配合層22を紫外線硬化性樹脂を用いて形成する場合、オリゴマー成分を増加させる。これは、オリゴマー成分により樹脂成分の粘度が制御でき、有機フィラーや無機フィラーがフィラー配合層22の表面に浮き出ることが抑制されるためと考えられる。
(b)フィラー配合層22中の有機フィラー又は無機フィラーの粒径を小さくする。これは、有機フィラー又は無機フィラーの粒径が小さいほど表面粗度は小さくなるためと考えられる。
(c)フィラー配合層22中の有機フィラー又は無機フィラーの含有量を少なくする。これは、有機フィラー又は無機フィラーの含有量が少なくなれば、表面に浮き出るフィラーが少なくなるために、表面粗度が小さくなるからと考えられる。
(d)フィラー配合層22中の有機フィラー又は無機フィラーの粒径を小さくし、且つ含有量を少なくする。これは、上記(b)と(c)の理由によるためと考えられる。
【0091】
製造条件の制御方法の具体例は以下のとおりである。
(a)スクリーン印刷法でフィラー配合層22を製造する場合は、メッシュサイズを小さくする。これは、メッシュサイズを小さくすることにより、スクリーン目から細かく均一にインクを塗布でき、レベリングが速くなるためと考えられる。
(b)スクリーン印刷法でフィラー配合層22を製造する場合には、スキージの速度を速くする。これは、塗布する瞬間の塗布液(インク)のせん断速度が上がり、実質上の粘度が低下してレベリングが早くなるためと考えられる。
(c)塗布液を塗布後、乾燥又は硬化してフィラー配合層22を製造する場合には、塗布から加熱までの時間を長くする。時間を長くすることにより、塗布表面の平滑化が行われやすくなるからと考えられる。
【0092】
(無フィラー層21)
さらに、印刷受容層20表面の光沢度を確保する点から、最初にインクが吸着される面側に設けられる無フィラー層21の表面粗さRaを制御することも重要である。即ち、本実施の形態においては、第1に、有機フィラーまたは無機フィラーを配合しないことにより、無フィラー層21の表面粗さRaを小さくすることができる。具体的には、無フィラー層表面21Fの表面粗さRaは、通常5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に0.5μm以下であることがより好ましい。尚、無フィラー層表面21Fの表面粗さRaは、小さければ小さい程好ましい。但し、現実的には、無フィラー層表面21Fの表面粗さRaの下限値は、通常0.01μmである。無フィラー層表面21Fの表面粗さRaが、上記数値範囲の場合は、印刷受容層20の光沢性が確保しやすくなる。
【0093】
無フィラー層表面21Fの表面粗さRaを小さくするための具体的な方法としては、例えば、無フィラー層21の材料の制御、または製造条件の制御が挙げられる。無フィラー層21の材料の制御方法の具体例は以下のとおりである。
(a)塗布液を塗布後、乾燥又は硬化して無フィラー層21を製造する場合には、塗布液の粘度を小さくする。塗布液の粘度を小さくすることにより、塗布条件が制御しやすくなる。この結果、無フィラー層21の表面性を制御しやすくなる。
(b)塗布液を塗布後、乾燥又は硬化して無フィラー層21を製造する場合には、塗布液中の界面活性剤の含有量を多くする。界面活性剤の含有量を多くすることにより、塗布後の泡抜きや表面のレベリング性が向上する。
【0094】
製造条件の観点から考慮すべき具体的な点をいくつか示す。
(a)スクリーン印刷法で無フィラー層21を製造する場合には、メッシュサイズを小さくする。これは、メッシュサイズを小さくすることにより、スクリーン目から細かく均一にインクを塗布でき、レベリングが速くなるためと考えられる。
(b)スクリーン印刷法で無フィラー層21を製造する場合には、スキージの速度を速くする。これは、塗布する瞬間の塗布液(インク)のせん断速度が上がり、実質上の粘度が低下してレベリングが早くなるためと考えられる。
(c)塗布液を塗布後、乾燥又は硬化して無フィラー層21を製造する場合には、塗布から加熱までの時間を長くする。時間を長くすることにより、塗布表面の平滑化が行われやすくなるからと考えられる。
【0095】
(8)印刷受容層の膜厚
印刷受容層20の膜厚は、特に限定されないが、通常5μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上である。但し、印刷受容層20の膜厚は、通常100μm以下、好ましくは70μm以下、より好ましくは50μm以下である。印刷受容層20の膜厚が上記数値範囲の場合は、インク受理性が確保されやすくなる。
【0096】
フィラー配合層22の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。但し、フィラー配合層22の膜厚は、通常70μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。フィラー配合層22の膜厚が上記数値範囲の場合は、インクの受理性が向上しやすくなる。
【0097】
また、無フィラー層21の膜厚は、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。但し、無フィラー層21の膜厚は、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。無フィラー層21の膜厚が上記数値範囲の場合は、インクの受理性が向上しやすくなる。
【0098】
(9)フィラー配合層22の好ましい実施形態
次に、フィラー配合層22の好ましい実施形態について説明する。
図3は、本実施の形態が適用される光記録媒体200に設けられた印刷受容層20の第2の実施形態を説明するための図である。尚、図2と重複する構成部分については図2と同一の符号を用い、その説明を省略する。
図3に示すように、記録再生機能層10の表面上に形成された印刷受容層20は、保護層表面12Fと接し、所定量の有機フィラー及び/または無機フィラーを含むフィラー配合層22と、有機フィラー及び/または無機フィラーを含まない無フィラー層21とを有している。また、フィラー配合層22は、記録再生機能層10の保護層表面12Fに接して形成された第1フィラー配合層222と、無フィラー層21側に設けられた第2フィラー配合層221とから構成されている。
【0099】
(有機フィラー又は無機フィラー)
本実施の形態では、フィラー配合層22において、記録再生機能層10側に形成された第1フィラー配合層222に含まれる有機フィラー又は無機フィラーの含有量と比べ、無フィラー層21側に形成された第2フィラー配合層221に含まれる有機フィラー又は無機フィラーの含有量を少なくすることが好ましい。第1フィラー配合層222に含まれる有機フィラー又は無機フィラーの含有量と比べ、第2フィラー配合層221に含まれる有機フィラー又は無機フィラーの含有量を少なくすることにより、印刷受容層20と記録再生機能層10との接着性を確保しやすくなる。また、印刷受容層20表面の光沢性を確保しやすくなる。また、記録再生機能層10側の第1フィラー配合層222に含まれる有機フィラー又は無機フィラーの含有量を多くすることによって、インク吸収性を向上させやすくなる。一方、無フィラー層21側の第2フィラー配合層221に含まれる有機フィラー又は無機フィラーの含有量を少なくすることによって、印刷受容層20の光沢性を上昇させやすくなる。
【0100】
ここで、フィラー配合層は3層以上の構成、もしくはフィラー含有率が膜厚方向に連続的に変化するような構成でも構わない。つまり、フィラー配合層全体を一つの層と捉え、膜厚が等しくなるように無フィラー層側と記録再生機能層側の2層の領域に分けた場合に、第1フィラー配合層に当たる記録再生機能層側の領域全体のフィラー含有量が、第2フィラー配合層に当たる無フィラー層側の領域全体のフィラー含有量より多い状態であれば、本願発明の効果が得やすいと言える。
【0101】
フィラー配合層22の第1フィラー配合層222における有機フィラー又は無機フィラーの含有量は、有機フィラー又は無機フィラーの粒径(粒度分布)により適宜選択される。有機フィラー又は無機フィラーは、第1フィラー配合層222中に、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上含有させる。一方、有機フィラー又は無機フィラーは、第1フィラー配合層222中に、通常70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下含有させる。
【0102】
また、フィラー配合層22の第2フィラー配合層221における有機フィラー又は無機フィラーの含有量は、有機フィラー又は無機フィラーの粒径(粒度分布)により適宜選択される。有機フィラー又は無機フィラーは、第2フィラー配合層221中に、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上含有される。一方、有機フィラー又は無機フィラーは、第2フィラー配合層221中に、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下含有される。
【0103】
尚、印刷受容層20の表面の平滑性を確保する観点から、第2フィラー配合層221に含まれる有機フィラー又は無機フィラーの粒径は小さくすることが好ましい。具体的には、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。また、印刷受容層20を、所定の塗布液を塗布・乾燥(硬化)によって形成する場合、塗布液の粘度上昇を抑える観点から、第2フィラー配合層221に含まれる有機フィラー又は無機フィラーの粒径は、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上である。
【0104】
(紫外線硬化性樹脂)
フィラー配合層22に紫外線硬化性樹脂を含有させ、フィラー配合層22を、第1フィラー配合層222と、第2フィラー配合層221との2層構造とする場合には、前述の材料を用いて、以下のようにすることがさらに好ましい。
第2フィラー配合層221は、光沢性や生産性を改良する観点から、重合性オリゴマーの含有量を多くすることが好ましい。そして、重合性オリゴマーの中でも、親水性ウレタンアクリレート等の親水性オリゴマーの含有量を多くすることが好ましい。具体的には、重合性オリゴマーは、第2フィラー配合層221を形成するための塗布液中に、好ましくは1重量%以上、より好ましくは4重量%以上含有される。一方、重合性オリゴマーは、第2フィラー配合層221を形成するための塗布液中に、通常40重量%以下含有される。
【0105】
また、第2フィラー配合層221は、インクの受理性を向上させる観点から、親水性モノマーを所定量含有することが好ましい。親水性モノマーは、第2フィラー配合層221を形成するための塗布液中に、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは45重量%以上含有される。一方、親水性モノマーは、第2フィラー配合層221を形成するための塗布液中に、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下含有される。
【0106】
一方、第1フィラー配合層222は、記録再生機能層10との接着性を確保する観点から、親水性を落とした重合性オリゴマーを用いることが好ましい。親水性を落とした重合性オリゴマーとしては、例えば、親水性置換基の結合数が少ない親水性ウレタンアクリレート等のオリゴマー成分を挙げることができる。
また、第1フィラー配合層222は、記録再生機能層10との接着性を確保する観点から、疎水性ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることも好ましい。疎水性ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、例えば、親水性置換基を有しないウレタンアクリレート等のオリゴマー成分が挙げられる。
【0107】
親水性を落とした重合性オリゴマー及び/又は疎水性アクリレートオリゴマーは、第1フィラー配合層222を形成するための塗布液中に、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上含有される。一方、親水性を落とした重合性オリゴマー及び/又は疎水性アクリレートオリゴマーは、第1フィラー配合層222を形成するための塗布液中に、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下含有される。
【0108】
また、第1フィラー配合層222のインク受理性を向上させるために、親水性ウレタンアクリレートオリゴマーを所定量用いることも好ましい。親水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、第1フィラー配合層222を形成する塗布液中に、好ましくは、0重量%以上、10重量%以下含有される。
【0109】
さらに、第1フィラー配合層222のインク受理性を精密に制御する観点から、親水性モノマーを所定量用いることも好ましい。親水性モノマーは、第1フィラー配合層222を形成する塗布液中に、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは25重量%以上含有される。一方、親水性モノマーは、第1フィラー配合層222を形成する塗布液中に、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下含有される。
【0110】
(親水性樹脂)
フィラー配合層22に親水性樹脂を含有させ、フィラー配合層22を、第1フィラー配合層222と、第2フィラー配合層221との2層構造とする場合には、前述の材料を用いて、以下のようにすることがさらに好ましい。
まず、インクの受理性を確保する観点から、第1フィラー配合層222及び第2フィラー配合層221に含有させる親水性樹脂として、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物を用いることが好ましい。
【0111】
また、親水性樹脂は、第1フィラー配合層222中に、好ましくは1重量%以上含有される。一方、親水性樹脂は、第1フィラー配合層222中に、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下含有される。
親水性樹脂は、第2フィラー配合層221中に、好ましくは1重量%以上含有される。一方、親水性樹脂は、第2フィラー配合層221中に、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下含有される。
【0112】
(膜厚)
第1フィラー配合層222の膜厚は、特に限定されないが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。但し、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。第1フィラー配合層222の膜厚が上記数値範囲の場合は、インク受理性を向上させやすくなる。
第2フィラー配合層221の膜厚は、特に限定されないが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。但し、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。第2フィラー配合層221の膜厚が上記数値範囲の場合は、インク受理性を向上させやすくなる。
【0113】
(10)印刷受容層以外に設けることが可能な層
本実施の形態が適用される光記録媒体100、200においては、外観上、印刷受容層20に色をつける必要がある場合には、記録再生機能層10と印刷受容層20との間に、下地層を設けてもよい。下地層としては、例えば、10重量%以上30重量%以下の酸化チタンを含む低収縮率の紫外線硬化性アクリル樹脂を含む材料を用いることができる。このような下地層は、インクを吸収する機能は有しないが、光記録媒体100,200の意匠性からは重要な機能を果たす場合がある。下地層の材料の具体例としては、例えば、大日精化工業株式会社製セイカビームSCR−VID F29(十条ケミカル株式会社レイキュアーインク VID F29 TH と同等品)等を挙げることができる。
【0114】
(11)インク組成物
無フィラー層21を形成するための紫外線硬化性インク組成物として下記のものを用いることが好ましい。つまり、アルキル変性ポリビニルピロリドン、親水性モノマー、及び光重合性開始剤を含有する紫外線硬化性インク組成物である。さらに、上記紫外線硬化性インク組成物中に定着剤を含有させることが好ましい。定着剤の存在により、インクの定着性を向上させやすくなるからである。加えて、重合性オリゴマー成分をさらに含有することも好ましい。そして、上記紫外線硬化性インク組成物は、界面活性剤をさらに含有することが好ましい。
【0115】
アルキル変性ポリビニルピロリドン、親水性モノマー、光重合性開始剤、定着剤、重合性オリゴマー成分、及び界面活性剤の各材料については、すでに説明した通りであるので、ここでの説明は割愛する。また、上記材料のそれぞれの含有量は、無フィラー層21又は無フィラー層21を形成する塗布液中の含有量として説明したものと同様とすればよい。これは、上記紫外線硬化性インク組成物中に溶剤を用いなくてよいからである。溶剤を用いない結果、溶剤の除去に時間とエネルギーとを費やす必要がなくなるという利点が発揮されやすくなる。
【0116】
無論、上記紫外線硬化性インク組成物中に溶剤を含有させてもよい。溶剤を併用すれば、インク組成物の粘度調整を行いやすくなる。この場合においても、無フィラー層21又は無フィラー層21を形成する塗布液中の各成分の含有量がそれぞれ上記説明した範囲内となるように、紫外線硬化性インク組成物中における各材料の含有量を適宜調整すればよい。
なお、上記紫外線硬化性インク組成物は、無フィラー層21を形成するために好適に用いられるものである。但し、上記紫外線硬化性インク組成物の用途は、無フィラー層21の形成のみに限られるものではない。
【0117】
2.記録再生機能層
次に、記録再生機能層の具体例について説明する。
図1〜図3においては、基板面入射型の光記録媒体(CD−R)100、200に基づき、記録再生機能層10の説明を行ったが、記録再生機能層10の層構成はこれに限定されるものではない。即ち、記録再生機能層10は、光記録媒体が、再生専用媒体(ROM媒体)の場合と、一度の記録のみ可能な追記型媒体(Write Once媒体)の場合と、記録消去を繰り返し行える書換型媒体(ReWritable媒体)の場合とにより、それぞれの目的に応じた層構成を採用することができる。また、記録再生機能層10は、記録・再生光の入射方向によって、図1〜図3に例示したような基板面入射型と、膜面入射型とに分けることができる。
【0118】
(再生専用媒体の例)
再生専用媒体の場合、記録再生機能層は、通常、所定の大きさのピットが形成された基板と、この基板上に形成された反射層及び保護層を有している。反射層の材料としては、通常、Al、Ag、Au等の金属又はこれらの合金が用いられる。保護層の材料としては、通常、紫外線硬化性樹脂等が用いられる。また、保護層として、例えば、ポリカーボネート等の樹脂製や金属製等の板状部材を用いる場合もある。再生専用媒体の場合、基板面入射型であっても膜面入射型であっても、層構成は同一となる。
【0119】
再生専用の媒体の場合、記録再生機能層は、通常、スパッタ法により基板上に反射層を成膜し、次に、反射層上に塗布された紫外線硬化性樹脂を硬化させて保護層が形成される。また、保護層として板状部材を用いる場合には、これら板状部材は接着剤により反射層上に接着される。
【0120】
(追記型の媒体の例1)
追記型の媒体で膜面入射型の媒体においては、記録再生機能層は、通常、基板上に、反射層、記録層、及び保護層をこの順に設けることによって得られる。ここで、記録層と保護層との間に無機材料(例えば、ZnS/SiO)で形成されるバッファー層を設けてもよい。
一方、追記型の媒体で基板面入射型の媒体においては、記録再生機能層は、通常、基板上に、記録層、反射層、保護層をこの順に設けることによって得られる。
【0121】
反射層の材料としては、通常、Al、Ag、Au等の金属又は合金が用いられる。保護層の材料としては、通常、紫外線硬化性樹脂が用いられる。また、保護層として、樹脂(例えば、ポリカーボネート)や金属等の板状の部材を用いる場合もある。反射層及び保護層の形成方法は、再生専用の媒体と同様とすればよい。なお、保護層に樹脂(例えば、ポリカーボネート)や金属等の板状の部材を用いる場合には、これら部材を接着剤を用いて、記録層、バッファー層、又は、反射層に接着すればよい。
【0122】
上記追記型の媒体における記録層の材料としては、通常、有機色素が用いられる。このような有機色素としては、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素など)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素などが挙げられる。特に含金属アゾ系色素は、耐久性および耐光性に優れているため好ましい。
【0123】
有機色素により記録層を形成する場合は、通常、有機色素を適当な溶媒に溶解した溶液によるスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート等の塗布方法で成膜される。この際、溶媒としては、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ溶媒、テトロフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のパーフルオロアルキルアルコール溶媒、乳酸メチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシエチル溶媒が好適に使用される。
【0124】
記録層の厚さは、記録方法等により適した膜厚が異なるため、特に限定されないが、十分な変調度を得るために、通常、5nm以上、好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは20nm以上である。但し、光を透過させる必要があるため、記録層の厚さは、通常3μm以下であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。
【0125】
(追記型の媒体の例2)
追記型の媒体で膜面入射型の媒体における他の具体例においては、記録再生機能層が、通常、基板上に、反射層、誘電体層、記録層、誘電体層、及び保護層をこの順に設けることによって得られる。一方、追記型の媒体で基板面入射型の媒体における他の具体例においては、記録再生機能層が、通常、基板上に、誘電体層、記録層、誘電体層、反射層、及び保護層をこの順に設けることによって得られる。
【0126】
反射層の材料としては、通常、Al、Ag、Au等の金属又は合金が用いられる。保護層の材料としては、通常、紫外線硬化性樹脂が用いられる。また、保護層として、樹脂(例えば、ポリカーボネート)や金属等の板状の部材を用いる場合もある。反射層及び保護層の形成方法は、再生専用の媒体と同様とすればよい。
誘電体層の材料としては、通常、無機材料(代表的には、ZnS/SiO)が用いられる。誘電体層は、通常、スパッタリングすることによって形成される。
【0127】
記録層は、通常、無機材料(例えば、Ge・Te、Ge・Sb・Teの様なカルコゲン系合金)が用いられる。記録層は、通常、スパッタリングによって形成される。記録層の膜厚は、通常1nm〜50nm程度とされる。
【0128】
(書き換え可能型の媒体の例1)
書き換え可能型の媒体で膜面入射型の媒体においては、記録再生機能層が、通常、基板上に、反射層、誘電体層、記録層、誘電体層、及び保護層をこの順に設けることによって得られる。一方、書き換え可能型の媒体で基板面入射型の媒体においては、記録再生機能層が、通常、基板上に、誘電体層、記録層、誘電体層、反射層、及び保護層をこの順に設けることによって得られる。
【0129】
反射層、誘電体層、記録層、及び保護層としては、上記追記型の媒体の例2と同様にすればよい。但し、記録層は、記録・消去を可逆的に行えるような材料とする必要がある。このような材料としては、例えば、SbTe系、GeTe系、GeSbTe系、InSbTe系、AgSbTe系、AgInSbTe系、GeSb系、GeSbSn系、InGeSbTe系、InGeSbSnTe系等の材料が挙げられる。これらの中でも、結晶化速度を高めるために、記録層にSbを主成分とする組成を用いることが好ましい。
【0130】
(書き換え可能型の媒体の例2)
書き換え可能型の媒体としての他の具体例として、光磁気記録媒体(MOディスク)を挙げることもができる。
【0131】
(共通事項)
記録再生機能層を構成する基板の材料としては、通常、適度な加工性と剛性を有するプラスチック、金属、ガラス等が挙げられる。光記録媒体が基板面入射型の場合は、基板の材料として、入射する光に対して透明である光透過性材料が用いられる。一方、膜面入射型の光記録媒体では基板は入射するレーザ光に対して透明である必要はない。プラスチック材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0132】
基板の厚さは、0.5mm〜1.2mm程度とするのが好ましい。尚、CD型媒体の場合は、通常、厚さ1.2mmの基板が使用される。また、DVD型媒体の場合は、表面に所定のピットまたはトラッキング用案内溝が形成された厚さ0.6mmの基板が使用され、これに厚さ0.6mmのダミー基板を貼り合わせて調製される。
【0133】
基板表面には、通常、所定のトラックピッチのトラッキング用案内溝が形成されている。トラックピッチは、記録再生光の波長により異なり、CD系光記録媒体では、通常1.5μm〜1.6μmである。また、DVD系光記録媒体では、通常0.7μm〜0.8μmである。青色レーザ用光記録媒体では、通常0.2μm〜0.5μmである。トラッキング用案内溝の溝深さは、CD系光記録媒体は、通常10nm〜300nmである。DVD系光記録媒体では、通常10nm〜200nmである。青色レーザ用光記録媒体では、通常10nm〜200nmである。
【0134】
基板は、プラスチック材料を用いる場合は、射出成型等により、円盤状の形状と表面の案内溝が一工程で形成される。金属、ガラス等を用いる場合は、表面に設けられた光硬化性または熱硬化性の薄い樹脂層に溝が形成されている。
また、記録再生機能層には、記録再生領域が設定されている。記録再生機能層が中心孔を有する平板の環状形状の場合は、記録再生領域は、通常、内周径よりも大きい内径と外周径よりも小さい外径との範囲内に設けられる。
【0135】
(その他)
なお、上記「再生専用媒体の例」、「追記型の媒体の例1」、「追記型の媒体の例2」、及び「書き換え可能型の媒体の例1」においては、記録容量向上の観点から、記録層を複数設けることも行われる。記録層を複数設ける場合、記録容量を考慮し、記録層の数は、通常2層以上、好ましくは3層以上とする。一方、記録層の数は、通常5層以下とする。
【実施例】
【0136】
以下に実施例を挙げて、本実施の形態をより具体的に説明する。尚、本実施の形態は、実施例に限定されるものではない。また、実施例、比較例及び表中の部又は%は、特に断らない限り総て重量基準である。
(1)光記録媒体の調製
射出成形により、幅0.45μm、深さ155nmのグルーブを有し、厚さ1.2mmのポリカーボネート樹脂製基板を成形した。この基板上に、含金属アゾ系色素のフッ素アルコール溶液をスピンコートにより塗布し、90℃で15分間乾燥して、厚さ70nmの記録層を形成した。次に、この記録層上に、銀Agをスパッタリングして、厚さ70nmの反射層を形成した。さらにこの反射層の上に、アクリレート系モノマーを主体にした紫外線硬化性樹脂(大日本インキ株式会社製「SD―394」)をスピンコートで塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化させ、厚さ7μmの保護層を形成し、記録再生機能層(この例では、CD−R)を作製した。
【0137】
次に、表1に示すように、予め調製した所定の組成の樹脂組成物をCD−Rの保護層上に塗布し、第1フィラー配合層、第2フィラー配合層、無フィラー層からなる印刷受容層を形成し、評価用の光記録媒体を調製した。また、比較のため、無フィラー層を設けない光記録媒体も調製した。また、必要に応じて、CD−Rの保護層と第1フィラー配合層との間に下地層を設けた。さらに、第1フィラー配合層と第2フィラー配合層とを一層構造とすることも行った。
【0138】
後述の実施例7においては、印刷受容層の形成に先立ち、下地層をCD−Rの保護層表面に設けた。下地層の材料は、十条ケミカル株式会社製のレイキュアーインクVID F29 THを用いた(表3中において「F29」と表記している。)。下地層の形成条件は以下の通りである。すなわち、下地層の材料を、CD−Rの保護層表面に、メッシュカウント300のスクリーンを用いるスクリーン印刷法により樹脂組成物を塗布し、エネルギー300mJ/cmの紫外線を照射して硬化させた。
【0139】
一方、後述の実施例7以外では、第1フィラー配合層は、CD−Rの保護層表面に、メッシュカウント300のスクリーンを用いるスクリーン印刷法により樹脂組成物を塗布し、エネルギー300mJ/cmの紫外線を照射して硬化させた。ここで、後述の実施例6の第1フィラー配合層は、メッシュカウント350のスクリーンを用いた。
【0140】
第2フィラー配合層は、第1フィラー配合層上に、第1フィラー配合層と同一条件で所定の樹脂組成物を塗布し、硬化を行った。ここで、後述の実施例6の第2フィラー配合層は、メッシュカウント420のスクリーンを用いた。また、後述の実施例7では、第2フィラー配合層を設けなかった。つまり、実施例7は、フィラー配合層を1層構成とした実験となっている。
【0141】
無フィラー層は、第2フィラー配合層上に、メッシュカウント420のスクリーンを用いるスクリーン印刷法で所定の樹脂組成物を塗布し、エネルギー300mJ/cmの紫外線を照射して硬化させた。
各層を形成する際の樹脂組成物を塗布してから紫外線を照射して硬化させるまでの時間(レベリング時間)を約3秒又は約15秒として行った。
【0142】
【表1】

【0143】
(2)光沢度の測定
所定の光沢度計(日本電色工業株式会社製:光沢度計PG−1M)を用い、JIS Z8741(ISO2813、ASTMD523,DIN67530)に準拠して、評価用の光記録媒体に形成された、印刷受容層表面の光沢を測定した。20°入射角の光沢度で評価した。
【0144】
(3)表面粗度の測定
所定の表面粗度計(株式会社ミツトヨ製:表面粗度計サーフテストSJ−201P)を用い、JIS B0601に準拠した方法で、光記録媒体表面の表面粗さRa(算術平均粗さ)を測定した。
【0145】
(4)インク受容性の評価
(a)インクの滲みの評価
インクジェット印刷用プリンター(Primera社製:SignaturePro)を用いて、評価用の光記録媒体の印刷受容層に、表2に示すように、4色のインク(黒、シアン、マジェンタ、黄)を用いた6通りの組合せの印刷を行った。印刷受容層には、図4に示すように、10mm四方の外升の色(外升色)と、この外升の中に設けた5mm四方の内升の色(内升色)とが、それぞれ反対色になるように印刷した。外升色と内升色は接触していて、二色が混ざり易く、インクの滲みが大きくなり易い様にしている。合計12通りの組み合わせの升が出来るので、それぞれの外升、内升の境界を目視で観察して、以下の基準に基づき滲みの大きさを評価した。
〇:インクの滲みが観測されない
△:インクの滲みがわずかに観測される
×:インクの滲みが観測される
【0146】
【表2】

【0147】
(b)インク定着性の評価
前述した「インクの滲みの評価」と同じ方法で、評価用の光記録媒体の印刷受容層にインクジェット印刷を行い、印刷後、25℃、50%湿度中で24時間乾燥し、さらに30℃、90%湿度環境中に24時間静置した後、前述した「インクの滲みの評価」と同じ方法によりインクの滲みを評価した。インクの滲みが小さいほど、インク定着性が良好である。
〇:インク定着性が良好
×:インク定着性が不良
【0148】
(c)インクの乾燥性の評価
インクジェット印刷用プリンター(Primera社製:SignaturePro)を用いて、評価用の光記録媒体の印刷受容層表面に、4色のインク(黒、シアン、マジェンタ、黄)を用いて、それぞれ12mm四方の正方形を印刷する。印刷終了後30秒、1分、3分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分間放置し、それぞれの時間の経過後に、印刷された部分に普通紙(Epsonインクジェット両面上質普通紙KA4250NPD)を載せ、その上から指で約2kgの力で3回擦り、普通紙に各色のインクが転写されているかを目視で確認する。各色の、インクが転写されなくなるまでの時間を乾燥時間として、4色の乾燥時間の合計が30分以内のものを乾燥性良好(〇)とし、30分以上のものを不良(×)とした。
【0149】
(5)印刷受容層の厚さの測定
予め調製した記録再生機能層の厚さを測定し、次に、記録再生機能層上に印刷受容層を形成して調製した評価用の光記録媒体の厚さを測定し、光記録媒体の厚さと記録再生機能層の厚さとの差を印刷受容層の塗布厚さとした。厚さの測定は、デジタルマイクロメータ(ソニー株式会社製)を用いた。
また、印刷受容層を構成する各層それぞれの膜厚を確認するために、以下の実験を行った。つまり、印刷受容層を形成する場合と同一の塗布・硬化条件で各層を単層で設けた。そして、これら単層の膜厚をそれぞれ測定した。結果を表3に示す。各層それぞれの合計値は、印刷受容層の全体膜厚から、−4μm〜4μm程度ずれる値となった。
【0150】
(実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例3)
表1に示した樹脂組成物をそれぞれ用いて、表3に示す組成の印刷受容層を形成した評価用光記録媒体について、それぞれ、光沢度、表面粗さ(Ra)、インク滲み、インク定着性、インク乾燥性、印刷受容層の厚さを測定した。結果を表3に示す。
【0151】
【表3】

【0152】
表3に示す結果から、記録再生機能層であるCD−Rの、記録再生光が入射する側とは反対側の面に、所定の印刷受容層を形成した光記録媒体(実施例1〜実施例8)は、印刷受容層と記録再生機能層との接着性を確保しつつ、印刷受容層の高い光沢度が得られることがわかる。加えて、良好な印刷特性も得られることが分かる。なお、実施例6、7の光記録媒体は、定着性が不十分な結果となった。これは、印刷受容層の膜厚を薄く形成したためと考えられる。従って、これら実施例においても、印刷受容層の膜厚を厚くすることにより、定着性の改良がなされると予想される。
【0153】
一方、光記録媒体の水性インクにより印刷が行われる表面に、有機フィラーまたは無機フィラーを配合しない無フィラー層を形成しない場合(比較例1〜比較例2)は、印刷受容層の光沢度が得られないことが分かる。また、無フィラー層にフィラーを添加すると、印刷受容層表面の光沢性が不十分となることが分かる(比較例3)。
【0154】
以上説明したように、本発明が適用される光記録媒体は、記録再生機能層の記録再生光が入射する側とは反対側の面に、所定の樹脂組成物を用いた印刷受容層を有し、印刷受容層と記録再生機能層との接着性を確保しつつ、印刷受容層の高い光沢度及び良好な印刷特性が得ることができる。
【符号の説明】
【0155】
10…記録再生機能層、11…基板、12…情報記録層、20…印刷受容層、21…無フィラー層、22…フィラー配合層、30…レーザ光、100,200…光記録媒体、111…トラッキング用案内溝、121…記録層、122…反射層、123…保護層、222…第1フィラー配合層、221…第2フィラー配合層、12F…保護層表面、22F…フィラー配合層表面、21F…無フィラー層表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル変性ポリビニルピロリドン、親水性モノマー、及び光重合性開始剤を含有することを特徴とする紫外線硬化性インク組成物。
【請求項2】
前記インク組成物が、定着剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化性インク組成物。
【請求項3】
前記インク組成物が、重合性オリゴマー成分をさらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線硬化性インク組成物。
【請求項4】
前記インク組成物が、界面活性剤をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の紫外線硬化性インク組成物。
【請求項5】
アルキル変性ポリビニルピロリドンを5重量%以上、50重量%以下含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の紫外線硬化性インク組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−102825(P2010−102825A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25697(P2010−25697)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【分割の表示】特願2006−210721(P2006−210721)の分割
【原出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【出願人】(392008024)十条ケミカル株式会社 (10)
【Fターム(参考)】