説明

細胞を操作するための組成物および方法

本開示は、概して、幹細胞および初代細胞の遺伝子操作、および、体細胞、より具体的にはヒト細胞のリプログラミングに関する。特に、そのような操作された細胞の作製および維持のための組成物および方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下で、2008年11月14日に出願された米国仮出願第61/115,013号の恩典を主張し、その開示は、その全体が参照により援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に、遺伝子操作および/または細胞のリプログラミングに関する。特に任意の細胞(たとえば、幹細胞)、例えば胚性幹細胞、胎児幹細胞、または前駆幹細胞を操作することができる、あるいは体細胞を、より低分化状態に、より多能性の胚性幹細胞様の状態に向けて、リプログラミングすることができる、組成物および方法を提供する。こうして産生した幹細胞または幹細胞様の細胞は、研究、医薬およびその他の関連分野において有用であろう。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、分子生物学に関連した組成物および方法を目的とする。特定の局面において、本発明は、細胞工学に向けられた核酸分子および方法を提供する。
【0004】
具体的な局面において、本発明は、部分的には、以下の成分を1つまたは複数(たとえば、1、2、3または4個)有する核酸分子(たとえば、単離された核酸分子)を提供する:(a)OriP部位;(b)EBNA1をコードするDNAセグメント;(c)1つまたは複数(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8個など)の組換え部位(たとえば、1つまたは複数のatt部位);および/または(c)少なくとも1つの選択可能なマーカー(たとえば、少なくとも1つの陽性選択可能なマーカーおよび少なくとも1つの陰性選択可能なマーカーを含む、少なくとも1つの陽性選択または陰性選択可能なマーカー)。
【0005】
大部分の例において、本発明は、EBVウイルスのEBNA1タンパク質に言及するが、任意のその他の同等のエピソーム維持タンパク質またはアデノ随伴ウイルス(AAV)、SV40、BSOLV、HIV-1などのその他のエピソームのウイルスに由来するタンパク質も本発明に包含され、これらのエピソームタンパク質をコードする遺伝子および/またはこれらのOriPエレメントも、本発明のベクターを産生するために使用可能である。
【0006】
本発明は、上で言及した成分のうちの少なくとも2つを有する2つ以上の核酸分子をさらに含む(たとえば、一方のベクターがOriP部位を含み、かつ他方のベクターがEBNA1をコードする、本明細書におけるベクター2つの混合物、または、OriP部位を有するベクターを含み、細胞染色体がEBNA1をコードする細胞株)。これらの2つ以上の核酸分子は、同じ組成物に存在してもよく、または(たとえば、異なるベクターにおいて、またはキットに存在する容器において)互いから分離されてもよい。
【0007】
本発明は、(a)OriP部位およびEBNA1をコードするDNAセグメント;(b)1つまたは複数のatt組換え部位;並びに(c)少なくとも1つの選択可能なマーカーをコードするDNAセグメントを含む、単離された核酸分子を目的とする。一つの局面において、EBNA1発現は、構成的でも、または誘導性でもよい。
【0008】
本発明はさらに、1つまたは複数の発現カセットを含む単離された核酸分子であって、それぞれの発現カセットが発現のためのプロモーターに作動可能に連結され、かつそれぞれの発現カセットが1つまたは複数のatt組換え部位の少なくとも1つを使用して核酸分子に導入されうる核酸分子を目的とする。
【0009】
本発明の全ての局面において、発現カセットは、組織特異的遺伝子、幹細胞マーカー遺伝子または発生遺伝子をコードしてもよい。
【0010】
本発明の全ての局面において、幹細胞マーカー遺伝子は、Oct4、Sox2、c-MycおよびKlf4;Oct3/4、Nanog、SSEA1およびTRA1-80からなる群より選択される。
【0011】
本発明の全ての局面において、発現カセットを駆動するプロモーターは、細胞特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、幹細胞マーカープロモーター、発生遺伝子プロモーターなどからなる群より選択されるタイプのものである。さらなる態様において、プロモーターは、哺乳動物起源の天然のプロモーターまたは操作されたプロモーターまたは細胞特異的プロモーターまたは発生段階特異的プロモーターでもよい。
【0012】
本発明の全ての局面において、幹細胞マーカープロモーターは、Oct4、Sox2、c-MycおよびKlf4;Oct3/4、Nanog、SSEA1およびTRA1-80からなるプロモーターの群から選択される。一つの態様において、発生段階は、生殖段階、胚性段階、前駆段階、胎児段階、新生児段階または幹細胞段階であってもよい。
【0013】
具体的態様において、哺乳動物は、ヒトである。
【0014】
本発明の全ての局面において、選択可能なマーカーは、蛍光タンパク質、抗生物質耐性を与えるタンパク質、または酵素でもよい。
【0015】
さらなる局面において、選択可能なマーカーは、蛍光タンパク質である。
【0016】
本発明の全ての局面において、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびその修飾された突然変異体、赤色蛍光タンパク質(RFP)およびその修飾された突然変異体などからなる群より選択してもよい。
【0017】
具体的局面において、蛍光タンパク質は、GFPである。
【0018】
具体的態様において、細胞は、幹細胞である。
【0019】
本発明の全ての局面において、選択可能なマーカーは、抗生物質耐性を与えるタンパク質でもよい。
【0020】
さらなる態様において、抗生物質は、テトラサイクリン、ネオマイシン、ブラストサイジン、ハイグロマイシン、アンピシリンおよびピューロマイシンからなる群より選択してもよい。
【0021】
具体的態様において、抗生物質は、ハイグロマイシンである。
【0022】
第2の局面において、本発明は、(a)ウイルスゲノムの全てまたは一部;(b)OriP部位;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;(d)任意で、EBNA1をコードするDNAセグメント;および(e)少なくとも1つの選択可能なマーカーを含む、第1の単離された核酸分子を目的とする。第3の局面において、単離された核酸分子は、(e)WPREエレメントおよび/またはVSV-Gエレメントをさらに含む。
【0023】
いくつかの局面において、EBNA1をコードするDNAセグメントは、同じ核酸分子上にある。
【0024】
その他の局面において、EBNA1をコードするDNAセグメントは、第2の単離された核酸分子上にあり、かつ(a)ウイルスゲノムの全部または一部;(b)OriP部位;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;および(d)少なくとも1つの選択可能なマーカーをさらに含む。
【0025】
ある局面において、本発明は、(a)ウイルスゲノムの全部または一部;(b)プロモーターによって駆動される1つまたは複数の発現カセット;(c)少なくとも1つの選択可能なマーカー;ならびに(d)任意で、WPREエレメントおよび/またはVSV-GエレメントをコードするDNAセグメントを含む、単離された核酸分子を目的とする。
【0026】
一つの態様において、ウイルスゲノムは、昆虫ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルスなどのいずれか由来である。
【0027】
さらなる態様において、ウイルスゲノムは、昆虫ウイルス由来である。
【0028】
具体的態様において、昆虫ウイルスは、バキュロウイルスである。
【0029】
本発明の一つの局面は、細胞をリプログラミングするための少なくとも1つの発現カセットをそれぞれが有する、本明細書に定義された1つまたは複数の核酸分子が形質導入された、該細胞を目的とする。
【0030】
さらなる局面において、細胞は、幹細胞である。
【0031】
ある態様において、細胞は、成体体細胞である。
【0032】
本発明は、上で記述したベクターの種々の使用を目的とする。一つの局面において、ベクターは、細胞分化をリプログラミングするために有用である。
【0033】
全ての局面において、細胞は、胚性幹細胞、新生児幹細胞、胎児幹細胞、若年幹細胞もしくは成体幹細胞のような幹細胞または胎児初代細胞、若年初代細胞もしくは成体初代細胞のような初代細胞のいずれかである。
【0034】
誘導性ウイルスベクターについての一つの態様において、誘導性制御は、オペロンを介する。
【0035】
さらなる態様において、オペロンは、Tetオペロンである。
【0036】
本発明は、以下の細胞株を目的とする:pEPEG-BG01VおよびpEPOG-BG01V細胞株。
【0037】
本発明は、細胞内に本発明のプラスミドおよび/またはウイルスベクターを導入する工程;コードされる1つまたは複数のポリペプチドを適切な培養条件下で該細胞内で発現させる工程;該細胞がリプログラミングされたかどうかを同定する工程を含む、細胞をリプログラミングするための方法を目的とする。
【0038】
本発明はまた、Oct 4プロモーターに向けられた二本鎖RNA配列も目的とする。
【0039】
また、本発明は、細胞に1つまたは複数の小RNA分子を導入するかまたは発現させる工程;該細胞がリプログラミングされたかどうかを同定する工程を含む、細胞をリプログラミングするための方法であって、小RNA分子が幹細胞マーカー遺伝子のプロモーター領域と相互作用する方法を目的とする。
【0040】
特定の局面において、本発明は、本発明のプラスミドおよび/もしくはウイルスベクター、並びに/または幹細胞マーカーもしくは細胞特異的なマーカーに向けられた二本鎖RNA配列を細胞内に導入する工程を含む、細胞をリプログラミングするための方法を目的とする。
【0041】
本発明はさらに、本発明のベクター組成物を細胞に導入する工程;コードされる1つまたは複数のポリペプチドを適切な培養条件下で該幹細胞内で発現させる工程;幹細胞がリプログラミングされたかどうかを同定する工程;リプログラミングされた該幹細胞を培養下で増殖させかつ維持する工程を含む、リプログラミングされた幹細胞群を産生する方法を目的とする。
【0042】
また、本発明は、より幹様の脱分化状態に細胞をリプログラミングするための、または特定の細胞系統へと細胞を誘導するための、または罹患細胞、癌細胞などのような細胞をリプログラミングするための、または細胞を誘導多能性細胞(iPSC)へとリプログラミングするための方法を目的とする。
【0043】
本発明はさらに、本発明において産生されたウイルスベクターを含むウイルス粒子を目的とする。具体的には、本発明は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:49において定義される核酸を含むウイルス粒子を目的とする。また、本発明は、リプログラミング可能な遺伝子をさらに含む、SEQ ID NO:2および8において定義される核酸を含むウイルス粒子を目的とする。
【0044】
本発明はさらに、本発明において産生されたウイルスベクターを含むキットを目的とする。具体的には、本発明は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:49において定義される核酸を含むキットを目的とする。また、本発明は、リプログラミング可能な遺伝子をさらに含む、SEQ ID NO:2および8において定義される核酸を含むキットを目的とする。
【0045】
特定の局面において、本発明は、(i)本発明の核酸分子(プラスミドベクター、ウイルスベクター)を単独でまたは組み合わせてのいずれかで細胞に導入する工程;(ii)コードされる1つまたは複数のポリペプチドを適切な培養条件下で該細胞内で発現させる工程;(iii)該細胞がリプログラミングされたかどうかを同定する工程によって、誘導多能性細胞(iPSC)を産生するための方法を目的とする。もう一つの局面において、本発明は、上記で定義される方法によって産生される誘導多能性細胞(iPSC)を目的とする。
【0046】
具体的局面において、本発明は、(a)OriP部位;(b)構成的プロモーター下にEBNA1遺伝子をコードするDNAセグメント;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;および(d)少なくとも1つの選択可能なマーカーをコードするDNAセグメントを含む、単離された核酸分子を目的とする。
【0047】
もう一つの具体的局面において、本発明は、(a)OriP部位;(b)誘導性プロモーター下にEBNA1遺伝子をコードするDNAセグメント;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;および(d)少なくとも1つの選択可能なマーカーをコードするDNAセグメントを含む、単離された核酸分子を目的とする。
【0048】
もう一つの具体的局面において、本発明は、(a)バキュロウイルスゲノムの全てまたは一部;(b)OriP部位;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;(d)構成的プロモーター下にEBNA1遺伝子をコードするDNAセグメント;ならびに(e)少なくとも1つの選択可能なマーカー;(f)任意で、WPREエレメントおよび/またはVSV-Gエレメントを含む、単離された核酸分子を目的とする。
【0049】
もう一つの具体的局面において、本発明は、(a)バキュロウイルスゲノムの全てまたは一部;(b)OriP部位;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;(d)誘導性プロモーター下にEBNA1遺伝子をコードするDNAセグメント;ならびに(e)少なくとも1つの選択可能なマーカー;(f)任意で、WPREエレメントおよび/またはVSV-Gエレメントを含む、単離された核酸分子を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【発明を実施するための形態】
【0051】
詳細な説明
A.定義
以下の記述において、細胞生物学(たとえば、幹細胞生物学)および組換え核酸技術において使用される多数の用語は、広範囲に利用される。他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての専門用語および科学用語は、共通に、本発明が関連する当業者によって理解するのと同じ意味を有する。当業者であれば、本明細書に記述したものと同様のまたは均等な多くの方法および材料物をさらに認識するだろうし、それを本発明の実施において使用することができる。実際に、本発明は、記述した方法および材料に決して限定されない。このような用語に与えられる範囲を含む、本発明の明細書および特許請求の範囲の明らか、かつより一貫した理解のために、以下の用語を下で定義する。
【0052】
幹細胞(SC):本明細書に使用される、用語「幹細胞」は、多様な細胞および組織に発達することができる、分化していない「自己複製」細胞であろう。自己複製するとは、細胞が、適切な培養条件において不確定な期間分裂する能力を有する(すなわち、これらは老化を受けないか、または再生しない細胞に典型的であろう20回の集団倍加を越えて分裂することができる)がその一方で、特定の培養条件下では分化した細胞を生じることを意味し得る。自己複製は、特異的な分子ネットワークの厳密な制御下にあるだろう。
【0053】
「胚性幹細胞」(ESC)は、初期胚において見いだされる未分化細胞であり、典型的には胚盤胞の一部である内部細胞塊と呼ばれる細胞の群に由来する。胚性幹細胞は、自己複製し、かつ体内で見いだされる全ての分化した細胞型を形成することができる(これらは、多能性である)。ESCは、ヒト起源のECS(hESC)および非ヒトまたは動物起源のESCを含む。ESCは、典型的には、分化を伴わずに、これらの自己複製する特性により、適切な条件下で増殖することができる。
【0054】
「胚性生殖細胞」は、典型的には初期生殖細胞に由来する多能性幹細胞である(精子および卵子になると考えられる)。胚性生殖細胞(EG細胞)は、胚性幹細胞と同様の特性を有すると考えられる。
【0055】
本明細書に使用される、「多分化能」または「多能性」幹細胞は、体の複数の細胞型に発達する能力を有する。しかし、多能性細胞は、一般に、胎盤の羊膜、卵膜およびその他の成分などのいわゆる「胚体外」組織を形成することができない。多能性は、長期培養後の安定な発達能の証拠を提供すること、および単一細胞の子孫から3種全ての胚性胚葉の誘導体を形成することができることによって、および免疫抑制マウスへの注射後にテラトーマを産生する能力を示すことによって証明され得る。多能性は、特異的な分子ネットワークによって厳密に制御されるだろう。
【0056】
「全能性幹細胞」は、胎盤などの胚体外組織を構成する全ての細胞型に加えて、体を構成する全ての細胞型を生じさせる能力を有する。
【0057】
「前駆細胞」は、分化することができ、特定タイプの細胞に分化する能力を有することができる幹細胞の初期子孫であろう。前駆細胞は、幹細胞よりも分化している。用語「幹細胞」と「前駆細胞」は、文献において同等であることが見出されることもある。
【0058】
「成体幹細胞」は、数ある供与源の中でも、成体の血液、骨髄、脳、膵臓、皮膚および脂肪から得られるであろう。成体幹細胞は、それ自体再生することができ、かつ分化して、限定されたレパートリーの分化した細胞型、通常は、それが由来する組織型を生じさせるように分化することができる。特定の場合において、いくつかの成体幹細胞は、特定の成長条件下で、その他の組織に関連した細胞型を生じさせることができる(多分化能)。
【0059】
「体細胞幹細胞」は、生殖子(卵子または精子)に由来しない非胚性幹細胞である。これらの体細胞幹細胞は、胎児起源、新生児起源、若年起源または成体起源でもよい。
【0060】
分化の誘導:特定の細胞型への分化を誘導するために幹細胞培養条件を操作すること。未分化胚性細胞が心臓細胞、肝臓細胞または筋肉細胞などの分化細胞の特徴を得るプロセス。
【0061】
「可塑性」:幹細胞が、ある種の分化組織から、別の組織の分化した細胞型を産生する能力。
【0062】
本発明の特定の局面において発現される所望の遺伝子は、「リプログラミングまたはリプログラミング可能な遺伝子」である。本明細書に使用される、句「リプログラミングまたはリプログラミング可能な遺伝子」は、1つまたは複数のリプログラミング可能な遺伝子産物の発現のために、所与の細胞において発現されたときに、所与の細胞の表現型を異なる表現型に変化させる、遺伝子もしくは発生遺伝子の標的核酸セグメントまたは「幹細胞マーカー遺伝子」であってもよい。リプログラミングは、いずれにせよ、たとえば特定の例においてあまり分化されていない状態もしくはより分化された状態を達成するために、または分化の誘導のために行われるだろう。すなわち、リプログラミングは、細胞の分化能力を変化させるために行うことができる。たとえば、本発明の方法は、より分化した段階からより幹様の状態;または癌性状態からより非癌性状態または罹患細胞から無病状態などを達成し得る。上記したように、「リプログラミングまたはリプログラミング可能な遺伝子」は、細胞をリプログラミングするために有用な遺伝子である、Oct4(またOct-3またはOct3/4とも名付けられている)、Sox2、c-MycおよびKlf4;Oct3/4、Nanog、SSEA1(段階特異的胚性抗原)、TRA1-80などのような「幹細胞マーカー遺伝子」も指し得る。
【0063】
「発生遺伝子」または「幹細胞マーカー」:所与の遺伝子の発現またはそのプロモーターの活性は、特定の発生段階、細胞系統または細胞型、分化状態に限定され得る。このような遺伝子のプロモーターは、ひとまとめに発生プロモーターといわれ得る。通常これらのプロモーターと関連する遺伝子は、発生的に調節された遺伝子である。多数の幹細胞特異的な発生遺伝子が、本発明において考察される。幹細胞マーカーは、Oct4(またOct-3またはOct3/4)、Sox2、c-MycおよびKlf4と名付けられている);Oct3/4、Nanog、SSEA1(段階特異的胚性抗原)、TRA1-80などの遺伝子を含むが、限定されない。また、造血幹細胞について、CD34、CD133、ABCG2、Sca-1など;間葉/間質幹細胞についてSTRO-1など;神経幹細胞についてネスチン、PSA-NCAM、p75ニューロトロフィンR(NTR)などの種々の幹細胞群を特徴づけるために、独特の発現マーカーが使用される。
【0064】
また、分化した胚葉は、ニューロン(bIIIチューブリン、ネスチン)、中胚葉(SMA、平滑な筋肉アクチン)および内胚葉(α胎児のタンパク質)のための独特のマーカーを有する。
【0065】
「誘導多能性幹細胞」(iPSC)は、ESCの様に、その「ステムネス(stemness)」を維持するために重要な遺伝子または因子を強制発現させることによって、より胚性幹細胞様の状態にリプログラミングすることができる、部分的にまたは完全に分化した細胞であり得る。
【0066】
「胚性幹細胞株」は、胚性幹細胞を数ヶ月から数年にわたり分化することなく増殖させることが可能な、インビトロ条件下で培養した場合に、産生され得る;すなわち、これらは、老化を受けないか、または、非再生細胞についての典型でありうる20回の集団倍加を越えて分裂することができる。
【0067】
「テラトーマ」は、免疫系が機能不全であるマウスに推定幹細胞を注射することによって確立され得る。注射された細胞をマウスの免疫系によって破壊することができないので、これらの細胞は、生存し、テラトーマと呼ばれる多層の良性腫瘍を形成する。腫瘍は通常望ましい結果ではないにもかかわらず、この試験においてテラトーマは、任意の幹細胞が体内の全細胞型を生じさせる能力を確立するのに役に立つ。これは、テラトーマが3つの胚性胚葉のそれぞれに由来する細胞を含むためであろう。
【0068】
「初代細胞」は、無制限の細胞増殖のために修飾され(または不死化され)ていないため、限られた数の世代にわたり適切な細胞培養下においてインビトロで増殖することができる(すなわち、急速に老化を受ける)任意の所与の組織(たとえば、ケラチノサイトまたはメラノサイトの初代培養物を生じさせる皮膚)から得られる細胞であり得る。これらは、不死化されないので、これらのゲノムおよび/または細胞機能、それに由来するデータは、一般に、いわゆる不死化された細胞株から得られるデータよりも、インビボの状態に近いと考えられる。
【0069】
本明細書に使用される、「プロモーター」は、転写調節配列であり得るか、または、一般に遺伝子の5'領域に位置するかもしくはいずれかの開始コドンの近位にある核酸か、または、翻訳されないRNAをコードする核酸であり得る。隣接する核酸セグメントの転写は、典型的にはプロモーターにて、またはその近くで開始されるだろう。
【0070】
プロモーターは、さらに、構成的または調節可能のいずれでもよい(たとえば、誘導性および/または抑制可能)。
【0071】
「誘導性プロモーター」は、遺伝子発現が「誘導因子」または「誘導剤」と呼ばれる外部の刺激によって制御されるものであってもよい。誘導性エレメントは、プロモーターと組み合わせて作用し、かつリプレッサー(たとえば、大腸菌(E. coli)におけるTetリプレッサー系)または誘導因子(たとえば、酵母におけるgal1/GAL4誘導因子系)のいずれかに結合するDNA配列エレメントである。誘導性プロモーターまたはその発現系の例は、テトラサイクリンまたはラクトースオペロン、熱ショックタンパク質(hsp70)オペロン、金属誘導性プロモーター、ステロイドホルモン誘導性プロモーターなどを含む。誘導性プロモーターは、調節可能であると言うことができる。
【0072】
「構成的プロモーター」は、このプロモーターの下での遺伝子発現が一般に任意の外部刺激を伴わずに発現されるか、またはリプレッサーによる阻害を受けないであろうプロモーターであり得る。一般に、本発明の目的上、ウイルスプロモーターのような強力なプロモーターが、遺伝子の高効率発現を達成するために使用される。構成的プロモーターの効率は、変化させることができ、たとえば、代謝状態による影響を受け得る。
【0073】
「抑制可能」プロモーターの転写の割合は、抑制剤に応答して減少する。プロモーターを阻害する「リプレッサー」は、低分子またはタンパク質であり得る。リプレッサーは、細胞に添加してもよく、またはたとえば、「オペロン」を介して同時発現することができる。本発明において有用なこのようなオペロンの例は、Tetリプレッサーオペロンを含む。本明細書において、転写は、プロモーターが抑制解除されるまたは誘導されるまで、実質的に「停止され」得、かつ、この点で転写は「オンにされ」得る。抑制可能プロモーターは、調節可能であると言うことができる。
【0074】
「オペロン」は、核酸セグメントの機能単位であり得、かつ、これは、オペレータ、共通プロモーター、および、転写のプロセスにおいてメッセンジャーRNA(mRNA)を産生するための単位として制御される1つまたは複数の構造遺伝子を含む。
【0075】
「組織特異的プロモーター」は、組織依存的な様式で、および発生段階に従って遺伝子発現を制御する。組織特異的プロモーターによって駆動される導入遺伝子は、導入遺伝子産物が望まれるであろう組織において主に発現されるだけで、普通は、動物/植物における残りの組織は導入遺伝子発現によって修飾されないままとなるだろう。組織特異的プロモーターは、内因性または外来性因子によって誘導されてもよく、このため、これらは時には誘導性プロモーターまたは抑制可能プロモーターと分類することができる。特定の組織における導入遺伝子の効率的および信頼できる発現を達成するために相同的または密接に関連した種からのプロモーターを使用することが好ましいであろうが、信頼できかつ効率的な発現をする無関係な種からのプロモーターを特定の例において使用してもよい。
【0076】
「単離された」は、核酸分子またはその他の生体分子(たとえば、タンパク質)に関して使用されるときに、分子が同じタイプのその他の分子に関して高濃度であることを意味する。言い換えると、核酸分子(たとえば、DNA分子)は、核酸分子が、総重量または存在する分子数のいずれかにより、存在する総核酸の少なくとも50%を超えて(たとえば、50%を超えて、60%を超えて、70%を超えて、80%を超えて、90%を超えて、95%を超えて、97%を超えて、または99%を超えて占めるときに、「単離された」と言われる。同じことが同様にその他の生体分子についても適用される。
【0077】
「核酸セグメント」または「DNAセグメント」(適宜、本明細書において交換可能に使用される)は、核酸分子の全部またはその領域のいずれであってもよい。多くの例において、核酸セグメントは、遺伝子産物または遺伝子(制限部位、組換え部位、複製開始点、調節配列、プロモーター配列、エンハンサー配列、ポリアデニル化(ポリA)配列または任意のその他の調節または認識配列)を含み、構成し、またはコードしてもよい。
【0078】
「ベクター」は、細胞間で移動され得る複製可能な核酸分子である。ベクターの例は、プラスミド、バクテリオファージ(ファージλなど)、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)またはレンチウイルス、アデノウイルス、バキュロウイルスなどに基づいたものなどのウイルスベクターを含むが、限定されない。ベクターは、核酸セグメントがそれらの中に導入され得るように設計されていてもよい。本発明の一つの局面は、ウイルス骨格配列を含まないか、または主にウイルス配列の大きな部分を含まない、複製可能な核酸分子である「プラスミドベクター」をいう。
【0079】
本発明の一部を形成する「ウイルスベクター」は、細胞内に大量の遺伝物質を効率的に送達するために使用され得る。ウイルスまたはウイルスベクターによる遺伝子の送達は、形質導入と称され、感染細胞は、形質導入されたと記述される。ウイルスベクターの再構築は典型的に、ウイルスゲノムの一部、すなわち、望ましくないか重要でないウイルス機能をコードするか調節する部分、たとえば哺乳動物細胞におけるウイルスの複製または感染などに関与する部分の除去を含む。最小の「ウイルスゲノムDNA骨格」を大量の遺伝物質の効率的な送達のためにデザインしてもよい。加えて、本発明のウイルスベクターは、典型的には複数のリプログラミング可能な遺伝子のクローニングを可能にするために適した部位、たとえば、MultiSite Gateway(登録商標)クローニング系、エピソーム維持のためのEBNA1-OriP系などのような任意の適切な組換えクローニング系を含む。(ベクターの生成のために適合化される)典型的なウイルスゲノムは、昆虫ウイルスゲノムでもよいが、その他のウイルスゲノム(たとえば、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスなどに関する)も適合化させうる。本明細書において使用される典型的な昆虫ウイルスは、バキュロウイルスでもよいが、その他の非哺乳動物ウイルスも有用である。
【0080】
本発明の方法は、昆虫細胞において外生遺伝子を発現するために、バキュロウイルス科のウイルス(一般に、バキュロウイルスと呼ばれる)を使用することができる。バキュロウイルス科に加えて、天然で無脊椎動物においてのみ増殖するその他のウイルス(たとえば、MNPV、SNPVウイルスおよび米国特許第5,731,182号の表1に収載されたその他のウイルス。その内容は、参照により本明細書にそれらの全体が援用される)も本発明における遺伝子送達のために有用である。
【0081】
細胞のゲノム内に安定して組み込まないが、その代わりに、(i)EBNA1遺伝子の構成的発現により、安定してエピソーム維持されるか、または(ii)EBNA1遺伝子の誘導性発現により、リプログラミング期間にわたり遺伝子発現のリプログラミングを維持するように誘導されることができ、かつその後、細胞がリプログラミングされるかまたは望ましいレベルのリプログラミングが達成されたらオフにされ得る、新規遺伝子送達ウイルスベクターが本発明において開発された。これらの遺伝子送達ウイルスベクターは、所与の哺乳動物細胞内に所与の時点にて1つまたは複数のリプログラミング遺伝子を導入することができる。ウイルスベクター系は、一般に、遺伝子送達系として昆虫ウイルスを使用する(たとえば、バキュロウイルス);本発明では、表1に記述したベクターのBacMam Ver 1およびBacMam Ver 2ファミリーを使用した。ベクターは、哺乳動物細胞内に、1つまたは複数の遺伝子またはリプログラミング遺伝子のセットを有する。バキュロウイルスの骨格を使用して、BacMamウイルスベクターを産生する。表1に記述したBacMamベクターのVer2ファミリー、すなわち、[SEQ ID NO:8、9、10、11、12]は、加えて、多様な哺乳動物細胞内へのウイルスの侵入を媒介するWPRE(マーモット肝炎転写後調節エレメント)およびVSV-G発現カセット(小胞口内炎ウイルスGタンパク質)を含む。本発明のウイルスベクターは、表1において定義してある(実施例を参照されたい)。
【0082】
発現ベクターに関する1つの主な目的は、宿主細胞または生物体の内部の所望の遺伝子の制御された発現である。発現制御は、たいてい、特定のプロモーターの制御下にある部位内に標的DNAを挿入することが望ましいであろう。一般に、発現ベクターは、以下の特徴の1つまたは複数を有し得る:プロモーター、プロモーター-エンハンサー配列、少なくとも1つの選択マーカー、少なくとも1つの複製開始点、誘導性エレメント配列、抑制可能エレメント配列、エピトープタグ配列等。
【0083】
組換えクローニング系(たとえば、GatewayまたはMultiSite Gateway(登録商標)など)を、本発明において発現させるべき1つまたは複数の遺伝子の「発現カセット」を産生するために使用してもよい。「発現カセット」は、プロモーター(たとえば、天然のプロモーターまたは一定の発現レベルを達成するために、もしくは適切な一過性発現を達成するために、もしくは所望の細胞もしくは組織における発現を達成するために選択される任意のその他の所望のプロモーターなど)によって駆動される発現されるべき所望の遺伝子を含む。所与のベクターは、1つまたは複数(たとえば、2、3、4、5、7、10、12、15、20、30、50など)の遺伝子または遺伝子のセットまたは1つまたは複数の遺伝子の部分を含んでいてもよい。
【0084】
本発明のベクターは、「選択可能なマーカー」をコードする遺伝子を利用してもよい。本明細書に使用される、句「選択可能なマーカー」は、宿主細胞への導入の後、マーカーを発現しない細胞からの細胞内でのマーカーの発現により、該細胞の分離を可能にする任意のマーカー遺伝子でもよい。特定の態様において、マーカー遺伝子を宿主ゲノムに組み込む。その他の態様において、マーカーは、宿主ゲノムに組み込まず、その代わりにエピソームベクターに残る。「選択可能なマーカー」は、構成的にもしくは誘導的に発現してもよく、またはその発現は、該発現を阻害するリプレッサー剤もしくはタンパク質の共発現により抑制されてもよい。
【0085】
適切な選択可能なマーカーは、限定されないが、テトラサイクリン、ネオマイシン、ブラストサイジン、ハイグロマイシン、アンピシリン、ピューロマイシンなどのような抗生物質耐性遺伝子および当該技術分野において公知のその他の適切な抗生物質を含む。また、選択可能なマーカーは、緑色蛍光タンパク質およびその修飾された突然変異体、赤色蛍光タンパク質およびその修飾された突然変異体などを非限定的に含む蛍光タンパク質遺伝子も含むが、限定されない。また、選択可能なマーカーは、クロラムフェニコールトランスフェラーゼ遺伝子(CAT)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、ジヒドロオラターゼ遺伝子、グルタミンシンテターゼ遺伝子、ヒスチジンD遺伝子、カルバミルリン酸シンターゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、多剤耐性1遺伝子、アスパルテートトランスカルバミラーゼ遺伝子、キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子などのような遺伝子を含むが、限定されない。
【0086】
「制御配列」は、当業者に公知の、および使用される、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー、イントロン、ポリA配列、3’UTRなどを含む。
【0087】
宿主細胞に導入してもよい核酸分子は、(1)細胞の発生段階をリプログラミングすることができる遺伝子または遺伝子のセット、(2)下流に配置された遺伝子または遺伝子群の発現を操作することができる一つまたは複数の転写調節配列(プロモーター、エンハンサー、リプレッサーなど)、(3)複製開始点(ORI)、(4)抗生物質耐性遺伝子を含む1つまたは複数の選択可能なマーカー、(5)1つまたは複数のクローニングエントリー部位、(6)1つまたは複数の制限部位、並びにその他の成分を含むものを含むが、限定されない。本発明のいくつかの態様において、宿主細胞は、「幹細胞」でもよい。
【0088】
本明細書に使用される、句「組換え部位」は、組換えタンパク質による組込み/組換え反応に関与する核酸分子上の認識配列であり得る。組換え部位は、組込みまたは組換え初期の間に部位特異的組換えタンパク質によって認識され、および結合される関与する核酸分子上の核酸の別々のセクションまたはセグメントである。たとえば、Creリコンビナーゼについての組換え部位は、8塩基対コア配列に隣接する2つの13塩基対逆方向反復(リコンビナーゼ結合部位として役立つ)で構成される34塩基対配列であるloxPである。(Sauer, B., Curr. Opin. Biotech. 5:521-527 (1994)の図1を参照されたい)。認識配列のその他の例は、本明細書に記述したattB、attP、attLおよびattR配列、並びにその突然変異体、断片、変異体および誘導体を含み、これらは、組換えタンパク質Intによって、および補助タンパク質組込み宿主因子(IHF)、FISおよび除去酵素(Xis)によって認識される。(Landy, Curr. Opin. Biotech. 3:699-707 (1993)を参照されたい)。
【0089】
組換え部位は、多くの公知の方法によって分子に付加してもよい。たとえば、組換え部位は、平滑末端ライゲーション、完全もしくは部分的にランダムなプライマーで行われるPCRまたは組換え部位に隣接した制限部位を使用してベクターに核酸分子を挿入することによって核酸分子に付加することができる。
【0090】
本発明の実施において使用してもよい組換え部位の例は、loxP部位;loxP511(米国特許第5,851,808号を参照されたい)などのloxP部位突然変異体、変異体または誘導体;frt部位;frt部位突然変異体、変異体または誘導体;dif部位;dif部位突然変異体、変異体または誘導体;psi;psi部位突然変異体、変異体または誘導体;cer部位;およびcer部位突然変異体、変異体または誘導体を含むが、限定されない。
【0091】
本明細書に使用される、句「組換えクローニング」は、米国特許第5,888,732号および第6,143,557号(これらの内容は、参照により本明細書に完全に援用される)に記述したものなどの方法でもよく、それにより、核酸分子のセグメントまたはこのような分子の集団は、インビトロもしくはインビボで交換され、挿入され、置換され、置き換えられ、または修飾される。
【0092】
組み換えクローニングは、Gateway(登録商標)系(Invitrogen Corp., Carlsbad、CA)の使用を含む方法を含む。
【0093】
「MultiSite Gateway(登録商標)」は、2つ以上の核酸分子を組み合わせて単一の核酸分子を形成する組換えクローニング系である。一つの例において、ベクターは、S1、S2、S3およびS4と命名された4つの組換え部位を含んでいてもよく、これらはいずれも互いとは組換えしない。1つの核酸セグメントを、部位S1およびS2との組換えによってベクターに挿入して、もう一つの核酸セグメントを部位S3およびS4との組換えによってベクターに挿入する。こうして、両方の核酸セグメントを含む新たな組換えられたベクターが産生される。「MultiSite Gateway(登録商標)」態様は、米国特許公開番号2004/0229229 A1に記述されており、その全ての内容は、参照により本明細書に援用される。当業者であれば理解するだろうとおり、Gateway(登録商標)系以外の組換え系を本発明の実施において使用してもよい。
【0094】
本明細書に使用される、用語「短いRNA」は、「小さなRNA」(Storz、Science 296:1260-3、2002;Illangasekare et al., RNA 5:1482-1489(1999));原核生物の「小RNA」(sRNA)(Wassarman et al., Trends Microbiol. 7:37-45, 1999);真核生物「非翻訳RNA(ncRNA)」;「マイクロRNA(マイクロRNA)」;「小さな非mRNA(snmRNA)」;「機能的RNA(fRNA)」;「触媒RNA」[たとえば、自己をアシル化するリボザイムを含むリボザイム(Illangaskare et al., RNA 5:1482-1489(1999)];「小さな核小体RNA(snoRNA)」;「tmRNA」(別名「10S RNA」(Muto et al., Trends Biochem. Sci. 23:25-29、1998;およびGillet et al., Mol. Microbiol. 42:879-885, 2001);限定されないが「低分子干渉RNA(siRNA)」、二本鎖RNA(dsRNA)、「エンドリボヌクレアーゼ調製siRNA(esiRNA)」;「短いヘアピンRNA(shRNA)」および「小さな一時的に調節されたRNA(stRNA)」;を含むRNAi分子;「ダイスド(diced) siRNA(d-siRNA)」として文献において記述されるRNA分子、並びに少なくとも1つのウラシル塩基を含み、かつおそらく交換可能に使用される、アプタマー、オリゴヌクレオチドおよびその他の合成核酸を包含する。本発明において使用されるdsRNAは、遺伝子の発現をサイレンシングまたは抑制するために(転写遺伝子サイレンシング:TGS)、または遺伝子の発現を活性化するために(転写遺伝子活性化:TGA)使用してもよい。
【0095】
本明細書に使用される、組換え核酸技術、分子および細胞の生物学の分野、特に幹細胞生物学において使用されるその他の用語は、適用できる技術の当業者によって一般に理解されるだろう。
【0096】
B.詳細な説明
本発明は、部分的には、細胞発生を操作し、またはリプログラミングするために使用し得る、核酸分子(たとえば、プラスミド、ウイルスベクター、小RNA分子などのベクター)、並びにこのような核酸分子を含む組成物に関する。また、本発明は、部分的には、調節可能な様式(たとえば、構成的様式または誘導性様式のいずれか)で発現される核酸分子(たとえば、プラスミド、ウイルスベクター、小RNA分子などのベクター)にも関する。本発明の核酸分子のための用途の1つの例は、任意の分化した幹細胞(たとえば、成体幹細胞)のより多能性のES様状態への変換である。本発明は、部分的には、調節可能な様式(たとえば、構成的様式または誘導性様式のいすれか)でリプログラミング可能な遺伝子の発現を正常なレベルに活性化すること、サイレンシングすること、または回復することにより、細胞(たとえば、幹細胞)をリプログラミングする、または細胞の分化能力をより可塑的(たとえば、より分化していない)状態に変化させるための方法も提供する。
【0097】
幹細胞、体細胞、癌細胞、罹患細胞または正常な細胞を含む任意の細胞のリプログラミングは、本明細書に記述した分子、組成物および方法を使用して達成してもよい。リプログラミングは、任意の理由により、たとえば特定の例ではより分化されない状態を、もしくはより分化された状態を達成するために、または分化誘導のために行ってもよい。すなわち、リプログラミングは、細胞の分化能力を変化させるために行うことができる。たとえば、本発明の方法は、より分化された段階からより幹様の状態;または癌状態からより非癌性の状態、または罹患細胞から無病状態などを達成し得る。細胞リプログラミングにおいて使用される本発明の方法および組成物は、癌治療、組織更新、老化、組織修復などを含む多様な分野において適用され得る。特定の細胞がリプログラミングされたかどうかは、その状態と関連する、胚性細胞マーカーまたは胎児細胞マーカーなどの特定の細胞マーカーの発現、癌マーカー、幹細胞マーカー遺伝子の発現の低下などを同定することによって判定してもよい。
【0098】
本発明の方法は、部分的には、遺伝子送達系に向けられる。多くの例において、これらの方法は、細胞のゲノムへの核酸セグメントの安定な組込みを生じない(たとえば、エピソームである)か、および/またはベクターからのリプログラミング遺伝子の発現を生じる。これなどの本発明の遺伝子送達系は細胞のゲノムに組み込まないので、遺伝子発現は単に維持され、一方で、エピソームベクター(たとえば、異所性ベクター)は細胞内に維持される。特定の態様において、本発明のエピソームベクターは、染色体とともに分離するだろうが、ただし、エピソーム維持タンパク質(たとえば、EBNA1)が発現される。ある場合には、エピソーム維持タンパク質(たとえば、EBNA1)は、構成的に発現してもよく、この場合、その発現は、それ自体の天然のプロモーター、当該技術分野において公知の任意の構成的プロモーター(たとえば、CMVプロモーター)または細胞型特異的な(たとえば、肝臓特異的な)、段階特異的な(たとえば、ESC)もしくは組織特異的なプロモーターなどのいずれかによって駆動されるだろう。その他の例において、エピソーム維持タンパク質(たとえば、EBNA1)は、誘導可能に発現してもよく、この場合、その発現は、当該技術分野において公知の任意の誘導性プロモーター(たとえば、Tetオペロンなど)によって駆動されるだろう。本明細書において、エピソームベクターは、誘導因子が存在する限り、単に維持される。広義には、エピソームベクターは、誘導因子の除去を含む方法によって細胞から除去され得る。
【0099】
本発明の方法は、部分的には、細胞(たとえば、幹細胞)分化をリプログラミングするための、小RNA分子(たとえば、dsRNA、RNAi)系にも向けられる。
【0100】
特定の局面において、本発明は、細胞にエピソームベクターを維持するための組成物および方法に関する。このような維持は、(たとえば、抗生物質耐性遺伝子および抗生物質の存在による)直接の選択圧の非存在下で生じ得る。たとえば、エピソームベクターは、ベクターを細胞の核酸物質(たとえば、細胞の染色体)と分離することができる核酸セグメントを含んでいてもよい。このような核酸セグメントの例は、エプスタイン・バーウイルス起源(OriP)である。多くの例において、ベクターの維持は、エピソームベクターに位置するOriP核酸セグメントと相互作用するEBNA1タンパク質の存在に依存するだろう。他の例において、EBNA1タンパク質は、ベクター、ゲノム、核酸セグメントなどを含むOriPを含む任意のOriPを含む系を維持する。
【0101】
エピソームベクターに位置する核酸セグメントと相互作用するEBNA1タンパク質は、同じベクターによって、または異なる核酸分子(たとえば、もう一つのベクター、細胞の染色体など)から発現されてもよい。さらに、タンパク質は、構成的または調節可能な(たとえば、誘導的または抑制可能な)様式で発現してもよい。細胞からのタンパク質排除(たとえば、「キュアリング」によって)を用いて細胞からエピソームベクターを除去してもよい。一例として、タンパク質がエピソームベクターとは別のベクター上で発現される場合、タンパク質は、細胞からのその発現ベクターの除去によって細胞から除去してもよい。一例として、エピソームベクターは、OriP部位を含んでいてもよく、第2のベクターは、構成的プロモーターに作動可能に連結されたEBNA1コード領域および抗生物質耐性マーカーを含んでいてもよい。ほとんどの場合、マーカーが耐性を与える抗生物質を取り除くことによって培養液から選択圧が除去されるときに、EBNA1タンパク質をコードするベクターは、最終的には培養細胞から失われるだろう。このベクターが培養された細胞から失われるとき、EBNA1タンパク質はもはや発現されないと考えられ、よってOriP部位を含むエピソームベクターの喪失が起こる。したがって、多くの例において、一旦誘導剤が除去されると、ベクター系のフットプリントは残されない。これは、必要に応じて所望の分化レベルまたは脱分化レベルを達成するために細胞を短時間のみリプログラミングすることが必要であり、その後は、細胞の分化状態を改変するベクター系の残遺物が望ましくない場合に望ましいであろう。この方法は、たとえば、疾患研究のために、または細胞補充療法のために患者特異的な多能性細胞が必要とされるであろう臨床的な医薬状況において、非常に望ましいだろう。
【0102】
また、本発明の方法は、細胞をリプログラミングするために、pBacMam Ver 1{図2;SEQ ID NO:2}またはWPREおよびVSV-Gエレメントを含むpBacMam Ver 2{図8;SEQ ID NO:8}のようなEBNA/Ori P系をもたないウイルスベクターを使用する。本明細書において、ウイルスベクターによって発現されるリプログラミング遺伝子の発現は短い間しか起こらず、かつリプログラミング粒子は2×および4×処理により72時間間隔で形質導入される必要があり、これによって幹細胞様の特徴をもつコロニーの形成を生じる。
【0103】
宿主細胞
本発明において使用される宿主細胞は、原核生物細胞および真核生物細胞を含む。特定の局面において、大腸菌のような細菌細胞などの宿主細胞は、本発明において使用されるベクターなどのような組換え分子を増殖するために使用してもよい。本発明のその他の局面において、宿主細胞は、ベクター、たとえば本発明において使用してもよい昆虫ベクターを産生および増殖させるために、またはたとえば、ウイルスの送達系の一部としてウイルス粒子を産生するために使用され得る昆虫細胞でもよい。大部分の局面において、本発明の実施において使用してもよい宿主細胞は、リプログラミング可能な遺伝子、たとえば、幹細胞マーカー遺伝子を使用してリプログラミングされ得る幹細胞のような細胞である。多くの例において、宿主細胞は、多能性胚性幹細胞様の状態にリプログラミングしてもよい。さらに、幹細胞は、「多分化能」幹細胞または「多能性」幹細胞でもよい。
【0104】
典型的には、本発明において使用される宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。マウス、ネズミ、イヌ、ネコ、ブタ、ウサギ、ヒト、非ヒト霊長類など、非ヒト動物、特に非ヒト哺乳動物などからの哺乳動物宿主細胞を、使用してもよい。宿主細胞は、家畜または農業上重要な動物のものでもよい。動物は、たとえば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、雄ウシもしくは家禽トリまたはその他の商業的に飼育される動物でもよい。動物は、イヌ、ネコまたはトリおよび特に家畜化された動物からがよい。動物は、サルなどの非ヒト霊長類でもよい。たとえば、霊長類は、チンパンジー、ゴリラまたはオランウータンでもよい。宿主細胞は、齧歯類細胞でもよい。しかし、いくつかの局面において、トリ細胞、環形動物細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、魚細胞、植物細胞または真菌(特に酵母)細胞を宿主として使用してもよい。
【0105】
胚性幹細胞または成体幹細胞は、多様な分化した細胞および組織に発達することができる分化していない細胞でもよい。胚性幹細胞は、非常に初期の胚において見いだされ得、かつ、または胚盤胞の一部である内部細胞塊と呼ばれる細胞の群に由来し得る。胚性幹細胞は、自己複製し得、かつ、体において見いだされる全ての細胞型を形成し得る(多能性)。成体幹細胞は、その他の供与源のうち、成体の血液、骨髄、脳、膵臓、羊水および脂肪から得てもよい。成体幹細胞は、それ自体再生し得、かつ、それが由来する組織の全ての分化した細胞型または特定の例において、場合によっては、その他の組織に関連した細胞型(多分化能)を生じさせ得る。
【0106】
成体細胞は、胚性幹細胞(ESC)の「ステムネス」を維持するために重要な因子の発現によって、胚性幹細胞様の状態にリプログラミングされ得る。たとえば、マウスiPSCは、多能性幹細胞の重要な特徴である、幹細胞マーカーの発現を含むこと、3種類全ての胚葉由来の細胞を含む腫瘍を形成すること、および/または、非常に初期の発生段階においてマウス胚に注射すると、多くの異なる組織に寄与できることを示すであろう。ヒトiPSCは、幹細胞マーカーをさらに発現してもよく、および/または3種類全ての胚葉に特有の細胞を産生することもできるであろう。
【0107】
幹細胞は、発生の任意の段階またはサブステージに由来してもよく、特に、これらは、胚盤胞の内部細胞塊(たとえば、胚性幹細胞)に由来してもよい。宿主細胞型は、胚性幹(ES)細胞を含み、これは、典型的にはインビトロにおいて培養された移植前胚から得られる。(たとえば、Evans, M. J., et al., 1981、Nature 292:154 156;Bradley, M. O., et al., 1984、Nature 309:255 258;Gossler et al., 1986、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:9065 9069;およびRobertson, et al., 1986、Nature 322:445 448を参照されたい)。ES細胞は、当業者に周知の方法を使用して、ターゲティング構築物の導入のために培養し、および調製してもよい。(たとえば、Robertson, E. J. ed. "Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells, a Practical Approach", IRL Press, Washington D.C., 1987;Bradley et al., 1986, Current Topics in Devel.Biol. 20:357 371;"Manipulating the Mouse Embryo"におけるHogan et al.,による:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor N.Y., 1986;Thomas et al., 1987, Cell 51:503;Koller et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:10730;Dorin et al., 1992, Transgenic Res. 1:101;およびVeis et al., 1993, Cell 75:229を参照されたい)。
【0108】
場合によっては、細胞(たとえば、幹細胞)は、胚体外組織から得てもよく、そこから由来してもよい。例として、細胞(たとえば、幹細胞)は、骨髄性、造血性、膵臓リンパ性、心臓性、神経性、皮膚、骨またはその他の組織を非限定的に含む、多様な組織起源でもよい。これらの組織は、胎児、新生児、若年または成体から得てもよい。
【0109】
ES細胞は、これらが導入されるべき発生中の胚と同じ種の胚または胚盤胞に由来してもよい。ES細胞は、典型的には、発生の胚盤胞段階にて哺乳動物胚に導入されたときに内部細胞塊に組み込んで個々の生殖系列に寄与するこれらの能力について選択される。したがって、この能力を有する任意のES細胞株は、本発明の実施に使用するために適している。
【0110】
動物の幹細胞の全てが操作された遺伝子または遺伝子群を含むが、ただし、調節可能な(たとえば、誘導性)選択圧がエピソームベクターの維持のために維持されることを条件とする、胚性幹細胞からのトランスジェニック動物を産生することは可能であろう。遺伝的に操作されたこのような動物を作製できることで、動物の発生、タンパク質-タンパク質相互作用、および細胞発生における特定の細胞シグナル伝達経路の活性に対する、リプログラミング遺伝子の効果の研究が可能になる。このプラットフォーム技術で産生し得る動物全体モデルにより、蛍光タンパク質およびMRIコントラスティングレポーターを使用して、治療的研究、薬物毒性試験、および細胞(たとえば、幹細胞)移植追跡が可能になるだろう。一部の態様において、本発明の使用により、非常に初期の継代数にてゲノム操作のための成体幹および前駆の操作対応(ready-engineered)集団を産生することが可能になる。このような操作対応細胞は、今までに不可能だった非不死成体幹細胞における遺伝子操作を可能にし得る。成体幹細胞が使用される場合、発現ベクターは、特定の医学的状態のための治療の形態として修飾した幹細胞が動物に戻され得るように、遺伝的なエラーを訂正する遺伝子を含んでいてもよい。
【0111】
上で記述した細胞(たとえば、幹細胞)のいずれも、本明細書に記述した組成物および方法を使用してリプログラミングすること、または操作することができる。
【0112】
本明細書に記述したベクター組成物は、1つまたは複数のリプログラミング可能な遺伝子例えば発生遺伝子または幹細胞マーカーを、非組み込み法によって細胞(たとえば、幹細胞)に効率的に導入するようにデザインされていてもよい。細胞(たとえば、幹細胞)への所望の核酸(たとえば、DNA)の導入のための多様なウイルスおよび非ウイルス法、並びにゲノム組込み法が存在する。しかし、これらの方法は、複数段階を要し、面倒で、低効率であり、ゲノム組込み法の場合には特徴決定を必要とし、かつ遺伝子破壊およびその他の不確定度の原因となることがある。エピソームベクターは、ゲノム組込み法と関連する染色体効果を比較的伴わないので、これらは、魅力的な代替法を提供する。
【0113】
いくつかの局面において、本発明は、そのゲノムをエピソーム維持する任意のウイルス(たとえば、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、SV40ウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、HPV16ウイルスなどに)に由来する成分を含む遺伝子送達ベクターを目的とする。大部分の例において、本発明は、EBVウイルスのEBNA1タンパク質に言及するが、また、アデノ随伴ウイルス(AAV)、SV40、BSOLV、HIV-1などのその他のエピソームウイルスに由来するタンパク質またはタンパク質群を維持するその他の任意の同等のエピソームも本発明に包含され、これらのエピソームタンパク質をコードする遺伝子および/またはこれらのOriPエレメントも、本発明のベクターを発生するために使用してもよい。
【0114】
本発明の一つの局面において、プラスミドベクターまたはウイルスベクターのいずれかである遺伝子送達ベクターは、核抗原、EBNA1およびエプスタイン・バーウイルス複製開始点(OriP)をコードするEBNA-1遺伝子を含むエプスタイン・バーウイルスに由来する成分から調製してもよい。
【0115】
一つの局面において、本発明は、エピソームプラスミドベクターを記述する。pCEP4(Invitrogen)ベクターは、EBNA1遺伝子および複製開始点OriPの両方を含む。本発明の組成物および方法は、pCEP4ベクターの一部を除去すること、ならびにそれをattR1およびattR2組換え部位に隣接するccdB/Cmカセットと置換すること(Attachment Aの図1を参照されたい)によるpEBNA-DESTベクターの生成に向けられる。本発明の局面において、さらに、ベクターは、EBNA1およびOriPに類似するエピソームウイルスゲノム成分を有する任意のプラスミドベクター、たとえばpCEP4ベクターの一部を本明細書において考察された任意の公知の組換えクローニング部位に隣接する任意のその他のカセットと置換することによって産生することができる。たとえば、当業者であれば、任意の組換えクローニング系(たとえば、GatewayまたはMultiSite Gateway(登録商標)など)を本発明の実施において使用してもよいことを理解するだろう。典型的には、ベクターを、MultiSite Gateway(登録商標)技術に適合化させて、1つの発現構築物内に複数断片を含む発現カセットの容易かつカスタムの作成を可能にしてもよい。MultiSite Gateway(登録商標)は、さらに、任意のプロモーター-遺伝子対形成、転写/翻訳エレメント対形成または任意の調節可能なエレメント対形成の選択ができる。したがって、本発明は、細胞(たとえば、幹細胞)をリプログラミングするための、本明細書に記述した、エピソームEBNA-組換え遺伝子送達ベクターを使用する方法に関する。
【0116】
一つの局面において、本発明のウイルスベクターは、大量の遺伝物質を細胞(たとえば、幹細胞)内に効率的に送達するために使用される。ウイルスによる遺伝子の送達は形質導入と称され、感染した細胞は、形質導入されたと記述される。遺伝子発現において一般に使用されるウイルスベクターの構築は、感染および/または哺乳動物細胞における複製に関与するウイルスから望ましくない機能を除去するという原則に基づいていてもよい。本発明のウイルスベクターは典型的には、他のエレメントの中でも、効率的なウイルス送達およびウイルス粒子産生のための最小のウイルスDNA骨格、組換えに基づいたクローニングエレメント(たとえば、MultiSite Gateway(登録商標)クローニングカセット)、哺乳動物細胞分裂の間のベクターのエピソーム維持のためのEBNA1-OriP系のクローニングエレメントの1つまたは複数の成分(たとえば、OriPセグメントおよび任意に、EBNA1タンパク質をコードする核酸)を含む。組換えに基づいたクローニングエレメントにより、1つまたは複数のリプログラミング可能な遺伝子を細胞にクローニングすることが可能になる。本発明において使用される典型的なウイルスベクターは、バキュロウイルスベクターである。
【0117】
ウイルスベクターは、以下の1つまたは複数を使用して調製してもよい:(a)EBNA-1発現カセットおよびOriP複製開始点を含むエプスタイン・バーウイルスに由来する成分、(b)ウイルス送達系(たとえば、BacMam)を使用して細胞(たとえば、幹細胞)への大量の遺伝物質の送達を可能にするための、バキュロウイルスDNA骨格のようなウイルスDNA骨格。
【0118】
一つの態様において、成分は、2つ以上の修飾されたエピソームウイルスベクターとして送達してもよく、一方のベクターは、EBNA1-OriPおよびその他の必要な成分を有し、第2のベクターは、エピソーム維持のためのMultiSite Gateway(登録商標)発現カセットおよびOriPを有する。第2の態様において、成分は、1つの修飾されたエピソームウイルスベクターとして送達してもよく、この場合、1つのベクターが、EBNAI-OriP、組換えクローニング(たとえば、MultiSite Gateway(登録商標))発現カセットおよびその他の必要な成分を有する。さらなる遺伝子を発現することが望ましいイベントにおいて、これらの遺伝子を、OriP部位をもつさらなる組換えクローニング(たとえば、MultiSite Gateway(登録商標))発現カセットに導入してもよい。本発明は、こうして産生され、および記述されたエピソームEBNAウイルスベクターを使用して幹細胞をリプログラミングするための方法も提供する。
【0119】
一つの局面において、本発明は、構成的ウイルス(たとえば、バキュロウイルス)遺伝子送達ベクターを記述する。もう一つの局面において、本発明は、誘導性ウイルス(たとえば、バキュロウイルス)遺伝子送達ベクターを記述する。構成的ウイルスベクター、たとえば、pEP-FB-DEST1(Attachment Q)において、エピソームタンパク質、たとえば、EBNA1の制御は、天然のEBNA1プロモーター、当該技術分野において公知の任意の構成的プロモーターまたは系統特異的もしくは組織特異的プロモーターのいずれの下でもよい。構成的プロモーターは、CMVプロモーターのような強力なウイルスプロモーターでもよい。誘導性ウイルスベクター、たとえば、pFBbg1-DEST1(Attachment N)において、エピソームタンパク質、たとえば、EBNA1の制御は、EBNA1遺伝子の発現を駆動する誘導性オペロン(たとえば、CMV/Tet OperonプロモーターのようなTetオペロン)下でもよい。これらのエレメントのそれぞれを発現するDNAセグメントは、ベクター上に見いだされる(実施例2)。
【0120】
非哺乳動物ウイルスは、哺乳動物細胞への外来性遺伝子の発現および送達のために特に有用である。本発明の方法は、ウイルス粒子を産生するために任意のタイプのウイルスを使用することができる。多くの例において、「昆虫」DNAウイルスが、細胞(たとえば、幹細胞)に遺伝物質を送達するために使用される。「昆虫」DNAウイルスは、そのDNAゲノムを天然に昆虫細胞において複製することができるウイルス(たとえば、バキュロウイルス科、イリドウイルス科、ポックスウイルス科、ポリドナウイルス科(Polydnaviridae)、デンソウイルス科(Densoviridae)、カウリモビラ科(Caulimoviridae)およびフィコドナウイルス科(Phycodnaviridae))を意味する。
【0121】
特に、バキュロウイルス科のウイルス(一般にバキュロウイルスと呼ばれる)は、本発明において有用である。バキュロウイルス科ファミリーに加えて、天然では無脊椎動物においてしか増幅しないウイルスのその他のファミリー(たとえば、MNPV、SNPVウイルスおよび米国特許第5,731,182号の表1に収載したその他のウイルス、その内容は、これらの全体が参照により本明細書に援用される)も本発明における遺伝子送達のために有用である。
【0122】
本発明に包含されるウイルスベクター(たとえば構成的または誘導性のBacMam EBNAベクター)を含むバキュロウイルスは、所望の大きなDNA構築物を細胞(たとえば、ESC、生殖細胞)にパッケージおよび送達して、たとえば遺伝子療法において、全遺伝子のノックアウトおよび/または遺伝子の送達を達成するために使用されうる。本発明のベクターは、多くの目的のため、すなわち、遺伝子療法においてトランスジェニックノックアウト動物または過剰発現動物を産生するため、大きなタンパク質のタンパク質の産生のためなどに有用であろう。これらの大きな構築物の全体サイズは約15〜20kbでもよいが、わずかに大きなまたは小さなサイズ(たとえば、5〜10kb、10〜15kbなど)を使用することができ、これにより、操作されたバキュロウイルスゲノム全体を約170〜180kbにすることができるが、わずかに大きなまたは小さなサイズ(たとえば、100〜120kb、120〜140kb、140〜160kb、160〜180kb、180〜200kb、200〜220kb、220〜240kb、240〜260kb、260〜280kb、280〜300kbなど)を達成してもよい。ある場合には、これらの構築物は、以下の1つまたは複数を含んでいてもよい:5'および3'相同性アーム、陽性選択可能なマーカー、細胞に挿入されたら構築物を直線化するための希少配列ホーミングエンドヌクレアーゼを発現するための(たとえばIsce-I(クラスII哺乳動物プロモーター由来))カセット。本発明の方法および組成物を、大きな構築物を細胞にパッケージングおよび送達するために使用してもよく、これは、約300kbの操作されたバキュロウイルスゲノムを達成するための、150kbまでと有意に大きな全BACでもよい。
【0123】
小RNA
一つの局面において、本発明は、マイクロRNA siRNA、dsRNA(二本鎖RNA)、干渉RNA(RNAi)などを含む非コード小RNAを細胞に送達するための組成物および方法を提供する。非コード小RNAは、クロマチン構造の修飾のように多段レベルで、遺伝子発現、転写、RNAエディティング、RNA安定性、翻訳などを調節し得る。小RNAまたは干渉RNA(RNAi)は、一般に相同的遺伝子配列のサイレンシング(また、転写性遺伝子サイレンシングとも名付けられた:TGS)と関連するが、二本鎖RNA(dsRNA)のようないくつかの小RNAは、特定の遺伝子の長期持続配列特異的な誘導も誘導し得る(転写遺伝子活性化:TGA)。
【0124】
干渉RNA分子は、「ヘアピンターン」分子(たとえば、shRNA)として、または互い(dsRNA)にハイブリダイズすることができる2つの別々のRNA鎖として発現させてもよい。RNA干渉において機能する大部分の分子は、18〜30ヌクレオチドの間の配列相補性の領域を含む。
【0125】
本発明の核酸分子は、たとえば、転写されたときにそれ自体が折りたたまれて戻り、二本鎖部分を含むヘアピン分子を生じるdsRNA分子を産生するように操作してもよい。特定の例において、二本鎖ヘアピン分子は、その設計およびそれが調節する遺伝子に応じて、活性化していてもよく、または阻害性でもよい。
【0126】
一つの局面において、dsRNAは、TGA(活性化)と関連し得る。TGAを使用するdsRNAは、分化と関連する遺伝子(たとえば、Oct4、Sox2、c-MycおよびKlf4;Oct3/4、Nanog、SSEA1、TRA1-80などの発生遺伝子または幹細胞マーカー)またはこれらのプロモーター配列もしくはエンハンサー配列の発現を活性化することに関与し、これにより、その本来の分化経路から離れて細胞のリプログラミングを生じ得る。
【0127】
ある場合には、dsRNA分子は、トランスフェクション(たとえば、一過性または安定な)を介して、もしくはペプチド送達系(たとえば、MPG)を介して、または当該技術分野において公知および使用される小RNAのための任意のその他の適切な送達系で細胞に導入してもよい。他の例において、dsRNA分子は、本発明において記述し、および提供されるベクターを含むベクターにおける任意の発現カセットを介して導入してもよい。ベクターは、ウイルス性ベクター、プラスミドベクター、細菌性ベクター、または本発明の実施のために有用である任意のその他のベクターであることができる。
【0128】
二本鎖の部分の1本鎖は、サイレンシングされるべき遺伝子から転写されるmRNAのセンス鎖の全てまたは一部に対応してもよく、一方で、二本鎖の部分の他方の鎖は、アンチセンス鎖の全てまたは一部に対応してもよい。二本鎖RNA分子を生じるその他の方法を使用してもよく、たとえば、転写の際、サイレンシングされるべき遺伝子から転写されるmRNAのセンス鎖の全てまたは一部に対応する第1の配列と、転写の際、サイレンシングされるべき遺伝子から転写されるmRNAのアンチセンス鎖(すなわち、逆相補)の全てまたは一部に対応する第2の配列とを有するように、核酸分子を操作してもよい。これは、第一および第二の配列を、各々それ自体のプロモーターの制御下で、ウイルスベクターの同じ鎖上に置くことによって達成してもよい。あるいは、2つのプロモーターは、それぞれのプロモーターからの発現が二本鎖RNAの一方の鎖の転写を生じるように、ベクターの逆の鎖上に置いてもよい。一部の態様において、1つのウイルスベクターまたは核酸分子上の第1の配列と第2のベクターまたは核酸分子上の第2の配列とを有すること、および、サイレンシングされるべき遺伝子を含む細胞に両方の分子を導入することが望ましい。その他の態様において、アンチセンス鎖だけを含む核酸分子を導入してもよく、サイレンシングされるべき遺伝子から転写されるmRNAは、二本鎖RNAの他方の鎖として役立ち得る。
【0129】
この態様の例において、合成RNAi分子は、発生遺伝子または幹細胞マーカー遺伝子のような分化と関連する遺伝子の発現をサイレンシングするようにデザインされていてもよい。その他の態様において、Stealth(商標) RNAiのようなサイレンシングRNAをデザインして、EBNA産生細胞に導入し、EBNA1タンパク質の発現を抑制してもよい。
【0130】
dsRNAは、該遺伝子に相同な1つまたは複数の領域を有してもよい。相同性は、活性化遺伝子またはサイレンシング遺伝子の遺伝子発現を駆動するプロモーターの全てまたは一部に対してであってもよく、または、相同性は、遺伝子それ自体の全てまたは一部に対してであってもよい。相同領域は、典型的には、長さが約20bp〜約100bp、長さが約20bp〜約80bp、長さが約20bp〜約60bp、長さが約20bp〜約40bp、長さが約20bp〜約30bpまたは長さが約20bp〜約26bpであってもよい。本発明において使用してもよい典型的なdsRNA長は、20〜約32bpである。
【0131】
二本鎖領域を有するヘアピン含有分子を、RNAiとして使用してもよい。二本鎖領域の長さは、長さが約20bp〜約100bp、長さが約20bp〜約80bp、長さが約20bp〜約60bp、長さが約20bp〜約40bp、長さが約20bp〜約30bpまたは長さが約20bp〜約26bpであってもよい。ヘアピン(すなわち、ループ)の非塩基対部分は、ヘアピンの二本鎖の部分を構成する2つの相同領域が互いに折りたたんで戻ることができる任意の長さでありえる。
【0132】
本発明においてデザインされ、および使用される合成RNAiおよび/または合成dsRNA分子を、発生遺伝子または幹細胞遺伝子のTGS(サイレンシング遺伝子)、これらのプロモーターおよび/またはエンハンサー配列に対して使用してもよい。
【0133】
合成RNAi分子および/または合成dsRNA分子は、本発明において記述された方法を使用して、かつ/または当該技術分野において公知および実践される方法によって、デザインされていてもよい。これらは、当該技術分野において公知および実践される方法に対する修飾を含んでいてもよい。
【0134】
細胞リプログラミングのためのもう一つの手段は、クロマチン修飾に関与する小分子を使用することである。これらの小分子は、遺伝子のDNAメチル化状態またはその遺伝子のプロモーターおよび/もしくはエンハンサー領域に影響を及ぼすタンパク質、ペプチド、小RNA分子、小さな化学的分子などを含む。リプログラミングの方法は、関心対象の特定の遺伝子に影響を及ぼす低分子に細胞を曝露することを含むだろう。低分子は、適切な時期に培地に添加してもよく、または細胞にトランスフェクトしてもよく(安定して、または一過性に)、または細胞に発現ベクターを導入して、低分子の発現によりリプログラミングを行ってもよい。
【0135】
クロマチン修飾に影響を及ぼす分子は、概して、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、エピジェネティック修飾因子、細胞シグナル伝達経路に影響を及ぼす分子(たとえば、DNAメチル化シグナル伝達に関与する)などを含む。本発明において使用してもよいいくつかの例示的な低分子は、5'-アザC、デキサメタゾン、バルプロン酸(VPA)、スベロイルアニリドヒドロアン酸(SAHA)、酪酸ナトリウム、RG108、BIX01294、PD0325901、CHIR99021、SB431542、BIO、プルモファミン(purmorphamine)などを含むが、限定されない。
【0136】
特定の局面において、本発明の細胞における遺伝子をリプログラミングするための細胞培養条件は、たとえば、所望のリプログラミングのレベルが達成されるまで、以下の成分の1つまたは複数(たとえば、1、2、3または4)の存在を含んでいてもよく:(a)誘導剤(たとえば、カセット内に1つまたは複数のリプログラミング遺伝子を包含するベクターの維持のためのエピソーム維持剤)、(b)活性化剤(たとえば、リプログラミング遺伝子の異なるセットを活性化するためのdsRNA、そのいくつかは、たとえば、宿主細胞内で内因性でもよく、またはこれは、ベクターによってコードされてもよい)、(c)阻害剤(たとえば、特定の遺伝子の発現を阻害するためのmiRNA、siRNA、アンチセンス分子など)、(d)クロマチンメチル化状態に影響を及ぼす小分子など、かつその後に、これらの剤の存在は、培地から除去することができる。
【0137】
組換えクローニング
幹細胞を操作するために使用されるリプログラミング可能な遺伝子または幹細胞マーカーをエピソーム発現ベクターに構築し得る1つの手段は、組換えクローニングを使用することによる。したがって、本発明は、組換えクローニングおよび組換え部位に関する組成物および方法、並びに組換えクローニング成分を含む。
【0138】
多数の組換えクローニング系が知られている。このような系において使用され得る組換え部位の例は、loxP部位;loxP511(米国特許第5,851,808号を参照されたい)などのloxP部位突然変異体、変異体または誘導体;frt部位;frt部位突然変異体、変異体または誘導体;dif部位;dif部位突然変異体、変異体または誘導体;psi;psi部位突然変異体、変異体または誘導体;cer部位;およびcer部位突然変異体、変異体または誘導体を含むが、限定されない。
【0139】
これらのクローニング系は、典型的には特定の組換え部位がこれらの同族の対応物と組換えするだろうという原理に基づいている。本発明の核酸分子は、異なる組換えクローニング系の組換え部位(たとえば、lox部位およびatt部位)を含むようにデザインされ得る。一例として、本発明の核酸分子は、単一のlox部位および2つのatt部位を含んでいてもよく、この場合、att部位は、互いと組換えしない。
【0140】
本発明に使用するための組換え部位は、組換え反応における基質として役に立つことができる任意の核酸でもよい。このような組換え部位は、野生型のもしくは天然に存在する組換え部位、または修飾、変異、誘導、もしくは突然変異された組換え部位でもよい。本発明に使用するための組換え部位の例は、λファージ組換え部位(attP、attB、attLおよびattRおよびこれらの突然変異体または誘導体など)およびphi80、P22、P2、186、p4およびP1などのその他のバクテリオファージからの組換え部位(loxPおよびloxP511などのlox部位を含む)を含むが、限定されない。変異されたatt部位(たとえば、attB 1 10、attP 1 10、attR 1 10およびattL 1 10)は、1999年5月28日に出願の米国出願番号60/136,744号および2000年3月2日に出願の米国出願番号09/517466号に記述されており、これらは、参照により具体的に本明細書に援用される。独特の特異性を有するその他の組換え部位(すなわち、第1の部位はその対応する部位と組換えし、異なる特異性を有する第2の部位とは組換えしない)は、当業者に公知であり、本発明を実施するために使用してもよい。これらの系のための対応する組換えタンパク質は、示した組換え部位で本発明に従って使用してもよい。本発明に使用するための組換え部位および組換えタンパク質を提供するその他の系は、サッカロマイセスセレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)からのFLP/FRT系、レゾルバーゼファミリー(たとえば、TndX、TnpX、Tn3レゾルバーゼ、Hin、Hjc、Gin、SpCCE1、ParAおよびCin)、並びにIS231およびその他のバチルス・チューリンゲネシス(Bacillus thuringiensis)転置因子を含む。本発明に使用するためのその他の適切な組換え系は、XerCおよびXerDリコンビナーゼならびに大腸菌におけるpsi、difおよびcer組換え部位を含む。その他の適切な組換え部位は、ElledgeおよびLiuに対して発行された米国特許第5,851,808号において見いだされ得、かつ、これは、参照により具体的に本明細書に援用される。本発明の実施において使用してもよい組換えタンパク質および突然変異、修飾、バリアントまたは誘導体組換え部位は、米国特許第5,888,732号および第6,143,557号および米国仮出願第 60/108,324号(1998年11月13日に出願された)に基づいた米国出願第09/438358号(1999年11月12日に出願された)および米国仮出願第 60/136,744号(1999年5月28日に出願された)に基づいた米国出願第 09/517466号(2000年3月2日に出願される)において記述したもの、並びにInvitrogen Corp.(Carlsbad, CA)から入手可能なGateway(商標)Cloning Technologyと関連するものを含み、これらの全ての全開示は、その全体が具体的に参照により本明細書に援用される。
【0141】
本発明の実施において使用することができる組換え部位の代表例は、上記att部位を含む。その他のatt部位と特異的に組換えするatt部位は、7塩基対重複領域の、およびその近くのヌクレオチドを変化させることによって構築することができる。したがって、本発明の方法、組成物およびベクターに使用するための適切な組換え部位は、全ての4つの野生型ラムダatt部位、attB、attP、attLおよびattR(1996年6月7日に出願の米国出願番号第08/663002号(現在米国特許第5,888,732号)およびもっと詳細にコア領域を記述する1998年10月23日に出願の第09/177387号を参照され、これらの記述は、これらの全体が参照により本願明細書に組み込まれる)において同一である15塩基対コア領域(GCTTTTTTATACTAA(SEQ ID NO:50))内に1、2、3、4またはそれ以上のヌクレオチド塩基の挿入、欠失または置換をもつものを含むが、限定されない。また、本発明の方法、組成物およびベクターに使用するための適切な組換え部位は、15塩基対コア領域(GCTTTTTTATACTAA(SEQ ID NO:50))内に1、2、3、4またはそれ以上のヌクレオチド塩基の挿入、欠失または置換を含み、これらは、この15塩基対コア領域と少なくとも50%同一で、少なくとも55%同一で、少なくとも60%同一で、少なくとも65%同一で、少なくとも70%同一で、少なくとも75%同一で、少なくとも80%同一で、少なくとも85%同一で、少なくとも90%同一の、または少なくとも95%同一である。
【0142】
類似して、attB1、attP1、attL1およびattR1におけるコア領域は、互いに同一であり、attB2、attP2、attL2およびattR2におけるコア領域と同様である。本発明で使用するための適切な核酸分子は、この15塩基対コア領域(GCTTTTTTATACTAA(SEQ ID NO:50))内で生じる7塩基対重複領域(TTTATAC、これは、インテグラーゼタンパク質のための切断部位によって定義され、かつ鎖交換が起こる領域である)内に1、2、3、4またはそれ以上のヌクレオチドの挿入、欠失または置換を含むものも含む。
【0143】
MultiSite Gateway(登録商標)技術は、米国特許公開第2004/0229229 A1号に記述されており、この開示全体が、参照により本明細書に援用され、制限酵素を使用することなく1つのベクターに複数のDNA断片をクローニングするために有効である。この系を使用して、1、2、3、4、5またはそれ以上の核酸セグメントを連結し、並びにこのようなセグメントをベクター(たとえば、単一のベクター)に導入することができる。Gateway(登録商標)(たとえば、MultiSite Gateway(登録商標))系により、効率的な遺伝子送達および発現のために、異なるプロモーター、DNAエレメントおよび遺伝子の組み合わせを同じベクターまたはプラスミドにおいて研究することができる。関心対象のそれぞれの遺伝子について複数のプラスミドをトランスフェクトする代わりに、「発現カセット」と呼ばれる異なるDNAエレメントを有する単一のプラスミドを同じゲノムバックグラウンドにおいて調査することができる。
【0144】
本発明の一つの態様において、およびたとえば、attR1およびattR2組換え部位を含むプラスミドが提供される。このベクターは、attL1およびattL3組換え部位に隣接するプロモーター(たとえば、Oct4プロモーター)を含む核酸セグメントおよびattR3およびattL2組換え部位に隣接するオープンリーディングフレームを含む核酸セグメントと組換えされる。LRクロナーゼ(Invitrogen Corp. Carlsbad, CA)の存在下における組換えにより、オープンリーディングフレームへのプロモーターの結合およびプラスミドのattL1とattL2組換え部位との間への得られた分子の挿入がもたらされる。同様の例が米国特許公開第2004/0229229 A1号の図4において見いだされ得る。
【0145】
トポイソメラーゼによって媒介されるライゲーション
本発明は、2つまたはそれ以上の核酸配列を含む本発明の組換え核酸分子(たとえば、ウイルスベクターなどのウイルスゲノムの全てまたは一部を含む分子)を産生するために1つまたは複数のトポイソメラーゼを使用する方法に関し、そのいずれか1つまたは複数は、たとえばウイルスゲノムの全てまたは一部を含んでいてもよい。トポイソメラーゼは、本明細書に記述した組換えクローニング技術と組み合わせて使用してもよい。たとえば、トポイソメラーゼを媒介した反応を、1つまたは複数の核酸セグメントに1つまたは複数の組換え部位を付着するために使用してもよい。次いで、セグメントは、たとえば、組換えクローニング技術を使用して、さらに操作して、および組み合わせてもよい。
【0146】
一つの局面において、本発明は、第1および少なくとも第2の核酸セグメント(いずれか、または両方がウイルス配列および/または関心対象の配列を含んでいてもよい)と、少なくとも1つの(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)トポイソメラーゼ(たとえば、タイプIA、タイプIBおよび/またはタイプIIトポイソメラーゼ)とを、連結されたセグメントのいずれか一方または両方の鎖がセグメントが連結される部位にて共有結合で連結されるように連結するための方法を提供する。
【0147】
1つの鎖において共有結合で連結された二本鎖組換え核酸分子を産生するための方法は、第2のヌクレオチド配列を第1のヌクレオチド配列に共有結合で付着させ得るように、5'または3'末端にて、部位特異的トポイソメラーゼ認識部位(たとえば、タイプIAまたはタイプIIトポイソメラーゼ認識部位)を有する第1の核酸分子またはその切断産物と、第2の(またはその他の)核酸分子および任意でトポイソメラーゼ(たとえば、タイプIA、タイプIBおよび/またはタイプIIトポイソメラーゼ)とを接触させることによって行うことができる。本明細書に開示されるように、本発明の方法は、5'および/または3'末端の一方または両方にて、任意のヌクレオチド配列を用いて、典型的には、該ヌクレオチド配列の少なくとも1つが部位特異的トポイソメラーゼ認識部位(たとえば、タイプIA、タイプIBまたはタイプIIトポイソメラーゼ)またはその切断産物を有する核酸分子を用いて、行うことができる。
【0148】
トポイソメラーゼによって媒介される核酸ライゲーション方法は、米国特許公開第2004/0265863 A1号おいて詳細に記述されており、その全ての開示は、参照により本明細書に援用される。
【0149】
本発明の一つの局面において、検出可能または選択可能なマーカーを使用してもよい。マーカーをコードする核酸セグメントにより、分子(たとえば、薬物耐性マーカー)もしくはそれを含む細胞をもしくはこれらに対して選択することができ、および/または分子もしくは分子をコードする核酸を含むもしくは含まないその細胞もしくは生物体の同定を可能にする。また、選択可能なマーカーは、限定されないがRNA、ペプチドもしくはタンパク質の産生などの活性をコードすることができ、またはRNA、ペプチド、タンパク質、無機および有機化合物もしくは組成物等のための結合部位を提供することができる。選択可能なマーカー(たとえば、陰性選択可能マーカーおよび陽性選択可能マーカー)の例は、以下を非限定的に含む:(1)他の毒性の化合物(たとえば、抗生物質)に対して耐性を提供する産物をコードする核酸セグメント;(2)他のレシピエント細胞において欠如する産物(たとえば、tRNA遺伝子、栄養要求性マーカー)をコードする核酸セグメント;(3)遺伝子産物の活性を抑制する産物をコードする核酸セグメント;(4)容易に同定することができる産物(たとえば、β-ラクタマーゼなどの表現型マーカー、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)および細胞表面タンパク質);蛍光タンパク質のカメレオンキメラ(Miyawaki et al. Nature 1997, vol. 388(6645):882-7および米国特許第5,998,204号、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)をコードする核酸セグメント;(5)他の細胞生存および/または機能に有害である産物を結合する核酸セグメント;(6)他の核酸セグメントのいずれかの活性を阻害する核酸セグメント(たとえば、アンチセンスオリゴヌクレオチド);(7)基質を修飾する産物を結合する核酸セグメント(たとえば、制限エンドヌクレアーゼ);(8)所望の分子を単離し、または同定するために使用することができる核酸セグメント(たとえば、特定のタンパク質結合部位);(9)さもなくば非機能性であり得る特定のヌクレオチド配列をコードする核酸セグメント(たとえば、分子の部分集団のPCR増幅のため);(10)存在しないときに、直接もしくは間接的に特定の化合物に耐性または感受性を与える核酸セグメント;および/または(11)毒性である(たとえば、ジフテリア毒素)、または比較的無毒の化合物(「プロドラッグ」を呼ばれる)をレシピエント細胞において毒性化合物に変換する産物(たとえば、単純疱疹チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ)をコードする核酸セグメント;(12)これらを含む核酸分子の複製、分割または遺伝率を阻害する核酸セグメント;および/または(13)条件つきの複製機能、たとえば、特定の宿主もしくは宿主細胞株における、または特定の環境条件(たとえば、温度、栄養状態など)の下での複製をコードする核酸セグメント。
【0150】
一つの態様において、検出可能または選択可能なマーカーは、薬物耐性(抗生物質耐性など)遺伝子である。選択可能なマーカーは、分化状態特異的プロモーターに連結しても、または連結されなくてもよい。薬物耐性は、薬物作用の全ての異なるレベルにて生じ得、かつ、これらの機構は、標的前イベント、薬物標的相互作用または標的後イベントとして分類することができる。本発明において有用な共通の抗生物質耐性選択可能マーカーは、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、ブレオマイシン、ストレプトマイシン、ブラストサイジン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、Zeocin(商標)などの等抗生物質を含むが、限定されない。
【0151】
一部の態様において、選択可能なマーカーは、たとえば、ヒスチジノールの存在下においてヒスチジン非含有培地において成長できるhisDを含む栄養要求性遺伝子であってもよい。栄養要求性マーカーは、細胞が必須成分(通常はアミノ酸)を合成するのを可能にし、一方で、該必須成分を欠いている培地において増殖することができる。
【0152】
一つの態様において、選択可能なマーカーは、蛍光タンパク質または膜タグを含み、これらは、細胞を分離するために、磁気ビーズ、細胞分別機またはその他の手段と共に使用してもよい。
【0153】
選択可能なマーカーとして蛍光タンパク質を使用する1つの主な目的は、生きている細胞の視覚化を含む細胞の視覚化である。したがって、選択可能なマーカーにより、マーカーの有無を決定するために宿主細胞を視覚的にスクリーニングすることが可能になるだろう。たとえば、選択可能なマーカーは、それを含む細胞の色および/または蛍光特徴を変化させ得る。この変化は、1つまたは複数の化合物の存在下において、たとえば、選択可能なマーカーによってコードされるポリペプチドと化合物との間の相互作用(たとえば、基質として化合物を使用する酵素反応)の結果として生じ得る。視覚の特徴におけるこのような変化を使用して、たとえば、蛍光標示式細胞分取器(FACS)により、選択可能なマーカーを含む細胞を、それを含まないものから物理的に分離することができる。
【0154】
本発明の一つの局面において、本発明は、Lineage Light BacMam系の使用に適用でき、これにより、細胞の混合物からの関心対象の任意の細胞型の同定、濃縮または単離が可能になる。たとえば、系統特異的プロモーターは、細胞の不均一な混合物から特定の細胞型、すなわちその他の非発現細胞からベクターによってコードされる系統特異的に駆動される遺伝子を発現する分化細胞を同定、標識、または分離するのを補助し得る。系統特異的プロモーター(たとえば、GFPの発現を駆動するAFPなどの肝臓特異的プロモーター)が使用される一つの態様において、Lineage Lightを使用して、肝細胞に分化する胚性幹細胞を同定することができる。Lineage Light試薬は、関心対象の細胞型の存在を検出するために、分化の種々の段階の間に細胞に直接適用することができる。
【0155】
本発明の構成的BacMamベクターは、たとえばより成熟した細胞型への幹細胞の進行をモニターするためにLineage Lightのより長期間発現が必要である場合に、典型的には適用できる。
【0156】
本発明の特定の態様は、細胞(たとえば、幹細胞)を、(a)OriP部位;(b)任意で、EBNA1をコードするDNAセグメント;(c)1つまたは複数(たとえば、1、2、3など)の組換え部位(たとえば、1つまたは複数のatt部位);および/または(c)少なくとも1つの選択可能なマーカーを含むウイルスベクターを含む組換えウイルスと接触させることを含む。本発明の方法は、たとえば、当該技術分野において公知の一般の細胞培養およびウイルス感染法(たとえば、BoyceおよびBucher(哺乳動物細胞へのバキュロウイルスを媒介した遺伝子導入):Proc. Natl. Acad. Sci. USA:93:2348(1996)、その全体が参照によって組み込まれる)を使用してもよい。本発明の方法はまた、細胞を従来の組織培養条件などのインビトロ条件下で生存させることも可能にし得、その際に、本明細書に記述した組成物を使用して関心対象の特定の遺伝子を発現することにより、特定の遺伝子(たとえば、分化マーカー)を発現する生きている細胞を視覚化することができる。生きている細胞を視覚化する目的は、細胞の混合物からの特定の細胞型の同定、濃縮または単離のためであろう。
【0157】
生きている培養物検出のために本発明の方法を実践するために、組織培養容器に接種して、細胞を増殖させ、細胞型に応じて、任意に付着させることができる。細胞を、たとえば1時間〜2日、2時間〜1.5日または4時間〜1日の間増殖させることができる。次いで、培地を吸引して、本発明の組換えウイルスを、たとえばPBSなどの緩衝液に希釈することができ、15分〜72時間の間または例示的態様において、幹細胞または初代細胞の培養物について2〜4時間もしくは5〜60分間もしくは15〜30分間、細胞に適用することができる。ウイルスとのインキュベーション後、次いでウイルス感染培地を、本明細書に開示されるようにエンハンサーを含む増殖培地と、15分〜8時間または1〜4時間または1.5〜2時間、37℃にて置換することができる。次いで、細胞を培地中で増殖させて、解析することができる。一部の態様において、細胞は、タイプIコラーゲンもしくはラット尾部コラーゲンなどのコラーゲンを含む基質上で、またはラミニンを含むマトリックス上で生存させることができるであろう。また、このような基質の移植可能バージョンは、本発明に使用するために適しているであろう(たとえば、Hubbell et al., 1995, Bio/Technology 13:565-576およびLanger and Vacanti, 1993, Science 260:920-925を参照されたい)。細胞をインビトロ条件下で生存させる代わりに、またはそれに加えて、細胞を動物(たとえば、ヒトにおいて)におけるインビボ条件下で生存させることができるであろう。
【0158】
その他の選択または同定を、当該技術分野において周知技術によって達成してもよい。たとえば、選択可能なマーカーが他の毒性の化合物に耐性を与えるときに、選択は、選択可能なマーカーを含むこれらの宿主細胞のみが生存可能である条件下で毒性の化合物と宿主細胞群を接触させることによって達成してもよい。もう一つの例において、選択可能なマーカーは、他の良性の化合物に対して感受性を与えてもよく、選択は、選択可能なマーカーを含まないこれらの宿主細胞だけが生存可能である条件下で良性の化合物と宿主細胞群を接触させることによって達成してもよい。選択可能なマーカーは、適切な条件の選択によって、マーカーを含むまたは含まない宿主細胞を同定することを可能にするであろう。
【0159】
種々の細胞群を区別するために、複数の選択可能なマーカーを、同時に使用してもよい。たとえば、本発明の核酸分子は、複数の選択可能なマーカーを有してもよく、その1つまたは複数を適切な反応によって該核酸分子から除去してもよい。反応の後、核酸分子を宿主細胞群に導入してもよく、選択可能なマーカーの全てを有する核酸分子を含むこれらの宿主細胞と、1つまたは複数の選択可能なマーカーが除去された核酸分子を含む宿主細胞とを区別してもよい。たとえば、本発明の核酸分子は、一対の組換え部位の外側にブラストサイジン耐性マーカーおよび該組換え部位の内部でβ-ラクタマーゼをコードする選択可能なマーカーを有してもよい。組換え反応および細胞群への反応混合物の導入の後、任意の核酸分子を含む細胞を、ブラストサイジンと細胞群を接触させることによって選択することができる。任意に、たとえば、FACSによって、所望の細胞を望ましくない細胞から物理的に分離することができる。
【0160】
このような系の1つを使用して、特定の分化状態に入っている細胞を同定または選択する。レポーター遺伝子、選択マーカーおよび調節遺伝子と発生的に関連したプロモーターの多くの異なる組み合わせを想定することができる。一部の態様において、膜タグをプロモーターに作動可能に連結して、磁気ビーズ、FACSまたはその他の手段を使用して、培養物から分化細胞を選択することができるであろう。本発明は、挿入された遺伝子エレメントを使用して特定の特性をもつ細胞を産生するための方法、RNAi分子の使用による遺伝子発現の制御のための方法、細胞分化の制御のための方法、分化状態に基づいて細胞を選択するための方法、および限定された分化潜在性をもつ細胞を産生するための方法も含む。
【0161】
幹細胞の調製
本発明の方法は、細胞(たとえば、幹細胞)の調製に向けられるものを含む。例示的な方法は、少なくともEBNA1を発現するDNA断片、任意にtetリプレッサー断片、少なくとも1つのOriPを含むベクター、および、関心対象の任意の遺伝子または遺伝子群をクローニングすることができる少なくとも1つの組換えクローニング(たとえば、Gateway(登録商標))組換え部位を含む、本発明において記述した少なくとも1つのエピソーム核酸構築物を細胞(たとえば、幹細胞)に導入することに関連した方法を含む。本発明の一部の局面において、調節可能な(たとえば、誘導性のまたは抑制可能な)プロモーターを使用することにより、細胞(たとえば、幹細胞)を所望の分化の状態において維持することができる。誘導剤(たとえば、テトラサイクリン)の存在下において、細胞は、OriPに結合するEBNA1タンパク質を発現して、全てのOriPを含むベクターの保持および複製を促進して、これによりリプログラミング期間にわたって導入される遺伝子の発現を保証するだろう。一旦リプログラミングされた細胞または誘導多能性細胞(iPC)が得られたら、テトラサイクリンが除去され、これによりtetリプレッサーによるEBNA1タンパク質の抑制が起こり、エピソームプラスミドは、二ラウンドの細胞分裂の後では維持されないだろう。この系は細胞のゲノムにベクター成分を組み込まないので、EBNA1タンパク質発現およびその後のエピソームプラスミドの複製は、希釈されていく。従って、遺伝子発現は、リプログラミングのために必要とされる期間にわたって持続されるだけであり、誘導因子(テトラサイクリン)の除去の後に異所性遺伝子を喪失させることができる。
【0162】
胚性幹細胞の維持および拡張は、米国特許第5,453,357号において記述されている。本発明の一部の局面において、幹細胞は、抗生物質耐性遺伝子に作動可能に連結された分化状態または細胞系統に関連するプロモーターを使用することにより、所望の分化の状態において維持することができる。分化状態に関連したプロモーターとは、プロモーターの機能が細胞の分化状態に連携されているものである。細胞が分化を開始するときに、プロモーターの機能が低下し、関連する抗生物質耐性遺伝子の発現が低下して、細胞は、適切な抗生物質に対して感受性になる。細胞系統に関連するプロモーターとは、プロモーターが特定の細胞系統において差動的活性を示すものである。細胞系統に関連するプロモーターは、機能的でなくてもよく、または異なる系統の細胞において異なる活性を有するだろう。この同じ原理を使用して、抗生物質耐性遺伝子が、細胞(たとえば、幹細胞)が所望の系統経路に沿って分化している場合にだけ活性になるプロモーターに作動可能に連結された特定の分化経路をたどる細胞(たとえば、幹細胞)を選択することができる。次いで、適切な抗生物質を使用して、間違った経路をたどって分化したかまたは間違った系統に属する細胞を、除去することができる。
【0163】
一部の態様において、細胞(たとえば、幹細胞)は、それぞれ独特のプロモーターに作動可能に連結された複数の分化状態または系統に関連する遺伝子およびさらに、独特の抗生物質耐性プロフィールと関連するそれぞれの遺伝子を含むように操作してもよい。これにより、これらが従う分化経路に応じて、多様な抗生物質耐性プロフィールを有する細胞(たとえば、幹細胞)の選択ができる。いくつかの例において、プロモーターの全ては、細胞(たとえば、幹細胞)が抗生物質の全てに耐性のままになるように、転写的に活性なままでもよい。他の例において、いくつかのプロモーターは、1つの分化経路に残存してもよくまたは転写的に活性になってもよいが、別の経路において活性にならなくてもよい。これにより、特定の分化経路に特異的な遺伝子発現のパターンを生じ、所望の分化経路に従う細胞(たとえば、幹細胞)を特異的に選択することができる。
【0164】
本発明はまた、インビボ細胞(たとえば、幹細胞)または前駆細胞の動員、遊走、組込み、増殖および分化を誘導するために使用してもよい。
【0165】
幹細胞は多能性であり得、すなわちこれらは、複数の異なる分化した細胞型を生じさせ得る。場合によっては、幹細胞は全能性であり得、すなわちこれらは、それ自体が由来する生物の異なる細胞型全てを生じさせ得る。本発明は、前駆幹細胞、全能性幹細胞、多能性幹細胞、または多分化能幹細胞に適用できる。
【0166】
一部の態様において、本発明は、成体細胞(たとえば、幹細胞)を遺伝子的に修飾するために使用される。成体幹細胞は、動物体における多数の位置に存在することが知られている。成体幹細胞は、幹細胞が存在する器官および組織のいずれ由来でもよい。例には、骨髄、造血系、ニューロン、脳、筋肉幹細胞または臍帯幹細胞からの幹細胞を含む。幹細胞は、特に骨髄間質幹細胞、ニューロン幹細胞または造血幹細胞でもよい。
【0167】
いくつかの態様において、本発明の実施において使用される細胞(たとえば、幹細胞)は、ヒト細胞(たとえば、幹細胞)でもよい。あるいは、細胞(たとえば、幹細胞)は、ヒト以外の動物から、および特に非ヒト哺乳動物由来であってもよい。細胞(たとえば、幹細胞)は、家畜または農業上重要な動物のものでもよい。動物は、たとえば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、雄ウシもしくは家禽トリまたはその他の商業的に飼育される動物でもよい。動物は、イヌ、ネコ、またはトリおよび特に家畜化された動物からでもよい。動物は、サルなどの非ヒト霊長類でもよい。たとえば、霊長類は、チンパンジー、ゴリラまたはオランウータンでもよい。本発明の実施において使用される細胞(たとえば、幹細胞)は、齧歯類幹細胞でもよい。たとえば、細胞(たとえば、幹細胞)は、マウス、ネズミまたはハムスター由来であってもよい。
【0168】
一つの態様において、本発明の実施において使用される細胞(たとえば、幹細胞)は、植物細胞(たとえば、幹細胞)でもよい。幹細胞は、種および発生中または成熟した植物の多数の位置において生じることが知られている。本発明において遺伝的に修飾され、または得られる幹細胞は、幹細胞が存在する組織のいずれ由来でもよい。例は、頂端または根分裂組織からの幹細胞を含む。一つの態様において、幹細胞は、農業上重要な植物由来である。植物は、たとえば、トウモロコシ、コムギ、米、ジャガイモ、食用の果実を有する植物またはその他の商業的に耕作される植物でもよい。
【0169】
場合によっては、遺伝的に修飾された細胞(たとえば、幹細胞)は、被験体を治療することを、または医薬の製造において意図され得る。そのような場合、細胞(たとえば、幹細胞)は、意図されるレシピエント由来であってもよい。他の場合には、細胞(たとえば、幹細胞)は、異なる被験体から生じてもよいが、意図されたレシピエントと免疫学的に適合性であるように選ばれ得る。場合によっては、細胞(たとえば、幹細胞)は、同胞、半同胞、いとこ、親または子などの意図されたレシピエントの血縁から、および特に同胞由来であってもよい。細胞(たとえば、幹細胞)は、組織タイプに分けられて、かつ被験体に対して有害でない意図されたレシピエントからの免疫応答を生じないか、または低免疫応答だけを生じるであろう免疫学的プロフィールを有することが見いだされた無関係な被験体由来であってもよい。しかし、多くの場合、本発明は、免疫学的に意図されたレシピエントと適合性の幹細胞を与えるために使用し得るので、細胞(たとえば、幹細胞)は、無関係な被験体由来であってもよい。たとえば、細胞(たとえば、幹細胞)およびレシピエントは、組織適合性ハプロタイプ(たとえば、HLAハプロタイプ)を有しても、または有しなくてもよい。
【0170】
細胞(たとえば、幹細胞)株は、一般に、生物体から単離され、培養下で維持された細胞(たとえば、幹細胞)群である。したがって、本発明は細胞(たとえば、幹細胞)株、例えば成体幹細胞株、胎児幹細胞株、胚性幹細胞株、新生児幹細胞株、または若年幹細胞株に適用してもよい。細胞(たとえば、幹細胞)株は、クローンでもよく、すなわち、これらは、単一の細胞(たとえば、幹細胞)から生じてもよい。一つの態様において、本発明は、既存の幹細胞株に、特に既存の胚性および胎児幹細胞株に適用してもよい。その他の場合において、本発明は、新たに確立された細胞(たとえば、幹細胞)株に適用してもよい。
【0171】
本発明の実施において使用される細胞(たとえば、幹細胞)は、既存の幹細胞株でもよい。本発明において使用してもよい既存の細胞(たとえば、幹細胞)株の例は、Geron(Menlo Park、California)およびReNeuron(Guildford、United Kingdom)によって提供される神経幹細胞株によって提供されるヒト胚性幹細胞株を含む。一部の態様において、細胞(たとえば、幹細胞)株は、公開されている入手可能な幹細胞でもよい。細胞(たとえば、幹細胞)株のためのさらなる供与源は、オーストラリアのBresaGen Inc.;CyThera Inc.;ストックホルム、スウェーデンのカロリンスカ研究所;メルボルン、オーストラリアのモナッシュ大学;バンガロール、インドの国立生物化学センター;ムンバイ、インドのReliance Life Sciences;ハイファ、イスラエルのTechnion-Israel Institute of Technology;サンフランシスコのカリフォルニア大学;イェーテボリー、スウェーデンのイェーテボリー大学;およびWisconsin Alumni Research Foundation;およびCellartis (スウェーデン);およびESI(シンガポール)を含むが、限定されない。
【0172】
本明細書において、幹細胞に対する言及は概して、たとえば、標的細胞が新たに単離された幹細胞であることも幹細胞がインビボで常在性の幹細胞であることも証明されていない限り、同じく幹細胞株に適用できると言及した態様を含む。本発明は、新たに単離された幹細胞にも、更に、幹細胞を含む細胞群にも適用できる。本発明はまた、インビボで幹細胞の分化を制御するために使用してもよい。
【0173】
細胞(たとえば、幹細胞)の特定のタイプを単離するための方法は、当該技術分野において周知であり、本発明に使用するための適切な細胞(たとえば、幹細胞)を得るために使用してもよい。このような方法は、たとえば、本発明の医薬の意図されるレシピエントから細胞(たとえば、幹細胞)を回収するために使用してもよい。細胞(たとえば、幹細胞)に特有の細胞表面マーカーを使用して、たとえば、細胞選別によって幹細胞を単離してもよい。細胞(たとえば、幹細胞)は、本明細書に言及される被験体、および特に、本明細書に言及される障害のいずれかに罹患している被験体のいずれのタイプから得てもよい。
【0174】
一部の態様において、分化した細胞の分化を逆行させて幹細胞を得るために本発明の方法を使用することにより、細胞(たとえば、幹細胞)を得てもよい。特に、分化した細胞は、幹細胞を産生するようにインビトロで処理された被験体から回収してもよく、次いで得られた細胞(たとえば、幹細胞)を要望通り操作して、被験体に戻す前に(および/または後に)分化させてもよい。幹細胞は、典型的には、このようなアプローチが好ましいであろう個体に存在する非常に少数の細胞である。このことはまた、幹細胞が特定の個体からより容易に導き出されることを意味し得、かつ胚性幹細胞の必要性を消失させ得る。加えて、典型的には、このようなアプローチは、幹細胞それ自体を単離するための方法より労働集約的でも高価でもないだろう。場合によっては、幹細胞を、被験体から単離して、インビトロで分化して、および次いで同じ被験体に戻してもよい。
【0175】
多くの態様において、幹細胞は、本明細書に言及される幹細胞のタイプのいずれでもよく、本明細書に言及される生物体のいずれかにあってもよい。標的幹細胞は、本明細書に言及したもののいずれかを含む、幹細胞が存在する体の器官、組織または細胞群のいずれに存在してよい。標的幹細胞は、典型的には被験体において天然に存在している常在性の幹細胞であるだろうが、場合によっては、本発明の方法を使用して産生される幹細胞を被験体に導入して、次いでRNAの導入によって分化を誘導してもよい。
【0176】
培養下で幹細胞を単離して、維持して、拡大して、特徴づけて、および操作するための種々の技術が知られており、使用してもよい。好ましい態様において、遺伝子修飾を幹細胞のゲノムに導入してもよい。クローン株を確立することができ、かつPCRまたはサザンブロッティングなどの技術を使用して、容易にスクリーニングすることができるので、幹細胞は、このような操作に向いている。
【0177】
いくつかの例において、細胞(たとえば、幹細胞)は、遺伝的な欠損をもつ個体または動物から生じてもよい。本明細書に記述される方法を使用して、欠損を直し、または寛解させるように修飾を行ってもよい。たとえば、失われたか、または欠陥のある遺伝子の機能的コピーを細胞のゲノムに導入してもよい。特定の態様において、分化した細胞は、遺伝的な欠損をもつ個体から得てもよく、幹細胞を、本明細書に開示される方法を使用して分化された細胞から得て、遺伝的な欠損を直し、または寛解させ、次いで、元の被験体を治療するためにまたは元の被験体を治療するための医薬の製造において、これらから得られた幹細胞または分化された細胞のいずれかを使用する。
【0178】
本発明によって想定される発現ベクターは、後述するように制御配列、マーカー配列、選択配列等などのさらなる核酸断片を含んでいてもよい。
【0179】
本発明の一つの局面において、少なくとも1つの所望の「遺伝子発現カセット」におけるクローニングのための少なくとも1つの組換えクローニング用(たとえば、MultiSite Gateway(登録商標))クローニング部位を、一方で誘導剤を存在させた関心対象の細胞(たとえば、幹細胞)において、同定してもよい。
【0180】
本発明の多くの態様において、有用な遺伝子エレメントのコレクションまたは遺伝子ツールボックスが作製される。ツールボックスの成分は、転写プロモーターおよびレポーターを含んでいてもよい。適切なプロモーターは、構成的で、ウイルス、ヒト、およびマウスの組織に特異的で、調節可能なプロモーターを含むが、限定されない。適切なレポーターは、タンパク質を対比する、緑色蛍光タンパク質(GFP)変異体、β-ラクタマーゼ、ルミオ(lumio)、磁気共鳴映像法(MRI)およびポジトロン放射形断層撮影(PET)を含むが、限定されない。ツールボックスのさらなる成分は、毒素遺伝子、組換え部位、内部リボソーム侵入セグメント(IRES)配列などのゲノム操作のために有用なその他のエレメントを含むことができる。
【0181】
ツールボックスのエレメントを最初に配置してエントリークローンとしてもよい。エントリークローンを調製する最初の工程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって遺伝子エレメントを増幅し、続いてTAまたは任意のその他のクローニングベクターにクローニングすることであろう。PCRのための一般的な手順は、MacPherson et al., PCR:A Practical Approach, (IRL Press at Oxford University Press, (1991)において教示される。それぞれの適用反応のためのPCR条件は、経験的に決定してもよい。多数のパラメーターが、反応の成功に影響を及ぼす。これらの中で、パラメーターは、アニーリング温度および時間、伸長時間、Mg2+およびATP濃度、pH、並びにプライマー、鋳型およびデオキシリボヌクレオチドの相対濃度である。増幅後、生じる断片は、アガロースゲル電気泳動、続く臭化エチジウム染色および紫外照明での視覚化によって検出することができる。
【0182】
最終的な発現ベクターは、所望の遺伝子エレメントを含むエントリークローンを、適切なattR部位および選択マーカーを含む目的のベクターと組換えすることによって産生される。このような手順を使用して、たとえば2つのエレメントである発現されるべきプロモーターおよび遺伝子をもつ単純な発現ベクター、または3、4、5、7、10、12、15、20、30、50、75、100、200などの遺伝子エレメントをもつより複雑な発現ベクターを生成することができる。中間の目的ベクターを使用して、Attachment A〜Pにおいて概説した多数の遺伝子エレメントをもつ発現ベクターを調製してもよい。
【0183】
様々な発現ベクターが、本発明の実施における使用に適している。一般に、発現ベクターは、以下の特徴の1つまたは複数を有するだろう:プロモーター、プロモーター-エンハンサー配列、選択マーカー配列、複製開始点、誘導性エレメント配列、抑制可能エレメント配列、エピトープタグ配列など。
【0184】
また、その他の例示的な真核プロモーターまたは異なるプロモーターからのDNAセグメントの組み合わせを本発明において使用してもよく、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、CMV/誘導性オペロンプロモーター(たとえば、CMV/TOプロモーター、この場合、CMVプロモーターの一部およびTetオペロンプロモーターが組み合わせられる)、マウスメタロチオネインI遺伝子プロモーター(Hamer et al., J. Mol. Appl. Gen. 1:273-288((1982)));ヘルペスウイルスTKプロモーター(McKnight、Cell 31:355-365((1982)));SV40初期プロモーター(Benoist et al., Nature(London)290:304-310((1981)));酵母gall遺伝子配列プロモーター(Johnston et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)79:6971-6975((1982)));Silver et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)81:5951-59SS、(1984)、EF-1プロモーター、エクジソン応答性プロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター等を含むが、限定されない。プロモーターはまた、組織特異的発現を可能にするために組織特異的プロモーターも含む。
【0185】
本発明に使用するための例示的なプロモーターは、これらが導入される特定の細胞または組織タイプにおいてこれらが機能するように選択してもよい。
【0186】
発現ベクターにおいて有用なさらなるエレメントは、複製開始点である。複製開始点は、多量体開始点結合タンパク質によって認識されかつ開始点部位にてDNA複製酵素を構築するのに重要な役割を果たす、複数の短い繰り返し配列を含む、独特のDNAセグメントである。本明細書に使用される発現ベクターに使用するための適切な複製開始点は、大腸菌(E. coli)oriC、colE1プラスミド開始点、2μおよびARS(両方とも酵母系において有用)、sf1、SV40、EBV OriP(哺乳動物系において有用)等を含む。
【0187】
エピトープタグは、特定の場合において必要であろう。これらは、所望の遺伝子に付け加えられると、該エピトープタグをもつ所望のタンパク質配列を含む融合タンパク質として発現される短いペプチド配列であり、融合タンパク質を容易に同定または(クロマトグラフィー樹脂に結合された抗体を使用して)精製するのを補助し得る。タンパク質上のエピトープタグの存在は、組換えタンパク質それ自体に特異的な抗体を産生する必要なく、ウェスタンブロットなどのその後のアッセイで検出され得る。一般に使用されるエピトープタグの例は、V5、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヘマグルチニン(HA)、ペプチドPhe-His-His-Thr-Thr、キチンを結合するドメイン等を含む。
【0188】
発現ベクターにおけるさらに有用なエレメントは、マルチクローニングサイトまたはポリリンカーである。一連の制限エンドヌクレアーゼ認識部位をコードする合成DNAが、プラスミドベクターに、たとえばプロモーターエレメントの下流に挿入される。これらの部位は、特定の位置にてベクターにDNAを便利にクローニングするために操作される。
【0189】
前述のエレメントを、本発明の方法に使用するための適切な発現ベクターを産生するために組み合わせることができる。当業者であれば、本明細書の教示からみてこれらの特定の系に使用するための適切なエレメントを選択し、組み合わせることができるだろう。
【0190】
本発明の、クローニングした遺伝子エレメント、個々の遺伝子エレメントを含むエントリークローン、目的ベクター、選択抗生物質などの付属産物、受容細胞、プラスミド精製キットのような付属の浄化ツール/キット、トランスフェクション試薬、発現クローン構築キットなどを非限定的に含む遺伝子ツールボックスの個々のエレメントを製剤化してキットとすることができる。このようなキットの成分は、容器、説明書、溶液、緩衝液、使い捨て器具、およびハードウェアを含むことができるが、限定されない。
【0191】
本発明の方法によって修飾される細胞(たとえば、幹細胞)は、たとえば、(i)生きた状態でこれらを保持するが成長は促進しない、(ii)細胞の成長を促進する、および/または(iii)細胞を分化させるか脱分化させる条件下で、維持することができる。細胞培養条件は典型的に、細胞におけるリプログラミング遺伝子の作用に対して、すなわち誘導剤(たとえば、エピソーム維持剤に対し)、活性化剤(たとえば、dsRNAに対し)または阻害剤(たとえば、miRNA、siRNA、アンチセンス分子などに対し)の存在下において、所望のリプログラミングレベルが達成されてその際に誘導剤、または活性化剤、または阻害剤の存在が培地から除去されるまで許容性である。所与の細胞、細胞型、組織、または生物体について、培養条件は、当該技術分野において公知である。これらの条件は、定義された培地、無血清培地、フィーダーフリー培養条件における細胞の培養および培養下での幹細胞の維持のためのマトリックスの使用を含むが、限定されない。
【0192】
トランスジェニック非ヒト動物
もう一つの態様において、本発明は、本発明の方法および組成物を使用することによってゲノムが修飾されたトランスジェニック非ヒトトランスジェニック動物を含む。トランスジェニック動物は、種々の障害の研究のための、およびこのような障害を調整する薬物をスクリーニングするためのモデル系として役に立つように、本発明の方法を使用して産生し得る。
【0193】
「トランスジェニック」動物は、遺伝的に操作された動物または遺伝的に操作された動物の子孫でもよい。トランスジェニック動物は通常、少なくとも1つの無関係な生物由来の、例えばウイルス由来の物質を含む。トランスジェニック生物の文脈で使用される、用語「動物」は、ヒトを除く全ての種を意味する。これはまた、胚性および胎児段階を含む発生の全ての段階における個々の動物を含む。家畜(たとえば、ニワトリ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ウサギ等)、齧歯類(たとえば、マウス)および家庭のペット(たとえば、ネコおよびイヌ)は、本発明の範囲内に含まれる。一部の態様において、動物は、マウスまたはネズミでもよい。
【0194】
用語「キメラ」動物は、任意の異種遺伝子が見いだされ得るか、または、該動物の全てではなく一部の細胞で異種遺伝子が発現され得る、動物であり得る。
【0195】
用語トランスジェニック動物は、生殖細胞株のトランスジェニック動物も含む。「生殖細胞株のトランスジェニック動物」は、本発明の方法によって提供される遺伝子情報が取り込まれ、生殖系細胞に組み込まれ、従って、情報を子孫へ伝えるための能力を与え得る、トランスジェニック動物であり得る。このような子孫が、実際にその情報の一部もしくは全部を有する場合、これらもまた、トランスジェニック動物である。
【0196】
トランスジェニック植物および動物を産生する方法は、当該技術分野において公知であり、本出願の教示と組み合わせて使用することができる。
【0197】
一つの態様において、本発明のトランスジェニック動物は、EBNA1を発現するDNA断片、OriP、および、関心対象の任意の遺伝子または遺伝子群をクローニングすることができる少なくとも1つの組換えクローニング(たとえば、MultiSite Gateway(登録商標))組換え部位を少なくとも含む、本発明において記述される少なくとも1つのエピソーム核酸構築物を単一の細胞胚に導入することによって、産生してもよい。成熟した動物の生殖系細胞のDNAは通常のメンデル様式で遺伝される。誘導剤、たとえばテトラサイクリンの存在下においてEBNA1タンパク質の発現が生じ、これは、OriPに結合して、OriP含有ベクターの保持および複製を促進し、これによって、リプログラミング期間にわたるその発現が保証される。一旦リプログラミング細胞または誘導多能性細胞(iPC)が得られたら、テトラサイクリンを除去し、これによって、tetリプレッサーによるEBNA1タンパク質の抑制が生じ、かつ、エピソームプラスミドは、二ラウンドの細胞分裂の後では維持されないだろう。この系は、細胞のゲノムにベクター成分を組み込まないので、遺伝子発現は、リプログラミングに必要な期間しか持続されず、よって、誘導因子(テトラサイクリン)の除去の後に異所性遺伝子を喪失させることができる。
【0198】
たとえば、トランスジェニックマウスを調製するために、雌マウスを、過剰排卵するように誘導させる。交配させた後に、雌をCO2仮死状態または頸椎脱臼によって屠殺して、切除した輸卵管から胚を回収する。周囲の卵丘細胞を除去する。次いで前核胚を洗浄して、注射の時間まで貯蔵する。発情周期がランダムである成体雌マウスを精管切除した雄と対にする。レシピエント雌をドナー雌と同時に交尾させる。次いで、胚を外科的に移植する。トランスジェニックラットを産生するための手順は、マウスのものと同様である。(Hammer, et al., Cell 63:1099-1112, (1990)を参照されたい)。トランスジェニック実験のために適した齧歯類は、Charles River(Wilmington、Mass.)、Taconic(Germantown、N.Y.)、Harlanスプラーグドーリー(Indianapolis、Ind.)などの標準的な市販の供与源から得ることができる。
【0199】
齧歯類胚の操作のための、および融合体の前核へのDNAのマイクロインジェクションのための手順は、当業者に周知である(Hogan, et al.,上記)。魚、両生類の卵およびトリのためのマイクロインジェクション手順は、HoudebineおよびChourrout、Experientia 47:897-905(1991)に詳述されている。動物の組織へのDNAの導入のためのその他の手順は、米国特許第4,945,050号(Sandford et al., 7月30日、(1990))に記述されている。
【0200】
胚の内部細胞塊に由来し、かつ培養下で安定化された多能性幹細胞または多分化能幹細胞を、本方法を使用して核酸配列を組み込むように培養下で操作することができる。胚盤胞への注射によりこのような細胞からトランスジェニック動物を産生することができ、次いでこれを仮親に移植して、出産予定日を迎えさせる。
【0201】
幹細胞を培養するため、および幹細胞へのDNAの導入のための方法は、トランスフェクション(たとえば:一過性または安定)、ペプチド送達、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム/DNA沈澱、マイクロインジェクション、リポソーム融合、レトロウイルス感染等などの方法を含み、また当業者に周知である。これらの幹細胞からのトランスジェニック動物のその後の産生は、当該技術分野において周知である。たとえば、Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells, A Practical Approach, E.J.Robertson, ed., IRL Press, 1987を参照されたい。哺乳動物(マウス、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ウシ)受精卵への異種のDNAのマイクロインジェクションのための標準的な実験手順の総説は、以下を含む:Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo (Cold Spring Harbor Press 1986);Krimpenfort et al., (1991), Bio/Technology 9:86;Palmiter et al., (1985), Cell 41:343;Kraemer et al., Genetic Manipulation of the Early Mammalian Embryo (Cold Spring Harbor Laboratory Press 1985);Hammer et al., (1985), Nature, 315:680;Purcel et al., (1986), Science, 244:1281;Wagner et al., 米国特許第5,175,385号;Krimpenfort et al.,米国特許第5,175,384号、それぞれの内容が参照により援用される。
【0202】
手順の一つの態様は、標的とされた胚性幹細胞を胚盤胞に注射し、偽妊娠した雌に該胚盤胞を移植することである。得られたキメラ動物を繁殖させ、導入遺伝子を有する個体を同定するために、子孫をサザンブロッティングによって解析する。非齧歯類哺乳動物およびその他の動物の産生のための手順は、その他によって考察されてきた(HoudebineおよびChourrout上記;Purcel、et al., Science 244:1281-1288、(1989);およびSimms、et al., Bio/Technology 6:179-183(1988)を参照されたい)。導入遺伝子を有する動物は、当該技術分野において周知の方法によって、たとえば、ドットブロット法またはサザンブロッティングによって同定することができる。
【0203】
本明細書に使用される用語トランスジェニックは、さらに、特定の遺伝子ノックアウトを誘導するための初期胚もしくは受精卵のインビトロでの操作によってまたは任意のトランスジェニック技術によってゲノムが改変された、任意の生物を含む。本明細書に使用される、用語「遺伝子ノックアウト」は、本発明のベクターを使用することによって達成された機能喪失によるインビボでの遺伝子の標的化破壊であり得る。一つの態様において、遺伝子ノックアウトを有するトランスジェニック動物とは、非機能性とするべき遺伝子に対する、該遺伝子配列内に位置する偽組換え部位を標的とすることにより標的化された挿入によって、標的遺伝子が非機能性にされた、トランスジェニック動物である。
【0204】
疾患および障害の治療
リプログラミングは、たとえば、細胞のより分化された状態を達成するため、または体細胞の段階からより幹様の状態を達成するため、または胚性幹細胞様、胎児幹細胞様、もしくは新生児幹細胞様の状態を達成するため、またはより非癌性の状態もしくはより無病状態を達成するためなどの任意の理由で行われ得る。成体幹細胞を含む体細胞の細胞をESC様の状態にリプログラミングできることは、疾患研究および細胞補充療法において有用な患者特異的な多能性細胞を作製するための新たな領域を開く新進の分野である。
【0205】
特定の細胞がリプログラミングされているかどうかは、リプログラミングされた状態と関連する特定の細胞マーカーの発現を同定することによって、たとえば、胚または胎児細胞マーカーの同定、癌マーカーの発現の低下、疾患マーカーの発現の低下、ダメージを受けた細胞マーカー(たとえば;肺癌においてダメージを受けた肺上皮細胞)の発現の低下などによって、判定されうる。たとえば、造血幹細胞についてCD34、CD133、ABCG2、Sca-1など;間葉/間質幹細胞についてSTRO-1など;神経幹細胞についてネスチン、PSA-NCAM、p75ニューロトロフィンR(NTR)などの独特の発現マーカーを、種々の幹細胞群を特徴づけるために使用してもよい。マーカーは、新たな受容体、新たな成長因子、新たなホルモン(たとえば、ステロイドまたはペプチド)、新たな構造タンパク質などのような以前の状態において発現されていない新たなペプチドまたはタンパク質の発現(またはアップレギュレーション)を含み得、かつ、これらのうちのいくつかまたは全ては、以前の傷ついた、病気にかかった、または癌性の状態よりも若返り、修復され、またはより優れた機能と関連し得る。癌において、関連し得るマーカーは、p10、p53、p16、p63などのいくつかの腫瘍サプレッサーマーカーの発現またはアップレギュレーションであり得る。
【0206】
幹細胞、体細胞、癌細胞、罹患細胞または正常な細胞を含む任意の細胞のリプログラミングは、本明細書に記述された組成物および方法を使用して達成してもよい。
【0207】
本発明の態様は、このような治療を必要とする被験体における障害を治療する方法を含む。本方法の一つの態様において、被験体の幹細胞は、調節可能な(たとえば、誘導性)エピソームベクターと複数のリプログラミング可能な遺伝子とを有し、これらは、誘導剤が存在するまで発現している。次いで、状態の治療に関連した1つまたは複数の遺伝子を含むエピソーム発現ベクターを細胞に導入して、該遺伝子の発現が生じかつ幹細胞のリプログラミングが生じるように、誘導剤とともに維持する。リプログラミング後、誘導剤はもはや必要なく、該遺伝子の発現はもはや必要なく、リプログラミングされた幹細胞が被験体に再導入される。本発明の方法を使用して治療される被験体は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。このような方法は、本発明の構築物、組成物および方法を利用する。
【0208】
このような態様において有用な発現ベクターは、関心対象の遺伝子もしくは遺伝子の一部および/または、小RNA、たとえばdsRNA、RNAiなどのような調節性核酸分子を含み得る、関心対象の1つまたは複数の核酸断片を含むことが多い。この態様に使用するための関心対象の核酸断片の中には、治療遺伝子ならびに/あるいは、プロモーターおよび/もしくはエンハンサーまたは遺伝子それ自体の一部などの領域を制御するための小RNAを含む。核酸配列の選択は、治療される障害の性質に依存するだろう。たとえば、凝固第IX因子の欠損によって生じる血友病Bを治療することが意図される核酸構築物は、機能的第IX因子をコードする核酸断片を含み得る。閉塞性末梢動脈疾患を治療することが意図される核酸構築物は、たとえば血管内皮成長因子、血小板由来成長因子等などの新たな血管の成長を刺激するタンパク質をコードする核酸断片を含み得る。当業者であれば、関心対象のどの核酸断片が特定の障害の治療において有用でありうるか容易に認識するだろう。
【0209】
したがって、本発明は、幹細胞、体細胞、ダメージを受けた細胞などを含む細胞リプログラミングのための組成物および方法を含み、このようなリプログラミングされ、および/または若返った細胞は、それぞれの障害または状態を治療し、または軽減するために使用され得る。疾患/状態は、癌治療、感染性疾患、組織更新、老化、組織修理、スポーツ傷害またはその他の物理的傷害(たとえば、骨創の治癒および軟骨細胞幹培養組織の使用)、火傷傷害(たとえば、皮膚の再生のため)、化学的傷害、アレルギー傷害、光損傷(たとえば、目の網膜損傷)、低酸素傷害(たとえば、心臓細胞の虚血性損傷)、公害(たとえば、肺組織の煙(タバコまたは毒性臭気)損傷)、単一遺伝子障害、後天性障害等を含むが、限定されない。例示的な単一遺伝子障害は、アデノシンデアミナーゼ欠損症、嚢胞性線維形成、家族性高コレステロール血症、血友病、慢性肉芽腫症、デュシェンヌ筋ジストロフィー、ファンコニ貧血、鎌状赤血球貧血症、ゴーシェ病、ハンター症候群、X連鎖SCID等を含む。
【0210】
本発明の方法を使用することによって治療可能な感染性疾患は、ヒトT細胞リンホトロピックウイルス、インフルエンザウイルス、乳頭腫ウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、免疫不全ウイルス(HIV等)、サイトメガロウイルス等を含む種々のウイルスタイプによる感染を含む。また、結核菌(Mycobacterium Tuberculosis)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)等またはマラリア原虫(Plasmadium falciparum)等などの寄生虫などのその他の病原菌による感染症が含まれる。
【0211】
本明細書に使用される、用語「後天性障害」は、非先天性障害でもよい。このような障害は、一般に単一遺伝子障害より複雑であると考えられ、1つまたは複数の遺伝子の不適当なまたは望まれない活性により生じ得る。このような障害の例は、末梢動脈疾患、慢性関節リウマチ、冠動脈性心疾患等を含む。
【0212】
本発明の方法を使用することによって治療可能な後天性障害の特定の群は、固形腫瘍、並びに白血病およびリンパ腫などの造血性癌を含む種々の癌を含む。本発明の方法を利用して治療可能である固形腫瘍は、癌腫、肉腫、骨腫、線維肉腫、軟骨肉腫等を含む。具体的な癌は、乳癌、脳癌、肺癌(非小細胞および小細胞)、大腸癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頚部癌等を含む。
【0213】
キット
もう一つの局面において、本発明は、本発明の方法と組み合わせて使用し得るキットを提供する。本発明の本局面に従ったキットは、1つまたは複数の容器を含んでいてもよい。
本発明の1つまたは複数の核酸分子(たとえば、1つまたは複数の組換え部位を含む1つまたは複数の核酸分子)、1つまたは複数のプライマー、本発明の分子および/または化合物、1つまたは複数のポリメラーゼ、1つまたは複数の逆転写酵素、1つまたは複数の組換えタンパク質(または本発明の方法を実施するためのその他の酵素)、1つまたは複数の細胞(たとえば、宿主細胞)、1つまたは複数の緩衝液、1つまたは複数の洗浄剤、1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼ、1つまたは複数のヌクレオチド、1つまたは複数の終結剤(たとえば、ddNTP)、1つまたは複数のトランスフェクション試薬、ピロホスファターゼ等からなる群より選択される1つまたは複数の成分を含んでいてもよい。
【0214】
広範な核酸分子を本発明で使用することができる。さらに、本発明のモジュラリティーのため、これらの核酸分子を、広範な方法において組み合わせることができる。本発明のキットにおいて供給することができる核酸分子の例は、プロモーター、シグナルペプチド、エンハンサー、リプレッサー、選択マーカー、転写シグナル、翻訳シグナル、プライマーハイブリダイゼーション部位(たとえば、シーケンシングまたはPCRのために)、組換え部位、制限部位およびポリリンカー、サプレッサーtRNAの存在下において翻訳の終結を抑制する部位、サプレッサーtRNAコード配列、融合タンパク質、複製開始点、テロメア、中心体等の調製のためのドメインおよび/または領域(たとえば、6Hisタグ)をコードする配列を含むものを含む。
【0215】
同様に、ライブラリー(たとえば、幹細胞cDNAライブラリーなどの幹細胞に由来するライブラリー)を本発明のキットにおいて供給することができる。これらのライブラリーは、複製可能な核酸分子の形態でもよく、またはこれらは複製開始点と関連づけられていない核酸分子を含んでいてもよい。当業者が認識するだろうとおり、ライブラリーの核酸分子、並びに複製開始点と関連づけられていないその他の核酸分子を、複製開始点を有するその他の核酸分子に挿入することができ、または使い捨てのキット成分であるだろう。
【0216】
さらに、一部の態様において、本発明のキットにおいて供給されるライブラリーは、少なくとも2つの成分:(1)これらのライブラリーの核酸分子、並びに(2)5'および/または3'組換え部位を含んでいてもよい。一部の態様において、ライブラリーの核酸分子が5'および/または3'組換え部位と共に供給されるときに、ベクターにこれらの分子を挿入することは可能であり得、これは、組換え反応を使用してキット成分として供給してもよい。その他の態様において、組換え部位は、使用前にライブラリーの核酸分子に結合させることができる(たとえば、リガーゼの使用により、これは、キットと共に供給されてもよい)。そのような場合、組換え部位を含む核酸分子または組換え部位を産生するために使用することができるプライマーをキットと共に供給してもよい。
【0217】
本発明のキットは、本明細書に記述される核酸分子を含んでいてもよい。このような分子の1つの例は、Attachment Bにおいて記述されたプラスミドベクターである。さらに、本発明のキットは、容器に単一の核酸分子だけを含んでいてもよく、この場合、容器(たとえば、箱)は、その他の適切な事業者の郵便による出荷のためにデザインされる。製品文献(たとえば、Attachment Bを参照されたい)が、また本発明のキットに含まれてもよい。したがって、本発明のキットは、多くの成分を含んでいてもよいが、多くのキットは、わずか3つの品目(1)核酸分子、(2)製品文献、ならびに(3)(1)および(2)を保持する容器で構成されるだろう。当然ながら、核酸分子(すなわち、キット成分(1))は一般に、容器(3)に適合する別の容器内にある。
【0218】
本発明のキットは、1つもしくは複数のトポイソメラーゼタンパク質および/または、1つもしくは複数のトポイソメラーゼ認識配列を含む1つもしくは複数の核酸を含んでいてもよい。多くの例において、トポイソメラーゼタンパク質は、存在する場合、核酸に結合されるだろう。
【0219】
適切なトポイソメラーゼは、タイプIAトポイソメラーゼ、タイプIBトポイソメラーゼおよび/またはタイプIIトポイソメラーゼを含む。適切なトポイソメラーゼは、ワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼIを含むポックスウイルストポイソメラーゼ、大腸菌トポイソメラーゼIII、大腸菌トポイソメラーゼI、トポイソメラーゼIII、真核生物トポイソメラーゼII、始生代リバースギラーゼ、酵母トポイソメラーゼIII、ショウジョウバエ(Drosophila)トポイソメラーゼIII、ヒトトポイソメラーゼIII、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)トポイソメラーゼIII、細菌ギラーゼ、細菌DNAトポイソメラーゼIV、真核生物DNAトポイソメラーゼIIおよびT偶数ファージでコードされるDNAトポイソメラーゼ等を含むが、限定されない。適切な認識配列は、上で記述した。
【0220】
1種または複数種(たとえば、1、2、3、4、5、8、10、15種)の緩衝液を本発明のキットにおいて供給してもよい。これらの緩衝液は、作用濃度にて供給してもよく、または濃縮された形態で供給して、次いで作用濃度に希釈してもよい。これらの緩衝液は、緩衝液それ自体または緩衝液における分子のいずれかの安定化の活性の増強のために、塩、金属イオン、コファクター、金属イオンキレート化剤などを含むことが多い。さらに、これらの緩衝液は、乾燥形態または水溶液形態で供給してもよい。緩衝液が乾燥形態において供給されるとき、これらは一般に、使用前に水に溶解されるだろう。
【0221】
本発明のキットは、実質的に、上記の、または本明細書に他で記述された成分の任意の組み合わせを含み得る。当業者が認識するだろうとおり、本発明のキットと共に供給される成分は、キットのために意図された用途により異なるだろう。したがって、キットは、本出願に記載された種々の機能を行うように設計され得、かつ、したがって、このようなキットの成分は異なるだろう。
【0222】
本発明のキットは、本発明の方法を実施するために書込まれた説明書の1つまたは複数のページを含んでいてもよい。たとえば、説明書は、組換え部位並びに、組換え部位も含みかつ任意で1つまたは複数の機能的配列もさらに含むベクターと共に提供されたORFの、組換えクローニングを実施するために必要な方法段階を含み得る。
【0223】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を限定することではなく例示することが意図される。当業者であれば、種々の改変を容易に利用でき、かつ本発明が作用する様式に実質的変化を加えることなく行うことができることを、理解するであろう。全てのこのような改変は、本明細書において請求した本発明の範囲内であることが具体的に意図される。
【実施例】
【0224】
実施例1:MultiSite Gateway(登録商標)エピソームプラスミドベクター送達系
エプスタイン・バーウイルスに基づいたエピソームプラスミドベクターを首尾よく使用して、インビトロおよびインビボの両方で複数の細胞のタイプにおいて関心対象の遺伝子を安定して発現させた{Belt et al., Gene、84:407-417, (1989); James et al., Mutant Res., 220: 169-185, (1989); Mazda et al., Curr. Gene Ther, 2: 379-392, (2002); Stoll et al., Mol. Ther, 4: 122-129, (2001); Van Craenenbroeck et al., Eur J Biochem, 267: 5665-5678, (2000); Wade-Martins et al., Nuc. Acid Res., 27: 1674-1682, (1999)。霊長類細胞におけるこれらのベクターの維持は、2つの重要な要素、エプスタイン・バーウイルス核抗原(EBNA1)および潜在的複製開始点OriPを必要とする。これらのベクター系が大きなゲノム断片のエピソーム維持を補助する能力によって、これらは、細胞における導入遺伝子の発現のために魅力的となっている。Van Craenenbroeck et al., Eur J Biochem、267:5665-5678, (2000)。
【0225】
新規エピソームプラスミド遺伝子の送達ベクターは、エプスタイン・バーウイルスに由来する構成要素から構築され、このようなベクター構築のための詳細な方法は、Thyagarajan, B. et al., Regenerative Medicine, 4(2):239-250,(2009)に記述されており、その開示は、その全体が参照として本明細書に援用される。簡潔には、図1に示したpCEP4(Invitrogen)ベクター(SEQ ID NO:1)は、単一のプラスミド上にEBNA1発現カセットおよびOriPエレメント(複製開始点)を含み、MultiSite Gateway(登録商標)assembly(Invitrogen)を可能にするように適合化された。これはさらに関心対象の複数の発現カセットを迅速にクローニングすることを可能にし、そのそれぞれに異なるプロモーターおよび/またはレポーターを一段階で含めることができる。したがって、たとえば単一のベクター系を使用して、ヒト胚性幹細胞のための細胞におけるエピソームとして、発現遺伝子を安定して維持し発現させることができる。この方法は、これらのエピソームを介して導入される遺伝子を発現する安定な細胞株を産生するのにも有用である。EBNA遺伝子が構成的プロモーターを介して発現される場合、EBNA発現は安定であり、発現カセットからの遺伝子の発現は、構成的である。一方では、EBNA遺伝子が誘導性プロモーターを介して発現される場合、EBNA発現は誘導剤で誘導可能であり、それに対応して、発現カセットからの遺伝子の発現は、誘導剤の存在下においてだけ起こる。加えて、細胞特異的もしくは系統特異的なプロモーターを使用して、遺伝子発現を、特定の細胞型または細胞系統にそれぞれターゲットさせることができる。したがって、この実施例で記述される新規のエピソームプラスミド遺伝子送達ベクターを使用する遺伝子発現は、時間の長さに関して(構成的または誘導性)および一時的に(細胞型または系統型)調節することができる。
【0226】
Thyagarajan et al.,(2009)において記述される方法を使用した、MultiSite Gateway(登録商標)assemblyを有する、新規のエピソーム遺伝子送達ベクター系pEBNA-DEST図4(SEQ ID NO:4)。例示的なエピソーム発現ベクター、たとえば、EF1aプロモーター-GFP発現カセットを有する発現プラスミド[図5;SEQ ID NO:5]またはOct4プロモーター-GFP発現カセット[図6;SEQ ID NO:6]も記述され、それらはいずれも、ヒト胚性幹細胞(hESC)において、エピソーム維持される。変異体hESC株であるBG01Vに、SEQ ID NO:5および6に記述されるベクターを、Microporatorを用いてトランスフェクトした。こうして得られるhESC細胞株は、EF1α促進下でGFPを構成的に発現するpEPEG-BG01VおよびOct3/4プロモーターがGFP発現を駆動するpEPOG-BG01Vである。GFP陽性の細胞を、FACS解析によって、および蛍光顕微鏡検査法によって解析した。これらのベクターはまた、薬物耐性マーカーを発現し、それによりこのベクターを収容する細胞の選択および長期維持が可能となった。hESCにおけるエピソームベクターの発現の安定性についての研究において、これらは、培養下で4ヶ月間超にわたりhESC内で維持され、凍結/解凍に耐えることが見いだされた。
【0227】
未分化hESCおよびそれが分化した胚様体におけるGFPの持続発現を検出した。培養物は、抗生物質(ハイグロマイシン)選択無しでも、4週間後(8回〜12回の継代の間)でさえ、約50から96.41%のGFP陽性細胞を示した。
【0228】
これらのhESC細胞株を、分化のプロセスの間のGFP発現の安定性についても研究した。pEPEG-BG01V細胞を、標準的な分化プロトコルを使用して分化させ、次いで、解析を使用しておよび蛍光顕微鏡検査法によって、GFPの発現を解析した。安定なエピソームクローンは、多能性マーカーおよび分化マーカーを発現し続けた。大量の脂肪組織由来間葉幹細胞において、脂肪細胞、骨芽細胞および軟骨芽細胞へのhESCの分化を介して、GFPのエピソーム発現が見られた。これは、エピソームベクターからの遺伝子発現が細胞の分化の間、安定であることを示した。さらに、安定なhESCクローンは、薬物選択有りでもなしでも、同等の発現を示した(Thyagarajan et al., Regenerative Medicine(2009)の図3Aから3Cを参照されたい)。したがって、これらの単一エピソームベクターは、安定なプールを生じるようにまたは不均一な大量の細胞として生じるように幹細胞を修飾するための簡単で迅速な方法を提供し、これらを次いで、種々の下流の用途のために使用することができる。pEBNA-DESTベクターキット[Invitrogen カタログ番号A10898]のための製品文献は、当業者が複数の断片発現ベクターを構築することができる方法を記述し、その開示は、その全体が参照として本明細書に援用される。関心対象の任意の遺伝子エレメントのクローニングは、pEBNA-DESTベクターにおいてMultiSite Gateway(登録商標)技術を使用して達成することができ、それにより、定義された順序および方向での関心対象の複数の遺伝子エレメント(たとえば、プロモーター-レポーター対)の迅速かつ効率的なクローニングが可能となる。
【0229】
実施例2:MultiSite Gateway(登録商標)エピソームBacMamウイルスベクター:構成的および誘導性ウイルス遺伝子送達系
細胞のゲノム内に安定して組み込まないが、その代わりに、(i)EBNA1遺伝子の構成的発現により、安定してエピソーム維持され、それによってリプログラミング期間にわたりリプログラミング遺伝子発現が安定に持続されるか;または(ii)EBNA1遺伝子の誘導性発現により、リプログラミング期間にわたりリプログラミング遺伝子発現が持続されるように誘導することができ、かつ後に、細胞がリプログラミングされるかまたは望ましいレベルのリプログラミングが達成されたら、オフにすることができる、新規遺伝子送達ウイルスベクターが開発された。これらの遺伝子送達ウイルスベクターは、所与の哺乳動物細胞内に所与の時点にて1つまたは複数のリプログラミング遺伝子を導入することができる。ウイルスベクター系は、一般に、遺伝子送達系として昆虫ウイルスを使用する(たとえば、バキュロウイルス);本発明では、表1に記述したベクターのBacMam Ver 1およびBacMam Ver 2ファミリーを使用した。ベクターは、哺乳動物細胞内に、1つまたは複数の遺伝子または一連のリプログラミング遺伝子を運ぶ。バキュロウイルスの骨格を使用して、BacMamウイルスベクターを産生する。表1に記述したBacMamベクターのVer2ファミリー、すなわち、[SEQ ID NO:8、9、10、11、12]はWPRE(マーモット肝炎転写後調節エレメント)と、多様な哺乳動物細胞内へのウイルスの侵入を媒介するVSV-G発現カセット(小胞口内炎ウイルスGタンパク質)とをさらに含む。本発明のウイルスベクターは、表1において定義する。
【0230】
(表1)遺伝子送達のためのウイルス(BacMam)ベクター

【0231】
本発明のBacMamエピソームベクターはまた、EBNA1遺伝子/OriPエレメントを発現した。EBNA1発現が構成的プロモーター下にあるBacMam-EBNA1エピソームベクターの哺乳動物細胞への形質導入は、OriPに結合するEBNA1タンパク質の安定な発現をもたらしOriP含有ベクターの保持および複製を促進し、これにより、リプログラミング期間にわたるその発現が保証される。したがって、ベクターの発現カセットにおけるリプログラミング遺伝子の発現は、リプログラミング遺伝子の安定な発現を生じるだろう。これは、リプログラミング遺伝子の持続発現がリプログラミングされた表現型を維持するために必要である特定の系において望ましい。一方では、EBNA1タンパク質を誘導性に発現するエピソームウイルスベクターの形質導入(Tetオペロンのような誘導性プロモーターを言うため)およびテトラサイクリンの存在下での細胞の成長は、EBNA1タンパク質の一過性発現を生じ、これにより、テトラサイクリン(これは、所望のリプログラミング期間にわたり、調節することができる)存在下のみにおけるその発現を保証する。一旦リプログラミングされた細胞または誘導多能性細胞(iPC)が得られたら、テトラサイクリンが除去され、これにより、tetリプレッサーによるEBNA1タンパク質の抑制が起こり、エピソームウイルスベクターは維持されない。2ラウンドの細胞分裂の後、ウイルスベクターが失われ(この送達系は細胞ゲノムに組み込まれていないため)、ウイルスベクターのフットプリントは残らない。これは、いくつかの用途において、たとえばウイルスベクターの残遺物が必要ない治療目的のために、望ましい。
【0232】
SEQ ID NO:7および12によって定義される誘導性ウイルスエピソームベクターは、Tetリプレッサーを発現するDNAセグメント、EBNA1遺伝子を駆動する誘導性CMV/TetOperonプロモーター、cis OriP(細胞分裂の間のベクターの維持のため)およびハイグロマイシン選択可能なマーカー、ならびにさらに、複数のリプログラミング可能な遺伝子のクローニングを可能にするためのMultiSite Gateway(登録商標)クローニングカセットを発現させる成分を含む。
【0233】
図7において例証した単一バキュロウイルスベクターpFBbg1-DEST1を産生して、形質導入のために必要とされるウイルスベクターの総数をさらに減少させた。初代線維芽細胞に上記の新規ベクター組成物を形質導入して、Oct3/4、Nanog、SSEA1およびTRA1-80のような幹細胞マーカー遺伝子に対する抗体を用いてスクリーニングした。こうして同定したiPS細胞を増殖させて、胚様体を形成させて、3種の初代胚葉へと自発的に分化させた。分化した胚葉を、ニューロンに対するマーカー(たとえば、bIIIチューブリン、ネスチン)、中胚葉に対するマーカー(SMA、平滑筋アクチン)、および内胚葉に対するマーカー(α胎児タンパク質)で染色した。
【0234】
重症複合型免疫不全(SCID)マウスへのiPS細胞(本発明の方法によって産生される)の皮下注射をテラトーマ形成について試験して、多能性状態への安定な移行を受けることができるiPS細胞も同定した。
【0235】
この研究の第2部は、リプログラミング効率を増強する分子を同定することであった。概してリプログラミングの効率は0.1%〜5%の間であるのでDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤であるhESCにおいて高度に差次的に発現される一連のmiRNAについて、スクリーニングを行った。多能性の維持に関与する因子を、これらがリプログラミング効率を増大させる能力についてスクリーニングした。加えて、リプログラミングした細胞も、この研究において同定した増強分子を含む無血清培地において培養し、臨床試験に適したiPS細胞株を産生させた。
【0236】
エプスタイン・バーウイルスに由来する成分に基づいた構成的ウイルスベクター系は、培養の長期に渡って、霊長類およびイヌ細胞においてエピソーム維持された。このベクター系をMultisite Gatewayクローニングに適合化させ、ヒト胚性幹細胞(ESC)および間葉幹細胞(MSC)を操作するために使用することができる発現構築物の迅速構築を可能にする。この系の有用性を証明するために、本発明者らは、構成的プロモーター(EF1a)、胚性幹細胞特異的プロモーター(Oct4)または肝細胞特異的プロモーター(AFP)のいずれかで駆動されるGFPを含むベクターを用いてESCプールを作製した。GFP発現が構成的EF1aプロモーターによって駆動された場合、発現が、未分化細胞並びに分化した細胞においても見られた。Oct4プロモーターを使用した場合には、GFPは、未分化細胞においてのみ発現した。AFP-GFP含有細胞は、AFPに関しても陽性染色された分化細胞の小さなサブセットにおいてしかGFP発現を示さなかった。本発明者らは、このベクター系を使用して、複数のレポーターを含みかつ20kb程度の大きさであるベクターでESCを首尾よく操作した。本発明者らは、これらのベクター系がその他の幹細胞においても機能的であることを示した。エピソームベクターでトランスフェクトしたMSCは、薬物選択の非存在下で、3週間以上にわたる持続した発現を示した。これらのMSCは、脂肪細胞、骨芽細胞および軟骨芽細胞に分化して、分化のプロセスの全体にわたってGFPを発現し続けた。
【0237】
分化のプロセスの間、関心対象の細胞型を追跡するための方法
構成的BacMamベクター、たとえばpEP-FB-DEST1、図16、SEQ ID NO:49を、本発明において記述した任意の蛍光タンパク質または選択可能なマーカーの発現のために使用してもよい。制御は、たとえば、天然のEBNA1プロモーター、当該技術分野において公知の任意の構成的プロモーターまたは系統特異的もしくは組織特異的なプロモーター下でもよい。構成的プロモーターは、CMVプロモーターのような強力なウイルスプロモーターでもよい。
【0238】
一過性および構成的なBacMam粒子を使用する細胞のリプログラミング
BacMamに基づいたプラットフォームを使用して、トランスフェクト困難な細胞を効率的に形質導入するバキュロウイルス媒介遺伝子送達法を作製した。本発明者らは、BacMamベクター Ver 1および2(SEQ ID NO:2および8)をEBNA1およびOriPで修飾してウイルスベクターを産生し(SEQ ID NO:49および11)、形質導入細胞におけるこれらのベクターの長期の維持を可能にした。BacMamベクターVer 1(SEQ ID NO:2)およびVer 2(SEQ ID NO:8)をさらに修飾して、任意の最適なプロモーター/レポーター遺伝子の組み合わせのクローニングを可能にするためのプロモーターレス型を作製した(それぞれSEQ ID NO:3および10)。これはさらに最適な系統特異的または細胞特異的なプロモーター/遺伝子の使用を可能にする。本発明者らは、BacMamが間葉幹細胞および神経幹細胞を80%超の効率にて一貫して形質導入することができ、かつ一様に標識された細胞を産生するのに使用できることを示した。
【0239】
さらに、BacMamベクターを、脂肪由来の間葉幹細胞(AdSC)を一様に標識するためにも使用した。導入遺伝子の発現は、分裂細胞において5〜7日間、および7日目の分化脂肪細胞においてに持続する。この方法を使用して、脂肪細胞の分化における重要な経路であるC-Junを、Lanthascreen(登録商標)時間分解FRETに基づくアッセイを利用して、ADSCにおいて確認した。発現の長さをより長い期間まで延長するために、ならびに追加の初代幹細胞型および成体幹細胞型への送達を可能にするために、VSV-gおよびWPREを有するベクター系を利用した。この増強されたBacMamを使用して、間葉幹細胞および神経幹細胞の両方を、80%超の効率にて形質導入した。発現の持続性は、10日間超続き、分裂AdSCおよび分化脂肪細胞の両方において、GFPシグナル強度の減衰は最小であった。このプラットフォームにおけるMultisite Gatewayを適用したベクターは、レポーターの効率的な送達のための系統特異的なレポーターの構築および一過性発現を可能にする。安定な細胞の作成のためにBacMamの使用を拡大するために、本発明者らは、EBNA1およびOriPでBacMamベクターを修飾した。予備データは、導入遺伝子の発現が、これらのハイブリッドBacMamベクターを使用した形質導入細胞において3週間超維持されることを示す。
【0240】
さらに、細胞モデルとしてのヒトAdSC[脂肪細胞由来幹細胞]を使用し、未分化細胞におけるおよび脂質生成の種々の段階の際のイルミナ(Illumina)遺伝子発現パターンを使用して、重要な経路を同定し、これを次に活性なシグナル伝達経路を同定するために使用した。AdSCにおけるc-junの強い発現および細胞分化に関与する遺伝子とのそのクラスター形成を考慮して、この経路のさらなる解析を行った。AdSCにBacMam GFP-c-jun(1-79)を一過性に形質導入し、続いて、Lanthascreen(登録商標)時間分解FRETに基づくアッセイを使用して、TNFまたはアニソマイシン誘導性GFP-jun(1-79)のリン酸化の解析を行った。さらに、本発明者らは、JNKのよく特徴づけられた阻害剤であるSB60025による、TNFが誘導するGFP-jun(1-79)のリン酸化の阻害を示した。結論として、これらの結果は、幹細胞における細胞に基づいたアッセイの作製のための簡単かつ効率的な方法をBacMamが提供したことを証明する。遺伝子操作した強力な間葉間質細胞は、薬物スクリーニング、インビボの細胞追跡、および遺伝子療法、並びに基礎的な細胞の特徴決定の研究におけるツールを提供する。AdSCは脂肪細胞に分化し、該細胞の80%超で、15日間の最後に脂肪小胞の蓄積が示された。導入遺伝子の発現は、分裂AdSCにおいて10日間超、および分化AdSC において14日間、維持される。AdSCおよび分化脂肪細胞の全体的な遺伝子発現解析は、分化に伴い漸進的に異なった。遺伝子発現データの遺伝子腫瘍学解析は、STAT1、ERK2、C-Junなどのような、いくつかの遺伝子のクラスターおよびこれらのクラスターの中の重要な経路遺伝子を同定した。EBNA/OriP を有するBacMam Ver 1およびVer 2ベクター(長期にわたる発現のためのWPREエレメントおよび広範囲の哺乳動物宿主細胞感染性のためのVSV-Gカセットを有する)を首尾よく使用し、形質導入後の48時間にて50%超の形質導入で、H9 ESCおよびHDF6由来iPSC株を形質導入した。導入遺伝子の発現は、分裂AdSCにおいて10日間超にわたり維持される。これらのベクターは、構成的または系統特異的なプロモーター駆動遺伝子のための送達ツール(化学発光、TR-FRTE、蛍光レポーター、毒性スクリーン)およびハイスループットスクリーニングイメージングおよびアッセイのための応答エレメントを提供する。
【0241】
ラットNSC(神経幹細胞)にも、BacMam Ver 1およびVer 2[SEQ ID NO:11および49]を効率的に形質導入し、導入遺伝子の発現は、6日間、分化した星状膠細胞および希突起膠細胞において持続する。
【0242】
さらに新しいハイブリッドベクター系が開発されており(図14を参照されたい)、これは、たとえば基礎細胞生物学および発生経路を研究するため、疾患の治療のための薬物を発見および評価するためなどの下流の治療用途およびスクリーニング用途のための標識された幹細胞を作製するための、より速く効率的な方法を提供するであろう。リプログラミング遺伝子をより良好に発現しかつ調節するように導入遺伝子の発現増強のためにエピジェネティックなモジュレーター(たとえば:インスレーター、イントロンなど)(図14)を変化させることによって、さらなるエンハンサーエレメントまたは操作したエンハンサーを使用するBacMamベクターが開発されている。これらのベクタープラットフォームはまた、本発明者らが関心対象の導入遺伝子を発現する胚性幹細胞および成体幹細胞を産生することも可能にするだろう。
【0243】
ほとんどの幹細胞は、分化へと駆動されるときに、種々の系統に相当する細胞の混合物を生じる。本発明の方法は、不均一な細胞混合物から特定の細胞型を同定、標識、または分離するのに有用でありうる。たとえば、系統特異的プロモーターが使用される場合、ベクターによってコードされ系統特異的に駆動される遺伝子を発現する分化した細胞は、その他の非発現細胞から区別することができる。本発明は、Lineage Light BacMam系の使用に適用でき、これにより細胞の混合物からの任意の関心対象の細胞型の同定、濃縮または単離が可能になる。たとえば、GFPの発現を駆動するAFPのような肝臓特異的プロモーターを、肝細胞に分化する胚性幹細胞を同定するために使用することができる。Lineage Light試薬は、関心対象の細胞型の存在を検出するために、種々の分化段階の際に細胞に直接適用することができる。
【0244】
この態様はバキュロウイルス骨格由来の成分の使用について述べているが、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルスなど、当該技術分野において公知かつ実施される他のウイルス骨格の成分または成分の組み合わせも、また、このようなベクターの産生のために有用である。
【0245】
実施例3:一過性のBacMam粒子を使用する正常なヒト細胞のリプログラミング
BacMam粒子を使用する、正常なヒト細胞への関心対象の遺伝子の高効率な一過性送達を記述した。より短い(2〜3日)またはより長い(8〜12日)導入遺伝子発現期間が、特定の細胞型をリプログラミングするために最も良いこともあり得る。ヒト線維芽細胞のような特定の体細胞をリプログラミングするためには多数のリプログラミング遺伝子(たとえば、Oct-4およびSox-2)が必要であり得、かつ、理想のリプログラミングを達成するために、これらの遺伝子各々の最適な発現長さを決定する必要がある。本明細書において、本発明者らは、iPSC(誘導多能性幹細胞)を産生するために、hOct4、hSox2、hKlf4、hcMyc、hNanogおよびhLin28のようなリプログラミング遺伝子を含むBacMam粒子(EBNA/OriPをもたないVer 1および2)の作製および体細胞、たとえば正常なヒト皮膚細胞におけるこれらの効率的発現を記述する。BacMamウイルス構築物もしくはその組み合わせによる細胞の単回または複数回の処理は、細胞の高度に効率的なリプログラミングを達成するために必要とされ得る。
【0246】
材料および方法
リプログラミング遺伝子hOct4、hSox2、hKlf4、hcMyc、hNanogおよびhLin28(BacRG)を含むBacMam粒子を、以下の通りに作製した:遺伝子を含むエントリークローンのオープンリーディングフレームを、発現ベクターpDEST8-CMV(バージョン1、Ver1またはv1[SEQ ID NO:2])にクローニングした。発現ベクターのクローンからのDNAを、バキュロウイルスゲノム(BacMid)を含むDH10Bac大腸菌を形質転換するために使用した。関心対象の遺伝子を含む組換えBacMid DNAを精製して、関心対象の遺伝子を含むウイルスの粒子を産生するSf9昆虫細胞にトランスフェクトした(P0)。ウイルスの粒子を、2ラウンドの増幅(P1、P2)に供した。挿入した遺伝子の完全性およびP2調製二位のウイルスの純度を、PCRおよびシーケンシングによって確認した。hOct4を、CMVプロモーターに加えてVSV-G配列およびWPRE配列を含む「バージョン2、v2」BacMam発現ベクターにもクローニングし、粒子を上記のように作製した。P2ウイルス粒子を、正常なヒト真皮線維芽細胞(HDF)に形質導入するために使用した。形質導入後の種々の時点にて、細胞を、免疫細胞化学(ICC)に使用するために固定し、またはウエスタン免疫ブロットに使用するために収集した。4つの「古典的な」リプログラミング遺伝子hOct4、hSox2、hKlf4、hcMycによるHDFの処理計画を開発した。推定のiPSCのコロニーを選択し、Knockout Serum Replacement(KSR)を補ったStemPro ESC培地中のフィーダー層の上で培養した。
【0247】
結果
BacRGによるHDFの処理により、(ICCによって)処理した細胞の80%超において、個々のリプログラミング遺伝子の発現が生じ、正確な分子量タンパク質の発現をウェスタンブロット解析によって確認した。リプログラミングタンパク質の発現は一過性であり、BacRG粒子への単回曝露の後、48〜96時間で変化した。細胞を、タンパク質を繰り返し発現させるウイルス粒子で複数回処理したが、発現能力は複数回処理により低下した。本発明者らの第1の実験において、4つの「古典的な」リプログラミング遺伝子粒子による72時間間隔のHDFの処理は、2×または4×の処理により、幹細胞形態を有するコロニーの発達を生じた。コロニーをフィーダー層へ首尾よく移したが、2回の移動の後、増殖が停止した。
【0248】
Ver1[SEQ ID NO:2] BacRGを使用する場合、標的細胞におけるリプログラミング遺伝子の形質導入の頻度および発現の長さは、高頻度のリプログラミングの成功に対する欠点となり得る。本発明者らが形質導入の頻度および遺伝子発現の期間を増大させられるかどうかを決定するために、本発明者らは、v2発現ベクターにhOct4遺伝子をクローニングして、ウイルスの粒子を作製した。細胞にv2BacRG-hOct4を形質導入したとき、v1BacRG-hOct4粒子と比較して、発現に必要とされる用量(粒子数/細胞)は1/10〜1/50に減少し、タンパク質の発現の長さは2倍超になった。
【0249】
本発明者らの結果は、以下を証明する:BacMam粒子を使用して、正常なヒト線維芽細胞のような体細胞にリプログラミング遺伝子を首尾よく送達することができ、かつ、リプログラミング遺伝子の発現は、CMVプロモーターによって構成的に制御することができる。
【0250】
抗生物質耐性マーカーの非存在下で、Ver1[SEQ ID NO:2] 粒子によって送達される遺伝子の発現は、処理後72〜96時間で検出不可能なレベルに減少し、よって発現は一過性となる。
【0251】
Ver1[SEQ ID NO:2] 粒子を利用することによって、ヒト線維芽細胞のような体細胞を、10〜12日間にわたって複数回処理することができ、よってリプログラミング遺伝子の発現/再発現が生じる。
【0252】
ヒト線維芽細胞が72時間間隔でV1)[SEQ ID NO:2]リプログラミング粒子で処理される場合、2×および4×の処理により、幹細胞様の特徴を有するコロニーの形成が生じた。
【0253】
BacMamベクター(Ver 2)[SEQ ID NO:8]にVSV-G配列を含めることで、ウイルスがヒト線維芽細胞に侵入する能力が有意に増強される、すなわち、同じ数の形質導入細胞を得るために必要なる粒子の数が、1/10〜1/50まで減少する。
【0254】
BacMamベクターにWPREエレメントを含めることは、リプログラミング遺伝子がヒト線維芽細胞において発現することができる時間の長さを有意に増加させる。
【0255】
考察:
分化の経路を選択するために遺伝子、たとえばリプログラミング遺伝子の一過性発現がより適しており、かつリプログラミング産物の発現レベルに基づいてリプログラミング遺伝子の繰り返し処理が必要でありうる場合には、本明細書で示したようなEBNA/Ori Pをもたないベクターを使用した一過性発現が望ましい可能性がある。本研究において、本発明者らは、CMVプロモーターによって駆動されるリプログラミング遺伝子の発現が一過性であること、およびこれらのウイルス構築物による処理の繰り返しが、細胞生存度に対する急性の有害な影響を伴わずに可能であることを示す。場合によっては、リプログラミング遺伝子の一過性(数日間)の発現は、EBNA/OriP構築物によって維持されるより長い期間の発現よりも効率的に所望の結果を提供し得る。高用量のウイルス(細胞当たり500〜1000粒子)での単回処理は、培養物中のおよそ80%の細胞でOct-4またはSox-2遺伝子を発現させる。
【0256】
(V2構築物:[SEQ ID NO:8]において)VSV-G配列を含めることにより、バキュロウイルスがヒト線維芽細胞に形質導入する能力を増強し得る。したがって、培養物中のほぼ100%の細胞を、ウイルス粒子10〜100個/細胞で、効率的に形質導入することができる。この点に関して、V2構築物を使用する恩典には、産生コストの低下およびウイルス負荷両の低下が含まれ、これによりウイルスによる処理の非特異的影響が最小限になるはずである。
【0257】
WPREエレメントを含めることで、ヒト線維芽細胞においてOct-4遺伝子が発現される時間の長さが大幅に増強され得る。Oct-4構築物によってコードされるタンパク質の発現は、V2 Oct-4構築物での単回処理の後、少なくとも10日間検出することができる。したがって、このエレメントを含めることによって、より長い発現時間が達成され得る。
【0258】
実施例4:転写遺伝子活性化系
これらの実験は、リプログラミング効率の増強について調査するために行った。具体的には、実験は、プロモーター標的化小dsRNA(二本鎖RNA)が成体幹細胞において、4つの必要な遺伝子(Oct4、Sox2、c-MycおよびKlf4)の一部または全部の転写遺伝子活性化(TGA)を誘導するかどうか調査するために行われた。Oct4プロモーター遺伝子の特定の領域を標的とする、Attachment Pに示すような種々のカスタムデザインされたdsRNA(21mer)を、これらが転写に影響を及ぼすかどうかを見るために幹細胞に一過性にトランスフェクトした。これらの実験のためのワークフローは、Attachment Oに示す。具体的には、これらの実験のいくつかは:(i)プロモーター標的化dsRNAによってトリガーされるリプログラミング因子の誘導レベルが、多能性を誘導するかどうか、(ii)TGAの期間が、リプログラミング効率と直接相関するかどうか、(iii)異なる細胞型が、標的となった遺伝子のTGAによってトリガーされる異なる誘導レベルを必要とするかどうか、および(iv)ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤のようなクロマチン修飾に関与する小分子がリプログラミングにおいて何らかの効果を有するかどうかを判定するように、デザインされた。
【0259】
原理の証明:Oct-4プロモーターの転写遺伝子活性化(TGA)(Attachment O)
GFP発現を駆動するInvitrogen製のpEP-hOGベクター(13,588bp)(Attachment F)を、OCT4プロモーターで駆動される遺伝子発現を測定するために利用した。
【0260】
ベクターpEP-hOGを胚性線維芽細胞に導入した。これは、安定して組み込まれた単コピーのOct4-GFPを発現する胚性幹細胞株を産生するために行った。
【0261】
OCT4プロモーターの特定領域を標的する種々のカスタムデザインされたdsRNA(Attachment Pにおいて示される)を、GFPを発現する線維芽細胞に一過性にトランスフェクトし、またはMPGのようなペプチド送達系を使用して導入した(Attachment Oおよび下記の合理的なデザインアプローチの工程を参照されたい)。
【0262】
並行して、工程2または3における細胞を、クロマチン修飾に関与する小分子で処理し、標的となったプロモーターのエピジェネティックなランドスケープの改変がTGAを促進するのか阻害するのかを判定した(クロマチン修飾に関与する小分子については、以下を参照されたい)。
【0263】
dsRNAのリプログラミング効率を、定量的RT-PCRを使用してOCT4 mRNAレベルを測定することによって、またはFACSを使用してOCT4 GFPを定量化することによって、定量化した(リプログラミング効率の定量化については、以下を参照されたい)。
【0264】
プロモーター標的化dsRNAが媒介する転写遺伝子活性化のための合理的なデザインアプローチ
アクセッション番号を得て、DBTSSに入れた。「DBTSSは、500塩基間隔内のTSSをクラスタリングすることによって推定のプロモーターグループを定義する。DBTSSはまた、使用者が特定した任意のTSS対の周辺の配列間の詳細な比較も提供する。」
【0265】
工程1からのプロモーター配列をTranscription Factor Search Databaseに入れて、関心対象の遺伝子に対する保存された転写因子のモチーフを得た。
【0266】
TSSの位置および特異的な転写因子の結合部位が注釈づけられ、プロモーター標的化二重鎖RNAがデザインされた。高GC含量を有する領域は回避され;好ましい長さは、21merで、プロモーターの前後であった。
【0267】
このように作製され、かつAttachment Pにおいて示したdsRNAを、関心対象の細胞に送達した。開発した確認アッセイおよび機能的アッセイは、以下に考察する。
【0268】
(表2)細胞をリプログラミングするためのdsRNA mer



【0269】
クロマチン修飾に伴う小分子の使用:
以下の化学物質を試験した:Sigma-Aldrichの5'-azaC、Biomol InternationalのSAHA、EMD Biosciencesのデキサメタゾン、TSA、およびVPA。
【0270】
5'-azaCおよびVPAの保存液を、PBSまたは培地で作製した。その他の化学物質の保存液は、DMSOで作製した。
【0271】
リプログラミング効率の定量化
2つの方法を最初に使用して、リプログラミング効率を定量化した。(1)Oct4-GFP+細胞の誘導を定量化するためのFACS解析。また、異なる時点にて誘導されるOct4-GFP+細胞の数を、蛍光顕微鏡または蛍光解剖顕微鏡下で直接計数した。(2)遺伝子発現解析:mRNAを、mRNAキャッチャープレートを使用して単離し、Oct4、Sox2、c-MycおよびKlf4 mRNAレベルをqRTPCR法によって定量的に測定した。
【0272】
テラトーマの産生
テラトーマを、NODSCIDマウスに約100万細胞を皮下注射することによって産生した。腫瘍試料を5週間収集し、4%のパラホルムアルデヒドにおいて固定し、標準的な手順に従ってパラフィン包埋およびヘマトキシリン-エオジン染色のために処理した。
【0273】
本開示の全体にわたって引用される全ての参照文献は、本明細書により、参照により明白に援用される。
【図1A】

【図1B−1】

【図1B−2】

【図1B−3】

【図2A】

【図2B−1】

【図2B−2】

【図3A】

【図3B−1】

【図3B−2】

【図4A】

【図4B−1】

【図4B−2】

【図4B−3】

【図5A】

【図5B−1】

【図5B−2】

【図5B−3】

【図6A】

【図6B−1】

【図6B−2】

【図6B−3】

【図6B−4】

【図7A】

【図7B−1】

【図7B−2】

【図7B−3】

【図7B−4】

【図8A】

【図8B−1】

【図8B−2】

【図8B−3】

【図9A】

【図9B−1】

【図9B−2】

【図9B−3】

【図10A】

【図10B−1】

【図10B−2】

【図10B−3】

【図11A】

【図11B−1】

【図11B−2】

【図11B−3】

【図11B−4】

【図12A】

【図12B−1】

【図12B−2】

【図12B−3】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16A】

【図16B−1】

【図16B−2】

【図16B−3】

【図16B−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)OriP部位;(b)EBNA1遺伝子をコードするDNAセグメント;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;および(d)少なくとも1つの選択可能なマーカーをコードするDNAセグメントを含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
EBNA1発現が構成的である、請求項1記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
EBNA1発現を駆動する構成的プロモーターが、天然のEBNA1プロモーター、強力なウイルスプロモーター、操作された構成的プロモーター、または系統特異的もしくは組織特異的な構成的プロモーターからなる群より選択される、請求項2記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
EBNA1発現が誘導性である、請求項1記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
EBNA1発現を駆動する誘導性プロモーターが誘導性抗生物質オペロンである、請求項4記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
発現が望まれるDNA配列に作動可能に連結されたプロモーターをそれぞれが含む1つまたは複数の発現カセットが、前記単離された核酸分子内の1つまたは複数のatt組換え部位の少なくとも1つに導入されている、請求項2または4記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
発現カセットが組織特異的遺伝子、リプログラミング遺伝子、または発生遺伝子をコードする、請求項6記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
リプログラミング遺伝子が、Oct4、Sox2、c-Myc、およびKlf4;Oct3/4、Nanog、Lin28、SSEA1、ならびにTRA1-80からなる群より選択される、請求項7記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
発現カセットを駆動するプロモーターが、細胞特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、リプログラミング遺伝子プロモーター、および発生遺伝子プロモーターからなる群より選択されるタイプである、請求項6記載の単離された核酸分子。
【請求項10】
発現カセットを駆動するプロモーターが哺乳動物起源の天然のプロモーターである、請求項9記載の単離された核酸分子。
【請求項11】
発現カセットを駆動するプロモーターが操作されたプロモーターである、請求項6記載の単離された核酸分子。
【請求項12】
発現カセットを駆動するプロモーターが細胞特異的プロモーターである、請求項9記載の単離された核酸分子。
【請求項13】
発現カセットを駆動するプロモーターが発生段階特異的プロモーターである、請求項9記載の単離された核酸分子。
【請求項14】
細胞が幹細胞である、請求項12記載の単離された核酸分子。
【請求項15】
発生段階が生殖細胞、胚性細胞、前駆細胞、胎児細胞、新生児細胞、または幹細胞のいずれかの段階である、請求項13記載の単離された核酸分子。
【請求項16】
哺乳動物がヒトである、請求項10記載の単離された核酸分子。
【請求項17】
リプログラミング遺伝子プロモーターが、Oct4、Sox2、c-Myc、およびKlf4;Oct3/4、Nanog、Lin28、SSEA1、ならびにTRA1-80からなるプロモーターの群から選択される、請求項9記載の単離された核酸分子。
【請求項18】
選択可能なマーカーが蛍光タンパク質、抗生物質耐性を与えるタンパク質、または酵素のいずれかである、請求項1記載の単離された核酸分子。
【請求項19】
選択可能なマーカーが蛍光タンパク質である、請求項18記載の単離された核酸分子。
【請求項20】
蛍光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびその修飾された突然変異体、赤色蛍光タンパク質(RFP)およびその修飾された突然変異体などからなる群より選択される、請求項19記載の単離された核酸分子。
【請求項21】
蛍光タンパク質がGFPである、請求項20記載の単離された核酸分子。
【請求項22】
選択可能なマーカーが抗生物質耐性を与えるタンパク質である、請求項18記載の単離された核酸分子。
【請求項23】
抗生物質がテトラサイクリン、ネオマイシン、ブラストサイジン、ハイグロマイシン、アンピシリン、およびピューロマイシンからなる群より選択される、請求項22記載の単離された核酸分子。
【請求項24】
抗生物質がハイグロマイシンである、請求項23記載の単離された核酸分子。
【請求項25】
(a)ウイルスゲノムの全部または一部;(b)OriP部位;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;(d)任意で、EBNA1遺伝子をコードするDNAセグメント;および(e)少なくとも1つの選択可能なマーカーを含む、単離された核酸分子。
【請求項26】
EBNA1をコードするDNAセグメントが同じ前記核酸分子上にある、請求項25記載の単離された核酸分子。
【請求項27】
EBNA1をコードするDNAセグメントが、別の、第2の単離された核酸分子上にあり、該第2の単離された核酸分子が(a)ウイルスゲノムの全部または一部;(b)OriP部位;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;および(d)少なくとも1つの選択可能なマーカーをさらに含む、請求項25記載の単離された核酸分子。
【請求項28】
EBNA1発現が構成的である、請求項25または27記載の単離された核酸分子。
【請求項29】
EBNA1発現を駆動する構成的プロモーターが、天然のEBNA1プロモーター、強力なウイルスプロモーター、操作された構成的プロモーター、系統特異的プロモーター、または組織特異的プロモーターからなる群より選択される、請求項28記載の単離された核酸分子。
【請求項30】
EBNA1発現が誘導性である、請求項25または27記載の単離された核酸分子。
【請求項31】
EBNA1発現を駆動する誘導性プロモーターが誘導性の抗生物質オペロンである、請求項30記載の単離された核酸分子。
【請求項32】
誘導性の抗生物質オペロンがTetオペロンである、請求項31記載の単離された核酸分子。
【請求項33】
前記ウイルスゲノムが昆虫ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、またはレトロウイルス由来である、請求項25または27記載の単離された核酸分子。
【請求項34】
ウイルスゲノムが昆虫ウイルス由来である、請求項33記載の単離された核酸分子。
【請求項35】
昆虫ウイルスがバキュロウイルスである、請求項34記載の単離された核酸分子。
【請求項36】
昆虫ウイルスがWPREエレメントおよび/またはVSV-Gエレメントをさらに含む、請求項35記載の単離された核酸分子。
【請求項37】
発現が望まれるDNA配列に作動可能に連結されたプロモーターをそれぞれが含む1つまたは複数の発現カセットが、前記単離された核酸分子内の1つまたは複数のatt組換え部位の少なくとも1つに導入されている、請求項25または27記載の単離された核酸分子。
【請求項38】
前記1つまたは複数の発現カセットの少なくとも1つが、組織特異的プロモーター、リプログラミング遺伝子プロモーター、発生遺伝子プロモーターなどからなる群より選択されるプロモーターを有する、請求項37記載の単離された核酸分子。
【請求項39】
1つまたは複数の発現カセットの少なくとも1つが、組織特異的遺伝子、リプログラミング遺伝子、または発生遺伝子をコードする、請求項25または27記載の単離された核酸分子。
【請求項40】
リプログラミング遺伝子がOct4、Sox2、c-Myc、およびKlf4;Oct3/4、Nanog、Lin28、SSEA1、ならびにTRA1-80からなる群より選択される、請求項39記載の単離された核酸分子。
【請求項41】
リプログラミング遺伝子プロモーターが哺乳動物起源の天然のプロモーターである、請求項38記載の単離された核酸分子。
【請求項42】
リプログラミング遺伝子プロモーターが操作されたプロモーターである、請求項38記載の単離された核酸分子。
【請求項43】
プロモーターが細胞特異的プロモーターである、請求項38記載の単離された核酸分子。
【請求項44】
プロモーターが発生段階特異的プロモーターである、請求項38記載の単離された核酸分子。
【請求項45】
細胞が幹細胞である、請求項43記載の単離された核酸分子。
【請求項46】
発生段階が生殖段階、胚性段階、前駆段階、胎児段階、新生児段階、または幹細胞段階のいずれかである、請求項44記載の単離された核酸分子。
【請求項47】
哺乳動物がヒトである、請求項41記載の単離された核酸分子。
【請求項48】
選択可能なマーカーが抗生物質耐性を与えるタンパク質である、請求項25記載の単離された核酸分子。
【請求項49】
抗生物質がテトラサイクリン、ネオマイシン、ブラストサイジン、ハイグロマイシン、アンピシリン、およびピューロマイシンからなる群より選択される、請求項48記載の単離された核酸分子。
【請求項50】
抗生物質がハイグロマイシンである、請求項49記載の単離された核酸分子。
【請求項51】
(a)ウイルスゲノムの全部または一部;(b)プロモーターによって駆動される1つまたは複数の発現カセット;(c)少なくとも1つの選択可能なマーカー;ならびに(d)任意で、WPREエレメントおよび/またはVSV-GエレメントをコードするDNAセグメントを含む、単離された核酸分子。
【請求項52】
前記発現カセットがコードするリプログラミング遺伝子がOct4、Sox2、c-Myc、およびKlf4;Oct3/4、Nanog、Lin28、SSEA1、ならびにTRA1-80からなる群より選択される、請求項51記載の単離された核酸分子。
【請求項53】
前記発現カセットが、組織特異的遺伝子、リプログラミング遺伝子、または発生遺伝子をコードする、請求項51記載の単離された核酸分子。
【請求項54】
発現カセットを駆動するプロモーターが、天然のプロモーター、操作されたプロモーター、細胞特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、リプログラミング遺伝子プロモーター、および発生遺伝子プロモーターからなる群より選択される、請求項51記載の単離された核酸分子。
【請求項55】
SEQ ID NO:3のpBacMam Ver1プロモーターレスウイルスベクターを含む、キット。
【請求項56】
SEQ ID NO:4のpEBNA-DESTプラスミドベクターを含む、キット。
【請求項57】
SEQ ID NO:5のpEP-EGプラスミドベクターを含む、キット。
【請求項58】
SEQ ID NO:6のpEP-hOGプラスミドベクターを含む、キット。
【請求項59】
SEQ ID NO:7のpBacMam Ver1ウイルスベクターを含む、キット。
【請求項60】
SEQ ID NO:9のpBacMam Ver2ウイルスベクターを含む、キット。
【請求項61】
SEQ ID NO:10のpBacMam Ver2プロモーターレスウイルスベクターを含む、キット。
【請求項62】
SEQ ID NO:11のpBacMam Ver2プロモーターレスウイルスベクターを含む、キット。
【請求項63】
SEQ ID NO:12のpBacMam Ver2ウイルスベクターを含む、キット。
【請求項64】
SEQ ID NO:49のpBacMam Ver1ウイルスベクターを含む、キット。
【請求項65】
請求項1、25、または51記載の核酸分子の1つまたは組み合わせを形質導入された細胞であって、それぞれの核酸分子が、該細胞をリプログラミングするための少なくとも1つの発現カセットを有する、細胞。
【請求項66】
幹細胞である、請求項65記載の細胞。
【請求項67】
成体体細胞である、請求項65記載の細胞。
【請求項68】
細胞分化をリプログラミングするための請求項1、25、または51記載のベクターの使用。
【請求項69】
細胞が幹細胞または初代細胞である、請求項68記載のベクターの使用。
【請求項70】
幹細胞が胚性幹細胞、新生児幹細胞、胎児幹細胞、若年幹細胞、または成体幹細胞である、請求項69記載のベクターの使用。
【請求項71】
初代細胞が胎児初代細胞、若年初代細胞、または成体初代細胞である、請求項69記載のベクターの使用。
【請求項72】
GFPを構成的に発現するDNAセグメントを発現カセットが含む、請求項1記載のベクターを含むpEPEG-BG01V細胞株。
【請求項73】
Oct4プロモーターがGFPの発現を駆動する、請求項1記載のベクターを含むpEPOG-BG01V細胞株。
【請求項74】
(i)請求項1、25、または51記載の核酸分子を単独でまたは組み合わせてのいずれかで細胞に導入する工程;
(ii)コードされる1つまたは複数のポリペプチドを適切な培養条件下で該細胞内で発現させる工程;
(iii)該細胞がリプログラミングされたかどうかを同定する工程
を含む、細胞をリプログラミングするための方法。
【請求項75】
細胞が幹細胞である、請求項74記載の細胞をリプログラミングするための方法。
【請求項76】
細胞が成体体細胞である、請求項74記載の細胞をリプログラミングするための方法。
【請求項77】
細胞が罹患細胞である、請求項74記載の細胞をリプログラミングするための方法。
【請求項78】
疾患が癌である、請求項74記載の細胞をリプログラミングするための方法。
【請求項79】
リプログラミングが、特定の細胞型への分化の誘導である、請求項74記載の細胞をリプログラミングするための方法。
【請求項80】
リプログラミングが、より幹様の脱分化状態に向かう、請求項74記載の細胞をリプログラミングするための方法。
【請求項81】
(i)請求項55〜64のいずれか一項記載の組成物を幹細胞に導入する工程;
(ii)コードされる1つまたは複数のポリペプチドを適切な培養条件下で該幹細胞内で発現させる工程;
(iii)該幹細胞がリプログラミングされたかどうかを同定する工程;
(iv)リプログラミングされた該幹細胞を培養下で増殖させかつ維持する工程
を含む、リプログラミングされた幹細胞群を産生する方法。
【請求項82】
SEQ ID NO:2のpBacMam Ver1ウイルスベクターおよびリプログラミング遺伝子を含む、ウイルス粒子。
【請求項83】
SEQ ID NO:8のpBacMam Ver2ウイルスベクターおよびリプログラミング遺伝子を含む、ウイルス粒子。
【請求項84】
(i)1つまたは複数のdsRNA小分子を細胞に導入するまたは発現させる工程;
(ii)該細胞がリプログラミングされたかどうかを同定する工程
を含む、細胞をリプログラミングするための方法であって、
該小dsRNA分子が、リプログラミング遺伝子のプロモーター領域と相互作用する、方法。
【請求項85】
SEQ ID NO:13〜48の二本鎖RNA配列のいずれか1つまたは組み合わせを含む、組成物。
【請求項86】
SEQ ID NO:3のpBacMam Ver1プロモーターレスウイルスベクターを含む、ウイルス粒子。
【請求項87】
SEQ ID NO:7のpBacMam Ver1ウイルスベクターを含む、ウイルス粒子。
【請求項88】
SEQ ID NO:9のpBacMam Ver2ウイルスベクターを含む、ウイルス粒子。
【請求項89】
SEQ ID NO:10のpBacMam Ver2プロモーターレスウイルスベクターを含む、ウイルス粒子。
【請求項90】
SEQ ID NO:11のpBacMam Ver2プロモーターレスウイルスベクターを含む、ウイルス粒子。
【請求項91】
SEQ ID NO:12のpBacMam Ver2ウイルスベクターを含む、ウイルス粒子。
【請求項92】
SEQ ID NO:49のpBacMam Ver1ウイルスベクターを含む、ウイルス粒子。
【請求項93】
(i)請求項1、25、または51記載の核酸分子を、単独でまたは組み合わせて、細胞に導入する工程;
(ii)コードされる1つまたは複数のポリペプチドを適切な培養条件下で該細胞内で発現させる工程;
(iii)該細胞がリプログラミングされたかどうかを同定する工程
を含む、誘導多能性細胞(iPSC)を産生するための方法。
【請求項94】
請求項93記載の方法によって産生される、誘導多能性細胞(iPSC)。
【請求項95】
(a)OriP部位;(b)構成的プロモーター下にEBNA1遺伝子をコードするDNAセグメント;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;および(d)少なくとも1つの選択可能なマーカーをコードするDNAセグメントを含む、単離された核酸分子。
【請求項96】
(a)OriP部位;(b)誘導性プロモーター下にEBNA1遺伝子をコードするDNAセグメント;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;および(d)少なくとも1つの選択可能なマーカーをコードするDNAセグメントを含む、単離された核酸分子。
【請求項97】
(a)バキュロウイルスゲノムの全てまたは一部;(b)OriP部位;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;(d)構成的プロモーター下にEBNA1遺伝子をコードするDNAセグメント;ならびに(e)少なくとも1つの選択可能なマーカー;(f)任意で、WPREエレメントおよび/またはVSV-Gエレメントを含む、単離された核酸分子。
【請求項98】
(a)バキュロウイルスゲノムの全てまたは一部;(b)OriP部位;(c)1つまたは複数のatt組換え部位;(d)誘導性プロモーター下にEBNA1遺伝子をコードするDNAセグメント;ならびに(e)少なくとも1つの選択可能なマーカー;(f)任意で、WPREエレメントおよび/またはVSV-Gエレメントを含む、単離された核酸分子。

【公表番号】特表2012−508591(P2012−508591A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545349(P2011−545349)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/064488
【国際公開番号】WO2011/071476
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】