説明

細幅長尺テープの巻き取り製品及びその製造方法。

【課題】巻き幅Lwが例えば25.5mmと比較的短かい設定の中で、細幅長尺テープを1万〜3万メートルにも及ぶ極長尺に安定して巻き取ることができる巻取技術を提供する。
【解決手段】巻取りに際してテープ3に付与する張力Tと巻き取り速度Sとの組合せを適正に制御する。
巻取り張力は、初期設定の目標値T0を、T0=T1(W1/W+C)の式を満足させるものとし、途中の目標値Tを、T=T0(1−L/50,000)の式を満足させることを基準として設定する。
但し、T1・・・2.5mm幅テープの巻き始め時の適正張力(g/mm)
W・・・テープ幅(mm)
1・・・2.5mm
C・・・W<2.5mmのとき、C=(W−W1)/W
W=2.5mmのとき、C=0
W>2.5mmのとき、C=0.10〜0.15
L・・・巻き取りテープ長さ(m)
巻き取り速度は、巻取りの進行に伴って漸減変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉合成樹脂フィルム、金属箔不織布あるいはそれらの複合フィルム等の稀薄柔軟材料からなる細幅長尺テープの巻き取り製品及びその製造方法に関する。
【0002】
更に詳しくは、例えば厚さ15〜100μmであるような稀薄材料の広幅原反から、これをスリッターでスリットして一般的には例えば幅1.0〜15mm程度とした細幅長尺テープを、円筒状コア、即ち巻き芯の周りにトラバース巻きの態様で巻き取って、全長が数千から数万メートルにも及ぶものとした長尺テープの巻き取り製品、及びその製造のための巻き取り方法に関する。
【背景技術】
【0003】
上記のような細幅長尺テープとしては、代表的には、極小電子部品等を組立位置に連続的に供給するキャリアテープの封止用カバーテープが挙げられる。その他、最近では医療機器、通信用をはじめとする電子機器等の精密機器類の絶縁用、保護用、あるいは抵抗用等の特殊用途のための機能材料テープにも需要が高まってきている。
【0004】
この種の長尺テープは、その使用時の作業効率の向上のために、従来から数百〜数千メートルの長尺の巻き取り製品として市場に供されているところであるが、近時益々その長尺化が求められ、用途によっては10,000m、更には20,000〜30,000mにも及ぶ長尺の巻き取り製品とすることが要請されるに至っている。
【0005】
従来、この種の製品の巻取り形式としては、巻き芯のまわりに長尺テープを単列方式、即ち径方向に一列に重ねて巻き取る一般にレコード巻きと称される巻き取り方式と、長尺テープを相対的にそれより長さの長い円筒状の巻き芯の軸方向にトラバースさせながら巻き取るトラバース巻き取り方式が採用されている。
【0006】
前者のレコード巻き方式は、テープ幅が小さくなればなるほど、巻き取り時において、更には巻き取り後の取扱い時において、重なり合ったテープ相互間の滑りの影響等により巻き崩れを生じ易く、巻き姿を安定に保持し難い。このため、例えばテープ幅1.5〜2.5mの細幅のカバーテープの場合、せいぜい1,000m以下の長さしか安全に巻き取ることができず、前述のような長尺化の要請に十全に対応することができなかった。
【0007】
これに対し、下記の特許文献1,2に示されるような前述のトラバース巻き方式では、数千メートルにも及ぶ長尺の比較的安定した巻き取りが可能である。
【特許文献1】特開昭58−148143号公報(Fig2)
【特許文献2】特公昭62−60336号公報
【0008】
ところが、従来の一般的なトラバース巻きの場合、長尺化の要請には対応しうるものの、新たに次のような問題が派生していた。
【0009】
即ち、トラバース巻きは、巻き芯に向かって誘導される長尺テープの巻き取り位置と、巻き芯の軸方向の位置とを、該軸方向に相対的に移動させながらテープをスパイラル状に巻き取り、これを上記の軸方向に繰返し往復させながら巻き取るものである。そして、多くの場合、巻き姿の安定のために、一巻き毎に隣り合うテープの一部を重ね合わせるようにして巻き取る、所謂ラップ巻きの態様で上記の巻き取りが行われる。
【0010】
このため、長尺テープは、先行して巻き取られたテープ層の僅かに段差を有する外周面に新たな巻き層を形成するものとして順次巻き取られることになる。加えて、一巻き毎に側縁部が隣接するテープの他側縁部と重なり合うことになる。このため、テープの幅方向において僅かではあっても有害な歪変形を生じ易い。のみならず、トラバース巻きの宿命ともいうべき長さ方向におけるテープの曲がり変形、そして更にはテープのトラバース巻き取りの折返し部分、即ちターニングポイントの部分で生じるテープ両側縁の相対的な伸びの変化に基づくうねりや皺等の影響で、長尺テープの真直性、平面性が損なわれ易い。
【0011】
そして、このような真直性や平面性の低下は、例えばカバーテープとしての用途においてはキャリアテープに対するシール性の低下という本質的な欠陥につながる。あるいはまた各種機能材テープとしての用途においては、被着体への配設位置精度の低下、被着体表面への密着性の低下等の品質特性の欠陥につながる。
【0012】
このような問題点に対し、本発明者らは、長尺巻きの要請に対応しうるトラバース巻き方式を維持しながら、巻き崩れのおそれがなく、かつ有害なうねりや皺等の歪変形の発生を回避しうる技術として、先に、下記特許文献3に示す先行発明に係る技術を開発した。
【特許文献3】特許第3502608号公報
【0013】
この先行発明は、1巻きごとに隣り合うテープの相互間に僅かの隙間を設定しながら非ラップ巻きの態様で巻き取るものとし、しかも巻取張力及びタッチロールによる抑圧力をそれらの相対関係の中で特定の範囲に制御することにより、所期目的を達成し得たものであり、特にカバーテープの巻き取り製品の分野において大きな成果を上げ得ているものである。
【0014】
ところがここに、更に新たな別の問題が派生してきた。
【0015】
それはつまり、特にカバーテープを取扱う産業分野において、従来、該カバーテープは、前述のようなテープの歪変形の問題から、トラバース巻きではなく、単列巻きのレコード巻き製品として広く一般に市場提供されてきた経緯がある。一方、カバーテープは、テープ幅が概ね2.5mmから最大でも25.5mm以下であることから、既存のキャリアテープ封緘装置が有するカバーテープ繰り出し設備は、テープ繰出し用のテープロール懸架台の軸線方向の長さが上記テープ幅のレコード巻き製品に対応して、最大25.5mmのテープロールに対応しうるものとなされているのが普通であり、特許文献3で提案された技術で巻き取られた巻きが幅が25.5mmを超えるような製品では上記繰出し設備に適合せず、現実の場面では既存の設備が使用できない点である。
【0016】
もとより、それでは、特許文献3に示される先行発明の技術を用いて、巻き幅が25.5mm以下であるような長尺テープ巻き取り製品とすることが当然に考慮される。ところが、この場合、巻き芯の軸線方向長さが短すぎる故に、前記の先行発明技術を用いてもなお、長尺化の要請に対応しうるような数千メートルを超える長さで巻き取るものとするときは、巻き径の顕著な増大によって巻き姿が不安定なものとなり、巻き崩れが生じ易い傾向を示すことを歪み得ない。このため、特許文献3の先行発明技術を使用してもなお、長尺化の要請に十分な満足度を与えることができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記のような経緯の技術的背景の中で、巻き幅、つまり巻き芯の軸線方向の長さが25.5mm以下の短いものである場合においても、トラバース巻き、かつラップ巻きの巻き取り方式を採用して巻き崩れのない、巻き姿の極めて良好に安定した大きな巻き径の巻き取り製品とすることができ、ひいては、数千メートルから2〜3万メートルにも及ぶ長尺の巻き取り製品の提供を可能にすると共に、しかも巻き取りテープに有害なうねりや皺、幅方向の歪変形等をほとんど発生させることがなく、巻き戻して使用に供する段階でカバーテープとしてのシール性はもとより、機能材テープとしても真直性、平面性等の点でも品質特性に優れたものとなしうる、細幅長尺テープの巻き取り技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記のような目的、技術的課題のもとに、長年に亘るフィルム製品の精密スリット加工、スリットされた細幅テープの巻き取り製品の製造経験を生かして鋭意実験と研究を繰返したところ、第1には、主として巻き取り作業工程中における巻き取り張力の経時的な変化を伴う適正値の制御により、そしてまた第2には、1巻き毎に隣り合うテープの一部を重ね合わせるラップ巻きに際しての、テープ幅との相対関係におけるラップ幅の適正な設定により、そして更に好ましくは、第3に、巻き取り速度の経時的な変化を伴う適正な制御により、これらの事項を要素として、前述の問題点を一挙に解消し、初期の目的を遺憾なく達成しうることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0019】
而して、本発明は、上記課題の解決手段として、下記[1]〜[12]の構成に係る細幅長尺テープの安定巻き取り方法及び同巻き取り製品を提供する。
【0020】
[1]薄肉の細幅長尺テープを、円筒状の巻芯の周りにトラバース巻きの態様で、かつ一巻き毎に隣り合うテープの一部が重なり合うラップ巻きの態様で巻き取ることにより長尺テープ巻き取り製品を製造するに際し、
a. 長尺テープの巻き始め時の張力(テープの単位幅当たりの応力)の目標値をT0とするとき、下記式(イ):
0=T1(W1/W+C)・・・式(イ)
但し、T1・・・2.5mm幅のテープの巻き始め時の適正張力(g/mm)
W・・・テープ幅(mm)
1・・・2.5mm
C・・・W<2.5mmのとき、C=(W−W1)/W
W=2.5mmのとき、C=0
W>2.5mmのとき、C=0.10〜0.15
を満足し、
b. テープの巻き取り中の張力の目標値をTとするとき、下記式(ロ):
T=T0(1−L/50,000)・・・式(ロ)
但し、L・・・巻き取り済みのテープ長さ(m)
を満足し、
c. かつ、テープの巻き取り中に実際に付与する張力Taを、上記張力目標値Tの±10%以内に設定して、
上記の巻き取りを行うことを特徴とする、細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【0021】
[2]2.5mm幅のテープの巻き始め時の適正張力T1が、18〜22g/mmである前項[1]に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【0022】
[3]長尺テープの巻き始めの一端(始端)から少なくとも50m以上で500m以下の長さ部分を含む巻き始め領域における初期巻き取り速度S1(m/min)を100とするとき、
中間領域における定速での高速巻き取り速度S2を、上記初期巻き取り速度S1の130〜180%の範囲に設定し、
巻き終わりの端末から少なくとも50m以上で500m以下の長さ部分を含む巻き終わり領域における終期巻き取り速度S3を、上記初期巻き取り速度S1の20〜70%の範囲に設定すると共に、
巻き始め領域と中間領域との間、及び中間領域と巻き終り領域との間の各領域の巻き取り速度S12、S23を、それぞれ段階的または連続的に漸増及び漸減変化させるものとして、
前記の巻き取りを行うことを特徴とする前項[1]または[2]に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【0023】
[4]初期巻き取り速度S1は、60〜100m/minである前項[3]に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【0024】
[5] 一巻き毎に隣り合うテープどおしのラップ幅の目標値をR0とするとき、下記式(ハ):
0=(W−α)/2・・・式(ハ)
但し、α=(6W−4)/(2W+5)
を満足し、
かつ、テープの巻き取り中の実際のラップ幅Raを、上記目標値R0の±15%以下に設定して、
前記巻き取りを行う、前項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【0025】
[6]前記ラップ幅Raは、テープの巻き長さが増加するに従って、巻き長さ1000m当り0.5〜7%の増加率で、段階的または連続的に増加させながら前記巻き取りを行う、前項[5]に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【0026】
[7]前記長尺テープは、厚さTt:15〜100μm、幅Tw:1.0〜40mmの合成樹脂テープである前項[1]〜[6]のいずれか1項に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【0027】
[8]前記長尺テープは、厚さTt:20〜80μm、幅Tw:2.5〜13.5mmのカバーテープである前項[7]に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【0028】
[9]巻き取り製品の軸線方向の巻き幅Lwが25.5mm以下である前項[8]に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【0029】
[10]前項[1]〜[7]のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された細幅長尺テープの巻き取り製品。
【0030】
[11]細幅長尺テープが、カバーテープを除く機能材テープである前項[10]に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品。
【0031】
[12]前項[8]または[9]に記載の製造方法によって製造されたカバーテープの巻き取り製品。
【発明の効果】
【0032】
本発明の前記[1]項に記載の方法においては、巻き張力の適正な調整の結果、トラバース巻き、かつラップ巻きの手法を採用するものでありながら、細幅長尺テープを、巻き幅25.5mm以下の比較的小さい設定においても、巻きくずれを生じさせることなく、かつ、巻き姿を安定に保ちうる保形性に優れたものとしながら、数千メートル以上にも及ぶ長尺巻きの安定した巻き取りを行うことが可能となる。
【0033】
しかも、この長尺の巻き取り製品からテープを巻き戻したときのテープの歪曲、うねり、皺等の有害な変形を最小のものとし、真直度、平面度に優れたものとすることができ、例えばカバーテープへの用途においてシール性に優れたものとすることができると共に、機能材テープの用途において配置精度、密着性に優れたものとすることができる。
【0034】
従って、特にカバーテープの分野において、たとえばテープ幅が2.5〜5.5mm以下の細幅で、それ故にレコード巻きではせいぜい2〜3,000m以下の長さしか巻き取ることができなかった細幅カバーテープを、2〜3万メートルにも及ぶ極めて長尺の安定した巻き取り製品として市場供給することが可能になる。このことは、従来既存のキャリアテープ封緘装置が有する25.5mm幅を最大とするテープ繰出し設備をそのまま利用して、長尺カバーテープの連続供給を行うことが可能となり、キャリアテープによる電子部品等の封緘作業の効率化、既存の設備の有効利用による新たな設備投資の節減、人的労力の省力化を達成しうる。
【0035】
また、前記[2]項に記載のように巻き始めのときの張力をテープ2.5mm幅当たり18〜22g/mmに設定するときは、繰返し多数回の実験の結果から得られた知見により、特にカバーテープの場合において最も確実に上記効果を達成しうる。
【0036】
また、前記[3]項に記載の方法においては、巻き取り速度の経時的な変化を伴う適正制御により、前記[1]項に記載の効果を一層確実に達成しうる。
【0037】
更にその場合、前記[4]項に記載のように初期巻き取り速度を60〜100m/min設定して前記[3]項の条件で巻き取りを行うことにより、多数の実験結果から得られた知見において、最も確実に上記効果を享受することができる。
【0038】
また、前記[5]項に記載の方法においては、ラップ幅の適正な設定により、前記各項に記載の効果をより一層確実に達成しうる。
【0039】
そして、その場合、前記[6]項に記載ように、ラップ幅を経時的な変化を伴わせて適正制御することにより、前記効果を最も確実に享受しうる。
【0040】
また、前記[7]項に記載のような合成樹脂テープを巻き取り対象物とするときには、前記[1]〜[6]に記載のような方法を最も有利に適用しうる。
【0041】
更にまた、前記[8]項に記載のようなカバーテープを巻き取り対象物とする場合、従来のカバーテープの巻き取り製品より一層長尺で、しかも巻き幅を小さく設定した巻き取り製品の提供を可能とする。
【0042】
従ってまた、前記[9]項に記載のように、巻き幅が25.5mm以下に設定された、巻き芯長さの短い製品のものとするときは、巻き戻しテープに品質欠陥がなく、しかも巻き姿が安定した10,000mを超えるような長尺巻きの巻き取り製品でありながら、最大巻き幅25.5mm以下であるレコード巻き製品のための既存のテープ繰出し設備をそのまま使用することが可能なものとなり、設備更新のための費用、時間労力の節減に大いに貢献を果たし得る。
【0043】
そしてまた、前記[9]〜[12]項に記載のような長尺テープ巻き取り製品にあっては、巻き戻し時において従来品より一層品質的な欠陥の少ないテープでありながら、長尺巻きで、かつ巻き姿の安定したものを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
次に、本発明の好ましい実施形態について具体的に説明する。
【0045】
先ず、図1,2は、本発明に係る長尺テープ巻き取り製品(1)の一例を示すものである。該巻き取り製品(1)は、比較的短い、例えば軸線方向長さ(Cl)が25.5mm、内周直径(Cd)が76.2mmの円筒状の巻き芯(2)の周りに、薄肉の細幅長尺テープ(3)がトラバース巻きの態様で、かつ一巻き毎に隣り合うテープ(3)の一部が側縁部どおしで重なり合ったラップ巻きの態様で巻き取られたものである。長尺テープ(3)は、1つの製品(1)において、一般的には数千メートルから2〜3万メートルが巻き取られたものとなされる。例えば前記の長さ25.5mmの巻き芯(2)に、厚さ55μm、幅5.2mmのオレフィン系フィルムからなるカバーテープを、巻き幅(Lw)25.5mmのトラバース巻きで10,000m巻き取った製品(1)において、その製品直径、即ち巻き径(Ld)はおよそ600mmのものである。
【0046】
上記の巻き取り製品(1)は、広幅のフィルム材料からなる原反をスリッターで多数条の細幅テープにスリットしたのち、スリッターの下流側に附帯設備された多数の巻き取り装置により細幅テープの1本づつを同時に各巻き芯(2)にトラバース巻き方式で巻き取ることによって製造されるものである。
【0047】
図3にこの巻き取り装置の概要を示している。図中(4)はテープ(3)に巻き取り張力を与えるダンサーローラ、(5)はタッチロールであり、本発明が適用される好ましい巻き取り装置では、巻き芯側を軸方向に移動させてトラバースさせるようにしたボビントラバース方式が採用される。他にテープ側をトラバースさせるようにしたテープガイドトラバース方式の採用も可能であるが、上記ボビントラバース方式の方が、テープ(3)の巻き芯への導入経路が一定となるため、テープ(3)によじれや皺等の変形を生じ難く、より一層安定状態に巻き取ることができる点で好ましい。
【0048】
図4は、長尺テープ(3)のラップ巻き態様の概念説明図であり、これについての具体的な事項は後述の「ラップ幅(トラバースビッチ)」の項で説明する。
【0049】
次に、本発明が適用される長尺テープ(3)、及びその好ましい巻き取りのための本発明の本質的要素をなす巻き取り条件、つまり第1に巻き取り張力の制御、第2に巻き取り速度の制御、第3にラップ幅(トラバース送りピッチ)の制御の各事項について、順次説明する。
【0050】
[長尺テープ]
本発明が適用される巻き取り対象物たる長尺テープ(3)は、主としてキャリアテープの封止用のカバーテープであるが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。本発明は、カバーテープ以外の各種の機能材テープの巻き取り技術としても広く適用されるものである。従って、本発明の適用対象とする長尺テープ(3)は、厚さTt:15〜100μm、幅Tw1.0〜40mmの比較的細幅である合成樹脂テープのすべてが含まれる。
【0051】
カバーテープは、片面に熱シール層を有するポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、あるいは塩化ビニル系の複合フィルムからなるものであり、この場合、一般的に厚さTt:20〜80μm、幅Tw:2.5〜13.5mmの範囲のものである。稀に上記の範囲を超える厚さ及び幅のカバーテープも存在するが、かかる厚肉、広幅のテープの場合、本発明を適用するまでもなく、レコード巻きでも、トラバース巻きでも、安定した長尺巻きが可能であり、本発明の適用の必要性に乏しい。
【0052】
一方、カバーテープ以外の機能材テープとしては、前述したように医療機器、精密機器類の絶縁用、保護用、あるいは抵抗用等の特殊テープが含まれる。現に需要のある代表的な具体例を挙示すれば、車載用のアラミド系等の不織布テープ(厚さ:35μm、幅20.0mm、巻き長さ:10,000m)、医薬用のポリプロピレン系テープ(厚さ:50μm、幅:20.0mm、巻き長さ:6,000m)、光ファイバー通信用の高伸縮型フッ素樹脂テープ(厚さ:100μm、幅:3.0mm、巻き長さ:3,000m)、絶縁材料用のナイロン系不織布テープ(厚さ:30〜50μm、幅:3.2〜4.6mm、巻き長さ:10,000m)、半導体用のポリイミド/PPS複合テープ(厚さ:50〜75μm、幅:2.6mm、巻き長さ:5,000m)等である。
【0053】
[巻き取り張力の制御]
先ず、長尺テープの巻き始め時の張力(テープの単位幅当たりの応力)について、その目標値をT0とするとき、下記式(イ)を満足する値に設定することが必要である。
【0054】
0=T1(W1/W+C)・・・式(イ)
但し、T1・・・2.5mm幅のテープの巻き始め時の適正張力(g/mm)
W・・・テープ幅(mm)
1・・・2.5mm
C・・・W<2.5mmのとき、C=(W−W1)/W
W=2.5mmのとき、C=0
W>2.5mmのとき、C=0.10〜0.15
【0055】
ここに、上記T1の値、即ち2.5mm幅のテープの巻き始め時の適正張力は、幾多の実験結果から得られた知見により、18〜22g/mm、特に好ましくは19〜21g/mmの範囲に設定することが望ましい。
【0056】
そして、上記巻き取りが進行するに従い、巻き取り済みのテープ長さとの関係において、巻き取り中の張力は、その目標値をTとするとき、上記の巻き始め時の張力目標値T0に対して、下記式(ロ)を満足する値に設定することが必要である。
【0057】
T=T0(1−L/50,000)・・・式(ロ)
但し、L・・・巻き取り済みのテープ長さ(m)
【0058】
つまり、巻き取りの進行に従って、順次段階的に、または連続的に、巻き取り張力を所定の割合で漸次低減していくものとすることが必要である。
【0059】
ただ、巻き取り中に常時上記目標値どおりに張力を制御することは事実上不可能ないし極めて困難であることに鑑み、テープ巻き取り中に実際に付与する張力Taは、上記張力目標値Tの±10%を許容範囲として、当該許容範囲内に制御しながら、巻き取りを行うものとする。
【0060】
巻き始め時の張力、巻き取り中の張力が、上記の規定範囲から外れると、いずれも円滑かつ良好な巻き取りを行うことができない。即ち、張力が低すぎるときは、テープ同士の密着が弱くなり、長尺になるほど滑りによる巻き崩れが発生しやすくなり、所期する長尺巻きの要請に十分な満足を与えることができなくなる。逆に、張力が高すぎる(強すぎる)ときは、巻き取りの初期においてテープ切れを起こすおそれがあると共に、過度にテープが固く巻かれて所謂「固巻き」状態となり、テープに変形を生じさせ易いのみならず、トラバースのターニングポイントからの巻き崩れが生じ易いものとなる。その結果、やはり長尺巻きの要請に応え難いものとなる。
【0061】
巻き取り中に経時的な強力漸減制御を行わないときも、上記同様に特にターニングポイントからの巻き崩れが生じ易いものとなり、長尺化の要請に十分な満足を与えることができない。
【0062】
[巻き取り速度の制御]
上記の巻き取り張力の適正な制御により、一応良好な長尺巻き製品を製造することが可能である。しかしながら、より一層安定的に、巻き崩れのおそれのない品質的にも優れた製品を得るためには、張力制御に加えて、巻き取り速度の経時的な変化を伴う制御をも行うことが望ましい。
【0063】
この巻き取り速度の制御は、巻き取り長さの進行に伴って、中間段階までは順次段階的に、または連続的に増速させるものとし、中間段階では高速での定速巻き取りを行うものとし、そして巻き終わりの終端末近くになるに従って速度を落とし、巻き終わりでは低速巻き取りで行うものとする。
【0064】
更に具体的には、長尺テープの巻き始めの一端(始端)から少なくとも50m以上で500m以下の長さ部分を含む巻き始め領域における初期巻き取り速度S1(m/min)は、好ましくは60〜100m/minの範囲、特に65〜75m/minの範囲に設定するものとし、次いで、この初期巻き取り速度S1を100とするとき、中間領域における定速での高速巻き取り速度S2を、上記初期巻き取り速度S1の130〜180%の範囲に設定し、巻き終わりの端末から少なくとも50m以上で500m以下の長さ部分を含む巻き終わり領域における終期巻き取り速度S3を、上記初期巻き取り速度S1の20〜70%の範囲に設定すると共に、巻き始め領域と中間領域との間、及び中間領域と巻き終り領域との間の各領域の巻き取り速度S12、S23を、それぞれ段階的または連続的に漸増及び漸減変化させるものとして、前記の巻き取りを行うものとすることが好ましい。
【0065】
上記の初期巻き取り速度S1が遅すぎるときは、巻き取り作業効率が悪いのみならず、ラップ幅の安定したトラバース巻きの初期設定が良好の行われ難いものとなる。逆に速すぎるときは、テープ切れを起こすおそれがあると共に、初期設定も良好に行われ難く、巻き始めの部分での空気の巻き込み量が増え、巻きずれの欠陥が生じやすい。
【0066】
また、中間での高速巻き取り速度S2が遅すぎるときは、テープの積層層間に巻き込まれる空気量の不足によるものと思われるが、前記同様に固巻き状態となり易く、ひいては巻き崩れを生じ易い。逆にこれが速すぎるときは、テープに巻き緩みが出て、層間滑りによる巻き崩れの生じ易いものとなる。
【0067】
更にまた、終期巻き取り速度S3が遅すぎるときは、巻き終わりの部分が固巻きとなり、この部分が中の部分を締め付けて変形を与えたり、巻きずれを起こす欠陥を生じ易い。逆に速すぎると、巻き終わり時の急激な減速停止による衝撃にも起因して、巻き崩れを生じるおそれが増大すると共に、巻き終わり部分が過度に緩巻き状態となり、愈々巻き崩れ
の欠陥を生じ易い。
【0068】
中間領域における高速巻き取り速度S2の特に好ましい範囲は、初期巻き取り速度S1の140〜160%の範囲である。同様に終期巻き取り速度S3の特に好ましい範囲は、初期巻き取り速度S1の30〜50%の範囲である。
【0069】
[ラップ幅(送りピッチ)の制御]
ラップ幅(Rw)は、図4の模式図に示すように、トラバース巻き時において一巻き毎に隣り合うテープ(3)どおしの側縁部の重なり部分の幅を言うものであり、巻き芯(2)の一回転ごとに巻き芯(2)上で軸線方向にずらされる巻き取り位置の移動距離、即ち送りピッチ(Pw)によって決定されるものである。従って、テープ幅(Tw)から上記の送りピッチ(Pw)を引いた値が、ラップ幅(Rw)に相当する。
【0070】
本発明者らによる膨大な実験結果から得られた知見によれば、適正な好ましいラップ幅(Rw)は、巻き取る長尺テープ(3)のテープ幅(Tw)によって変化し、加えて、巻き取り長さの進行によっても変化する。
【0071】
ここに、ラップ幅(Rw)は、その目標値をR0とするとき、下記式(ハ)を満足するものとすることが望ましい。
【0072】
0=(W−α)/2・・・式(ハ)
但し、α=(6W−4)/(2W+5)
【0073】
そして、テープの巻き取り中の実際のラップ幅Raは、上記目標値R0の±15%を許容範囲として、当該許容範囲内に設定しながら巻き取りを行うものとすべきである。
【0074】
また、上記ラップ幅Raは、テープの巻き長さが増加するに従って、巻き長さ1000m当たり0.5〜7%の増加率で、段階的または連続的に増加させながら前記巻き取りを行うものとすることが好ましい。
【0075】
上記のラップ幅(Ra)の増加率は、テープ幅(Tw)が小さいほど増加率を大きく設定することが望ましい。具体的には、テープ幅(Tw)が2.5mm以下のものである場合には、巻き長さ1000m当たりのラップ幅(Ra)の増加率は4.0〜7.0%程度の範囲に設定することが望ましく、テープ幅(Tw)が2.5mmを超えて7.0mm以下のものである場合には、上記増加率は、2.0〜4.0%程度の値に設定することが望ましい。更にテープ幅(Tw)が7.0mmを超えるような比較的広幅なものである場合には、上記増加率は0.5〜2.0%範囲の低い値に設定することが好ましい。
【0076】
ラップ幅Raが上記の好ましい範囲を超えて大きすぎるときは、長尺テープ(3)の幅方向に変形を生じ易いものとなるのみならず、巻き姿が不安定なものとなり、長尺巻きの要請に十全の満足を与え難い。逆に、ラップ幅Raが小さすぎるときも同様に変形を生じ易く、巻き姿も不安定なものとなり易い。
【0077】
[実施例]
次に、本発明の効果を検証するため、具体的な実験例とその結果について記載する。
【0078】
[実験例No.1〜7]
これらの実験例No.1〜7は、テープ幅、用途、材質等を異にした複数種類の長尺テープについて、いずれも本発明の最も好ましい実施例を示すものである。
【0079】
いずれの実験例も、長さCl:25.5mm、内径Cd:76.2mmの円筒形の巻き芯(2)を用い、その周りにトラバース巻きの態様で長尺テープ(3)を10,000mに達するまで巻き取ったものであり、その巻き取り条件(張力、巻き速度、ラップ幅)を下記表1−A〜Dに示すとおりに設定して巻き取りを行ったものである。
【0080】
そして、各実験例について、その巻き取り作業性、巻き取り製品の保形性(形態安定性)、テープ形状安定性(曲がり変形等の有無)を評価し、その結果を表1−A〜Dに併記した。
【0081】
【表1−A】

【0082】
【表1−B】

【0083】
【表1−C】

【0084】
【表1−D】

【0085】
各評価項目についての評価方法、及び評価基準は次のとおりである。
【0086】
〈巻き取り作業性〉
10,000mまでの巻き取りを実行し、その巻き取り中に巻き崩れ等の障害を生じることなく、均整に巻き取りを継続することができ、更なる長尺巻きも十分可能であると判断されたものを「○」印で示し、10,000mに達するまで巻取りを継続できたものの、巻姿が明らかに不均整であり、それ以上の巻き取りは困難であると判断されたものを「△」印で、更に10,000mに達するまでにに巻き崩れを生じたり、あるいは均整で安定したトラバース巻き状態が得られなくなったものを「×」印で表記することとした。
【0087】
〈保形性〉
10,000mの巻き取り製品(1)を巻き取り装置の巻き取り駆動軸から抜脱したのち、当該製品を手で持ったときの巻き姿の安定性を評価し、型くずれを生じることなく良好な安定性を保持し得ていたものを「○」印、僅かの外的衝撃や負荷で容易に巻き崩れを生じるおそれが認められたものを「×」印、それらの中間程度の安定性を有するものを「△」印で表記することとした。
【0088】
〈テープ形状安定性(平面性・真直性)〉
巻き取り製品のテープを巻き終わりの端末から約1,000mを巻き戻し、この巻き戻した1000m近傍部分のテープを3mの長さに切断して供試片とし、この供試片を試験台上にエッジを沿わせて配置し、目視検査及金尺測定により、蛇行変形やうねりの有無、幅方向の平面度、側縁部の皺の有無を検査し、いずれも良好と判定できたものを「○」印で表記し、軽微なうねりや変形が認められるものの、実用上支障はない(例えば、3mm未満のうねり)と判断されたものを「△」印で表記し、また、明らかに有害と思われる変形等が認められたものを「×」印で表記することとした。
【0089】
〈実験例8〜14〉
この実験例は、巻き張力の適正な設定について調べるものである。
【0090】
従って、表2に示すように巻き始めの初期張力を各種に変化させ、巻き速度を適正に制御する一方、ラップ幅を一定値に固定して、巻き取り実験を行ったものであり、その結果を表2に併記する。
【0091】
【表2】

【0092】
上記表2の「特徴」欄に示すように、初期張力及び巻取り中の張力を本発明の規定範囲の適正な値に設定した実験No.9〜12においては、いずれも巻取作業性、保形性、テープの形状安定性の点で良好な結果が得られる。
【0093】
これに対し、初期張力が低すぎる実験No.8の場合、捲回層間でのテープの密着が弱くなるため4.500〜5,000m程度の巻き長さで巻き崩れが発生する。また初期張力が強すぎる実験例13の場合には、テープの層間締め付けが強くなりすぎる結果、やはり巻き長さ3,000〜3,500m近傍で巻き崩れを発生する。
【0094】
一方、適正な初期張力であっても、経時的な張力制御が不適正な実験No.14の場合にも、巻き長さが4,000〜4,500m進行したあたりで巻き崩れを生じることが多くなる。
【0095】
[実験例No.15〜24]
これらの実験例No.15〜24は巻き取り速度の適正な設定について調べるものである。
【0096】
従って、表3に示すように、巻き始めの初速及び巻取り途上の巻取速度を各種に変化させ、巻取張力及びラップ幅を最良と思われる一定の条件に固定して巻取り実験を行ったものである。その実験結果を表3の「評価」欄に併記する。
【0097】
【表3】

【0098】
上記表2の「特徴」欄に示すように、初速設定及び巻取り中の速度制御がいずれも本発明の規定範囲内で適正に行われた実験No.16〜18、及び22の場合には、いずれも安定に長尺巻取りを行うことができ、巻姿も安定しており、しかも巻戻しテープに有害な変形もほとんど認められない良好な巻取り製品が得られることを確認し得た。
【0099】
これに対し、初速設定が遅すぎる実験No.15の場合は、巻取作業能率が悪いだけでなく、特に巻取り初期の巻取り状体の安定性が悪いものとなる。逆に初速設定が速すぎる実験No.19の場合には、巻き取り初期にテープに有害な伸長を生じるのみならず、巻取り層に乱れを生じて比較的早期に巻き崩れを生じ易い。
【0100】
また、初速設定が適正であっても、巻き取り中の速度制御が適正に行われなかった実験No.20,21および23,24の場合、いずれも特に巻取作業性及び保形性に問題を有するものとなることが確認された。
【0101】
[実験例No.25〜33]
これらの実験例No.25〜33は、巻取り中の隣り合う巻取りテープ相互の重なり幅、即ちラップ幅とそれを巻取りの進行に伴って変化させる制御の適正値を探索するものである。
【0102】
もっとも、本発明者の行った多くの実験結果によれば、ラップ幅を巻取りの進行に伴って漸減変化させる途中の制御は、テープの安定長尺巻きの要請との関係では必ずしも必須の事項ではなく、前掲の実験No.1〜14のときのように、最初から最後まで一定のラップ幅が維持されるものとしても、一応良好な結果を得ることができる。
【0103】
しかし、そうであっても、巻取り中にラップ幅を僅かに漸減変化させる適正な制御を行うときは、特に長尺巻取り製品における巻き姿をより均整で安定したものとするのに有効である。
【0104】
そこで、表4に示す実験例No.25〜33は、巻き初め時のラップ幅及び巻き取り中のラップ幅の変化値を各種に変化させ、巻取り張力及び巻取り速度を最良と思われる一定条件に固定して巻取り実験を行い。ラップ幅の変化の影響を調べたものである。これらの実験結果を表4に併記した。
【0105】
【表4】

【0106】
上記表4の「特徴」欄に示すとおり、初期ラップ幅及び巻取り途上でのラップ幅の微妙な漸減変化制御が行われた実験No.26〜28、及び31〜32の場合には、最も良好な結果が得られた。
【0107】
これに対し、実験No.25のラップ幅を設定しない場合、即ち、隣接するテープ相互を重ねずに巻取りを行った場合は、10000mに達する長尺巻取りを行うことができず、本発明の目的を達成することができない。また、テープ幅との相対関係でラップ幅の設定が過大である実験No.29の場合、あるいは逆にラップ幅の設定が過小である実験No.30の場合、更には初期設定が過大である上に、巻取り中の制御も不適正である実験No.33の場合には、いずれも、10000mまで巻取ること自体は可能であったものの、保形性、テープ形状の安定性の点でいささか問題を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、極小電子部品の包装に用いられるキャリアテープ封止用のカバーテープをはじめとして、各種の機能材テープとして用いられるような複合フィルムの細幅長尺テープの巻き取り技術に適用される。更に具体的には広幅な複合フィルムの原反を所定幅にスリットして得られる細幅長尺フィルムを、スリット後に巻取る際に適用される技術である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明に係る長尺テープ巻き取り製品の一例を示す斜視図である。
【図2】同上の正面図である。
【図3】本発明の実施に用いられる巻取装置の一部概要を示す斜視図である。
【図4】本発明によるラップ巻き態様の概念説明図である。
【符号の説明】
【0110】
1・・・長尺テープ巻き取り製品
2・・・巻き芯
3・・・細幅長尺テープ
4・・・ダンサーローラ
5・・・タッチロール
Rw・・ラップ幅
Lw・・巻き幅
Ld・・巻き径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉の細幅長尺テープを、円筒状の巻芯の周りにトラバース巻きの態様で、かつ一巻き毎に隣り合うテープの一部が重なり合うラップ巻きの態様で巻き取ることにより長尺テープ巻き取り製品を製造するに際し、
a. 長尺テープの巻き始め時の張力(テープの単位幅当たりの応力)の目標値をT0とするとき、下記式(イ):
0=T1(W1/W+C)・・・式(イ)
但し、T1・・・2.5mm幅のテープの巻き始め時の適正張力(g/mm)
W・・・テープ幅(mm)
1・・・2.5mm
C・・・W<2.5mmのとき、C=(W−W1)/W
W=2.5mmのとき、C=0
W>2.5mmのとき、C=0.10〜0.15
を満足し、
b. テープの巻き取り中の張力の目標値をTとするとき、下記式(ロ):
T=T0(1−L/50,000)・・・式(ロ)
但し、L・・・巻き取り済みのテープ長さ(m)
を満足し、
c. かつ、テープの巻き取り中に実際に付与する張力Taを、上記張力目標値Tの±10%以内に設定して、
上記の巻き取りを行うことを特徴とする、細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【請求項2】
2.5mm幅のテープの巻き始め時の適正張力T1が、18〜22g/mmである請求項1に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【請求項3】
長尺テープの巻き始めの一端(始端)から少なくとも50m以上で500m以下の長さ部分を含む巻き始め領域における初期巻き取り速度S1(m/min)を100とするとき、
中間領域における定速での高速巻き取り速度S2を、上記初期巻き取り速度S1の130〜180%の範囲に設定し、
巻き終わりの端末から少なくとも50m以上で500m以下の長さ部分を含む巻き終わり領域における終期巻き取り速度S3を、上記初期巻き取り速度S1の20〜70%の範囲に設定すると共に、
巻き始め領域と中間領域との間、及び中間領域と巻き終り領域との間の各領域の巻き取り速度S12、S23を、それぞれ段階的または連続的に漸増及び漸減変化させるものとして、
前記の巻き取りを行うことを特徴とする請求項1または2に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【請求項4】
初期巻き取り速度S1は、60〜100m/minである請求項3に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【請求項5】
一巻き毎に隣り合うテープどおしのラップ幅の目標値をR0とするとき、下記式(ハ):
0=(W−α)/2・・・式(ハ)
但し、α=(6W−4)/(2W+5)
を満足し、
かつ、テープの巻き取り中の実際のラップ幅Raを、上記目標値R0の±15%以下に設定して、
前記巻き取りを行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【請求項6】
前記ラップ幅Raは、テープの巻き長さが増加するに従って、巻き長さ1000m当り0.5〜7%の増加率で、段階的または連続的に増加させながら前記巻き取りを行う、請求項5に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【請求項7】
前記長尺テープは、厚さTt:15〜100μm、幅Tw:1.0〜40mmの合成樹脂テープである請求項1〜6のいずれか1項に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【請求項8】
前記長尺テープは、厚さTt:20〜80μm、幅Tw:2.5〜13.5mmのカバーテープである請求項7に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【請求項9】
巻き取り製品の軸線方向の巻き幅Lwが25.5mm以下である請求項8に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された細幅長尺テープの巻き取り製品。
【請求項11】
細幅長尺テープが、カバーテープを除く機能材テープである請求項10に記載の細幅長尺テープの巻き取り製品。
【請求項12】
請求項8または9に記載の製造方法によって製造されたカバーテープの巻き取り製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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