説明

細胞反応容器及び細胞機能測定方法

【課題】 抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に対する血液および/または細胞液の感受性を、簡便に精度良く、かつ安全に測定することを可能とする細胞反応容器を提供する。
【解決手段】 抗酸菌および/または抗酸菌由来成分と血液および/または細胞液との反応時において、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分の濃度が0.0001mg/mL〜10mg/mLの範囲となるように抗酸菌および/または抗酸菌由来成分が収容されている、細胞反応容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に対する血液および/または細胞の感受性を、簡便に精度良く、かつ安全に測定し得る細胞反応容器、及びそれを用いた細胞機能測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顆粒球、単球、マクロファージ、リンパ球等の白血球は、血液中や各臓器、器官において、炎症反応、免疫反応などの種々の生体防御反応に関し、様々な役割を担っている。これらの細胞は、感染症、肝炎や腎炎などの炎症性疾患、慢性関節リウマチや喘息などの免疫・アレルギー性疾患、癌などの種々の病態において重要な働きをしており、病態の変動と共にこれらの細胞の機能が抑制されたり、増強されたりすることが知られている。また、これらの疾患の治療に、抗炎症剤、免疫抑制剤、免疫増強剤、抗癌剤等の種々の薬剤が用いられており、その際にもこれらの細胞の機能が抑制されたり、または増強されたりすることも知られている。そのため、各種疾患の病態や薬剤の効果あるいは副作用を把握し、治療指針を決定したり、薬剤の投与量やタイミングを決定するために、これらの細胞の機能を測定することが重要である。
【0003】
従来、病院の検査室や検査センターでは、細胞機能を測定するために、顆粒球貪食機能試験、顆粒球殺菌能(活性酸素産生能)試験、リンパ球幼若化試験等が行われてきた。また、最近では、フローサイトメトリー装置と各種免疫担当細胞表面抗原に対する蛍光標識モノクローナル抗体を用いた表面抗原試験等が行われるようになってきた。
【0004】
また、血液や血液から分離した白血球から、サイトカイン産生機能を調べる種々の方法についても報告されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、血液にリポ多糖(LPS)やレクチンを反応させ、産生誘導されたリンフォカインを測定する方法が開示されている。また、下記特許文献2および特許文献3には、特定の表面粗さを有する高分子材料や特定の化学構造を有する高分子材料と血液を接触させ、TNF−α、IL−1βの産生を誘導する方法が開示されている。また、下記特許文献4には、ヒト末梢血白血球からのサイトカインの産生誘導量を測定することによって、試験物質の免疫活性能力を測定する方法が開示されている。
【0006】
一方、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分は癌の免疫療法やアレルギー疾患などの種々の疾患の治療に幅広く用いられている。例えば、BCGや丸山ワクチンなどは癌の治療などに広く用いられている。また、BCGはアレルギー疾患の治療にも適用が試みられている。しかし、これらの抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に対する生体の感受性は個々人によって大きく異なるため、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に対する感受性を把握するための方法や器具の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平02−196961号公報
【特許文献2】特開平06−209992号公報
【特許文献3】特開平07−67955号公報
【特許文献4】特表平07−500905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から病院の検査室や検査センターで行われてきた前記細胞機能測定方法には、以下のような問題点があった。すなわち、これらの試験は、いずれも被検者から注射器で血液を採血後、ピペッティングなどの用手法の手段で血液を種々の容器に移し変えたり、細胞分離、細胞培養等の特殊な操作が必要であった。そのため、検査従事者は、肝炎、AIDSなどの種々の感染症に感染する危険性があった。また、これらの操作中に、血液試料中に種々の雑菌や埃などが混入する恐れがあり、これらの汚染物あるいは操作による物理的刺激によって、血液中の細胞が不必要に刺激され、測定結果に悪影響を及ぼしたり、測定結果がバラつき、精度良く測定できないといった問題があった。また、従来の試験法には、上記のような、細胞分離、細胞培養、顕微鏡測定等の特殊な技術が要求され、測定操作が面倒で、測定に時間がかかり、RI施設やフローサイトメーターなどの高価な装置が必要であるという問題もあった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に対する血液および/または細胞液の感受性を、簡便に精度良く、かつ安全に測定できる細胞反応容器を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、簡便に精度良く安全に抗酸菌および/または抗酸菌由来成分などに対する感受性を調べることにより、癌やアレルギー疾患等の治療効果を高める細胞機能測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る細胞反応容器は、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分と血液および/または細胞液との反応時において、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分の濃度が0.0001mg/mL〜10mg/mLの範囲となるように抗酸菌および/または抗酸菌由来成分が収容されていることを特徴とする。
【0011】
第1の発明に係る細胞反応容器のある特定の局面では、細胞反応容器は減圧および/または密封されていることを特徴とする。
【0012】
第1の発明に係る細胞機能測定方法は、本発明に従って構成された細胞反応容器を用いて、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に血液および/または細胞液を接触させることにより、血液および/または細胞液中に産生される生理活性物質を測定することを特徴とする。
【0013】
第2の発明に係る細胞機能測定方法は、血液および/または細胞液が収容されている細胞反応容器を用いて、細胞反応容器中に血液および/または細胞液と反応する抗酸菌および/または抗酸菌由来成分を、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分と血液および/または細胞液との反応時において、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分の濃度が0.0001mg/mL〜10mg/mLの範囲となるように注入し、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に血液および/または細胞液を接触させることにより、血液および/または細胞液中に産生される生理活性物質を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明の細胞反応容器は、血液および/または細胞液の採取から、血液および/または細胞液と抗酸菌および/または抗酸菌由来成分との接触反応まで簡便に精度良く安全に行い得るようにあらかじめ容器内に抗酸菌および/または抗酸菌由来成分を収容している。さらに、本発明に係る細胞反応容器では、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分と血液および/または細胞液との反応時において、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分の濃度が0.0001mg/mL〜10mg/mLの範囲とされている。よって、本発明に係る細胞反応容器を用いれば、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に対する血液および/または細胞液の感受性を、簡便に精度良く、安全に測定することができる。
【0015】
従って、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分などによる治療や各種免疫疾患におけるさまざまな薬剤での治療において、治療効果の事前予測、治療効果の把握、治療後の容態把握などを評価できる。
【0016】
第1の発明に係る細胞反応容器があらかじめ減圧および/または密封されていると、反応に必要とされる血液および/または細胞液の量を容易に採取することができ、また不必要に血液および/または細胞液が刺激されるおそれがない。
【0017】
第1の発明に係る細胞機能測定方法では、血液および/または細胞液と抗酸菌および/または抗酸菌由来成分との接触反応を細胞反応容器内で行い、血液および/または細胞液中に産生される生理活性物質を測定する。よって、被検者などから血液および/または細胞を採取後、用手法の手段で抗酸菌および/または抗酸菌由来成分を種々の容器に移し変えたり、また血液の移し替え・分注の操作や細胞分離、細胞培養等の操作を必要としない。従って、検査従事者は、肝炎、AIDSなどの種々の感染症に感染する危険性がない。
【0018】
さらに、血液および/または細胞試料中に種々の雑菌や埃などが混入する恐れもなく、これらの汚染物や種々の操作による細胞の不要な活性化または活性低下が惹起される問題もない。そのため、従来よりも、簡便に精度良く、安全に抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に対する血液および/または細胞液の感受性の測定が可能となる。
【0019】
第2の発明に係る細胞機能測定方法では、血液および/または細胞液を細胞反応容器に採取した後に、抗酸菌および/または抗酸菌由来成分を添加して反応させる。よって、血液および/または細胞液中に産生される生理活性物質を測定することができ、第1の発明に係る細胞機能測定方法と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明で用いられる抗酸菌および/または抗酸菌由来成分とは、例えば、BCG(Bacillus Calmette−Guerin)、BCG死菌、BCG−CWS(BCG−Cell Wall Skelton)、BCG菌体成分、BCG由来核酸成分、BCG由来脂質成分、結核菌、結核死菌、結核菌体成分、結核菌由来核酸成分、結核菌由来脂質成分、精製ツベルクリンなどが挙げられる。
【0021】
本発明で用いられる血液および/または細胞液とは、血液又は血液成分等に限らず、骨髄系細胞、表皮細胞、繊維芽細胞、肝細胞、骨芽細胞、血液幹細胞、樹状細胞、胚性幹細胞等の組織から採取した細胞や培養細胞、株化細胞、遺伝子導入細胞等の様々な細胞を含む液などが挙げられる。
【0022】
本発明の細胞反応容器には、必要に応じて血液が凝固しないように血液抗凝固剤を収容するのが好ましい。上記血液抗凝固剤としては、例えば、ヘパリン化合物、クエン酸化合物、シュウ酸化合物などが挙げられ、ヘパリンナトリウムなどが細胞の生物学的反応を阻害しないので好ましい。上記ヘパリンナトリウムの該容器内の収容量としては、該容器に血液が採取された時に、その血液中の濃度が低くなると血液凝固の恐れがあり、高くなると細胞に不測の活性化や不活性化を起こす恐れがあるので、4〜50u/mlが好ましい。
【0023】
本発明の細胞反応容器に、血液抗凝固剤を収容する必要がある場合の一例としては、血液のなかの白血球(リンパ球、顆粒球、単球)と刺激物質を反応させ、産生、遊離もしくは誘導される生理活性物質を測定する場合が挙げられる。また、本発明の細胞反応容器に、血液抗凝固剤を収容する必要がない場合の一例としては、培養細胞などの分離細胞を刺激して遊離される生理活性物質等を測定する場合が挙げられる。
【0024】
本発明の細胞反応容器の材質としては、例えば、プラスチックまたはガラスが挙げられる。上記プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0025】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂等が挙げられる。
【0026】
本発明の細胞反応容器は、反応に必要とされる血液および/または細胞液の量を採取できるよう、あらかじめ減圧されていてもよいし、また不必要に血液および/または細胞液が刺激されないように密封されていてもよい。そのために、通常、減圧密封に栓体が使用される。上記栓体の材質としては、例えば、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0027】
上記減圧の程度は、上記細胞反応容器内に常圧の血液などの検体が接触反応に必要な液量だけ、吸入されうる程度の圧力であればよく、その圧力は、採取しようとする検体の量によって決められる。すなわち、採取しようとする検体の量が多ければ多いほど減圧の程度を大きくする必要がある。
【0028】
採取する検体量は、細胞反応容器の容積によって異なるが、通常4〜5mlの容積の容器を用いる場合であれば、0.5〜2ml程度が好ましい。
【0029】
上記細胞反応容器としては、一端が開口し他端が閉塞してなる有底管体が好ましく、開口部は、栓体によって閉塞可能なものが好ましい。上記有底管体としては、例えば、反応後、上記生理活性物質を測定するための遠心分離操作に好適な試験管状のものがより好ましく、そのサイズとしては、外径が、5〜30mm、高さ20〜150mm程度が好ましい。
【0030】
上記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分の細胞反応容器内の収容状態としては、液状、粒子状、固体状いずれの状態であっても良い。上記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分を固定化する場合は、担体および/または容器内に共有結合、物理吸着などの公知の技術で固定化することができる。
【0031】
また、上記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分を収容する場合、反応させる血液1mLまたは細胞液1mLに対して抗酸菌および/または抗酸菌由来成分の乾燥重量として0.0001mg〜10mgとなるようにあらかじめ細胞反応容器内に収容していることが好ましく、より好ましくは0.001mg〜1mgであり、更に好ましくは0.01mg〜0.1mgである。抗酸菌および/または抗酸菌由来成分が0.0001mgより少ない場合及び多い場合のいずれにおいても、生理活性物質の産生を検出することができない。
【0032】
また、上記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分は、あらかじめ細胞反応容器内に収容されていることが望ましいが、第2の発明のように、血液および/または細胞液を細胞反応容器に採取した後に添加して反応させても何ら問題はない。
【0033】
本発明の細胞機能測定方法は、上記細胞反応容器内において、血液および/または細胞液と上記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分とを接触反応させ、血液や細胞液中に産生される生理活性物質を測定するものである。
【0034】
上記生理活性物質としては、例えば、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、腫瘍壊死因子β(TNF−β)、IL−1〜IL−27等のインターロイキン、INF−α、INF−β、INF−γ等のインターフェロン、G−CSF、GM−CSF、M−CSF等のコロニー刺激因子、RANTES等の種々のサイトカインやPGE2、PGI2等のプロスタグランジン、LTB4、LTC4等のロイコトリエン、一酸化窒素、活性酸素、ヒスタミン、血小板活性化因子(PAF)などの種々のケミカルメディエーターが挙げられる。また、上記生理活性物質としては、可溶性ICAM1などの接着因子、可溶性IL−2レセプターなどの可溶性サイトカインレセプターも挙げられる。
【0035】
本発明の血液や細胞液に産生される生理活性物質を測定する方法としては、公知の種々の測定方法を用いることができ、例えば、測定しようとする上記生理活性物質に対するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体及びペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの酵素及び各々の酵素の発色基質などを利用した酵素免疫測定方法などが挙げられる。
【0036】
本発明の細胞反応容器により細胞機能を測定する1実施態様を、以下に説明する。先ず、血管と上記細胞反応容器とを、例えばマルチプル注射針(両端が搾針でき、かつ連通されている採血針)を用いて連通させ、上記測定容器内に検体血液を吸入させる。次いで、上記測定容器を適度に振とうしながら、血液細胞と上記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分とを接触反応させ、血液細胞から生理活性物質を産生させる。反応後、静置もしくは遠心分離により、血球と血漿とに分離して、血液細胞から産生されたサイトカインなどの生理活性物質の血漿中濃度を、血漿中濃度の定量可能な試薬により定量する。
【0037】
以下に、血液細胞から産生された生理活性物質の血漿中濃度の定量方法の1様態をさらに詳しく説明する。
【0038】
先ず、血液と上記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分とを上記細胞反応容器内で接触反応させ、生理活性物質が産生された血液を1600Gで遠心して、血球成分と血漿成分に分離させる。次いで、分離された血漿を、上記生理活性物質に対するモノクローナル抗体を固定化したマイクロプレートのウェルに、ピペッティングにより添加し、37℃で2時間反応させる。次いで、反応後の血漿を吸引除去等の手段で廃棄し、さらに、未反応成分を除くため、Tween20等のノニオン系の界面活性剤を含有する中性pHの洗浄用緩衝液で上記ウェルを洗浄する。
【0039】
洗浄後、西洋わさびペルオキシダーゼを固定化した上記生理活性物質に対するポリクローナル抗体をピペッティングにより添加し、37℃で1時間反応させる。次いで、未反応の西洋わさびペルオキシダーゼ固定化抗体を除くため、上記ウェルを上記洗浄用緩衝液で洗浄した後、過酸化水素、テトラメチルベンジジンを含む基質溶液を添加し、5〜10分間反応させる。次いで、1M硫酸を添加し、反応を停止させて、酵素反応による基質の発色を450nmの吸光度から測定する。この測定値と既知濃度の上記生理活性物質を用いて作成した検量線から、上記生理活性物質の産生誘導量を測定する。
【0040】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート製の4mL用の採血管(12.6φ×75mm)に、乾燥BCGワクチン(日本ビーシージー製造社製)が0.83mg/mLの濃度で注射用生理食塩水(大塚製薬社製)にて懸濁された溶液を0.12mL添加した。次いで、管径に合うブチルゴム製の栓体を上記の採血管の開口部に、開口部を密栓しないように、軽く載せた後、減圧にできる容器内に置き、上記容器を減圧にしてゆき、570mmHgに減圧したところで、採血管の開口部を密栓し、減圧密封された細胞反応容器を作製した。
【0042】
次に 健常人ボランティアからマルチプル注射針を用いて採血し、ヘパリン加血液5mLを得た。採血後、採血容器にセットされたままのマルチプル注射針を上記細胞反応容器のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、細胞反応容器内に検体血液0.88mLを採取した。次いで、予め37℃に保温しておいた恒温器の中の転倒混和用ロッカープラットフォームに細胞反応容器をとりつけ、24時間、転倒混和した。混和後、細胞反応容器を3000rpm、4 ℃で10分間遠心して、上澄みの血漿を採取した。採取した血漿中のインターフェロン−γ(IFN−γ)量をモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定キットを用いて測定した。IFN−γ誘導量の測定は、ELISA KIT(日本抗体研究所社製、商品名:ヒトインターフェロン−γ測定キット)を用いて行った。尚、この測定方法の定量限界濃度は16pg/mLであった。
【0043】
(比較例1)
BCGワクチンの替わりに生理食塩水を加えたこと以外は実施例1と同様にした。
【0044】
(実施例1及び比較例1の評価)
実施例1および比較例1の結果を表1に示す。表1では各例とも3本の試験を実施した平均値を示した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から明らかなように、本発明の使用前の状態において、BCGがあらかじめ含有されている減圧密封された細胞反応容器を用いた場合に、BCG刺激による血液の感受性をIFN−γの産生能力を測定することで把握できることが明らかとなった。
【0047】
(実施例2〜7)
実施例1と同様にして、細胞反応容器に乾燥BCGワクチンが血液中濃度として0.0001mg/mL、0.001mg/mL、0.01mg/mL、0.1mg/mL、1.0mg/mL、10mg/mLとなるように細胞反応容器を作製し、健常人ボランティアから得たヘパリン加血液をこれら各細胞反応容器に0.88mLを採取した。これを実施例1と同様にして混和後、血漿中のIFN−γを測定した。
【0048】
(比較例2〜4)
実施例1と同様にして、細胞反応容器に乾燥BCGワクチンが血液中濃度として0mg/mL、0.00001mg/mL、50mg/mLとなるように細胞反応容器を作製し、健常人ボランティアから得たヘパリン加血液をこれら各細胞反応容器に0.88mLを採取した。これを実施例1と同様にして混和後、血漿中のIFN−γを測定した。
【0049】
(実施例2〜7及び比較例2〜4の評価)
結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表2から明らかなように、細胞反応容器内のBCGの濃度が0.0001mg/mL未満、もしくは10mg/mLより多いとIFN−γ産生を検出することができず、感受性の把握が不可能であるため、BCGの濃度は、0.0001mg/mL以上10mg/mL以下が好ましいことが明らかとなった。
【0052】
(実施例8)
実施例1と同様にして、乾燥BCGワクチンが0.001mgを収容する減圧密封された細胞反応容器を作製した。これに実施例1と同様に、健常人ボランティアから得たヘパリン加血液を細胞反応容器に0.88mLを採取した。これを合計5本実施し、実施例1と同様にして混和後、血漿中のIFN−γを測定した。
【0053】
(比較例5)
採血管の開口部が密栓されておらず、0.88mLの血液をピペットにて採取してから、0.0083mg/mLの乾燥BCGワクチンを0.12mL添加し、開口部を密栓した細胞反応容器を用いたことを除いては、実施例8と同様にして混和後、血漿中のIFN−γを測定した。
【0054】
(実施例8及び比較例5の評価)
結果を表3に示した。
【0055】
【表3】

【0056】
表3から明らかなように、BCGがあらかじめ収容されて減圧密封されていることにより汚染等を防ぐことができ、バラつきの少ない、精度の良い測定が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗酸菌および/または抗酸菌由来成分と血液および/または細胞液との反応時において、前記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分の濃度が0.0001mg/mL〜10mg/mLの範囲となるように抗酸菌および/または抗酸菌由来成分が収容されていることを特徴とする、細胞反応容器。
【請求項2】
減圧および/または密封されていることを特徴とする、請求項1に記載の細胞反応容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の細胞反応容器を用いて、
前記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に血液および/または細胞液を接触させることにより、該血液および/または細胞液中に産生される生理活性物質を測定することを特徴とする、細胞機能測定方法。
【請求項4】
血液および/または細胞液が収容されている細胞反応容器を用いて、
該細胞反応容器中に血液および/または細胞液と反応する抗酸菌および/または抗酸菌由来成分を、前記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分と血液および/または細胞液との反応時において、前記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分の濃度が0.0001mg/mL〜10mg/mLの範囲となるように注入し、
前記抗酸菌および/または抗酸菌由来成分に血液および/または細胞液を接触させることにより、該血液および/または細胞液中に産生される生理活性物質を測定することを特徴とする、細胞機能測定方法。


【公開番号】特開2006−121946(P2006−121946A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312754(P2004−312754)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】