説明

細幅ウェブの巻き取り方法及び同巻き取り製品

【課題】広幅ウェブからスリットされた特に幅が、5.0mm以下であるような細幅ウェブを、レコード巻きの態様で長尺に巻いた巻き取り製品の製作提供を可能にする。
【解決手段】巻き取り張力T及び巻き取り速度Vを下記の式(イ)(ロ)の各目標値Ts及びVsの±10%以内に制御した低張力、高速の条件下で細幅ウェブの巻き取りを行う。張力目標値Ts=f(t)×To・・・式(イ)、速度目標値Vs=aW++b・・・・・・式(ロ)、但し、t・・・ウェブ厚み(μm)、W・・・ウェブ幅(mm)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂フィルム、金属箔、不織布、あるいはそれらの複合材料等からなる細幅ウェブの巻き取り方法及び巻き取り製品に関する。
【0002】
更に詳しくは、例えば厚さが2〜250μmであるような稀薄材料の広幅な原反ウェブを、長尺の原反ロールから繰出してスリッターで幅方向に切断し、例えば幅が0.5〜10.0mmであるような多数条の狭幅テープ状とした細幅ウェブを、スリッターに付属する巻き取り装置によって個別に巻き取る巻き取り方法とそれによって製造される巻き取り製品に関する。
【背景技術】
【0003】
上記のような巻き取り製品として市場に供される長尺の細幅ウェブは、極小電子部品を組立位置に連続的に給送するキャリアテープの封止用カバーテープをはじめとして、最近では医療機器、通信機器等の精密電子機器類の絶縁用、保護用、封止用、あるいは電気抵抗用等の特殊用途のための機能材料として、益々需要が高まってきている。
【0004】
この種の細幅ウェブの巻き取り製品の巻き取り形式には、長尺の細幅ウェブを巻き芯のまわりに、その軸線と直交する径方向に一列に巻き取る一般にレコード巻き、あるいはロール巻きと称される単列巻き取り方式と、長尺の細幅ウェブを相対的にその幅より2倍以上長さを有する円筒状の巻き芯のまわりに、その軸線方向に往復移動させながら巻き取るトラバース巻きと称される巻き取り方式とがある。
【0005】
前者のレコード巻き方式は、ウェブ幅が小さくなればなるほど、巻き取り時において、更には巻き取り製品の取扱い時において、径方向に重なり合ったウェブ相互間の滑りやずれの影響で巻き崩れを生じ易く、巻き姿を安定に維持し難い。このため、従来の技術水準下では、せいぜいスリット幅が1.0mm以上のウェブしかレコード巻き製品に製造することができなかったし、その場合でも巻き長さをせいぜい100m程度のものとするのが限界であった。3mm幅のウェブの場合でも、巻き長さ500m程度以下の長さにしか安全に巻き取ることができなかった。このように、従来のレコード巻き技術では、近時ニーズの多い3.0mm幅以下のウェブ、特に1.0mm以下、具体的には0.75mm幅とか0.50mm幅の極細幅のウェブについて、これを比較的長尺に巻いた高品質のレコード巻き製品の製造、提供が阻まれていたのが実情である。
【0006】
一方、長尺の巻き取り製品の製造技術として知られる前記後者のトラバース巻きは、巻き芯に向って誘導される長尺ウェブの巻き取り位置と、巻き芯の軸方向の位置とを該軸方向に相対的に移動させながら細幅ウェブをスパイラル状に、かつ軸方向に繰返し反転往復させながら巻き取るものであり、多くの場合、一巻き毎に隣り合うウェブの一部を重ね合わせるようにして巻き取る、所謂ラップ巻きの態様で上記巻き取りが行われるものである。このトラバース巻きの技術によれば、確かに巻き取り製品の長尺化の要請には対応しうるものの、反面次のような問題が派生する。
【0007】
即ち、トラバース巻きでは、先行して巻き取られたウェブ層の外周面にウェブ厚さに相当する僅かの段差部分を生じる。そして、その上に更に次の新たなウェブの巻き層が形成されることになる。また一巻き毎にウェブの一側縁部が隣接する既に巻き付けられたウェブの他側縁部と重なり合うことになる。このため、ウェブの幅方向に僅かであっても有害な歪変形を生じ易い。のみならず、トラバース巻きの場合の宿命ともいうべき長さ方向におけるウェブの曲がり変形、そして更にはトラバース巻きの折返し部分、即ちターニングポイントの部分で生じるウェブの両側縁の相対的な伸びの変化に基づくうねりや皺等の影響で、ウェブの長さ方向の真直性、平面性が損なわれ易い。このような真直性や平面性の低下は、例えばICチップキャリアのカバーテープとしての用途では、キャリアテープに対するシール性の低下という重大な欠陥につながる。また各種高機能材テープとしての用途にあっては、被着体への配設位置精度の低下、被着体表面への密着性の低下等の品質特性の欠陥につながる。
【0008】
一方、従来から長尺細幅ウェブの巻き取り製品を使用している各種産業分野において、既設のウェブ繰り出し設備におけるウェブロール懸架台は、一般的なレコード巻き製品に対応した、最大25.5mmのウェブロールに対応しうるものとされているのが普通である。ところがこの既存の設備では、一般的に軸方向の長さが25.5mmを超えることになるトラバース巻きの製品では適用できない。このような事情からも既存の設備をそのまま使用しうるレコード巻き態様の高品質を維持した細幅ウェブ巻き取り製品の市場提供については、益々強い市場ニーズが存在するところであった。
【0009】
従来、上記のような品質特性上の問題点、あるいは市場要請の観点から、下記特許文献1,2に示されるように、レコード巻きの態様を採用して高い品質特性の維持をはかりながら、既存の繰出し設備をそのまま使用して作業効率の良いウェブの準連続的な繰出しを可能なものとするべく、単一の巻き芯に、複数条の細幅ウェブを互いに隙間なくかつ独立した状態でロール状に巻き重ねた集合巻き、ないし多列巻きの巻き取り製品とすることが提案されている。
【0010】
しかしながら、このような先行提案技術による多列巻きウェブロールでは、その使用に際して、隣接するウェブ列間の相互干渉の為にウェブの繰出しが必ずしも円滑に行われ難い。また粘着層を有するウェブでは適用できない。更には繰出しウェブ列の切り替えに余計な作業上の手間を要する。これらの問題点のために、実際には全く実用化されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−167528号公報(請求項1、図1)
【特許文献2】特開2006−151523号公報(請求項1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような技術的背景のもとにおいて、殊にスリット幅が5mm以下、特に3mm以下、更には1.0mm以下であるような極細幅の、しかも時として抗張強力の小さい、変形し易い材質のウェブである場合においても、その品質を低下させることなく高位に維持しつつ、レコード巻きないし単列ロール巻きの態様の製品として、しかも従来技術の達成範囲を大きく超越した長尺巻きの製品として市場提供することを可能とする、スリットされた細幅ウェブの巻き取り技術、及びそれによって製造される巻き取り製品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の目的において、過去の長年に亘る各種ウェブの精密スリット加工の技術経験を生かして鋭意実験と研究を繰返したところ、偶然の発見とも言うべき事象から、従来の経験則上技術常識とされてきた慣用的な巻き取り条件に対し、これと大きく隔絶した特異な条件で巻き取ることにより、極細幅のウェブでも極めて長尺に、しかも安定した巻き姿の保持を可能としつつレコード巻きないしロール巻きの態様で巻き取ることが可能となることを見出すに至り、本発明を完成し得たものである。
【0014】
ちなみに、従来技術におけるスリッター加工のレコード巻きの場合の標準的な巻き取り条件としては、例えばウェブ幅(スリット幅)3mmの細幅ウェブの場合、スリットされた単一の細幅ウェブに付与する巻き取り時張力としては2〜3kg、巻き取り速度としては9〜12m/min程度の条件が採用されていた。
【0015】
これに対し、本発明においては、張力において従来技術の4〜5%程度、巻き取り速度において5倍以上の、いわば超低張力、超高速の巻き取り条件を採用することにより、前記目的の達成を実現し得たものである。
【0016】
そこで、本発明は具体的には、以下の手段を提供する。
【0017】
[1]広幅ウェブをスリットして得られる細幅ウェブを、それぞれ分離して各独立に、個別の巻き取りコア上に巻き取るに際し、
細幅ウェブを、巻き取りコアの軸線と直交する径方向に一列に重ねてロール状に巻き取るものとすると共に、
巻き取り時に個別の細幅ウェブに付与する張力(T)及び巻き取り速度(V)の各目標値(Ts)および(Vs)を、それぞれ下記の式(イ)(ロ)で求められる値とし、
Ts=f(t)×To・・・・・式(イ)
Vs=aW+b・・・・・・・式(ロ)
但し、 Ts・・・張力目標値(g)
Vs・・・巻き取り速度目標値(m/min)
t ・・・ウェブ厚み(μm)
W ・・・ウェブ幅(mm)
f(t)・・t<25μmのとき、f(t)=0.03t
t≧25μmのとき、f(t)=0.01t+0.50
To・・・W<5mmのとき、 To=26.67W+16.665
W≧5mmのとき、 To=30W
a・b・・0.5mm≦W<0.75mmのとき、a=80, b=−35
0.75mm≦W<1.0mmのとき、a=60, b=−20
1.0mm≦W<2.0mmのとき、 a=10, b=30
2.0mm≦W<3.0mmのとき、 a=5, b=40
3.0mm≦W≦10mmのとき、 a=2.5, b=47.5
巻き取り時に実際に付与する張力(T)及び巻き取り速度(V)を前記各目標値(Ts)及び(Vs)の±10%以内の範囲に設定して前記巻き取りを行うことを特徴とする細幅ウェブの巻き取り方法。
【0018】
[2]前記巻き取りを、巻き始めから巻き終りまで、終始一定の張力(T)及び巻き取り速度(V)で行う前項[1]に記載の細幅ウェブの巻き取り方法。
【0019】
[3]細幅ウェブは、幅(W)が0.5〜10.0mm、厚さ(t)が2〜250μmの範囲である前項[1]または[2]に記載の細幅ウェブの巻き取り方法。
【0020】
[4]広幅ウェブをスリットして得られる細幅ウェブを、それぞれ分離して各独立に、個別の巻き取りコア上に巻き取るに際し、
細幅ウェブを、巻き取りコアの軸線と直交する径方向に一列に重ねてロール状に巻き取るものとすると共に、
上記巻き取り時に個別の細幅ウェブに付与する巻き取り張力(T)及び巻き取り速度(V)を、下記の式(ハ)−1)〜7)及び式(ニ)−1)〜7)に設定して上記巻き取りを行うことを特徴とする細幅ウェブの巻き取り方法。
テープ幅(W)が、
0.5mm≦W<0.75mmのとき、
T=8.1〜76.6g・・・・(ハ)−1)
V=4.5〜27.5m/min・(ニ)−1)
0.75mm≦W<1.0mmのとき、
T=9.9〜90.6g・・・・(ハ)−2)
V=22.5〜44.0m/min(ニ)−2)
1.0mm≦W<2.0mmのとき、
T=11.7〜146.3g・・(ハ)−3)
V=36.0〜55.0m/min(ニ)−3)
2.0mm≦W<3.0mmのとき、
T=18.9〜202.0g・・(ハ)−4)
V=45.0〜60.5m/min(ニ)−4)
3.0mm≦W≦5.0mmのとき、
T=26.1〜313.5g・・(ハ)−5)
V=49.5〜66.0m/min(ニ)−5)
5.0mm≦W<7.0mmのとき、
T=40.5〜438.9g・・(ハ)−6)
V=54.0〜71.5m/min(ニ)−6)
7.0mm≦W≦10.0mmのとき、
T=56.7〜627.0g・・(ハ)−7)
V=58.5〜79.8m/min(ニ)−7)
【0021】
[5]前記巻き取りを、巻き始めから巻き終りまで、終始一定の張力(T)及び巻き取り速度(V)で行う前項[4]に記載の細幅ウェブの巻き取り方法。
【0022】
[6]細幅ウェブは、幅(W)が0.5〜10.0mm、厚さが2〜250μmの範囲である前項[4]または[5]に記載の細幅ウェブの巻き取り方法。
【0023】
[7]前項[1]〜[6]のいずれか1項に記載の巻き取り方法によって製造された細幅ウェブの巻き取り製品。
【発明の効果】
【0024】
本発明による前記[1]項に記載の巻き取り方法においては、従来技術では困難ないし不可能であったようなレコード巻きによる細幅ウェブの長尺巻き取り製品の製造と市場提供を可能にする。
【0025】
即ち、1つには、従来技術ではレコード巻きによる巻き取りが困難であったような、ウェブ幅が1.0mm未満の極めて細幅のウェブについても、超低張力、超高速の巻き取りにより、巻き取りコア上の半径方向に直線状に安定して重ね巻きすることが可能になる。ひいてはレコード巻き製品として製造することが可能になる。また、幅1.0mm以上の細幅ウェブについては、従来技術では到底不可能であったような数千メートルにも及ぶ長尺巻きの巻き取り製品の製造を可能にする。
【0026】
しかも、本発明の巻き取り方法によれば、細幅ウェブを巻き取コアのまわりにその軸線と直交する径方向に直線状にかつ一列に重ねてロール状に巻き取るレコード巻きの態様によるものであるから、前述したトラバース巻きによる場合のような品質低下要因を内包せず、変形のない、高品質でしかも長期保存性に優れた巻き取り製品を製造することができる。
【0027】
また巻き取り時に細幅ウェブに負荷する張力を、極めて低い超低張力のもとに巻き取るものとしていることにより、ウェブの材質が抗張力の小さい、あるいは比較的脆弱な材質からなるものである場合にあっても、伸びによる有害な内部応力の残存や、幅方向の寸法変化を生じさせることなく、細幅ウェブに高品質、高精度を維持した巻き取り製品を製作提供することができる。
【0028】
更には、従来技術との比較では超高速ともいうべき巻き取り条件下で巻き取りを行なうものであるから、当然ながら巻き取り製品の製造能率が良く、生産性を大幅に向上してスリット加工製品の製造コストのかなりのコストダウンをはかることができる。
【0029】
また、前項[2]に記載するように、巻き始めから巻き終わりまで、終始一定の張力及び巻き取り速度を維持して巻き取りを行うことで、前記[1]項に記載した巻き取り方法による優れた作用効果を一層確実に達成することができる。
【0030】
また、前項[3]に記載されるように、幅が0.5〜10.0mm、厚さが2〜250μmであるような細幅ウェブを巻き取り対象物とするとき、本発明はその適用効果を有効に享受することができる。特に、幅が3.0mm以下、厚さが4〜200μmであるような細幅ウェブに対しては、最大に適用効果を享受することができる。
【0031】
前項[4]に記載の巻き取り方法は、前記[1]項に記載の巻き取り条件の巻き取り張力及び巻き取り速度を、式(イ)(ロ)に基づく具体的な数値範囲で特定したものであり、前記[1]項に記載の発明と同様の作用効果を実現する。
【0032】
前項[4]に従属する前項[5][6]に記載の発明の作用効果もまた、前項[2][3]に準じる。
【0033】
前項[7]に記載の発明は、前項[1]〜[6]項のいずれか1項に記載の方法によって製造された巻き取り製品であることを特定するものであり、使用に際し、従来既存の設備における一般的なレコード巻き製品用の繰出し装置をそのまま使用しうるレコード巻き態様の巻き取り製品でありながら、品質特性に優れ、しかも形態安定性が良好で取扱い性にも優れた長尺の巻き取り製品の提供を可能とし、近時の強い市場ニーズに応えて大いなる満足を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の適用による細幅ウェブの巻き取り製品の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、広幅ウェブを製品幅にスリットして巻き取るスリッターの全体構成の概要を示す構成図である。
【図3】細幅ウェブの巻き取り装置の一部概要を示す斜視図である。
【図4】細幅ウェブの巻き取り装置の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して以下に説明する。
【0036】
先ず、図1は、本発明による細幅ウェブ(3)の長尺巻き取り製品(1)の一例を示すものである。該巻き取り製品(1)は、環状の巻き取りコア(2)の周りに、細幅ウェブ(3)がコア(2)の軸線と直交する径方向に一直線状に、かつ一列に巻き重ねられたレコード巻き態様のものである。上記巻き取りコア(2)は、例えば内径76.2mm、肉厚3.0mm、外径82.2mmで、軸線方向の長さが細幅ウェブ(3)の幅と同等またはそれより僅かに大きいものとなされた極く短い円筒状のものである。1つの巻き取り製品(1)において上記細幅ウェブ(3)は、1つの巻き取コア(2)上に数百から数千メートルの長さで巻き取られたものとなされ、その巻き径(L)は、取扱い上の安全性も考慮して概ね100mm〜500mmの範囲に設定されるものである。
【0037】
上記の巻き取り製品(1)は、図2に示すようなスリッターによって製造されるものである。図2において、(10)は原反ウェブの巻出し部、(11)はスリット部、(12)は巻き取り部を示す。広幅の原反ウェブ(3A)は、巻出し部(10)に懸架された原反ロール(R1)から繰り出され、いくつかのガイドローラ(13)を経由してスリット部(11)のカッターローラユニット(14)で幅方向に細断される。そして、この切断された多数条の細幅ウェブ(3)は、ピンチロール(16)を経て上下及び前後に分離されたのち、巻き取り部(12)に装備した多数の巻き取り装置(15)によって、各独立に、個別の巻き取りコア(2)上にレコード巻きの態様で巻き取られる。そして所定長さの巻き取りを完了した巻き取りロール(R2)をもって所期する長尺の巻き取り製品(1)に製造されるものである。
【0038】
図3には、上記巻き取り装置(15)の概要を示している。本発明を適用する巻き取り装置(15)は、個別に、細幅ウェブ(3)に付与する巻き取り時張力の厳密な制御機構を備えるものであることが必要である。図3に示す好ましい巻き取り装置の一例では、張力制御機構としてウェイトバランス方式のダンサーローラ(16)と、溝付きの位置決めガイドローラ(17)を装備する。
【0039】
巻き取り中、巻き取りコア(2)にはフリクショントルクによって予め設定された所定の適正な巻き取りトルクが与えられる。しかしながら、実際上、巻き取り中の細幅ウェブ(3)には、その長さ方向における僅かな肉厚のバラツキ、あるいは給送径路中の摩擦抵抗の変化、その他の種々の要因によって、不可避的に微小な、あるいは脈動的な張力の変動を生じる。このような張力変動は、細幅ウェブ(3)の安定的な巻き取り、特にレコード巻きによる巻き取りには極めて有害に作用する。
【0040】
そこで、本発明の好ましい実施形態では、上記のような巻き取り時の張力変動を抑制ないし吸収緩和する張力制御機構として、上記ダンサーローラ(16)を装備する。該ダンサーローラ(16)は、バランスウェイト(図示略)の位置調整により、細幅ウェブ(3)に付与しようとする張力値に対応する回転モーメントが与えられた揺動腕(16a)の先端に取り付けられており、巻き取りロール(R2)に近い位置で細幅ウェブ(3)が掛け回わされる。従って、図3に鎖線で示すような揺動運動を生じることで、細幅ウェブ(3)の巻き取り時張力の変動を吸収し、これを一定に保つ役割を担う。
【0041】
張力制御機構は、上記のようなダンサーローラ(16)を使用するものに限定されるものではない。しかしながら、ダンサーローラ方式は、構造が簡単でモーメントの大きさの調整作業もウェイトの移動によって容易になしうること、また張力変動に対する応答感受性が良く、張力の微小変動にも敏感に感応して、張力を一定に保つ作用に優れること、等の点で最も有利なものと考えられる。
【0042】
一方、位置決めガイドローラ(17)は、ダンサーローラ(16)を通過した細幅ウェブ(3)を、巻き取りロール(R2)に至る直前位置で、巻き取り位置に正確に誘導するための厳密な位置規制作用を担うものであり、外周面に細幅ウェブ(3)の幅に対応する案内溝(17a)を有し、該案内溝(17a)内を細幅ウェブ(3)がガイドローラ(17)自身の従動回転を伴いつつ導通されるものとなされている。また、本発明の実施にあたって、この位置決めガイドローラ(17)は、タッチローラのように巻き取りロール(R2)の外周面に接触するものであってはならない。これを接触させると巻き取りロール(R2)に早期の巻き崩れを生じ易い。しかも、該ガイドローラ(17)は、図4に示すように巻き取りローラ(R2)の外周面との間の距離(S)を10〜30mm程度の範囲内で常時ほぼ一定に保つように位置制御可能なものとすることが望ましい。従って、巻き取りの進行に伴う巻き取りロール(R2)の巻き径の増大に応じて、位置決めガイドローラ(17)はこれを巻き取りコア(2)の半径線に沿って外方に同調移動する移動機構を備えたものとすることが望ましい。
【0043】
次に、本発明が適用される細幅ウェブ(3)について、またその好ましい巻き取りのための本発明の本質的要素をなす巻き取り条件、つまり第1に巻き取り張力の設定と制御、第2に巻き取り速度の設定と制御の各事項について、以下に順次説明する。
【0044】
[細幅ウェブ(3)]
本発明が適用される巻き取り対象物たる細幅ウェブ(3)は、電子部品のキャリアテープ封止用のカバーテープをはじめとして、各種機能材テープのすべてを含むものであり、特に、原反の広幅ウェブをスリッターで幅方向にスリットして得られる厚さ2〜250μm、幅0.5〜10.0mmの範囲の細幅ウェブを発明の有効な適用対象とする。
【0045】
但し、ウェブ幅(スリット幅)が5.0mmを超えるような比較的広幅でかつ強度の大きいウェブである場合には、従来技術に準じる巻き取り条件で巻き取りを行っても、十分に実用に供しうる長尺レコード巻きの製品となしうる場合が多い。
【0046】
このことから、本発明の適用は、特に、ウェブ幅(W)が5.0mm以下であるような細幅ウェブにおいて、更には幅(W)が3.0mm以下であるようないわば極狭幅、極細幅のウェブである場合において有利であり、顕著な効果を享受しうる。従って好ましい適用対象物は、ウェブ幅が5.0mm以下、特に3.0mm以下、更には従来技術ではレコード巻きによる巻き取り自体が著しく困難または不可能であった2.0mm以下の細幅ウェブとする。
【0047】
その代表的な材料としては、従来からカバーテープとして市場提供されているような片面に熱融着層を有するポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、あるいは塩化ビニル系等の単層フィルムまたは複合積層フィルムを挙げることができるが、その他機能材テープとして、前述したように医療機器、精密計測機器、通信機器類の絶縁用、保護用、あるいは電気抵抗用等の特殊テープ類が含まれる。近時需要の多いこれらの具体的な材料のいくつかを例示すれば、PET/Al蒸着フィルム(厚さ50μm)、PET(40μm)/変性PPシーラント層(15μm)の複合フィルム(厚さ55μm)、アラミド繊維不織布(厚さ75μm)、高密度PE多孔フィルム(厚さ100μm)、PI(38μm)/粘着層(5μm)/Cu箔(25μm)の積層複合フィルム(厚さ68μm)、離型性PET(50μm)/接着層(25μm)の複合フィルム(厚さ75μm)等を挙げることができる。
【0048】
[巻き取り張力の設定と制御]
本発明において、スリットされた細幅ウェブ(3)の巻き取り時に該ウェブに付与する張力(T)は、ウェブの幅(W)および厚さ(t)との関係において、下記の式(イ)で求められる張力目標値(Ts)を基準として、その±10%以内の値に設定制御することが必要である。
【0049】
Ts=f(t)×To・・・・・式(イ)
但し、 Ts・・・設定張力目標値(g)
t・・・・ウェブ厚み(μm)
W・・・・ウェブ幅(mm)
f(t)・・t<25μmのとき、f(t)=0.03t
t≧25μmのとき、f(t)=0.01t+0.50
To・・・W<5mmのとき、 To=26.67W+16.665
W≧5mmのとき、 To=30W
【0050】
上記の式(イ)によって求められる張力目標値(Ts)は、従来技術においてレコード巻きの場合の好ましい値として慣用的に採用されていた張力値に較べると、超絶的に小さい、超低張力ともいうべき値である。
【0051】
ちなみに、スリット幅2.0mmの細幅ウェブ(片面アルミ蒸着PETフィルム、厚さ50μm)をレコード巻き態様で3インチコア上に巻き取る場合、従来技術では各細幅ウェブに対し概ね1,080g(1.08kg)の張力(T)をかけてかつ8m/min程度の巻き速度(V)で巻き取るのを慣行としていたところである。これに対し、上記式(イ)の計算によって与えられる張力目標値(Ts)は、Ts=70.0g(0.070kg)である。この値は、上記の従来技術による常識的な慣用設定張力値に較べると、実に7%にも満たない値であり、当業者のもつ予測性の範囲を大きく超えた驚くべき値である。
【0052】
多くの実験結果から得られた知見によれば、細幅ウェブに付与する張力(T)が、上記式(イ)によって求められる目標値(Ts)の90%未満(−10%未満)であるときは、いわゆる「緩巻き(ゆるまき)」に過ぎて早期に巻き崩れを生じ易い傾向があり、十分な長尺巻きを達成することができない。
【0053】
一方、上記張力(T)が、上記式(イ)によって求められる目標値(Ts)の110%を超える値(+10%超)であるときは、ウェブの材質にもよるが概して巻き取り後の細幅ウェブ(3)に変形、蛇行が残り易い傾向があり、使用時にそれらが問題となる製品においては致命的な欠陥につながるおそれがある。かつまた、ウェブの材質によっては、早期に巻き崩れを生じ、あるいは巻き取りロール(R2)の巻き姿が不均整なものになり易い傾向が見られる。
【0054】
巻き取り時に細幅ウェブ(3)に実際に付与する張力(T)の一層好ましい範囲は、張力目標値(Ts)の±7%以内、特に好ましくは±5%以内であるが、ウェブの材質を考慮し、それが比較的変形し易い材質のものである場合には上記の許容範囲(Tsの±10%の範囲)の中で低めの値に、強度に優れた材質のものである場合には、高目の値に設定する方が、より確実に安定した長尺の巻き取りを遂行できる点で好ましい。
【0055】
また、巻き取り中の全工程を通じて、ウェブに付与する張力(T)は変化させるべきではない。即ち、巻き始めから巻き終りまで、終始一定の張力(T)を維持することが好ましい。付与する張力(T)を途中で変化させると、段階的または連続的に漸増および漸減するいずれの場合であっても、巻き崩れの発生頻度が増大する。
【0056】
前記式(イ)によって求められる張力目標値(Ts)を細幅ウェブの幅(W)及び厚み(t)との関係で具体的数値で示せば下記表1に記載のとおりである。表1には上記張力目標値(Ts)の±10%の許容範囲の最大値(T:MAX)及び最小値(T:MIN)を併記する。
【0057】
【表1】

【0058】
[巻き取り速度の設定と制御]
一方、本発明において、巻き取り速度(V)は、主として細幅ウェブ(3)の幅(W)との関係で、下記の式(ロ)で求められる速度目標値(Vs)を基準として、その±10%以内の範囲に設定し制御することが必要である。
【0059】
Vs=aW+b・・・・・・・式(ロ)
但し、 Vs・・・巻き取り速度目標値(m/min)
W ・・・ウェブ幅(mm)
a・b・・0.5mm≦W<0.75mmのとき、a=80, b=−35
0.75mm≦W<1.0mmのとき、a=60, b=−20
1.0mm≦W<2.0mmのとき、 a=10, b=30
2.0mm≦W<3.0mmのとき、 a=5, b=40
3.0mm≦W≦10mmのとき、 a=2.5, b=47.5
【0060】
上記式(ロ)から判るように、巻き取り速度(V)は、主として細幅ウェブ(3)の幅(W)との関係によって決定することができる。細幅ウェブ(3)の厚み(t)の変化は、格別大きな影響を与えないので、これを無視して決定することができる。
【0061】
ところで、上記の式(ロ)によって求められる巻き取り速度目標値(Vs)は、従来、細幅ウェブをレコード巻きする場合に一般的に採用されていた慣用巻き取り速度に較べると、極めて速い、超高速ともいうべき値である。
【0062】
ちなみに、スリット幅2.0mmの細幅ウェブ(厚さ50μmのアルミ蒸着PETフィルム)を3インチコア上にレコード巻きする場合、従来の慣用技術では、前述のように概ね8m/minの速度(V)で巻き取るものとしていたところである。これに対し上記式(ロ)によって求められる巻き取り速度目標値(Vs)は、Vs=50.0m/minであり、この値は従来の慣用の巻き取り速度に較べると実に6倍を超える値である。
【0063】
多くの実験結果から得られた知見によれば、巻き取り速度(V)が、上記式(ロ)によって求められる目標値(Vs)の90%未満(−10%未満)であるときは、巻き締まりが起き易く、巻き姿が変形し易くなる。逆に110%を超える(+10%超)ときは、ウェブ表面の摩擦抵抗を超えて巻きが緩くなり、巻きくずれの発生頻度が増大する。
【0064】
巻き取り速度(V)の許容範囲は上記のとおりであるが、一層好ましい範囲は巻き取り速度目標値(Vs)の±7%以内、特に好ましくは±5%以内である。細幅ウェブ(3)の厚さ(t)及び材質を考慮し、引張り強度が比較的大きい対象物である場合には、前記許容範囲の中でやや高速に、逆に引張強度が小さい場合にはやや低速に設定する方が、より確実に安定した長尺の巻き取りを遂行できる点で好ましい。
【0065】
また、前述の張力(T)の場合と同様、巻き取り速度(V)についても、巻き取り中の全工程を通じて、終始一定の速度(V)を維持した定速巻き取りを行うことが望ましい。途中で巻き取り速度(V)を変化させると、巻き崩れの発生頻度が増大する傾向が見られる。特に、途中で速度を上げることは有害である。従って、巻き径が増大するに従って、巻き取りコア(2)の回転速度を漸減して、巻き取りロール(R2)の周速度を常時ほぼ一定になるように制御するものとすることが望ましい。
【0066】
前記の式(ロ)によって求められる速度目標値(Vs)は、これを巻き取り対象の細幅ウェブ(3)の幅(W)との関係における具体的数値で示すと、前記表1の右欄部分に記載したとおりである。速度目標値(Vs)の±10%の許容範囲の最大値(V:MAX)及び最小値(V:MIN)も表1に併記したとおりである。
【0067】
実際の巻き取りに当たっては、表1の値を参照することにより、巻き取り対象の細幅ウェブ(3)の幅(W)及び厚さ(t)から、適正な付与張力(T)値、及び巻き取り速度(V)値を簡易に求めることができる。
【実施例】
【0068】
次に、本発明の効果を検証するため、具体的な実験例とその結果について記載する。
【0069】
[実験例1〜8]
先ず、本発明による巻き取り条件の特異性とその効果を確認するために、従来の慣用技術との対比実験を行い、その結果を下記表2に示した。
【0070】
この実験例では、片面にアルミニウム蒸着を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm)の原反から、スリット幅0.50mm〜10.0mmの範囲で異なる幅にスリットした各種の細幅ウェブ(W)を巻き取り対象物とした。
【0071】
巻き取り条件とする張力(T)及び巻き取り速度(V)については、本発明による実験例1〜8では、前記式(イ)(ロ)で求められる最適の目標値(Ts)(Vs)を採用し、従来技術による実験例1〜8では、従来最も好ましいものとされていた標準的な慣用条件を採用した。
【0072】
【表2】

【0073】
尚、表2において、巻き長さ(L)(Lz)は、スリッターに付帯設備された24台の巻き取り装置(15)により、少なくとも10条以上の細幅ウェブ(3)の同時巻き取りを行い、いずれの巻き取り装置においても巻き崩れ等のトラブルを生じることなく巻き取ることができたときの巻き長さを最長の巻き長さとして示すものであり、本発明の実験例5〜8の「>」記号は、最長巻き長さが記載数値以上であったことを示すものである。巻き径の「>」記号についても同様である。
【0074】
表2の結果から明らかなように、本発明において採用される張力(T)及び巻き速度(V)は、従来の慣用条件に較べ超低張力、超高速とも言うべき特異な条件であり、その結果、特に顕著に効果があらわれるウェブ幅が5.0mm以下の細幅ウェブの場合において、従来の実に5〜17倍の巻き長さを有するレコード巻き態様の、しかも巻き姿の均整で安定した巻き取り製品を得ることができた。しかも、本発明によれば、従来技術では不可能とされてきた、ウェブ幅が1.0mm未満の、特に最近需要の見られる幅0.75mm、あるいは幅0.5mmの極細幅ウェブについてもそれなりに長尺巻きとしたレコード巻き態様の製品の製造が可能となることを確認し得た。
【0075】
[実験例9]
前記実験例1〜8と同様に従来技術との対比の目的で、実験例9の実験を行った。
【0076】
この実験例9は、巻き取り対象物として、PET40μm/変性PPシーラント層15μm(全体厚み(t)55μm)で、幅(W)2.6mmの細幅ウェブ(3)を用いた。
【0077】
なお、この細幅ウェブ(3)は、一般的にその具体的用途において僅かな変形や蛇行の発生が重大な問題になる製品(例えばカバーテープ)である。
【0078】
上記実験例9の巻き取り実験の結果を、前記の表2の最終行に併記する。
【0079】
この表2に示される結果から判るように、本発明においては実に従来技術による場合に較べ12倍以上の長尺の安定した巻き取り製品を得ることができるのはもとより、実際に使用に供する場面を想定して品質比較試験を行ったところ、本発明による製品では、従来技術による製品に較べ、細幅ウェブ(3)の長さ方向における有害な変形や蛇行の残存の極めて少ない製品であることを確認し得た。これは、巻き取り時に細幅ウェブに大きな張力をかけないことによるものと考えられる。
【0080】
[実験例10〜20]
この実験例10〜20は、巻き取り時の張力及び巻き取り速度の適正範囲を確認するものである。
【0081】
巻き取り対象物として、ポリイミド樹脂層(PI)38μm/粘着層5μm/銅箔25μmの積層フィルムで、厚さ68μm、スリット幅2.0mmの細幅ウェブ(3)を用い、これを直径3インチの巻き取りコア(2)上にレコード巻きの態様で巻き取るものとした。
【0082】
この場合、前記の式(イ)(ロ)で求められる張力目標値(Ts)及び巻き取り速度目標値(Vs)は、それぞれ、Ts=83g、Vs=50m/minである。従って、その±10%の張力(T)及び速度(V)の許容範囲はT=74.7〜91.3g、V=45〜55m/minである。
【0083】
そこで、張力(T)及び速度(V)を上記許容範囲の内外の各種に変化させて巻き取りを行ったところ、その結果は表3に示すとおりであった。
【0084】
【表3】

【0085】
同表3に示されるとおり、本発明の巻き取り条件に従う実施例(No.10〜14、17〜19)においては、製品に求められる1500m巻き、あるいは2000m巻きの長尺巻き製品を十分な余裕をもってトラブルなく安定して製造することができる一方、許容範囲から逸脱する張力(T)及び速度(V)に設定した比較例(No.11,15,16,20)においては、いずれも巻き崩れ、保形性に欠陥を生じ、良好な製品を得ることができないことを確認し得た。
【0086】
尚、表3中の評価項目である「製品の保形性」は、巻き取り製品の巻き姿の変形の有無、均整度の良否、および製品を巻き取り装置の巻き取り軸から取り外して手で持ったときに、巻き層の変形や型くずれを生じることなく、良好な形状安定性を保持しながら取り扱うことができたか否かを判定し、いずれも良好であったものを「○」印、明らかに不良であったものを「×」印、それらの中間程度であるが、製品としての実用に供するには不適
格と判断されたものを「△」印で示した。後掲の表4においても同様である。
【0087】
[実験例21〜30]
この実験例21〜30も、前記実験例と同様に張力及び巻き取り速度の適正範囲を確認するものであり、巻き取り対象物を離型性ポリエチレンテレフタレート(PET)50μm/接着層25μmの積層フィルムで、厚さ75μm、スリット幅1.0mmの極細幅ウェブ(3)としたものである。
【0088】
この巻き取り対象物(幅W=1.0mm、厚さt=75μm)の場合の、前記の式(イ)(ロ)で求められる張力目標値(Ts)及び巻き取り速度目標値(Vs)は、それぞれ、Ts=55g、Vs=40m/minである。従ってその±10%の張力(T)及び速度(V)の許容範囲はT=49.5〜60.5g、V=36〜44m/minである。
【0089】
そこで、張力(T)及び速度(V)を各種に変化させて巻き取りを行ったところ、その結果は表4に示すとおりであった。
【0090】
同表3に示されるとおり、本発明の巻き取り条件に従う実施例(No.22〜24、27〜29)においては、製品に求められる1500m巻きの製品を十分な余裕をもってトラブルなく安定して製造することができた。これに対して、許容範囲から逸脱する張力(T)及び速度(V)に設定した比較例(No.21,25,26,30)においては、いずれも巻き崩れ、保形性に欠陥を生じ、良好な製品を得ることができなかった。
【0091】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0092】
通信機器、医療機器等の精密電子機器類の絶縁用、保護用、封止用あるいは電気抵抗材等の用途に用いられる合成樹脂フィルム、不織布、金属箔、あるいはそれらの複合材料からなる幅0.5〜10mmの細幅ウェブを、レコード巻きの態様で長尺に巻いた巻き取り製品の製造に適用される。
【符号の説明】
【0093】
1・・・・巻き取り製品
2・・・・巻き取りコア
3・・・・細幅ウェブ
11・・・スリット部
12・・・巻き取り部
14・・・カッターロールユニット
15・・・巻き取り装置
16・・・ダンサーローラ
W・・・・ウェブ幅
t・・・・ウェブ厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広幅ウェブをスリットして得られる細幅ウェブを、それぞれ分離して各独立に、個別の巻き取りコア上に巻き取るに際し、
細幅ウェブを、巻き取りコアの軸線と直交する径方向に一列に重ねてロール状に巻き取るものとすると共に、
巻き取り時に個別の細幅ウェブに付与する張力(T)及び巻き取り速度(V)の各目標値(Ts)および(Vs)を、それぞれ下記の式(イ)(ロ)で求められる値とし、
Ts=f(t)×To・・・・・式(イ)
Vs=aW+b・・・・・・・式(ロ)
但し、 Ts・・・張力目標値(g)
Vs・・・巻き取り速度目標値(m/min)
t ・・・ウェブ厚み(μm)
W ・・・ウェブ幅(mm)
f(t)・・t<25μmのとき、f(t)=0.03t
t≧25μmのとき、f(t)=0.01t+0.50
To・・・W<5mmのとき、 To=26.67W+16.665
W≧5mmのとき、 To=30W
a・b・・0.5mm≦W<0.75mmのとき、a=80, b=−35
0.75mm≦W<1.0mmのとき、a=60, b=−20
1.0mm≦W<2.0mmのとき、 a=10, b=30
2.0mm≦W<3.0mmのとき、 a=5, b=40
3.0mm≦W≦10mmのとき、 a=2.5, b=47.5
巻き取り時に実際に付与する張力(T)及び巻き取り速度(V)を前記各目標値(Ts)及び(Vs)の±10%以内の範囲に設定して前記巻き取りを行うことを特徴とする細幅ウェブの巻き取り方法。
【請求項2】
前記巻き取りを、巻き始めから巻き終りまで、終始一定の張力(T)及び巻き取り速度(V)で行う請求項1に記載の細幅ウェブの巻き取り方法。
【請求項3】
細幅ウェブは、幅(W)が0.5〜10.0mm、厚さ(t)が2〜250μmの範囲である請求項1または2に記載の細幅ウェブの巻き取り方法。
【請求項4】
広幅ウェブをスリットして得られる細幅ウェブを、それぞれ分離して各独立に、個別の巻き取りコア上に巻き取るに際し、
細幅ウェブを、巻き取りコアの軸線と直交する径方向に一列に重ねてロール状に巻き取るものとすると共に、
上記巻き取り時に個別の細幅ウェブに付与する巻き取り張力(T)及び巻き取り速度(V)を、下記の式(ハ)−1)〜7)及び式(ニ)−1)〜7)に設定して上記巻き取りを行うことを特徴とする細幅ウェブの巻き取り方法。
テープ幅(W)が、
0.5mm≦W<0.75mmのとき、
T=8.1〜76.6g・・・・(ハ)−1)
V=4.5〜27.5m/min・(ニ)−1)
0.75mm≦W<1.0mmのとき、
T=9.9〜90.6g・・・・(ハ)−2)
V=22.5〜44.0m/min(ニ)−2)
1.0mm≦W<2.0mmのとき、
T=11.7〜146.3g・・(ハ)−3)
V=36.0〜55.0m/min(ニ)−3)
2.0mm≦W<3.0mmのとき、
T=18.9〜202.0g・・(ハ)−4)
V=45.0〜60.5m/min(ニ)−4)
3.0mm≦W≦5.0mmのとき、
T=26.1〜313.5g・・(ハ)−5)
V=49.5〜66.0m/min(ニ)−5)
5.0mm≦W<7.0mmのとき、
T=40.5〜438.9g・・(ハ)−6)
V=54.0〜71.5m/min(ニ)−6)
7.0mm≦W≦10.0mmのとき、
T=56.7〜627.0g・・(ハ)−7)
V=58.5〜79.8m/min(ニ)−7)
【請求項5】
前記巻き取りを、巻き始めから巻き終りまで、終始一定の張力(T)及び巻き取り速度(V)で行う請求項4に記載の細幅ウェブの巻き取り方法。
【請求項6】
細幅ウェブは、幅(W)が0.5〜10.0mm、厚さが2〜250μmの範囲である請求項4または5に記載の細幅ウェブの巻き取り方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の巻き取り方法によって製造された細幅ウェブの巻き取り製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−57306(P2011−57306A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205791(P2009−205791)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(300070941)株式会社イトウ六 (3)
【Fターム(参考)】