説明

細胞分散装置

【課題】凝集細胞の細胞分散効率を向上させることが可能な細胞分散装置を提供する。
【解決手段】この細胞分散部52(細胞分散装置)は、凝集細胞を分散する細胞分散装置であって、上面から下面まで貫通する孔部63を有する底部62と、底部62の上面または下面と所定の間隔を隔てて配置され、その外周に螺旋状の溝71を有するローター70と、ローター70を回転駆動するモータ80と、ローター70の外側に配置されたパイプ90と、を備え、モータ80によりローター70を回転させることにより、底部62とローター70との間に凝集した細胞を供給するとともに、供給された凝集細胞を分散するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分散装置に関し、特に、凝集した複数の細胞を単一の細胞に分散する細胞分散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞を分析する場合、凝集した細胞を分散することが必要である。そこで、凝集細胞を分散する細胞分散装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1では、細胞検体を含む溶液中に、先端にフィルターが設けられた円筒形状の中空体を備えた装置が開示されている。上記特許文献1では、細胞検体を含む溶液中に装置を浸して、円筒形状の中空体を回転させることにより細胞を含む溶液を攪拌する。これにより細胞群にせん断力を生じさせて細胞を分散させている。次に中空体を溶液中に浸した状態で中空体内部のエアーを吸引する。中空体のフィルターは、測定対象とする単一細胞は通過できないが、それ以下の大きさの赤血球や細胞片などを通過させることができるサイズの孔(開口)が複数形成されたものである。このため、吸引によって、赤血球や細胞片を含む溶液がフィルターを通過して中空体内に吸引されるとともに、フィルターを通過することができない細胞がフィルター面に吸着される。そして、中空体内部に吸引された溶液を排出した後に、細胞が吸着されたフィルター面をスライドガラスに接触させることで、フィルター面に吸着された細胞をスライドガラス上に分布させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−232834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、試料(凝集細胞を含む溶液)中での円筒形状の中空体の回転によって試料を撹拌し、この撹拌により凝集細胞にせん断力を作用させるだけであるので、凝集細胞の細胞分散効率が低いという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の1つの目的は、凝集細胞の細胞分散効率を向上させることが可能な細胞分散装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による細胞分散装置は、凝集した細胞を分散する細胞分散装置であって、上面から下面まで貫通する孔部を有する第1部材と、第1部材の上面または下面と所定の間隔を隔てて配置され、その外周に螺旋状の溝を有する第2部材と、第2部材を回転駆動する駆動部と、第2部材の外側に配置された筒体と、を備え、駆動部により第2部材を回転させることにより、第1部材と第2部材との間に凝集した細胞を供給するとともに、供給された凝集細胞を分散するように構成されている。
【0008】
この発明の一の局面による細胞分散装置では、上記のように、第1部材の上面または下面と所定の間隔を隔てて配置され、その外周に螺旋状の溝を有する第2部材を設けるとともに、駆動部により第2部材を回転させることによって、第2部材の螺旋状の溝部の回転により、凝集細胞を含む試料を第1部材側に移動させる流れを形成することができる。これにより、第1部材と第2部材との間への凝集細胞の供給を促進することができるので、第1部材と第2部材との間で凝集細胞の細胞分散を効果的に行うことができる。さらに、第1部材と第2部材との間に供給された試料を第1部材の孔部から通過させることによって、螺旋状の溝の回転により形成される試料の流れを妨げることがないので、第1部材と第2部材との間へ凝集細胞を次々と供給することができる。この結果、凝集細胞の細胞分散効率を向上させることができる。
【0009】
上記一の局面による細胞分散装置において、好ましくは、第1部材の孔部は、凝集した細胞が通過可能な大きさを有する。このように構成すれば、第1部材の孔部が凝集細胞によって塞がれる(孔部が詰まる)ことがないので、第1部材と第2部材との間に供給された試料を第1部材の孔部から通過させる際に、螺旋状の溝の回転により形成される試料の流れが妨げられるのを防止することができる。このため、第1部材と第2部材との間への凝集細胞の供給を効果的に行うことができるので、凝集細胞の分散を促進させることができる。
【0010】
上記一の局面による細胞分散装置において、好ましくは、筒体は、その先端および側部に開口を有しており、筒体の先端の開口および側部の開口の一方を流入口とし、他方を流出口としたときに、細胞が、流入口から筒体内側、流出口、筒体外側、流入口へと循環する循環流が形成されるように構成されている。このように構成すれば、螺旋状の溝の回転により形成される試料の流れを循環させることができる。これにより、第1部材と第2部材との間への凝集細胞の供給をさらに効果的に行うことができる。
【0011】
この場合において、好ましくは、第1部材は、筒体の先端の開口に配置され、筒体の側部の開口を流入口とし、先端の開口に配置された第1部材の孔部を流出口として細胞が循環する循環流が形成されるように構成されている。このように構成すれば、筒体内部において、第2部材の螺旋状の溝の回転により凝集細胞を先端の第1部材側に集めた後、第1部材の孔部から流出させることができる。この結果、形成される循環流を妨げることなく、凝集細胞を確実に第1部材と第2部材との間へ供給することができる。
【0012】
上記一の局面による細胞分散装置において、好ましくは、第1部材は、第2部材の回転に伴って凝集細胞にせん断力を付与するためのせん断力付与部を備える。このように構成すれば、せん断力付与部により第2部材の回転に伴って凝集細胞にせん断力を付与することができるので、第2部材の回転により、第1部材と第2部材との間への凝集細胞の供給と、せん断力による凝集細胞の分散との両方を行うことができる。
【0013】
この場合において、好ましくは、せん断力付与部は、第2部材側に突出する凸部を含む。このように構成すれば、第1部材と第2部材との間の間隔が凸部と第2部材との間の領域で小さくなるので、第2部材を回転させた際に、この凸部と第2部材との間の領域で凝集細胞に対してせん断力を作用させることができる。これにより、容易に、凝集細胞に対してせん断力を作用させて凝集細胞を分散することができる。
【0014】
上記一の局面による細胞分散装置において、好ましくは、第1部材の孔部は、細長形状である。このように構成すれば、螺旋状の溝を有する第2部材を回転させることによって回転方向に沿った試料の流れが形成される場合に、細長形状の孔部の長手側の広い範囲に回転方向の流れが到達しやすいので、第1部材の孔部から試料を通過させやすくすることができる。この結果、分散された細胞を含む試料を第1部材から効率よく流出させ、第1部材と第2部材との間に凝集細胞を次々に供給することができるので、第1部材と第2部材との間への凝集細胞の供給を促進させることができる。
【0015】
この場合において、好ましくは、孔部は、その長手方向が第2部材の回転方向と交差する方向に延びている。このように構成すれば、螺旋状の溝を有する第2部材を回転させることによって形成される回転方向の流れと孔部の長手方向とが交差するので、より効率良く、試料の流れを孔部に到達させることができる。この結果、分散された細胞を含む試料を第1部材からより効率よく流出させることができるので、第1部材と第2部材との間への凝集細胞の供給をより促進させることができる。
【0016】
上記一の局面による細胞分散装置において、好ましくは、第1部材は、第2部材側の表面に設けられた凹部を有し、孔部は、凹部内に配置されている。このように構成すれば、第2部材側から供給される凝集細胞を含む試料が第1部材の凹部に一時的に溜まるように保持された後に、凹部内に配置された孔部から試料を流出させることができる。これにより、凹部に一時的に溜まることによって第1部材と第2部材との間で凝集細胞の分散をより効果的に行うことができるとともに、凹部内に配置された孔部から試料を流出させることができる。
【0017】
この場合において、好ましくは、第1部材は円形であり、第2部材の回転方向と交差する方向に延びるとともに、第2部材側に突出する凸部をさらに有し、凹部は、第2部材の回転方向と交差する方向に延びる凸部を境界として複数設けられている。このように構成すれば、凹部内に一時的に溜められた凝集細胞を含む試料は凹部内を第2部材の回転方向と同じ方向に流れて、第2部材の回転方向と交差する方向に延びる凸部に到達する。この流れが凸部を乗り越えようとするときに第1部材(凸部)と第2部材との間隔が小さくなるので、凸部近傍で凝集細胞にせん断力を作用させやすくすることができ、その結果、凝集細胞の分散をより効果的に行うことができる。
【0018】
この場合において、好ましくは、駆動部により第2部材を回転させることにより、第1部材の凸部と第2部材との間で凝集した細胞を分散するように構成されている。このように構成すれば、第1部材と第2部材との間隔が小さくなる凸部と第2部材との間の領域を利用して、凝集細胞にせん断力を作用させやすくすることができるので、凝集細胞の分散を効果的に行うことができる。
【0019】
上記第1部材が第2部材の回転方向と交差する方向に延びる凸部を有する構成において、好ましくは、第1部材の孔部は、凸部を境界とする複数の凹部内の駆動部による第2部材の回転方向側の端部にそれぞれ配置されている。このように構成すれば、凹部内に一時的に溜められた凝集細胞を含む試料は、凹部内を第2部材の回転方向と同じ方向に流れて境界の凸部に到達する。この境界の部分(第2部材の回転方向側の端部)に孔部が形成されているため、試料の流れは、凸部を乗り越えようとする流れと、孔部から流出する流れとに分割される。この結果、凸部を乗り越えようとする流れによって凝集細胞が凸部と第2部材との間で分散されるとともに、孔部から流出する流れによって試料が凹部内に溜まり続けることなく次々と凝集細胞が供給される。この結果、凝集細胞の分散を効果的に行いながら、試料の流れを円滑にして凝集細胞の供給も効果的に行うことができる。
【0020】
上記一の局面による細胞分散装置において、好ましくは、第1部材の上面または下面と第2部材との所定の間隔は、凝集した細胞は通過不能で、かつ、分散された単一の細胞は通過可能な間隔である。このように構成すれば、第1部材と第2部材との間において、凝集細胞にはせん断力を付与して分散させるとともに、単一の細胞にはせん断力を与えることなく第1部材と第2部材との間を通過させることができる。これにより、単一の細胞にダメージを与えることなく、凝集細胞の分散効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による細胞分散部を備えた細胞分析装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した細胞分析装置の測定装置の構成を示したブロック図である。
【図3】図1に示した細胞分析装置の試料調製装置の構成を示したブロック図である。
【図4】図1に示した細胞分析装置のデータ処理装置の構成を示したブロック図である。
【図5】図2に示した測定装置の主検出部を構成するフローサイトメータを示した模式図である。
【図6】図5に示したフローサイトメータの光学系を示した模式図である。
【図7】図3に示した試料調製装置の調製デバイス部の構成を示した模式図である。
【図8】本発明の一実施形態による細胞分散部の全体構成を示した斜視図である。
【図9】図8に示した本発明の一実施形態による細胞分散部の縦断面図である。
【図10】図8に示した本発明の一実施形態による細胞分散部の有孔部材を示した斜視図である。
【図11】図10に示した有孔部材の上面図である。
【図12】図11の500−500線に沿った有孔部材の断面図である。
【図13】図8に示した本発明の一実施形態による細胞分散部のローターを示した側面図である。
【図14】図13に示したローターの下面図である。
【図15】図8に示した本発明の一実施形態による細胞分散部の動作を説明するための模式図である。
【図16】本発明の一実施形態による細胞分散部を備えた細胞分析装置の分析動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】本発明の一実施形態による細胞分散部を備えた細胞分析装置の分析動作を説明するためのフローチャートである。
【図18】本発明の実施例2による底部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
まず、図1〜図15を参照して、本発明の一実施形態による細胞分散部52(図8参照)を備えた細胞分析装置1の構成について説明する。なお、本実施形態では、細胞分析装置の細胞分散部に本発明を適用した例について説明する。
【0024】
細胞分析装置1では、患者から採取した細胞を含む測定試料をフローセルに流し、フローセルを流れる測定試料にレーザ光を照射する。そして、測定試料からの光(前方散乱光、側方蛍光など)を検出してその光信号を分析することにより、細胞に癌細胞が含まれているか否かを判断する。より具体的には、細胞分析装置1は、子宮頸部の上皮細胞を分析対象としており、子宮頸癌をスクリーニングするのに用いられる。
【0025】
図1に示すように、細胞分析装置1は、測定試料に対してレーザ光による光学的な測定を行う測定装置2と、被検者から採取された生体試料に洗浄や染色などの前処理を行って、測定装置2に供給する測定試料を作製する試料調製装置3と、測定装置2での測定結果の分析などを行うデータ処理装置4とを備えている。
【0026】
図2に示すように、測定装置2は、主検出部21と、信号処理部22と、測定制御部23と、I/Oインタフェース24とを備えている。主検出部21は、測定試料から測定対象細胞やその核の数およびサイズなどを検出する機能を有する。本実施形態では、主検出部21には、図5および図6に示すフローサイトメータ10が採用されている。
【0027】
信号処理部22は、主検出部21からの出力信号に対して必要な信号処理を行う信号処理回路からなる。また、測定制御部23は、マイクロプロセッサ25と記憶部26とを含んでいる。記憶部26は、主検出部21などの制御プログラムやデータを格納するROM、および、RAMなどからなる。
【0028】
測定制御部23のマイクロプロセッサ25は、I/Oインタフェース24を介して、データ処理装置4と後述する調製制御部33(図3参照)のマイクロプロセッサ36(図3参照)とに接続されている。これにより、データ処理装置4および調製制御部33のマイクロプロセッサ36との間で各種データを送受信することが可能である。
【0029】
図3に示すように、試料調製装置3は、副検出部31と、信号処理部32と、調製制御部33と、I/Oインタフェース34と、生体試料に対する成分調整を自動的に行うための調製デバイス部35とを備えている。
【0030】
副検出部31は、生体試料に含まれる測定対象細胞の細胞数を検出する機能を有する。本実施形態では、この副検出部31についても、図5および図6に示すものとほぼ同様のフローサイトメータ10が採用されている。信号処理部32は、副検出部31からの出力信号に対して必要な信号処理を行う信号処理回路からなる。調製制御部33は、マイクロプロセッサ36と、記憶部37と、センサドライバ38と、駆動部ドライバ39とを含んでいる。また、記憶部37は、副検出部31や調製デバイス部35などを制御するための制御プログラムなどを格納するROM、および、RAMなどからなる。
【0031】
調製デバイス部35は、検体セット部51と、細胞分散装置としての細胞分散部52と、検体ピペット部53と、検体定量部54と、試薬定量部55と、弁別・置換部56とから構成されている。
【0032】
検体セット部51は、生体試料を収容する複数の生体容器6(図7参照)や生成物容器7(図7参照)をセットするためのものである。また、細胞分散部52は、生体容器6内の生体試料に含まれる凝集細胞を強制的に分散させて単一細胞にする機能を有する。
【0033】
また、検体ピペット部53は、細胞が分散された生体試料を生体容器6(図7参照)から取り出して調製デバイス部35の流体回路に導入したり、調製された生成物を生成物容器7(図7参照)に戻したり生成物容器7から取り出したりする機能を有する。また、検体定量部54は、流体回路に供給される生体試料を定量する機能を有する。
【0034】
試薬定量部55は、生体試料に加える染色液などの試薬を定量する機能を有する。また、弁別・置換部56は、生体試料と希釈液とを混合および置換するとともに、測定対象細胞とそれ以外の細胞(赤血球、白血球など)や細菌などとを弁別する機能を有する。なお、調製デバイス部35の各部(検体セット部51、細胞分散部52、検体ピペット部53、検体定量部54、試薬定量部55および弁別・置換部56)を接続する流体回路の構成(図7参照)については、後述する。
【0035】
調製制御部33のマイクロプロセッサ36は、I/Oインタフェース34を介して測定制御部23(図2参照)のマイクロプロセッサ25(図2参照)に接続されている。これにより、測定制御部23のマイクロプロセッサ25との間で各種データを送受信することが可能である。
【0036】
また、調製制御部33のマイクロプロセッサ36は、センサドライバ38または駆動部ドライバ39を介して、調製デバイス部35の各部(検体セット部51、細胞分散部52、検体ピペット部53、検体定量部54、試薬定量部55および弁別・置換部56)のセンサ類や駆動部を構成する駆動モータと接続されている。これにより、マイクロプロセッサ36は、センサからの検知信号に基づいて制御プログラムを実行し、駆動部の動作を制御する。
【0037】
図4に示すように、本実施形態におけるデータ処理装置4は、例えばノートPC(デスクトップ型でもよい)などのパーソナルコンピュータからなり、処理本体41と、表示部42と、入力部43とから主に構成されている。
【0038】
処理本体41は、CPU41aと、ROM41bと、RAM41cと、ハードディスク41dと、読出装置41eと、画像出力インタフェース41fと、入出力インタフェース41gとを備えており、これらの各部は内部バスによって通信可能に接続されている。
【0039】
ハードディスク41dには、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど各種プログラムの他、測定制御部23(図2参照)および調製制御部33(図3参照)への動作命令の送信、測定装置2(図1参照)で行った測定結果の受信および分析処理、並びに、処理した分析結果の表示などを行う操作プログラム44がインストールされている。この操作プログラム44は、オペレーティングシステム上で動作する。
【0040】
入出力インタフェース41gには、キーボードおよびマウスからなる入力部43が接続されている。また、入出力インタフェース41gは、測定装置2(図2参照)のI/Oインタフェース24(図2参照)とも接続されている。これにより、測定装置2とデータ処理装置4との間でデータの送受信を行うことが可能である。
【0041】
次に、測定装置2の主検出部21を構成するフローサイトメータ10について説明する。図5に示すように、フローサイトメータ10のレンズ系11は、光源である半導体レーザ12からのレーザ光を、フローセル13を流れる測定試料に集光する機能を有する。集光レンズ14は、測定試料中の細胞の前方散乱光をフォトダイオード15からなる散乱光検出器に集光する機能を有する。
【0042】
レンズ系11は、具体的には、図6に示すように、半導体レーザ12側(図6の左側)から順に、コリメータレンズ11a、シリンダレンズ系(平凸シリンダレンズ11b+両凹シリンダレンズ11c)およびコンデンサレンズ系(コンデンサレンズ11d+コンデンサレンズ11e)から構成されている。
【0043】
図5に示すように、側方用の集光レンズ16は、測定対象細胞またはこの細胞中の核の側方散乱光と側方蛍光とをダイクロイックミラー17に集光する機能を有する。ダイクロイックミラー17は、側方散乱光をフォトマルチプライヤ18へ反射させるとともに、側方蛍光をフォトマルチプライヤ19の方へ透過させるように構成されている。これらの光は、測定試料中の細胞や核の特徴を反映したものとなっている。
【0044】
そして、フォトダイオード15、フォトマルチプライヤ18および19は、受光した光信号を電気信号に変換して、それぞれ、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)および側方蛍光信号(SFL)を出力する。これらの出力信号は図示しないプリアンプにより増幅され、測定装置2の信号処理部22(図2参照)に送られる。測定装置2の信号処理部22で処理された各信号FSC、SSC、SFLは、それぞれ、マイクロプロセッサ25によってI/Oインタフェース24からデータ処理装置4に送信される。
【0045】
データ処理装置4のCPU41aは、操作プログラム44を実行することにより、各信号FSC、SSC、SFLから細胞や核を分析するためのスキャッタグラムを作成し、このスキャッタグラムに基づいて、測定試料中の細胞が異常であるか否か、具体的には癌化した細胞であるか否かを判定する。
【0046】
また、試料調製装置3の副検出部31は、上記のように主検出部21とほぼ同じ構成のフローサイトメータ10を採用しているので、詳細な説明を省略する。なお、副検出部31は、測定装置2による本測定の前に測定対象細胞の濃度測定を予備的に行うものであるので、副検出部31では、その細胞数を計数するための信号を出力できれば足りる(前方散乱光信号(FSC)を取得できれば足りる)。
【0047】
次に、調製デバイス部35について詳細に説明する。図7に示すように、検体セット部51は、円形の回転テーブル51aと、回転テーブル51aを回転駆動する駆動部51bとを備えている。回転テーブル51aの外周縁部には、生体試料を収容する生体容器6と、生体試料を調製した後の生成物を収容する生成物容器(マイクロチューブ)7とをセット可能な保持部が設けられている。
【0048】
細胞分散部52は、有孔部材60と、ローター70と、このローター70を回転駆動させるモータ80とを備えている。ローター70の外側にはパイプ90が設けられており、パイプ90の先端の開口に有孔部材60が取り付けられている。これらを生体容器6内に挿入してローター70を回転させることにより、生体容器6内の生体試料に含まれる凝集細胞が単一細胞に分散される。なお、この細胞分散部52の具体的構成を含む詳細については後述する。
【0049】
検体ピペット部53は、生体容器6内の生体試料や生成物容器7内の測定試料を吸引して、その試料を検体定量部54に供給するための第1ピペット53aと、調製デバイス部35において所定の処理を行った後の生成物を生成物容器7に戻すための第2ピペット53bとを備えている。
【0050】
第2ピペット53bは、弁別・置換部56の収容容器56aと管路で繋がっており、弁別・置換部56で測定対象細胞が弁別された液体を生成物容器7に戻すことが可能である。検体定量部54は、定量シリンダ54aと、この定量シリンダ54aに挿通された定量ピストンを上下動させる駆動部54bとを備えている。
【0051】
第1ピペット53aで生体容器6から吸引された生体試料は、バルブV1を通じて定量シリンダ54aに導入される。この導入された生体試料は、駆動部54bによる定量ピストンの移動によってバルブV1、V7およびV4を介して弁別・置換部56に送られる。なお、検体定量部54の定量シリンダ54aは、生体試料に対する希釈液を調製する希釈液ユニット57とも管路で繋がっている。
【0052】
試薬定量部55は、一対の定量シリンダ55aおよび55bと、この各定量シリンダ55aおよび55bにそれぞれ挿通された定量ピストンを上下動させる駆動部55cとを備えている。試薬容器内の試薬は、各定量シリンダ55a、55bに供給される。供給された試薬は、駆動部55cによる定量ピストンの移動によって所定分量だけ定量され、定量された試薬は、バルブV2、V3を通じて第2ピペット53bに送られる。
【0053】
このため、検体セット部51の生成物容器7に戻される弁別済みの試料に対して、試薬定量部55が定量した複数種類の所定分量の試薬を、それぞれ混合できるようになっている。なお、定量シリンダ55aで計量して生体試料に加える試薬は、PI染色を行うための染料液であり、定量シリンダ55bで計量して生体試料に加える試薬は、細胞にRNA処理を行うためのRNaseである。
【0054】
弁別・置換部56は、上方開口状の収容容器56aと、この収容容器56aに上下移動可能に設けられた濾過シリンダ56bと、この濾過シリンダ56bを収容容器56a内で上下移動させる駆動部56cとを備えている。
【0055】
収容容器56aは、バルブV1、V7、V4を介して検体定量部54で定量された生体試料を収容容器56aの内部に保持することができる。濾過シリンダ56bは、測定対象細胞(上皮細胞)は通過させず、かつ、それより小径の細胞(赤血球、白血球など)は通過させるフィルター56dを下部に備えた中空の筒体からなる。また、濾過シリンダ56bには、希釈液ユニット57の希釈液がバルブV5を介して内部に供給される。
【0056】
駆動部56cは、生体試料と希釈液との混合液が入った収容容器56aに対して、濾過シリンダ56bを下方に移動させる機能を有する。これにより、測定対象細胞のみを含む液体が残液としてフィルター56dの下方に残るとともに、その他の細胞や夾雑物を含む液体がフィルター56dを通過して濾液としてフィルター56dの上方(濾過シリンダ56bの内部)に残る。なお、この結果、残液として残る測定対象細胞のみを含む液体は、濃縮された状態となる。
【0057】
濾過シリンダ56bの下降で濾過された濾液は、バルブV6を通じて廃棄部58に廃棄される。一方、収容容器56a内の残液は、バルブV4を通じて副検出部31のフローセル13に送られ、細胞数の計数が行われる。フローセル13を通過した液体は、廃棄部58に廃棄される。また、収容容器56a内の残液は、検体ピペット部53の第2ピペット53bに送られ、その後、生成物容器7に戻される
【0058】
図7に示すように、検体定量部54の定量シリンダ54aは、バルブV1、V7を介して測定装置2の主検出部21にも管路で繋がっている。そして、生成物容器7内の測定試料については、第1ピペット53aを介して検体定量部54で定量され、バルブV1およびV7を通じて測定装置2の主検出部21に供給されるように構成されている。
【0059】
次に、本実施形態による細胞分散部52の具体的な構成を説明する。図8および図9に示すように、細胞分散部52は、有孔部材60と、ローター70と、ローター70を回転駆動させるモータ80とを備えている。また、ローター70の外側には、生体試料の流れをガイドする機能を有するパイプ90が配置されている。
【0060】
図10〜図12に示すように、有孔部材60は、耐薬品性や強度などを考慮してステンレスで作製されており、円筒形状の筒部61と、筒部61の下端を塞ぐように設けられ、4つの孔部63を有する底部62とが一体的に形成されている。図15に示すように、筒部61の内周面はネジ部61aが形成され、パイプ90の下端の外周面に形成されたネジ部91に螺合して嵌るように構成されている。これにより、有孔部材60は、パイプ90の先端の開口に取り付けられている。図11および図12に示すように、底部62は、平面的に見て円形に形成されており、上面(内表面)から下面(外表面)まで貫通する4つの孔部63を有する。これらの孔部63は、凝集細胞(大きさ約100μm以上約500μm以下)が通過可能な大きさを有する。
【0061】
底部62の上面には、平面的に見て、ローター70の回転方向(矢印R方向)と直交する方向(半径方向)に延びるとともに、ローター70側(上方)に突出する4つの凸部64が形成されている。すなわち、4つの凸部64は、底部62の中心Oから半径方向に延びる十字形状をなすように形成されている。また、底部62の上面には、これらの凸部64を境界とする凹部からなる4つの保液部65が形成されている。すなわち、円形状の底部62は、平面的に見て、十字形状の4つの凸部64により分割された略4分の1円の扇形状の保液部(凹部)65を有している。図12に示すように、この底部62(凸部64)の厚さはt1(約1mm)であり、保液部65は、t2(約0.5mm)の深さを有する。
【0062】
図11に示すように、底部62の4つの孔部63は、4つの保液部65内にそれぞれ配置されている。また、孔部63は、幅W1(約0.5mm)および長さL1(約3.25mm)の細長形状を有する。また、孔部63は、矢印R方向(ローター70の回転方向)と直交する方向に延びるように形成されている。より具体的には、孔部63は、扇形状の保液部65の内部において、ローター70の回転方向(矢印R方向)側の端部に凸部64と隣接して凸部64と平行に延びるように配置されている。また、孔部63は、扇形状の保液部65の半径方向内側の端部から半径方向外側の端部まで延びるように形成されている。
【0063】
図9に示すように、ローター70は、底部62と同じく耐薬品性や強度などを考慮してステンレスで作製されており、パイプ90の内部に配置されている。ローター70は、図13および図14に示すように、外周に螺旋状の溝71が形成されている。溝71は、リード角α(約40度)で形成されている。また、溝71は、ローター70が矢印R方向(図11参照)に回転した場合に、溝71の回転によって有孔部材60の配置された下方向(矢印Z2方向)に生体試料を送るように設けられている。これにより、ローター70がモータ80により軸周り(矢印R方向)に回転されるとき、生体試料を下方の底部62に向けて供給する(生体試料に下方の推進力を付与する)ことが可能なように構成されている。また、ローター70の下端面72は、平坦に形成されている。
【0064】
本実施形態では、図15に示すように、ローター70の下端面72と、パイプ90の下端に取り付けられた有孔部材60の底部62の上面(凸部64の上面)とは、所定の間隔CL1を隔てて離間するように構成されている。この間隔CL1は、凝集細胞(100μm以上)は通過不能で、かつ、単一細胞(平均60μm)は通過可能な大きさを有する。したがって、間隔CL1は、本実施形態において測定対象とする子宮頸部の上皮細胞(単一細胞)の大きさ(平均60μm)と略等しくなるように30〜80μmの範囲で設定されている。本実施形態では、この間隔CL1は約50μmである。なお、図15では説明のために間隔CL1を誇張して図示している。
【0065】
ここで、凝集細胞は100μmを超える大きさとなるため、間隔CL1を約50μmとすることにより、凝集細胞に対して効果的にせん断力または分散力を与えることが可能である。このように、本実施形態では、細胞分散部52は、モータ80によりローター70を回転させることにより、有孔部材60の凸部64とローター70の下端面72との間で凝集細胞を分散するように構成されている。なお、間隔CL1を30〜80μmに設定したのは、30μm未満であれば、細胞が破砕されることがあり、80μmを超えると凝集細胞に与える分散力が低下してしまうことがあるためである。
【0066】
図9に示すように、ローター70の上端部73は、一端(上端、矢印Z1方向側端部)がモータ80の出力軸80aに連結された回転軸74の他端(下端、矢印Z2方向側端部)に取り付けられている。これにより、モータ80の駆動力(回転力)がローター70に伝達される。なお、ローター70の上端部73と回転軸74との連結部分には、液飛び防止用の板部材75が取り付けられている。この板部材75により、回転軸74に生体試料が付着し、回転軸74を支持する筒体82の内部に入り込むのを防止している。
【0067】
モータ80は、支持部材81の上部部材81aに取り付けられている。モータ80の出力軸80aは、上部部材81aに形成された孔81bを介して下方に突出している。支持部材81の下部部材81cにも上部部材81aの孔81bに対応する孔81dが設けられ、孔81dから下方に延びるように筒体82が取り付けられている。筒体82の内部には、上端部および中央部下よりの位置に金属系のベアリング83が設けられるとともに、下端部に樹脂製の軸受部材84が設けられている。これらのベアリング83および軸受部材84により、回転軸74が回転可能に支持されている。この樹脂製の軸受部材84によって、動作時に生体試料が筒体82の内部に入り込むのをより確実に防止している。
【0068】
パイプ90は、ローター70を内部に収容可能な内径を有するステンレス製の円形パイプからなる。パイプ90の上端は、回転軸74が挿入された筒体82に連結されている。また、パイプ90の下端(先端側端部)に設けられたネジ部91(図15参照)に、有孔部材60(ネジ部61a)が螺合して取り付けられている。回転軸74に取り付けられたローター70は、パイプ90と有孔部材60とにより、側方と下方とを取り囲まれるように配置されている。なお、ローター70の溝71が形成された外周とパイプ90の内周面とは、僅かに間隔CL2(約0.3mm)を隔てて離間している。
【0069】
パイプ90の側壁には、ローター70が配置される位置よりもやや上方の位置に長孔形状の開口部92(図8および図15参照)が2つ形成されている。この2つの開口部92は、パイプ90の芯を中心として対向する位置に形成されている。図15に示すように、この開口部92により、パイプ90の外部の生体試料は、開口部92を流入口としてパイプ90内に導入され、ローター70により流入口からパイプ90内部を下方(矢印Z2方向)に移動する。そして、生体試料は、下端の有孔部材60の孔部63を流出口としてパイプ90の外側に流出し、再度開口部92(流入口)へ流入する。これにより、本実施形態では、流入口(開口部92)からパイプ90の内側、流出口(孔部63)、パイプ90の外側、流入口(開口部92)へと生体試料内の細胞が循環する循環流が形成されるように構成されている。
【0070】
次に、図2〜図5、図7、図8、図10および図15〜図17を参照して、本発明の一実施形態による細胞分散部52を備えた細胞分析装置1の分析動作について説明する。なお、図16では、データ処理装置4の制御部(処理本体)41(図4参照)が行う処理フローを右列に示し、測定装置2の測定制御部23(図2参照)が行う処理フローを左列に示している。また、図17では、試料調製装置3の調製制御部33(図3参照)が行う処理フローを一列に示している。これらの処理フローが同時進行で実行される。
【0071】
まず、図16のステップS1において、データ処理装置4の処理本体41により、表示部42にメニュー画面が表示される。その後、ステップS2において、メニュー画面に従った測定開始指示が入力部43により受け付けられる。ステップS3では、データ処理装置4の処理本体41により、測定開始信号が測定装置2に送信される。ステップS4において、データ処理装置4から送信された測定開始信号が測定装置2の測定制御部23により受信されると、ステップS5に進む。ステップS5において、調製開始信号が試料調製装置3に送信される。
【0072】
図17に示すように、ステップS6において、測定装置2から送信された調製開始信号が試料調製装置3の調製制御部33により受信されると、ステップS7に進む。ステップS7では、測定試料の調製に用いられる試薬(染色液、RNase)が装置内の流路に吸引される。また、ステップS8において、生体試料と、アルコールを主成分とする保存液とが収容された生体容器6内の生体試料が細胞分散部52で分散される。
【0073】
この生体試料の分散は、本実施形態に係る細胞分散部52により、次のようにして行なわれる。
【0074】
図15に示すように、まず、調製制御部33(図3参照)によりモータ80(図8参照)を回転駆動させると、このモータ80の回転によって回転軸74と回転軸74の先端に連結されたローター70とが軸周りに矢印R方向に回転する。このとき、ローター70の外周の溝71の回転により、溝71内の生体試料が下方の底部62(ローター70の下端面72と底部62との間)に向けて送られる。本実施形態では、モータ80の回転数は約10000rpmであり、回転(細胞の分散)は約60秒間継続して行われる。
【0075】
底部62に送られた生体試料は、凸部64によって分割された保液部(凹部)65(図10参照)に流れ込み、保液部65内に一時的に貯留(保液)される。この際、保液部65内に流れ込んだ生体試料の上方(矢印Z1方向)には、矢印R方向に回転するローター70の下端面72が存在するため、生体試料は保液部65内で矢印R方向に移動される。保液部65内における生体試料の矢印R方向の流れは、保液部65を分割する凸部64(図12参照)の壁面により遮られる。これにより、矢印R方向の生体試料の流れは、矢印R方向側の端部に形成された孔部63から下方(外部)に流出しようとする生体試料の流れと、凸部64の壁面に沿って上方に移動して凸部64を乗り越えようとする生体試料の流れとに分かれる。
【0076】
孔部63から下方(外部)に流出しようとする生体試料の流れは、底部62の外部に流出(噴出)する。外部に流出した生体試料は、孔部63から流出する流れに押されるとともに、ローター70の回転によりパイプ90の周壁の開口部92を介してパイプ90内部に引き込まれる。この結果、流入口(開口部92)からパイプ90内側、流出口(孔部63)、パイプ90外側、流入口(開口部92)へと循環する循環流が形成される。
【0077】
一方、凸部64を乗り越えようとする流れは、ローター70の下端面72と凸部64の上面との間を通過する。ここで、ローター70の下端面72と底部62との間隔は、凸部64上面で最小のCL1となり、この間隔CL1は、凝集細胞が通過不可能な間隔(約50μm)である。このため、凸部64を乗り越えようとする流れに含まれる凝集細胞には回転されているローター70(下端面72)と固定的に設置された凸部64との間でせん断力が付与され、凝集細胞が単一細胞に分散される。なお、間隔CL1は単一細胞が通過可能な大きさであるので、凸部64を乗り越えようとする流れに含まれる単一細胞(および分散された単一細胞)は、流れに乗って凸部64を乗り越える。このため、凸部64の壁面で分岐した凸部64を乗り越えようとする生体試料の流れに含まれる凝集細胞は次々と分散され、所定時間(約60秒間)にわたって循環流を循環させることによって、生体試料中の凝集細胞が単一細胞に分散される。
【0078】
分散処理が終了すると、図17のステップS9において、試料調製装置3の調整制御部33により検体ピペット部53(図7参照)および検体定量部54(図7参照)が作動され、分散済みの生体試料が生体容器6から装置内の流路に所定量だけ吸引される。また、ステップS10において、吸引された所定量の生体試料が弁別・置換部56の収容容器56aに送液され、その弁別・置換部56による生体試料に対する弁別・置換処理が行われる。この弁別・置換処理において、アルコールを主成分とする保存液が希釈液に置換されるとともに、測定対象細胞のみを含む希釈液とその他の細胞や夾雑物を含む液体とが弁別(濾過)される。また、弁別(濾過)の過程で測定対象細胞のみを含む希釈液が濃縮され、この濃縮液が弁別・置換処理の残液として得られる。
【0079】
弁別・置換処理が終了すると、ステップS11において、試料調製装置3の調製制御部33により、副検出部31のフローセル13(図5参照)に濃縮液(ほとんどが上皮細胞である希釈液)が送液される。そして、ステップS12において、この副検出部31を用いて、フローサイトメトリー法によって濃縮液のプレ測定(濃縮液に含まれる細胞の細胞数の検出)が行われる。プレ測定の結果、癌判定ために測定装置2が行う本測定の前に、生体試料に含まれる測定対象細胞(上皮細胞)の濃度を反映した濃度情報が得られる。
【0080】
次に、ステップS13において、試料調製装置3の調製制御部33により、濃縮液が流体回路外に排出される。また、ステップS14において、得られた濃度情報に基づいて生体試料の濃度が算出される。ステップS15では、算出された濃度に基づいて、本測定に用いる測定試料を調製するための、生体試料の試料吸引量が決定される。すなわち、プレ測定に用いた生体試料の濃度(単位体積あたりの細胞数)と、本測定における癌細胞検出のために必要な有意細胞数とに基づき、この有意細胞数が確保される程度に本測定を行うために必要な生体試料の採取料(液量)が演算される。
【0081】
そして、ステップS16において、試料調製装置3の調製制御部33により、決定された試料吸引量だけ生体容器6から生体試料が吸引される。また、ステップS17において、この生体試料に対して、上記した弁別・置換処理(ステップS10)が再度実施される。これにより、決定された試料吸引量の生体試料が置換・弁別された濃縮液が得られる。
【0082】
次に、ステップS18において、試料調製装置3の調製制御部33により、ステップS17で得られた濃縮液が生成物容器(マイクロチューブ)7に供給される。さらに、ステップS19において、装置内に貯留されていた染色液とRNaseとが、試薬定量部55(図7参照)から生成物容器7に供給される。そして、ステップS20において、この生成物容器7内においてDNA染色とRNA処理とを行わせて本測定に用いる測定試料が作製される。
【0083】
測定試料が作製されると、ステップS21において、試料調製装置3の調製制御部33により、得られた測定試料が測定装置2の主検出部21に送液される。なお、試料調製装置3の調製制御部33は、ステップS22において測定装置2からのシャットダウン信号(図17のC点参照)を受信したか否かを常時判定しており、シャットダウン信号を受信していない場合には、調製開始信号を受信したか否かを判定するステップS6に戻る。また、シャットダウン信号を受信した場合には、ステップS23に進み、シャットダウン処理を実行して試料調製処理を終了する。
【0084】
一方、図16に示すように、測定装置2の測定制御部23は、調製開始信号を送信した後、ステップS24において、試料調製装置3から測定試料の供給があるか否かを常時判定している。そこで、ステップS21(図17参照)で試料調製装置3から測定試料が送液されると(図17のB点参照)、ステップS25に進む。ステップS25では、測定装置2の測定制御部23により、その測定試料が主検出部21のフローセル13に送られるとともに、測定試料中の細胞に対する本測定が行われる。本測定後、ステップS26では、得られた測定データがデータ処理装置4に送信される。
【0085】
一方、データ処理装置4の処理本体41は、測定開始信号を送信した後、ステップS27において、測定装置2から測定データを受信したか否かを常時判定している。測定装置2から測定データを受信すると、ステップS28に進む。ステップS28では、データ処理装置4の処理本体41により、その測定データを用いて細胞や核が分析され、測定試料中の細胞が癌化しているか否かなどが判定される。
【0086】
次に、ステップS29において、データ処理装置4の処理本体41により、分析結果が表示部42に表示される。また、ステップS30において、ユーザ入力によるシャットダウン指示があるか否かが判定される。シャットダウン指示がある場合には、ステップS31に進み、データ処理装置4の処理本体41により、測定装置2にシャットダウン信号が送信される。
【0087】
測定装置2の測定制御部23は、ステップS32においてデータ処理装置4からのシャットダウン信号を受信したか否かを常時判定している。シャットダウン信号を受信していない場合には、測定開始信号の受信の有無を判定するステップS4に戻る。また、シャットダウン信号を受信した場合には、ステップS33において、試料調製装置3にシャットダウン信号が転送される。その後、ステップS34でシャットダウンを実行されて測定処理が終了する。
【0088】
本実施形態では、上記のように、底部62の上面と所定の間隔CL1を隔てて配置され、その外周に螺旋状の溝71を有するローター70を設けるとともに、モータ80によりローター70を回転させることによって、ローター70の螺旋状の溝71の回転により、凝集細胞を含む生体試料を底部62側に移動させる流れを形成することができる。これにより、底部62とローター70との間への凝集細胞の供給を促進することができるので、底部62とローター70との間で凝集細胞の細胞分散を効果的に行うことができる。さらに、底部62とローター70との間に供給された生体試料を底部62の孔部63から通過させることによって、螺旋状の溝71の回転により形成される生体試料の流れを妨げることがないので、底部62とローター70との間へ凝集細胞を次々と供給することができる。この結果、凝集細胞の細胞分散効率を向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、底部62(有孔部材60)の孔部63を、凝集した細胞が通過可能な大きさに形成する。このように構成すれば、底部62の孔部63が凝集細胞によって塞がれる(孔部63が詰まる)ことがないので、底部62とローター70との間に供給された生体試料を底部62の孔部63から通過させる際に、螺旋状の溝71の回転により形成される試料の流れが妨げられるのを防止することができる。このため、底部62とローター70との間への凝集細胞の供給を効果的に行うことができるので、凝集細胞の分散を促進させることができる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、細胞が、開口部92(流入口)からパイプ90の内側、パイプ90の先端の開口に設けられた有孔部材60(底部62)の孔部63(流出口)、パイプ90の外側、開口部92(流入口)へと循環する循環流を形成する。このように構成すれば、螺旋状の溝71の回転により形成される生体試料の流れを循環させることができる。これにより、底部62とローター70との間への凝集細胞の供給をさらに効果的に行うことができる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、有孔部材60の底部62をパイプ90の先端の開口に配置するとともに、パイプ90の側部の開口部92を流入口とし、先端の開口に配置された底部62の孔部63を流出口として細胞が循環する循環流を形成するように構成する。このように構成すれば、パイプ90の内部において、ローター70の螺旋状の溝71の回転により凝集細胞を先端の底部62側に集めた後、底部62の孔部63から流出させることができる。この結果、形成される循環流を妨げることなく、凝集細胞を確実に底部62とローター70との間へ供給することができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、有孔部材60の底部62に、ローター70の回転に伴って凝集細胞にせん断力を付与するための凸部64を設ける。このように構成すれば、凸部64によりローター70の回転に伴って凝集細胞にせん断力を付与することができるので、ローター70の回転により、底部62とローター70との間への凝集細胞の供給と、せん断力による凝集細胞の分散との両方を行うことができる。また、底部62とローター70との間の間隔が凸部64とローター70との間の領域で小さくなるので、ローター70を回転させた際に、この凸部64とローター70との間の領域で凝集細胞に対してせん断力を作用させることができる。これにより、容易に、凝集細胞に対してせん断力を作用させて凝集細胞を分散することができる。
【0093】
また、本実施形態では、上記のように、底部62の孔部63を、細長形状に形成する。このように構成すれば、螺旋状の溝71を有するローター70を回転させることによって回転方向(矢印R方向)に沿った生体試料の流れが形成される場合に、細長形状の孔部63の長手側の広い範囲に回転方向の流れが到達しやすいので、有孔部材60(底部62)から生体試料を通過させ易くすることができる。この結果、分散された細胞を含む生体試料を有孔部材60(底部62)から効率よく流出させ、底部62とローター70との間に凝集細胞を次々に供給することができるので、底部62とローター70との間への凝集細胞の供給を促進させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、上記のように、孔部63を、その長手方向がローター70の回転方向(矢印R方向)と交差する方向に延びるように形成する。このように構成すれば、螺旋状の溝71を有するローター70を回転させることによって形成される回転方向(矢印R方向)の流れと孔部63の長手方向とが交差するので、より効率良く、生体試料の流れを孔部63に到達させることができる。この結果、分散された細胞を含む生体試料を底部62(有孔部材60)からより効率よく流出させることができるので、底部62とローター70との間への凝集細胞の供給をより促進させることができる。
【0095】
また、本実施形態では、上記のように、孔部63を、凹状の保液部65内に配置されている。このように構成すれば、ローター70側から供給される凝集細胞を含む生体試料が、底部62の保液部65に一時的に溜まるように保持された後に、保液部65内に配置された孔部63から生体試料を流出させることができる。これにより、保液部65に一時的に溜まることによって底部62とローター70との間で凝集細胞の分散をより効果的に行うことができるとともに、保液部65内に配置された孔部63から生体試料を流出させることができる。
【0096】
また、本実施形態では、上記のように、円形の底部62にローター70の回転方向(矢印R方向)と交差する方向に延びる4つの凸部64を設け、凸部64を境界として4つの保液部65を設ける。このように構成すれば、保液部65内に一時的に溜められた凝集細胞を含む生体試料は保液部65内をローター70の回転方向(矢印R方向)に流れて、ローター70の回転方向(矢印R方向)と交差する凸部64に到達する。この流れが凸部64を乗り越えようとするときに底部62(凸部64)とローター70(下端面72)との間隔CL1が小さくなるので、凸部64近傍で凝集細胞にせん断力を作用させやすくすることができ、その結果、凝集細胞の分散をより効果的に行うことができる。
【0097】
また、本実施形態では、上記のように、モータ80によりローター70を回転させることにより、底部62(有孔部材60)の凸部64とローター70との間で凝集細胞を分散するように構成する。このように構成すれば、底部62とローター70との間隔が小さくなる凸部64とローター70との間の領域(間隔CL1)を利用して、凝集細胞にせん断力を作用させやすくすることができるので、凝集細胞の分散を効果的に行うことができる。
【0098】
また、本実施形態では、上記のように、底部62の凸部64を境界とする4つの保液部65内のモータ80によるローター70の回転方向(矢印R方向)側の端部に孔部63をそれぞれ配置する。このように構成すれば、保液部65内に一時的に溜められた凝集細胞を含む生体試料は、保液部65内をローター70の回転方向と同じ矢印R方向に流れて境界の凸部64に到達する。この境界の部分(矢印R方向側の端部)に孔部63が形成されているため、生体試料の流れは、凸部64を乗り越えようとする流れと、孔部63から流出する流れとに分割される。この結果、凸部64を乗り越えようとする流れによって凝集細胞が凸部64とローター70との間で分散されるとともに、孔部63から流出する流れによって生体試料が保液部65内に溜まり続けることなく次々と凝集細胞が供給される。この結果、凝集細胞の分散を効果的に行いながら、生体試料の流れを円滑にして凝集細胞の供給も効果的に行うことができる。
【0099】
また、本実施形態では、上記のように、底部62(凸部64)の上面とローター70との所定の間隔を、凝集細胞は通過不能で、かつ、分散された単一細胞は通過可能な間隔CL1となるよう構成する。このように構成すれば、底部62(凸部64)とローター70との間において、凝集細胞にはせん断力を付与して分散させるとともに、単一細胞にはせん断力を与えることなく底部62(凸部64)とローター70との間を通過させることができる。これにより、単一の細胞にダメージを与えることなく、凝集細胞の分散効率を向上させることができる。
【0100】
(実施例)
次に、図10および図18を参照して、本発明の効果を検証した実験について説明する。比較例として、細胞分散部52による凝集細胞の分散処理を実施しなかった場合の単一細胞(単一上皮細胞)数を測定するとともに、本実施形態による細胞分散部52を用いた凝集細胞の分散処理を実施した場合(実施例1)の単一細胞(単一上皮細胞)数を測定して、単一細胞(単一上皮細胞)数の変化を比較する比較実験を行った。また、細胞分散部52の有孔部材60(底部62)の形状を変更(図18参照)して凝集細胞の分散処理を実施した場合(実施例2)の単一細胞(単一上皮細胞)数を併せて測定した。
【0101】
まず、実施例2に用いた有孔部材の構成について説明する。図18に示すように、この有孔部材の底部162は、平面的に見て円形に形成されており、上面(矢印Z1方向側表面)から下面(矢印Z2方向側表面)まで貫通する4つの孔部163を有する。4つの孔部163は、底部162の半径方向に延びる長円孔形状を有する。また、4つの孔部163は、底部162の周縁部近傍に配置されているとともに、それぞれ底部162の中心から略90度の回転角度間隔を隔てて配置されている。なお、図18に示した実施例2による底部162では、図10に示した本実施形態による細胞分散部52の底部62とは異なり、底部162に凸部および保液部(凹部)が形成されず、底部162が平坦な平板形状を有する。実施例2に用いた有孔部材の上記以外の構成は、本実施形態の有孔部材60と同様である。実施例2は、底部162が形成された有孔部材を細胞分散部52のパイプ90に取り付けることにより、底部162のみが本実施形態の細胞分散部52の底部62(実施例1)とは異なる条件で、凝集細胞の分散を実施したものである。
【0102】
実施例1および実施例2では、それぞれモータ80の回転数を10000rpmとして、分散処理を60秒間実施した。分散処理および単一上皮細胞数の測定は、実施例1、実施例2および比較例(細胞数の測定のみ実施)でそれぞれ3回ずつ行った。この結果、本実施形態による細胞分散部52を用いた実施例1では、凝集細胞の分散処理を実施しなかった場合(比較例)の単一上皮細胞数に対して、測定された単一上皮細胞数が平均で151%に増えた。また、底部62を底部162に変更した実施例2では、凝集細胞の分散処理を実施しなかった場合(比較例)の単一上皮細胞数に対して、測定された単一上皮細胞数が平均で143%に増えた。
【0103】
以上から、本実施形態による細胞分散部52を用いた分散処理により凝集細胞が分散され、単一細胞の数を増加させることが確認された。また、実施例1と実施例2とを比較して、底部162に孔部163のみが形成された実施例2よりも底部62に凸部64および保液部65が形成された実施例1の方がより高い分散処理効率を得ることが可能であることが確認された。
【0104】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0105】
たとえば、上記実施形態では、本発明の細胞分散装置を細胞分析装置1の細胞分散部52に適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明の細胞分散装置を単独で用いる構成としてもよい。また、本発明は、細胞分析装置以外にも、凝集細胞の分散処理を実施する装置であればどのような装置にも適用可能である。
【0106】
また、上記実施形態では、子宮頸部の上皮細胞を細胞分析装置の分析対象とし、この上皮細胞が凝集した凝集細胞を細胞分散部により単一細胞に分散した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、細胞分散部により子宮頸部の上皮細胞以外の細胞の分散処理を行ってもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、有孔部材に底部と筒部とを一体的に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筒部を設けることなく、パイプの先端の開口に底部を嵌め込むように取り付ける構成であってもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、パイプの先端の開口に有孔部材を取り付けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、有孔部材がパイプに取り付けられることなく、ロータと有孔部材の底部とが間隔CL1を隔てて配置されるように構成してもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、底部の上面から下面まで貫通する孔部を4つ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、孔部は、3つ以下でもよいし、5つ以上であってもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、4つの孔部をそれぞれ幅Wおよび長さLの細長形状に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。孔部は、たとえば円形状や矩形状でもよい。また、それぞれの孔部が同一形状を有する必要はなく、それぞれ形状の異なる孔部を設けてもよい。
【0111】
なお、実験的に確認された結果から、上記実施形態の細長形状の孔部63の場合、孔部63の幅Wは、約0.3mm以上約1mm以下の範囲が好ましい。
【0112】
また、上記実施形態では、4つの孔部を、それぞれ凝集細胞(約100μm以上約500μm以下)が通過可能な大きさに形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、孔部を凝集細胞が通過不能な大きさに形成してもよいし、大きさの異なる複数の孔部を設けてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、細長形状の孔部を、その長手方向がローターの回転方向(矢印R方向)と直交する方向に延びるように形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、孔部の長手方向がローターの回転方向と直角以外の所定の角度で交差するようにしてもよい。また、孔部を、ローターの回転方向に沿う方向に延びるように形成してもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、底部に凹部からなる4つの保液部を形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保液部は、3つ以下でもよいし、5つ以上設けてもよい。また、図18に示す実施例2に用いた底部162のように、底部に保液部を設けなくともよい。
【0115】
また、上記実施形態では、4つの保液部の境界となる4つの凸部を底部に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、凸部は、3つ以下でもよいし、5つ以上設けてもよい。この際、凸部が保液部の境界となる必要はなく、たとえば保液部(凹部)から突出する柱状の凸部を設けてもよい。また、図18に示す実施例2に用いた底部162のように、底部に凸部を設けなくともよい。
【0116】
また、上記実施形態では、孔部を、扇形状の保液部の内部において、ローターの回転方向(矢印R方向)側の端部に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保液部の内部であって、ローターの回転方向側の端部以外の位置に孔部を配置してもよいし、保液部の外部に孔部を配置してもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、底部の上方(矢印Z1方向)にローターを配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、底部の下方にローターを配置してもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、先端および側壁に開口を有するパイプをロータの外側に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、パイプを設けなくともよい。
【0119】
なお、上記実施形態における各種の寸法(間隔CL1、CL2、底部(凸部)の厚さt1、保液部の深さt2など)などはあくまでも例示に過ぎず、本発明はこれに限られない。各部の寸法は、一度に分散処理を行う生体試料の量や、分散処理の対象となる細胞の種類に応じて変更すればよい。
【符号の説明】
【0120】
1 細胞分析装置
52 細胞分散部(細胞分散装置)
62、162 底部(第1部材)
63、163 孔部
64 凸部(せん断力付与部)
65 保液部(凹部)
70 ローター(第2部材)
71 溝
80 モータ(駆動部)
90 パイプ(筒体)
CL1 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集した細胞を分散する細胞分散装置であって、
上面から下面まで貫通する孔部を有する第1部材と、
前記第1部材の上面または下面と所定の間隔を隔てて配置され、その外周に螺旋状の溝を有する第2部材と、
前記第2部材を回転駆動する駆動部と、
前記第2部材の外側に配置された筒体と、を備え、
前記駆動部により前記第2部材を回転させることにより、前記第1部材と前記第2部材との間に凝集した細胞を供給するとともに、供給された凝集細胞を分散するように構成されている、細胞分散装置。
【請求項2】
前記第1部材の孔部は、凝集した細胞が通過可能な大きさを有する、請求項1に記載の細胞分散装置。
【請求項3】
前記筒体は、その先端および側部に開口を有しており、
前記筒体の前記先端の開口および前記側部の開口の一方を流入口とし、他方を流出口としたときに、細胞が、流入口から前記筒体内側、前記流出口、前記筒体外側、前記流入口へと循環する循環流が形成されるように構成されている、請求項1または2に記載の細胞分散装置。
【請求項4】
前記第1部材は、前記筒体の先端の開口に配置され、
前記筒体の前記側部の開口を流入口とし、前記先端の開口に配置された前記第1部材の孔部を流出口として細胞が循環する循環流が形成されるように構成されている、請求項3に記載の細胞分散装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記第2部材の回転に伴って凝集細胞にせん断力を付与するためのせん断力付与部を備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞分散装置。
【請求項6】
前記せん断力付与部は、前記第2部材側に突出する凸部を含む、請求項5に記載の細胞分散装置。
【請求項7】
前記第1部材の孔部は、細長形状である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞分散装置。
【請求項8】
前記孔部は、その長手方向が前記第2部材の回転方向と交差する方向に延びている、請求項7に記載の細胞分散装置。
【請求項9】
前記第1部材は、前記第2部材側の表面に設けられた凹部を有し、
前記孔部は、前記凹部内に配置されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞分散装置。
【請求項10】
前記第1部材は円形であり、前記第2部材の回転方向と交差する方向に延びるとともに、前記第2部材側に突出する凸部をさらに有し、
前記凹部は、前記第2部材の回転方向と交差する方向に延びる前記凸部を境界として複数設けられている、請求項9に記載の細胞分散装置。
【請求項11】
前記駆動部により前記第2部材を回転させることにより、前記第1部材の凸部と前記第2部材との間で凝集した細胞を分散するように構成されている、請求項10に記載の細胞分散装置。
【請求項12】
前記第1部材の孔部は、前記凸部を境界とする複数の前記凹部内の前記駆動部による前記第2部材の回転方向側の端部にそれぞれ配置されている、請求項10または11に記載の細胞分散装置。
【請求項13】
前記第1部材の上面または下面と前記第2部材との所定の間隔は、凝集した細胞は通過不能で、かつ、分散された単一の細胞は通過可能な間隔である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞分散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−24061(P2012−24061A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168951(P2010−168951)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】