説明

細胞の生産方法

【課題】従来のマイクロキャリアでの継代培養における問題点を解決することを目的とする。具体的には、培養した細胞を新たなマイクロキャリアに継代する際に、細胞増殖能の低下を防ぐことを目的とする。
【解決手段】細胞培養担体に付着した細胞を新たな細胞培養担体に付着した細胞として継代させる継代工程を含む細胞の生産方法であって、細胞培養担体及び新たな細胞培養担体が特定のポリペプチド(P)を有するマイクロキャリア(A)を含む細胞培養担体であり、継代工程が下記の工程である細胞の生産方法。
継代工程:細胞が付着した細胞培養担体に、培養用培地(C)に浸漬させた新たな細胞培養担体を添加し、間欠攪拌を実施する工程であって、新たな細胞培養担体を特定の割合で添加し、細胞培養担体濃度が培養用培地(C)に対して6〜10g/Lであり、間欠撹拌時間が8〜96時間である工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の生産方法に関する。さらに詳しくは、細胞培養の分野において長期間にわたり細胞の培養を続ける際に、細胞密度が過剰になったとき、細胞数を減じて新しい細胞培養担体に移す必要があり、この操作を継代といい、本発明はこの継代工程を含む細胞の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接着性細胞の継代の手順としては、以下のようになる。先ず、細胞培養担体で細胞を培養し増殖させる。細胞培養担体の全体に細胞が増殖したら、トリプシンやコラゲナーゼ等の蛋白分解酵素を作用させ、細胞培養担体から細胞を剥離させ、培地を加える。培地中に細胞を分散させた後、この細胞浮遊液を遠沈管に回収する。このとき細胞浮遊液中にはトリプシン等の酵素が含まれているため、これらの酵素を取り除く目的で、遠心分離により細胞を遠沈し、上清の培地を除く。その後、新たな培地を加えて細胞を再度分散させ、この細胞浮遊液を適度に希釈し、新しい細胞培養担体で培養を行う。
【0003】
この方法では、細胞を剥離させる工程があるが、この工程におけるトリプシン等の蛋白質分解酵素の作用やピペッティングの条件が、細胞の生存率に大きく影響し、細胞の増殖能の回復に多大な時間を要する。
トリプシン等の蛋白質分解酵素を作用させない継代方法としては、細胞培養担体としてマイクロキャリアを用いた場合、マイクロキャリア間の継代方法として、細胞が新しいマイクロキャリアに乗り移ることを促進させるために、撹拌培養と静置培養を交互に行う間欠撹拌培養方法(非特許文献1)やカルシウムイオン濃度を通常培養の濃度の50%に下げた培地での継代方法(非特許文献2)がある。しかし、これらの方法においても新しいマイクロキャリアに効率よく、均一に継代することは難しく、細胞増殖能が低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bioprocess Engineering,21,211−213,1999
【非特許文献2】Biotechnology and Bioengineering,23,983−993,1981
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のマイクロキャリアでの継代培養における問題点を解決することを目的とする。具体的には、培養した細胞を新たなマイクロキャリアに継代する際に、細胞増殖能の低下を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の細胞の生産方法は、細胞培養担体を用いて接着性細胞を培養した後、細胞培養担体に付着した細胞を新たな細胞培養担体に付着した細胞として継代させる継代工程を含む細胞の生産方法であって、細胞培養担体及び新たな細胞培養担体が細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド(P)を有するマイクロキャリア(A)を含む細胞培養担体であり、継代工程が下記の工程であることを要旨とする。
継代工程:細胞が付着した細胞培養担体に、培養用培地(C)に浸漬させた新たな細胞培養担体を添加し、間欠攪拌を実施する工程であって、細胞の付着した細胞培養担体1〜9重量部に対して、新たな細胞培養担体を9重量部の割合で添加し、細胞培養担体濃度が培養用培地(C)に対して6〜10g/Lであり、間欠撹拌時間が8〜96時間である工程。
【発明の効果】
【0007】
本発明の細胞の生産方法で細胞を生産すると、細胞が新しいマイクロキャリアに均一に乗り移りやすくなる。また、細胞増殖能を低下させることなく継代することができ、細胞増殖能を低下させることなく継代培養を実施することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において接着性細胞とは、固体表面に接着して増殖する細胞であれば特に限定されないが、例えば、上皮細胞(Vero細胞、MDCK細胞、CHO細胞、HEK293細胞、COS細胞及びHmLu細胞等)、腫瘍細胞(Hela細胞及びVACO細胞等)、内皮細胞(HUVEC細胞及びDBAE細胞等)、白血球(HIT−T15細胞等)、線維芽細胞(WI38細胞、BHK21細胞及びSFME細胞等)、筋肉細胞(HL1細胞及びC2C12細胞等)、神経/内分泌腺細胞(ROC−1細胞及びIMR−32細胞等)及び初代細胞(鶏胚初代細胞、ウズラ胚初代細胞及びウサギ腎初代細胞等)等が挙げられる。これらのうち、細胞増殖能を低下させないという観点から、上皮細胞及び初代細胞が好ましく、さらに好ましくは、Vero細胞、MDCK細胞、HmLu細胞及び初代細胞、特に好ましくVero細胞、MDCK細胞及びHmLu細胞である。
【0009】
本発明で使用する細胞培養担体は、細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド(P)を有するマイクロキャリア(A)を含む細胞培養担体である。
「細胞接着性」とは、特定の最小アミノ酸配列が細胞のインテグリンレセプターに認識され、細胞が基材に接着しやすくなる性質を意味する(大阪府立母子医療センター雑誌、第8巻 第1号、58〜66頁、1992年)。
細胞接着性最小アミノ酸配列(X)としては、「病態生理、第9巻 第7号、527〜535頁、1990年」や「大阪府立母子医療センター雑誌、第8巻 第1号、58〜66頁、1992年」に記載されているもの等が用いられる。
【0010】
これらの最小アミノ酸配列(X)の中で、Arg Gly Asp配列、Leu Asp Val配列、Leu Arg Glu配列、His Ala Val配列、Arg Glu Asp Val配列(1)、Tyr Ile Gly Ser Arg配列(2)、Pro Asp Ser Gly Arg配列(3)、Arg Tyr Val Val Leu Pro Arg配列(4)、Leu Gly Thr Ile Pro Gly配列(5)、Arg Asn Ile Ala Glu Ile Ile Lys Asp Ile配列(6)、Ile Lys Val Ala Val配列(7)、Asp Gly Glu Ala 配列(8)、Gly Val Lys Gly Asp Lys Gly Asn Pro Gly Trp Pro Gly Ala Pro配列(9)、Gly Glu Phe Tyr Phe Asp Leu Arg Leu Lys Gly Asp Lys配列(10)、Tyr Lys Leu Asn Val Asn Asp Ser配列(11)、Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys配列(12)、Asn Arg Trp His Ser Ile Tyr Ile Thr Arg Phe Gly配列(13)、Thr Trp Tyr Lys Ile Ala Phe Gln Arg Asn Arg Lys配列(14)、Arg Lys Arg Leu Gln Val Gln Leu Ser Ile Arg Thr(15)及びPro His Ser Arg Asn(16)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、細胞接着性の観点等から、さらに好ましくはArg Gly Asp配列、Tyr Ile Gly Ser Arg配列(2)、Ile Lys Val Ala Val配列(7)、Arg Lys Arg Leu Gln Val Gln Leu Ser Ile Arg Thr(15)及びPro His Ser Arg Asn(16)からなる群より選ばれる少なくとも1種、特に好ましくはArg Gly Asp配列である。
これらの最小アミノ酸配列(X)の両端には、他のアミノ酸{アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、プロリン(Pro)、トリプトファン(Trp)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)及びヒスチジン(His)等}を含んでなる介在アミノ酸配列(Z)を結合していることが好ましい。
【0011】
介在アミノ酸配列(Z)としては、最小アミノ酸配列(X)のN末端には、細胞接着性の観点から、Gly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)、Gly Leu Pro Gly Pro Lys Gly Asp配列(66)、Gly Pro Ala Val Thr Gly配列(67)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Val Thr Gly配列(68)、Gly Ala Ala Val Cys Glu Pro Gly配列(69)、Gly Ala Ala Leu Cys Val Ser Glu Pro Gly配列(70)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Leu Cys Val Ser Glu Pro Gly配列(71)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Val Cys Glu Pro Gly配列(72)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Val Cys Glu Pro Gly配列(73)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Leu Cys Val Ser Glu Pro Gly配列(74)、Gly Pro Ala Val Cys Glu Pro Gly配列(75)、Gly Pro Ala Leu Cys Val Ser Glu Pro Gly配列(76)及びGly Ala Ala Pro Gly Ala Ser配列(77)からなる群より選ばれる少なくとも1種の介在アミノ酸配列(Z)を結合していることが好ましく、Gly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)、Gly Leu Pro Gly Pro Lys Gly Asp配列(66)、Gly Pro Ala Val Thr Gly配列(67)及びAla Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Val Thr Gly配列(68)からなる群より選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、Gly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)が特に好ましい。
【0012】
介在アミノ酸配列(Z)としては、最小アミノ酸配列(X)のC末端には、細胞接着性の観点から、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Leu Cys Val Ser配列(79)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Val Cys配列(80)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro配列(81)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Val Cys配列(82)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Leu Cys Val Ser配列(83)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro配列(84)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Gly Pro Val Gly Ser Pro配列(85)、Cys Asp Ala Gly Tyr配列(86)、Cys Asp Ala Gly Pro Val Gly Ser Pro配列(87)及びSer Ala Gly Pro Ser Ala Gly Tyr配列(88)からなる群より選ばれる少なくとも1種の介在アミノ酸配列(Z)を結合していることが好ましく、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Leu Cys Val Ser配列(79)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Val Cys配列(80)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro配列(81)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Val Cys配列(82)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Leu Cys Val Ser配列(83)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro配列(84)及びSer Pro Ala Ser Ala Ala Gly Pro Val Gly Ser Pro配列(85)からなる群より選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)が特に好ましい。
【0013】
ポリペプチド(P)は、最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有すればよいが、細胞接着性の観点等から、1分子中に1〜50個有するものが好ましく、さらに好ましくは2〜50個、次に好ましくは3〜30個、特に好ましくは4〜20個、最も好ましくは5〜15個有するものである。なお、2種以上の最小アミノ酸配列(X)が一分子中に含まれてもよい。
【0014】
ポリペプチド(P)は、最小アミノ酸配列(X)以外に、ポリペプチド(P)の熱安定性向上の観点等から、補助アミノ酸配列(Y)を有することが好ましい。
【0015】
補助アミノ酸配列(Y)としては、最小アミノ酸配列(X)以外のアミノ酸配列が使用でき、ポリペプチド(P)の熱安定性の観点等から、Gly及び/又はAlaを有する配列が好ましい。
【0016】
補助アミノ酸配列(Y)としては、(Gly Ala)a配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Tyr)c配列、(Gly Ala Gly Val Gly Tyr)d配列、(Gly Ala Gly Tyr Gly Val)e配列、{Asp Gly Gly (Ala)f Gly Gly Ala}g配列、(Gly Val Pro Gly Val)h配列、(Gly)i配列、(Ala)j配列、(Gly Gly Ala)k配列、(Gly Val Gly Val Pro)m配列、(Gly Pro Pro)n配列、(Gly Ala Gln Gly Pro Ala Gly Pro Gly)o配列、(Gly Ala Pro Gly Ala Pro Gly Ser Gln Gly Ala Pro Gly Leu Gln)p配列及び/又は(Gly Ala Pro Gly Thr Pro Gly Pro Gln Gly Leu Pro Gly Ser Pro)q配列を有する配列等が含まれる。これらのうち、(Gly Ala)a配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Tyr)c配列、(Gly Ala Gly Val Gly Tyr)d配列、(Gly Ala Gly Tyr Gly Val)e、{Asp Gly Gly (Ala)f Gly Gly Ala}g配列、(Gly Val Pro Gly Val)h配列、(Gly Val Gly Val Pro)m配列及び/又は(Gly Pro Pro)n配列を有するものが好ましく、さらに好ましくは(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列、(Gly Val Pro Gly Val)h配列、(Gly Val Gly Val Pro)m配列及び/又は(Gly Pro Pro)n配列を有するもの、特に好ましくは(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列を有するものである。
【0017】
なお、aは5〜100の整数、bは1〜33の整数、c、d及びeは2〜33の整数、fは1〜194の整数、gは{1}〜{200/(6+f)}の小数点以下を切り捨てした整数、hは2〜40の整数、i及びjは10〜200の整数、kは3〜66の整数、mは2〜40の整数、nは3〜66の整数、oは1〜22の整数、p及びqは1〜13の整数である。
【0018】
補助アミノ酸配列(Y)は、グリシン(Gly)及び/又はアラニン(Ala)を含むことが好ましい。グリシン(Gly)及びアラニン(Ala)を含む場合、これらの合計含有割合(%)は、補助アミノ酸配列(Y)の全アミノ酸個数に基づいて、10〜100が好ましく、さらに好ましくは20〜95、特に好ましくは30〜90、最も好ましくは40〜85である。この範囲であると、熱安定性がさらに良好となる。
【0019】
グリシン(Gly)及びアラニン(Ala)の両方を含む場合、これらの含有個数割合(Gly/Ala)は、0.03〜40が好ましく、さらに好ましくは0.08〜13、特に好ましくは0.2〜5である。この範囲であると、熱安定性がさらに良好となる。
【0020】
補助アミノ酸配列(Y)には、以上の例示の他に、他のアミノ酸{アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、プロリン(Pro)、トリプトファン(Trp)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)及びヒスチジン(His)等}を含んでいてもよい。
【0021】
(Gly Ala)a配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(17)〜(19)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(20)〜(22)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Ala Gly Tyr)c配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(23)〜(25)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Val Gly Tyr)d配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(26)〜(28)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Tyr Gly Val)e配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(29)〜(31)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
{Asp Gly Gly (Ala)f Gly Gly Ala}g配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(32)〜(34)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Val Pro Gly Val)h配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(35)〜(38)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly)i配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(39)〜(41)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Ala)j配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(42)〜(44)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Gly Ala)k配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(45)〜(47)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Val Gly Val Pro)m配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(48)〜(50)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Pro Pro)n配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(51)〜(53)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gln Gly Pro Ala Gly Pro Gly)o配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(54)〜(56)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Pro Gly Ala Pro Gly Ser Gln Gly Ala Pro Gly Leu Gln)p配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(57)〜(59)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Pro Gly Thr Pro Gly Pro Gln Gly Leu Pro Gly Ser Pro)q配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(60)〜(62)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
【0022】
これらの補助アミノ酸配列のうち、熱安定性の観点等から、配列番号(17)、(18)、(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(26)、(27)、(29)、(30)、(32)、(33)、(34)、(35)、(36)、(38)、(39)、(40)、(42)、(43)、(45)、(46)、(48)、(49)、(51)、(52)、(54)、(55)、(57)、(58)、(60)又は(61)で表されるアミノ酸配列が好ましく、さらに好ましくは配列番号(18)、(20)、(21)、(22)、(24)、(27)、(30)、(34)、(35)、(36)、(37)、(38)、(40)、(43)、(46)、(49)、(52)、(55)、(58)又は(61)で表されるアミノ酸配列、特に好ましくは配列番号(20)、(21)又は(38)で表されるアミノ酸配列である。
【0023】
補助アミノ酸配列(Y)を含む場合、(Y)の含有個数は、熱安定性の観点等から、ポリペプチド(P)1分子中に、2〜50が好ましく、さらに好ましくは3〜30、特に好ましくは4〜20、最も好ましくは5〜15である。また、ポリペプチド(P)は、2種以上の補助アミノ酸配列(Y)を含んでもよい。
【0024】
ポリペプチド(P)は、分岐鎖を含んでいてもよく、一部が架橋されていてもよく、環状構造を含んでいてもよい。しかし、ポリペプチド(P)は、細胞のポリペプチドの認識しやすさという観点から、架橋されていないことが好ましく、さらに好ましくは架橋されていない直鎖構造、特に好ましくは環状構造を持たず架橋されていない直鎖構造である。なお、直鎖構造には、β構造(直鎖状ペプチドが折れ曲がってこの部分同士が平行に並び、その間に水素結合が作られる二次構造)も含まれる。
【0025】
ポリペプチド(P)は、細胞接着性及び熱安定性の観点等から、最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)とが、(X)と(Y)の間に他のアミノ酸配列を介して、交互に化学結合してなる構造であることが好ましく、(X)の両端に介在アミノ酸配列(Z)を含むアミノ酸配列と(Y)とが交互に化学結合してなる構造であることがさらに好ましい。これらの場合、最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)との繰り返し単位(X−Y)の数(個)は、細胞接着性の観点等から、1〜50が好ましく、さらに好ましくは2〜40、特に好ましくは3〜30、最も好ましくは4〜20である。
【0026】
また、最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)との含有個数は同じでも異なっていてもよい。異なっている場合は、いずれかの含有個数が他方の含有個数より1個少ないことが好ましい{この場合、補助アミノ酸配列(Y)が少ないことが好ましい}。ポリペプチド(P)中の最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)との含有個数割合(X/Y)は、0.5〜2が好ましく、さらに好ましくは0.9〜1.4、特に好ましくは1〜1.3である。
【0027】
また、ポリペプチド(P)の末端部分(最小アミノ酸配列(X)又は補助アミノ酸配列(Y)からペプチド末端まで)に他のアミノ酸を含んでもよい。他のアミノ酸を含む場合、その含有個数は、細胞のポリペプチドの認識しやすさという観点から、ポリペプチド(P)1個当たり、1〜1000個が好ましく、さらに好ましくは3〜300、特に好ましくは10〜100である。
【0028】
ポリペプチド(P)の重量平均分子量(以下、Mw)は、1,000〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは2,000〜700,000、特に好ましくは3,000〜400,000、最も好ましくは4,000〜200,000である。
【0029】
なお、ポリペプチド(P)のMwは、SDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法により、測定サンプル{ポリペプチド等}を分離し、泳動距離を標準物質と比較する方法等の公知の方法によって求められる(以下、同じ)。
【0030】
好ましいポリペプチド(P)の一部を以下に例示する。
(1)最小アミノ酸配列(X)がArg Gly Asp配列(x1)の場合
Arg Gly Asp配列(x1)の13個と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)9配列(21)(y1)の12個とを有し、(x1)のN末端にGly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)、(x1)のC末端にSer Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)を有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有するMw約11万のポリペプチド{「プロネクチンF」、プロネクチンは三洋化成工業(株)の登録商標(日本及び米国)である。三洋化成工業(株)製<以下同じ>};(x1)の5個と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)3配列(20)(y2)の5個とを有しこれらが交互に化学結合してなる構造を有するMw約2万のポリペプチド(「プロネクチンF2」);(x1)の3個と(Gly Val Pro Gly Val)2 Gly Gly (Gly Ala Gly Ala Gly Ser)3配列(38)(y3)の3個とを有しこれらが交互に化学結合してなる構造を有するMw約1万のポリペプチド(「プロネクチンF3」)等。
【0031】
(2)最小アミノ酸配列(X)がIle Lys Val Ala Val配列(x2)の場合
プロネクチンF、プロネクチンF2又はプロネクチンF3のArg Gly Asp配列(x1)をIle Lys Val Ala Val配列(7)(x2)に、最小アミノ酸配列(X)のN末端に結合するGly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)をGly Ala Ala Pro Gly Ala Ser配列(77)に、最小アミノ酸配列(X)のC末端に結合するSer Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)をSer Ala Gly Pro Ser Ala Gly Tyr配列(88)に変更した「プロネクチンL」、「プロネクチンL2」、又は「プロネクチンL3」等。
【0032】
(3)最小アミノ酸配列(X)がTyr Ile Gly Ser Arg配列(x3)の場合
プロネクチンF、プロネクチンF2又はプロネクチンF3のArg Gly Asp配列(x1)をTyr Ile Gly Ser Arg配列(x3)に、最小アミノ酸配列(X)のN末端に結合するGly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)をGly Ala Ala Val Cys Glu Pro Gly配列(69)に、最小アミノ酸配列(X)のC末端に結合するSer Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)をCys Asp Ala Gly Tyr配列(86)に変更した「プロネクチンY」、「プロネクチンY2」、又は「プロネクチンY3」等。
【0033】
また、(1)〜(3)のポリペプチドの他、宝酒造(株)製RetroNectin(リコンビナントヒトフィブロネクチンCH−296){最小アミノ酸配列(X)としてArg Gly Asp配列(x1)及びLeu Asp Val配列を含有するMw約6万のポリペプチド}、同RGDS−Protein A{最小アミノ酸配列(X)としてArg Gly Asp配列(x1)を含有するMw約3万のポリペプチド}も好ましく使用できる{ただし、これらのポリペプチドは天然に由来し、補助アミノ酸配列(Y)が含まれていない。よって、熱安定性等が上記の(1)〜(3)よりも劣る。また、これらのポリペプチドのアミノ酸配列は特開平2−311498号公報に開示されている。}。
【0034】
ポリペプチド(P)は、人工的に合成される人工ポリペプチドあってもよく、人工ポリペプチドである場合は、例えば、有機合成法(固相合成法、液相合成法等)及び生化学的合成法[遺伝子組換え微生物(酵母、細菌、大腸菌等)]等によって製造する。すなわち、人工ポリペプチドは、動物由来のコラーゲンやフィブロネクチン等の細胞接着性蛋白質を含まない。
ポリペプチド(P)は、動物由来成分を含まないという観点から、人工ポリペプチドであることが好ましい。
【0035】
有機合成法に関しては、例えば、日本生化学会編「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)」第641〜694頁(昭和62年5月20日;株式会社東京化学同人発行)に記載されている方法等が用いられる。生化学的合成法に関しては、例えば、特表平3−502935号公報に記載されている方法等が用いられる。人工ポリペプチドを容易に合成できる点で、遺伝子組換え微生物による生化学的合成法が好ましく、特に好ましくは遺伝子組換え大腸菌を用いて合成する方法である。
【0036】
マイクロキャリア(A)の材質としては、接着性細胞が接着できる材質であれば特に限定されないが、細胞毒性の観点等から以下の物質を主成分とすることが好ましい。なお、主成分とは、材質の重量を基準として、以下の物質の含有量が90重量%以上であることを意味する。
(1)合成高分子:ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、ビニル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ナイロン及びポリカーボネート等。
(2)天然高分子:セルロース、セルロース誘導体(セルロースジアセテート及びセルローストリアセテート等)及びデキストラン等。
(3)無機物:酸化アルミニウム、ハイドロキシアパタイト、酸化チタン、シリカ及びガラス等。
【0037】
これらのうち、細胞親和性の観点から、合成高分子、天然高分子及びハイドロキシアパタイトが好ましく、さらに好ましくは合成高分子及び天然高分子、特に好ましくは合成高分子、最も好ましくはポリ(メタ)アクリル酸(塩)である。
【0038】
ポリ(メタ)アクリル酸(塩)としては、下記(1)〜(3)のポリマー等が含まれる。
(1)特開昭55−133413号公報等に記載の水溶液重合(断熱重合、薄膜重合又は噴霧重合等)により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)。
(2)特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報又は特開平11−5808号公報等に記載の逆相懸濁重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)。
(3)特開2001−2935号公報、特開2003−052742号公報、特開2003−082250号公報、特開2003−165883号公報、特開2003−176421号公報、特開2003−183528号公報、特開2003−192732号公報、特開2003−225565号公報、特開2003−238696号公報、特開2003−335970号公報、特開2004−091673号公報、特開2004−121400号公報、特開2004−123835号公報、特開2005−075982号公報、特開2005−095759号公報、特開2005−097569号公報、特開2005−186015号公報、特開2005−186016号公報、特開2005−247931号公報等に記載された架橋ポリ(メタ)アクリル酸(塩)。
【0039】
これらのうち、細胞の担体への接着性等の観点から、(2)及び(3)が好ましい。すなわち、カルボキシル基を有するモノマーを重合して得られる架橋重合体が好ましく、さらに好ましくは架橋ポリ(メタ)アクリル酸(塩)である。
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、酸(塩)とは、酸及び/又は酸塩を意味する。
【0040】
マイクロキャリア(A)の形態としては中実型と多孔質型とが含まれ、いずれも使用できるが、細胞への栄養、酸素の供給効率及び細胞の回収率の観点等から、中実型が好ましい。また、マイクロキャリアの形状としては、球状及び扁平(楕円)等のいずれも使用できる。
【0041】
マイクロキャリア(A)の粒子径(μm)は、中実型の場合、20〜2,000が好ましく、さらに好ましくは40〜1,000、特に好ましくは80〜500である。一方、多孔質型の場合、粒子径(μm)は、30〜25,000が好ましく、さらに好ましくは60〜12,000、特に好ましくは120〜6,000である。扁平状の場合、最大径(μm)が20〜20,000が好ましく、さらに好ましくは50〜10,000、特に好ましくは100〜5,000である。これらの範囲内であると、細胞の増殖量がさらに高くなる。
(A)の粒子径又は最大径の分布は、細胞増殖の均一性の観点から、上記粒子径又は最大径の範囲の粒子径又は最大径を有する粒子の重量が、マイクロキャリア(A)の重量を基準として、90〜100重量%となることが好ましく、さらに好ましくは95〜100重量%である。
【0042】
マイクロキャリア(A)の真比重は特に制限ないが、(A)を培地とともに撹拌しながら培養する一般的な方法において、撹拌中は(A)が浮遊し、撹拌を止めると沈降することが好ましい。このような観点から、(A)の真比重(g/cm3)は、1.00〜1.10が好ましく、さらに好ましくは1.01〜1.08、特に好ましくは1.01〜1.05である。
【0043】
ポリペプチド(P)を有するマイクロキャリア又はポリペプチドを有しないマイクロキャリア支持体は、市場から容易に入手でき、以下のような商品等が使用できる。
(1)ポリスチレン製:ナルジェヌンク社製バイオシロン(Biosilon)、ソロヒル社製プラスチックビーズ(Plastic beads)及びラックス社製サイトスフェア(Cytosphere)等。
(2)ポリアクリルアミド製:バイオラッド(株)製バイオキャリア(Biocarrier)等。
(3)ポリウレタン製:イノアック(株)製PUF等。
(4)セルロース製:バイオマテリアル(株)製セルスノウ(Cellsnow)等。
(5)デキストラン製:アムシャムファルマシア社製サイトデックス(Cytodex)等。
(6)ガラス製:スコット社製シラン(SIRAN)等。
【0044】
マイクロキャリアにポリペプチド(P)を含有させるには、(P)は、支持体の表面に含有していればよく、(P)は化学結合(イオン結合、水素結合及び共有結合等)及び/又は物理吸着(ファンデルワールス力による吸着)によって、支持体の表面に結合されている。これらのうち、ポリペプチドがマイクロキャリアから脱離しないという観点から化学結合が好ましく、さらに好ましくは共有結合である。
【0045】
マイクロキャリアにポリペプチド(P)を共有結合させる方法は公知の方法で行うことができる。例えば、「ペプチド合成の基礎と実験、平成9年10月5日、丸善株式会社発行」に記載の方法が挙げられ、具体的には、以下の(1)〜(3)の通りである。
【0046】
(1)ポリペプチドのうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものとポリペプチド(P)を含有しないマイクロキャリアの支持体(以下、P未含有支持体)のうちカルボキシル基を有するものとを反応させる場合、P未含有支持体のカルボキシル基を予めカルボジイミド化合物と反応させ、アシルイソ尿素{R’−N=C(OCOR)−NH−R’(−OCORが支持体に由来する部分)}を得た後、ポリペプチドのうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものをこのアシルイソ尿素に加えることによって、P未含有支持体とポリペプチドとをアミド結合できる。
【0047】
カルボジイミド化合物としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。
【0048】
(2)ポリペプチドのうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものとP未含有支持体のうちヒドロキシル基を有するものとを反応させる場合、P未含有支持体のヒドロキシル基を予めカルボニルジイミダゾール化合物と反応させ、イミダゾール誘導体{R−Im。Imはイミダゾリン環、Rが支持体に由来}を得た後、ポリペプチドのうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものをこのイミダゾール誘導体に加えることによって、P未含有支持体とポリペプチドとをN−C結合できる。
【0049】
カルボニルジイミダゾール化合物としては、N,N’−カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
【0050】
(3)ポリペプチドのうちヒドロキシル基を有するものとP未含有支持体のうちカルボキシル基を有するものとを反応させる場合、P未含有支持体のカルボキシル基を予めカルボジイミド化合物と反応させ、アシルイソ尿素を得た後、ポリペプチドのうちヒドロキシル基を有するものをこのアシルイソ尿素に加えることによって、P未含有支持体とポリペプチドとをエステル結合できる。
【0051】
ポリペプチド(P)をP未含有支持体に、物理吸着、イオン結合及び/又は水素結合させる方法としては、溶媒等にポリペプチド(P)とP未含有支持体とを投入し、混合して作製する方法等が挙げられる。溶媒としては特に制限はないが、無機塩、有機酸塩、酸及び/又は塩基を0.001〜50重量%(好ましくは0.005〜30重量%、さらに好ましくは0.01〜10重量%)含有する水溶液等(特開2003−189848号公報等に記載)が使用できる。
これらの溶媒の中で、ポリペプチドの結合効率の観点から、無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液、並びに水が好ましく、さらに好ましくは無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液、並びにイオン交換蒸留水、特に好ましくは無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液である。
【0052】
また細胞の細胞培養担体への接着性等の観点からマイクロキャリア(A)の表面を正に荷電させたほうが好ましい。表面を正に荷電させたマイクロキャリア(A)の作製方法としては、(i)1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物と混合する方法、(ii)1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0053】
(i)1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物を混合する方法としては、(A)がカルボキシル基を有する場合、(A)と1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物を溶媒中で混合することで、(A)のカルボキシル基と1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物との間にイオン結合が形成し、細胞培養担体に正に荷電した官能基(B)を含有させることができる。
この方法(i)で使用できる1級アミノ基含有化合物としては、アミノメタン、アミノエタン等のアミノアルカン及びこの塩、ジアミノエタン等のジアミノアルカン(アルキレンジアミン)及びこの塩並びにリジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸及びこの塩が挙げられる。
2級アミノ基含有化合物としては、ジメチルアミン等の2つの炭化水素基で置換されたアミン及びこの塩並びに2−メチルイミダゾール、ヒスチジン等のイミダゾール類及びこの塩が挙げられる。
3級アミノ基含有化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3つの炭化水素基で置換されたアミン及びこの塩が挙げられる。
第4級アンモニオ基含有化合物としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の4つの炭化水素で置換されたアンモニウム及びこの塩が挙げられる。
溶媒としては1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物を溶解するものであれば特に制限はないが、安全性の観点から水が好ましい。
【0054】
(ii)1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物を反応させる方法としては、前述のマイクロキャリアにポリペプチド(P)を共有結合させる方法等と同様の方法が挙げられる。使用できる1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0055】
細胞培養担体は、マイクロキャリア(A)を含んでなるものであれば特に制限が無い。
【0056】
ポリペプチド(P)の含有量は、細胞接着性等の観点から、細胞培養担体1g当たり、5ng/g〜500mg/gが好ましく、さらに好ましくは50ng/g〜50mg/g、次に好ましくは500ng/g〜50mg/g、次に好ましくは500ng/g〜20mg/g、特に好ましくは500ng/g〜5mg/g、最も好ましくは5μg〜5mg/gである。
【0057】
なお、ポリペプチド(P)の含有量は、(P)の含有量が500μg/gを超える場合、Biuret法(たとえば、日本生化学会編「生化学実験講座1、タンパク質の化学I」第45〜55頁(1979年12月11日;株式会社東京化学同人発行)等により求められる。
【0058】
一方、ポリペプチド(P)の含有量が500μg/g以下の場合、Kjeldahl法(たとえば、日本生化学会編「生化学実験講座1、タンパク質の化学I」第45〜55頁(1979年12月11日;株式会社東京化学同人発行)等により求められる。
【0059】
また、免疫学的測定法(特開2004−049921号公報等に記載)を利用して測定することもできる。具体的には、(1)ポリペプチド(P)の含有量が既知である細胞培養用担体{Biuret法やKjeldahl法等で(P)の含有量が既知になった細胞培養用担体}を生理食塩水に浸漬し、(P)と結合する抗体に酵素を標識したもの(以下、酵素標識抗体)とを反応させ、この反応した酵素標識抗体の酵素量を吸光度測定し、検量線((P)の含有量とそれに対する吸光度)を作成する。(2)同様に検体((P)の含有量が未知である細胞培養用担体)の吸光度を測定する。(1)で得られた検量線と(2)で得られた吸光度から、検体の(P)の含有量を求めることができる。
なお、測定試料は、減圧乾燥機{120℃、0.1kPa以下}で1時間乾燥したものを用いる。
【0060】
本発明の細胞の生産方法は、細胞培養担体を用いて接着性細胞を培養した後、細胞培養担体に付着した細胞を新たな細胞培養担体に付着した細胞として継代させる継代工程を含む細胞の生産方法であって、継代工程が下記の工程である細胞の生産方法である。
継代工程:細胞が付着した細胞培養担体に培養用培地(C)に浸漬させた新たな細胞培養担体を添加し、間欠攪拌を実施する工程であって、細胞の付着した細胞培養担体1〜9重量部に対して、新たな細胞培養担体を9重量部の割合で添加し、かつ細胞培養担体濃度が培養用培地(C)に対して6g/〜10g/Lである工程。
【0061】
細胞培養担体及び新たな細胞培養担体は、前述のポリペプチド(P)を有するマイクロキャリア(A)を含む細胞培養担体を使用する。
【0062】
細胞培養担体を用いて接着性細胞を培養する工程を培養工程、その後、細胞培養担体に付着した細胞を新たな細胞培養担体に付着した細胞として継代させる工程を継代工程とし、以下に説明する。
【0063】
<培養工程>
培養工程に用いる細胞培養担体は、前述の物を使用する。
培養工程に用いる培養用培地としては、血清培地及び無血清培地のいずれも使用可能である。血清培地としては、用いる細胞の種類に応じて、一般の培地(DMEM培地、DME培地、RPMI培地、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMEM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地、ASF103培地、ASF104培地、ASF301培地、TC−100培地、Sf−900II培地、Ex−cell405培地、Express−Five培地、Drosophila培地及びこれらの混合培地等)に血清を加えたもの等が挙げられる。血清としては、ヒト血清、及び動物血清(ウシ血清、ウマ血清、ヤギ血清、ヒツジ血清、ブタ血清、ウサギ血清、ニワトリ血清、ラット血清、及びマウス血清等)が含まれる。
無血清培地としては、Grace培地、IPL−41培地、Schneider’s培地、OPTI PROTM SFM培地、VP−SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、CD−CHO培地、CHO−S−SFMII培地、FreeStyleTM 293培地、CD−CHO ATGTM培地及びこれらの混合培地が挙げられる。
これらの培地の中で、培地の調製の観点から、DMEM培地及びMEM培地が好ましい。
【0064】
培養条件としては、特に制限なく、二酸化炭素(CO2)濃度1〜29体積%、5〜45℃で1時間〜100日間、必要に応じて1〜10日毎に培地交換しながら培養する条件等が適用できる。好ましい条件としては、CO2濃度3〜10体積%、30〜40℃、1〜20日間、1〜3日毎に培地交換しながら培養する条件である。
【0065】
播種する細胞の量としては、用いる細胞培養担体の種類や、細胞の種類等によって異なるが、細胞培養担体の培養表面積1cm2当たり、10〜1,000万個が好ましく、さらに好ましくは100〜100万個、特に好ましくは1,000〜10万個である。
【0066】
<継代工程>
上記培養工程の後に、培養で得られた細胞培養担体に付着した細胞を新たな細胞培養担体に付着した細胞として継代させる。
【0067】
上記培養工程終了後の細胞が付着した細胞培養担体(以下、細胞付着担体と略す)の入った容器内に、培養用培地(C)に浸漬させた新たな細胞培養担体と培養用培地(C)を添加し、間欠攪拌を実施する。培養工程で使用した培地は、除去する必要はない。
培養用培地(C)としては、前述の培養用培地と同様のものが使用できる。
(C)に浸漬させた新たな細胞培養担体において、新たな細胞培養担体を(C)に浸漬させる際の(C)と新たな細胞培養担体の使用比率は、継代効率の観点から、1g/L〜5g/Lが好ましく、さらに好ましくは2g/L〜4g/Lである。
【0068】
新たな細胞培養担体を(C)に浸漬させる浸漬温度は、細胞培養担体の性能保持と培地の劣化の観点から、25〜40℃が好ましく、さらに好ましくは30〜38℃である。
【0069】
細胞付着担体と培養用培地(C)に浸漬させた新たな細胞培養担体との割合(重量比率)は、1〜9重量部:9重量部であり、細胞増殖の観点から、好ましくは1〜4.5重量部:9重量部、特に好ましくは1〜3重量部:9重量部である。
細胞付着担体の新たな細胞培養担体9重量部に対する割合が、1重量部未満では継代効率が悪くなり、9重量部を超えると細胞増殖性が悪くなる。
なお、細胞付着担体の重量は、付着した細胞を含めた重量である。
【0070】
継代工程における細胞培養担体濃度は、培養用培地(C)に対して6〜10g/Lであり、継代効率の観点から、6g/L〜9g/Lが好ましく、さらに好ましくは6g/L〜8g/Lである。
細胞培養担体濃度が、6g/L未満では継代効率が悪くなり、10g/Lを超えると細胞増殖性が悪くなる。
継代工程における細胞培養担体濃度は、培養用培地(C)に浸漬させた新たな細胞培養担体と培養用培地(C)を添加した後に、(C)を除去する又は(C)を追加することにより調製できる。
なお、細胞培養担体濃度は、継代工程で添加した培養用培地(C)の体積に対する、細胞付着担体及び継代工程で添加した新たな細胞培養担体の合計重量である。また、細胞付着担体の重量は、付着した細胞を含めた重量である。
【0071】
細胞が付着した細胞培養担体に培養用培地(C)に浸漬させた新たな細胞培養担体を添加し、間欠攪拌を実施する。
この工程において間欠撹拌とは攪拌と静置を繰り返し行う操作である。
それぞれの攪拌時間は、継代の観点から、1〜30分が好ましく、さらに好ましくは1〜20分、特に好ましくは1〜10分である。
それぞれの静置時間は、継代の観点から、5〜120分が好ましく、さらに好ましくは5〜90分、特に好ましくは5〜60分である。
撹拌と静置を繰り返し行うが、合計の間欠撹拌時間としては、8〜96時間であり、継代の観点から、好ましくは12〜72時間、特に好ましくは16〜48時間である。間欠撹拌時間が8時間未満では、細胞の移動が不十分でマイクロキャリアへの接着率が低下する。96時間を越えると細胞増殖性が悪くなる。
間欠攪拌時の温度としては、細胞への損傷の観点から、5〜50℃が好ましく、さらに好ましくは15〜45、特に好ましくは25〜40である。
【0072】
継代工程の終了後、培地交換をせずに通常の細胞培養を実施する。通常の細胞培養とは、間欠攪拌をせずに連続攪拌を細胞培養担体が均一に培地中を浮遊しうる回転数で実施する培養である。培養温度は35〜39℃が好ましい。必要により培地を追加してもよく、細胞培養における細胞培養担体濃度は3g/L〜6g/Lが好ましい。
細胞培養担体のコンフルエント率が80〜100%になるまで培養する。その際、必要総細胞数に到達していなければ、上記継代工程を再度実施し、さらに培養する。
【実施例】
【0073】
以下に実施例として本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特記しない限り部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0074】
<製造例1>
<マイクロキャリア(A)の調製>
攪拌機、モノマー供給管、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた反応容器にシクロヘキサン624部、重合分散剤としてソルビタンモノステアレート3.1部を仕込み、窒素バブリングを30分以上行って、溶存空気を追い出し75℃まで昇温した。
別の反応器に80%アクリル酸水溶液173部を仕込み、冷却しながら28%水酸化ナトリウム水溶液207部を加えて中和した。この水溶液に架橋性単量体{エチレングリコールジグリシジルエーテル}0.90部及び重合開始剤{過硫酸カリウム}0.278部、連鎖移動剤{次亜リン酸ナトリウム}0.053部を添加した後、窒素バブリングを行い、溶存空気を追い出しモノマー水溶液を得た。
得られたモノマー水溶液を上記の重合反応器のモノマー供給管より6.5ml/分の割合で連続的に重合反応器内の撹拌中(撹拌速度は500rpm)のシクロヘキサン液中に約1時間かけて供給してシクロヘキサン還流下で重合を行った。
次に共沸脱水によって160部の水を抜き出した後、含水ゲルポリマーを取り出し、更に120℃で2時間乾燥して、乾燥架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩を得た。
乾燥架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩を、目開きが75μmのふるい及び106μmのふるい(JIS Z8801−1:2000)により分級して、粒子径75〜106μmの粒子{架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩粒子}(G)を得た。
吸水性樹脂(G)1g、水溶性カルボジイミド(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩3.83g及びアミノエタノール・塩酸塩3.90gに、塩化ナトリウムを0.85%で含有する0.02M、pH5.2のリン酸緩衝液(以下、pH5.2のPBS)25mLを加え、25℃で撹拌し、4時間反応させた後、反応溶液を吸引除去した。イオン交換水の100mLを添加し1時間撹拌後、吸引除去する洗浄操作を5回行い、引き続き、減圧乾燥機{40℃、0.1kPa以下}で、4時間減圧乾燥して吸水性樹脂(H)を得た。吸水性樹脂(H)1g、N−ジエチルアミノエチルクロライド・塩酸塩8.6g及び48%水酸化ナトリウム水溶液4.35gに、イオン交換水10mLを加え、60℃で撹拌し、5時間反応させた後、反応溶液を吸引除去した。イオン交換水の100mLを添加し1時間撹拌後、吸引除去する洗浄操作を5回行い、引き続き、減圧乾燥機{40℃、0.1kPa以下}で、4時間減圧乾燥して吸水性樹脂(I−1)を得た。(I−1)の保水量は10g/gであった。
【0075】
<ポリペプチド(P1)の調製>
特表平3−502935号公報中の実施例記載の方法に準じて、Arg Gly Asp配列(x1)13個と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)9配列(21)12個とを有し、(x1)のN末端にGly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)、(x1)のC末端にSer Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)を有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有するMw約11万のペプチド「プロネクチンF」を製造し、ポリペプチド(P1)とした。
【0076】
<ポリペプチド(P1)が結合した吸水性樹脂の調製>
吸水性樹脂(I−1)1gに、水溶性カルボジイミド(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩)を60mMの濃度で含む、0.02M、pH5.2のPBS溶液の15mLを加え、25℃で攪拌し、0.5時間反応させて、変性吸水性樹脂を得た。
次に、この変性吸水性樹脂に、ポリペプチド(P1)を2.4mg/mLの濃度で含む0.2M、pH7.2のPBS溶液の1mLを加え、25℃で攪拌し、2時間反応させた後、反応溶液を吸引除去し、PBSの40mLを添加、吸引除去する洗浄操作を5回行い、さらにイオン交換水の40mLを添加、吸引除去する洗浄操作を2回行い、引き続き、減圧乾燥機{40℃、0.1kPa以下}で、4時間減圧乾燥してマイクロキャリア(ポリペプチド結合吸水性樹脂)(A−1)を得た。A−1の真比重は、1.03であった。
【0077】
<MDCK細胞を用いた継代評価>
<実施例1>
<培養工程>
スピンナーフラスコへ、マイクロキャリア(A−1)0.3g及びpH=7.2に調製したリン酸緩衝液(リン酸水素二ナトリウム0.02%、リン酸二水素カリウム0.076%及び塩化ナトリウム0.85%を含む。以下、実施例1においてPBSと略記する。)100mLを仕込み、オートクレーブ滅菌(121℃、20分間)した。オートクレーブ滅菌後、PBSをアスピレータで吸引除去した後、無血清培地(Opti−PROTM SFM:インビトロジェン社製)に抗菌剤(商品名:ゲンタマイシン/アンフォテリシン B、カスケード社製)を0.2%で含有させた培地を20mL添加し、1時間静置した後、培地を吸引除去し、再度、同じ無血清培地を50mL添加した。スピンナーフラスコを37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%のCO2インキュベーターの中に1時間静置した後、予めプレ培養していたMDCK細胞を細胞濃度が20万個/mLになるように無血清培地に播種した。その後、培養容量が100mLとなるように無血清培地を添加した。37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%のCO2インキュベーターの中で、30rpmの攪拌をしながら、(A−1)のほぼ全面が細胞で覆われるまで4日間培養を行い細胞が付着した(A−1)を得た。
<継代工程>
細胞が付着した(A−1)が入った容器内に、無血清培地300mlで予め1時間、37℃で浸漬したマイクロキャリア(A−1)0.9gを浸漬に使用した無血清培地300mlとともに投入した。その後、静置させることでマイクロキャリアを沈殿させた後、無血清培地を250mL除去した。1.2gのマイクロキャリアが無血清培地150mL中にいる状態で、間欠攪拌(攪拌2分、静置28分)を48時間、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%CO2インキュベーター内で実施した。
間欠撹終了後、細胞培養担体濃度が3g/Lとなるように無血清培地を250ml添加した。
<継代後の培養工程>
継代工程終了後、30rpmの攪拌をしながら培養した。培養温度等の条件は培養工程と同様にした。
【0078】
<マイクロキャリアへの細胞接着率評価>
継代後の培養工程開始後、培養4日目にサンプリングし、マイクロキャリアへの接着率を下記に記載の方法で測定した。
マイクロキャリアへの細胞接着率評価は次のように実施した。細胞培養担体含有培養液0.5mLを取り、顕微鏡にて細胞が1つ以上接着しているマイクロキャリアの数(M)と細胞が接着していないマイクロキャリアの数(N)を測定する。測定後、以下の式からマイクロキャリアへの細胞接着率を算出し、結果を表1に示した。

マイクロキャリアへの細胞接着率(%)={M/(M+N)}×100
【0079】
<細胞増殖性評価>
継代後の培養工程開始後、培養4日後の細胞培養液を0.5mL採り、培地を除去し、クリスタルバイオレット0.1%及びクエン酸を1.92%含む水溶液0.5mLを添加し37℃で60分間保持後、赤血球計数板を用いて細胞核数を計数し、培地中の細胞濃度(105個/mL)を測定し、結果を表1に示した。
【0080】
<実施例2>
実施例1において、継代工程を下記の継代工程とする以外は実施例1と同様にし、マイクロキャリアへの細胞接着率及び培地中の細胞濃度の結果を表1に示した。
<継代工程>
細胞が付着した(A−1)が入った容器内に、無血清培地900mlで予め1時間、37℃で浸漬したマイクロキャリア(A−1)2.7gを浸漬に使用した無血清培地900mlとともに投入した。その後、静置させることでマイクロキャリアを沈殿させた後、無血清培地だけ500mL除去した。3.0gのマイクロキャリアが無血清培地500mL中にいる状態で、間欠攪拌(攪拌2分、静置28分)を48時間、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%CO2インキュベーター内で実施した。
継代工程後、細胞培養担体濃度が3g/Lとなるように無血清培地を500ml添加して、4日間培養した。
【0081】
<実施例3>
実施例1において、継代工程を下記の継代工程とする以外は実施例1と同様にし、マイクロキャリアへの細胞接着率及び培地中の細胞濃度の結果を表1に示した。
<継代工程>
細胞が付着した(A−1)が入った容器内に、無血清培地100mlで予め1時間、37℃で浸漬したマイクロキャリア(A−1)0.3gを浸漬に使用した無血清培地100mlとともに投入した。その後、静置させることでマイクロキャリアを沈殿させた後、無血清培地だけ100mL除去した。0.6gのマイクロキャリアが無血清培地100mL中にいる状態で、間欠攪拌(攪拌2分、静置28分)を48時間、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%CO2インキュベーター内で実施した。
継代工程後、細胞培養担体濃度が3g/Lとなるように無血清培地を100ml添加して、4日間培養した。
【0082】
<実施例4>
実施例1において、継代工程を下記の継代工程とする以外は実施例1と同様にし、マイクロキャリアへの細胞接着率及び培地中の細胞濃度の結果を表1に示した。
<継代工程>
細胞が付着した(A−1)が入った容器内に、無血清培地900mlで予め1時間、37℃で浸漬したマイクロキャリア(A−1)2.7gを浸漬に使用した無血清培地900mlとともに投入した。その後、静置させることでマイクロキャリアを沈殿させた後、無血清培地だけ700mL除去した。3.0gのマイクロキャリアが無血清培地300mL中にいる状態で、間欠攪拌(攪拌2分、静置28分)を48時間、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%CO2インキュベーター内で実施した。
継代工程後、細胞培養担体濃度が3g/Lとなるように無血清培地を700ml添加して、4日間培養した。
【0083】
<実施例5>
実施例1において、継代工程を下記の継代工程とする以外は実施例1と同様にし、マイクロキャリアへの細胞接着率及び培地中の細胞濃度の結果を表1に示した。
<継代工程>
細胞が付着した(A−1)が入った容器内に、無血清培地100mlで予め1時間、37℃で浸漬したマイクロキャリア(A−1)0.3gを浸漬に使用した無血清培地100mlとともに投入した。その後、静置させることでマイクロキャリアを沈殿させた後、無血清培地だけ140mL除去した。0.6gのマイクロキャリアが無血清培地60mL中にいる状態で、間欠攪拌(攪拌2分、静置28分)を48時間、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%CO2インキュベーター内で実施した。
継代工程後、細胞培養担体濃度が3g/Lとなるように無血清培地を140ml添加して、4日間培養した。
【0084】
<実施例6>
実施例1において、継代工程における間欠攪拌時間を16時間に変更した以外は、実施例1と同様にし、マイクロキャリアへの細胞接着率及び培地中の細胞濃度の結果を表1に示した。
【0085】
<実施例7>
実施例1において、継代工程における間欠攪拌時間を96時間に変更した以外は、実施例1と同様にし、マイクロキャリアへの細胞接着率及び培地中の細胞濃度の結果を表1に示した。
【0086】
<比較例1>
実施例1において、継代工程を下記の継代工程とする以外は実施例1と同様にし、マイクロキャリアへの細胞接着率及び培地中の細胞濃度の結果を表1に示した。
<継代工程>
細胞が付着した(A−1)が入った容器内に、無血清培地1800mlで予め1時間、37℃で浸漬したマイクロキャリア(A−1)5.4gを浸漬に使用した無血清培地1800mlとともに投入した。その後、静置させることでマイクロキャリアを沈殿させた後、無血清培地だけ1087mL除去した。5.7gのマイクロキャリアが無血清培地713mL中にいる状態で、間欠攪拌(攪拌2分、静置28分)を48時間、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%CO2インキュベーター内で実施した。
継代工程後、細胞培養担体濃度が3g/Lとなるように無血清培地を1087ml添加して、4日間培養した。
【0087】
<比較例2>
実施例1において、継代工程を下記の継代工程とする以外は実施例1と同様にし、マイクロキャリアへの細胞接着率及び培地中の細胞濃度の結果を表1に示した。
<継代工程>
細胞が付着した(A−1)が入った容器内に、無血清培地75mlで予め1時間、37℃で浸漬したマイクロキャリア(A−1)0.225gを浸漬に使用した無血清培地75mlとともに投入した。その後、静置させることでマイクロキャリアを沈殿させた後、無血清培地だけ109mL除去した。0.525gのマイクロキャリアが無血清培地66mL中にいる状態で、間欠攪拌(攪拌2分、静置28分)を48時間、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%CO2インキュベーター内で実施した。
継代工程後、細胞培養担体濃度が3g/Lとなるように無血清培地を66ml添加して、4日間培養した。
【0088】
<比較例3>
実施例1において、継代工程を下記の継代工程とする以外は実施例1と同様にし、マイクロキャリアへの細胞接着率及び培地中の細胞濃度の結果を表1に示した。
<継代工程>
細胞が付着した(A−1)が入った容器内に、無血清培地300mlで予め1時間、37℃で浸漬したマイクロキャリア(A−1)0.9gを浸漬に使用した無血清培地300mlとともに投入した。間欠攪拌(攪拌2分、静置28分)を48時間、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%CO2インキュベーター内で実施した。継代工程後4日間培養した。
【0089】
<比較例4>
実施例1において、継代工程を下記の継代工程とする以外は実施例1と同様にし、マイクロキャリアへの細胞接着率及び培地中の細胞濃度の結果を表1に示した。
<継代工程>
細胞が付着した(A−1)が入った容器内に、無血清培地300mlで予め1時間、37℃で浸漬したマイクロキャリア(A−1)0.9gを浸漬に使用した無血清培地300mlとともに投入した。その後、静置させることでマイクロキャリアを沈殿させた後、無血清培地だけ300mL除去した。1.2gのマイクロキャリアが無血清培地100mL中にいる状態で、間欠攪拌(攪拌2分、静置28分)を48時間、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%CO2インキュベーター内で実施した。
継代工程後、細胞培養担体濃度が3g/Lとなるように無血清培地を300ml添加して、4日間培養した。
【0090】
<比較例5>
実施例1において、間欠攪拌時間を6時間に変更した以外は、実施例1と同様にして評価した。
【0091】
<比較例6>
実施例1において、間欠攪拌時間を120時間に変更した以外は、実施例1と同様にして評価した。
【0092】
【表1】

【0093】
表1より、本発明の実施例1〜5の細胞接着率及び細胞増殖性が、比較例1及び2の結果よりもはるかに優れることが分かる。すなわち、本発明の細胞生産方法を実施することで、細胞接着率が優れることからマイクロキャリアに均一に細胞を継代することができることが分かり、比較例に比べて細胞増殖性が向上していることから、細胞増殖能を低下させることなく継代することができることが分かり、細胞増殖能を低下させることなく継代培養を実施できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の細胞の生産方法で細胞を生産すると、細胞が新しいマイクロキャリアに均一に乗り移りやすくなる。また、細胞増殖能を低下させることなく継代することができ、細胞増殖能を低下させることなく継代培養を実施することが可能となる。
したがって、本発明はウイルス培養用細胞の生産、有用タンパク質発現細胞の生産等、あらゆる接着性細胞の培養生産に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養担体を用いて接着性細胞を培養した後、細胞培養担体に付着した細胞を新たな細胞培養担体に付着した細胞として継代させる継代工程を含む細胞の生産方法であって、細胞培養担体及び新たな細胞培養担体が細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド(P)を有するマイクロキャリア(A)を含む細胞培養担体であり、継代工程が下記の工程である細胞の生産方法。
継代工程:細胞が付着した細胞培養担体に、培養用培地(C)に浸漬させた新たな細胞培養担体を添加し、間欠攪拌を実施する工程であって、細胞の付着した細胞培養担体1〜9重量部に対して、新たな細胞培養担体を9重量部の割合で添加し、細胞培養担体濃度が培養用培地(C)に対して6〜10g/Lであり、間欠撹拌時間が8〜96時間である工程。

【公開番号】特開2011−30453(P2011−30453A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177378(P2009−177378)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】