説明

細胞培養プロセス

異種タンパク質を分泌する哺乳動物細胞、(例えば、CHO細胞またはBHK細胞)を、35.1〜36.5℃、および/またはpH7.15〜7.20、および/または10%以下の溶存CO濃度で培養すること。好ましい異種タンパク質は、第VIII因子、ADAMTS−13、フューリン、または第VII因子である。本発明の別の実施形態において、細胞培養上清を含む容器の中でのFVIIIを分泌する哺乳動物細胞の連続培養の方法が提供される。ここでは、細胞培養上清中での細胞の密度はインラインセンサーによって測定され、容器への新鮮な培地の流入は、所望される範囲内に細胞密度が維持されるように自動的に制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年12月27日に出願された米国仮出願第61/009,328号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、哺乳動物細胞、具体的には、異種タンパク質および/または組み換え体タンパク質を分泌する哺乳動物細胞、そしてさらに具体的には、血液凝固第VIII因子(本明細書中以後、「第VIII因子」または単に「FVIII」)、ADAMTS−13、フューリン、あるいは凝固第VII因子(本明細書中以後、「第VII因子」または単に「FVII」のような血中タンパク質を分泌する哺乳動物細胞を培養するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
血液凝固第VIII因子は、哺乳動物においてみられる微量の血漿糖タンパク質であり、第X因子の活性化にIXaの補因子として関与している。第VIII因子の遺伝的欠損は、出血性障害である血友病Aを生じる。血友病Aは、精製された第VIII因子での治療が可能である。第VIII因子は、血漿から抽出することができるか、または組み換えDNAをベースとする技術によって生産することができる。血漿中では、これは、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)との複合体として循環している。
【0004】
組み換え体である第VIII因子(rFVIII)は、第VIII因子分子をコードするDNA配列を持つベクターがトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって生産させることができる。いくつかの場合には、組み換え体である第VIII因子は、第VIII因子を安定化させる組み換え体であるフォン・ヴィレブランド因子(rvWF)と同時に生産される。そのような同時生産には、FVIIIとvWFを発現するそれぞれの細胞株の同時培養、または同じ細胞の中での2種類のタンパク質の同時発現が含まれ得る。特許文献1(Genetics Institute)および非特許文献1参照のこと。
【0005】
組み換え体である第VIII因子を調製するための典型的なプロセスにおいては、細胞は培地中で培養され、第VIII因子が培地中に分泌される。その後、第VIII因子が培地から、状況によってはvWFとの複合体として、精製され得る。
【0006】
組み換え体である第VIII因子は、当該分野で公知のプロセスでは比較的低い収率でしか得られないことが原因で、生産コストが高い。細胞あたりの収率は、他の組み換え体タンパク質について得ることができる収率と比較して低い傾向にある。培養培地に動物性の生成物(例えば、血清)が補充されていなければ、培地は、比較的低い細胞密度しかサポートすることができない。これにより、培地の容量あたりの収率が減少する。しかし、ウイルスや他の伝染性物質の混入のリスクを低下させるためには、動物性の生成物が培養培地に補充されないことが望ましい。FVIIIの生産のための動物性タンパク質を含まない培地は、例えば、特許文献2(Baxter AG)から公知である。
【0007】
本発明により、当該分野で公知のプロセスと比較して収率が改善された、rFVIIIを含む血中タンパク質を生産するためのプロセスが提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,250,421号明細書
【特許文献2】米国特許第6,936,441号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kaufmanら、Mol.Cell.Biol.(1989)9,1233〜1242
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様により、細胞培養上清中で異種タンパク質を分泌する哺乳動物細胞を培養する方法が提供される。ここでは、細胞培養上清は、X±0.9℃に設定される温度で維持される。ここでは、Xは35.1から36.5までの値を有し、ただし温度は37℃未満に設定される。
【0011】
本発明の第2の態様により、細胞培養上清中で異種タンパク質を分泌する哺乳動物細胞を培養する方法が提供される。ここでは、細胞培養上清は、X±0.05に設定されたpHで維持される。ここでは、Xは7.15から7.20までの値を有し、ただしpHは7.10より大きく設定される。
【0012】
本発明の第3の態様により、細胞培養上清中で異種タンパク質を分泌する哺乳動物細胞を培養する方法が提供される。ここでは、細胞培養上清は、1〜10%のCO濃度を有する。
【0013】
本発明の第4の態様により、細胞培養上清を含む容器の中でのFVIIIを分泌する哺乳動物細胞の連続培養の方法が提供される。ここでは、細胞培養上清中での細胞の密度はインラインセンサーによって測定され、容器への新鮮な培地の流入は、所望される範囲内に細胞密度が維持されるように自動的に制御される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の態様のプロセスにおいては、哺乳動物細胞がその中で培養される細胞培養上清は、X±0.9℃に設定される温度で維持される。ここでは、Xは35.1から36.5までの値を有し、ただし温度は37℃未満に設定される。好ましい実施形態では、温度は、36±0.9℃、好ましくは36±0.5℃、より好ましくは36±0.2℃、そして最も好ましくは36℃;または35.1±0.9℃、好ましくは35.1±0.5℃、より好ましくは35.1±0.2℃、そして最も好ましくは35.1℃;または36.5±0.9℃、36.5±0.5℃、より好ましくは36.5±0.2℃、そして最も好ましくは36.5℃に設定される。
【0015】
「細胞培養上清」は、その中で哺乳動物細胞が培養される培地である。この培地は、培養物に対して添加され得る供給培地と混同してはならないが、供給培地もまた、細胞培養上清について設定される温度で培養物に添加させることが好ましい。「培養物」によって、本発明者らは、細胞培養上清とその中で培養された哺乳動物細胞とを意味する。従来法では、哺乳動物細胞は37℃で培養される。驚くべきことに、本出願では、より低温(例えば、36℃)での哺乳動物細胞の培養により、組み換え体タンパク質の収率が増大することが見出された。
【0016】
ある温度で「培養すること」または「維持すること」により、本発明者らは、プロセスの制御システムが設定される温度、言い換えると、意図される、目的とする、温度をいう。明らかに、経時的な培養物の温度、そして培養容器全体の個々の位置による小さな差異があるであろう。本発明者がX±Y℃に設定した温度で「培養すること」または「維持すること」をいう場合は、本発明者らは、設定値がX+Y℃からX−Y℃までの値にあることを意味する。したがって、例えば、Xが36.0±0.9℃である場合は、設定値は、35.1から36.9までの値に設定される。好ましいX値のそれぞれについて、設定値は、範囲X±0.9℃、±0.8℃、±0.7℃、±0.6℃、±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、もしくは±0.1℃内の値である。より狭い範囲が好ましい。Xの設定値が最も好ましい。
【0017】
任意の所定の設定値について、温度においてはわずかな差異が生じ得る。典型的には、そのような差異は、温度が設定値からいくらか外れた後にしか加熱要素および冷却要素が作動しないことが原因で起こり得る。その場合、設定値はX(±Y)であり、加熱要素または冷却要素は、必要に応じて、温度が±Z℃変化すると作動する。典型的には、加熱要素または冷却要素が作動する前に温度について強要される設定値からの偏差の程度は、プロセスの制御システムの中にプログラミングされ得る。温度は、サーモスタットによって制御される加熱要素および冷却要素によって、最近±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、またはさらには±0.1℃になるように制御され得る。温度についてのさらに大きな差異(例えば、±0.9℃、±0.8℃、±0.7℃、もしくは±0.6℃)もまたプログラムされ得る。温度はまた、特定の温度の加熱浴中に培養容器を浸すことによっても制御することができる。考えられる限りでは、加熱が継続的に行われるので、設定値からの差異は存在しない。差異の別の原因は、細胞培養上清の温度の測定誤差が原因で生じる。細胞培養装置において使用される一般的な温度計は、±0.3℃、もしくは±0.2℃、またはさらには±0.1℃の変動性を有し得る。
【0018】
設定値がX±Y℃の範囲内の値に設定され、温度の許容誤差が±Z℃である(すなわち、温度が必要に応じて±Z℃外れると、加熱器または冷却器が作動する)場合は、これは、(X−YからX+Y)±Z℃の設定値として表わすこともできる。可能なX値のそれぞれについて、上記で示されたような±Y℃と±Z℃との全ての組み合わせが想定されるが、ただし温度は37℃未満に設定される。
【0019】
1つの好ましい実施形態では、温度は36±Y℃に設定される。好ましくは、温度は(35.4〜36.6)±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(35.5〜36.5)±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(35.6〜36.4)±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(35.7〜36.3)±0.6℃、±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(35.8〜36.2)±0.7℃、±0.6℃、±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(35.9〜36.1)±0.8℃、±0.7℃、±0.6℃、±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または36±0.9℃、±0.8℃、±0.7℃、±0.6℃、±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0℃に設定される。
【0020】
別の好ましい実施形態では、温度は35.1±Y℃に設定される。好ましくは、温度は(34.5〜35.7)±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(34.6〜35.6)±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(34.7〜35.5)±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(34.8〜35.4)±0.6℃、±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(34.9〜35.3)±0.7℃、±0.6℃、±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(35.0〜35.2)±0.8℃、±0.7℃、±0.6℃、±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または35.1±0.9℃、±0.8℃、±0.7℃、±0.6℃、±0.5℃、±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0℃に設定される。
【0021】
別の好ましい実施形態では、温度は36.5±Y℃に設定される。好ましくは、温度は36.1〜36.9)±0;または(36.2〜36.8)±0.1℃、もしくは±0;または(36.3〜36.7)±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または(36.4〜36.6)±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0;または36.5±0.4℃、±0.3℃、±0.2℃、±0.1℃、もしくは±0に設定される。
【0022】
本発明の第2の態様のプロセスにおいては、細胞培養上清は、X±0.05に設定されたpHで維持される。ここでは、Xは7.15から7.20までの値を有し、ただしpHは7.10より大きく設定される。好ましい実施形態では、pHは7.20±0.05、好ましくは7.20±0.03、より好ましくは7.20±0.01、そして最も好ましくは7.20;または7.15±0.05、好ましくは7.15±0.03、より好ましくは7.15±0.01、そして最も好ましくは7.15に設定される。組み換え体タンパク質を生産するための従来のプロセスにおいては、細胞培養上清はpH7.1で維持される。驚くべきことに、本出願では、より高いpH(例えば、pH7.2)で哺乳動物細胞を培養することにより、組み換え体タンパク質の収率が増大することが明らかになった。
【0023】
あるpHで「培養すること」または「維持すること」により、本発明者らは、プロセスの制御システムが設定されるpH、言い換えると、意図される、目的とする、pHをいう。本発明者らがX±Yに設定したpHで「培養すること」または「維持すること」という場合は、本発明者らは、設定値がX+YからX−Yまでの値にあることを意味する。好ましいX値のそれぞれについて、設定値は、X±0.05、±0.04、±0.03、±0.02、または±0.01の範囲内の値である。より狭い範囲が好ましい。Xの設定値が最も好ましい。
【0024】
任意の所定設定値について、pHのわずかな差異が生じ得る。通常は、そのような差異は、pHを制御する手段(例えば、酸または塩基を添加すること、あるいはスパージング速度を変化させることによる)が、pHが設定値からいくらか外れた後でしか作動しないことが原因で起こり得る。通常、pHは、最近±0.05、±0.04、±0.03、±0.02、または±0.01のpH単位になるように制御される。
【0025】
pHの設定値がX±Yの範囲内の値に設定され、そして許容範囲が±Zである場合は、これは、(X−YからX+Y)±Zの設定値として表わすこともできる。可能なXの値のそれぞれについて、上記に示したような±Yと±Zとの全ての組み合わせが想定され、ただしpHは7.10より大きく設定される。
【0026】
1つの好ましい実施形態では、pHは、7.20±Yに設定される。好ましくは、pHは(7.15〜7.25)±0;または(7.16〜7.24)±0.1、もしくは±0;または(7.17〜7.23)±0.2、±0.1、もしくは±0;または(7.18〜7.22)±0.3、±0.2、±0.1、もしくは±0;または(7.19〜7.21)±0.4、±0.3、±0.2、±0.1、もしくは±0;または7.20±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1、もしくは±0に設定される。
【0027】
別の好ましい実施形態では、pHは7.15±Yに設定される。好ましくは、pHは(7.11〜7.19)±0;または(7.12〜7.18)±0.1、もしくは±0;または(7.13〜7.17)±0.2、±0.1、もしくは±0;または(7.14〜7.16)±0.3、±0.2、±0.1、もしくは±0;または7.15±0.4、±0.3、±0.2、±0.1、もしくは±0に設定される。
【0028】
本発明の第3の態様のプロセスにおいては、細胞培養上清は、1%〜10%のCO濃度、例えば、4.0%〜9.0%、5.5%〜8.5%、または約6%〜8%のCO濃度を有する。従来法では、CO濃度は、細胞培養上清から取り出されていない細胞によって生産されたCOが原因でこれよりも高い。驚くべきことに、出願人は、10%以下のCO濃度を維持することにより組み換え体タンパク質の収率が増大することを見出した。これは、供給培地が脱気される場合(例えば、供給培地全体に空気を泡立てることによる)、ならびにバイオリアクター中の細胞培養上清がスパージングされる場合に、dCOを低く維持するために役立つ。
【0029】
好ましくは、本発明の最初の3つの態様のそれぞれについてのプロセスは、本発明の他の態様の1つ以上のプロセスに関して定められている特定の特徴を含むように操作される。言い換えると、温度がX±0.9℃に維持される(ここでは、Xは35.1から36.5℃までの値を有する)場合には、pHをX±0.05に(ここでは、Xは7.15から7.20までの値を有する)、そして/またはCO濃度を10%以下に維持することもまた有効である。pHがX±0.05に維持される(ここでは、Xは7.15から7.20までの値を有する)場合には、温度をX±0.9℃に(ここでは、Xは35.1から36.5℃までの値を有する)、および/またはCO濃度を10%以下に維持することもまた有効である。CO濃度が10%以下に維持される場合は、pHをX±0.05に(ここでは、Xは7.15から7.20までの値を有する)、および/または温度をX±0.9℃に(ここでは、Xは35.1から36.5℃までの値を有する)維持することもまた有効である。
【0030】
3種類の定義されたパラメーター(温度、pH、およびCO濃度)をモニタリングする方法は当該分野で周知であり、通常は、バイオリアクターに挿入されるか、または培養培地が循環させられるループの中に含まれるか、または培養培地の抽出された試料に挿入されるプローブに依存する。適切なインラインdCOセンサーとその使用については、Pattisonら(2000)Biotechnol.Prog.16:769−774に記載されている。適しているインラインpHセンサーはMettler Toledo InPro 3100/125/Pt100(Mettler−Toledo Ingold,Inc.,Bedford,MA)である。pHおよびpOに加えてdCOを測定するために適しているオフラインシステムは、BioProfile pHOx(Nova Biomedical Corporation,Waltham MA)である。このシステムでは、dCOは、5%の不正確性の分解能(imprecision resolution)で、3mmHg〜200mmHgの範囲にある電位電極によって測定される。pHは、バイオリアクター中の細胞培養上清の温度に近い37℃の温度で、このシステムの中で測定され得る。これを予め決定された値に維持するために特異的なパラメーターを変化させる方法もまた周知である。例えば、温度を一定に保つことには、通常は、バイオリアクターもしくは供給培地を加熱または冷却すること(これが流加培養または連続プロセスである場合)が含まれる。pHを一定に保つことには、通常は、適切な緩衝液(典型的には、重炭酸塩)を選択し、充分な量を供給すること、および酸(例えば、塩酸)またはアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、もしくはそれらの混合物)を必要に応じて供給培地に添加することが含まれる。そしてCO濃度を一定に保つことには、通常は、スパージング速度を調整すること(下記を参照のこと)、または上部空間中でのCOの流れを調節することが含まれる。インラインpHプローブの較正は、細胞が培養される間に経時的に(例えば、数日間または数週間の期間にわたって)ドリフトする可能性がある。そのような場合は、最近較正されたオフラインプローブから得られた測定値を使用することにより、インラインプローブをリセットすることが有効であり得る。適切なオフラインプローブはBioProfile pHOx(Nova Biomedical Corporation,Waltham MA)である。
【0031】
本発明者らは、(例えば、NaOHを添加することにより)pHを増大させることでは、活性タンパク質の生産に関して最大の利点を得るにはそれ自体は充分ではないことを明らかにした。それよりもむしろ、CO濃度を下げることが所望される。通常は、このプロセスの他のパラメーターが一定に維持されるであろう。しかし、本発明者らは、CO濃度を下げること、しかし、好ましくはNaOHを添加することなく、pHを7.1から、例えば、7.15または7.2に上昇させることが有効であることを見出した。
【0032】
哺乳動物細胞の培養には、細胞を増殖させるための酸素が必要である。通常は、これは、注入口を通じて培養物中に酸素を送り込むことによって提供される。細胞の呼吸が原因で蓄積するCOを除去することも必要である。これは「スパージング」、すなわち、COを取り込み、流し出すためにバイオリアクター全体に気体を通すことによって行われる。従来法では、これは酸素を使用して行うこともできる。しかし、本発明者らは、代わりに空気を使用することが有効であることを見出した。通常、従来の不活性ガス(例えば、窒素)は、空気を使用するよりもCOのスパージングには効果が低いことが明らかにされている。空気に約20%の酸素が含まれているとすると、はるかに多い5倍量の空気が使用されるであろうと当業者は考える。しかし、これは、大規模な培養(特に、2500Lの規模での培養)には適さないことが明らかにされている。2500Lのバイオリアクターの中では、7倍から10倍量の空気、好ましくは約9倍量の空気が使用される。例えば、標準的な条件下では、2500Lのバイオリアクターに、10μmの気泡の大きさのOが、0.02VVH(1時間あたりの培養物の容量あたりのOの容量)がスパージングされる。本発明の方法にしたがって使用される同じ2500Lのバイオリアクターには、10μmの気泡の大きさの空気は、0.18VVHの速度でスパージングされるであろう。
【0033】
したがって、驚くほど多量の空気の使用により、適切な酸素供給が提供され、そして望ましくないCOが除去されることが明らかにされている。
【0034】
生産フェーズの間には、上記のような空気のスパージングによってCOが除去されることが好ましい。これは、別の方法によって細胞培養上清に有害なほど高濃度にまでCOを蓄積する大容量のバイオリアクターが使用される場合に特にそのとおりである。しかし、培養の開始時、または小規模(例えば、1Lまたは2.5Lの規模)での培養では、上部空間にはCOが重層される場合がある。そのような条件下では、低いdCO濃度に達する場合がある。上部空間のCOの重層はまた、pHがあまりに塩基性側にある場合には、pHを設定値にまで下げるためにも使用され得る。
【0035】
細胞は、所望されるタンパク質(例えば、FVIII)を生産するための、好ましくは、製造プロセス(すなわち、少なくとも1リットル)の中で培養することができる任意の哺乳動物細胞であり得る。例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7,ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293細胞、または懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.,36:59(1997));ベビーハムスター腎細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(例えば、DUKX−B11サブクローン)(CHO,UrlaubおよびChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980));マウスのセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243−251(1980));サルの腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザルの腎細胞(VERO−76,ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa,ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌細胞株(HepG2)が挙げられる。好ましくは、細胞株は齧歯類の細胞株、特に、CHOまたはBHKのようなハムスターの細胞株である。
【0036】
組み換え体タンパク質を発現する安定なCHO細胞クローンを調製する好ましい方法は以下のとおりである。DHFR欠損CHO細胞株DUKX−BIIは、原則として米国特許第5,250,421号(Kaufmanら、Genetics Institute,Inc.)に記載されているように、関連する組み換え体タンパク質の発現が可能なDHFR発現ベクターでトランスフェクトされる。トランスフェクションは、メトトレキセートについて選択される。組み換え体タンパク質の発現をコードする関連領域とDHFR遺伝子の増幅は、漸増濃度のメトトレキセートの中での細胞の増殖によって行われる。適切である場合には、CHO細胞株は、原則として米国特許第6,100,061号(Reiterら、Immuno Aktiengesellschaft)に記載されているとおりに、血清および/またはタンパク質を含まない培地の中での増殖に適応させられ得る。
【0037】
宿主細胞株を培養するために選択される基底培地は本発明については重要ではなく、哺乳動物細胞を培養するために適している当該分野で公知のもののうちの任意の1つ、またはそれらの組み合わせであり得る。ダルベッコ改変イーグル培地、Ham’s F−12培地、Eagle’s最小必須培地、およびRPMI−1640培地などの培地が市販されている。組み換え体インシュリンのような増殖因子の添加は随意である。
【0038】
歴史的には、動物細胞は、動物の血清を含む培地中で培養されてきた。しかし、そのような培地は不完全にしか定義されておらず、感染のリスクがある。したがって、当業者は、いずれのタンパク質も全く含まれていないか、または組み換え生産されない任意のタンパク質が少なくとも含まれていないかのいずれかである、「タンパク質を含まない」培地を考案した。第VIII因子の不安定な性質が原因で、操作された宿主細胞の生産性は、タンパク質を含まない条件下ではかなり低下する。ヒト血清アルブミンが、組み換え体タンパク質の生産のための無血清培地補充物として一般的に使用されている。アルブミン自体がFVIIIを安定化させ、血清由来のアルブミン調製物中に存在する不純物もまた、アルブミンの安定化作用に寄与し得る。リポタンパク質のような因子は、血清を含まない条件下での組み換え体である第VIII因子の生産のための、ヒト血清アルブミンの代わりとなるものとして同定されている。
【0039】
好ましい培地としては、米国特許第6,171,825号(Bayer,Inc)および米国特許第6,936,441号(Baxter AG)に開示されているものが挙げられる。
【0040】
米国特許第6,171,825号の培地は、組み換え体インシュリン、鉄、ポリオール、銅、および状況に応じた他の微量金属が補充された、改変Dulbecco’s最少必須培地とHam’s F−12培地(重量で50:50)からなる。
【0041】
インシュリンは組み換え体でなければならず、「Nucellin」インシュリンとしてEli Lillyから入手することができる。これは、0.1μg/ml〜20μg/ml(好ましくは、5μg/ml〜15μg/ml、または約10μg/ml)で添加することができる。鉄は、好ましくは、Fe2+イオンの形態(例えば、FeSO・EDTAとして提供される)であり、5μM〜100μM(好ましくは、約50μm)で存在し得る。適切なポリオールとしては、約1000〜約16000までの範囲の分子量を有しているポリ(オキシエチレン)とポリ(オキシプロピレン)の非イオン性ブロックコポリマーが挙げられる。特に好ましいポリオールはPluronic F−68(BASF Wyandotte)であり、これは、8400の平均分子量を有し、ポリ(オキシプロピレン)(20重量%)のセンターブロックと、両方の末端にあるポリ(オキシエチレン)のブロックからなる。これは、Unichema Chemie BVからSynperonic F−68として入手することもできる。他のものとしては、Pluronics F−61、F−71、およびF−108が挙げられる。銅(Cu2+)は、50nM〜800nMのCuSO、好ましくは100nM〜400nM、便宜的には約250nM等量で添加され得る。微量金属(例えば、マンガン、モリブデン、ケイ素、リチウム、およびクロム)のパネルを含めることにより、第VIII因子の生産のさらなる増大を誘導することができる。BHK細胞は、このタンパク質を含まない基本培地の中ではかなり増殖する。
【0042】
米国特許第6,936,441号の培地もまた、DMEMとHam’s F12との50/50混合物をベースとするが、これには、0.1g/lから100g/lの間、好ましくは1g/lから5g/lの間で大豆ペプトンまたは酵母抽出物も含まれる。特に好ましい実施形態では、大豆抽出物(例えば、大豆ペプトン)が使用され得る。大豆ペプトンの分子量は50kD未満、好ましくは10kD未満であり得る。350ダルトンの平均分子量を有している限外濾過された大豆ペプトンの添加は、組み換え体である細胞株の生産性に特に有効であることが証明されている。これは、全部で約9.5%の窒素含有量と、約13%または約7%〜10%の遊離のアミノ酸の含有量を有している大豆単離物である。
【0043】
特に好ましい培地は、以下の組成を有する:合成の最少培地(例えば、50/50のDMEM/Ham’s F12)1g/l〜25g/l;大豆ペプトン0.5g/l〜50g/l;L−グルタミン0.05g/l〜1g/l;NaHCO 0.1g/l〜10g/l;アスコルビン酸0.0005g/l〜0.05g/l;エタノールアミン0.0005〜0.05;および亜セレン酸ナトリウム1μg/l〜15μg/l。状況に応じて、ポリエチレングリコールのような非イオン性界面活性剤(例えば、Pluronic F−61、Pluronic F−68、Pluronic F−71、またはPluronic F−108)が、消泡剤として培地に添加され得る。この薬剤は、一般的には、エアレーション(「スパージング」)のネガティブ効果から細胞を保護するために使用される。なぜなら、界面活性剤を添加しなければ、気泡の上昇および破裂によって、気泡の表面に存在する細胞が傷つく可能性があるからである。
【0044】
非イオン性界面活性剤の量は、0.05g/l〜10g/lの間、好ましくは0.1g/l〜5g/lの間の範囲であり得る。さらに、培地には、シクロデキストリンまたはその誘導体が含まれ得る。好ましくは、血清およびタンパク質を含まない培地には、組織培養に適しており、合成起源または植物起源のものであるプロテアーゼ阻害剤(例えば、セリンプロテアーゼ阻害剤)が含まれる。
【0045】
別の好ましい実施形態では、以下のアミノ酸混合物が、上記培地にさらに添加される:L−アスパラギン(0.001g/l〜1g/l;好ましくは、0.01g/l〜0.05g/l;特に好ましくは、0.015g/l〜0.03g/l)、L−システイン(0.001g/l〜1g/l;好ましくは、0.005g/l〜0.05g/l;特に好ましくは、0.01g/l〜0.03g/l)、L−シスチン(0.001g/l〜1g/l;好ましくは、0.01g/l〜0.05g/l;特に好ましくは、0.015g/l〜0.03g/l)、L−プロリン(0.001g/l〜1.5g/l;好ましくは、0.01g/l〜0.07g/l;特に好ましくは、0.02g/l〜0.05g/l)、L−トリプトファン(0.001g/l〜1g/l;好ましくは、0.01g/l〜0.05g/l;特に好ましくは、0.015g/l〜0.03g/l)、およびL−グルタミン(0.05g/l〜10g/l;好ましくは、0.1g/l〜1g/l)。これらのアミノ酸は、個別に、または組み合わせて培地に添加され得る。上記アミノ酸を全て含むアミノ酸混合物の組み合わせた添加が特に好ましい。
【0046】
特定の実施形態では、上記アミノ酸混合物と、精製された限外濾過された大豆ペプトンとの組み合わせを含む血清およびタンパク質を含まない培地がさらに使用される。
【0047】
米国特許第6,936,441号の培地は、CHO細胞を培養するために特によく適しているが、これはさらに他の細胞とともに使用することもできる。
【0048】
さらなる適切な培地は、US2007/0212770(Grillbergerら;Baxter International Inc.,Baxter Healthcare S.A.)に開示されているオリゴペプチドを含まない培地である。
【0049】
好ましくは、培養培地は、重炭酸塩イオン(通常は、重炭酸ナトリウムとして供給される)の使用によって緩衝化される。
【0050】
培養培地が、210mOsm〜650mOsmの間、好ましくは270mOsm〜450mOsmの間、より好ましくは310mOsm〜350mOsmの間、そして最も好ましくは320mOsmのオスモル濃度を有していることが適している。好ましくは、上清のオスモル濃度は、本発明の方法全体を通じてこれらの範囲のうちの1つ以上の中で維持される。
【0051】
培養は、任意の従来のタイプの培養(例えば、バッチ培養、流加培養、または連続培養)であり得るが、流加培養または連続培養が好ましい。適切な連続培養には、反復バッチ、ケモスタット、タービドスタット、または灌流培養が含まれる。
【0052】
バッチ培養は、必要な全ての栄養素を含んだ状態で開始され、培養が完了するまで、すなわち、栄養素が使い尽くされるか、または培養が何らかの理由によって停止するまで進められる。
【0053】
流加培養は、細胞と栄養素を含んだ状態で開始されるが、細胞の増殖を制限するために制御された方法で、その後にさらに栄養素が供給される意味でのバッチプロセスである。流加培養のストラテジーは、通常は、バイオリアクターの中で高い細胞密度に到達させるための生物産業的プロセスにおいて使用される。供給される溶液は、通常は、バイオリアクターの希釈を避けるために高度に濃縮される。栄養素の制御された添加は、培養物の増殖速度に直接影響を与え、代謝のオーバーフロー(代謝による副産物の形成)および酸素制限(嫌気生活)を回避することができる。ほとんどの場合は、増殖を制限する栄養素はグルコースであり、これは、高度に濃縮されたグルコースシロップ(例えば、600g/l〜850g/l)として培養物に供給される。
【0054】
様々なストラテジーを、流加培養プロセスにおいて増殖を制御するために使用することができる。例えば、溶存酸素張力(DOT、pO2)、酸素摂取速度(OUR)、グルコース濃度、乳酸塩濃度、pH、およびアンモニア濃度のいずれかを、そのパラメーターを一定に維持することによって培養物の増殖をモニターし、制御するために使用することができる。連続培養においては、栄養素が添加され、通常は、培地は、望ましくない副産物を除去して安定した状態を維持するために抽出される。適切な連続培養法は、反復バッチ培養、ケモスタット、タービドスタット、および灌流培養である。
【0055】
例えば、CHO細胞は、攪拌槽またはエアリフトタンクの中で培養され得る。これは、1日あたり2〜10容量の交換の灌流速度で、そして40%〜60%の間、好ましくは約50%の酸素濃度で、適切な培地で灌流される。さらに、細胞は、ケモスタット法によって、上記の好ましいpH値、10%〜60%の間(好ましくは、約20%)の酸素濃度、および0.25〜1.0(好ましくは約0.5)の希釈速度Dを使用して培養され得る。
【0056】
反復バッチ培養(連続継代培養としても知られている)では、細胞は培養培地中に入れられ、所望される細胞密度になるまで増殖させられる。減衰期および細胞死が始まることを避けるために、培養物は、細胞がそれらの最大濃度に達する前に完全増殖培地で希釈される。希釈の量と頻度は広く変化し、細胞株の増殖特性および培養プロセスの利便性に応じて様々である。このプロセスは必要に応じて複数回繰り返すことができ、そして細胞および培地が継代時に廃棄されない限りは、培養物の容量は希釈が行われるたびに段階的に増大する。容量の増大は、容器内で希釈できるような十分な大きさの反応器を用いることによって、または希釈された培養物をいくつかの容器に分けることによって取り扱うことができる。このタイプの培養の原理は、細胞を指数増殖の状態で維持することである。連続継代培養は、培養物の容量が常に段階的に増加し、集菌を複数回行うことができ、細胞は増殖し続け、そしてこのプロセスは所望される限り継続することができることを特徴とする。
【0057】
ケモスタットおよびタービドスタット法においては、抽出された培地に細胞が含まれる。したがって、細胞培養容器の中に残っている細胞は一定の状態を維持するために増殖しなければならない。ケモスタット法では、増殖速度は、通常、希釈速度、すなわち、新鮮な培地が添加される速度を制御することによって制御される。細胞は、最大増殖速度未満で培養され、これは希釈速度を制限することによって行われる。増殖速度は通常は早い。対照的に、タービドスタット法では、希釈速度は、pHおよび温度のような所定の操作条件で細胞が到達することができる最大増殖速度が可能となるように設定される。
【0058】
灌流培養においては、抽出された培地は、細胞の大部分が培養容器の中に保持される(例えば、抽出培地が通過させられる膜の上に保持させることによって)ので、細胞が取り除かれる。しかし、通常は、そのような膜は細胞を100%保持することはできず、そのため、一部は培地が抽出される際に取り出されてしまう。これは極めて早い増殖速度で灌流培養を操作するためには重要ではない。なぜなら、細胞の大部分が培養容器の中に保持されるからである。
【0059】
連続培養(特に、反復バッチ培養、ケモスタット培養、およびタービドスタット培養)は、通常は、早い増殖速度で操作される。一般的な実施方法にしたがうと、これは、通常、最大の容量生産性を得ようとする目的で、最大増殖速度、または最大に近い増殖速度を維持するように追求される。容量生産性は、時間間隔あたりの培養物の容量あたりのタンパク質量または活性の単位で測定される。より速い細胞増殖は、1日あたりに生産される培養物の量がより多いことと考えられ、より高い容量生産性を反映すると従来から考えられている。本発明者らは、特定の実施形態では、最大の容量生産性が、細胞の最大増殖速度では得られないことを思いがけず発見した。実施例に記載されるように、フューリンを発現するCHO細胞クローンのケモスタット培養における最大増殖速度は、36.5℃の温度で観察されたが、最大容量生産性は35.1℃で観察された。低温でのより遅い増殖に起因して、得られた回収量が少なかったにもかかわらず、生産された組み換え体タンパク質の量は多量であり、低温の培養物は、全体として生産性がより高かった。
【0060】
本発明の第1、第2、または第3の態様のいずれにおいても、細胞培養上清は最大増殖速度が観察される温度よりも少なくとも0.5℃、好ましくは、少なくとも1.0℃低い温度に設定される温度で維持されることが適している。この実施形態では、培養は連続培養(特に、反復バッチ培養、ケモスタット培養、またはタービドスタット培養)であることが好ましい。
【0061】
哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞およびBHK細胞)は、一般的には、懸濁培養物として培養される。言い換えると、細胞は、固体支持体に付着させられるのではなく、培地の中に懸濁される。あるいは、細胞は、担体(特に、マイクロキャリア)の中に固定され得る。多孔性の担体(例えば、Cytoline(登録商標)、Cytopore(登録商標)、またはCytodex(登録商標))が特に適している。
【0062】
細胞密度は、一般的には細胞培養物の中でモニターされる。原則として、高い細胞密度が望ましいと考えられるであろう。なぜなら、細胞あたりの生産性が維持される限りは、これによって、バイオリアクターの容量あたりの高い生産性が得られるはずであるからである。しかし、細胞密度の増大は、実際には、細胞にとっては有害となり得、細胞あたりの生産性が下がる。したがって、細胞密度をモニターする必要がある。今日までのところは、哺乳動物の細胞培養プロセスにおいては、これは培養物の試料を抽出し、そして顕微鏡下で、またはSchaerfe System GmbH,Reutlingen,Germanyによって販売されているCASY TTデバイスのような細胞計数デバイスを使用してそれらを分析することによって行われている。本発明者らは、バイオリアクター自体に(または培地および懸濁された細胞がその中を通過させられ、その後、バイオリアクターに戻されるループの中に)導入された適切なプローブによって細胞密度を分析することが有効であることを、本発明において明らかにする。そのようなプローブは、Aber Instrumentsから市販されている(例えば、Biomass Monitor 220、210、220、または230)。培養物中の細胞は、電場の影響を受けて極めて小さいコンデンサーとして作用する。なぜなら、非伝導性の細胞膜は電荷を蓄積できるからである。得られる電気容量を測定することができる。これは細胞のタイプに依存し、そして生存している細胞の濃度に正比例する。10mm〜25mmの直径のプローブは、バイオマスに対して無線周波磁場をかけるための2つの電極と、極性細胞の得られる電気容量を測定するための第2の一対の電極とを使用する。得られるシグナルの電気的処理により、生存している細胞の濃度の正確な測定値である出力が生じる。このシステムは、漏れがある膜、培地、気泡、および破片を含む細胞には反応しない。
【0063】
典型的には、細胞密度は、1.0×10細胞/ml〜5.0×10細胞/ml、適しているのは1.0×10細胞/ml〜3.5×10細胞/ml、適しているのは1.4×10細胞/ml〜2.8×10細胞/ml、好ましくは1.6×10細胞/ml〜2.6×10細胞/ml、最も好ましくは、1.8×10細胞/ml〜2.4×10細胞/mlである。好ましい範囲のより高いほうの限界に向かって細胞濃度を増大させることにより、容量生産性を改善することができる。それにもかかわらず、範囲の下端または上端としての任意の上記の点の値を含む細胞密度の範囲が想定される。
【0064】
培養は、通常はバイオリアクターの中で行われる。バイオリアクターは、通常は、1リットルから10000リットルの容量(例えば、5、10、50、100、1000、2500、5000、または8000リットル)のステンレス鋼、硝子、またはプラスチック製の容器である。この容器は、通常は硬いが、小さい容量については特に、柔軟性のあるプラスチックバッグを使用することができる。これらは一般的には、「使い捨て」型である。
【0065】
本発明の最初の3つの態様のいずれかの方法によって生産された異種タンパク質または組み換え体タンパク質は、好ましくは、血中タンパク質である。「血中タンパク質」には、本発明者らは、ヒトまたは動物の血液中に存在するか、または存在する可能性がある任意のタンパクを含め、これには、静脈内使用のために操作されたタンパク質が含まれる。適している血中タンパク質としては、血清アルブミン、血液凝固第I、II、III、V、VII、VIII、IX、X、XI、XII、およびXIII因子、フューリン、フォン・ヴィレブランド因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、インターロイキン、インターフェロン、メタロプロテアーゼ(例えば、ADAMTSプロテアーゼ(例えば、ADAMTS−13))、免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、またはIgE)および免疫グロブリン断片が挙げられる。適している抗体または免疫グロブリン断片としては、Fab様分子(Betterら(1988)Science 240、1041);Fv分子(Skerraら(1988)Science 240、1038):VおよびVパートナードメインが可撓性オリゴペプチドを介して連結させられた単鎖Fv(ScFv)分子(Birdら(1988)Science 242、423:Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,5879)、および単離されたV領域を含む単一ドメイン抗体(dAbs)(Wardら(1989)Nature 341、544)が挙げられる。免疫グロブリンおよびそれらの断片は「ヒト化」することができる。言い換えると、齧歯類起源の可変ドメインを、ヒト起源の定常ドメインに融合させることができる。その結果、得られる抗体は、齧歯類のもとの抗体の抗原特異性を保持する(Morrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6851−6855)。
【0066】
好ましい実施形態では、細胞培養は、状況に応じてフォン・ヴィレブランド因子(vWF)とともに第VIII因子を生産させるために使用される。vWFは培養培地に対して別に加えることができ、これは好ましくは、組み換え体である。あるいは、vWFは、培養物中にvWFを分泌する細胞、ならびにFVIIIを分泌する細胞を含めることによって同時に生産させることができる。しかし、好ましくは、FVIIIとvWFとが同時に発現させられる、すなわち、それぞれの細胞がFVIIIとvWFとの両方を分泌する。組み換え体であるvWFは、Schlokatら(1995),「Large Scale Production of Recombinant von Willebrand Factor」,Thrombosis and Haemostasis 78,1160または米国特許第6,114,146号(Baxter AG)に記載されているようにして得ることができる。後者の特許にはまた、FVIIIを分泌する細胞を用いてvWFを同時に生産させるために使用することができる細胞も開示されている。両方のタンパク質を同時に発現する細胞は、米国特許第5,250,421号(Genetics Institute)およびKaufmanら(1989)Mol.Cell.Biol.9,1233−1242に開示されている。
【0067】
用語第VIII因子は、凝固第VIII因子活性を有している任意のポリペプチドまたはポリペプチドの複合体を言うように本明細書中で使用される。活性化された第VIII因子は、リン脂質およびカルシウムイオンの存在下での活性化された第IXa因子による第X因子から第Xa因子への変換において補因子として機能する。便宜上、活性な第VIII因子の量は、適切なアッセイにおいて第X因子から第Xa因子への変換を促進する程度から推定することができる。典型的なアッセイにおいては、第Xa因子は、特定の発色性基質を加水分解し、それによって発色団を遊離させる。発色団の量が分光光度法で決定される。市販されているアッセイキットとしては、Factor VIII Chromogenic Assayキット(Dade Behring,Switzerland;米国特許第6,100,050号);およびCoatest Factor VIIIキット(Chromogenix,Sweden)が挙げられる。ヒトにおける第VIII因子の濃度は、1IU/mL血液として定義される。Coatest Factor VIIIキットでは、少なくとも0.01IU/ml血液に相当するFVIII活性を決定することができる。上記で定義されたように第VIII因子として考えると、ポリペプチドまたはポリペプチドの複合体は、天然の第VIII因子と同じナノモル濃度で血中に存在する場合に、その活性をCoatest Factor VIIIアッセイによって決定できるように、天然の第VIII因子の活性の少なくとも1%を有していなければならない。
【0068】
本発明の方法による生産に適しているFVIIIは、天然の全長FVIIIである。ブタFVIIIを本発明にしたがって生産することができるが、FVIIIは、ヒトのものであることがより好ましい。天然のFVIIIの代わりとして、変異体およびアナログを生産することができる。多くのもの(例えば、変異体および欠失誘導体は、米国特許第5,422,260号、同第4,749,780号、同第4,868,112号、同第4,877,614号、および同第5,171,844号に記載されている変異体および欠失誘導体)が当該分野で公知である。用語「組み換え体である第VIII因子の欠失誘導体」は、1つ以上のアミノ酸を欠失させることによって全長の第VIII因子ポリペプチドから誘導された、第VIII因子活性を有している1つ以上のポリペプチド鎖として定義される。好ましくは、上記欠失誘導体は、Bドメインのほとんどを欠いているが、一次翻訳産物の2つのポリペプチド鎖へのインビボでのタンパク質分解(によるプロセシング)に不可欠なBドメインのアミノ末端配列とカルボキシ末端配列の部分は保持する。そのような第VIII因子欠失誘導体の産物は「r−VIII SQ」として同定されており、WO91/09122に記載されている。用語「r−VIII SQ」は、全長の第VIII因子から誘導された、アミノ酸743から1636を欠失しているポリペプチド鎖として同定されている。Bドメイン全体またはその一部を欠いているさらなるFVIII変異体は、米国特許第6,358,703号に記載されている。
【0069】
CHO細胞および293S細胞を形質転換するために適しているベクターは、米国特許第5,854,021号に開示されている。FVIIIを発現するBHK細胞は、Woodら(1984)Nature 312,330−337に開示されているように調製することができ、また、培養物CRL−8544としてATCCから入手することもできる。FVIIIのBドメイン欠失変異体を発現するCHO細胞は、Lindら(1995)Eur.J.Biochem.232,19−27、および米国特許第5,661,008号に記載されている。3種類のそのような細胞のタイプが、DSM 6415、DSM 6417、およびDSM 6416としてDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturenに寄託されている。
【0070】
FVIIIとvWFとが同時に生産される場合は、それらの複合体を培地を遠心分離することによって精製して細胞を取り除くことができ、その後、得られる液体は、複合体の解離を生じないであろう条件下で、FVIIIまたはvWFのいずれかに対する抗体、あるいはFVIIIまたはvWFに特異的に結合するペプチドを含む固定化された固体支持体にさらされる。適切な方法は、米国特許第6,307,032号(Baxter AG)および米国特許第5,200,510号(ZymoGenetics)に教示されている。
【0071】
FVIII(状況によってはvWFとの複合体である)を、その後、公知の方法で処方し、使用することができる。例えば、動物性のタンパク質を含まない培養物中で生産されたFVIIIは、好ましくは、例えば、米国特許第6,586,573号(Baxter International)、WO94/07510、または米国特許第6,599,724号に開示されているように、タンパク質を含まない組成物の中に処方され、そして血友病A患者を処置するために使用される。
【0072】
本発明の方法がFVIIIを生産するために使用される場合は、細胞培養上清が、36±0.9℃、好ましくは、36±0.5℃、より好ましくは36±0.2℃、そして最も好ましくは36℃に設定される温度で維持されること、そして/またはpHが、7.20±0.05、好ましくは7.20±0.03、より好ましくは7.20±0.01、最も好ましくは、7.20に設定されること、そして/または細胞培養上清が、1%〜10%の溶存CO濃度、好ましくは4.0%〜9.0%、より好ましくは5.5%〜8.5%の溶存CO濃度を有することが好ましい。これらのパラメーターのうちの少なくとも2つ(すなわち、温度とpH、温度とdCO、またはpHとdCO)が好ましい範囲内にあることが好ましい。3つのパラメーターの全てが好ましい範囲内で操作されることが最も好ましい。
【0073】
実施例に示されるように、本発明がFVIIIを生産するために使用される場合には、細胞培養上清中に銅を含めることが有効である。典型的には、細胞は、4ppbのCu2+を含む細胞培養上清中で培養される。細胞培養上清中でのCu2+の濃度は、少なくとも5ppbであり、好ましくは少なくとも7ppb、10ppb、15ppb、または25ppbであることが有利である。
【0074】
別の好ましい実施形態では、細胞培養はADAMTS−13を生産するために使用される。
【0075】
ADAMTS−13はフォン・ヴィレブランド因子を切断するプロテアーゼ(VWF−cp)としても知られており、メタロプロテアーゼファミリーのメンバーである。これは、VWFの残基Tyr−842とMet−843との間のペプチド結合を切断することによって、大きなVWF多量体をより小さな形態になるように代謝する能力を有している。このメタロプロテアーゼは、Ca /Baによって活性化され、セリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼの阻害剤によっては阻害されない。欠失型のフォン・ヴィレブランド因子(VWF)の分解は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と関係がある。遺伝性のTTPにおいては、ADAMTS−13は存在しないかまたは機能的に異常であるが、TTPの家族性ではない後天性の形態においては、ADAMTS−13活性を阻害する自己抗体がほとんどの患者において一次的に見られる。
【0076】
ヒトADAMTS−13遺伝子のクローニングと発現は、Plaimauerら、2002,Blood.15;100(10):3626−32に記載されている。ヒトADAMTS−13遺伝子のクローニングと発現は、cDNAの完全な配列とともに、US2005/0266528 A1(Laemmleら)にも開示されている。本発明の方法による生産に適しているADAMTS−13は、天然の全長ADAMTS−13、好ましくはヒトADAMTS−13である。天然のFVIIIの代わりとして、変異体およびアナログを生産することができる。
【0077】
用語ADAMTS−13は、ADAMTS−13活性(特に、VWFの残基Tyr−842とMet−843との間のペプチド結合を切断する能力)を持つ任意のポリペプチドまたはポリペプチドの複合体をいうように、本明細書中で使用される。便宜上、活性のあるADAMTS−13の量は、機能性アッセイ(例えば、ADAMTS−13の基質として修飾されたフォン・ヴィレブランド因子ペプチドを使用する機能性アッセイ)によって決定することができる(Tripodiら、J Thromb Haemost.2008年9月;6(9):1534−41)。r−hu ADAMTS13活性を決定する好ましい方法は、Gerritsenら:Assay of von Willebrand factor(vWF)−cleaving protease based on decreased collagen binding affinity of degraded vWF:a tool for the diagnosis of thrombotic thrombocytopenic purpura(TTP).Thromb Haemost 1999;82:1386−1389に開示されている。このアッセイでは、1Uは、プールされた正常なヒト血漿中のADAMTS−13活性のレベルに相当する。上記で定義されたようなADAMTS−13として考えると、ポリペプチドまたはポリペプチドの複合体は、天然のADAMTS−13の活性の少なくとも1%を有していなければならない。ADAMTS−13の量もまた、ADAMTS−13抗原の測定によって、例えば、Riegerら、2006,Thromb Haemost.2006 95(2):212−20に開示されているELISA法を使用して決定することができる。
【0078】
タンパク質分解活性がある組み換え体ADAMTS−13は、Plaimauerら、2002(前出)およびUS2005/0266528 A1に記載されているように、哺乳動物細胞培養物中での発現によって調製することができる。ADAMTS−13を発現する細胞の組み換え培養の方法は、Plaimauer B,Scheiflinger F.Semin Hematol.2004年1月;41(1):24−33に開示されている。ADAMTS−13の発現に好ましい細胞のタイプとしては、HEK−293細胞およびCHO細胞が挙げられる。
【0079】
US2005/0266528 A1およびZhengら、2001,Blood,98:1662−1666には、ADAMTS−13を精製する方法が開示されている。精製されたADAMTS−13は、従来の方法にしたがって処方することができ、例えば、TTPを処置するために治療的に使用される。
【0080】
本発明の方法がADAMTS−13を生産するために使用される場合は、細胞培養上清が、36.0±0.9℃、好ましくは、36.0±0.5℃、より好ましくは36.0±0.2℃、そして最も好ましくは36.0℃に設定される温度で維持されること、そして/またはpHが、7.15±0.05、好ましくは7.15±0.03、より好ましくは7.15±0.01、最も好ましくは、7.15に設定されること、そして/または細胞培養上清が、1%〜10%の溶存CO濃度、好ましくは4.0%〜9.0%、より好ましくは5.5%〜8.5%の溶存CO濃度を有することが好ましい。これらのパラメーターのうちの少なくとも2つ(すなわち、温度とpH、温度とdCO、またはpHとdCO)が好ましい範囲内にあることが好ましい。3つのパラメーターの全てが好ましい範囲内で操作されることが最も好ましい。
【0081】
代わりの好ましい実施形態においては、細胞培養はフューリンを生産するために使用される。
【0082】
フューリンはPACE(対合した塩基性アミノ酸を切断する酵素(paired basic amino acid cleaving enzyme))とも呼ばれ、スブチリシン様セリンプロテアーゼのグループに属する。これは、プロタンパク質の切断(特に、分泌合成(secretory synthesis)において)重要な役割を担っている(Van de Venら、Crit.Rev.Oncogen.,4:115−136,1993)。これは、いくつかのドメイン(すなわち、シグナルペプチド、プロペプチド、触媒ドメイン、ホモ−BまたはP−ドメイン、C末端に配置されたシステインリッチドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質テール)に構造的に配置されたカルシウム依存性のセリンエンドプロテアーゼである。プロテアーゼ切断部位には、アミノ酸配列Arg−X−Lys/Arg−Argを特徴とする認識配列が含まれる。プロテアーゼであるフューリンは、このコンセンサス配列の後ろで、プロタンパク質を特異的に切断する(Hosakaら、1991,J.Biol.Chem.266:12127−12130)。
【0083】
完全なフューリンはGolgi装置の膜システムの中に取り込まれ、ここで機能的に活性となる(Bresnahanら、J Cell Biol.1990;111:2851−9)。小胞体からゴルジ画分へと新しく合成されたフューリン前駆体が移動すると、プロペプチドは、2工程のプロセシング事象において自己触媒によって除去される(Andersonら、EMBO J.1997;16:1508−18)。フューリンはまた、trans−Golgiネットワークと細胞表面との間をエンドソーム小胞を介して循環し、それによって、恒常的な分泌経路を通じるそれらの輸送の間に両方の前駆体タンパク質をプロセシングし、分子はエンドサイトーシス経路に入る。プロセシング区画へのフューリンの細胞性の分配は、その細胞質テールの中での定義された構造的特徴によって示される(Teuchertら、J Biol Chem.1999;274:8199−07)。
【0084】
天然のフューリンプロテアーゼの過剰発現は、連続して増殖させられる細胞培養物の増殖にネガティブな影響を与えるので、溶液は、細胞に対するフューリンの毒性の影響を減らすように考えられている。C末端ドメインは、フューリンの機能的活性には不必要であることが明らかにされており、そして75〜80kDの過剰発現された天然のフューリンの短縮型は、分泌型のタンパク質として細胞上清中で検出することができる(Wiseら、PNAS.1990;87:9378−82)。この自然界において分泌される短縮型のフューリンは「シェッドフューリン」としてもしられており(Vidricaireら、Biochem Biophys Res Comm.1993;195:1011−8;Plaimauerら、Biochem J.2001;354:689−95)、膜貫通部分のN末端で切断されている(Veyら、J Cell Biol.1994;127:1829−42)。
【0085】
遺伝子操作によって短縮型となったフューリンタンパク質(膜貫通ドメインと細胞質ドメインのコード部分が欠失させられている)は、例えば、アミノ酸Δ714−794について(Leducら、J Biol Chem.1992;267:14304−8;Molloyら、J Biol Chem.1992;267:16396−402)、およびアミノ酸Δ716−794について(「Sol−PACE」,Wasleyら、J Biol Chem.1993;268:8458−65;Rehemtulla and Kaufman,Blood.1992;79:2349−55)、およびアミノ酸Δ705−794について(Hatsuzawaら、J Biol Chem.1992;267:16094−9)記載されている。システインリッチ領域の欠失をさらに含むフューリン突然変異体もまた記載されている(Hatsuzawaら、J Biochem.1992;101:296−301;Creemersら、J Biol Chem.1993;268:21826−34)。
【0086】
WO2008/141824(Baxter International Inc.,Baxter Healthcare S.A.)には、アミノ酸578〜794が欠失している(すなわち、Δ578−794)短縮型のヒトフューリンが開示されている。
【0087】
用語「フューリン」は、フューリンのタンパク質分解活性を持つ任意のポリペプチドまたはポリペプチドの複合体をいうように本明細書中で使用される。
【0088】
フューリン、短縮型フューリン、またはフューリン誘導体のタンパク質分解活性の評価は、任意の適切な試験によって、例えば、フューリンがそれに対して特異的である2塩基の切断部位を含む蛍光発生基質を使用することによって行うことができる(Schlokatら、Biotechnol Appl Biochem.1996;24:257−67)。上記のアッセイが用いられる場合は、1単位は、30℃で1分間のうちに、蛍光発生基質であるBoc−Arg−Val−Arg−Arg−AMC から1pmolの7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)を遊離させるであろうフューリンの量として定義される。この試験についての定量限界は、典型的には0.625U/mLである。あるいは、タンパク質分解活性は、フューリンをプロタンパク質(例えば、pro−rvWF)とともに十分な時間インキュベートすることによっても測定することができる。プロ−rvWFのプロセシングの程度は、例えば、ウェスタンブロッティングによって分析することができる。フューリン抗原の量はELISA試験によって測定することができる。適しているELISA試験は、R&D systems,MN(カタログ番号DY1503)から入手することができるヒトフューリンDuoSetであり、ここでは、マウス抗ヒトフューリンが捕捉抗体として使用され、ビオチニル化ヤギ抗ヒトフューリンが検出抗体として使用される。
【0089】
本発明の方法による生産に適しているフューリンは、天然の全長フューリン、好ましくはヒトフューリンである。天然のフューリンの代わりとして、上記のものを含む変異体およびアナログを生産することができる。
【0090】
哺乳動物細胞(特に、CHO細胞)を、フューリンまたはフューリンの変異体で形質転換するために適しているベクターは、そのように生産されたフューリンを精製するための方法とともに、WO2008/141824(Baxter International Inc.,Baxter Healthcare S.A.)に記載されている。WO91/06314(Holland Biotechnology)には、フューリン発現ベクター、哺乳動物細胞(特に、COS−1細胞)中でフューリンを発現させる方法、および組み換えによって生産されたフューリンの精製が記載されている。WO92/09698(Genetics Institute and Chiron Corp)には、CHO細胞中での単独で、またはvWFもしくは第IX因子と組み合わせてのいずれかでのフューリンの発現が記載されている。
【0091】
プロ−rVWFは、多くの細胞タイプの中で比較的低レベルで発現される内因的に生産されたフューリンによって、細胞培養の間にその成熟形態へとプロセシングされる(Wiseら、1990,PNAS 87:9378−9382)。プロ−rVWFのプロセシングは、異種フューリンをプロ−rVWFと同時に発現させることによってより効率的に行わせることができる。あるいは、WO2008/141824は、精製されたフューリンがrVWFのプロセシングを促進するための試薬としての使用に適している可能性があることを示唆している。
【0092】
本発明の方法がフューリンを生産するために使用される場合は、細胞培養上清が、35.1±0.9℃、好ましくは、35.1±0.5℃、より好ましくは35.1±0.2℃.そして最も好ましくは35.1℃に設定される温度で維持されること、そして/またはpHが、7.15±0.05、好ましくは7.15±0.03、より好ましくは7.15±0.01,最も好ましくは、7.15に設定されること、そして/または細胞培養上清が、1%〜10%の溶存CO濃度、好ましくは4.0%〜9.0%、より好ましくは5.5%〜8.5%の溶存CO濃度を有することが好ましい。これらのパラメーターのうちの少なくとも2つ(すなわち、温度とpH、温度とdCO、またはpHとdCO)が好ましい範囲内にあることが好ましい。3つのパラメーターの全てが好ましい範囲内で操作されることが最も好ましい。
【0093】
別の好ましい実施形態では、細胞培養は、第VII因子を生産するために使用される。
【0094】
「第VII因子ポリペプチド」には、野生型の第VII因子(すなわち、米国特許第4,784,950号に開示されているアミノ酸配列を有しているポリペプチド)、ならびに野生型第VII因子と比較して実質的に同じであるかまたは改善された生物学的活性を示す第VII因子の変異体、および野生型第VII因子と比較して実質的に改変されたかまたは低い生物学的活性を有している第VII因子の変異体が含まれる。用語「第VII因子」は、それらの切断されていない(酵素前駆体)形態の第VII因子ポリペプチド、ならびにそれらのそれぞれの生体活性形態が生じるようにタンパク質分解によってプロセシングされているものが含まれるように意図される(これらも第VIIa因子と呼ぶことができる)。典型的には、第VII因子は、残基152と153との間で切断されて第ViIa因子を生じる。用語「第VII因子ポリペプチド」にはまた、第VIIa因子の生物学的活性が野生型第VIIa因子の活性と比較して実質的に改変されているかまたはいくらか低下している変異体を含むポリペプチドが含まれる。これらのポリペプチドには、その中に、そのポリペプチドの生体活性を改変するかまたは破壊するように特定のアミノ酸配列の変更が導入されている第VII因子あるいは第VIIa因子が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
血液の凝固における第VIIa因子の生物学的活性は、(i)組織因子(TF)に結合するその能力、および(ii)第IX因子または第X因子のタンパク分解的切断を触媒して、活性化された第IX因子または第X因子(それぞれ、第IXa因子または第Xa因子)を生じるその能力に由来する。第VII因子ポリペプチドの生物学的活性(「第VII因子の生物学的活性」)は、例えば、米国特許第5,997,864号またはWO92/15686に記載されているように、第VII因子欠損血漿およびトロンボプラスチンを使用して血液の凝固を促進する調製物の能力を測定することによって定量され得る。このアッセイでは、生物学的活性は、対照試料と比較した凝固時間の短縮として表され、1単位/mLの第VII因子活性を含むプールされたヒト血清標準物との比較によって「第VII因子単位」に変換される。あるいは、第VIIa因子の生物学的活性は、(i)脂質膜の中に包埋されたTFと第X因子とを含む系の中で活性化させられた第X因子(第Xa因子)を生産する第VIIa因子(または第VII因子ポリペプチド)の能力を測定すること(Perssonら、J.Biol.Chem.272:19919−19924,1997);(ii)水性の系の中での第X因子の加水分解を測定すること;(iii)第VIIa因子(または第VII因子ポリペプチド)のTFに対する物理的結合を、表面プラスモン共鳴に基づいて機器を使用して測定すること(Persson,FEBS Letts.413:359−363,1997);(iv)第VIIa因子(または第VII因子ポリペプチド)による合成の基質のインビトロでの加水分解を測定すること;あるいは、(v)インビトロ系の中でTF依存性のトロンビンの生成を測定することによって定量され得る。あるいは、FVII抗原はELISAによって決定され得る。適しているELISAは、Assay Pro(St Charles,Mo.)カタログ番号EF1007−1から入手することができるAssayMax Human Factor VII(FVII)ELISA Kitである。これは、捕捉抗体としてモノクローナル抗ヒトFVIIを、そして検出抗体としてビオチニル化ポリクローナル抗ヒトFVIIを使用する。
【0096】
天然の(野生型)第VIIa因子および/または第VIIa因子の変異体についての好ましいインビトロでのタンパク質分解アッセイは、US2007/0219135(Novo Nordisk HealthCare A/G)に記載されているように、マイクロタイタープレート(MaxiSorp,Nunc,Denmark)の中で行われる。0.1MのNaCl、5mMのCaCl、および1mg/mlのウシ血清アルブミンを含む100μLの50mMのHepes(pH7.4)中の第VIIa因子(10nM)と第X因子(0.8μM)は、15分間インキュベートされる。その後、第X因子の切断が、0.1MのNaCl、20mMのEDTA、および1mg/mlのウシ血清アルブミンを含む50μLの50mMのHepes(pH7.4)の添加によって停止させられる。生成された第Xa因子の量は、発色性基質Z−D−Arg−Gly−Arg−p−ニトロアニリド(S−2765,Chromogenix,Sweden)(最終濃度0.5mM)の添加によって測定される。405nmでの吸光度が、SpectraMax(商標)340プレートの中で継続的に測定される。10分間で生じた吸光度が、FVIIaを含まないブランクのウェル中での吸光度の減算の後、変異体第VIIa因子のタンパク質分解活性と野生型第VIIa因子のタンパク質分解活性との比を計算するために使用され得る:
比=(A405nm第VIIa因子の変異体)/(A405nm第VIIa因子野生型)。
【0097】
このアッセイのバリエーションにおいては、FVIIが決定される。トロンボプラスチンが含められる。試料中のFVIIはCa2+イオンおよび組織因子と複合体を形成し、これは少量のFXaを生じる。FXaはFVIIをFVIIaに活性化させる。
【0098】
市販されているFVII活性アッセイは、Aniara(Mason,OH)カタログ番号ACK081Kから入手することができるHEMOCLOT FVII試薬キットである。ここでは、カルシウムトロンボプラスチンによって誘発された凝固が測定される。
【0099】
野生型第VIIa因子と比較して実質的に同じであるか改善された生物学的活性を有している第VII因子の変異体には、上記に記載されたような凝固アッセイ、タンパク質分解アッセイ、またはTF結合アッセイのうちの1つ以上において試験された場合に、同じ細胞のタイプの中で生産される第VIIa因子の比活性の少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、そして最も好ましくは少なくとも約90%を示す変異体が含まれる。野生型第VIIa因子と比較して実質的に低い生物学的活性を有している第VII因子の変異体は、上記に記載されたような凝固アッセイ、タンパク質分解アッセイ、またはTF結合アッセイのうちの1つ以上において試験された場合に、同じ細胞のタイプの中で生産された野生型第VIIa因子の比活性の約25%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、そして最も好ましくは約1%未満を示す変異体である。野生型第VII因子と比較して実質的に改変された生物学的活性を有している第VII因子の変異体としては、TF依存性の第X因子タンパク質分解活性を示す第VII因子の変異体、およびTFに結合するが第X因子は切断しない第VII因子の変異体が挙げられるが、これらに限定されない。第VII因子の変異体には、野生型第VII因子と実質的に同じまたはそれよりも優れた生体活性を示すかどうか、あるいは、野生型第VII因子と比較して実質的に改変されたかまたは低い生体活性を示すかにはかかわらず、1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、または置換によって野生型第VII因子の配列とは異なるアミノ酸配列を有しているポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
野生型第VII因子と実質的に同じ生物学的活性を有している第VII因子の変異体の限定ではない例としては、以下が挙げられる:S52A−FVIIa、S60A−FVIIa(Linoら、Arch.Biochem.Biophys.352:182−192,1998);米国特許第5,580,560号に開示されているような、高いタンパク質分解安定性を示す第ViIa因子の変異体;残基290と291との間または残基315と316との間がタンパク質分解的に切断されている第VIIa因子(Mollerupら、Biotechnol.Bioeng.48:501−505,1995);酸化型の第VIIa因子(Kornfeltら、Arch.Biochem.Biophys.363:43−54,1999);PCT/DK02/00189に開示されているような第VII因子の変異体;およびWO02/38162(Scripps Research Institute)に開示されているような高いタンパク質分解安定性を示す第VII因子の変異体;WO99/20767(University of Minnesota)に開示されているような、改変されたGlaドメインを有しており、高い膜結合を示す第VII因子の変異体;およびWO01/58935(Maxygen ApS)に開示されているような第VII因子の変異体。
【0101】
野生型第VIIa因子と比較して高い生物学的活性を有している第VII因子の変異体の限定ではない例としては、以下が挙げられる:WO01/83725、WO02/22776、WO02/077218、WO03/27147、WO03/37932;WO02/38162(Scripps Research Institute)に開示されているような第VII因子の変異体;およびJP2001061479(Chemo−Sero−Therapeutic Res Inst.)に開示されているような高い活性を持つ第VIIa因子の変異体。野生型第VII因子と比較して実質的に低いかまたは改変された生物学的活性を有している第VII因子の変異体の限定ではない例としては、以下が挙げられる:RI 52E−FVIIa(Wild−gooseら、Biochem 29:3413−3420,1990)、S344A−FVIIa(Kazamaら、J.Biol.Chem.270:66−72,1995)、FFR−FVIIa(Hoistら、Eur.J.Vase.Endovasc.Surg.15:515−520,1998)、およびGlaドメインを欠いている第VIIa因子(Nicolaisenら、FEBS Letts.317:245−249,1993)。
【0102】
FVIIの生産後、ポリペプチドは培地から精製され得る。第VII因子ポリペプチドの精製には、例えば、抗第VII因子抗体カラム上でのアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Wakabayashiら、J.Biol.Chem.261:11097,1986;およびThimら、Biochem.27:7785,1988を参照のこと)、および第XIIa因子またはトリプシン様特異性を有している他のプロテアーゼ(例えば、第IXa因子、カリクレイン、第Xa因子、およびトロンビン)を使用するタンパク質分解的切断による活性化が含まれる。例えば、Osterudら、Biochem.11:2853(1972);Thomas,米国特許第4,456,591号;およびHednerら、J.Clin.Invest.71:1836(1983)を参照のこと。あるいは、第VII因子は、これをイオン交換クロマトグラフィーカラム(例えば、Mono Q(登録商標)(Pharmacia)など)に通すことによって活性化され得る。
【0103】
第VII因子または活性化された第VII因子は、公知の方法で処方され、使用され得る。例えば、血友病において出血の処置に使用され得る。
【0104】
本発明の方法が第VII因子を生産するために使用される場合は、細胞培養上清が36.5±0.9℃、好ましくは、36.5±0.5℃、より好ましくは36.5±0.2℃.そして最も好ましくは36.5℃に設定される温度で維持されること、そして/またはpHが、7.20±0.05、好ましくは7.20±0.03、より好ましくは7.29±0.01、最も好ましくは、7.29に設定されること、そして/または細胞培養上清が、1%〜10%の溶存CO濃度、好ましくは4.0%〜9.0%、より好ましくは5.5%〜8.5%の溶存CO濃度を有することが好ましい。これらのパラメーターのうちの少なくとも2つ(すなわち、温度とpH、温度とdCO、またはpHとdCO)が好ましい範囲内にあることが好ましい。3つのパラメーターの全てが好ましい範囲内で操作されることが最も好ましい。
【0105】
本発明は、以下の実施例でさらに説明されるが、これらには決して限定されない。
【実施例】
【0106】
(実施例1)
基本的な細胞培養
FVIIIの生産
典型的な培養物は、Kaufmanら(1989)Mol.Cell.Biol.9:1233−1242および米国特許第5,250,421号に記載されている、第VIII因子とフォン・ヴィレブランド因子とを同時に発現するように形質転換された10A1C6 CHO細胞株のサブクローンを使用して、バイオリアクターの中で確立される。特定のサブクローンを、動物に由来する生成物を含まない標準的な培地への適応と、マイクロプレートの中でのサブクローニングによって得た。
【0107】
標準的な培養培地は以下のとおりである:
DMEM/Ham’s F12 50/50 11.76g/kg
これには以下を添加した:
L−グルタミン 0.6g/kg
エタノールアミン 1.53mg/kg
Synperonic F68 0.25g/kg
NaHCO 2g/kg
大豆ペプトン 4g/kg
CuSO4.5HO 17.02mg/kg 。
【0108】
基本のDMEM/Ham’s F12 50/50培地には、4.3ppbのCu2+を完全培地に含めるために十分な1.3mg/kgのCu2+が含まれる。
【0109】
ADAMTS−13の生産
CHO DUKX−B11細胞を、ADAMTS−13遺伝子を導入するためにリン酸カルシウム共沈法を使用してトランスフェクトした。細胞をネオマイシン選択条件下で培養し、メトトレキセートとG418での処理の後で選択した。無血清への適応後、細胞をサブクローニングし、サブクローン640−2を生産用クローン(production clone)として選択した。
【0110】
標準的な培養培地は、US2007/0212770(Grillbergerら;Baxter International Inc.,Baxter Healthcare S.A.)に開示されている培地をベースとする、血清を含まない、インシュリンを含まない、オリゴペプチドを含まない培地である。
【0111】
フューリンの生産
CHO DUKX−B11細胞を、フューリン遺伝子を導入するために、リン酸カルシウム共沈法を使用してトランスフェクトした。細胞を、ヒポキサンチン、チミジン、およびグリシンを含まないDHFR培地で選択した。生産用クローン488−3は、サブクローニングと100nMのメトトレキセートを含む培地中での選択によって同定し、その後、無血清に適応させた。
【0112】
標準的な培養培地は、US2007/0212770(Grillbergerら;Baxter International Inc.,Baxter Healthcare S.A.)に開示されている培地をベースとする、血清を含まない、インシュリンを含まない、オリゴペプチドを含まない培地である。
【0113】
FVIIの生産
CHO DUKX−B11細胞を、FVIIとVKORC(ビタミンKエポキシドレダクターゼ複合体)を同時発現することができる2シストロン性のベクターでトランスフェクトした。遺伝子発現はCMVプロモーターによって駆動され、内部リボゾーム侵入部位(IRES)はFVII遺伝子とVKORC遺伝子との間に配置されている。細胞を、リン酸カルシウム共沈法を使用してトランスフェクトした。選択培地には、200μg/mlのハイグロマイシンBを含めた。細胞を無血清条件下でサブクローニングし、高発現サブクローン1E9を生産用クローンとして選択した。1E9を、連続培養条件下での増殖、生産性、および安定性に関して有利な特性を有しているとして選択した。安定性は、ケモスタット様式で2ヶ月間評価した。
【0114】
標準的な培養培地は、米国特許第6,936,441号(Baxter AG)に開示されている培養培地をベースとし、特に、2.5g/Lのダイズペプトンと5mg/Lのインシュリン(Nucellin(登録商標);Eli LillyまたはNovolin(登録商標)、Novo Nordisk)とを含めた。
【0115】
FVIIIの生産に使用した標準的なプロセス
5Lの連続培養
培地を、37℃でCOインキュベーター(5%〜15%のCO)の中で数時間、予め馴化させた。培養物を確立させるために、少なくとも1つの1mlのバイアル(10個のCHO細胞/ml)を解凍し、細胞を、Rouxフラスコ(200ml)中の60mlの予め馴化させた培地の中に希釈し、そして37℃でCOインキュベーター中で培養した。約3日後、60mlの培養物を、1つのローラーボトル(1.8L)中の140mlの新鮮な培地に添加した。このローラーボトルに15%のCOをスパージングし、回転させながら37℃で培養した。2日後、細胞を1/3に分け、2つのローラーボトルの中で新鮮な培地の中で培養した(200mlの培地+100mlの培養物=1つのローラーボトルあたり300ml)。さらに2日または3日後、細胞を再び1/3に分け、全部で6個のローラーボトルの中で上記のように新鮮な培地の中で培養した。およそ1×10細胞/mlの必要な細胞密度に達したら、1800mlの接種材料を、上記のように予め馴化させた3.2Lの培地に接種し、5Lのバイオリアクターの中で培養した。標準的な条件下で、5Lのバイオリアクターを、pH7.2、1.4×10細胞/mlの細胞密度、および37℃の温度で操作した。標準的な条件下で、培養物に、10μmの気泡の大きさを有しているOを、0.25VVHの速度(1時間あたりの培養物の容量あたりのOの容量)でスパージングした。
【0116】
40Lのバイオリアクター中での接種材料の構築
接種材料のプールは、原則として5Lの連続培養に関して上記に記載したように得た。しかし、このプールはおよそ5Lであり、6個のローラーボトルからではなく18個のローラーボトルから得た。BR−40バイオリアクターを洗浄し、操作前に滅菌し、そしておよそ8Lの培地を、接種前にBR−40に移した。およそ5Lの接種物のプールを、プールタンクからバイオリアクターに、移送ラインを介して、およそ13Lの全培養容量に達するまで移した。細胞密度が≧9×10細胞/mLに達したら、培養物を培地で希釈した(1:3)。さらに1〜3日の後、細胞濃度は再び≧9×10細胞/mLに達し、320Lのバイオリアクターへの接種材料の移送を行った。
【0117】
320Lのバイオリアクターの中での増殖
BR−320バイオリアクターを洗浄し、操作前に滅菌し、そしておよそ80Lの培地を、接種の前にBR−320に移した。およそ40Lの接種材料を、BR−40バイオリアクターからBR−320バイオリアクターに、移送ラインを介して、およそ120Lの最初の培養容量に達するまで移した。細胞密度が≧9×10細胞/mLに達したら、培養物を培地で希釈した(1:3)。(全部で)3〜6日の後、細胞濃度は再び≧9×10細胞/mLに達し、2500Lのバイオリアクターへの接種材料の移送を行った。
【0118】
2500Lのバイオリアクター
構築
およそ320Lの接種材料を、BR−320からすでにおよそ630Lの培地を含むBR1バイオリアクターに、移送ラインを介して、およそ950Lの最初の培養容量に達するまで移した。細胞密度が≧9×10細胞/mLに達したら、培養物を、およそ2500Lの最終容量となるように培地で希釈した(〜1:3)。(全部で)4〜7日の後、細胞濃度は再び≧9×10細胞/mLに達し、およそ1150Lの接種材料を、BR1からおよそ1350Lの培地を含むBR2バイオリアクターに移した。移送後、およそ1150Lの培地を、バイオリアクターBR1に、およそ2500Lの最終培養容量に達するまで添加した。
【0119】
ケモスタット
「ケモスタット」培養様式は、それぞれのバイオリアクター中での細胞濃度が≧1.2×10細胞/mLに達するとすぐに開始した。1日あたりおよそ1250Lの培地を、それぞれのバイオリアクターに対して連続様式で添加した。細胞濃度は、個々の2500Lのバイオリアクター中で9×10細胞/mL〜1.6×10細胞/mLの間とした。およそ1250L/日/バイオリアクターの複数の回収物を、滅菌バッグの中で2℃〜8℃で保存した。培養は、ケモスタット様式で約50日〜57日間維持した。標準的な条件下では、pHは7.2に設定し、温度は37℃に設定し、そして培養物には、10μmの気泡の大きさを有しているOを、0.02VVHの速度(1時間あたりの培養物の容量あたりのOの容量)をスパージングした。
【0120】
同様の培養方法を、ADAMTS−13、フューリン、またはFVIIを発現するCHO細胞の培養にも適用することができる。
【0121】
(実施例2)
FVIIIの生産性に対する様々なパラメーターの変更の影響
実施例1に記載したFVIIIとvWFとを発現するCHO細胞クローンのFVIII生産性を、様々な培養条件下で決定した。
【0122】
別の実験では、pH、細胞密度、および温度を、5Lの規模の連続培養において変化させた。それぞれの場合において、pH7.1、1.4×10細胞/mlの細胞密度、および37℃の対照実験を使用した。
【0123】
細胞密度を増大させると、FVIIIの容量生産性(1日あたりの1リットルあたりのIU)は、1.2×10細胞/mlの細胞密度についての値と比較して、以下のように増大した:
【0124】
【表1】

したがって、生産性の実質的な増大は、細胞密度を増大させることによって得ることができた。これは予想できなかった。なぜなら、細胞密度の増大によっては細胞あたりの生産性が低下する可能性があるからである。さらに、特定の細胞密度では、生産性の増大が、細胞密度の増大よりも大きいことが明らかになった。これはさらに驚くべきことであった。
【0125】
pHを、スパージングパラメーターを変化させることによって7.2に挙げた。pH7.1の対照容器の中では、培養物に、10μmの気泡の大きさを有しているOを、0.25VVHの速度(1時間あたりの培養物の容量あたりのOの容量)でスパージングした。pH7.2の試験容器の中では、培養物に、10μmの気泡の大きさを有している空気を、1.25VVHの速度(1時間あたりの培養物の容量あたりの空気の容量)をスパージングした。pHを7.1から7.2に上げることにより、生産性を約16%増大させることができた。
【0126】
温度を37℃から36℃に下げることによっては、生産性は約22%増大した。
【0127】
(実施例3)
FVIIIの生産性に対する細胞密度と銅濃度の影響
実施例1に記載したFVIIIとvWFとを発現するCHO細胞クローンのFVIIIの生産性を、様々な培養条件下で決定した。
【0128】
対照培養物は、pH7.1、37℃、4ppbのCu2+、および1.4×10細胞/mlの細胞密度で操作した。
【0129】
比較用の培養物は、pH7.2、および36℃で操作した。1つの培養物の中では、細胞密度を1.6×10細胞/mlに増大させ、そして別の培養物の中では、2.0×10細胞/mlに増大させた。第3の培養物では、細胞密度は2.0×10細胞/mlとし、銅濃度を4ppbから6ppbに増大させた。
【0130】
結果:温度を下げ、pHを上げ、そして細胞密度を1.6×10細胞/mlに増大(14%の増大)させることにより、FVIIIの生産性は41%〜50%高くなった。細胞密度を2.0×10細胞/ml(43%)にさらに増大させると、生産性は(対照培養物と比較して)39%〜77%増大した。2.0×10細胞/mlの培養物中の銅を6ppbに増大させると、生産性は(対照培養物と比較して)48%〜98%増大した。
【0131】
したがって、pHをわずかに上げ、温度をわずかに上げ、細胞密度をわずか43%増大させ、そして銅濃度を50%増大させることにより、FVIIIの生産性をほぼ2倍にすることができる。
【0132】
(実施例4)
vWFの生産性に対する細胞密度と銅濃度の影響
実施例3を繰り返したが、vWFの容量生産性を測定した。1.6×10細胞/mlおよび4ppbの銅(36℃、pH7.2)では、生産性は対照の124%であった。2.0×10細胞/mlおよび6ppbの銅では、生産性は182%であった。
【0133】
したがって、重ねて、生産性の実質的な増大は、このプロセスのパラメーターを一見小さく変化させることによって得ることができる。
【0134】
(実施例5)
細胞密度、pH、およびdCOの影響
実施例1に記載したFVIIIとvWFとを発現するCHO細胞クローンのFVIIIの生産性を、様々な培養条件下で決定した。
【0135】
この実験では、細胞密度を1.41×10細胞/mlから2.03×10細胞/mlに増大させ、pHを7.1から7.2に上げ、そしてdCO濃度を9.5%から6.2%に下げた。
【0136】
FVIIIの容量生産性(1日あたりの1リットルあたりのIU)は98%増大し、そしてFVIIIの比生産性(1日あたりの細胞100万個あたりのIU)は36%増大した。
【0137】
(実施例6)
フューリンの生産に対するpHと温度の影響
フューリンを発現するCHO細胞を、ケモスタット様式で2.5Lのバイオリアクターの中で培養した。細胞密度は、連続する5日間の間中、個々の培養物について1.52×10細胞/ml〜1.78×10細胞/mlの間の平均で維持した。溶存酸素は、全ての実験において、20%の空気飽和度の設定値で制御した。溶存CO濃度は、バイオリアクターの上部空間にCOを重層することによって、5%〜6%の間で維持した。
【0138】
「実験方法の設計」によって、フューリンの最大容量生産性を生じる条件を確定するために、様々な温度を様々なpH値と組み合わせた。5種類の温度を、「Doehlert Matrix」にしたがって3種類のpH値と組み合わせ、これによって以下のような温度とpHの7つの組み合わせが得られた:
【0139】
【表2】

36.5℃とpH7.20との組み合わせを、2つの醗酵ロット(上の表の4と5)に適用した中心点として選択した。
【0140】
容量生産性と比生産性、および増殖速度を含むデータを、「Minitab」ソフトウェアを使用してResponse Surface Methodology(RSM)によって統計学的に分析した。
【0141】
pHではなく温度が増殖速度に有意な影響を与え、増殖速度についての最大は36.5℃で起こった。温度を37℃から35.1℃に下げることにより、容量生産性を、およそ2.7倍に増大させることができた。同様の傾向は比生産性についても見られた。これは、最大の容量生産性は、増殖速度が最大である温度で観察されるであろうと予想していたので、驚くべき結果であった。比生産性および容量生産性に対するpHの影響は、7.20+/−0.1の研究した範囲では小さかった。わずかに高い生産性が、7.15+/−0.05(または7.10から7.20の間)の低いpH範囲で観察され、したがって、pH7.15をフューリンの生産についての設定値として選択した。
【0142】
(実施例7)
フューリンの生産に対するdCOの影響
2種類の醗酵操作を、2.5Lのバイオリアクターの中でケモスタット様式で平行して行った。一方は、およそ7.5%のCO濃度で操作し、そして他方はおよそ12%のCO濃度で操作した。CO濃度は、上部空間を流れるCOの割合を変化させることによって調整した。醗酵は、37℃、7.15のpHで、そして20%のpOを用いて行った。細胞数は、高CO培養物中では12日間にわたり、およそ1.07×10細胞/mlとし、そして低CO培養物中では1.49×10細胞/mlとした。
【0143】
CO濃度を12%から7.5%に下げることにより、容量生産性についてはおよそ2.78倍の増大の効果が、そして比生産性については2倍の効果があった。細胞増殖速度もまた、低CO培養物中で高かった。
【0144】
(実施例8)
FVIIの生産に対するpHと温度の影響
FVIIを発現するCHO細胞を、ケモスタット様式で2.5Lのバイオリアクターの中で培養した。ここでは、細胞密度は、連続する4週間にわたり、それぞれの培養物について約2.5×10細胞/ml(2×10細胞/mlと3×10細胞/mlとの間)の平均で維持した。溶存酸素は、全ての実験において20%の空気飽和の設定値で制御した。溶存CO濃度は、バイオリアクターの上部空間にCOを重層することによって、4%〜7%の間で維持した。
【0145】
「実験方法の設計」によって、FVIIの最大容量生産性を生じる条件を確定するために、様々な温度を様々なpH値と組み合わせた。3種類の温度を、「Doehlert Matrix」にしたがって3種類のpH値と組み合わせ、これによって以下のような温度とpHとの5つの組み合わせが得られた:
【0146】
【表3】

平均の最大の容量速度論的生産性には、36.5℃、および7.20のpH設定値で到達した。パラメーターの間にはポジティブな相互作用があり、結果として、両方のパラメーターを最適化した結果は、個々のパラメーターを個別に最適化した効果を組み合わせたよりも大きかった。
【0147】
(実施例9)
FVIIの生産に対するdCOの影響
4種類の異なるCO濃度(5.0%、6.3%、7.6%、および8.9%)のFVIIの生産性に対する効果を、小規模の連続培養において試験した。
【0148】
細胞を、ケモスタットまで8日間培養し、その後、2.5LのRushtonバイオリアクターに移し、pH7.20および36.5℃での連続条件下でおよそ4週間培養した。最初の1週間の間に、様々なCO濃度に平衡化させる必要があったので、最後の3週間だけのデータを分析した。CO濃度は、オフライン測定と、バイオリアクターの上部空間へのCOの添加によって制御した。
【0149】
記録した細胞密度は、8.9%のCO濃度での2.36×10細胞/mlから、5.0%のCO濃度での2.87×10細胞/mlにまで変化した。同じ範囲について増殖速度は、0.42d−1および0.49d−1であった。低いCO濃度での高い比増殖速度は、高い比生産性と関係していた。増殖速度と比生産性に対するCOの複合作用により、容量生産性に対する実質的な効果が生じた。
【0150】
8.9%から5%にCO濃度を下げることにより、比増殖速度は17%、比生産性は10%、そして容量力学的生産性は35%増大した。
【0151】
(実施例10)
ADAMTS−13の生産に対する温度とpHの影響
組み換え体ADAMTS−13を発現するトランスフェクトしたCHO細胞を、1.5Lのバイオリアクターの中でケモスタット培養で培養した。
【0152】
最初の実験では、pHと温度を、36℃から38℃と、pH7.10から7.30の範囲にある様々な設定値に設定した。定常状態に由来する試料を、細胞数とELISAによるADAMTS−13の発現について分析し、ケモスタット培養による希釈速度を、増殖速度とADAMTS−13の容量発現を計算するために測定した。最適値が設計空間の外側の範囲にあることが明らかになったので、第2の実験を、35℃から37℃までの温度範囲、そしてpH7.05から7.15で設定し、データを定常状態から分析した。細胞密度は、1.17〜1.71×10細胞/mlの範囲であった。COを、4%〜6%の溶存CO濃度に達するように、上部空間にCOを重層することによって制御した。
【0153】
両方の実験によるデータを標準化し、統計ソフトウェアMinitabを使用して分析した。
【0154】
比増殖速度は、pH7.13および36.0℃にその最適値があることを、pHと温度についての二次モデルを使用して明らかにした。増殖速度に対する温度の影響は弱かった。
【0155】
容量生産性は、pH7.15および36.0℃にその最適値があることが明らかになった。増殖速度に対する温度の影響は弱いにもかかわらず、温度は、容量生産性に対しては比較的強い影響があった。
【0156】
37℃の定温と仮定すると、7.10から7.15にpHを上げることの効果は、容量生産性の10%の増大であった。7.10の一定のpHを仮定すると、温度を37℃から36℃に下げることの効果は、容量生産性の14%の増大であった。pH7.10および37℃の温度から、pH7.15および36℃の温度に条件を変化させることの全体的な効果は、容量生産性の24%の増大であった。
【0157】
本明細書中で引用された全ての参考文献の内容は、参照することにより含められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養上清中で異種タンパク質を分泌する哺乳動物細胞を培養する方法であって、ここでは、該細胞培養上清は、X±0.9℃に設定される温度で維持され、ここでは、Xは35.1から36.5までの値を有し、ただし該温度は37℃未満に設定される、方法。
【請求項2】
前記温度が36±0.9℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度が36±0.5℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記温度が36±0.2℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記温度が36℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記温度が35.1±0.9℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記温度が35.1±0.5℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記温度が35.1±0.2℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記温度が35.1℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記温度が36.5±0.9℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記温度が36.5±0.5℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記温度が36.5±0.2℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記温度が36.5℃に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
細胞培養上清中で異種タンパク質を分泌する哺乳動物細胞を培養する方法であって、ここでは、該細胞培養上清は、X±0.05に設定されるpHで維持され、ここではXは、7.15から7.20までの値を有し、ただし該pHは7.10より大きく設定される、方法。
【請求項15】
前記pHが7.20±0.05に設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記pHが7.20±0.03に設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記pHが7.20±0.01に設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記pHが7.20に設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記pHが7.15±0.05に設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記pHが7.15±0.03に設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記pHが7.15±0.01に設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記pHが7.15に設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
細胞培養上清中で異種タンパク質を分泌する哺乳動物細胞を培養する方法であって、ここでは、該細胞培養上清が1%〜10%の溶存CO濃度を有する、方法。
【請求項24】
前記CO濃度が4.0%〜9.0%である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記CO濃度が5.5%〜8.5%である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞培養上清が、X±0.9℃に設定される温度で維持され、ここでは、Xは35.1から36.5までの値を有し、ただし該温度は37℃未満に設定される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記温度が36±0.9℃に設定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記温度が35.1±0.9℃に設定される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記温度が36.5±0.9℃に設定される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞培養上清が、X±0.5に設定されるpHで維持され、ここでは、Xは7.15から7.20までの値を有し、ただし該pHは7.10より大きく設定される、請求項1、23、または26に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞培養上清が重炭酸塩で緩衝化される、請求項1〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記上清に空気がスパージングされる、請求項1〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記細胞密度が1.0×10細胞/ml〜5.0×10細胞/mlである、請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記細胞密度が1.0×10細胞/ml〜3.5×10細胞/mlである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞密度が1.4×10細胞/ml〜2.8×10細胞/mlである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞密度が1.6×10細胞/ml〜2.6×10細胞/mlである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞密度が1.8×10細胞/ml〜2.4×10細胞/mlである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記異種タンパク質が血中タンパク質である、請求項1〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記血中タンパク質が第VIII因子である、請求項2、15、または23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記第VIII因子がフォン・ヴィレブランド因子と同時に発現させられる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞培養上清中でのCu2+の濃度が少なくとも5ppbである、請求項1〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記Cu濃度が少なくとも7ppb、10ppb、15ppb、または25ppbである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記血中タンパク質がADAMTS−13である、請求項2、19、または23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記血中タンパク質がフューリンである、請求項6、19、または23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記血中タンパク質が第VII因子である、請求項10、15、または23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記哺乳動物細胞が、CHO細胞またはBHK細胞のような齧歯類の細胞である、請求項1〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記培養がバッチ培養である、請求項1〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記培養が流加培養である、請求項1〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記培養が連続培養であり、特に、反復バッチ培養、ケモスタット培養、またはタービドスタット培養である、請求項1〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
第VIII因子を分泌する哺乳動物細胞を細胞培養上清を含む容器中で培養する方法であって、ここでは、該細胞培養上清中の細胞の密度はインラインセンサーによって測定され、該容器への新鮮な培地の流入は、所望される範囲内に細胞の密度を維持するように自動的に制御される、方法。
【請求項51】
前記細胞密度が少なくとも1.2×10細胞/mlである、請求項50に記載の方法。

【公表番号】特表2011−507551(P2011−507551A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540844(P2010−540844)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/088036
【国際公開番号】WO2009/086309
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】