細胞培養のためのデバイス
【課題】神経細胞の細胞培養のためのデバイスを提供する。
【解決手段】第1の細胞培養物で播種すべき第1のマイクロ流体チャンバ、及び少なくとも第2のマイクロ流体チャンバを形成する基体を備え、流体相互接続システムが第1のチャンバと第2のチャンバを接続し且つ細胞延長、特に軸索を一方のチャンバからもう一方のチャンバまで伸ばすことを可能にするデバイスであって、前記デバイスの相互接続システムは、細胞延長の少なくとも1つの第1のタイプの進行を促進させるように作られ、前記第1タイプの延長と第2タイプの延長が、これらが由来するマイクロ流体チャンバのために、あるいはこれらが延長を構成する細胞のタイプのために異なっている。
【解決手段】第1の細胞培養物で播種すべき第1のマイクロ流体チャンバ、及び少なくとも第2のマイクロ流体チャンバを形成する基体を備え、流体相互接続システムが第1のチャンバと第2のチャンバを接続し且つ細胞延長、特に軸索を一方のチャンバからもう一方のチャンバまで伸ばすことを可能にするデバイスであって、前記デバイスの相互接続システムは、細胞延長の少なくとも1つの第1のタイプの進行を促進させるように作られ、前記第1タイプの延長と第2タイプの延長が、これらが由来するマイクロ流体チャンバのために、あるいはこれらが延長を構成する細胞のタイプのために異なっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養のための、特に神経細胞の細胞培養のためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳は、相互に接続されるいくつかのニューロン領域から構成される非常に複雑な構造である。生体内実験的研究は、この全体の構造を保存するが、細胞規模の研究には適さない。
分離した細胞の培養物は、研究されるシステムを非常に詳細に記載することを可能にする。このために、多くの研究室は、ニューロン培養を行っている。従来、ニューロンのこれらの培養は、ペトリ皿又は培養ウェルにおいて行われる。これらの細胞培養物は、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病等)の研究において、しかし、神経分化の分子機序や細胞機序を理解するための発生生物学においても還元主義的なモデルとして適用される。
しかしながら、これらのシステムにおいて、ニューロン接続はランダムに行われ、生体内に見られるものと同様の構造をその中に再構成することは不可能である。
中枢神経系(CNS)のネットワーク構造は、完全に欠けており、種々のニューロン層がどのように相互作用するかを研究することを可能にしない。
他の方法は、生体外で培養される、脳の種々の部分の切片を用いることからなる。
ニューロン層の完全な状態がこの方法によって保存されるとしても、急速に試料採取される組織の複雑さは問題を引き起こす。ニューロン死の伝播と脳の種々の層における発達の機序をより明らかに理解するために、生体外(in vitro)で培養したニューロン網の構造を制御することを可能にする新規な実験デバイスを開発することが望ましい。
マイクロ流体は、細胞生物学、特に神経科学のための選択ツールである。
Campenot [Campenot, R. B. Local control of neurite development by nerve growth factor, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1977, 74(10), 4516-4519]による研究に端を発したWO200434016、Jeon et al.には、これらの軸索からニューロンの細胞体を分離することを可能にするマイクロ流体ネットワーク構成が提唱されている。
【0003】
この構成は、中枢神経系(CNS)のニューロンに適している。
「細胞体」コンパートメントは、新たに切開されたニューロンが導入されるチャネルである。
遠位チャネルは、軸索がマイクロチャネルを通過するのにそれに向かって進む。ニューロンの細胞体は、マイクロチャネルを通過することができない。これは、マイクロチャネルがあまりに薄くて細胞体を通過させることができないためである。
このデバイスは、生体外CNSニューロン培養の制御に向けた第1の工程である。マイクロチャネルにおける拡散時間は長く、遠位コンパートメントと細胞体のコンパートメントを別々に処理することを可能にする。コンパートメントの一方においてもう一方に対して含有されるものの拡散は、圧力差を課すことで補償される。このために、異なるコンパートメント間に静水圧差を課すように、コンパートメントの1つのリザーバの1つにより大きな容積の液体を入れることは充分なことである。
しかしながら、このデバイスは、また、多くの制限を有する。第1に、細胞コンパートメントを分離することを可能にするが、軸索が両方向にマイクロチャネルを進行することができるので、2つのニューロン集団の間で特定の軸索接続を誘導することを可能にしない。
公報WO 2006/037033及びUS 7 419 822もまた、ニューロンの培養に適した細胞培養デバイスに関するものであり、これらの明細書の記載は参考として取り入れられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に、これらの種々の制限を改善し、従って、現在の先行技術デバイスで不可能である研究、方法及びスクリーニングを可能にすることを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、その態様の1つによれば、細胞培養のためのデバイス、特に神経細胞の細胞培養のためのデバイスであって:
- 第1の細胞培養物で播種されることを意図した第1のマイクロ流体チャンバ、及び少なくとも第2のマイクロ流体チャンバを形成(define)する支持体、
- 第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバを接続し且つ細胞延長(extension)、特に軸索を一方のチャンバからもう一方のチャンバまで伸ばすことを可能にする流体相互接続システム
を備え、ここで、相互接続システムは、細胞延長の少なくとも1つの第1のタイプの進行を細胞延長の少なくとも1つの第2のタイプと比較して促進させるように作られる、前記デバイスに関する。前記細胞延長の第1のタイプと第2のタイプは、これらが由来するマイクロ流体チャンバのために及び/又はこれらが延長である細胞型のために相違し得る。
例示的実施態様において、デバイスは、2つの細胞集団の間の特定の細胞接続を、特に特定の軸索接続を誘導することを可能にすることができる。
第2のマイクロ流体チャンバは、少なくとも1つの第2の細胞型で播種され得る。
相互接続システムは、マイクロチャネルとも呼ばれる複数のチャネル及び/又は複数のミクロ構造を備えることができる。
相互接続システムは、少なくとも1つのチャネル又は非対称を有するミクロ構造の1つのネットワークを前記チャネルあるいは第1のマイクロ流体チャンバに接続される前記ネットワークの側と前記チャネルあるいは第2のマイクロ流体チャンバに接続される前記ネットワークの側の間に備えることができる。
【0006】
相互接続システムは、少なくとも1つの寸法が一方のチャンバからもう一方まで進行するのにつれてより小さくなる少なくとも1つのチャネルを備えることができ、前記少なくとも1つの寸法が、例えば、チャネルの幅を含んでいる。特に、相互接続システムは、少なくとも1つの狭くなっている、「ダイオード」とも呼ばれるチャネルを含むことができる。前記寸法は、前記チャネルが第1のマイクロ流体チャンバにあるいは第2のマイクロ流体チャンバに開放する部位で5μm以下であり得る。
相互接続システムは、上から見られる場合、少なくとも1つの一部が台形状を有するチャネルを備えることができる。チャネルは、一定幅の一部が伸びた収束部を有し得る。
相互接続システムは、非直線チャネルを含むことがあり得る。変形例として、相互接続システムのチャネルすべてが直線である。
相互接続システムは、チャンバの一方からもう一方まで進行する場合、狭細と拡張の連続を含むチャネルを備えることができる。
前記チャネルは、相互接続又は枝分れを有し得る。
ミクロ構造のネットワークは、直線での軸索の伝播を防止する障壁を備えることができる。
障壁は、第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの間の連続通路に、前記通路の曲率半径が20μm未満、好ましくは10μm未満、より好ましくは7μm未満、5μm未満、又は3μm未満もの少なくとも一部を受けるように配置され得る。
第1のチャンバは、対称面に相対してもう一方のチャンバと対称であり得る。
第1のチャンバと第2のチャンバの間の距離は、例えば、3μm〜10 000μm、例えば10μm〜10 000μmである。
【0007】
相互接続システムは、表面が細胞の少なくとも1つのタイプ又は細胞挙動の1つのタイプに親和性を有するように化学的に又は生化学的に処理された少なくとも一部を備えことができる。
化学処理は、フィブロネクチン、カドヘリン、コラーゲン、ラミニン、スクシンイミド基を含む分子、N-スルホスクシニミジル6-[(4'-アジド-2'-ニトロフェニル)アミノ]ヘキサノエート、及び光活性化することができる反応性化学分子より選ばれる分子の少なくとも1つのタイプにさらすことを含み得る。
相互接続システムは、厚さが第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの厚さ未満、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μmのマイクロチャネル又はミクロ構造を備えることができる。
例示的実施態様において、第1のチャンバ又は第2のチャンバとこのチャンバの外側の間の唯一の流体連通は、相互接続システムによって生じる。変形例として、流体連通は、相互接続システムによってだけでなく、溶質だけを通過させ細胞延長を通過させない少なくとも1つの膜によっても起こり得る。
この膜は、例えば、チャンバの最上部に位置する。これは、例えば、微細穿孔したPDMS又はニトロセルロース膜であり得る。
本発明の例示的実施態様において、相互接続システムは、フロー、特に血流をろ過するのに役に立たない。
デバイスは、単細胞の細胞体だけを含有するように釣り合いのとれた、少なくとも1つの単細胞マイクロ流体チャンバを備えることができ、この単細胞マイクロ流体チャンバは相互接続システム及び第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの一方と連通している。
【0008】
単細胞マイクロ流体チャンバは、厚さが第1のマイクロ流体チャンバや第2のマイクロ流体チャンバより小さく、前記相互接続システムより大きいものであり得る。単細胞マイクロ流体チャンバは、チャンバの一方にもう一方より近くにあり得る。
本発明の例示的実施態様において、マイクロ流体デバイスは、少なくとも3つのマイクロ流体チャンバ、即ち、第1の相互接続システムによって接続される第1のチャンバと第2のチャンバを備える。第1のシステムと第2のシステムの少なくとも1つは、上で定義した通りであり、即ち、細胞延長、特に軸索を一方のチャンバからもう一方のチャンバまで伸びることを可能にし、細胞延長の少なくとも1つの第1のタイプの進行が細胞延長の少なくとも1つの第2のタイプと比較して促進される。各相互接続システムは、マイクロチャネルのセットをを備え得る。第2の相互接続システムのマイクロチャネルは、第1の相互接続システムのマイクロチャネルの延長と異なる、例えば、それにほぼ垂直に向けられ得る。この実施態様の利点の1つは、第1のチャンバに由来する延長のリスクを低下させ且つ第2のチャンバに到達し、第3のチャンバに進行することである。
デバイスは、容積が100〜10 000μm3、好ましくは500〜5000μm3であり且つ相互接続システム及び第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバと流体的に連通している少なくとも1つのマイクロ流体チャンバを含むことができる。
相互接続システムを通過することは、相互接続システムの両側に配置された、例えば、2つの対向する領域を接続する少なくとも1つのチャネルであり得る。このようなチャネルは、例えば、一方のチャンバがもう一方のチャンバに導入される化合物による汚染のリスクを低下させることを可能にすることができる。チャネルは、また、清浄剤のような物質、例えばトリトンX又はサポニンをその中に循環することによって、軸索切断を行うことを可能にすることができる。軸索代謝を損傷するか、保護するか又は修飾し得る他のいかなる分子もチャネルに循環され得る。
【0009】
相互接続システムは、分子とイオンの第二コンパートメントとの交換を可能にするが、前記第二コンパートメントとの、細胞の交換を可能にしない孔壁によってその表面の少なくとも1つの部分に区切ることができる。
細胞培養のためのデバイスは、また、前記デバイス内に有する少なくとも1つの細胞における電気生理学的プロセスを研究する計測器に接続される少なくとも1つの微小電極、好ましくは微小電極のネットワークを含むことができる。
本発明は、また、他の態様によれば:
- 第1のマイクロチャネルと第2のマクロチャネル、
- 第1のマクロチャネルに第1の末端で接続されるマイクロチャネル、
- 第2のマクロチャネルやマイクロチャネルの第2の末端と連通している単細胞マイクロ流体チャンバ
を備え、第1のマクロチャネルと第2のマクロチャネルがマイクロチャネル及び単細胞マイクロ流体チャンバによって相互に連通し、単細胞マイクロ流体チャンバが単細胞の細胞体だけを受容することができるように釣り合いのとれている細胞培養のためのデバイスに関する。
本発明は、他の態様によれば、また、少なくとも2つの相互接続システムを備え、その少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが上で定義したように作られる、細胞培養のためのデバイスに関する。
本発明は、また、他の態様によれば、少なくとも2つの相互接続システムが連続して接続した少なくとも3つのマイクロ流体チャンバを備え、前記相互接続システムの厚さが前記3つのマイクロ流体チャンバの厚さ未満であり、且つ前記マイクロ流体チャンバの少なくとも一方がもう一方のマイクロ流体チャンバの少なくとも1つの厚さと前記相互接続システムの厚さの間の厚さを有する、細胞培養のためのデバイスに関する。
【0010】
本発明は、また、他の態様によれば、異なる方向、特に、垂直な方向の少なくとも2つの相互接続システムが連続して接続された少なくとも3つのマイクロ流体チャンバを備える、細胞培養のためのデバイスに関する。
本発明は、また、他の態様によれば、上で定義されたデバイスの少なくとも1つのマイクロ流体チャンバが神経細胞で播種される、細胞培養のための、特に神経細胞の細胞培養のための方法に関する。
少なくとも2つのマイクロ流体チャンバを神経細胞で播種することが可能であり、チャンバの一方の細胞の軸索が、相互接続システムの形のために、もう一方のチャンバの細胞よりもう一方のチャンバの方に生じることのほうが難しくない。
少なくとも1つのマイクロ流体チャンバを少なくとも2つの細胞型を有する細胞培養物で播種することが可能であり、前記細胞型の少なくとも1つの細胞の軸索が、少なくとも1つの第2の細胞型の細胞の軸索より相互接続システムにおいて生じることのほうが難しくない。
軸索切断は、上記のように、相互接続システムを通過するチャネルによって行われ得る。チャンバの1つに含有する細胞は、化合物を存在させることができる。上述のチャネルは、相互接続システムによってもう一方のチャンバの方の化合物の進行に関して障壁を構成する液体で充填され得る。
本発明は、また、他の態様によれば、細胞コンパートメントに存在するバイオマーカーを調べる方法であって、少なくとも:
- 上で定義した方法の1つに従って細胞を培養する工程、
- 前記細胞の少なくとも1つの前記細胞コンパートメントの少なくとも1つに前記バイオマーカーのプローブを存在させる工程、
- 前記プローブによって前記バイオマーカーの存在を明らかにし更に/又は数量化する工程
を含む、前記方法に関する。
【0011】
本発明は、また、他の態様によれば、細胞コンパートメントに存在するバイオマーカーを調べる方法であって、少なくとも:
- 上で定義した方法の1つに従って細胞を培養する工程、
- マイクロ流体チャンバの少なくとも一方に存在する上清を集め、
及び1つ以上のバイオマーカーを調べるか又は含量で数量化する工程
を含む、前記方法に関する。
前記バイオマーカーを調べるか又は数量化する工程は、少なくともヌクレオチド配列に関する含量の定量、又はポリペチドに関する含量の定量、又は代謝産物、前記細胞コンパートメント又は前記上清に関する含量の定量を含み得る。
本発明は、また、他の態様によれば、ある種の細胞の物質への反応を決定する方法であって:
a) 上で定義したデバイスの1つ、又は上で定義した方法の1つを用いて細胞を培養する工程、次に
b) 前記細胞の細胞コンパートメントの少なくとも1つを前記デバイスのマイクロ流体チャンバの少なく1つに前記物質を存在させる工程
を含む、前記方法に関する。
この方法は、また、c)他の細胞コンパートメント上で又はデバイスの他のマイクロ流体チャンバにおいて工程b)で行った刺激の作用を調べる工程を含むことができる。
相互接続システムを通過する液体のチャネルの存在は、もう一方のチャンバの方の前記物質の移動のリスクを低下させることができる。
【0012】
方法は、ディファレンシャルスクリーニングを行うために、少なくとも2つの異なるデバイスの間に、少なくとも1つの細胞型、緩衝液の1つのタイプ、物質の1つのタイプ、又は相互接続システムの1つのタイプの間の差を含む、同一のマイクロ流体支持体上に存在するいくつかのデバイスにより同時に適用され得る。
本発明は、また、他の態様によれば、上で定義された少なくとも1つのデバイス又は上の方法の1つを含む、神経毒物質をスクリーニングする方法、又は神経保護剤をスクリーニングする方法に関する。
神経疾患又は神経変性疾患の間のニューロンの変性は、シナプスの機能(伝達)の早期の修飾、シナプス前要素の変性又は退縮、退行性及び順行性軸索内輸送、軸索破壊のパラメーターの修飾及び細胞体樹状突起コンパートメントの変性を含む工程の連続によって進行する。これらの事象の時間順序は、ニューロンが受けた攻撃のタイプに左右され得る(ニューロン、神経毒ストレス、遺伝子突然変異、ウイルス感染症等の神経伝達上流の修飾)。これらの種々のコンパートメントの機能異常と関連した細胞機序と分子機序は、特異的であり必須的であり得る。軸索又はシナプスの完全な状態を制御する細胞機序又は分子機序が知られてなく且つニューロン細胞体の完全な状態を制御するものとおそらく同一でないことを示すことは重要である(そのために多くの薬理学的物質が開発されてきた)。従って、細胞体を保護することが知られる分子は、シナプス変性あるいは軸索変性を必ずしも防止しない(その逆も同じ)。更に、ニューロンが相互に接続される場合、求心性(上流)接続の損失により、脆弱になり、次に神経毒ストレスにより脆弱になるニューロンが生じる。これによりニューロン網のカスケード変性が生じ得る。それ故、本発明のデバイスによって再構成されたネットワークによる治療目的のための分子の評価は、ネットワークのロバスト性によるこれらの可能性を評価することを可能にする。軸索及びシナプスの障害、おそらくネットワーク機能不全は、神経変性病状の間に非常に早期に現れ、患者における認知的症状の出現と相関していると思われる。
【0013】
本発明のデバイスは、単離されたニューロンを区分するか又はニューロンの方向性ネットワークを再建することを可能にすることができる。デバイスの構造は、詳しくはニューロンネットワークのサブコンパートメントの各々に種々の組成物の流体を選択的に適用することを可能にする(例えば、B型のニューロンに接続したA型のニューロンを考える場合には、ニューロンAの細胞体樹状突起コンパートメント、ニューロンAの軸索部、ニューロンBの細胞体樹状突起コンパートメント、ニューロンBの軸索等)。
従って、ストレスをネットワークの一部分に加えることによって変性状態をモデルにし、且つその結果に従うことが可能である。このストレスは、例えば、ニューロンAの軸索の軸索切断、ニューロンAの細胞体樹状突起コンパートメントあるいはメジアン軸索コンパートメント、ニューロンBの細胞体樹状突起コンパートメント等に毒性分子を加えることを含み得る。ストレスは、毒性(有機又は無機の種類)、神経毒性、シナプス毒性、軸索毒性等、分子、細胞培養液に添加したあるいは遺伝的に移植された正常タンパク質又は突然変異タンパク質又はキメラタンパク質、神経向性(又は非神経向性)ウイルス又は感染物質、生理化学的状態又は物理的状態(圧力、温度、波動等)の修飾を加えることを含み得る。
これらのストレスの適用は、細胞成分の全部又は部分の進行性変性(シナプス伝達の修飾、シナプスの退縮、軸索変性、軸索内輸送パラメーターの修飾、細胞体樹状突起変性等)を引き起こすことができ、その結果に続いてバイオマーカ又は細胞形態の分析が行われ得る。
これらの変性プロセスの発生は、薬理学的特性(化学合成又は自然抽出から得られる有機分子、タンパク質(神経栄養因子等)、天然ポリマー又は非天然ポリマー)を評価することが望ましい分子をネットワークの成分に局所的に加えることによって遮断されるか又は抑制されることができる。これらの特性は、i)シナプス機能(例えば、皮質刺激の後、線条体ニューロンにおいて、erkキナーゼの動員の実験によって図18に示される)、ii)シナプス変性(例えば、軸索切断実験におけるVGlut-1シナプス前構造をモニタする実験によって図21に示される)、iii)軸索変性又は細胞体変性(例えば、皮質ニューロン軸索切断及び細胞体スタウロスポリン適用の実験によって図19及び20に示される)回復させる能力に関して評価され得る。同様に、破壊された構造(神経栄養因子等)を再生することを目標とする分子の可能性を評価することが可能である。
【0014】
本発明のデバイスは、軸索変性あるいはシナプス変性を調べ且つこの変性に活性である物質のスクリーニングを行うのに最も特に適していることがあり得る。従って、本発明は、細胞要素が前記物質と接触させる前にストレスをかける方法に関する。
ストレスは、軸索切断、毒性化合物、例えば、第1のチャンバ内で培養されるニューロンの細胞体樹状突起コンパートメント又は正中軸索コンパートメント、第2のチャンバ内に含有する培養ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおいて、例えば、神経毒化合物、シナプス毒性化合物又は軸索毒性化合物、細胞培養液に添加された、あるいは遺伝的に移植された正常タンパク質、突然変異タンパク質又はキメラタンパク質を加えること、又は物理化学的状態あるいは物理的状態、例えば温度、圧力又は電磁放射線の変性によって生じ得る。
方法の一例示的実施態様において、少なくとも3つのチャンバのデバイスの第1のチャンバを、軸索が第2のチャンバの方へ相互接続システムのマイクロチャネルを通って伸びることを可能にする第1のニューロン培養物で播種し、次に、軸索の溶解を引き起こすように第3のチャンバに物質を導入する。
本発明は、また、活性であると推定される物質をスクリーニングする方法であって:
a/ 上で定義された方法に従って培養した細胞を含む、上で定義されたデバイスを用意する工程、
b/ 前記培養した細胞の少なくとも1つの細胞を活性であると推定される少なくとも1つの物質と接触させる工程、
c/ 前記細胞について、前記細胞のバイオマーカーの有無、又は発現あるいは活性の程度を決定する工程、及び
d/ 前記バイオマーカの決定された有無、又は発現あるいは活性の程度を対照値、対照値の範囲又は対照決定と比較する工程
を含む、前記方法に関する。
【0015】
このようなスクリーニングする方法において、培養細胞は、細胞、特にニューロンの少なくとも2つの異なったタイプを含むことができ、1つの細胞型がデバイスの第1のチャンバと第2のチャンバの各々に割り当てることができる。
スクリーニングすべき前記物質は、第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバに及び/又は流体相互接続システムに導入され得る。
前記細胞は、ニューロンであり得る。
方法は、工程b/の前に追加のステップa'/、又はステップbの次に追加のステップb'/を含むことができ、ステップb/の少なくとも1つの細胞が細胞変性プロセスを誘導する少なくとも一つの刺激に供される。
前記少なくとも一つの培養細胞がニューロンであるので、細胞変性プロセスを誘導する前記刺激は、神経毒ストレス、遺伝子突然変異、ウイルス感染、軸索切断、神経毒分子、シナプス毒性分子又は軸索毒性分子より選ばれる毒性分子、細胞培養液に導入されるか又は培養細胞に遺伝的に移植された正常タンパク質、突然変異タンパク質又はキメラタンパク質、感染物質、特に神経向性薬又は物理化学的状態の修飾より選ばれ、特に、圧力、温度、pH、オスモル濃度又は電磁波、特にマイクロ波タイプ又は電波タイプより選ばれ得る。
細胞変性プロセスは、細胞コンパートメント、特に、細胞体、軸索、樹状突起又はシナプスより選ばれたものに特異的であり得る。
スクリーニングすべき物質は、前記細胞変性を防止、低下、遅延又は処理するように推定され得る。
バイオマーカーは、前記細胞変性のマーカーであり得る。
【0016】
本発明は、また、スクリーニングする方法であって:
a) 細胞ネットワークを生成するように上で定義されたデバイスを1つ以上の細胞型で播種する工程
b) ストレスを発生させ、場合により工程aの前に行われてもよい工程、
c) 試験化合物を適用する工程、
d) 試験化合物の作用を決定する工程
を含む前記方法に関する。
本発明は、また、他の態様によれば、マイクロ流体デバイスを製造する方法であって、前記マイクロ流体システムが、複数のマイクロメータパターンを含む第1のマスクを用いてフォトグラビア印刷技術によって、また、前記複数のパターンのサブセットに対応する、光透過性を有する第2のオーバーマスクを、前記マスクに、フォトグラビアの間に重ね合せて、フォトグラビアの間に基質上の前記サブセットだけを転写することによって準備される、前記方法に関する。
本発明は、実施態様によれば、有効なニューロンコンパートメント化、軸索発育上の方向性の強制、種々のタイプの軸索間の選択、及び/又は異なるチャンバに含有する種々のタイプの細胞を含み、且つ細胞延長によって特定の接続を有する細胞のネットワークの生成を可能にする。
本発明は、また、1つ以上の選択細胞サブコンパートメントに対するある種の物理的又は化学的刺激の動的強制、これらのサブコンパートメントの一部の特異的なバイオ標識化及びこれらのサブコンパートメントの一部の生物学的含量の分析を可能にすることができる。
【0017】
一態様によれば、本発明のマイクロ流体デバイスは、細胞培養のための少なくとも2つのマイクロ流体チャンバを備え、そのサイズは、微細加工相互接続ゾーンによって分離された細胞体の発育と適合でき、その形状は、軸索繊維又はより一般的には細胞延長の方向、速度論、数、タイプ及び相互接続に影響を及ぼし得る。種々のタイプのミクロ構造がこの作用に用いることができ、種々の例を以下に提唱する。
流体相互接続システムの種々のタイプのミクロ構造は、細胞延長の成長に対して種々のタイプの作用を有するか又は種々のタイプの選択を行うことができ、望ましい作用に従って選択することができ、必要により、組み合わせてもよい。
非対称の狭くなっているチャネルを備える構造は、一方向での細胞延長の発育を促進し、一般的には、より広い方から〜より狭い方に進む。
ねじれた過程を有するマイクロチャネルを備える構造は、神経サブタイプに属するある特定のタイプの軸索を遅延させ、加速させ又は選択することを可能にする。本発明は、このためにこのような構造を備えるデバイスの使用に関する。
障壁、例えばマイクロピラーを含有する構造は、軸索あるいは樹枝状のコンパートメント化を可能にすることができ、同時に軸索間接続の形成を調節することを可能にする。従って、本発明は、このためにこのような構造を備えるデバイスの使用に関する。
本発明の他の目的は、上記相互接続システムに加えて、細胞体の位置決めを正確に制御することを可能にする細胞培養のための個々のサブチャンバを備える、培養のためのマイクロ流体デバイスを提唱することである。必要により、これらのサブチャンバは、少なくとも1つのあるタイプの細胞体の接着を促進するように処理される表面を有してもよい。
本発明は、増殖及び/又は分化の間、細胞延長を生じることができるタイプの細胞に関する。特に、幹細胞、神経細胞、ニューロン幹細胞、そしてまた、これらの分化の間、神経細胞や分化したニューロンサブタイプに生じ得る細胞に関する。
【0018】
本発明は、必要により種々のニューロンサブタイプ及び/又はニューロンと非神経細胞の組み合わせ、及び/又はニューロン間の種々のタイプの軸索及び/又は樹枝状の相互作用を含んでもよい、最も単純なものから最も複雑なニューロンネットワークまでの方向性の再建を可能にすることができる。
本発明は、神経細胞と非神経細胞の間の相互作用を再建し研究することを可能にすることができる。
本発明は、試薬及び/又は薬剤を有する個々のニューロンコンパートメントを標的にし、且つ分析のためにこれらのコンパートメントの一部に由来するバイオマーカーを収集めることを可能にすることができる。
透明な種類のチャンバや相互接続システムは、軸索、樹状突起、シナプス又は細胞体のような前記細胞コンパートメントのインサイチュ分析を、必要によりリアルタイムで、限定されない例として、免疫組織化学、核酸ハイブリッド形成、核酸増幅、電気化学又は電気生理学のような分子生物学ツールあるいは細胞生物学ツールにおいて、促進させることができる。ニューロンの状態あるいは病理学的状態において、ニューロン発生の間のこのような研究の実施態様は、本発明の関連の範囲内に包含する。
本発明は、比較研究、高含量スクリーニング、高処理能力スクリーニング、薬剤の調査又は毒物学的研究に特に適している。
また、天然又は人工の神経毒物質、アポトーシスシグナル、又は天然又は人工の神経保護物質の作用を研究するのに特に適している。
一般に、それは、個々の細胞コンパートメントにおいて、バイオマーカーの存在の詳細な研究に充分適している。
【0019】
用語「バイオマーカー」は、細胞の生物学的状態に関係するタイプの情報を意味するものである。生物学において、細胞生物学において及び医学において一般に用いられるバイオマーカの典型的な例は、タンパク質の存在、その濃度、その発現レベル、代謝産物、神経伝達物質、ヌクレオチド配列又は酵素の存在又は濃度、あるいはタンパク質の局在、細胞コンパートメントにおける空間分布、又はこれらの基準の組み合わせである。
本発明のための用語「決定する」は、定量的又は定性の検出を意味するものである。
本発明のための用語「対照値」、「対照値の範囲」又は「対照の定量」は、「ベースライン」あるいは「正常な」状態下で所定のパラメーターの値、値の範囲又は定量を意味するものである。このような状態は、通常、作用が決定されるべき要素がないときに得られる。
例えば、バイオマーカーの発現の程度に関して、対照値、対照値の範囲又は対照の定量は、刺激誘導細胞変性のないときの細胞における前記バイオマーカの発現の程度に対応する値、値の範囲又は定量であり得る。
本発明によれば、これらのバイオマーカーは、種々の光学方法、特に蛍光イメージング、又は電気方法、特に電気生理学によって検出され得る。
多くの方法は、細胞におけるバイオマーカを確認する、当業者、特に細胞生物学者及び神経内科医に既知である。実際に、本発明の主な利点の1つは、細胞生物学において既知のバイオマーカーを検出し分析する方法の最も広い範囲の生体内使用を可能にし、初めて、以前には到達できない構造に配置されたニューロンによる前記使用を実施することができることである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に従って準備されたマイクロ流体デバイス1の一例を示す概略図である。
【図1A】本発明に従って準備されたマイクロ流体デバイス1の一例を示す概略図である。
【図1B】本発明に従って準備されたマイクロ流体デバイス1の一例を示す概略図である。
【図1C】図1Bに示されるものと同様のデバイスの一例である。
【図1D】図1CのID-IDに沿った断面を示す図である。
【図1E】図1CのIEの詳細を示す図である。
【図1F】図1DのIFの詳細を示す図である。
【図1G】図1Cのデバイスの透視図である。
【図1H】図1Gの詳細を示す図である。
【図2A】流体相互接続システム3のマイクロチャネル10の第1の例を示す図である。
【図2B】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図2C】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図2D】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図2E】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図2F】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図3A】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図3B】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図3C】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図4A】障壁のネットワークからなるタイプの相互接続システム3の例を示す図である。
【図4B】障壁のネットワークからなるタイプの相互接続システム3の例を示す図である。
【図4C】障壁のネットワークからなるタイプの相互接続システム3の例を示す図である。
【図5】複雑で方向性のニューロン構造を形成するために使用し得る配置の限定的な例を示す図である。
【図6A】2つの枝分れ51と結合する第1の部分50を含む分岐部を有するマイクロチャネル10の一例を示す図である。
【図6B】構成A〜Eの種々の例に対するパラメーターaとLの値の表である。
【図6C】2つの枝分れ51と結合する第1の部分50を含む分岐部を有するマイクロチャネル10の一例を示す図である。
【図6D】構成A〜Cにおける幅aの値の表である。
【図6E】2つの枝分れ51と結合する第1の部分50を含む分岐部を有するマイクロチャネル10の一例を示す図である。
【図6F】構成A〜Cのa/b比を示す表である。
【図7】チャンバ2の間に単細胞チャンバ80を作る図である。
【図8】多数のパターンがエッチングされている写真である。
【図9】多数のパターンがエッチングされている写真である。
【図10】多数のパターンがエッチングされている図である。
【図11】マイクロチャネルを含む相互接続システムの例示的実施態様の写真である。
【図12】マイクロチャネルを含む相互接続システムの例示的実施態様の写真である。
【図13】本発明のデバイスによる例示的実施態様の写真である。
【図14】本発明のデバイスによる例示的実施態様の写真である。
【図15】本発明のデバイスによる例示的実施態様の写真である。
【図16】本発明のデバイスによる例示的実施態様の写真である。
【図17】本発明のデバイスによる例示的実施態様の写真である。
【図18】非対称のマイクロチャネルによって分離されたマイクロ流体チャンバを示す図である。
【図19】本発明のデバイスによる例示的実施態様を示す図である。
【図20】本発明のデバイスによる例示的実施態様を示す図である。
【図21】本発明のデバイスによる例示的実施態様を示す図である。
【図22】本発明のデバイスによる例示的実施態様を示す図である。
【図22b】3つのチャンバ2a、2b、2dによる例を示す図であ
【図23】上の近位チャンバ(青色)に播種した皮質ニューロンを示す画像である。
【図24】3つの相互接続したチャンバを備えるマイクロ流体デバイスによる例示的実施態様を示す図である。
【図25】流れ及び拡散を測定する一連の定性実験を行った結果を示す図である。
【図26】皮質ニューロンの分化について行った結果を示す図である。
【図27】皮質ニューロンの軸索切断について行った結果を示す図である。
【図28】皮質ニューロンの軸索切断について行った結果を示す図である。
【図29】皮質ニューロンの軸索切断について行った結果を示す図である。
【図30】断片化指数と断片化軸索の%の間の関係を示す画像である。
【図31】細胞体死の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
限定されない例示的実施態様の、以下の詳細な説明を読み取る際に、また、添付の図面を調べる際に、より明らかに本発明を理解することが可能である。
図1は、概略的に、「チップ」とも呼ばれる、本発明に従って準備されたマイクロ流体デバイス1の一例を示す概略図である。
このマイクロ流体システム1は、考えられる例において、マイクロ流体チャンバ2を備え、この場合、2つあり、符号が2a及び2bであり、それぞれ、第1の細胞培養物及び第2の細胞培養物で播種されるものである。
マイクロ流体システム1は、また、第1チャンバと第2チャンバ2a及び2bを接続し且つ細胞延長が一方のチャンバからもう一方のチャンバまで伸びることを可能にする流体相互接続システム3を備える。
マイクロ流体チャンバ2は、例えば、流体相互接続システム3が伸びている2つのそれぞれの平行した部分4a及び4bにより作られている。
マクロチャンバとも呼ばれる部分4a及び4bは、例えば、図示されるように、これらの末端で、例えば、形が円筒形のより広い部分5(リザーバとも呼ばれる)に接続されている。
デバイス1は、適切な単一材料又はマルチマテリアルの支持体で作ることができる。この支持体は、図1Aに示されるように、本発明の細胞培養のためのいくつかのデバイス1を備えることができる。
図1Aの例において、デバイス1は、例えば、円形の顕微鏡カバーグラス、例えば、直径42mmである、例えば、透明である底面基体で作られている。本発明は、1つの材料に又は1つの具体的な形に限定されない。
【0022】
チャンバが作られる材料は、例えば、PDMSであり、例えば顕微鏡カバーグラスで作られたガラス板か又はチャンバの底を形成する他の材料に結合されている。
チャンバを充填するために、チャンバが作られる材料は、より広い部分5のレベルで、例えば、貫通することができる。例えば、4mmの穴がその中に作られる。
ピペット又は注入ポンプによって液体をチャンバに導入することができる。例えば、10〜100μlの液体が、各チャンバ2a及び2bに導入され得る。
デバイスの使用の間、液体の永続的な流れがチャンバ2aと2bの間に存在しないことは可能である。
図1において、部分5は円筒形であるが、他の形も可能である。
デバイス1は、流体の観点から自律的(流体的に自律的)であり得、即ち、種々の培養液がチャンバに導入されると、デバイスと外部による流体連通がない。
図1Bにおいて、デバイス1は、マイクロ流体デバイス1について3つのチャンバ2a、2b、2cを備えている。
第3チャンバ2c(中央チャンバとも呼ばれ、この場合には、チャンバ2a及び2bは、遠位チャンバと呼ばれ得る)は、チャネルとも呼ばれる直線部分4cを備え、チャンバ2aと2bの部分4aと4bの間に伸びている。この部分4cは、チャンバ2cの2つのより広い部分5を結合している。
部分4a、4b、4cは、例えば、広い少なくとも55のμmである。
図面の明瞭さのために、図1A及び1Bにおいて、流体相互接続システム3は示されていない。
【0023】
部分4cは、細胞延長の進行を妨害しない液体で充填することができるが、チャンバの一方に導入される化合物のもう一方のチャンバへ拡散を制限することができる。
部分4cは、また、例えば清浄剤で充填することによって、軸索切断を行うために使用され得る。
部分4cは、第1チャンバと第2チャンバの対称面に含有する縦軸に沿って伸びることができるが、他の構成も可能である。
流体相互接続システム3は、少なくとも第2のタイプの細胞延長と比較して少なくとも第1のタイプの細胞延長の進行を促進するために、種々の方法で作ることができ、第1のタイプと第2のタイプの細胞延長は、例えば、これらが由来するマイクロ流体チャンバによって又はこれらが延長である細胞型によって異なっている。進行は、例えば、相互接続システムにおける流体の流れなしで起こり得る。
一般に、流体相互接続システムは、複数の並置されたマイクロチャネルを備えることができ、これらの末端で細胞チャンバに、直接、あるいは以下に指定される単細胞チャンバによって接続される。
流体相互接続システムは、例えば、種々の形状であり得る1〜1000マイクロチャネルを備え得る。
同一流体相互接続システムのマイクロチャネルはすべて同一の形状をもつことができ、各々は、例えば、平行移動又は回転又はより複雑な幾何学変換によって他のレプリカである。
【0024】
本発明の一例示的実施態様において、流体相互接続システムは、これらがうち、縦軸が平行で、例えば、接続している細胞チャンバ2のマクロチャネル4a及び4b、又は4cさえに垂直である複数のマイクロチャネルを備えている。
流体相互接続システムは、特に上から見た場合、非対称形を有するマイクロチャネルを備え得る。
例えば、直線的に減少する幅を有する、中間部分10cを介して接続された幅aのより広い部分10aと幅bのより狭い部分10bをもつ、非対称の形状を有する、流体相互接続システム3のマイクロチャネル10の第1の例が、図2Aに示されている。
驚くべきことに、異なる長さの非対称のチャネルを有するデバイスを用いることにより、これらが由来するチャンバに従うだけでなく、これらの細胞サブタイプに従う軸索を選ぶことが可能であることがわかった。
例えば、長さが少なく1200μmのチャネルを用いて、大脳顆粒のニューロンは軸索を遠位チャンバへ送ることができないが、投射ニューロンはそのようにすることができる。
更に、幅が2μm以下のチャネルに軸索が浸透しないかあるいは浸透しにくいことが認められ、軸索に不浸透性の流体相互接続部を作ることを可能にする。
図2B〜2Dは、また、マイクロチャネル10に可能な他の形状、例えば、図2Bに示されるように、上から見た台形状、図2Cに示されるように、ノーズコーン形状、又は図2Dに示されるように、角状を表している。前記マイクロチャネルの縦軸に沿って移動する場合、マイクロチャネル10の幅は線状又は非線状様式で変化させることができる。
【0025】
マイクロチャネル10は、図2Eに示されるように、溝がデバイスの底部分に又は図2Fに示されるように、溝が最上部に形成され得る。
マイクロチャネル10は、例えば、10μm〜10 000μm、好ましくは50μm〜2000μm、例えば約500μmの長さを有する。
マイクロチャネル10は、例えば、1〜5μm、例えば約3μmの厚さを有する。
マイクロチャネル10の幅は、これらの最も広い部分で、例えば、5〜100μmであり、最も狭い部分で、1〜10μmである。マイクロチャネルの幅は、最も狭い部分で、例えば、最も広い部分の幅の最大でも半分に等しい。
例示的実施態様において、最も広い部分の幅は10μmであり、最も狭い部分は3μmである。このような値において、驚くべきことに且つ劇的に、1000の領域での選択性を観測することが可能であり、即ち、マイクロチャネルの最も広い部分と接触する細胞チャンバに含有される細胞は、マイクロチャネルの狭い部分と接触する細胞チャンバに含有されるものより少なくとも1000倍の軸索を送る。
流体相互接続システムのマイクロチャネルは、各々直線形状又は、変形例として、非直線形状を有することができる。
例えば、連続部分が相互に直角で配置されたジグザグの形状のマイクロチャネル10が図3Aに示されている。ジグザクパターンの周期Lは、例えば、5μm〜100μmで、好ましくは10〜50μmである。
例えば、半円形部分の連続から構成される、波状を有するマイクロチャネル10は、図3Bに示されている。選択されるニューロン型に従って、波状の周期Lは、例えば、3〜5μm、又は5〜10μm、あるいは10〜30μmである。
【0026】
このタイプのチャネルは、軸索サブタイプを選択するのに有効であり得る。例えば、小さな曲率半径を有するチャネルを用いて、皮質軸索が停止されることが見られたが、海馬軸索又は線条体軸索はこれらのチャネルを通過することができる。
広くなった部分10aと狭くなった部分10bの連続を含むマイクロチャネル10の例は、図3Cに示されている。狭くなった部分10a及び10bは、例えば、一定幅を有するが、広くなった部分は、それぞれ末広と先細である入口と出口及び一定幅、例えば、5μm〜50μmの中間部分10cを有する。狭くなった部分10bの幅bは、例えば、2μm〜10μmである。
狭くなった部分10bの長さdは、例えば、10〜500μmである。入口と出口の長さcは、例えば、10〜500μmである。部分10cの長さfは、例えば、10〜500μmである。
図4A〜4Cは、障壁のネットワークからなるタイプの相互接続システム3の例を示す図である。
これらの図において、例えば、図4Aに示されるように、円形のアイランドの形(微小ピラーとも呼ばれる)又は図4Bに示されるように、多角形、例えば矩形の丸石の障壁70を作ることが可能であることがわかる。
障壁70は、種々の配置を有し、例えば、図4A又は4Bのように、2つの寸法の平面で一定の位置を有するネットワークの形で配置され得る。障壁70は、また、図4Cに示されるように、島の中心が多角形の頂点のように配置される配置の形であり得る。
図4Aの配置は、好ましい実施態様に対応し、障壁70の間に障壁の半径より小さな曲率半径をもたないラインを循環することはできない。このような配置は、皮質軸索と線条体軸索を分離するために使用し得る。a、b、cの値は、例えば、それぞれ、2〜10μm、2〜10μm、5〜100μm、好ましくは2〜5μm、2〜5μm、5〜50μmである。
【0027】
図5は、本発明によって、複雑で方向性のニューロン構造を形成するために使用し得る配置の限定的な例を示す図である。小さな矩形は、細胞培養のためのチャンバ2を示す概略図である。矢印もまた、相互接続システム及びこれらの方向性を示す概略図である。これらの方向性システムは、例えば、軸索発育、シナプス形成、退行性及び順行性輸送、又は細胞シグナリングを研究するために、あるいは神経変性プロセス、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、特にニューロンの個々のサブタイプが早期シナプス機能不全の徴候を示す疾患を研究するために使用し得る。
流体相互接続システムは、相互に一直線になって配置されることができ、変形例として、異なる方向に向かせることもできる。
図22は、bにおいて、3つのチャンバ2a、2b、2dによる例を示す図であり、チャンバ2aと2bは第1の流体相互接続システム3を介して接続され、チャンバ2bと2dは第2の流体相互接続システム3'を介して接続され、これは画像cにも見られる。種々の相互接続システムのマイクロチャネルは、相互に対して垂直である。相互接続システム3のマイクロチャネルの間に距離は、相互接続システム3'のマイクロチャネルの間と異なることがあり得る。
流体相互接続システムのマイクロチャネルは、例えば、チャンバ2bのマクロチャネルを隣接のより広い部分5に接続するL形で接続する。
本発明の変形例の1つによれば、ニューロン器質化を妨害せずに、ある種のニューロンコンパートメントから試薬を注入するか、あるいは産物を収集することができることが望まれる場合には、相互接続システムは、分子とイオンの2次コンパートメントとの交換を可能にするが、細胞の前記2次コンパートメントとの交換を可能にしない多孔壁によって少なくとも表面の一部の上で区切られる。この壁は、例えば、それぞれ、チャネルの底部分と最上部を構成しているの2層の材料の間に膜を挿入することによって、また、最上部において、前記膜と接触させて、産物を供給するか又は収集することができる2次チャネルを用意しておくことによって形成され得る。
【0028】
他の実施態様によれば、この膜は、例えば、光重合によりインサイチュで形成され得る。
最後に、これは、例えば、距離が軸索を通過させることができない2μm未満の、非常に近い障壁のネットワークから作ることができる。
2つの枝分れ51と結合する第1の部分50を含む分岐部を有するマイクロチャネル10の一例が図6Aに示されている。部分50は、枝分れ51ができるように幅aを有することができる。分岐部を有するパターンは、例えば、軸索接続又は分裂を可能にする。枝分れ51の縦軸は、例えば、部分50の入口端部の反対の末端で、距離Lだけ分離される。部分50の縦軸は、例えば、枝分れ51に関して正中面に含有する。後者は、例えば、100μmの長さにわたって分岐する2つの部分52を含むことができる。
構成A〜Eの種々の例に対してパラメーターaとLの値の表が図6Bに示されている。
図6Cにおいて、マイクロチャネル10は、幅2aが、例えば、枝分れ51の2倍である部分50によって作られる。図6Dにおける表には、種々の構成A〜Cにおける幅aの値のいくつかの例が示されている。
図6Eは、2つの枝分れ51に分裂する前の狭い部分50を備えるマイクロチャネル10を示す図である。部分50は、例えば、幅aから幅bに進み、枝分れ51は、例えば、狭い部分54と同一の幅である。
部分50が狭い部分54と結合する先細部分55の長さは、例えば、100μmである。
図6Fにおける表は、種々の構成A〜Cのa/b比の種々の例を示すものである。狭い部分54の存在は、束を集中させることを可能にする。
【0029】
図6Cの配置は、流量を保存することを可能にする。糸状仮足に対するストレスは、図6Aの例より経験的に大きく、その分裂を望むことを可能にする。
図6Gは、Y形ゾーンに対する機械的ストレスに関して図6Cと同様の特性を有する構成を示す図である。図6Gの構成は、また、横切る軸索束の挙動を試験することを可能にする。
図6Gの配置において、マイクロチャネル10は、分岐する枝分れ61と結合し、次に、新しい直線部分60と結合するように収束する平行した直線部分60を備えている。
2つの隣接のチャネルの2つの枝分れ61は、63で結合し、枝分れによってこれらの間に島64がもたらされる。直線部分60の縦軸の間の距離は、例えば、30μmであり、縦方向の傾斜は、例えば、100μmである。部分60の幅は、例えば、枝分れ61の2倍、2 aに等しい。
図6Hの表には、構成A〜Cの幅の値の種々の例が示されている。
チャンバ2の間に単細胞チャンバ80を作る可能性は、図7に示されている。単細胞チャンバ80は、例えば、関連するマイクロチャネル10の端部90及び、反対側では、断面がチャンバ2と直接結合するマイクロチャネル10より大きい連結チャネル92と連通している。チャンバ2の高さは、例えば、55μm、単細胞チャンバは12μm、マイクロチャネル10は30μmである。
単細胞チャンバ80は、マイクロチャネルに入る前にニューロンの細胞体を捕捉することができる。これらの構造を作るために、樹脂の第3の層が必要であり得る。これらの特徴的サイズは、1つ以上の細胞体を受容するように10〜100μmの範囲であり得る。
【0030】
本発明のデバイスの製造に関して、多くのマイクロリソグラフィ法は、例えば、Patrick Tabeling. Introduction to microfluidics. Belinによって記載されたものを使用し得る。
好ましい一実施態様によれば、デバイスは、Whitesides, G. M.; Ostuni, E.; Takayama, S.; Jiang, X.; Ingber, D. Soft lithography in biology and biochemistry., Annu. Rev. Biomed. Eng. 2001, 3, 335-373に記載されるように、ソフトリソグラフィの方法によって製造される。エラストマー、PDMS(ポリジメチルシロキサン)を用いることが可能であり、架橋されると、細胞生物学及び分子生物学に非常に適した特性、透明で、ほとんど反応性でなく、生体適合性を有する。
PDMSは、ニューロンが自然に付着する表面ではない。培養環境(ペトリ皿又はマイクロ流体チップ)に関係なく、表面を化学的に処理するのに有効であり得る。最も一般に用いられる手段は、ポリリジンを用いることからなり、これが壁に吸着し細胞接着を可能にする。フィブロネクチン又はコラーゲンのような他の接着タンパク質を用いることも可能であるが、これらの物質は当然PDMSに充分に吸着せず、ポリリジンと異なった細胞接着を可能にする。これらをPDMSに化学的に結合することが必要であり得る。それ故、光活性化可能な架橋剤2を用いることが可能である: 前記架橋剤が紫外線を受容する場合、受容されたエネルギーによりPDMSとの結合を生じることが可能である。多くの架橋剤が本発明に使用し得る、限定されない例として、例えば:
- スルホ-sanpah: スルホ-sanpah(N-スルホスクシンイミジル[4'-アジド-2'-ニトロフェニルアミノ]6-ヘキサノエート)は、一方の端部に、光活性化可能なニトロフェニルアジド基、もう一方の端部に、タンパク質に非常に一般的であるアミン機能(アミド化)と非常に反応性の特殊性を有するN-スルホスクシンイミジルエステル基を有する分子である、
- ベンゾフェノン及びBBTA: ベンゾフェノンは、PDMSに強く吸着するラジカル開始剤である。これが光活性化される場合、水素を含有する分子と結合するので、表面上にグラフトすることができる。BBTA((4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウム)は、ベンゾフェノンの親水性変形例であるが、機能は経験的に同一であるが、親水性であるのでタンパク質同じ溶液に溶解され得る。反応は、PDMS上に最初に吸着されなければならないベンゾフェノンと異なり、2つの分子が水中にある間に起こる。
【0031】
好ましい一実施態様によれば、特に個々の細胞又は細胞コンパートメントの個々の部位への接着を促進することが望まれる適用とともに有効である局在的光活性化が使用し得る。
例えば、Jenny Fink, Manuel Thery, Ammar Azioune, Raphael Dupont, Francois Chatelain, Michel Bornensa and Matthieu Piel. Comparative study and improvement of current cell micro-patterning techniques. Lab on a Chip, 2007, 7, 672-680に記載される接着タンパク質パターンを生成するために、望ましい部位だけでUV照射するようにマスクを用いることは可能である。
他の好ましい実施態様によれば、顕微鏡による光活性化も使用し得る: 例えば、Jun Nakanishi, Yukiko Kikuchi, Tohru Takarada, Hidekazu Nakayama, Kazuo Yamaguchi, and Mizuo Maeda. Photoactivation of a Substrate for Cell Adhesion under Standard Fluorescence Microscopes. J. AM. CHEM. SOC. 2004, 126, 16314-16315に記載されるように、顕微鏡によって紫外線を送ることによって、これらをマイクロ流体チップのPDMS表面に投射することが可能である。顕微鏡の物体焦点面に望ましいパターンによるフォトマスクを配置することによって、望ましいパターンがマイクロ流体チャネルの表面に得られる。更にまた、対物レンズがフォトマスクのパターンのサイズをかなり狭くすることを可能にし、それにより、精度に関して利益を得ることを可能にする。
いくつかの相互接続構造は、約1μmの分割を必要とする。その結果として、高解像度石英でできたマスクを用いることが望ましい。支持体をできる限り有益にするために、使用を促進する新規なリソグラフィ方法を提唱することも本発明の目的の一部である。この方法によれば、石英マスク120の全体の表面は、例えば、図8に示されるように、マイクロチャネルや細胞チャンバの多数のパターンによってエッチングされる。このツールは、単一マスクにおいて、ニューロンの制御されたネットワークの発生に有利であり得るパターンを探索することを可能にするか又はバンドリング/アンバンドリング特性又は丸いチャネルにおける挙動のような軸索投射のある種の特性を試験することを可能にする。
【0032】
このマスク120は、2つの目的を有する:
- 標準化された方法で4つの異なるミクロ構造を同時にリソグラフィを行うことを可能にするため。これは種々のマクロチャネルの形状を有する最大適合性を有するように設計され、それ故、かなりの使用柔軟性を与えるすべての形状に使用し得る。
- ほとんどの異なるパターンを同一の石英マスクに配置するため(非常に費用がかかる)。
多数のパターン(図8に示される例では96)は、相互に隣接して並置され得る(距離が標準化されている)。アランメントパターンは、その中心に配置されている。それ故、ミクロ構造に用いられる樹脂が負の樹脂である限り、多くのコンパートメントを有するチップパターンを作るために使用し得る。13のマイクロチャネル形状と6つの細胞コンパートメント形状がマスク120上にエッチングされている。各形状が種々のサイズで再現され、パターンの数が96になっている。
更に、マルチスケールパターンがエッチングされている。これらのパターンは、種々のサイズや形状を1つに一緒にまとめ、最低実験数で最大数の形状を探索することが目標である。例えば、狭くなっているチャネルについては、単一の実験で、サイズが所定のタイプのニューロンに好ましいことを決定することを可能にするマルチスケールパターンが設計されている。
一例として、図8に示される合計96の異なるパターンを、単一の高分解能マスクを用いて作ることができる。図10に示されるように、種々のパターンの間の選択がより低い分割を有し且つ窓110を有するオーバーマスク130によって行うことができる。
【0033】
図9は、窓110を通って見ることができるパターンの2つの例を示している。
オーバーマスク130は、また、アランメントパターン135を備えることができる。
本発明は、有利には、種々のタイプの細胞を培養し研究するのに使用することができ、特にニューロンについて適用するのに有利である。
ニューロンは、分化すると、もはや増殖しない細胞である。それ故、ニューロン細胞培養物を増殖することは不可能である。更に、これらの神経形成ピークの間にこれらのニューロンを得ることが重要であり、これは、ニューロン増殖が終わるとともに分化が行われる瞬間である。更に、これらはまだ成熟してなく、即ち、軸索や樹状突起がまだ成長していないので、培養皿又はチップにこれらに播種することが可能である。
有利には、当業者に周知の解剖プロトコールに従って、動物から、特にマウスから取り出されるニューロン材料が本発明のデバイスに用いられる。
本発明は、また、細胞を視覚化するとともに個々の細胞コンパートメント内の物質を限局化することを可能にする。
本発明は、それ自体で免疫標識、免疫組織化学、DNA標識、蛍光標識、ルミネッセンス又は化学発光の技術すべてに特に充分に役に立つものである。
本発明のデバイスにおいて蛍光免疫標識によって検出され得る細胞生物学に有利な分子のリストを一例として以下に示す:
- α-チューブリン: このチューブリンサブユニットは、すべての細胞微小管に存在する。
それ故、この標識は、コンパートメントに存在する細胞の細胞骨格のすべてを見ることを可能にする。
- β3-チューブリン: 例外なく、軸索の微小管に特異的なサブユニット。
- Map2: Map2は、微小管と関連している。これは、特に樹状突起に存在する。
- シナプトフィジン: 軸索のシナプスがない場合、シナプトフィジンが均一に軸索に存在する。シナプスが成熟しニューロンに接続する場合、シナプス内に蓄積する。
- p-erk: erk(細胞外調節キナーゼ)は、タンパク質キナーゼであり、これが活性化される場合、リン酸化され、次に核に転移する。この活性化は、線条体ニューロンのグルタミン酸作動性シグナル変換カスケードで生じる。この標識によって、線条体ニューロンが実際にグルタメートによって活性化されたことを証明することが可能である。
【0034】
非免疫学的標識もまた、使用し得る。例えば、細胞核を可視化することを可能にする、DAPI又は他のいかなるDNA-挿入剤も、本発明のデバイスに使用し得る。
図11は、幅が一方のマイクロ流体チャンバからもう一方のマイクロ流体に減少するマイクロチャネルを含む相互接続システムの例示的実施態様の写真である。図11において、皮質ニューロンが播種された細胞体コンパートメントは、左側に見られる。軸索はマイクロチャネル10を通過し、その幅は、例えば、入口の15μmから出口の3μmに進む。
写真により、左側ではマイクロチャネルの広い部分において皮質ニューロンが軸索束を投射し、右側では、破線の矢印によって示される皮質軸索束が狭くなった側から出て、実線の矢印によって示される細胞体及び線条体軸索に接続することが見られる。
図12は、左側の写真に、40×位相差において、皮質培養物だけによる最も狭いマイクロチャネルの出口と、左側の写真に、共培養物の場合を示す図である。共培養物の場合、皮質軸索のネットワークは、より拡散し絡み合っている。
図1Bに示されるものと同様のデバイスの一例が図1Cに示されている。図1Dは、図1CのID-IDに沿った断面である。図1E及び1Fは、図1C及び1Dの詳細IE及びIFを示している。図1Hは、図1Gの詳細を示し、図1Cのデバイスの透視図である。
部分4cは、一方のマクロチャネル4a又は4bからもう一方まで移動する化学基体のリスクを低下させるのに有用であり得る。
一例において、マイクロチャネルに垂直に測定される相互接続システム3の長さは、例えば、3mm〜5mm、例えば、4mmである。
マクロチャネル4a又は4bの幅は、例えば、500〜1500μm、例えば、1000μmである。部分4cの幅は、例えば、マイクロチャネルと交差している領域、50〜150μmにあり、例えば100μmである。マイクロチャネル10の幅は、例えば部分4cの開始における出現で10μmである。
マイクロチャネル10の高さは、例えば5のμm以下であり、例えば3μmである。部分4cの高さは、例えば100μm未満であり、例えば55μmである。
【実施例】
【0035】
以後実施例において用いられるマイクロ流体デバイスは、図1A又は1Bに関して記載される通りであり得る。
用いられるデバイスは、例えばマイクロチャネル(3)によって分離される少なくとも2つの培養チャンバ(4a及び4b)から構成され得る。チャンバの各マクロチャネルはリザーバ(5)を形成する広くなった部分に接続され、例えば、これらがPDMSでできている場合には、エラストマーを通って穿孔される。
図1Aに示されるように、各デバイスは、例えば、同一の基体上に4回繰り返され、これは各々2つのチャンバを有する4つの独立したデバイスを示している。
図1Bは、各々3つのチャンバを有する4つの独立したデバイスを示す図である(これらのチャンバまだ時にはコンパートメントと呼ばれている)。
2つ(又は3つ以上)の培養チャンバは、マイクロチャネル又は他のミクロ構造を有する相互接続システムによって分離されている。
【0036】
より詳しくは、以下のデバイスを用いた:
デバイスD1(図19):
デバイスは、長さが500μm、幅が広い側の15μmと狭い側の5μm、高さが3μmの、167の狭くなっているマイクロチャネル(ダイオードとも呼ばれる)を介して相互接続された、寸法(L×l×h/μm) 4500、1000、55の2つの培養チャンバを備えている。各マクロチャネルは、直径が4mmで高さが5〜10mmの2つのリザーバ(広くなった部分)に接続されている。チャンバは、カバーガラス170μm厚に取り付けられている。
デバイスD2(図13、14、15、16、17):
寸法(L×l×h/μm) 4500、1000、55の2つの培養チャンバが、長さが500μm、幅が広い側の15μmと狭い側の3μm、高さが3μmの、167の狭くなっているマイクロチャネル(ダイオードとも呼ばれる)を介して相互接続されている。各チャンバ(マクロチャネル)は、直径が4mmで高さが5〜10mmの2つのリザーバ(広くなった部分)に接続されている。チャンバは、カバーガラス170μm厚に取り付けられている。
デバイスD3(図11、12、18):
寸法(L×l×h/μm) 4500、1000、55の2つの培養チャンバが、長さが500μm、幅が広い側の15μmと狭い側の2μm、高さが3μmの、167の狭くなっているマイクロチャネル(ダイオードとも呼ばれる)を介して相互接続されている。各チャンバ(マクロチャネル)は、直径が4mmで高さが5〜10mmの2つのリザーバ(広くなった部分)に接続されている。チャンバは、カバーガラス170μm厚に取り付けられている。
【0037】
デバイスD4(図20、21):
3つの平行した培養チャンバ、即ち、寸法(L×l×h/μm) 4500、1000、55の2つの遠位チャンバが、長さが500μm、幅が広い側の15μmと狭い側の3μm、高さが3μmの、167のマイクロチャネルを介して相互接続されている。各チャンバは、直径が4mmで高さが5〜10mmの2つのリザーバ(広くなった部分)に接続されている。チャンバは、カバーガラス170μm厚に取り付けられている。「連続して」通過を可能にし且つ長さが500μm、幅が広い側の15μmと狭い側の3μm、高さが3μmの狭くなっているマイクロチャネルを用いていくつかのデバイスを準備した。いくつかのデバイスは、中央チャンバ(L×l×h/μm) 4500、50、3によって作られ、まっすぐか又は狭くなっている長い250μmのマイクロチャネルによってその他の2つのチャンバから分離されている(15μm×3μm×3μm)。
デバイスD5(図22、23):
これらは、3つか又は4つのチャンバを有するデバイスであり、第1のチャンバはその他の2つに垂直に向けられている。チャンバは、すべて寸法(L×l×h/μm) 4500、1000、55を有する。第1のチャンバ(A)は、長さが500〜1000μmと断面積が10μm×10μm×3μを有する一連の100マイクロチャネルを介して、第2(B)接続されている。これらのマイクロチャネルは、垂直面によって第2のチャンバと結合している。第2(B)及び第3(C)のチャンバは、長さが500μmと断面積が10μm×10μm×3μmの167のマイクロチャネルを介して相互に接続されている。いくつかのデバイスは、15μm×3μm×3μmの狭くなっているマイクロチャネルによって作った。いくつかのデバイスは、4つのチャンバをもち、チャンバ(B)が、同じ原理に従って、チャンバ(B)の両側に位置する2つの垂直なチャンバ(A)及び(A')に接続されている。
デバイスD6(図24):
デバイスは、3つの平行した培養チャンバ、即ち、寸法(L×l×h/μm) 25000、1000、55の2つの遠位チャンバと1つの中央チャンバ(25000、3000、55)を備え、長さが250μm、断面が幅が広い側の15μmと狭い側の5μm、高さが3μmの、930のマイクロチャネルを介して遠位チャンバの各々と相互接続されている。
2つの連続のマイクロチャネルは、中央チャンバの方に集まっている。各チャンバ(マクロチャネル)は、直径が4mmで高さが5〜10mmの2つのリザーバ(広くなった部分)に接続される。チャンバは、カバーガラス170μm厚に取り付けられている。
【0038】
実施例1: 本発明のデバイスの製造のための樹脂マスター
マスターが2つの異なる厚さ、即ち、3μmと55μmの構造を有するように2層の樹脂を用いる。は、SU8 2002樹脂(Microchemicals)によるマイクロチャネルと負の積層樹脂SY355(Microchem)によるマクロチャネル(厚さ55μm)を作る。
マイクロ流体チャネルの樹脂マスターを作る2つのフォトリソグラフィマスクは、QCadソフトウェアを用いて設計される。ガラススライド(1mm厚、直径52mm、Ediver、フランス)をイソプロパノールで洗浄し、ピラニア混合物(50% H2O2、VWR International、50% H2SO4、VWR International)に30分間浸漬し、次に150℃で2時間乾燥する。スライドを30秒間プラズマ処理する。厚さを決定する速度でSU8樹脂をスライド上に拡散させる
(http:/www.microchem.com/products/pdf/SU8_2-25.pdf)。
樹脂中に残っている溶媒を排除するために、ホットプレート上でプレキュアに続いて伸展させる。次に、樹脂を3mmの石英支持体を通して紫外線(Karl Suss MJB3アライナ)に8秒間さらす。ポストキュアは、樹脂の架橋を可能にする。パターンの出現まで、樹脂に適した現像剤中で現像を行う。プロトコールの終わりに基体をすすぐ。架橋を仕上げつつ、最後の再キュアが基体に対する樹脂の接着を強化するとともに構造を硬化することを可能にする。次に、第2の樹脂を付着させることが必要である。スライドを80℃に予熱する。樹脂膜を65℃でスライド上に積層し、マクロチャネル用のマスクで紫外線に10秒間さらし、次に現像する。イソプロパノールですすぐことによってプロセスが終わる。
【0039】
実施例2: デバイスの製造方法
デバイスを2工程で製造する。
1) PDMSの成形: デバイスの成形は、1:10w/wの架橋剤(Sylgard 184、Dow Corning)を有するPDMSをマスターを含有するPTFE金型に注入することによって行われる。次に、全体を65℃で炉内で4時間架橋する。次に、リザーバにおける 孔は、直径4-5mmのパンチを用いて作られる。
2) チップの接着結合: デバイスを密封するために、ガラススライドをPDMSチップに接着剤結合する。このために、2つの表面をイソプロパノールで注意深く洗浄し、次に、45秒間空気-プラズマ処理(PDC-32G、Harrick)し、次に、チップとガラススライドを接触させる。
【0040】
実施例3: 表面処理
ニューロンの接着又は軸索の進行を促進するために、本発明の(例えばガラススライド)デバイスの基体の表面処理の種々の実施例をここに記載する。
以下に記載するプロトコールにおいて、使用するタンパク質は、FITCのグラフトによって蛍光でなされるフィブロネクチンである。しかしながら、これらが1つの特定の出願又はもう一方のための他の有利な分子を有するスライドを官能化するためにあるように、これらのプロトコールは用いられることができる。
PDMSスライドの準備:
最初に、直径4cmガラススライド(Edriver)をイソプロパノールで洗浄する。次に、10%の架橋剤を含むPDMSをスライド上に付着させ、1000rpmで回転させることによって拡散させる。次に、スライドを65℃の炉内に少なくとも2時間の置く。次に、スライドを以下の3つのプロトコールの1つで処理する:
- スライドは、45秒間プラズマ-処理し、直ちに用いる。次に、これらをラジカル性と親水性の双方を保持する。
- スライドをプラズマ処理し、水と接触させて最低4時間保存する。従って、これらのラジカル性は失われるが、これらの親水性は保持される。
- スライドをプラズマ処理しないので、疎水性表面を有する。
スルホ-sanpah処理: 固体スルホ-sanpah(Pierce)を、HEPES溶液(50mM、pH 8.5)中250μg/mlに希釈する。これは、鮮明な赤色を有する。200μlのスルホ-sanpahをスライド上に付着させ、溶液が黒色になるまで(5分)、紫外線ランプ下にさらす。スライドをHEPESで2回シェーカーにより15分間撹拌しながら洗浄する。PBSに0.2mg/mlまで希釈したフィブロネクチン-FITC溶液の1滴をスライド上に付着させ、これを水に浸漬したワイプを用いて湿った状態に保たれたペトリ皿に置く。スライドを4℃で一晩放置した後、用いられるように1X PBSですすぐ。
ベンゾフェノン処理: スライドを、10%の水/アセトンを含むベンゾフェノン溶液中に1分間置き、次にアセトンですすぐ。0.2mg/mlに希釈したフィブロネクチン-FITC溶液の一滴をスライド上に付着させ、これをスルホ-sanpahと同じようにしてUV照射する。次に、スライドをPBSですすぐ。
BBTA処理: 62mM BBTA溶液を、0.25mg/mlのフィブロネクチン-FITC溶液及び0.25mg/mlの自然フィブロネクチンで補足する。スライドを紫外線にさらし、次にPBS緩衝液ですすぐ。
【0041】
実施例4: ニューロンの一次培養及び播種
小脳顆粒ニューロン(CGN)
生後5〜7日のスイスのラインの若いマウスから小脳を取り出した。同腹仔全体を断頭した後に、小脳半球を取り出すために、頭部の裏で3回の切開術を行った。次に、これらを外科的に取り出し、PBS(Gibco)を含有するペトリ皿に入れる。髄膜を除去するとすぐに、小脳を細かく切断し、PBSで3回すすぎ、トリプシン-EDTA(Gibco)で37℃において10分間分離する。次に、10% FCSを添加することによりトリプシンを阻止する。細胞を5 U/mlのDNAse 1(sigma)の存在下にDMEMグルタマックスIの溶液に再懸濁し、次に、10mlのピペットを用いて機械的に分離する。80gで6分間3回遠心分離した後、沈降物を、10%ウシ胎仔血清(Biochrom)、ストレプトマイシン/ペニシリン(Gibco)、及び25mMのKClを含有し、ニューロンサプリメントN2及びB27(Gibco)で補足したDMEMグルタマックス(Invitrogen)中で、50,000,000細胞/mlの密度で再懸濁す。次に、細胞をデバイスの細胞体コンパートメントに播種する。10μlの細胞懸濁液を、細胞体コンパートメントの上方のリザーバに導入する。次に、細胞が急速にコンパートメントに流れ込み、約10秒後に、静水圧の差によって生じる流れを安定化するので、細胞を支持体に付着させることができるようにその他のリザーバに無細胞完全培養液を添加する。流れの速度と播種の品質を顕微鏡を用いて制御する。播種の約10分後、4つのリザーバ(細胞体と遠位)を完全培地(約50μl/リザーバ)で充填する。従って、20〜30 000細胞が遠位コンパートメントに播種される。培養液の蒸発を避けるように2〜3mlの水を含有するペトリ皿にチップを入れる。生体外で(DIV) 12日間に及ぶ期間、培養液を2-3日ごとに完全に新しくする。2日間の培養後、ニューロンは分化し始め、遠位コンパートメントにおいて軸索突起が出る。播種したニューロンの約2%が、これらの軸索をマイクロチャネルに投射する。培養の4〜6日後、10日後750〜1200μmの全長に達しもはや経時変化しないように、マイクロチャネルに挿入された軸索が遠位コンパートメントと結合する。
この実験は、デバイスD1で行った。
皮質ニューロンと線条体ニューロンの一次培養。
生後14日のマウス胚の皮質と線条体を、スイスラインから取り出す。
ツールはCGNと同じにする。頭蓋の周径を切断した後に双方の半球を取り出す。皮質と線条体を同時に取り出すことができる。その後、細胞を酵素的に、次に機械的にL15培養液に分離した後、CGNに用いたのと同一のプロトコールに従って培養デバイスに播種する。培養液は、2mMのグルタマックス-I、ストレプトマイシン及びペニシリン、最後に、培養サプリメントN2及びB27を含有するNeurobasalから構成される。2日間の培養後、皮質ニューロンが分化し始め、軸索突起を出し、一部がマイクロチャネルに入り始める。播種した約2%の皮質ニューロンがマイクロチャネルに投射する。
【0042】
実施例5: 培養物の免疫蛍光研究のためのプロトコール
すべてのインキュベーションを周囲温度で行い、全回路(マイクロチャネル)を処理することができるように流れを生成する。望ましい分析時間で、細胞をPBS中4%パラホルムアルデヒドで20分間固定する。PBSですすいだ後、これらは、0.1%トリトンX-100によって10分間透過化し、1% BSAを含有するPBS溶液で40分間飽和する。すすいだ後、対象の一次抗体の希釈液の存在下に細胞を周囲温度で40分間暗所でインキューベートする。PBSですすいだ後、DAPI溶液に希釈した、一次抗体を生成するために用いた種の免疫グロブリン(IgG)に対向する二次抗体を暗所で25分間添加する。PBSですすいだ後、その後、チップを「fluoromount」封入剤で密封する。対象の以下のタンパク質に対向する一次抗体を用いた: β-チューブリン(モノクローナル1/300、Sigma)、α-チューブリン(モノクローナル1/300、Sigma)、Map 2(ウサギポリクローナル、1/300、Chemicon)、シナプトフィジン(モノクローナル1/400、Sigma)。
Alexa 350、488又は555にカップリングされる抗種二次抗体を1/500に希釈した。以下のプローブを用いた: cy3(1/700、Sigma)、Mitotracker赤(Molecular probes)にカップリングされるファロイジン。画像獲得は12ビットの冷却されたCCDカメラ(Coolsnap HQ2、Ropert Scientific)を装備したAxioberver Z1顕微鏡(Zeiss)を用いて行われ、全体がMicro-マネージャ開放性ソースソフトウェアによって制御される。画像をImage Jソフトウェアを用いて処理する。
【0043】
実施例6: 本発明のデバイスにおける小脳顆粒ニューロンの培養
新たに分離したCGNを細胞体コンパートメントに播種する。培養に導入される細胞のすべてが充分に付着する従来の細胞培養デバイスとは異なり、顕微鏡下に、付着した細胞の数を計数した後にのみマイクロ流体回路に播種される細胞の数を推定することができる。従って、細胞体コンパートメントにおける細胞密度が実験により約20 000〜30 000細胞であることが明らかである。
生体外で(DIV) 2日後、ニューロンは細胞体コンパートメントにおける軸索突起の複雑なネットワークを確立し始め、その一部がマイクロチャネルの1/3に浸透し始める。4DIVにおいて、150マイクロチャネルの全体が、チャネルに伸びている軸索によって完全に占められる。
遠位コンパートメントは、軸索突起が徐々に侵入する。7DIVから始まり、軸索突起成長端部と軸索は、これらのサイズ、細胞体から750〜1200μmに達し、もはや経時変化しない。
先行技術システムにおいて、軸索突起成長は、右側コンパートメントが播種されるにしても左側コンパートメントが播種されるにしても等しく生じる。
本発明の利点の1つは、共培養を得ることを管理することであり、ニューロン投射が制御される(例えば、皮質ニューロンが線条体ニューロン上に投射する)。それ故、1つのニューロン型が、左側チャンバに播種され、他のニューロン型が右側チャンバにおけるコンパートメントに播種される。制御すべき投射のために、軸索が一方向にマイクロチャネルを通過することができ、その他にできないことは、重要である。この例において、幅が細胞体側の15μmと遠位側の3μmで、長さが500μmの、図2Bに示されるのと同様の形状の本発明のマイクロチャネルを用いた。従って、狭くなった側の軸索はチャネルに入らないが、しかし、広い側の軸索はこれらが焦束される場合には通過することができる。軸索は、一方向にだけマイクロチャネルを通過する。
皮質軸索: 皮質ニューロンが広い側(15μm)に播種される場合、マイクロチャネル当たり8〜10の皮質軸索が横切る(全体のシステムに対して1000 - 1500)。これらがもう一方の側に播種される場合、5〜10の軸索だけが全体としてチップを横切る。
線条体軸索: 皮質軸索は狭くなっているチャネルの大きな側(15μm)上に入るが、これらは3μm幅である部分を横切るように処理することができない。それ故、これらのマイクロチャネル寸法は、線条体ニューロン上に皮質軸索の投射が制御され、且つ本発明が細胞型に従って軸索成長を選択するために使用し得ることを示す共培養に特に適切である。
【0044】
実施例7:
皮質線条体共培養及び方向性ニューロンネットワークの形成に対する適用。
原理: 左側チャンバをマウス一次皮質ニューロンで右側チャンバを線条体ニューロン(3日後に)で播種し、双方のニューロン型に適した培養液を用いることによって、線条体ニューロン上の皮質ニューロンの一方向性ニューロン投射を第6日目に見ることができた。
この実験は、デバイスD2によって行った。
皮質線条体ネットワーク: 皮質ニューロンと線条体内ニューロンは、顕微解剖によって、胎生14日のスイスマウス胚から取り出される。すべての解剖工程が、0.1%グルコースで補足されるPBS緩衝液において行われる。顕微解剖された構造は、トリプシン-EDTAの溶液中でインキュベーションによって消化され、パスツールピペットで機械的に分離される。数回リンスした後、単細胞懸濁液を計数する。皮質ニューロンをDMEM培養液中で40×106細胞/mlで再懸濁し、線条体ニューロンを15-20×106細胞/mlで懸濁する。次に、皮質ニューロンと線条体ニューロンは、これらのそれぞれの培養チャンバに、皮質ニューロンが相互接続システムのマイクロチャネルで広い側に播種される。次に、培養リザーバが、グルタマックス、ペニシリン及びストレプトマイシン及びニューロンサプリメントB27及びN2を含有するDMEMから構成される培養液で充填される。次に、播種したマイクロ流体デバイスを37℃のインキュベータ内に置く。培養液を3日ごとに新しくする。
相互接続システムの2つの側の間に幅について非対称を有する本発明のデバイスにおいて、皮質-線条体共培養が促進されることがわかった。この共培養実験において、線条体ニューロン上の皮質ニューロンのシナプスの投射が実際に機能することを証明することが有効であり得る。
皮質軸索束の向き: 皮質軸索束の成長は、線条体ニューロンの存在に非常に感受性がある: 皮質軸索束は、非常に明らかに線条体ニューロンの方に向いている。
シナプス成熟: シナプトフィジン標識を用いて、線条体ニューロンの付近が実際にマイクロチャネルを通過した皮質軸索のシナプスの発芽をもたらすことが証明される。皮質ニューロンシナプスの成熟は、ある場合には見ることができるがその他の場合には見ることができない。
【0045】
実施例8: 海馬ニューロンと皮質ニューロンのろ過
図13は、本発明のデバイスによって海馬ニューロンの軸索のろ過を示す写真を含む図である。
この実験は、デバイスD2によって行った。
図a及びbは、軸索ダイオードとも呼ばれる非対称マイクロチャネルによる皮質ニューロンのろ過を示す図である。上方の画像a: 皮質ニューロンをマイクロチャネルで広い側に播種する。ニューロン核は、染色された青(細胞核染料、Dapi)であり、軸索延長はグリーン(ベータ-チューブリン)である。右側チャンバの軸索による侵入を認めることができる。下の画像b: 皮質ニューロンは、マイクロチャネルの狭い側に播種され、少しの軸索だけが通過する。写真cは、細胞が広い側に播種される場合にマイクロチャネルの狭い側に出ている海馬軸索を示す図である。5つのマイクロチャネル出口が明らかである。写真dは、ニューロンが狭い側に播種される場合にマイクロチャネルの広い側に出ている海馬軸索を示す図である(5つのマイクロチャネル出口が目に見え、1つだけが占められている)。(スケールバー25μm)。
【0046】
実施例9: 本発明のデバイスにおけるニューロンネットワークの再構成及び皮質線条体ネットワーク及びコルチコ海馬ネットワークにおけるシナプスの接続の可視化。シナプス機能性の評価。
この実験をデバイスD2によって行った。
皮質線条体ネットワーク: 皮質ニューロンと線条体を、顕微解剖によって、胎生14日のスイスマウス胚から取り出す。すべての切開工程を、0.1%のグルコースで補足されるPBS緩衝液中で行う。顕微解剖された構造は、トリプシン-EDTAの溶液におけるインキュベーションによって消化され、パスツールピペットで機械的に分離される。数回すすいだ後、単細胞懸濁液を計数する。皮質ニューロンをDMEM培養液中40×106細胞/mlで再懸濁し、線条体ニューロンが15-20×106細胞/mlで懸濁される。次に、皮質ニューロンと線条体ニューロンをそれぞれの培養チャンバに、皮質ニューロンをマイクロチャネルの広い側に播種する。次に、培養リザーバを、グルタマックス、ペニシリン及びストレプトマイシン及びニューロンサプリメントB27を含有するDMEM及びN2から構成される培養液で充填する。次に播種したマイクロ流体デバイスを37℃のインキュベータに入れる。培養液を3日ごとに新しくする。
図14の写真1aは、一連の非対称のマイクロチャネルを介して相互接続される2つの個々の培養領域を含む本発明のニューロン培養のためのマイクロ流体デバイスを示し、その一部は写真1bで目に見える。
上記のように、これらのマイクロチャネルは、軸索成長を同時に一方向で可能にしつつ、細胞本体が侵入するのを防止する。
写真c及びdは、偏光再構築ニューロンネットワークの、エピフロレッセンスと組み合わせた相対照による画像である。
皮質ニューロン上の個々の軸索を視覚化するために、細胞をM-cherry-Sindbisウイルスベクターで形質導入した。
写真1aは、第2のチャンバ内で軸索を生じる皮質ニューロンを示し、写真1dは、第2のチャンバ内に播種し且つ第1のチャンバに由来する皮質ニューロンを受容する線条体ニューロンを示している。
線条体ニューロンがウイルスによって汚染されず、2つの培養チャンバの有効なコンパートメント化を表していることがわかる。
スケールバー: 50μm。
【0047】
実施例10: シナプスの成熟が増加した皮質線条体マイクロ流体共培養
図15の写真3aは、本発明のデバイスの第2のチャンバ内で3日間培養した後の線条体ニューロンと、第1のチャンバ内に播種した皮質ニューロンを示している。
皮質ニューロンと線条体内ニューロンを、顕微解剖によって、胎生14日のスイスマウス胚から取り出す。すべての切開工程は、0.1%のグルコースで補足されたPBS緩衝液中で行われる。顕微解剖された構造を、トリプシン-EDTA溶液中でインキュベーションによって消化し、パスツールピペットで機械的に分離する。数回すすいだ後、単細胞懸濁液を計数する。皮質ニューロンをDMEM培養液に40×106細胞/mlで再懸濁し、線条体ニューロンが15-20×106細胞/mlで再懸濁する。次に、皮質ニューロンと線条体内ニューロンをそれぞれの培養チャンバに播種し、皮質ニューロンをマイクロチャネルの広く側に播種する。次に、培養リザーバを、 グルタマックス、ペニシリン及びストレプトマイシン及びニューロンサプリメントB27及びN2を含有するDMEMから構成される培養液で充填する。次に、播種されたマイクロ流体デバイスを37℃のインキュベータ内に入れる。培養液を3日ごと新しくする。
共培養の10日後、ニューロンを、チューブリン(緑色)とMAP 2(赤色)のレベルで標識し、DAPI(青色)で染色した。
皮質ニューロンはマイクロチャネルを通ってこれらの軸索を送り、マイクロチャネルから出、第2の培養チャンバを通って伸び、そこで線条体ニューロンに接続される。
【0048】
写真3b及び3cは、皮質線条体ネットワークのMAP E(青色)-チューブリン(緑色)シナプス染色及び
(b) 皮質ニューロン、又は
(c) 線条体ニューロン、及び
(d) 皮質繊維と接触している線条体ニューロン
のシナプス前又はシナプス後(Vglut-1、シナプトフィジン又はPSD95、赤色)標識を示している。
写真3bにより、皮質ニューロンが軸索上のシナプトフィジン及びVglut-1の小さく分散したクラスタを示し、シナプス前終末の部分的な成熟が証明されることがわかる。写真3cは、別々に培養された線条体ニューロンを示し、シナプトフィジンとPSD95の散在クラスタが示され、線条体ニューロンの分化の中間状態のシグナルが送られている。
予想されるように、別々に培養された線条体ニューロンは、Vglut-1を表さなかった。
写真3dは、皮質繊維と線条体樹状突起の間の接触によって生じる接続によりこれらの3つのシナプスマーカーの一緒のグループ化で標識が増加することになることを示している。
染色及びシナプトフィジン、Vglut-1及びPSD95のクラスタの形成の増加は、より具体的にはそこで皮質軸索と線条体軸索が相互と接触し、皮質線条体接触部でシナプスタンパク質の再局在化が証明されることがわかる。
写真3eは、倍尺で、線条体の樹状突起(青色)に向かってシナプスマーカー(赤)を示すものである。
写真3aのためのスケールバー: 50μm及び写真3b〜3e対するスケールバー: 10μm。
【0049】
実施例11: 本発明のマイクロ流体デバイスにおける皮質-海馬ネットワークの再構成
この実験は、デバイスD2によって行った。
図16の写真aは、位相差において、皮層のみで播種されるデバイスを示し、また、写真bもまた、位相差において、左側チャンバにおいて皮層で播種され、海馬ニューロン上に伸びているデバイスを示している。写真c、d及びeは、免疫蛍光標識に対応する。写真cは、単独で播種されるだけ皮質軸索を示し、写真dは、海馬ニューロン上へ伸びている皮質軸索を示している。写真e及びfは、海馬ニューロンの樹状突起(青色の微小管関連タンパク質MAP2)に近接したシナプス発芽(赤色のシナプトフィジンの一緒のグループ化)を示す皮質軸索の(緑色のα-チューブリン)を表す。
写真fは、皮質-歯状回ネットワークを示し、皮質繊維束(チューブリン、緑色)が歯状回ニューロン(Prox-1、赤色)と接触している。画像gも同様であり、歯状回ニューロンの樹状突起(MAP2、青色)に沿ってコルチコ海馬シナプス(α-シナプトフィジン、赤)の形成が標識されている。倍率×400(a)、×630(b)。スケールバー、20μm。
【0050】
実施例12: 海馬ニューロンの樹状突起と接触時の皮質シナプス前タンパク質のトランスロケーション
図17の写真aは、単独で播種された皮質ニューロンのシナプトフィジン(赤色)と軸索チューブリン(緑色)標識に対応する。
この実験は、デバイスD2において行った。
皮質ニューロンは、顕微解剖によって、胎生14日のスイスマウス胚から取り出す。海馬ニューロンは、胎生16〜19日のマウス胚から取り出す。すべての切開工程は、0.1%のグルコースで補足したGBSS緩衝液中で行われる。顕微解剖された構造は、パパイン-EDTA溶液におけるインキュベーションによって消化し、パスツールピペットで機械的に分離される。数回すすいだ後、単細胞懸濁液を計数する。皮質ニューロンをDMEM培養液中40の×106細胞/mlで再懸濁し、海馬ニューロンが15×106細胞/mlで懸濁される。次に、皮質ニューロンと海馬ニューロンを、それぞれの培養チャンバ、皮質ニューロンをマイクロチャネルの広い側に播種する。次に、培養リザーバをグルタマックス、ペニシリン及びストレプトマイシン及びニューロンサプリメントB27及びN2を含有するDMEMから構成される培養液で充填する。次に、播種されたマイクロ流体デバイスを37℃のインキュベータ内に入れる。培養液を3日ごとに新しくする。
写真(b): 皮質求心性なしで、単独で播種した海馬ニューロン: 樹状突起(MAP2、青色)、軸索(チューブリン、緑色)及びシナプトフィジン(赤色)の標識。
画像(c、d): 皮質繊維束(緑色)及び海馬のシナプトフィジン(MAP2、青色)。
海馬ニューロン(シナプトフィジン、赤色)の樹状突起に沿ってシナプス前タンパク質の強い標識がわかる。
画像(e): 海馬樹状突起の倍率。シナプトフィジンが皮質繊維(緑色のチューブリン)と海馬ニューロン(青色のMAP2)の樹状突起の間の接合の点にあることがわかる。(a、b、c、d)スケールバーの縮尺10μm。
【0051】
実施例13:
図18は、非対称のマイクロチャネルによって分離されたマイクロ流体チャンバを示す図である。
この実験をデバイスD3において行った。
皮質ニューロンをは、左側に、線条体ニューロンを右側に播種する。生体外で7日後、皮質軸索は、線条体ニューロン(緑色のβ3-チューブリン、赤色の線条体ニューロン(MAP2))との接続を確立する。
KClによる脱分極は、線条体erkキナーゼ(赤色)のリン酸化の引き金となり、プロセスはグルタミン酸塩仲介神経刺激伝達に左右される(MK801による阻止によって評価される)。
【0052】
実施例14: 治療的関心の薬理学的分子の軸索保護効果の評価
小脳ニューロンを、本発明のマイクロ流体デバイスに播種し、細胞体レベルでアポトーシスインデューサ(1μM スタウロスポリン、STS)で処理する。これは、遠位チャンバ(Phi)における軸索変性を誘導する。カルパインタイプ(Cal-Inh)のアポトーシス阻止化合物(zVAD)又はプロテアーゼを、詳しくは軸索に適用する(細胞体に適用しない)。「軸索保護」効果を、図19の右側のグラフに数量化されている。
デバイスD1を用いる。
ニューロン(この場合小脳から)を播種し、第2のチャンバ(又はデバイスが3つのコンパートメントを有する場合には第3のチャンバ)に達するようにこれらの軸索が非対称のマイクロチャネルを通過する。
ストレス(この場合スタウロスポリン、これはプロアポトーシス剤である)をニューロンの細胞体に適用する。これは、24時間で軸索変性を誘導する。アポトーシス阻害剤(zVAD又はカルパイン(Cal-Inh))の軸索への同時適用は、この変性を防止する。従って、「軸索保護」分子の効果が評価され得る。
図19は、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントに適用されるプロアポトーシスストレスの適用によって誘導される軸索変性の開始を示す図である。これにより、軸索における破壊的シグナルの伝播が引き起こされ、次に細胞体の前に早期に縮退する。アポトーシス阻止分子(zVAD)又はカルパイン(iCal)、又はNADの適用は、この軸索変性を遅延させる。
【0053】
実施例15: 軸索の一部に対象の分子を局在適用するための3チャンバデバイス
図20の画像4aに示されるマイクロ流体デバイスは、図1C〜1Hに関してすでに記載されたものと同様であり、3つのチャンバを備えている。これは、デバイスD4である。これは、軸索の中央部に対象の分子、例えば清浄剤(トリトンX100、0.1%)を適用することを可能にし、1分間適用される。写真4bによって示されるように、これにより軸索の中央部の即時切断が引き起こされる。この実施例において、中央部で切断される皮質軸索が切断の1時間後にはまだ無傷であるが、4時間後に縮退する。これは、ワラーの変性(軸索の遠位部の変性)のモデルを構成する。この効果を保護する化合物の可能性は、詳しくはデバイスのチャンバの1つ以上に適用することによって評価され得る。図20のグラフ4は、NADの軸索保護効果を数量化するものである。
【0054】
実施例16: 皮質線条体ネットワークによるシナプス変性の現象のモデリング、及びシナプス変性に対する対象の分子の評価。NAD+は、分離を遅延させる。
図21の写真a及びbは、3チャンバマイクロ流体デバイスにおける再建皮質線条体ネットワークの皮質チャンバ、中央チャンバ及び線条体チャンバを示すものである。
ニューロンを、MAP2(青色)、β3-チューブリン(緑色)及びVglut-1(赤色)に標識した。
写真aは、線条体ニューロンに達し接続するようにマイクロチャネルと中央チャンバを通って軸索を送った皮質ニューロンを示すものである。
写真bは、軸索切断の1時間後、中央チャンバに存在する軸索がもはやないが、マイクロチャネル内部及び線条体誘発チャンバ内部の軸索が無傷のままであることが示されている。
写真cは、軸索切断又は制御された培養又はNADによる前処理される培養の1、2、4および6時間後に線条体の樹状突起(MAP2、青色)に結合する皮質シナプス前構造(Vglut1、赤色)を表すものである。
このような短時間後と軸索切断後 一回Vglut-1染色の低下を示すことが可能である。
写真dは、皮質軸索切断後MAP2-正の線条体樹状突起に結合したシナプス前皮質構造の定量化を示すものである。
写真5a及び5bに対するスケール: 50μm及び写真5c: 5μm。
この実験は、デバイスD4において行った。皮質線条体ネットワークで行われる実験は、皮質レベルのストレス(この場合軸索切断)を適用した後にシナプスの変性の現象とみなすことを可能にする(皮質シナプス前構造に特異的なVglu-1標識の消失)。実施例15は、軸索変性の現象とみなすことが可能であることを示す。実施例16の実験は、また、遠隔ストレスの引き金となった後にシナプス保護/安定化分子の役割を評価することが可能であることを示す。図20及び21は、皮質線条体ネットワークの皮質軸索の軸索切断の結果を示す図である。この軸索切断は、シグナルの伝播を引き起こし、皮質線条体接合のシナプス前コンパートメント(図21)の急速な変性、次に、皮質軸索(図20)の変性が生じる。軸索切断時の線条体コンパートメントへのNAD分子の付加は、シナプス前変性、及び切断された皮質軸索の変性を遅延させる。
【0055】
実施例18: 垂直な方向性の相互接続のシステムを有する3チャンバデバイスにおける3種類のニューロンのネットワークの再構成
図22に関してすでに記載されたものと同様のデバイスは、この実施例で用いられる。
図22及び23に示され、非対称のマイクロチャネル(長さがAとBの間で500〜100μm、BとCの間で500μm)によって分離された3つの培養チャンバ(ABC)から構成されたデバイスD5を用いる。
このデバイスの特殊性は、チャンバ(マクロチャネル)AとBが垂直であることである。チャンバAに播種したニューロン(この場合皮質から)は、軸索をチャンバBに投射し、まっすぐに続く。
それ故、これらは、チャンバBとCを接続するマイクロチャネルに垂直に向いている。これにより、チャンバCと結合するようにチャンバBをまっすぐ進むことが避けられる。皮質ニューロンを、顕微解剖によって、胎生14日のスイスマウス胚から取り出す。CAニューロンを胎生16日のマウス胚から取り出し、DGニューロンを生後5日の若い新生マウスから取り出す。すべての切開工程を、0.1%のグルコースで補足したGBSS緩衝液中で行う。顕微解剖した構造を、パパイン-EDTAの溶液中でインキュベーションによって消化し、パスツールピペットで機械的に分離する。数回すすいだ後、単細胞懸濁液を計数する。皮質ニューロンをDMEM培養液に40×106細胞/mlで再懸濁し、海馬ニューロンが15×106細胞/mlで懸濁される。次に、皮質ニューロン及びCA又はDGニューロンを、それぞれの培養チャンバに、皮質ニューロンをダイオードの広い側に播種する。次に、培養リザーバを、グルタマックス、ペニシリン及びストレプトマイシン及びニューロンサプリメントB27及びN2を含有するDMEMから構成される培養液で充填する。次に、播種したマイクロ流体デバイスを37℃のインキュベータに入れる。培養液を3日ごとに新しくする。
図23の画像は、上の近位チャンバ(青色)に播種した皮質ニューロンを示すものである。皮質軸索がマイクロチャネルを通過し、第2のチャンバ(緑色)と結合する。標的ニューロンをその他のチャンバに導入しない。皮質軸索の直線投射は、画像bでわかる。歯状回DGニューロン(核は、赤色に標識されている)を、中間チャンバ(画像fでは緑色)に導入する。緑色の皮質軸索がDGニューロンの方へ収束することがわかる。DGニューロンの遠位チャンバ((f)では赤色)の方への投射もわかる。
画像(c)は、画像(a)及び(b)と同じ原理で再構成される3-ニューロンネットワークを示すものである。皮質ニューロンは、上の近位チャンバに播種される(この画像では目に見えない)。マイクロチャネルに残る皮質軸索は第2のチャンバ内で、ボックスの上方左側、画像(d)ではズームでDGニューロンに接触する。DGニューロンは、これらの軸索を第3のチャンバへ送り、海馬ニューロンに接触する、ボックスの下の中央で画像(e)では目に見える。
5mmである画像(f)を除いて、スケールバー250μm。
【0056】
実施例19: マイクロ流体チャンバに生じる皮質ニューロンの軸索抽出物におけるタンパク質の検出
図24のスキームaは、3つの相互接続したチャンバを備えるマイクロ流体デバイスを示す図である。ニューロンは2つの横方向のチャンバに播種され、これらのそれぞれの軸索は中央チャンバに達する。マイクロ流体チャンバは、静水圧によって流体的に分離される。軸索溶解の直前に、ニューロンの細胞体を含有する細胞培養チャンバをアガロースゲルで充填する。これにより、細胞体コンパートメントの永続的な分離が確実になる。細胞溶解緩衝液は、中央コンパートメントにおいて循環し、細胞体の汚染のない軸索材料の個々の回収を可能にする。
写真bは、単一の細胞体抽出物と軸索抽出物のコロイド金染色を示す図である。
用いられるデバイスは、デバイスD6である。
マウス皮質ニューロンを2つの外チャネルに播種し、これらのニューロンの軸索が中央チャンバと結合する。これにより、中央チャンバにおける軸索材料の量を増加させることが可能になる。細胞培養時間の終わりに、個々に試料採取することが望まれるコンパートメント(軸索あるいは細胞体)に溶解緩衝液を潅流する。次に、この試料を次の分析、この場合アクリルアミドゲル電気泳動及びウェスタンブロット法による可視化に供する。
溶解緩衝液潅流工程の前に、ゲル(例えば、この場合: 低融点アガロース)が試料に望まれないコンパートメントに導入され得る。これにより、溶解緩衝液が試料採取されるコンパートメントに潅流される場合、これらのコンパートメントを「設定する」とともに完全流体の分離を確実にすることが可能になる。
写真cは、MAP2(樹枝状)及びベータ-3-チューブリン(軸索)及びアクチンに対して軸索コンパートメントと細胞体コンパートメントの双方に典型的なウエスタンブロットを示している。
【0057】
実施例20
この実施例において、図1C〜1Hに示されるように、3つのチャンバを有するニューロン培養のマイクロ流体デバイスが用いられる。
マイクロチャネルは、軸索成長を進めるとともに培養物をコンパ−トメント化する。これらの3コンパートメント神経回路を、前述したように、フォトリソグラフィ方法を用いて製造した。これらのマイクロ流体回路の構造は、各々長さ1mmの細胞体チャンバ(マクロチャネル)と軸索チャンバ(マクロチャネル)及び長さ100μmの中央チャンバを備える。チャンバは、幅10μm、厚さ3μm及び長さ450μmの一連の平行したマイクロチャネルを介して相互に接続され、図1C〜1Hのように、相互に20μmの間隔があけられる。細胞体、中央及び軸索のコンパートメントの厚さは、55μmである。2つの異なる高さのチャネルを有するマスターを製造するために、2層の感光性樹脂が用いられる。シリコンマスターは、最初に150℃で加熱され、30秒間プラズマ処理によって活性化される。感光性樹脂SU8-2002(Microchem, Newton, USA)の第1の層は、2000rpmでシリコンプレート上にスピン被覆され、次に、再キュアリングが65℃で2分間行われ、再キュアリングが95℃で4分間行われる。次に、樹脂を、マイクロチャネルが描かれている光学マスクを通して紫外線にさらす。更に再キュアリングした後、マイクロチャネル2-3μm厚をSU8現像剤(Microchem)で現像する。次に、SY355樹脂(Elga Europe、ミラノ、イタリア)の膜、55μm厚を、すでにマイクロチャネルを有するマスター上に80℃で積層する。次に、3つのコンパートメントの形状を有する第2のマスクを、既存のマイクロチャネル上に整合させ、紫外線にさらす。次に、全体を120℃で5分間キュアし、第2の層をBMR現像剤(Elga Europe)で現像する。最後に、全体をイソプロパノールですすぐ。このようにして、シリコンウエハー上にある、樹脂でできたレリーフのマイクロチャネル及びコンパートメントからなるマスターが得られる。各マスターは、チャンバとマイクロチャネルを備える4つの同一のマイクロ流体回路を有する。その後、エラストマー、即ち、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が、これらのマスターを用いて成形される。架橋されていないPDMS(Dow Corning、ミッドランド、MI)は、マスター上に注入され、次に70℃で3時間炉内で架橋される。成形されたPDMSの層、4-5mm厚が、キュアリング後に得られる。その後、バイオプシパンチを用いてこのPDMS層に4mmの穴をあけ、培養液リザーバを構成する。このようにして形成された穴は、マスターを用いてPDMSにおいて成形されたリザーバよりわずかに広い; リザーバは、完全に穴を取り囲み、回路の種々のコンパートメントに直接接続される。その後、各PDMS成形物を、空気プラズマ発生器(Diener Electronic、Nagold、ドイツ)による表面(PDMSの成形面とカバーグラスの一方の面)の活性化によってカバーグラス(Menzel Glass、ブラウンシュヴァイク、ドイツ)に不可逆的に取り付け、続いて2つの活性化された表面を手で接触させる。このようにして形成された回路を、紫外線にさらすことによって滅菌し、回路の内側面が親水性ままであるように10μg/mlのポリ-D-リシン(Sigma、セイントルイス、USA)の溶液で一晩処理する。
【0058】
ニューロン培養及び処理
他ですでに記載された、例えばEur J Neurosci 2001 Jun; 13(11): 2037-46 William S et alのように、14日目のマウス胚の皮質を切開し分離する。ニューロンを、回路の細胞体チャンバ(コンパートメントとも呼ばれる)に105細胞/cm2の密度で播種される。この方法で、4×104のニューロンを細胞体チャンバに播種する。培養液は、10%のFCS(ウシ胎仔血清; PAA Laboratories、Pasching、ドイツ)及び2%のB27(Invitrogen)で補足した、4.5g/lのD‐グルコース及びピルベート(Invitrogen、カールズバッド、USA)を含有するDMEMからなる。培養液を実験の開始まで3日ごとに取替え、培養物を37℃及び5% CO2のインキュベータにおいて保存する。実験は、生体外で培養の7〜8日後行われる。カルパイン阻害剤N-アセチル-Leu-Leu-Nle-CHO(ALLN; Calbiochem)、一般カスパーゼ阻害剤Z-V-A-D-フルオロメチルケトン(z-VAD; R1D Systems、ミネアポリス、USA)及びβ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水和物(βNAD; Sigma)を、実験の始めに培養液に導入する。
【0059】
軸索切断手順
軸索切断を行うために、0.1%のサポニンを含有する15μlの培養液の流れを、中央チャンバ内に2分間生成する。マイクロチャネルに入る清浄剤の流れを避けるために、過剰圧力を実験の全体にわたって細胞体チャンバと軸索チャンバ内に維持する。2分間の流した後、サポニンを含有する培養液を除去し、中央マクロチャネルを培養液で5分間すすぐ。次に新たな培養液をこのチャネルに添加する。
【0060】
流れ実験及び拡散実験
流れ及び拡散を測定する一連の定性実験を、(i)軸索切断が中央チャンバ内に局在すること及び(ii)長期の処理がこれらが標的にされるコンパートメントに制限されたままであることを証明するために行った。軸索切断手順をシミュレートするために、直径が1μmの蛍光マイクロスフェア(Invitrogen)の流れをPBSとサポニンの混合物中の懸濁液で生成し、且つこれらのビーズの流れをビデオ顕微鏡観察によって追うことによって、実験を行った。更にまた、軸索切断の間と長期の処理の間、粒子の拡散の作用をシミュレートするために、Alexa Fluor 555(IgG; 1:100、Invitrogen)に結合した抗ウサギ免疫グロブリンG抗体を拡散トレーサーとして用いた。回路における蛍光強度と標識の濃度の間の関係は、既知の濃度で標識を含有する溶液で予備充填されたマイクロ流体コンパートメントの画像を捕捉することによって確立した。直線関係(R2>0.99)は、蛍光シグナルの強度とトレーサーの濃度の間に示された。各実験において、3つの回路を分析し、(i)中央コンパートメントから開始し軸索切断に似ている実験のための細胞体コンパートメントへ移動し、(ii)軸索コンパートメントから、中央コンパートメントへ、次に長期処理に似ている実験のための細胞体コンパートメントへ移動する蛍光標識の拡散を数量化するために、これらの回路の各々で、各コンパートメントの3つの異なる領域の画像を各時間に撮った。非特異的なシグナルを、DAPIフィルタによる獲得を行うことによって得、照明強度の局所変化によるシグナルの強度の変動を排除するためにAlexa Fluor 555シグナルから差し引いた。軸索切断を、標識の100%溶液を清浄剤溶液に添加するとともに実在の軸索切断のように同一の容積の溶液をリザーバ内に配置することによって模倣した。図25の画像を、それぞれ、標識を含有する清浄剤溶液を中央コンパートメントのリザーバに添加した2、5及び10分後に撮った。標識を含有する溶液を軸索チャンバに導入し、すべてのリザーバに同一の容積の液体を入れることによって回路内の圧力の平衡状態を維持することによって、長時間の分子の拡散を模倣する実験を行った。標識を軸索チャンバに添加した1、2、4及び8時間後に画像を撮った。
【0061】
免疫細胞化学
所定の培養時間後(必要により、軸索切断実験が行われる時点でもよい)、免疫細胞化学による分析を受けるように、ニューロン培養物を4%パラホルムアルデヒド溶液(Sigma)に固定する。細胞骨格タンパク質を標識する抗MAP2抗体(ウサギIgG、1:3000; Chemicon、Temecula、USA)、及び抗β-III-チューブリンモノクローナル抗体(マウスIgG、1:3000; Sigma)を有する免疫蛍光法によって、回路を標識する。核を標識するHoechst 33342(1:25000; Sigma)で回路を蛍光標識する。個別実験において、星状膠細胞を標識することを可能にする抗グリア線維性酸性タンパク質抗体(GFAP、ウサギIgG、1:5000; DakoCytomation、Glostrup、デンマーク)による免疫蛍光法によって回路を標識した。培養の一部を、固定と抽出に供した。この手順は、同時に微小管を固定しつつ、細胞質における遊離チューブリンを排除することを可能にする。これらの培養物を、微小管とアクチン細胞骨格を示すように、それぞれ、フルオロフォアFITC(Sigma)に結合した抗-a-チューブリンモノクローナル抗体による免疫蛍光法によって標識し、Alexa Fluor555(Invitrogen)に結合したファロイジンで標識した。CoolSnap HQ2カメラ(Roper Scientific、Ottobrunn、ドイツ)を装備した倒立エピフルオレセンスマイクロスコープ(Zeiss、Goettingen、ドイツ)を用いて、また、マイクロマネージャ取得ソフトウェアを用いて、画像を得た(http://www.micro-manager.org)。
【0062】
定量化
断片化軸索あるいは無傷の軸索のチューブリン標識のタイプを比較することによって軸索変性が推定される。皮質ニューロンの良好な培養内生存は、最初の播種密度に左右され、これは高くなければならない。その結果として、多数の皮質軸索は、中央チャンバと遠位チャンバを浸潤する。更に、皮質軸索が多くの枝分れを有するので、軸索チャンバにおける軸索チューブリンの免疫組織化学的分析は複雑であり、軸索は個別化が難しい。中央チャンバに入り且つ遠位軸索チャンバ内で現れる軸索の割合を、中央チャンバと遠位軸索チャンバ内で捕捉される同一の表面積のb3-チューブリン標識の全体の蛍光強度の比を算出することによって推定した。軸索断片化指数を測定するために、自動画像解析法が使用し得る。3-チューブリンについて標識した生存可能な軸索あるいは断片化軸索の画像を、落射蛍光顕微法によって捕捉する。断片化軸索は、点状の分離したチューブリン標識を示す; 一方では、無傷の軸索は、線状標識を示す。Image Jソフトウェアによって開発されたマクロ・コントロールを用い、順次Otsuセグメンテーションアルゴリズム(IEEE Trans Systems, Man and Cyber Metics 1979; 9:92-69を参照のこと)と粒子分析アルゴリズムを用いて、円形度指数≧0.9を示す軸索セグメントは断片化軸索セグメントであるとみなされる。各画像について、この種の標識の全表面積(円形度≧0.9)を求め、各チューブリン標識の全表面積(標識のトポロジーとは独立して)に関係する。この比率は、「断片化指数」と呼ばれ、研究される軸索の断片化の平均状態の指標である。図30は、断片化指数と断片化軸索の%の間の関係を示し、0.005、0.083及び0.157は、それぞれ、<5%、50%及び>95%の断片化軸索に対応する。ニューロン細胞体の生存は、i)DAPI標識によって示される核クロマチン凝縮の分析及びii)MAP2標識後の樹枝状形態の分析によって評価される。1つの状態に対して少なくとも5つの画像を分析し(各状態は3つずつある)、実験は独立して少なくとも3回行った。
【0063】
統計的分析
データは、平均+/-平均からの標準偏差(sem)の形で表される。Nは、個々の回路の数を表す。統計的分析は、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてテューキー検定によって行われる。
【0064】
結果
軸索切断コンパートメントにおける流体の流れの制御
デバイスの中央チャンバにおける流体の流れを確認するために、清浄剤希釈液中の蛍光ビーズの懸濁液の流れに関係する実験が行われ得る。コンパートメントにおける制御流れを得るために、異なる容積の液体を対応するチャンバに接続されたリザーバに入れることによって圧力勾配が生じる。従って、ビデオ顕微鏡法によって、入口と出口のリザーバがそれぞれ15μlと0μlで充填される場合、中央チャネルにおけるビーズの懸濁液の流れを追うことは可能であり、2つの接続されたチャンバはこれらのリザーバの各々において40μlのPBSによって加圧される(すべてのリザーバは同じ寸法を有する)。最初の180秒間に得られる画像は、清浄剤溶液が中央チャンバに隣接するマイクロチャネルに入らないことを示す。中央チャネルの底部分(マクロチャネルとも呼ばれる)において、ビードがチャンバの中央部分において拘束されるので、高圧チャンバから中央チャンバまでの流れの存在が示される; それ故、中央チャネルにおける清浄剤懸濁液に集中している(図25a)。同一の流体状態を用いて、2つの遠位チャンバをビーズの懸濁液で充填することからなるが、PBSの流れが中央チャンバにおいて生成される対向する実験は、これらの状態の下で、遠位チャンバから中央チャンバへの流れがマイクロチャネルにおけるビーズの動きによって具体化され得ることを示してい(図25b及び25c)。更に、この流れ構成において生じる勾配のパラメーターをより正確に求めるために、また、軸索切断実験をシミュレートするために、蛍光免疫グロブリンの希釈液をトレーサーとして用いた。蛍光Igの拡散は、中央チャンバからマイクロチャネルに検出され得ない。中央チャンバの底部分において、2分間の流れの後、チャンバ内のトレーサーの分散は(チャンバの断面に沿って)、ガウス分布に従って確立され、端でゼロ値に達するように、そのピークはチャンバの中心にある。これは、蛍光免疫グロブリンが2つの高圧遠位チャンバに由来する流れによって中央チャネル内に充分制限されていることを示している(図25d及び以下の表1)。2つの遠位チャンバにトレーサーを添加することによって逆実験を行い、遠位チャンバから中央チャンバへの流れが示された。
【0065】
表1
軸索切断の間、トレーサーの拡散に関する実験。
トレーサーの濃度は、蛍光シグナル強度(R2>0.99)に直線的に関係する。値は、最大濃度%として示され、3つの独立した実験の平均を示している。
【0066】
【0067】
長時間のコンパートメント化の間、一方のチャンバからもう一方までトレーサーの拡散を調べるために追加の実験を行った。同一容積の液体をすべてのリザーバに導入し(流れは生じない)、遠位チャンバの一方に蛍光トレーサーを添加した。トレーサー添加の2時間後に、トレーサーの約15%が中央チャンバに見られ、対向する遠位チャンバに何も見られないので、中央チャンバが2つの遠位チャンバの完全なコンパートメント化を与える「緩衝液」として役立つことが示され、この構成において中央チャンバは「サイホン」の役割を果たしている。値を表2に示す。
【0068】
表2
長時間トレーサー拡散実験。
トレーサーの濃度は、蛍光シグナル強度(R2>0.99)に直線的に関係する。値は、最大濃度%として示され、3つの独立した実験の平均を示している。
【0069】
【0070】
全体として、実施例20の主題であるこれらの実験は、i)このチャンバから2つの隣接の遠位チャンバまで拡散せずに中央チャンバにおいて制御され制限された流れを行うことが可能であり; ii)第2の遠位チャンバの方へ遠位チャンバに導入した分子の長時間の拡散が中央チャンバの存在によって完全に消滅し、それによって、軸索チャンバから細胞体チャンバまで(又はその逆)完全な流体分離があること確実にすることを可能にすることを示している。
【0071】
皮質ニューロンの分化
胎生期マウスの皮質に由来するニューロンは、「細胞体」チャンバにおいて比較的高密度で播種される。播種されたニューロンの約3〜5%(マイクロチャネルゾーンの近くに)の軸索が、中央チャンバと結合する167のマイクロチャネルに侵入する。8日間の培養後の播種された細胞の表現型の検査は、培養物が90〜90%のニューロン(MAP2ポジティブ)、5〜8%の星状膠細胞(GFAPポジティブ)及び小膠細胞(1%)及び線維芽細胞(1%)細胞から構成されることを示す。行われる播種状態の下で、約10〜15の軸索がマイクロチャネルに入る。軸索チューブリンの免疫細胞化学による分析から、中央チャンバ(幅が100μm)に侵入した38.8% +/-3.4%(n=11)の軸索が培養の8日後に第2の遠位チャンバと効果的に結合することが示される(割合は中央チャンバの幅が50μmである場合約60%である)。10日間の培養後、中央チャンバを通過し且つ第2の遠位チャンバと結合した皮質軸索の平均長さは、1.5〜2mmである(図26)。軸索は、マイクロチャネル内で束に制限され、マイクロチャネルを出る際に束を切り離す傾向を有する(図26a)。それ故、軸索の中央部分には処理を局所的に適用するためにデバイスの中央コンパートメントが使用し得る。
【0072】
皮質ニューロンの軸索切断は、成長円錐癒着及び「ワラーの変性」現象を誘導する。
皮質ニューロンの軸索切断は、0.1%のサポニンを含有する培養液の流れを、中央コンパートメントにおいて2分間(段落1に記載される条件下で)生成することによって行われる。清浄剤の流れは中央コンパートメント(図26b)に含有する軸索セグメントの即時破壊を引き起こすので、ニューロン細胞体から約500〜600μmに位置する切断が引き起こされる。軸索切断は軸索の遠位部分の進行性変性を引き起こすので、軸索セグメントの膨張の早期形成に続いて、微小管ネットワーク(図27a)の断片化が得られる。軸索断片化は、軸索切断後各時間で数量化し、断片化指数が4時間後の未処理対照と著しく異なることを示している(「擬似」対照は、軸索がサポニンで処理したのと同じ流れ条件(サポニンを省略する)を受けた)。断片化は、すべての分析時間の間に著しく増加し、8時間後、すべての軸索の全破壊に対応して、プラトーに達する(図27b)。
皮質軸索の遠位端の成長円錐の存在は正しい軸索成長を示し、ニューロンが標的を探索する。チューブリンが少ない成長円錐は、アクチンフィラメントが糸状仮足と膜状仮足を形成する特徴的動的形態を示す(J. Neurobiol. 2004; 58(1): 92-102を参照のこと)。対照ニューロンにおいて、軸索切断1時間後、非常に多くの成長円錐がアクチン標識によって具体化され得るが、微小管ネットワークはまだ無傷であり、切断軸索はこれらの先端で崩壊した成長円錐を示す(図28a)。これは、破壊シグナルが軸索切断後急速に軸索の遠位端に伝播することを示している。
生体内で、末梢ニューロンの軸索切断は、非同期現象であるとして示された。所定の時間で、切断軸索は無傷の構造から完全な断片化にわたる形態を示し、変性の順行性伝播が推測された。我々の実験モデルにおいて、軸索切断の初期相において(<4時間)、無傷の、膨張した又は断片的な軸索を認めることができ、わずかな非同期現象の引き金となることを示している(図28b)。6時間後の切断軸索の特有のセグメントの分析から、同一の軸索が近位領域(マイクロチャネルの近く)に断片化、中央部分に膨潤、及び完全な遠位部分に無傷セグメントの徴候を示し得ることがわかる。これは、軸索の先端の方に変性の波の順行性伝播の現象を示している(図28c)。
【0073】
遠位変性は、bNADによって減速されるが、カスパーゼ阻止あるいはカルパイン阻止によって減速されない
カルパインの早期活性化は、末梢神経系ニューロンの軸索切断後に記載されている。一方では、軸索切断ニューロンの細胞体において活性化されるが、カスパーゼの阻止は切断されたニューロンの変性を妨げない。皮質ニューロンの軸索切断によって誘導される軸索変性におけるカルパイン及びカスパーゼの関係は、以下の通り評価され得る。軸索切断時に、軸索の遠位セグメントに、カルパイン阻害剤である50μMのALLN、あるいは一般カスパーゼ阻害剤である50μMのz-VADを適用すると、軸索断片化の発生も遅延させないし、そのパラメーターも変化させない(図29)。軸索切断の24時間前にこれらの分子が適用される場合、保護効果の欠如が認められる(図示されない)。一方では、ニューロンが、軸索切断の24時間前に、5mMのbNAD分子で前処理される場合、軸索変性の徴候は遅延される。すべての対照軸索が断片化されるが、軸索切断の8時間後に、切断軸索は変性の徴候を示さない。この保護は、軸索切断の24時間後に消失する(図29)。
図31は、ヘキスト染料で標識を示す細胞体の数を細胞体の合計数で割ることによって得られる、細胞体死の割合を示す図である。対照と比較して、処理の有無にかかわらず、軸索切断の24時間後に、細胞体死の著しい変化は認められなかった。
上の実施例20は、必要により一定幅のマイクロチャネルを有してもよい相互接続システムにおいて行われ得る。
従って、本発明は、また、他の態様によれば、マイクロチャネルが必要により一定の幅を有してもよい、例えば、図1B又は1C〜1Hに示されるように、少なくとも3つのチャンバを備えるマイクロ流体デバイスを用いる軸索切断の方法であって、軸索切断を行うために、マイクロチャネルに伸びる少なくとも1つの軸索に作用するように化合物が中央チャンバに注入される、前記方法に関する。遠位チャンバは、遠位チャンバに相対して過剰圧力であり得る。
本発明は、記載される実施例に限定されない。
語句「1つを備える」は、「少なくとも1つを備える」と同義であると理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養のための、特に神経細胞の細胞培養のためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳は、相互に接続されるいくつかのニューロン領域から構成される非常に複雑な構造である。生体内実験的研究は、この全体の構造を保存するが、細胞規模の研究には適さない。
分離した細胞の培養物は、研究されるシステムを非常に詳細に記載することを可能にする。このために、多くの研究室は、ニューロン培養を行っている。従来、ニューロンのこれらの培養は、ペトリ皿又は培養ウェルにおいて行われる。これらの細胞培養物は、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病等)の研究において、しかし、神経分化の分子機序や細胞機序を理解するための発生生物学においても還元主義的なモデルとして適用される。
しかしながら、これらのシステムにおいて、ニューロン接続はランダムに行われ、生体内に見られるものと同様の構造をその中に再構成することは不可能である。
中枢神経系(CNS)のネットワーク構造は、完全に欠けており、種々のニューロン層がどのように相互作用するかを研究することを可能にしない。
他の方法は、生体外で培養される、脳の種々の部分の切片を用いることからなる。
ニューロン層の完全な状態がこの方法によって保存されるとしても、急速に試料採取される組織の複雑さは問題を引き起こす。ニューロン死の伝播と脳の種々の層における発達の機序をより明らかに理解するために、生体外(in vitro)で培養したニューロン網の構造を制御することを可能にする新規な実験デバイスを開発することが望ましい。
マイクロ流体は、細胞生物学、特に神経科学のための選択ツールである。
Campenot [Campenot, R. B. Local control of neurite development by nerve growth factor, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1977, 74(10), 4516-4519]による研究に端を発したWO200434016、Jeon et al.には、これらの軸索からニューロンの細胞体を分離することを可能にするマイクロ流体ネットワーク構成が提唱されている。
【0003】
この構成は、中枢神経系(CNS)のニューロンに適している。
「細胞体」コンパートメントは、新たに切開されたニューロンが導入されるチャネルである。
遠位チャネルは、軸索がマイクロチャネルを通過するのにそれに向かって進む。ニューロンの細胞体は、マイクロチャネルを通過することができない。これは、マイクロチャネルがあまりに薄くて細胞体を通過させることができないためである。
このデバイスは、生体外CNSニューロン培養の制御に向けた第1の工程である。マイクロチャネルにおける拡散時間は長く、遠位コンパートメントと細胞体のコンパートメントを別々に処理することを可能にする。コンパートメントの一方においてもう一方に対して含有されるものの拡散は、圧力差を課すことで補償される。このために、異なるコンパートメント間に静水圧差を課すように、コンパートメントの1つのリザーバの1つにより大きな容積の液体を入れることは充分なことである。
しかしながら、このデバイスは、また、多くの制限を有する。第1に、細胞コンパートメントを分離することを可能にするが、軸索が両方向にマイクロチャネルを進行することができるので、2つのニューロン集団の間で特定の軸索接続を誘導することを可能にしない。
公報WO 2006/037033及びUS 7 419 822もまた、ニューロンの培養に適した細胞培養デバイスに関するものであり、これらの明細書の記載は参考として取り入れられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に、これらの種々の制限を改善し、従って、現在の先行技術デバイスで不可能である研究、方法及びスクリーニングを可能にすることを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、その態様の1つによれば、細胞培養のためのデバイス、特に神経細胞の細胞培養のためのデバイスであって:
- 第1の細胞培養物で播種されることを意図した第1のマイクロ流体チャンバ、及び少なくとも第2のマイクロ流体チャンバを形成(define)する支持体、
- 第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバを接続し且つ細胞延長(extension)、特に軸索を一方のチャンバからもう一方のチャンバまで伸ばすことを可能にする流体相互接続システム
を備え、ここで、相互接続システムは、細胞延長の少なくとも1つの第1のタイプの進行を細胞延長の少なくとも1つの第2のタイプと比較して促進させるように作られる、前記デバイスに関する。前記細胞延長の第1のタイプと第2のタイプは、これらが由来するマイクロ流体チャンバのために及び/又はこれらが延長である細胞型のために相違し得る。
例示的実施態様において、デバイスは、2つの細胞集団の間の特定の細胞接続を、特に特定の軸索接続を誘導することを可能にすることができる。
第2のマイクロ流体チャンバは、少なくとも1つの第2の細胞型で播種され得る。
相互接続システムは、マイクロチャネルとも呼ばれる複数のチャネル及び/又は複数のミクロ構造を備えることができる。
相互接続システムは、少なくとも1つのチャネル又は非対称を有するミクロ構造の1つのネットワークを前記チャネルあるいは第1のマイクロ流体チャンバに接続される前記ネットワークの側と前記チャネルあるいは第2のマイクロ流体チャンバに接続される前記ネットワークの側の間に備えることができる。
【0006】
相互接続システムは、少なくとも1つの寸法が一方のチャンバからもう一方まで進行するのにつれてより小さくなる少なくとも1つのチャネルを備えることができ、前記少なくとも1つの寸法が、例えば、チャネルの幅を含んでいる。特に、相互接続システムは、少なくとも1つの狭くなっている、「ダイオード」とも呼ばれるチャネルを含むことができる。前記寸法は、前記チャネルが第1のマイクロ流体チャンバにあるいは第2のマイクロ流体チャンバに開放する部位で5μm以下であり得る。
相互接続システムは、上から見られる場合、少なくとも1つの一部が台形状を有するチャネルを備えることができる。チャネルは、一定幅の一部が伸びた収束部を有し得る。
相互接続システムは、非直線チャネルを含むことがあり得る。変形例として、相互接続システムのチャネルすべてが直線である。
相互接続システムは、チャンバの一方からもう一方まで進行する場合、狭細と拡張の連続を含むチャネルを備えることができる。
前記チャネルは、相互接続又は枝分れを有し得る。
ミクロ構造のネットワークは、直線での軸索の伝播を防止する障壁を備えることができる。
障壁は、第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの間の連続通路に、前記通路の曲率半径が20μm未満、好ましくは10μm未満、より好ましくは7μm未満、5μm未満、又は3μm未満もの少なくとも一部を受けるように配置され得る。
第1のチャンバは、対称面に相対してもう一方のチャンバと対称であり得る。
第1のチャンバと第2のチャンバの間の距離は、例えば、3μm〜10 000μm、例えば10μm〜10 000μmである。
【0007】
相互接続システムは、表面が細胞の少なくとも1つのタイプ又は細胞挙動の1つのタイプに親和性を有するように化学的に又は生化学的に処理された少なくとも一部を備えことができる。
化学処理は、フィブロネクチン、カドヘリン、コラーゲン、ラミニン、スクシンイミド基を含む分子、N-スルホスクシニミジル6-[(4'-アジド-2'-ニトロフェニル)アミノ]ヘキサノエート、及び光活性化することができる反応性化学分子より選ばれる分子の少なくとも1つのタイプにさらすことを含み得る。
相互接続システムは、厚さが第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの厚さ未満、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μmのマイクロチャネル又はミクロ構造を備えることができる。
例示的実施態様において、第1のチャンバ又は第2のチャンバとこのチャンバの外側の間の唯一の流体連通は、相互接続システムによって生じる。変形例として、流体連通は、相互接続システムによってだけでなく、溶質だけを通過させ細胞延長を通過させない少なくとも1つの膜によっても起こり得る。
この膜は、例えば、チャンバの最上部に位置する。これは、例えば、微細穿孔したPDMS又はニトロセルロース膜であり得る。
本発明の例示的実施態様において、相互接続システムは、フロー、特に血流をろ過するのに役に立たない。
デバイスは、単細胞の細胞体だけを含有するように釣り合いのとれた、少なくとも1つの単細胞マイクロ流体チャンバを備えることができ、この単細胞マイクロ流体チャンバは相互接続システム及び第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの一方と連通している。
【0008】
単細胞マイクロ流体チャンバは、厚さが第1のマイクロ流体チャンバや第2のマイクロ流体チャンバより小さく、前記相互接続システムより大きいものであり得る。単細胞マイクロ流体チャンバは、チャンバの一方にもう一方より近くにあり得る。
本発明の例示的実施態様において、マイクロ流体デバイスは、少なくとも3つのマイクロ流体チャンバ、即ち、第1の相互接続システムによって接続される第1のチャンバと第2のチャンバを備える。第1のシステムと第2のシステムの少なくとも1つは、上で定義した通りであり、即ち、細胞延長、特に軸索を一方のチャンバからもう一方のチャンバまで伸びることを可能にし、細胞延長の少なくとも1つの第1のタイプの進行が細胞延長の少なくとも1つの第2のタイプと比較して促進される。各相互接続システムは、マイクロチャネルのセットをを備え得る。第2の相互接続システムのマイクロチャネルは、第1の相互接続システムのマイクロチャネルの延長と異なる、例えば、それにほぼ垂直に向けられ得る。この実施態様の利点の1つは、第1のチャンバに由来する延長のリスクを低下させ且つ第2のチャンバに到達し、第3のチャンバに進行することである。
デバイスは、容積が100〜10 000μm3、好ましくは500〜5000μm3であり且つ相互接続システム及び第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバと流体的に連通している少なくとも1つのマイクロ流体チャンバを含むことができる。
相互接続システムを通過することは、相互接続システムの両側に配置された、例えば、2つの対向する領域を接続する少なくとも1つのチャネルであり得る。このようなチャネルは、例えば、一方のチャンバがもう一方のチャンバに導入される化合物による汚染のリスクを低下させることを可能にすることができる。チャネルは、また、清浄剤のような物質、例えばトリトンX又はサポニンをその中に循環することによって、軸索切断を行うことを可能にすることができる。軸索代謝を損傷するか、保護するか又は修飾し得る他のいかなる分子もチャネルに循環され得る。
【0009】
相互接続システムは、分子とイオンの第二コンパートメントとの交換を可能にするが、前記第二コンパートメントとの、細胞の交換を可能にしない孔壁によってその表面の少なくとも1つの部分に区切ることができる。
細胞培養のためのデバイスは、また、前記デバイス内に有する少なくとも1つの細胞における電気生理学的プロセスを研究する計測器に接続される少なくとも1つの微小電極、好ましくは微小電極のネットワークを含むことができる。
本発明は、また、他の態様によれば:
- 第1のマイクロチャネルと第2のマクロチャネル、
- 第1のマクロチャネルに第1の末端で接続されるマイクロチャネル、
- 第2のマクロチャネルやマイクロチャネルの第2の末端と連通している単細胞マイクロ流体チャンバ
を備え、第1のマクロチャネルと第2のマクロチャネルがマイクロチャネル及び単細胞マイクロ流体チャンバによって相互に連通し、単細胞マイクロ流体チャンバが単細胞の細胞体だけを受容することができるように釣り合いのとれている細胞培養のためのデバイスに関する。
本発明は、他の態様によれば、また、少なくとも2つの相互接続システムを備え、その少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが上で定義したように作られる、細胞培養のためのデバイスに関する。
本発明は、また、他の態様によれば、少なくとも2つの相互接続システムが連続して接続した少なくとも3つのマイクロ流体チャンバを備え、前記相互接続システムの厚さが前記3つのマイクロ流体チャンバの厚さ未満であり、且つ前記マイクロ流体チャンバの少なくとも一方がもう一方のマイクロ流体チャンバの少なくとも1つの厚さと前記相互接続システムの厚さの間の厚さを有する、細胞培養のためのデバイスに関する。
【0010】
本発明は、また、他の態様によれば、異なる方向、特に、垂直な方向の少なくとも2つの相互接続システムが連続して接続された少なくとも3つのマイクロ流体チャンバを備える、細胞培養のためのデバイスに関する。
本発明は、また、他の態様によれば、上で定義されたデバイスの少なくとも1つのマイクロ流体チャンバが神経細胞で播種される、細胞培養のための、特に神経細胞の細胞培養のための方法に関する。
少なくとも2つのマイクロ流体チャンバを神経細胞で播種することが可能であり、チャンバの一方の細胞の軸索が、相互接続システムの形のために、もう一方のチャンバの細胞よりもう一方のチャンバの方に生じることのほうが難しくない。
少なくとも1つのマイクロ流体チャンバを少なくとも2つの細胞型を有する細胞培養物で播種することが可能であり、前記細胞型の少なくとも1つの細胞の軸索が、少なくとも1つの第2の細胞型の細胞の軸索より相互接続システムにおいて生じることのほうが難しくない。
軸索切断は、上記のように、相互接続システムを通過するチャネルによって行われ得る。チャンバの1つに含有する細胞は、化合物を存在させることができる。上述のチャネルは、相互接続システムによってもう一方のチャンバの方の化合物の進行に関して障壁を構成する液体で充填され得る。
本発明は、また、他の態様によれば、細胞コンパートメントに存在するバイオマーカーを調べる方法であって、少なくとも:
- 上で定義した方法の1つに従って細胞を培養する工程、
- 前記細胞の少なくとも1つの前記細胞コンパートメントの少なくとも1つに前記バイオマーカーのプローブを存在させる工程、
- 前記プローブによって前記バイオマーカーの存在を明らかにし更に/又は数量化する工程
を含む、前記方法に関する。
【0011】
本発明は、また、他の態様によれば、細胞コンパートメントに存在するバイオマーカーを調べる方法であって、少なくとも:
- 上で定義した方法の1つに従って細胞を培養する工程、
- マイクロ流体チャンバの少なくとも一方に存在する上清を集め、
及び1つ以上のバイオマーカーを調べるか又は含量で数量化する工程
を含む、前記方法に関する。
前記バイオマーカーを調べるか又は数量化する工程は、少なくともヌクレオチド配列に関する含量の定量、又はポリペチドに関する含量の定量、又は代謝産物、前記細胞コンパートメント又は前記上清に関する含量の定量を含み得る。
本発明は、また、他の態様によれば、ある種の細胞の物質への反応を決定する方法であって:
a) 上で定義したデバイスの1つ、又は上で定義した方法の1つを用いて細胞を培養する工程、次に
b) 前記細胞の細胞コンパートメントの少なくとも1つを前記デバイスのマイクロ流体チャンバの少なく1つに前記物質を存在させる工程
を含む、前記方法に関する。
この方法は、また、c)他の細胞コンパートメント上で又はデバイスの他のマイクロ流体チャンバにおいて工程b)で行った刺激の作用を調べる工程を含むことができる。
相互接続システムを通過する液体のチャネルの存在は、もう一方のチャンバの方の前記物質の移動のリスクを低下させることができる。
【0012】
方法は、ディファレンシャルスクリーニングを行うために、少なくとも2つの異なるデバイスの間に、少なくとも1つの細胞型、緩衝液の1つのタイプ、物質の1つのタイプ、又は相互接続システムの1つのタイプの間の差を含む、同一のマイクロ流体支持体上に存在するいくつかのデバイスにより同時に適用され得る。
本発明は、また、他の態様によれば、上で定義された少なくとも1つのデバイス又は上の方法の1つを含む、神経毒物質をスクリーニングする方法、又は神経保護剤をスクリーニングする方法に関する。
神経疾患又は神経変性疾患の間のニューロンの変性は、シナプスの機能(伝達)の早期の修飾、シナプス前要素の変性又は退縮、退行性及び順行性軸索内輸送、軸索破壊のパラメーターの修飾及び細胞体樹状突起コンパートメントの変性を含む工程の連続によって進行する。これらの事象の時間順序は、ニューロンが受けた攻撃のタイプに左右され得る(ニューロン、神経毒ストレス、遺伝子突然変異、ウイルス感染症等の神経伝達上流の修飾)。これらの種々のコンパートメントの機能異常と関連した細胞機序と分子機序は、特異的であり必須的であり得る。軸索又はシナプスの完全な状態を制御する細胞機序又は分子機序が知られてなく且つニューロン細胞体の完全な状態を制御するものとおそらく同一でないことを示すことは重要である(そのために多くの薬理学的物質が開発されてきた)。従って、細胞体を保護することが知られる分子は、シナプス変性あるいは軸索変性を必ずしも防止しない(その逆も同じ)。更に、ニューロンが相互に接続される場合、求心性(上流)接続の損失により、脆弱になり、次に神経毒ストレスにより脆弱になるニューロンが生じる。これによりニューロン網のカスケード変性が生じ得る。それ故、本発明のデバイスによって再構成されたネットワークによる治療目的のための分子の評価は、ネットワークのロバスト性によるこれらの可能性を評価することを可能にする。軸索及びシナプスの障害、おそらくネットワーク機能不全は、神経変性病状の間に非常に早期に現れ、患者における認知的症状の出現と相関していると思われる。
【0013】
本発明のデバイスは、単離されたニューロンを区分するか又はニューロンの方向性ネットワークを再建することを可能にすることができる。デバイスの構造は、詳しくはニューロンネットワークのサブコンパートメントの各々に種々の組成物の流体を選択的に適用することを可能にする(例えば、B型のニューロンに接続したA型のニューロンを考える場合には、ニューロンAの細胞体樹状突起コンパートメント、ニューロンAの軸索部、ニューロンBの細胞体樹状突起コンパートメント、ニューロンBの軸索等)。
従って、ストレスをネットワークの一部分に加えることによって変性状態をモデルにし、且つその結果に従うことが可能である。このストレスは、例えば、ニューロンAの軸索の軸索切断、ニューロンAの細胞体樹状突起コンパートメントあるいはメジアン軸索コンパートメント、ニューロンBの細胞体樹状突起コンパートメント等に毒性分子を加えることを含み得る。ストレスは、毒性(有機又は無機の種類)、神経毒性、シナプス毒性、軸索毒性等、分子、細胞培養液に添加したあるいは遺伝的に移植された正常タンパク質又は突然変異タンパク質又はキメラタンパク質、神経向性(又は非神経向性)ウイルス又は感染物質、生理化学的状態又は物理的状態(圧力、温度、波動等)の修飾を加えることを含み得る。
これらのストレスの適用は、細胞成分の全部又は部分の進行性変性(シナプス伝達の修飾、シナプスの退縮、軸索変性、軸索内輸送パラメーターの修飾、細胞体樹状突起変性等)を引き起こすことができ、その結果に続いてバイオマーカ又は細胞形態の分析が行われ得る。
これらの変性プロセスの発生は、薬理学的特性(化学合成又は自然抽出から得られる有機分子、タンパク質(神経栄養因子等)、天然ポリマー又は非天然ポリマー)を評価することが望ましい分子をネットワークの成分に局所的に加えることによって遮断されるか又は抑制されることができる。これらの特性は、i)シナプス機能(例えば、皮質刺激の後、線条体ニューロンにおいて、erkキナーゼの動員の実験によって図18に示される)、ii)シナプス変性(例えば、軸索切断実験におけるVGlut-1シナプス前構造をモニタする実験によって図21に示される)、iii)軸索変性又は細胞体変性(例えば、皮質ニューロン軸索切断及び細胞体スタウロスポリン適用の実験によって図19及び20に示される)回復させる能力に関して評価され得る。同様に、破壊された構造(神経栄養因子等)を再生することを目標とする分子の可能性を評価することが可能である。
【0014】
本発明のデバイスは、軸索変性あるいはシナプス変性を調べ且つこの変性に活性である物質のスクリーニングを行うのに最も特に適していることがあり得る。従って、本発明は、細胞要素が前記物質と接触させる前にストレスをかける方法に関する。
ストレスは、軸索切断、毒性化合物、例えば、第1のチャンバ内で培養されるニューロンの細胞体樹状突起コンパートメント又は正中軸索コンパートメント、第2のチャンバ内に含有する培養ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおいて、例えば、神経毒化合物、シナプス毒性化合物又は軸索毒性化合物、細胞培養液に添加された、あるいは遺伝的に移植された正常タンパク質、突然変異タンパク質又はキメラタンパク質を加えること、又は物理化学的状態あるいは物理的状態、例えば温度、圧力又は電磁放射線の変性によって生じ得る。
方法の一例示的実施態様において、少なくとも3つのチャンバのデバイスの第1のチャンバを、軸索が第2のチャンバの方へ相互接続システムのマイクロチャネルを通って伸びることを可能にする第1のニューロン培養物で播種し、次に、軸索の溶解を引き起こすように第3のチャンバに物質を導入する。
本発明は、また、活性であると推定される物質をスクリーニングする方法であって:
a/ 上で定義された方法に従って培養した細胞を含む、上で定義されたデバイスを用意する工程、
b/ 前記培養した細胞の少なくとも1つの細胞を活性であると推定される少なくとも1つの物質と接触させる工程、
c/ 前記細胞について、前記細胞のバイオマーカーの有無、又は発現あるいは活性の程度を決定する工程、及び
d/ 前記バイオマーカの決定された有無、又は発現あるいは活性の程度を対照値、対照値の範囲又は対照決定と比較する工程
を含む、前記方法に関する。
【0015】
このようなスクリーニングする方法において、培養細胞は、細胞、特にニューロンの少なくとも2つの異なったタイプを含むことができ、1つの細胞型がデバイスの第1のチャンバと第2のチャンバの各々に割り当てることができる。
スクリーニングすべき前記物質は、第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバに及び/又は流体相互接続システムに導入され得る。
前記細胞は、ニューロンであり得る。
方法は、工程b/の前に追加のステップa'/、又はステップbの次に追加のステップb'/を含むことができ、ステップb/の少なくとも1つの細胞が細胞変性プロセスを誘導する少なくとも一つの刺激に供される。
前記少なくとも一つの培養細胞がニューロンであるので、細胞変性プロセスを誘導する前記刺激は、神経毒ストレス、遺伝子突然変異、ウイルス感染、軸索切断、神経毒分子、シナプス毒性分子又は軸索毒性分子より選ばれる毒性分子、細胞培養液に導入されるか又は培養細胞に遺伝的に移植された正常タンパク質、突然変異タンパク質又はキメラタンパク質、感染物質、特に神経向性薬又は物理化学的状態の修飾より選ばれ、特に、圧力、温度、pH、オスモル濃度又は電磁波、特にマイクロ波タイプ又は電波タイプより選ばれ得る。
細胞変性プロセスは、細胞コンパートメント、特に、細胞体、軸索、樹状突起又はシナプスより選ばれたものに特異的であり得る。
スクリーニングすべき物質は、前記細胞変性を防止、低下、遅延又は処理するように推定され得る。
バイオマーカーは、前記細胞変性のマーカーであり得る。
【0016】
本発明は、また、スクリーニングする方法であって:
a) 細胞ネットワークを生成するように上で定義されたデバイスを1つ以上の細胞型で播種する工程
b) ストレスを発生させ、場合により工程aの前に行われてもよい工程、
c) 試験化合物を適用する工程、
d) 試験化合物の作用を決定する工程
を含む前記方法に関する。
本発明は、また、他の態様によれば、マイクロ流体デバイスを製造する方法であって、前記マイクロ流体システムが、複数のマイクロメータパターンを含む第1のマスクを用いてフォトグラビア印刷技術によって、また、前記複数のパターンのサブセットに対応する、光透過性を有する第2のオーバーマスクを、前記マスクに、フォトグラビアの間に重ね合せて、フォトグラビアの間に基質上の前記サブセットだけを転写することによって準備される、前記方法に関する。
本発明は、実施態様によれば、有効なニューロンコンパートメント化、軸索発育上の方向性の強制、種々のタイプの軸索間の選択、及び/又は異なるチャンバに含有する種々のタイプの細胞を含み、且つ細胞延長によって特定の接続を有する細胞のネットワークの生成を可能にする。
本発明は、また、1つ以上の選択細胞サブコンパートメントに対するある種の物理的又は化学的刺激の動的強制、これらのサブコンパートメントの一部の特異的なバイオ標識化及びこれらのサブコンパートメントの一部の生物学的含量の分析を可能にすることができる。
【0017】
一態様によれば、本発明のマイクロ流体デバイスは、細胞培養のための少なくとも2つのマイクロ流体チャンバを備え、そのサイズは、微細加工相互接続ゾーンによって分離された細胞体の発育と適合でき、その形状は、軸索繊維又はより一般的には細胞延長の方向、速度論、数、タイプ及び相互接続に影響を及ぼし得る。種々のタイプのミクロ構造がこの作用に用いることができ、種々の例を以下に提唱する。
流体相互接続システムの種々のタイプのミクロ構造は、細胞延長の成長に対して種々のタイプの作用を有するか又は種々のタイプの選択を行うことができ、望ましい作用に従って選択することができ、必要により、組み合わせてもよい。
非対称の狭くなっているチャネルを備える構造は、一方向での細胞延長の発育を促進し、一般的には、より広い方から〜より狭い方に進む。
ねじれた過程を有するマイクロチャネルを備える構造は、神経サブタイプに属するある特定のタイプの軸索を遅延させ、加速させ又は選択することを可能にする。本発明は、このためにこのような構造を備えるデバイスの使用に関する。
障壁、例えばマイクロピラーを含有する構造は、軸索あるいは樹枝状のコンパートメント化を可能にすることができ、同時に軸索間接続の形成を調節することを可能にする。従って、本発明は、このためにこのような構造を備えるデバイスの使用に関する。
本発明の他の目的は、上記相互接続システムに加えて、細胞体の位置決めを正確に制御することを可能にする細胞培養のための個々のサブチャンバを備える、培養のためのマイクロ流体デバイスを提唱することである。必要により、これらのサブチャンバは、少なくとも1つのあるタイプの細胞体の接着を促進するように処理される表面を有してもよい。
本発明は、増殖及び/又は分化の間、細胞延長を生じることができるタイプの細胞に関する。特に、幹細胞、神経細胞、ニューロン幹細胞、そしてまた、これらの分化の間、神経細胞や分化したニューロンサブタイプに生じ得る細胞に関する。
【0018】
本発明は、必要により種々のニューロンサブタイプ及び/又はニューロンと非神経細胞の組み合わせ、及び/又はニューロン間の種々のタイプの軸索及び/又は樹枝状の相互作用を含んでもよい、最も単純なものから最も複雑なニューロンネットワークまでの方向性の再建を可能にすることができる。
本発明は、神経細胞と非神経細胞の間の相互作用を再建し研究することを可能にすることができる。
本発明は、試薬及び/又は薬剤を有する個々のニューロンコンパートメントを標的にし、且つ分析のためにこれらのコンパートメントの一部に由来するバイオマーカーを収集めることを可能にすることができる。
透明な種類のチャンバや相互接続システムは、軸索、樹状突起、シナプス又は細胞体のような前記細胞コンパートメントのインサイチュ分析を、必要によりリアルタイムで、限定されない例として、免疫組織化学、核酸ハイブリッド形成、核酸増幅、電気化学又は電気生理学のような分子生物学ツールあるいは細胞生物学ツールにおいて、促進させることができる。ニューロンの状態あるいは病理学的状態において、ニューロン発生の間のこのような研究の実施態様は、本発明の関連の範囲内に包含する。
本発明は、比較研究、高含量スクリーニング、高処理能力スクリーニング、薬剤の調査又は毒物学的研究に特に適している。
また、天然又は人工の神経毒物質、アポトーシスシグナル、又は天然又は人工の神経保護物質の作用を研究するのに特に適している。
一般に、それは、個々の細胞コンパートメントにおいて、バイオマーカーの存在の詳細な研究に充分適している。
【0019】
用語「バイオマーカー」は、細胞の生物学的状態に関係するタイプの情報を意味するものである。生物学において、細胞生物学において及び医学において一般に用いられるバイオマーカの典型的な例は、タンパク質の存在、その濃度、その発現レベル、代謝産物、神経伝達物質、ヌクレオチド配列又は酵素の存在又は濃度、あるいはタンパク質の局在、細胞コンパートメントにおける空間分布、又はこれらの基準の組み合わせである。
本発明のための用語「決定する」は、定量的又は定性の検出を意味するものである。
本発明のための用語「対照値」、「対照値の範囲」又は「対照の定量」は、「ベースライン」あるいは「正常な」状態下で所定のパラメーターの値、値の範囲又は定量を意味するものである。このような状態は、通常、作用が決定されるべき要素がないときに得られる。
例えば、バイオマーカーの発現の程度に関して、対照値、対照値の範囲又は対照の定量は、刺激誘導細胞変性のないときの細胞における前記バイオマーカの発現の程度に対応する値、値の範囲又は定量であり得る。
本発明によれば、これらのバイオマーカーは、種々の光学方法、特に蛍光イメージング、又は電気方法、特に電気生理学によって検出され得る。
多くの方法は、細胞におけるバイオマーカを確認する、当業者、特に細胞生物学者及び神経内科医に既知である。実際に、本発明の主な利点の1つは、細胞生物学において既知のバイオマーカーを検出し分析する方法の最も広い範囲の生体内使用を可能にし、初めて、以前には到達できない構造に配置されたニューロンによる前記使用を実施することができることである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に従って準備されたマイクロ流体デバイス1の一例を示す概略図である。
【図1A】本発明に従って準備されたマイクロ流体デバイス1の一例を示す概略図である。
【図1B】本発明に従って準備されたマイクロ流体デバイス1の一例を示す概略図である。
【図1C】図1Bに示されるものと同様のデバイスの一例である。
【図1D】図1CのID-IDに沿った断面を示す図である。
【図1E】図1CのIEの詳細を示す図である。
【図1F】図1DのIFの詳細を示す図である。
【図1G】図1Cのデバイスの透視図である。
【図1H】図1Gの詳細を示す図である。
【図2A】流体相互接続システム3のマイクロチャネル10の第1の例を示す図である。
【図2B】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図2C】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図2D】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図2E】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図2F】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図3A】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図3B】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図3C】マイクロチャネル10の形状を示す図である。
【図4A】障壁のネットワークからなるタイプの相互接続システム3の例を示す図である。
【図4B】障壁のネットワークからなるタイプの相互接続システム3の例を示す図である。
【図4C】障壁のネットワークからなるタイプの相互接続システム3の例を示す図である。
【図5】複雑で方向性のニューロン構造を形成するために使用し得る配置の限定的な例を示す図である。
【図6A】2つの枝分れ51と結合する第1の部分50を含む分岐部を有するマイクロチャネル10の一例を示す図である。
【図6B】構成A〜Eの種々の例に対するパラメーターaとLの値の表である。
【図6C】2つの枝分れ51と結合する第1の部分50を含む分岐部を有するマイクロチャネル10の一例を示す図である。
【図6D】構成A〜Cにおける幅aの値の表である。
【図6E】2つの枝分れ51と結合する第1の部分50を含む分岐部を有するマイクロチャネル10の一例を示す図である。
【図6F】構成A〜Cのa/b比を示す表である。
【図7】チャンバ2の間に単細胞チャンバ80を作る図である。
【図8】多数のパターンがエッチングされている写真である。
【図9】多数のパターンがエッチングされている写真である。
【図10】多数のパターンがエッチングされている図である。
【図11】マイクロチャネルを含む相互接続システムの例示的実施態様の写真である。
【図12】マイクロチャネルを含む相互接続システムの例示的実施態様の写真である。
【図13】本発明のデバイスによる例示的実施態様の写真である。
【図14】本発明のデバイスによる例示的実施態様の写真である。
【図15】本発明のデバイスによる例示的実施態様の写真である。
【図16】本発明のデバイスによる例示的実施態様の写真である。
【図17】本発明のデバイスによる例示的実施態様の写真である。
【図18】非対称のマイクロチャネルによって分離されたマイクロ流体チャンバを示す図である。
【図19】本発明のデバイスによる例示的実施態様を示す図である。
【図20】本発明のデバイスによる例示的実施態様を示す図である。
【図21】本発明のデバイスによる例示的実施態様を示す図である。
【図22】本発明のデバイスによる例示的実施態様を示す図である。
【図22b】3つのチャンバ2a、2b、2dによる例を示す図であ
【図23】上の近位チャンバ(青色)に播種した皮質ニューロンを示す画像である。
【図24】3つの相互接続したチャンバを備えるマイクロ流体デバイスによる例示的実施態様を示す図である。
【図25】流れ及び拡散を測定する一連の定性実験を行った結果を示す図である。
【図26】皮質ニューロンの分化について行った結果を示す図である。
【図27】皮質ニューロンの軸索切断について行った結果を示す図である。
【図28】皮質ニューロンの軸索切断について行った結果を示す図である。
【図29】皮質ニューロンの軸索切断について行った結果を示す図である。
【図30】断片化指数と断片化軸索の%の間の関係を示す画像である。
【図31】細胞体死の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
限定されない例示的実施態様の、以下の詳細な説明を読み取る際に、また、添付の図面を調べる際に、より明らかに本発明を理解することが可能である。
図1は、概略的に、「チップ」とも呼ばれる、本発明に従って準備されたマイクロ流体デバイス1の一例を示す概略図である。
このマイクロ流体システム1は、考えられる例において、マイクロ流体チャンバ2を備え、この場合、2つあり、符号が2a及び2bであり、それぞれ、第1の細胞培養物及び第2の細胞培養物で播種されるものである。
マイクロ流体システム1は、また、第1チャンバと第2チャンバ2a及び2bを接続し且つ細胞延長が一方のチャンバからもう一方のチャンバまで伸びることを可能にする流体相互接続システム3を備える。
マイクロ流体チャンバ2は、例えば、流体相互接続システム3が伸びている2つのそれぞれの平行した部分4a及び4bにより作られている。
マクロチャンバとも呼ばれる部分4a及び4bは、例えば、図示されるように、これらの末端で、例えば、形が円筒形のより広い部分5(リザーバとも呼ばれる)に接続されている。
デバイス1は、適切な単一材料又はマルチマテリアルの支持体で作ることができる。この支持体は、図1Aに示されるように、本発明の細胞培養のためのいくつかのデバイス1を備えることができる。
図1Aの例において、デバイス1は、例えば、円形の顕微鏡カバーグラス、例えば、直径42mmである、例えば、透明である底面基体で作られている。本発明は、1つの材料に又は1つの具体的な形に限定されない。
【0022】
チャンバが作られる材料は、例えば、PDMSであり、例えば顕微鏡カバーグラスで作られたガラス板か又はチャンバの底を形成する他の材料に結合されている。
チャンバを充填するために、チャンバが作られる材料は、より広い部分5のレベルで、例えば、貫通することができる。例えば、4mmの穴がその中に作られる。
ピペット又は注入ポンプによって液体をチャンバに導入することができる。例えば、10〜100μlの液体が、各チャンバ2a及び2bに導入され得る。
デバイスの使用の間、液体の永続的な流れがチャンバ2aと2bの間に存在しないことは可能である。
図1において、部分5は円筒形であるが、他の形も可能である。
デバイス1は、流体の観点から自律的(流体的に自律的)であり得、即ち、種々の培養液がチャンバに導入されると、デバイスと外部による流体連通がない。
図1Bにおいて、デバイス1は、マイクロ流体デバイス1について3つのチャンバ2a、2b、2cを備えている。
第3チャンバ2c(中央チャンバとも呼ばれ、この場合には、チャンバ2a及び2bは、遠位チャンバと呼ばれ得る)は、チャネルとも呼ばれる直線部分4cを備え、チャンバ2aと2bの部分4aと4bの間に伸びている。この部分4cは、チャンバ2cの2つのより広い部分5を結合している。
部分4a、4b、4cは、例えば、広い少なくとも55のμmである。
図面の明瞭さのために、図1A及び1Bにおいて、流体相互接続システム3は示されていない。
【0023】
部分4cは、細胞延長の進行を妨害しない液体で充填することができるが、チャンバの一方に導入される化合物のもう一方のチャンバへ拡散を制限することができる。
部分4cは、また、例えば清浄剤で充填することによって、軸索切断を行うために使用され得る。
部分4cは、第1チャンバと第2チャンバの対称面に含有する縦軸に沿って伸びることができるが、他の構成も可能である。
流体相互接続システム3は、少なくとも第2のタイプの細胞延長と比較して少なくとも第1のタイプの細胞延長の進行を促進するために、種々の方法で作ることができ、第1のタイプと第2のタイプの細胞延長は、例えば、これらが由来するマイクロ流体チャンバによって又はこれらが延長である細胞型によって異なっている。進行は、例えば、相互接続システムにおける流体の流れなしで起こり得る。
一般に、流体相互接続システムは、複数の並置されたマイクロチャネルを備えることができ、これらの末端で細胞チャンバに、直接、あるいは以下に指定される単細胞チャンバによって接続される。
流体相互接続システムは、例えば、種々の形状であり得る1〜1000マイクロチャネルを備え得る。
同一流体相互接続システムのマイクロチャネルはすべて同一の形状をもつことができ、各々は、例えば、平行移動又は回転又はより複雑な幾何学変換によって他のレプリカである。
【0024】
本発明の一例示的実施態様において、流体相互接続システムは、これらがうち、縦軸が平行で、例えば、接続している細胞チャンバ2のマクロチャネル4a及び4b、又は4cさえに垂直である複数のマイクロチャネルを備えている。
流体相互接続システムは、特に上から見た場合、非対称形を有するマイクロチャネルを備え得る。
例えば、直線的に減少する幅を有する、中間部分10cを介して接続された幅aのより広い部分10aと幅bのより狭い部分10bをもつ、非対称の形状を有する、流体相互接続システム3のマイクロチャネル10の第1の例が、図2Aに示されている。
驚くべきことに、異なる長さの非対称のチャネルを有するデバイスを用いることにより、これらが由来するチャンバに従うだけでなく、これらの細胞サブタイプに従う軸索を選ぶことが可能であることがわかった。
例えば、長さが少なく1200μmのチャネルを用いて、大脳顆粒のニューロンは軸索を遠位チャンバへ送ることができないが、投射ニューロンはそのようにすることができる。
更に、幅が2μm以下のチャネルに軸索が浸透しないかあるいは浸透しにくいことが認められ、軸索に不浸透性の流体相互接続部を作ることを可能にする。
図2B〜2Dは、また、マイクロチャネル10に可能な他の形状、例えば、図2Bに示されるように、上から見た台形状、図2Cに示されるように、ノーズコーン形状、又は図2Dに示されるように、角状を表している。前記マイクロチャネルの縦軸に沿って移動する場合、マイクロチャネル10の幅は線状又は非線状様式で変化させることができる。
【0025】
マイクロチャネル10は、図2Eに示されるように、溝がデバイスの底部分に又は図2Fに示されるように、溝が最上部に形成され得る。
マイクロチャネル10は、例えば、10μm〜10 000μm、好ましくは50μm〜2000μm、例えば約500μmの長さを有する。
マイクロチャネル10は、例えば、1〜5μm、例えば約3μmの厚さを有する。
マイクロチャネル10の幅は、これらの最も広い部分で、例えば、5〜100μmであり、最も狭い部分で、1〜10μmである。マイクロチャネルの幅は、最も狭い部分で、例えば、最も広い部分の幅の最大でも半分に等しい。
例示的実施態様において、最も広い部分の幅は10μmであり、最も狭い部分は3μmである。このような値において、驚くべきことに且つ劇的に、1000の領域での選択性を観測することが可能であり、即ち、マイクロチャネルの最も広い部分と接触する細胞チャンバに含有される細胞は、マイクロチャネルの狭い部分と接触する細胞チャンバに含有されるものより少なくとも1000倍の軸索を送る。
流体相互接続システムのマイクロチャネルは、各々直線形状又は、変形例として、非直線形状を有することができる。
例えば、連続部分が相互に直角で配置されたジグザグの形状のマイクロチャネル10が図3Aに示されている。ジグザクパターンの周期Lは、例えば、5μm〜100μmで、好ましくは10〜50μmである。
例えば、半円形部分の連続から構成される、波状を有するマイクロチャネル10は、図3Bに示されている。選択されるニューロン型に従って、波状の周期Lは、例えば、3〜5μm、又は5〜10μm、あるいは10〜30μmである。
【0026】
このタイプのチャネルは、軸索サブタイプを選択するのに有効であり得る。例えば、小さな曲率半径を有するチャネルを用いて、皮質軸索が停止されることが見られたが、海馬軸索又は線条体軸索はこれらのチャネルを通過することができる。
広くなった部分10aと狭くなった部分10bの連続を含むマイクロチャネル10の例は、図3Cに示されている。狭くなった部分10a及び10bは、例えば、一定幅を有するが、広くなった部分は、それぞれ末広と先細である入口と出口及び一定幅、例えば、5μm〜50μmの中間部分10cを有する。狭くなった部分10bの幅bは、例えば、2μm〜10μmである。
狭くなった部分10bの長さdは、例えば、10〜500μmである。入口と出口の長さcは、例えば、10〜500μmである。部分10cの長さfは、例えば、10〜500μmである。
図4A〜4Cは、障壁のネットワークからなるタイプの相互接続システム3の例を示す図である。
これらの図において、例えば、図4Aに示されるように、円形のアイランドの形(微小ピラーとも呼ばれる)又は図4Bに示されるように、多角形、例えば矩形の丸石の障壁70を作ることが可能であることがわかる。
障壁70は、種々の配置を有し、例えば、図4A又は4Bのように、2つの寸法の平面で一定の位置を有するネットワークの形で配置され得る。障壁70は、また、図4Cに示されるように、島の中心が多角形の頂点のように配置される配置の形であり得る。
図4Aの配置は、好ましい実施態様に対応し、障壁70の間に障壁の半径より小さな曲率半径をもたないラインを循環することはできない。このような配置は、皮質軸索と線条体軸索を分離するために使用し得る。a、b、cの値は、例えば、それぞれ、2〜10μm、2〜10μm、5〜100μm、好ましくは2〜5μm、2〜5μm、5〜50μmである。
【0027】
図5は、本発明によって、複雑で方向性のニューロン構造を形成するために使用し得る配置の限定的な例を示す図である。小さな矩形は、細胞培養のためのチャンバ2を示す概略図である。矢印もまた、相互接続システム及びこれらの方向性を示す概略図である。これらの方向性システムは、例えば、軸索発育、シナプス形成、退行性及び順行性輸送、又は細胞シグナリングを研究するために、あるいは神経変性プロセス、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、特にニューロンの個々のサブタイプが早期シナプス機能不全の徴候を示す疾患を研究するために使用し得る。
流体相互接続システムは、相互に一直線になって配置されることができ、変形例として、異なる方向に向かせることもできる。
図22は、bにおいて、3つのチャンバ2a、2b、2dによる例を示す図であり、チャンバ2aと2bは第1の流体相互接続システム3を介して接続され、チャンバ2bと2dは第2の流体相互接続システム3'を介して接続され、これは画像cにも見られる。種々の相互接続システムのマイクロチャネルは、相互に対して垂直である。相互接続システム3のマイクロチャネルの間に距離は、相互接続システム3'のマイクロチャネルの間と異なることがあり得る。
流体相互接続システムのマイクロチャネルは、例えば、チャンバ2bのマクロチャネルを隣接のより広い部分5に接続するL形で接続する。
本発明の変形例の1つによれば、ニューロン器質化を妨害せずに、ある種のニューロンコンパートメントから試薬を注入するか、あるいは産物を収集することができることが望まれる場合には、相互接続システムは、分子とイオンの2次コンパートメントとの交換を可能にするが、細胞の前記2次コンパートメントとの交換を可能にしない多孔壁によって少なくとも表面の一部の上で区切られる。この壁は、例えば、それぞれ、チャネルの底部分と最上部を構成しているの2層の材料の間に膜を挿入することによって、また、最上部において、前記膜と接触させて、産物を供給するか又は収集することができる2次チャネルを用意しておくことによって形成され得る。
【0028】
他の実施態様によれば、この膜は、例えば、光重合によりインサイチュで形成され得る。
最後に、これは、例えば、距離が軸索を通過させることができない2μm未満の、非常に近い障壁のネットワークから作ることができる。
2つの枝分れ51と結合する第1の部分50を含む分岐部を有するマイクロチャネル10の一例が図6Aに示されている。部分50は、枝分れ51ができるように幅aを有することができる。分岐部を有するパターンは、例えば、軸索接続又は分裂を可能にする。枝分れ51の縦軸は、例えば、部分50の入口端部の反対の末端で、距離Lだけ分離される。部分50の縦軸は、例えば、枝分れ51に関して正中面に含有する。後者は、例えば、100μmの長さにわたって分岐する2つの部分52を含むことができる。
構成A〜Eの種々の例に対してパラメーターaとLの値の表が図6Bに示されている。
図6Cにおいて、マイクロチャネル10は、幅2aが、例えば、枝分れ51の2倍である部分50によって作られる。図6Dにおける表には、種々の構成A〜Cにおける幅aの値のいくつかの例が示されている。
図6Eは、2つの枝分れ51に分裂する前の狭い部分50を備えるマイクロチャネル10を示す図である。部分50は、例えば、幅aから幅bに進み、枝分れ51は、例えば、狭い部分54と同一の幅である。
部分50が狭い部分54と結合する先細部分55の長さは、例えば、100μmである。
図6Fにおける表は、種々の構成A〜Cのa/b比の種々の例を示すものである。狭い部分54の存在は、束を集中させることを可能にする。
【0029】
図6Cの配置は、流量を保存することを可能にする。糸状仮足に対するストレスは、図6Aの例より経験的に大きく、その分裂を望むことを可能にする。
図6Gは、Y形ゾーンに対する機械的ストレスに関して図6Cと同様の特性を有する構成を示す図である。図6Gの構成は、また、横切る軸索束の挙動を試験することを可能にする。
図6Gの配置において、マイクロチャネル10は、分岐する枝分れ61と結合し、次に、新しい直線部分60と結合するように収束する平行した直線部分60を備えている。
2つの隣接のチャネルの2つの枝分れ61は、63で結合し、枝分れによってこれらの間に島64がもたらされる。直線部分60の縦軸の間の距離は、例えば、30μmであり、縦方向の傾斜は、例えば、100μmである。部分60の幅は、例えば、枝分れ61の2倍、2 aに等しい。
図6Hの表には、構成A〜Cの幅の値の種々の例が示されている。
チャンバ2の間に単細胞チャンバ80を作る可能性は、図7に示されている。単細胞チャンバ80は、例えば、関連するマイクロチャネル10の端部90及び、反対側では、断面がチャンバ2と直接結合するマイクロチャネル10より大きい連結チャネル92と連通している。チャンバ2の高さは、例えば、55μm、単細胞チャンバは12μm、マイクロチャネル10は30μmである。
単細胞チャンバ80は、マイクロチャネルに入る前にニューロンの細胞体を捕捉することができる。これらの構造を作るために、樹脂の第3の層が必要であり得る。これらの特徴的サイズは、1つ以上の細胞体を受容するように10〜100μmの範囲であり得る。
【0030】
本発明のデバイスの製造に関して、多くのマイクロリソグラフィ法は、例えば、Patrick Tabeling. Introduction to microfluidics. Belinによって記載されたものを使用し得る。
好ましい一実施態様によれば、デバイスは、Whitesides, G. M.; Ostuni, E.; Takayama, S.; Jiang, X.; Ingber, D. Soft lithography in biology and biochemistry., Annu. Rev. Biomed. Eng. 2001, 3, 335-373に記載されるように、ソフトリソグラフィの方法によって製造される。エラストマー、PDMS(ポリジメチルシロキサン)を用いることが可能であり、架橋されると、細胞生物学及び分子生物学に非常に適した特性、透明で、ほとんど反応性でなく、生体適合性を有する。
PDMSは、ニューロンが自然に付着する表面ではない。培養環境(ペトリ皿又はマイクロ流体チップ)に関係なく、表面を化学的に処理するのに有効であり得る。最も一般に用いられる手段は、ポリリジンを用いることからなり、これが壁に吸着し細胞接着を可能にする。フィブロネクチン又はコラーゲンのような他の接着タンパク質を用いることも可能であるが、これらの物質は当然PDMSに充分に吸着せず、ポリリジンと異なった細胞接着を可能にする。これらをPDMSに化学的に結合することが必要であり得る。それ故、光活性化可能な架橋剤2を用いることが可能である: 前記架橋剤が紫外線を受容する場合、受容されたエネルギーによりPDMSとの結合を生じることが可能である。多くの架橋剤が本発明に使用し得る、限定されない例として、例えば:
- スルホ-sanpah: スルホ-sanpah(N-スルホスクシンイミジル[4'-アジド-2'-ニトロフェニルアミノ]6-ヘキサノエート)は、一方の端部に、光活性化可能なニトロフェニルアジド基、もう一方の端部に、タンパク質に非常に一般的であるアミン機能(アミド化)と非常に反応性の特殊性を有するN-スルホスクシンイミジルエステル基を有する分子である、
- ベンゾフェノン及びBBTA: ベンゾフェノンは、PDMSに強く吸着するラジカル開始剤である。これが光活性化される場合、水素を含有する分子と結合するので、表面上にグラフトすることができる。BBTA((4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウム)は、ベンゾフェノンの親水性変形例であるが、機能は経験的に同一であるが、親水性であるのでタンパク質同じ溶液に溶解され得る。反応は、PDMS上に最初に吸着されなければならないベンゾフェノンと異なり、2つの分子が水中にある間に起こる。
【0031】
好ましい一実施態様によれば、特に個々の細胞又は細胞コンパートメントの個々の部位への接着を促進することが望まれる適用とともに有効である局在的光活性化が使用し得る。
例えば、Jenny Fink, Manuel Thery, Ammar Azioune, Raphael Dupont, Francois Chatelain, Michel Bornensa and Matthieu Piel. Comparative study and improvement of current cell micro-patterning techniques. Lab on a Chip, 2007, 7, 672-680に記載される接着タンパク質パターンを生成するために、望ましい部位だけでUV照射するようにマスクを用いることは可能である。
他の好ましい実施態様によれば、顕微鏡による光活性化も使用し得る: 例えば、Jun Nakanishi, Yukiko Kikuchi, Tohru Takarada, Hidekazu Nakayama, Kazuo Yamaguchi, and Mizuo Maeda. Photoactivation of a Substrate for Cell Adhesion under Standard Fluorescence Microscopes. J. AM. CHEM. SOC. 2004, 126, 16314-16315に記載されるように、顕微鏡によって紫外線を送ることによって、これらをマイクロ流体チップのPDMS表面に投射することが可能である。顕微鏡の物体焦点面に望ましいパターンによるフォトマスクを配置することによって、望ましいパターンがマイクロ流体チャネルの表面に得られる。更にまた、対物レンズがフォトマスクのパターンのサイズをかなり狭くすることを可能にし、それにより、精度に関して利益を得ることを可能にする。
いくつかの相互接続構造は、約1μmの分割を必要とする。その結果として、高解像度石英でできたマスクを用いることが望ましい。支持体をできる限り有益にするために、使用を促進する新規なリソグラフィ方法を提唱することも本発明の目的の一部である。この方法によれば、石英マスク120の全体の表面は、例えば、図8に示されるように、マイクロチャネルや細胞チャンバの多数のパターンによってエッチングされる。このツールは、単一マスクにおいて、ニューロンの制御されたネットワークの発生に有利であり得るパターンを探索することを可能にするか又はバンドリング/アンバンドリング特性又は丸いチャネルにおける挙動のような軸索投射のある種の特性を試験することを可能にする。
【0032】
このマスク120は、2つの目的を有する:
- 標準化された方法で4つの異なるミクロ構造を同時にリソグラフィを行うことを可能にするため。これは種々のマクロチャネルの形状を有する最大適合性を有するように設計され、それ故、かなりの使用柔軟性を与えるすべての形状に使用し得る。
- ほとんどの異なるパターンを同一の石英マスクに配置するため(非常に費用がかかる)。
多数のパターン(図8に示される例では96)は、相互に隣接して並置され得る(距離が標準化されている)。アランメントパターンは、その中心に配置されている。それ故、ミクロ構造に用いられる樹脂が負の樹脂である限り、多くのコンパートメントを有するチップパターンを作るために使用し得る。13のマイクロチャネル形状と6つの細胞コンパートメント形状がマスク120上にエッチングされている。各形状が種々のサイズで再現され、パターンの数が96になっている。
更に、マルチスケールパターンがエッチングされている。これらのパターンは、種々のサイズや形状を1つに一緒にまとめ、最低実験数で最大数の形状を探索することが目標である。例えば、狭くなっているチャネルについては、単一の実験で、サイズが所定のタイプのニューロンに好ましいことを決定することを可能にするマルチスケールパターンが設計されている。
一例として、図8に示される合計96の異なるパターンを、単一の高分解能マスクを用いて作ることができる。図10に示されるように、種々のパターンの間の選択がより低い分割を有し且つ窓110を有するオーバーマスク130によって行うことができる。
【0033】
図9は、窓110を通って見ることができるパターンの2つの例を示している。
オーバーマスク130は、また、アランメントパターン135を備えることができる。
本発明は、有利には、種々のタイプの細胞を培養し研究するのに使用することができ、特にニューロンについて適用するのに有利である。
ニューロンは、分化すると、もはや増殖しない細胞である。それ故、ニューロン細胞培養物を増殖することは不可能である。更に、これらの神経形成ピークの間にこれらのニューロンを得ることが重要であり、これは、ニューロン増殖が終わるとともに分化が行われる瞬間である。更に、これらはまだ成熟してなく、即ち、軸索や樹状突起がまだ成長していないので、培養皿又はチップにこれらに播種することが可能である。
有利には、当業者に周知の解剖プロトコールに従って、動物から、特にマウスから取り出されるニューロン材料が本発明のデバイスに用いられる。
本発明は、また、細胞を視覚化するとともに個々の細胞コンパートメント内の物質を限局化することを可能にする。
本発明は、それ自体で免疫標識、免疫組織化学、DNA標識、蛍光標識、ルミネッセンス又は化学発光の技術すべてに特に充分に役に立つものである。
本発明のデバイスにおいて蛍光免疫標識によって検出され得る細胞生物学に有利な分子のリストを一例として以下に示す:
- α-チューブリン: このチューブリンサブユニットは、すべての細胞微小管に存在する。
それ故、この標識は、コンパートメントに存在する細胞の細胞骨格のすべてを見ることを可能にする。
- β3-チューブリン: 例外なく、軸索の微小管に特異的なサブユニット。
- Map2: Map2は、微小管と関連している。これは、特に樹状突起に存在する。
- シナプトフィジン: 軸索のシナプスがない場合、シナプトフィジンが均一に軸索に存在する。シナプスが成熟しニューロンに接続する場合、シナプス内に蓄積する。
- p-erk: erk(細胞外調節キナーゼ)は、タンパク質キナーゼであり、これが活性化される場合、リン酸化され、次に核に転移する。この活性化は、線条体ニューロンのグルタミン酸作動性シグナル変換カスケードで生じる。この標識によって、線条体ニューロンが実際にグルタメートによって活性化されたことを証明することが可能である。
【0034】
非免疫学的標識もまた、使用し得る。例えば、細胞核を可視化することを可能にする、DAPI又は他のいかなるDNA-挿入剤も、本発明のデバイスに使用し得る。
図11は、幅が一方のマイクロ流体チャンバからもう一方のマイクロ流体に減少するマイクロチャネルを含む相互接続システムの例示的実施態様の写真である。図11において、皮質ニューロンが播種された細胞体コンパートメントは、左側に見られる。軸索はマイクロチャネル10を通過し、その幅は、例えば、入口の15μmから出口の3μmに進む。
写真により、左側ではマイクロチャネルの広い部分において皮質ニューロンが軸索束を投射し、右側では、破線の矢印によって示される皮質軸索束が狭くなった側から出て、実線の矢印によって示される細胞体及び線条体軸索に接続することが見られる。
図12は、左側の写真に、40×位相差において、皮質培養物だけによる最も狭いマイクロチャネルの出口と、左側の写真に、共培養物の場合を示す図である。共培養物の場合、皮質軸索のネットワークは、より拡散し絡み合っている。
図1Bに示されるものと同様のデバイスの一例が図1Cに示されている。図1Dは、図1CのID-IDに沿った断面である。図1E及び1Fは、図1C及び1Dの詳細IE及びIFを示している。図1Hは、図1Gの詳細を示し、図1Cのデバイスの透視図である。
部分4cは、一方のマクロチャネル4a又は4bからもう一方まで移動する化学基体のリスクを低下させるのに有用であり得る。
一例において、マイクロチャネルに垂直に測定される相互接続システム3の長さは、例えば、3mm〜5mm、例えば、4mmである。
マクロチャネル4a又は4bの幅は、例えば、500〜1500μm、例えば、1000μmである。部分4cの幅は、例えば、マイクロチャネルと交差している領域、50〜150μmにあり、例えば100μmである。マイクロチャネル10の幅は、例えば部分4cの開始における出現で10μmである。
マイクロチャネル10の高さは、例えば5のμm以下であり、例えば3μmである。部分4cの高さは、例えば100μm未満であり、例えば55μmである。
【実施例】
【0035】
以後実施例において用いられるマイクロ流体デバイスは、図1A又は1Bに関して記載される通りであり得る。
用いられるデバイスは、例えばマイクロチャネル(3)によって分離される少なくとも2つの培養チャンバ(4a及び4b)から構成され得る。チャンバの各マクロチャネルはリザーバ(5)を形成する広くなった部分に接続され、例えば、これらがPDMSでできている場合には、エラストマーを通って穿孔される。
図1Aに示されるように、各デバイスは、例えば、同一の基体上に4回繰り返され、これは各々2つのチャンバを有する4つの独立したデバイスを示している。
図1Bは、各々3つのチャンバを有する4つの独立したデバイスを示す図である(これらのチャンバまだ時にはコンパートメントと呼ばれている)。
2つ(又は3つ以上)の培養チャンバは、マイクロチャネル又は他のミクロ構造を有する相互接続システムによって分離されている。
【0036】
より詳しくは、以下のデバイスを用いた:
デバイスD1(図19):
デバイスは、長さが500μm、幅が広い側の15μmと狭い側の5μm、高さが3μmの、167の狭くなっているマイクロチャネル(ダイオードとも呼ばれる)を介して相互接続された、寸法(L×l×h/μm) 4500、1000、55の2つの培養チャンバを備えている。各マクロチャネルは、直径が4mmで高さが5〜10mmの2つのリザーバ(広くなった部分)に接続されている。チャンバは、カバーガラス170μm厚に取り付けられている。
デバイスD2(図13、14、15、16、17):
寸法(L×l×h/μm) 4500、1000、55の2つの培養チャンバが、長さが500μm、幅が広い側の15μmと狭い側の3μm、高さが3μmの、167の狭くなっているマイクロチャネル(ダイオードとも呼ばれる)を介して相互接続されている。各チャンバ(マクロチャネル)は、直径が4mmで高さが5〜10mmの2つのリザーバ(広くなった部分)に接続されている。チャンバは、カバーガラス170μm厚に取り付けられている。
デバイスD3(図11、12、18):
寸法(L×l×h/μm) 4500、1000、55の2つの培養チャンバが、長さが500μm、幅が広い側の15μmと狭い側の2μm、高さが3μmの、167の狭くなっているマイクロチャネル(ダイオードとも呼ばれる)を介して相互接続されている。各チャンバ(マクロチャネル)は、直径が4mmで高さが5〜10mmの2つのリザーバ(広くなった部分)に接続されている。チャンバは、カバーガラス170μm厚に取り付けられている。
【0037】
デバイスD4(図20、21):
3つの平行した培養チャンバ、即ち、寸法(L×l×h/μm) 4500、1000、55の2つの遠位チャンバが、長さが500μm、幅が広い側の15μmと狭い側の3μm、高さが3μmの、167のマイクロチャネルを介して相互接続されている。各チャンバは、直径が4mmで高さが5〜10mmの2つのリザーバ(広くなった部分)に接続されている。チャンバは、カバーガラス170μm厚に取り付けられている。「連続して」通過を可能にし且つ長さが500μm、幅が広い側の15μmと狭い側の3μm、高さが3μmの狭くなっているマイクロチャネルを用いていくつかのデバイスを準備した。いくつかのデバイスは、中央チャンバ(L×l×h/μm) 4500、50、3によって作られ、まっすぐか又は狭くなっている長い250μmのマイクロチャネルによってその他の2つのチャンバから分離されている(15μm×3μm×3μm)。
デバイスD5(図22、23):
これらは、3つか又は4つのチャンバを有するデバイスであり、第1のチャンバはその他の2つに垂直に向けられている。チャンバは、すべて寸法(L×l×h/μm) 4500、1000、55を有する。第1のチャンバ(A)は、長さが500〜1000μmと断面積が10μm×10μm×3μを有する一連の100マイクロチャネルを介して、第2(B)接続されている。これらのマイクロチャネルは、垂直面によって第2のチャンバと結合している。第2(B)及び第3(C)のチャンバは、長さが500μmと断面積が10μm×10μm×3μmの167のマイクロチャネルを介して相互に接続されている。いくつかのデバイスは、15μm×3μm×3μmの狭くなっているマイクロチャネルによって作った。いくつかのデバイスは、4つのチャンバをもち、チャンバ(B)が、同じ原理に従って、チャンバ(B)の両側に位置する2つの垂直なチャンバ(A)及び(A')に接続されている。
デバイスD6(図24):
デバイスは、3つの平行した培養チャンバ、即ち、寸法(L×l×h/μm) 25000、1000、55の2つの遠位チャンバと1つの中央チャンバ(25000、3000、55)を備え、長さが250μm、断面が幅が広い側の15μmと狭い側の5μm、高さが3μmの、930のマイクロチャネルを介して遠位チャンバの各々と相互接続されている。
2つの連続のマイクロチャネルは、中央チャンバの方に集まっている。各チャンバ(マクロチャネル)は、直径が4mmで高さが5〜10mmの2つのリザーバ(広くなった部分)に接続される。チャンバは、カバーガラス170μm厚に取り付けられている。
【0038】
実施例1: 本発明のデバイスの製造のための樹脂マスター
マスターが2つの異なる厚さ、即ち、3μmと55μmの構造を有するように2層の樹脂を用いる。は、SU8 2002樹脂(Microchemicals)によるマイクロチャネルと負の積層樹脂SY355(Microchem)によるマクロチャネル(厚さ55μm)を作る。
マイクロ流体チャネルの樹脂マスターを作る2つのフォトリソグラフィマスクは、QCadソフトウェアを用いて設計される。ガラススライド(1mm厚、直径52mm、Ediver、フランス)をイソプロパノールで洗浄し、ピラニア混合物(50% H2O2、VWR International、50% H2SO4、VWR International)に30分間浸漬し、次に150℃で2時間乾燥する。スライドを30秒間プラズマ処理する。厚さを決定する速度でSU8樹脂をスライド上に拡散させる
(http:/www.microchem.com/products/pdf/SU8_2-25.pdf)。
樹脂中に残っている溶媒を排除するために、ホットプレート上でプレキュアに続いて伸展させる。次に、樹脂を3mmの石英支持体を通して紫外線(Karl Suss MJB3アライナ)に8秒間さらす。ポストキュアは、樹脂の架橋を可能にする。パターンの出現まで、樹脂に適した現像剤中で現像を行う。プロトコールの終わりに基体をすすぐ。架橋を仕上げつつ、最後の再キュアが基体に対する樹脂の接着を強化するとともに構造を硬化することを可能にする。次に、第2の樹脂を付着させることが必要である。スライドを80℃に予熱する。樹脂膜を65℃でスライド上に積層し、マクロチャネル用のマスクで紫外線に10秒間さらし、次に現像する。イソプロパノールですすぐことによってプロセスが終わる。
【0039】
実施例2: デバイスの製造方法
デバイスを2工程で製造する。
1) PDMSの成形: デバイスの成形は、1:10w/wの架橋剤(Sylgard 184、Dow Corning)を有するPDMSをマスターを含有するPTFE金型に注入することによって行われる。次に、全体を65℃で炉内で4時間架橋する。次に、リザーバにおける 孔は、直径4-5mmのパンチを用いて作られる。
2) チップの接着結合: デバイスを密封するために、ガラススライドをPDMSチップに接着剤結合する。このために、2つの表面をイソプロパノールで注意深く洗浄し、次に、45秒間空気-プラズマ処理(PDC-32G、Harrick)し、次に、チップとガラススライドを接触させる。
【0040】
実施例3: 表面処理
ニューロンの接着又は軸索の進行を促進するために、本発明の(例えばガラススライド)デバイスの基体の表面処理の種々の実施例をここに記載する。
以下に記載するプロトコールにおいて、使用するタンパク質は、FITCのグラフトによって蛍光でなされるフィブロネクチンである。しかしながら、これらが1つの特定の出願又はもう一方のための他の有利な分子を有するスライドを官能化するためにあるように、これらのプロトコールは用いられることができる。
PDMSスライドの準備:
最初に、直径4cmガラススライド(Edriver)をイソプロパノールで洗浄する。次に、10%の架橋剤を含むPDMSをスライド上に付着させ、1000rpmで回転させることによって拡散させる。次に、スライドを65℃の炉内に少なくとも2時間の置く。次に、スライドを以下の3つのプロトコールの1つで処理する:
- スライドは、45秒間プラズマ-処理し、直ちに用いる。次に、これらをラジカル性と親水性の双方を保持する。
- スライドをプラズマ処理し、水と接触させて最低4時間保存する。従って、これらのラジカル性は失われるが、これらの親水性は保持される。
- スライドをプラズマ処理しないので、疎水性表面を有する。
スルホ-sanpah処理: 固体スルホ-sanpah(Pierce)を、HEPES溶液(50mM、pH 8.5)中250μg/mlに希釈する。これは、鮮明な赤色を有する。200μlのスルホ-sanpahをスライド上に付着させ、溶液が黒色になるまで(5分)、紫外線ランプ下にさらす。スライドをHEPESで2回シェーカーにより15分間撹拌しながら洗浄する。PBSに0.2mg/mlまで希釈したフィブロネクチン-FITC溶液の1滴をスライド上に付着させ、これを水に浸漬したワイプを用いて湿った状態に保たれたペトリ皿に置く。スライドを4℃で一晩放置した後、用いられるように1X PBSですすぐ。
ベンゾフェノン処理: スライドを、10%の水/アセトンを含むベンゾフェノン溶液中に1分間置き、次にアセトンですすぐ。0.2mg/mlに希釈したフィブロネクチン-FITC溶液の一滴をスライド上に付着させ、これをスルホ-sanpahと同じようにしてUV照射する。次に、スライドをPBSですすぐ。
BBTA処理: 62mM BBTA溶液を、0.25mg/mlのフィブロネクチン-FITC溶液及び0.25mg/mlの自然フィブロネクチンで補足する。スライドを紫外線にさらし、次にPBS緩衝液ですすぐ。
【0041】
実施例4: ニューロンの一次培養及び播種
小脳顆粒ニューロン(CGN)
生後5〜7日のスイスのラインの若いマウスから小脳を取り出した。同腹仔全体を断頭した後に、小脳半球を取り出すために、頭部の裏で3回の切開術を行った。次に、これらを外科的に取り出し、PBS(Gibco)を含有するペトリ皿に入れる。髄膜を除去するとすぐに、小脳を細かく切断し、PBSで3回すすぎ、トリプシン-EDTA(Gibco)で37℃において10分間分離する。次に、10% FCSを添加することによりトリプシンを阻止する。細胞を5 U/mlのDNAse 1(sigma)の存在下にDMEMグルタマックスIの溶液に再懸濁し、次に、10mlのピペットを用いて機械的に分離する。80gで6分間3回遠心分離した後、沈降物を、10%ウシ胎仔血清(Biochrom)、ストレプトマイシン/ペニシリン(Gibco)、及び25mMのKClを含有し、ニューロンサプリメントN2及びB27(Gibco)で補足したDMEMグルタマックス(Invitrogen)中で、50,000,000細胞/mlの密度で再懸濁す。次に、細胞をデバイスの細胞体コンパートメントに播種する。10μlの細胞懸濁液を、細胞体コンパートメントの上方のリザーバに導入する。次に、細胞が急速にコンパートメントに流れ込み、約10秒後に、静水圧の差によって生じる流れを安定化するので、細胞を支持体に付着させることができるようにその他のリザーバに無細胞完全培養液を添加する。流れの速度と播種の品質を顕微鏡を用いて制御する。播種の約10分後、4つのリザーバ(細胞体と遠位)を完全培地(約50μl/リザーバ)で充填する。従って、20〜30 000細胞が遠位コンパートメントに播種される。培養液の蒸発を避けるように2〜3mlの水を含有するペトリ皿にチップを入れる。生体外で(DIV) 12日間に及ぶ期間、培養液を2-3日ごとに完全に新しくする。2日間の培養後、ニューロンは分化し始め、遠位コンパートメントにおいて軸索突起が出る。播種したニューロンの約2%が、これらの軸索をマイクロチャネルに投射する。培養の4〜6日後、10日後750〜1200μmの全長に達しもはや経時変化しないように、マイクロチャネルに挿入された軸索が遠位コンパートメントと結合する。
この実験は、デバイスD1で行った。
皮質ニューロンと線条体ニューロンの一次培養。
生後14日のマウス胚の皮質と線条体を、スイスラインから取り出す。
ツールはCGNと同じにする。頭蓋の周径を切断した後に双方の半球を取り出す。皮質と線条体を同時に取り出すことができる。その後、細胞を酵素的に、次に機械的にL15培養液に分離した後、CGNに用いたのと同一のプロトコールに従って培養デバイスに播種する。培養液は、2mMのグルタマックス-I、ストレプトマイシン及びペニシリン、最後に、培養サプリメントN2及びB27を含有するNeurobasalから構成される。2日間の培養後、皮質ニューロンが分化し始め、軸索突起を出し、一部がマイクロチャネルに入り始める。播種した約2%の皮質ニューロンがマイクロチャネルに投射する。
【0042】
実施例5: 培養物の免疫蛍光研究のためのプロトコール
すべてのインキュベーションを周囲温度で行い、全回路(マイクロチャネル)を処理することができるように流れを生成する。望ましい分析時間で、細胞をPBS中4%パラホルムアルデヒドで20分間固定する。PBSですすいだ後、これらは、0.1%トリトンX-100によって10分間透過化し、1% BSAを含有するPBS溶液で40分間飽和する。すすいだ後、対象の一次抗体の希釈液の存在下に細胞を周囲温度で40分間暗所でインキューベートする。PBSですすいだ後、DAPI溶液に希釈した、一次抗体を生成するために用いた種の免疫グロブリン(IgG)に対向する二次抗体を暗所で25分間添加する。PBSですすいだ後、その後、チップを「fluoromount」封入剤で密封する。対象の以下のタンパク質に対向する一次抗体を用いた: β-チューブリン(モノクローナル1/300、Sigma)、α-チューブリン(モノクローナル1/300、Sigma)、Map 2(ウサギポリクローナル、1/300、Chemicon)、シナプトフィジン(モノクローナル1/400、Sigma)。
Alexa 350、488又は555にカップリングされる抗種二次抗体を1/500に希釈した。以下のプローブを用いた: cy3(1/700、Sigma)、Mitotracker赤(Molecular probes)にカップリングされるファロイジン。画像獲得は12ビットの冷却されたCCDカメラ(Coolsnap HQ2、Ropert Scientific)を装備したAxioberver Z1顕微鏡(Zeiss)を用いて行われ、全体がMicro-マネージャ開放性ソースソフトウェアによって制御される。画像をImage Jソフトウェアを用いて処理する。
【0043】
実施例6: 本発明のデバイスにおける小脳顆粒ニューロンの培養
新たに分離したCGNを細胞体コンパートメントに播種する。培養に導入される細胞のすべてが充分に付着する従来の細胞培養デバイスとは異なり、顕微鏡下に、付着した細胞の数を計数した後にのみマイクロ流体回路に播種される細胞の数を推定することができる。従って、細胞体コンパートメントにおける細胞密度が実験により約20 000〜30 000細胞であることが明らかである。
生体外で(DIV) 2日後、ニューロンは細胞体コンパートメントにおける軸索突起の複雑なネットワークを確立し始め、その一部がマイクロチャネルの1/3に浸透し始める。4DIVにおいて、150マイクロチャネルの全体が、チャネルに伸びている軸索によって完全に占められる。
遠位コンパートメントは、軸索突起が徐々に侵入する。7DIVから始まり、軸索突起成長端部と軸索は、これらのサイズ、細胞体から750〜1200μmに達し、もはや経時変化しない。
先行技術システムにおいて、軸索突起成長は、右側コンパートメントが播種されるにしても左側コンパートメントが播種されるにしても等しく生じる。
本発明の利点の1つは、共培養を得ることを管理することであり、ニューロン投射が制御される(例えば、皮質ニューロンが線条体ニューロン上に投射する)。それ故、1つのニューロン型が、左側チャンバに播種され、他のニューロン型が右側チャンバにおけるコンパートメントに播種される。制御すべき投射のために、軸索が一方向にマイクロチャネルを通過することができ、その他にできないことは、重要である。この例において、幅が細胞体側の15μmと遠位側の3μmで、長さが500μmの、図2Bに示されるのと同様の形状の本発明のマイクロチャネルを用いた。従って、狭くなった側の軸索はチャネルに入らないが、しかし、広い側の軸索はこれらが焦束される場合には通過することができる。軸索は、一方向にだけマイクロチャネルを通過する。
皮質軸索: 皮質ニューロンが広い側(15μm)に播種される場合、マイクロチャネル当たり8〜10の皮質軸索が横切る(全体のシステムに対して1000 - 1500)。これらがもう一方の側に播種される場合、5〜10の軸索だけが全体としてチップを横切る。
線条体軸索: 皮質軸索は狭くなっているチャネルの大きな側(15μm)上に入るが、これらは3μm幅である部分を横切るように処理することができない。それ故、これらのマイクロチャネル寸法は、線条体ニューロン上に皮質軸索の投射が制御され、且つ本発明が細胞型に従って軸索成長を選択するために使用し得ることを示す共培養に特に適切である。
【0044】
実施例7:
皮質線条体共培養及び方向性ニューロンネットワークの形成に対する適用。
原理: 左側チャンバをマウス一次皮質ニューロンで右側チャンバを線条体ニューロン(3日後に)で播種し、双方のニューロン型に適した培養液を用いることによって、線条体ニューロン上の皮質ニューロンの一方向性ニューロン投射を第6日目に見ることができた。
この実験は、デバイスD2によって行った。
皮質線条体ネットワーク: 皮質ニューロンと線条体内ニューロンは、顕微解剖によって、胎生14日のスイスマウス胚から取り出される。すべての解剖工程が、0.1%グルコースで補足されるPBS緩衝液において行われる。顕微解剖された構造は、トリプシン-EDTAの溶液中でインキュベーションによって消化され、パスツールピペットで機械的に分離される。数回リンスした後、単細胞懸濁液を計数する。皮質ニューロンをDMEM培養液中で40×106細胞/mlで再懸濁し、線条体ニューロンを15-20×106細胞/mlで懸濁する。次に、皮質ニューロンと線条体ニューロンは、これらのそれぞれの培養チャンバに、皮質ニューロンが相互接続システムのマイクロチャネルで広い側に播種される。次に、培養リザーバが、グルタマックス、ペニシリン及びストレプトマイシン及びニューロンサプリメントB27及びN2を含有するDMEMから構成される培養液で充填される。次に、播種したマイクロ流体デバイスを37℃のインキュベータ内に置く。培養液を3日ごとに新しくする。
相互接続システムの2つの側の間に幅について非対称を有する本発明のデバイスにおいて、皮質-線条体共培養が促進されることがわかった。この共培養実験において、線条体ニューロン上の皮質ニューロンのシナプスの投射が実際に機能することを証明することが有効であり得る。
皮質軸索束の向き: 皮質軸索束の成長は、線条体ニューロンの存在に非常に感受性がある: 皮質軸索束は、非常に明らかに線条体ニューロンの方に向いている。
シナプス成熟: シナプトフィジン標識を用いて、線条体ニューロンの付近が実際にマイクロチャネルを通過した皮質軸索のシナプスの発芽をもたらすことが証明される。皮質ニューロンシナプスの成熟は、ある場合には見ることができるがその他の場合には見ることができない。
【0045】
実施例8: 海馬ニューロンと皮質ニューロンのろ過
図13は、本発明のデバイスによって海馬ニューロンの軸索のろ過を示す写真を含む図である。
この実験は、デバイスD2によって行った。
図a及びbは、軸索ダイオードとも呼ばれる非対称マイクロチャネルによる皮質ニューロンのろ過を示す図である。上方の画像a: 皮質ニューロンをマイクロチャネルで広い側に播種する。ニューロン核は、染色された青(細胞核染料、Dapi)であり、軸索延長はグリーン(ベータ-チューブリン)である。右側チャンバの軸索による侵入を認めることができる。下の画像b: 皮質ニューロンは、マイクロチャネルの狭い側に播種され、少しの軸索だけが通過する。写真cは、細胞が広い側に播種される場合にマイクロチャネルの狭い側に出ている海馬軸索を示す図である。5つのマイクロチャネル出口が明らかである。写真dは、ニューロンが狭い側に播種される場合にマイクロチャネルの広い側に出ている海馬軸索を示す図である(5つのマイクロチャネル出口が目に見え、1つだけが占められている)。(スケールバー25μm)。
【0046】
実施例9: 本発明のデバイスにおけるニューロンネットワークの再構成及び皮質線条体ネットワーク及びコルチコ海馬ネットワークにおけるシナプスの接続の可視化。シナプス機能性の評価。
この実験をデバイスD2によって行った。
皮質線条体ネットワーク: 皮質ニューロンと線条体を、顕微解剖によって、胎生14日のスイスマウス胚から取り出す。すべての切開工程を、0.1%のグルコースで補足されるPBS緩衝液中で行う。顕微解剖された構造は、トリプシン-EDTAの溶液におけるインキュベーションによって消化され、パスツールピペットで機械的に分離される。数回すすいだ後、単細胞懸濁液を計数する。皮質ニューロンをDMEM培養液中40×106細胞/mlで再懸濁し、線条体ニューロンが15-20×106細胞/mlで懸濁される。次に、皮質ニューロンと線条体ニューロンをそれぞれの培養チャンバに、皮質ニューロンをマイクロチャネルの広い側に播種する。次に、培養リザーバを、グルタマックス、ペニシリン及びストレプトマイシン及びニューロンサプリメントB27を含有するDMEM及びN2から構成される培養液で充填する。次に播種したマイクロ流体デバイスを37℃のインキュベータに入れる。培養液を3日ごとに新しくする。
図14の写真1aは、一連の非対称のマイクロチャネルを介して相互接続される2つの個々の培養領域を含む本発明のニューロン培養のためのマイクロ流体デバイスを示し、その一部は写真1bで目に見える。
上記のように、これらのマイクロチャネルは、軸索成長を同時に一方向で可能にしつつ、細胞本体が侵入するのを防止する。
写真c及びdは、偏光再構築ニューロンネットワークの、エピフロレッセンスと組み合わせた相対照による画像である。
皮質ニューロン上の個々の軸索を視覚化するために、細胞をM-cherry-Sindbisウイルスベクターで形質導入した。
写真1aは、第2のチャンバ内で軸索を生じる皮質ニューロンを示し、写真1dは、第2のチャンバ内に播種し且つ第1のチャンバに由来する皮質ニューロンを受容する線条体ニューロンを示している。
線条体ニューロンがウイルスによって汚染されず、2つの培養チャンバの有効なコンパートメント化を表していることがわかる。
スケールバー: 50μm。
【0047】
実施例10: シナプスの成熟が増加した皮質線条体マイクロ流体共培養
図15の写真3aは、本発明のデバイスの第2のチャンバ内で3日間培養した後の線条体ニューロンと、第1のチャンバ内に播種した皮質ニューロンを示している。
皮質ニューロンと線条体内ニューロンを、顕微解剖によって、胎生14日のスイスマウス胚から取り出す。すべての切開工程は、0.1%のグルコースで補足されたPBS緩衝液中で行われる。顕微解剖された構造を、トリプシン-EDTA溶液中でインキュベーションによって消化し、パスツールピペットで機械的に分離する。数回すすいだ後、単細胞懸濁液を計数する。皮質ニューロンをDMEM培養液に40×106細胞/mlで再懸濁し、線条体ニューロンが15-20×106細胞/mlで再懸濁する。次に、皮質ニューロンと線条体内ニューロンをそれぞれの培養チャンバに播種し、皮質ニューロンをマイクロチャネルの広く側に播種する。次に、培養リザーバを、 グルタマックス、ペニシリン及びストレプトマイシン及びニューロンサプリメントB27及びN2を含有するDMEMから構成される培養液で充填する。次に、播種されたマイクロ流体デバイスを37℃のインキュベータ内に入れる。培養液を3日ごと新しくする。
共培養の10日後、ニューロンを、チューブリン(緑色)とMAP 2(赤色)のレベルで標識し、DAPI(青色)で染色した。
皮質ニューロンはマイクロチャネルを通ってこれらの軸索を送り、マイクロチャネルから出、第2の培養チャンバを通って伸び、そこで線条体ニューロンに接続される。
【0048】
写真3b及び3cは、皮質線条体ネットワークのMAP E(青色)-チューブリン(緑色)シナプス染色及び
(b) 皮質ニューロン、又は
(c) 線条体ニューロン、及び
(d) 皮質繊維と接触している線条体ニューロン
のシナプス前又はシナプス後(Vglut-1、シナプトフィジン又はPSD95、赤色)標識を示している。
写真3bにより、皮質ニューロンが軸索上のシナプトフィジン及びVglut-1の小さく分散したクラスタを示し、シナプス前終末の部分的な成熟が証明されることがわかる。写真3cは、別々に培養された線条体ニューロンを示し、シナプトフィジンとPSD95の散在クラスタが示され、線条体ニューロンの分化の中間状態のシグナルが送られている。
予想されるように、別々に培養された線条体ニューロンは、Vglut-1を表さなかった。
写真3dは、皮質繊維と線条体樹状突起の間の接触によって生じる接続によりこれらの3つのシナプスマーカーの一緒のグループ化で標識が増加することになることを示している。
染色及びシナプトフィジン、Vglut-1及びPSD95のクラスタの形成の増加は、より具体的にはそこで皮質軸索と線条体軸索が相互と接触し、皮質線条体接触部でシナプスタンパク質の再局在化が証明されることがわかる。
写真3eは、倍尺で、線条体の樹状突起(青色)に向かってシナプスマーカー(赤)を示すものである。
写真3aのためのスケールバー: 50μm及び写真3b〜3e対するスケールバー: 10μm。
【0049】
実施例11: 本発明のマイクロ流体デバイスにおける皮質-海馬ネットワークの再構成
この実験は、デバイスD2によって行った。
図16の写真aは、位相差において、皮層のみで播種されるデバイスを示し、また、写真bもまた、位相差において、左側チャンバにおいて皮層で播種され、海馬ニューロン上に伸びているデバイスを示している。写真c、d及びeは、免疫蛍光標識に対応する。写真cは、単独で播種されるだけ皮質軸索を示し、写真dは、海馬ニューロン上へ伸びている皮質軸索を示している。写真e及びfは、海馬ニューロンの樹状突起(青色の微小管関連タンパク質MAP2)に近接したシナプス発芽(赤色のシナプトフィジンの一緒のグループ化)を示す皮質軸索の(緑色のα-チューブリン)を表す。
写真fは、皮質-歯状回ネットワークを示し、皮質繊維束(チューブリン、緑色)が歯状回ニューロン(Prox-1、赤色)と接触している。画像gも同様であり、歯状回ニューロンの樹状突起(MAP2、青色)に沿ってコルチコ海馬シナプス(α-シナプトフィジン、赤)の形成が標識されている。倍率×400(a)、×630(b)。スケールバー、20μm。
【0050】
実施例12: 海馬ニューロンの樹状突起と接触時の皮質シナプス前タンパク質のトランスロケーション
図17の写真aは、単独で播種された皮質ニューロンのシナプトフィジン(赤色)と軸索チューブリン(緑色)標識に対応する。
この実験は、デバイスD2において行った。
皮質ニューロンは、顕微解剖によって、胎生14日のスイスマウス胚から取り出す。海馬ニューロンは、胎生16〜19日のマウス胚から取り出す。すべての切開工程は、0.1%のグルコースで補足したGBSS緩衝液中で行われる。顕微解剖された構造は、パパイン-EDTA溶液におけるインキュベーションによって消化し、パスツールピペットで機械的に分離される。数回すすいだ後、単細胞懸濁液を計数する。皮質ニューロンをDMEM培養液中40の×106細胞/mlで再懸濁し、海馬ニューロンが15×106細胞/mlで懸濁される。次に、皮質ニューロンと海馬ニューロンを、それぞれの培養チャンバ、皮質ニューロンをマイクロチャネルの広い側に播種する。次に、培養リザーバをグルタマックス、ペニシリン及びストレプトマイシン及びニューロンサプリメントB27及びN2を含有するDMEMから構成される培養液で充填する。次に、播種されたマイクロ流体デバイスを37℃のインキュベータ内に入れる。培養液を3日ごとに新しくする。
写真(b): 皮質求心性なしで、単独で播種した海馬ニューロン: 樹状突起(MAP2、青色)、軸索(チューブリン、緑色)及びシナプトフィジン(赤色)の標識。
画像(c、d): 皮質繊維束(緑色)及び海馬のシナプトフィジン(MAP2、青色)。
海馬ニューロン(シナプトフィジン、赤色)の樹状突起に沿ってシナプス前タンパク質の強い標識がわかる。
画像(e): 海馬樹状突起の倍率。シナプトフィジンが皮質繊維(緑色のチューブリン)と海馬ニューロン(青色のMAP2)の樹状突起の間の接合の点にあることがわかる。(a、b、c、d)スケールバーの縮尺10μm。
【0051】
実施例13:
図18は、非対称のマイクロチャネルによって分離されたマイクロ流体チャンバを示す図である。
この実験をデバイスD3において行った。
皮質ニューロンをは、左側に、線条体ニューロンを右側に播種する。生体外で7日後、皮質軸索は、線条体ニューロン(緑色のβ3-チューブリン、赤色の線条体ニューロン(MAP2))との接続を確立する。
KClによる脱分極は、線条体erkキナーゼ(赤色)のリン酸化の引き金となり、プロセスはグルタミン酸塩仲介神経刺激伝達に左右される(MK801による阻止によって評価される)。
【0052】
実施例14: 治療的関心の薬理学的分子の軸索保護効果の評価
小脳ニューロンを、本発明のマイクロ流体デバイスに播種し、細胞体レベルでアポトーシスインデューサ(1μM スタウロスポリン、STS)で処理する。これは、遠位チャンバ(Phi)における軸索変性を誘導する。カルパインタイプ(Cal-Inh)のアポトーシス阻止化合物(zVAD)又はプロテアーゼを、詳しくは軸索に適用する(細胞体に適用しない)。「軸索保護」効果を、図19の右側のグラフに数量化されている。
デバイスD1を用いる。
ニューロン(この場合小脳から)を播種し、第2のチャンバ(又はデバイスが3つのコンパートメントを有する場合には第3のチャンバ)に達するようにこれらの軸索が非対称のマイクロチャネルを通過する。
ストレス(この場合スタウロスポリン、これはプロアポトーシス剤である)をニューロンの細胞体に適用する。これは、24時間で軸索変性を誘導する。アポトーシス阻害剤(zVAD又はカルパイン(Cal-Inh))の軸索への同時適用は、この変性を防止する。従って、「軸索保護」分子の効果が評価され得る。
図19は、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントに適用されるプロアポトーシスストレスの適用によって誘導される軸索変性の開始を示す図である。これにより、軸索における破壊的シグナルの伝播が引き起こされ、次に細胞体の前に早期に縮退する。アポトーシス阻止分子(zVAD)又はカルパイン(iCal)、又はNADの適用は、この軸索変性を遅延させる。
【0053】
実施例15: 軸索の一部に対象の分子を局在適用するための3チャンバデバイス
図20の画像4aに示されるマイクロ流体デバイスは、図1C〜1Hに関してすでに記載されたものと同様であり、3つのチャンバを備えている。これは、デバイスD4である。これは、軸索の中央部に対象の分子、例えば清浄剤(トリトンX100、0.1%)を適用することを可能にし、1分間適用される。写真4bによって示されるように、これにより軸索の中央部の即時切断が引き起こされる。この実施例において、中央部で切断される皮質軸索が切断の1時間後にはまだ無傷であるが、4時間後に縮退する。これは、ワラーの変性(軸索の遠位部の変性)のモデルを構成する。この効果を保護する化合物の可能性は、詳しくはデバイスのチャンバの1つ以上に適用することによって評価され得る。図20のグラフ4は、NADの軸索保護効果を数量化するものである。
【0054】
実施例16: 皮質線条体ネットワークによるシナプス変性の現象のモデリング、及びシナプス変性に対する対象の分子の評価。NAD+は、分離を遅延させる。
図21の写真a及びbは、3チャンバマイクロ流体デバイスにおける再建皮質線条体ネットワークの皮質チャンバ、中央チャンバ及び線条体チャンバを示すものである。
ニューロンを、MAP2(青色)、β3-チューブリン(緑色)及びVglut-1(赤色)に標識した。
写真aは、線条体ニューロンに達し接続するようにマイクロチャネルと中央チャンバを通って軸索を送った皮質ニューロンを示すものである。
写真bは、軸索切断の1時間後、中央チャンバに存在する軸索がもはやないが、マイクロチャネル内部及び線条体誘発チャンバ内部の軸索が無傷のままであることが示されている。
写真cは、軸索切断又は制御された培養又はNADによる前処理される培養の1、2、4および6時間後に線条体の樹状突起(MAP2、青色)に結合する皮質シナプス前構造(Vglut1、赤色)を表すものである。
このような短時間後と軸索切断後 一回Vglut-1染色の低下を示すことが可能である。
写真dは、皮質軸索切断後MAP2-正の線条体樹状突起に結合したシナプス前皮質構造の定量化を示すものである。
写真5a及び5bに対するスケール: 50μm及び写真5c: 5μm。
この実験は、デバイスD4において行った。皮質線条体ネットワークで行われる実験は、皮質レベルのストレス(この場合軸索切断)を適用した後にシナプスの変性の現象とみなすことを可能にする(皮質シナプス前構造に特異的なVglu-1標識の消失)。実施例15は、軸索変性の現象とみなすことが可能であることを示す。実施例16の実験は、また、遠隔ストレスの引き金となった後にシナプス保護/安定化分子の役割を評価することが可能であることを示す。図20及び21は、皮質線条体ネットワークの皮質軸索の軸索切断の結果を示す図である。この軸索切断は、シグナルの伝播を引き起こし、皮質線条体接合のシナプス前コンパートメント(図21)の急速な変性、次に、皮質軸索(図20)の変性が生じる。軸索切断時の線条体コンパートメントへのNAD分子の付加は、シナプス前変性、及び切断された皮質軸索の変性を遅延させる。
【0055】
実施例18: 垂直な方向性の相互接続のシステムを有する3チャンバデバイスにおける3種類のニューロンのネットワークの再構成
図22に関してすでに記載されたものと同様のデバイスは、この実施例で用いられる。
図22及び23に示され、非対称のマイクロチャネル(長さがAとBの間で500〜100μm、BとCの間で500μm)によって分離された3つの培養チャンバ(ABC)から構成されたデバイスD5を用いる。
このデバイスの特殊性は、チャンバ(マクロチャネル)AとBが垂直であることである。チャンバAに播種したニューロン(この場合皮質から)は、軸索をチャンバBに投射し、まっすぐに続く。
それ故、これらは、チャンバBとCを接続するマイクロチャネルに垂直に向いている。これにより、チャンバCと結合するようにチャンバBをまっすぐ進むことが避けられる。皮質ニューロンを、顕微解剖によって、胎生14日のスイスマウス胚から取り出す。CAニューロンを胎生16日のマウス胚から取り出し、DGニューロンを生後5日の若い新生マウスから取り出す。すべての切開工程を、0.1%のグルコースで補足したGBSS緩衝液中で行う。顕微解剖した構造を、パパイン-EDTAの溶液中でインキュベーションによって消化し、パスツールピペットで機械的に分離する。数回すすいだ後、単細胞懸濁液を計数する。皮質ニューロンをDMEM培養液に40×106細胞/mlで再懸濁し、海馬ニューロンが15×106細胞/mlで懸濁される。次に、皮質ニューロン及びCA又はDGニューロンを、それぞれの培養チャンバに、皮質ニューロンをダイオードの広い側に播種する。次に、培養リザーバを、グルタマックス、ペニシリン及びストレプトマイシン及びニューロンサプリメントB27及びN2を含有するDMEMから構成される培養液で充填する。次に、播種したマイクロ流体デバイスを37℃のインキュベータに入れる。培養液を3日ごとに新しくする。
図23の画像は、上の近位チャンバ(青色)に播種した皮質ニューロンを示すものである。皮質軸索がマイクロチャネルを通過し、第2のチャンバ(緑色)と結合する。標的ニューロンをその他のチャンバに導入しない。皮質軸索の直線投射は、画像bでわかる。歯状回DGニューロン(核は、赤色に標識されている)を、中間チャンバ(画像fでは緑色)に導入する。緑色の皮質軸索がDGニューロンの方へ収束することがわかる。DGニューロンの遠位チャンバ((f)では赤色)の方への投射もわかる。
画像(c)は、画像(a)及び(b)と同じ原理で再構成される3-ニューロンネットワークを示すものである。皮質ニューロンは、上の近位チャンバに播種される(この画像では目に見えない)。マイクロチャネルに残る皮質軸索は第2のチャンバ内で、ボックスの上方左側、画像(d)ではズームでDGニューロンに接触する。DGニューロンは、これらの軸索を第3のチャンバへ送り、海馬ニューロンに接触する、ボックスの下の中央で画像(e)では目に見える。
5mmである画像(f)を除いて、スケールバー250μm。
【0056】
実施例19: マイクロ流体チャンバに生じる皮質ニューロンの軸索抽出物におけるタンパク質の検出
図24のスキームaは、3つの相互接続したチャンバを備えるマイクロ流体デバイスを示す図である。ニューロンは2つの横方向のチャンバに播種され、これらのそれぞれの軸索は中央チャンバに達する。マイクロ流体チャンバは、静水圧によって流体的に分離される。軸索溶解の直前に、ニューロンの細胞体を含有する細胞培養チャンバをアガロースゲルで充填する。これにより、細胞体コンパートメントの永続的な分離が確実になる。細胞溶解緩衝液は、中央コンパートメントにおいて循環し、細胞体の汚染のない軸索材料の個々の回収を可能にする。
写真bは、単一の細胞体抽出物と軸索抽出物のコロイド金染色を示す図である。
用いられるデバイスは、デバイスD6である。
マウス皮質ニューロンを2つの外チャネルに播種し、これらのニューロンの軸索が中央チャンバと結合する。これにより、中央チャンバにおける軸索材料の量を増加させることが可能になる。細胞培養時間の終わりに、個々に試料採取することが望まれるコンパートメント(軸索あるいは細胞体)に溶解緩衝液を潅流する。次に、この試料を次の分析、この場合アクリルアミドゲル電気泳動及びウェスタンブロット法による可視化に供する。
溶解緩衝液潅流工程の前に、ゲル(例えば、この場合: 低融点アガロース)が試料に望まれないコンパートメントに導入され得る。これにより、溶解緩衝液が試料採取されるコンパートメントに潅流される場合、これらのコンパートメントを「設定する」とともに完全流体の分離を確実にすることが可能になる。
写真cは、MAP2(樹枝状)及びベータ-3-チューブリン(軸索)及びアクチンに対して軸索コンパートメントと細胞体コンパートメントの双方に典型的なウエスタンブロットを示している。
【0057】
実施例20
この実施例において、図1C〜1Hに示されるように、3つのチャンバを有するニューロン培養のマイクロ流体デバイスが用いられる。
マイクロチャネルは、軸索成長を進めるとともに培養物をコンパ−トメント化する。これらの3コンパートメント神経回路を、前述したように、フォトリソグラフィ方法を用いて製造した。これらのマイクロ流体回路の構造は、各々長さ1mmの細胞体チャンバ(マクロチャネル)と軸索チャンバ(マクロチャネル)及び長さ100μmの中央チャンバを備える。チャンバは、幅10μm、厚さ3μm及び長さ450μmの一連の平行したマイクロチャネルを介して相互に接続され、図1C〜1Hのように、相互に20μmの間隔があけられる。細胞体、中央及び軸索のコンパートメントの厚さは、55μmである。2つの異なる高さのチャネルを有するマスターを製造するために、2層の感光性樹脂が用いられる。シリコンマスターは、最初に150℃で加熱され、30秒間プラズマ処理によって活性化される。感光性樹脂SU8-2002(Microchem, Newton, USA)の第1の層は、2000rpmでシリコンプレート上にスピン被覆され、次に、再キュアリングが65℃で2分間行われ、再キュアリングが95℃で4分間行われる。次に、樹脂を、マイクロチャネルが描かれている光学マスクを通して紫外線にさらす。更に再キュアリングした後、マイクロチャネル2-3μm厚をSU8現像剤(Microchem)で現像する。次に、SY355樹脂(Elga Europe、ミラノ、イタリア)の膜、55μm厚を、すでにマイクロチャネルを有するマスター上に80℃で積層する。次に、3つのコンパートメントの形状を有する第2のマスクを、既存のマイクロチャネル上に整合させ、紫外線にさらす。次に、全体を120℃で5分間キュアし、第2の層をBMR現像剤(Elga Europe)で現像する。最後に、全体をイソプロパノールですすぐ。このようにして、シリコンウエハー上にある、樹脂でできたレリーフのマイクロチャネル及びコンパートメントからなるマスターが得られる。各マスターは、チャンバとマイクロチャネルを備える4つの同一のマイクロ流体回路を有する。その後、エラストマー、即ち、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が、これらのマスターを用いて成形される。架橋されていないPDMS(Dow Corning、ミッドランド、MI)は、マスター上に注入され、次に70℃で3時間炉内で架橋される。成形されたPDMSの層、4-5mm厚が、キュアリング後に得られる。その後、バイオプシパンチを用いてこのPDMS層に4mmの穴をあけ、培養液リザーバを構成する。このようにして形成された穴は、マスターを用いてPDMSにおいて成形されたリザーバよりわずかに広い; リザーバは、完全に穴を取り囲み、回路の種々のコンパートメントに直接接続される。その後、各PDMS成形物を、空気プラズマ発生器(Diener Electronic、Nagold、ドイツ)による表面(PDMSの成形面とカバーグラスの一方の面)の活性化によってカバーグラス(Menzel Glass、ブラウンシュヴァイク、ドイツ)に不可逆的に取り付け、続いて2つの活性化された表面を手で接触させる。このようにして形成された回路を、紫外線にさらすことによって滅菌し、回路の内側面が親水性ままであるように10μg/mlのポリ-D-リシン(Sigma、セイントルイス、USA)の溶液で一晩処理する。
【0058】
ニューロン培養及び処理
他ですでに記載された、例えばEur J Neurosci 2001 Jun; 13(11): 2037-46 William S et alのように、14日目のマウス胚の皮質を切開し分離する。ニューロンを、回路の細胞体チャンバ(コンパートメントとも呼ばれる)に105細胞/cm2の密度で播種される。この方法で、4×104のニューロンを細胞体チャンバに播種する。培養液は、10%のFCS(ウシ胎仔血清; PAA Laboratories、Pasching、ドイツ)及び2%のB27(Invitrogen)で補足した、4.5g/lのD‐グルコース及びピルベート(Invitrogen、カールズバッド、USA)を含有するDMEMからなる。培養液を実験の開始まで3日ごとに取替え、培養物を37℃及び5% CO2のインキュベータにおいて保存する。実験は、生体外で培養の7〜8日後行われる。カルパイン阻害剤N-アセチル-Leu-Leu-Nle-CHO(ALLN; Calbiochem)、一般カスパーゼ阻害剤Z-V-A-D-フルオロメチルケトン(z-VAD; R1D Systems、ミネアポリス、USA)及びβ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水和物(βNAD; Sigma)を、実験の始めに培養液に導入する。
【0059】
軸索切断手順
軸索切断を行うために、0.1%のサポニンを含有する15μlの培養液の流れを、中央チャンバ内に2分間生成する。マイクロチャネルに入る清浄剤の流れを避けるために、過剰圧力を実験の全体にわたって細胞体チャンバと軸索チャンバ内に維持する。2分間の流した後、サポニンを含有する培養液を除去し、中央マクロチャネルを培養液で5分間すすぐ。次に新たな培養液をこのチャネルに添加する。
【0060】
流れ実験及び拡散実験
流れ及び拡散を測定する一連の定性実験を、(i)軸索切断が中央チャンバ内に局在すること及び(ii)長期の処理がこれらが標的にされるコンパートメントに制限されたままであることを証明するために行った。軸索切断手順をシミュレートするために、直径が1μmの蛍光マイクロスフェア(Invitrogen)の流れをPBSとサポニンの混合物中の懸濁液で生成し、且つこれらのビーズの流れをビデオ顕微鏡観察によって追うことによって、実験を行った。更にまた、軸索切断の間と長期の処理の間、粒子の拡散の作用をシミュレートするために、Alexa Fluor 555(IgG; 1:100、Invitrogen)に結合した抗ウサギ免疫グロブリンG抗体を拡散トレーサーとして用いた。回路における蛍光強度と標識の濃度の間の関係は、既知の濃度で標識を含有する溶液で予備充填されたマイクロ流体コンパートメントの画像を捕捉することによって確立した。直線関係(R2>0.99)は、蛍光シグナルの強度とトレーサーの濃度の間に示された。各実験において、3つの回路を分析し、(i)中央コンパートメントから開始し軸索切断に似ている実験のための細胞体コンパートメントへ移動し、(ii)軸索コンパートメントから、中央コンパートメントへ、次に長期処理に似ている実験のための細胞体コンパートメントへ移動する蛍光標識の拡散を数量化するために、これらの回路の各々で、各コンパートメントの3つの異なる領域の画像を各時間に撮った。非特異的なシグナルを、DAPIフィルタによる獲得を行うことによって得、照明強度の局所変化によるシグナルの強度の変動を排除するためにAlexa Fluor 555シグナルから差し引いた。軸索切断を、標識の100%溶液を清浄剤溶液に添加するとともに実在の軸索切断のように同一の容積の溶液をリザーバ内に配置することによって模倣した。図25の画像を、それぞれ、標識を含有する清浄剤溶液を中央コンパートメントのリザーバに添加した2、5及び10分後に撮った。標識を含有する溶液を軸索チャンバに導入し、すべてのリザーバに同一の容積の液体を入れることによって回路内の圧力の平衡状態を維持することによって、長時間の分子の拡散を模倣する実験を行った。標識を軸索チャンバに添加した1、2、4及び8時間後に画像を撮った。
【0061】
免疫細胞化学
所定の培養時間後(必要により、軸索切断実験が行われる時点でもよい)、免疫細胞化学による分析を受けるように、ニューロン培養物を4%パラホルムアルデヒド溶液(Sigma)に固定する。細胞骨格タンパク質を標識する抗MAP2抗体(ウサギIgG、1:3000; Chemicon、Temecula、USA)、及び抗β-III-チューブリンモノクローナル抗体(マウスIgG、1:3000; Sigma)を有する免疫蛍光法によって、回路を標識する。核を標識するHoechst 33342(1:25000; Sigma)で回路を蛍光標識する。個別実験において、星状膠細胞を標識することを可能にする抗グリア線維性酸性タンパク質抗体(GFAP、ウサギIgG、1:5000; DakoCytomation、Glostrup、デンマーク)による免疫蛍光法によって回路を標識した。培養の一部を、固定と抽出に供した。この手順は、同時に微小管を固定しつつ、細胞質における遊離チューブリンを排除することを可能にする。これらの培養物を、微小管とアクチン細胞骨格を示すように、それぞれ、フルオロフォアFITC(Sigma)に結合した抗-a-チューブリンモノクローナル抗体による免疫蛍光法によって標識し、Alexa Fluor555(Invitrogen)に結合したファロイジンで標識した。CoolSnap HQ2カメラ(Roper Scientific、Ottobrunn、ドイツ)を装備した倒立エピフルオレセンスマイクロスコープ(Zeiss、Goettingen、ドイツ)を用いて、また、マイクロマネージャ取得ソフトウェアを用いて、画像を得た(http://www.micro-manager.org)。
【0062】
定量化
断片化軸索あるいは無傷の軸索のチューブリン標識のタイプを比較することによって軸索変性が推定される。皮質ニューロンの良好な培養内生存は、最初の播種密度に左右され、これは高くなければならない。その結果として、多数の皮質軸索は、中央チャンバと遠位チャンバを浸潤する。更に、皮質軸索が多くの枝分れを有するので、軸索チャンバにおける軸索チューブリンの免疫組織化学的分析は複雑であり、軸索は個別化が難しい。中央チャンバに入り且つ遠位軸索チャンバ内で現れる軸索の割合を、中央チャンバと遠位軸索チャンバ内で捕捉される同一の表面積のb3-チューブリン標識の全体の蛍光強度の比を算出することによって推定した。軸索断片化指数を測定するために、自動画像解析法が使用し得る。3-チューブリンについて標識した生存可能な軸索あるいは断片化軸索の画像を、落射蛍光顕微法によって捕捉する。断片化軸索は、点状の分離したチューブリン標識を示す; 一方では、無傷の軸索は、線状標識を示す。Image Jソフトウェアによって開発されたマクロ・コントロールを用い、順次Otsuセグメンテーションアルゴリズム(IEEE Trans Systems, Man and Cyber Metics 1979; 9:92-69を参照のこと)と粒子分析アルゴリズムを用いて、円形度指数≧0.9を示す軸索セグメントは断片化軸索セグメントであるとみなされる。各画像について、この種の標識の全表面積(円形度≧0.9)を求め、各チューブリン標識の全表面積(標識のトポロジーとは独立して)に関係する。この比率は、「断片化指数」と呼ばれ、研究される軸索の断片化の平均状態の指標である。図30は、断片化指数と断片化軸索の%の間の関係を示し、0.005、0.083及び0.157は、それぞれ、<5%、50%及び>95%の断片化軸索に対応する。ニューロン細胞体の生存は、i)DAPI標識によって示される核クロマチン凝縮の分析及びii)MAP2標識後の樹枝状形態の分析によって評価される。1つの状態に対して少なくとも5つの画像を分析し(各状態は3つずつある)、実験は独立して少なくとも3回行った。
【0063】
統計的分析
データは、平均+/-平均からの標準偏差(sem)の形で表される。Nは、個々の回路の数を表す。統計的分析は、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてテューキー検定によって行われる。
【0064】
結果
軸索切断コンパートメントにおける流体の流れの制御
デバイスの中央チャンバにおける流体の流れを確認するために、清浄剤希釈液中の蛍光ビーズの懸濁液の流れに関係する実験が行われ得る。コンパートメントにおける制御流れを得るために、異なる容積の液体を対応するチャンバに接続されたリザーバに入れることによって圧力勾配が生じる。従って、ビデオ顕微鏡法によって、入口と出口のリザーバがそれぞれ15μlと0μlで充填される場合、中央チャネルにおけるビーズの懸濁液の流れを追うことは可能であり、2つの接続されたチャンバはこれらのリザーバの各々において40μlのPBSによって加圧される(すべてのリザーバは同じ寸法を有する)。最初の180秒間に得られる画像は、清浄剤溶液が中央チャンバに隣接するマイクロチャネルに入らないことを示す。中央チャネルの底部分(マクロチャネルとも呼ばれる)において、ビードがチャンバの中央部分において拘束されるので、高圧チャンバから中央チャンバまでの流れの存在が示される; それ故、中央チャネルにおける清浄剤懸濁液に集中している(図25a)。同一の流体状態を用いて、2つの遠位チャンバをビーズの懸濁液で充填することからなるが、PBSの流れが中央チャンバにおいて生成される対向する実験は、これらの状態の下で、遠位チャンバから中央チャンバへの流れがマイクロチャネルにおけるビーズの動きによって具体化され得ることを示してい(図25b及び25c)。更に、この流れ構成において生じる勾配のパラメーターをより正確に求めるために、また、軸索切断実験をシミュレートするために、蛍光免疫グロブリンの希釈液をトレーサーとして用いた。蛍光Igの拡散は、中央チャンバからマイクロチャネルに検出され得ない。中央チャンバの底部分において、2分間の流れの後、チャンバ内のトレーサーの分散は(チャンバの断面に沿って)、ガウス分布に従って確立され、端でゼロ値に達するように、そのピークはチャンバの中心にある。これは、蛍光免疫グロブリンが2つの高圧遠位チャンバに由来する流れによって中央チャネル内に充分制限されていることを示している(図25d及び以下の表1)。2つの遠位チャンバにトレーサーを添加することによって逆実験を行い、遠位チャンバから中央チャンバへの流れが示された。
【0065】
表1
軸索切断の間、トレーサーの拡散に関する実験。
トレーサーの濃度は、蛍光シグナル強度(R2>0.99)に直線的に関係する。値は、最大濃度%として示され、3つの独立した実験の平均を示している。
【0066】
【0067】
長時間のコンパートメント化の間、一方のチャンバからもう一方までトレーサーの拡散を調べるために追加の実験を行った。同一容積の液体をすべてのリザーバに導入し(流れは生じない)、遠位チャンバの一方に蛍光トレーサーを添加した。トレーサー添加の2時間後に、トレーサーの約15%が中央チャンバに見られ、対向する遠位チャンバに何も見られないので、中央チャンバが2つの遠位チャンバの完全なコンパートメント化を与える「緩衝液」として役立つことが示され、この構成において中央チャンバは「サイホン」の役割を果たしている。値を表2に示す。
【0068】
表2
長時間トレーサー拡散実験。
トレーサーの濃度は、蛍光シグナル強度(R2>0.99)に直線的に関係する。値は、最大濃度%として示され、3つの独立した実験の平均を示している。
【0069】
【0070】
全体として、実施例20の主題であるこれらの実験は、i)このチャンバから2つの隣接の遠位チャンバまで拡散せずに中央チャンバにおいて制御され制限された流れを行うことが可能であり; ii)第2の遠位チャンバの方へ遠位チャンバに導入した分子の長時間の拡散が中央チャンバの存在によって完全に消滅し、それによって、軸索チャンバから細胞体チャンバまで(又はその逆)完全な流体分離があること確実にすることを可能にすることを示している。
【0071】
皮質ニューロンの分化
胎生期マウスの皮質に由来するニューロンは、「細胞体」チャンバにおいて比較的高密度で播種される。播種されたニューロンの約3〜5%(マイクロチャネルゾーンの近くに)の軸索が、中央チャンバと結合する167のマイクロチャネルに侵入する。8日間の培養後の播種された細胞の表現型の検査は、培養物が90〜90%のニューロン(MAP2ポジティブ)、5〜8%の星状膠細胞(GFAPポジティブ)及び小膠細胞(1%)及び線維芽細胞(1%)細胞から構成されることを示す。行われる播種状態の下で、約10〜15の軸索がマイクロチャネルに入る。軸索チューブリンの免疫細胞化学による分析から、中央チャンバ(幅が100μm)に侵入した38.8% +/-3.4%(n=11)の軸索が培養の8日後に第2の遠位チャンバと効果的に結合することが示される(割合は中央チャンバの幅が50μmである場合約60%である)。10日間の培養後、中央チャンバを通過し且つ第2の遠位チャンバと結合した皮質軸索の平均長さは、1.5〜2mmである(図26)。軸索は、マイクロチャネル内で束に制限され、マイクロチャネルを出る際に束を切り離す傾向を有する(図26a)。それ故、軸索の中央部分には処理を局所的に適用するためにデバイスの中央コンパートメントが使用し得る。
【0072】
皮質ニューロンの軸索切断は、成長円錐癒着及び「ワラーの変性」現象を誘導する。
皮質ニューロンの軸索切断は、0.1%のサポニンを含有する培養液の流れを、中央コンパートメントにおいて2分間(段落1に記載される条件下で)生成することによって行われる。清浄剤の流れは中央コンパートメント(図26b)に含有する軸索セグメントの即時破壊を引き起こすので、ニューロン細胞体から約500〜600μmに位置する切断が引き起こされる。軸索切断は軸索の遠位部分の進行性変性を引き起こすので、軸索セグメントの膨張の早期形成に続いて、微小管ネットワーク(図27a)の断片化が得られる。軸索断片化は、軸索切断後各時間で数量化し、断片化指数が4時間後の未処理対照と著しく異なることを示している(「擬似」対照は、軸索がサポニンで処理したのと同じ流れ条件(サポニンを省略する)を受けた)。断片化は、すべての分析時間の間に著しく増加し、8時間後、すべての軸索の全破壊に対応して、プラトーに達する(図27b)。
皮質軸索の遠位端の成長円錐の存在は正しい軸索成長を示し、ニューロンが標的を探索する。チューブリンが少ない成長円錐は、アクチンフィラメントが糸状仮足と膜状仮足を形成する特徴的動的形態を示す(J. Neurobiol. 2004; 58(1): 92-102を参照のこと)。対照ニューロンにおいて、軸索切断1時間後、非常に多くの成長円錐がアクチン標識によって具体化され得るが、微小管ネットワークはまだ無傷であり、切断軸索はこれらの先端で崩壊した成長円錐を示す(図28a)。これは、破壊シグナルが軸索切断後急速に軸索の遠位端に伝播することを示している。
生体内で、末梢ニューロンの軸索切断は、非同期現象であるとして示された。所定の時間で、切断軸索は無傷の構造から完全な断片化にわたる形態を示し、変性の順行性伝播が推測された。我々の実験モデルにおいて、軸索切断の初期相において(<4時間)、無傷の、膨張した又は断片的な軸索を認めることができ、わずかな非同期現象の引き金となることを示している(図28b)。6時間後の切断軸索の特有のセグメントの分析から、同一の軸索が近位領域(マイクロチャネルの近く)に断片化、中央部分に膨潤、及び完全な遠位部分に無傷セグメントの徴候を示し得ることがわかる。これは、軸索の先端の方に変性の波の順行性伝播の現象を示している(図28c)。
【0073】
遠位変性は、bNADによって減速されるが、カスパーゼ阻止あるいはカルパイン阻止によって減速されない
カルパインの早期活性化は、末梢神経系ニューロンの軸索切断後に記載されている。一方では、軸索切断ニューロンの細胞体において活性化されるが、カスパーゼの阻止は切断されたニューロンの変性を妨げない。皮質ニューロンの軸索切断によって誘導される軸索変性におけるカルパイン及びカスパーゼの関係は、以下の通り評価され得る。軸索切断時に、軸索の遠位セグメントに、カルパイン阻害剤である50μMのALLN、あるいは一般カスパーゼ阻害剤である50μMのz-VADを適用すると、軸索断片化の発生も遅延させないし、そのパラメーターも変化させない(図29)。軸索切断の24時間前にこれらの分子が適用される場合、保護効果の欠如が認められる(図示されない)。一方では、ニューロンが、軸索切断の24時間前に、5mMのbNAD分子で前処理される場合、軸索変性の徴候は遅延される。すべての対照軸索が断片化されるが、軸索切断の8時間後に、切断軸索は変性の徴候を示さない。この保護は、軸索切断の24時間後に消失する(図29)。
図31は、ヘキスト染料で標識を示す細胞体の数を細胞体の合計数で割ることによって得られる、細胞体死の割合を示す図である。対照と比較して、処理の有無にかかわらず、軸索切断の24時間後に、細胞体死の著しい変化は認められなかった。
上の実施例20は、必要により一定幅のマイクロチャネルを有してもよい相互接続システムにおいて行われ得る。
従って、本発明は、また、他の態様によれば、マイクロチャネルが必要により一定の幅を有してもよい、例えば、図1B又は1C〜1Hに示されるように、少なくとも3つのチャンバを備えるマイクロ流体デバイスを用いる軸索切断の方法であって、軸索切断を行うために、マイクロチャネルに伸びる少なくとも1つの軸索に作用するように化合物が中央チャンバに注入される、前記方法に関する。遠位チャンバは、遠位チャンバに相対して過剰圧力であり得る。
本発明は、記載される実施例に限定されない。
語句「1つを備える」は、「少なくとも1つを備える」と同義であると理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養のためのデバイス、特に神経細胞の細胞培養のためのデバイスであって、
- 第1の細胞培養物で播種されることを意図した第1のマイクロ流体チャンバ、及び少なくとも第2のマイクロ流体チャンバを形成する支持体、
- 第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバを接続し且つ細胞延長、特に軸索を、一方のチャンバからもう一方のチャンバまで伸ばすことを可能にする流体相互接続システム(3)、
を備え、ここで、相互接続システムは、細胞延長の少なくとも1つの第1のタイプの進行を細胞延長の少なくとも1つの第2のタイプと比較して促進させるように作られ、前記細胞延長の第1のタイプと第2のタイプが、これらが由来するマイクロ流体チャンバによって、あるいはこれらが延長である細胞型によって異なる、前記デバイス。
【請求項2】
流体相互接続システム(3)と連通している第3のマイクロ流体チャンバ(4c)を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
第2のチャンバと他のチャンバの間に第2の流体相互接続システム(3')を備える、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
第2の流体相互接続システム(3')が、第1の流体相互接続システム(3)と整合せずに位置する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
デバイスが同一支持体上の他の同様のデバイスと一緒にグループ化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
流体的に自律している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
相互接続システムが複数のマイクロチャネル(10)又は複数のミクロ構造を備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
相互接続システムが、少なくとも1つのチャネル又は非対称を有するミクロ構造の1つのネットワークを前記チャネルあるいは第1のマイクロ流体チャンバに接続される前記ネットワークの側と、前記チャネルあるいは第2のマイクロ流体チャンバに接続される前記ネットワークの側の間に備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
相互接続システムが、一方のチャンバからもう一方のチャンバまで進行する際に少なくとも1つの寸法が減少する少なくとも1つのチャネル(10)を備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの寸法がチャネルの幅を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
相互接続システムが、上から見た場合に少なくとも1つの部分が台形状を有するチャネル(10)を備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記寸法が、前記チャネルが第1のマイクロ流体チャンバにあるいは第2のマイクロ流体チャンバに開放している部位で、5μm未満である、請求項9〜11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
相互接続システムが非直線チャネルを備える、請求項1〜12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
相互接続システムが、チャンバの一方からもう一方まで進行する場合、狭細と拡張の連続を含むチャネルを備える、請求項1〜13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記チャネルが相互接続又は枝分れを有する、請求項9〜14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
ミクロ構造のネットワークが、直線での軸索の伝播を防止する障壁(70)を備える、請求項1〜48のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
障壁が、第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの間の連続通路に、前記通路の曲率半径が20μm未満、好ましくは10μm未満、より好ましくは7μm未満、5μm未満、又は3μm未満もの少なくとも一部を受けるように配置される、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
相互接続システムが、表面が細胞の少なくとも1つのタイプ又は細胞挙動の1つのタイプに親和性を有するように化学的に又は生化学的に処理された少なくとも一部を備える、請求項1〜17のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
化学処理が、フィブロネクチン、カドヘリン、コラーゲン、ラミニン、スクシンイミド基を含む分子、N-スルホスクシニミジル6-[(4'-アジド-2'-ニトロフェニル)アミノ]ヘキサノエート、及び光活性化することができる反応性化学分子より選ばれる分子の少なくとも1つのタイプにさらすことを含む、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
相互接続システムが、厚さが第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの厚さ未満、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μmのマイクロチャネル又はミクロ構造を備える、請求項1〜19のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
単細胞の細胞体だけを含有するように釣り合いのとれた、少なくとも1つの単細胞マイクロ流体チャンバ(80)を備え、この単細胞マイクロ流体チャンバが相互接続システム及び第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの一方と連通している、請求項1〜20のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記単細胞マイクロ流体チャンバの厚さが第1のマイクロ流体チャンバ及び第2のマイクロ流体チャンバより小さく、前記相互接続システムより大きい、請求項21に記載のデバイス
【請求項23】
容積が100〜10 000μm3、好ましくは500〜5000μm3であり且つ相互接続システム及び第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバと流体的に連通している少なくとも1つのマイクロ流体チャンバを備える、請求項1〜16のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項24】
相互接続システムが、分子とイオンの第二コンパートメントとの交換を可能にするが、前記第二コンパートメントとの、細胞の交換を可能にしない孔壁によってその表面の少なくとも1つの部分に区切られる、請求項1〜23のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項25】
チャンバの一方に存在するニューロンの軸索が、相互接続システムを通り抜ける、請求項1〜24のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項26】
細胞培養のためのデバイスであって、
- 第1のマイクロチャネルと第2のマクロチャネル、
- 第1のマクロチャネルに第1の端部で接続されるマイクロチャネル(10)、
- 第2のマクロチャネルやマイクロチャネルの第2の端部と連通している単細胞マイクロ流体チャンバ(80)、
を備え、第1のマクロチャネルと第2マクロチャネルとがマイクロチャネル及び単細胞マイクロ流体チャンバによって相互に連通し、単細胞マイクロ流体チャンバが単細胞の細胞体だけを受容することができるように釣り合いのとれている、前記デバイス。
【請求項27】
細胞培養のためのデバイスであって、少なくとも2つの相互接続システムを備え、その少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが請求項1〜26のいずれか1項に記載のように作られる、前記デバイス。
【請求項28】
細胞培養のためのデバイスであって、少なくとも2つの相互接続システムが連続して接続した少なくとも3つのマイクロ流体チャンバを備え、前記相互接続システムの厚さが前記3つのマイクロ流体チャンバの厚さ未満であり、且つ前記マイクロ流体チャンバの少なくとも一方がもう一方のマイクロ流体チャンバの少なくとも1つの厚さと前記相互接続システムの厚さの間の厚さを有する、前記デバイス。
【請求項29】
細胞培養のための、特に神経細胞の細胞培養のための方法であって、請求項1〜28のいずれか1項に記載デバイスの少なくとも1つのマイクロ流体チャンバが神経細胞で播種される、前記方法。
【請求項30】
少なくとも2つのマイクロ流体チャンバが神経細胞で播種され、チャンバの一方の細胞の軸索が、相互接続システムの形のために、もう一方のチャンバの細胞よりもう一方のチャンバの方に生じることのほうが難しくない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つのマイクロ流体チャンバが少なくとも2つの細胞型を有する細胞培養物で播種され、前記細胞型の少なくとも1つの細胞の軸索が、少なくとも第2の細胞型の細胞の軸索より相互接続システムにおいて生じることのほうが難しくない、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
細胞コンパートメントに存在するバイオマーカーを調べる方法であって、少なくとも、
- 請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法に従って細胞を培養する工程、
- 前記細胞の少なくとも1つの前記細胞コンパートメントの少なくとも1つに前記バイオマーカーのプローブを存在させる工程、
- 前記プローブによって前記バイオマーカーの存在を明らかにし更に/又は数量化する工程、
を含む、前記方法。
【請求項33】
細胞コンパートメントに存在する少なくとも1つのバイオマーカーを調べる方法であって、少なくとも、
- 請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法の1つに従って細胞を培養する工程、
- マイクロ流体チャンバの少なくとも一方に存在する上清を集め、更に1つ以上のバイオマーカーをその含量で調べるか又は数量化する工程、
を含む、前記方法。
【請求項34】
前記バイオマーカーの調査又は数量化が、少なくともヌクレオチド配列に関する含量の定量、又はポリペチドに関する含量の定量、又は代謝産物、前記細胞コンパートメント又は前記上清に関する含量の定量を含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
ある種の細胞の物質への反応を決定する方法であって、
a) 請求項1〜28のいずれか1項に記載のデバイスの1つ、又は請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法を用いて細胞を培養する工程、次に
b) 前記細胞の細胞コンパートメントの少なくとも1つをデバイスのマイクロ流体チャンバの少なく1つに前記物質を存在させる工程、
を含む、前記方法。
【請求項36】
c)他の細胞コンパートメント上で又はデバイスの他のマイクロ流体チャンバにおいて工程b)で行った刺激の作用を調べる工程をも含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ディファレンシャルスクリーニングを行うために、少なくとも2つの異なるデバイスの間に、少なくとも1つの細胞型、緩衝液の1つのタイプ、物質の1つのタイプ、又は相互接続システムの1つのタイプの間の差を含む、同一のマイクロ流体支持体上に存在する、請求項1〜28のいずれか1項に記載のいくつかのデバイスにより同時に適用される、請求項29〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
神経毒物質をスクリーニングするか、又は神経保護剤をスクリーニングする方法であって、請求項1〜23のいずれか1項に記載の少なくとも1つのデバイス、又は請求項29〜37のいずれか1項に記載の方法の1つを含む、前記方法。
【請求項39】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の細胞培養のためのデバイスであって、前記デバイスに存在する少なくとも1つの細胞において電気生理学的プロセスを調べる測定機器に接続された、少なくとも1つの微小電極、好ましくは微小電極のネットワークを更に備える、前記デバイス。
【請求項40】
細胞プロセス、例えば、細胞変性、シナプス伝達の修飾、シナプスの退縮、軸索変性、軸索内輸送パラメーターの修飾、細胞体樹状突起変性に対する物質の活性を生体外で評価する方法であって、細胞要素が、請求項1〜28のいずれか1項に記載のデバイスにおいて前記物質の作用に供される、前記方法。
【請求項41】
細胞要素が、前記物質と接触する前に、ストレスにかけられる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ストレスが、軸索切断、毒性化合物、例えば、第1のチャンバ内で培養されるニューロンの細胞体樹状突起コンパートメント又は正中軸索コンパートメント、第2のチャンバ内に含有する培養ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおいて、例えば、神経毒化合物、シナプス毒性化合物又は軸索毒性化合物、細胞培養液に添加された、あるいは遺伝的に移植された正常タンパク質、突然変異タンパク質又はキメラタンパク質を加えること、又は物理化学的状態あるいは物理的状態、例えば、温度、圧力又は電磁放射線の変性によって生じる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
生体外軸索切断方法であって、請求項2記載のデバイスの第1のチャンバを、軸索が第2のチャンバの方へ相互接続システムのマイクロチャネルを通って伸びることを可能にするように第1のニューロン培養物で播種し、次に、軸索の溶解を引き起こすように第3のチャンバ(4c)に物質を導入する、前記方法。
【請求項44】
活性であると推定される物質をスクリーニングする方法であって、
a) 請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法に従って培養した細胞を含む、請求項1〜28のいずれか1項に記載のデバイスを用意する工程、
b) 前記培養した細胞の少なくとも1つの細胞を活性であると推定される少なくとも1つの物質と接触させる工程、
c) 前記細胞について、前記細胞のバイオマーカーの有無、又は発現あるいは活性の程度を決定する工程、及び
d) 前記バイオマーカの決定された有無、又は発現あるいは活性の程度を対照値、対照値の範囲又は対照決定と比較する工程
を含む、前記スクリーニングする方法。
【請求項45】
前記培養した細胞が、細胞、特にニューロンの少なくとも2つの異なったタイプを含み、1つの細胞型がデバイスの第1のチャンバと第2のチャンバとの各々に割り当てられる、請求項44に記載のスクリーニングする方法。
【請求項46】
請求項44又は45に記載の活性であると推定される物質をスクリーニングする方法であって、スクリーニングすべき前記物質が、第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバに及び/又は流体相互接続システムに導入される、前記スクリーニングする方法。
【請求項47】
前記細胞がニューロンである、請求項44〜46のいずれか1項に記載のスクリーニングする方法。
【請求項48】
工程b)の前に追加の工程a')、又はステップbの次に追加の工程b')を含み、工程b)の少なくとも1つの細胞が細胞変性プロセスを誘導する少なくとも一つの刺激に供される、請求項44〜47のいずれか1項に記載のスクリーニングする方法。
【請求項49】
前記少なくとも一つの培養した細胞がニューロンであり、細胞変性プロセスを誘導する前記刺激が、神経毒ストレス、遺伝子突然変異、ウイルス感染、軸索切断、神経毒分子、シナプス毒性分子又は軸索毒性分子より選ばれる毒性分子、細胞培養液に導入されるか又は培養した細胞に遺伝的に移植された正常タンパク質、突然変異タンパク質又はキメラタンパク質、感染物質、特に神経向性薬、又は物理化学的状態の修飾より選ばれ、特に、圧力、温度、pH、オスモル濃度又は電磁波、特にマイクロ波タイプ又は電波タイプより選ばれる、請求項48に記載のスクリーニングする方法。
【請求項50】
前記細胞変性プロセスが、細胞コンパートメント、特に、細胞体、軸索、樹状突起又はシナプスより選ばれたものに特異的である、請求項49に記載のスクリーニングする方法。
【請求項51】
スクリーニングすべき前記物質が、前記細胞変性を防止、低下、遅延又は処理するように推定される、請求項49又は50に記載のスクリーニングする方法。
【請求項52】
前記バイオマーカーが、前記細胞変性のマーカーである、請求項47〜51のいずれか1項に記載のスクリーニングする方法。
【請求項53】
a) 細胞ネットワークを生成するように請求項1〜28のいずれか1項に記載のデバイスを1つ以上の細胞型で播種する工程、
b) ストレスを発生させる、場合により工程a)の前に行われてもよい工程、
c) 試験化合物を適用する工程、
d) 試験した化合物の作用を決定する工程、
を含む、スクリーニングする方法。
【請求項1】
細胞培養のためのデバイス、特に神経細胞の細胞培養のためのデバイスであって、
- 第1の細胞培養物で播種されることを意図した第1のマイクロ流体チャンバ、及び少なくとも第2のマイクロ流体チャンバを形成する支持体、
- 第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバを接続し且つ細胞延長、特に軸索を、一方のチャンバからもう一方のチャンバまで伸ばすことを可能にする流体相互接続システム(3)、
を備え、ここで、相互接続システムは、細胞延長の少なくとも1つの第1のタイプの進行を細胞延長の少なくとも1つの第2のタイプと比較して促進させるように作られ、前記細胞延長の第1のタイプと第2のタイプが、これらが由来するマイクロ流体チャンバによって、あるいはこれらが延長である細胞型によって異なる、前記デバイス。
【請求項2】
流体相互接続システム(3)と連通している第3のマイクロ流体チャンバ(4c)を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
第2のチャンバと他のチャンバの間に第2の流体相互接続システム(3')を備える、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
第2の流体相互接続システム(3')が、第1の流体相互接続システム(3)と整合せずに位置する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
デバイスが同一支持体上の他の同様のデバイスと一緒にグループ化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
流体的に自律している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
相互接続システムが複数のマイクロチャネル(10)又は複数のミクロ構造を備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
相互接続システムが、少なくとも1つのチャネル又は非対称を有するミクロ構造の1つのネットワークを前記チャネルあるいは第1のマイクロ流体チャンバに接続される前記ネットワークの側と、前記チャネルあるいは第2のマイクロ流体チャンバに接続される前記ネットワークの側の間に備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
相互接続システムが、一方のチャンバからもう一方のチャンバまで進行する際に少なくとも1つの寸法が減少する少なくとも1つのチャネル(10)を備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの寸法がチャネルの幅を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
相互接続システムが、上から見た場合に少なくとも1つの部分が台形状を有するチャネル(10)を備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記寸法が、前記チャネルが第1のマイクロ流体チャンバにあるいは第2のマイクロ流体チャンバに開放している部位で、5μm未満である、請求項9〜11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
相互接続システムが非直線チャネルを備える、請求項1〜12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
相互接続システムが、チャンバの一方からもう一方まで進行する場合、狭細と拡張の連続を含むチャネルを備える、請求項1〜13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記チャネルが相互接続又は枝分れを有する、請求項9〜14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
ミクロ構造のネットワークが、直線での軸索の伝播を防止する障壁(70)を備える、請求項1〜48のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
障壁が、第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの間の連続通路に、前記通路の曲率半径が20μm未満、好ましくは10μm未満、より好ましくは7μm未満、5μm未満、又は3μm未満もの少なくとも一部を受けるように配置される、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
相互接続システムが、表面が細胞の少なくとも1つのタイプ又は細胞挙動の1つのタイプに親和性を有するように化学的に又は生化学的に処理された少なくとも一部を備える、請求項1〜17のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
化学処理が、フィブロネクチン、カドヘリン、コラーゲン、ラミニン、スクシンイミド基を含む分子、N-スルホスクシニミジル6-[(4'-アジド-2'-ニトロフェニル)アミノ]ヘキサノエート、及び光活性化することができる反応性化学分子より選ばれる分子の少なくとも1つのタイプにさらすことを含む、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
相互接続システムが、厚さが第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの厚さ未満、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μmのマイクロチャネル又はミクロ構造を備える、請求項1〜19のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
単細胞の細胞体だけを含有するように釣り合いのとれた、少なくとも1つの単細胞マイクロ流体チャンバ(80)を備え、この単細胞マイクロ流体チャンバが相互接続システム及び第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバの一方と連通している、請求項1〜20のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記単細胞マイクロ流体チャンバの厚さが第1のマイクロ流体チャンバ及び第2のマイクロ流体チャンバより小さく、前記相互接続システムより大きい、請求項21に記載のデバイス
【請求項23】
容積が100〜10 000μm3、好ましくは500〜5000μm3であり且つ相互接続システム及び第1のマイクロ流体チャンバと第2のマイクロ流体チャンバと流体的に連通している少なくとも1つのマイクロ流体チャンバを備える、請求項1〜16のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項24】
相互接続システムが、分子とイオンの第二コンパートメントとの交換を可能にするが、前記第二コンパートメントとの、細胞の交換を可能にしない孔壁によってその表面の少なくとも1つの部分に区切られる、請求項1〜23のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項25】
チャンバの一方に存在するニューロンの軸索が、相互接続システムを通り抜ける、請求項1〜24のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項26】
細胞培養のためのデバイスであって、
- 第1のマイクロチャネルと第2のマクロチャネル、
- 第1のマクロチャネルに第1の端部で接続されるマイクロチャネル(10)、
- 第2のマクロチャネルやマイクロチャネルの第2の端部と連通している単細胞マイクロ流体チャンバ(80)、
を備え、第1のマクロチャネルと第2マクロチャネルとがマイクロチャネル及び単細胞マイクロ流体チャンバによって相互に連通し、単細胞マイクロ流体チャンバが単細胞の細胞体だけを受容することができるように釣り合いのとれている、前記デバイス。
【請求項27】
細胞培養のためのデバイスであって、少なくとも2つの相互接続システムを備え、その少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが請求項1〜26のいずれか1項に記載のように作られる、前記デバイス。
【請求項28】
細胞培養のためのデバイスであって、少なくとも2つの相互接続システムが連続して接続した少なくとも3つのマイクロ流体チャンバを備え、前記相互接続システムの厚さが前記3つのマイクロ流体チャンバの厚さ未満であり、且つ前記マイクロ流体チャンバの少なくとも一方がもう一方のマイクロ流体チャンバの少なくとも1つの厚さと前記相互接続システムの厚さの間の厚さを有する、前記デバイス。
【請求項29】
細胞培養のための、特に神経細胞の細胞培養のための方法であって、請求項1〜28のいずれか1項に記載デバイスの少なくとも1つのマイクロ流体チャンバが神経細胞で播種される、前記方法。
【請求項30】
少なくとも2つのマイクロ流体チャンバが神経細胞で播種され、チャンバの一方の細胞の軸索が、相互接続システムの形のために、もう一方のチャンバの細胞よりもう一方のチャンバの方に生じることのほうが難しくない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つのマイクロ流体チャンバが少なくとも2つの細胞型を有する細胞培養物で播種され、前記細胞型の少なくとも1つの細胞の軸索が、少なくとも第2の細胞型の細胞の軸索より相互接続システムにおいて生じることのほうが難しくない、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
細胞コンパートメントに存在するバイオマーカーを調べる方法であって、少なくとも、
- 請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法に従って細胞を培養する工程、
- 前記細胞の少なくとも1つの前記細胞コンパートメントの少なくとも1つに前記バイオマーカーのプローブを存在させる工程、
- 前記プローブによって前記バイオマーカーの存在を明らかにし更に/又は数量化する工程、
を含む、前記方法。
【請求項33】
細胞コンパートメントに存在する少なくとも1つのバイオマーカーを調べる方法であって、少なくとも、
- 請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法の1つに従って細胞を培養する工程、
- マイクロ流体チャンバの少なくとも一方に存在する上清を集め、更に1つ以上のバイオマーカーをその含量で調べるか又は数量化する工程、
を含む、前記方法。
【請求項34】
前記バイオマーカーの調査又は数量化が、少なくともヌクレオチド配列に関する含量の定量、又はポリペチドに関する含量の定量、又は代謝産物、前記細胞コンパートメント又は前記上清に関する含量の定量を含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
ある種の細胞の物質への反応を決定する方法であって、
a) 請求項1〜28のいずれか1項に記載のデバイスの1つ、又は請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法を用いて細胞を培養する工程、次に
b) 前記細胞の細胞コンパートメントの少なくとも1つをデバイスのマイクロ流体チャンバの少なく1つに前記物質を存在させる工程、
を含む、前記方法。
【請求項36】
c)他の細胞コンパートメント上で又はデバイスの他のマイクロ流体チャンバにおいて工程b)で行った刺激の作用を調べる工程をも含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ディファレンシャルスクリーニングを行うために、少なくとも2つの異なるデバイスの間に、少なくとも1つの細胞型、緩衝液の1つのタイプ、物質の1つのタイプ、又は相互接続システムの1つのタイプの間の差を含む、同一のマイクロ流体支持体上に存在する、請求項1〜28のいずれか1項に記載のいくつかのデバイスにより同時に適用される、請求項29〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
神経毒物質をスクリーニングするか、又は神経保護剤をスクリーニングする方法であって、請求項1〜23のいずれか1項に記載の少なくとも1つのデバイス、又は請求項29〜37のいずれか1項に記載の方法の1つを含む、前記方法。
【請求項39】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の細胞培養のためのデバイスであって、前記デバイスに存在する少なくとも1つの細胞において電気生理学的プロセスを調べる測定機器に接続された、少なくとも1つの微小電極、好ましくは微小電極のネットワークを更に備える、前記デバイス。
【請求項40】
細胞プロセス、例えば、細胞変性、シナプス伝達の修飾、シナプスの退縮、軸索変性、軸索内輸送パラメーターの修飾、細胞体樹状突起変性に対する物質の活性を生体外で評価する方法であって、細胞要素が、請求項1〜28のいずれか1項に記載のデバイスにおいて前記物質の作用に供される、前記方法。
【請求項41】
細胞要素が、前記物質と接触する前に、ストレスにかけられる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ストレスが、軸索切断、毒性化合物、例えば、第1のチャンバ内で培養されるニューロンの細胞体樹状突起コンパートメント又は正中軸索コンパートメント、第2のチャンバ内に含有する培養ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおいて、例えば、神経毒化合物、シナプス毒性化合物又は軸索毒性化合物、細胞培養液に添加された、あるいは遺伝的に移植された正常タンパク質、突然変異タンパク質又はキメラタンパク質を加えること、又は物理化学的状態あるいは物理的状態、例えば、温度、圧力又は電磁放射線の変性によって生じる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
生体外軸索切断方法であって、請求項2記載のデバイスの第1のチャンバを、軸索が第2のチャンバの方へ相互接続システムのマイクロチャネルを通って伸びることを可能にするように第1のニューロン培養物で播種し、次に、軸索の溶解を引き起こすように第3のチャンバ(4c)に物質を導入する、前記方法。
【請求項44】
活性であると推定される物質をスクリーニングする方法であって、
a) 請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法に従って培養した細胞を含む、請求項1〜28のいずれか1項に記載のデバイスを用意する工程、
b) 前記培養した細胞の少なくとも1つの細胞を活性であると推定される少なくとも1つの物質と接触させる工程、
c) 前記細胞について、前記細胞のバイオマーカーの有無、又は発現あるいは活性の程度を決定する工程、及び
d) 前記バイオマーカの決定された有無、又は発現あるいは活性の程度を対照値、対照値の範囲又は対照決定と比較する工程
を含む、前記スクリーニングする方法。
【請求項45】
前記培養した細胞が、細胞、特にニューロンの少なくとも2つの異なったタイプを含み、1つの細胞型がデバイスの第1のチャンバと第2のチャンバとの各々に割り当てられる、請求項44に記載のスクリーニングする方法。
【請求項46】
請求項44又は45に記載の活性であると推定される物質をスクリーニングする方法であって、スクリーニングすべき前記物質が、第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバに及び/又は流体相互接続システムに導入される、前記スクリーニングする方法。
【請求項47】
前記細胞がニューロンである、請求項44〜46のいずれか1項に記載のスクリーニングする方法。
【請求項48】
工程b)の前に追加の工程a')、又はステップbの次に追加の工程b')を含み、工程b)の少なくとも1つの細胞が細胞変性プロセスを誘導する少なくとも一つの刺激に供される、請求項44〜47のいずれか1項に記載のスクリーニングする方法。
【請求項49】
前記少なくとも一つの培養した細胞がニューロンであり、細胞変性プロセスを誘導する前記刺激が、神経毒ストレス、遺伝子突然変異、ウイルス感染、軸索切断、神経毒分子、シナプス毒性分子又は軸索毒性分子より選ばれる毒性分子、細胞培養液に導入されるか又は培養した細胞に遺伝的に移植された正常タンパク質、突然変異タンパク質又はキメラタンパク質、感染物質、特に神経向性薬、又は物理化学的状態の修飾より選ばれ、特に、圧力、温度、pH、オスモル濃度又は電磁波、特にマイクロ波タイプ又は電波タイプより選ばれる、請求項48に記載のスクリーニングする方法。
【請求項50】
前記細胞変性プロセスが、細胞コンパートメント、特に、細胞体、軸索、樹状突起又はシナプスより選ばれたものに特異的である、請求項49に記載のスクリーニングする方法。
【請求項51】
スクリーニングすべき前記物質が、前記細胞変性を防止、低下、遅延又は処理するように推定される、請求項49又は50に記載のスクリーニングする方法。
【請求項52】
前記バイオマーカーが、前記細胞変性のマーカーである、請求項47〜51のいずれか1項に記載のスクリーニングする方法。
【請求項53】
a) 細胞ネットワークを生成するように請求項1〜28のいずれか1項に記載のデバイスを1つ以上の細胞型で播種する工程、
b) ストレスを発生させる、場合により工程a)の前に行われてもよい工程、
c) 試験化合物を適用する工程、
d) 試験した化合物の作用を決定する工程、
を含む、スクリーニングする方法。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図2A−2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A−4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図22b】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図2A−2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A−4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図22b】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公表番号】特表2012−504949(P2012−504949A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530518(P2011−530518)
【出願日】平成21年10月12日(2009.10.12)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001198
【国際公開番号】WO2010/040920
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511090545)
【出願人】(500026533)アンスティテュ・キュリ (20)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT CURIE
【出願人】(509230768)ユニヴェルシテ ピエール エ マリー キュリー (パリ 6) (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月12日(2009.10.12)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001198
【国際公開番号】WO2010/040920
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511090545)
【出願人】(500026533)アンスティテュ・キュリ (20)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT CURIE
【出願人】(509230768)ユニヴェルシテ ピエール エ マリー キュリー (パリ 6) (3)
【Fターム(参考)】
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