細胞培養ディッシュ
【課題】ユーザフレンドリーなペトリディッシュを提供する。
【解決手段】
底壁および底壁から上方へ起立する周側壁を有するディッシュと、通気位置において側壁に密封して置かれる蓋と、側壁と蓋との間に通気ギャップがある通気位置において、封止位置の上方で蓋をディッシュに保持する手段と、通気位置から封止位置へ蓋を移動するために蓋とディッシュとを一緒に押圧することでこれらの手段が封じられるように構成される細胞培養ディッシュ。
【解決手段】
底壁および底壁から上方へ起立する周側壁を有するディッシュと、通気位置において側壁に密封して置かれる蓋と、側壁と蓋との間に通気ギャップがある通気位置において、封止位置の上方で蓋をディッシュに保持する手段と、通気位置から封止位置へ蓋を移動するために蓋とディッシュとを一緒に押圧することでこれらの手段が封じられるように構成される細胞培養ディッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養ディッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養ディッシュは蓋を備えるディッシュであり、細胞学または医学研究所において細胞を培養するため、また、微生物(細菌および菌類)およびより高度な細胞(たとえば、哺乳動物細胞、細胞組織など)を培養するために使われる。丸く透明にしたものは、ペトリディッシュとも呼ばれている。
【0003】
米国特許第3,055,808号には、特に微生物の培養のためのペトリディッシュが開示されており、平坦な円筒状ディッシュおよび蓋を備える。このディッシュは、周方向に延在し蓋を封じる外縁部を上方に有する。カップ形の蓋も同じ形状を有しているが、直径がより大きいので、ペトリディッシュにゆるく合わさる。ディッシュに蓋を着脱可能に固定するために、かつ、蓋とディッシュとの結合を密封するために、カバー壁および周側壁との間にある1つの角部において、蓋は、感圧性で、粘着性が不変な粘着剤を有する。粘着剤は、ディッシュの上縁部に沿い、かつ、カバー壁の角の内周囲に沿って、周方向に延びる。蓋は可撓性材料でできており、横方向の圧力が側壁に印加された際に曲がるようにできており、その結果、蓋とディッシュとの封止が解除され、蓋がディッシュから取り外されると粘着剤が蓋に残る。
【0004】
ペトリディッシュは、微生物の培養に適しており、特にバクテリアの培養に適している。ペトリディッシュは、蓋が付けられると密封して閉じられる。蓋には通気位置がない。粘着剤が塗布されていると、微生物の成長中に汚染の増加が発生するおそれがあり、その結果、殺菌のための出費が増加する。粘着剤の粘着性の性質は、長い貯蔵時間により、インキュベータ内で上昇された温度により、低温による影響により、または培地との接触により、変わるおそれがある。これより、蓋とディッシュとの封止が損なわれるおそれがある。粘着剤の成分が培地を汚染するおそれもある。
【0005】
米国のサンノゼにあるBD Biosciences社は、製品番号35106で「BD Falcon」の名称で50mmの直径と9mmの高さを有するペトリディッシュを提供する。このペトリディッシュはポリスチレン製で、ディッシュに封止座部を有する蓋を備える。このために、ディッシュは周側壁の上縁部に円錐状の封止座部を有し、蓋は蓋側壁の内壁に補完的な封止座部を有する。蓋はディッシュの封止座部に締め付けられて取付けられるのに適している。すなわち、蓋が付けられるとすぐに摩擦による結合がある。ここにおいて、蓋の側壁の長さは、ディッシュの側壁の円錐部を超えていない。補完的な封止座部はこの結果であるが、蓋が開けられる際、どんなてこ動作をしても蓋を変形させることができない。ペトリディッシュは、蓋とディッシュとの間の通気ギャップにより形成される通気位置を一つも有さない。一旦、蓋が密封して付けられると、このペトリディッシュは単純な方法で開けることができず、その代わりにこの作業のためにさらなる力の消費が実施されなければならない。特にペトリディッシュを開けるときでなくても片手だけでこのペトリディッシュを取り扱うことはできない。摩擦結合に勝るためには、ユーザは、一方の手でペトリディッシュの下部を手に取るとともに素早く保持しなければならず、また、もう一方の手でペトリディッシュの蓋を強く上方へ引かなければならない。そのような取扱いにおいて、ペトリディッシュの培地に乱流が発生するのは避けられないことであり、敏感な細胞、特に処置された細胞(例えば、形質転換され、かつ/または、感染した細胞など)は乱流により悪影響を受け、たとえばディッシュの底から分離され、この結果、細胞は使いものにならなくなる。さらに、これらの乱流は霧雨のような液滴/エアゾールの形成が付随され、その結果、ペトリディッシュが開けられた際に培地の液滴/エアゾールが周囲の大気中へ飛び散って汚染する。このことは危険であり、細胞の病原体(ウィルス、マイコプラズマ、プリオンなど)または、培地に毒素を排出する細胞の培養において望ましくなく、というのも、ユーザはこれにより健康に有害なものに曝されるからである。
【0006】
微生物培養または細胞培養のために、細胞または微生物がそれぞれ細胞培養ディッシュへ導入される。一般の手順において、細胞または微生物を保護するためにゆるく置かれる蓋を付けることでディッシュが覆われる。培養に適する空気と温度に調整して作り出される、微生物培養または細胞培養のための最適条件の下で、培地がインキュベータの中にセットされる。インキュベータ内の空気は、通常、一定の空気湿度におけるCO2とO2の一定の含有量を有する空気により形成される。ゆるく置かれた蓋により、インキュベータ内の空気が細胞培養ディッシュ内にも、すなわち細胞または微生物上にも存在することができる。さらに、細胞培養ディッシュは、正確なノブにより蓋がディッシュから離れることが知られており、その結果、細胞培養ディッシュの内部とのガス交換はより顕著である。
【0007】
米国特許第5,520,302号により、微生物を培養するための矩形のペトリディッシュが知られている。これは底壁と周側壁とを有する矩形ディッシュを備え、周側壁は底壁から上方へ突出する。さらに、細胞培養ディッシュは矩形の蓋を備え、異なる二つの位置での取付けに適する。蓋は内周蓋側壁と同様の外周蓋側壁と、カバー壁とを備え、両側壁はカバー壁から下方へ延出し循環溝を制限する。循環溝の輪郭は、ディッシュの側壁の上端に対応する。第1の位置において蓋がディッシュを完全に覆うと、側壁の上端は溝に完全に嵌まるのを防止され、蓋とディッシュとの間のガスの通過はできなくなる。しかしながら、約180°回されて、第2の位置においてディッシュの上に蓋が完全に配置される場合、側壁の上端が溝に完全に嵌まる。これより、蓋とディッシュとの間のガスの通過が防止される。
【0008】
公知のペトリディッシュにおいて、蓋とディッシュとの間にガスが通過できるためには蓋は正しい配置でディッシュ上に載置されなければならない。ペトリディッシュの気密閉めのために、蓋は約180°回転された後改めて持ち上げられ、取り外されなければならない。ペトリディッシュの取扱いはこれによってより困難になる。さらに、微生物はこれらの操作で汚染されるおそれがある。さらに、ペトリディッシュの内部の空気は、蓋が再び置かれた際、周囲の構成物に適応するおそれがあり、その結果、ペトリディッシュの内部の培養条件がもはや維持されない。
【0009】
米国特許第4,675,298号には、円形の下ディッシュとその上にゆるく配置される蓋とを備えたペトリディッシュが開示されている。蓋の内周囲に突起が配置され、これと合わさるギザギザがディッシュの縁部に形成されている。これより、ペトリディッシュ内部と空気との間のガス交換を調節するために蓋とディッシュとの間のギャップを調整することができる。ギャップを調整するためにディッシュに対して蓋を回転しなければならず、両手を使うことを必要とする。このために、場合によって、ユーザは、まず、ペトリディッシュをインキュベータの外へ取り出さなければならない。蓋はディッシュにゆるく置かれているので、ディッシュと蓋との間のギャップを完全に閉じたとしても、ペトリディッシュは液密(liquid-tight)ではない。これより、ペトリディッシュの操作で培地または微生物の流出が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,055,808号公報
【特許文献2】米国特許第5,520,302号公報
【特許文献3】米国特許第4,675,298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これから始まって、本発明はよりユーザフレンドリーなペトリディッシュを提供する目的に基づいている。ユーザフレンドリーであることは特に以下のことであることが理解される。片手でまたは自動機器により、単純な手動動作かつ/または自動処理(繰り返し可能な開閉、および/または細胞培養ディッシュの持ち運び)である。さらに、「ユーザフレンドリー」という言葉は、ユーザの潜在的汚染に関して危険性が低いことも意味しており、つまり、汚染された(感染しているか有害な)培地に曝されるユーザの危険が最小限に抑えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
その目的は請求項1の特徴を有する細胞培養ディッシュにより達成される。細胞培養ディッシュの有益な実施態様が従属項に示されている。
【0013】
本発明による細胞培養ディッシュは、次のような構成をとる。
底壁および底壁から上方へ起立する周側壁を有するディッシュと、
通気位置において側壁に密封して置かれる蓋と、
側壁と蓋との間に通気ギャップがある通気位置において、封止位置の上方で蓋をディッシュに保持する手段と、
通気位置から封止位置へ蓋を移動するために蓋とディッシュとを一緒に押圧することでこれらの手段が封じられる。
【0014】
本発明の細胞培養ディッシュにおいて、細胞または微生物の導入の後、蓋を付けることでディッシュは覆われる。最初に蓋を通気位置に配置することもでき、通気位置において通気ギャップが細胞培養ディッシュの内部と周囲とをつなぐ。ここで、任意の位置でディッシュに蓋を置くことができる。ユーザはこれをするのに片手だけでよい。この構成において、細胞培養ディッシュの内部が通気ギャップを経てインキュベータの空気に接続するために、インキュベータに細胞培養ディッシュを置くことができ、ディッシュ内の細胞または微生物にこの空気が当てられる。細胞培養または微生物培養の後、たとえば、細胞培養ディッシュをインキュベータから取り出す際、蓋とディッシュを共に押圧することで細胞培養ディッシュをきつく閉めることができる。封止位置はこれにより達成され、ここで蓋は側壁に密封して載置される。この封止座部は、移動の際に上へ当たる培養液が細胞培養ディッシュから漏れださないようにする。さらに、封止座部はインキュベータにおいて調整される空気がより長い時間、細胞培養ディッシュ内に保たれるのを維持するか、蓋が通気位置に配置される場合よりもよりゆるやかに変化する。
【0015】
本発明は、さらなる密着の要求を満たすことのできる実施例を含む。たとえば、その要求は、細胞培養ディッシュにおいて蓋と側壁との間の封止部に培養液の水柱が立つ際に、漏れ出す液体が無いことを意味する液密であってもよい。さらに、本発明の構造において、気密となるように蓋をディッシュに閉める実施例が可能である。単純な実施例においては、細胞培養ディッシュの内外の気圧が等しい場合にこの気密閉めとなる。より高度な要求を満たす実施例では、細胞培養ディッシュの内外の気圧が異なる場合(たとえば、気圧差が約0.2barまたは0.5bar)においても気密となる。ディッシュと蓋との間の封止部に液体の膜をユーザが意図的に加えることでも気密が達成される。これは、たとえば、ユーザが細胞培養ディッシュ内に導入された培地の一部を封止部へ「撥ねかける」ことで達成することもできる。ユーザは、これを細胞培養ディッシュのわずかな回転運動または旋回運動によって達成することができる。
【0016】
細胞培養ディッシュを緊密に閉じるために、サブソイル(subsoil)に配置された、または手に保持されたディッシュに対して蓋をかすかに押圧するだけでよい。これにより、通気ギャップが閉じられ、蓋が側壁に密封して置かれる。蓋の予備転換も全く必要ない。これより、ユーザはサブソイルに配置されたディッシュに蓋を押し下げるだけでディッシュを閉じることができる。さらに、このために必要なのは、片手または指一本のみである。この結果、インキュベータの中でも容易に細胞培養ディッシュを閉じることができる。これより、第1に、運搬の際に液体の漏出が回避される。第2に、細胞培養ディッシュ内の空気はインキュベータの外側に広がる空気に当たるのを回避される。すなわち、細胞培養ディッシュがもはやインキュベータの中に配置されなくなっても、当初のインキュベータの空気が細胞培養ディッシュの内部に維持される。特に、CO2の低下を避けることができ、その結果、より長い時間、細胞培養ディッシュ内で一定のpHが維持される。これは、特に、ユーザが封止部へ意図的に液体膜をもたらした際になしえる。蓋を通気位置や封止位置へ配置する際、細胞または微生物の汚染の危険性は減少される。封止位置において細胞培養ディッシュから培地の撥ねまたは漏出を避けることができる。これより、汚染された培地にユーザが曝される危険性も減少する。要するに、本発明の細胞培養ディッシュは始めに記載された先行技術よりもより良好な利用条件を有する。
【0017】
ディッシュから蓋を取り外すことができるように、また、ディッシュ内の細胞または微生物を利用するために、封止位置または通気位置において蓋をディッシュに着脱可能に配置することができる。本発明の細胞培養ディッシュの底部は様々に成形することができ、特に、矩形、長方形または円形にできる。好ましくは円形である。
【0018】
通気位置においてディッシュに蓋を保持する手段は様々にできる。たとえば、通気位置において蓋とディッシュの間に効果的な留め部を扱ってもよく、蓋とディッシュとを一緒にさらに押圧して解除することもでき、場合によっては封止位置においてさらなる留め位置に到達してもよい。必要あらばディッシュから蓋を分離するために留めは可逆的にしてもよい。
【0019】
実施形態の1つとして、保持手段は蓋とディッシュとの間に少なくとも1つの弾性支持部を有する。通気位置において、弾性支持部を介して蓋とディッシュは互いに支持する。通気位置において、蓋とディッシュは共に押圧され、弾性支持部の弾性を利用する。弾性支持部は、単に蓋を付けるだけで従来方式におけるディッシュを覆うことにより操作を容易にする。
【0020】
弾性支持部は蓋またはディッシュに有してもよい。好適な実施形態によれば、ディッシュに有する。弾性支持部はディッシュの様々な位置に配置することができる。たとえば、周側壁の内側または外側のディッシュの底壁から上方へ起立してもよいし、側壁の上縁部から突出してもよい。好適な実施形態によれば、ディッシュの側壁は横に突出する弾性支持部を少なくとも1つ有し、蓋はカバー壁から下方に突出する側壁を有し、蓋を支持部上に置くのに適している。
【0021】
基本的に、支持部は側壁の内側からディッシュの内部へ突き出ることができ、そして、蓋側壁がディッシュに嵌め合う。好適な実施形態によれば、支持部は側壁の外側から突出し、蓋側壁がディッシュの側壁を締め付ける。この実施形態では、蓋側壁を超えてディッシュの内部へ汚染物質が持ち入るのを避ける。
【0022】
本発明は通気ギャップが不規則に形成された実施形態を含む。たとえば、通気位置で側壁に蓋が置かれる座部から始まる、蓋と側壁との間の通気ギャップはこの座部からの距離の増加と共に大きくすることができる。そのような実施形態は、単純な弾性支持部を一つだけ必要とする。好適な実施形態によれば、ディッシュは側壁の対向する部分上に弾性支持部を有する。この実施形態により、ディッシュと蓋との間に周方向の通気ギャップを有することができる。特に、周方向の通気ギャップが一様に形成される。
【0023】
好ましくは、保持手段は、支持部を少なくとも3つ有しており、これより、蓋はディッシュ上に安定した配置で保持される。好ましくは、保持手段は偶数個の支持部を有する。保持手段は好ましくは4つの支持部を有する。支持部は好ましくは細胞培養ディッシュの周囲上に均一に配置される。
【0024】
更なる実施形態では、側壁の対向する2つの部分上に一対の第1の弾性支持部があり、側壁の別の対向する2つの部分上に一対の第2の弾性支持部があり、第1の対の弾性支持部に対して第2の対の弾性支持部は約90°ずれている。このような方法で、特に、矩形または長方形または円形の底面を有する細胞培養ディッシュを形成することができる。
【0025】
弾性支持部は、特に、粉砕可能かつ/または陶器の支持部でも形成することができる。これらの実施形態では、弾性支持部の破壊または塑性変形により、蓋が通気位置から封止位置に到達する。これらの細胞培養ディッシュが一旦密封して閉じられると、支持部が破壊または変形されることで通気ができ、こうなると再び使うことができないので、これらの実施形態は細胞培養または微生物培養の一回限りの通気が提供される細胞培養ディッシュとして特に考えられている。
【0026】
好適な実施形態によれば、弾性支持部は弾性素材である。この実施形態において、蓋を通気位置から封止位置へ移動することができる。−後者において、蓋は、弾性の復元力に勝ることで蓋側壁と共に支持部上にゆるく載置される。蓋を取り外すと、弾性支持部が初期位置に戻り、この結果、蓋を支持部に新たにゆるく取り付けることができる。数日間続く細胞工学研究において通常であるように、この実施形態は細胞培養ディッシュの通気開けと封止閉めとを繰り返すことができる。これより、微生物培養または細胞培養の後に、培養細胞または微生物を顕微鏡で検査するためにインキュベータから取り出し、その後改めてさらなる微生物培養または細胞培養のためにインキュベータ内に入れられる細胞培養ディッシュにこの実施形態は特に適しており、必要であるならこの処置を複数回繰り返すことができる。細胞培養ディッシュ内においてCO2を増量した空気を維持するために、かつ、輸送の間に培地の撥ね出しと漏出とを防止するために、インキュベータから取り出す前に蓋が封止位置へ移動され、さらなる培養のためにインキュベータに戻される前に、蓋が通気位置へ移動される。この実施形態によれば、細胞培養ディッシュは特にプラスチック製の使い捨て品として形成してもよい。
【0027】
さらなる実施形態によれば、弾性支持部は弾性舌部を備える。
【0028】
実施形態の1つによれば、細胞培養ディッシュは側壁から外側に突出する把持縁を有する。把持縁により細胞培養ディッシュの手動操作および/または自動処理を特に容易にすることができる。把持縁はディッシュの側壁周囲の1箇所またはいくつかの箇所に延在してもよい。把持縁は連続的にまたは側壁の周囲全体にわたって延在してもよい。把持縁はディッシュの保持または輸送を容易にする。実施形態の1つによれば、弾性支持部は把持縁の一部分である。弾性支持部は好ましくは弾性舌部であり、把持縁の一部を形成する。外された状態で、弾性舌部は底壁に対して鋭角に向きを定めてもよい。その結果、蓋が通気位置から封止位置へ移される際に、蓋底壁のより近くで回転する。実施形態の1つによれば、弾性舌部は一端を側壁に固定して接続され、底壁と平行に延在し、他端上に蓋に対して突出する突起を有し、蓋側壁は突起の上に置かれるのに適している。この実施形態において、弾性舌部はディッシュの環状に循環する把持縁の一部分となりえる。外された弾性舌部を底壁に対して鋭角に向けないで、底壁のより近くで弾性舌部を回転することができる。
【0029】
弾性舌部の突起は、蓋側壁の下縁部で、突起とディッシュの側壁との間で、蓋をギャップに押しつけるために用いることができ、蓋はディッシュに鋭角に位置合わせされる。蓋のこの傾斜した位置において、蓋とディッシュとの間に通気ギャップがあり、突起から始まって反対側に位置する突起の位置までのディッシュの周囲方向において突起の両側上の通気ギャップの幅は実際に増加する。このさらなる通気位置は周囲とのガス交換を確実にし、通気位置に対してガス交換を強化し、蓋は保持手段により保持される。このことは、細胞に占有された細胞培養ディッシュがインキュベータの外部に長い期間置かれた後にインキュベータ内に戻される場合に、そこに広がる空気に対して早期の順応を確実にするために望まれる。さらなる通気位置において、ディッシュは蓋をされて汚染物質から保護されたままである。蓋はディッシュに依然として安全に保持されており、この位置においてさえ、蓋はディッシュとのみ接触している。言い換えると、蓋は、たとえばインキュベータ自体に接触していない。これより、この位置においても、汚染の危険性が最小限に抑えられる。さらなる通気位置において蓋を安全に保持するために、蓋側壁はその外側に、外側に向かって放射状に突出している円状の循環するフランジおよび/または内側に向かって放射状に突出する締め付け突起を有する突起を備えてもよい。
【0030】
さらなる通気位置においてディッシュに鋭角に蓋を方向付けて蓋をロックするために、支持部のように別の機能を有さなくても、特に様々に実現された保持部が提供されてもよい。これらの保持部は側壁からの距離において上方に突出するフックのような形態の突起を有してもよい。この結果、突起とディッシュの側壁との間で蓋側壁を傾けた姿勢で固定することができる。
【0031】
実施形態の1つによれば、蓋に少なくとも1つの弾力性のある支持部が形成される。好ましくは、蓋の側壁に少なくとも1つの弾力性のある支持部が形成される。これにおいて、たとえば、蓋側壁の周囲に垂直に偏らすことができる弾性舌部を実現する蓋側壁の一部分が扱われる。弾性舌部は、蓋側壁の下縁部から発する蓋側壁の平行溝により限定することもできる。内周囲において、弾性舌部をディッシュの側壁の周囲上に傾斜形または楔形の突起の近くに載置することができる。この結果、蓋がディッシュに対して押圧された際、弾性舌部がその傾斜部をこえて滑り、これによりますます弾性舌部が偏る。
【0032】
封止位置において側壁上に蓋が密封して置かれるのを確実にする封止手段を蓋とディッシュは有してもよい。このために、蓋と側壁の接触面は封止座部となるように独特の形に形成してもよい。接触面はこの点で特に十分合致するように形成してもよい。好適な実施形態によれば、封止手段は、側壁の外側上を周囲方向に循環する刻み目と内側に突出する封止部を有し、封止部は周囲方向に蓋側壁の内側を循環し、その突出封止部は封止位置において刻み目で締め付け、通気位置では刻み目との嵌め合いが外れる。これより、確実に適合する結合が封止位置においてもたらされる。好ましい実施形態において、封止位置では、蓋周側壁の内周囲上の円錐部がディッシュの側壁の湾曲面の近くに密封して位置し、および/または側壁の湾曲面上の円錐部は蓋周側壁の内周囲の近くに密封して置かれる。単位面積あたり押圧される特に高い圧力とそれにより増強された密封効果は、第1の実施形態における刻み目と突出封止部の部位と第2の実施形態における円錐部の部位によって成し遂げられる。
【0033】
好適な実施形態によれば、封止位置においてディッシュ上に蓋を着脱可能に保持する手段がある。これより、蓋は封止位置においてディッシュ上に固定される。
【0034】
着脱可能に保持する手段は、たとえば、摩擦で嵌めこむ手段または留め手段である。摩擦で嵌めこむ手段は、蓋とディッシュの封止座部で形成されてもよく、蓋とディッシュは封止位置において協動する。留め手段は刻み目および刻み目と協動する突出封止部により形成されてもよく、突出封止部は刻み目に留められる。
【0035】
記載されている着脱可能に保持する手段、特に留め手段は、正反対の2つの側面上の蓋を一緒に押圧することで容易に解除することができる。一緒に押圧すると蓋の変形(たとえば、当初円形の蓋が短い時間楕円形に変形する)となり、ディッシュから蓋の解除を用意にするてこ動作が始まる。このような圧縮を片手で実施してもよく、この結果、ユーザはディッシュを引っ張らずとも細胞培養ディッシュから蓋を容易に分離することができる。圧縮が終わるとすぐに、蓋は原形に戻る。この種の分離により、細胞培養培地で満たされ細胞に占められた細胞培養ディッシュ内の細胞培養培地に乱流が発生するのを避け、乱流は一方では細胞にとって不利であるし、また一方では細胞培養培地の霧雨のような液滴/エアゾールが形成され、ユーザが曝されて健康障害につながるおそれがある。
【0036】
本発明の細胞培養ディッシュは基本的にプラスチック材料でできている。好ましいプラスチック材料は透明なプラスチック材料から構成されるグループ、たとえば、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリルメチルイミド(PMMI)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、また同様にこれらのプラスチック材料の少なくとも2つの混合物および/または共重合体から選択される。同じプラスチック材料をディッシュおよび蓋に使用してもよいし、異なるプラスチック材料を使用してもよい。さらに、ディッシュおよび/または蓋は複数のプラスチック材料から成ってもよい。たとえば、蓋側壁の内周囲に封止リングを挿入または射出されてもよく、ディッシュの側壁の外周囲を回るシール面とともに封止手段を形成する。複数のプラスチック材料から成るディッシュおよび/または蓋の別の例は、ディッシュおよび/または蓋の選択された少なくとも1つの領域において特に透明および/または反射のないプラスチック領域を特徴とする細胞培養ディッシュである。これより、細胞の光学的観察に特に適した領域を形成することができる。
【0037】
蓋とプラスチック材料は同じ材料であることが好ましい。好適な材料はたとえばポリスチレンである。
【0038】
より好ましくは、ディッシュおよび蓋は、少なくともいくつかの部位においてPMMA、PMMI、および/またはCOCの様な高透明度のプラスチック材料から成る。蓋とディッシュは好ましくは底部において透明である。より好ましくは、全体的に透明である。透明なプラスチック材料により、細胞培養ディッシュを開けなくとも細胞培養ディッシュ内に配置された細胞の光学的検査をすることができる。このために、細胞培養ディッシュは全体的にまたは部分的にガラスと同じ程度に透明なプラスチック材料からできている。
【0039】
さらには、本発明の細胞培養ディッシュは表面変形を特徴としてもよく、結合と細胞の成長をサポートする。このような表面変形は特にプラズマ変形により適用されることが好ましい。
【0040】
本発明は、実施例の添付の図面により、更に詳細に説明される。図面は以下のことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】通気位置における細胞培養ディッシュの部分切断断面図である。
【図2】封止位置における細胞培養ディッシュの部分切断断面図である。
【図3】細胞培養ディッシュの底側から見た図である。
【図4】細胞培養ディッシュのディッシュの側部部分斜視図である。
【図5】蓋を開ける際の細胞培養ディッシュの側部を傾斜した斜視図である。
【図6】通気位置における細胞培養ディッシュの部分拡大縦断面図である。
【図7】封止位置における細胞培養ディッシュの部分拡大縦断面図である。
【図8】液体の封止楔による封止位置における細胞培養ディッシュの部分拡大縦断面図である。
【図9】液体の封止楔のさらなる部分拡大縦断面図である。
【図10】更なる通気位置における蓋を傾斜して置いた細胞培養ディッシュの側面からの傾斜した斜視図である。
【図11】更なる実施例の蓋側壁と一体化された弾性舌部を有する細胞培養ディッシュの上側部から傾斜した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0042】
本出願において、「上」および「下」の意味は、ディッシュがその底部を水平支持体上に載置される状態での細胞培養ディッシュの配置を指す。
【0043】
同じ符号が異なる実施例の説明に同じ特徴のために使われる。異なる実施例の異なる特色は上付き文字(’)により示される。
【0044】
細胞培養ディッシュ1はディッシュ2と蓋3を備え、それぞれ円形の底部を有する。ディッシュ2は底壁4を有し、そこから周側壁が上方へ起立している。
【0045】
側壁5の外側から外部に向かって、その高さの半分ぐらいの位置で、基本的に環状な周方向の把持縁6が突出している。把持縁6は4つの弾性舌部7を有し、これらはディッシュ2の周囲にわたって均等に配置される。弾性舌部7は固定端において把持縁6に接続する一体成形であり、把持縁6の平面上に基本的に延出している。弾性舌部7は自由端において、突起8または切欠きを有し、把持縁6の残余部から上方へ突出する。
【0046】
把持縁6は、弾性舌部7が配置されている部位において途切れる。把持縁6を途切れない形態にすることも可能で、弾性舌部7は把持縁6に配置されている溝により制限されてもよい。
【0047】
蓋3はカバー壁9を有する。蓋周側壁10はカバー壁9の縁から下方へ突出する。
【0048】
蓋側壁10の内周囲に円錐部11が有り、円錐部11は蓋3の封止座部を形成する。側壁5の外周囲上の周方向の円錐部12は円錐部11と結合する。
【0049】
図6から図8を参照すると、円錐部11は、蓋側壁10の内周囲を循環する突出封止部13に配置されている。円錐部12は側壁5の外周囲に刻み目14に配置されている。
【0050】
円錐部11と円錐部12はそれぞれカバー壁9に対して広がりをもつ。
【0051】
側壁5の上端の外径は、突出封止部13の下端の蓋側壁10の内径よりも約0.1から0.3mmほど大きい。その差は好ましくは約0.15mmである。
【0052】
刻み目14は約0.01から0.05mm程の深さを有する。その深さは好ましくは0.03mmである。
【0053】
たとえば、円錐部11および結合される円錐部12の高さは0.3mmから1.55mmでもよく、好ましくは0.5mmから1mmであり、最も好ましいのは0.5mmの高さである。
【0054】
蓋3は蓋側壁10の内周囲に楔形のリブ15を有し、リブ15は突出封止部13の下端まで延びる。これは図6にのみ示されている。リブ15は楔形であり、その高さは突出封止部13に対して上方へ向かって増加している。リブ15の下端は突出封止部13までの距離内に配置され、蓋側壁10の約3分の1または半分の高さに相当する。リブ15は蓋3をディッシュ2の中央に置くので、留めるのを容易にする。
【0055】
リブ15は、蓋側壁10の内周囲にわたって均一にいくつか配置される。リブ15は少なくとも3本あることが好ましい。本実施例ではリブ15が6本あるが、1本だけを図示している。
【0056】
ディッシュ2と蓋3は、それらの内と外の寸法において基本的に既知の細胞培養ディッシュと一致するように作ることができる。特に、側壁5の内径は30から150mmの範囲としてもよく、たとえば55mmである。側壁5の高さは5から20mmの範囲としてもよく、たとえば15mmとしてもよい。
【0057】
ディッシュ2と蓋3は、たとえばポリスチレン製である。
【0058】
蓋側壁10の下縁部が突起8上に載置されるように、図1および図6に示すように蓋3がディッシュ2にゆるく置かれていると、ディッシュ2と蓋3との間には通気ギャップがある。通気ギャップの高さは、0.1mmから1mmの範囲であり、好ましくは0.3mmから0.7mmであり、特に好ましくは0.5mmである。ディッシュ2に蓋3を通気位置に持ち上げることは、片手で容易になしえる。
【0059】
図2および7によれば、蓋3はディッシュ2に対して押圧することで封止位置に移動することができる。ここで、蓋側壁10の下縁部が、弾性舌部7をいくらか下方へ偏らせる。側壁5はその上縁部でリブ15を滑ってこれにより中央に置かれる。同時に、側壁5は放射状にいくらか圧縮され、蓋側壁10は放射状にいくらか広がる。最終的に、突出封止部13は刻み目13に嵌り、円錐部11、12はそれぞれ近接して密封して置かれる。その結果、ディッシュ2は蓋3にきつく閉じられる。この位置では、蓋3は刻み目14と突出封止部13との確固たる嵌め合いによりディッシュ2に固定されている。円錐部11、12の間における締め付け力により封止することが成し遂げられる。このように、封止位置において摩擦結合と同様な確実性がある。この結合により、安全であり、特に液密に蓋が覆われているにもかかわらず、容易に、すなわち蓋側壁10を同時に押圧する(てこの力がこれで生じる)ことにより再び解除される。
【0060】
図8および9によれば、さらなる封止として、側壁5の上縁部と蓋側壁10の上端との間に液体の楔17をもたらしてもよい。このために、側壁5とカバー壁9との間に、小さな周方向のギャップを残しておいてもよい。ディッシュ2と蓋3との間の封止は液体の楔18により強化される。
【0061】
図5によれば、細胞培養ディッシュは蓋側壁10の下側円環縁部に対して親指と人差し指で側面から押圧することで開けられ、楕円に変形される。この結果、平坦なカバー壁9と蓋側壁10の円錐部11が変形される。指の力方向に90°に位置している領域では、刻み目14における突起13の嵌め合いがこの結果として終わり、蓋3がディッシュ2から分離される。
【0062】
本発明の細胞培養ディッシュ1は従来の細胞培養ディッシュよりも良好な使用特性がある。特に、ディッシュ2と蓋3はそれぞれ容易に結合することができる。蓋3の取付けや取り外しを片手だけですることができる。細胞培養ディッシュは封止位置において密封して閉じられ、細胞培養ディッシュ1の内部におけるCO2含有量はほぼ一定に保たれる。通気ギャップを超える撥ねは、蓋を単に持ち上げると生じるが、蓋がディッシュを密封して閉じるともはや生じることはない。通気位置と封止位置はそれぞれの他の位置に影響することなく最大限に利用してもよい。
【0063】
図10によれば、蓋3はさらなる通気位置でディッシュ2に保つことができ、蓋3はディッシュ2に鋭角で合わさる。このために、蓋3の周方向の外側に突出するフランジ縁19が弾性舌部7の突起8の内側にもたれて置かれる。蓋3を図示される配置に固定するために、フランジ縁19は突起8と側壁5との間のギャップに固定される。この更なる位置で、大きく広がっている通気ギャップが成し遂げられ、特に良好なガス交換ができる。しかしながら、ディッシュ2は上部をすっかり覆われ、ここでも蓋3は単にディッシュ2に接触しているだけである。特に、蓋3はサブソイルに接触しておらず、サブソイルは汚染されているおそれがあるが、通気中にディッシュに汚染物質が到達するのを防止する。
【0064】
図11によれば、細胞培養ディッシュ1’は、すでに記載したものと、把持縁6が中断なく循環し弾性舌部7を有さない点で異なる。その代わりに、弾性舌部7’は蓋側壁10’にある。このために、蓋側壁10’は、その下縁部から発し弾性舌部7’を限定する平行溝20’、21’を有する。たとえば、3つの弾性舌部7’が蓋側壁10’の周囲に配置され、その1つのみを図示している。
【0065】
弾性舌部7’は内側へ突出するガイドカムを図示していない。弾性舌部7’のガイドカムは、図示されていない楔またはビーズのように横に突出する側壁5’の下部のガイド面を案内される。ガイド面は任意の方法で実施されてもよく、たとえばガイド面は完全に循環してもよいし、中断をともなって循環してもよい。蓋3’がゆるく持ち上げられると、弾性舌部7’は図示しないディッシュ2に対して高い位置の楔面上に支持される。蓋3’とディッシュ2’とを一緒に押圧すると、弾性舌部7’はガイド面を滑って、外側に偏る。最終的に、突出封止部13’は刻み目14’に嵌まり、蓋3’は封止位置にてディッシュ2’に密封して固定される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養ディッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養ディッシュは蓋を備えるディッシュであり、細胞学または医学研究所において細胞を培養するため、また、微生物(細菌および菌類)およびより高度な細胞(たとえば、哺乳動物細胞、細胞組織など)を培養するために使われる。丸く透明にしたものは、ペトリディッシュとも呼ばれている。
【0003】
米国特許第3,055,808号には、特に微生物の培養のためのペトリディッシュが開示されており、平坦な円筒状ディッシュおよび蓋を備える。このディッシュは、周方向に延在し蓋を封じる外縁部を上方に有する。カップ形の蓋も同じ形状を有しているが、直径がより大きいので、ペトリディッシュにゆるく合わさる。ディッシュに蓋を着脱可能に固定するために、かつ、蓋とディッシュとの結合を密封するために、カバー壁および周側壁との間にある1つの角部において、蓋は、感圧性で、粘着性が不変な粘着剤を有する。粘着剤は、ディッシュの上縁部に沿い、かつ、カバー壁の角の内周囲に沿って、周方向に延びる。蓋は可撓性材料でできており、横方向の圧力が側壁に印加された際に曲がるようにできており、その結果、蓋とディッシュとの封止が解除され、蓋がディッシュから取り外されると粘着剤が蓋に残る。
【0004】
ペトリディッシュは、微生物の培養に適しており、特にバクテリアの培養に適している。ペトリディッシュは、蓋が付けられると密封して閉じられる。蓋には通気位置がない。粘着剤が塗布されていると、微生物の成長中に汚染の増加が発生するおそれがあり、その結果、殺菌のための出費が増加する。粘着剤の粘着性の性質は、長い貯蔵時間により、インキュベータ内で上昇された温度により、低温による影響により、または培地との接触により、変わるおそれがある。これより、蓋とディッシュとの封止が損なわれるおそれがある。粘着剤の成分が培地を汚染するおそれもある。
【0005】
米国のサンノゼにあるBD Biosciences社は、製品番号35106で「BD Falcon」の名称で50mmの直径と9mmの高さを有するペトリディッシュを提供する。このペトリディッシュはポリスチレン製で、ディッシュに封止座部を有する蓋を備える。このために、ディッシュは周側壁の上縁部に円錐状の封止座部を有し、蓋は蓋側壁の内壁に補完的な封止座部を有する。蓋はディッシュの封止座部に締め付けられて取付けられるのに適している。すなわち、蓋が付けられるとすぐに摩擦による結合がある。ここにおいて、蓋の側壁の長さは、ディッシュの側壁の円錐部を超えていない。補完的な封止座部はこの結果であるが、蓋が開けられる際、どんなてこ動作をしても蓋を変形させることができない。ペトリディッシュは、蓋とディッシュとの間の通気ギャップにより形成される通気位置を一つも有さない。一旦、蓋が密封して付けられると、このペトリディッシュは単純な方法で開けることができず、その代わりにこの作業のためにさらなる力の消費が実施されなければならない。特にペトリディッシュを開けるときでなくても片手だけでこのペトリディッシュを取り扱うことはできない。摩擦結合に勝るためには、ユーザは、一方の手でペトリディッシュの下部を手に取るとともに素早く保持しなければならず、また、もう一方の手でペトリディッシュの蓋を強く上方へ引かなければならない。そのような取扱いにおいて、ペトリディッシュの培地に乱流が発生するのは避けられないことであり、敏感な細胞、特に処置された細胞(例えば、形質転換され、かつ/または、感染した細胞など)は乱流により悪影響を受け、たとえばディッシュの底から分離され、この結果、細胞は使いものにならなくなる。さらに、これらの乱流は霧雨のような液滴/エアゾールの形成が付随され、その結果、ペトリディッシュが開けられた際に培地の液滴/エアゾールが周囲の大気中へ飛び散って汚染する。このことは危険であり、細胞の病原体(ウィルス、マイコプラズマ、プリオンなど)または、培地に毒素を排出する細胞の培養において望ましくなく、というのも、ユーザはこれにより健康に有害なものに曝されるからである。
【0006】
微生物培養または細胞培養のために、細胞または微生物がそれぞれ細胞培養ディッシュへ導入される。一般の手順において、細胞または微生物を保護するためにゆるく置かれる蓋を付けることでディッシュが覆われる。培養に適する空気と温度に調整して作り出される、微生物培養または細胞培養のための最適条件の下で、培地がインキュベータの中にセットされる。インキュベータ内の空気は、通常、一定の空気湿度におけるCO2とO2の一定の含有量を有する空気により形成される。ゆるく置かれた蓋により、インキュベータ内の空気が細胞培養ディッシュ内にも、すなわち細胞または微生物上にも存在することができる。さらに、細胞培養ディッシュは、正確なノブにより蓋がディッシュから離れることが知られており、その結果、細胞培養ディッシュの内部とのガス交換はより顕著である。
【0007】
米国特許第5,520,302号により、微生物を培養するための矩形のペトリディッシュが知られている。これは底壁と周側壁とを有する矩形ディッシュを備え、周側壁は底壁から上方へ突出する。さらに、細胞培養ディッシュは矩形の蓋を備え、異なる二つの位置での取付けに適する。蓋は内周蓋側壁と同様の外周蓋側壁と、カバー壁とを備え、両側壁はカバー壁から下方へ延出し循環溝を制限する。循環溝の輪郭は、ディッシュの側壁の上端に対応する。第1の位置において蓋がディッシュを完全に覆うと、側壁の上端は溝に完全に嵌まるのを防止され、蓋とディッシュとの間のガスの通過はできなくなる。しかしながら、約180°回されて、第2の位置においてディッシュの上に蓋が完全に配置される場合、側壁の上端が溝に完全に嵌まる。これより、蓋とディッシュとの間のガスの通過が防止される。
【0008】
公知のペトリディッシュにおいて、蓋とディッシュとの間にガスが通過できるためには蓋は正しい配置でディッシュ上に載置されなければならない。ペトリディッシュの気密閉めのために、蓋は約180°回転された後改めて持ち上げられ、取り外されなければならない。ペトリディッシュの取扱いはこれによってより困難になる。さらに、微生物はこれらの操作で汚染されるおそれがある。さらに、ペトリディッシュの内部の空気は、蓋が再び置かれた際、周囲の構成物に適応するおそれがあり、その結果、ペトリディッシュの内部の培養条件がもはや維持されない。
【0009】
米国特許第4,675,298号には、円形の下ディッシュとその上にゆるく配置される蓋とを備えたペトリディッシュが開示されている。蓋の内周囲に突起が配置され、これと合わさるギザギザがディッシュの縁部に形成されている。これより、ペトリディッシュ内部と空気との間のガス交換を調節するために蓋とディッシュとの間のギャップを調整することができる。ギャップを調整するためにディッシュに対して蓋を回転しなければならず、両手を使うことを必要とする。このために、場合によって、ユーザは、まず、ペトリディッシュをインキュベータの外へ取り出さなければならない。蓋はディッシュにゆるく置かれているので、ディッシュと蓋との間のギャップを完全に閉じたとしても、ペトリディッシュは液密(liquid-tight)ではない。これより、ペトリディッシュの操作で培地または微生物の流出が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,055,808号公報
【特許文献2】米国特許第5,520,302号公報
【特許文献3】米国特許第4,675,298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これから始まって、本発明はよりユーザフレンドリーなペトリディッシュを提供する目的に基づいている。ユーザフレンドリーであることは特に以下のことであることが理解される。片手でまたは自動機器により、単純な手動動作かつ/または自動処理(繰り返し可能な開閉、および/または細胞培養ディッシュの持ち運び)である。さらに、「ユーザフレンドリー」という言葉は、ユーザの潜在的汚染に関して危険性が低いことも意味しており、つまり、汚染された(感染しているか有害な)培地に曝されるユーザの危険が最小限に抑えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
その目的は請求項1の特徴を有する細胞培養ディッシュにより達成される。細胞培養ディッシュの有益な実施態様が従属項に示されている。
【0013】
本発明による細胞培養ディッシュは、次のような構成をとる。
底壁および底壁から上方へ起立する周側壁を有するディッシュと、
通気位置において側壁に密封して置かれる蓋と、
側壁と蓋との間に通気ギャップがある通気位置において、封止位置の上方で蓋をディッシュに保持する手段と、
通気位置から封止位置へ蓋を移動するために蓋とディッシュとを一緒に押圧することでこれらの手段が封じられる。
【0014】
本発明の細胞培養ディッシュにおいて、細胞または微生物の導入の後、蓋を付けることでディッシュは覆われる。最初に蓋を通気位置に配置することもでき、通気位置において通気ギャップが細胞培養ディッシュの内部と周囲とをつなぐ。ここで、任意の位置でディッシュに蓋を置くことができる。ユーザはこれをするのに片手だけでよい。この構成において、細胞培養ディッシュの内部が通気ギャップを経てインキュベータの空気に接続するために、インキュベータに細胞培養ディッシュを置くことができ、ディッシュ内の細胞または微生物にこの空気が当てられる。細胞培養または微生物培養の後、たとえば、細胞培養ディッシュをインキュベータから取り出す際、蓋とディッシュを共に押圧することで細胞培養ディッシュをきつく閉めることができる。封止位置はこれにより達成され、ここで蓋は側壁に密封して載置される。この封止座部は、移動の際に上へ当たる培養液が細胞培養ディッシュから漏れださないようにする。さらに、封止座部はインキュベータにおいて調整される空気がより長い時間、細胞培養ディッシュ内に保たれるのを維持するか、蓋が通気位置に配置される場合よりもよりゆるやかに変化する。
【0015】
本発明は、さらなる密着の要求を満たすことのできる実施例を含む。たとえば、その要求は、細胞培養ディッシュにおいて蓋と側壁との間の封止部に培養液の水柱が立つ際に、漏れ出す液体が無いことを意味する液密であってもよい。さらに、本発明の構造において、気密となるように蓋をディッシュに閉める実施例が可能である。単純な実施例においては、細胞培養ディッシュの内外の気圧が等しい場合にこの気密閉めとなる。より高度な要求を満たす実施例では、細胞培養ディッシュの内外の気圧が異なる場合(たとえば、気圧差が約0.2barまたは0.5bar)においても気密となる。ディッシュと蓋との間の封止部に液体の膜をユーザが意図的に加えることでも気密が達成される。これは、たとえば、ユーザが細胞培養ディッシュ内に導入された培地の一部を封止部へ「撥ねかける」ことで達成することもできる。ユーザは、これを細胞培養ディッシュのわずかな回転運動または旋回運動によって達成することができる。
【0016】
細胞培養ディッシュを緊密に閉じるために、サブソイル(subsoil)に配置された、または手に保持されたディッシュに対して蓋をかすかに押圧するだけでよい。これにより、通気ギャップが閉じられ、蓋が側壁に密封して置かれる。蓋の予備転換も全く必要ない。これより、ユーザはサブソイルに配置されたディッシュに蓋を押し下げるだけでディッシュを閉じることができる。さらに、このために必要なのは、片手または指一本のみである。この結果、インキュベータの中でも容易に細胞培養ディッシュを閉じることができる。これより、第1に、運搬の際に液体の漏出が回避される。第2に、細胞培養ディッシュ内の空気はインキュベータの外側に広がる空気に当たるのを回避される。すなわち、細胞培養ディッシュがもはやインキュベータの中に配置されなくなっても、当初のインキュベータの空気が細胞培養ディッシュの内部に維持される。特に、CO2の低下を避けることができ、その結果、より長い時間、細胞培養ディッシュ内で一定のpHが維持される。これは、特に、ユーザが封止部へ意図的に液体膜をもたらした際になしえる。蓋を通気位置や封止位置へ配置する際、細胞または微生物の汚染の危険性は減少される。封止位置において細胞培養ディッシュから培地の撥ねまたは漏出を避けることができる。これより、汚染された培地にユーザが曝される危険性も減少する。要するに、本発明の細胞培養ディッシュは始めに記載された先行技術よりもより良好な利用条件を有する。
【0017】
ディッシュから蓋を取り外すことができるように、また、ディッシュ内の細胞または微生物を利用するために、封止位置または通気位置において蓋をディッシュに着脱可能に配置することができる。本発明の細胞培養ディッシュの底部は様々に成形することができ、特に、矩形、長方形または円形にできる。好ましくは円形である。
【0018】
通気位置においてディッシュに蓋を保持する手段は様々にできる。たとえば、通気位置において蓋とディッシュの間に効果的な留め部を扱ってもよく、蓋とディッシュとを一緒にさらに押圧して解除することもでき、場合によっては封止位置においてさらなる留め位置に到達してもよい。必要あらばディッシュから蓋を分離するために留めは可逆的にしてもよい。
【0019】
実施形態の1つとして、保持手段は蓋とディッシュとの間に少なくとも1つの弾性支持部を有する。通気位置において、弾性支持部を介して蓋とディッシュは互いに支持する。通気位置において、蓋とディッシュは共に押圧され、弾性支持部の弾性を利用する。弾性支持部は、単に蓋を付けるだけで従来方式におけるディッシュを覆うことにより操作を容易にする。
【0020】
弾性支持部は蓋またはディッシュに有してもよい。好適な実施形態によれば、ディッシュに有する。弾性支持部はディッシュの様々な位置に配置することができる。たとえば、周側壁の内側または外側のディッシュの底壁から上方へ起立してもよいし、側壁の上縁部から突出してもよい。好適な実施形態によれば、ディッシュの側壁は横に突出する弾性支持部を少なくとも1つ有し、蓋はカバー壁から下方に突出する側壁を有し、蓋を支持部上に置くのに適している。
【0021】
基本的に、支持部は側壁の内側からディッシュの内部へ突き出ることができ、そして、蓋側壁がディッシュに嵌め合う。好適な実施形態によれば、支持部は側壁の外側から突出し、蓋側壁がディッシュの側壁を締め付ける。この実施形態では、蓋側壁を超えてディッシュの内部へ汚染物質が持ち入るのを避ける。
【0022】
本発明は通気ギャップが不規則に形成された実施形態を含む。たとえば、通気位置で側壁に蓋が置かれる座部から始まる、蓋と側壁との間の通気ギャップはこの座部からの距離の増加と共に大きくすることができる。そのような実施形態は、単純な弾性支持部を一つだけ必要とする。好適な実施形態によれば、ディッシュは側壁の対向する部分上に弾性支持部を有する。この実施形態により、ディッシュと蓋との間に周方向の通気ギャップを有することができる。特に、周方向の通気ギャップが一様に形成される。
【0023】
好ましくは、保持手段は、支持部を少なくとも3つ有しており、これより、蓋はディッシュ上に安定した配置で保持される。好ましくは、保持手段は偶数個の支持部を有する。保持手段は好ましくは4つの支持部を有する。支持部は好ましくは細胞培養ディッシュの周囲上に均一に配置される。
【0024】
更なる実施形態では、側壁の対向する2つの部分上に一対の第1の弾性支持部があり、側壁の別の対向する2つの部分上に一対の第2の弾性支持部があり、第1の対の弾性支持部に対して第2の対の弾性支持部は約90°ずれている。このような方法で、特に、矩形または長方形または円形の底面を有する細胞培養ディッシュを形成することができる。
【0025】
弾性支持部は、特に、粉砕可能かつ/または陶器の支持部でも形成することができる。これらの実施形態では、弾性支持部の破壊または塑性変形により、蓋が通気位置から封止位置に到達する。これらの細胞培養ディッシュが一旦密封して閉じられると、支持部が破壊または変形されることで通気ができ、こうなると再び使うことができないので、これらの実施形態は細胞培養または微生物培養の一回限りの通気が提供される細胞培養ディッシュとして特に考えられている。
【0026】
好適な実施形態によれば、弾性支持部は弾性素材である。この実施形態において、蓋を通気位置から封止位置へ移動することができる。−後者において、蓋は、弾性の復元力に勝ることで蓋側壁と共に支持部上にゆるく載置される。蓋を取り外すと、弾性支持部が初期位置に戻り、この結果、蓋を支持部に新たにゆるく取り付けることができる。数日間続く細胞工学研究において通常であるように、この実施形態は細胞培養ディッシュの通気開けと封止閉めとを繰り返すことができる。これより、微生物培養または細胞培養の後に、培養細胞または微生物を顕微鏡で検査するためにインキュベータから取り出し、その後改めてさらなる微生物培養または細胞培養のためにインキュベータ内に入れられる細胞培養ディッシュにこの実施形態は特に適しており、必要であるならこの処置を複数回繰り返すことができる。細胞培養ディッシュ内においてCO2を増量した空気を維持するために、かつ、輸送の間に培地の撥ね出しと漏出とを防止するために、インキュベータから取り出す前に蓋が封止位置へ移動され、さらなる培養のためにインキュベータに戻される前に、蓋が通気位置へ移動される。この実施形態によれば、細胞培養ディッシュは特にプラスチック製の使い捨て品として形成してもよい。
【0027】
さらなる実施形態によれば、弾性支持部は弾性舌部を備える。
【0028】
実施形態の1つによれば、細胞培養ディッシュは側壁から外側に突出する把持縁を有する。把持縁により細胞培養ディッシュの手動操作および/または自動処理を特に容易にすることができる。把持縁はディッシュの側壁周囲の1箇所またはいくつかの箇所に延在してもよい。把持縁は連続的にまたは側壁の周囲全体にわたって延在してもよい。把持縁はディッシュの保持または輸送を容易にする。実施形態の1つによれば、弾性支持部は把持縁の一部分である。弾性支持部は好ましくは弾性舌部であり、把持縁の一部を形成する。外された状態で、弾性舌部は底壁に対して鋭角に向きを定めてもよい。その結果、蓋が通気位置から封止位置へ移される際に、蓋底壁のより近くで回転する。実施形態の1つによれば、弾性舌部は一端を側壁に固定して接続され、底壁と平行に延在し、他端上に蓋に対して突出する突起を有し、蓋側壁は突起の上に置かれるのに適している。この実施形態において、弾性舌部はディッシュの環状に循環する把持縁の一部分となりえる。外された弾性舌部を底壁に対して鋭角に向けないで、底壁のより近くで弾性舌部を回転することができる。
【0029】
弾性舌部の突起は、蓋側壁の下縁部で、突起とディッシュの側壁との間で、蓋をギャップに押しつけるために用いることができ、蓋はディッシュに鋭角に位置合わせされる。蓋のこの傾斜した位置において、蓋とディッシュとの間に通気ギャップがあり、突起から始まって反対側に位置する突起の位置までのディッシュの周囲方向において突起の両側上の通気ギャップの幅は実際に増加する。このさらなる通気位置は周囲とのガス交換を確実にし、通気位置に対してガス交換を強化し、蓋は保持手段により保持される。このことは、細胞に占有された細胞培養ディッシュがインキュベータの外部に長い期間置かれた後にインキュベータ内に戻される場合に、そこに広がる空気に対して早期の順応を確実にするために望まれる。さらなる通気位置において、ディッシュは蓋をされて汚染物質から保護されたままである。蓋はディッシュに依然として安全に保持されており、この位置においてさえ、蓋はディッシュとのみ接触している。言い換えると、蓋は、たとえばインキュベータ自体に接触していない。これより、この位置においても、汚染の危険性が最小限に抑えられる。さらなる通気位置において蓋を安全に保持するために、蓋側壁はその外側に、外側に向かって放射状に突出している円状の循環するフランジおよび/または内側に向かって放射状に突出する締め付け突起を有する突起を備えてもよい。
【0030】
さらなる通気位置においてディッシュに鋭角に蓋を方向付けて蓋をロックするために、支持部のように別の機能を有さなくても、特に様々に実現された保持部が提供されてもよい。これらの保持部は側壁からの距離において上方に突出するフックのような形態の突起を有してもよい。この結果、突起とディッシュの側壁との間で蓋側壁を傾けた姿勢で固定することができる。
【0031】
実施形態の1つによれば、蓋に少なくとも1つの弾力性のある支持部が形成される。好ましくは、蓋の側壁に少なくとも1つの弾力性のある支持部が形成される。これにおいて、たとえば、蓋側壁の周囲に垂直に偏らすことができる弾性舌部を実現する蓋側壁の一部分が扱われる。弾性舌部は、蓋側壁の下縁部から発する蓋側壁の平行溝により限定することもできる。内周囲において、弾性舌部をディッシュの側壁の周囲上に傾斜形または楔形の突起の近くに載置することができる。この結果、蓋がディッシュに対して押圧された際、弾性舌部がその傾斜部をこえて滑り、これによりますます弾性舌部が偏る。
【0032】
封止位置において側壁上に蓋が密封して置かれるのを確実にする封止手段を蓋とディッシュは有してもよい。このために、蓋と側壁の接触面は封止座部となるように独特の形に形成してもよい。接触面はこの点で特に十分合致するように形成してもよい。好適な実施形態によれば、封止手段は、側壁の外側上を周囲方向に循環する刻み目と内側に突出する封止部を有し、封止部は周囲方向に蓋側壁の内側を循環し、その突出封止部は封止位置において刻み目で締め付け、通気位置では刻み目との嵌め合いが外れる。これより、確実に適合する結合が封止位置においてもたらされる。好ましい実施形態において、封止位置では、蓋周側壁の内周囲上の円錐部がディッシュの側壁の湾曲面の近くに密封して位置し、および/または側壁の湾曲面上の円錐部は蓋周側壁の内周囲の近くに密封して置かれる。単位面積あたり押圧される特に高い圧力とそれにより増強された密封効果は、第1の実施形態における刻み目と突出封止部の部位と第2の実施形態における円錐部の部位によって成し遂げられる。
【0033】
好適な実施形態によれば、封止位置においてディッシュ上に蓋を着脱可能に保持する手段がある。これより、蓋は封止位置においてディッシュ上に固定される。
【0034】
着脱可能に保持する手段は、たとえば、摩擦で嵌めこむ手段または留め手段である。摩擦で嵌めこむ手段は、蓋とディッシュの封止座部で形成されてもよく、蓋とディッシュは封止位置において協動する。留め手段は刻み目および刻み目と協動する突出封止部により形成されてもよく、突出封止部は刻み目に留められる。
【0035】
記載されている着脱可能に保持する手段、特に留め手段は、正反対の2つの側面上の蓋を一緒に押圧することで容易に解除することができる。一緒に押圧すると蓋の変形(たとえば、当初円形の蓋が短い時間楕円形に変形する)となり、ディッシュから蓋の解除を用意にするてこ動作が始まる。このような圧縮を片手で実施してもよく、この結果、ユーザはディッシュを引っ張らずとも細胞培養ディッシュから蓋を容易に分離することができる。圧縮が終わるとすぐに、蓋は原形に戻る。この種の分離により、細胞培養培地で満たされ細胞に占められた細胞培養ディッシュ内の細胞培養培地に乱流が発生するのを避け、乱流は一方では細胞にとって不利であるし、また一方では細胞培養培地の霧雨のような液滴/エアゾールが形成され、ユーザが曝されて健康障害につながるおそれがある。
【0036】
本発明の細胞培養ディッシュは基本的にプラスチック材料でできている。好ましいプラスチック材料は透明なプラスチック材料から構成されるグループ、たとえば、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリルメチルイミド(PMMI)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、また同様にこれらのプラスチック材料の少なくとも2つの混合物および/または共重合体から選択される。同じプラスチック材料をディッシュおよび蓋に使用してもよいし、異なるプラスチック材料を使用してもよい。さらに、ディッシュおよび/または蓋は複数のプラスチック材料から成ってもよい。たとえば、蓋側壁の内周囲に封止リングを挿入または射出されてもよく、ディッシュの側壁の外周囲を回るシール面とともに封止手段を形成する。複数のプラスチック材料から成るディッシュおよび/または蓋の別の例は、ディッシュおよび/または蓋の選択された少なくとも1つの領域において特に透明および/または反射のないプラスチック領域を特徴とする細胞培養ディッシュである。これより、細胞の光学的観察に特に適した領域を形成することができる。
【0037】
蓋とプラスチック材料は同じ材料であることが好ましい。好適な材料はたとえばポリスチレンである。
【0038】
より好ましくは、ディッシュおよび蓋は、少なくともいくつかの部位においてPMMA、PMMI、および/またはCOCの様な高透明度のプラスチック材料から成る。蓋とディッシュは好ましくは底部において透明である。より好ましくは、全体的に透明である。透明なプラスチック材料により、細胞培養ディッシュを開けなくとも細胞培養ディッシュ内に配置された細胞の光学的検査をすることができる。このために、細胞培養ディッシュは全体的にまたは部分的にガラスと同じ程度に透明なプラスチック材料からできている。
【0039】
さらには、本発明の細胞培養ディッシュは表面変形を特徴としてもよく、結合と細胞の成長をサポートする。このような表面変形は特にプラズマ変形により適用されることが好ましい。
【0040】
本発明は、実施例の添付の図面により、更に詳細に説明される。図面は以下のことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】通気位置における細胞培養ディッシュの部分切断断面図である。
【図2】封止位置における細胞培養ディッシュの部分切断断面図である。
【図3】細胞培養ディッシュの底側から見た図である。
【図4】細胞培養ディッシュのディッシュの側部部分斜視図である。
【図5】蓋を開ける際の細胞培養ディッシュの側部を傾斜した斜視図である。
【図6】通気位置における細胞培養ディッシュの部分拡大縦断面図である。
【図7】封止位置における細胞培養ディッシュの部分拡大縦断面図である。
【図8】液体の封止楔による封止位置における細胞培養ディッシュの部分拡大縦断面図である。
【図9】液体の封止楔のさらなる部分拡大縦断面図である。
【図10】更なる通気位置における蓋を傾斜して置いた細胞培養ディッシュの側面からの傾斜した斜視図である。
【図11】更なる実施例の蓋側壁と一体化された弾性舌部を有する細胞培養ディッシュの上側部から傾斜した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0042】
本出願において、「上」および「下」の意味は、ディッシュがその底部を水平支持体上に載置される状態での細胞培養ディッシュの配置を指す。
【0043】
同じ符号が異なる実施例の説明に同じ特徴のために使われる。異なる実施例の異なる特色は上付き文字(’)により示される。
【0044】
細胞培養ディッシュ1はディッシュ2と蓋3を備え、それぞれ円形の底部を有する。ディッシュ2は底壁4を有し、そこから周側壁が上方へ起立している。
【0045】
側壁5の外側から外部に向かって、その高さの半分ぐらいの位置で、基本的に環状な周方向の把持縁6が突出している。把持縁6は4つの弾性舌部7を有し、これらはディッシュ2の周囲にわたって均等に配置される。弾性舌部7は固定端において把持縁6に接続する一体成形であり、把持縁6の平面上に基本的に延出している。弾性舌部7は自由端において、突起8または切欠きを有し、把持縁6の残余部から上方へ突出する。
【0046】
把持縁6は、弾性舌部7が配置されている部位において途切れる。把持縁6を途切れない形態にすることも可能で、弾性舌部7は把持縁6に配置されている溝により制限されてもよい。
【0047】
蓋3はカバー壁9を有する。蓋周側壁10はカバー壁9の縁から下方へ突出する。
【0048】
蓋側壁10の内周囲に円錐部11が有り、円錐部11は蓋3の封止座部を形成する。側壁5の外周囲上の周方向の円錐部12は円錐部11と結合する。
【0049】
図6から図8を参照すると、円錐部11は、蓋側壁10の内周囲を循環する突出封止部13に配置されている。円錐部12は側壁5の外周囲に刻み目14に配置されている。
【0050】
円錐部11と円錐部12はそれぞれカバー壁9に対して広がりをもつ。
【0051】
側壁5の上端の外径は、突出封止部13の下端の蓋側壁10の内径よりも約0.1から0.3mmほど大きい。その差は好ましくは約0.15mmである。
【0052】
刻み目14は約0.01から0.05mm程の深さを有する。その深さは好ましくは0.03mmである。
【0053】
たとえば、円錐部11および結合される円錐部12の高さは0.3mmから1.55mmでもよく、好ましくは0.5mmから1mmであり、最も好ましいのは0.5mmの高さである。
【0054】
蓋3は蓋側壁10の内周囲に楔形のリブ15を有し、リブ15は突出封止部13の下端まで延びる。これは図6にのみ示されている。リブ15は楔形であり、その高さは突出封止部13に対して上方へ向かって増加している。リブ15の下端は突出封止部13までの距離内に配置され、蓋側壁10の約3分の1または半分の高さに相当する。リブ15は蓋3をディッシュ2の中央に置くので、留めるのを容易にする。
【0055】
リブ15は、蓋側壁10の内周囲にわたって均一にいくつか配置される。リブ15は少なくとも3本あることが好ましい。本実施例ではリブ15が6本あるが、1本だけを図示している。
【0056】
ディッシュ2と蓋3は、それらの内と外の寸法において基本的に既知の細胞培養ディッシュと一致するように作ることができる。特に、側壁5の内径は30から150mmの範囲としてもよく、たとえば55mmである。側壁5の高さは5から20mmの範囲としてもよく、たとえば15mmとしてもよい。
【0057】
ディッシュ2と蓋3は、たとえばポリスチレン製である。
【0058】
蓋側壁10の下縁部が突起8上に載置されるように、図1および図6に示すように蓋3がディッシュ2にゆるく置かれていると、ディッシュ2と蓋3との間には通気ギャップがある。通気ギャップの高さは、0.1mmから1mmの範囲であり、好ましくは0.3mmから0.7mmであり、特に好ましくは0.5mmである。ディッシュ2に蓋3を通気位置に持ち上げることは、片手で容易になしえる。
【0059】
図2および7によれば、蓋3はディッシュ2に対して押圧することで封止位置に移動することができる。ここで、蓋側壁10の下縁部が、弾性舌部7をいくらか下方へ偏らせる。側壁5はその上縁部でリブ15を滑ってこれにより中央に置かれる。同時に、側壁5は放射状にいくらか圧縮され、蓋側壁10は放射状にいくらか広がる。最終的に、突出封止部13は刻み目13に嵌り、円錐部11、12はそれぞれ近接して密封して置かれる。その結果、ディッシュ2は蓋3にきつく閉じられる。この位置では、蓋3は刻み目14と突出封止部13との確固たる嵌め合いによりディッシュ2に固定されている。円錐部11、12の間における締め付け力により封止することが成し遂げられる。このように、封止位置において摩擦結合と同様な確実性がある。この結合により、安全であり、特に液密に蓋が覆われているにもかかわらず、容易に、すなわち蓋側壁10を同時に押圧する(てこの力がこれで生じる)ことにより再び解除される。
【0060】
図8および9によれば、さらなる封止として、側壁5の上縁部と蓋側壁10の上端との間に液体の楔17をもたらしてもよい。このために、側壁5とカバー壁9との間に、小さな周方向のギャップを残しておいてもよい。ディッシュ2と蓋3との間の封止は液体の楔18により強化される。
【0061】
図5によれば、細胞培養ディッシュは蓋側壁10の下側円環縁部に対して親指と人差し指で側面から押圧することで開けられ、楕円に変形される。この結果、平坦なカバー壁9と蓋側壁10の円錐部11が変形される。指の力方向に90°に位置している領域では、刻み目14における突起13の嵌め合いがこの結果として終わり、蓋3がディッシュ2から分離される。
【0062】
本発明の細胞培養ディッシュ1は従来の細胞培養ディッシュよりも良好な使用特性がある。特に、ディッシュ2と蓋3はそれぞれ容易に結合することができる。蓋3の取付けや取り外しを片手だけですることができる。細胞培養ディッシュは封止位置において密封して閉じられ、細胞培養ディッシュ1の内部におけるCO2含有量はほぼ一定に保たれる。通気ギャップを超える撥ねは、蓋を単に持ち上げると生じるが、蓋がディッシュを密封して閉じるともはや生じることはない。通気位置と封止位置はそれぞれの他の位置に影響することなく最大限に利用してもよい。
【0063】
図10によれば、蓋3はさらなる通気位置でディッシュ2に保つことができ、蓋3はディッシュ2に鋭角で合わさる。このために、蓋3の周方向の外側に突出するフランジ縁19が弾性舌部7の突起8の内側にもたれて置かれる。蓋3を図示される配置に固定するために、フランジ縁19は突起8と側壁5との間のギャップに固定される。この更なる位置で、大きく広がっている通気ギャップが成し遂げられ、特に良好なガス交換ができる。しかしながら、ディッシュ2は上部をすっかり覆われ、ここでも蓋3は単にディッシュ2に接触しているだけである。特に、蓋3はサブソイルに接触しておらず、サブソイルは汚染されているおそれがあるが、通気中にディッシュに汚染物質が到達するのを防止する。
【0064】
図11によれば、細胞培養ディッシュ1’は、すでに記載したものと、把持縁6が中断なく循環し弾性舌部7を有さない点で異なる。その代わりに、弾性舌部7’は蓋側壁10’にある。このために、蓋側壁10’は、その下縁部から発し弾性舌部7’を限定する平行溝20’、21’を有する。たとえば、3つの弾性舌部7’が蓋側壁10’の周囲に配置され、その1つのみを図示している。
【0065】
弾性舌部7’は内側へ突出するガイドカムを図示していない。弾性舌部7’のガイドカムは、図示されていない楔またはビーズのように横に突出する側壁5’の下部のガイド面を案内される。ガイド面は任意の方法で実施されてもよく、たとえばガイド面は完全に循環してもよいし、中断をともなって循環してもよい。蓋3’がゆるく持ち上げられると、弾性舌部7’は図示しないディッシュ2に対して高い位置の楔面上に支持される。蓋3’とディッシュ2’とを一緒に押圧すると、弾性舌部7’はガイド面を滑って、外側に偏る。最終的に、突出封止部13’は刻み目14’に嵌まり、蓋3’は封止位置にてディッシュ2’に密封して固定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁(4)および底壁(4)から上方へ起立する周側壁(5)を有するディッシュ(2)と、
通気位置において側壁(5)に密封して置かれる蓋(3)と、
側壁(5)と蓋(3)との間に通気ギャップ(13)がある通気位置において、封止位置の上方で蓋(3)をディッシュ(2)に保持する手段(7)と、
通気位置から封止位置へ蓋(3)を移動するために蓋(3)とディッシュ(2)とを一緒に押圧することでこれらの手段が封じられる
ように構成される細胞培養ディッシュ。
【請求項2】
ディッシュ(2)に蓋(3)を保持する手段(7)は、通気位置において蓋(3)とディッシュ(2)との間に弾性支持部を少なくとも1つ有する請求項1に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項3】
ディッシュ(2)の側壁(5)は側面から突き出た弾性支持部(7)を少なくとも1つ有し、
蓋はカバー壁(9)から下方に突出する蓋側壁(10)を有し、かつ、支持部(7)上に載置されるように構成される請求項1に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項4】
支持部(7)は側壁(5)の外側から突出し、蓋側壁(10)はディッシュ(2)の側壁(5)を締める請求項1から3のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項5】
ディッシュ(2)は弾性支持部(7)を少なくとも3つ有する請求項2から4のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項6】
ディッシュ(2)は、側壁(5)の対向する部位に弾性支持部(7)を有する請求項2から5のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項7】
側壁(5)の対向する2つの部位に1対の弾性支持部(7)を有し、
側壁(5)の対向する2つの部位にもう1対の弾性支持部(7)を有し、
一方の対に対して他方の対がほぼ90°の位置にずれている
ことを特徴とする請求項6に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項8】
弾性支持部(7)は弾性舌部を有する請求項1から7のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項9】
弾性舌部(7)は、
一端を側壁(5)に固定的に接続され、底壁(4)と平行に延出し、
他端上に蓋(3)に向かって突出する突起(8)を有し、
蓋側壁10が載置されるように構成される請求項8に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項10】
把持縁(6)が側壁(5)の外側から突出していることを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項11】
弾性支持部(7)が把持縁(6)の一部分である請求項10に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項12】
蓋(3)とディッシュ(2)上に封止手段(13、14)を備える請求項1から11のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項13】
封止手段(14)は、側壁(5)の外側に円状の刻み目(14)と、蓋側壁(10)の内側に突出する封止部(13)とを有し、
突出封止部(13)は、封止位置において刻み目(14)に締め付け、通気位置において刻み目との嵌め合いが外れる請求項12に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項14】
蓋周側壁(10)の内周囲の円錐部(11)が、封止位置において、ディッシュ(2)の側壁(5)の湾曲面に接近して密封して位置し、かつ/または、側壁(5)の湾曲面の円錐部が蓋周側壁(10)の内周囲に接近して密封して置かれる請求項1から13のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項15】
ディッシュ(2)上の蓋(3)を封止位置において着脱可能に保持する手段(11、12)を備える請求項1から14のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項16】
プラスチック製のディッシュ(3)および/またはプラスチック製の蓋(2)を備える請求項1から14のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項1】
底壁(4)および底壁(4)から上方へ起立する周側壁(5)を有するディッシュ(2)と、
通気位置において側壁(5)に密封して置かれる蓋(3)と、
側壁(5)と蓋(3)との間に通気ギャップ(13)がある通気位置において、封止位置の上方で蓋(3)をディッシュ(2)に保持する手段(7)と、
通気位置から封止位置へ蓋(3)を移動するために蓋(3)とディッシュ(2)とを一緒に押圧することでこれらの手段が封じられる
ように構成される細胞培養ディッシュ。
【請求項2】
ディッシュ(2)に蓋(3)を保持する手段(7)は、通気位置において蓋(3)とディッシュ(2)との間に弾性支持部を少なくとも1つ有する請求項1に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項3】
ディッシュ(2)の側壁(5)は側面から突き出た弾性支持部(7)を少なくとも1つ有し、
蓋はカバー壁(9)から下方に突出する蓋側壁(10)を有し、かつ、支持部(7)上に載置されるように構成される請求項1に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項4】
支持部(7)は側壁(5)の外側から突出し、蓋側壁(10)はディッシュ(2)の側壁(5)を締める請求項1から3のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項5】
ディッシュ(2)は弾性支持部(7)を少なくとも3つ有する請求項2から4のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項6】
ディッシュ(2)は、側壁(5)の対向する部位に弾性支持部(7)を有する請求項2から5のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項7】
側壁(5)の対向する2つの部位に1対の弾性支持部(7)を有し、
側壁(5)の対向する2つの部位にもう1対の弾性支持部(7)を有し、
一方の対に対して他方の対がほぼ90°の位置にずれている
ことを特徴とする請求項6に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項8】
弾性支持部(7)は弾性舌部を有する請求項1から7のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項9】
弾性舌部(7)は、
一端を側壁(5)に固定的に接続され、底壁(4)と平行に延出し、
他端上に蓋(3)に向かって突出する突起(8)を有し、
蓋側壁10が載置されるように構成される請求項8に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項10】
把持縁(6)が側壁(5)の外側から突出していることを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項11】
弾性支持部(7)が把持縁(6)の一部分である請求項10に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項12】
蓋(3)とディッシュ(2)上に封止手段(13、14)を備える請求項1から11のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項13】
封止手段(14)は、側壁(5)の外側に円状の刻み目(14)と、蓋側壁(10)の内側に突出する封止部(13)とを有し、
突出封止部(13)は、封止位置において刻み目(14)に締め付け、通気位置において刻み目との嵌め合いが外れる請求項12に記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項14】
蓋周側壁(10)の内周囲の円錐部(11)が、封止位置において、ディッシュ(2)の側壁(5)の湾曲面に接近して密封して位置し、かつ/または、側壁(5)の湾曲面の円錐部が蓋周側壁(10)の内周囲に接近して密封して置かれる請求項1から13のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項15】
ディッシュ(2)上の蓋(3)を封止位置において着脱可能に保持する手段(11、12)を備える請求項1から14のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【請求項16】
プラスチック製のディッシュ(3)および/またはプラスチック製の蓋(2)を備える請求項1から14のいずれか1つに記載の細胞培養ディッシュ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−207218(P2010−207218A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−50769(P2010−50769)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(591121683)エッペンドルフ アクチエンゲゼルシャフト (23)
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf AG
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, D−22339 Hamburg, Germany
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50769(P2010−50769)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(591121683)エッペンドルフ アクチエンゲゼルシャフト (23)
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf AG
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, D−22339 Hamburg, Germany
【Fターム(参考)】
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