説明

細胞培養培地

タンパク質産生を増強するために、短い脂肪酸の存在下で細胞を培養するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に動物細胞培養の分野に関する。これにより、治療的なまたはその他の有用なタンパク質の産生のために動物細胞を培養する方法、およびそれぞれの細胞培養培地を考案する。
【背景技術】
【0002】
酪酸ナトリウムまたは酪酸のその他の塩は、たとえばEP-239 292 Aに記載されていているように、動物細胞培養において産生されるタンパク質の収率を増強することが周知である。天然に分泌されるタンパク質、たとえばハイブリドーマからの抗体または組換え株化細胞において、効果を観察することができる。ブチレートは、好ましくは5mMまでの濃度で細胞培養培地に添加される。培地に酪酸を添加することについての多数の文献によって確認されているように、酪酸の効果は特異的であり;プロピオナートまたはペンタノアートでは、約1mMで濃度でもほとんど有効ではない。しかし、細胞培養サプリメントとしてのブチレートの使用には、限界および欠点(backdraws)がある。0.1〜10mMの範囲のブチレートの添加では、過量投与および引き続いて起こる中毒性および細胞静止効果を避けるために慎重にバランスを保つ必要がある。濃度の軽微な増加によってさえ、増殖速度に対するネガティブな効果が劇的におこり得る。それぞれの株化細胞および組換え体クローンについて、ブチレートの最適な量を慎重に選択し、大規模バイオリアクター培養の間に制御しなければならない。たとえば、EP-239,292Aに記載のとおり、ハイブリドーマ細胞に対しては1mMにつき0.1mMの濃度範囲が推奨されるが、その他の株化細胞に対しては1mMを越える濃度でもブチレートを許容するであろう。ハイブリドーマ細胞は、その他の細胞種よりも、有害な作用、たとえば不十分な酸素もしくは栄養供給量または化学物質の有毒な影響にずっと感受性であること、並びにこれらが、一旦このようなネガティブな刺激を受けたら容易に、かつ不可逆的にプログラム細胞死を開始することが周知である。したがって、ブチレートは、細胞培養での産生性を増大するためのいくぶん二面性の手段であることが判明した。
【0003】
Kimら(Biotechnology and Bioengineering 71,2001, 184-193, Overexpression of bcl-2 inhibits sodium butyrate-induced apoptosis in CHO cells resulting in enhanced humanized antibody productio)は、bcl-2組換え株化細胞によって、5mMの酪酸ナトリウムの細胞毒性に対抗し、該処置によりタンパク質産生の増強を生じた。しかし、この方法は、組換えbcl-2および産物タンパク質を産生する組換え体を作成するための大規模な株化細胞工学技術が必要である。ブチレート培地サプリメントのネガティブな効果に対抗するためのより単純な方法は、有利であろう。
【0004】
米国特許第5378 612号は、すでに1mMの酪酸ナトリウムを含むCHO細胞培養のための培地に対するリチウム塩(10mM)またはリポ多糖(LPS、1μg/ml)の添加の、相乗的なタンパク質収率増強効果を記載する。2つの異なるリチウム塩については、収率効果は約1.3培であったが、LPSは、ブチレートの対照と比較して約4培の増強効果を示した。面白いことに、10mMの酢酸ナトリウムは、文字通りこの試験系の対照を超える利益がないことが判明した。
【0005】
Kooistraら(Biochem. J. 1987, Butyrate stimulates tissue-type plasminogen-activator synthesis in cultured human endothelial cells, 247:605-612)は、血清を含む内皮細胞培養において、種々の化合物を、tPA産生に対するこれらの発現増強効果の可能性について試験し、これらの中で、アルカン酸(alcanoic acid)には、5mMのアセテートを含む。プロピオナート、バレラート、および顕著な効果を有するブチレートのみが、このような効果を有することが見いだされた。アセテートは、有意に対照と異ならなかった。
【0006】
本発明の目的は、従来技術の不利点を避け、動物細胞培養における産物タンパク質の収率を増強するためのもう一つの方法を考案することである。
【0007】
この目的は、本発明に従って、細胞培養培地がアセテートで補充された動物細胞を培養するための方法によって達成され;もう一つの本発明の目的は、独立請求項1、6、10、11、および12に記載のアセテートを含む対応する細胞培養培地である。
【発明の開示】
【0008】
本発明によれば、産物タンパク質を産生する方法であって、産物タンパク質は、細胞培養において哺乳類細胞から発現され、細胞培養の間の少なくとも一定期間の間に産生される方法が考案される。すなわち、産物タンパク質は、細胞によって構成的に発現されるか、または発現は、細胞に対して一定の刺激を提供することによっていくつかの時点で誘導されるかのいずれかであろう。好ましくは、構成的に発現される。本発明にしたがった方法は、
a)哺乳類細胞を培養するための細胞培養培地を調製する工程と、およびさらに、
b)酢酸または酢酸塩または生物学的に活性化されたアセチルエステルを、1〜20mMの、好ましくは3〜15mMの、より好ましくは5〜12mMの、最も好ましくは6〜9.5mMの終濃度にさらに添加する工程であって、前記添加は、細胞培養を開始する前に培地に対して直接、または細胞培養の間に培地にこれを供給するかのいずれかによって行う工程と、さらに、
c)前記培地中で、産物タンパク質を同時に発現して前記細胞を培養する工程と、並びに、
d)最後に細胞培養から前記タンパク質を収集する工程と、
を含む。
【0009】
さらに好ましい態様において、酢酸または酢酸塩または生物学的に活性化されたエステルの濃度は、上記の前記好ましい濃度範囲の組み合わせから推定されるであろうとおり、6〜20mMの、より好ましくは6〜12mMの、最も好ましくは6〜9.5mMまでである。
【0010】
本発明にしたがった産物遺伝子では、産物タンパク質が高量で発現され、回収される。これは、関心対象のいずれのタンパク質であってもよく、たとえばインターロイキンもしくは酵素などの治療的なタンパク質、または抗体もしくはこれらの断片などの多量体タンパク質または多量体タンパク質のサブユニットであってもよい。組換え産物遺伝子は、一旦宿主生産者細胞から発現したポリペプチドの分泌することができるシグナル配列をコードする配列部分を含んでもよい。産物タンパク質は、トランスジェニックプロモーターから発現される組換えタンパク質であってもよく、またはたとえば従来の細胞融合技術によって作製されたハイブリドーマ細胞の免疫グロブリン遺伝子座などの、天然に活性な遺伝子座であってもよい。培養液からのタンパク質の精製のための収集および下流の処理の技術は、当該技術分野において周知であり、ルーチン作業である。遠心分離、限外濾過、および/またはイオン交換クロマトグラフィーなどの技術は、高体積スループットであるので、最初にこれらを適用することが多い。
【0011】
本発明にしたがった酢酸塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属などの任意の塩であることができ、または他の任意の金属酢酸塩を使用してもよい。培地は、通常緩衝されるので、塩が好ましいであろうが、酢酸または無水酢酸の添加も考えられる。同様に、容易に、分離可能な酢酸の錯塩または酢酸のエステルは、培養の間に培養培地中にインサイチュウでアセテートを、高割合の加水分解により、または細胞の細胞外酵素の活性によるかのいずれかにより遊離し、これを使用することもできる。このような、特に細胞外酵素の活性を適用できる場合は、「生物学的に活性化できる」エステルと呼ぶことができる。酢酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩は、本発明の好ましい態様である。より好ましくは、アルカリ金属がリチウムでないことを条件として、塩はアルカリ金属塩であり、最も好ましくは、酢酸ナトリウムである。酢酸ナトリウムは、維持培地とは反対に、細胞増殖培地中で6〜9.5mMの濃度範囲で組み合わせることが特に好ましく、細胞培養の開始期でもしくは開始期より前に、または両方に酢酸ナトリウムで細胞を処理することによる。
【0012】
好ましくは、本発明の細胞培養培地は、ブチレートを欠いている。ブチレートは、容易に増殖速度を減少させ、アポトーシスを誘導し;その濃度は、慎重にバランスを保つ必要がある。しかし、本発明によれば、増殖速度に対してほとんど効果がないか、非常に適度な効果を示すアセテートによって容易に置換することができる。アセテートは、アポトーシスを誘導することが知られていない。
【0013】
本発明によれば、アセテートまたはその相当物は、細胞培養を始める前に新しい培地に直接または細胞培養の間に、好ましくは増殖培地中で対数増殖期の間に、培地にこれを供給するかのいずれかで添加する。フィード添加の場合には、アセテートの効果がいくらか遅れて起こること、すなわち、産物タンパク質収率増強効果に関して遅れ段階が観察されることを考慮に入れるべきである。一般に、フィードのみを介したアセテートの添加は、有効ではない。細胞培養の前の、および上述した量での、細胞培養培地、好ましくは細胞増殖培地に対するアセテートの添加は、本発明にしたがって、任意に濃度に応じてさらなるアセテートのフィードと連動することが非常に好ましい。最も好ましくは、アセテートは、培養開始期前の培地に直接、上述した量で、特に6〜9mMで、酢酸ナトリウムの形態で添加され、細胞培養の間にフィードを介して補充されず、好ましくは、高細胞密度細胞増殖培養液などの適切な培地中で培養増殖の間に補充されない。
【0014】
本発明に従って「細胞培養を開始する前に培地に添加すること」とは、検出可能な増殖の開始の前の初期の遅れ段階を含む、ほぼ接種時間に細胞を曝露すること、またはアセテートまたはその相当物に対し上述した量で培地を接種する前にもこれらを曝露することを意味する。また、「接種の前に」とは、接種プレカルチャー自体を、アセテート培地サプリメントを上述した量で含む培地中で培養することを意味する。両側面を組み合わせることも可能である。1つの特に好ましい態様において、接種培養のみが上述した量のアセテートで処理されるが、大量産生培養のために使用される細胞培養増殖培地は、>1mMの範囲で酢酸塩を欠いている。
【0015】
適切な細胞または株化細胞は、任意の哺乳類株化細胞であることができる。適切な株化細胞は、たとえばSV-40で不死化されたサル腎臓細胞(COS-7)細胞、イヌ腎臓細胞(MDCK)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ATCCCCL10などのベビー・ハムスター腎臓(BHK)細胞、ヒト肝細胞(Hep G2)、リンパ球細胞(Jurkat T細胞株)、ハイブリドーマ細胞(たとえば、SP2/0-Agl4、Shulmanら、1977)、または「骨髄腫」細胞(たとえば、NS0細胞などの)であり得る。これらの細胞の全てが、細胞培養培地に対するアセテートの添加に同等に反応するというわけでないことは理解されるはずである。加えて、所与の細胞種または株化細胞については、アセテートの効果は、上記指定したアセテート濃度範囲内で直線的または一定ではないであろう。株化細胞に応じて、アセテートの収率増強効果が最大であり、アセテート濃度を低いまたは高い量のいずれかに移すと減少する最適な、個々の濃度を示すであろうし;最適濃度は、細胞種の間でかなり変化してもよく、簡単な用量反応の実験によって確立することが必要であってもよい。
【0016】
たとえば米国特許第5633162号に記載されたように、哺乳類株化細胞のための適切な培地および培養方法は、当該技術分野において周知である。研究室フラスコまたは低密度細胞培養のための、および特定の細胞タイプの要求に適した標準的な細胞培養培地の例は、たとえば:ロズウェル公園記念研究所(Roswell Park Memorial Institute:RPMI)1640培地(Morre, G. , The Journal of the American Medical Association, 199, p. 519 f. 1967)、L-15培地(Leibovitz, A.ら、Amer. J. of Hygiene, 78, lp. 173 ff, 1963)、ダルベッコ・イーグル修飾培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(MEM)、Ham'sF12培地(Ham,R.ら、Proc. Natl. Acad. Sc. 53, p288 ff. 1965)、またはアルブミン、トランスフェリン、およびレシチンを欠いているIscovesの修飾DMEM(Iscovesら、J.Exp. med. 1, p. 923 ff., 1978)である。このような培地は、ウシ胎児血清(FBS、FCSとも呼ばれている)を補充することができることは既知であり、後者は過度のホルモンおよび成長因子の天然の供与源を提供する。脊椎動物および哺乳類細胞の細胞培養は、それぞれ、ルーチンの事象であり、たとえばR.Ian Fresney, Culture of Animal cells, amanual, 4th edition, Wiley-Liss/N. Y. ,2000に詳細がカバーされている。
【0017】
好ましくは、本発明にしたがった細胞培地は、動物細胞の増殖ができ、かつ補助し、したがって培養される培地である。増殖は、細胞培養の少なくとも一定の期間の間の生存可能な細胞密度の増加として理解される。本発明によれば、このような「増殖培地」の定義は、当該技術分野におけるその通常の意味の「維持培地」の用語の反対であるものとして理解される。維持培地は、細胞増殖を補助するが、細胞増殖を促進しない細胞培養培地である。このような維持培地は、トランスフェリン、インスリン、アルブミンなどの必須の増殖因子を含まないことが多い。
【0018】
アセテートまたはその相当物を、上述した量で含む哺乳類細胞培養培地である培地の前記態様は、特にリンパ球、たとえばハイブリドーマおよび骨髄腫細胞などの培養に適している培養または培地に適用する。ハイブリドーマの用語は、いわゆるクアドローマなどを含む細胞融合によって得られた抗体分泌細胞だけでなく、同様に細胞周期活性を有する組換え遺伝子産物またはウイルス、たとえばエプスタイン・バーウイルスまたは化学的不滅化剤で不死化することによって得られたBリンパ性の抗体分泌細胞も含む。本状況において、「ハイブリドーマ」は、たとえばSP2/0-Agl4,Shulmanら1977などの非分泌ハイブリドーマにも同様に拡大される。したがって、本状況においてハイブリドーマから集めようと努力される産物タンパク質は、必ずしも親細胞からの抗体などの相同的遺伝子産物に関するというわけではなく、組換え産物タンパク質であってもよい。
【0019】
好ましくは、細胞は「骨髄球性」であり、最も好ましくは、これらは骨髄腫NS0株化細胞(たとえば、株化細胞ECACC番号85110503およびこれらの誘導体、European Collection of Cell Cultures (ECACC), Centre for Applied Microbiology &Research, Salisbury, Wiltshire SP4 OJG, United Kingdomから入手自由など)である。「骨髄球性」細胞は、NS0が1つの例である腫瘍株である。NS0細胞は、実際にプラズマ細胞腫であり、Bリンパ性のリンパ球様細胞系のハイブリドーマの結果であるが、「骨髄球性」細胞として、当該技術分野において通常、そして全く誤ってアドレスされる、(Barnesら、Cytotechnology 32: 109-123,2000)。対応する細胞種は、同様に、結果として特に好ましい態様である。「骨髄球性」NS0細胞は、特に、組換え抗体の産生のために使用した場合に、潜在的に非常に高産物収量を引き起こすことが見いだされている。大部分の標準的なNS0株化細胞は、コレステロール依存的な、通常コレステロールが培地に絶対の成分となる。本発明によれば、リンパ球は、いわゆるトリオーマ(triomas)に対して生じる非分泌ハイブリドーマ株化細胞との融合、または形質転換剤もしくはウイルスでの不死化を含む適切な腫瘍株との細胞融合などの抗体分泌細胞からの多くの技術によって作製されるハイブリドーマ細胞、並びに他の任意のリンパ球様株化細胞を含む。しかし、もう1つの好ましい態様において、本発明にしたがった哺乳類細胞または株化細胞は、ハイブリドーマ細胞系ではなく、非ハイブリドーマ細胞系であることを意味し、より好ましくは、非ハイブリドーマ、組換え株化細胞、最も好ましくは、上記記載の通り、組換え「骨髄腫」株化細胞である。
【0020】
さらに好ましい態様において、株化細胞は、組換えグルタミンシンターゼ(GS)を発現することができるNS0株化細胞である。NS0細胞は、グルタミンシンターゼ(GS)発現系と共に使用される場合に、特に利点がある(Bebbingtonら、1992、High-level expression of a recombinant antibody from myeloma cells using a glutamine synthetase gene as anamplifiable selectable marker, Bio/Technology 10: 169-175;Cockettetら、1990, High level expression of tissue inhibitor of metalloproteinases in Chinese Hamster Ovary (CHO) cells using Glutamine synthetase gene amplification, Bio/Technology 8: 662-667)。好ましくは、産物タンパク質遺伝子配列およびGS遺伝子配列は、前記トランスフェクトされたNS0株化細胞を作製するための単一のGSプラスミドベクターに保有され、前記遺伝子はいずれも、たとえば内部リボソーム導入部位を使用する異なるか、または同じプローモーターから発現される。GS系は、治療的なタンパク質の産生のために特に重要である2つのみの系のうちの1つである。非常に生産的な株化細胞は、最初のトランスフェクションから作製されることが多く、したがって遺伝子増幅を達成するために、選択剤の濃度を増大させて複数ラウンド選択する必要を避けることができるので、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)と比較して、GS系および特にNS0骨髄腫細胞と組み合わせて使用したGS系は、開発の間に多大な時間的利点を提供する(Brownetら、1992,Process development for the production of recombinant antibodies using the glutamine synthetase (GS) system, Cytotechnology 9: 231-236)。NS0細胞は、グルタミンシンターゼ欠損の表現型である。したがって、マウス腫瘍株化細胞に由来するNS0株化細胞((Galfre,G.およびMilstein, C., Methods in Enzymol. 73,3-75, 1981)は、頻繁に工業的規模でGS系と組み合わせて使用される、選択の株化細胞である。
【0021】

好ましくは、本発明に記載の細胞培養培地は、ウシ胎児血清(FCSまたはFBS)を欠いており、そして「無血清」と呼ばれる。無血清培地中の細胞は、一般に最適な増殖のために無血清培地中にインスリンおよびトランスフェリンが必要である。トランスフェリンは、国際公開公報第94/02592号に記載したように、非ペプチド・キレート薬もしくはトロポロンなどのシデロホア、または増大したレベルの無機鉄の供与源により、有利にはビタミンCなどの抗酸化物と連動して、少なくとも部分的に置換されてもよい。大部分の株化細胞は、たとえば上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、インスリン様成長因子IおよびII(IGFI、IGFII)、その他を含む一つ以上の合成的成長因子(組換えポリペプチドを含む)が必要である。必要であろう因子のその他のクラスは:プロスタグランジン、輸送および結合タンパク質(たとえば、セルロプラスミン、高および低密度リポタンパク質、ウシ血清アルブミン(BSA))、ステロイドホルモンを含むホルモン、および脂肪酸を含む。ポリペプチド因子の試験は、増殖刺激性であることが見いだされたものの存在下で、新たなポリペプチド因子を段階的な様式で試験することが最善である。これらの成長因子は、合成物または組換えである。動物細胞培養において周知のいくつかの方法論的なアプローチがあり、典型的なものを以下に記載してある。最初の工程は、細胞が、血清を補充した培地から移した後3〜6日の間に生存および/またはゆっくり成長する条件を得ることである。大部分の細胞種において、これは少なくとも一部において接種物の密度の機能である。一旦、最適なホルモン/増殖因子/ポリペプチドのサプリメントが見いだされると、生存のために必要とされる接種物の密度は減少すると考えられる。
【0022】

より好ましい態様において、本発明にしたがった細胞培養培地は、好ましくは無タンパク質で、より好ましくは、無タンパク質の細胞増殖培養液であり、すなわち、胎児血清、および脂質の結合および輸送のための組換えトランスフェリンまたは血清アルブミンなどの個々タンパク質成長因子サプリメントまたはその他のタンパク質の両方ともを含まない。最も好ましくは、上記記載の通り無タンパク質培地であるが、組換えもしくは精製されたアルブミン、またはこれらの配列変異体もしくは断片が添加されたものである。しかし、

NS0株化細胞についてさえ、通常、培地サプリメントとしてのコレステロールが必要であること、タンパク質産生のために連続して培養し、増殖することができるコレステロール非依存的な亜種の獲得が報告されたことに留意する必要がある(Lonza Biologics, UK)。本発明に従った無タンパク質培養培地は、特にNS0などの骨髄腫細胞系の使用と組み合わせることが好ましい。
【0023】

さらに好ましくは、本発明の方法および下記の指定された細胞培養培地の可能な態様は、動物細胞の高密度発酵または高密度増殖発酵、たとえば、105細胞/ml、好ましくは106細胞/mlまでまたはそれ以上の生存可能な細胞密度までまたはそれ以上のエアーリフトまたは灌流バイオリアクターなどの、工業的な流加バイオリアクターのものである。結果的に、高密度増殖培地を使用しなければならない。このような高密度増殖培地は、通常全てのアミノ酸、上記与えられた範囲のグルコースなどのエネルギー源、無機塩、ビタミン、微量元素(通常マイクロモルの範囲の終濃度で存在する無機化合物として定義される)、緩衝液、4つのヌクレオシドまたはこれらの対応するヌクレオチド、グルタチオン(還元型)、ビタミンCなどの抗酸化物、重要な膜脂質、たとえばコレステロールまたはホスファチジルコリンまたは脂質前駆体、たとえばコリンまたはイノシトール、およびその他の成分などの栄養素を補充することができる。高密度培地は、これらの化合物のほとんどまたは全てにおいて濃縮され、無機塩(これに基づいて本質的に等張性の培地のモル浸透圧濃度を調節する)を除いて、RPMI 1640と比較してEP-435 911 AまたはGB-2251249から受けることができる上述の標準的な培地よりも、高い量で(強化されて)これらを含むと考えられる。GB-2251249では、適切な高密度増殖培地の例を挙げる。本発明によって、このような高密度細胞培養培地は、アセテートを上述した量で、好ましくはブチレートの非存在下で含む。さらに好ましくは、本発明に従った高密度培地は、トリプトファン以外の大多数のアミノ酸が培地中で75mg/lを上回るという点で、バランスよく強化される。より好ましくは、一般的なアミノ酸要求性と連動して、グルタミンおよびアスパラギンの合わせた量は、高密度培地において全体で1g/lを上回り、最も好ましくは2g/lの過剰量である。後者のより好ましい態様は、グルタミンシンターゼ(GS)ベクターをトランスフェクトされた組換え株化細胞の場合、特にGS遺伝子配列の増幅のラウンドが生じた後は、適切ではないことは言うまでもない。これらの細胞では、たとえば外因性および内因性の供与源からのものを合わせた過剰なグルタミンは、避けるべきであるアンモニアの産生を引き起こす。
【0024】
本発明に関して、高密度細胞培養は、少なくともまたは過度に105細胞/ml、好ましくは106細胞/mlの一時的な生細胞の密度を有する動物細胞の集団として定義され、この集団は、単一細胞から、または一定のもしくは増大した培養体積の細胞培養培地中でより低い生存可能な細胞密度の接種物から、連続的に増殖した。
【0025】
さらに好ましい態様において、本発明に従った細胞培養は、流加培養であって、培地中のこれらの濃度を維持し、かつ別々のフィードによってグルコース濃度を別個に制御するために、好ましくは少なくともグルタミンを含む1つまたはいくつかのその他のアミノ酸をGB-2251249に記載されたように細胞培養に供給する流加培養である。より好ましくは、グルタミンおよび任意に、理想的には、グルタミンを含む1つまたはいくつかのその他のアミノ酸の供給は、EP-229809-Aに記載されたように、グルコースなどの1つまたは複数のエネルギー源を細胞培養に供給することと組み合わせる。グルタミンは、少なくとも部分的にアスパラギンによって置換されてもよい(アスパラギンによるグルタミンの置換については、Kurano,N.ら、1990, J. Biotechnology 15,113-128を参照されたい)。フィードは、通常、培養の開始後25〜60時間に開始され;たとえば、細胞が約106細胞/mlの密度に達したときに、フィードを開始することが有用である。フィードの際に存在し得るアミノ酸は、通常、培養体積1リットルあたりのアミノ酸あたり、10〜300mg総添加物の範囲で投与され;特に、グリシン、リジン、アルギニン、バリン、イソロイシン、およびロイシンは、その他のアミノ酸と比較して、培養体積の1リットルあたり、少なくとも150〜200mgの高量で供給される。GS株化細胞をのぞいて、グルタミンおよび/またはアスパラギンの総供給を、培養体積の1リットルあたり0.5〜3gの範囲に、好ましくは培養体積の1リットルあたり、1〜2gの範囲に合わせることが有用であり得る。フィードは、ショット添加(shot-addition)として、または連続的にポンプによる供給として添加することができ、好ましくはフィードは、バイオリアクターにほぼ連続してポンプによってなされる。pHは、バイオリアクターで流加培養する間に、塩基または緩衝液の添加によって所与の株化細胞のために適したほぼ生理学的なpHに慎重に制御されることは言うまでもない。エネルギー源としてグルコースが使用されるときは、グルコースフィードの供給は、通常、培養の1リットルあたり1〜10グラム、好ましくは3〜6グラムの培地のグルコース濃度に保持するように合わせる。アミノ酸の含有とは別に、フィードは、好ましくは培養の1リットルあたり5〜20mgの範囲の少量のコリンを含む。
【0026】
NS0細胞培養、このような細胞培養培地において作製された細胞培養、およびリンパ様細胞および/またはNS0細胞に適したアセテートのサプリメントを含む対応する細胞培養培地、並びにこのような培地を調製するための培地濃縮物は、さらに本発明の目的である。上記の記述は、同様に本発明のこれらの態様にあてはまる。
【実施例】
【0027】
特定しない場合には、抗体生産力または力価は、プロテインA-HPLCによって決定した。
【0028】
実験1
組換えマウス/ヒト・キメラIgG cB72.3を分泌するGS-NS0株化細胞6A1(100)3、短くして6A1を(上記、Bebbington、1992)、この節の下での全ての実験設定に使用した。細胞培養は、振とうフラスコ培養において、または101標準エアーリフト・バイオリアクターでの流加様式のいずれかにおいて行い、本質的には記載したとおりである(Bebbington、1992)。フィードには、高密度媒体類および発酵のためにそれぞれ上術した通り、本質的にアミノ酸および炭水化物を含めた。フィード体積は、4%の接種後体積であった。フィードは、生存可能な細胞密度が14x105細胞/mlを超えたときに、0.2ml/Lhの割合で開始した。温度は、摂氏36.5度に制御し;エアーリフトについては、空気飽和が15%であった。pHは、pH7.00に制御した。培養は、2×105生存可能細胞/mlで接種した。培地は、50mMのメチオニンスルホキシイミン(MSX)を補った、無血清および本質的に無タンパク質の細胞増殖培養液ProCH04-CDM(Bio Whittaker)である。細胞は、予め培地に適応させた。
【0029】
98%までのタンパク質収率の増加(10mMのアセテートと共に培養した株における768mg/Lと比較した対照の470mg/Lから)が観察された。アセテートは、増殖を抑制しないことが見いだされた。これは、わずかに増殖速度を減少させるが、最大の生存可能な細胞密度を低下させなかった。これは、発酵による定常期を積極的に引き延ばした。
【0030】
累積の細胞時間(106細胞/h ml)は、本質的にRenardら(1988, Biotechnology Letters 10,91-96)によって記載されているように、細胞増殖曲線の組込みによって算出した。
【0031】
図1は、流加振とうフラスコ培養における生産力に対する酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムの効果を示す。酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムのいずれかを、対数増殖期の半ばの間に振とうフラスコ培養に添加して、図1の表のそれぞれの区画に述べた終濃度にした。培養は、トリパンブルー方法によって毎日計数し、プロテインA分画およびHPLC解析によって産物を解析するために、試料をとった。10mMの酢酸ナトリウムでは、10mMまたは15mMのいずれかの酢酸カリウムよりさえもよく実施される。CCTは、全ての処理において同様であった(対照を含む)。従って、単一細胞の生産性(qp)は、増大されることが見いだされた。
【0032】
図2は、なしまたは10mMの酢酸ナトリウムを含む流加バイオリアクター発酵に対するNS0の増殖プロフィールを示す。対照および10mMの酢酸ナトリウムを補った培養の両方のための2つの培養を、生存細胞濃度について試験した(トリパンブルー排除による標準的な計数試験によって決定した)。フィードは、4日に開始した。アセテートは、図1のとおりに増殖期の間には供給しなかったが、接種細胞を添加してすぐに細胞培養産生培地に含めた。参照し得るとおり、アセテートの収率増強効果は、増殖挙動おように、非常に再現性があることが判明した(図3)。達成可能な最大細胞密度に関して、有意な増殖抑制は観察することができなかった。アセテート添加の特定の効果が再現的に見いだされたにもかかわらず、増殖速度は実質的に減少しなかった。CCTは、全ての処理において同様のままだった。特に、アセテートは、定常増殖期における期間または安定度を改善した;生存可能な細胞密度がピークとなった生存可能な細胞密度の減退は、アセテートの存在下では非常により遅かった。抗体産生は、対数増殖期よりも定常期において非常に高いことが知られている。
【0033】
実験のさらなるセットにおいて、フィードには、さらに前述のパラグラフにおいて述べた対照およびアセテートで処理した培養の両方に対してLiClを補って、約1〜10mMの終濃度に蓄積した(データ示されず)。Li塩の添加は、いかなる形であれアセテート添加の効果を修飾することはないことが判明した。確かに、アセテート添加の効果に相乗的な増強がないことは、n-ブチレート補充の培養について報告されたように見ることができなかった。
【0034】
図4は、接種培養(inoc)における酢酸ナトリウムの、もしくは産生培地(inocで)に対する接種時の、もしくは対数期半ばの(フィードで)間に与えられるフィード、またはこれらの組み合わせにおける含有物の流加振とうフラスコ培養での効果を比較する。全ての値は、対照と比較したパーセント相違として現わしてある。加えたアセテートの量に関して、明白な用量依存性が観察できた。産生培養のためのアセテートを補った培養培地の使用を意味する接種培養に対するアセテートの添加または接種時では、増大された収率および最大にされた単一細胞の生産力からみて、最も有効な様式であることが見いだされた。
【0035】
実験2
実験2は、ここでは7.5mMの酢酸ナトリウムおよび専売の高密度培地を使用したことを除き、EP-435 911 Aにおいて記述された脂質を補った高密度培地と同様に、実験1/図2について前述した通りに本質的に行ったが、少ないエタノールアミンを使用し、およびチオグリセロールを使用しないで、およびセンサー制御された自動流加によって19mMにトリプトファン濃度を一定に保つ点が異なる。このような培地では、抗体収率およびプロセスの耐性に関して、7.5mMのアセテートが、その株化細胞に最適であることが見いだされた。図5は、7.5mMのアセテートについてのCCT図を示し、アセテートの適用により、増殖速度または生存可能な細胞密度を減少することなく抗体収量を増大することができることを示している。実験1とは対照的に、対照と比較して、アセテートの存在下でも、同じ最大の生存可能な細胞密度を、定常増殖期の期間に対していかなる有害作用も伴わずに達成することができる。同様に、産物濃度は、着実に対照を超えて、時間の間ずっと増大される(図6)。酪酸ナトリウムなどのその他の生産力を増強する薬剤とは異なり、酢酸ナトリウム添加では、細胞増殖パラメータ(細胞増殖速度および累積の細胞時間)にわずかな減少を引き起こすだけである。したがって、酢酸ナトリウムの添加により、回収抗体濃度の多量の増加が引き起こされる。
【0036】
実験3
本実験は、20mMまでの範囲でのNS0株化細胞6A1に対する酢酸ナトリウムの異なる量の添加についての用量反応研究であり、本質的に実験1/図2に記載したように行った。図7は、添加したアセテートの用量に依存的なCCTを示し、図8は、添加したアセテートの用量に依存的な単一細胞の特異的な生産力(qp)を示す。
【0037】
比較実験:実験4
細胞培養培地に対するブチレートの添加では、NS0-6A1細胞の抗体生産力を増大せず;>1mMの用量では、細胞に強力な毒性があり、非常に急速に生存可能な細胞密度が減少する。許容される範囲において、単一細胞レベルでさえ、生産力の増大は全く見ることができなかった。本実験は、アセテートの代わりに、示した量のブチレートを添加したことを除いて、本質的に実験1/図2に記載したように行った。対数期の半ばにブチレートを添加した後には、いずれも生産力を増強しなかった。図9〜11は、酪酸の添加のCCT、回収時の抗体価、および単一細胞の特異的な生産力(qp)に対する効果を示す。
【0038】
実験5
酢酸ナトリウムの添加についての用量反応試験は、VPM 8を商業的な、無タンパク質培地CD-Hybridoma(Invitrogen/U. K)で培養したこと、およびGS株化細胞ではないので、MSXを添加しなかった点を除いて、本質的に実験3に記載したように、ハイブリドーマ細胞系VPM 8(ECACC番号93113024、上記、細胞培養の欧州コレクション)に対して行った。VPM 8は、従来の非分泌骨髄腫細胞との細胞融合の手段によって作製されたマウスハイブリドーマであり、マウスIgGI抗体を分泌する。図12〜14は、アセテート添加のCCT、回収時の抗体価、および単一細胞の特異的な生産力(qp)に対する効果を示す。特に、ブチレートと比較して、ハイブリドーマVPM 8は、驚くほど容易にmMの範囲でアセテートを許容し、ブチレートとは対照的に、非アセテート処理の対照と比較して生産力の増強を示した(実験6)。従来技術(実験6)から既知のこのような細胞の酪酸処理に基づいて、後者を予想することはできなかった。
【0039】
比較実験:実験6
図15〜17は、それぞれCCT、回収時の抗体価、および単一細胞の特異的な生産力(qp)に対するVPM 8ハイブリドーマ細胞のn-ブチレート処理の効果を示す。本実験は、アセテートを図において述べた量のn-ブチレートで置換したことを除いては、本質的に実験5に記載したように行った。この株化細胞に対するブチレートの例外的な毒性を考えれば、増殖速度および生存可能な細胞密度の減少を伴わずに任意のブチレートを添加することは全くできない。したがって、酪酸の補充は、抗体価を増大する際には有効でない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】流加振とうフラスコ培養におけるNS0の生産力に対する酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムの効果を示す。
【図2】なしまたは10mMの酢酸ナトリウムを含む流加バイオリアクター発酵に対するNS0の増殖プロフィールを示す。
【図3】図2に記載の発酵運転におけるNS0生産力に対する10mMの酢酸ナトリウムの効果を示す。
【図4】接種培養液(inoc)に酢酸ナトリウムを含有すること、およびさらなる酢酸ナトリウム添加(接種時または対数期の半ばの間に、すなわちフィードで)のタイミングの、NS0に対する効果を比較する。全ての値は、対照と比較したパーセント相違として表してある。
【図5】注文製作の高密度細胞増殖培養液における7.5mMのアセテートを含む組換えNS0細胞の増殖および抗体生産力を示す。
【図6】注文製作の高密度細胞増殖培養液における7.5mMのアセテートを含む組換えNS0細胞の増殖および抗体生産力を示す。
【図7】酢酸ナトリウムを含むNS0細胞培養の補充についての用量反応曲線を示す。
【図8】酢酸ナトリウムを含むNS0細胞培養の補充についての用量反応曲線を示す。
【図9】ナトリウムn-ブチレートを含むNS0細胞培養培地の補充についての比較データを示す。
【図10】ナトリウムn-ブチレートを含むNS0細胞培養培地の補充についての比較データを示す。
【図11】ナトリウムn-ブチレートを含むNS0細胞培養培地の補充についての比較データを示す。
【図12】酢酸ナトリウムでのVPM8ハイブリドーマ細胞培養の補充についての用量反応曲線を示す。
【図13】酢酸ナトリウムでのVPM8ハイブリドーマ細胞培養の補充についての用量反応曲線を示す。
【図14】酢酸ナトリウムでのVPM8ハイブリドーマ細胞培養の補充についての用量反応曲線を示す。
【図15】ナトリウムn-ブチレートでのVPM8ハイブリドーマ細胞培養の補充についての比較データを示す。
【図16】ナトリウムn-ブチレートでのVPM8ハイブリドーマ細胞培養の補充についての比較データを示す。
【図17】ナトリウムn-ブチレートでのVPM8ハイブリドーマ細胞培養の補充についての比較データを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産物タンパク質を産生する方法であって、前記タンパク質は、細胞培養の間の少なくとも一定期間の間に、哺乳類細胞から、好ましくリンパ球様細胞から細胞培養液内に発現され、
e)哺乳類細胞を培養するための細胞培養培地を調製すること、好ましくは、
ブチレートを欠いている細胞培養培地を調製すること、およびさらに好ましくは、
哺乳類細胞が増殖することができる細胞培養培地、より好ましくは無タンパク質の細胞培養増殖培地を調製する工程と、
f)酢酸または酢酸塩または酢酸エステルを、1〜20mMの、好ましくは3〜15mMの、より好ましくは5〜12mMの、最も好ましくは6〜9.5mMの終濃度にさらに添加する工程であって、前記添加は、細胞培養を開始する前に培地に対して直接、または細胞培養の間に培地にこれを供給するかのいずれかによって行う工程と、
g)前記培地中で、産物タンパク質を同時に発現して前記細胞を培養し、好ましくは増殖させる工程と、並びに、
h)最後に細胞培養から前記タンパク質を収集する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、酢酸またはその塩の添加は、細胞培養を開始する前、または開始するときに直接培地に行われることを特徴とする方法。
【請求項3】
前述の請求項のいずれか1項に記載の方法であって、酢酸アルカリ金属または酢酸アルカリ土類金属が培地に添加されることを特徴とする方法。
【請求項4】
前述の請求項のいずれか1項に記載の方法であって、細胞がリンパ球様細胞、好ましくはNS0細胞であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記細胞は、グルタミンシンターゼの組換え体であるか、またはグルタミンシンターゼ を発現することができるNS0細胞であることを特徴とする方法。
【請求項6】
動物細胞培養のための細胞培養培地であって、前記培地は、哺乳類細胞を培養するために適しており、かつ酢酸または酢酸塩または生物学的に活性化されたアセチルエステルを、1〜20mMの、好ましくは3〜15mMの、より好ましくは5〜12mMの、最も好ましくは6〜9.5mMの濃度で含み、好ましくは酪酸またはそのあらゆる塩を欠いていることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項3に記載の細胞培養培地であって、前記培地は、高密度細胞培養培地であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の細胞培養培地であって、前記培地は、動物細胞、好ましくはリンパ球様細胞が増殖できる細胞培養培地であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の細胞培養培地であって、前記培地は、無血清および無タンパク質の細胞培養培地、好ましくはNS0細胞培養に適した無タンパク質培地であることを特徴とする方法。
【請求項10】
固形物または液体である請求項6に記載の培地を調製するための培地濃縮物。
【請求項11】
リンパ球様細胞培養のための請求項6に記載の細胞培養培地の使用。
【請求項12】
請求項6に記載の培地に、哺乳類細胞、好ましくはリンパ球様細胞、最も好ましくはNS0細胞を含む細胞培養。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2006−515502(P2006−515502A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−564226(P2003−564226)
【出願日】平成15年4月8日(2003.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2003/003631
【国際公開番号】WO2003/064630
【国際公開日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(504120486)ロンザ・バイオロジクス・ピーエルシー (12)
【Fターム(参考)】