説明

細胞ベースアッセイを用いた薬物の薬理学的プロファイリング

本発明は、化合物について薬理学的プロファイリングと共に安全性プロファイルを確立するための方法を提供するものであり、上記方法は、(A) 無傷細胞中における2個以上の巨大分子の量及び/又は翻訳後修飾に対する上記化合物の作用を試験する工程;(B) 上記試験の結果に基づいて薬理学的プロファイルを構築する工程;及び(C) 上記プロファイルを安全性特性が確立している薬物のプロファイルと比較する工程、を含む。さらに、本発明はまたアッセイパネルを含む構成物に関するものであり、上記パネルは蛋白の量及び/又は翻訳後修飾に対する少なくとも1つのハイコンテントアッセイ及び、蛋白−蛋白相互作用の量及び/又は細胞内位置に対する少なくとも1つのハイコンテントアッセイを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年8月18日出願の米国仮出願No.60/602,317、発明の名称「細胞ベースアッセイを用いた薬物の薬理学的プロファイリング」の35 U.S.C. セクション119による優先権を主張するものであり、その開示の全てを参照により本明細書に含める。
【背景技術】
【0002】
医薬品産業の中心的な課題はヒトにおいて安全かつ有効な薬物を開発することである。治療上の標的に結合する絶妙に選択的な化合物でさえも、生きた細胞中では全く予期しない作用、あるいは「オフ経路(off-pathway)」の作用を有することがあり、そのような作用は前臨床的に及び臨床的に高価な失敗をもたらしかねない。本発明の目的上、ある化合物が標的として意図したもの以外の細胞標的又は経路における、その化合物の何らかの活性を「オフ経路」の活性と定義する。
【0003】
臨床試験で薬物の75%が脱落することで証明されるように、医薬品産業で利用可能な研究ツールの数にもかかわらず、新しい薬物の開発は費用がかかり予測不能のプロセスである。我々の中心的な前提は、薬物候補の生物活性の全領域について理解することが、臨床試験に先立って薬物の副作用の可能性を突き止める手助けになるであろうというものである。付随する前提としては、新薬の開発における失敗の全てではないとしても多くは新薬のオフ経路作用が原因であるというものである。
【0004】
近年、リード化合物の選択性及びオフ経路の活性を評価する方法を確立するために多数の試みがなされてきた。このような方法には以下のやり方のうち1つ以上が含まれることが多い:(a) 問題の試験化合物が精製された蛋白にインビトロで結合又は阻害する能力を測定すること;(b) 試験化合物で細胞(又は生物体全体)を処理し;細胞抽出液又はライセートを調製し;その後、試験化合物に反応した抽出液又はライセート中の様々な遺伝子転写物の量の変化を測定すること;(c) 試験化合物で細胞(又は生物体全体)を処理し;細胞抽出液又はライセートを調製し;その後、試験化合物に反応した細胞抽出液又はライセート中の蛋白の活性、量又はリン酸化状態の変化を測定する;或いは、(d) 細胞又は組織の抽出液又はライセートを調製し、次にその抽出液又はライセートをビーズ等の固体表面に結合させた試験化合物に接触させ;試験化合物に結合する蛋白を同定すること。これらの各アプローチについて、より詳細に以下に述べる。
【0005】
最初の例では、精製した酵素又は受容体に対して試験化合物をインビトロで個別に試験して、意図した標的以外の蛋白に結合及び/又は阻害する能力を測定することができる。薬物又は受容体の活性の測定方法は広く普及しており当業者に周知である。それらには酵素結合免疫吸着アッセイ;放射性リガンド結合アッセイ;酵素反応生成物の測定用の放射性、化学発光性及び発光性アッセイ;並びに蛋白標的の特性によって異なる他の生化学的技術が含まれる。例えば、キナーゼは薬物標的として広く普及しており、キナーゼ阻害剤の選択性を評価する方法が開発されている。キナーゼ類は、細胞内でのシグナル伝達カスケードの調節を含む多くの重要なプロセスを制御しており、医薬上の標的として熱心に追求されてきた。ヒトゲノムによってコード化されるキナーゼには500以上の別個のものがあり、そのためこれは創薬の標的として特に成果の多い種類となっている。Gleevec(登録商標)のような薬物は癌の治療用として市場に出るに至っており、20以上の他のキナーゼ阻害剤が癌から慢性関節リウマチに及ぶ疾患で臨床試験中である。そのような化合物のほとんどはキナーゼ標的のATP結合部位に結合する。キナーゼのATP結合部位は相同性が高いため、意図する標的に対して特異性の高い薬物分子を開発することは困難であった。その結果、様々な会社がリード化合物の選択性を評価することを目指したキナーゼ阻害剤プロファイリング用の製品とサービスを確立してきた。広く用いられているプロファイリング方法としては、何十もの別個の精製キナーゼに対してリード化合物をインビトロで試験し、どのキナーゼがその化合物によって阻害されるかを判定する方法が挙げられる。そのような方法は、「キノム(kinome)」マッピングの完成やヒト・キナーゼをコード化する完全長遺伝子が利用できることにより、迅速で、安価で、かつ総合的なものとなる。このようなプロファイリングサービス及び関連製品の提供元としてはアクティブX・バイオサイエンス社、キネクサス社及びパンラブス社が挙げられる。キナーゼプロファイリング製品の提供元としては、ベクトン・ディキンソン社(パワーブロット)、ルミネックス社(xMAPテクノロジー)、セル・シグナリング・テクノロジー社、アップステート・バイオテクノロジー社、カルビオケム社、及び他の多くの試薬と計測機器の販売元が挙げられる。
【0006】
このようなインビトロでの手法は薬理学的プロファイリングについて言えば重大な欠点を持つ。最も重大な制約は、選択性の高いキナーゼ阻害剤でさえも、キナーゼではないおびただしい数の他の蛋白に結合、活性化、又は阻害することがありうるということである。そのようなオフ標的又はオフ経路の活性は予測不能であり、どのようなキナーゼ特異的アッセイでも評価することができない。より的を得た言い方をすると、生物環境を表わす何万もの蛋白の各々について個々にアッセイすることは単に実現不可能であるために、精製蛋白に基づく真に総括的な手法を確立することは不可能である。
【0007】
この点に関して、細胞又は組織のライセート中で蛋白への薬物の結合を検出することができる方法は、インビトロのアッセイよりも優れている。ハイスループット法は、ビーズ又は他の固体表面への試験化合物の結合、組織又は細胞の抽出液又はライセートの調製、及び質量分光法、免疫沈降又はフローサイトメトリーによるビーズに結合した蛋白の分析を含むものとして開発されている。この手法の第二の形態では、細胞又は動物個体に試験化合物を投与し、細胞又は組織のライセートを調製し、ライセート中の蛋白の翻訳後の修飾状態を評価する。後者の方法は、個々の蛋白のリン酸化された形態にのみ結合する修飾特異性抗体の急速に膨張しつつあるコレクションによって可能となる。細胞ライセート中の蛋白は典型的には2次元ゲル電気泳動によって分離した後にウェスタンブロッティング法を使用して調べるか、又はビーズ上若しくは抗体アレイ上のリン酸特異抗体の多重配列によって分析する(例えば、Nielsen et al., 2003, PNAS 100: 9330-9335)。
【0008】
細胞ライセートに依存する方法はしばしば、生理的なレベルよりもはるかに多い量の化合物を必要とする。より重大なことに、細胞又は組織を粉砕する際に、蛋白をその天然の細胞内環境から取り出す結果として人為的現象が起こりうる。生細胞を構築している複雑な生化学経路内での薬物の作用様式を評価するためには、薬物活性について細胞全体にわたって広く目を向ける必要がある。
【0009】
最も薬理学的なプロファイリングは蛋白活性に基づくものではなく、DNAマイクロアレイ(遺伝子チップ)を用いて行なわれる。マイクロアレイは毒性ゲノム科学(toxicogenomics)の領域を生み出した。細胞又は動物体に問題の薬物又は化合物を投与する。一定の時間又は日数の後、メッセンジャーRNAを細胞又は組織から単離する。薬物の非存在下及び存在下での何千もの個々のmRNAの発現パターンを比較する。化合物が1つ以上の経路の最終的な転写活性に影響を及ぼす状況下で、転写のプロファイリングにより化合物間の違いを明らかにすることができる。残念なことに、個々のmRNA分子のレベルの変化は、単一の時点で対応する蛋白のレベル又は活性に必ずしも直接相関関係にあるわけではない。更に、多くの蛋白は多数の翻訳後修飾及び生物分子相互作用を受け、それが組織又は細胞内の蛋白の機能及び活性に影響を及ぼすこともありうる。従って、存在するmRNA種の全て、及びそれらが特定の時点において存在するレベルを単に同定するだけでは、特定の薬物の全体像をとらえることはできないであろう。最終的に、転写リポーターアッセイは化学的薬剤に対する経路の反応についての情報を提供する能力はあるが、そのようなアッセイは化合物の作用点ではなく、経路の活性化又は抑制の結果を単に測定するだけである。標的を設定した非常に選択的な薬物でさえも何十もの遺伝子の転写に影響を及ぼすことがあり、そのことが遺伝子チップ実験の結果の解釈を困難な作業にしている。
【0010】
理想的には、生細胞に薬物を投与し、経路内の特定のポイントで数分又は数時間以内に薬物の作用を測定できるとよい。転写リポーターアッセイとは異なり、経路内で個々の蛋白をモニターすることにより得られた情報は、細胞シグナル伝達経路の終点ではなく、特定の分岐点又は結節における薬物の作用を反映するにちがいない。細胞ライセートを用いて行なわれる薬物プロファイリングとは異なり、無傷細胞を使用することにより薬物の生理学的に妥当な濃度での研究が可能になるであろう。従って、我々は無傷細胞で全体的な薬理学的プロファイリングのための戦略及び方法を確立すべく努力した。理想的には、そのような方法は以下の特性を持つことになる:(a) 上記方法は無傷細胞又は組織に適用でき、細胞溶解を必要としない;(b) 上記方法は任意の種類の薬物、標的、又は薬物作用メカニズムに適用することができる;(c) 上記方法は、問題の薬物の作用メカニズムの詳細な情報を提供することができる;(d) 上記方法は既製の機械使用による大規模な自動分析法に適用可能である。特に我々は無傷のヒト細胞におけるシグナル伝達事象の直接測定が薬理学的プロファイリングに使用可能かどうかを判断するために努力した。
【0011】
本発明の背景は以下のとおりである。作用物質の受容体への結合が他のシグナル伝達分子が介在する細胞内事象のカスケードを誘導する。これらの事象が細胞内事象の統合されたカスケードを引き起こし、それらが生細胞の行動に影響を及ぼす。経路の作用物質、拮抗剤又は阻害剤の添加により、特定の蛋白又は他の巨大分子の翻訳後修飾がダイナミックに生じることが多い。そのようなシグナル伝達カスケードは、それぞれキナーゼ及びホスファターゼによるリン酸化及び脱リン酸化のような、蛋白の翻訳後修飾のサイクルをしばしば含む。これらの事象は別個のプロテイン・キナーゼによって行われ、それらはセリン、スレオニン又はチロシン残基において他の蛋白をリン酸化する。次に、プロテイン・ホスファターゼは他の蛋白の脱リン酸化の役割をになう。リン酸特異抗体は、蛋白のリン酸化及び脱リン酸化の結果生じるリン酸化状態の正味の変化の検出を可能にさせる。このような抗体は研究機関の標準試薬になっており、多くのインビトロの方法と共に使用される。それらの方法としてはウェスタンブロッティング、免疫沈降、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)及び多重ビーズアッセイが挙げられる。様々な企業がそのような抗体を販売しており、バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社、セル・シグナリング・テクノロジー社、カルビオケム社、及びベクトン・ディキンソン社が挙げられる。そのような抗体はフローサイトメトリー及び免疫蛍光検査法によって無傷細胞を分析するために使用することができる。
【0012】
リン酸特異抗体は個々のシグナル伝達蛋白及び経路の多様な研究検査に適用されてきた。これらの研究の大部分は細胞又は組織のライセートを必要とする。無傷細胞における薬理学的プロファイリングについて、先行技術は全く沈黙している。本発明の目的上、我々は無傷細胞における蛋白の定量化及び/又は位置測定を可能にする方法に注目している。特に、創薬の目的上、我々はヒトの細胞における薬理学的プロファイリングに注目している。本発明の好ましい態様では、ハイコンテント画像処理システム及び/又は自動顕微鏡検査法と組み合わせてヒトの細胞における免疫蛍光アッセイを使用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
薬物、薬物候補及び薬物リードのゲノム全体に渡る規模での薬理学的プロファイリングのための方法を提供することが本発明の課題である。
さらに、化合物の活性、特異性、能力、時間経過及び作用機序を大規模に評価する方法を提供することも本発明の課題である。
【0014】
また、生細胞の状況における化合物の選択性を測定できるようにすることも本発明の課題である。
問題の細胞の生物学的状況における化合物のオフ経路作用、副作用又は毒性作用の可能性の検出を可能にすることも本発明の別の課題である。
【0015】
望ましい薬理学的プロファイルが得られるまで、反復方式でリード化合物のコレクション又はシリーズの薬理学的プロファイリングを行なうことにより、リード最適化を可能にすることが本発明の別の課題である。
さらに、望ましくない特性又は毒性を有する薬物候補のふるい落としを可能にすることも本発明の課題である。
【0016】
さらに、新規の薬物候補のための前臨床の安全性プロファイルを確立することも本発明の課題である。
さらに、臨床試験に先立ってリード化合物の意図されたものでない作用を同定することにより、創薬プロセスの効率を改善することも本発明の課題である。
【0017】
さらに、臨床試験に先立って副作用、毒性作用、又は他のオフ経路作用を同定することにより、クラス中1位の薬物の安全性を改善することも本発明の課題である。
医薬品添加剤、担体又は薬物送達剤のプラス又はマイナスの作用を同定することも本発明の別の課題である。
【0018】
さらに、予定された特性を有する「デザイナードラッグ」の開発に適した方法を提供することも本発明の課題である。
既知の薬物について新しい効能の同定を可能にすることが本発明の別の課題である。
【0019】
任意の生化学経路における任意のクラスの薬剤の活性を分析する方法を提供することが本発明の別の課題である。
さらに、薬物毒性の基礎となる生化学経路の同定を可能にすることも本発明の課題である。
【0020】
さらに、広範囲の疾患において薬物の有効性の基礎となる生化学経路の同定を可能にすることも本発明の課題である。
さらに、創薬と評価に有用な方法、アッセイ及び構成物を提供することも本発明の課題である。
薬理学的プロファイリングに適したアッセイのパネルを提供することが本発明の別の課題である。
【0021】
本発明は、問題の任意の経路、遺伝子、遺伝子ライブラリー、薬物標的クラス、レポーター蛋白、検出モード、合成又は天然生成物、化学物質、アッセイフォーマット、自動器機使用又は細胞のタイプに広く適用可能であるという利点を持つ。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、医薬上の発見のための上記の要件を満たすことを目指すものである。薬理学的に活性な薬剤の作用機序、選択性、及び副作用又はオフ経路作用を同定するために細胞ベースのアッセイを使用できることを本発明は開示する。本発明は細胞ベースのアッセイに基づく薬物分析及び薬理学的プロファイリングを実行するための一般的な戦略を提供するものである。本発明の好ましい態様は、無傷細胞におけるハイコンテント・アッセイを含む。本発明の新規の方法により以下のことが可能になる:(1)特定の細胞応答の分子構造の、そのような細胞構造を可能にしている個々の分子のレベルにおける、直接的な視覚化;(2)以前には不可能であった方法による細胞のシグナル伝達ネットワーク上の薬物作用の直接的定量分析;及び(3)リード化合物及びリード薬物のそれらの作用機序に無関係な、定量的かつ予測的な薬理学的プロファイルの作成。
【0023】
細胞応答は細胞内の区画中に存在する蛋白の複雑なネットワークによって媒介されている。細胞増殖、細胞死(アポトーシス)、化学走性、転移などはすべて、細胞行動を協力して調節している蛋白のレベルで制御されている。本発明により生化学ネットワークに対する化合物の作用の大規模な定量分析が可能になる。重要なのは、本発明が広い範囲の化学構造及び薬物標的を対象としており、キナーゼに限定されていた以前の方法を越える利点があるということである。本発明により、任意の既知又は新規の薬物クラス又は標的クラスについて、また全く未知の作用機序を有する化合物についても、任意の化合物の活性スペクトルを分析することができる。我々は巨大分子(蛋白)の翻訳後修飾に対する細胞ベースアッセイを用いて、任意のクラスの薬物又は標的のプロファイリングが行なえることを教示する。本発明により研究することができる薬物標的クラスとしてはG蛋白共役受容体、成長因子受容体、プロテアーゼ阻害剤、核ホルモン受容体、膜ホルモン受容体、キナーゼ、ホスファターゼ、ヒドロラーゼ、プロテアソーム阻害剤、及び他の既知の標的クラスが挙げられる。問題の化合物の標的又は作用機序が未知の場合、本方法により作用機序の同定が可能になるであろう。
【0024】
本発明の原理は細胞ネットワークの接続性に依存しており、薬物標的の下流に存在するものであるが物理的に連結している巨大分子の、翻訳後の修飾状態における測定可能な変化によって、経路中の特定のポイントでの薬物の作用を測定することができる。例えば、経路作用物質による標準的なシグナル伝達経路に対する刺激は、その経路に関与するキー蛋白のリン酸化を導くことが多い。そのため、経路作用物質の非存在下及び存在下における2個以上のリン酸蛋白の量及び/又は位置の定量化により、薬物作用の評価が可能になるであろう。このようにリン酸蛋白は経路活性の標識として役に立つ。例えば、標識の上流に作用する薬物は細胞の刺激に応答して標識のリン酸化を遮断又は阻害すると考えられる(図2参照)。従って、化合物の非存在下又は存在下におけるリン酸蛋白のリン酸化状態によって、試験化合物がその経路に作用するかどうかが明らかになり、それによって薬物選択性についての情報を得ることができる。この原理により、一つのアッセイで無傷細胞における数十の事象に関する報告が可能になる。このことは同時に、問題の薬物によって影響を受けるかもしれない全ての蛋白についてアッセイを構築する必要はないということを意味する。パネル中の多数のアッセイ(標識)を組み合わせることにより、活性の全スペクトルを同定することができ;活性のプロファイルを既知の薬物のそれと比較することができ;かつ、望ましくないプロファイルに基づいてリード化合物をふるい落とすことができる。
【0025】
本発明は無傷細胞において修飾された蛋白を定量及び/又は位置測定するための直接的な方法を必要とする。本発明は、問題の化合物をそれらの活性のプロファイルを得るために細胞アッセイパネルに対して試験することを必要とする。多種多様な抗体、プローブおよび染料を本発明と共に使用することができる。適当な抗体の例を表1に示す。これら及び他の抗体又は標的プローブを多種多様な生物学用色素又は染料と共に使用することができ、それらの例としては、細胞内区画(核、膜、細胞質ゾル、ミトコンドリア、ゴルジ体など)用染料;カルシウム感受性色素のようなイオン感受性色素;細胞周期内でのアポトーシス又は変化を測定する色素;DNA挿入色素;及び他の一般に使用される生化学用及び細胞生物学用試薬が挙げられる。例えば、細胞内区画の共同染色により薬物作用の詳細を評価することが可能になるであろう。このような生化学用試薬及びそれらの使用方法は当業者に周知である。
【0026】
リン酸特異抗体に加えて、他の修飾状態特異的抗体も、細胞中で翻訳後修飾を受ける任意の巨大分子に対して原則的に作成することができる。そのような新しい試薬も本発明と共に使用することができる。そのような翻訳後修飾としてはメチル化、アセチル化、ファルネシル化、グリコシル化、ミリスチル化、ユビキチン化、スモイル化及び他の修飾が含まれる。ここに述べるように、そのような変質は免疫蛍光検査法と組み合わせた抗体を使用して検知することもできる;しかしながら、方法は抗体の使用に限定されるものではない。本発明が試薬若しくは試薬クラス、又はそれらの使用に際してのプロトコールについて特定のものに限定されないことに注目することが重要である。標的又は経路活性の代替(非抗体)プローブも、それらが以下の条件を満たせば使用することができる;すなわち、(a) 細胞内の巨大分子における変化に示差的に結合し、薬物作用に関連した経路活性、細胞シグナル伝達、又は細胞状態の変化を反映する;(b) 非結合状態では細胞から洗い流すことができ、結合したプローブを非結合プローブのバックグラウンドを除いて検出することができる;及び (c) 直接又は間接的に、例えば蛍光法又は発光法により検出できる。多様な有機分子、ペプチド、リガンド、天然生成物、ヌクレオシド及び他のプローブを直接的に、例えば蛍光若しくは発光色素又は量子ドットを用いたラベルを付けることにより、或いは間接的に、例えばプローブがその標的に結合した時にそれを認識する抗体の助けを借りる免疫蛍光検査法により、検出することができる。そのようなプローブとしてはリガンド、天然又は非天然基質、競合的結合分子、ペプチド、ヌクレオシド、及び標的の翻訳後修飾状態に基づいて示差的に標的に結合する他の多様なプローブが挙げられる。いくつかの方法及びレポーターが種々の状況に対して、より良く適合することが当業者に認識されるであろう。特定の試薬、固定方法及び染色方法は、異なる細胞型及び異なる経路又は標的について最適度が高い場合も低い場合もありうる。
【0027】
[表1]
表1.本発明と共に使用しうる標的化試薬の例
Akt (pS472/pS473)、リン酸特異(PKBa)抗体
カベオリン (pY14)、リン酸特異抗体
Cdk1/Cdc2 (pY15)、リン酸特異抗体
eNOS (pS1177)、リン酸特異抗体
eNOS (pT495)、リン酸特異抗体
ERK1/2 (pT202/pY204)、リン酸特異抗体(p44/42 MAPK)
FAK (pY397)、リン酸特異抗体
IkBa (pS32/pS36)、リン酸特異抗体
インテグリン b3 (pY759)、リン酸特異抗体
JNK (pT183/pY185)、リン酸特異抗体
Lck (pY505)、リン酸特異抗体
p38 MAPK (pT180/pY182)、リン酸特異抗体
p120 カテニン (pY228)、リン酸特異抗体
p120 カテニン (pY280)、リン酸特異抗体
p120 カテニン (pY96)、リン酸特異抗体
パキシリン (pY118)、リン酸特異抗体
ホスホリパーゼ Cg (pY783)、リン酸特異抗体
PKARIIb (pS114)、リン酸特異抗体
14-3-3 バインディングモチーフ リン酸特異抗体
4E-BP1 リン酸特異抗体
AcCoA カルボキシラーゼ (アセチルCoA) リン酸特異抗体
アダシン リン酸特異抗体
AFX リン酸特異抗体
AIK (オーロラ2) リン酸特異抗体
Akt (PKB) リン酸特異抗体
Akt (PKB) 基質 リン酸特異抗体
ALK リン酸特異抗体
AMPK alpha リン酸特異抗体
AMPK beta1 リン酸特異抗体
APP リン酸特異抗体
Arg-X-Tyr / Phe-X-pSer モチーフ リン酸特異抗体
アレスチン1, beta リン酸特異抗体
ASK1 リン酸特異抗体
ATF-2 リン酸特異抗体
ATM / ATR 基質 リン酸特異抗体
オーロラ2 (AIK) リン酸特異抗体
Bad リン酸特異抗体
Bcl-2 リン酸特異抗体
Bcr リン酸特異抗体
Bim EL リン酸特異抗体
BLNK リン酸特異抗体
BMK1 (ERK5) リン酸特異抗体
BRCA1 リン酸特異抗体
Btk リン酸特異抗体
C/EBP alpha リン酸特異抗体
C/EBP beta リン酸特異抗体
c-Abl リン酸特異抗体
CAKb リン酸特異抗体
カルデスモン リン酸特異抗体
CaM キナーゼII リン酸特異抗体
Cas, p130 リン酸特異抗体
カテニン、beta リン酸特異抗体
カテニン、p120 リン酸特異抗体
カベオリン1 リン酸特異抗体
カベオリン2 リン酸特異抗体
カベオリン リン酸特異抗体
c-Cbl リン酸特異抗体
CD117 (c-Kit) リン酸特異抗体
CD19 リン酸特異抗体
cdc2 p34 リン酸特異抗体
cdc2 リン酸特異抗体
cdc25 C リン酸特異抗体
cdk1 リン酸特異抗体
cdk2 リン酸特異抗体
CDKs 基質 リン酸特異抗体
CENP-A リン酸特異抗体
c-erbB-2 リン酸特異抗体
Chk1 リン酸特異抗体
Chk2 リン酸特異抗体
c-Jun リン酸特異抗体
c-Kit (CD117) リン酸特異抗体
c-Met リン酸特異抗体
c-Myc リン酸特異抗体
コフィリン2 リン酸特異抗体
コフィリン リン酸特異抗体
コネキシン43 リン酸特異抗体
コルタクチン リン酸特異抗体
CPI-17 リン酸特異抗体
cPLA2 リン酸特異抗体
c-Raf (Raf1) リン酸特異抗体
CREB リン酸特異抗体
c-Ret リン酸特異抗体
CrkII リン酸特異抗体
CrkL リン酸特異抗体
サイクリンB1 リン酸特異抗体
DARPP-32 リン酸特異抗体
DNA-トポイソメラーゼII alpha リン酸特異抗体
Dok-2, p56 リン酸特異抗体
eEF2 リン酸特異抗体
eEF2k リン酸特異抗体
EGF レセプター(EGFR) リン酸特異抗体
eIF2 alpha リン酸特異抗体
eIF2B epsilon リン酸特異抗体
eIF4 epsilon リン酸特異抗体
eIF4 gamma リン酸特異抗体
Elk-1 リン酸特異抗体
eNOS リン酸特異抗体
EphA3 リン酸特異抗体
エフリンB リン酸特異抗体
erbB-2 リン酸特異抗体
ERK1 / ERK2 リン酸特異抗体
ERK5 (BMK1) リン酸特異抗体
エストロゲンレセプターalpha (ER-a) リン酸特異抗体
Etk リン酸特異抗体
エズリン リン酸特異抗体
FADD リン酸特異抗体
FAK リン酸特異抗体
FAK2 リン酸特異抗体
Fc gamma RIIb リン酸特異抗体
FGFレセプター (FGFR) リン酸特異抗体
FKHR リン酸特異抗体
FKHRL1 リン酸特異抗体
FLT3 リン酸特異抗体
FRS2-alpha リン酸特異抗体
Gab1 リン酸特異抗体
Gab2 リン酸特異抗体
GABA B レセプター リン酸特異抗体
GAP-43 リン酸特異抗体
GATA4 リン酸特異抗体
GFAP リン酸特異抗体
グルココルチコイドレセプター リン酸特異抗体
GluR1 (グルタメートレセプター1) リン酸特異抗体
GluR2 (グルタメートレセプター2) リン酸特異抗体
グリコーゲンシンターゼ リン酸特異抗体
GRB10 リン酸特異抗体
GRK2 リン酸特異抗体
GSK-3 alpha / beta リン酸特異抗体
GSK-3 alpha リン酸特異抗体
GSK-3 beta (グリコーゲンシンターゼキナーゼ) リン酸特異抗体
GSK-3 beta リン酸特異抗体
GSK-3 リン酸特異抗体
H2A.X リン酸特異抗体
Hck リン酸特異抗体
HER-2 (ErbB2) リン酸特異抗体
ヒストンH1 リン酸特異抗体
ヒストンH2A.X リン酸特異抗体
ヒストンH2B リン酸特異抗体
ヒストンH3 リン酸特異抗体
HMGN1 (HMG-14) リン酸特異抗体
Hsp27 (ヒートショックオウロテイン27) リン酸特異抗体
IkBa (I kappa B-alpha) リン酸特異抗体
インテグリンalpha-4 リン酸特異抗体
インテグリンbeta-1 リン酸特異抗体
インテグリンbeta-3 リン酸特異抗体
IR (インシュリンレセプター) リン酸特異抗体
IR / IGF1R (インシュリン/インシュリン様成長因子-1レセプター) リン酸特異抗体
IRS-1 リン酸特異抗体
IRS-2 リン酸特異抗体
Jak1 リン酸特異抗体
Jak2 リン酸特異抗体
JNK (SAPK) リン酸特異抗体
Jun リン酸特異抗体
KDR リン酸特異抗体
ケラチン18 リン酸特異抗体
ケラチン8 リン酸特異抗体
キナーゼ基質 リン酸特異抗体
Kip1, p27 リン酸特異抗体
LAT リン酸特異抗体
Lck リン酸特異抗体
レプチンレセプター リン酸特異抗体
LKB1 リン酸特異抗体
Lyn リン酸特異抗体
MAPキナーゼ/CDK基質 リン酸特異抗体
MAPキナーゼ, p38 リン酸特異抗体
MAPキナーゼ, p44 / 42 リン酸特異抗体
MAPKAPキナーゼ1a (Rsk1) リン酸特異抗体
MAPKAPキナーゼ2 リン酸特異抗体
MARCKS リン酸特異抗体
ミューテーションプロモーティングファクター(MPF) リン酸特異抗体
M-CSFレセプター リン酸特異抗体
MDM2 リン酸特異抗体
MEK1 / MEK2 リン酸特異抗体
MEK1 リン酸特異抗体
MEK2 リン酸特異抗体
MEK4 リン酸特異抗体
MEK7 リン酸特異抗体
Met リン酸特異抗体
MKK3 / MKK6 リン酸特異抗体
MKK4 (SEK1) リン酸特異抗体
MKK7 リン酸特異抗体
MLC リン酸特異抗体
MLK3 リン酸特異抗体
Mnk1 リン酸特異抗体
MPM2 リン酸特異抗体
MSK1 リン酸特異抗体
mTOR リン酸特異抗体
ミエリンベーシックプロテイン(MBP) リン酸特異抗体
ミオシンライトチェーン2 リン酸特異抗体
MYPT1 リン酸特異抗体
neu (Her2) リン酸特異抗体
ニューロフィラメント リン酸特異抗体
NFAT1 リン酸特異抗体
NF-kappa B p65 リン酸特異抗体
ニブリン (p95 / NBS1) リン酸特異抗体
ナイトリックオキサイドシンターゼ、エンドテリアル (eNOS) リン酸特異抗体
ナイトリックオキサイドシンターゼ、ニューロナル(nNOS) リン酸特異抗体
NMDA レセプター1 (NMDAR1) リン酸特異抗体
NMDA レセプター2B (NMDA NR2B) リン酸特異抗体
nNOS リン酸特異抗体
NPM リン酸特異抗体
オピオイドレセプター、delta リン酸特異抗体
オピオイドレセプター、mu リン酸特異抗体
p53 リン酸特異抗体
PAK1 / 2 / 3 リン酸特異抗体
PAK2 リン酸特異抗体
パキシリン リン酸特異抗体
パキシリン リン酸特異抗体
PDGF レセプターalpha / beta リン酸特異抗体
PDGF レセプターalpha リン酸特異抗体
PDGF レセプターbeta リン酸特異抗体
PDGFRb (血小板由来成長因子レセプターbeta) リン酸特異抗体
PDK1 ドッキングモチーフ リン酸特異抗体
PDK1 リン酸特異抗体
PDK1基質 リン酸特異抗体
PERK リン酸特異抗体
PFK-2 リン酸特異抗体
Phe リン酸特異抗体
ホスホランバン リン酸特異抗体
ホスホリパーゼC gamma-1 リン酸特異抗体
ホスホチロシンIgG リン酸特異抗体
phox, p40 リン酸特異抗体
PI3Kバインディングモチーフ, p85 リン酸特異抗体
Pin1 リン酸特異抗体
PKA基質 リン酸特異抗体
PKB (Akt) リン酸特異抗体
PKB (Akt)基質 リン酸特異抗体
PKC alpha / beta II リン酸特異抗体
PKC alpha リン酸特異抗体
PKC delta / theta リン酸特異抗体
PKC delta リン酸特異抗体
PKC epsilon リン酸特異抗体
PKC eta リン酸特異抗体
PKC gamma リン酸特異抗体
PKC リン酸特異抗体
PKC基質 リン酸特異抗体
PKC theta リン酸特異抗体
PKC zeta / lambda リン酸特異抗体
PKD (PKC mu) リン酸特異抗体
PKD2 リン酸特異抗体
PKR リン酸特異抗体
PLC beta 3 リン酸特異抗体
PLC gamma 1 リン酸特異抗体
PLC gamma 2 リン酸特異抗体
PLD1 リン酸特異抗体
PP1 alpha リン酸特異抗体
PP2A リン酸特異抗体
PPAR Alpha リン酸特異抗体
PRAS40 リン酸特異抗体
プレセニリン-2 リン酸特異抗体
PRK2 (pan-PDK1リン酸化サイト) リン酸特異抗体
プロゲステロンレセプター リン酸特異抗体
プロテインキナーゼA, RII (PKARII) リン酸特異抗体
プロテインキナーゼB リン酸特異抗体
プロテインキナーゼB基質 リン酸特異抗体
プロテインキナーゼC, alpha (PKCa) リン酸特異抗体
プロテインキナーゼC, epsilon (PKCe) リン酸特異抗体
PTEN リン酸特異抗体
Pyk2 リン酸特異抗体
Rac1 / cdc42 リン酸特異抗体
Rac-Pk リン酸特異抗体
Rac-Pk基質 リン酸特異抗体
Rad 17 リン酸特異抗体
Rad17 リン酸特異抗体
Raf-1 リン酸特異抗体
Ras-GRF1 リン酸特異抗体
Rb (レチノブラストーマプロテイン) リン酸特異抗体
Ret リン酸特異抗体
リボゾーマルプロテインS6 リン酸特異抗体
RNAポリメラーゼII リン酸特異抗体
Rsk, p90 リン酸特異抗体
Rsk1 (MAPKAP K1a) リン酸特異抗体
Rsk3 リン酸特異抗体
S6キナーゼ リン酸特異抗体
S6キナーゼ, p70 リン酸特異抗体
S6ペプチド基質 リン酸特異抗体
SAPK (JNK) リン酸特異抗体
SAPK2 (ストレス活性化プロテインキナーゼ, SKK3, MKK3) リン酸特異抗体
SEK1 (MKK4) リン酸特異抗体
セロトニン-N-AT リン酸特異抗体
セロトニン-N-AT リン酸特異抗体
SGK リン酸特異抗体
Shc リン酸特異抗体
SHIP1 リン酸特異抗体
SHP-2 リン酸特異抗体
SLP-76 リン酸特異抗体
Smad1 リン酸特異抗体
Smad2 リン酸特異抗体
SMC1 リン酸特異抗体
SMC3 リン酸特異抗体
SOX-9 リン酸特異抗体
Src ファミリーネガティブ制御サイト リン酸特異抗体
Srcファミリー リン酸特異抗体
Src リン酸特異抗体
Stat1 リン酸特異抗体
Stat2 リン酸特異抗体
Stat3 リン酸特異抗体
Stat4 リン酸特異抗体
Stat5 リン酸特異抗体
Stat5A / Stat5B リン酸特異抗体
Stat5ab リン酸特異抗体
Stat6 リン酸特異抗体
Syk リン酸特異抗体
シナプシン リン酸特異抗体
シナプシン サイト1 リン酸特異抗体
Tau リン酸特異抗体
Tie 2 リン酸特異抗体
Trk A リン酸特異抗体
トロポニンI、カルディアック リン酸特異抗体
チューベリン リン酸特異抗体
Tyk 2 リン酸特異抗体
チロシンヒドロキシラーゼ リン酸特異抗体
チロシン リン酸特異抗体
VASP リン酸特異抗体
Vav1 リン酸特異抗体
Vav3 リン酸特異抗体
VEGFレセプター2 リン酸特異抗体
Zap-70 リン酸特異抗体
【0028】
本発明は、分析用に選ばれるタイプの細胞又は組織に制限されるものではない。細胞のタイプは、ヒト細胞、哺乳動物細胞(マウス、サル、ハムスター、ラット、ウサギ又は他の種)、植物プロトプラスト、酵母菌、真菌又は他の任意のタイプの問題の細胞でもよい。上記細胞はまた、細胞株又は一次細胞でもよい。創薬の目的からヒト細胞が好ましいが、哺乳動物の細胞も使用できる。上記細胞は、無傷の組織若しくは動物の成分、又は全身のものでもよく、或いは、生体サンプル又は器官から単離したものでもよい。例えば、本発明を、キーとなる経路を遮断する抗真菌剤を同定するために真菌細胞に使用することもでき;或いは、生長関連経路を刺激するか、又は疾患経路を遮断する化学薬剤を同定するために植物細胞に使用することもできる。重要なことに、本発明は哺乳動物又はヒトの細胞中で、疾患に関係した経路を遮断しオフ経路作用又は副作用を持たない薬剤を同定するために使用することができ、それにより選択性を早期に予測したり、臨床的な安全性の予測モデルを開発することが可能になる。本発明は、癌、糖尿病、心血管疾患、炎症、神経組織変成疾患、及び人類を苦しめる他の慢性又は急性疾患を含む、問題の任意の疾患に対する創薬に関連して使用することができる。
【0029】
本発明は任意の環境、状況又はシステム中の無傷の細胞又は組織で使用することができる。これには培養細胞、培養組織、及び生きている生物体のものが含まれる。例えば、本発明は、ショウジョウバエ又はゼブラフィッシュのようなモデル生物体で使用することができる。本発明は前臨床試験に、例えばマウスで使用することもできる。マウスを薬物で処理して、その後、多様な細胞又は組織を採取し、免疫蛍光アッセイを構築するために使用することができる。本発明はまたヌードマウスに使用することもでき、例えば、ヒト細胞をヌードマウスに異種移植片として移植し、薬物又は他の化合物をマウスに投与することができる。その後、細胞を移植組織から再抽出し、薬理学的プロファイリングに使用することができる。
【0030】
任意のタイプの薬物リード又は他の問題の化合物を、ここに提供される方法でプロファイリングすることができる。そのような化合物としては、活性を試験する必要がある合成分子、天然生成物、組み合わせライブラリー、既知若しくは推定上の薬物、リガンド、抗体、ペプチド、小型干渉RNA(siRNAs)又は任意の他の化学薬剤が含まれる。組み合わせライブラリースクリーニング又は他のハイスループットスクリーニングキャンペーンからのスクリーニングヒットを本発明と合わせて使用することもできる。本発明は、より望ましい特性を備えたそれらの化合物を、望ましい特性が劣るそれらの化合物と比較して同定するために使用することができる。従って、本発明は、予期しない属性、望ましくない属性、又は有毒な属性を有するリード化合物の最適化及び/又はふるい落としに使用するのに適している。
【0031】
化学薬剤に反応してシグナルのが増加又は減少する場合、正味の蛍光又は発光シグナルを定量することができる。薬物に反応してシグナルの細胞内位置が変化する事象では、細胞を自動顕微鏡法又は画像分析によって画像化し、シグナルの細胞内位置を検出し定量する。ピクセル強度を細胞内位置に変換するのに適した独占及び非独占のアルゴリズムが記述されており、そのようなソフトウェアは市販の機械システムと共に販売されることが多い。そのようなアルゴリズム、ソフトウェア及びハードウェアはいずれも本発明と共に使用することができる。
【0032】
蛋白によっては翻訳後に修飾されることがない、或いは、本質的に修飾されている−すなわち、それらの修飾が、外部刺激、環境条件、又は他からの動揺に応答して変化することがない。「応答する」という表現により、ある動揺に反応して特別の蛋白が修飾状態及び/又は細胞内分布に変化を受けることを意味する。他の翻訳後修飾はアゴニスト、ホルモン若しくは生長因子が受容体に結合してシグナル伝達カスケードを誘導することによるか、又は細胞内の蛋白若しくは酵素を活性化する小分子に対して、応答し誘導される。他の修飾は、例えば拮抗剤若しくは抗体が受容体に結合して、それによりシグナル伝達カスケードを遮断することによるか、経路にとって不可欠な蛋白をコード化する遺伝子を沈黙させるsiRNAにより、又は経路内の特定の蛋白を阻害する薬物により阻害されることもある。これらの例及びここに提示する方法は、本発明の幅を例示するのが目的であって、本発明の実施について制限を加えるものではない。
【0033】
ここに提供される方法及びアッセイは、アッセイフォーマットや小型化について柔軟に対応できるような、マルチウェル・フォーマット、微量定量プレート、マルチスポット・フォーマット、又はアレイで行ってもよい。アッセイ・フォーマット及び検出モードの選択は、分析するプロセスの生物学的状態及び複合体中の蛋白の機能によって決定される。いずれの場合でも、選ばれたレポーターによって産生されるシグナルの検出に適した任意の装置によって、本発明の対象であるアッセイを読み取ることができることに注目すべきである。発光性、蛍光性、又は生物発光性のシグナルは、蛍光マルチウェルプレートリーダー、蛍光活性化セルソーター(FACS)及び、自動セルベース画像処理システムを含む、様々な自動及び/又はハイスループット機器使用システムのいずれか1つを用いて容易に検出及び定量される。後者のシステムによりシグナルの空間的解像が可能になる。ハイコンテントアッセイを自動化するために、セロミクス社、アマシャム社(GEメディカルシステムズ)、Q3DM社(ベックマン・クルター)、エボテック GmbH社、ユニバーサル・イメージング社(モレキュラー・ディバイシーズ)、アトー社 (ベクトン・ディンキンソン)及びツァイス社によって開発された自動蛍光画像システム及び自動顕微鏡検査システムを含む、様々な機器使用システムが開発されている。光退色後蛍光回復法(FRAP)及び経時的蛍光顕微鏡検査法も生細胞中の蛋白の移動性を研究するために使用されてきた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
薬物のオン経路作用およびオフ経路作用の同定(薬理学的プロファイリング)
我々は、大規模な使用に適した、また特に望ましくない特性を持つリード化合物のふるい落としを行うのに適した創薬のための方法を提供すべく努力した。本発明の作成過程において、我々は3つの仮説を試した。第一の仮説は、特定の経路内の蛋白の翻訳後修飾を定量的かつ動的に測定することにより、化合物又は薬剤によるそれらの経路の活性化又は抑制の事前評価が可能になるであろうというものであった。第二の仮説は、経路の活性化に応答して、いくつかのタイプの動的事象、すなわち、修飾された蛋白の量の増加又は減少、及び/又は、修飾された蛋白のある細胞内区画から別の区画への移動が起きうるというものであった。第三の仮説は、生細胞中の多様な別々の修飾された蛋白に対する薬物作用の定量化及び位置測定により、薬物活性プロファイルの開発が可能になるであろうというものであった。薬理学的プロファイルはヒトの生物学の分野で、望ましいプロファイルを持つ化合物を同定し望ましくないプロファイルを持つ化合物を除去するために使用することができると考えられる。
【0035】
シグナル伝達ネットワークはハイレベルの接続性によって特徴づけられ、シグナルは広範囲な動的蛋白複合体に関係して伝送される。細胞生物学のこの一面を利用して薬物作用をより良く理解するために、我々は翻訳後に修飾された蛋白に対するアッセイを構築した。上記アッセイにより、異なる条件下、すなわち、時間、薬物濃度、前処理刺激などによる特定のシグナル伝達分岐点の活性の調査が可能になる。この手法により経路ネットワーク内での時間的及び空間的レベルで薬物活性をモニターすることができる。複数の標的クラスおよび経路を表現する種々のシグナル伝達分岐点の応答を分析することによって、我々は状況に応じた薬物活性および薬物関係を定義することができる。
【0036】
固定した細胞に抗体を付けることによって、一つの蛋白若しくは蛋白クラス又は他の巨大分子の特定の翻訳後修飾(例えば、リン酸化、アセチル化、ユビキチン化)と共に蛋白又は蛋白クラスの絶対量レベルを測定することができる。本発明を作成する際に、修飾状態特異的抗体を用いる細胞ベースのアッセイを、化合物の非存在下又は存在下で蛋白の動的な結合及び解離をモニターするために使用した。我々は生細胞中の多様なリン酸蛋白について定量的蛍光アッセイのパネルを作成し、自動顕微鏡検査により、このアッセイパネルに対する既知の薬物の活性を試験した。無傷の固定細胞はフローサイトメトリー又は顕微鏡検査によって分析することができる。このような方法は自動化でき、アッセイは96ウェル又は384ウェル・プレート中で行うことができる。自動顕微鏡を用いる場合、画像分析と組み合わせて、蛋白若しくは修飾された蛋白(又はクラス若しくは蛋白類)の細胞内位置をこの様式で評価することができ、すなわち自動「ハイコンテント」分析が可能になる。フローサイトメトリー及び蛍光分光法もこの目的に使用することができ、それにはシグナルの空間的解像の必要がない。標識ペアの強度及び/又は物理的位置の変化によって検出された応答パターン又は「薬理学的プロファイル」は試験される薬物の作用機序、特異性およびオフ経路作用に関係しており、薬物間の違いがこの手法を用いて容易に検出できるということを我々は証明する。
【0037】
本発明の概略を図3に示す。工程1はプロファイリングすべき化合物、薬物候補又は薬物の選択に関する。工程2は、アッセイパネルに含めるべき蛋白又は他の巨大分子の選択に関する。蛋白は合理的に、例えば経路又は蛋白の予備的知識によって、又は経験的に、同定又は選択することができる。さらに、無制限に多くのアッセイを単純に無作為に構築し、任意の数の薬物及び化合物に対する反応性について経験的に試験し、結果を薬理学的プロファイルに加えることが可能である。工程3は巨大分子(蛋白、DNAなど)の翻訳後修飾に対するアッセイの構築に関する。そのような方法は文献中に十分詳細に記載されており、蛋白が適切に選択され、抗体又はプローブが十分に特異的であって、問題の化合物又は薬物によるシグナル強度又は位置の変化を検出し定量するのに十分な感度がその方法にあるならば、それらの方法は本発明に簡単に適応させることができる。工程4では、化合物又は薬物をそれぞれ特定の時間および薬物濃度において各アッセイに対して試験する。プラス対照およびマイナス対照は各アッセイにおいて各時点および各刺激条件で行う。薬物の結果はそれぞれ対照(無処理、又は二次抗体のみ)の値と比較する。工程5では、アッセイの結果を総合して各化合物の薬理学的プロファイルを確立する。得られたプロファイルは様々な方法で表示することができる。単純なヒストグラムを使用して薬理学的プロファイルを表示することができる。或いは、各スクリーンの結果をここで示すように、赤がシグナル強度又は位置の減少を表わし緑が増加を表わすような、色分けマトリックスで表示する。赤及び緑の明るさの違いは変化の強度を表示するために使用できる。様々な可視化手段および第三者のソフトウェアを使用してプロファイルの表示及び分析を行うこともできる。
【実施例】
【0038】
実験プロトコール
一般的な戦略およびその応用を説明するために、我々はヒト細胞中で特性決定がよくなされている複数の経路について研究した。実験デザインを図4に示す。原理を立証するために、我々は3つの標準的シグナル伝達経路を使用した;すなわち、サイクリックAMP依存性経路;ERK マイトジェン活性化蛋白キナーゼ(MAPK)経路;及びp38/MAPKAPK2経路である。各経路には生化学の文献中に記録されている他の多くのステップが存在するが、ダイヤグラムは各経路に関与する多数の蛋白のうち選択した少数のみを示している。
【0039】
経路1:ベータ−アドレナリン作動性受容体は、その薬理学的重要性の結果、よく特性決定されている。このG蛋白共役受容体(GPCR)は小さなGTP結合蛋白、すなわちGsを介してアデニリルシクラーゼに連結する。この受容体へのイソプロテレノールまたは他のベータアドレナリン作用物質の結合が、アデニル酸シクラーゼの活性化を導く。アデニリルシクラーゼが活性化されると、それはATPのサイクリックAMPへの転換を触媒し、サイクリックAMPの細胞内レベルの増加を導く。サイクリックAMP(cAMP)は、プロテインキナーゼA(PKA)として知られるサイクリックAMP依存性プロテインキナーゼを活性化する二次伝達物質である。cAMPのレベルは、アデニル酸シクラーゼによるcAMPの生産調節およびホスホジエステラーゼによるcAMPの破壊を通して制御される。アデニル酸シクラーゼは、細胞内のシグナル伝達経路を詳しく調べることを目的とした研究で広く使用されているジテルペンであるフォルスコリンのような薬剤によって直接活性化することもできる。PKAについて最も特性決定されている基質の1つとして、アドレナリン作用物質または他のPKA活性化物質に反応してセリン133(S133)がリン酸化された転写因子CREBがある。CREBのリン酸化はその標的遺伝子に対する転写活性を増加させることが示されている(Montminny et al)。したがって、フォルスコリンとイソプロテレノールの両方が、生細胞中でPKAの下流の、CREBのリン酸化を含むステップを活性化するものと予想される。それらはすでに知られている活性に基づいて同様の薬理学的プロファイルを有すると考えられる。
【0040】
経路2:ERK/MAPKは生長因子により産生されるシグナルの伝達においてキーとなる中継ポイントである。この標準的な成長因子受容体に刺激される経路は、表皮増殖因子(EGF)受容体チロシンキナーゼのような細胞表面受容体によって開始される。活性化されたEGF受容体はアダプター蛋白と、蛋白SOSのようなグアニンヌクレオチド交換因子に結合する。SOSは、次に、Rasのような小さなGTPアーゼを活性化し、続いてB-RafおよびERKを含むキナーゼのカスケードのリン酸化および活性化を導く。ERKのリン酸化のような経路の遠位のステップの活性を測定することによって、上流のステップの活性を推測することができる。我々はこの経路に対して、2個の異なる薬剤、PD98059および17-AAGをプロファイリングした。MEKとして知られるプロテインキナーゼ(MKK1/2)の既知の阻害剤であるPD98059は、転写因子ERK(図4に示す)およびELKを含むその標的の下流にある事象を遮断する。17-AAG (17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン) は、現在癌治療の臨床試験中にあるアンサマイシン抗生物質である。17-AAGはHsp90シャペロン蛋白中の高度に保存されたポケットに結合し、その機能を阻害する。Hsp90は、細胞のストレス時の蛋白の再生、およびシグナル伝達蛋白サブセットの配座的な成熟に必要である。17-AAGで細胞を処理することにより、RAF、AKTおよびHER2を含むHsp90クライアント蛋白のプロテアゾーム分解が起きる。(a) 十分に特異的な抗リン酸-ERK抗体;(b) EGFに反応する細胞型;(c) 十分な量のPD98058;及び(d) 無傷細胞中のリン酸-ERKを検出することができる免疫蛍光検査法があれば、生細胞中のリン酸-ERKの量及び/又は位置に対するPD98059および17-AAGの作用を測定することは可能と考えられる。PD98058は相対的に選択的なキナーゼ阻害剤であり、一方17-AAGはHsp90クライアント蛋白の幅広いスペクトルに影響を及ぼす。そのため、両方の薬剤がリン酸-ERKに対するEGFの作用を減少させることが予想されるが、それらは他の経路標識(例えば、経路3)には異なる効果を示すであろう。
【0041】
経路3:p38セリン/スレオニンプロテインキナーゼはMAPキナーゼ・ファミリーの中で最もよく特性決定されたメンバーである。それは炎症性サイトカイン、エンドトキシンおよび浸透ストレスに反応して活性化される。それはERK類と約50%の相同性を有する。カスケード活性化の上流のステップは十分に定義されていない。しかしながら、p38の下流の活性化が、二特異性キナーゼであるMKK3によるそのリン酸化(TGYモチーフ部位)に続いて起きる。その活性化に続いて、p38がMAPKAPK2をリン酸化し、それが次にHSP27を含むヒートショック蛋白をリン酸化し活性化する。アニソマイシンは、図4に示されるp38経路を含む、細胞中のストレスに関連した経路を活性化することが示されている天然生成物である。SB203580 [4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)1H-イミダゾール] はp38マイトジェン活性化蛋白キナーゼ(MAPK)の非常に特異的な阻害剤であって、インビトロ及びインビボでp38 MAPK機能を調べるツールとして広く使用されている。アニソマイシンがこれらの細胞のp38経路に対して特異的であるならば、アニソマイシンはリン酸-Hsp27を増加させるが、リン酸-CREBまたはリン酸-ERKには効果を示さないはずである。p38に特異的な阻害剤であるSB203580はHsp27に対するアニソマイシンの作用を遮断することが予想される。従って、適切な抗リン酸-Hsp27抗体があれば、我々は生細胞中でアニソマイシンによる経路活性化に反応したHsp27のリン酸化の増加が見られると期待できる。この作用はSB203580により遮断されると考えられる。
【0042】
我々は、3つの経路に対する上記の化合物の作用を評価し、結果を利用して薬剤の薬理学的プロファイルを構築した。具体的には、我々は問題の経路における下流の蛋白を標的とするリン酸特異抗体を使用するハイコンテント免疫蛍光アッセイを構築することにより経路「標識」のリン酸化状態の変化を評価した。ヒト細胞 (HEK293) を薬物で処理し、3つの下流蛋白のリン酸化状態を表皮増殖因子(EGF)の非存在下および存在下で評価した。その後、細胞を固定し、CREBのリン酸化形態(S133)、ERK1/2(リン酸 T*EY*)、またはリン酸 Hsp27(S78/S82) に対して作成された抗血清をプローブに用いて調べた。活性化ループの中でスレオニン202およびチロシン204がリン酸化されている場合に限りERK1/2抗体はMAPK/ERK1およびMAPK/ERK2プロテインキナーゼを特異的に認識する。これらのアミノ酸のリン酸化がキナーゼの活性化には必要かつ十分であることが示されており、従ってキナーゼの活性化について代理マーカーとなる。薬物処理の後のリン酸化蛋白のレベルおよび細胞内位置の変化は、薬物と問題の経路との間の機能的な関連性を示すと考えられる。
【0043】
使用する方法の詳細は以下のとおりである。HEK293T細胞を黒色壁のポリリジンコーティングした96ウェルプレート(Greiner)中に30,000/ウェルの密度で接種した。24時間後、細胞をデュプリケートのウェル中で以下のような種々の薬物および刺激の組合わせで処理した:(a) 2μMイソプロテレノールまたは1μMフォルスコリンで15分間;(b)25μM SB203580または賦形剤(DMSO) で90分間、ただし最後の10分間、10μg/mlアニソマイシンを細胞に加える;(c) 20μM PD98059、25μM SB203580、5μM 17-AAGまたは賦形剤のみで90分間。(d) (c)と同様であるが、薬物処理の最後の5分間、100ng/ml hEGFを細胞に加える。薬物はカルビオケム社から購入し、hEGFはロッシュ社から購入した。上記のように処理した4セットの細胞を調製した。細胞をPBSで一回すすぎ、4%ホルムアルデヒドで10分間固定した。続いて細胞をPBS中0.25%トライトンX-100で透過性にし、3% BSAと共に30分間インキュベートして非特異的抗体の結合を遮蔽した。同一の処理を行った4セットの細胞をその後それぞれ、リン酸化CREB(S133)、Hsp27(Ser82)、又はpERK(T202/Y204)(セル・シグナリング・テクノロジー社)に対するウサギ抗体と共にインキュベートした。対照ウェルはPBS中のウシ血清アルブミン(BSA)を加えてインキュベートした。細胞をPBSですすぎ、Alexa488接合ヤギ抗ウサギ二次抗体(モレキュラー・プローブス社)と共にインキュベートした。細胞核をHoechst33342(モレキュラー・プローブス社)で染色した。画像はディスカバリー-1ハイコンテントイメージングシステム(モレキュラー・デバイシス社)を使用して得られた。二次抗体の非特異的結合によるバックグラウンド蛍光は、BSA/PBSを加えて一次抗体を加えずにインキュベートした細胞を用いて決定した。
【0044】
16ビットグレースケールTIFFフォーマットでの未処理画像をImageJ API/ライブラリー(http://rsb.info.nih.gov/ij/、NIH、MD)を使用して分析した。最初に、蛍光チャンネル(Hoechst及びAlexa488)からの画像をImageJのビルトイン・ローリングボール・アルゴリズムを使用して標準化した [S.R.Sternberg、生物医学的なイメージプロセシング、Computer, 16(1), 1983年1月]。次に、バックグラウンドからフォアグラウンドを分離するために閾値を確定した。ImageJのパーティクル・アナライザーに基づく反復アルゴリズムを、閾値処理したHoechstチャンネル画像(HI)に適用して、全細胞数を得た。細胞の核領域(核マスク)も閾値処理したHIから誘導する。プラスの粒子マスクは閾値処理したAlexa488画像(YI)から作成する。グローバルバックグラウンド(gBG)を計算するために、閾値処理していないAlexaシグナルからヒストグラムを取り、最も低い強度ピークのピクセル強度をgBGとした。HoechstマスクおよびAlexaマスクはオーバーラップしており、細胞の相関するサブ領域を定義する。平均値はすべて対応するgBGにより補正した。実験の各セット(アッセイ+薬物処理+処理時間)について、8つの画像からの蛍光粒子をプールした。各パラメーターについて、アウトライアーフィルターを適用してグループの範囲(平均±3SD)外になる粒子を除外した。最終的に各パラメーターのサンプル平均値又は対照平均値をフィルター処理した各グループから得た。薬物処理に関する結果は、各実験の対照値により標準化した。
【0045】
結果
実験の結果を図5-14に示し、最初はサイクリックAMP依存性(CREB)経路である(図5)。マイナス対照のウェル(左下)は二次抗体単独ではシグナルをほとんど又は全く示さず、このことはリン酸-CREBの検出はリン酸特異抗体を伴って成し遂げられることを証明していた。CREB リン酸特異抗体の存在下では、膜/核周辺パターンに主に集中した明らかな警告シグナルが見られた(対照、左上)。免疫蛍光検査の評価によれば、フォルスコリンとイソプロテレノールはいずれも対照(未処理)細胞と比較して、CREBのリン酸化を増加させ、その細胞内分布を主に核パターンに変化させた。これらの作用は蛍光顕微鏡写真で明瞭に見ることができた(図5、上パネル)。対照的に、アニソマイシンは、強度またはリン酸CREBの強度又は細胞内位置にほとんど又は全く効果を示さず、このことでアニソマイシン依存性経路とCREB経路の間には接続性が無いことが証明された。
図6に示すように、EGFはリン酸CREBの形成も誘導した。リン酸CREBに対するEGFの作用は、図4に表されるようにEGF依存性経路及びサイクリックAMP依存性経路の間のクロストークと一致している。EGFの作用はPD98059によって減少し、このことはPD化合物がCREB経路に対してオフ経路作用を示すか、又はMEK(PD98059の標的)よりも下のレベルでEGF経路とCREB経路の間にクロストークが生じることを示唆している。これらの結果は、経路に対する作用物質及び薬物の直接的及び間接的作用の両方が、作用物質又は薬物の作用点の下流で起きる事象をアッセイすることにより評価できることを示しており、それは細胞内ネットワークの接続性を薬物活性スペクトルの同定での使用に活かすことができるという前提を立証している。上記の結果はまた、経路を活性化又は阻害する薬物とそれらの経路に影響を及ぼさない薬物を区別する方法の可能性を証明するものである。
【0046】
薬物のその予期される標的/経路における示差的活性も観察した。例えば、EGFは予想通りMAPキナーゼ経路を強く刺激し、その結果、高いレベルのERK/MAPキナーゼリン酸化を誘導した(図12-13)。フォルスコリン、イソプロテレノール及びアニソマイシンはこの経路に効果を示さなかった(図11)。キナーゼMEKの既知の阻害剤である化合物PD98059は、予想されたようにEGFに反応してERKのリン酸化を有意に遮断した。7-AAGもERKに対するEGFの作用を減少させるのに有効であった。一方、p38特異的阻害剤であるSB203580でこれらの細胞を処理してもEGF刺激によるERKリン酸化に対して効果はなく、それはSB203580がERKに接続していない経路に選択的に作用するためである。上記の結果は、薬物のオン経路作用を正確に示し、ヒト細胞中の経路に対する薬物選択性を評価する上記方法の能力を証明するものである。
【0047】
この戦略により経路間のクロストークも明らかになる。アニソマイシンはアニソマイシン処理細胞におけるリン酸Hsp27の増加によって評価されるようにp38経路を誘導した。アニソマイシンはCREB経路又はERK経路には効果を示さなかったので、アニソマイシンは完全にp38経路に対して選択的であった。SB203580は、アニソマイシンのHsp27への作用を完全に遮断し、それはSB阻害剤の既知の作用機序と一致するものであった。EGFはさらにp38経路の活性化を誘発し(その結果、HSP27リン酸化が起き)、この反応はp38阻害剤であるSB203580によって遮断され、このことはEGF経路とp38経路の間のクロストークがSB203580の作用部位の上流レベルにあることを証明していた。対照的に、MEK阻害剤であるPD98059はEGF誘導によるHsp27リン酸化に効果を示さなかったが、このことはPD98059がMEK/ERK経路について選択的なものであることを示していた。
【0048】
図14に見られる薬理学的プロファイルは薬剤間の類似性及び相違性を証明している。これらの薬理学的プロファイルはある種の作用機序および選択性を有する薬物に対するフィンガープリント(識別特徴)として使用することができる。上記フィンガープリントは望ましい細胞作用を持つ新規化合物を同定し、また望ましくない細胞作用を持つ化合物を除去するために使用することができる。例えば、これらの方法を使用して、EGF、アニソマイシン、またはキナーゼ阻害剤のうちの1つに類似の細胞作用を持つ新規薬剤を同定することができる。既知の毒性作用または副作用を持つ薬剤のプロファイルを確立することにより同様の(毒性作用又は副作用)プロファイルを持つ新規化合物のふるい落としが可能になるであろう。アッセイパネルが拡大するとともに、よりさらに予測力が増すことになるであろう。既知の薬物、脱落した化合物および毒性薬剤のプロファイリングから、確立された臨床的成果を有する薬物のフィンガープリントの開発が可能になるであろう。パネルが拡大するとともに、それらは非常に明確な安全性および有効性のプロファイルを持つ薬物の開発を可能にするであろう。
【0049】
本発明の範囲
本発明が、厳密な経路、アッセイ標識、アッセイプロトコール、検出方法、又は特定の機械使用若しくはソフトウェアに限定されるものではないことは当業者に理解されるであろう。本発明は細胞ベースの蛍光または発光アッセイパネル、とりわけ免疫蛍光アッセイを問題の薬物、生物学的薬剤、天然生成物および他の化合物の薬理学的プロファイリングに使用することができることを教示するものである。
【0050】
本発明と共に使用することができる蛋白またはアッセイ用試薬のタイプ、数または正体に実質的に制限はない。哺乳動物の細胞中では蛋白の翻訳後修飾が何千も起きているようである。これらは構成用であるか動的なもののいずれかであり、余剰であるか余剰でないかのいずれかであろう。動的な(反応性)非余剰分アッセイは、それらが経路動揺に応答するものと考えられるために、薬理学的プロファイリングには最も有用なものになると思われる。幸い、単に修飾に対するアッセイを構築し、一連の薬物、siRNA のような遺伝子解析用試薬又は他の化合物に対する反応性についてそれを試験することにより、特定の蛋白または他の巨大分子がプロファイリングに役立つかどうかを経験的に判定することができる。非余剰分アッセイは他のいずれかのアッセイによって提供される情報よりはるかに明確な情報を提供するアッセイである。細胞の機能を調節する経路が徐々に解明されるにつれて、ここに提供される方法に基づいた完全な予測アッセイパネルを構築することが最終的に可能になるであろう。パネルが予測的であるかどうかを判断するのは動物、または人に特定の副作用を引き起こす特性決定がよくなされた薬剤のプロファイルと、同じ作用を引き起こさない薬剤のプロファイルとを比較することにより可能になるであろう。そのようなパネルにより任意の化合物を試験して、その活性スペクトルを決定し、また有害な効果を示唆する何らかのオフ経路活性を判定することができるであろう。上記手法の利点は、これをハイスループットで行い何千ものリード化合物を臨床試験に先立って試験することができ、それにより望ましくないプロファイルを有する化合物を早期にふるい落とすことができるということにある。
【0051】
上記手法の情報量の多さはアッセイされる蛋白の数によるのではなく、カバーされる経路の幅に基づく。より多くの標識を同じ経路に加えることにより、新しい作用機序を定義し、新しい薬物標的となりうるものを同定する際の助けになると考えられるが、必ずしも予測的な能力が追加されるとは限らないであろう。最終的に、個々の細胞経路に対して情報が得られる標識が一つ必要である。完全な予測性を持つプラットフォームは200-500のアッセイにより達成されると考えられる。これらの計算は推論によるものであるが、我々の予測を説明する助けとなるであろう。生化学の文献及び我々自身の経験によると、生化学のネットワークは高度に分岐していることが示唆される。例えば、ヒトの蛋白中の相互作用をマッピングする過程で、我々は1個の蛋白当たり平均5個の相互作用を同定した;この数字は酵母のようなモデル生物体の蛋白相互作用マップと一致している。人間のプロテオームの中に30,000個の蛋白があると仮定すると(但しスプライシング変異体を除く)、1つ以上の分離度で物理的に分離されて約6000個のヒト蛋白−蛋白相互作用があると考えられる(30,000/5)。最終的に、6000個の非余剰的標識の各々が15個の上流での事象の活性について報告する役目をすると仮定するならば、400個の標識コレクションにより細胞中のすべての経路の活性が報告されることになる。
【0052】
本発明は個々の蛋白の修飾の測定に限定されるものではない。蛋白−蛋白相互作用の定量又は位置決定に使用することができる細胞アッセイをそのようなパネルに含めることもできる。そのような測定に適した方法としては蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)、蛋白フラグメント相補性アッセイ(PCA)および酵素フラグメント相補性アッセイ(β‐ガラクトシダーゼ相補性)が挙げられる。薬理学的プロファイリング用のアッセイパネルを構築するために使用できる細胞アッセイには、個々の蛋白の測定と同様に全細胞の測定も含めることができる。例えば、(全ホスホチロシン抗体により評価される)細胞蛋白のチロシン・リン酸化の全体レベルを、既知化合物及び新規化合物のオン経路およびオフ経路の作用を評価して薬理学的プロファイルを確立するために使用することができる。特別のモチーフ(ユビキチン等)の測定も、それにより細胞の代謝状態及び表現型状態の全体的な評価が提供されるため、アッセイパネルの構築に有用であろう。全体的及び特定の細胞プロテアーゼ活性は、蛋白分解でエピトープが消失し、その結果、エピトープ特異抗体を用いた評価でシグナルが減少することにより、評価することができる。GTP対GPCRに共役したG蛋白のようなGDP結合蛋白を識別する抗体を開発して細胞シグナル伝達の成分としてのG蛋白の状態を評価するために使用することもできるであろう。特定の蛋白のスプライシング変異体又はアイソフォームを、例えば標識蛋白の開裂形態のみを認識する抗体を採用して、測定することもできるであろう。そのようなアッセイにより細胞のアポトーシス状態が示されるであろう。さらに、我々は特定のキナーゼのスプライシング変異体であるMKK3対MKK1/2を識別する抗体を使用してみる。これらの薬剤も同じアッセイ中に組み合わせることができる;例えば、リン酸特異的抗BAD抗体を総AKT抗体と組み合わせてアポトーシス経路の2個のキー調節因子を同時に評価することもできる。(アセチル特異的抗ヒストン抗体を用いての)ヒストン・アセチル化の測定により、遺伝子転写のキー調節因子であるアセチル化と脱アセチルの間の総合的バランスの評価が可能になるであろう。上記のように、任意のそのような経路の測定法又は細胞指示薬を細胞用染料と組み合わせてアッセイパネルの情報量を増加させることができる。膜電位を測定することができる色素もそのようなアッセイパネルに有用となるであろう。例えば、ミトコンドリア膜電位用の染料を使用して、種々の細胞作用を有する薬物を識別し、本発明と共同で薬理学的プロファイルを構築することができる。
【0053】
蛋白に加えて、DNAや脂質を含む様々な巨大分子が翻訳後に修飾される。DNAのメチル化は、転写の配列特異的調節及び遺伝子特異的調節において重要である。脂質のリン酸化は細胞シグナル伝達の制御において重要である;例えば、イノシトールポリリン酸塩の間のバランスは、二次伝達物質であるイノシトール三リン酸(IP3)のレベルの調整において非常に重要である;また、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルセリンのようなリン脂質の脂肪酸組成は膜流動性と膜浸透性を調節する。修飾状態に特異的な試薬のツールボックスが拡大するとともに、そのようなアッセイが我々が薬理学的プロファイリングのために構築しているパネルに加えられるであろう。
【0054】
以下の特許及び出版物に引用されている参考文献を含む内容のすべてを、個々の特許、特許出願又は出版物においてそれぞれ記載されているものと同様の範囲で、あらゆる目的についての全ての内容を参照により組み入れる。
US 6,372,431 Cunningham, et al.
US 6,801,859 Friend, et al.
US 6,673,554 Kauvar, et al.
US 6,270,964 Michnick, et al.
US 6,294,330 Michnick, et al.
US 6,428,951 Michnick, et al.
US Patent Application 20030108869 Michnick, et al.
US Patent Application 20020064769 Michnick, et al.
Nielsen et al., PNAS 100: 9330-9335 (2003)
【0055】
本発明をその特定の態様の詳細に関して記述しているが、それらが添付の請求項に包含される限りにおいて、そのような詳細が本発明の範囲を制限するものと見なされることは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の目的を具体例により示すものである。細胞の行動を制御する生化学ネットワークを回路図で表わしている。薬物及び化合物は細胞内において既知の(意図された)作用及び未知の(意図しない)作用を有する。蛋白及び他の分子の翻訳後修飾は動的な事象と言えるものであり、薬物及びリード化合物の既知及び未知の作用を同定するために探る対象とすることができる。
【図2】図2は本発明の基礎となる原理を示す。細胞ネットワークの接続性から、薬物標的の「下流」の事象に対する薬物の作用を測定することにより、経路上の薬物活性の検出が可能になる。蛋白又は他の分子の翻訳後修飾を表わすアッセイを赤で示す。薬物は下流の蛋白の翻訳後修飾状態を減少若しくは増加させるか、又はその細胞内分布を変化させることがある。これらの変化は免疫蛍光検査法又は他の方法を利用して無傷細胞中で測定することができる。経路間のクロストークもこの手法を用いて調べることができ、例えば第1の経路への薬物作用が第2の経路に関与する蛋白の修飾状態の変化をもたらすこともある。
【図3】図3は本発明による薬理学的プロファイリングにおいてキーとなる5つの工程を示す。結果は様々な方法、例えばヒストグラム;マトリックス;輪郭プロット;又は他の適当な表示方法を用いて示すことができる。図3に示すマトリックスにおいて、緑は特定の標識に対するシグナルの増加を表わし、赤はシグナルの減少を表わす。このようなプロファイルは比較、例えば、リード化合物を既知の薬物又は既知の有毒若しくはふるい落とされた化合物と比較する際に有用である。
【図4】図4は本発明の薬理学的プロファイリングにおける原理証明試験のデザインを示す。5個の異なる薬物を3個の異なる経路に対して試験し、それらの作用機序に一致する薬理学的プロファイルが得られた。
【図5】図5は、免疫蛍光検査法での評価による、リン酸-CREBの細胞内位置及び蛍光強度に対するフォルスコリン、イソプロテレノール、アニソマイシン、又はアニソマイシン+SB203580の示差的効果を示す代表的な顕微鏡写真である。マイナス対照ウェル(二次抗体のみ)も示す。
【図6】図6は、免疫蛍光検査法での評価による、リン酸-CREBの細胞内位置及び蛍光強度に対するEGF、EGF+PD98059、EGF+SB203580およびEGF+17AAGの示差的効果を示す代表的な顕微鏡写真である。
【図7】図7はヒト細胞の核中におけるリン酸-CREBの量に対する薬剤の示差的効果を示す。値は未処理の対照に対する比率で表す。
【図8】図8は、免疫蛍光検査法での評価による、リン酸-Hsp27の細胞内位置及び蛍光強度に対するフォルスコリン、イソプロテレノール、アニソマイシン、又はアニソマイシン+SB203580の示差的効果を示す代表的な顕微鏡写真である。
【図9】図9は、免疫蛍光検査法での評価による、リン酸-Hsp27の細胞内位置及び蛍光強度に対するEGF、EGF+PD98059、EGF+SB203580およびEGF+17AAGの示差的効果を示す代表的な顕微鏡写真である。
【図10】図10は、ヒト細胞中におけるリン酸-Hsp27の量に対する薬剤の示差的効果を示す。結果は未処理の対照に対する比率で表す。
【図11】図11は、免疫蛍光検査法での評価による、リン酸-ERKの細胞内位置及び蛍光強度に対するフォルスコリン、イソプロテレノール、アニソマイシン、又はアニソマイシン+SB203580の示差的効果を示す代表的な顕微鏡写真である。
【図12】図12は、免疫蛍光検査法での評価による、リン酸-ERKの細胞内位置及び蛍光強度に対するEGF、EGF+PD98059、EGF+SB203580およびEGF+17AAGの示差的効果を示す代表的な顕微鏡写真である。
【図13】図13は、ヒト細胞中におけるリン酸-ERKの量に対する薬剤の示差的効果を示す。値は未処理の対照に対する比率で表す。
【図14】図14は、3つの経路での活性に基づいた表示の薬物および生物学的薬剤の薬理学的プロファイルを示す。同じ経路に作用する薬剤(例えば、イソプロテレノールとフォルスコリン)は同様のプロファイルをもたらす。異なる経路に作用する薬剤は異なるプロファイルをもたらす(EGF対アニソマイシン、SB203580対PD98059を比較せよ)。同じ経路に作用する薬剤(例えば、17-AAGおよびPD98059)の間の(使用される用量における)有効性の差も見ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(類)の分析方法であって、(A) アッセイパネルを構築する工程、但し、上記パネルは無傷細胞中における2個以上の巨大分子の量及び/又は翻訳後修飾についてのアッセイを含む;(B) 上記パネル中の上記アッセイの活性に対する化合物(類)の作用を試験する工程;及び(C) 上記アッセイの結果を使用して望ましい活性を有する化合物を同定する工程、を含む方法。
【請求項2】
化合物についての安全性プロファイルを確立する方法であって、(A) 無傷細胞中における2個以上の巨大分子の量及び/又は翻訳後修飾に対する上記化合物の作用を試験する工程;(B) 上記試験の結果に基づいて薬理学的プロファイルを構築する工程;及び(C) 上記プロファイルを安全性特性が確立している薬物のプロファイルと比較する工程、を含む方法。
【請求項3】
化合物についての毒性プロファイルを確立する方法であって、(A) 無傷細胞中における2個以上の巨大分子の量及び/又は翻訳後修飾に対する上記化合物の作用を試験する工程;(B) 上記試験の結果に基づいて薬理学的プロファイルを構築する工程;及び(C) 上記プロファイルを既知の有害又は有毒な特性を有する薬物のプロファイルと比較する工程、を含む方法。
【請求項4】
微量定量プレートフォーマットまたはアレイフォーマットで行われる、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
フローサイトメトリー、自動顕微鏡、及び/又は自動画像分析によって行われる、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項6】
薬物毒性の基礎となる細胞経路を同定する方法であって、(A) 無傷細胞中における2個以上の巨大分子の量及び/又は翻訳後修飾に対する毒性化合物の作用を試験する工程;及び(B) 上記試験の結果を使用して毒性に関係する修飾パターンを同定する工程、を含む方法。
【請求項7】
化合物の薬理学的プロファイリングを行なう方法であって、(a) 細胞ベースのアッセイのパネルを構築する工程、但し、上記アッセイは2個以上の巨大分子の量及び/又は翻訳後修飾を含む;(b) 上記細胞を上記化合物に接触させる工程;(c) 上記細胞ベースアッセイを行う上記細胞におけるシグナルの量及び/又は細胞内位置を測定する工程;(d) (c)の結果を使用して上記化合物についての薬理学的プロファイルを構築する工程、を含む方法。
【請求項8】
化合物の薬理学的プロファイリングを行なう方法であって、(a) 無傷細胞中で免疫蛍光アッセイのパネルを構築する工程;(b) 上記細胞を上記化合物に接触させる工程;(c) 上記パネルのメンバー中の蛍光シグナルを定量する工程;(d) (c)の結果を使用して上記化合物についての薬理学的プロファイルを構築する工程、を含む方法。
【請求項9】
アッセイパネルであって、上記パネルが2個以上の巨大分子の量及び/又は翻訳後修飾に対する免疫蛍光アッセイを含み、上記アッセイが自動顕微鏡検査法または自動画像分析によって行なわれるアッセイパネル。
【請求項10】
アッセイパネルを含む構成物であって、上記パネルが2個以上の蛋白の量及び/又は翻訳後修飾に対するハイコンテントアッセイを含む構成物。
【請求項11】
アッセイパネルを含む構成物であって、上記パネルが蛋白の量及び/又は翻訳後修飾に対する少なくとも1つのハイコンテントアッセイ及び、蛋白−蛋白相互作用の量及び/又は細胞内位置に対する少なくとも1つのハイコンテントアッセイを含む構成物。
【請求項12】
アッセイパネルを含む構成物であって、上記パネルが免疫蛍光アッセイである少なくとも1つのアッセイ及び、非免疫蛍光アッセイである少なくとも1つのアッセイを含む構成物。
【請求項13】
細胞ベースのハイコンテントアッセイのパネルであって、上記パネルが2個以上の抗体を含み、少なくとも1つの抗体は表1に示されるリストから選択されるパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−510963(P2008−510963A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527980(P2007−527980)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/029278
【国際公開番号】WO2006/023576
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(506099775)オデュッセイ セラ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】