説明

細胞培養およびウイルス増殖のための方法

【課題】本発明は、細胞を培養する方法、および詳細には、ウイルスを増殖させる方法、およびよりなお詳細には、遺伝子治療のための組換えウイルスを増殖させる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】細胞を培養するための方法であって:a)該細胞を、マイクロキャリアの第1バッチにおいて、該細胞が実質的にコンフルエントになるまで培養する工程;b)該細胞を、懸濁液から該マイクロキャリアを取り出さずに、該マイクロキャリアから剥離する工程;c)マイクロキャリアの第2バッチを添加する工程;およびd)該細胞をさらに培養する工程、を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
多くの樹立された細胞が、バイオテクノロジーにおける種々の目的のために利用可能である。いくつかの細胞株は、単一細胞懸濁物として培養され得るが、他の細胞株は、支持体なしでは十分増殖しない。支持体を必要とする細胞株の増殖は、しばしば、細胞が増殖するのに利用可能な表面積に制限される。なぜなら、多くの細胞株は、表面上の単細胞膜のみを形成するからである。さらに、いくつかの細胞株は、支持体の非存在下での凝集塊または凝集体において増殖する傾向があり得、これは、単一細胞懸濁物として必要とされるが、より詳細には、細胞がウイルスで感染されるか、または組換えベクターで形質転換される場合には、所望されない結果である。なぜなら、ウイルスまたはベクターは、凝集塊または凝集体内の細胞に接近し得ないからである。従って、細胞株の培養の大規模化、特に、増殖する細胞のために十分な表面積を提供すること、および/または細胞の凝集を回避することにおいて深刻な問題が存在し得る。
【0002】
マイクロキャリア技術は、培養液において細胞を培養するために使用されている。例えば、Forestellら(Biotech.Bioeng.40:1039-1044(1992))は、血清についての培養細胞の必要性を減少する培地補充物を用いる、マイクロキャリアにおけるヒト二倍体線維芽細胞の長期連続継代培養を開示した。さらに、Ohlsonら(Cytotechnology14:67-80(1994))は、マクロ孔質ゼラチンマイクロキャリアを用いる、チャイニーズハムスター卵巣細胞のビーズからビーズへの移入を開示した。最後に、Huら(Biotech.Bioeng.27:1466-1476(1985))は、選択pHトリプシン処理技術を用いる、マイクロキャリア上の哺乳動物細胞の連続増殖を開示した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の問題の観点から、細胞株を培養する方法、臨床用途のためのウイルスを産生する方法、および大規模な商業化のためのウイルス、特に遺伝子治療のために組換えウイルスの産生を大規模化する方法における改良の必要性が存在する。本発明は、これらの必要性およびそれ以上を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本発明の1つの局面は、細胞を培養するための方法であって、この方法は、
(a)細胞を、マイクロキャリアの第1バッチにおいて、細胞が実質的にコンフルエントになるまで培養する工程;
(b)細胞を、懸濁液からマイクロキャリアを除去せずに、マイクロキャリアから剥離する工程;
(c)マイクロキャリアの第2バッチを添加する工程;および
(d)細胞をさらに培養する工程、
を含む。
【0005】
本発明の別の局面は、細胞をマイクロキャリアの第1バッチから剥離する工程であって、この工程は以下の工程を含む:
(a)マイクロキャリアおよび付着した細胞を洗浄して、可溶性物質を除去する工程;
(b)マイクロキャリアおよび洗浄した細胞を、キレート剤と接触させる工程;
(c)キレート剤を除去する工程;
(d)細胞を短時間トリプシン処理して、細胞をマイクロキャリアから剥離する工程;および
(e)トリプシンをタンパク質の添加によって中和する工程、
ここで(a)〜(e)は、1つの培養容器において行われる。
【0006】
本発明のさらなる局面は、培養されているが、剥離されていない細胞を、マイクロキャリアから分離するための方法であって、この方法は、細胞およびマイクロキャリアの水性懸濁物を、注入口を介して分離デバイスに導入する工程を含み、このデバイスは以下を含む:
(a)注入口;
(b)カラム;
(c)細胞および水溶液の回収のための放出口;および
(d)メッシュスクリーン;
ここで、マイクロキャリアが、分離デバイスにおける上向きの流れによって懸濁液に保持され、そしてメッシュスクリーンによって分離デバイスに保持され、そしてここで細胞および水性溶液が、放出口を介して回収される。
【0007】
本発明のさらなる局面は、細胞が培養されているマイクロキャリアから、細胞を分離するためのシステムであって、このシステムは以下を含む:
(a)細胞がマイクロキャリアで培養されるバイオリアクター;
(b)バイオリアクターから分離デバイスへの流路;
(c)以下を含む分離デバイス
(i)注入口;
(ii)カラム;
(iii)細胞および水性溶液の回収のための放出口;および
(iv)メッシュスクリーン;
ここで、マイクロキャリアが、分離デバイスにおける上向きの流れによって懸濁物中に保持され、そしてメッシュスクリーンによって分離デバイスに保持され、そして細胞および水溶液が、放出口を介して回収される;ならびに
(d)バイオリアクターから放出口への水溶液の流れを指向するポンプ。
【0008】
したがって、本発明は、以下を提供する。
1.細胞を培養するための方法であって:
(a)該細胞を、マイクロキャリアの第1バッチにおいて、該細胞が実質的にコンフルエントになるまで培養する工程;
(b)該細胞を、懸濁液から該マイクロキャリアを取り出さずに、該マイクロキャリアから剥離する工程;
(c)マイクロキャリアの第2バッチを添加する工程;および
(d)該細胞をさらに培養する工程、
を包含する、方法。
2.前記マイクロキャリアの第1バッチから前記細胞を剥離する工程が、以下の工程:
(a)該マイクロキャリアおよび付着した細胞を洗浄して、可溶性物質を除去する工程;
(b)該マイクロキャリアおよび洗浄した細胞を、キレート剤と接触させる工程;
(c)該キレート剤を除去する工程;
(d)該細胞を短時間トリプシン処理して、該細胞を該マイクロキャリアから剥離する工程;および
(e)該トリプシンをタンパク質の添加によって中和する工程、
を包含し、ここで(a)〜(e)が、1つの培養容器中で行われる、項目1に記載の方法。
3.前記キレート剤がEDTAである、項目2に記載の方法。
4.前記トリプシンが、約0.05%〜約0.1%の濃度で、5〜10分間、工程(d)で使用される、項目2に記載の方法。
5.前記細胞に感染し得るウイルスが、工程(d)の間に添加される、項目1に記載の方法。
6.前記細胞が前記マイクロキャリア上で実質的にコンフルエントになった場合に、前記ウイルスが添加される、項目5に記載の方法。
7.前記ウイルスがアデノウイルスベクターを含む、項目5に記載の方法。
8.前記ウイルスがACN53である、項目7に記載の方法。
9.前記細胞が293細胞である、項目1に記載の方法。
10.前記細胞が、3〜4日間インキュベートされる、項目9に記載の方法。
11.マイクロキャリア上で培養されおり、ここから取り外されるようになる細胞を、該マイクロキャリアから分離するための方法であって、細胞およびマイクロキャリアの水性懸濁物を、注入口を通して分離デバイスに導入する工程を包含し、該デバイスが:
(a)注入口;
(b)カラム;
(c)細胞および該水溶液の回収のための放出口;ならびに
(d)メッシュスクリーン;
を含み、ここで該マイクロキャリアは、該分離デバイスにおいて上向きの流れによって懸濁物中に保持され、そしてメッシュスクリーンによって該分離デバイスに保持され、そしてここで該細胞および水溶液が、該放出口を通して回収される、方法。
12.前記細胞およびマイクロキャリアの水性懸濁物が、該細胞中で増殖したウイルスをさらに含む、項目11に記載の方法。
13.前記細胞が293細胞である、項目11に記載の方法。
14.前記ウイルスがアデノウイルスである、項目12に記載の方法。
15.前記分離デバイスにおける流速が、約1〜約3cm/分である、項目11に記載の方法。
16.前記回収された細胞および水性培地が、微細濾過に供される、項目11に記載の方法。
17.前記微細濾過が、約2000〜10,000 l/秒の剪断速度を含む、項目16に記載の方法。
18.前記上向きの流れが、注入口を通して前記水溶液をくみ出すことによって生成され、ここで該注入口が前記デバイスの底部に置かれ、そして前記放出口が該デバイスの頂部に置かれる、項目11に記載の方法。
19.前記カラムが、上部区画および下部区画を含み、該下部区画が、該カラムの用量の約20〜50%を含み、そして前記注入口を含む、項目11に記載の方法。
20.前記下部区画が円錐形である、項目19に記載の方法。
21.前記下部区画の角度が、約15〜約45度である、項目20に記載の方法。
22.水性培地中で培養された細胞から細胞成分を遊離するための方法であって、該細胞を剪断速度に暴露する手段によって、該細胞を機械的に剪断する工程を包含し、ここで該細胞を機械的に剪断するための該剪断速度が、マイクロフィルターで該細胞を回収し、そして該マイクロフィルターを通して該水性培地を迅速に再循環することによって生成される、方法。
23.前記剪断速度が、約2000〜10,000 l/秒である、項目22に記載の方法。
24.細胞片が、前記微細濾過によって回収され、そして前記所望の細胞成分が通過する、項目22に記載の方法。
25.前記細胞成分がウイルスである、項目22に記載の方法。
26.前記ウイルスがアデノウイルスである、項目25に記載の方法。
27.前記アデノウイルスが異種遺伝子を保有する、項目26に記載の方法。
28.細胞が培養されているマイクロキャリアから、該細胞を分離するためのシステムであって、該システムが:
(a)該細胞が該マイクロキャリア上で培養されるバイオリアクター;
(b)該バイオリアクターから分離デバイスへの流路;
(c)以下を含む分離デバイス
(i)注入口;
(ii)カラム;
(iii)該細胞および該水溶液の回収のための放出口;ならびに
(iv)メッシュスクリーン
を包含し、ここで該マイクロキャリアが、該分離デバイスにおける上向きの流れによって懸濁物中に保持され、そしてメッシュスクリーンによって該分離デバイス中に保持され、そして該細胞および該水溶液が、該放出口を通して回収され;および
(d)該バイオリアクターから該放出口への該水溶液の流れを指向するポンプ、
を包含する、システム。
29.マイクロフィルターをさらに含み、ここで前記工程(c)の細胞および水溶液が、微細濾過に供される、項目28に記載のシステム。
30.限外濾過膜をさらに含み、ここで項目46の産物が、限外濾過に供される、項目29に記載のシステム。
31.前記細胞が293細胞である、項目28に記載のシステム。
32.前記上向きの流れが、前記注入口を通して前記水溶液をくみ出す工程を包含し、ここで該注入口が、前記デバイスの底部に置かれ、そして前記放出口が、該デバイスの頂部に置かれる、項目28に記載のシステム。
33.前記カラムが、上部区画および下部区画を含み、該下部区画が、該カラムの用量の20〜50%を含み、そして前記注入口を含む、項目28に記載のシステム。
34.前記下部区画が円錐形である、項目33に記載のシステム。
35.前記下部区画の角度が、約15〜約45度である、項目34に記載のシステム。
36.遺伝子治療のための組換えウイルスを産生するための方法であって、該方法は以下を包含する、
(a)細胞を、マイクロキャリアの第1バッチにおいて、該細胞が実質的にコンフルエントになるまで培養する工程;
(b)懸濁物から該マイクロキャリアを取り出さずにトリプシンを添加することにより該マイクロキャリアから該細胞を剥離することによって、そして該マイクロキャリアの第2バッチを添加することによって、該マイクロキャリアから該細胞を移入する工程;
(c)該細胞を組み換えウイルスで感染させる工程;
(d)工程(c)の細胞を、該細胞が培養されているが取り外されるようになった該マイクロキャリアから分離する工程であって、該細胞およびギアマイクロキャリアの水性懸濁物を、注入口を通して分離デバイスに導入する工程を包含し、該デバイスは以下を含む:
(i)注入口;
(ii)カラム;
(iii)該細胞および該水溶液の回収のための放出口;ならびに
(iv)メッシュスクリーン;
ここで、該マイクロキャリアが、該分離デバイスにおける上向きの流れによって懸濁物中に保持され、そしてメッシュスクリーンによって該分離デバイスに保持され、そして該細胞および該水溶液が、該放出口を通して回収され;そして
(e)工程(d)の回収した細胞からウイルスを遊離させる工程であって、該細胞を剪断速度に暴露する手段によって該細胞を機械的に剪断する工程を包含し、ここで該細胞を機械的に剪断するための剪断速度が、マイクロフィルターにおいて該細胞を回収し、そして該マイクロフィルターを通して水性培地を迅速に再循環させる工程によって生成される、方法。
37.前記ウイルスがアデノウイルスベクターを含む、項目36に記載の方法。
38.前記ウイルスがACN53である、項目37に記載の方法。
39.前記細胞が293細胞である、項目36に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、ウイルス、詳細には、遺伝子治療、ワクチン産生などのための組換えウイルスの増殖のための細胞の大規模培養に取り組む。特に、本発明は、大規模培養の3つの局面に取り組む;接着細胞の、培養において細胞数を連続的に大規模化するためのビーズ間移入の使用(これは、ウイルス粒子を遊離するために、バイオリアクターにおけるマイクロキャリアから細胞を剥離するためのトリプシンの使用、採取の間のビーズからの細胞の流動床様分離の使用、および細胞を破壊するための微細濾過の使用を含む。)。
【0010】
本明細書中で用いられる用語「ウイルス」は、天然に存在するウイルスだけでなく、組換えウイルス、弱毒化ウイルス、ワクチン株などを含む。組換えウイルスとしては、異種遺伝子を含むウイルスベクターが挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施態様において、ウイルスの複製のためのヘルパー機能(単数または複数)は、宿主細胞、ヘルパーウイルス、またはヘルパープラスミドによって提供される。代表的なベクターとしては、哺乳動物細胞(特に、ヒト細胞)に感染するものが挙げられるがこれらに限定されず、そしてレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびトリポックスウイルスのようなウイルスに由来し得る。アデノウイルスベクターが好ましい。2型および5型アデノウイルスベクターがより好ましく、5型アデノウイルスベクターが特に好ましい。ACN53は、ヒト野生型p53腫瘍サプレッサータンパク質をコードする組換えアデノウイルス5型であり、そして例えば、公開PCT国際特許出願WO95/11984に記載される。
【0011】
本明細書中で用いられる用語「コンフルエント」は、細胞が(例えば、マイクロキャリアーの)表面で粘着性単細胞層を形成しており、その結果事実上全ての利用可能な表面が使用されることを示す。例えば、「コンフルエント」は、「全ての細胞が、他の細胞とその周縁部の全ての周りで接触し、そして被覆されていない利用可能な基材はない」という状況として規定されている(R.I.Freshney, Culture of Animal Cells - A Manual of BasicTechniques, Wiley-Liss,Inc. New York, NY, 1994, 363頁)。本発明の目的のために、用語「実質的にコンフルエント」は、細胞が、隙間が残り得るが、一般的に表面に接触し、その結果、約70%を超える、好ましくは約90%を超える利用可能な表面が使用されることを示す。本明細書中で、「利用可能な表面」は、細胞を収容するのに十分な表面領域を意味する。従って、さらなる細胞を収容し得ない隣接する細胞間の小さな隙間は、「利用可能な表面」を構成しない。
【0012】
本発明の方法における培養工程は、当該分野で公知のバイオリアクターまたは発酵槽において行われ得、これは、約1〜5000Lであり、細胞およびマイクロキャリア、滅菌酸素、培養のための種々の培地などを導入するための適切な注入口;細胞、マイクロキャリア、および培地を除去するための放出口;ならびにバイオリアクターにおいて培養培地を撹拌するための手段(好ましくはスピンフィルター、これは、培地のための放出口としてもまた機能する)を備えている。例示的な培地は、当該分野で開示される;例えば、Freshney,Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Techniques, Wiley-Liss,Inc. New York,NY, 1994, 82-100頁を参照のこと。バイオリアクターはまた、温度を制御するための手段、および好ましくは、バイオリアクターの機能を電気的にモニターおよび制御するための手段を有する。
【0013】
細胞が増殖可能な例示的なマイクロキャリアは、当該分野で公知であり、そして好ましくは、細胞培養の目的に特異的に順応される。一般的な参考文献は、Pharmaciaによって出版されたハンドブックMicrocarrier CellCulture-Principles&Methodsである。しかし、本発明で用いられるいくつかの細胞株は、マイクロキャリアの表面に強力に接着しないかもしれないということが注意されるべきである;細胞株、ウイルス(適用可能な場合)、マイクロキャリア、および培養条件の適切な組合せを決定することは十分に当業者の能力の範囲内である。マイクロキャリアは、好ましくは、約100〜250ミクロンの範囲、より好ましくは約130〜220ミクロンの範囲の粒子サイズを有し、そして非毒性物質から構成されるべきである。サンプルサイズのメジアンは、好ましくは、これらの範囲に入り、その結果これらのサイズ範囲は、好ましくは、マイクロキャリアサンプルの少なくとも中間90%がその範囲である。好ましい実施態様において、マイクロキャリアは、約150〜200ミクロン、好ましくは170〜180ミクロンのメジアン粒子サイズを有する実質的に球状のマイクロビーズからなる。マイクロキャリア表面は、細胞接着を改変するために、特に細胞接着を増強して、増殖および拡散がなお可能にするように処理され得る;従って、マイクロキャリアは、例えば、コラーゲンでコーティングされ得る。好ましくは、マイクロキャリアは、培養培地よりわずかに濃密であり、その結果、穏和な撹拌が、懸濁状態にそれらを維持するのに対して、沈殿または遠心分離のような単純手段が、それらの分離を可能にする。1.03〜1.045g/mlの密度は、マイクロキャリアが0.9%NaClのような標準的な溶液(または、培養培地)と平衡である場合、適切である。本発明者らは、特定の細胞株またはウイルスに適用される特定の要求は、特定のCytdexマイクロキャリアの選択を必要とし得るが、PharmaciaのCytodex-3マイクロキャリアは、これらの要求を一般的に満たすことを見いだした。
【0014】
細胞は、それ自身を複製し得、および特に、目的のウイルスの複製を支持する、任意の適切な宿主細胞株の細胞であり得る。特に好ましい細胞株は、ヒト胎児性腎臓細胞株293(ATCCカタログ番号CRL 1573)である。これらの細胞は、全てのマイクロキャリアに強力に接着せず、そして好ましくは、PharmaciaのCytodex-3マイクロキャリア(これは、よりよい細胞接着のためにコラーゲンコーティングされている)が用いられる。Cytodex-3マイクロキャリアは、約175ミクロンのメジアン粒子サイズで、サンプルの中間90%が約140〜210ミクロンのサイズを有する;このようなマイクロキャリアの密度は、0.9%NaClで平衡化した場合、1.04g/mlである。細胞は、好ましくは、第1工程においてこのようなマイクロキャリア上で培養され、次いでその形態が遊離され、そして産生工程のためにさらなるマイクロキャリアに移入される。
【0015】
撹拌は、バイオリアクターの底部でパドルによってのみではなく、回転スピンフィルターによって簡便にもたらされ得、これは好ましくは、バイオリアクターの頂部から培地のバルク中に、下方へ伸長する。細胞およびマイクロキャリアは、培養における懸濁物において、スピンフィルターの回転によって維持され得る;スピンフィルターはまた、細胞の欠失を伴わずに培地の除去を可能にする微小な開口部が備えられ得る。培地は除去され得、そして同時または交互に置換され得る;培地の実質的な画分(例えば、約50%まで)を除去し、次いで例えば、スピンフィルターを通して培地を除去する間、適切な置換培地を補充することは、しばしば簡便である。
【0016】
代表的には、細胞は、種々のサイズのTフラスコを介して、親の(master)作業用細胞バンクバイアルから、好ましくは、最終的にはバイオリアクターまで、大規模化される。好ましいフラスコは、CELLFACTORYTM組織培養フラスコ(CF;NUNC)であり、このフラスコは、細胞がそこに接着または付着し得、そして増殖し得る大きな表面積を提供する、いくつかの内部区画を都合良く有する特別に設計された大きなフラスコである。実質的にコンフルエントになるまでの培養の後、細胞は、トリプシン処理によって遊離され得、そして単離され得る。トリプシン処理は、短期間(好ましくは5分未満、より好ましくは約3分)行われ、次いで、トリプシンは、増殖培地中の血清の迅速な添加によって中性化される。所望される場合、細胞は遠心分離され得、そしてトリプシン含有培地は、血清が添加される前に除去され得る。次いで、得られる細胞懸濁物は、代表的には、さらなる培養のために播種(seed)産生バイオリアクター(代表的には、20〜30L容量)に送られ、そしていくつかの実施態様において、より大規模な製造のバイオリアクター(代表的には、150〜180L容量)に送られる。
【0017】
第2(より大きな)バイオリアクター 対 播種バイオリアクターの容量の比は、細胞株が第1バイオリアクターにおいて増殖する程度に依存するが、代表的には、5:1〜10:1、例えば(6〜8):1の範囲である。
【0018】
細胞は、マイクロキャリアが懸濁している間に、培養容器(好ましくは、バイオリアクター)において行われるトリプシン処理手順によってマイクロキャリアから剥離される。スピンフィルターが利用されて、培地交換が行われ、培地中の血清およびカルシウムのレベルを減少させる。これにより、バイオリアクターにおいて一定の容量を維持すると同時に、トリプシン処理の効率が増加する。マイクロキャリア上の細胞に損傷を引き起こし得る沈殿工程は回避される。次いで、得られる細胞/マイクロキャリア懸濁物は、培養培地およびマイクロキャリアで予め充填された産生バイオリアクターに移され得る。
【0019】
播種バイオリアクターから細胞/マイクロキャリア懸濁物が移された後、産生バイオリアクター(例えば、約200L)は、例えば約37℃および約pH7.3で操作される。次いで、細胞増殖の間の新鮮な培地の灌流が、乳酸塩濃度を約1.0g/L未満に維持するために行われ得る。細胞は、代表的には、50%を越えるマイクロキャリアが完全にコンフルエントになるまで、約4〜7日間マイクロキャリア上で増殖され得る。次いで、好ましくは、ウイルス感染プロセスが開始される。40〜50mlウイルス接種物のバイアル(代表的には、約1.0×1013総ウイルス粒子を含む)が、産生バイオリアクターを感染させるために使用される。ウイルスは、産生バイオリアクターにおいて、約3〜5日間、ほぼ最大ウイルス力価の時点まで複製される。代表的には、90%を越える細胞は、ウイルスの細胞変性効果に起因して、マイクロキャリアから剥離される。産生バイオリアクターから生じる最終的な組換えアデノウイルスは、代表的には、約8.5×109ウイルス粒子/mlである。これにより、各160Lのバッチから1.4×1015のウイルス粒子の総収量が得られる。
【0020】
本発明の他の実施態様において、産生バイオリアクターは、トリプシン処理によって採取された細胞で接種され、次いで、産生バイオリアクターを接種するために直接使用される。代表的には、8〜12個のCELL FACTORYTM組織培養フラスコが利用されて、0.6〜1×105細胞/mlの全体のバイオリアクター接種物播種密度が達成される。この方法における代表的なウイルス収量は、約1.7〜2.6×1010ウイルス粒子/mlの範囲である。それゆえ、この特定の方法は、各々の160Lバッチから、約3〜4×1015の総ウイルス粒子数を提供する。
【0021】
本発明のいくつかの実施態様において、流動床様プロセスが、細胞をバイオリアクターから採集するために使用される。代表的には、バイオリアクターは、細胞の約90%がマイクロキャリアから剥離された後に採集される。いずれの1つの理論にも限定されずに、宿主細胞におけるウイルス増殖の細胞変性効果は、細胞剥離の原因であるようである。他の実施態様において、未感染細胞は、本発明のトリプシン処理法によってマイクロキャリアから剥離され得る。バイオリアクターが採集された後、ブロスは、細胞、マイクロキャリア、および培地を含む。ウイルスは、細胞および培地中に存在する。それゆえ、この材料の全ては、好ましくは、プロセシングのために回収される。マイクロキャリアの特定の比重(密度)は、細胞のものと同様である。好ましくは、マイクロキャリアは、細胞をビーズから分離する間、自由に懸濁したままである。なぜなら、沈殿を用いるプロセシング工程は、細胞をマイクロキャリアに沈澱させ、これは回復率の損失を生じるからである。
【0022】
分離デバイスの好ましい実施態様は、図1および2に提供される。本発明のいくつかの実施態様において、分離デバイスは、システムの一部として提供される。例示的な系は、図2に示される。従って、システムは、以下を含む:細胞がマイクロキャリア上で培養されるバイオリアクター100;バイオリアクターから分離デバイス104への流路102;カラム106を含む分離デバイス;カラム106を含む分離デバイス;細胞および水溶液の採集のための放出口108;およびメッシュスクリーン110。マイクロキャリアは、分離デバイスにおける上向きの流れによって懸濁状態に保持され、そして懸濁デバイスにおいてメッシュスクリーンによって保持され、そして細胞および水溶液は、放出口を介して採集される。また、このシステムにおいて提供されるのはポンプ112であり、ここでポンプは、バイオリアクターから放出口への水溶液の流れを指向する。いくつかの実施態様において、マイクロフィルター114および限外濾過器116は、システムの構成要素として提供され得る。
【0023】
図1に示される実施態様において、分離デバイスは、代表的には以下を含む:注入口114(これを介して、バイオリアクター100からの細胞およびマイクロキャリアの水性懸濁物は、分離デバイス104に導入される)を有するカラム106(例えば、クロマトグラフィーカラム);ならびに細胞および水溶液の採集のための少なくとも1つの放出口108;およびメッシュスクリーン110。マイクロキャリアは、分離デバイスにおける上向きの流れによってカラム中で懸濁状態で保持され、そしてメッシュスクリーンによって分離デバイス中に保持され、そしてここで、細胞および水溶液は、放出口を介して採集される。分離デバイスにおける流速は、約1〜約3cm/分である。代表的には、カラムを介する上向きの流れは、水溶液(例えば、細胞懸濁物または緩衝液)を、注入口を介してくみ出すことによって生成され、ここで注入口は、デバイスの底部に置かれ、そして放出口は、デバイスの頂部に置かれる。
【0024】
図2は、分離デバイス200の拡大模式図であり、放出口アセンブリ210、メッシュスクリーンアセンブリ212、注入口214、ならびに上部区画218および底部区画220を有するカラム216をより詳細に示す。底部区画は、代表的には、約20〜50%、より好ましくは約30%のカラムの容量を含み、そして注入口を含む。底部区画は、好ましくは、約15度〜約45度の好ましい角度を有する円錐形である。
【0025】
従って、バイオリアクターからの発酵ブロスは、カラムの基底部に汲み揚げられる。流速は、分離デバイス内のマイクロキャリアの保持を可能にしながら、細胞およびウイルス粒子を培地に懸濁させたままにするのに十分な上向きの流れを提供するために調節される。好ましくは、流速は、約1〜2cm/分である。なぜなら、細胞は、マイクロキャリアのものと同様の比重を有するからである。細胞およびウイルスを含む清澄化したブロスは、流動床様カラムの上端におけるメッシュスクリーンに通され、そして微細濾過のために採集される。
【0026】
200Lのスケールのデバイスについて、カラムの底部区画は、好ましくは円錐形である。円錐体は、円錐体に侵入する発酵ブロスの線速度の漸減を可能にする。注入口ラインの流体速度は減少して、円錐体の上端での断面領域の全域での一様分布における線形流の減少を達成する。円錐体の壁は、壁上に沈澱したビーズが、注入口に向かって下方に移動することを可能にする角度である。このようにして、これらのビーズは再懸濁されて、沈澱したビーズの間に細胞が捕捉されることを回避する。円錐形の壁の角度は、好ましくは約30度である。15度未満の角度は、例外的に長い円錐体を提供し、そして約45度を越える角度は、注入口供給物を効果的に分散しないかもしれない。カラムの上部区画は、ビーズが発酵培地の線形流速より大きな速度で沈澱するゾーンとして機能する。カラムのこの区画は、円筒形である。このゾーン内で、境界が形成され、その結果、マイクロキャリアは、カラムの下部領域に蓄積する。カラムの末端プレートアセンブリ222(図2)は、細胞およびウイルスを含む清澄化発酵培地についての採集点として機能する。これは、メッシュスクリーンアセンブリに取り付けた末端プレート224からなる。このスクリーン(好ましくは、約50から120メッシュ、より好ましくは、約100メッシュ)は、マイクロキャリアの除去のための第2の点として機能する。
【0027】
上記の実施態様は、本明細書中の実施例に使用される好ましい実施態様である。カラム寸法およびスクリーンメッシュは、プロセスされる溶液の容量、ビーズの濃度、使用される特定のマイクロキャリア、および培地処方(例えば、培地の比重)に基づいて変化し得る。好ましいカラムは、ステンレス鋼から注文製作された底部円錐体からなり、KS370末端アセンブリに取り付けられた2つのPharmacia KS370区画管に接続され、ここで製造元のスクリーンは、ステンレス鋼(ss)製のメッシュ(好ましくは、約50〜120メッシュ、より好ましくは約100メッシュ)で置き換えられた。
【0028】
細胞が採集された後、それらは好ましくは溶解されて、さらなるウイルス粒子を遊離させる。均質化または凍結-融解が使用されて、ウイルス粒子が遊離され得る。本発明の好ましい実施態様において、微細濾過は、ウイルス含有細胞を溶解し、そして同時に、ウイルス精製を妨害する細胞破片をブロスから除去するために使用される。例えば、微細濾過は、0.65ミクロンの親水性または疎水性膜を有するProstak(Millipore)システムを用いて、そして7000l/秒の剪断速度で行われ得る。剪断速度は、膜の接線方向の流れのチャンネルを介した滞留液(retentate)の流れによって生成される。それゆえ、直交流は、膜が汚れるのを防ぐために使用されるだけでなく、細胞を溶解するために十分な剪断を生じるために使用され得る。フィルターの孔のサイズは、細胞破片を保持しながら、ウイルスの通過を可能にするのに充分であるべきである。従って、代表的には、孔のサイズの範囲は、約0.2〜0.65ミクロンである。剪断速度の範囲は、代表的には、約2000〜10,000l/秒であり、より好ましくは約7000 l/秒である。
【0029】
代表的には、BENZONASETMエンドヌクレアーゼ(AmericanInternational Chemical, Inc.)が、細胞核酸を消化するために清澄化ブロスに添加される。なぜなら、ウイルス粒子は、細胞核酸と複合体化し得るからである。好ましい実施態様において、1,000,000の公称分子量カットオフのPelliconI再生セルロース膜を有するPelliconシステム(Millipore)を用いる限外濾過は、ウイルスを濃縮するために使用される。限外濾過工程は、2つの機能を果たす;ウイルスは精製のために濃縮され、そして緩衝液を交換するためにダイアフィルトレーションが行われ、その結果、ウイルス懸濁物は、DEAEカラムに直接アプライされ得る。マイクロフィルターからの溶出液は、遊離したウイルスを含み、そして好ましくは、例えば、限外濾過によって濃縮される。
【0030】
各培養工程の間に、細胞は、例えば、トリプシンでの処理によるトリプシン処理によって、マイクロキャリアから遊離および剥離され得る。本発明では、培養に使用される血清を除去することが好ましい。なぜなら、血清タンパク質は、トリプシンを阻害し;それゆえ、血清の除去は、より少量のトリプシンが使用されるのを可能にするからである。このことは有利である。なぜなら、より多量で添加すると、高濃度のトリプシンの局在化を引き起こし得、このことは細胞を損傷し得るからである。次の工程に関して、Ca++イオンが除去される。なぜなら、細胞からのこれらのイオンの除去は、細胞を遊離させる傾向があり、そしてより少ないトリプシンを使用するのを可能にするからである。従って、特に、ヒト胎児性腎臓細胞株293の細胞を遊離および剥離する工程は、都合良く、以下の工程を含み得る:
(i)細胞を迅速に洗浄して、血清および他の可溶性物質を除去する工程;
(ii)キレート剤の添加によって、洗浄した細胞からCa++を除去する工程;
(iii)キレート剤を迅速に除去する工程;
(iv)トリプシンを迅速に添加する工程;
(v)短時間(好ましくは、約3分〜約15分の範囲)、細胞をトリプシン処理する工程;および
(vi)タンパク質の添加によって、トリプシンを迅速に中和する工程。
【0031】
上記の工程(i)において、熟語「迅速に洗浄する」は、一定のバイオリアクター容量で、1分あたり約1〜3リットル、より好ましくは1分あたり約2リットルの速度で、培地の1容量変化を灌流することを意味する。上記の工程(iii)において、熟語「キレート剤を迅速に除去する」は、一定のバイオリアクター容量で、1分あたり約1〜3リットル、より好ましくは1分あたり約2リットルの速度で、培地の1.5容量変化を灌流することを意味する。上記の工程(iv)において、熟語「トリプシンを迅速に添加する」は、適切な容量のトリプシン溶液(代表的には、2.5%溶液)を、1分あたり約1〜3リットル、より好ましくは1分あたり約2リットルの速度で添加することを意味する。上記の工程(vi)において、熟語「血清の添加によってトリプシンを迅速に中和する」は、適切な容量の血清を、1分あたり約1〜3リットル、より好ましくは、1分あたり約2リットルの速度で添加することを意味する。
【0032】
血清が工程(i)において除去されない場合、必要な大量のトリプシンの添加は、局所的に高濃度のトリプシンを導き得、これは実際に、細胞を単に遊離するのではなく、細胞を損傷または殺傷さえし得る。工程(i)における血清の除去、および工程(ii)におけるCa++の除去は、工程(iv)および(v)に必要なトリプシンの量を減少させる。細胞を実際に損傷または殺傷さえすることを回避するために、キレート剤およびトリプシンでの処理は、好ましくは短いままであるべきである(すなわち、マイクロキャリアから細胞を剥離するのに十分長いが、好ましくは長すぎない)。好ましいキレート剤の例としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびEGTA(エチレン-ビス(オキシエチレン-ニトリロ)四酢酸)が挙げられる。
【0033】
血清は、培地交換のプロセスによって除去される;例えば、培地は、スピンフィルターを介して汲み出され得る。無血清洗浄培地は、汲み出されたものを置換するために添加され、そして混合物は撹拌される。あるいは、無血清洗浄培地の添加は、スピンフィルターを介する培地の除去に継続し得る。このプロセスは、血清濃度が充分に低いレベル(例えば、約1.0〜0.2%未満、好ましくは約0.2%未満)まで減少するまで繰り返される。キレート剤(好ましくは、EDTA)は、無血清キレート化培地に添加され、混合物は再び撹拌され、そしてキレート剤は汲み出される。あるいは、無血清培地でのキレート剤の添加は、スピンフィルターを介する培地の除去に継続し得る。
【0034】
トリプシンは、好ましくは、工程(v)において、約0.05〜0.1%のバイオリアクター中の濃度を提供するように使用され、そして5〜10分間、例えば、好ましくは、約0.065%のトリプシン濃度で約8分間、細胞に作用させる。タンパク質(代表的には、ウシ胎仔血清の形態)は、好ましくは約10〜20%の最終濃度でバイオリアクターに添加されて、トリプシンを阻害する。
【0035】
従って、工程(vi)における血清の添加は、さらなる培養のための細胞を調製するだけでなく、残存するトリプシンを中和する。工程(i)〜(vi)の全体の配列は、インサイチュで、バイオリアクターにおいて生じ得る;いくつかの実施態様において、マイクロキャリアおよび細胞の懸濁物は、より大きなバイオリアクターに移され得、ここでさらなるマイクロキャリアが、培養の次の工程のために添加される。細胞は、マイクロキャリアに結合され、次いでさらに培養される。一旦それらが再び実質的にコンフルエントになると(例えば、約37℃での3〜4日培養)、それらは次の段階(これは、例えば、採取、さらに後の段階のための緩和、またはウイルスの接種であり得る)に移行され得る。細胞が、採取のためだけに培養されている場合、次いでそれらは、この段階で、例えば、上記の工程(i)〜(vi)の反復によって採取され得る。それらがさらに後の段階に必要である場合、次いで上記の工程(i)〜(vi)が反復され得る。それらが、ウイルスの増殖のために培養されている場合、ウイルスは、この段階で、培地に接種され得る。
【0036】
本明細書中の実施例は、本発明を例証するために提供されるが、いかなる様式においても本発明を制限しない。選択されたベクターおよび宿主および他の物質、試薬の濃度、温度、ならびに他の可変値は、本発明の適用を例示するのみであり、それらの限定であると考えられるべきではない。
【実施例】
【0037】
実験例
I.概要
A.細胞種菌の調製
各ウイルス発酵バッチを、293細胞Manufacturers WorkingCell Bank(MWCB)のウイルスから増殖した細胞株から開始する。バイオリアクターを、以下の表1に例示されるような増殖培地(培地1)を用いる、TフラスコおよびCELLFACTORYTMにおける増殖によって維持された293細胞(ATCCカタログ番号CRL 1573)で接種する。各移入は、継代を示す。代表的には、4〜30の継代数を、播種バイオリアクターの接種のために使用する。
表1:培地組成
【0038】
【表1A】

【0039】
【表1B】

DEMA粉末(American Biorgranicsから入手可能、カタログ番号D2807):好ましくは、4.5g/Lグルコースおよび0.584g/LL-グルタミンを提供するために使用される;炭酸水素ナトリウムなし、およびHEPESなし。
Ca++を含まないDMEM粉末(AmericanBiorgranicsから入手可能、カタログ番号D2807403):好ましくは、4.5g/Lグルコースおよび0.584g/LL-グルタミンを提供するために使用される;炭酸水素ナトリウムなし、塩化カルシウムなし、およびHEPESなし。
ウシ胎仔血清:Hycloneから入手可能、カタログ番号2151。
EDTAストック溶液:186.1g/L EDTAおよび20g/LNaOHペレット。
グルタミンストック溶液:29.22g/L。
【0040】
細胞の細胞拡大の間のフラスコからフラスコへの移入を調製するために、使用済み培地を捨て、次いでフラスコ中の細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄する。トリプシン溶液を、フラスコ表面の細胞単層に添加し、そして細胞を、表面から剥離するまで暴露する。次いで、トリプシン作用を、血清を含む増殖培地(培地1、表1)を添加することによって大きく中和する;完全な中和は必要ではない。なぜなら、残留トリプシンは、低活性を有するからである。細胞を、遠心分離によって回収し得、そして新鮮な増殖培地(培地1)に再懸濁する。表2は、使用される代表的な容量を示す。
表2:細胞の移入において使用される代表的な容量
【0041】
【表2】

【0042】
B.ウイルス種菌の調製
ウイルス種菌を、成熟CELL FACTORYTM組織培養フラスコを感染することによって調製し得る。この手順において、293細胞を、TフラスコからCELLFACTORYTM組織培養フラスコに最初に増殖する。CELL FACTORYTM組織培養フラスコ培養が成熟である場合(代表的には、80〜90%コンフルエント)、それらをmanufacturee’sworking virus bank(NWVB)からの種菌で感染させる。感染させたCELL FACTORYTM組織培養フラスコを、293細胞がその支持表面から解離するまでインキュベートする。細胞を、遠心分離によって回収し、そして複数の凍結-融解サイクルによって破裂させる。続く遠心分離の後、ウイルスを上清において回収し、そしてアリコートとして-20℃以下で保存する。この材料は「ウイルス種菌」であり、これを使用して、バイオリアクターを感染させる。必要に応じて、ウイルス種菌はまた、フィルター滅菌したバイオリアクター採取物に由来し得る(以下の「産生バイオリアクター採取物」を参照のこと)。
【0043】
C.播種バイオリアクターの調製および操作
好ましくは、播種バイオリアクターを使用して、産生バイオリアクターのための293細胞種菌を調製する。播種バイオリアクターを蒸気滅菌し、そしてフィルター滅菌した増殖培地(培地1、表1、上記)のバッチで、遊離細胞懸濁プロセスのために充填した。しかし、マイクロキャリアプロセスのために、膨潤した滅菌マイクロキャリアビーズ(Cytodex3または等価体)を、好ましくは、この段階で添加する。
【0044】
播種バイオリアクターを、CELL FACTORYTM組織培養フラスコから採取した293細胞で接種する。操作条件を、表3に示したように設定する。pHおよび溶存酸素(DO)を、それぞれ、CO2および酸素を噴霧することによって制御する。余分の増殖培地を、灌流によってバイオリアクターに添加し得る。細胞増殖を、顕微鏡試験によって、および乳酸産生およびグルコース消費を測定することによってモニターする。代表的には、懸濁培養物の細胞密度が、播種バイオリアクターにおいて1×106細胞/mlに達した場合、産生バイオリアクターを接種するのは準備はできている。しかし、接種は、マイクロキャリアプロセスのための、いくつかのさらなる工程を必要とする。代表的には、マイクロキャリア上の細胞が、>50%コンフルエントである場合、バイオリアクター培地中の血清およびカルシウムを、表1に記載の培地を用いて洗い流す。次いで、トリプシンを迅速に添加し、そして細胞脱着が、代表的なレベルに達した場合、血清を添加して、トリプシンを不活化する。播種バイオリアクター成分を、ここで、産生バイオリアクターに移す。
【0045】
必要に応じて、複数のCELL FACTORYTM組織培養フラスコから採取した293細胞を、産生バイオリアクターのための種菌として、直接使用し得る。代表的には、8〜12のこのような培養物を採取し、そしてプールして、種菌を提供する。
表3:播種バイオリアクター操作条件
【0046】
【表3A】

【0047】
【表3B】

【0048】
D.産生バイオリアクターの調製および操作
ウイルス産生プロセスを、200-L産生バイオリアクターにおいて、増殖培地(培地1、表1)を用いて例証する。懸濁培養プロセスにおいて、フィルター滅菌した培地を、バイオリアクターにバッチする。しかし、マイクロキャリアプロセスにおいて、マイクロキャリアを、産生バイオリアクターにおいてインサイチュで滅菌するか、または外部的にオートクレーブし、そして充填する。次いで、これらのマイクロキャリアを、293細胞での接種の前に、増殖培地(培地1)に調整する。
【0049】
産生バイオリアクターを、播種バイオリアクターからの293細胞で接種する。操作条件を、表4に示したように設定する。pHおよび溶存酸素(DO)を、それぞれ、CO2および酸素を噴霧(sparging)することによって制御する。必要に応じて、さらなる増殖培地を、灌流によってバイオリアクターに添加し得る。細胞増殖を、顕微鏡試験によって、および乳酸産生およびグルコース消費を測定することによってモニターする。細胞は、約1×106細胞/mlまで増殖し得る。次いで、バイオリアクターをウイルスで接種する。好ましくは、細胞あたりの全ウイルス粒子として示される、50:1〜150:1の感染の多重度(MOI)の比を使用する。ウイルス力価を、代表的には、ResourceQ HPLCアッセイを用いて行う。ウイルスは、細胞生存度が約10%に減少するまで増殖し得る。
【0050】
ウイルスの型およびその宿主細胞に対する作用は、宿主細胞をマイクロキャリアから脱離し、そして/または細胞を溶解させる必要性があるかどうかを決定し得る。ほぼ最大ウイルス力価の時点で(しばしば、ウイルスが拡散し始めるように、細胞がマイクロキャリアからの脱離を開始し、そしてそのいくつかを溶解し得る場合)、インキュベーションを停止し得、そして細胞およびウイルスを採取し得る。実際は、マイクロキャリアプロセスにおいて、80〜90%の細胞、時には90%を越える細胞が、マイクロキャリアから脱離し得る。いずれの理論にも限定されずに、宿主細胞におけるウイルス増殖の細胞変性効果は、細胞脱離を担うようである。従って、アデノウイルスACN53を、293細胞とともに使用した場合、細胞は、ウイルスとの増殖の3または4日後に、マイクロキャリアからの脱離を開始する。
表4:産生バイオリアクター操作条件
【0051】
【表4】

【0052】
E.産生バイオリアクターの採取
1.細胞のマイクロキャリアからの分離
採取時に、バイオリアクター含量は、プロセスが遊離懸濁物またはマイクロキャリアを使用するかどうかに依存して、別々に操作されなければならない。マイクロキャリアプロセスにおいて、好ましくは、流動床カラムを使用して、細胞および上清からマイクロキャリアを分離する。上向きの流速を、細胞および上清が通過する間、マイクロキャリアを保持するように維持する。流動床を、培地または洗浄緩衝液で洗浄して、ほとんどの残留細胞およびウイルスを回収し、そして、洗浄物を、溶出物としての細胞および上清と組み合わせる。流動床操作は、遊離細胞懸濁プロセスを必要としない。
【0053】
溶出物含有細胞およびウイルスを、さらに細胞を高剪断によって溶解してウイルスを放出するという点でプロセスし、次いで溶出物を、交差流微細濾過の手段によって清澄化する。代表的には、0.65μmDurapore(Millipore)または等価膜を使用する。微細濾過の終わりに向けて、保持物を、洗浄緩衝液で洗浄して、残留ウイルスを透過物中に回収する。微細濾過の後、透過物を、必要に応じて、BENZONASETMエンドヌクレアーゼの様なヌクレアーゼで処理し得る。
【0054】
微細濾過からの透過物を、限外濾過(代表的には、1,000,000分子量カットオフ)によって濃縮し、そして緩衝液交換を、洗浄緩衝液を用いて行う。次いで、ウイルスを含む濃縮およびダイアフィルトレーションした保持物を、最終フィルターに通過させる。得られる濾過物を、「ウイルス濃縮物」として、-20℃以下の冷凍庫に保存する。
【0055】
2.培地の組成および調製
上記の表1は、ウイルス種菌の調製、および発酵プロセスに使用される培地を列挙する。全てのこれらの培地は、まず乾燥DMEM粉末および他の試薬を精製水に溶解することによって調製する。乾燥粉末を溶解した後、これらの培地を、塩酸でpH7.2〜7.6に調整する。次いで、培地を、0.2μmフィルターを通過させて、適切な保存用容器に入れて滅菌する。滅菌培地を、10℃未満で冷蔵し、そして調製後1カ月で捨てる。
【0056】
表5は、プロセスに使用した種々の緩衝液を列挙する。
表5:発酵および採取に使用した緩衝液
【0057】
【表5A】

【0058】
【表5B】

【0059】
表6は、発酵および採取プロセスの間の、進行中制御を要約する。
表6:進行中制御
【0060】
【表6A】

【0061】
【表6B】

【0062】
II.播種バイオリアクターから産生バイオリアクターへのビーズ間移入
A.播種バイオリアクターのための293細胞接種物調製
1.バイアルからT75フラスコへのスケールアップ
全2×107細胞を含む293細胞株の冷凍バイアルを、37℃の水浴で解凍した。細胞を、10mlの培地1で洗浄した。洗浄した細胞を、全容量30mlの培地1に再懸濁し、そして75cm2組織培養フラスコ(T75)においた。培養物を、37℃にて5%CO2雰囲気および湿度レベル100%でインキュベーターにおいた。これを、培養の継代1とした。
【0063】
2.トリプシン処理を用いるT75培養からT500フラスコへのスケールアップ
T75培養物は、3日間で、90%のコンフルエンシーレベルに達した。この時点で、T75培養物を、以下の様式においてトリプシン処理した。30mlの上清培地を、フラスコから除去した。10mlの容量のCMF-PBS(塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを含まないDulbeccoのリン酸緩衝化生理食塩水)を使用して、培養物表面を洗浄した。上清CMF-PBSをフラスコから除去した。2mlのTE(0.53mMEDTA-4Naを含む0.05%粗トリプシン)溶液を、フラスコに添加した。フラスコを、溶液が培養物の表面全体を覆うように動かした。細胞は、5分以内に、フラスコ表面から脱離した。10mlの培地1を、細胞が表面から脱離した後すぐに、フラスコに添加した。細胞懸濁物を、1000rpmにて10分間室温にて、中断しながら遠心分離した。上清を除去した。細胞を、5mlの培地1に再懸濁した。細胞懸濁物を、200mlの培地1を含む滅菌ボトルに移した。200mlの細胞懸濁物を、500cm2組織培養フラスコ(T500)に移した。T500内の液体を、インキュベーター中で水平位置に配置させる前に、チャンバの間で平衡化し得た。培養物を、37℃にて5%CO2雰囲気および湿度レベル100%でインキュベーターにおいた。これを、培養の継代2とした。
【0064】
3.トリプシン処理を用いたT500培養のスケールアップおよび継代
T500培養物は、4日間で、90%のコンフルエンシーレベルに達した。4日目に、T500培養物を、以下の様式においてトリプシン処理し、そしてスケールアップした。上清培地を廃棄した。培養物表面を、25mlのCMF-PBS洗浄した。上清CMF-PBSをフラスコから除去した。25mlの容量のTEを、フラスコに添加した。フラスコを、TE溶液が、培養物の表面の全ての3つの層を覆うように動かした。細胞は、5分以内に、フラスコ表面から脱離した。細胞が表面から脱離した後、50mlの培地1を、フラスコに添加した。表面の全てを、フラスコを動かすことによって培地と接触させた。得られた細胞懸濁物を、200ml円錐遠心分離ボトルに注いだ。細胞を、1000rpmにて10分間室温にて、中断しながら遠心分離した。上清を廃棄した。細胞を、5〜15mlの培地1に再懸濁した。細胞懸濁物を、800ml(1つの新しいT500フラスコあたり200ml)の培地1においた。細胞懸濁物を混合した。200mlの容量の細胞懸濁物を、4つの各々のT500フラスコに添加した。各フラスコ内の液体レベルを、インキュベーター中で水平位置に配置させる前に、チャンバの間で平衡化させた。この継代についての分割比は、1:4であった。これを継代3とした。培養物を、継代4〜13についてこの様式で継代した。継代14で、4つのT500培養物を、上記の所定の様式においてトリプシン処理した。細胞懸濁物をプールし、そして1.5リットルの培地1を含むボトルにおいた。この細胞懸濁物を、6000cm2CELL FACTORYTM(CF)組織培養フラスコに添加した。CFにおける液体レベルを、インキュベーター中で水平位置に配置させる前に、チャンバの間で平衡化させた。
【0065】
4.CELL FACTORYTM組織培養フラスコ培養物のスケールアップおよび継代
CF培養物は、3日間で80%コンフルエンシーレベルに達した。トリプシン処理を、継代15について、以下の様式で行った。1.5リットルの培地1を、CF培養物から排出した。培養物表面を、500(+/-100)mlのCMF-PBSで洗浄した。洗浄後、250(+/-50)mlのTE溶液を、CF培養物に添加した。CFを、TE溶液が各々の表面を覆うように動かした。細胞が表面から脱離した後、500mlの培地1を、CFに添加した。CFを、培地1が各々表面に接触するように動かした。得られた細胞懸濁物を4つの250ml円錐遠心分離ボトルに等分した。細胞を、1000rpmにて10分間中断しながら遠心分離することによってペレット化した。上清培地を、各遠心分離ボトルから廃棄した。各遠心分離ボトルにおいて、細胞を、5mlの培地1に再懸濁した。細胞懸濁物を、1つの遠心分離ボトルにプールした。3つの残りの遠心分離ボトルを、さらなる5〜10mlの培地1で洗浄し、これを、プールした細胞懸濁物に添加した。この細胞懸濁物を、1.5リットルの培地1を含む6つのボトルに等しく分割した。各々の6つの1.5リットル細胞懸濁物を、CFに添加した。各CFにおける液体レベルを、CFをインキュベーター中で水平位置に配置する前に、チャンバの間で平衡化させた。培養物を、継代16について同じ様式で継代した。
【0066】
継代データを、表7に提供する。
表7:継代データ
【0067】
【表7A】

【0068】
【表7B】

【0069】
5.CELL FACTORYTM組織培養フラスコ培養物から播種バイオリアクターへの細胞接種物の調製
CF培養物は、5日間で80%コンフルエンシーレベルに達した。6つのCF培養物のうちの4つを使用して、以下のように播種バイオリアクターに接種した。1.5リットルの培地1を、CF培養物から排出した。培養物表面を、500(+/-100)mlのCMF-PBSで洗浄した。洗浄後、250(+/-50)mlのTE溶液を、CF培養物に添加した。CFを、TE溶液が各々の表面を覆うように動かした。細胞が表面から脱離した後すぐに、500mlの培地1を、CFに添加した。CFを、培地1が各々表面に接触するように動かした。得られた細胞懸濁物を4つの250ml円錐遠心分離ボトルに等分した。細胞を、1000rpmにて10分間室温にて中断しながら遠心分離することによってペレット化した。上清培地を、各遠心分離ボトルから廃棄した。各遠心分離ボトルにおいて、細胞を、5mlの培地1に再懸濁した。細胞懸濁物を、1つの遠心分離ボトルにプールした。3つの残りの遠心分離ボトルを、さらなる5〜10mlの培地1で洗浄し、これを、プールした細胞懸濁物に添加した。各々の4つの遠心分離ボトルからの細胞懸濁物を、次いでともにプールし、全容量50〜100mlを得た。さらなる容量の培地1を、全容量が1000mlなるまで添加した。これを細胞接種物とした。細胞接種物中の細胞の全量は、2.88×109全細胞および2.84×109生存細胞であった。1000mlの細胞接種物を、滅菌Erlenmeyerフラスコに移し、そして30リットルの播種バイオリアクターに接種した。これは、66gのCytodex3マイクロキャリアを含む、全容量18リットルの培地1を含んだ。
【0070】
B.播種バイオリアクター
1.30L播種バイオリアクターのためのCytodex 3マイクロキャリアの調製
66グラムのCytodex 3マイクロキャリアの1つのバッチを、以下の様式で調製した。66グラムのCytodex3マイクロキャリアを、5リットルのガラスErlenmeyerフラスコにおいた。0.2mlのTween 80を含む2リットルのCMF-PBSを添加した。マイクロキャリアを、室温にて5時間30分膨潤させた。この膨潤期間の後、上清CMF-PBSをフラスコからデカントし、Cytodex3マイクロキャリアスラリーを残した。Cytodex 3マイクロキャリアスラリーを、2リットルのCMF-PBSで洗浄し、次いで2リットルの全容量までCMF-PBS中に再懸濁した。Cytodex3のバッチを、5リットルのフラスコにおいて、121℃にて3時間半、液体サイクルでオートクレーブした。滅菌したCytodex 3バッチを、30L播種バイオリアクターのために、次の日使用した。
【0071】
30L播種バイオリアクターにCytodex 3を添加した日に、以下の処置を行った。上清CMF-PBSを、5リットルフラスコからデカントした。マイクロキャリアスラリーを、2リットルの培地1で洗浄した。洗浄後、培地1を、最終容量2リットルまで、フラスコに添加した。
【0072】
2.30L播種バイオリアクターの調製
スピンフィルターを含む30L播種バイオリアクターを清掃し、そして蒸気消毒した。バイオリアクターを、121℃にて15分間滅菌した。293細胞接種の1日前に、30L播種バイオリアクターを、18リットルの培地1で充填した。培地1溶液とともに66グラムのCytodex3マイクロキャリアを含む2リットルを、30Lバイオリアクターに添加した。30L播種バイオリアクター操作条件を、表8に列挙する。
表8:30L播種バイオリアクター操作条件
【0073】
【表8A】

【0074】
【表8B】

【0075】
3.30L播種バイオリアクターにおける293細胞の培養
293細胞を、Cytodex 3マイクロキャリア上で5日間増殖させた。この期間の30L播種バイオリアクターにおける実際の操作条件を、表9に列挙する。
表9:30Lバイオリアクターにおける操作条件
【0076】
【表9】

【0077】
培養の5日目に、100×拡大率での顕微鏡下でのサンプルの試験によって決定されたように、マイクロキャリア集団の54%は50細胞/マイクロキャリアより多くを含み、38%は1〜25細胞を含み、8%は細胞を含まず、そして8%は2つのマイクロキャリアの凝集体中にあった。結果を、表10に提供する。
表10:30Lバイオリアクター中のCytodex 3マイクロキャリアにおける293細胞の培養の5日目の顕微鏡試験からの結果
【0078】
【表10A】

【0079】
【表10B】

【0080】
B.ビーズ間移入手順
1.産生バイオリアクターのためのCytodex 3マイクロキャリアの調製
420グラムのCytodex 3マイクロキャリアの1つのバッチを、以下の様式で調製した。420グラムのCytodex3マイクロキャリアを、5リットルの大型ガラス瓶(carboy)においた。2.0mlのTween 80を含む21.5リットルのCMF-PBSを添加した。マイクロキャリアを、室温にて17時間膨潤させた。この膨潤期間の後、上清CMF-PBSを大型ガラス瓶から除去し、Cytodex3マイクロキャリアスラリーを残した。Cytodex 3マイクロキャリアスラリーを、25リットルのCMF-PBSで洗浄し、次いで20リットルの全容量までCMF-PBS中に再懸濁した。
【0081】
スピンフィルターを含む200Lバイオリアクターを清掃し、そして蒸気消毒した。20リットルのCytodex3マイクロキャリアスラリーを、バイオリアクターに移した。5リットルのCMF-PBSを使用して、50リットルの大型ガラス瓶に洗い出し、そしてバイオリアクターに移した。バイオリアクターを、123℃にて50分間滅菌した。バイオリアクターを、4℃にて一晩維持した。翌日、120リットルの培地1を、200Lバイオリアクターに添加した。マイクロキャリア溶液を、90rpmにて10分間バイオリアクターにおいて撹拌した。容量を、スピンフィルターを介して液体を取り除くことによって、55リットルまで減少させた。さらなる110リットルの培地1を、200Lバイオリアクターに添加した。マイクロキャリア溶液を、90rpmにて10分間バイオリアクターにおいて撹拌した。容量を、スピンフィルターを介して液体を取り除くことによって、55リットルまで減少させた。培地1をバイオリアクターに添加して、容量を125リットルにした。バイオリアクターの操作条件を、表11に示した。
表11:バイオリアクター操作条件
【0082】
【表11A】

【0083】
【表11B】

【0084】
200L産生バイオリアクターを、播種バイオリアクターから接種物を受けるために用意した。
【0085】
2.播種バイオリアクター培養物のトリプシン処理
Cytodex 3マイクロキャリア上での293細胞の培養の5日目、ビーズ-ビーズ移入手順を行った。培養における培地の血清およびカルシウムレベルを、20リットルの一定バイオリアクター容量でスピンフィルターを用いて、1分あたり2リットルの速度にて22リットルの培地2を灌流することによって減少させた。灌流を、20リットルの一定バイオリアクター容量で、1分あたり2リットルの灌流速度にて、22リットルの培地3で続けた。このことは、血清およびカルシウムレベルをさらに減少させた。培地3は、マグネシウムおよびカルシウムのような二価カチオンをキレート化するエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)を含んだ。三回目の灌流を、33リットルの培地2を用いて行った。これは、血清およびカルシウムレベルをさらに減少し、そして培地中のEDTAの濃度を減少させるように設計した。この時点で、培地を、スピンフィルターを介して回収して、全培養容量を15.5リットルまで減少させた。480mlの容量の2.5%トリプシン溶液を、1分間に、バイオリアクターに添加した。顕微鏡観察によって、トリプシン溶液の添加の8分後、90%の細胞が、マイクロキャリアから脱着していた。この時点で、4リットルの血清を、2分半でバイオリアクターに添加して、トリプシンの作用を阻害し、そして産生バイオリアクターへの移入手順の間、剪断から細胞を保護した。トリプシン化細胞およびマイクロキャリアを、圧力によって産生バイオリアクターに移した。移入を、8分間で達成した。移入の直後に、5リットルの培地1を、フラッシュとして播種バイオリアクターに添加し、そして圧力によって産生バイオリアクターに移した。ビーズ-ビーズ移入手順の間の播種バイオリアクターの操作条件を、表12に提供する。
表12:ビーズ-ビーズ移入手順の間の播種バイオリアクター操作条件
【0086】
【表12】

【0087】
C.感染前の200L産生バイオリアクターにおける293細胞の培養
293細胞を、Cytodex 3マイクロキャリアにおいて、6日間増殖させた。この期間の、200L産生バイオリアクターにおける実際の操作条件を、表13に列挙する。
表13:200L産生バイオリアクターにおける操作条件
【0088】
【表13】

【0089】
全容量115リットルの培地1を、4〜6日間灌流した。速度は以下の通りである;24リットルを4日目で1時間灌流し、40リットルを5日目で1時間灌流し、そして50リットルを6日目で1時間灌流した。1分あたりの溶存酸素レベル(空気飽和のパーセント、%DO)の減少(%DO減少/分)として測定した酸素取り込み速度は、6日目で1.65%/分に達した。200Lバイオリアクター中のCytodex 3マイクロキャリアにおける293細胞の培養の6日目における顕微鏡試験からの結果を、表14に提供する。
表14:200Lバイオリアクター中のCytodex 3マイクロキャリアにおける293細胞の培養の6日目の顕微鏡試験からの結果
【0090】
【表14】

【0091】
D.200L産生バイオリアクターにおける293細胞の感染
バイオリアクター培養物を、6日目にウイルスで接種した。ウイルス接種物を、-80℃で凍結保存した。45mlの容量のウイルス接種物2-2を、20〜25℃の水浴中で解凍した。タンクに添加したウイルスの全量は、ResouceQ HPLCアッセイによって測定したように、1.1×1013ウイルス粒子であった。ウイルス接種物を混合し、そして1リットルの培地4(L-グルタミンおよびに炭酸水素ナトリウム(3.7g/l)を含む293-1-R07Dulbeccoの改変Eagle培地)を含むボトルにおいた。ウイルス溶液を、Gelman Maxi Culture Capsuleを介して、滅菌した5リットルのさらなるフラスコに濾過した。ウイルス懸濁物を、管溶接機(tubingwelder)を介して作製された滅菌接続部を有する200L産生バイオリアクターに添加した。感染後の産生バイオリアクター操作条件を、表15に提供する。
表15:感染後の産生バイオリアクター操作条件
【0092】
【表15A】

【0093】
【表15B】

【0094】
感染の3日後、89%のマイクロキャリアが細胞に付着しておらず、そして測定した酸素取り込み速度は、0.53%/分であった。上清ブロスに存在する全感染細胞濃度は、1.0×106細胞/mlであった。バイオリアクター中の全容量は、162リットルであった。バイオリアクターを、この時点で採取した。
【0095】
E.回収操作
400リットルの容量の採取回収緩衝液を調製し、そしてPall Ultipor N66(0.2ミクロン孔サイズ)を介して濾過し、そして以下の様式で滅菌容器に等分した。210リットル、130リットル、および50リットルの3つのアリコートを調製した。210リットルの容量を、バイオリアクター洗浄および流動床カラム操作に使用した。130リットルのアリコートを、微細濾過の間に使用した。50リットルのアリコートを、限外濾過プロセスの間に利用した。
【0096】
F.流動床カラムを用いたマイクロキャリアからの細胞の分離
流動床を、腐食性溶液(0.1N水酸化ナトリウム)を用いて消毒した。T建具(T-fitting)を、バイオリアクターの採取ポート(port)に接続した。T建具の一方の側において、消毒ホース(15.9mmid)およびバルブを、流動床カラムに接続した。蠕動ポンプを、このラインにおいた(Watson Marlow Model 604S)。T建具の第2の側を、消毒ホース(15.9mmid)およびバルブに接続して、緩衝液タンクを導いた。流動床カラムの放出口(ここを介して、細胞およびウイルスを含むブロスが通過する)を、微細濾過再循環容器として使用するタンクに接続した。
【0097】
バイオリアクターからの液を、1分あたり2〜3リットルの標的流速にて、流動床カラムを通過させた。流速を、蠕動ポンプで制御した。撹拌を、バイオリアクターにおいて維持した。バイオリアクター容量が、100リットル未満であった場合、スピンフィルターを遮断した。バイオリアクター容量が、30リットル未満であった場合、撹拌を遮断した。バイオリアクター成分が、流動床カラムを通過した後、バイオリアクターを90リットルの採取回収緩衝液で洗浄した。この洗浄物質を、流動床カラムに通過させた。プロセスの終わりで、マイクロキャリアは流動床カラムに残留し、そして廃棄した。データを、表16に提供する。
表16:流動床カラム操作からのデータ
【0098】
【表16】

【0099】
G.感染した細胞を溶解するマイクロキャリア明澄化ブロスの微細濾過およびBENZONASETMエンドヌクレアーゼ処理
微細濾過プロセスのための開始物質は、マイクロキャリアから明澄化した流動床カラムからのブロスであり、そして細胞およびウイルスを含んだ。微細濾過工程の間、細胞を、使用した剪断速度によって溶解し、ブロスは、0.65ミクロンを越える大きさの細片から明澄化し、そして溶解した細胞からの残留核酸を、BENZONASETMエンドヌクレアーゼ(例えば、200Lのバッチあたり500,000ユニット)(酵素調製物)によって消化した。
【0100】
微細濾過ユニットは、Prostakシステム(Millipore)であった。これは、Duraporeの0.65ミクロン孔サイズの親水性膜(カタログ番号SK2P446EO)を含み、54平方フィートの表面領域を有する。Prostakフィルターユニットの流加(feed)および保持ラインを、微細濾過再循環容器に接続し、これは流動床カラムからのマイクロキャリア明澄化ブロスを含んだ。採取回収緩衝液を微細濾過再循環容器に流加するために使用したラインを接続した。Prostakユニットからの浸潤ラインを、限外濾過再循環容器に接続した。ブロスの温度を、25〜35℃の範囲で維持した。Prostakユニットに流加するブロスが、微細濾過再循環容器において、10〜30リットルの容量に減少した場合、50リットルの採取回収緩衝液を容器に添加し、そして微細濾過を続けた。この工程を一回反復した。微細濾過を、微細濾過再循環容器における容量が、10〜30リットルに減少するまで続けた。この時点で、500,000ユニットのBENZONASETMエンドヌクレアーゼを、限外濾過再循環容器中の明澄化ブロスに添加した。容器の内容物を十分混合し、そしてブロスを、限外濾過を開始する前に、2時間保持した。データを、表17に提供する。
表17:微細濾過操作からのデータ
【0101】
【表17A】

【0102】
【表17B】

【0103】
H.ウイルスをダイアフィルトレーションで濃縮して緩衝液交換を行うためのブロスの限外濾過
限外濾過再循環容器における限外濾過プロセスのための開始物質は、微細濾過浸潤物からの、BENZONASETMエンドヌクレアーゼ処理した明澄化ブロスであった。限外濾過ユニットは、Pelliconシステム(Millipore)であった。それは、1,000,000の名目上の分子量カットオフの、40平方フィートの表面領域を有するPelliconII再生セルロース膜(カタログ番号P2C01MC05)を含んだ。Pelliconユニットの流加および浸潤ラインを、限外濾過再循環容器に接続した。限外濾過浸潤ラインを、廃棄ラインに接続した。採取回収緩衝液(50mMTris塩基、150mM塩化ナトリウム、2mM塩化マグネシウム六水和物、および2%スクロース)を含む容器を、限外濾過再循環容器に接続した。限外濾過保持物の容量が、5〜10リットルに達した場合、15リットルの採取回収緩衝液を添加し、そして限外濾過を続けた。この工程を一回反復した。限外濾過を、保持容量が5〜10リットル未満になるまで続けた。限外濾過からの保持物は、濃縮したウイルスを含んだ。保持物を、Pelliconユニットから回収した。3〜6リットルの採取回収緩衝液のフラッシュを使用して、物質の全てをPelliconユニットから回収した。このフラッシュした物質を、限外濾過保持ブロスに添加した。これを、Millipore、Durapore、0.45ミクロン孔サイズフィルター(カタログ番号CVHL71PP3)を介して、滅菌バッグに濾過した。滅菌バッグ中の物質を、-80℃にて凍結保存した。データを表18に示す。
表18:限外濾過操作からのデータ
【0104】
【表18A】

【0105】
【表18B】

【0106】
I.一般的なコメント
T75、T500およびCELL FACTORYTM組織培養フラスコにおける全ての293細胞培養物を、インキュベーターにおいて、37℃、100%湿度、および5%CO2雰囲気下で、培地1において培養した。全ての開放操作を、生物学的安全性(層流)フード(hood)下で、無菌的に行った。培地充填物および添加物を、0.2ミクロン孔サイズのPALLUltipor N66を介して、バイオリアクターの流加ポートに設置されたインラインのフィルターを介して行った。これは、30分間121℃にて蒸気消毒をした。バイオリアクターへの全ての他の添加物を、それぞれバイオリアクターとさらなるフラスコとの間に管溶接機によって無菌的に接続したPHARMEDTM管を備えた、滅菌Erlenmeyerフラスコを用いて行った。回収プロセスに使用した全ての緩衝液を、受け取り容器のポートに設置された0.2ミクロン孔サイズのPALLUltipor N66インラインのフィルター(SLK7002NFP)を介して濾過した。微細濾過操作について、親水性または疎水性膜のいずれかを使用し得ることに注意すること。
【0107】
本明細書中に引用される全ての刊行物および特許出願は、各々の個々の刊行物または特許出願を参考として援用することを特異的にそして個別に示す場合と同じ程度で、その全体が参考として援用される。
【0108】
本発明の変更および改変は、当業者には明らかである。本明細書中に記載される特定の実施態様は、例示のみの目的で提供され、そして本発明はそれによって限定されるとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、遊離細胞およびウイルスを含む培地を、マイクロキャリアから分離するのに使用される本発明のシステムの側面図である。
【図2】図2は、遊離細胞およびウイルスを含む培地を、マイクロキャリアから分離するのに使用される本発明のシステムの分解図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−67720(P2008−67720A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316456(P2007−316456)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【分割の表示】特願平10−532922の分割
【原出願日】平成10年1月28日(1998.1.28)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】