説明

細胞及び/又はバクテリア培養用の培養/暴露装置

細胞及び/又はバクテリア培養のための培養/暴露装置は、本体4の一部を構成する培養容器11、13、15の収納部10、12、14並びに培養容器11、13、15へ試験雰囲気を供給する導入路を備えた投入口20を有し、互いに簡単に着脱可能な複数のモジュール6、8、16、18から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞及び/又はバクテリア培養用の培養/暴露装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような培養/暴露装置は周知であり、例えば、試験雰囲気が細胞培養にどのような影響を及ぼすかを確認するのに用いられる。特に、ガス、エアロゾル及び/又は特定の作用物質が細胞及び/又はバクテリア培養にどの様な影響を及ぼすかが研究されている。
【0003】
この技術分野における培養/暴露装置は特許文献1及び特許文献2に開示されている。これらの装置は、少なくとも2つの培養容器の収納部及び1つの導入路を備えている。流量制御部から培養容器へと流路が通じており、培養容器内の細胞培養の試験雰囲気を設定している。細胞培養の試験雰囲気が設定された後に、培養の手順に従って培養試験が行なわれる。このようにして、試験雰囲気が細胞培養に影響を及ぼすか否か又はどの様な点が培養に影響及ぼすかを推論する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1049765B1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10211324A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、細胞及び/又はバクテリア培養の試験結果の精度並びに再現性を改善することを目的としている。更に、培養試験の可能性を拡げることも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は請求項1〜3に記載の発明により解決される。
【0007】
本発明の第一の基本思想は、簡単に作動でき且つ簡単に組み合わせができるように、装置をモジュール化することである。個々のモジュールは、他のモジュールと交換できるように構成される。更に、モジュールを内部で交換可能に構成すること、すなわち個々のモジュールの基本的な構成要素が他のサブモジュールと交換可能にすることも考えられる。このようにして、極めて柔軟に装着可能な装置がもたらされる。
【0008】
本発明の思想は、細胞及び/又はバクテリア培養に関する試験の可能性を拡げ、要求される培養の試験雰囲気を事前に取り扱えることにある。本発明では、本体に連結可能な調製モジュールの導入も考慮している。本発明では、調製モジュールが交換可能に構成されているので、所望の試験に適した調製モジュールを使用することができる。
【0009】
例えば、特に調製モジュールを用いて、事前に試験雰囲気を処理せずに、試験雰囲気を投入口から培養容器へと導入することが可能である。
【0010】
それに対して、試験雰囲気に含まれる粒子をできるだけ培養床に析出させることが必要な場合、調製モジュールにより静電気で荷電された粒子が培養容器に導入される。この場合、調製モジュールは前処理手段の代りに、荷電手段と交換される。
【0011】
これにより、細胞及び/又はバクテリア培養に関する試験の可能性が拡がる。
【0012】
本発明では、更に、工具を用いずに調製モジュールを本体と連結させる連結手段を備えている。この実施形態では、調製モジュールは工具無しで交換できるので、交換が迅速且つ簡単に行なわれる。
【0013】
更に、上述の実施形態では、調製モジュールと本体部とが噛み合って連結させる連結手段が備えられている。このように、調製モジュールが本体部に確実に保持される。
【0014】
また、調製モジュールを有する実施形態には、本体部に着脱可能に連結された培養容器に静電場を生成させる台座モジュールが備えられている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例による装置の分解斜視図
【図2】図1の装置の組立て斜視図
【図3】図2の装置の縦断面図
【図4】図2の装置の切断斜視図
【図5】本発明による装置の試料収納モジュールの分解斜視図
【図6】試料収納モジュールの摸式平面図
【図7】本発明の別の実施例による装置の解放状態を示す斜視図
【図8】図7の装置の閉鎖位置を示す斜視図
【図9】図7の装置の部分垂直断面図
【図10】図7の装置の裏面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、本体部はエアロゾル導入モジュールと試料収納モジュールから構成され、エアロゾル導入モジュールと試料収納モジュールは配管で互いに導通して、駆動装置により導入路が培養容器と流体工学的に連結された閉鎖位置と、導入路が培養容器と流体工学的に分離された開放位置と切り換えられる構成によって本発明の課題を解決している。
【0017】
このようにして、エアロゾル導入モジュールの試料収納モジュールからの流体工学的な分離が簡単に行なわれことにより、培養/暴露装置が操作し易くなる。更に、エアロゾル導入モジュールと試料収納モジュールとの分離に要する時間が短いので、閉鎖位置を固定する、例えば、ネジ、クランプなどの係止モジュールが不要となる。
【0018】
次に、エアロゾル導入モジュールと試料収納モジュールとの配管による、エアロゾル導入モジュールと試料収納モジュールの流体工学的な連結について詳述する。
【0019】
エアロゾル導入モジュールと試料収納モジュールとの相対的な動きは、様々な方法で行なわれる。本発明では、エアロゾル導入モジュールと試料収納モジュールを同時に動かすことも、前後して動かすことも可能である。更に、試料収納モジュールを可動な状態に保って、単にエアロゾル導入モジュールを試料収納モジュールに対して動かすことも可能である。そればかりではなく、エアロゾル導入モジュールを固定して試料収納モジュールを動かす逆の動作も可能である。
【0020】
本発明では、駆動装置の手動操作も可能である。これにより、安価な培養/暴露装置が得られる。更に、この操作は電力を必要としない。
【0021】
本発明の別の実施例による装置は、エアロゾル導入モジュールを直線状に案内して、試料収納モジュールとの関係を閉鎖及び開放とするために、第一の案内部材を少なくとも1つ備えている。これにより、エアロゾル導入モジュールと試料収納モジュールとが正確、迅速且つ確実に連結できる。
【0022】
そればかりではなく、本発明では、エアロゾル導入モジュールを自動的又はほぼ自動的に移動させて閉鎖及び開閉状態とする第一の案内部材が少なくとも1つのバネ、特にコイルバネを備えていることを特徴としている。バネは、ある移動方向に押圧されてエネルギーが貯蔵され、反対方向に運動エネルギーとして放出される。
【0023】
貯蔵されたエネルギーにより自動的に開放位置となるように、バネを閉鎖位置となる方向に動かして押圧することが可能である。伸張又は圧縮バネとしてのバネの特性は、バネの構造並びに動かす方向にも異存する。そのため、開放又は閉鎖位置に到達を促進するようにバネを用いることも可能である。少なくとも1つのバネをエアロゾル導入モジュール又は試料収納モジュールに配置することにより、エアロゾル導入モジュールの移動も試料収納モジューの移動も可能とする。バネは、エアロゾル導入モジュール及び/又は試料収納モジュールの運動促進に単独で用いても、例えば、ワイヤにより加圧して用いてもよい。
【0024】
更に、本発明は、エアロゾル導入モジュールが試料収納モジュールに対して相対的に動くように、入力を駆動力へと変換するように、且つ/又は試料収納モジュールがエアロゾル導入モジュールに対して相対的に動くように、入力を駆動力へと変換するように、駆動装置に少なくとも1つの駆動機構が備えられている。それにより、エアロゾル導入モジュールを試料収納モジュールに対する相対的に動かし、且つ/又は試料収納モジュールをエアロゾル導入モジュールに対して相対的に動かすのに必要な力が軽減される。
【0025】
更に、エアロゾル導入モジュールを試料収納モジュールに対して相対的に動かし、且つ/又は試料収納モジュールをエアロゾル導入モジュールに対して相対的に動かすように、駆動機構は、少なくとも1本のワイヤ、帯、又は鎖状の牽引手段を備えている。このようにして、駆動機構の可動部分の質量が少なくなるようにして、駆動機構の効率を高めている。これにより、入力の受け入れ並びに駆動力の伝達は空間的に柔軟に行なうことが可能であり、コスト的に有利である。
【0026】
本発明による別の構成では、駆動機構は、エアロゾル導入モジュールの特に、垂直な下降運動を試料収納モジュールへの入力に変換する。
【0027】
更に、別の実施形態では、駆動機構は、入力をエアロゾル導入モジュールが試料収納モジュールへと特に垂直又はほぼ垂直に降下するように変換する。
【0028】
更に、本発明では、駆動装置は、少なくとも1つの入力の実行手段を備えていることが特徴である。実行手段は、エアロゾル導入モジュール又は試料収納モジュールの移動の開始に用いられる。実行手段としては、例えば、電気、油圧又は空圧駆動される種々の手段が用いられる。更に、特に医薬分野で好まれる形態として、衛生的な要求により、簡単で安価な方法である、例えば、クランク、梃子機構などの手動の実行手段を用いてもよい。
【0029】
更に、本発明では、試料収納モジュールを第一の案内部材に対して直角、すなわち水平方向に案内する第二の案内部材を備えている。第二の案内部材は、培養/暴露装置を手動操作で簡単に動かせるので、エアロゾル導入モジュール及び試料収納モジュールの互いの位置を簡単に決めることができる。そのため、短時間に培養容器の交換が可能となる。
【0030】
また、導入口は、分配口又は分配室を備え、その導入口から流路が同一状態にある個々の培養容器へと通じている。これにより、分配口又は分配室とそれぞれの培養容器との間に流路を通って、個々の培養容器へ試験雰囲気が確実に流される。このようにして、流路の長さに応じて、個々の培養容器の例えば煙などの雰囲気の組成が変えられるので、試験結果の質の低下を防ぐことができる。
【0031】
本発明では、簡単な手段を用いて、培養/暴露装置を駆使することにより、正確又は再現性の良い試験結果が得られる。
【0032】
本発明では、試験雰囲気として、主として、エアロゾルなどの粒子を含む気体を扱うが、別の雰囲気を用いてもよい。
【0033】
本発明では、培養容器の収納部が円周に沿って、好ましくは等間隔で配置されている。この実施形態では、個々の培養容器への流路は、簡素化されて同一の長さとなる。
【0034】
更に、導入口の出口端の長軸は円の中心に集約される。
【0035】
また、流路は、導入口の出口端の長軸にから傾いて培養容器へと通じている。この実施形態では、培養/暴露装置(以後単に、装置と称する)が簡単且つ小型に構成できる。
【0036】
流路は、例えば、チューブ又はパイプなど適宜、任意に形成できる。小型で且つ頑丈な装置を構成するように、分配口又は分配室及び流路が形成された本体に流路ブロックが備えられている。
【0037】
分配室又は分配口の長軸は、それぞれの流路と90°以下の角度を形成している。このようにして、障害の無い流れが得られる。特に、雰囲気中に保持されている粒子が、導入口の隅部に過度に沈積されるのを防ぐ。
【0038】
本発明では、培養/暴露装置の培養容器の温度制御を改善してより良好な試験結果が得られることも考慮している。このため、温度制御された流体が培養容器の周りを激しく流れて均一に温度制御されるように、培養容器が温度制御された流体の障害物となるように収納部が流路に設置される。例えば、凝縮物が生成しないように、流体の温度を選択することにより培養容器、従って培養床が正確に温度制御される。温度制御された流体の流路に収納部を設置することにより、温度制御された流体が、流入口から流出口へと短絡して流れないようになる。
【0039】
本発明による装置は、内壁が円形の空間を備えている。このため、培養容器の温度制御が均一になるように、温度制御された流体の空間内の流れが満足すべき状態となる。
【0040】
温度制御された流体の流れの状態を改善するために、収納部は円形の外壁を備えている。この実施形態では、円形の外壁の培養容器を用いるので、温度制御された流体は、極めて満足すべき状態で流される。
【0041】
更に、本発明では、少なくとも2つの流入口及び/又は少なくとも2つの流出口を備えてもよい。本実施形態では、空間は、1つ又は複数の流入口と1つ又は複数の流出口との間に少なくとも2つの流路が形成される。それぞれの培養容器が温度制御された流体の流れの障害物となるように、それぞれの流路に収納部が配置される。
【0042】
培養容器の収納部が少なくとも2つ備えられると、前述の実施形態が更に改善される。
【0043】
更に、収納部は空間の内壁と同心円状に配置されることが好ましい。
【0044】
基本的には、温度制御された流体は気体が使用される。簡単且つ正確に温度制御するには、温度制御された流体は、液体であることが好ましい。
【0045】
以下、本発明の利点、特徴及び詳細について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0046】
図1には、特に細胞/バクテリア培養に適した培養/暴露装置を装置2として示す。装置2は、4つのモジュールから構成されている。細胞及び/又はバクテリア培養床は、試料収納モジュール8に配置される。図示された実施例では、収納部10、12、14は、培養容器11、13、15を収納するように形成されている。装置を使用する際に、培養容器11、13、15には、細胞培養インサートとして、細胞培養床が収納されて、所定の試験雰囲気下において培養される。
【0047】
試料収納モジュール8には、調製モジュール16が載置されたエアロゾル導入モジュール6が連結されて、本体部4を構成している。
【0048】
この調製モジュールにより、試験雰囲気に含まれるべき粒子が静電的に送り込まれる。静電気を帯びた粒子を細胞培養床に析出させるように、台座モジール18が試料収納モジュール8に連結される。
【0049】
更に、調製モジュール16がエアロゾル導入モジュール6に係止されるように、係止機構36、36′が備えられている。
【0050】
本発明では、個々のモジュールが別の特性を有するモジュールと交換可能に構成されている。更に、個々のモジュールは種々の要求に適合できるようにモジュール化できる。モジュールの発展形態、交換性又は構造については後述する。
【0051】
図2は、エアロゾル導入モジュール6が、試料収納モジュール8と連結され、調製モジュール16がエアロゾルと連結され且つ台座モジュール18が試料収納モジュール8と連結された状態の装置2を示す斜視図である。
【0052】
調製モジュール16を、例えば試験雰囲気が静電的に設定される挿入装置として形成してもよい。試験雰囲気の調製が必要なければ、このモジュールを試験雰囲気に湿度を付与する加湿器又は単なる投入アダプターと交換してもよい。
【0053】
図3に示す調製モジュール16には、例えば煙などの粒子が添加された気体状の媒体を装置2へ導入して試験雰囲気を設定する投入開口部20が備えられている。
【0054】
培養容器11、13、15に試験雰囲気が設定できるように、装置2は導入路22を備え、気体状の媒体が調製モジュール16からエアロゾル導入モジュール6を通って分配室24へと流れるように構成されている。この分配室は、流路ブロック30に備えられている。前記分配室から個々の培養容器へ流路が通じている。図示された例では、3つの収納部10、12、14、すなわち3つの培養容器11、13、15には、図3の断面図に明示された流路26に相当する3つの流路が割当てられる。流路26の詳細は後述する。
【0055】
図4では、3つの流路が、装置2の周りを収納部10、12、14に対応して互いに約120°の間隔をおいて配置された状態が図示されている。当然のことながら、必要に応じて、2つ又は4つ以上の収納部、すなわち培養容器に対応して、流路26が配置される。
【0056】
培養容器の試験雰囲気は、分配室24から径方向に外方に伸張して下方へと曲がっている流路からの流れにより決定される。培養容器への流れを改善するように、流路26の端には、例えば、特許文献2に記載されているような末広がりの開口部28が形成されている。
【0057】
図には、エアロゾル導入モジュール6の内部構造も示されている。開口部28は、要求に応じて、位置又は径を選択できる交換可能なエアロゾルノズルを備えてもよい。開口部28には、エアロゾルノズルの径に適合する交換可能な格子状インサートを備えてもよい。エアロゾルノズルは、スクリーン無しでも有してもよい。
【0058】
更に、エアロゾル導入モジュール6に、ホース取付部9(図2参照)又はホトメータを備えてもよく、且つ例えば、閉鎖部材7(図2参照)により閉鎖される加熱気体又は湿気の導入する開口部に温度又は湿度センサを備えてもよい。
【0059】
図1及び図3から明らかなように、本実施例では、試料収納モジュール8は回転対称であり、培養容器の収納部10、12、14は回転対称軸に同心状に円周に沿って配置されている。図示された実施例では、収納部10、12、14は、円周上に互いに等距離を保って配置されている。すなわち、収納部10、12、14は、円周上に互いに120°ずれて配置されている。
【0060】
試料収納モジュール8は、内部モジュールとして構成してもよい。これは、特に交換可能な培養容器に関連することである。内部モジュールは、種々の型及び寸法の細胞培養皿又はペトリ皿として設置可能である。種々の皿に対して種々のアダプターが備えられる。
【0061】
次に本発明の作用について説明する。
【0062】
装置2を使用する際には、例えばタバコの煙などの試験雰囲気が投入開口部20を通して調製モジュール16内へ流されて、雰囲気中の微粒子が静電気で荷電される。試験雰囲気は調製モジュール16から導入路22、そして分配室24へと流される。試験雰囲気の一部は、分配室24から流路26を通って培養容器11、13、15へと流されて培養容器内の、例えば細胞培養又はバクテリア培養などの培養床に到達する。
【0063】
台座モジュール18により培養床に電場を生成させて、試験雰囲気中に保持されている粒子を培養床に析出させることが必要である。分配室24から個々の培養容器11、13、15まで試験雰囲気の流れる距離を同一にすることにより、流れる距離の差異のために誤った測定値とならないように、個々の培養容器の試験雰囲気中の粒子の濃度が同一に保たれる。
【0064】
図示した実施例では、流路26を介して試験雰囲気の流れが培養容器11、13、15へと簡単に導入できる。培養容器11、13、15へと導入されない流れは、流路ブロック30内に形成され分配室24と連結した軸方向の孔32(図3参照)及び孔32と連結した径方向の孔34(図4参照)を通って排出される。しかし、本発明では流れの全てを培養容器11、13、15に導入してもよい。
【0065】
図4から明らかなように、回転対称に形成された分配室24の長軸は破線Aで示され、破線Bで示される流路26の長軸は、破線Aに対して90°より小さい角度α、本実施例では約45°で交わっている。このようにして、流れの突然の変化又は滞留により、均一な流れが妨げられることはない。しかしながら、図4に示すような、漏斗状の凝縮分離装置17を備えている場合には、上記のことは当てはまらない。
【0066】
培養容器11、13、15に収納されている細胞及び/又はバクテリア培養床が、試験雰囲気に満たされた後に、試験雰囲気は培養容器11、13、15から排出される。排出の技法及びやり方に関しては、本発明の主旨では無いので、これ以上の説明は省略する。
【0067】
実施例には、工具を使わずに調製モジュール16をエアロゾル導入モジュール6に連結させる連結手段が示されている。連結手段は、2つの係止機構36、36′(図1参照)を備えている。係止機構36′も同様に構成されているので、以下、係止機構36について詳述する。係止機構36は、エアロゾル導入モジュール6に装着された垂直な回転軸の周りを回転可能で2つアームを有する梃子として形成されている。アーム38は係止機構36を回転軸の周りに回転させる作用アームとして形成され、アーム40は調製モジュール16と噛み合うアームとして形成されている。このため、調製モジュール16は、周囲に環状溝42を備え、この溝にアーム40が噛み合うように構成されている(図1参照)。図1は、調製モジュール16が、エアロゾル導入モジュール6と連結されていない状態を示す。
【0068】
調製モジュール16をエアロゾル導入モジュール6と連結するために、調製モジュール16はエアロゾル導入モジュール6に載置される。次いで、係止機構36、36′は、ネジ棒である回転軸の周りでそれぞれが回転されてアーム40、40′が環状溝42と噛み合って下方へ押圧されることにより、噛み合い及び摩擦力が作用する。係止機構のネジ棒を左ネジ又は右ネジに形成してもよい。調製モジュール16を本体4から開放するには、アーム40、40′が環状溝42から離脱するように係止機構36、36′を回転させる。
【0069】
図2は、調製モジュール16がエアロゾル導入モジュール6と連結された状態を示す。試験の要求によっては、調製モジュール16は、例えば直接暴露モジュールなど他の調製モジュールと迅速且つ簡単に交換できる。
【0070】
図5から明らかなように、本実施例では、収納部10、12、14は円形の外壁を備え、ガラス管として形成されている。また、図から明らかなように、試料収納モジュール8は、円形の内壁37を備え、ガラス管として形成されている。試料収納モジュール8の底部39、収納部10、12、14の外壁、試料収納モジュールの内壁37並びに試料収納モジュール8の蓋43の間に、温度制御された液体が通過する液密な空間41が存在する。温度制御された液体は、2つの流入口44、44′から空間41に導入され、本実施例ではオーバーフローとして形成された流出口46から排出される。
【0071】
図6は空間41の摸式平面図であり、図から明らかなように、例えば、収納部10は、流入口44から流出口46へと流れる液体の流路の間に配置されているので、温度制御された液体が収納部10の周りを強く且つ均一に流れる。この様にして、収納部10、すなわち収納部10に収納されている培養容器11が正確に且つ均一に温度制御される。収納部12及び14に収納されている培養容器13及び15も同様に温度制御される。試験状態では、培養容器は、細胞培養床の下のレベルまで培養液で満たされ培養床は浸透性膜により分離されている。
【0072】
更に、図から明らかなように、収納部10は流入口44と流出口46を結ぶ線48上に配置されている。同様に、収納部14は流入口44′と流出口46を結ぶ線48′上に配置されている。
【0073】
図6に示すように、本実施例では、収納部10、12、14は、内壁37と同心の破線で示される円50の外周線上に等間隔で配置されている。
【0074】
本発明では、凝縮物が形成されないように、培養容器を正確且つ簡単に温度制御可能である。このようにして、培養/暴露装置を用いての細胞又はバクテリア培養試験が改善される。
【実施例2】
【0075】
図7〜図10には、エアロゾル導入モジュール6が試料収納モジュール8に対して、2つの第一の案内部材216、216′により垂直に案内されて動かされる実施例を示す。第一の案内部材216、216′のそれぞれが、互いに摺動する2つの円筒体218、218′及び220、220′により形成されている。円筒体218、218′がエアロゾル導入モジュール6に連結され且つ円筒体220、220′が支持盤221に連結されて、円筒体が互いに垂直方向226に摺動可能に構成されている。
【0076】
エアロゾル導入モジュール6を開放して、培養容器11、13、15が試料収納モジュール8に収納可能となる。更に、試料収納モジュール8は、第二の案内部材222により、第一の案内部材が案内される方向に対して直角な水平方向224に案内される。
【0077】
図9、10に示すように、案内部材216、216′によりエアロゾル導入モジュール6の垂直方向に入力する駆動機構228が支持盤221の下側に配置されている。エアロゾル導入モジュールを動かすために、手動操作される回転円板230により形成される操作手段が装置2に備えられている。手動操作される回転円板230は、支持盤221の凹部232に配置されている。回転円板230と第一の案内部材216、216′間の動的連結については後述する。
【0078】
回転円板230と駆動機構228を組み合わせでは、ワイヤ238、238′(図9参照)に掛かる力と回転円板230の回転トルクとの比は、1/sin(回転円板の回転角度)に比例するので、回転円板230の操作の終端(180°の閉鎖位置)ではワイヤに大きな力が生成されて、エアロゾル導入モジュールと試料収納モジュール間の気密性が高まるとの利点がある。
【0079】
図8は、エアロゾル導入モジュール6を下方に試料収納モジュール8の方へと移動させて、装置2が閉鎖された状態を示す。エアロゾル導入モジュール6が、試料収納モジュール8と閉鎖位置になることにより、流体工学的にも2つのモジュールが連結される。
【0080】
図9は、判り易いように詳細を省略した図7に示す装置2の部分垂直断面図である。
【0081】
エアロゾル導入モジュール6を自動的に開放位置(図7参照)へと移動するために、案内部材216、216′には、閉鎖位置では押圧されているコイルバネとして形成されたバネ234、234′が備えられているので、開放位置にする際にはバネのエネルギーがエアロゾル導入モジュール6の運動エネルギーへと変換される。
【0082】
バネ234、234′は、円筒体220、220′の内部236、236′に装着されて円筒体218、218′が下方へ移動すると加圧される。バネ力により、開放位置への移動が促進される。
【0083】
円筒体218、218′には、ワイヤ238、238′が装着され、これを始動することにより案内部材216、216′が駆動される。ワイヤ238、238′の直線運動は、駆動機構228により変換される。すなわち、回転円板230の回転が、第一の案内部材216、216′の直線運動に変換される。
【0084】
ワイヤ238、238′に張力を付与するように、円筒体218、218′の内部に補助バネ240、240′が装着されている。これらのバネは、それぞれのワイヤ238、238′の好ましくない長さの変化を均一化するのにも用いられる。ワイヤ238、238′は、それぞれの補助バネ240、240′に備えられた保持体242、242′に固定される。
【0085】
保持体242、242′は、調製ネジ243、243′に装着されて、補助バネ240、240′の張力も調製並びに互いに逆方向に動くワイヤ238、238′の長さの差の均一化に用いられる。
【0086】
図10は、培養/暴露装置の裏面斜視図である。駆動機構228の一部は支持盤221の裏面に配置されている。動きの方向を変更できるように、2つのワイヤ238、238′は、それぞれの固定点244、244′により手動の回転円板230に装着され、その固定点からそれぞれの第一の案内部材216、216′へと配分されている。回転円板230を回転軸246の周りに回転させるにつれて、固定点244、244′から案内ローラ252、252′への行程が短くなる。ワイヤ238、238′の長さを一定か又はほぼ一定にすることにより、上記行程の変化が、第一の案内部材216、216′の下降又は上昇運動へと変換される。これにより、回転円板230の回転が、エアロゾル導入モジュール6の上昇又は下降となる。回転円板230はストッパー248を備え、支持盤221に配置された対向ストッパー250、250′との作用により、固定点244、244′の動きが制限されて第一の案内部材216、216′の動きが制限されその結果エアロゾル導入モジュール6の上昇運動が制限される。
【0087】
回転円板230における固定点244、244′の配置に応じて固定点の動きを更に制限できる。すなわち、回転円板230の自動的な動きを防ぐように開放又は閉鎖位置に死点を設定することにより、回転円板230を作動させて初めてエアロゾル導入モジュール6の開放位置又は閉鎖位置から動くことが可能となる。
【0088】
回転円板230が、意図せず死点位置から動かないように、例えば閉鎖位置に静止させるために、ストッパー248と対抗ストッパー250、250′との組み合わせにより死点位置を越えて回転円板230を回転させると、回転円板230は自動的には逆回転しないようになる。このことにより、エアロゾル導入モジュール6は、再び開放位置へと動き、エアロゾル導入モジュール6と試料収納モジュール8の間のパッキング(不図示)が緩められて大きな空隙が形成される。気密性を弱めるか又は高めるこの大きな空隙を阻止するために、補助バネ240、240′が備えられ、この補助バネによりエアロゾル導入モジュール6の開放位置への意図しない動きが阻止されるか又は軽減される。
【0089】
更に、補助バネ240、240′は、エアロゾル導入モジュール6と試料収納モジュール8の間の費用の掛かる流体工学的連結を保障する許容差を均一化する。
【0090】
それぞれのワイヤ238、238′の動作方向を変更させる案内ローラ252、252′が駆動機構228に備えられている(図9参照)。これにより、回転円板230の回転運動が、第一の案内部材216、216′を介してエアロゾル導入モジュール6が下方へ移動する直線運動に変換される。既に述べたように、回転円板230を回転させて死点を解消した後に、上昇運動が行なわれる。
【符号の説明】
【0091】
2 装置
4 本体部
6 エアロゾル導入モジュール
7 閉鎖部材
8 試料収納モジュール
9 ホース取付部
10、12、14 収納部
11、13、15 培養容器
16 調製モジュール
17 凝縮分離装置
18 台座モジュール
20 投入開口部
22 導入路
24 分配室
26 流路
28 開口部
30 流路ブロック
32 (軸方向の)孔
34 (径方向の)孔
36 係止機構
37 内壁
38 (作用)アーム
39 底部
40 アーム
41 空間
42 環状溝
43 蓋
44 流入口
46 流出口
48 線
50 円
216 第一の案内部材
218 円筒体
220 円筒体
221 支持盤
222 第二の案内部材
224 水平方向
226 垂直方向
228 駆動機構
230 回転円板
232 凹部
234 バネ
236 (円筒体220の)内部
238 ワイヤ
240 補助バネ
242 保持体
243 調製ネジ
244 固定点
246 回転軸
248 ストッパー
250 対抗ストッパー
252 案内ローラ
A (分配室24の)長軸
B (流路26の)長軸
α 長軸Aと長軸Bの交わる角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞及び/又はバクテリア培養のための培養/暴露装置であって、
本体(4)の一部を構成する培養容器(11、13、15)の収納部(10、12、14)並びに培養容器(11、13、15)へ試験雰囲気を供給する導入路を備えた投入口(20)を有し、
前記装置は、互いに簡単に着脱可能な複数のモジュール(6、8、16、18)から構成されていることを特徴とする培養/暴露装置。
【請求項2】
細胞及び/又はバクテリア培養のための培養/暴露装置であって、
本体(4)の一部を構成する培養容器(11、13、15)の収納部(10、12、14)、並びに培養容器(11、13、15)へ試験雰囲気を供給する導入路を備えた投入口(20)を有し、
前記導入路には、分配口又は分配室(24)が備えられ、該分配口又は分配室から同一長さの流路(26)が個々の培養容器へ通じていることを特徴とする培養/暴露装置。
【請求項3】
細胞及び/又はバクテリア培養のための培養/暴露装置であって、
本体(4)の一部を構成する培養容器(11、13、15)の収納部(10、12、14)、並びに培養容器(11、13、15)へ試験雰囲気を供給する導入路を備えた投入口(20)を有し、
収納部(10、12、14)は温度制御された流体が流される空間(41)に配置され、該空間には温度制御された流体が流入する流入口(44、44′)及び該流体が流出する流出口(46)が備えられ、前記流入口と流出口の間に前記流体の流路が形成され、培養容器(11、13、15)が前記流体の障害物となるように収納部(10、12、14)が前記流路に配置され且つ空間(41)は円形の内壁(37)を備えていることを特徴とする培養/暴露装置。
【請求項4】
投入口(20)は、エアロゾル導入モジュール(6)と着脱可能に連結される調製モジュール(16)に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項5】
係止機構(36、36′)により、工具を使わずに調製モジュール(16)をエアロゾル導入モジュール(6)に連結できることを特徴とする請求項4に記載の培養/暴露装置。
【請求項6】
前記係止機構は、調製モジュール(16)とエアロゾル導入モジュール(6)との間に噛み合い連結を形成していることを特徴とする請求項5に記載の培養/暴露装置。
【請求項7】
調製モジュール(16)は、試験雰囲気中に含まれる粒子に静電気を荷電するモジュールとして形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項8】
調製モジュール(16)は、直接暴露モジュールとして形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項9】
静電場を生成させる台座モジュール(18)が、試料収納モジュール(8)に着脱可能に連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項10】
本体(4)は、エアロゾル導入モジュール(6)及び試料収納モジュール(8)を備え、
試料収納モジュール(8)には、培養容器(11、13、15)用に少なくとも1つの収納部(10、12、14)が形成され、
エアロゾル導入モジュール(6)には、培養容器(11、13、15)へと試験雰囲気の流れを導く少なくとも1つの流路が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項11】
エアロゾル導入モジュール(6)は、駆動装置により、流体工学的に培養容器(11、13、15)と連結された閉鎖位置と流体工学的に分離された開放位置の間を試料収納モジュール(8)に対して相対的に案内部材に沿って案内されることを特徴とする請求項10に記載の培養/暴露装置。
【請求項12】
前記駆動装置は、手動操作できることを特徴とする請求項11に記載の培養/暴露装置。
【請求項13】
前記案内部材は、エアロゾル導入モジュール(6)及び試料収納モジュール(8)を閉鎖位置と開放位置の間を相対的に案内する少なくとも1つの第一の案内部材(216、216′)を備えていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の培養/暴露装置。
【請求項14】
前記駆動装置は、エアロゾル導入モジュール(6)を試料収納モジュール(8)に対して相対的に動かし且つ/又は試料収納モジュール(8)をエアロゾル導入モジュール(6)に対して相対的に動かすように、入力を駆動力に変換する少なくとも1つの駆動機構(228)を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項15】
駆動機構(228)は、エアロゾル導入モジュール(6)を試料収納モジュール(8)に対して相対的に動かし且つ/又は試料収納モジュール(8)をエアロゾル導入モジュール(6)に対して相対的に動かす駆動力を入力するために、少なくとも1本のワイヤ、帯又は鎖状の牽引手段を備えていることを特徴とする請求項14に記載の培養/暴露装置。
【請求項16】
駆動機構(228)は、入力された駆動力をエアロゾル導入モジュール(6)が試料収納モジュール(8)へと垂直に下方へ降下する動きに変換することを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の培養/暴露装置。
【請求項17】
前記駆動装置は、少なくとも1つの入力を生成させる実行手段を備えていることを特徴とする請求項14ないし請求項16のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項18】
試料収納モジュール(8)を前記第一の案内部材に対して直角の交わる水平方向に案内する第二の案内部材(222)を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項19】
培養容器の収納部(10、12、14)は、円の外周に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項18のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項20】
前記導入路の流出端の長軸は、前記円の中心と一致していることを特徴とする請求項19に記載の培養/暴露装置。
【請求項21】
流路(26)は、導入路(22)の流出端の長軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項1ないし請求項20のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項22】
本体(4)は、内部に分配口又は分配室(24)及び流路(26)が形成された流路ブロック(30)を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項21のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項23】
それぞれの流路(26)の長軸は、分配室(24)又は分配口の長軸に対して90°より小さな角度(α)で交わっていることを特徴とする請求項1ないし請求項22のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項24】
収納部(10、12、14)は、円形の外壁を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項23のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項25】
少なくとも2つの温度制御された流体の流入口(44、44′)が備えられていることを特徴とする請求項1ないし請求項24のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項26】
少なくとも2つの温度制御された流体の流出口(46)が備えられていることを特徴とする請求項1ないし請求項25のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項27】
少なくとも2つの収納部(10、12、14)が備えられていることを特徴とする請求項1ないし請求項26のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項28】
収納部(10、12、14)は、空間(41)の内壁と同心の円の外周に沿って配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項27のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。
【請求項29】
前記温度制御された流体は、温度制御された液体であることを特徴とする請求項1ないし請求項28のいずれか1項に記載の培養/暴露装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−504427(P2012−504427A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530399(P2011−530399)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007054
【国際公開番号】WO2010/040473
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511087224)
【Fターム(参考)】