説明

細胞またはウイルスの迅速な破壊のための装置および方法

【課題】細胞またはウイルスを破壊して、そこから核酸を放出するための改良された装置および方法を提供する。
【解決手段】細胞またはウイルスを破壊するための装置10は、細胞またはウイルスを保持するためのチャンバを有する容器18を備える。このチャンバは、外部表面を有する少なくとも1つの壁によって規定され、この壁にトランスデューサデバイス38が接続される。このトランスデューサデバイス38は、チャンバ内に圧力波または圧力パルスを生成するのに十分な操作周波数および振幅で振動する。このトランスデューサデバイス38は、壁内に圧力をもたらすのに十分な前負荷力で壁に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の情報)
この出願は、2001年10月4日に出願された米国特許出願番号09/972,221からの優先権を主張し、これらの開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、細胞またはウイルスを迅速に破壊するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
細胞またはウイルスからの核酸の抽出は、分子生物および生物医学的診断薬の分野における多くの適用に対して必須の仕事である。一旦、細胞から放出されると、核酸は、遺伝子分析(例えば、配列決定、病原体の同定および病原体の定量、核酸変異分析、ゲノム分析、遺伝子発現研究、薬理学的モニタリング、薬物開発のためのDNAライブラリーの保存など)のために使用され得る。遺伝子分析としては、代表的に、公知の技術を使用する核酸増幅および核酸検出が挙げられる。例えば、公知のポリヌクレオチド増幅反応としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、QBレプリカーゼ増幅(QBR)、自己維持配列複製(self−sustained sequence replication)(3SR)、鎖置換増幅(SDA)、「分枝鎖」DNA増幅、連結活性転写(ligation activated transcription)(LAT)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(rolling circle amplification)(RCA)、修復鎖反応(RCR)、およびサイクリングプローブ反応(cycling probe reaction)(CPR)が挙げられる。
【0004】
細胞またはウイルスからの核酸の抽出は、一般的に、物理的方法または化学的方法によって実施される。化学的方法は、代表的に、細胞を破壊するためそして核酸を放出するために溶解試薬(例えば、界面活性剤、酵素または強力な有機物)を使用し、任意の汚染タンパク質または強力な干渉タンパク質を変性させるカオトロピック塩を用いて抽出の処理を行う。このような化学的方法は、Hencoらに対する特許文献1およびLipshutzらに対する特許文献2に記載されている。細胞を破壊するためのきつい(harsh)化学薬品の使用に対するひとつの欠点は、化学薬品が核酸の次の増幅に対して抑制的であることである。したがって、化学的破壊方法の使用において、代表的には、さらに分析を進める前に細胞から放出された核酸を精製することは必要である。このような精製の工程は、時間を消費し、高価であり、そして分析のため回収された核酸の量を減少させる。
【0005】
細胞を破壊するための物理的な方法は、核酸増幅(例えば、PCR)を阻害するきつい化学薬品をしばしば必要としない。しかし、これらの物理的方法もまた、欠点を有する。例えば、細胞を破壊する1つの物理的な方法は、溶液中に細胞を配置することおよび細胞壁を壊して開くための沸騰のため溶液を熱することを包含する。残念なことに、熱は、しばしばタンパク質を変性させ、そしてタンパク質を放出された核酸に固着(stick)させる。次いで、タンパク質は、核酸を増幅するための次の試みを妨げる。別の物理的方法は、細胞壁が壊れるまで、細胞が繰り返し凍結および解凍するという凍結解凍である。残念なことに、凍結解凍は、極度に強靭な外層を有する多くの構造(最も特定の胞子およびウイルス)をしばしば壊して開くことができない。
【0006】
細胞を破壊するための別の物理的方法は、圧力装置の使用である。この方法を用いた場合、マイコ細菌微生物の溶液は、高圧力下で非常に小さな直径の穴を通過される。穴を通過する間、マイコ細菌は、機械的な力によって壊して開けられ、そしてこれらの内容物は、溶液中にこぼされる。しかし、このようなシステムは、大きく、高価であり、そして過剰の熱が溶解された細胞の内容物を構築することおよび損害を与えることを防ぐための冷却システムを必要とする。さらに、この機器は、動作の間で洗浄されおよび浄化されることが必要であり、そして感染性物質が取り扱われる場合には、大きな閉じ込めシステム(スペル)が必要とされる。このシステムのさらなる欠点は、溶液が実質的に同じサイズを有する粒子だけを含まなければならず、その結果このシステムは、多くの未処理の臨床試料または生物学的試料を処理するために使用され得ない。
【0007】
細胞が超音波撹拌に細胞を供することによって溶解され得ることもまた、公知である。この方法は、特許文献3においてMurphyらによって開示されている。この方法によれば、細胞の溶液または懸濁液は、小さなビーズとともに容器の中に配置される。次いで、容器は、細胞が破壊して、細胞成分を放出するまで、超音波浴中に配置される。この方法は、いくつかの欠点を有する。第一に、浴中で超音波エネルギーは、均一でない、その結果、技術者は、浴の中に高エネルギー領域を置き、そしてその領域の中に容器を置かなければならない。超音波エネルギーの不均一はまた、矛盾した結果を生じる。第2に、超音波浴は、容器の中にエネルギーを集中しない、その結果、細胞の破壊を完全にするためにはしばしば数分間、本発明の方法と比較する場合には比較的長時間かかる。第3に、細菌戦検出、法医学分析、または環境サンプルの体験テストで使用するための領域の中で超音波浴を実施することは、実践的ではない。
【0008】
細胞の超音波溶解のための別の方法は、Liに対する特許文献4に開示されている。核酸は、この方法に従って、40kHz以上の周波数で共鳴する超音波発生装置の振動エレメントとの物理的接触をもたらすサンプル容器中に含まれるサンプルを非侵襲的に超音波処理することによって細胞、細菌およびウイルスから放出される。超音波装置の振動エレメントとサンプル容器の壁を接触することの1つ主要な問題は、壁に対する超音波装置の振動が、壁に対して重大な損害(一般的には、壁が溶解するかまたはひびが入るか)を非常に引き起こし、作業領域の汚染、操作者の健康害、および分析されるサンプルの損失を導きそうなことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,652,141号明細書
【特許文献2】米国特許第5,856,174号明細書
【特許文献3】米国特許第5,374,522号明細書
【特許文献4】米国特許第4,983,523号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(要旨)
本発明は、細胞またはウイルスを破壊して、そこから核酸を放出するための改良された装置および方法を提供する。
【0011】
好ましい実施形態では、装置は、破壊されるべき細胞またはウイルスを含む液体またはゲルを捕捉するためのチャンバを有する容器を備える。容器は、チャンバを規定する少なくとも1つの壁を備え、そして壁は、チャンバに対して外側の表面を有する。装置はまた、トランスデューサーデバイスが、壁に連結される場合に、チャンバで圧縮波または圧力パルスを発生させるために十分な操作振動および操作振幅で振動するためのトランスデューサーデバイスも備える。装置はさらに、壁の中の応力を生成するために十分な前負荷力を用いて壁の外部表面にトランスデューサーデバイスを結合するための手段を包含する。壁が、前負荷力によって圧力を加えられる場合、壁の固有周波数は、トランスデューサーデバイスの操作周波数に等しいかまたはトランスデューサーデバイスの操作周波数の50%未満で、トランスデューサーデバイスの操作周波数とは異なる。
【0012】
別の局面によれば、本発明は、細胞またはウイルスを破壊するための方法を提供する。この方法は、容器のチャンバ中で細胞またはウイルスを含む液体またはゲルを捕捉する工程を包含する。この容器は、チャンバを規定する少なくとも1つの壁を備え、そしてこの壁は、チャンバに対して外側の表面を有する。トランスデューサーデバイスは、壁の中に応力を生成するために十分な前負荷力を用いて壁の外部表面に連結される。トランスデューサーデバイスは、チャンバ中で圧縮波または圧力パルスを発生するために十分な振動および振幅で操作される。壁が、前負荷力によって圧力を加えられる場合、壁の固有周波数は、トランスデューサーデバイスの操作周波数に等しいかまたはトランスデューサーデバイスの操作周波数の50%未満で、トランスデューサーデバイスの操作周波数とは異なる。
【0013】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
細胞またはウイルスを破壊するための装置であって、該装置は、以下:
a)細胞またはウイルスを保持するためのチャンバを有する容器であって、ここで、該容器は、該チャンバを規定する少なくとも一つの壁を備え、そして、ここで、該壁は、該チャンバに対する外部表面を有する、容器;
b)トランスデューサーデバイスであって、該トランスデューサーデバイスが該壁に結合される場合、該チャンバ中で圧力波または圧力パルスを発生するのに十分な操作周波数および操作振幅で振動するためのトランスデューサーデバイス;
c)該壁内に圧力を作り出すために十分な前負荷力で該壁の外部表面に該トランスデューサーデバイスを結合するための手段;
を備え、
ここで、該壁が、該前負荷力によって圧力を加えられる場合、該壁の固有周波数は、該トランスデューサーデバイスの該操作周波数に等しいか、または該トランスデューサーデバイスの該操作周波数と該トランスデューサーデバイスの該操作周波数の50%未満で異なる、
装置。
(項目2)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記操作周波数は、超音波である、装置。
(項目3)
項目2に記載の装置であって、ここで、上記トランスデューサーデバイスは、上記壁に結合される先端を有する超音波ホーンを備え、そして、ここで、上記操作周波数は、該ホーンの共鳴周波数である、装置。
(項目4)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記トランスデューサーデバイスは、圧電スタックを備える、装置。
(項目5)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記壁は、上記トランスデューサーデバイスに関しドーム型および凸状である、装置。
(項目6)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記壁は、上記トランスデューサーデバイスに対し球状および凸状である、装置。
(項目7)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記壁は、平らである、装置。
(項目8)
項目7に記載の装置であって、ここで、上記壁は、中心部分および該中心部分から半径方向に延びる剛性リブを備える、装置。
(項目9)
項目1に記載の装置であって、上記細胞またはウイルスを破壊するための上記チャンバ中にビーズをさらに包含する、装置。
(項目10)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記チャンバは、該チャンバを通るサンプルの流れを可能なように配置される少なくとも二つの口を有し、ここで、該装置は、該サンプルが、該チャンバを通って流れる場合、上記細胞またはウイルスを破壊するために、該チャンバ中に固層物質をさらに備える、装置。
(項目11)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記壁が、上記前負荷力によって圧縮される場合、壁の固有周波数は、上記トランスデューサーデバイスの上記操作周波数に等しいか、または該トランスデューサーデバイスの該操作周波数と該トランスデューサーデバイスの該操作周波数の25%未満で異なる、装置。
(項目12)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記壁が、上記前負荷力によって圧縮をかけられる場合、該壁の上記固有周波数は、上記トランスデューサーデバイスの上記操作周波数に等しいか、または該トランスデューサーデバイスの該操作周波数と該トランスデューサーデバイスの該操作周波数の10%未満で異なる、装置。
(項目13)
項目1、11、または12のいずれかの一項に記載の装置であって、ここで、上記壁が、上記前負荷力によって圧縮をかけられる場合、該壁の上記固有周波数は、上記トランスデューサーデバイスの上記操作周波数より小さいか、または該操作周波数と等しい、装置。
(項目14)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記トランスデューサーデバイスの上記操作周波数は、20〜120kHzの範囲であり、該トランスデューサーデバイスの振動動作の振幅は、5〜60マイクロメートルの範囲であり、そして上記前負荷力は、2〜50Nの範囲である、装置。
(項目15)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記壁に上記トランスデューサーデバイスを結合するための手段は、上記容器および上記トランスデューサーデバイスを互いに対して保持するための支持構造を備え、そして該トランスデューサーデバイスの振動表面は、該壁の外部表面と接触し、該支持構造は、上記前負荷力を提供するための弾性体を備える、装置。
(項目16)
項目15に記載の装置であって、ここで、上記弾性体は、バネを含む、装置。
(項目17)
項目1に記載の装置であって、ここで、上記壁に上記トランスデューサーデバイスの上記振動表面を結合するための上記手段は、クランプを含む、装置。
(項目18)
細胞またはウイルスを破壊するための方法であって、該方法は、以下:
a)容器のチャンバ中で該細胞または該ウイルスを含む液体またはゲルを保持する工程であって、ここで、該容器は、該チャンバを規定する少なくとも一つの壁を備え、そしてここで、該壁は、該チャンバに対する外部表面を有する、工程;
b)該壁の中に圧力を作り出すために十分な前負荷力で該壁の該外部表面にトランスデューサーデバイスを結合する工程;ならびに
c)該チャンバ中で圧力波または圧力パルスを発生するのに十分な周波数および振幅で該トランスデューサーデバイスを操作する工程;
を包含し、ここで、該壁が、該前負荷力によって圧力をかけられる場合、該壁の固有周波数は、該トランスデューサーデバイスの操作周波数に等しいか、または該トランスデューサーデバイスの操作周波数と該トランスデューサーデバイスの操作周波数の50%未満で異なる、
方法。
(項目19)
項目18に記載の方法であって、ここで、上記操作周波数は、超音波である、方法。
(項目20)
項目18に記載の方法であって、ここで、上記トランスデューサーデバイスは、上記壁に結合される先端を有する超音波ホーンを備え、そして、ここで、上記操作周波数は、該ホーンの共鳴周波数である、方法。
(項目21)
項目18に記載の方法であって、ここで、上記トランスデューサーデバイスは、圧電スタックを備える、方法。
(項目22)
項目18に記載の方法であって、ここで、上記壁は、上記トランスデューサーデバイスに対してドーム型かつ凸状である、方法。
(項目23)
項目18に記載の方法であって、ここで、上記壁は、上記トランスデューサーデバイスに対して球状かつ凸状である、方法。
(項目24)
項目18に記載の方法であって、ここで、上記壁は、平らである、方法。
(項目25)
項目24に記載の方法であって、ここで、上記壁は、中心部分および該中心部分から半径方向に延びる剛性リブを備える、方法。
(項目26)
項目18に記載の方法であって、上記チャンバ中でビーズを撹拌して上記細胞または上記細胞を破壊する工程をさらに包含する、方法。
(項目27)
項目18に記載の方法であって、上記細胞または上記ウイルスを含む流体サンプルを押出すことによって、上記チャンバ中の固相材上に該細胞または該ウイルスを捕捉して、該チャンバを通って流す工程をさらに包含する、方法。
(項目28)
項目18に記載の方法であって、ここで、上記壁が、上記前負荷力によって圧力をかけられる場合、該壁の上記固有周波数は、上記トランスデューサーデバイスの上記操作周波数に等しいか、または該トランスデューサーデバイスの該操作周波数の25%未満で該トランスデューサーデバイスの該操作周波数とは異なる、方法。
(項目29)
項目18に記載の方法であって、ここで、上記壁が、上記前負荷力によって圧力をかけられる場合、該壁の上記固有周波数は、上記トランスデューサーデバイスの上記操作周波数に等しいか、または該トランスデューサーデバイスの該操作周波数の10%未満で、該トランスデューサーデバイスの該操作周波数とは異なる、方法。
(項目30)
項目18、28、または29のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、上記壁が、上記前負荷力によって圧力をかけられる場合、該壁の上記固有周波数は、上記トランスデューサーデバイスの該操作周波数未満か、または該操作周波数と等しい、方法。
(項目31)
項目18に記載の方法であって、ここで、上記トランスデューサーデバイスの操作周波数は、20〜120kHzの範囲であり、該トランスデューサーデバイスの振動動作の振幅は、5〜60マイクロメートルの範囲であり、そして上記前負荷力は、2〜50Nの範囲である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、細胞またはウイルスを破壊するための装置の等尺図である。
【図2】図2は、図1の装置の断面図である。
【図3】図3は、図1の装置における使用のための容器の断面図である。トランスデューサーデバイスの振動表面は、容器の壁に連結される。
【図4】図4は、図3の壁の断面図である。
【図5】図5は、図1の装置を組み込む流体システムの概略ブロック図である。
【図6A】図6A−6Bは、破壊されるべき細胞またはウイルスを捕捉するための容器中で使用するために適合した別の壁の反対側の等尺図である。
【図6B】図6A−6Bは、破壊されるべき細胞またはウイルスを捕捉するための容器中で使用するために適合した別の壁の反対側の等尺図である。
【図7】図7は、図6A−6Bの壁を組み込む容器の部分的に一部を切り取った等尺図である。
【図8】図8は、図7の容器の底平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
本発明は、細胞またはウイルスを破壊するための装置および方法を提供する。細胞は、動物細胞、植物細胞、胞子、細菌または微生物であり得る。ウイルスは、RNA核またはDNA核を取り巻くタンパク質コートを有する任意の型の感染性薬剤であり得る。
【0016】
本明細書中で引用される全ての公開および特許出願は、各々の公開または特許出願が、参考として援用されることを特別かつ個々に示される場合、参考として本明細書中で援用される。
【0017】
図1−2は、本発明の第一の実施形態による細胞またはウイルスを破壊するための装置10を示す。図1は、装置10の等尺図を示し、そして図2は、装置10の断面図を示す。図1−2で示されるように、装置10は、細胞またはウイルスを保持するためのチャンバ40を有するカートリッジまたは容器18を備える。この容器は、チャンバ40を規定する壁46を備える。装置10はまた、壁46の外部表面(すなわち、チャンバ40に対して外部にある壁46の表面)に連結される振動表面を有するトランスデューサーデバイス38(例えば、超音波ホーンアセンブリ)を備える。
【0018】
トランスデューサーデバイス38は、壁46と直接接触する振動表面を配置することによって壁46に結合され得る。あるいは、トランスデューサーデバイス38の振動表面は、別のエレメント(例えば、物質の層)によって壁46に連結され得る。ゲルまたは液体は、2つの間の接触を改良するために、トランスデューサーデバイスの振動表面またはチャンバ壁の外部表面に提供され得る。
【0019】
壁46は、トランスデューサーデバイス38の振動表面とチャンバ40の内容物との間の界面を提供する。好ましい実施形態において、壁46は、トランスデューサーデバイス38に関し丸天井型かつ凸面である(すなわち、壁46は、トランスデューサーデバイスに向って外側に湾曲している)。壁は、好ましくは、支持されない場合(可撓性フィルムまたは可撓性膜と対向するように)、この形状を保持する構造体であるが、それでもトランスデューサーデバイスの振動動作に応じたゆがみを許容するために十分に弾力性がある。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「トランスデューサーデバイス」は、電気的エネルギーを振動エネルギーに変換するデバイスを意味することが意図される。トランスデューサーデバイスは、チャンバ壁46を偏向するための振動表面を有する。トランスデューサーデバイス38は、壁46を偏向し、そしてチャンバ40中で圧力パルスまたは圧縮波を生成するのに十分な操作周波数および操作的振幅で振動し得る。本発明の好ましい実施形態において、トランスデューサーデバイス38は、チャンバ40を超音波処理するための超音波ホーンアセンブリである。この超音波ホーンアセンブリは、圧電物質および壁46に接触するための振動先端部50を有するホーンを備える。このようにホーン先端部50は、トランスデューサーデバイスの振動表面を提供する。この実施形態において、トランスデューサーデバイスの操作周波数は、好ましくは、ホーンの共鳴周波数である。
【0021】
超音波ホーンアセンブリは、本発明で好ましいが、異なる型のトランスデューサーデバイスが、本発明の装置および方法において使用され得ることは理解されるべきである。適切なトランスデューサーデバイスとしては、超音波トランスデューサーデバイス、圧電トランスデューサーデバイス、磁気ひずみトランスデューサーデバイス、または静電気トランスデューサーデバイスが挙げられる。トランスデューサーデバイスはまた、創傷コイルを有する電磁デバイス(例えば、ボイス コイル モーターまたはソレノイドデバイス)であり得る。トランスデューサーデバイスの操作周波数は、超音波(すなわち、約20kHzより上)または超音波より下(例えば、60〜20,000Hzの範囲)であり得る。より高い周波数(例えば、超音波)を使用することに対する有利な点は、細胞破壊が、非常に迅速であり、そして10秒〜20秒でしばしば完了し得ることである。不利な点は、超音波トランスデューサーデバイスは、単純な機械的振動機(例えば、スピーカーまたは電磁式コイルデバイス)よりしばしば高価であることである。
【0022】
一つの代替的な実施形態において、トランスデューサーデバイス38は、圧電物質(例えば、圧電物質の層から製作される圧電スタック)を備える。圧電物質を横切るAC電圧の適用は、圧電物質が、チャンバ40中で細胞またはウイルスを破壊するために適切な周波数および振幅で振動することを引き起こす。この実施形態において、圧電デバイスは、好ましくは、チャンバ壁46の外部表面と接触して配置される物質の頂部の層(例えば、シート金属またはマイラー)を備え、その結果、圧電物質は、物質の頂部の層を通じてチャンバ壁に連結される。この実施形態に対する有利な点は、圧電スタックが、迅速な細胞破壊のための超音波周波数で振動するように製造され得、そして超音波ホーンアセンブリよりかなり安価である。
【0023】
装置10は、前負荷力によって壁46の外部表面にトランスデューサーデバイス38を連結するための支持構造12をさらに備える。この支持構造12は、互いに対し容器18とトランスデューサーデバイス38を圧縮し、そしてトランスデューサーデバイス38の振動表面は、チャンバ壁46の外部表面に連結される。一つの実施形態において、支持構造12は、スタンド16を有する基本構造体14を備える。トランスデューサーデバイス38は、ガイド24によって基本構造体14にスライド可能に取り付けられる。ガイド24は、基本構造体14と共に一体的に形成されるか、または基本構造体に固定して装着されるかのいずれかである。支持構造12はまた、容器18を保持するための基本構造体14に装着されたホルダー20を備える。ホルダー20は、チャンバ壁46への接触を提供するU型底部を有する。ガイド24およびホルダー20は、各々、壁46の外部表面が、トランスデューサーデバイス38に接触するように、トランスデューサーデバイス38および容器18を保持するように配置される。支持構造12はまた、容器18に対する先端保持具22を備える。保持具22は、容器18で形成される出口ポート44に接触可能にするようにU型である。
【0024】
支持構造12は、壁46に対しトランスデューサーデバイス38を押しつけるようにトランスデューサーデバイス38に対し力を適用するためのバネ26のような弾性体をさらに備える。トランスデューサーデバイス38の振動表面は、従って、壁46の中に応力を生成するために十分な前負荷力によって壁46に連結される。バネ26は、バネガイド32と結合体28の基部との間に配置され、そしてトランスデューサーデバイス38の底を支える。図1中で示されるように、結合体28は、好ましくは、トランスデューサーデバイス38の電源コード(示さず)が、配置され得る窓30を有する。ボルトまたはスクリュウ36は、基本構造体14中に形成される調整溝34中にバネガイド32を保持する。バネ26によって提供される力の大きさは、バネガイド32を保持するボルト36を緩めることによって、新しい位置にガイド32を動かすことによって、そして新しい位置でガイド32を保持するようにボルト36を締め直すことによって調整され得る。いったん、バネ26の位置が、壁46にトランスデューサーデバイス38を結合するための適切な前負荷力を提供するように調整されると、装置10の一回の使用から次の使用で、前負荷を一定に維持することが望ましい。
【0025】
図3は、容器18の断面図を示す。容器18は、先端部分52、中間部分54および底部分56を含む本体を有する。中間部分54は、チャンバ40への入り口42を規定し、そして先端部分52は、チャンバへの出口44を規定する。口42、44は、チャンバ40を通る液体サンプルの流れを許容するように位置付けられる。壁46は、ガスケット58、60を使用して中間部分54と底部分56との間に保持されている。あるいは、壁46は、単に中間部分54に対して熱密封されるか、または中間部分54と一体化して成形されるかであり得、その結果、底部分56およびガスケット58、60は、除去され得る。必要に応じて、容器18は、サンプルが、チャンバ40を通って流れるにつれて、破壊される細胞またはウイルスを捕捉するために、チャンバ40中に固層材(例えば、フィルター48)を備える。適切な固相材としては、例えば、フィルター、ビーズ、繊維、膜、ガラスウール、フィルター紙、ポリマーおよびゲルが挙げられる。図3には、1つのフィルターだけが示されているが、容器18は、2000年12月7日に公開された国際公開番号WO00/73413に教示されているように、複数のフィルターを備え得る。
【0026】
気泡がチャンバ40から逃げ得ることを確実にするため、液体が、フィルター48およびチャンバ40を通って(重力に対して)上に流れる方向で容器18を使用することが望ましい。チャンバ40を通る上方への流れは、チャンバからの気泡の流れを助ける。従って、チャンバ40の中に液体が入るための入り口42は、一般的に、出口44より低い高さにあるべきである。チャンバ40の容積容量は、通常50〜500マイクロリットルの範囲である。チャンバ40の容積容量は、チャンバが小さくて、フィルター48が詰まるようになることなく、液体サンプルから分離された分析物の濃縮を提供するように選択される。
【0027】
容器18の本体を形成する部分52、54、56は、好ましくは、成形された重合体部品(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリルなど)である。成形は、大量製造にとって好ましいが、先端部分52、中間部分54、および底部分56を機械化することもまた可能である。部分52、54、56は、スクリューまたはファスナーによって一緒に保持され得る。あるいは、超音波結合、溶媒結合、またはスナップはめ込み設計は、容器18を組み立てるために使用され得る。容器18を製作するための別の方法は、この本体を単一部分として成形し、そして壁46およびフィルター48をこの本体に熱密封することである。
【0028】
この装置は、必要に応じて、そこから細胞内物質(例えば、核酸)を放出させるように細胞またはウイルスを破裂させるために、チャンバ40中にビーズ66を含む。トランスデューサーデバイス38によって発生される圧力パルスまたは圧力波は、ビーズ66を激しく動かし、そしてビーズ66の動きは、細胞またはウイルスを破裂する。細胞またはウイルスを破裂するための適切なビーズとしては、ホウケイ酸ガラス、石灰ガラス、シリカ、およびポリスチレンビーズが挙げられる。このビーズは、多孔性または非多孔性であり得、そして好ましくは、5〜200マイクロメートルの範囲の平均直径を有する。現在好ましい実施形態において、ビーズ66は、約106マイクロメートルの平均直径を有するポリスチレンビーズである。
【0029】
図5は、この装置と共に使用するために適切な流体システムを示す。このシステムは、溶解緩衝液を保持するためのボトル72、洗浄溶液を含むボトル74、および流体サンプルを保持するためのサンプル容器76を備える。ボトル72、74およびサンプル容器76は、シリンジポンプ78のバルブ口にチューブ経由で接続されている。容器18の入り口はまた、シリンジポンプ78に接続されている。容器18の出口は、分配バルブ80の共通口に接続されている。このシステムはまた、サンプルから取り出された細胞内物質(例えば、核酸)を受け取るための収集チューブ82、および廃棄物を受け取るための廃棄物容器84を備える。収集チューブ82および廃棄物容器84は、分配バルブ80の周辺口にそれぞれ接続されている。
【0030】
操作の際に、シリンジポンプ78は、流体サンプルを、容器18を通ってサンプル容器76から、そして廃棄物容器84の中に汲み出す。流体サンプルが、チャンバ40(図3)中のフィルター48を通って流れることを強いられる場合、サンプル中の細胞またはウイルスがフィルター48によって捕捉される。チャンバ40は、サンプルが、フィルター48の詰まりを防ぐことを助けるようにチャンバを通って流れることを強いられる場合、超音波処理され得る。次に、シリンジポンプ78は、洗浄溶液を容器18を通ってボトル74から、そして廃棄物容器84の中に汲み出す。洗浄溶液は、チャンバ40からPCRインヒビターおよび汚染物質を洗い出す。
【0031】
次の工程において、シリンジポンプ78は、ボトル72から容器18の中に溶解緩衝液を汲み出し、そしてチャンバ40が液体で満たされる。この溶解緩衝液は、力学的圧力パルスまたは力学的圧力波が伝達され得る媒体であるべきである。例えば、溶解緩衝液は、懸濁液または溶液中で細胞またはウイルスを保持するための脱イオン化水を含み得る。あるいは、溶解緩衝液は、細胞またはウイルスの破壊を目的とするため一つ以上の溶解薬剤を含み得る。しかし、本発明の利点の一つは、厳しい溶解剤が、細胞またはウイルスの首尾よい破壊のために必要とされないことである。記載されているように、フィルターを使用して流体サンプルから細胞またはウイルスを分離することが現在好ましいが、ろ過は、本発明の装置および方法にとって重要でないことが理解されるべきである。例えば、破壊される細胞またはウイルスは、細胞またはウイルスを含む液体でチャンバ40を単に満たすこと(例えば、破壊される細胞またはウイルスを含む水性サンプルでチャンバを満たすこと)によって容器のチャンバ中に配置され得る。この実施形態において、水性サンプルそれ自体が、圧力波または圧力パルスが伝達される液体媒体を提供する。
【0032】
図2を再び参照すると、トランスデューサーデバイス38は、壁46に応力を作製する前負荷力で壁46の外部表面に連結される。チャンバ40中で細胞またはウイルスを破壊するため、トランスデューサーデバイス38が起動される(すなわち、振動動作に誘導される)。トランスデューサーデバイス38の先端50が振動するにつれて、それは壁46を偏向させる。トランスデューサーデバイス38、チャンバ壁46、およびチャンバ46中の液体の相互作用は、壁46の固有周波数、トランスデューサーデバイス38の操作周波数、トランスデューサーデバイス38と壁46との間の前負荷力、およびトランスデューサーデバイス38の振動動作の振幅の関数である。これらのパラメーターは、チャンバ40中で発生される圧力波または圧力パルスの大きさおよびチャンバ中で結果として生じる細胞またはウイルスの破壊を決定する。
【0033】
壁46の固有周波数は、壁が、その最も高い振幅で振動することを引き起こす周波数である。前負荷は、壁46とトランスデューサーデバイス38との間の結合を維持するように適用される。前負荷は、ドーム型の壁46の中に圧縮応力を作り出し、この応力は、壁46の固有周波数を応力のかかっていない状態での固有周波数より下にする。起動された場合、トランスデューサーデバイス38は、壁46とバネ26との間に捕捉された振動構造になる。バネ26と合わせたトランスデューサーデバイス38のかたまりは、バネ26の堅さに依存する固有周波数を有するかたまり/バネシステムである。バネ26は、トランスデューサーデバイス38の好ましい操作周波数(例えば、20〜120kHz)よりずっと低い、約20Hzのかたまり/バネシステムの固有周波数で生じる4〜35Nの範囲で前負荷力を提供するように、通常、選択される。
【0034】
壁が、前負荷力で圧縮される場合であって、壁46の固有周波数が、トランスデューサーデバイス38の操作周波数より非常に多い場合には、このとき、トランスデューサーデバイス(堅い壁と比較的弱いバネとの間に捕捉される場合)は、バネ26の中に励振を強いる。この場合において、トランスデューサーデバイス38は、壁46に繰り返し突き当たるトランスデューサーデバイスの振動表面を有する、携帯用削岩機のように動く。しかし、壁46は、衝撃下でわずかだけ形を崩す、堅い部材のように振舞う。各衝撃は、チャンバ40中でわずかな圧力上昇または圧力パルスを作り出すが、圧力低下は、作り出されず、その結果空洞化は、制限される。このように、この携帯用削岩機技術を使用する場合、トランスデューサーデバイスの振動動作は、チャンバ40中の液体に完全に移されず、そしてたとえあったとしても、細胞またはウイルスの破壊は、制限される。また、壁は、反復衝撃によって損傷され(例えば、溶解されまたはひびが入れられ)得る。
【0035】
壁46が、前負荷力によって圧縮される場合であって、壁46の固有周波数が、トランスデューサーデバイス38の操作周波数より非常に少ない場合、このとき、壁46は、トランスデューサーデバイス38と同じ周波数で振動することができない。トランスデューサーデバイス38および壁46の生じた振動動作は、相から外れ、そして壁およびトランスデューサーデバイスは、物理的に分離する(すなわち、トランスデューサーデバイス38の振動表面は、その前方ストロークで壁46に繰り返し突き当たり、そしてその後退ストロークで物理的に壁から分離する。操作のこの様式は、チャンバ壁を溶解または損傷し得、そしてたとえあったとしても、細胞またはウイルスの破壊は、制限される。
【0036】
本発明によれば、壁が前負荷力によって圧縮される場合に、壁46の固有周波数は、トランスデューサーデバイス38の操作周波数の近くであるはずである。この場合、壁46は、その共鳴周波数でまたはその共鳴周波数の近くで励振され、そして壁46は、溶解することもひびが入ることもなく、チャンバ40にトランスデューサーデバイス38の振動動作を効果的に移す。特に、壁が前負荷力によって圧縮される場合に、壁46の固有周波数は、トランスデューサーデバイスの操作周波数に等しいか、またはトランスデューサーデバイスの操作周波数より50%未満、より好ましくはトランスデューサーデバイスの操作周波数より25%未満、そして最も好ましくはトランスデューサーデバイスの操作周波数より10%未満、トランスデューサーデバイスの操作周波数とは異なるはずである。例えば、トランスデューサーデバイスの振動表面が、40kHzの操作周波数で振動する場合、このとき、壁が、前負荷力によって圧縮される場合には、壁46の固有周波数は、20〜60kHzの範囲、より好ましくは30〜50kHzの範囲、そして最も好ましくは36〜44kHzの範囲であるはずである。
【0037】
前負荷力によって圧縮される場合に、壁46の固有周波数が、上記されているようなトランスデューサーデバイス38の操作周波数に合わせられる場合には、トランスデューサーデバイス38は、チャンバ40中で強力な圧力波または圧力パルスを発生し、そして強力な圧力の低下は、チャンバ中で達成され得ない。空洞化(微視的気泡の生成および破壊)は、チャンバ40中で通常起こる。これらの気泡または空洞が、共鳴サイズに成長する場合、これらは、激しく壊れ、そして非常に高い局所的な圧力変化を生じる。圧力変化は、細胞またはウイルスへの機械的衝撃を提供して、細胞またはウイルスの破壊を生じる。細胞またはウイルスの破壊はまた、トランスデューサーデバイス38の振動動作から生じる鋭い圧力上昇によって引き起こされ得る。さらに、細胞またはウイルスの破壊は、チャンバ40中でビーズ66の激しい動作によって引き起こされ得る。このビーズは、チャンバ中で力学的圧力パルスまたは圧力波によって激しく動かされ、細胞またはウイルスを破裂する。本発明の範囲は、チャンバ40中でのビーズ66の使用に限られない。このビーズ66は、非常に強靭な細胞壁を有する特定の型の細胞(特に胞子)を迅速に破壊するために有効である。他の型の細胞(例えば、血液細胞)は、ビーズを使用することなく、しばしば破壊され得る、より弱い細胞壁を有する。
【0038】
壁が、前負荷力によって圧縮される場合、チャンバ壁の固有周波数は、トランスデューサーデバイスの操作周波数に合わせられるので、壁は、実質的な熱が、界面で増加することなく、トランスデューサーデバイスの振動表面からエネルギーをチャンバに効果的に移す。このことは、容器を溶解することもひびを入れることもなく、チャンバへのエネルギーの効果的な移送およびチャンバ中での細胞またはウイルスの迅速な溶解を可能にする。
【0039】
チャンバ40は、好ましくは20〜120kHzの範囲の操作周波数で10〜20秒間超音波処理される。例示的なプロトコールにおいて、チャンバは、40kHzの周波数で15秒間超音波処理される。トランスデューサーデバイスの振動動作の振幅は、好ましくは、5〜60マイクロメートルの範囲である(ピーク間で測定される)。図5を再び参照して、細胞またはウイルスの破壊後、シリンジポンプ78は、放出された細胞内物質(例えば、核酸)を、容器18から収集チューブ82の中に汲み出す。
【0040】
図4は、壁46の断面図を示す。壁46は、トランスデューサーデバイスに関してドーム型かつ凸面である(すなわち、壁46は、トランスデューサーデバイスに向って外側に曲がっている)。壁46のドーム型設計について有利な点は、ドーム型は、壁がチャンバにトランスデューサーデバイスの振動動作を移すため偏向することができないほど非常に堅くなることなく、(平らな壁と比較して)壁の固有周波数を増加することである。壁のドーム型部分は、好ましくは球状である(すなわち、球の弧の形を有する)。壁46はまた、容器の他の部分(図3で示される)の間に壁46をクランプするため平らな外リム70を備え得る。あるいは、壁46は、容器の一つ以上の部分と一体的に成形され得、そして平らな外リム70は、排除され得る。壁が、前負荷力によって圧縮される場合、壁46の固有周波数は、前負荷力および壁の以下のパラメーター:厚さT、球半径R、基本半径A、基本の高さまたは上昇H、壁物質の密度、弾性係数、およびポアソン比、に依存する。
【0041】
第1作業実施例の場合、本出願人は、0.5mmの厚さT(壁の全体にわたって均一の厚さ)、12.7mmの球半径R、5.16mmの基本半径A、および1.5mmの上昇Hを有する、ドーム型壁を使用して成功した。壁は、3378N/mmの弾性係数、1.42g/cmの密度、および0.35のポアソン比を有するアセタール(例えば、Delrin(登録商標)、Du Pont Inc.)から作製した。トランスデューサーデバイスは、8.9Nの前負荷力で壁に結合させた。壁は、約38kHzの固有周波数を有した。この実施例において、トランスデューサーデバイスは、壁に接触するための振動先端を有する超音波ホーンアセンブリ(Sonics&Materialから市販されている)であった。トランスデューサーデバイスは、40kHzの操作周波数(ホーンの共鳴振動)で10〜20秒間操作された。振動動作の振幅(ピーク間で測定される)は、25〜40マイクロメートルの範囲であった。
【0042】
第2の研究例として、出願人は、0.5mmの厚さT(壁の全体にわたって一定の厚さ)、19mmの球半径R、5.16mmの基本半径A,および1.2mmの上昇Hを有するドーム型壁を使用して成功した。この壁は、3378N/mmの弾性係数、1.42g/cmの密度、および0.35のポアソン比を有するアセタール(例えば、Delrin(登録商標)、Du Pont Inc.)から作られた。トランスデューサーデバイスが、4.4Nの前負荷力でこの壁に結合された。この壁は、約32kHzの固有周波数を有した。このトランスデューサーデバイスは、この壁に接触させるための振動先端を有する超音波ホーンアセンブリであった。このトランスデューサーデバイスは、40kHzの操作周波数(ホーンの共鳴振動)で10〜20秒間操作された。振動運動の振幅(ピークからピークを測定した)は、25〜40マイクロメートルの範囲であった。
【0043】
上記実施例は、本発明の範囲を制限することを意図されない。多くの他のパラメーター値は、壁46の固有周波数が、トランスデューサーデバイスの操作周波数に等しいかまたはトランスデューサーデバイスの操作周波数の50%以内であるという判定基準を満たすように選択され得る。これらの判定基準を満たすために適切なパラメーターは、広く市販されている有限要素分析ソフトウェアを使用して選択され得る。例えば、ソフトウェアパッケージCOSMOS/Works(登録商標)は、Structural ResearchおよびAnalysis Corporation、12121 Wilshire Blvd.7th Floor、Los Angeles、California 90025から市販されている。
【0044】
適切なチャンバ壁を設計する際に、壁の厚さTは、好ましくは、0.25〜1mmの範囲内である。この壁の厚さTが、0.25mmより薄い場合、壁46は、製造するのに弱すぎ得るかまたは製造するのが困難であり得る。この壁の厚さTが、1mmより厚い場合、壁は、トランスデューサーデバイスの振動運動に応答して、適切に偏向させるには堅すぎ得る。壁46は、好ましくは成形プラスティック部分である。壁46に適切な物質としては、アセタール、ポリプロピレン、またはポリカーボネートが挙げられる。さらに、トランスデューサーデバイスの操作周波数は、好ましくは20〜120kHzの範囲であり、トランスデューサーデバイスの振動表面の振幅(ピークからピーク)は、好ましくは、5〜60マイクロメートルの範囲であり、そして前負荷力は、好ましくは2〜50Nの範囲である。
【0045】
(代替的実施形態)
ドーム型のチャンバ壁が、現在好ましいが、この壁は、代替的な形状(例えば、剛性リブを含むか、平らであるか、または異なる厚さ部分を有する、壁)を有し得る。例えば、一つの代替的実施形態において、チャンバ壁は、平らな円形ディスクの形態を有する。この平らな壁への前負荷力の適用は、非圧力状態でその固有周波数を超えてその固有周波数を増加させる張力を作り出す。この壁の寸法は、この壁が前負荷力によって圧縮される場合、この壁の固有周波数が、トランスデューサーデバイスの操作周波数に等しいか、またはこのトランスデューサーデバイスの操作周波数の50%未満、より好ましくはこのトランスデューサーデバイスの操作周波数の25%未満、そして最も好ましくはこのトランスデューサーデバイスの操作周波数の10%未満、このトランスデューサーデバイスの操作周波数とは異なるように選択される。この平らなチャンバ壁についての寸法を選択する際に、壁の厚さは、好ましくは0.25〜1mmの範囲である。この壁の厚さが、0.25mmより薄い場合、平らな壁は、弱すぎ得る。この壁の厚さが、1mmより厚い場合、この壁は、トランスデューサーデバイスの振動運動に応答して適切に偏向させるには堅すぎ得る。
【0046】
適切で平らな壁の特定の研究例として、この壁は、4.5mmの半径および0.5mmの厚さ(壁の全体にわたって一定の厚さ)を有する円形ディスクの形態であり得る。この壁は、3378N/mmの弾力係数、1.42g/cmの密度、および0.35のポアソン比を有するアセタール(例えば、Delrin(登録商標)、Du Pont Inc.)から作られる。トランスデューサーデバイスは、4.4Nの前負荷力でこの壁に結合される。この壁は、前負荷力によって圧縮される場合、約20kHzの固有周波数を有する。このトランスデューサーデバイスは、20kHzの操作周波数で10〜20秒間操作される。このトランスデューサーデバイスの振動運動の振幅(ピークからピークを測定した)は、好ましくは、5〜60マイクロメートルの範囲である。この実施例は、本発明の範囲を制限することを意図されず、そして多くの他のパラメーター値は、この壁が前負荷力によって圧縮される場合に、この壁の固有周波数が、トランスデューサーデバイスの操作周波数の50%以内である判定基準を満たすように、(例えば、有限要素分析ソフトウェアを使用して)選択され得る。
【0047】
図6A−6Bは、本発明によるトランスデューサーデバイスの振動表面を接触させるための別のチャンバ壁86を示す。図6Aに示されるように、壁86の一側面は、中心部分88およびこの中心部分88から半径方向に延びる剛性リブ90を有する。この壁はまた、リブ90の間に形成された凹部92を有する。図6Bに示されるように、この壁86の他の側面は、平らな表面94を有する。図7は、壁86を有する容器18の部分的に切り取られた等尺図を示す。この壁86は、平らな表面を有する壁の側面が、チャンバに対し内側であるように、そしてリブ90を有する壁の側面が、このチャンバに対し外側であるように、配置されることが好ましい。このリブ90は、壁が、トランスデューサーデバイスの振動運動に応答して偏向させることができないほど非常に堅いことに起因することなく、(平らな壁と比較して)壁86の固有周波数を増加するので、有利である。
【0048】
図8は、壁86を有する容器18の底面図を示す。中心部分88は、トランスデューサーデバイスを接触させるための壁86の外部表面を提供する。この壁86の寸法は、前負荷力によって圧縮される場合、壁の固有周波数が、トランスデューサーデバイスの操作周波数に等しいか、またはトランスデューサーデバイスの操作周波数の50%以内、より好ましくはこのトランスデューサーデバイスの操作周波数の25%以内、そして最も好ましくはこのトランスデューサーデバイスの操作周波数の10%以内である判定基準を満たすように選択される。これらの判定基準を満たすために適切な壁の寸法は、有限要素分析ソフトウェア(例えば、Structural ResearchおよびAnalysis Corporationから市販されているCOSMOS/Works(登録商標))を使用して選択され得る。壁86は、好ましくは、成形プラスチック部分である壁86に適切な物質としては、アセタール、ポリプロピレン、またはポリカーボネートが挙げられる。
【0049】
図7を再度参照すると、リブ壁(ribbed wall)86とトランスデューサーデバイスとの相互作用は、ドーム型の壁と上記されたトランスデューサーデバイスとの相互作用に類似する。トランスデューサーデバイスの振動表面は、壁において圧力(代表的には、圧縮力と張力との混合)を作り出す前負荷力で壁86の外部表面に結合される(好ましくは、壁の中心部分に結合される)。容器18のチャンバ中で細胞またはウイルスを破壊するため、トランスデューサーデバイスが起動され、そしてこのトランスデューサーデバイスの振動表面は、壁86を偏向させる。前負荷力によって圧縮される場合に、壁86の固有周波数が、上記されたようなトランスデューサーデバイスの操作周波数に合わせられる場合、このトランスデューサーデバイスは、チャンバ中で強力な圧力波または圧力パルスを発生し、そして強力な圧力低下が、このチャンバ中で達成され得る。空洞化は、通常、チャンバ中での細胞またはウイルスの破壊の結果として生じる。さらに、細胞またはウイルスの破壊は、必要に応じてチャンバ中でのビーズの激しい運動によって引き起こされ得る。
【0050】
チャンバは、好ましくは、20〜120kHzの範囲中の操作周波数で10〜20秒間超音波処理される。例示的なプロトコールにおいて、チャンバは、40kHzの周波数で15秒間超音波処理される。トランスデューサーデバイスの振動運動の振幅は、好ましくは、5〜60マイクロメートルの範囲(ピークからピークを測定した)である。チャンバの先端壁は、必要に応じて、流動リブ96を有し得る。この流動リブ96は、出口ポート44を通じてチャンバから液体および空気の気泡をチャネリングするために有用である。
【0051】
細胞またはウイルスを保持するための容器は、上記の好ましい実施形態に記載されている特別な容器を必要としない。細胞またはウイルスを保持するためのチャンバを有する任意の型の容器は、この容器が、本発明の原理に従って適切なチャンバ壁を有する限り、本発明を実用化するために使用され得る。適切な容器としては、反応容器、キュベット、カセット、およびカートリッジが挙げられるが、これらに限定されない。この容器は、複数のサンプル調製および分析機能を実施するため(例えば、溶解した細胞またはウイルスから放出される核酸を精製するため、この核酸を試薬と混ぜ合わせるため、ならびに/またはこの核酸を増幅および検出するため)の複数のチャンバおよび/または複数のチャネルを有し得る。このような容器は、2000年5月30日に出願された国際出願番号PCT/US00/14738、2001年7月26日に出願された国際出願番号PCT/US01/23776、米国特許第6,374,684号、米国特許第6,391,541号、および米国特許第6,440,725号において開示されている。あるいは、この容器は、破壊のために細胞またはウイルスを保持するための単一チャンバだけを有し得る。
【0052】
本発明の装置および方法に従って、前負荷力を用いてチャンバ壁にトランスデューサーデバイスの振動表面を結合するための多くの異なる可能な手段が存在する。例えば、一つの代替的な実施形態において、この結合手段は、トランスデューサーデバイスおよび容器を互いに圧縮するための万力およびとめ金を備える。別の実施形態において、この結合手段は、容器がサンプル処理のために配置される器具または装置を備える。この器具は、容器を受け取るためのネスティング部位を備え、そしてトランスデューサーデバイスが、この器具内に配置され、その結果、このトランスデューサーデバイスの振動表面は、容器がネスティング部位に配置された場合に、チャンバ壁の外部表面と隣接する。この器具は、チャンバ壁に対しトランスデューサーデバイスを圧縮するための前負荷力を提供するための弾性体(例えば、バネ)を備え得る。あるいは、トランスデューサーデバイスは、単に、器具内に強固に固定され得、そして容器は、例えば、容器上のふたを閉めることによって前負荷力を提供するためにトランスデューサーデバイスの表面に対しクランプ留められる。
【0053】
別の実施形態において、この結合手段は、トランスデューサーデバイスおよび容器を一緒に圧縮するために気圧を適用するための圧力システムを備える。あるいは、磁気力または重力が、前負荷力を用いてトランスデューサーデバイスおよび容器を結合するために使用され得る。本発明の各実施形態において、力は、トランスデューサーデバイス(もしくはこのトランスデューサーデバイスが配置される固定具)、容器(もしくはこの容器が配置される固定具)、またはトランスデューサーデバイスおよび容器の両方に対し適用され得る。
【0054】
弾性体が、トランスデューサーデバイスとチャンバ壁との間に前負荷力を提供するために使用される実施形態において、適切な弾性体としては、コイルバネ、波型バネ(wave spring)、ねじりバネ、らせんバネ、リーフバネ、楕円形バネ、半楕円形バネ、弾性ゴムバネ、および大気圧バネが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、この弾性体は、コイルバネである。コイルバネは、装置中に配置するために簡単かつ安価であるので、好ましい。さらに、これらの各々の実施形態において、弾性体は、互いに対しトランスデューサーデバイスおよび容器を押すかあるいは引くかのいずれかであるように配置され得る。例として、バネは、押すことまたは引くことのいずれかによって前負荷力を提供するように配置され得る。さらに、複数の弾性体は、力を適用するために使用され得る。
【0055】
従って、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその法的等価物によって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞またはウイルスを破壊するための方法であって、該方法は、以下:
a)容器のチャンバ中で該細胞または該ウイルスを含む液体またはゲルを保持する工程であって、ここで、該容器は、該チャンバを規定する少なくとも一つの壁を備え、そしてここで、該壁は、該チャンバに対する外部表面を有する、工程;
b)該壁の中に圧力を作り出すために十分な前負荷力で該壁の該外部表面にトランスデューサーデバイスを結合する工程;ならびに
c)該チャンバ中で圧力波または圧力パルスを発生するのに十分な周波数および振幅で該トランスデューサーデバイスを操作する工程;
を包含し、ここで、該壁が、該前負荷力によって圧力をかけられる場合、該壁の固有周波数は、該トランスデューサーデバイスの操作周波数に等しいか、または該トランスデューサーデバイスの操作周波数と該トランスデューサーデバイスの操作周波数の50%未満で異なる、
方法。
【請求項2】
請求項に記載の方法であって、ここで、前記操作周波数は、超音波である、方法。
【請求項3】
請求項に記載の方法であって、ここで、前記トランスデューサーデバイスは、前記壁に結合される先端を有する超音波ホーンを備え、そして、ここで、前記操作周波数は、該ホーンの共鳴周波数である、方法。
【請求項4】
請求項に記載の方法であって、ここで、前記トランスデューサーデバイスは、圧電スタックを備える、方法。
【請求項5】
請求項に記載の方法であって、ここで、前記壁は、前記トランスデューサーデバイスに対してドーム型かつ凸状である、方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法であって、ここで、前記壁は、前記トランスデューサーデバイスに対して球状かつ凸状である、方法。
【請求項7】
請求項に記載の方法であって、ここで、前記壁は、平らである、方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法であって、ここで、前記壁は、中心部分および該中心部分から半径方向に延びる剛性リブを備える、方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法であって、前記チャンバ中でビーズを撹拌して前記細胞または前記細胞を破壊する工程をさらに包含する、方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法であって、前記細胞または前記ウイルスを含む流体サンプルを押出すことによって、前記チャンバ中の固相材上に該細胞または該ウイルスを捕捉して、該チャンバを通って流す工程をさらに包含する、方法。
【請求項11】
請求項に記載の方法であって、ここで、前記壁が、前記前負荷力によって圧力をかけられる場合、該壁の前記固有周波数は、前記トランスデューサーデバイスの前記操作周波数に等しいか、または該トランスデューサーデバイスの該操作周波数の25%未満で該トランスデューサーデバイスの該操作周波数とは異なる、方法。
【請求項12】
請求項に記載の方法であって、ここで、前記壁が、前記前負荷力によって圧力をかけられる場合、該壁の前記固有周波数は、前記トランスデューサーデバイスの前記操作周波数に等しいか、または該トランスデューサーデバイスの該操作周波数の10%未満で、該トランスデューサーデバイスの該操作周波数とは異なる、方法。
【請求項13】
請求項11、または12のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、前記壁が、前記前負荷力によって圧力をかけられる場合、該壁の前記固有周波数は、前記トランスデューサーデバイスの該操作周波数未満か、または該操作周波数と等しい、方法。
【請求項14】
請求項に記載の方法であって、ここで、前記トランスデューサーデバイスの操作周波数は、20〜120kHzの範囲であり、該トランスデューサーデバイスの振動動作の振幅は、5〜60マイクロメートルの範囲であり、そして前記前負荷力は、2〜50Nの範囲である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−104372(P2010−104372A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291496(P2009−291496)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【分割の表示】特願2003−556497(P2003−556497)の分割
【原出願日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【出願人】(500065565)
【氏名又は名称原語表記】CEPHEID
【Fターム(参考)】