細胞クラスターの生成法
【課題】生体内の哺乳類組織において、細胞は、複雑な三次元(3-D)環境に存在し、そこで増殖する。生体内で認められる3−D環境に似た生体外環境での細胞のクラスター化は、極めて有益であり、多細胞クラスターは、器官形成、腫瘍細胞の治療への応答、および、腫瘍中の上皮-間葉細胞の相互作用の基礎となるメカニズムの検討に生体外系として汎用され、様々な方法で単細胞浮遊液が3-Dクラスターとして再凝集される。これらの技術は、クラスター形成の促進に有効であるが、サイズまたはその均一性を制御する手段を持たない。
【解決手段】本発明は、三次元細胞クラスターを形成するための細胞誘発法に関する。さらに、本発明は、当該クラスターのサイズおよび均一性を制御する方法にも関する。
【解決手段】本発明は、三次元細胞クラスターを形成するための細胞誘発法に関する。さらに、本発明は、当該クラスターのサイズおよび均一性を制御する方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、三次元細胞クラスターを形成するための細胞誘発法に関する。さらに、本発明は、当該クラスターのサイズおよび均一性を制御する方法にも関する。
【0002】
〔発明の背景〕
生体内の哺乳類組織において、細胞は、複雑な三次元(3-D)環境に存在し、そこで、中心細胞または細胞群の周囲に三次元で均一、または、不均一に細胞が増殖する。細胞は、隣接する細胞と密着し、当該細胞に支持体を提供する細胞外マトリックス(ECM)網にも連結される。細胞の運命の決定は、周辺細胞からの細胞−自律シグナルおよび刺激によって提供される複雑な相互作用(interplay)に支配される。インテグリンを介したECMとの細胞接触は、増殖、分化、遊走、アポトーシスおよび細胞形状などの多くの細胞機能に影響を与えることが広く認められている。先行する膵臓機能研究を簡単にまとめると、例えば、米国特許第6703017は、血糖値の変化への迅速な、しかも微細に制御された応答に対して理想的なランゲルハンス島の注目すべき構造および細胞構成を報告している。
【0003】
リードル(Riedl)ら(「ジャーナル・オブ・イミュノロジー(Journal of Immunology)」, 2000年, 165: 1381-1386)は、TGF-β1副刺激(costimulation)に応答したヒトCD34+造血前駆細胞からの上皮ランゲルハンス細胞の発生は、発生途中のLC前駆細胞の顕著な細胞クラスター形成に付随すると報告している。上皮ランゲルハンス細胞は、生体内で、基底上表皮層に三次元ネットワークを形成し、長期間、表皮中に留まり、それら細胞が周辺組織から異種抗原をフィルターにかける前哨的役割を果たすことを可能にする。
【0004】
しかし、これらの細胞プロセスを生体外で検討するためには、典型的には、細胞が組織から単離され、単層で増殖され、これが、細胞が細胞1個または2個分のみの厚さの層で増殖する二次元(2-D)培養系に例えられることができる。しかし、この種の細胞層形成は、細胞間相互作用およびECMを変化させ、インテグリンと細胞骨格分子の間の複雑な相互作用(interplay)を変化させる。
【0005】
生体内で認められる3−D環境に似た生体外環境での細胞の培養は、元の生体内環境に類似した方法によって密着させる点が極めて有益である。順に、これは、細胞機能に対する有意な作用を有する。胚幹細胞(ESC)は、この現象の結果に明らかに応答する。ESCが浮遊培養において分化できる場合、経時的に、それらは、自然に、球形の多細胞凝集体または胚様体(EB)を形成する。EB中の細胞は、高度の伝達(communication)および器質化に関与し、全3胚葉への当該細胞の分化を開始すると考えられる。
【0006】
例えば足場などの3-D固体支持体上での細胞の培養は、生体内3-D環境を人為的に修復する一つの手法である。しかし、細胞は、初めは、当該支持体の表面に沿って単層で増殖し続け、互いに付着する前に優先的に基質に付着する。
【0007】
多細胞クラスターは、例えば、器官形成、治療への腫瘍細胞の応答、および、腫瘍中の上皮-間葉細胞の相互作用の基礎となるメカニズムを検討するために、生体外系として、過去40年間に亘って汎用されてきた。これらの再凝集細胞培養物が、形態形成を理解する手法として最初に導入された。単細胞浮遊液は、酵素的および/または機械的解離によって得られ、様々な方法で3-Dクラスターとして再凝集される。次に、細胞間付着力が、当該細胞がプレーティングされる基質への付着力を超えるように、組織培養条件が提供される。クラスターを発生させる最新法は、連続的に動き、それによって、容器壁への細胞付着を防止する旋回振盪器、ローラーフラスコまたはスピナーフラスコ中での細胞のプレーティングに関する。
【0008】
例えば、米国特許出願第20040096967号は、回転式振盪力を加えながら浮遊培養において細胞を培養することによるEB形成法の概略を述べている。この技術の短所は、細胞に対する回転力の破壊的な剪断応力作用である。
【0009】
細胞クラスターは、生体外でも自然に生じることができる。米国特許第6,703,017号は、ランゲルハンス島様構造またはランゲルハンス島前駆細胞由来ランゲルハンス島が、ランゲルハンス島産生幹細胞から間接的に培養下で生じる細胞の高度器質化構造である、と述べている。
【0010】
別の技術は、組織培養物表面に薄層のアガロースまたは他の非付着性物質で単にコーティングすることに関する。これらの条件下では、細胞は、培養フラスコの表面に付着することができず、結果として、多くの細胞型が同型の凝集を受ける。
【0011】
例えば、糖尿病の細胞療法を生み出す研究において、ザヤス(Zayas)ら(EP 0 363 125, 1990年)は、膵臓内分泌細胞の増殖プロセスを開示した。当該プロセスは、胎児膵臓組織、および、植え込み用としてこれらの細胞を埋め込むために調製される、コラーゲンを含む合成構造の使用に依存する。
【0012】
細胞は、培養培地への因子の添加に応答してクラスターを形成することもできる。例えば、リードル(Riedle)らは、「サイトカインTGF-β1は、上皮ランゲルハンス細胞の発生および分化中に主要な役割を果たす。我々は、最近、CD34+造血前駆細胞の生体外分化モデルを使用して、無血清培養系中のCD34+造血前駆細胞からのLCの発生が、TGF-β1刺激に完全に依存することを実証した」と述べている。
【0013】
しかし、これらの技術は、クラスター形成の促進に有効であるが、当該クラスターのサイズまたはその均一性を制御する手段を持たない。いったん浮遊液中でクラスターが形成されると、当該クラスターは、他の細胞を追加して、または、隣接するクラスターと凝集して大きくなり続ける。これは、結局、当該クラスター内部への酸素および栄養素の拡散を減じ、当該クラスターコア中の細胞死に到る一連の事象を開始する。
【0014】
〔発明の概要〕
本発明は、とりわけ、細胞クラスターの制御形成法を含む。本発明のクラスターは、単細胞、細胞クラスター、またはそれらの組み合わせから形成することができる。クラスターを構成する細胞は、単独型または数種類の型であってよい。細胞は、幹細胞、あるいは未分化細胞もしくは部分的分化から完全分化までの細胞および/または遺伝子操作細胞である初代または拡大(expanded)細胞とすることができる。本発明の細胞は、単層または浮遊液中でクラスター化開始を誘発されることができる。
【0015】
本発明の方法は、最適なクラスターサイズを制御し、予め形成されたクラスター間に起こり得るさらなる凝集を防止する段階をさらに含む。本方法は、クラスター形成前、形成中、形成後に、クラスターを構成する細胞を操作する段階をさらに含むことができる。
【0016】
本発明の方法は、
a)細胞を入手する段階と、
b)液体培地中で細胞浮遊液を形成する段階と、
c)表面によって境界を示された容積測定空間で細胞を含む培地を培養する段階と、
d)当該表面への細胞付着を制限する段階と、
を含む。
【0017】
本方法に従ったクラスター形成は、表面への細胞の付着を、その表面を改質することによって制限する、または、完全に排除する段階に関する。当該付着制限は、細胞培養培地を改質(modifying)し、さらに増強させるか、細胞付着を減少させることによって、実施されることができる。別法として、改質済みの処理表面に細胞を導入し、その表面の選択された場所だけに細胞付着を可能にすることによって、付着制限が実施されることができる。
【0018】
なおも別の実施態様では、時間依存的な方法での培養培地への特定因子の適用は、初めは、前記表面への細胞付着を制限または防止できないが、最終的には制限、防止することになり、それによって、クラスター形成を誘発する。例えば、細胞付着を増強する因子は、最初に適用され、その後、細胞付着を減じ、形成されたクラスター間のさらなる凝集を防止する他の因子を順次適用することができる。
【0019】
本発明は、クラスターのサイズを制御する方法も提供する。ある実施態様では、培養培地中の血清濃度が調整され、当該クラスターのサイズが制御される。
【0020】
別の実施態様では、初期細胞接種密度が、クラスターサイズの制御に利用される特徴である。
【0021】
本発明は、クラスターに添加されることができる他の細胞を改質する特定の特徴を含む、1個の細胞もしくは細胞群もしくは細胞クラスターの使用法も含む。
【0022】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、細胞のクラスター化を誘発する方法を含む。細胞クラスターは、1個以上の細胞の三次元凝塊であり、その場合、当該細胞は単層で形成されないと考えられることができる。クラスターは、例えば回転楕円体、楕円、立方体など、どんな形状であってもよい。さらに、それらは、中心細胞または小さな細胞中心群の周囲に三次元で生じる不均一、非非対称(non-asymmetrical)な凝塊であってもよい。
【0023】
単層は、厚さが細胞1個分または、せいぜい2個分の単一の細胞の連続層であると考えられることができる。単層の細胞は、1個以上の細胞の群またはコロニーを形成できるが、これらのコロニーは、典型的には、厚さが細胞1個分である。
【0024】
本発明の細胞は、タンパク、サイトカイン、ホルモンもしくは増殖因子などの治療因子を発現もしくは分泌する構造機能または治療応答を提供する任意の細胞であってよい。本細胞は、互いに対して、および/または、植え込み目的のための生体内宿主に対して自己細胞、同種異系細胞、または、異種細胞であってよい。本細胞は、ドナーからの単離後直接利用される初代細胞であってよい。それら細胞は、利用前に単層で拡張されることもできる。本細胞は、未分化細胞または部分的分化から完全分化までの細胞、および/または、遺伝子操作細胞であってよい。
【0025】
本発明のクラスターは、1つの型の均質な細胞群または不均質な数種類の型の細胞群で構成される出発材料を含むことができる。単一クラスターに寄与する各種細胞型の比は、総じて、クラスターの特定の特徴を最適化するため、あるいは、特定の特徴を抑制するために変化されることができる。当該出発材料は、単細胞もしくは細胞クラスターまたはそれらの組み合わせであってよい。クラスターに寄与する細胞は、すべて、クラスター誘発プロセス中に一度に導入されることができる。別法として、初期細胞接種およびクラスター形成後に追加細胞が導入されることができる。さらに、出発クラスターが形成された後に、追加クラスターが導入されることができ、それによって、クラスター凝集または融合が複合クラスターの形成を招くことができる。
【0026】
ある実施態様では、細胞クラスターは、特定遺伝子または問題の遺伝子セットの高い発現を有する遺伝子組換え細胞を含むことができる。次に、この高い発現は、クラスター内の他の細胞型の問題の当該遺伝子の上方調節を誘導することができる。ある細胞型における問題のタンパクに関する上方調節遺伝子の発現は、クラスター内の応答遺伝子および隣接細胞のシグナル伝達経路に対する所望の作用を誘発することができる。
【0027】
なおも別の実施態様では、細胞クラスターは、当該クラスター内の、または、植え込み後の間近の隣接細胞に影響を与えることができる固有の表面リガンドもしくはレセプター、分泌増殖因子もしくはサイトカインを有することができる特定の表現型の異種細胞を含むことができる。当該作用には、異なる種の類似分子実体間の正常な結合およびシグナル伝達経路の再構成が部分的または全体に介在する。当該異種細胞は、定位置に放置されるか、植え込み前に独特な細胞傷害性の抗体および補体を使用することによって選択的に除去されることができる。別法として、異種細胞(またはクラスター中の対抗する細胞)が遺伝子操作され、独特の選択剤(selection agent)に応答した場合、その選択剤は、植え込み前に細胞傷害作用とその後の当該選択剤の洗い流しを引き起こすのに十分な時間にわたり、培養培地に添加されることができる。
【0028】
クラスター中の細胞の生存は、栄養素および酸素が、クラスター内で最も内側の細胞に到達するために移動しなければならない拡散距離の関数である。本発明のクラスターの最適なサイズは、用途に応じて異なることになるが、構成細胞型の生存の維持に必要な拡散距離を考慮しなければならない。この距離が細胞型毎に異なることは、当業者にとって明らかである。ある実施態様では、この距離は、2〜1000ミクロンの範囲とすることができる。別法として、当該距離は、約10〜約500ミクロンの範囲であってもよい。別法として、当該距離は、約10〜約300ミクロンの範囲であってもよい。
【0029】
クラスターに寄与する細胞総数も、変えることができる。1個のクラスターは、10〜10,000個の細胞を含むことができる。あるいは、クラスターは、約100〜約10,000個の細胞を含むことができる。あるいは、クラスターは、約1,000〜約5,000個の細胞を含むことができる。
【0030】
ある実施態様では、細胞クラスターは、インスリンの分泌およびあるレベルでのグルコース維持に関与し、膵臓に認められるランゲルハンス島の機能を模倣する細胞を含むことができる。
【0031】
別の実施態様では、細胞クラスターは、内皮細胞などの、新規血管系の構築に関与する細胞を含むことができる。血管の存在は、生体外移植後、クラスター本体内の細胞生存を増強することができる。新たに形成された血管は、血液をクラスター本体内にさらに深く浸透させ、それによって、栄養素、気体および老廃物の効率的交換に必要な総拡散距離を減少させることができる。
【0032】
本発明の方法に従って、細胞クラスター化の誘発は、数種の技術によって達成されることができる。ある実施態様では、単層で増殖された細胞は、細胞生存の維持に適した培地中に浮遊される。その後、当該細胞浮遊液は、容器の表面が、細胞付着を抑制または防止する方法で処理されている容器に貯蔵され、当該容器表面への付着の細胞親和性が細胞どうしの付着への細胞親和性よりも低い系を形成し、緩く付着した細胞クラスターの形成を初期に招く。間もなく、新たに付着した細胞は、内在性細胞外マトリックスを生じ、それによって、当該クラスターを構成する細胞を引き入れ、さらに緻密な安定した構造を形成する。
【0033】
細胞付着を防止するための表面の改質は、本技術の専門家に周知の様々な技術によって達成されることができる。例えば、親水性を高め、続いて、当該表面に付着する細胞膜の親和性を低下させるヒドロゲル材料で表面がコートされることができる。
【0034】
細胞付着は、正常な付着に用いられる表面積を制限することによって制御されることもできる。次に、付着に用いられる表面に細胞浮遊液が導入される。付着に用いられる表面全体が占有された後、浮遊液に残る細胞が除去され、すでに付着した細胞が維持され、外側に増殖され、最終的に、当該表面から離れ、クラスターを形成する細胞群を形成することができる。
【0035】
ある実施態様では、付着に用いられる表面の最小化は、他の点では細胞付着を防止する表面への細胞付着用に細胞群(islands)を生成することによって起こり得る。これら細胞群は、本明細書では、マイクロスポットと呼ばれる。マイクロスポットは、当該表面へ細胞外マトリックスタンパク溶液の小滴を付着させることによって生成されることができる。次に、当該表面は、乾燥される。別法として、ソフトリソグラフィーが用いられ、別の方法では細胞付着が不可能な表面上にECMマイクロパターンを生じることができる。各マイクロスポットは、少なくとも1個のクラスターの形成を招くことができる。当業者は、所与の表面を改質し、細胞付着を可能にするマイクロスポットを生成する多くの方法があることを認識することになる。
【0036】
別の実施態様では、細胞浮遊液は、細胞付着を可能にする表面上のマイクロスポットを使って、他の方法では細胞付着が不可能な表面に導入されることができる。細胞が付着に用いられる空間を埋めた後、当該細胞は除去されることができ、新規細胞型が浮遊液に導入され、第1の細胞型(cell type)への付着親和性を有することができ、これが、順に、マイクロスポットに付着される。この技術は、生体内構造を模倣した細胞型のさまざまな層で構成される3-Dクラスターの構築に使用されることができる。
【0037】
ある実施態様では、細胞付着を可能にする表面は、細胞を付着させない材料を当該表面にコートし、次に、当該コーティング剤の一部を除去し、それによって、細胞付着のために下部の表面を再度露出することによって、改質されることができる。実施例4は、この技術の説明であり、この場合、手術用ブレードが使われ、細胞付着を防止するヒドロゲルコーティングを除去し、それによって、元のポリスチレン表面を露出し、その後、当該ポリスチレン表面が、細胞付着を受け入れた。
【0038】
細胞密度は、クラスター誘発に影響を与えることができる。細胞密度は、本明細書では、培地の単位容積当りの細胞数を指す。細胞密度が高いほど、クラスター化率が高く、クラスター形成速度が速まる。対照的に、最適な閾値を超える細胞密度の増加は、最終細胞生存に影響し、クラスター化の総合的効率を減じる可能性がある。これは、実施例2に明確に示されており、当該実施例では、培養培地6 mL当り細胞0.5 x 106から1.0 x 106個へ細胞密度を倍増したことがクラスター形成の有意でない増加を招いた。当業者は、クラスター化寄与細胞の生存能力で実証されるクラスター化誘発速度とプロセスの全体的な効率の間のバランスが本発明によって要求されることを認識することになる。
【0039】
クラスター形成に影響する別のパラメーターは、培養培地中の血清濃度である。血清濃度は、必要とされる最適なクラスターサイズに従って変更することができる。当該クラスターサイズは、これも実施例2に示されるように、血清濃度と直接相関する。膵臓由来細胞から形成されるクラスターのサイズは、血清濃度が2%から10%に増加されると、劇的に増加した。対照的に、培養培地から血清を除くと、クラスター化効率を減少させ、細胞死を招く可能性がある。
【0040】
クラスター形成速度を低下させ、クラスターサイズを制限する別の技術は、細胞が互いに付着する傾向を減少させる因子の時限導入(timed introduction)に依存する。いったん細胞のクラスター化が起こり、最適なクラスターサイズが達成されると、これらの因子の培養培地への添加は、形成されたクラスターへの単細胞のさらなる付着を減少させ、形成されたクラスター間の凝集も減少させる。
【0041】
〔実施例1〕
膵臓由来細胞の調製
膵臓の調製−臨床移植に適さないヒトの膵臓は、研究使用への適切な同意を得た後、ザ・ナショナル・ディジーズ・リサーチ・インターチェンジ(The National Disease Research Interchange)(ペンシルベニア州フィラデルフィア)から入手された。膵臓は、臓器保存液とともに、氷上ステンレススチール容器に移され、すべての余分な組織を切り取られた。膵管は、18-ゲージカテーテルを挿入され、膵臓は、ダルベッコ(Dulbecco)リン酸緩衝生理食塩水(DPBS)に溶解しているリベラーゼHI(LIBERASE HI)(登録商標)酵素(ロシュ社(Roche)−0.5 mg/mL)およびDNase I(0.2 mg/mL)を含有する酵素溶液を注入された。
【0042】
一斉酵素消化を伴う緩徐な機械的解離−「ダイアベティス(Diabetes)」 37: 413-420 (1988年)に記述されるとおりの方法に従って、酵素注入膵臓が処理された。要するに、膵臓は、余分の組織を除去され、上記のとおりに酵素溶液を注入された。次に、膵臓は、ステンレススチールビーズを有するリコルディチャンバー(Ricordi Chamber)に入れられ、メッシュサイズ400〜600 μmを有する篩で覆われ、大きめの組織片を保持した。当該チャンバーは、覆われ、酵素溶液が、ほぼ37℃でチャンバーを通って循環され、当該酵素が膵臓を消化する間に、当該チャンバーは振盪され、ビーズによって膵臓組織が破壊された。いったん適切な解離および消化が達成されると、消化が停止され、組織が収集された。
【0043】
組織分離−収集された組織は、4℃、150 x gで5分間遠心分離された。上清が吸引され、当該組織は、DPBS中でさらに2回洗浄された。最終洗浄後、当該組織は、精製のために不連続勾配にかけられた。消化された組織は、ポリスクロース(バージニア州メディアテック社(Mediatech))中、ポリスクロース溶液10 mL当り組織ペレット約1〜約2 mLの割合、1.108 g/mLの密度で、浮遊された。次に、当該組織浮遊液は、丸底ポリカーボネート遠心分離管に移され、密度がそれぞれ1.096および1.037のポリスクロース溶液が、当該遠心分離遠沈管中の組織浮遊液上に慎重に重層された。DMEMの最終層が不連続精製勾配を完了した。当該勾配管は、4℃、2000 rpmで、ブレーキをかけずに20分間遠心分離された。遠心分離後、当該組織は、個々に、各界面分画(3つの界面)から収集され、上記のように、DPBS+で数回洗浄され、50 mL試験管に集められた。
【0044】
細胞クラスター追加解離−任意に、上記プロトコルを使って得られた大型細胞クラスターを小さめのクラスターまたは単細胞浮遊液に追加解離させることができる。最終洗浄後、各分画からの組織は、2000 U/mL DNase Iを含有する1 x トリプシン/EDTA溶液10 mLに浮遊された。試験管は、水浴中に置かれ、ほぼ単細胞の浮遊液が得られるまで5〜6分間、繰り返し、10 mL血清ピペットで吸引、排出された。4℃のDPBS+の添加によって、消化が停止され、当該試験管は、800 rpmで5分間遠心分離された。細胞浮遊液は、DPBS+で洗浄され、下記のとおりに培養された。
【0045】
膵臓細胞培養−最終洗浄後、各界面からの細胞は、DMEM、2%FBS、100 U/μgペニシリン/ストレプトマイシン、ITS、2 mM L-グルタミン、0.0165 mM ZnSO4(シグマ(Sigma))および0.38μM 2-メルカプトエタノール(カリフォルニア州インビトロジェン社(Invitrogen))(以後、「選択培地」とする)中に再浮遊された。小分け当該細胞浮遊液6 mLずつが、T-25組織培養フラスコ中に接種され、あるいは、別法として、当該細胞浮遊液12 mLが、T-75フラスコ中に接種された。当該フラスコは、5%CO2を含む37℃インキュベーター中に置かれた。2〜4週間の培養後、培地の完全交換が実施され、5%FBS(ユタ州ハイクローンHyClone, UT)、1%P/S、0.0165 mM ZnSO4を含有するDMEM(2750 mg/L D-グルコース、862 mg/Lグルタミン)(カリフォルニア州ギブコ社(Gibco))(以後、「増殖培地」とする)中の培養物に付着細胞が戻され、ほぼ集密状態に達せられ(この段階は、「継代0」または「P0」と呼ばれる)、この時点で、当該細胞は、継代された。当該細胞のその後の培養は、当該増殖培地中で細胞5000個/cm2で行われた。培養物は、ほぼ70〜90%集密を達成した後、7〜10日置きに継代された。図1は、膵臓由来細胞の典型的支質形態を示す。
【0046】
〔実施例2〕
膵臓細胞のクラスター化
実施例1に従って単離された膵臓細胞は、低付着6‐穴平板(コーニング・ライフ・サイエンス(Corning Life Science))の浮遊液中で培養された。使用された培地は、0、2または10%FBS補充DMEM-低グルコースを含んだ。各穴は、細胞0.25 x 106、0.5 x 106または1.0 x 106個を含有した。細胞は、2日間浮遊液中で培養された。クラスターサイズ、生存可能性、均一性および数に基づいてクラスター化効率が評価された。
【0047】
顕微鏡下での視覚的分析は、明らかに、細胞密度と血清濃度が、クラスターの形状形成に主要な役割を果たすことを示した。血清は、細胞の相互付着能を増強し、クラスターが凝集およびサイズ拡大する能力も増強する。接種密度細胞0.5 x 106個の場合、培地FBSレベルの2%(図3)から10%(図4)までの増加は、クラスターサイズの大幅な増加を招き、順に、暗色のクラスター中心部で示されるように、生じたクラスターの中心部の壊死を招いた。
【0048】
視覚的分析は、血清濃度が2%で一定に保たれ、接種細胞数が0.5 x 106個(図5)と1.0 x 106個(図6)の間で変動する場合、クラスター総数は、有意に変動しないことも示した。前記2つの図の比較によって明らかのように、接種細胞数が低めの方が、最適なクラスターサイズおよび細胞生存可能性保持に有利であった。
【0049】
〔実施例3〕
生存可能性試験
実施例1に従って、2%FBS補充のDMEM-LG含有培地中で穴1個当り細胞0.5 x 106個によってクラスターが形成された。3日目、穴からクラスターを取り出し、50 mL試験管(ファルコン社(Falcon))中にピペット注入された。次に、当該穴がPBSで洗浄され、試験管内容物でプールされ、全クラスターが確実に収集された。その後、クラスターは、200 rpmで2分間遠心分離され、上清が除去され、5 mLのトリプル(TRYPLE)(登録商標)エクスプレス(カリフォルニア州インビトロジェン社(Invitrogen))に替えられた後、10分間インキュベートされた。数回のピペット操作は、当該クラスターの分離を進めるのに役立った。次に、細胞浮遊液が顕微鏡下で評価され、単細胞浮遊液の調製が確認された。グァバ(Guava)PCA-96細胞分析装置およびビアカウント(VIACOUNT)(登録商標)試薬(カリフォルニア州グァバ社(Guava))を使って細胞の生存可能性が評価された。得られた細胞数は、3回の個別試技の平均値であった。総細胞生存率が測定されると、76%であり、クラスターを構成する過半数の細胞が生存可能な細胞であることを実証した。
【0050】
〔実施例4〕
代替クラスター化技術
低付着ヒドロゲルコーティングを除去するために、滅菌メスを使って、10 cm低付着平板の表面に縁が作られた。このプロセスにより、下部のポリスチレン表面が露出された。次に、PBS中10μg/mLコラーゲンIV型(BDバイオサイエンス社(BD Bioscience))の5 mL溶液がピペットで平板に注入され、1時間インキュベートされた。コラーゲンは、低付着ヒドロゲルが除去されている縁(edge)だけに沿って結合した。その後、当該コラーゲン溶液は、吸引、除去され、2%FBS補充DMEM-LG中細胞1.0 x 106個の単細胞浮遊液が、ピペットで当該平板に注入された。細胞は、5%CO2を含有する37℃の雰囲気中で一晩インキュベートされた。次に、非付着細胞が取り出され、新鮮培地が添加された。隔日で全部の培地の交換が実施された。10日目、露出した縁に付着クラスターが出現し、結局、非付着クラスターになった(図7)。
【0051】
〔実施例5〕
羊水由来細胞
本発明の細胞の単離に使用される羊水は、通常の胎児核型判定用に妊娠17〜22週目に実施された日常的な操作手順の羊水穿刺で得られた検体から入手された。当該羊水は、400-x gで7分間遠心分離され、上清が除去された。得られた細胞ペレットは、アムニオマックス(Amniomax)(登録商標)増殖培地(米国メリーランド州ギブコ社(Gibco))中に再浮遊された。当該細胞は、フィブロネクチン(10μg/ml) (米国カリフォルニア州BDバイオサイエンス社(BD Biosciences))で被覆された平板上で培養された。当該培養物は、低酸素条件(3%O2)下で、少なくとも5〜10日間そのまま放置され、その後、当該培養物は、同一増殖培地を供給され、ほぼ70〜80%の集密度を達成するまで培養された。この段階の細胞は、「P0」と称された。本発明の目的に使用される羊水由来(AF)細胞は、拡大継代(expansion passage)10であった。図2は、典型的羊水由来細胞形態を示す。
【0052】
〔実施例6〕
羊水由来細胞のクラスター化
この実験には、2種類のAF細胞系が使用された。当該細胞系は、上記実施例で指示されたとおりに定められた。クラスター化は、実施例2で上記された方法を使って誘発された。細胞は、2%FBS補充DMEM-LG中、低付着6−穴平板で培養された。クラスターは、48時間目に評価された。当該2種類の系の一方(A系)がクラスターを形成した。第2の細胞系(B系)は、培養時間が1週間まで延長されても、クラスター誘発法に応答しなかった。
【0053】
〔実施例7〕
クラスター形成誘発法としての共存培養(Co-culturing)
この実験は、2種類の細胞型を使って実施された:膵臓由来細胞と上記実施例で得られたとおりのAF細胞B系であった。クラスター化は、実施例2に概説された方法を使って誘発された。2%FBS補充DMEM-LG中、低付着6−穴平板で細胞が培養された。クラスターは、48時間目に評価された。各穴は、膵臓由来細胞単独かAFのB系細胞単独か、2種類の細胞型の1:1比混合物の細胞0.5 x 106個の出発密度で構成された。予想通り、単独培養された膵臓由来細胞は、48時間以内にクラスターを形成した。AFのB系細胞は、培養を1週間まで延長しても、クラスターをまったく形成しなかった。対照的に、当該2種類の細胞型の組み合わせは、48時間以内にクラスターを形成した。クラスターが両細胞型を含んだことを保証するために、各細胞型は、鮮やかな多色細胞標識キット(米国オレゴン州モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes))を使って、様々な蛍光マーカーでタグを付けられた。クラスター誘発後、当該クラスターは、蛍光顕微鏡下で分析された。図8は、両細胞型を含むクラスターを示す。
【0054】
〔実施例8〕
クラスター化誘発法としての極小細胞群(Micro-islands)
実施例2に概説された方法によって膵臓由来細胞が得られた。細胞は、10%FBS補充DMEM-LG培地中で培養、維持された。PBS中20μg/mLの濃度で、コラーゲンIV (ヴェンダー社(Vendor)??)溶液が調製された。この実験には、ヒドロゲルで被覆した(直径=10 cm)(ニューヨーク州コーニング(Corning))低付着平板が使用された。当該コラーゲンIV溶液の0.2μL小滴が、平板表面に沈着され、当該平板は、室温で1時間インキュベートされた。10%FBS補充DMEM-LG培地中膵臓由来細胞の10 mL細胞浮遊液がピペットで当該平板表面上にゆっくりと注入された。当該平板は、5%CO2雰囲気下、37℃で3時間インキュベートされた。翌日、培地の完全交換が実施され、浮遊液に残る全細胞が除去された。前記コラーゲンIV被覆表面に付着した細胞は、細胞群パターン(pattern of islands)を形成した(図9)。24時間目、細胞は広がり、細胞群の間に介在する空間を埋めた(図10)。48時間目、細胞は、集合し、クラスターとなり(図11)、結局、前記平板表面から剥離された。
【0055】
〔実施例9〕
単層およびクラスター中の膵臓由来細胞のPCR分析
実施例1に従って単離された膵臓由来細胞は、単層で培養されるか、実施例2に記述される方法に従ってクラスターを誘発された。
【0056】
単層で増殖された単細胞または細胞クラスターからRNAが抽出された。ヒト膵臓からの全RNA(アンビオン・インコーポレイティッド(Ambion, INC))が、陽性対照として使用された。
【0057】
RNA抽出、精製およびcDNA合成:RNAサンプルは、エタノール含有高塩緩衝液の存在下で、シリカゲル膜(カリフォルニア州キアゲン社(Qiagen)のRneasyミニキット)へのRNAサンプルの結合によって精製された。その間、汚染物質は、洗い流された。RNAは、DNase I(カリフォルニア州キアゲン社(Qiagen))による15分間の処理によってカラムに結合されながら、さらに精製された。その後、高品質RNAが、水中に溶出された。分光光度計上A260およびA280の示度によって収率および純度が評価された。ABI(カリフォルニア州ABI社)高性能cDNAアーカイブキットを使って、精製RNAからcDNAコピーが作製された。
【0058】
リアルタイムPCR増幅および定量分析:他に明記されない限り、全試薬は、アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems)から購入された。リアルタイムPCR反応は、ABIプリズム(ABI PRISM)(登録商標)7000 配列検出システム(Sequence Detection System)を使って実施された。総反応量20μLとして、逆転写RNA 20ngとともに、TAQMAN(登録商標)UNIVERSAL PCR MASTER MIX(登録商標)(カリフォルニア州ABI社)が使用された。ピペット操作誤差を修正するために、各cDNAサンプルは、2回繰り返しで実験された。プライマーおよびFAM-標識TAQMAN(登録商標)プローブは、200 nMの濃度で使用された。各標的遺伝子の発現レベルは、開発済みのアプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems)の18SリボソームRNAまたはヒトグリセルアルデヒド-3-フォスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)内在対照キットを使って標準化された。プライマーおよびプローブは、ABIプリズム・プライマー・エクスプレス(ABI PRISM PRIMER EXPRESS)(登録商標)ソフトウェアを使ってデザインされるか、すでに開発済みのABI遺伝子分析キットが使用された。遺伝子毎に、プライマーまたはプローブのいずれか1つがデザインされ、エキソン境界スパニング(exon-boundary spanning)とされた。これは、存在するゲノムDNAにプライマー/プローブが結合する可能性を排除した。プライマーおよびプローブセットは、以下のPax6 (Hs00240871)、インスリン(Hs00355773)、グルカゴン(Hs00174967)、Isl-1 (Hs00158126)、ソマトスタチン(Hs00174949)としてリストされており、残りのプライマーは、プライマーズ(PRIMERS)プログラム(カリフォルニア州ABI社)を使用することによってデザインされた。初期50℃で2分間および95℃で10分間後、サンプルは、2段階、即ち、95℃での15秒間の変性段階と、それに続く60℃での1分間のアニーリング/伸張段階を40回サイクルされた。データ分析は、GENEAMP(登録商標)7000配列検出システム(Sequence Detection System)ソフトウェアを使って実施された。プライマー/プローブ毎に、Ct値は、蛍光強度が指数的増幅領域の中間で特定値に達したサイクル数として決定された。比較Ct法を使って、相対遺伝子発現レベルが算出された。要するに、cDNAサンプル毎に、問題の遺伝子Ctから内在対照Ct値が差し引かれ、デルタCt値(ΔCt)が得られた。増幅を100%効率と仮定して、標的の標準化量は、2-ΔCtとして算出された。最終データは、較正品サンプルに対して表された。比較Ct法は、標的および内在対照増幅効率がほぼ等しい場合に妥当であるに過ぎない。そのため、プライマー/プローブセット毎に、連続希釈cDNAサンプルを増幅し、ΔCt値を決定することによって、予備確認実験が実施された。これらのΔCt値は、増幅効率が等しい場合には、希釈範囲全体で一定を保つ必要がある。図12は、単層細胞対クラスター細胞についての遺伝子発現レベル間の比較を示す。
【0059】
以上、実施例および好ましい実施態様を参照することによって本発明の各種態様が説明されたが、本発明の範囲は、上記説明によって規定されず、特許法の原則下で適切に解釈される以下の請求の範囲によって規定されることを理解されたい。
【0060】
〔実施の態様〕
(1) 細胞クラスターを形成する方法において、
a.クラスター化される細胞群を選択する段階と、
b.液体培地中に細胞浮遊液を形成する段階と、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に細胞を含有する前記培地をインキュベーションする段階と、
d.前記表面への細胞付着を制限する段階と、
を含む、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記方法が、生体外で実施される、
方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記表面が、表面積を有し、
前記表面への細胞付着を制限する前記段階が、細胞付着に利用できる前記表面積を制限する段階を含む、
方法。
(4) 実施態様1に記載の方法において、
培養条件の操作が、さらなるクラスター凝集を防止するための因子の添加を含む、
方法。
(5) 実施態様4に記載の方法において、
前記表面積を制限する前記段階が、細胞付着を抑制する材料で前記表面をコーティングする段階を含む、
方法。
(6) 実施態様5に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料が、細胞付着を防止する、
方法。
(7) 実施態様6に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料の一部が除去される、
方法。
(8) 実施態様1に記載の方法において、
前記表面への細胞付着を制限する前記段階が、細胞自体への前記細胞の結合親和性よりも低い数値まで前記細胞への前記表面の結合親和性を低下させる段階を含む、
方法。
(9) 実施態様1に記載の方法において、
前記クラスターが、初めに前記表面上に生じ、その後、浮遊液中で停止する、
方法。
(10) 実施態様1に記載の方法において、
前記クラスターが、前記表面上に生じる、
方法。
(11) 実施態様1に記載の方法において、
クラスター化される前記細胞群が、2種類以上の細胞型を含む、
方法。
(12) 実施態様1に記載の方法において、
前記表面の領域に細胞外マトリックスタンパクを沈着させる段階、
をさらに含む、方法。
(13) 細胞クラスターを形成する方法において、
a.クラスター化される細胞群を選択する段階と、
b.液体培地中で前記細胞の小群の浮遊液を形成する段階と、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に前記細胞小群を含有する前記培地を導入する段階と、
d.前記細胞小群を前記表面に付着させる段階と、
e.前記表面に付着しなかった前記細胞小群の前記細胞を除去する段階と、
f.前記細胞の残りの細胞を導入する段階と、
g.前記表面に付着している前記細胞に前記残りの細胞を付着させる段階と、
を含む、方法。
(14) 実施態様13に記載の方法において、
前記表面が、表面積を有し、
前記細胞小群を前記表面に付着させる前記段階が、細胞付着に利用できる前記表面積を制限する段階を含む、
方法。
(15) 実施態様14に記載の方法において、
前記表面積を制限する前記段階が、細胞付着を抑制する材料で前記表面をコーティングする段階を含む、
方法。
(16) 実施態様14に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料が、細胞付着を防止する、
方法。
(17) 実施態様15に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料の一部が除去される、
方法。
(18) 実施態様13に記載の方法において、
細胞付着が、細胞自体への前記細胞の結合親和性よりも低い数値までの前記細胞への前記表面の結合親和性の低下によって制限される、
方法。
(19) 実施態様13に記載の方法において、
前記クラスターが、初めに前記表面上に生じ、次に、浮遊液中で停止する、
方法。
(20) 実施態様13に記載の方法において、
前記クラスターが、前記表面上に生じる、
方法。
(21) 実施態様13に記載の方法において、
クラスター化される前記細胞群が、2種類以上の細胞型を含む、
方法。
(22) 実施態様13に記載の方法において、
追加因子が培養物に添加され、さらなるクラスター凝集を防止する段階、
をさらに含む、方法。
(23) 実施態様13に記載の方法において、
前記表面の制限された領域上に細胞外マトリックスタンパクを沈着させる段階、
をさらに含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】単層培養物中に増殖される膵臓由来細胞の典型的形態を示す。
【図2】単層培養物中に増殖される羊水由来細胞の形態を示す。
【図3】2%血清レベルで浮遊培養において形成される膵臓由来細胞クラスターを示す。
【図4】10%血清レベルで浮遊培養において形成される膵臓由来細胞クラスターを示す。
【図5】2%血清レベルで0.5E6細胞を含む浮遊培養において形成される膵臓由来細胞クラスターを示す。
【図6】2%血清レベルで1.0E6細胞を含む浮遊培養において形成される膵臓由来細胞クラスターを示す。
【図7】低付着ヒドロゲルコートプレート上に滅菌メスで作り出された縁(edge)から外側に増殖する細胞クラスターを示す。
【図8】膵臓由来細胞(赤)および羊水由来細胞(緑)を含むコクラスター(co-cluster)であって、1:1の比率で両細胞型を含む浮遊培養において形成されたコクラスターを示す。
【図9】インキュベーション後12時間目のコラーゲンIVで被覆された細胞群に付着した細胞を示す。
【図10】インキュベーション後24時間目のコラーゲンIVで被覆された細胞群に付着した細胞によるクラスター形成を示す。
【図11】コラーゲンIVで被覆された細胞群への初期細胞付着の48時間後に形成された浮遊クラスターを示す。
【図12】リアルタイムPCRデータを示し、単層で増殖された膵臓由来細胞(白色バー)およびクラスター中で増殖された膵臓由来細胞(黒色バー)の選択遺伝子の発現レベルを表す。示されたデータは、成人膵臓中に認められた発現レベルに対して標準化されている。
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、三次元細胞クラスターを形成するための細胞誘発法に関する。さらに、本発明は、当該クラスターのサイズおよび均一性を制御する方法にも関する。
【0002】
〔発明の背景〕
生体内の哺乳類組織において、細胞は、複雑な三次元(3-D)環境に存在し、そこで、中心細胞または細胞群の周囲に三次元で均一、または、不均一に細胞が増殖する。細胞は、隣接する細胞と密着し、当該細胞に支持体を提供する細胞外マトリックス(ECM)網にも連結される。細胞の運命の決定は、周辺細胞からの細胞−自律シグナルおよび刺激によって提供される複雑な相互作用(interplay)に支配される。インテグリンを介したECMとの細胞接触は、増殖、分化、遊走、アポトーシスおよび細胞形状などの多くの細胞機能に影響を与えることが広く認められている。先行する膵臓機能研究を簡単にまとめると、例えば、米国特許第6703017は、血糖値の変化への迅速な、しかも微細に制御された応答に対して理想的なランゲルハンス島の注目すべき構造および細胞構成を報告している。
【0003】
リードル(Riedl)ら(「ジャーナル・オブ・イミュノロジー(Journal of Immunology)」, 2000年, 165: 1381-1386)は、TGF-β1副刺激(costimulation)に応答したヒトCD34+造血前駆細胞からの上皮ランゲルハンス細胞の発生は、発生途中のLC前駆細胞の顕著な細胞クラスター形成に付随すると報告している。上皮ランゲルハンス細胞は、生体内で、基底上表皮層に三次元ネットワークを形成し、長期間、表皮中に留まり、それら細胞が周辺組織から異種抗原をフィルターにかける前哨的役割を果たすことを可能にする。
【0004】
しかし、これらの細胞プロセスを生体外で検討するためには、典型的には、細胞が組織から単離され、単層で増殖され、これが、細胞が細胞1個または2個分のみの厚さの層で増殖する二次元(2-D)培養系に例えられることができる。しかし、この種の細胞層形成は、細胞間相互作用およびECMを変化させ、インテグリンと細胞骨格分子の間の複雑な相互作用(interplay)を変化させる。
【0005】
生体内で認められる3−D環境に似た生体外環境での細胞の培養は、元の生体内環境に類似した方法によって密着させる点が極めて有益である。順に、これは、細胞機能に対する有意な作用を有する。胚幹細胞(ESC)は、この現象の結果に明らかに応答する。ESCが浮遊培養において分化できる場合、経時的に、それらは、自然に、球形の多細胞凝集体または胚様体(EB)を形成する。EB中の細胞は、高度の伝達(communication)および器質化に関与し、全3胚葉への当該細胞の分化を開始すると考えられる。
【0006】
例えば足場などの3-D固体支持体上での細胞の培養は、生体内3-D環境を人為的に修復する一つの手法である。しかし、細胞は、初めは、当該支持体の表面に沿って単層で増殖し続け、互いに付着する前に優先的に基質に付着する。
【0007】
多細胞クラスターは、例えば、器官形成、治療への腫瘍細胞の応答、および、腫瘍中の上皮-間葉細胞の相互作用の基礎となるメカニズムを検討するために、生体外系として、過去40年間に亘って汎用されてきた。これらの再凝集細胞培養物が、形態形成を理解する手法として最初に導入された。単細胞浮遊液は、酵素的および/または機械的解離によって得られ、様々な方法で3-Dクラスターとして再凝集される。次に、細胞間付着力が、当該細胞がプレーティングされる基質への付着力を超えるように、組織培養条件が提供される。クラスターを発生させる最新法は、連続的に動き、それによって、容器壁への細胞付着を防止する旋回振盪器、ローラーフラスコまたはスピナーフラスコ中での細胞のプレーティングに関する。
【0008】
例えば、米国特許出願第20040096967号は、回転式振盪力を加えながら浮遊培養において細胞を培養することによるEB形成法の概略を述べている。この技術の短所は、細胞に対する回転力の破壊的な剪断応力作用である。
【0009】
細胞クラスターは、生体外でも自然に生じることができる。米国特許第6,703,017号は、ランゲルハンス島様構造またはランゲルハンス島前駆細胞由来ランゲルハンス島が、ランゲルハンス島産生幹細胞から間接的に培養下で生じる細胞の高度器質化構造である、と述べている。
【0010】
別の技術は、組織培養物表面に薄層のアガロースまたは他の非付着性物質で単にコーティングすることに関する。これらの条件下では、細胞は、培養フラスコの表面に付着することができず、結果として、多くの細胞型が同型の凝集を受ける。
【0011】
例えば、糖尿病の細胞療法を生み出す研究において、ザヤス(Zayas)ら(EP 0 363 125, 1990年)は、膵臓内分泌細胞の増殖プロセスを開示した。当該プロセスは、胎児膵臓組織、および、植え込み用としてこれらの細胞を埋め込むために調製される、コラーゲンを含む合成構造の使用に依存する。
【0012】
細胞は、培養培地への因子の添加に応答してクラスターを形成することもできる。例えば、リードル(Riedle)らは、「サイトカインTGF-β1は、上皮ランゲルハンス細胞の発生および分化中に主要な役割を果たす。我々は、最近、CD34+造血前駆細胞の生体外分化モデルを使用して、無血清培養系中のCD34+造血前駆細胞からのLCの発生が、TGF-β1刺激に完全に依存することを実証した」と述べている。
【0013】
しかし、これらの技術は、クラスター形成の促進に有効であるが、当該クラスターのサイズまたはその均一性を制御する手段を持たない。いったん浮遊液中でクラスターが形成されると、当該クラスターは、他の細胞を追加して、または、隣接するクラスターと凝集して大きくなり続ける。これは、結局、当該クラスター内部への酸素および栄養素の拡散を減じ、当該クラスターコア中の細胞死に到る一連の事象を開始する。
【0014】
〔発明の概要〕
本発明は、とりわけ、細胞クラスターの制御形成法を含む。本発明のクラスターは、単細胞、細胞クラスター、またはそれらの組み合わせから形成することができる。クラスターを構成する細胞は、単独型または数種類の型であってよい。細胞は、幹細胞、あるいは未分化細胞もしくは部分的分化から完全分化までの細胞および/または遺伝子操作細胞である初代または拡大(expanded)細胞とすることができる。本発明の細胞は、単層または浮遊液中でクラスター化開始を誘発されることができる。
【0015】
本発明の方法は、最適なクラスターサイズを制御し、予め形成されたクラスター間に起こり得るさらなる凝集を防止する段階をさらに含む。本方法は、クラスター形成前、形成中、形成後に、クラスターを構成する細胞を操作する段階をさらに含むことができる。
【0016】
本発明の方法は、
a)細胞を入手する段階と、
b)液体培地中で細胞浮遊液を形成する段階と、
c)表面によって境界を示された容積測定空間で細胞を含む培地を培養する段階と、
d)当該表面への細胞付着を制限する段階と、
を含む。
【0017】
本方法に従ったクラスター形成は、表面への細胞の付着を、その表面を改質することによって制限する、または、完全に排除する段階に関する。当該付着制限は、細胞培養培地を改質(modifying)し、さらに増強させるか、細胞付着を減少させることによって、実施されることができる。別法として、改質済みの処理表面に細胞を導入し、その表面の選択された場所だけに細胞付着を可能にすることによって、付着制限が実施されることができる。
【0018】
なおも別の実施態様では、時間依存的な方法での培養培地への特定因子の適用は、初めは、前記表面への細胞付着を制限または防止できないが、最終的には制限、防止することになり、それによって、クラスター形成を誘発する。例えば、細胞付着を増強する因子は、最初に適用され、その後、細胞付着を減じ、形成されたクラスター間のさらなる凝集を防止する他の因子を順次適用することができる。
【0019】
本発明は、クラスターのサイズを制御する方法も提供する。ある実施態様では、培養培地中の血清濃度が調整され、当該クラスターのサイズが制御される。
【0020】
別の実施態様では、初期細胞接種密度が、クラスターサイズの制御に利用される特徴である。
【0021】
本発明は、クラスターに添加されることができる他の細胞を改質する特定の特徴を含む、1個の細胞もしくは細胞群もしくは細胞クラスターの使用法も含む。
【0022】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、細胞のクラスター化を誘発する方法を含む。細胞クラスターは、1個以上の細胞の三次元凝塊であり、その場合、当該細胞は単層で形成されないと考えられることができる。クラスターは、例えば回転楕円体、楕円、立方体など、どんな形状であってもよい。さらに、それらは、中心細胞または小さな細胞中心群の周囲に三次元で生じる不均一、非非対称(non-asymmetrical)な凝塊であってもよい。
【0023】
単層は、厚さが細胞1個分または、せいぜい2個分の単一の細胞の連続層であると考えられることができる。単層の細胞は、1個以上の細胞の群またはコロニーを形成できるが、これらのコロニーは、典型的には、厚さが細胞1個分である。
【0024】
本発明の細胞は、タンパク、サイトカイン、ホルモンもしくは増殖因子などの治療因子を発現もしくは分泌する構造機能または治療応答を提供する任意の細胞であってよい。本細胞は、互いに対して、および/または、植え込み目的のための生体内宿主に対して自己細胞、同種異系細胞、または、異種細胞であってよい。本細胞は、ドナーからの単離後直接利用される初代細胞であってよい。それら細胞は、利用前に単層で拡張されることもできる。本細胞は、未分化細胞または部分的分化から完全分化までの細胞、および/または、遺伝子操作細胞であってよい。
【0025】
本発明のクラスターは、1つの型の均質な細胞群または不均質な数種類の型の細胞群で構成される出発材料を含むことができる。単一クラスターに寄与する各種細胞型の比は、総じて、クラスターの特定の特徴を最適化するため、あるいは、特定の特徴を抑制するために変化されることができる。当該出発材料は、単細胞もしくは細胞クラスターまたはそれらの組み合わせであってよい。クラスターに寄与する細胞は、すべて、クラスター誘発プロセス中に一度に導入されることができる。別法として、初期細胞接種およびクラスター形成後に追加細胞が導入されることができる。さらに、出発クラスターが形成された後に、追加クラスターが導入されることができ、それによって、クラスター凝集または融合が複合クラスターの形成を招くことができる。
【0026】
ある実施態様では、細胞クラスターは、特定遺伝子または問題の遺伝子セットの高い発現を有する遺伝子組換え細胞を含むことができる。次に、この高い発現は、クラスター内の他の細胞型の問題の当該遺伝子の上方調節を誘導することができる。ある細胞型における問題のタンパクに関する上方調節遺伝子の発現は、クラスター内の応答遺伝子および隣接細胞のシグナル伝達経路に対する所望の作用を誘発することができる。
【0027】
なおも別の実施態様では、細胞クラスターは、当該クラスター内の、または、植え込み後の間近の隣接細胞に影響を与えることができる固有の表面リガンドもしくはレセプター、分泌増殖因子もしくはサイトカインを有することができる特定の表現型の異種細胞を含むことができる。当該作用には、異なる種の類似分子実体間の正常な結合およびシグナル伝達経路の再構成が部分的または全体に介在する。当該異種細胞は、定位置に放置されるか、植え込み前に独特な細胞傷害性の抗体および補体を使用することによって選択的に除去されることができる。別法として、異種細胞(またはクラスター中の対抗する細胞)が遺伝子操作され、独特の選択剤(selection agent)に応答した場合、その選択剤は、植え込み前に細胞傷害作用とその後の当該選択剤の洗い流しを引き起こすのに十分な時間にわたり、培養培地に添加されることができる。
【0028】
クラスター中の細胞の生存は、栄養素および酸素が、クラスター内で最も内側の細胞に到達するために移動しなければならない拡散距離の関数である。本発明のクラスターの最適なサイズは、用途に応じて異なることになるが、構成細胞型の生存の維持に必要な拡散距離を考慮しなければならない。この距離が細胞型毎に異なることは、当業者にとって明らかである。ある実施態様では、この距離は、2〜1000ミクロンの範囲とすることができる。別法として、当該距離は、約10〜約500ミクロンの範囲であってもよい。別法として、当該距離は、約10〜約300ミクロンの範囲であってもよい。
【0029】
クラスターに寄与する細胞総数も、変えることができる。1個のクラスターは、10〜10,000個の細胞を含むことができる。あるいは、クラスターは、約100〜約10,000個の細胞を含むことができる。あるいは、クラスターは、約1,000〜約5,000個の細胞を含むことができる。
【0030】
ある実施態様では、細胞クラスターは、インスリンの分泌およびあるレベルでのグルコース維持に関与し、膵臓に認められるランゲルハンス島の機能を模倣する細胞を含むことができる。
【0031】
別の実施態様では、細胞クラスターは、内皮細胞などの、新規血管系の構築に関与する細胞を含むことができる。血管の存在は、生体外移植後、クラスター本体内の細胞生存を増強することができる。新たに形成された血管は、血液をクラスター本体内にさらに深く浸透させ、それによって、栄養素、気体および老廃物の効率的交換に必要な総拡散距離を減少させることができる。
【0032】
本発明の方法に従って、細胞クラスター化の誘発は、数種の技術によって達成されることができる。ある実施態様では、単層で増殖された細胞は、細胞生存の維持に適した培地中に浮遊される。その後、当該細胞浮遊液は、容器の表面が、細胞付着を抑制または防止する方法で処理されている容器に貯蔵され、当該容器表面への付着の細胞親和性が細胞どうしの付着への細胞親和性よりも低い系を形成し、緩く付着した細胞クラスターの形成を初期に招く。間もなく、新たに付着した細胞は、内在性細胞外マトリックスを生じ、それによって、当該クラスターを構成する細胞を引き入れ、さらに緻密な安定した構造を形成する。
【0033】
細胞付着を防止するための表面の改質は、本技術の専門家に周知の様々な技術によって達成されることができる。例えば、親水性を高め、続いて、当該表面に付着する細胞膜の親和性を低下させるヒドロゲル材料で表面がコートされることができる。
【0034】
細胞付着は、正常な付着に用いられる表面積を制限することによって制御されることもできる。次に、付着に用いられる表面に細胞浮遊液が導入される。付着に用いられる表面全体が占有された後、浮遊液に残る細胞が除去され、すでに付着した細胞が維持され、外側に増殖され、最終的に、当該表面から離れ、クラスターを形成する細胞群を形成することができる。
【0035】
ある実施態様では、付着に用いられる表面の最小化は、他の点では細胞付着を防止する表面への細胞付着用に細胞群(islands)を生成することによって起こり得る。これら細胞群は、本明細書では、マイクロスポットと呼ばれる。マイクロスポットは、当該表面へ細胞外マトリックスタンパク溶液の小滴を付着させることによって生成されることができる。次に、当該表面は、乾燥される。別法として、ソフトリソグラフィーが用いられ、別の方法では細胞付着が不可能な表面上にECMマイクロパターンを生じることができる。各マイクロスポットは、少なくとも1個のクラスターの形成を招くことができる。当業者は、所与の表面を改質し、細胞付着を可能にするマイクロスポットを生成する多くの方法があることを認識することになる。
【0036】
別の実施態様では、細胞浮遊液は、細胞付着を可能にする表面上のマイクロスポットを使って、他の方法では細胞付着が不可能な表面に導入されることができる。細胞が付着に用いられる空間を埋めた後、当該細胞は除去されることができ、新規細胞型が浮遊液に導入され、第1の細胞型(cell type)への付着親和性を有することができ、これが、順に、マイクロスポットに付着される。この技術は、生体内構造を模倣した細胞型のさまざまな層で構成される3-Dクラスターの構築に使用されることができる。
【0037】
ある実施態様では、細胞付着を可能にする表面は、細胞を付着させない材料を当該表面にコートし、次に、当該コーティング剤の一部を除去し、それによって、細胞付着のために下部の表面を再度露出することによって、改質されることができる。実施例4は、この技術の説明であり、この場合、手術用ブレードが使われ、細胞付着を防止するヒドロゲルコーティングを除去し、それによって、元のポリスチレン表面を露出し、その後、当該ポリスチレン表面が、細胞付着を受け入れた。
【0038】
細胞密度は、クラスター誘発に影響を与えることができる。細胞密度は、本明細書では、培地の単位容積当りの細胞数を指す。細胞密度が高いほど、クラスター化率が高く、クラスター形成速度が速まる。対照的に、最適な閾値を超える細胞密度の増加は、最終細胞生存に影響し、クラスター化の総合的効率を減じる可能性がある。これは、実施例2に明確に示されており、当該実施例では、培養培地6 mL当り細胞0.5 x 106から1.0 x 106個へ細胞密度を倍増したことがクラスター形成の有意でない増加を招いた。当業者は、クラスター化寄与細胞の生存能力で実証されるクラスター化誘発速度とプロセスの全体的な効率の間のバランスが本発明によって要求されることを認識することになる。
【0039】
クラスター形成に影響する別のパラメーターは、培養培地中の血清濃度である。血清濃度は、必要とされる最適なクラスターサイズに従って変更することができる。当該クラスターサイズは、これも実施例2に示されるように、血清濃度と直接相関する。膵臓由来細胞から形成されるクラスターのサイズは、血清濃度が2%から10%に増加されると、劇的に増加した。対照的に、培養培地から血清を除くと、クラスター化効率を減少させ、細胞死を招く可能性がある。
【0040】
クラスター形成速度を低下させ、クラスターサイズを制限する別の技術は、細胞が互いに付着する傾向を減少させる因子の時限導入(timed introduction)に依存する。いったん細胞のクラスター化が起こり、最適なクラスターサイズが達成されると、これらの因子の培養培地への添加は、形成されたクラスターへの単細胞のさらなる付着を減少させ、形成されたクラスター間の凝集も減少させる。
【0041】
〔実施例1〕
膵臓由来細胞の調製
膵臓の調製−臨床移植に適さないヒトの膵臓は、研究使用への適切な同意を得た後、ザ・ナショナル・ディジーズ・リサーチ・インターチェンジ(The National Disease Research Interchange)(ペンシルベニア州フィラデルフィア)から入手された。膵臓は、臓器保存液とともに、氷上ステンレススチール容器に移され、すべての余分な組織を切り取られた。膵管は、18-ゲージカテーテルを挿入され、膵臓は、ダルベッコ(Dulbecco)リン酸緩衝生理食塩水(DPBS)に溶解しているリベラーゼHI(LIBERASE HI)(登録商標)酵素(ロシュ社(Roche)−0.5 mg/mL)およびDNase I(0.2 mg/mL)を含有する酵素溶液を注入された。
【0042】
一斉酵素消化を伴う緩徐な機械的解離−「ダイアベティス(Diabetes)」 37: 413-420 (1988年)に記述されるとおりの方法に従って、酵素注入膵臓が処理された。要するに、膵臓は、余分の組織を除去され、上記のとおりに酵素溶液を注入された。次に、膵臓は、ステンレススチールビーズを有するリコルディチャンバー(Ricordi Chamber)に入れられ、メッシュサイズ400〜600 μmを有する篩で覆われ、大きめの組織片を保持した。当該チャンバーは、覆われ、酵素溶液が、ほぼ37℃でチャンバーを通って循環され、当該酵素が膵臓を消化する間に、当該チャンバーは振盪され、ビーズによって膵臓組織が破壊された。いったん適切な解離および消化が達成されると、消化が停止され、組織が収集された。
【0043】
組織分離−収集された組織は、4℃、150 x gで5分間遠心分離された。上清が吸引され、当該組織は、DPBS中でさらに2回洗浄された。最終洗浄後、当該組織は、精製のために不連続勾配にかけられた。消化された組織は、ポリスクロース(バージニア州メディアテック社(Mediatech))中、ポリスクロース溶液10 mL当り組織ペレット約1〜約2 mLの割合、1.108 g/mLの密度で、浮遊された。次に、当該組織浮遊液は、丸底ポリカーボネート遠心分離管に移され、密度がそれぞれ1.096および1.037のポリスクロース溶液が、当該遠心分離遠沈管中の組織浮遊液上に慎重に重層された。DMEMの最終層が不連続精製勾配を完了した。当該勾配管は、4℃、2000 rpmで、ブレーキをかけずに20分間遠心分離された。遠心分離後、当該組織は、個々に、各界面分画(3つの界面)から収集され、上記のように、DPBS+で数回洗浄され、50 mL試験管に集められた。
【0044】
細胞クラスター追加解離−任意に、上記プロトコルを使って得られた大型細胞クラスターを小さめのクラスターまたは単細胞浮遊液に追加解離させることができる。最終洗浄後、各分画からの組織は、2000 U/mL DNase Iを含有する1 x トリプシン/EDTA溶液10 mLに浮遊された。試験管は、水浴中に置かれ、ほぼ単細胞の浮遊液が得られるまで5〜6分間、繰り返し、10 mL血清ピペットで吸引、排出された。4℃のDPBS+の添加によって、消化が停止され、当該試験管は、800 rpmで5分間遠心分離された。細胞浮遊液は、DPBS+で洗浄され、下記のとおりに培養された。
【0045】
膵臓細胞培養−最終洗浄後、各界面からの細胞は、DMEM、2%FBS、100 U/μgペニシリン/ストレプトマイシン、ITS、2 mM L-グルタミン、0.0165 mM ZnSO4(シグマ(Sigma))および0.38μM 2-メルカプトエタノール(カリフォルニア州インビトロジェン社(Invitrogen))(以後、「選択培地」とする)中に再浮遊された。小分け当該細胞浮遊液6 mLずつが、T-25組織培養フラスコ中に接種され、あるいは、別法として、当該細胞浮遊液12 mLが、T-75フラスコ中に接種された。当該フラスコは、5%CO2を含む37℃インキュベーター中に置かれた。2〜4週間の培養後、培地の完全交換が実施され、5%FBS(ユタ州ハイクローンHyClone, UT)、1%P/S、0.0165 mM ZnSO4を含有するDMEM(2750 mg/L D-グルコース、862 mg/Lグルタミン)(カリフォルニア州ギブコ社(Gibco))(以後、「増殖培地」とする)中の培養物に付着細胞が戻され、ほぼ集密状態に達せられ(この段階は、「継代0」または「P0」と呼ばれる)、この時点で、当該細胞は、継代された。当該細胞のその後の培養は、当該増殖培地中で細胞5000個/cm2で行われた。培養物は、ほぼ70〜90%集密を達成した後、7〜10日置きに継代された。図1は、膵臓由来細胞の典型的支質形態を示す。
【0046】
〔実施例2〕
膵臓細胞のクラスター化
実施例1に従って単離された膵臓細胞は、低付着6‐穴平板(コーニング・ライフ・サイエンス(Corning Life Science))の浮遊液中で培養された。使用された培地は、0、2または10%FBS補充DMEM-低グルコースを含んだ。各穴は、細胞0.25 x 106、0.5 x 106または1.0 x 106個を含有した。細胞は、2日間浮遊液中で培養された。クラスターサイズ、生存可能性、均一性および数に基づいてクラスター化効率が評価された。
【0047】
顕微鏡下での視覚的分析は、明らかに、細胞密度と血清濃度が、クラスターの形状形成に主要な役割を果たすことを示した。血清は、細胞の相互付着能を増強し、クラスターが凝集およびサイズ拡大する能力も増強する。接種密度細胞0.5 x 106個の場合、培地FBSレベルの2%(図3)から10%(図4)までの増加は、クラスターサイズの大幅な増加を招き、順に、暗色のクラスター中心部で示されるように、生じたクラスターの中心部の壊死を招いた。
【0048】
視覚的分析は、血清濃度が2%で一定に保たれ、接種細胞数が0.5 x 106個(図5)と1.0 x 106個(図6)の間で変動する場合、クラスター総数は、有意に変動しないことも示した。前記2つの図の比較によって明らかのように、接種細胞数が低めの方が、最適なクラスターサイズおよび細胞生存可能性保持に有利であった。
【0049】
〔実施例3〕
生存可能性試験
実施例1に従って、2%FBS補充のDMEM-LG含有培地中で穴1個当り細胞0.5 x 106個によってクラスターが形成された。3日目、穴からクラスターを取り出し、50 mL試験管(ファルコン社(Falcon))中にピペット注入された。次に、当該穴がPBSで洗浄され、試験管内容物でプールされ、全クラスターが確実に収集された。その後、クラスターは、200 rpmで2分間遠心分離され、上清が除去され、5 mLのトリプル(TRYPLE)(登録商標)エクスプレス(カリフォルニア州インビトロジェン社(Invitrogen))に替えられた後、10分間インキュベートされた。数回のピペット操作は、当該クラスターの分離を進めるのに役立った。次に、細胞浮遊液が顕微鏡下で評価され、単細胞浮遊液の調製が確認された。グァバ(Guava)PCA-96細胞分析装置およびビアカウント(VIACOUNT)(登録商標)試薬(カリフォルニア州グァバ社(Guava))を使って細胞の生存可能性が評価された。得られた細胞数は、3回の個別試技の平均値であった。総細胞生存率が測定されると、76%であり、クラスターを構成する過半数の細胞が生存可能な細胞であることを実証した。
【0050】
〔実施例4〕
代替クラスター化技術
低付着ヒドロゲルコーティングを除去するために、滅菌メスを使って、10 cm低付着平板の表面に縁が作られた。このプロセスにより、下部のポリスチレン表面が露出された。次に、PBS中10μg/mLコラーゲンIV型(BDバイオサイエンス社(BD Bioscience))の5 mL溶液がピペットで平板に注入され、1時間インキュベートされた。コラーゲンは、低付着ヒドロゲルが除去されている縁(edge)だけに沿って結合した。その後、当該コラーゲン溶液は、吸引、除去され、2%FBS補充DMEM-LG中細胞1.0 x 106個の単細胞浮遊液が、ピペットで当該平板に注入された。細胞は、5%CO2を含有する37℃の雰囲気中で一晩インキュベートされた。次に、非付着細胞が取り出され、新鮮培地が添加された。隔日で全部の培地の交換が実施された。10日目、露出した縁に付着クラスターが出現し、結局、非付着クラスターになった(図7)。
【0051】
〔実施例5〕
羊水由来細胞
本発明の細胞の単離に使用される羊水は、通常の胎児核型判定用に妊娠17〜22週目に実施された日常的な操作手順の羊水穿刺で得られた検体から入手された。当該羊水は、400-x gで7分間遠心分離され、上清が除去された。得られた細胞ペレットは、アムニオマックス(Amniomax)(登録商標)増殖培地(米国メリーランド州ギブコ社(Gibco))中に再浮遊された。当該細胞は、フィブロネクチン(10μg/ml) (米国カリフォルニア州BDバイオサイエンス社(BD Biosciences))で被覆された平板上で培養された。当該培養物は、低酸素条件(3%O2)下で、少なくとも5〜10日間そのまま放置され、その後、当該培養物は、同一増殖培地を供給され、ほぼ70〜80%の集密度を達成するまで培養された。この段階の細胞は、「P0」と称された。本発明の目的に使用される羊水由来(AF)細胞は、拡大継代(expansion passage)10であった。図2は、典型的羊水由来細胞形態を示す。
【0052】
〔実施例6〕
羊水由来細胞のクラスター化
この実験には、2種類のAF細胞系が使用された。当該細胞系は、上記実施例で指示されたとおりに定められた。クラスター化は、実施例2で上記された方法を使って誘発された。細胞は、2%FBS補充DMEM-LG中、低付着6−穴平板で培養された。クラスターは、48時間目に評価された。当該2種類の系の一方(A系)がクラスターを形成した。第2の細胞系(B系)は、培養時間が1週間まで延長されても、クラスター誘発法に応答しなかった。
【0053】
〔実施例7〕
クラスター形成誘発法としての共存培養(Co-culturing)
この実験は、2種類の細胞型を使って実施された:膵臓由来細胞と上記実施例で得られたとおりのAF細胞B系であった。クラスター化は、実施例2に概説された方法を使って誘発された。2%FBS補充DMEM-LG中、低付着6−穴平板で細胞が培養された。クラスターは、48時間目に評価された。各穴は、膵臓由来細胞単独かAFのB系細胞単独か、2種類の細胞型の1:1比混合物の細胞0.5 x 106個の出発密度で構成された。予想通り、単独培養された膵臓由来細胞は、48時間以内にクラスターを形成した。AFのB系細胞は、培養を1週間まで延長しても、クラスターをまったく形成しなかった。対照的に、当該2種類の細胞型の組み合わせは、48時間以内にクラスターを形成した。クラスターが両細胞型を含んだことを保証するために、各細胞型は、鮮やかな多色細胞標識キット(米国オレゴン州モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes))を使って、様々な蛍光マーカーでタグを付けられた。クラスター誘発後、当該クラスターは、蛍光顕微鏡下で分析された。図8は、両細胞型を含むクラスターを示す。
【0054】
〔実施例8〕
クラスター化誘発法としての極小細胞群(Micro-islands)
実施例2に概説された方法によって膵臓由来細胞が得られた。細胞は、10%FBS補充DMEM-LG培地中で培養、維持された。PBS中20μg/mLの濃度で、コラーゲンIV (ヴェンダー社(Vendor)??)溶液が調製された。この実験には、ヒドロゲルで被覆した(直径=10 cm)(ニューヨーク州コーニング(Corning))低付着平板が使用された。当該コラーゲンIV溶液の0.2μL小滴が、平板表面に沈着され、当該平板は、室温で1時間インキュベートされた。10%FBS補充DMEM-LG培地中膵臓由来細胞の10 mL細胞浮遊液がピペットで当該平板表面上にゆっくりと注入された。当該平板は、5%CO2雰囲気下、37℃で3時間インキュベートされた。翌日、培地の完全交換が実施され、浮遊液に残る全細胞が除去された。前記コラーゲンIV被覆表面に付着した細胞は、細胞群パターン(pattern of islands)を形成した(図9)。24時間目、細胞は広がり、細胞群の間に介在する空間を埋めた(図10)。48時間目、細胞は、集合し、クラスターとなり(図11)、結局、前記平板表面から剥離された。
【0055】
〔実施例9〕
単層およびクラスター中の膵臓由来細胞のPCR分析
実施例1に従って単離された膵臓由来細胞は、単層で培養されるか、実施例2に記述される方法に従ってクラスターを誘発された。
【0056】
単層で増殖された単細胞または細胞クラスターからRNAが抽出された。ヒト膵臓からの全RNA(アンビオン・インコーポレイティッド(Ambion, INC))が、陽性対照として使用された。
【0057】
RNA抽出、精製およびcDNA合成:RNAサンプルは、エタノール含有高塩緩衝液の存在下で、シリカゲル膜(カリフォルニア州キアゲン社(Qiagen)のRneasyミニキット)へのRNAサンプルの結合によって精製された。その間、汚染物質は、洗い流された。RNAは、DNase I(カリフォルニア州キアゲン社(Qiagen))による15分間の処理によってカラムに結合されながら、さらに精製された。その後、高品質RNAが、水中に溶出された。分光光度計上A260およびA280の示度によって収率および純度が評価された。ABI(カリフォルニア州ABI社)高性能cDNAアーカイブキットを使って、精製RNAからcDNAコピーが作製された。
【0058】
リアルタイムPCR増幅および定量分析:他に明記されない限り、全試薬は、アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems)から購入された。リアルタイムPCR反応は、ABIプリズム(ABI PRISM)(登録商標)7000 配列検出システム(Sequence Detection System)を使って実施された。総反応量20μLとして、逆転写RNA 20ngとともに、TAQMAN(登録商標)UNIVERSAL PCR MASTER MIX(登録商標)(カリフォルニア州ABI社)が使用された。ピペット操作誤差を修正するために、各cDNAサンプルは、2回繰り返しで実験された。プライマーおよびFAM-標識TAQMAN(登録商標)プローブは、200 nMの濃度で使用された。各標的遺伝子の発現レベルは、開発済みのアプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems)の18SリボソームRNAまたはヒトグリセルアルデヒド-3-フォスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)内在対照キットを使って標準化された。プライマーおよびプローブは、ABIプリズム・プライマー・エクスプレス(ABI PRISM PRIMER EXPRESS)(登録商標)ソフトウェアを使ってデザインされるか、すでに開発済みのABI遺伝子分析キットが使用された。遺伝子毎に、プライマーまたはプローブのいずれか1つがデザインされ、エキソン境界スパニング(exon-boundary spanning)とされた。これは、存在するゲノムDNAにプライマー/プローブが結合する可能性を排除した。プライマーおよびプローブセットは、以下のPax6 (Hs00240871)、インスリン(Hs00355773)、グルカゴン(Hs00174967)、Isl-1 (Hs00158126)、ソマトスタチン(Hs00174949)としてリストされており、残りのプライマーは、プライマーズ(PRIMERS)プログラム(カリフォルニア州ABI社)を使用することによってデザインされた。初期50℃で2分間および95℃で10分間後、サンプルは、2段階、即ち、95℃での15秒間の変性段階と、それに続く60℃での1分間のアニーリング/伸張段階を40回サイクルされた。データ分析は、GENEAMP(登録商標)7000配列検出システム(Sequence Detection System)ソフトウェアを使って実施された。プライマー/プローブ毎に、Ct値は、蛍光強度が指数的増幅領域の中間で特定値に達したサイクル数として決定された。比較Ct法を使って、相対遺伝子発現レベルが算出された。要するに、cDNAサンプル毎に、問題の遺伝子Ctから内在対照Ct値が差し引かれ、デルタCt値(ΔCt)が得られた。増幅を100%効率と仮定して、標的の標準化量は、2-ΔCtとして算出された。最終データは、較正品サンプルに対して表された。比較Ct法は、標的および内在対照増幅効率がほぼ等しい場合に妥当であるに過ぎない。そのため、プライマー/プローブセット毎に、連続希釈cDNAサンプルを増幅し、ΔCt値を決定することによって、予備確認実験が実施された。これらのΔCt値は、増幅効率が等しい場合には、希釈範囲全体で一定を保つ必要がある。図12は、単層細胞対クラスター細胞についての遺伝子発現レベル間の比較を示す。
【0059】
以上、実施例および好ましい実施態様を参照することによって本発明の各種態様が説明されたが、本発明の範囲は、上記説明によって規定されず、特許法の原則下で適切に解釈される以下の請求の範囲によって規定されることを理解されたい。
【0060】
〔実施の態様〕
(1) 細胞クラスターを形成する方法において、
a.クラスター化される細胞群を選択する段階と、
b.液体培地中に細胞浮遊液を形成する段階と、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に細胞を含有する前記培地をインキュベーションする段階と、
d.前記表面への細胞付着を制限する段階と、
を含む、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記方法が、生体外で実施される、
方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記表面が、表面積を有し、
前記表面への細胞付着を制限する前記段階が、細胞付着に利用できる前記表面積を制限する段階を含む、
方法。
(4) 実施態様1に記載の方法において、
培養条件の操作が、さらなるクラスター凝集を防止するための因子の添加を含む、
方法。
(5) 実施態様4に記載の方法において、
前記表面積を制限する前記段階が、細胞付着を抑制する材料で前記表面をコーティングする段階を含む、
方法。
(6) 実施態様5に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料が、細胞付着を防止する、
方法。
(7) 実施態様6に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料の一部が除去される、
方法。
(8) 実施態様1に記載の方法において、
前記表面への細胞付着を制限する前記段階が、細胞自体への前記細胞の結合親和性よりも低い数値まで前記細胞への前記表面の結合親和性を低下させる段階を含む、
方法。
(9) 実施態様1に記載の方法において、
前記クラスターが、初めに前記表面上に生じ、その後、浮遊液中で停止する、
方法。
(10) 実施態様1に記載の方法において、
前記クラスターが、前記表面上に生じる、
方法。
(11) 実施態様1に記載の方法において、
クラスター化される前記細胞群が、2種類以上の細胞型を含む、
方法。
(12) 実施態様1に記載の方法において、
前記表面の領域に細胞外マトリックスタンパクを沈着させる段階、
をさらに含む、方法。
(13) 細胞クラスターを形成する方法において、
a.クラスター化される細胞群を選択する段階と、
b.液体培地中で前記細胞の小群の浮遊液を形成する段階と、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に前記細胞小群を含有する前記培地を導入する段階と、
d.前記細胞小群を前記表面に付着させる段階と、
e.前記表面に付着しなかった前記細胞小群の前記細胞を除去する段階と、
f.前記細胞の残りの細胞を導入する段階と、
g.前記表面に付着している前記細胞に前記残りの細胞を付着させる段階と、
を含む、方法。
(14) 実施態様13に記載の方法において、
前記表面が、表面積を有し、
前記細胞小群を前記表面に付着させる前記段階が、細胞付着に利用できる前記表面積を制限する段階を含む、
方法。
(15) 実施態様14に記載の方法において、
前記表面積を制限する前記段階が、細胞付着を抑制する材料で前記表面をコーティングする段階を含む、
方法。
(16) 実施態様14に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料が、細胞付着を防止する、
方法。
(17) 実施態様15に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料の一部が除去される、
方法。
(18) 実施態様13に記載の方法において、
細胞付着が、細胞自体への前記細胞の結合親和性よりも低い数値までの前記細胞への前記表面の結合親和性の低下によって制限される、
方法。
(19) 実施態様13に記載の方法において、
前記クラスターが、初めに前記表面上に生じ、次に、浮遊液中で停止する、
方法。
(20) 実施態様13に記載の方法において、
前記クラスターが、前記表面上に生じる、
方法。
(21) 実施態様13に記載の方法において、
クラスター化される前記細胞群が、2種類以上の細胞型を含む、
方法。
(22) 実施態様13に記載の方法において、
追加因子が培養物に添加され、さらなるクラスター凝集を防止する段階、
をさらに含む、方法。
(23) 実施態様13に記載の方法において、
前記表面の制限された領域上に細胞外マトリックスタンパクを沈着させる段階、
をさらに含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】単層培養物中に増殖される膵臓由来細胞の典型的形態を示す。
【図2】単層培養物中に増殖される羊水由来細胞の形態を示す。
【図3】2%血清レベルで浮遊培養において形成される膵臓由来細胞クラスターを示す。
【図4】10%血清レベルで浮遊培養において形成される膵臓由来細胞クラスターを示す。
【図5】2%血清レベルで0.5E6細胞を含む浮遊培養において形成される膵臓由来細胞クラスターを示す。
【図6】2%血清レベルで1.0E6細胞を含む浮遊培養において形成される膵臓由来細胞クラスターを示す。
【図7】低付着ヒドロゲルコートプレート上に滅菌メスで作り出された縁(edge)から外側に増殖する細胞クラスターを示す。
【図8】膵臓由来細胞(赤)および羊水由来細胞(緑)を含むコクラスター(co-cluster)であって、1:1の比率で両細胞型を含む浮遊培養において形成されたコクラスターを示す。
【図9】インキュベーション後12時間目のコラーゲンIVで被覆された細胞群に付着した細胞を示す。
【図10】インキュベーション後24時間目のコラーゲンIVで被覆された細胞群に付着した細胞によるクラスター形成を示す。
【図11】コラーゲンIVで被覆された細胞群への初期細胞付着の48時間後に形成された浮遊クラスターを示す。
【図12】リアルタイムPCRデータを示し、単層で増殖された膵臓由来細胞(白色バー)およびクラスター中で増殖された膵臓由来細胞(黒色バー)の選択遺伝子の発現レベルを表す。示されたデータは、成人膵臓中に認められた発現レベルに対して標準化されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞クラスターを形成する方法において、
a.クラスター化される細胞群を選択する段階と、
b.液体培地中に細胞浮遊液を形成する段階と、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に前記細胞を含有する前記培地をインキュベーションする段階と、
d.前記表面への細胞付着を制限する段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記方法が、生体外で実施される、
方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記表面が、表面積を有し、
前記表面への細胞付着を制限する前記段階が、細胞付着に利用できる前記表面積を制限する段階を含む、
方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
培養条件の操作が、さらなるクラスター凝集を防止するための因子の添加を含む、
方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記表面積を制限する前記段階が、細胞付着を抑制する材料で前記表面をコーティングする段階を含む、
方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料が、細胞付着を防止する、
方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料の一部が除去される、
方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記表面への細胞付着を制限する前記段階が、細胞自体への前記細胞の結合親和性よりも低い数値まで前記細胞への前記表面の結合親和性を低下させる段階を含む、
方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記クラスターが、初めに前記表面上に生じ、その後、浮遊液中で停止する、
方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記クラスターが、前記表面上に生じる、
方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
クラスター化される前記細胞群が、2種類以上の細胞型を含む、
方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
前記表面の領域に細胞外マトリックスタンパクを沈着させる段階、
をさらに含む、方法。
【請求項13】
細胞クラスターを形成する方法において、
a.クラスター化される細胞群を選択する段階と、
b.液体培地中で前記細胞の小群の浮遊液を形成する段階と、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に前記細胞小群を含有する前記培地を導入する段階と、
d.前記細胞小群を前記表面に付着させる段階と、
e.前記表面に付着しなかった前記細胞小群の前記細胞を除去する段階と、
f.前記細胞の残りの細胞を導入する段階と、
g.前記表面に付着している前記細胞に前記残りの細胞を付着させる段階と、
を含む、方法。
【請求項1】
細胞クラスターを形成する方法において、
a.クラスター化される細胞群を選択する段階と、
b.液体培地中に細胞浮遊液を形成する段階と、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に前記細胞を含有する前記培地をインキュベーションする段階と、
d.前記表面への細胞付着を制限する段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記方法が、生体外で実施される、
方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記表面が、表面積を有し、
前記表面への細胞付着を制限する前記段階が、細胞付着に利用できる前記表面積を制限する段階を含む、
方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
培養条件の操作が、さらなるクラスター凝集を防止するための因子の添加を含む、
方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記表面積を制限する前記段階が、細胞付着を抑制する材料で前記表面をコーティングする段階を含む、
方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料が、細胞付着を防止する、
方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料の一部が除去される、
方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記表面への細胞付着を制限する前記段階が、細胞自体への前記細胞の結合親和性よりも低い数値まで前記細胞への前記表面の結合親和性を低下させる段階を含む、
方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記クラスターが、初めに前記表面上に生じ、その後、浮遊液中で停止する、
方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記クラスターが、前記表面上に生じる、
方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
クラスター化される前記細胞群が、2種類以上の細胞型を含む、
方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
前記表面の領域に細胞外マトリックスタンパクを沈着させる段階、
をさらに含む、方法。
【請求項13】
細胞クラスターを形成する方法において、
a.クラスター化される細胞群を選択する段階と、
b.液体培地中で前記細胞の小群の浮遊液を形成する段階と、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に前記細胞小群を含有する前記培地を導入する段階と、
d.前記細胞小群を前記表面に付着させる段階と、
e.前記表面に付着しなかった前記細胞小群の前記細胞を除去する段階と、
f.前記細胞の残りの細胞を導入する段階と、
g.前記表面に付着している前記細胞に前記残りの細胞を付着させる段階と、
を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−135593(P2007−135593A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−311909(P2006−311909)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311909(P2006−311909)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】
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